(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】処置の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/27 20060101AFI20230905BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230905BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230905BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61K31/27
A61P9/00
A61K9/20
A61K9/48
(21)【出願番号】P 2020505881
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(86)【国際出願番号】 US2018045683
(87)【国際公開番号】W WO2019032626
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-06
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519161931
【氏名又は名称】アレーナ ファーマシューティカルズ,インク.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】アダムス,ジョン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,クリステン エム.
(72)【発明者】
【氏名】シャナハン,ウィリアム アール.
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-515396(JP,A)
【文献】臨床と研究,1990年,Vol.67, No.1,p.234-242
【文献】Expert Review of Clinical Pharmacology,2017年05月,Vol.10, No.7,p.753-762
【文献】Annals of the Rheumatic Diseases,1995年,Vol.54,p.197-200
【文献】Le Revue de Medecine Interne,1985年,Vol.6, No.5,p.581-589
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2017年01月,Vol.60,p.913-927
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/27
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レイノーを処置するための、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸(化合物1)あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物を含む医薬組成物であって、
前記処置は、個体に化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物を投与することを含
み、
ここで、前記化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物が経口で投与される、医薬組成物。
【請求項2】
前記個体が原発性レイノーを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記個体が続発性レイノーを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記個体が少なくとも1つの指先の潰瘍を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記個体が指先の壊疽を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記個体が全身性硬化症を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記個体が、全身性硬化症、関節リュウマチ、アテローム性動脈硬化症、クリオグロブリン血症、甲状腺機能低下症、外傷および薬物反応から選択される1つの状態に続発するレイノーを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記個体が全身性硬化症に続発するレイノーを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記個体が少なくとも1つの指先の潰瘍と全身性硬化症とを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記個体が1日あたり0.01mgから1.5mgの化合物1と同等の量を投与される、請求項1から9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記個体が1日あたり0.6mgまでの化合物1と同等の量を投与される、請求項1から9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物の用量が、1日あたり、0.01mg、0.02mg、0.025mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.065mg、0.07mg、0.075mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.12mg、0.15mg、0.16mg、0.2mg、0.25mg、0.3mg、0.35mg、0.4mg、0.45mg、0.5mg、0.55mg、0.6mg、0.65mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1.0mg、1.05mg、1.1mg、1.15mg、1.2mg、1.25mg、1.3mg、1.35mg、1.4mg、1.45mgおよび1.5mgから選択される、請求項1から9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記用量が1日あたり1回投与される、請求項1から12のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記用量が1日あたり2回投与される、請求項1から12のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物が1日あたり1回の投与に適している、請求項1から12のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物が1日あたり2回の投与に適している、請求項1から12のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物が、前記化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物のアップタイトレーションを含むタイトレーションスキームによって投与される、請求項1から16のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記タイトレーションスキームが用量を増加させることを含み、最適用量が投与されるまで、個体がさらに増加させた用量に耐えられる限りサイクルが繰り返される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記最適用量が、1日あたり、0.01mg、0.02mg、0.025mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.065mg、0.07mg、0.075mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.12mg、0.15mg、0.16mg、0.2mg、0.25mg、0.3mg、0.35mg、0.4mg、0.45mg、0.5mg、0.55mg、0.6mg、0.65mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1.0mg、1.05mg、1.1mg、1.15mg、1.2mg、1.25mg、1.3mg、1.35mg、1.4mg、1.45mgおよび1.5mgから選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記最適用量が1日あたり1回投与される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記最適用量が1日あたり2回投与される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物が錠剤として投与される、請求項1から
21のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項23】
化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物がカプセルとして投与される、請求項1から
22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項24】
化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物が化合物1である、請求項1から
23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項25】
処置が、発作の頻度の低下、発作の重症度の低下、虚血性組織損傷の低下および指先の潰瘍の低下の少なくとも1つをもたらす、請求項1から
24のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レイノーの処置に有益な方法が提供される。レイノー(Raynauld’s)(レイノー症候群(Raynaud/Raynaud’s syndrome)、レイノー病(Raynaud/Raynaud’s disease、および/またはレイノー現象(Raynaud/Raynaud’s phenomenon)とも呼ばれる)は、動脈の血管攣縮が血流を低下させる状態である。「発作」時は血管が狭まり、一般には手の指、時には足の指、鼻、または耳を含む患部への血液循環を制限する。レイノーは、交感神経系、寒冷暴露および/または情緒的ストレスが引き金となって引き起こされる。最も重篤な合併症は、指先の潰瘍および時に壊疽につながる可能性のある、深刻な指先の虚血である。
【0002】
レイノーは原発性および続発性の形態で症状が見つかる。原発性のレイノーの原因は不明である。この形態での血管の異常は、不可逆的な組織損傷に進行することなく、単に機能的で可逆的であると考えられている。しかしながら、原発性レイノーのいくつかの症例は続発性レイノーに進む場合がある。
【0003】
続発性レイノーは、全身性硬化症(全身性強皮症とも呼ばれる)、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、クリオグロブリン血症、甲状腺機能低下症、外傷および/または薬物反応などの、別の疾患の結果として発生する。例えば、全身性硬化症を患う個体の95%以上がレイノーの症状を示す。続発性レイノーの重症度は、構造的および機能的な血管異常の発生と関連する。
【0004】
レイノーは複雑で、血管的要因、神経制御機構および血管内要因の間における相互作用をおそらく含む。レイノーのための処置手法は、軽度の症例では一貫しているが、中程度から重度の指先の潰瘍または潜在する全身性硬化症を含む症例では分かれる。静脈内プロスタノイド(プロスタサイクリンと類似物)は、虚血性の指先の合併症を発症する個体に使用される。静脈内イロプロストは、週ごとのレイノー現象の発作を抑え(39.1%対22.2%)、9週間の間に重症度スコアを改善させる(34.8%対19.7%)ことが示されている(非特許文献1)。静脈内エポプロステノールはレイノー現象の発作の頻度および持続時間の低下に関係しているが、臨床的反応の低下が最後の投与から8-10週間後に観察された(非特許文献2)。
【0005】
静脈内投与が効果的であったとしても、それは不便で長期的な処置には適さない。さらに、経口プロスタノイドはしばしば耐容性が低く、ほとんどまたは全く有意なメリットを示さない。最近の調査では、わずか16%の個体が、現在のレイノーのための薬物療法が効果的であると認めた(非特許文献3)。
【0006】
レイノーの処置のための新しい化合物、特に経口剤の形態によるもの、が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Wigley 1994 Ann Intern Med. 1994 Feb 1;120(3):199-206
【文献】Belch 1983 Lancet.1(8320):3l3e5
【文献】Hughes et al. Rheum 2015.54(8):1443-1447
【発明の概要】
【0008】
本明細で書提供されるのはレイノーを処置または予防する方法であって、前記方法は、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸(化合物1)あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物を、個体に処方および/または投与する工程を含む。
【0009】
個体におけるレイノーの処置のための薬剤の製造における2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸(化合物1)あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物の使用が、本明細書でさらに提供される。
【0010】
個体におけるレイノーの処置の方法における使用のための2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸(化合物1)あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物が、本明細書でさらに提供される。
【0011】
個体におけるレイノーの処置における2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸(化合物1)あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物が、本明細書でさらに提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、指先の血流を増加させる方法である。
【0013】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、指先の血圧を改善する方法である。
【0014】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、指先の温度を改善する方法である。
【0015】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、指先の温度を上昇させる方法である。
【0016】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、皮膚温度を上昇させる方法である。
【0017】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、毛細血管の直径を広げる方法である。
【0018】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、毛細血管の機能障害を低下させる方法である。
【0019】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、指先の毛細血管の機能障害を低減させる方法である。
【0020】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、微小血管反応性を改善する方法である。
【0021】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、微小血管血流を改善する方法である。
【0022】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、レイノー発作の頻度、持続時間および/または重症度を低減させる方法である。
【0023】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、血管攣縮エピソードの頻度、持続時間および/または重症度を低減させる方法である。
【0024】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、続発性レイノーを持つ個体における血管攣縮の頻度、持続時間および/または重症度を低減させる方法である。
【0025】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、蒼白エピソードの頻度、持続時間および/または重症度を低減させる方法である。
【0026】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、チアノーゼのエピソードの頻度、持続時間および/または重症度を低減させる方法である。
【0027】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、指および/または手の痛み、ヒリヒリ感および/またはしびれのエピソードの頻度、持続時間および/または重症度を低減させる方法である。
【0028】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、血管攣縮発作の頻度を低減させる方法である。
【0029】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、血管攣縮発作の持続時間を低減させる方法である。
【0030】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、血管攣縮発作の重症度を低減させる方法である。
【0031】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、レイノー現象発作の頻度を低減させる方法である。
【0032】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、レイノー現象発作の持続時間を低減させる方法である。
【0033】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、レイノー現象発作の重症度を低減させる方法である。
【0034】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、1日あたりのレイノー現象発作の数を低下させる方法である。
【0035】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、1週間あたりのレイノー現象発作の数を低下させる方法である。
【0036】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、1か月あたりのレイノー現象発作の数を低下させる方法である。
【0037】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、原発的レイノー現象の症状および/または徴候を改善する方法である。
【0038】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、続発的レイノー現象の症状および/または徴候を改善する方法である。
【0039】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、低温によって誘発される血管攣縮を予防する方法である。
【0040】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、レイノー状態スコア(RSC)を低減させる方法である。
【0041】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、潰瘍の負担を低下させる方法である。
【0042】
いくつかの実施形態では、レイノーを処置または予防する方法は、活動性潰瘍を治癒させる時間を減らす、および/または、新しい潰瘍の数を低下させる方法である。
【0043】
いくつかの実施形態では、化合物1は、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物である。いくつかの実施形態では、化合物1は、ナトリウム2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸塩水和物である。いくつかの実施形態では、化合物1は、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸あるいはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態では、化合物1は、ナトリウム2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸塩である。いくつかの実施形態では、化合物1は、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸またはその水和物または溶媒和物である。いくつかの実施形態では、化合物1は、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸またはその水和物である。いくつかの実施形態では、化合物1は、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸またはその溶媒和物である。いくつかの実施形態では、化合物1は、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸である。いくつかの実施形態では、化合物1は、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸の無水の非溶媒和の結晶形態である。
【0044】
いくつかの実施形態では、個体は原発性レイノーを有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、個体は続発性レイノーを有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、個体は指先の潰瘍の少なくとも1つを有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、個体は指先の壊疽を有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、個体は全身性硬化症を有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、個体は、全身性硬化症、関節リュウマチ、アテローム性動脈硬化症、クリオグロブリン血症、甲状腺機能低下症、外傷および薬物反応、から選択される状態に続発するレイノーを有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、個体は全身性硬化に続発するレイノーを有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、個体は指先の潰瘍の少なくとも1つおよび全身性硬化症を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、個体は、指先の梗塞の病歴を有する。いくつかの実施形態では、個体は、指先の潰瘍の病歴を有する。いくつかの実施形態では、個体は、指先の切断の切迫する可能性を有する。いくつかの実施形態では、ある個体は、標準的なケア処置下においてレイノー現象に徴候的な手の指を1~3本有する。いくつかの実施形態では、ある個体は、標準的なケア処置下においてレイノー現象に徴候的な手の指を1本有する。いくつかの実施形態では、ある個体は、標準的なケア処置下においてレイノー現象に徴候的な手の指を2本有する。いくつかの実施形態では、ある個体は、標準的なケア処置下においてレイノー現象に徴候的な手の指を3本有する。いくつかの実施形態では、ある個体は、標準的なケア処置下においてレイノー現象に徴候的な手の指を3本より多く有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、個体は標準的治療に反応しない。いくつかの実施形態では、個体は血管拡張療法に対する耐性がある。
【0054】
いくつかの実施形態では、個体は、化合物1の0.01mgから1.5mgと同等の量を毎日投与される。
【0055】
いくつかの実施形態では、個体は、化合物1の0.01mgから1.0mgと同等の量を毎日投与される。
【0056】
いくつかの実施形態では、個体は、化合物1の最大0.6mgと同等の量を毎日投与される。
【0057】
いくつかの実施形態では、個体は、化合物1の最大0.8mgと同等の量を毎日投与される。
【0058】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物の用量は:1日あたり、0.01mg、0.02mg、0.025mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.065mg、0.07mg、0.075mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.12mg、0.15mg、0.16mg、0.2mg、0.25mg、0.3mg、0.35mg、0.4mg、0.45mg、0.5mg、0.55mg、0.6mg、0.65mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1.0mg、1.05mg、1.1mg、1.15mg、1.2mg、1.25mg、1.3mg、1.35mg、1.4mg、1.45mgおよび1.5mg、から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態では、用量が毎日1回投与される。
【0060】
いくつかの実施形態では、用量が毎日2回投与される。
【0061】
いくつかの実施形態では、化合物1が個体への寒冷暴露の前に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1が個体への寒冷暴露の1日前に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1が個体への寒冷暴露の直前に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1が個体への寒冷暴露中に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1が個体への寒冷暴露中の徴候の出現に続いて投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、1日に1回の投与に適している。
【0063】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、1日に2回の投与に適している。
【0064】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物のアップタイトレーション(up-titration)を含むタイトレーションスキームによって投与される。
【0065】
いくつかの実施形態では、タイトレーションスキームは用量を増加させることを含み、ここでは、最適用量が投与されるまで、個体がさらに増加した用量に耐えられる限りサイクルが繰り返される。
【0066】
いくつかの実施形態では、最適用量は:1日あたり、0.01mg、0.02mg、0.025mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.065mg、0.07mg、0.075mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.12mg、0.15mg、0.16mg、0.2mg、0.25mg、0.3mg、0.35mg、0.4mg、0.45mg、0.5mg、0.55mg、0.6mg、0.65mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1.0mg、1.05mg、1.1mg、1.15mg、1.2mg、1.25mg、1.3mg、1.35mg、1.4mg、1.45mgおよび1.5mg、から選択される。
【0067】
いくつかの実施形態では、最適用量が毎日1回投与される。
【0068】
いくつかの実施形態では、最適用量が毎日2回投与される。
【0069】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、経口投与される。
【0070】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、錠剤の形態である。
【0071】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、カプセルの形態である。
【0072】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、化合物1である。
【0073】
いくつかの実施形態では、処置は以下の1つを含む:発作の頻度の低下、発作の重症度の低下、虚血性組織損傷の低下および指先の潰瘍の低下。
【0074】
いくつかの実施形態では、処置は発作の頻度および/または重症度の低下を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、予防は以下の1つを含む:発作の予防、虚血性組織損傷の予防および指先の潰瘍の予防。
【発明を実施するための形態】
【0076】
経口プロスタサイクリン受容体アゴニストであるセレキシパグに対する最近の臨床試験は、全身性硬化症を有する個体におけるレイノー現象の発作頻度を評価した。試験での主要有効性評価項目は、プラセボに対する1週間あたりのレイノー現象発作数の低下であった。セレキシパグは、各個体において最も高い耐量にタイトレーションがなされた。安定的な研究設計と肺動脈高血圧症(PAH)用にFDA承認のラベルで提供されているものと類似の投与スキームにもかかわらず、セレキシパグはレイノーの研究においては主要有効性評価項目に合致しなかった;Denton et al. Ann Rheum Dis 2016 June 10; FRI0265:530-1。
【0077】
APD811またはラリネパグとしても知られる2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸(化合物1)は、米国特許公開第2011/0053958に開示されており、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。セレキシパグ同様、ラリネパグは経口プロスタサイクリン受容体アゴニストである。しかしながら、本明細書に記述されるとおり、ラリネパグはレイノーの処置に適している。
【0078】
本明細書に使用される場合、以下の語および句は、それらが使用される文脈がそうでない旨を示す範囲以外において、以下に記載の意味を有することが一般に意図されている。
【0079】
化合物1:本明細書に使用される場合、「化合物1(Compound 1)」は、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸を指し、その結晶形態を含む。非限定的な例として、化合物1はWO2009/117095(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示される結晶形態で存在することが可能であり、PXRDスペクトルのピークのための、1つまたはそれ以上の、次の°2θの値によって特徴付けられる:8.9、10.8、11.9、15.2、16.4、16.8、18.9、20.3、207および21.5、そして、報告されたピークは約±0.2°2θの差で変化し得る。
【0080】
処置する(TREAT)、処置すること(TREATING)または処置(TREATMENT):本明細書に使用される場合、用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、病気または疾患の少なくとも1つの症状を既に現わしている、または、病気または疾患の少なくとも1つの症状を以前に現わしていた個体への治療の投与を指す。例えば「処置すること」は、病気または疾患の症状を緩和する、減じるまたは改善すること、追加の症状を予防すること、症状の潜在的原因を改善すること、病気や疾患を抑止すること、例えば、病気または疾患の進行を阻むこと、病気や疾患を緩和すること、病気や疾患を軽減させること、病気や疾患によって引き起こされる病状を緩和すること、または、病気や疾患の症状を止めることを含み得る。例えば、障害に関する用語「処置すること」は、特定の障害に関連する1つまたはそれ以上の症状の重症度の低下を意味する。したがって、障害を処置することは、障害に関連するすべての症状の重症度の低下を必ずしも意味せず、障害に関連した1つまたはそれ以上の症状の重症度の完全なる低下を必ずしも意味しない。
【0081】
予防する(PREVENT)、予防すること(PREVENTING)または予防(PREVENTION):本明細書に使用される場合、用語「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」または「予防(prevention)」は、特定の障害に関連する1つまたはそれ以上の症状の発生または発症の予防を意味し、障害の完全な予防を必ずしも意味しない。例えば、用語「予防する」、「予防すること」または「予防」は、最終的に病気または疾患の少なくとも1つの症状を示し得るがまだそうなっていない個体への、予防(prophylactic)または予防(preventative)ベースの治療の投与を指す。危険因子はその病気の後の発生と相関があることが知られているため、そのような個体は特定され得る。あるいは、予防対策(prophylactic measures)として、予防治療(prevention therapy)は危険因子の特定前に投与され得る。少なくとも1つの症状の発症を遅らせることも、予防(prevention)または予防(prophylaxis)と考えられ得る。
【0082】
耐える(TOLERATE):本明細書に使用される場合、ある個体に対するある用量の投与が、許容されない有害事象または許容されない有害事象の組み合わせを結果的に生じさせない場合、当該個体は当該混合物の当該用量に「耐える(tolerate)」と言われる。当業者は、耐えられること(tolerance)が主観的な尺度であること、および、ある個体にとって耐えられるものが、別の個体にとっては耐えられないものとなり得る場合があることを理解するであろう。例えば、ある個体は頭痛を耐えることができないかもしれないが、第2の個体は、頭痛は耐えられると感じるが嘔吐は耐えられないかもしれず、また、第3の個体には、頭痛だけあるいは嘔吐だけであれば耐えられるが、頭痛と嘔吐の組み合わせ(たとえ各々の重症度が単独で経験される時に比べて軽い場合でも)は耐えられない。
【0083】
有害事象:本明細書に使用される場合、「有害事象(adverse event)」は、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物を使用する処置に関連する、有害な医学上の出来事である。1つの実施形態では、有害事象は頭痛、吐き気、嘔吐および顎の痛みから選択される。1つの実施形態では、有害事象は頭痛、吐き気、嘔吐、顎の痛み、フラッシング、異常な脈拍数、異常なQT間隔、座位での収縮期血圧>160mmHg、座位での拡張期血圧>100mmHg、収縮期血圧<90mmHg、または前述の1つ以上の組み合わせから選択される。1つの実施形態では、有害事象は、腹痛、鼻血、筋肉痛、熱感、動悸、めまい、かゆみ、下痢、胸部圧迫感、関節痛、チクチクまたはヒリヒリする皮膚の感覚、および血圧の低下から選択される。1つの実施形態では、有害事象は胸部の痛み、胸部の不快感および紅斑から選択される。
【0084】
最適用量:本明細書に使用される場合、「最適用量(optimized dose)」は、特定の個体のニーズに最適化された治療用量を指し、最高用量の化合物1、あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物の用量で化合物1の最高用量と同等であり、その量は、求められている個体の生物学的または医学的反応を誘発し、且つ、当該個体に耐えられる量であり、健康管理医と随意相談しながら当該個体によって決定される。最適用量における化合物1の量は、個体間で異なり得る。さらに化合物1の量は、任意のある個体に対して、時折変化し得る。
【0085】
アップタイトレーション(UP-TITRATION)/アップタイトレーションすること(UP-TITRATING):本明細書に使用される場合、ある化合物について「~のアップタイトレーション(up-titration of)」または「アップタイトレーションすること(up-titrating)」は、個体が増加された量に耐えられなくなるまで化合物の量を増加させることを指す。アップタイトレーションは、1または複数回の用量増加で達成されることが可能で、その用量増加分は同じでも異なっていても良い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物の、0.01mgまたは0.02mgの化合物1と同等の量で、約1週間毎日、処方および/または投与すること、そしてその後に続く、本明細書で開示される通りの、最適用量が投与されるまでのアップタイトレーションを含む。最適用量の投与は、その後必要な限り継続され得る。
【0086】
化合物1に言及する時に、「薬学的に許容可能な塩(salts)、溶媒和物(solvates)および水和物(hydrates)」という句あるいは「薬学的に許容可能な塩(salt)、溶媒和物(solvate)あるいは水和物(hydrate)」という句が使用される場合、その句は、化合物1の薬学的に許容可能な溶媒和物(solvates)および/または水和物(hydrates)、化合物1の薬学的に許容可能な塩(salts)、および化合物1の薬学的に許容可能な塩(salts)の薬学的に許容可能な溶媒和物(solvates)および/または水和物(hydrates)を含む旨が理解される。塩(salts)である化合物1に言及する時に、「薬学的に許容可能な溶媒和物(solvates)および水和物(hydrates)」という句または「薬学的に許容可能な溶媒和物(solvate)または水和物(hydrate)」という句が使用される場合、その句は、そのような塩(salts)の薬学的に許容可能な溶媒和物(solvates)および/または水和物(hydrates)を包む旨も理解される。
【0087】
本明細書に記載の剤形は、有効成分としての化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩のどちらか、または、その溶媒和物あるいは水和物としての形を含み得ることは、当業者には明らかであろう。さらに、化合物1の様々な水和物と溶媒和物およびそれらの塩は、医薬組成物の製造における中間体としての用途を見出すであろう。本明細書で言及されるもの以外の、適切な水和物および溶媒和物を作製および同定するための典型的な手順は、当業者に周知である。例えば、KJ. Guillory, ”Generation of Polymorphs, Hydrates, Solvates, and Amorphous Solids,” in: Polymorphism in Pharmaceutical Solids, ed. Harry G. Britain, Vol. 95, Marcel Dekker, Inc., New York, 1999のpp.202-209を参照。したがって、本開示の一態様は、化合物1および/またはその薬学的に許容可能な塩の水和物および溶媒和物を処方および/または投与する方法に関係し、それらの方法は、熱重量分析(TGA)、TGA-質量分光法、TGA-赤外線分光法、粉末X線回折(XRPD)、カール・フィッシャータイトレーション、高分解能X線回折などの当技術分野で既知の方法により、区分けおよび特徴付けられ得る。
【0088】
本明細書に使用される場合、「~より大きい(greater than)」の用語は符号(>)と、「~より小さい(less than)」の語は符号(<)と、同義で使用される。同様に、「~以上(greater than or equa to)」の用語は符号(≧)と、「~以下(less than or equal to)」の用語は符号(≦)と、同義である。
【0089】
本明細書中に開示される方法の中で数字が使用される場合、その数字の前に「約(about)」の用語が挿入可能である。
【0090】
本明細書全体を通して、そうでない旨を文脈が必要としない限り、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」や「含むこと(comprising)」等の派生語は、述べられた工程、要素または数字、あるいは、述べられた工程、要素または数字の群を含むが、その他の工程、要素または数字、あるいは、その他の要素または数字の群を排除しないことを示唆すると理解される。
【0091】
本明細書全体を通して、そうでない旨が明記されていない、またはそうでない旨を文脈が必要としない限り、ある1つの工程、物質の組成、工程群または物質の組成群への言及は、それらの工程、物質の組成、工程群または物質の組成群の1つおよび複数(つまり1つまたはそれ以上)を含むものと解釈される。
【0092】
本明細書に記述される各実施形態は、そうでない旨が明記されていない限り、それぞれのおよび他のすべての実施形態に準用されるものとする。
【0093】
当業者は、本明細書に記載される本発明が、具体的に記載されているもの以外の変更および改造を受けやすいことを理解するであろう。本発明がそのような変更および改造のすべてを含むことが理解されるものとする。本発明はまた、そうでない旨が明記されていない限り、本明細書中、個別にまたは集合的に言及または提示されている工程、特徴、組成および化合物のすべて、および、前記工程または特徴の、任意のおよび全ての組み合わせ、または任意の2つ以上も含む。
【0094】
本発明は、本明細書に記載される例示目的のみを意図する特定の実施形態によって、その範囲を限定されるべきではない。本明細書に記載されるとおり、機能的に同等の製品、組成物および方法は、明らかに本発明の範囲内である。例えば、本明細書に開示される化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物の投与量は、特定量の化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物と生物学的同等性を示す他の塩または結晶形態、製剤、および投与計画のための投与量に置き換えられることが可能であり、当該投与量は、FDAの生対利用性と生物学的同等性に関する業界向けガイダンスに開示される方法で測定されたAUCおよび/またはCmaxの80%-125%を有する形態を含む(Guidance for Industry: Bioavailability and Bioequivalence Studies for Orally Administered Drug Products-General Considerations. U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research (CDER), March 2003, Revision 1, www.fda.gov/cder/guidance/index.htm)。例えば、本明細書に開示される化合物1の投与量は、0.6mgの化合物1と生物学的同等性を示す他の塩または結晶形態、製剤、または投与計画の投与量に置き換えられることが可能である。
【0095】
明確さを目的として、別個の実施形態という文脈にて記述される本発明の特定の特徴も、単一の実施形態に組み合わせて提供され得ることが理解される。例えば、本発明の、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物の処方を挙げる方法、および、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物の投与を挙げる別の方法は、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物の処方と投与を挙げる単一の方法に組み合わされることが可能である。
【0096】
いくつかの実施形態では、レイノーはレイノー症候群である。いくつかの実施形態では、レイノーはレイノー病である。いくつかの実施形態では、レイノーはレイノー現象である。いくつかの実施形態では、レイノーは原発性レイノー症候群である。いくつかの実施形態では、レイノーは続発性レイノー症候群である。いくつかの実施形態では、レイノーは原発性レイノー病である。いくつかの実施形態では、レイノーは続発性レイノー病である。いくつかの実施形態では、レイノーは原発性レイノー現象である。いくつかの実施形態では、レイノーは続発性レイノー現象である。いくつかの実施形態では、レイノーは全身性硬化症に続発するレイノー病である。いくつかの実施形態では、レイノーは他の自己免疫疾患に続発するレイノー病である。いくつかの実施形態では、レイノーは全身性硬化症に続発するレイノー症候群である。いくつかの実施形態では、レイノーは他の自己免疫疾患に続発するレイノー症候群である。いくつかの実施形態では、レイノーは自己免疫疾患に続発するレイノー現象である。いくつかの実施形態では、レイノーは全身性硬化症に続発するレイノー現象である。
【0097】
いくつかの実施形態では、レイノーは活動性のレイノー現象である。
【0098】
いくつかの実施形態では、レイノーは難治性の原発性レイノー現象である。
【0099】
いくつかの実施形態では、レイノーは難治性の続発性レイノー現象である。
【0100】
いくつかの実施形態では、レイノーは特発性の(原発性)レイノーである。
【0101】
いくつかの実施形態では、レイノーは限定性の皮膚の硬皮症に関連するレイノーである。
【0102】
いくつかの実施形態では、レイノーは広範性の皮膚の硬皮症に関連するレイノーである。
【0103】
いくつかの実施形態では、レイノーは混合性結合組織疾患に関連するレイノーである。
【0104】
いくつかの実施形態では、レイノーは自己免疫疾患に続発する。
【0105】
いくつかの実施形態では、レイノーは結合組織疾患に続発する。
【0106】
いくつかの実施形態では、個体はレイノー状態スコア(RCS)を使用して評価される。いくつかの実施形態では、RCSは1、2、3、4、5、6、7、8、または9、あるいは凡そ1、2、3、4、5、6、7、8、または9、低下する。
【0107】
いくつかの実施形態では、個体はレイノー重症度視覚的アナログ尺度(VAS)を使用して評価される。いくつかの実施形態では、VASは100ミリメートル(mm)の線であり、0mm(左境界)は重症度の低いレイノー病を表し、100mm(右境界)は極めて重度のレイノー病を表す。いくつかの実施形態では、個体は、VASに垂直のマークを付けて、過去2週間のレイノー病の重症度を示す。いくつかの実施形態では、レイノー重症度スコアはmmで表される、左の境界から垂直のマークまでの距離である。
【0108】
いくつかの実施形態では、個体はレイノー状態スコア(RCS)視覚的アナログ尺度(VAS)を使用して評価される。いくつかの実施形態では、VASは100ミリメートル(mm)の線であり、0mm(左境界)はレイノー病について問題がないことを表し、100mm(右境界)はレイノー病について極度の問題があることを表す。いくつかの実施形態では、個体はVASに垂直のマークを付けて、その日にレイノー病について経験した困難を示す。いくつかの実施形態では、RCSはmmで表される、左の境界から垂直のマークまでの距離である。
【0109】
いくつかの実施形態では、個体は、100mmのうち≧25mmのVAS疼痛スコアを有する。
【0110】
いくつかの実施形態では、手のレーザードップラーイメージングが行われる。
【0111】
いくつかの実施形態では、寒冷暴露テストが行なわれる。例えば、いくつかの実施形態では、各指先の温度がベースラインで測定および記録され、その後は3分の間隔で、摂氏4度の氷水に20秒浸した後に測定および記録される。
【0112】
いくつかの実施形態では、低温によって誘発される血管攣縮が評価される。
【0113】
いくつかの実施形態では、健康状態質問票(HAQ)の変化が評価される。
【0114】
いくつかの実施形態では、指先の潰瘍の数の変化が評価される。
【0115】
いくつかの実施形態では、最高収縮期血流の変化が評価される。例えば、いくつかの実施形態では、掌の指動脈の指動脈血流速度の変化が評価される。
【0116】
いくつかの実施形態では、時間平均の最高血流速度が評価される。
【0117】
いくつかの実施形態では、同じ手の指先と甲との間の温度差が評価される。
【0118】
いくつかの実施形態では、局所的な低温への暴露による血管狭窄を臨床的に誘発した後に、利き手でない方の手の指の血流の定量的変化が測定される。
【0119】
いくつかの実施形態では、皮膚温度回復時間の定量的低下が評価される。いくつかの実施形態では、レイノー現象に関連した疼痛、ヒリヒリ感および/またはしびれの症状が評価される。いくつかの実施形態では、個体は、患者の手の症状のアナログ評価スコアを使用して評価される。
【0120】
いくつかの実施形態では、個体は関節リウマチを有する。いくつかの実施形態では、個体は全身性エリテマトーデスを有する。いくつかの実施形態では、個体は全身性硬化症を有する。いくつかの実施形態では、全身性硬化症の診断は欧州リウマチ学会(EULAR)の基準によって定義される通りである。いくつかの実施形態では、個体は限定的な硬皮症(CREST)を有する。いくつかの実施形態では、個体はシェーグレン症候群を有する。いくつかの実施形態では、個体は原発性シェーグレン症候群を有する。いくつかの実施形態では、個体は混合性結合組織病を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、個体は抗血小板剤も投与される。いくつかの実施形態では、個体は血管拡張剤も投与される。いくつかの実施形態では、個体はカルシウムチャネル遮断薬も投与される。いくつかの実施形態では、個体はPDE5抑制剤も投与される。いくつかの実施形態では、個体はホスホジエステラーゼ阻害薬(例えばシルデナフィル、タダルフィルまたはバルデナフィル)も投与される。いくつかの実施形態では、個体はエンドセリン拮抗薬も投与される。いくつかの実施形態では、個体はアルファアドレナリン拮抗薬も投与される。いくつかの実施形態では、個体は鎮痛剤も投与される。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される処置方法は、以前にレイノー病のための別の治療を受けたことがある、または現在受けている個体のための維持処置である。いくつかの実施形態では、レイノーを患う個体は、以前のレイノー療法に耐性がある。例えば、いくつかの実施形態では、レイノーを患う個体は、Ca2+ブロッカー、抗血小板薬、局所ニトログリセリン、ACE阻害薬またはARB、アルファブロッカー、SSRIまたは他の抗不安薬、PDE5、ETRA、またはIVプロスタサイクリンアナログ療法に耐性がある。いくつかの実施形態では、レイノーを患う個体は血管拡張療法に耐性がある。いくつかの実施形態では、レイノーを患う個体は静脈プロスタノイド治療に耐性がある。いくつかの実施形態では、レイノーを患う個体は、エポプロステノール、イロプロスト、ボセンタン、タダラフィル、ニフェジピン、ニカルジピンまたはキナプリル療法に耐性がある。
【0123】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、経口投与される。
【0124】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、経口投与に適したカプセルとして製剤化される。いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、経口投与に適した錠剤として製剤化される。
【0125】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、化合物1またはその水和物あるいは溶媒和物である。
【0126】
いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、化合物1である。
【0127】
いくつかの実施形態では、化合物1の用量は、1日あたり、0.01mg、0.02mg、0.025mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.065mg、0.07mg、0.075mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.12mg、0.15mg、0.16mg、0.2mg、0.25mg、0.3mg、0.35mg、0.4mg、0.45mg、0.5mg、0.55mg、0.6mg、0.65mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1.0mg、1.05mg、1.1mg、1.15mg、1.2mg、1.25mg、1.3mg、1.35mg、1.4mg、1.45mgおよび1.5mg、または凡そ上記から選択される。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は一日あたり0.4から1.0mgである。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は一日あたり0.6から1.0mgである。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は一日あたり0.6から0.8mgである。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は一日あたり0.65から1.0mgである。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は一日あたり0.65から0.8mgである。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は個々の耐容性によって決定される。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は一日あたり0.4mgを上回る。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は一日あたり0.6mgを上回る。いくつかの実施形態では、化合物1の用量は一日あたり0.8mgを上回る。いくつかの実施形態では、一日あたりの用量が1日1回で投与される。いくつかの実施形態では、一日あたりの用量が1日2回で投与される。いくつかの実施形態では、用量は最適用量である。いくつかの実施形態では、用量は維持用量である。いくつかの実施形態では、維持用量が個体にとっての最大耐量である。
【0128】
いくつかの実施形態では、個体に投与される化合物1の量は:0.01mg、0.15mg、0.02mg、0.025mg、0.03mg、0.35mg、0.04mg、0.45mg、0.05mg、0.55mg、0.06mg、0.065mg、0.07mg、0.075mg、0.08mg、0.85mg、0.09mg、0.95mg、0.1mg、0.11mg、0.12mg、0.13mg、0.14mg、0.15mg、0.16、0.17mg、0.175mg、0.18mg、0.19mg、0.2mg、0.225mg、0.25mg、0.275mg、0.3mg、0.325mg、0.35mg、0.375mg、0.4mg、0.425mg、0.45mg、0.475mg、0.5mg、0.55mg、0.6mg、0.65mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1.0mg、1.05mg、1.1mg、1.15mg、1.2mg、1.25mg、1.3mg、1.35mg、1.4mg、1.45mgおよび1.5mg、または凡そ上記から選択される。
【0129】
いくつかの実施形態では、個体に投与される化合物1の量は:1日あたり、0.01mg、0.15mg、0.02mg、0.025mg、0.03mg、0.35mg0.04mg、0.45mg0.05mg、0.55mg0.06mg、0.065mg、0.07mg、0.075mg、0.08mg、0.85mg、0.09mg、0.95mg、0.1mg、0.11mg、0.12mg、0.13mg、0.14mg、0.15mg、0.16mg、0.17mg、0.175mg、0.18mg、0.19mg、0.2mg、0.225mg、0.25mg、0.275mg、0.3mg、0.325mg、0.35mg、0.375mg、0.4mg、0.425mg、0.45mg、0.475mg、0.5mg、0.55mg、0.6mg、0.65mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1.0mg、1.05mg、1.1mg、1.15mg、1.2mg、1.25mg、1.3mg、1.35mg、1.4mg、1.45mgおよび1.5mg、または凡そ上記から選択される。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されている方法または使用は、0.01mg、0.02mg、0.025mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.065mg、0.07mg、0.075mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.12mg、0.15mg、0.16mg、0.2mg、0.25mg、0.3mg、0.35mg、0.4mg、0.45mg、0.5mg、0.55mg、0.6mg、0.65mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1.0mg、1.05mg、1.1mg、1.15mg、1.2mg、1.25mg、1.3mg、1.35mg、1.4mg、1.45mgまたは1.5mgと同等、凡そ上記数値と同等、または、少なくとも凡そ上記数値と同等である量の化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物を含む医薬組成物を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法または使用は、ある量の化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物を含む医薬組成物を含み、それは、0.01mgから0.6mgの化合物1、0.01mgから0.3mgの化合物1、0.01mgから0.1mgの化合物1、0.02mgから0.08mgの化合物1、0.03mgから0.06mgの化合物1または0.04mgの化合物1などの、0.01mgから1.0mgの化合物1と同等、または凡そ上記範囲と同等である。
【0132】
医薬組成物を含むいくつかの実施形態では、組成物はカプセルまたは錠剤の形態をしている。医薬組成物のいくつかの実施形態では、組成物はカプセルの形態をしている。医薬組成物のいくつかの実施形態では、組成物は錠剤の形態をしている。
【0133】
本明細書に開示される化合物は、レイノーとその症状の処置に有益である。レイノー症候群の症状は、例えば指先の潰瘍および壊疽を含む。本明細書に開示される化合物は、レイノー症候群の症状の処置に有益である。
【0134】
さらに、レイノーの処置を必要とする個体におけるその処置方法が提供され、その方法は、本明細書に開示されるタイトレーションスキームを介して、個体に、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物あるいはその医薬組成物を処方および/または投与する工程を含む。さらに、レイノーの処置を必要とする個体におけるその処置方法が提供され、その方法は、本明細書に開示されるタイトレーションスキームを介して、個体に化合物1を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、化合物1は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、あるいは20週、または凡そ上記の週にわたってタイトレーションがなされる。いくつかの実施形態では、化合物1は、9週または凡そ9週にわたってタイトレーションがなされる。いくつかの実施形態では、化合物1は、16週または凡そ16週にわたってタイトレーションがなされる。いくつかの実施形態では、化合物1は、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95または1.0mgずつの増分でタイトレーションがなされる。いくつかの実施形態では、化合物1は、0.5mgずつの増分でタイトレーションがなされる。いくつかの実施形態では、化合物1は、個体の最大耐量にタイトレーションがなされる。
【0135】
レイノー症候群の処置のための方法のいくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、経口投与に適したカプセルまたは錠剤として製剤化される。いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、カプセルとして製剤化される。いくつかの実施形態では、化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物は、錠剤として製剤化される。
【0136】
いくつかの実施形態では、レイノーの処置または予防は、レイノー状態スコア、レイノー発作の回数、レイノー発作の持続時間、続発的レイノーにおける潰瘍負担の低下、レイノー重症度視覚アナログスコア(VAS)、レイノー状態スコア(RCS)視覚アナログスコア(VAS)、指先の血圧、または毛細血管の直径などの変化によって決定される。
【0137】
さらに、本明細書に記載されるレイノーの処置のための薬剤の製造における、本明細書に記載される化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物の使用も、本明細書に提供される。
【0138】
さらに、本明細書に記載されるレイノーの処置の方法に使用する、本明細書に記載される化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物も、本明細書に提供される。
【0139】
さらに、本明細書に記載されるレイノーの処置のための、本明細書に記載される化合物1あるいはその薬学的に許容可能な塩、水和物または溶媒和物も、本明細書に提供される。
【0140】
さらに、本明細書に開示されるタイトレーションパッケージと、レイノーのための処置を必要とする個体に薬物が投与されることを示す指示とを含むキットも、本明細書に提供される。
【0141】
さらに、本明細書で開示されるタイトレーションパッケージを必要とする個体にそれを提供することを含む、レイノーを処置する方法も、本明細書に提供される。
【0142】
いくつかの実施形態では、化合物1またはまその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物は、経口投与に適した錠剤またはカプセルの形で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1またはまその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物は、経口投与に適したカプセルの形で投与される。
【0143】
結合剤、充填剤、許容可能な湿潤剤、錠剤化潤滑剤および崩壊剤などの従来の賦形剤は、経口投与のための錠剤およびカプセルに使用され得る。経口投与のための液体製剤は、溶液、乳濁剤、水性または油性の懸濁液およびシロップの形態であり得る。あるいは、経口用製剤は、使用前に水または別の適切な液体媒体で再構成され得る乾燥粉末の形態であり得る。懸濁剤または乳化剤、非水性媒体(食用油を含む)、防腐剤および香味剤と着色剤などの追加の添加剤を液体製剤に加えることが可能である。
【0144】
非経口での剤形は、化合物を適切な液体媒体に溶かし、適切なバイアルまたはアンプルに充填および密封する前にその溶液を濾過滅菌することにより調製され得る。これらは、剤形を調製するための当技術分野ではよく知られる多くの適切な方法のほんの数例である。本明細書で言及されるもの以外の、適切な薬学的に許容可能な担体は、当技術分野で知られている。例えば、Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2000, Lippincott Williams & Wilkins, (Editors: Gennaro et al.)を参照。
【0145】
本明細書に提供される化合物は、経口および非経口の幅広い剤形で投与され得る。剤形が、有効成分として、本明細書で提供される化合物または本明細書で提供される化合物の薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物のどちらかを含み得ることは当業者には明らかであろう。
【0146】
いくつかの実施形態では、化合物1は医薬製剤の中にあるか、または、さらに薬学的に許容可能な担体を含む。医薬製剤は、経口、直腸、鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣または非経口(筋肉内、皮下および静脈内を含む)の投与に適したもの、または吸入、送気または経皮パッチによる投与に適した形態をしたものを含む。本明細書で提供される化合物は、従来のアジュバント、担体または希釈剤と共に医薬製剤およびその単位剤形に分類することができ、そしてそのような形態で、錠剤や充填カプセルなどの固体、または、溶液、懸濁液、乳濁液、エリキシル剤、ゲル、または同様物が充填されたカプセルなどの液体、つまりすべて経口での使用のための形態、あるいは直腸投与のための坐剤の形態、あるいは非経口使用(皮下使用を含む)のための無菌注射液の形態で使用され得る。有効成分はまた、例えばある組成物として注射によって投与されることが可能で、その組成物においては、生理食塩水、デキストロースまたは水が、薬学的に許容可能な適切なキャリアとして使用され得る。そのような医薬組成物およびその単位剤形は、追加の有効化合物または有効成分の有無にかかわらず、従来の比率で従来の構成成分を含むことができ、そのような単位剤形は、使用されるべき1日あたりの用量範囲に見合った有効成分の適切な有効量を含み得る。
【0147】
経口投与については、医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル、懸濁液または液体の形態をとることができる。医薬組成物は、好ましくは、特定量の有効成分を含む単位剤形にされる。そのような単位剤形の例は、カプセル、錠剤、粉末、顆粒または懸濁液であり、ラクトース、マンニトール、コーンスターチまたはジャガイモでんぷんなどの従来の添加剤;結晶のセルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;コーンスターチ、ジャガイモでんぷんまたはカルボキシルメチル・セルロース・ナトリウムなどの崩壊剤;および、タルクやステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、を伴う。
【0148】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載される少なくとも1つの既知の医薬品および薬学的に許容可能な担体と共に、本明細書に開示される化合物実施形態のいずれかに係る少なくとも1つの化合物を混合することを含む「併用療法」のための医薬組成物を製造する方法を含む。
【0149】
さらなる実施形態は、以下の実施例に開示される実施形態を含み、これらは決して限定として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0150】
実施例1-臨床試験1
【0151】
22週間にわたる無作為の二重盲検法のプラセボ対照研究が、最大9週間の用量タイトレーション期間で実施された。61の個体が、化合物1:プラセボが2:1になるよう無作為に抽出された。右心カテーテル法(RHC)測定は、研究に先立つ用量タイトレーション期間の研究初日の前、および22週目に行われた。以下の値が取得および記録された:肺動脈圧(PAP)(収縮期、拡張期、および平均)、心拍数(HR)、右心房圧(RAP)、肺毛細血管楔入圧(PCWP)、右心室圧(RVP)および心拍出量(CO)、肺血管抵抗(PVR)、動脈および混合静脈血酸素飽和度(FiO2)(該当する場合)。全身血管抵抗(SVR)は血圧測定結果から推定された。
【0152】
本研究のための主要有効性評価項目は:a)22週にわたる処置後の、PVRのベースラインからの変化、および、b)22週にわたる処置後の、6MWDのベースラインからの変化、である。化合物1は、0.01、0.02、0.03、0.04および0.10mgの用量強度のカプセルとして投与された。化合物1の開始用量は毎日0.01mgを1日2回であった。化合物1の用量は個体の耐容性に応じてタイトレーションがなされた。初回量が耐えられる場合(0.01mgを1日2回)、用量は週に1度、以下の方法で増加された:0.02mgを1日2回、0.03mgを1日2回、0.04mgを1日2回、0.06mgを1日2回、0.08mgを1日2回、0.1mgを1日2回、0.2mgを1日2回、そして0.3mgを1日2回。用量は、耐容性がある間、1日に可能な最大合計用量である0.6mg(0.3mgを1日2回)まで随意、段階的に増加された。用量が耐えられなかった場合、化合物1は随意、前の用量レベルに減じられた。0.01mgを1日2回という初回量が耐えられなかった場合、投与量は随意、0.01mgを1日に1回へと減じられた。
【0153】
化合物1は、偽薬と比較して、肺血管抵抗(PVR)のベースラインからの統計的に有意な変化によって、主要評価項目を達成した。化合物1は、さらに6分の歩行距離(6MWD)における数値的改善を実証した。研究で観察された有害事象は、PAHの管理のための他のプロスタサイクリン処置と一致していた。化合物1を与えられた個体の維持用量の分布は次のとおりであった:0.02mg(n=1)、0.03mg(n=1)、0.04mg(n=0)、0.06mg(n=3)、0.08mg(n=3)、0.12mg(n=5)、0.16mg(n=4)、0.2mg(n=6)、0.4mg(n=12)および0.6mg(n=5)。
【0154】
実施例2-臨床試験2
【0155】
ある無作為の二重盲検法のプラセボ対照研究が、重度のレイノーを患う個体において実施される。個体はタイトレーションスキームを使用して化合物1を投与される。化合物1はレイノーの処置および/または予防に有効であることが決定される。
【0156】
実施例3-臨床試験3
【0157】
レイノー現象を有する個体が、クロスオーバー研究において、化合物1または偽薬を無作為に与えられるであろう。個体は、1日に経験するレイノー現象発作の数と、各発作の持続時間を毎日記録する。個体は、レイノー重症度視覚アナログスコア(VAS)および/またはレイノーの状態スコア(RCS)視覚アナログスケール(VAS)を使用して評価されることが可能である。個体はまた、指先の血圧および/または毛細血管の直径について評価される。有害事象の頻度および重症度が測定される。データは研究中の複数回の訪問時に収集される。
【0158】
実施例4-臨床試験4
【0159】
指先の血流は、レイノー現象に苦しんでいる個体において、寒冷暴露試験中に測定される。測定結果は、a.)個体に化合物1が投与される第1の期間と、b.)同じ個体にプラセボが投与される第2の期間で比較される。個体は、第1と第2の期間が起こる順序について無作為に決定される。個体は、血圧、脈拍数、臨床検査室および血液評価における変化、室温での指先の血流の変化(例えば、レーザードップラー灌流イメージングで測定)、および/または低温暴露中の指先の血流の変化 (例えば、レーザードップラー灌流イメージングにより測定)について評価される。有害事象の頻度と重症度が測定される。
【0160】
実施例5-化合物1の調製。
【0161】
化合物1の調製は、国際公開第WO2009/117095として公開されている国際特許出願第PCT/US2009/001688(そこで化合物22と称される)に記載されており、その国際公開のすべての内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。代表的なプロセスは、2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸の調製のための実施例1.22および1.115;ナトリウム2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸塩の調製のための実施例1.106;および、ナトリウム2-(((1r,4r)-4-(((4-クロロフェニル)(フェニル)カルバモイルオキシ)メチル)シクロヘキシル)メトキシ)酢酸塩水和物の調製のための実施例1.107、を含む。化合物1の結晶形態も開示される。
【0162】
開示される方法の他の用途は、とりわけ本特許文書の再考察に基づいて、当業者に明らかになるであろう。