(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20230905BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20230905BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20230905BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20230905BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20230905BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20230905BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20230905BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20230905BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/058
H01M4/134
H01M4/70 A
H01G11/84
H01G11/06
H01G11/50
H01G11/70
(21)【出願番号】P 2020514434
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2019016626
(87)【国際公開番号】W WO2019203301
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018080711
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018163231
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】307037543
【氏名又は名称】武蔵エナジーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 広基
(72)【発明者】
【氏名】相田 一成
(72)【発明者】
【氏名】宇高 友広
(72)【発明者】
【氏名】直井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】小島 健治
(72)【発明者】
【氏名】山本 法寛
(72)【発明者】
【氏名】安東 信雄
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126686(WO,A1)
【文献】特開2015-072809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/05-10/587
H01M50/00-50/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、及び負極を備える電極ユニットと、電解質と、
を備え、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備え、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層とを備え、
前記負極にリチウムがドープされたリチウムイオン二次電池であって、
以下の式(4)で表される前記負極集電体の開口率は0%以上0.1%以下であり、
前記正極活物質層の密度は、2g/cm
3以上4g/cm
3以下であり、
以下の式(1)で定義される放電容量比率Xが0より大きく0.9以下であ
り、
前記負極活物質層の目付量が5g/m
2
以上500g/m
2
以下であり、
前記負極活物質層の厚みが3μm以上300μm以下であり、
前記負極活物質層へのリチウムのドープ割合が、式(1)におけるC2に対して20%以上95%以下であるリチウムイオン二次電池。
式(1) X=C1/C2
前記式(1)におけるC1は、セル電圧2.0Vから4.3Vの間で充放電した際のセル放電容量である。前記式(1)におけるC2は、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で充放電した際の前記負極の放電容量である。
式(4) 前記負極集電体の開口率=〔1-(前記負極集電体の質量/前記負極集電体の真比重)/(前記負極集電体の見かけ体積)〕×100
前記式(4)において、前記負極集電体の真比重とは、前記負極集電体を構成する材料の単位体積当たりの質量である。前記負極集電体の見かけ体積とは、前記負極集電体に孔が開いていないと仮定した場合の前記負極集電体の体積である。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池であって、
以下の式(2)で定義される放電容量比率Yが0.7以上1以下であるリチウムイオン二次電池。
式(2) Y=C3/C2
前記式(2)におけるC2は、式(1)における前記負極の放電容量C2と同一である。前記式(2)におけるC3は、セル電圧4.3Vで定電流-定電圧充電を行ったセルから取り出した負極を放電させたときの放電容量C3である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池であって、
前記負極活物質層がシリコン系材料を含み、
前記負極活物質層における前記シリコン系材料の含有率が5質量%以上99質量%以下であるリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2018年4月19日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2018-80711号及び2018年8月31日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2018-163231号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-80711号及び日本国特許出願第2018-163231号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子機器の小型化・軽量化は目覚ましい。電子機器の小型化・軽量化に伴い、電子機器の駆動用電源として用いられる電池に対しても、小型化・軽量化の要求が一層高まっている。
【0004】
電池に対する小型化・軽量化の要求を満足するために、非水電解質二次電池が開発されている。非水電解質二次電池として、例えば、リチウムイオン二次電池等が挙げられる。また、高エネルギー密度特性及び高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが知られている。
【0005】
このような電池やキャパシタにおいては、様々な目的のために、アルカリ金属を電極活物質に予めドープするプロセスが採用されている。アルカリ金属を電極活物質に予めドープするプロセスはプレドープと呼ばれている。
【0006】
例えば、リチウムイオンキャパシタでは、負極電位を下げ、エネルギー密度を高めることを目的としてリチウムのプレドープが行われる。この場合のプレドープの方法は、主に、貫通孔を有する集電体を利用してセル内で負極活物質にプレドープを行う方法である(例えば特許文献1参照)。
【0007】
また、リチウムイオン二次電池では、負極の不可逆容量を低減させることを目的としてプレドープが行われる。この場合のプレドープの方法として、前記方法の他、電池を組み立てる前に負極活物質にプレドープを行う方法が知られている(例えば特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-67105号公報
【文献】特開平7-235330号公報
【文献】特開平9-293499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2~4に記載のリチウムイオン二次電池には、サイクル特性が悪いという課題があった。また、一般的に、サイクル特性と、エネルギー密度とはトレードオフの関係にあるため、両者を向上させることは困難であった。
【0010】
本開示の一局面では、サイクル特性が良好であり、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、及びそれらの製造方法を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一局面は、正極、及び負極を備える電極ユニットと、電解質と、を備え、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備え、前記負極にリチウムがドープされたリチウムイオン二次電池であって、前記負極集電体の開口率は0%以上0.1%以下であり、以下の式(1)で定義される放電容量比率Xが0より大きく0.9以下であるリチウムイオン二次電池である。
【0012】
式(1) X=C1/C2
前記式(1)におけるC1は、セル電圧2.0Vから4.3Vの間で充放電した際のセル放電容量である。前記式(1)におけるC2は、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で充放電した際の前記負極の放電容量である。セル電圧とは、正極と負極との電位差を示すものである。
【0013】
本開示の一局面であるリチウムイオン二次電池は、サイクル特性が良好であり、エネルギー密度が高い。
【0014】
本開示の別の局面は、電極セルを備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備える負極にリチウムをドープし、リチウムをドープされた前記負極と正極とを積層して前記電極セルを形成し、前記負極集電体の開口率は0%以上0.1%以下であり、以下の式(1)で定義される放電容量比率Xが0より大きく0.9以下であるリチウムイオン二次電池の製造方法である。
【0015】
式(1) X=C1/C2
前記式(1)におけるC1は、セル電圧2.0Vから4.3Vの間で充放電した際のセル放電容量である。前記式(1)におけるC2は、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で充放電した際の前記負極の放電容量である。C1及びC2の単位はmAhまたはAhである。
【0016】
本開示の別の局面であるリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、サイクル特性が良好であり、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池を製造できる。
【0017】
本開示の別の局面は、正極、及び負極を備える電極ユニットと、電解質と、を備え、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備え、前記負極にリチウムがドープされたリチウムイオンキャパシタであって、前記負極集電体の開口率は0%以上0.1%以下であり、以下の式(3)で定義される放電容量比率Xが0.05以上0.2以下であるリチウムイオンキャパシタである。
【0018】
式(3) X=C1/C2
前記式(3)におけるC1は、セル電圧2.2Vから3.8Vの間で充放電した際のセル放電容量である。前記式(3)におけるC2は、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で充放電した際の負極の放電容量である。C1及びC2の単位はmAhまたはAhである。
【0019】
本開示の別の局面であるリチウムイオンキャパシタは、サイクル特性が良好であり、エネルギー密度が高い。
【0020】
本開示の別の局面は、負極、及び、前記負極とは異なる電極を備える電極ユニットと、電解質と、を備え、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備えるリチウムイオンキャパシタの製造方法であって、前記負極にリチウムをドープし、リチウムをドープされた前記負極と、前記負極とは異なる電極とを積層して前記電極ユニットを形成し、前記負極集電体の開口率は0%以上0.1%以下であり、以下の式(3)で定義される放電容量比率Xが0.005以上0.2以下であるリチウムイオンキャパシタの製造方法である。
【0021】
式(3) X=C1/C2
前記式(3)におけるC1は、セル電圧2.2Vから3.8Vの間で充放電した際のセル放電容量である。前記式(3)におけるC2は、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で充放電した際の負極の放電容量である。C1及びC2の単位はmAhまたはAhである。
【0022】
本開示の別の局面であるリチウムイオンキャパシタの製造方法によれば、サイクル特性が良好であり、エネルギー密度が高いリチウムイオンキャパシタを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】
図2Aは、帯状の電極の一部及び帯状のプレドープされた蓄電デバイス用負極の一部の構成を表す平面図であり、
図2Bは、
図2AにおけるIIB-IIB断面での断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…電極製造装置、3、5…電解液槽、7…洗浄槽、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45…搬送ローラ、47…供給ロール、49…巻取ロール、51…対極ユニット、53…多孔質絶縁部材、55…支持台、57…循環濾過ユニット、61…直流電源、63…ブロア、67、68…支持棒、69…仕切り板、70…支持棒、71…空間、73…電極、75…蓄電デバイス用負極、81…フィルタ、83…ポンプ、85…配管、93…負極集電体、95…負極活物質層
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
1.蓄電デバイス
(1-1)蓄電デバイスの全体構成
本開示の蓄電デバイスは、電極ユニットと、電解質とを備える。電極ユニットは、正極、及び負極を備える。負極は、負極集電体と、負極活物質層とを備える。負極活物質層は、負極集電体の表面に形成されている。負極には、リチウムがドープされている。
【0027】
本明細書において、「正極」とは、放電の際に電流が流出し、充電の際に電流が流入する側の極を意味する。本明細書において、「負極」とは、放電の際に電流が流入し、充電の際に電流が流出する側の極を意味する。
【0028】
本明細書において、「リチウムがドープされた」とは、リチウムが、金属、イオン、化合物等の各種の状態で吸蔵、インターカレーション、吸着、担持、合金化、又は挿入された状態を意味する。「ドープ」として、例えば、正極活物質にリチウム及びアニオンの少なくとも一方が入る現象、及び、負極活物質にリチウムイオンが入る現象等が挙げられる。「脱ドープ」とは、脱離、放出を意味する。「脱ドープ」として、例えば、正極活物質からリチウムイオン又はアニオンが脱離する現象、及び、負極活物質からリチウムイオンが脱離する現象等が挙げられる。
【0029】
負極にリチウムを予めドープする方法として、例えば、電極製造装置により、負極とリチウム極とを電気的に接続することで、リチウムをドープする方法が挙げられる。リチウム極は、金属リチウム等を含む。
【0030】
本開示の蓄電デバイスは、例えば、以下のように製造できる。正極集電体の表面に正極活物質層を形成して正極を製造する。負極集電体の表面に負極活物質層を形成して負極を製造する。負極にリチウムをドープする。負極にリチウムをドープするために、例えば、ドーピングユニットを使用することができる。ドーピングユニットは、例えば、ドーピング槽と、搬送ユニットと、対極ユニットと、接続ユニットと、多孔質絶縁部材とを備える。
【0031】
ドーピング槽は、リチウムイオンを含む溶液を収容する。搬送ユニットは、ドーピング槽内を通過する経路に沿って、電極を搬送する。対極ユニットは、ドーピング槽に収容される。接続ユニットは、電極と対極ユニットとを電気的に接続する。多孔質絶縁部材は、電極と対極ユニットとの間に配置され、電極と非接触である。
【0032】
次に、正極、第1のセパレータ、負極、及び第2のセパレータを順次積層し、積層体を形成する。積層体は、例えば、正極、第1のセパレータ、負極、及び第2のセパレータを含む単位を3単位以上積層したものである。積層体の形態は、例えば、板状、シート状、捲回された形態等である。積層体は電極ユニットに対応する。
【0033】
次に、電極ユニットを外装容器に封入する。外装容器の形態は、例えば、角型、円筒型、ラミネート状等である。外装容器は、フィルムであってもよいし、缶であってもよい。その後、外装容器に電解液を充填する。以上の工程により、蓄電デバイスが完成する。
【0034】
リチウムイオン二次電池の場合、負極活物質層へのリチウムのドープ割合は、エネルギー密度およびサイクル特性の両方をバランス良く向上するためには、負極の放電容量C2に対して5%以上95%以下であることが好ましく、15%以上90%以下であることがより好ましく、25%以上80%以下であることがさらに好ましく、25%以上75%以下であることが特に好ましい。負極活物質層へのリチウムのドープ割合が負極の放電容量C2に対して5%以上95%以下であることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が良好であり、エネルギー密度が高い。負極活物質層へのリチウムのドープ割合とは、負極の放電容量C2に対する、負極活物質層へのリチウムのドープ量の比率である。負極活物質層へのリチウムのドープ量とは、リチウムのドープに用いた電流の容量を負極活物質の質量で除した値である。負極活物質層へのリチウムのドープ量の単位はmAh/gである。
【0035】
リチウムイオンキャパシタの場合、負極活物質層へのリチウムのドープ割合は、負極の放電容量C2の30%以上95%以下であることが好ましい。この場合、負極容量及びサイクル耐久性はともに向上する。負極の放電容量C2とは、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で負極を充放電した際の負極の放電容量である。
【0036】
負極の放電容量C2とは、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で負極を充放電した際の負極の放電容量である。
【0037】
本開示の蓄電デバイスは、例えば、特開2004-266091号公報等に記載されている蓄電デバイスと基本的に同様の構成を備えることができる。
【0038】
(1-2)蓄電デバイスの具体例
本開示の蓄電デバイスの具体例として、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池等が挙げられる。本明細書において、リチウムイオン二次電池とは、正極及び負極が非分極性電極である、リチウムイオンを含有する蓄電デバイスを意味する。本明細書において、リチウムイオンキャパシタとは、正極が分極性電極であり、負極が非分極性電極である、リチウムイオンを含有する蓄電デバイスを意味する。
【0039】
(1-3)集電体
本明細書において「集電体」とは、正極集電体と負極集電体との両方を意味する。正極は、電気を受配電する正極集電体を備える。負極は、電気を受配電する負極集電体を備える。
【0040】
(1-4)正極集電体
正極集電体の材質として、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等が挙げられる。正極集電体の材質として、アルミニウムが好ましい。正極集電体の厚みは特に限定されないが、1μm以上50μm以下の範囲が好ましく、5μm以上40μm以下の範囲がより好ましく、10μm以上40μm以下の範囲が特に好ましい。
【0041】
正極集電体における開口率(以下では正極集電体開口率とする)は、0%以上0.1%以下が好ましく、0%がより好ましい。ここで、正極集電体開口率は、下記式(4)により求めることができる。
【0042】
式(4) 正極集電体開口率(%)=〔1-(正極集電体の質量/正極集電体の真比重)/(正極集電体の見かけ体積)〕×100
前記式(4)において、「正極集電体の真比重」とは、孔が開いていない正極集電体の単位体積当たりの質量であり、正極集電体を構成する材料の単位体積当たりの質量である。「正極集電体の見かけ体積」とは、正極集電体に孔が開いていないと仮定した場合の正極集電体の体積である。「正極集電体の見かけ体積」は、正極集電体の縦寸法、横寸法及び厚み寸法をそれぞれ測定し、それらの測定値に基づいて算出される体積である。正極集電体開口率が0%以上0.1%以下であることにより、正極集電体への正極活物質層の塗工が容易になる。
【0043】
(1-5)正極活物質
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、少なくとも1種のアニオンを可逆的にドープ及び脱ドープ可能な物質が用いられる。アニオンとして、例えば、リチウム、テトラフルオロボレート等が挙げられる。正極活物質として、例えば、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、マンガン酸化物、バナジウム酸化物等の遷移金属酸化物;硫黄単体、金属硫化物等の硫黄系活物質が挙げられる。正極活物質、及び負極活物質のいずれにおいても、単一の物質から成るものであってもよいし、2種以上の物質を混合して成るものであってもよいコバルト酸リチウムの比表面積は、0.1m2 /g以上30m2 /g以下であることが好ましい。
【0044】
リチウムイオンキャパシタの正極材料としては、活性炭、ポリアセン系有機半導等の比表面積の大きな材料が好ましい。
【0045】
活性炭の形態は、例えば、粉末である。また、活性炭の体積平均径(D50)は、活性炭の充填密度の観点から、3μm以上30μm以下であることが好ましい。活性炭の比表面積及び体積平均径(D50)が上記の範囲内にある場合、蓄電デバイスのエネルギー密度がさらに向上する。ここで、体積平均径(D50)の値は、レーザー回折・散乱法により求められる値である。活性炭の比表面積は、1900m2 /g以上3000m2 /g以下であることfが好ましく、1950m2 /g以上2800m2 /g以下であることがさらに好ましい。
【0046】
ポリアセン系有機半導体は、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物である。ポリアセン系有機半導体は、ポリアセン系骨格構造を有する。ポリアセン系骨格構造において、水素原子及び炭素原子の原子数比は0.05以上0.50以下である。水素原子及び炭素原子の原子数比とは、水素原子の数を炭素原子の数で除した値である。
【0047】
(1-6)正極活物質層
正極活物質層は、正極集電体に、正極活物質を付着させることにより形成される。正極活物質を付着させる方法として、例えば、塗布、印刷、射出、噴霧、蒸着又は圧着等が挙げられる。
【0048】
正極活物質層の厚みは、10μm以上250μm以下であることが好ましく、25μm以上200μm以下であることがより好ましく、50μm以上280μm以下であることが特に好ましい。
【0049】
正極の両面に正極活物質層が形成されている場合、正極活物質層の厚みとは、正極の両面に形成された正極活物質層の合計の厚みを意味する。正極の片面のみに正極活物質層が形成されている場合、正極活物質層の厚みとは、正極の片面に形成された正極活物質層の厚みを意味する。正極活物質層の厚みが上記範囲内である場合、正極容量を大きくし、抵抗を小さくすることができる。
【0050】
正極活物質層の密度は、0.1g/cm3以上5g/cm3以下であることが好ましく、1g/cm3以上4.5g/cm3以下であることがより好ましく、2g/cm3以上4g/cm3以下であることが特に好ましい。正極活物質層の密度が上記の範囲内である場合、蓄電デバイスのエネルギー密度が大きくなり、蓄電デバイスのサイクル特性が向上する。
【0051】
正極活物質層の密度は、以下の方法で測定できる。蓄電デバイスを解体することによって正極を得る。得られた正極をジエチルカーボネートで洗浄処理し、100℃で真空乾燥する。正極活物質層の質量及び正極活物質の外形体積を測定する。正極活物質層の質量を、当該正極活物質層の外形体積によって除することによって、正極活物質層の密度を求める。ここで、「正極活物質層の外形体積」とは、正極活物質層の縦寸法、横寸法及び厚み寸法をそれぞれ測定し、それらの測定値に基づいて算出される体積である。
【0052】
なお、正極活物質層の厚みと密度を上記範囲に設定する方法として、正極活物質層に対し、ロールプレス等を行う方法が挙げられる。なお、ロールプレスを行う場合、上記正極活物質層の厚みと密度は、それぞれロールプレスした後の厚みと密度である。ロールプレスの条件は特に限定されるものではないが、通常、ロール温度は10℃以上50℃以下であり、線圧力は0.1t/c以上10t/cm以下、送り速度は0.01m/分以上10m/分以下である。
【0053】
正極活物質層の目付量は、10g/m2以上1000g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以上800/m2以下であることがさらに好ましい。正極の両面に正極活物質層が形成されている場合、正極活物質層の目付量とは、正極の両面に形成された正極活物質層の合計の目付量を意味する。正極の片面のみに正極活物質層が形成されている場合、正極活物質層の目付量とは、正極の片面に形成された正極活物質層の目付量を意味する。
【0054】
正極活物質層の目付量が上記範囲内である場合、蓄電デバイスのエネルギー密度が大きくなり、蓄電デバイスのサイクル特性が向上する。
【0055】
正極活物質層の目付量は、以下の方法で測定できる。蓄電デバイスを解体することによって正極を得る。得られた正極をジエチルカーボネートで洗浄処理し、100℃で真空乾燥する。正極から、所定の面積を有する測定サンプルを打ち抜いて質量を測定する。その後、測定サンプルにおいて、正極活物質層を正極集電体から剥離し、残った正極集電体の質量を測定する。測定サンプルの質量から、残った正極集電体の質量を差し引いて正極活物質層の質量を算出する。正極活物質層の質量を、測定サンプルの面積で除することによって、正極活物質層の目付量を算出する。
【0056】
(1-7)負極集電体
負極集電体として、ステンレス鋼、銅、ニッケル等を用いることができる。負極集電体の厚みは特に限定されない。負極集電体の厚みは、通常、1μm以上50μm以下であり、5μm以上20μm以下であることが特に好ましい。
【0057】
負極集電体の開口率(以下では負極集電体開口率とする)は、0%以上0.1%以下である。負極集電体開口率は、0%以上0.05%以下であることが好ましく、0%であることがさらに好ましい。負極集電体が貫通孔を有さない場合、負極集電体開口率は0%となる。ここで、負極集電体開口率は、下記式(4)により求めることができる。
【0058】
式(4) 負極集電体開口率(%)=〔1-(負極集電体の質量/負極集電体の真比重)/(負極集電体の見かけ体積)〕×100
前記式(4)において、「負極集電体の真比重」とは、孔が開いていない負極集電体の単位体積当たりの質量であり、負極集電体を構成する材料の単位体積当たりの質量である。「負極集電体の見かけ体積」とは、負極集電体に孔が開いていないと仮定した場合の負極集電体の体積である。「負極集電体の見かけ体積」は、負極集電体の縦寸法、横寸法及び厚み寸法をそれぞれ測定し、それらの測定値に基づいて算出される体積である。
【0059】
負極集電体開口率の上限は、0.05%であることが好ましく、0%であることが特に好ましい。負極集電体開口率が上記の範囲内である場合、負極集電体の厚みが小さくても、負極集電帯の電極強度を維持することができる。その結果、電極及びセル製造時における負極集電体の破断を抑制することができる。さらに、負極集電体開口率が上記の範囲内である場合、負極の抵抗を低減することができる。
【0060】
(1-8)負極活物質
リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、リチウムを可逆的にドープ及び脱ドープ可能である物質を使用できる。負極活物質として、例えば、シリコン系材料、炭素系材料、シリコン-炭素系複合化材料等が挙げられる。シリコン系材料として、例えば、Si、SiO、SiOC等が挙げられる。炭素系材料として、例えば、黒鉛系粒子等が挙げられる。黒鉛系粒子として、例えば、黒鉛系複合粒子、ポリアセン系有機半導体(PAS)等が挙げられる。シリコン-炭素系複合化材料としては、シリコン系材料に炭素系材料を被覆したもの等が挙げられる。また、シリコン-炭素系複合化材におけるシリコンの含有率は、5質量%以上99質量%以下であることが好ましく、20質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
シリコン系材料としては、例えばケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素合金などを挙げることができるほか、特開2004-185810号公報に記載されたケイ素材料を使用することができる。上記ケイ素酸化物としては、組成式SiOx(0<x<2、好ましくは0.1≦x≦1)で表されるケイ素酸化物が好ましい。上記ケイ素合金としては、ケイ素と、チタン、ジルコニウム、ニッケル、銅、鉄及びモリブデンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属との合金が好ましい。これらの遷移金属のケイ化物は、高い電子伝導度を有し、かつ、高い強度を有することから好ましく用いられる。また、活物質がこれらの遷移金属を含むことにより、活物質の表面に存在する遷移金属が酸化されて表面に水酸基を有する酸化物となるから、バインダーとの結着力がより良好になる点でも好ましい。ケイ素合金としては、ケイ素-ニッケル合金またはケイ素-チタン合金を使用することがより好ましく、ケイ素-チタン合金を使用することが特に好ましい。ケイ素合金におけるケイ素の含有割合は、該合金中の金属元素の全部に対して10モル%以上とすることが好ましく、20~70モル%とすることがより好ましい。ケイ素原子を含む活物質は、単結晶、多結晶及び非晶質のいずれであってもよい。
【0062】
黒鉛系複合粒子は、芯粒子と、芯粒子の表面を被覆する黒鉛化物質とを備える。芯粒子として、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素、天然黒鉛等が挙げられる。黒鉛化物質として、例えば、タール、ピッチ由来の黒鉛化物質等が挙げられる。
【0063】
黒鉛系粒子の粒子径分布の積算値が50%に相当する粒子径である体積平均径(D50)は、1.0μm以上35μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましい。黒鉛系粒子の体積平均径(D50)が1.0μm以上である場合、黒鉛系粒子の製造が容易である。また、黒鉛系粒子の体積平均径(D50)が1.0μm以上である場合、充電時にガスが発生し難い。その結果、蓄電デバイスの耐久性が向上する。黒鉛系粒子の体積平均径(D50)は、レーザー回折・散乱法により求められる値である。
【0064】
ポリアセン系有機半導体は、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物である。ポリアセン系有機半導体は、ポリアセン系骨格構造を有する。ポリアセン系骨格構造において、水素原子及び炭素原子の原子数比は0.05以上0.50以下である。水素原子及び炭素原子の原子数比とは、水素原子の数を炭素原子の数で除した値である。
【0065】
シリコン-炭素系複合化材料としては、シリコン系材料と炭素系材料が複合化されたものである。シリコン-炭素系複合化材料としては、例えば、上述したシリコン系材料に上述した炭素系材料を被覆したもの等が挙げられる。
【0066】
上記芳香族系縮合ポリマーとは、芳香族炭化水素化合物とアルデヒド類との縮合物である。芳香族炭化水素化合物として、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。アルデヒド類として、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。
【0067】
負極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上200m2/g以下であることが好ましく、0.5m2/g以上50m2/g以下であることがより好ましい。負極活物質の比表面積が0.1m2/g以上である場合、得られる蓄電デバイスの抵抗が低くなる。負極活物質の比表面積が200m2/g以下である場合、得られる蓄電デバイスの充電時における不可逆容量が低くなり、充電時にガスが発生し難くなる。その結果、蓄電デバイスの耐久性が向上する。
【0068】
リチウムイオンキャパシタの負極の材料としては、例えば、炭素系材料、シリコン系材料等が挙げられる。炭素系材料として、例えば、黒鉛系複合粒子、ポリアセン系有機半導体(PAS)等が挙げられる。シリコン系材料として、例えば、Si、SiO、SiOC等が挙げられる。
【0069】
黒鉛系複合粒子は、芯粒子と、芯粒子の表面を被覆する黒鉛化物質とを備える。芯粒子として、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素、天然黒鉛等が挙げられる。黒鉛化物質として、例えば、タール、ピッチ由来の黒鉛化物質等が挙げられる。
【0070】
ポリアセン系有機半導体は、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物である。ポリアセン系有機半導体は、ポリアセン系骨格構造を有する。ポリアセン系骨格構造において、水素原子及び炭素原子の原子数比は0.05以上0.50以下である。水素原子及び炭素原子の原子数比とは、水素原子の数を炭素原子の数で除した値である。
【0071】
(1-9)負極活物質層
負極活物質層は、負極集電体の表面に負極活物質を付着させることにより形成される。負極活物質を付着させる方法として、例えば、塗布、印刷、射出、噴霧、蒸着又は圧着等が挙げられる。
【0072】
負極をリチウムイオン二次電池の電極の製造に用いる場合、負極活物質層の密度は、1.50g/cm3以上2.00g/cm3以下であることが好ましく、1.60g/cm3以上1.90g/cm3以下であることがより好ましい。
【0073】
負極活物質層は、シリコン系材料またはシリコン-炭素系複合化材料を含むことが好ましい。負極活物質層におけるシリコン系材料またはシリコン-炭素系複合化材料の含有率は、5質量%以上99質量%以下であることが好ましく、20質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。負極活物質層におけるシリコン系材料の含有率が上記の範囲内である場合、負極容量が一層増大する。
【0074】
負極活物質層の目付量は、5g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以上400g/m2以下であることがより好ましく、30g/m2以上300g/m2以下であることがさらに好ましい。
【0075】
負極の両面に負極活物質層が形成されている場合、負極活物質層の目付量とは、負極の両面に形成された負極活物質層の合計の目付量を意味する。負極の片面のみに負極活物質層が形成されている場合、負極活物質層の目付量とは、負極の片面に形成された負極活物質層の目付量を意味する。
【0076】
負極活物質層の目付量が上記の範囲内である場合、負極容量及び蓄電デバイスのサイクル特性が向上する。負極活物質層におけるシリコン系材料の含有率が5質量%以上99質量%以下であるとともに、負極活物質層の目付量が上記の範囲内である場合、負極容量及び蓄電デバイスのサイクル特性が一層向上する。なお、負極活物質層の目付量は、正極活物質層の目付量と同様の方法で測定できる。
【0077】
負極活物質層の厚みは、3μm以上300μm以下であることが好ましく、10μm以上250μm以下であることがより好ましく、25μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
【0078】
負極の両面に負極活物質層が形成されている場合、負極活物質層の厚みとは、負極の両面に形成された負極活物質層の合計の厚みを意味する。負極の片面のみに負極活物質層が形成されている場合、負極活物質層の厚みとは、負極の片面に形成された負極活物質層の厚みを意味する。
【0079】
負極活物質層の厚みが上記の範囲内である場合、負極容量及び蓄電デバイスのサイクル特性が向上する。負極活物質層におけるシリコン系材料の含有率が5質量%以上99質量%以下であるとともに、負極活物質層の厚みが上記の範囲内である場合、負極容量及び蓄電デバイスのサイクル特性が一層向上する。
【0080】
なお、負極活物質層の厚みと密度を上記範囲に設定する方法として、負極活物質層に対し、ロールプレス等を行う方法が挙げられる。なお、ロールプレスを行う場合、上記負極活物質層の厚みと密度は、それぞれロールプレスした後の厚みと密度である。ロールプレスの条件は特に限定されるものではないが、通常、ロール温度は10℃以上50℃以下であり、線圧力は0.1t/c以上10t/cm以下、送り速度は0.01m/分以上10m/分以下である。
【0081】
(1-10)正極及び負極の製造
上記のような正極活物質層を有する正極、及び負極活物質層を有する負極は、既知の製造方法により製造することができる。
【0082】
例えば、正極を、以下のようにして製造することができる。正極活物質と、バインダと、溶媒とを混合し、正極スラリーを調製する。正極スラリーは、必要に応じて、導電材や増粘剤をさらに含んでいてもよい。
【0083】
正極スラリーを正極集電体に塗布する方法で、正極活物質層を有する正極を製造することができる。また、正極スラリーをシート状に成形し、シート状の成形物を正極集電体に貼付する方法で、正極活物質層を有する正極を製造することができる。
【0084】
例えば、負極を、以下のようにして製造することができる。負極活物質と、バインダと、溶媒とを混合し、負極スラリーを調製する。負極スラリーは、必要に応じて、導電材や増粘剤をさらに含んでいてもよい。
【0085】
負極スラリーを負極集電体に塗布する方法で、負極活物質層を有する負極を製造することができる。また、負極スラリーをシート状に成形し、シート状の成形物を負極集電体に貼付する方法で、負極活物質層を有する負極を製造することができる。
【0086】
正極スラリー又は負極スラリーに含まれるバインダとして、例えば、ゴム系バインダ、含フッ素系樹脂、及びアクリル系樹脂等が挙げられる。ゴム系バインダとして、例えば、SBR等が挙げられる。含フッ素系樹脂として、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等をアクリル系樹脂でシード重合させた含フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0087】
正極スラリー又は負極スラリーに含まれる溶媒として、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。 正極スラリー又は負極スラリーに含まれる導電材として、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト、金属粉末等が挙げられる。正極スラリー又は負極スラリーに含まれる増粘剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0088】
正極スラリー又は負極スラリーにおけるバインダ及び導電材の添加量は、用いる活物質の電気伝導度、作製する電極形状等に応じて適宜調整することができる。バインダ及び導電材の添加量は、通常、活物質に対して2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。なお、活物質とは正極活物質又は負極活物質を意味する。
【0089】
(1-11)セパレータ
本開示の蓄電デバイスにおけるセパレータの材料として、透気度が1sec以上200sec以下の範囲内にあるセパレータが好ましい。透気度は、JISP8117に準拠した方法により測定される値である。
【0090】
セパレータとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロース、ポリオレフィン、セルロース/レーヨン等から構成される不織布や微多孔質膜等の中から適宜選択して用いることができる。セパレータとして、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はセルロース/レーヨン製の不織布が好ましい。
【0091】
セパレータの厚みは、例えば、5μm以上20μm以下であり、5μm以上15μm以下であることが好ましい。セパレータの厚みが5μm以上の場合、短絡が生じ難い。セパレータの厚みが20μm以下の場合、抵抗が低くなる。
【0092】
(1-12)電解質
本開示の蓄電デバイスにおいて、電解質としては、例えば、電解液、固体電解質、又はゲル電解質を用いることができる。
【0093】
電解液として、例えば、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を用いることができる。電解液は、例えば、非プロトン性有機溶媒を含む。非プロトン性有機溶媒として、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネート等が挙げられる。環状カーボネートとして、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートとして、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート等が挙げられる。電解液は、上述した物質のうち、2種以上を混合した混合溶媒であってもよい。
【0094】
非プロトン性有機溶媒は、環状カーボネート及び鎖状カーボネート以外の有機溶媒を含んでいてもよい。環状カーボネート及び鎖状カーボネート以外の有機溶媒として、例えば、環状エステル、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状エステルとして、例えば、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。鎖状カルボン酸エステルとして、例えば、プロピオン酸エチル等が挙げられる。鎖状エーテルとして、例えば、ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0095】
電解液はリチウム塩等を含む。リチウム塩として、例えば、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2等が挙げられる。
【0096】
リチウム塩として、特に、LiPF6が好ましい。LiPF6は、イオン伝導性が高く、低抵抗である。電解液におけるリチウム塩の濃度は、0.1mol/L以上であることが好ましく、0.5mol/L以上5mol/L以下であることがより好ましい。電解液におけるリチウム塩の濃度が上記の範囲内である場合、蓄電デバイスの内部抵抗を低くすることができる。
【0097】
固体電解質の具体例としては、例えば無機固体電解質材料や硫化物固体電解質材料、固体ポリマー系材料等が挙げられる。このような固体電解質においては、更に上述した電解液を膨潤させることもできる。
【0098】
ゲル電解質の具体例としては、例えばポリエチレンオキサイドやポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。このようなゲル電解質においては、可塑剤として有機溶剤を添加してその硬さを調整すること、更に上述した電解液を膨潤させることもできる。
【0099】
(1-13)リチウムイオン二次電池における放電容量比率X
リチウムイオン二次電池における放電容量比率Xは、以下の式(1)により定義される。
【0100】
式(1) X=C1/C2
式(1)におけるC1は、セル電圧2.0Vから4.3Vの間で充放電した際のセル放電容量である。
【0101】
式(1)におけるC2は、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で充放電した際の負極の放電容量である。C1及びC2の単位はmAhまたはAhである。
【0102】
前記式(1)におけるC1は、例えば、以下の方法で測定する。リチウムイオン二次電池をセル電圧4.3Vから2.0Vまで10±1時間かけて放電できる電流にて4.3Vまで充電し、その後電流が10分の1に絞られるまで4.3Vで定電流‐定電圧充電を行った状態から同様の電流で2.0Vまで定電流放電をした際のセルの放電容量をC1とする。
【0103】
前記式(1)におけるC2は、例えば、以下の方法で測定する。負極の対極に金属リチウム配置したセルにおいて、0Vから3.0Vまで10±1時間かけて放電できる電流にて0Vまで充電し、その後電流が10分の1に絞られるまで0Vで定電流‐定電圧充電を行った状態から同様の電流で3.0Vまで定電流放電をした際の負極の放電容量をC2とする。
【0104】
測定対象となる負極はセルを作製する前の電極の状態から採取したサンプルでも良く、セルを解体して採取したサンプルでも良い。
【0105】
また、対象となる負極の一部を切り出して放電容量を測定して単位面積当たりの放電容量を求めたのちにセル中の負極電極面積を掛けてC2を算出しても良い。
【0106】
本開示の蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池である場合において、リチウムイオン二次電池の放電容量比率Xは0を超えて0.9以下であり、0.25以上0.8以下であることがより好ましく、0.3以上0.7以下であることがさらに好ましく、0.35以上0.55以下であることが特に好ましい。放電容量比率Xが上記の範囲内であることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が良好であり、エネルギー密度が高い。リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を向上するためには、放電容量比率Xは0.5以上0.9以下であることがより好ましく、0.6以上0.88以下であることがさらに好ましく、0.7以上0.85以下であることが特に好ましい。放電容量比率Xが上記の範囲内である場合、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度がさらに向上する。リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上するためには、放電容量比率Xは0.1以上0.6以下であることがより好ましく、0.2以上0.6以下であることがさらに好ましく、0.2以上0.5以下であることが特に好ましい。放電容量比率Xが上記の範囲内である場合、リチウムイオン二次電池のサイクル特性がさらに向上する。
(1-14)リチウムイオン二次電池における放電容量比率Y
リチウムイオン二次電池における放電容量比率Xは、以下の式(2)により定義される。
【0107】
式(2) Y=C3/C2
前記式(2)におけるC2は、式(1)における前記負極の放電容量C2と同一である。前記式(2)におけるC3は、セル電圧4.3Vの状態でセルから取り出した負極の放電容量C3である。
【0108】
前記式(2)におけるC3は、例えば、以下の方法で測定する。負極の対極に金属リチウム配置したセルにおいて、3.0Vまで定電流放電をした際の負極の放電容量をC3とする。
【0109】
また、対象となる負極の一部を切り出して放電容量を測定して単位面積当たりの放電容量を求めたのちにセル中の負極電極面積を掛けてC3を算出しても良い。
【0110】
本開示の蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池である場合において、リチウムイオン二次電池の放電容量比率Yは0.7以上1.0以下が好ましい。放電容量比率Yが上記の範囲内であることにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が良好であり、エネルギー密度が高い。
【0111】
蓄電デバイスの製造条件のうち、負極活物質の目付量を大きくするほど、放電容量比率Xは大きくなる。
【0112】
(1-15)リチウムイオンキャパシタにおける放電容量比率X
リチウムイオンキャパシタにおける放電容量比率Xは、以下の式(3)により定義される。
【0113】
式(3) X=C1/C2
前記式(3)におけるC1は、セル電圧2.2Vから3.8Vの間で充放電した際のセル放電容量である。前記式(3)におけるC2は、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で前記負極を充放電した際の負極の放電容量である。C1及びC2の単位はmAh/gである。
【0114】
本開示の蓄電デバイスがリチウムイオンキャパシタである場合において、リチウムイオンキャパシタの放電容量比率Xは0.005以上0.2以下である。放電容量比率Xが0.005以上0.2以下であることにより、リチウムイオンキャパシタのサイクル特性が良好であり、リチウムイオンキャパシタのエネルギー密度が高い。また、放電容量比率Xは0.007以上0.18であることがより好ましく、0.008以上0.15以下であることがさらに好ましい。放電容量比率Xが上記の範囲内である場合、リチウムイオンキャパシタのサイクル特性がさらに向上し、リチウムイオンキャパシタのエネルギー密度がさらに向上する。
【0115】
蓄電デバイスの製造条件のうち、負極活物質の目付量を大きくするほど、放電容量比率Xは大きくなる。
【0116】
2.蓄電デバイス用負極の製造方法
(2-1)電極製造装置1の構成
蓄電デバイスが備える負極(以下では、蓄電デバイス用負極ともいう)は、例えば、
図1に示す電極製造装置1により製造できる。
【0117】
電極製造装置1の構成を、
図1に基づき説明する。電極製造装置1は、電解液槽3、5と、洗浄槽7と、搬送ローラ9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45(以下ではこれらをまとめて搬送ローラ群と呼ぶこともある)と、供給ロール47と、巻取ロール49と、対極ユニット51と、多孔質絶縁部材53と、支持台55と、循環濾過ユニット57と、2つの直流電源61と、ブロア63と、を備える。
【0118】
電解液槽3は、上方が開口した角型の槽である。電解液槽3の底面は、略U字型の断面形状を有する。電解液槽3内には、仕切り板69と、4個の対極ユニット51と、4個の多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ17とが存在する。
【0119】
仕切り板69は、その上端を貫く支持棒67により支持されている。支持棒67は図示しない壁等に固定されている。仕切り板69のうち、上端を除く部分は、電解液槽3内にある。仕切り板69は上下方向に延び、電解液槽3の内部を2つの空間に分割している。仕切り板69の下端に、搬送ローラ17が取り付けられている。仕切り板69と搬送ローラ17とは、それらを貫く支持棒68により固定されている。なお、仕切り板69の下端付近は、搬送ローラ17と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ17と、電解液槽3の底面との間には空間が存在する。
【0120】
4個の対極ユニット51は、それぞれ、それらの上端を貫く支持棒70により支持され、上下方向に延びている。支持棒70は図示しない壁等に固定されている。対極ユニット51のうち、上端を除く部分は、電解液槽3内にある。4個の対極ユニット51のうち、2個は、仕切り板69を両側から挟むように配置されている。残りの2個の対極ユニット51は、電解液槽3の内側面に沿って配置されている。
【0121】
仕切り板69側に配置された対極ユニット51と、電解液槽3の内側面に沿って配置された対極ユニット51との間には空間71が存在する。対極ユニット51は、直流電源61のプラス極に接続される。対極ユニット51の詳しい構成は後述する。
【0122】
それぞれの対極ユニット51における空間71側の表面に、多孔質絶縁部材53が取り付けられている。多孔質絶縁部材53の詳しい構成は後述する。
【0123】
洗浄槽7は、基本的には電解液槽3と同様の構成を有する。ただし、洗浄槽7の内部には、対極ユニット51及び多孔質絶縁部材53は存在しない。
【0124】
電解液槽5は、基本的には電解液槽3と同様の構成を有する。ただし、電解液槽5内には、搬送ローラ17でなく、搬送ローラ27が存在する。
【0125】
搬送ローラ群は、後述する電極73を一定の経路に沿って搬送する。その経路は、供給ロール47から、電解液槽3の中、電解液槽5の中、洗浄槽7の中を順次通り、巻取ロール49に至る経路である。
【0126】
その経路のうち、電解液槽3の中を通る部分は、まず、電解液槽3の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ17により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽3の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0127】
また、上記の経路のうち、電解液槽5の中を通る部分は、まず、電解液槽5の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ27により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽5の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0128】
また、上記の経路のうち、洗浄槽7の中を通る部分は、まず、洗浄槽7の内側面と、仕切り板69との間を下方に移動し、次に、搬送ローラ37により移動方向を上向きに変えられ、最後に、洗浄槽7の内側面と、仕切り板69との間を上方に移動するという経路である。
【0129】
搬送ローラ群のうち、搬送ローラ15、21、25、29は導電性の材料から成る。また、搬送ローラ15、21、25、29は、直流電源61のマイナス極に接続される。搬送ローラ13は、電極73を搬送ローラ15の方向に押圧する。搬送ローラ19は、電極73を搬送ローラ21の方向に押圧する。搬送ローラ23は、電極73を搬送ローラ25の方向に押圧する。搬送ローラ31は、電極73を搬送ローラ29の方向に押圧する。搬送ローラ群は搬送ユニットに対応する。搬送ローラ15、21、25、29は導電性の搬送ローラであり、接続ユニットに対応する。
【0130】
搬送ローラ13、19、23、31は、軸受部分を除き、エラストマーから成る。すなわち、搬送ローラ13、19、23、31は、それらの表面も含めて、エラストマーから成る。エラストマーは弾性体の一例である。よって、搬送ローラ13、19、23、31は弾性変形可能である。
【0131】
エラストマーは、天然ゴムであってもよいし、合成ゴムであってもよい。エラストマーとしては、例えば、EPDM、EPR、SBR、NBR、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0132】
供給ロール47は、その外周に電極73を巻き回している。すなわち、供給ロール47は、巻き取られた状態の電極73を保持している。搬送ローラ群は、供給ロール47に保持された電極73を引き出し、搬送する。
【0133】
巻取ロール49は、搬送ローラ群により搬送されてきた蓄電デバイス用負極75を巻き取り、保管する。なお、蓄電デバイス用負極75は、電極73に対し、電解液槽3、5においてリチウムのドープを行うことで製造されたものである。
【0134】
なお、リチウムのドープの態様としては、リチウムをイオンの状態で活物質にインターカレーションさせる態様であってもよいし、リチウムの合金が形成される態様であってもよいし、リチウムイオンがSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜となって消費される態様であってもよい。
【0135】
対極ユニット51は、上記のように、電解液槽3、5内に収容されている。対極ユニット51は、板状の形状を有する。対極ユニット51は、導電性基材と、リチウム含有板とを積層した構成を有する。導電性基材の材質としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。リチウム含有板の形態は特に限定されず、例えば、リチウム板、リチウムの合金板等が挙げられる。リチウム含有板の厚みは、例えば、0.03以上3mm以下とすることができる。
【0136】
多孔質絶縁部材53は、板状の形状を有する。多孔質絶縁部材53は、対極ユニット51の表面に取り付けられている。多孔質絶縁部材53が有する板状の形状とは、多孔質絶縁部材53が対極ユニット51の表面に取り付けられている際の形状である。多孔質絶縁部材53は、それ自体で一定の形状を保つ部材であってもよいし、例えばネット等のように、容易に変形可能な部材であってもよい。
【0137】
多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ群により搬送される電極73とは非接触である。多孔質絶縁部材53の表面から、電極73までの最短距離は、0.5mm以上100mm以下の範囲内であることが好ましく、1mm以上10mm以下の範囲内であることが特に好ましい。最短距離とは、多孔質絶縁部材53の表面のうち、電極73に最も近い点と、電極73との距離である。
【0138】
多孔質絶縁部材53は多孔質である。そのため、後述するドープ溶液は、多孔質絶縁部材53を通過することができる。そのことにより、対極ユニット51は、ドープ溶液に接触することができる。
【0139】
多孔質絶縁部材53としては、例えば、樹脂製のメッシュ等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0140】
メッシュの目開きは適宜設定できる。メッシュの目開きは、例えば、0.1μm以上10mm以下とすることができるが、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。メッシュの厚みは適宜設定できる。メッシュの厚みは、例えば、1μm以上10mm以下とすることができるが、30μm以上1mm以下であることが好ましい。メッシュの目開き率は適宜設定できる。メッシュの目開き率は、例えば、5%以上95%以下とすることができるが、50%以上95%以下であることが好ましい。
【0141】
多孔質絶縁部材53は、その全体が絶縁性の材料から成っていてもよいし、その一部に絶縁性の層を備えていてもよい。
【0142】
支持台55は、電解液槽3、5及び洗浄槽7を下方から支持する。支持台55は、その高さを変えることができる。仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53の上下方向における位置を維持したまま、支持台55を低くすると、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、電解液槽3、5を相対的に下方に移動させることができる。また、支持台55高くすると、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、電解液槽3、5を相対的に上方に移動させることができる。
【0143】
循環濾過ユニット57は、電解液槽3、5にそれぞれ設けられている。循環濾過ユニット57は、フィルタ81と、ポンプ83と、配管85と、を備える。
【0144】
電解液槽3に設けられた循環濾過ユニット57において、配管85は、電解液槽3から出て、ポンプ83、及びフィルタ81を順次通り、電解液槽3に戻る循環配管である。電解液槽3内のドープ溶液は、ポンプ83の駆動力により、配管85、及びフィルタ81内を循環し、再び電解液槽3に戻る。このとき、ドープ溶液中の異物等は、フィルタ81により濾過される。異物としては、ドープ溶液から析出した異物や、電極73から発生する異物等が挙げられる。なお、
図1において、ドープ溶液、洗浄液の記載は便宜上省略している。
【0145】
電解液槽5に設けられた循環濾過ユニット57において、配管85は、電解液槽5から出て、ポンプ83、及びフィルタ81を順次通り、電解液槽5に戻る循環配管である。電解液槽5内のドープ溶液は、ポンプ83の駆動力により、配管85、及びフィルタ81内を循環し、再び電解液槽5に戻る。電解液槽5に設けられた循環濾過ユニット57も、電解液槽3に設けられた循環濾過ユニット57と同様の作用効果を有する。
【0146】
フィルタ81の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂とすることができる。フィルタ81の孔径は適宜設定できる。フィルタ81の孔径は、例えば、30以上50μm以下である。
【0147】
2つの直流電源61のうちの一方(以下では、一方の直流電源61とする)におけるマイナス端子は、搬送ローラ15、21とそれぞれ接続する。また、一方の直流電源61のプラス端子は、合計4個の対極ユニット51にそれぞれ接続する。この4個の対極ユニット51は電解液槽3内にある対極ユニット51である。電極73は、導電性の搬送ローラ15、21と接触する。また、電極73と、電解液槽3内にある対極ユニット51とは電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極73と、電解液槽3内にある対極ユニット51とは電気的に接続する。
【0148】
2つの直流電源61のうちの他方(以下では、他方の直流電源61とする)におけるマイナス端子は、搬送ローラ25、29とそれぞれ接続する。また、他方の直流電源61のプラス端子は、合計4個の対極ユニット51にそれぞれ接続する。この4個の対極ユニット51は電解液槽5内にある対極ユニット51である。電極73は、導電性の搬送ローラ25、29と接触する。また、電極73と、電解液槽5内にある対極ユニット51とは電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極73と、電解液槽5内にある対極ユニット51とは電気的に接続する。
【0149】
ブロア63は、洗浄槽7から出てきた蓄電デバイス用負極75にガスを吹きつけて洗浄液を気化させ、蓄電デバイス用負極75を乾燥させる。使用するガスは、リチウムがドープされた活物質に対して不活性なガスであることが好ましい。そのようなガスとして、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、水分が除去された除湿空気等が挙げられる。
【0150】
(2-2)電極73の構成
電極73の構成を、
図2A及び
図2Bに基づき説明する。電極73は、長尺の帯状の部材である。
図2Bに示すように、電極73は、負極集電体93と、負極活物質層95と、を備える。負極活物質層95は、負極集電体93の両面に形成されている。電極73において、負極活物質層95はリチウムを未だドープされていない。
【0151】
負極スラリーを負極集電体93に塗布する方法で、負極活物質層95を形成することができる。また、負極スラリーをシート状に成形し、シート状の成形物を負極集電体93に貼付する方法で、負極活物質層95を形成することができる。
【0152】
(2-3)蓄電デバイス用負極へのドープ方法
電極73を供給ロール47に巻き回す。電解液槽3、5にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、リチウムイオンと、溶媒とを含む。溶媒として、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒として、非プロトン性の有機溶媒が好ましい。
【0153】
非プロトン性の有機溶媒として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、イオン液体等が挙げられる。イオン液体として、例えば、第4級イミダゾリウム塩、第4級ピリジニウム塩、第4級ピロリジニウム塩、第4級ピペリジニウム塩等が挙げられる。上記有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。
【0154】
上記ドープ溶液に含まれるリチウムイオンは、リチウム塩を構成するイオンである。リチウム塩を構成するアニオン部としては、例えば、PF6
-、PF3(C2F5)3
-、PF3(CF3)3
-、等のフルオロ基を有するリンアニオン;BF4
-、BF2(CF)2
-、BF3(CF3)-、B(CN)4
-等のフルオロ基又はシアノ基を有するホウ素アニオン;N(FSO2)2
-、N(CF3SO2)2
-、N(C2F5SO2)2
-等のフルオロ基を有するスルホニルイミドアニオン;CF3SO3
-等のフルオロ基を有する有機スルホン酸アニオンが挙げられる。
【0155】
上記ドープ溶液におけるリチウム塩の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5モル/L以上5モル/L以下である。ドープ溶液におけるリチウム塩の濃度が上記の範囲内である場合、リチウムのドープが効率良く進行する。
【0156】
上記ドープ溶液は、更に、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、1-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の添加剤を含有することができる。
【0157】
また、洗浄槽7に洗浄液を収容する。洗浄液は、例えば、非プロトン性溶剤を含むことが望ましい。非プロトン性溶剤として、例えば、カーボネート系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、含硫黄系溶剤及びアミド系溶剤から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0158】
洗浄液は、実質的に非プロトン性溶剤から成っていてもよいし、非プロトン性溶剤に加えて他の成分を含んでいてもよい。非プロトン性溶剤の沸点は、30℃以上200℃以下であることが好ましく、40℃以上150℃以下であることがより好ましく、50℃以上120℃以下であることがさらに好ましい。沸点が30℃以上であることにより、洗浄槽7中の洗浄液が過度に気化してしまうことを抑制できる。沸点が200℃以下であることにより、洗浄後の蓄電デバイス用負極75から洗浄液を除去することが容易になる。
【0159】
電解液槽3に収容するドープ溶液の組成と、電解液槽5に収容するドープ溶液の組成とは異なることが好ましい。電解液槽3に収容するドープ溶液の組成と、電解液槽5に収容するドープ溶液の組成とが異なる場合、一層高品質の蓄電デバイス用負極75を効率的に製造することができる。
【0160】
電解液槽3、5におけるドープ溶液の組成が異なる態様としては、例えば、電解液槽3に収容されるドープ溶液におけるSEI被膜形成成分の濃度が、電解液槽5に収容されるドープ溶液におけるSEI被膜形成成分の濃度に比べて、高いこと等が挙げられる。
【0161】
次に、搬送ローラ群により、電極73を供給ロール47から引き出し、上述した経路に沿って搬送する。電極73が電解液槽3、5内を通過するとき、負極活物質層95に含まれる活物質にリチウムがドープされる。
【0162】
前記のようにリチウムがドープされる工程は、ドープ工程に対応する。電解液槽3で行われる第1ドープ工程における電流密度と、電解液槽5で行われる第2ドープ工程における電流密度とは異なることが好ましい。この場合、一層高品質の蓄電デバイス用負極75を効率良く製造することができる。
【0163】
第1ドープ工程と第2ドープ工程とで電流密度が異なる態様としては、例えば、第1ドープ工程における電流密度の方が、第2ドープ工程における電流密度に比べて、高い、あるいは、低いこと等が挙げられる。第1ドープ工程における電流密度と、第2ドープ工程における電流密度とが異なることは、第1ドープ工程と第2ドープ工程とで、リチウムを活物質にドープする条件が異なることに対応する。
【0164】
また、電解液槽3、5内に収容される対極ユニット51が導電性基材、及び前記導電性基材上に配置されたリチウム含有板を備える場合、電解液槽3内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量と、電解液槽5内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量とが異なっていてもよい。
【0165】
電解液槽3、5内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量が異なる態様としては、例えば、電解液槽3内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量の方が、電解液槽5内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量に比べて、多い、あるいは、少ないことが挙げられる。電解液槽3内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量と、電解液槽5内に収容されるリチウム含有板に含有されるリチウムの質量とが異なることは、第1ドープ工程と第2ドープ工程とで、リチウムを負極活物質にドープする条件が異なることに対応する。
【0166】
負極活物質にリチウムがドープされることにより、電極73が蓄電デバイス用負極75となる。蓄電デバイス用負極75は搬送ローラ群により搬送されながら、洗浄槽7で洗浄される。最後に、蓄電デバイス用負極75は、巻取ロール49に巻き取られる。蓄電デバイス用負極75は、負極活物質にリチウムがドープされている点を除き、電極73と同様の構成を有する。
【0167】
電極製造装置1はリチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池が備える蓄電デバイス用負極の製造に特に適している。
【0168】
負極活物質層へのリチウムのドープ割合は、負極の放電容量C2の5%以上95%以下であることが好ましい。この場合、負極容量及びサイクル耐久性がともに向上する。負極の放電容量C2とは、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で負極を充放電した際の負極の放電容量である。
【0169】
3.電池の製造方法
本開示の電池の製造方法は、正極、負極及び電解質を備える電池の製造方法であって、上記「2.蓄電デバイス用負極の製造方法」により蓄電デバイス用負極を製造する工程を含む。
【0170】
電池を構成する正極の基本的な構成は、一般的な構成とすることができる。正極活物質としては、既に例示したものの他、ニトロキシラジカル化合物等の有機活物質や酸素を使用することもできる。
【0171】
電池を構成する電解質の形態は、通常、液状の電解液である。電解液の基本的な構成は、上述したドープ溶液の構成と同様である。また、電解質におけるリチウムイオンの濃度及びリチウム塩の濃度は、0.1モル/L以上であることが好ましく、0.5モル/L以上5.0モル/L以下であることがより好ましい。電解質は、漏液を防止する目的で、ゲル状又は固体状の形態を有していてもよい。
【0172】
電池は、正極と負極との間に、それらの物理的な接触を抑制するためのセパレータを備えることができる。セパレータとして、例えば、セルロース/レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等を原料とする不織布又は多孔質フィルムが挙げられる。
【0173】
電池の構造として、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとを含む板状の構成単位が、3単位以上積層されて積層体を形成し、その積層体が外装フィルム内に封入された積層型セルが挙げられる。積層体は電極ユニットに対応する。
【0174】
電池は、例えば、少なくとも負極及び正極を含む基本構造を形成し、その基本構造に電解質を注入することにより製造できる。
【0175】
4.キャパシタの製造方法
本開示のキャパシタの製造方法は、正極、負極及び電解質を備えるキャパシタの製造方法であって、上記「2.蓄電デバイス用負極の製造方法」により蓄電デバイス用負極を製造する工程を含む。
【0176】
キャパシタを構成する正極の基本的な構成は、一般的な構成とすることができる。正極活物質として活性炭を使用することが好ましい。
【0177】
キャパシタを構成する電解質の形態は、通常、液状の電解液である。電解液の基本的な構成は、上述したドープ溶液の構成と同様である。また、電解質におけるリチウムイオン濃度及びリチウム塩の濃度は、0.1モル/L以上であることが好ましく、0.5モル/L以上5.0モル/L以下であることがより好ましい。電解質は、漏液を防止する目的で、ゲル状又は固体状の形態を有していてもよい。
【0178】
キャパシタは、正極と負極との間に、それらの物理的な接触を抑制するためのセパレータを備えることができる。セパレータとして、例えば、セルロースレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等を原料とする不織布又は多孔質フィルムが挙げられる。
【0179】
キャパシタの構造として、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとを含む板状の構成単位が、3単位以上積層されて積層体を形成し、その積層体が外装フィルム内に封入された積層型セルが挙げられる。
【0180】
また、キャパシタの構造としては、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとを含む帯状の構成単位が捲回されて積層体を形成し、その積層体が角型又は円筒型の容器に収納された捲回型セル等が挙げられる。
【0181】
キャパシタは、例えば、少なくとも負極及び正極を含む基本構造を形成し、その基本構造に電解質を注入することにより製造できる。
【0182】
リチウムイオンキャパシタの場合、その負極活物質層の密度は、好ましくは0.50g/cm3以上1.50g/cm3以下であり、特に好ましくは0.70g/cm3以上1.20g/cm3以下である。
【0183】
5.実施例1~6と比較例1~3
(5-1)実施例1の蓄電デバイス用負極の製造
SiO31質量部、人造黒鉛62質量部、アセチレンブラック粉体4質量部、SBRバインダー2質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部、およびイオン交換水85質量部となる組成にてプラネタリーミキサーにて充分混合することにより負極スラリーを得た。アセチレンブラックは導電剤に対応する。
【0184】
長尺の帯状の負極集電体を用意した。負極集電体のサイズは、幅150mm、長さ500m、厚さ8μmである。負極集電体の表面粗さRaは0.1μmである。負極集電体は銅箔から成る。
【0185】
図2Bに示すように、負極集電体93の両面に、コンマコーターを用いて負極スラリーを塗布することで、それぞれ負極活物質層95を形成し、120℃で12時間減圧乾燥した。負極となる電極73を得た。次いでロールプレス機にて電極をプレスすることにより蓄電デバイス用負極75を得た。負極の両面に形成された負極活物質層95の合計の目付は130g/m
2であった。また、負極の両面に形成された負極活物質層95の合計の厚みは87μmであった。負極活物質層95は、負極集電体93の長手方向に沿って形成された。負極活物質層95は、負極集電体93の幅方向における中央部に、幅120mmにわたって形成された。負極集電体93の幅方向の両端における負極活物質層未形成部はそれぞれ15mmであった。負極活物質層未形成部とは、負極活物質層95が形成されていない部分である。
(負極電極の単位面積当たりの充電容量、放電容量及び不可逆容量の測定)
得られた電極73から1.5cm×2.0cm(面積3. 0cm
2)の寸法の測定用試料を切り出した。この試料の対極として、縦横の寸法が1.5cm×2.0cm(面積3. 0cm
2)で、厚みが200μmの金属リチウムを用意した。また、セパレータとして厚み50μmのポリエチレン製不織布を用意した。試料の両面にセパレータを介して対極を配置し、参照極として金属リチウム板を備え、電解液として1.4MのLiPF6を含み、エチレンカーボネートと、1-フルオロエチルカーボネートと、エチルメチルカーボネートとを、1:2:7の体積比で含む混合液が用いられてなる構成の負極電極評価用のコイン型セルを作製した。
【0186】
得られたコイン型セルに対して、充填電流4mAで0Vになるまで充電し、その後充電電流が0.4mAに絞られるまで0Vで定電流‐定電圧充電を行い、得られた充電容量から測定用試料の面積を除することで単位面積当たりの充電容量を算出した。次いで、放電電流4mAでセル電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行い、得られた放電容量から測定用試料の面積を除することで単位面積当たりの放電容量を算出した。なお、ここで算出した単位面積当たりの放電容量は、後述する負極の放電容量C2を算出する際に求めた単位面積当たりの放電容量と同じ数値となる。また、単位面積当たりの充電容量と放電容量の差を不可逆容量として算出した。結果を表1に示す。
【0187】
次に、以下のようにして対極ユニットを製造した。まず、厚さ2mmの長尺の銅板を用意した。この銅板上に、リチウム金属板を貼り付けた。リチウム金属板のサイズは、幅120mm、長さ800mm、厚さ1mmであった。リチウム金属板は、銅板の長手方向に沿って貼り付けられた。このようにリチウム金属板を貼り付けた銅板を、対極ユニット51とした。同じ対極ユニット51を8枚製造した。
【0188】
図1に示す電極製造装置1を用意し、電極73および対極ユニット51を設置した。次に、電極製造装置1内に電解液を供給した。電解液は、1.4MのLiPF
6を含む溶液である。電解液の溶媒は、エチレンカーボネートと、1-フルオロエチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートとを、1:2:7の体積比で含む混合溶媒である。
【0189】
次に、電極製造装置1に設置した電極73及び対極ユニット51を電流・電圧モニター付き直流電源に接続し、電極73を0.1m/minの速度で搬送しながら、5Aの電流を通電した。通電時間は、単位面積当たりのリチウムのドープ割合が上記で求めた単位面積当たりの放電容量の26%になる時間とした。
【0190】
この工程により、負極活物質層95中の負極活物質にリチウムがドープされ、電極73は蓄電デバイス用負極75となった。なお、本実施例及び後述する実施例2~4及び比較例1~2において蓄電デバイス用負極はリチウムイオン二次電池用負極である。
【0191】
蓄電デバイス用負極75を、洗浄槽7を通過させた後、巻き取った。洗浄槽7には、25℃のDMC(ジメチルカーボネート)を収容しておいた。以上のようにして、蓄電デバイス用負極75を製造した。
【0192】
実施例1の蓄電デバイス用負極75における負極集電体開口率、負極集電体の厚み、負極活物質層の目付量、負極活物質層の厚み、負極単位面積当たりの充電容量、放電容量、及び不可逆容量、及び負極活物質層へのリチウムのドープ割合を表1に示す。また、後述する実施例2~4及び比較例1~2における上記の数値も表1に示す。
【0193】
【0194】
(5-2)実施例2~6、比較例1~3の蓄電デバイス用負極の製造
負極活物質層の目付量、負極活物質層の厚み、負極活物質層へのリチウムのドープ割合を表1に示す数値とした以外は実施例1と同様にして蓄電デバイス用負極を作製し評価を行った。
【0195】
(5-3)蓄電デバイス用負極の評価
実施例1の蓄電デバイス用負極をリチウムイオン二次電池の負極として用いた際の評価を行った。具体的には、セル放電容量C1と、負極の放電容量C2と、放電容量比率X、負極の放電容量C3と、放電容量比率Y、重量エネルギー密度と、200サイクル後容量維持率(%)とを測定した。その測定結果を表2に示す。
【0196】
【0197】
初期容量及び200サイクル後容量維持率の測定方法は以下のとおりである。
【0198】
(5-4)評価用セルの作製
ニッケル‐マンガン‐コバルト酸リチウム93質量部、アセチレンブラック粉体3質量部、ポリフッカビニリデンバインダー4質量部、およびN‐メチルピロリドン62質量部となる組成にてプラネタリーミキサーにて充分混合することにより正極スラリーを得た。
【0199】
長尺の帯状の正極集電体を用意した。正極集電体のサイズは、幅150mm、長さ500m、厚さ15μmである。正極集電体はアルミニウム箔から成る。
【0200】
正極集電体の両面に、コンマコーターを用いて正極スラリーを塗布することで、それぞれ正極活物質層を形成し、120℃で12時間減圧乾燥した。次いでロールプレス機にて電極をプレスすることにより正極電極を得た。正極の両面に形成された正極活物質層の合計の目付は440g/m2厚みは163μmであった。正極活物質層は、正極集電体の長手方向に沿って形成された。正極活物質層は、正極集電体の幅方向における中央部に、幅120mmにわたって形成された。正極集電体の幅方向の両端における正極活物質層未形成部はそれぞれ15mmであった。正極活物質層未形成部とは、正極活物質層が形成されていない部分である。
【0201】
上記(5-1)で得られた蓄電デバイス用負極から10.0cm×12.9cmの大きさ(ただし端子溶接部を除く)の負極を30枚切り出した。また、上記で得られた正極電極から9.7cm×12.6cmの大きさ(ただし端子溶接部を除く)の正極を29枚切り出した。正極集電体はアルミニウム箔から成る。
【0202】
そして、厚さ16μmのポリエチレン製不織布からなるセパレータを介して、正極と負極とを交互に積層し、積層体から成る電極ユニットを作製した。このとき、正極と負極とを、それぞれの塗工部は重なるが、正極集電体の端子溶接部と、負極集電体の端子溶接部とが反対側になるように位置合わせした状態で、セパレータ、負極、セパレータ、正極の順で積重し、積重体の4辺をテープにより固定することにより、電極ユニットを作製した。また、電極ユニットの最外部に負極が配置されるようにした。
【0203】
作製した電極ユニットにおける28枚の正極の各々の端子溶接部に、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した、矩形状のアルミニウム製の正極用電源タブを重ねて溶接した。一方、電極積層ユニットの29枚の負極の各々の端子溶接部に、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した矩形状のニッケル製の負極用電源タブを重ねて溶接し、もって評価用セルを作製した。
【0204】
電極ユニットを収容するためのラミネートフィルムとして、中央部分に評価用セル要素が収容可能な大きさに絞り加工が施された第1のラミネートフィルムと、第2のラミネートフィルムを用意した。第1のラミネートフィルムと第2のラミネートフィルムは、いずれもポリプロピレン層、アルミニウム層およびナイロン層が積層された構成を有する。次に、電極ユニットを、第2のラミネートフィルムの中央部分に、正極用電極タブと負極用電極タブの各々が第2のラミネートフィルムの外側に突出するように配置した。そして、電極ユニットを挟むように第2のラミネートフィルムで重ね合わせた。次に、第1のラミネートフィルム及び第2のラミネートフィルムの三辺(正極電極端子および負極電極端子が突出する2辺を含む)を融着した。その結果、一辺のみが開口したラミネートフィルムの袋が形成された。電極ユニットは、ラミネートフィルムの袋に収容された。
【0205】
次に、ラミネートフィルムの袋の中に電解液を真空含浸させた。電解液は、1.4MのLiPF6を含み、エチレンカーボネートと、1-フルオロエチルカーボネートと、エチルメチルカーボネートとを、1:2:7の体積比で含む混合液である。次に、ラミネートフィルムの袋のうち、開口していた残りの一辺を融着した。以上の工程により、評価用セルが完成した。
【0206】
(5-5)実施例2~6、比較例1~3の評価用セルの製造
それぞれの負極として上記(5-2)で得られた負極を用いたこと、正極活物質層の目付量を表2に示す数値とした以外は実施例1と同様にして評価用セルを作製し評価を行った。
【0207】
(5-6)評価用セルを用いた評価
(初期評価)
作製した評価用セルを、2.5Aの定電流でセル電圧が4.3Vになるまで充電した。その後、電流が0.25Aに絞られるまで4.3Vの定電圧を印可する定電流―定電圧充電を行った。その後、2.5Aの定電流でセル電圧が2.0Vになるまで放電した。以上の充放電を2回繰り返し、2回目の放電における放電容量を測定した。この測定値を初期放電容量C1とした。
【0208】
また、初期放電容量とセル重量、及び放電時の平均電圧からセルの重量エネルギー密度(Wh/kg)を下記式(5)に基づき算出した。結果を表2に示す。
【0209】
式(5) 重量エネルギー密度(Wh/kg)=(初期放電容量×放電時の平均セル電圧)/セル重量
(C2及びC3の算出)
作製した評価用セルを、2.5Aの定電流でセル電圧が4.3Vになるまで充電した。充電した評価用セルを分解し、負極電極を取り出した。そして、負極電極をアルゴン置換したグローブボックス内で脱水エチルメチルカーボネートの入った容器に浸漬し、スターラ― で撹拌しながら25℃で10分間洗浄した。この洗浄を3回繰り返した後に、25℃で1時間乾燥処理した。
【0210】
そして、乾燥処理した負極電極から1.5cm×2.0cm(面積3. 0cm2)の寸法の測定用試料を切り出した。この試料の対極として、縦横の寸法が1.5cm×2.0cm(面積3. 0cm2)で、厚みが200μmの金属リチウムを用意した。また、セパレータとして厚み50μmのポリエチレン製不織布を用意した。試料の両面にセパレータを介して対極を配置し、参照極として金属リチウム板を備え、電解液として1.4MのLiPF6を含み、エチレンカーボネートと、1-フルオロエチルカーボネートと、エチルメチルカーボネートとを、1:2:7の体積比で含む混合液が用いられてなる構成の負極電極評価用のコイン型セルを作製した。
【0211】
得られたコイン型セルに対して、放電電流4mAでセル電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行い、得られた放電容量から測定用試料の面積を除することで単位面積当たりの放電容量を算出した。
そして、負極の放電容量C3を下記式(5)に基づき算出した。
【0212】
式(5) C3=単位面積当たりの放電容量×セル中の負極電極面積
次いで、充填電流4mAで0Vになるまで充電し、その後充電電流が0.4mAに絞られるまで0Vで定電流‐定電圧充電を行った。そして、放電電流4mAでセル電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行い、得られた放電容量から測定用試料の面積を除することで単位面積当たりの放電容量を算出した。そして、負極の放電容量C2を下記式(6)に基づき算出した。
【0213】
式(6) C2=単位面積当たりの放電容量×セル中の負極電極面積
そして、以下の式(2)で定義される放電容量比率Yを算出した。
【0214】
式(2) Y=C3/C2
(200サイクル後容量維持率)
次に、評価用セルを、25Aの定電流で4.3Vになるまで充電した。次に、25Aの定電流でセル電圧が2.0Vになるまで放電した。以上のサイクルを200サイクル繰り返した。
【0215】
次に、評価用セルを、2.5Aの定電流でセル電圧が4.3Vになるまで充電した。その後、充電電流が0.25Aに絞られるまで4.3Vの定電圧を印可する定電流―定電圧充電を行った。その後、2.5Aの定電流でセル電圧が2.0Vになるまで放電した。以上の充放電を2回繰り返し、2回目の放電における放電容量を測定した。この測定値を200サイクル後の放電容量とした。200サイクル後容量維持率(%)は下記式(7)に基づき算出した。
【0216】
式(7) 200サイクル後容量維持率(%)=(200サイクル後の放電容量/初期放電容量)×100
各実施例の評価用セルでは、初期のセル放電容量が高く、重量エネルギー密度が高く、200サイクル後容量維持率が高かった。また、実施例2、3、6の評価用セルでは、特に200サイクル後容量維持率が高かった。また、実施例1、5の評価用セルでは、特に重量エネルギー密度が高かった。比較例1~3の蓄電デバイス用負極では、初期のセル放電容量が低く、重量エネルギー密度が低く、200サイクル後容量維持率が低かった。
【0217】
6.実施例7~11と比較例4~6
(6-1)実施例7の蓄電デバイス用負極の製造
長尺の帯状の負極集電体を用意した。負極集電体のサイズは、幅150mm、長さ100m、厚さ8μmである。負極集電体の表面粗さRaは0.1μmである。負極集電体は銅箔から成る。
図2Bに示すように、負極集電体93の両面に、それぞれ負極活物質層95を形成し、電極73を得た。負極活物質層95の厚みは80μmである。負極活物質層95は、負極集電体93の長手方向に沿って形成されている。負極活物質層95は、負極集電体93の幅方向における中央部に、幅120mmにわたって形成されている。負極集電体93の幅方向の両端における負極活物質層未形成部はそれぞれ15mmである。負極活物質層未形成部とは、負極活物質層95が形成されていない部分である。
【0218】
負極活物質層95は、黒鉛、カルボキシメチルセルロース、アセチレンブラック、バインダ及び分散剤を、質量比で88:3:5:3:1の比率で含む。黒鉛は負極活物質に対応し、炭素系材料に対応する。アセチレンブラックは導電剤に対応する。
【0219】
次に、以下のようにしてリチウム極を製造した。まず、厚さ2mmの長尺の銅板を用意した。この銅板上に、リチウム金属板を貼り付けた。リチウム金属板は、幅120mm×長さ800mm、厚さ1mmである。リチウム金属板は、銅板の長手方向に沿って貼り付けられている。このようにリチウム金属板を貼り付けた銅板を、対極ユニット51とする。同じ対極ユニット51を8枚製造した。
【0220】
図1に示す電極製造装置1を用意し、電極73および対極ユニット51を設置した。次に、電極製造装置1内に電解液を供給した。電解液は、1.2MのLiPF
6を含む溶液である。電解液の溶媒は、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合溶媒である。
【0221】
次に、電極製造装置1に設置した電極73及び対極ユニット51を電流・電圧モニター付き直流電源に接続し、電極73を0.16m/minの速度で搬送しながら、40Aの電流を通電した。通電時間は、不可逆容量を考慮した上、負極活物質層へのリチウムのドープ割合が負極の放電容量C2の70%になる時間を設定した。なお、不可逆容量は、リチウムをドープした後の負極の放電容量を測定することにより予め見積もっておいた。この工程により、負極活物質層95中の負極活物質にリチウムがドープされ、電極73は蓄電デバイス用負極75となった。なお、本実施例及び後述する実施例6~9及び比較例3~5において蓄電デバイス用負極はリチウムイオンキャパシタ用負極である。
【0222】
蓄電デバイス用負極75を、25℃でDMC(ジメチルカーボネート)を収容した洗浄槽7を通過させた後、巻き取った。以上のようにして、蓄電デバイス用負極75を製造した。
【0223】
(6-2)実施例7の蓄電デバイス用正極の製造
長尺の帯状の正極集電体を用意した。正極集電体のサイズは、幅150mm、長さ100m、厚さ8μmである。正極集電体はアルミニウム箔から成る。正極集電体の厚みは12μmである。正極集電体開口率は0%である。
【0224】
正極集電体の両面に、それぞれ正極下塗り層を形成した。正極下塗り層の上に、さらに正極活物質層を形成した。正極活物質層の厚みは144μmである。正極活物質層は、負極集電体93の長手方向に沿って形成されている。正極活物質層は、活性炭、アセチレンブラック、バインダー及び分散剤を、質量比で88:5:3:3の比率で含んでいた。以上の工程により、蓄電デバイス用正極が得られた。
【0225】
実施例7の蓄電デバイス用負極75における負極集電体開口率、負極集電体の厚み、負極の放電容量C2、正極の放電容量C1、放電容量比率X、負極活物質層へのリチウムドープ割合、及び負極活物質の目付量を表1に示す。また、後述する実施例6~9及び比較例3~5における上記の数値も表3に示す。評価の方法は以下のとおりである。
【0226】
【0227】
(負極の放電容量C2の測定)
負極の放電容量C2とは、0V vs. Li/Li+から3V vs. Li/Li+の間で負極を充放電した際の負極の放電容量であり、具体的には、以下の通り測定した。上記(6-1)で得られた蓄電デバイス用負極から直径16mmの寸法の放電容量測定用試料を切り出した。この試料の対極として、縦横の寸法が16mmで、厚みが200μmの金属リチウムを用意した。また、セパレータくとして厚み50μmのポリエチレン製不織布を用意した。試料の両面にセパレータを介して対極を配置し、参照極として金属リチウム板を備え、電解液として1.4MのLiPF6を含み、エチレンカーボネートと、1-フルオロエチルカーボネートと、エチルメチルカーボネートとを、1:2:7の体積比で含む混合液が用いられてなる構成のコイン型セルを作製した。
【0228】
得られたコイン型セルに対して、充填電流4mAで0Vになるまで充電し、その後充電電流が0.4mAに絞られるまで0Vで定電流‐定電圧充電を行った。次いで、放電電流4mAでセル電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行い、得られた放電容量から負極活物質量を除することで単位負極活物質量あたりの放電容量C2を算出した。
【0229】
また、正極の放電容量C1とは、セル電圧2.2Vから3.8Vの間で充放電した際の正極の放電容量であり、具体的には、以下の通り測定した。上記(6-2)で得られた蓄電デバイス用正極から直径15mmの寸法の放電容量測定用試料を切り出した。また、上記(6-1)で得られた蓄電デバイス用負極から直径16mmの寸法の放電容量測定用試料を切り出した。そして、セパレートを介して正極と対極とを配置した。セパレータとしては厚み50μmのポリエチレン製不織布を用いた。そして、電解液として1.2MのLiPF6を含み、エチレンカーボネートと、1-フルオロエチルカーボネートと、エチルメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合液が用いられてなる構成のコイン型セルを作製した。
【0230】
得られたコイン型セルに対して、4mAの定電流でセル電圧が3.8Vになるまで充電した。その後、充電電流が0.4mAに絞られるまで0Vで定電流‐定電圧充電を行った。その後、4mAの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した。以上の2回繰り返し、2回目の放電における放電容量を測定した。この測定値から負極活物質量を除することで単位負極活物質量あたりの正極の放電容量C1とした。
【0231】
放電容量比率Xとは、以下の式(3)で定義される値である。ここではC1及びC2の単位はmAh/gである。
【0232】
式(3) X=C1/C2
負極活物質層へのリチウムのドープ割合(%)とは、負極の放電容量C2に対する、負極活物質層へのリチウムのドープ量の比率である。リチウムのドープ量の単位はmAh/gである。
【0233】
(6-3)実施例8の蓄電デバイス用負極の製造
基本的には実施例7と同様にして、実施例8の蓄電デバイス用負極を製造した。ただし、負極活物質層へのリチウムのドープ割合が40%である点で相違する。
【0234】
(6-4)実施例9~11の蓄電デバイス用負極の製造
基本的には実施例7と同様にして、実施例9~11の蓄電デバイス用負極を製造した。ただし、負極活物質の種類、負極の放電容量C2、放電容量比率X、及び負極活物質の目付量の点で相違する。
【0235】
(6-5)比較例4の蓄電デバイス用負極の製造
基本的には実施例7と同様にして、比較例3の蓄電デバイス用負極を製造した。ただし、正極の放電容量C1、放電容量比率X、及び負極活物質層の目付量の点で相違する。
【0236】
(6-6)比較例5の蓄電デバイス用負極の製造
基本的には実施例7と同様にして、比較例5の蓄電デバイス用負極を製造した。ただし、負極集電体開口率の点で相違する。比較例5において、負極集電体は、複数の貫通孔を備える。複数の貫通孔の平均孔径は90μmである。貫通孔同士の間隔の平均値は147μmである。比較例5では、負極集電体開口率が高いため、負極活物質層の形成中に電極が破断した。
【0237】
(6-7)比較例6の蓄電デバイス用負極の製造
基本的には比較例5と同様にして、比較例6の蓄電デバイス用負極を製造した。ただし、負極集電体の厚みが10μmである点で相違する。
【0238】
(6-8)蓄電デバイス用負極の評価
実施例7~11及び各比較例4~6の蓄電デバイス用負極について、リチウムイオンキャパシタの用途に用いた際の評価を行った。具体的には、初期容量と、初期抵抗と、10万サイクル後容量維持率(%)と、Li析出有無を評価した。その結果を上記表3に示す。評価の方法は以下のとおりである。
【0239】
(評価用セルの作製)
10.0cm×13.0cmの大きさ(ただし端子溶接部を除く)の負極を15枚切り出した。また、9.7cm×12.5cmの大きさ(ただし端子溶接部を除く)の正極を14枚切り出した。正極集電体はアルミニウム箔から成る。正極集電体の厚みは12μmである。正極集電体開口率は0%である。
【0240】
正極集電体の両面に、それぞれ正極下塗り層を形成した。正極下塗り層の上に、さらに正極活物質層を形成した。正極活物質層の厚みは144μmである。正極活物質層は、負極集電体93の長手方向に沿って形成されている。
【0241】
そして、厚さ35μmのポリエチレン製不織布からなるセパレータを介して、正極と負極とを交互に積層し、電極積層ユニットを作製した。このとき、正極集電体の端子溶接部と、負極集電体の端子溶接部とが反対側になるようにした。また、電極積層ユニットの最外部に負極が配置されるようにした。
【0242】
次に、電極積層ユニットの最上部及び最下部にそれぞれセパレータを配置し、電極積層ユニットの4辺をテープ留めした。次に、14枚の正極集電体のそれぞれについて、端子溶接部をアルミニウム製の正極端子に超音波溶接し、15枚の負極集電体のそれぞれについて、端子溶接部をニッケル製の負極端子に抵抗溶接した。
【0243】
次に、電極積層ユニットをラミネートフィルムの内部へ設置し、開口部を他方のラミネートフィルムで覆って三辺を融着した。そして、ラミネートフィルム内に電解液を真空含浸させた後に、開口していたラミネートフィルムの残り一辺を融着した。電解液は、1.2MのLiPF6を含み、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合液である。以上の工程により、評価用セルが完成した。
【0244】
(初期評価)
作製した評価用セルを、7Aの定電流でセル電圧が3.8Vになるまで充電した。その後、3.8Vの定電圧を印可する定電流―定電圧充電を30分間行った。その後、7Aの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した。以上のサイクルを繰り返すサイクル試験を行い、2回目の放電における放電容量を測定した。この測定値を正極活物質層及び負極活物質層の合計面積で除した値を単位活物質面積あたりの初期放電容量とした。また、2回目の放電開始直前の電圧と放電開始3秒後の電圧との電圧差を放電電流で除した値を測定した。この測定値を初期抵抗とした。初期抵抗は、セルの直流内部抵抗である。
【0245】
(10万サイクル後容量維持率)
次に、評価用セルを、70Aの定電流で3.8Vになるまで充電した。次に、70Aの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した。以上のサイクルを10万サイクル繰り返した。
【0246】
次に、評価用セルを、7Aの定電流でセル電圧が3.8Vになるまで充電した。その後、3.8Vの定電圧を印可する定電流―定電圧充電を30分間行った。その後、7Aの定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した。以上のサイクルを繰り返すサイクル試験を行い、2回目の放電におけるセル容量を10万サイクル後の放電容量とした。10万サイクル後容量維持率(%)は下記式(8)に基づき算出した。
【0247】
式(8) 10万サイクル後容量維持率(%)=(10万サイクル後の放電容量/初期放電容量)×100
(Li析出評価)
前記の10万サイクル充放電の後、評価用セルを解体し、蓄電デバイス用負極を取り出した。取り出した蓄電デバイス用負極のそれぞれについて、リチウム金属が析出している範囲の面積(以下ではリチウム析出面積とする)を測定した。
【0248】
リチウム析出面積が5%以下の蓄電デバイス用負極が無い場合、「A」と評価し、5%以上の蓄電デバイス用負極が存在する場合、「B」と評価した。
【0249】
リチウム析出面積(%)は、下記式(9)により求めた。
【0250】
式(9) リチウム析出面積(%)=(蓄電デバイス用負極のリチウム析出面積)/(蓄電デバイス用負極全体の面積)×100
評価結果を表4に示す。
【0251】
【0252】
実施例7~11の蓄電デバイス用負極では、初期容量が高く、初期抵抗が低く、10万サイクル後容量維持率が高く、Li析出はみられなかった。
【0253】
それに対し、比較例4の蓄電デバイス用負極では、10万サイクル後容量維持率が低く、Li析出が確認された。比較例5の蓄電デバイス用負極は、負極活物質層形成中に電極が破断し、セルでの評価はできなかった。また、比較例6の蓄電デバイス用負極では、初期抵抗が大きかった。
【0254】
7.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0255】
(1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0256】
(2)上述した蓄電デバイスの他、当該蓄電デバイスを構成要素とするシステム等、種々の形態で本開示を実現することもできる。