(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20230905BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230905BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20230905BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20230905BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20230905BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20230905BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20230905BHJP
H01M 50/595 20210101ALI20230905BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/13
H01M50/528
H01M50/534
H01M50/545
H01M50/586
H01M50/591 101
H01M50/595
(21)【出願番号】P 2020512259
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014635
(87)【国際公開番号】W WO2019194181
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018073788
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 夏彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 諭
(72)【発明者】
【氏名】出口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰右
(72)【発明者】
【氏名】上田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正信
【審査官】石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0106740(KR,A)
【文献】国際公開第2017/077698(WO,A1)
【文献】特開2013-254561(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111597(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046537(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-62
H01M10/05-0587
H01M50/50-598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極がセパレータを介して巻回された巻回型の電極体
と、前記電極体を収容する有底筒状の外装缶と、前記外装缶の開口を塞ぎ、正極端子として機能する封口体とを備える非水電解質二次電池であって、
前記電極体は、正極リードを有し、
前記正極リードは、
前記正極に接合される第1表面、及び前記第1表面と反対側の第2表面を含む金属製のリード基材と、
前記リード基材の前記第2表面において、少なくとも前記セパレータを介して前記負極と対向する範囲に形成された、無機化合物を主成分とする絶縁性のセラミック層と、
を有
し、
前記正極リードは、前記封口体側に位置する第1端部と、前記第1端部と反対側の第2端部とを含み、
前記セラミック層は、前記封口体との溶接部を避けて形成されると共に、前記リード基材の前記第2表面において、さらに前記第1端部に形成されている、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記封口体と、前記正極、前記負極、及び前記セパレータから構成される電極群との間に配置され、前記正極リードの挿通孔を有する上部絶縁板を備え、
前記セラミック層は、前記リード基材の前記第2表面において、前記第1端部、及び前記上部絶縁板よりも前記第2端部側のみに形成されている、請求項
1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記負極は、負極芯体と、当該芯体上に形成された負極合材層とを有し、
前記電極体の最外周面には、前記負極芯体が露出した芯体露出部が設けられ、
当該芯体露出部は、前記外装缶の内周面に当接している、請求項
1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記正極リードには、前記セラミック層を覆う絶縁テープが貼着されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池では、一般的に、正極の芯体露出部に正極リードが接続されている。正極リードの付け根部分は、セパレータを介して負極と対向するため、当該部分に導電性の異物が入り込むと、異物がセパレータを突き破って内部短絡が発生するおそれがある。従来、かかる内部短絡を防止するための手段として、正極リードに貼着される絶縁テープが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極リードに絶縁テープを貼着することで、上記内部短絡の抑制効果が期待される。しかし、電極体の正極リードが接続された部分は、一般的に極板間の圧力が高くなり易いので、当該部分に入り込んだ導電性の異物がセパレータ及び絶縁テープを突き破って内部短絡を発生させる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、正極及び負極がセパレータを介して巻回された巻回型の電極体を備える非水電解質二次電池であって、前記電極体は、正極リードを有し、前記正極リードは、前記正極に接合される第1表面、及び前記第1表面と反対側の第2表面を含む金属製のリード基材と、前記リード基材の前記第2表面において、少なくとも前記セパレータを介して前記負極と対向する範囲に形成された、無機化合物を主成分とする絶縁性のセラミック層とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様である非水電解質二次電池によれば、電極体の正極リードが接続された部分における内部短絡の発生を抑制できる。リード基材にセラミック層を形成することにより、例えば絶縁テープを用いた従来の電池よりも、内部短絡の抑制効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の一例である非水電解質二次電池の断面図である。
【
図2】実施形態の一例である電極体の斜視図である。
【
図3】実施形態の一例である上部絶縁板の平面図である。
【
図7】実施形態の一例である正極リード及びその近傍の構成を示す断面図である。
【
図8】実施形態の一例である正極リードを封口体に溶接する方法を説明するための図である。
【
図9】実施形態の他の一例である正極リード及びその近傍の構成を示す断面図である。
【
図10】実施形態の一例である正極の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態の一例について詳細に説明する。以下では、本開示に係る非水電解質二次電池の実施形態の一例として、円筒形状の電池ケース15を備えた円筒形電池を例示するが、電池は角形の電池ケースを備えた角形電池、金属層と樹脂層が積層したラミネートシートで構成される電池ケースを備えたラミネート電池等であってもよい。なお、本明細書では、説明の便宜上、電池ケース15の封口体17側を「上」、外装缶16の底部側を「下」として説明する。
【0009】
図1は実施形態の一例である非水電解質二次電池10の断面図、
図2は実施形態の一例である電極体14の斜視図である。
図1及び
図2に例示するように、非水電解質二次電池10は、電極体14と、非水電解質(図示せず)と、電池ケース15とを備える。電池ケース15は、電極体14及び非水電解質を収容する有底筒状の外装缶16と、外装缶16の開口を塞ぎ、正極端子として機能する封口体17とで構成される。また、非水電解質二次電池10は、外装缶16と封口体17との間に配置される樹脂製のガスケット28を備える。
【0010】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、およびこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩には、例えばLiPF6等のリチウム塩が使用される。
【0011】
電極体14は、正極11及び負極12がセパレータ13を介して巻回された巻回型の電極体であって、帯状の正極11と、帯状の負極12と、帯状の2枚のセパレータ13とを有する。正極11は、正極芯体30と、正極芯体30上に設けられた正極合材層31とを有する。負極12は、負極芯体40と、負極芯体40上に設けられた負極合材層41とを有する。負極12は、リチウムの析出を抑制するために、正極11よりも一回り大きな寸法で形成される。即ち、負極12は、正極11より長手方向及び短手方向(上下方向)に長く形成される。2枚のセパレータ13は、少なくとも正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、例えば正極11を挟むように配置される。
【0012】
電極体14は、正極11に接合された正極リード20と、負極12に接合された負極リード21とを有する。本実施形態では、正極リード20が正極11の長手方向中央部であって、電極体14の巻き始め側端及び巻き終り側端から離れた位置に設けられている。他方、負極リード21は電極体14の巻き始め側に位置する負極12の長手方向一端部に設けられている。なお、電極リードの配置は特に限定されず、例えば負極リード21は電極体14の巻き終わり側端部に設けられてもよい。
【0013】
非水電解質二次電池10は、封口体17と電極群との間に配置され、正極リード20の挿通孔18aを有する上部絶縁板18を備える。本明細書において、電極群とは、電極体14のうち、正極11、負極12、及びセパレータ13から構成される部分であって、正極リード20及び負極リード21を除く部分を意味する。また、非水電解質二次電池10は、外装缶16の底部内面と電極群との間に配置され、負極リード21の挿通孔19aを有する下部絶縁板19を備える。
【0014】
図1に示す例では、正極リード20が上部絶縁板18の挿通孔18aを通って封口体17側に延び、負極リード21が下部絶縁板19の挿通孔19aを通って外装缶16の底部内面側に延びている。正極リード20は封口体17の底板23の下面に溶接等で接続され、封口体17が正極端子となる。負極リード21は外装缶16の底部内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
【0015】
図3は、上部絶縁板18の平面図であって、正極リード20を一点鎖線で示す。
図1及び
図3に例示するように、上部絶縁板18は、正極リード20を通すための挿通孔18aを有する。挿通孔18aは、正極リード20を挿通可能な大きさで形成される。
図3では、平面視長方形状の挿通孔18aを示すが、挿通孔18aの平面視形状は特に限定されず、例えば半円形状であってもよい。また、上部絶縁板18は、挿通孔18aに加えて、ガス抜き用の孔18bを有することが好ましい。
図3に示す例では、挿通孔18aよりも小さな真円形状の孔18bが3つ形成されている。
【0016】
図1に例示するように、電極体14の最外周面には、負極12が配置され、かつ負極芯体40の表面が露出した芯体露出部42が設けられている。そして、芯体露出部42は外装缶16の内周面に当接している。芯体露出部42が負極端子である外装缶16の内周面に当接することで、負極12の長手方向の両端部と負極端子が電気的に接続され良好な集電性を確保できる。なお、芯体露出部42と外装缶16との接触により負極12と負極端子の電気的接続を確保できるため、負極リード21を設けない構成としてもよい。この場合、リードの厚み分、電極体14の体積を大きくでき、電池の高容量化を図ることができる。
【0017】
芯体露出部42は、電極体14の最外周面の一部に設けられてもよいが、好ましくは最外周面の全域に設けられる。例えば、負極12の巻き終わり端から電極体14の1周分以上の長さで負極芯体40の両面に負極合材層41が形成されていない部分が設けられる。一般的に、電極体14の最外周面には、巻き止めテープ(図示せず)が貼着される。巻き止めテープは、芯体露出部42と外装缶16の内面との接触を阻害しないように、例えば電極体の軸方向両端部に貼着される。
【0018】
外装缶16は、有底円筒形状の金属製容器である。外装缶16と封口体17との間にはガスケット28が設けられ、電池ケース15の内部空間が密閉される。外装缶16は、例えば側面部を外側からプレスして形成された、封口体17を支持する溝入部22を有する。溝入部22は、外装缶16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。また、外装缶16の上端部は、内側に折り曲げられ封口体17の周縁部に加締められている。
【0019】
封口体17は、電極体14側から順に、底板23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在している。電池の内圧が上昇すると、下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断することにより、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0020】
以下、電極体14の各構成要素について、特に正極11及び正極リード20について詳説する。
【0021】
[正極]
正極11は、上述の通り、正極芯体30と、正極芯体30上に設けられた正極合材層31とを有する。正極芯体30には、アルミニウム、アルミニウム合金など正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層31は、正極活物質、導電材、及び結着材を含み、正極芯体30の両面に設けられることが好ましい。正極合材層31の厚みは、正極芯体30の片側で30~100μmが好ましく、40~80μmがより好ましい。正極11は、例えば正極芯体30上に正極活物質、導電材、及び結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合材層31を正極芯体30の両面に形成することにより作製できる。
【0022】
正極活物質には、一般的にリチウム金属複合酸化物が用いられる。リチウム金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。好適なリチウム金属複合酸化物の一例は、Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含有するリチウム金属複合酸化物である。具体例としては、Ni、Co、Mnを含有するリチウム金属複合酸化物、Ni、Co、Alを含有するリチウム金属複合酸化物が挙げられる。なお、リチウム金属複合酸化物の粒子表面には、酸化タングステン、酸化アルミニウム、ランタノイド含有化合物等の無機物粒子などが固着していてもよい。
【0023】
正極合材層31に含まれる導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合材層31に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示できる。これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。
【0024】
図4は正極11の正面図、
図5は
図4中のAA線断面の一部を示す図、
図6は
図4中のBB線断面の一部を示す図である。
図7は、正極リード20及びその近傍の構成を示す断面図である。
図4~
図7に例示するように、正極11は、正極合材層31が存在せず正極芯体30の表面が露出した芯体露出部32を有する。正極リード20は、溶接等により芯体露出部32に接合される。芯体露出部32は、正極11の長手方向端部に形成されてもよいが、好ましくは正極11の長手方向中央部に形成される。この場合、正極芯体30の長手方向中央部に正極リード20が接合されるため、長手方向端部に正極リード20が接合される場合と比べて正極11の集電性が向上し、電池の高出力化に寄与する。
【0025】
芯体露出部32は、正極11の両面に設けられることが好ましい。各芯体露出部32は、正極11の厚み方向において互いに重なるように形成される。正極リード20は、一方の芯体露出部32に溶接されるが、もう一方の芯体露出部32が存在することで、正極リード20の溶接が容易になる。詳しくは後述するが、芯体露出部32は、正極合材スラリーの間欠塗布により形成されることが好ましい。
【0026】
芯体露出部32は、正極11の全幅にわたって設けられてもよいが、電池の高容量化を図るためには、正極11の幅方向一端側のみに設けられることが好ましい。芯体露出部32は、例えば正面視(背面視)矩形形状を有し、正極11の幅方向一端から全幅の50%以下の長さで設けられる。正極リード20は、一部が芯体露出部32上に位置し、残りの部分が正極11の幅方向一端から延出している。正極リード20の芯体露出部32上に位置する部分の長さ(幅方向に沿った長さ)は、例えば正極11の全幅の10~40%である。
【0027】
正極リード20には、後述のセラミック層20bを覆う絶縁テープ50が貼着されていてもよい。本実施形態では、絶縁テープ50が、セラミック層20bが形成された正極リード20の表面に貼着されると共に、芯体露出部32を覆うように当該露出部の周りに存在する正極合材層31上に貼着されている。絶縁テープ50は、正極11の両面にそれぞれ貼着され、正極リード20が溶接されない芯体露出部32も当該テープで覆われる。2枚の絶縁テープ50は、正極リード20と同様に、一部が正極11の幅方向一端から延出した状態で正極11に貼着され、延出した部分同士が互いに接着している。絶縁テープ50の厚みは、例えば20μm~70μmである。
【0028】
正極リード20は、金属製のリード基材20aと、無機化合物を主成分とする絶縁性のセラミック層20bとを有する。リード基材20aは、正極11に接合される第1表面S1、及び第1表面S1と反対側の第2表面S2を含む。正極リード20は、リード基材20aの第1表面S1が封口体17に接合されることが好ましい。セラミック層20bは、リード基材20aの第2表面S2において、少なくともセパレータ13を介して負極12と対向する範囲に形成される。
【0029】
正極リード20は、芯体露出部32上に位置する付け根部分、及び正極11の幅方向一端から延出した部分であって、付け根部分に近接する部分が、セパレータ13を介して負極12と対向している。このため、セラミック層20bは、リード基材20aの第2表面S2のうち、正極リード20の付け根部分及びその近傍の全域に形成されることが好ましい。この場合、正極リード20と負極12との間に導電性の異物が入り込みセパレータ13を突き破ったとしても、セラミック層20bがリード基材20aと負極12との電気的接続を防止する。
【0030】
リード基材20aを構成する金属材料は、特に限定されないが、好ましくはアルミニウム、又はアルミニウム合金である。リード基材20aによって、正極リード20の形状が決定される。リード基材20aは、一般的に一定の厚み、幅を有する帯状、或いは細長い薄板状に形成される。正極リード20は、封口体17側に位置する長手方向の第1端E1と、第1端E1と反対側に位置する長手方向の第2端E2とを含む。リード基材20aの厚みは、例えば50~150μmであり、好ましくは70~130μmである。リード基材20aの厚みは、一般的に正極合材層31の厚みよりも大きい。
【0031】
セラミック層20bは、封口体17との溶接部29を避けて形成されている。溶接部29にセラミック層20bが存在すると、溶接不良が発生する、セラミック層20bが脱落又は損傷するといった不具合が想定されるため、好ましくない。本実施形態では、封口体17の底板23にリード基材20aが溶接される。底板23に対するリード基材20aの溶接方法、また芯体露出部32に対するリード基材20aの溶接方法は、特に限定されないが、後述のレーザ溶接が好適である。本明細書において、溶接部29には、リード基材20aの第1表面S1と底板23とが溶着する界面だけでなく、第2表面S2のレーザ光が照射される部分も含まれる。
【0032】
図8は、正極リード20を封口体17に溶接する方法を説明するための図である。
図8に例示するように、電極体14を外装缶16に収容した状態で、封口体17の底板23に正極リード20を溶接する。具体的には、電極群から延出した正極リード20の第1表面S1を封口体17の底板23に当接させた状態で、リード基材20aの第2表面S2にレーザ光αを照射する。レーザ光αは、第2表面S2のセラミック層20bが形成されていない部分に照射することが好ましい。このとき、レーザ光αの照射部でリード基材20aが溶融して底板23に溶着し、レーザ光αの照射部に溶接部29が形成される。
【0033】
セラミック層20bは、リード基材20aの第2表面S2において、さらに第1端E1及びその近傍である第1端部に形成されることが好ましい。正極リード20は、例えばリードの長尺体を所定の長さにカットして製造されため、第1端E1にはカット時に突起(ばり)が発生し易い。正極リード20の第1端部にセラミック層20bを形成することで、ばりに起因する内部短絡の発生を抑制できる。第2表面S2の第1端部において、セラミック層20bは、例えば第1端E1から3mm以内の範囲に形成される。
【0034】
図6に示す例では、セラミック層20bが、リード基材20aの第2表面S2において、第1端部、及び上部絶縁板18よりも第2端部(第2端E2及びその近傍)側のみに形成されている。セラミック層20bは、上部絶縁板18よりも電極群側において、セパレータ13を介して負極12と対向する範囲に形成される。上部絶縁板18にかからない範囲にセラミック層20bを形成することで、例えば上部絶縁板18の挿通孔18aの縁部にセラミック層20bが接触してセラミック層20bが脱落することを防止できる。
【0035】
一方、
図9に例示するように、上部絶縁板18の挿通孔18aに通される部分を含む、リード基材20aの第2表面S2の広範囲にセラミック層20bが形成されていてもよい。但し、この場合も、封口体17との溶接部29を避けてセラミック層20bを形成することが好ましい。換言すると、正極リード20には、溶接部29に対応する範囲に、第2表面S2の露出部が設けられる。なお、セラミック層20bは、リード基材20aの第1表面S1及び当該基材の厚み方向に沿った側面には形成されないことが好ましい。
【0036】
セラミック層20bは、上述の通り、無機化合物を主成分とする絶縁層である。ここで、主成分とは、セラミック層20bを構成する成分(材料)のうち最も配合量が多い成分を意味する。セラミック層20bは、絶縁性の無機化合物のみで構成されてもよいが、好ましくは絶縁性の無機化合物と、当該化合物の粒子同士を結着する結着材とを含む。ここで、絶縁性の無機化合物とは、電圧印加式の抵抗計により測定される体積抵抗率が1012Ω・cm以上である化合物を意味する。セラミック層20bは、体積抵抗率が1012Ω・cm未満の材料を含まないことが好ましい。
【0037】
セラミック層20bに含まれる無機化合物は、例えば金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などである。無機化合物の平均粒径は、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.1~1μmである。ここで、平均粒径とは、光散乱法により測定される体積平均粒径を意味する。セラミック層20bの厚みは、特に限定されないが、好ましくは1~30μm、より好ましくは1~10μm、特に好ましくは1~5μmである。
【0038】
上記金属酸化物の例としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、ベーマイト(Al2O3H2O又はAlOOH)、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。上記金属窒化物の例としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン等が挙げられる。上記金属炭化物の例としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素等が挙げられる。上記金属硫化物の例としては、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0039】
また、無機化合物は、ゼオライト(M2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2O、Mは金属元素、x≧2、y≧0)等の多孔質アルミノケイ酸塩、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)等の層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の粒子であってもよい。中でも、絶縁性、耐熱性等の観点から、酸化アルミニウム、ベーマイト、タルク、酸化チタン、酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種が好適である。
【0040】
セラミック層20bに含まれる結着材には、PVdF等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等の正極合材層31に適用される樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等の負極合材層41に適用される樹脂などを用いることができる。中でも、フッ素樹脂が好適である。結着材の含有量は、例えば無機化合物の質量に対して1~10質量%、又は1~5質量%である。
【0041】
図10は、正極11の製造方法を説明するための図である。
図10に例示するように、正極11は、長尺状正極芯体30zの両面に正極合材層31a,31bを形成した後、長尺状正極芯体30zを切断予定部X,Yで順にカットすることにより製造される。正極合材層31a,31bは正極合材層31となり、長尺状正極芯体30zは正極芯体30となる。
図10では、正極11の3つ分の幅に相当する幅を有する長尺状正極芯体30zを例示しているが、さらに幅広の長尺状正極芯体を用いてもよい。
【0042】
図10に示す例では、長尺状正極芯体30zの両面に正極合材スラリーを間欠塗布することで、芯体露出部32z(芯体露出部32となる部分)を残して正極合材層31aを形成すると共に、正極合材スラリーを連続的に塗布して正極合材層31bを形成する。なお、正極合材スラリーには同じものを用いることができる。正極合材層31a,31bは、互いに異なる吐出ノズルを用いて形成される。正極合材層31a,31bは、同時に形成されてもよく、一方が先に形成されてもよい。なお、長尺状正極芯体30zの両面に正極合材スラリーを塗布後、塗膜を乾燥、圧縮してから、当該芯体を切断予定部Xでカットすることが好ましい。
【0043】
[負極]
負極12は、上述の通り、負極芯体40と、負極芯体40上に形成された負極合材層41とを有する。負極芯体40には、銅などの負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層41は、負極活物質、及び結着材を含み、負極芯体40の両面に形成されることが好ましい。負極合材層41の厚みは、負極芯体40の片側で30~100μmが好ましく、40~80μmがより好ましい。負極12は、負極芯体40上に負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合材層41を負極芯体40の両面に形成することにより作製できる。
【0044】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、Si、Sn等のLiと合金化する金属、又はSi、Sn等を含む金属化合物などを用いることができる。当該金属化合物の例としては、SiOx(0.5≦x≦1.6)、又はLi2ySiO(2+y)(0<y<2)で表されるケイ素化合物等が挙げられる。また、負極合材層41は、負極活物質としてリチウムチタン複合酸化物を含んでいてもよい。リチウムチタン複合酸化物を用いる場合、負極合材層41にはカーボンブラック等の導電材を添加することが好ましい。
【0045】
負極合材層41に含まれる結着材には、正極11の場合と同様に、PTFE、PVdF等の含フッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどを用いてもよいが、好ましくはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を用いる。また、負極合材層41には、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)などが含まれていてもよい。
【0046】
負極リード21は、正極リード20と同様に、負極12の芯体露出部に溶接される。負極12には、負極リード21を覆う絶縁テープが貼着されていてもよい。負極リード21は、例えばニッケル、又はニッケル合金で構成される。なお、負極リード21はセラミック層を有していないが、リード表面にセラミック層が形成されていてもよい。
【0047】
[セパレータ]
セパレータ13には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロースなどが好適である。セパレータ13は、単層構造であってもよく、積層構造を有していてもよい。また、セパレータ13の表面には、アラミド樹脂等の耐熱性の高い樹脂層が形成されていてもよい。
【0048】
セパレータ13と正極11及び負極12の少なくとも一方との界面には、無機物のフィラーを含むフィラー層が形成されていてもよい。無機物のフィラーとしては、例えばTi、Al、Si、Mg等の金属を含有する酸化物、リン酸化合物などが挙げられる。フィラー層は、当該フィラーを含有するスラリーを正極11、負極12、又はセパレータ13の表面に塗布して形成することができる。
【0049】
以上のように、上記構成を備えた非水電解質二次電池10によれば、電極体14の正極リード20が接続された部分における内部短絡の発生を抑制できる。セラミック層20b付きの正極リード20を用いることで、例えば絶縁テープのみを用いた従来の電池よりも、内部短絡の抑制効果が向上する。
【符号の説明】
【0050】
10 非水電解質二次電池、11 正極、12 負極、13 セパレータ、14 電極体、15 電池ケース、16 外装缶、17 封口体、18 上部絶縁板、19 下部絶縁板、18a,19a 挿通孔、18b 孔、20 正極リード、20a リード基材、20b セラミック層、21 負極リード、22 溝入部、23 底板、24 下弁体、25 絶縁部材、26 上弁体、27 キャップ、28 ガスケット、29 溶接部、30 正極芯体、31 正極合材層、32,42 芯体露出部、40 負極芯体、41 負極合材層、50 絶縁テープ、E1 第1端、E2 第2端、S1 第1表面、S2 第2表面