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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】流動性バルク粒状多糖
(51)【国際特許分類】
   C08B 11/145 20060101AFI20230905BHJP
   C12P 19/18 20060101ALI20230905BHJP
   C08B 37/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C08B11/145
C12P19/18
C08B37/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020519721
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018055573
(87)【国際公開番号】W WO2019075301
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】62/571,995
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/725,532
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520346620
【氏名又は名称】ニュートリション・アンド・バイオサイエンシーズ・ユーエスエー・フォー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・アラン・ベル
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・エム・フェイク
(72)【発明者】
【氏名】スコット・エム・ハーキマー
(72)【発明者】
【氏名】ディレン・ヴィ・パテル
(72)【発明者】
【氏名】タイラー・ディー・プリチェット
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-205144(JP,A)
【文献】国際公開第2016/123644(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0230348(US,A1)
【文献】特開2008-075075(JP,A)
【文献】特表2019-531361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
C12P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
.1~10mmの平均サイズを備える粒子を含む組成物であって、前記粒子は、少なくとも
(i)50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び
(ii)10重量%~50重量%の不溶性α-グルカン又は前記不溶性α-グルカンの不溶性カチオン性エーテルを含み、
前記不溶性α-グルカンは、α-1,3-グリコシド結合を含み、及び少なくとも100の重量平均重合度(DPw)を有する組成物。
【請求項2】
前記不溶性α-グルカンは、少なくとも50%のα-1,3-グリコシド結合を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粒子は、30重量%~45重量%の前記不溶性α-グルカン又はその不溶性カチオン性エーテルを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、粉末状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記不溶性α-グルカンは、少なくとも水、スクロース及び不溶性α-グルカンを合成するグルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む反応組成物中で酵素的に生成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記粒子は、第1組成物を粒子形成装置と接触させる工程によって生成され、前記第1組成物は、少なくとも(i)50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)10重量%~50重量%の不溶性α-グルカンを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1組成物は、前記不溶性α-グルカンのケーキである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記粒子は、前記不溶性α-グルカンを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物を調製する方法であって:
(a)少なくとも(i)50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)10重量%~50重量%の不溶性α-グルカン又は前記不溶性α-グルカンの不溶性カチオン性エーテルを含む第1組成物を提供する工程、及び
(b)0.1~10mmの平均サイズを備える前記第1組成物の粒子を提供する工程を含む方法。
【請求項10】
前記第1組成物は、前記不溶性α-グルカンのケーキである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)は、前記第1組成物と粒子形成装置とを接触させる工程であって、任意選択的に、前記粒子形成装置は、前記第1組成物が強制的に移動させられる複数の0.1mm~10mmの通路を含み、及び任意選択的に更に、前記粒子形成装置はスクリーンを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物を保管及び/又は移動させるためのシステムであって、前記システムは、1つの容器であって、前記容器の底部部分に配置された少なくとも1つの開閉可能な排出口を備える容器を含み、前記容器の少なくとも一部分は前記排出口に向かってテーパ付けされており、及び前記組成物は前記容器内にあり、前記排出口が開放している場合は前記容器の外へ連続的に流出する容器を含むシステム。
【請求項13】
前記容器は、ホッパー、ビン、サイロ又はバルクバッグである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記排出口の最小断面領域は、少なくとも4インチ(10.16cm)のスパンを有する、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
前記容器の前記少なくとも一部分のテーパリングは、垂直から少なくとも30度である、請求項12~14のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/571,995号明細書(2017年10月13日出願)及び同第62/725,532号明細書(2018年8月31日出願)の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、多糖材料の分野に含まれる。例えば、本開示は、好都合な流動特性を有する不溶性α-グルカン粒子を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
多糖を様々な用途に使用することが望まれているため、研究者らは、生分解性であり、且つ再生可能に供給される原料から経済的に製造することができる多糖を探求してきた。そのような多糖の1つは、α-1,3-グリコシド結合を有することを特徴とする不溶性グルカンポリマーであるα-1,3-グルカンである。このポリマーは、例えば、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)から単離されたグルコシルトランスフェラーゼ酵素を使用して調製されている(非特許文献1)。又、例えば、特許文献1は、酵素により生成されたα-1,3-グルカンからの紡糸繊維の調製を開示した。様々な他のグルカン材料も又、新規若しくは強化された用途を開発するために研究されてきた。例えば、特許文献2は、混合α-1,3及びα-1,6結合を有する数種の不溶性グルカンの酵素的合成について開示している。
【0004】
典型的には、高含水量を備えるバルク粒状材料は、例えばそのような材料を用いた下流操作(例えば、保管及び輸送)にマイナスの影響を及ぼし得る低流動性等の不良な材料取り扱い特性を有する。高水分のバルク材料を取り扱うためには、高額で複雑な装置が概して必要とされる。本明細書に開示した、多糖をベースとする材料に関するこの問題の解決策は、好都合な流動特性を備える高水分の不溶性α-グルカン組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7000000号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0232819号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Simpson et al.,Microbiology 141:1451-1460,1995
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態では、本開示は、約0.1~10mmの平均サイズを備える粒子を含む組成物であって、粒子が少なくとも(i)約50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカン又はその不溶性カチオン性エーテルを含み、ここで不溶性α-グルカンが、α-1,3-グリコシド結合を含み、及び少なくとも100の重量平均重合度(DPw)を有する組成物に関する。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、本明細書に開示した組成物を調製する方法であって、(a)少なくとも(i)約50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカン又はその不溶性カチオン性エーテルを含む第1組成物を提供する工程、及び(b)約0.1~10mmの平均サイズを備える第1組成物の粒子を提供する工程を含む方法に関する。
【0009】
別の実施形態では、本開示は、本明細書に開示した組成物を保管する及び/又は移動させるためのシステムであって、そのシステムは、1つの容器であってその容器の底部部分に配置された少なくとも1つの開閉可能な排出口を備える容器を含み、その容器の少なくとも一部分は排出口に向かってテーパ付けされており、組成物が容器内にあり、排出口が開放している場合は容器の外へ連続的に流出するシステムに関する。
【0010】
別の実施形態では、本開示は、本明細書に開示した組成物を輸送するためのシステムであって、導管及びその導管に通して組成物を輸送するためのガスを含み、任意選択的にシステムの作動圧は約5~105絶対psiであり、及び任意選択的にガスは空気若しくは不活性ガスであるシステムに関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
引用する全ての特許文献及び非特許文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
特に開示しない限り、本明細書で用いられるような用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の言及される特徴を包含することを意図する。
【0013】
存在する場合、全ての範囲は、特に記載しない限り、包括的且つ結合可能である。例えば、「1から5」(即ち、1~5)の範囲が挙げられる場合、挙げられた範囲は、「1から4」、「1から3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」等を含むものと解釈すべきである。
【0014】
用語「α-グルカン」、「α-グルカンポリマー」等は、本明細書では同じ意味で用いられる。α-グルカンは、α-グルコシド結合によって一緒に連結されたグルコースモノマー単位を含むポリマーである。代表的な実施形態では、本明細書のα-グルカンは、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のα-グリコシド結合を含む。本明細書のα-グルカンポリマーの例としては、α-1,3-グルカンが挙げられる。
【0015】
用語「ポリα-1,3-グルカン」、「α-1,3-グルカン」、「α-1,3-グルカンポリマー」等は、本明細書では同じ意味で用いられる。α-1,3-グルカンは、グリコシド結合により一緒に連結されているグルコースモノマー単位を含むポリマーであり、ここでグリコシド結合の少なくとも約30%は、α-1,3である。特定の実施形態におけるα-1,3-グルカンは、少なくとも約90%又は95%のα-1,3グリコシド結合を含む。本発明のα-1,3-グルカンにおける他の結合の大部分又は全ては、典型的にはα-1,6であるが、一部の結合は更にα-1,2及び/又はα-1,4であってもよい。
【0016】
用語「グリコシド結合(glycosidic linkage)」及び「グリコシド結合(glycosidic bond)」、「結合」等は、本明細書では同じ意味で使用され、炭水化物(糖)分子を別の炭水化物等の別の基に結合させる共有結合を意味する。本明細書で使用する用語「α-1,3-グリコシド結合」は、隣接α-D-グルコース環上の炭素1及び3を介してα-D-グルコース分子を相互に結合するタイプの共有結合を意味する。本明細書で使用する用語「α-1,6-グリコシド結合」は、隣接α-D-グルコース環上で炭素1及び6を介してα-D-グルコース分子を相互に結合する共有結合を意味する。本明細書のグルカンポリマーのグリコシド結合は、「グルコシド結合」も呼ぶこともできる。本明細書では、「α-D-グルコース」は、「グルコース」と呼ばれる。
【0017】
本明細書のα-グルカンのグリコシド結合プロファイルは、当分野において公知の任意の方法を使用して決定され得る。例えば、結合プロファイルは、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば、13C NMR又はH NMR)を使用する方法を用いて決定され得る。使用され得るこれらや他の方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるFood Carbohydrates:Chemistry,Physical Properties,and Applications(S.W.Cui,Ed.,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor & Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に開示されている。
【0018】
本明細書の大きなα-グルカンポリマーの「分子量」は、重量平均分子量(Mw)又は数平均分子量(Mn)として表すことができ、それらの単位はダルトン又はグラム/モルである。或いは、大きなα-グルカンポリマーの分子量は、DPw(重量平均重合度)又はDPn(数平均重合度)として表すことができる。オリゴ糖等のより小さいα-グルカンポリマーの分子量は、典型的には、α-グルカン内に含まれるグルコースの数を単に指す、「DP」(重合度)として提供され得る。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による等の、これらの様々な分子量の測定値を算出するための様々な手段は、当分野において公知である。
【0019】
用語「粒子」、「微粒子」、「顆粒」、「粒」、「薄片」等の用語は、本明細書では同じ意味で使用される。本明細書の粒子は、約0.1~10mm(ミリメートル)の平均サイズ(又は平均公称寸法)を有する。用語「微粒子状」、「粒状」等の用語は、本明細書の不溶性グルカン(若しくはそのカチオン性エーテル)の粒子を特徴付けるために使用され得る。一部の態様における粒子サイズは、粒径及び/又は最長粒子寸法の長さを意味し得る。平均サイズは、例えば、少なくとも50、100、500、1000、2500、5000若しくは10000個以上の粒子の直径及び/又は最長粒子寸法の平均に基づき得る。
【0020】
用語「粉末状」及び類似の用語は、本明細書では粒状の不溶性グルカン(若しくはそのカチオン性エーテル)を質感及び/又は外観において粉末に似ていると特徴付けるために任意選択的に使用され得る。「粉末」は、概して20重量%未満(典型的には15、10、5、3、1、0.5若しくは0.1重量%未満)の含水量を備える、微細なサラサラの粒子の状態に小さくされた任意の固体物質であると定義されている。用語「粉末状」は、本明細書に開示した組成物が少なくとも約50重量%の水若しくは水溶液を有するので、上記に定義した粉末とは区別される。
【0021】
本明細書の「粒子形成装置」等の用語は、フィルターケーキ等の不溶性グルカン(又はそのカチオン性エーテル)のより大きな形態/調製物から不溶性グルカン(若しくはそのカチオン性エーテル)の粒子を調製するために使用され得る任意の装置を意味する。
【0022】
用語「グルコシルトランスフェラーゼ」、「グルコシルトランスフェラーゼ酵素」、「GTF」、「グルカンスクラーゼ」等は、本明細書では同じ意味で使用される。本明細書のグルコシルトランスフェラーゼの活性は、生成物であるα-グルカン及びフルクトースを製造するための基質スクロースの反応を触媒する。GTF反応の他の生成物(副生物)には、グルコース、様々な可溶性グルコ-オリゴ糖及びロイクロースが含まれ得る。グルコシルトランスフェラーゼ酵素の野生型形態は、概して、(N末端からC末端の方向に)シグナルペプチド(典型的には、切断プロセスにより除かれる)、可変ドメイン、触媒ドメイン及びグルカン結合ドメインを含有する。本明細書のグルコシルトランスフェラーゼは、CAZy(Carbohydrate-Active EnZymes)データベース(Cantarel et al.,Nucleic Acids Res.37:D233-238,2009)によると、グリコシドヒドロラーゼファミリー70(GH70)の下に分類される。
【0023】
「酵素反応」、「グルコシルトランスフェラーゼ反応」、「グルカン合成反応」、「反応組成物」、「反応調製物」等の用語は、本明細書では同意味で使用され、概して、最初に水、スクロース、少なくとも1種の活性グルコシルトランスフェラーゼ酵素及び任意選択的に他の成分も含む反応を指す。
【0024】
本明細書の不溶性α-グルカン(若しくはそのカチオン性エーテル)の「ケーキ」は、少なくとも(i)約50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカンを含む凝縮形、圧縮(compacted)形、充填形、圧搾形及び/又は圧縮(compressed)形にある調製物を指す。一部の態様におけるケーキは、「フィルターケーキ」又は「ウェットケーキ」と呼ぶことができる。
【0025】
用語「体積によるパーセント」、「体積パーセント」、「体積%」、「v/v%」等は、本明細書では同じ意味で用いられる。溶液中の溶質の体積によるパーセントは、次式:[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%を使用して決定できる。
【0026】
用語「重量によるパーセント」、「重量パーセント(重量%)」、「重量-重量百分率(%w/w)」等は、本明細書では同じ意味で用いられる。重量によるパーセントは、組成物、混合物又は溶液中に物質が含まれるときに質量基準での物質の百分率を指す。
【0027】
ポリペプチドアミノ酸配列に関して本明細書で使用される用語「配列同一性」、「同一性」等は、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2017/0002336号明細書に定義及び決定されている通りである。
【0028】
本明細書で使用する「水性液体」、「水性流体」等の用語は、水若しくは水溶液を指すことができる。本明細書の「水溶液」は、1種以上の溶解塩を含むことができ、一部の実施形態では、最大全塩濃度は、約3.5重量%であり得る。本明細書の水性液体は、典型的には、液体中の唯一の溶媒として水を含むが、水性液体は、任意選択的に、水に混和する1種以上の他の溶媒(例えば、極性有機溶媒)を含み得る。従って、水溶液は、少なくとも約80重量%の水を有する溶媒を含み得る。
【0029】
「不溶性(insoluble)」、「水不溶性(aqueous-insoluble)」、「水不溶性(water-insoluble)」(及び同様の用語)(例えば、不溶性α-1,3-グルカン)であるグルカン又はそのカチオン性エーテル誘導体は、水若しくは他の水性条件では溶解しない(又は認め得るほどには溶解しない(ここで、水性条件は、任意選択的に、4~9(例えば、6~8)のpH及び/又は約1~85℃(例えば、20~25℃)の温度を有することを更に特徴とする)。対照的に、「可溶性(soluble)」、「水溶性(aqueous-soluble)」、「水溶性(water-soluble)」等である本明細書の所定のオリゴ糖等のグルカン(例えば、8未満のDPを備えるα-1,3-グルカン)は、これらの条件下で感知可能に溶解する。
【0030】
α-グルカンエーテル、特に「カチオン性α-グルカンエーテル」に関して本明細書で使用する用語、例えばカチオン性α-1,3-グルカンエーテルは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0311935号明細書に規定されている。本明細書で使用する用語「置換度」(DoS)は、α-1,3-グルカンエーテルの各モノマー単位(グルコース)中の(エーテル結合を介して正荷電有機基で)置換されたヒドロキシル基の平均数を指す。本明細書の不溶性カチオン性α-1,3-グルカンエーテルは、一部の態様ではより高いDoS(>0.3)は可溶性カチオン性α-1,3-グルカンエーテルと結び付けられ得るので、約0.3(例えば、0.001~0.3)までのDoSを有し得る。
【0031】
本明細書で使用する、正荷電有機基は、他の原子若しくは官能基(例えば、「置換アルキル基」)で置換された1個以上の水素原子を有する、1つ以上の炭素の鎖(「炭素鎖」)を意味するが、ここで1つ以上の置換は、正荷電基による置換である。正荷電有機基が正荷電基との置換に加えて更に1つの置換を有する場合、そのような追加の置換は1つ以上のヒドロキシル基、酸素原子(それによりアルデヒド基若しくはケトン基を形成する)、アルキル基及び/又は追加の正荷電基とであってよい。正荷電有機基は、それが1つ以上の正荷電基を含むので、正味の正荷電を有する。「正荷電基」、「正荷電イオン基」、「カチオン基」等の用語は、本明細書では同じ意味で使用される。正荷電基は、1つのカチオン(正荷電イオン)を含む。正荷電基の例としては、置換アンモニウム基、カルボカチオン基及びアシルカチオン基が挙げられる。
【0032】
本明細書の用語「出口(outlet)」、「排出口」、「出口(exit)」等の用語は、開放している場合、材料が容器から出ること(容器からの排出)を許容し得る開閉可能な開口部を意味する。1つ以上の排出口は、典型的には容器の底部又はさもなければ底部部分の他の場所に配置され得る。一部の態様では、排出口の「直径」は、排出口の最小断面積の直径(出口が円形の場合)又は最長直径(出口が楕円形の場合)を意味する。本明細書の排出口は、典型的には容器の下方に突き出る(向いている)。
【0033】
本明細書の用語「テーパ付き」等は、排出口に向かう容器の一部分の狭小化(例えば、段階的及び/又は一様な狭小化)を意味する。そのような狭小化は、典型的には排出口の最小断面積に向かって下方へ伸びる。本明細書で使用する「垂直からの角度」は、テーパリングの相対勾配(steepness)を特徴付ける。テーパリングの勾配は、垂直からの角度が減少するにつれて増加する;例えば、垂直から60度のテーパリングは、垂直から30度のテーパリングよりも急勾配ではない(即ち、グレードがより低い)。垂直からの0度はテーパリングがないことを表すと理解すべきである。任意選択的に、「水平からの角度」は、テーパリングを記載するために使用することができ、垂直からの角度を90度から単純に減じることによって計算される。
【0034】
本明細書の1つ以上の排出口を有する「容器」は、典型的には本開示の少なくとも約100kg(キログラム)の不溶性αグルカン粒子を保持/保管する、及び/又は輸送するために好適である。
【0035】
本明細書で使用する「psia」(絶対psi(ポンド/平方インチ絶対圧力))は、大気圧よりむしろ真空に比較した圧力の単位を意味する。大気圧は、例えば、14.7絶対psiである。5絶対psiの圧力は、例えば、部分真空を特徴とする。
【0036】
用語「単離(された)」は、自然には発生しない形態又は環境にある物質(又はプロセス)を意味する。単離物質の非限定的例としては、本明細書の粒状の不溶性グルカン等(並びにそれを調製するために使用された酵素的反応及び他のプロセス)の任意の非天然型物質が挙げられる。本明細書に開示した実施形態は、合成/人工である(ヒトの介入/関与がなかったら製造できなかったであろう)、及び/又は天然型ではない特性を有すると考えられる。
【0037】
本明細書で使用する用語「増加した」は、増加した量又は活性が、それと比較される量又は活性より少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、50%、100%又は200%多い量又は活性を指すことができる。用語「増加した」、「上昇した」、「増強された」、「~より多い」、「改善された」等の用語は、本明細書では同じ意味で使用される。
【0038】
高水分のバルク材料を取り扱うためには、高額で複雑な装置が概して必要とされる。本明細書に開示した、多糖をベースとする材料に関するこの問題の解決策は、好都合な流動特性を備える高水分の不溶性α-グルカン組成物である。
【0039】
本開示の所定の実施形態は、約0.1~10mmの平均サイズを備える粒子を含むか又は粒子から成る組成物に関する。これらの粒子は、少なくとも、(i)約50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカン又はその不溶性カチオン性エーテルを含むか又はそれらから成り、ここで不溶性α-グルカンは、α-1,3-グリコシド結合を含み、及び少なくとも100の重量平均重合度(DPw)を有する。そのような高水分の不溶性α-グルカン組成物は、より経済的な保管及び輸送プロセスを可能にする好都合な流動特性を有する。
【0040】
本明細書の組成物は、約0.1~10mmの平均サイズを備える粒子を含む。一部の態様では、粒子の平均サイズは、約0.1~7、0.1~6、0.1~5、0.1~4、0.1~3、0.1~2、0.5~7、0.5~6、0.5~5、0.5~4、0.5~3、0.5~2、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、1~10、2~10、2~8、2~6、2~4、4~10、4~8、4~6、6~10、6~8、8~10、5~10、5~7、6~7、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10mmである。これらのサイズ範囲の何れかの粒子の単離は、例えば、適切なサイズのメッシュ/ふるいを使用して実施できる。これらのツールは、更に粒子サイズを決定/確証するためにも使用できる。本開示の組成物の粒子は、一部の態様では、約7、6、5、4、3若しくは2mm又はそれ以下である。一部の態様における粒子サイズは、任意選択的に1、2、3、4、5、6、7、8、9及び/又は10mmの通路を備えるスクリーン/ふるい(例えば、おろし金)を含む粒子生成装置に通して(又は粒子形成装置について下記で記載する通路に通して)不溶性α-グルカンを強制的に通過させることによって生成される粒子サイズによって特徴付けることができる。この方法で生成される粒子は、典型的には、通路のサイズと同等又はそれ以下のサイズにある。
【0041】
本明細書の組成物中の粒子は、約50重量%~90重量%の水若しくは水溶液を含む。一部の態様では、粒子は、約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、50~90、50~80、50~70、50~60、55~80、60~90、60~80、60~70、55~65、55~80又は70~80重量%の水若しくは水溶液を含み得る。そのような粒子は高含水量を有するが、それらを含む組成物はスラリー、コロイド状懸濁液の形態又は他の液体/流体形にはない。むしろ、一部の態様における組成物は、外観及び/又は質感において粉末状(粉末に似ている)であると特徴付けることができるが、本組成物の粒子は、典型的な粉末よりはるかに多い液体含水量を有する(上記の定義を参照されたい)。
【0042】
水若しくは水溶液は、本明細書の粒子中に含まれる。一部の態様における水溶液は、(検出可能な)溶存糖を有していないか又は約0.1~1.5、0.1~1.25、0.1~1.0、0.1~.75、0.1~0.5、0.2~0.6、0.3~0.5、0.2、0.3、0.4、0.5若しくは0.6重量%の溶存糖を有する。そのような溶存糖としては、例えば、スクロース、フルクトース、ロイクロース及び/又は可溶性グルコ-オリゴ糖を挙げることができる。一部の態様における水溶液は、1種以上の塩/緩衝液(例えば、Na、Cl、NaCl、リン酸塩、トリス、クエン酸塩)(例えば、≦0.1、0.5若しくは1.0重量%)及び/又はグルコシルトランスフェラーゼ反応条件について下記に列挙するようなpH(例えば、pH6.0~8.0)を有し得る。一部の態様では、本明細書の水溶液の溶媒は、約又は少なくとも約80、85、90、95、96、97、98、99、99.5若しくは100重量%の水を含み得る;溶媒の残りは、例えば、極性有機溶媒であってよい。
【0043】
本明細書の組成物中の粒子は、約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカン及び/又はその1種以上の不溶性カチオン性エーテルを含む。一部の態様では、粒子は、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、10~50、10~40、10~30、10~20、20~50、20~45、20~40、20~30、30~50、30~40、40~50、30~45、35~45、37.5~42.5、35~40若しくは40~45重量%の不溶性α-グルカン及び/又はその1種以上の不溶性カチオン性エーテルを含む。一部の態様における粒子は、不溶性α-グルカンを含み、そのカチオン性エーテルを含まない(及びその逆も同様である)。不溶性α-グルカンは、一部の態様では誘導体化されていない(例えばエステル化のように化学的に修飾されていない)。
【0044】
本明細書の組成物中の粒子は、水及び不溶性α-グルカン(及び/又はその不溶性カチオン性エーテル)並びに任意選択的に上記に開示した他の成分(例えば、溶存糖、塩、緩衝剤及び/又は極性有機溶媒)の何れかを含むか又はそれらから成る。本明細書の粒子は、典型的には、約0.5、0.1若しくは0.05重量%未満(又は検出可能な量未満)の例えば充填剤(例えば、木材、パルプ若しくは任意の他の固体物質)若しくは可塑剤(例えば、グリセロール)等の任意の他の物質を含むか又は全く含まない。
【0045】
本明細書の粒子を含む組成物は、例えば、約4~30、10~30、15~30、20~30、25~30、15~25若しくは20~25℃の温度にあってよい。一部の実施形態では、粒子(例えば、輸送コンテナ内におけるようにバルク量で存在する粒子)を含む組成物の重量は、少なくとも約100、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100若しくは1200kg又は少なくとも約1、1.5、2、2.5、5、10、20、25、50、75若しくは100(米国若しくはメートル)トンであり得る、及び/又は約50~550ポンド/平方フィートの圧縮後に約35、36、37、38、39、40、41、42、35~42、35~40、37~42若しくは37~40ポンド/立方フィートの密度を有し得る。重要なことに、そのような高い重量及び/又は密度にある粒子の実施形態は、(下記で記載する)商業的サイズ/バルク容器からの連続的流動性を示す。本明細書のサラサラのバルク材料(即ち、何らかの圧縮手技を受けていない組成物)の密度は、例えば、約31~38、31~37、32~38若しくは32~37ポンド/立方フィートであり得る。
【0046】
一部の態様における粒子は、α-1,3-グリコシド結合を含み、及び少なくとも100の重量平均重合度(DPw)を有する約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカンを含み得る。一部の態様では、不溶性α-グルカンの構成的グリコシド結合の少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%若しくは100%(又は、50%~100%の間の任意の整数)は、α-1,3結合である。従って、一部の態様では、不溶性α-グルカンは、約50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%若しくは0%未満(又は、0%~50%の間の任意の整数値)のα-1,3ではないグリコシド結合を有する。典型的には、α-1,3ではない結合は、殆ど又は全部がα-1,6である。ポリマー内では分岐点を形成する所定の結合の発生率はより低いので、α-グルカン内に存在するα-1,3結合のパーセンテージが高くなる程α-グルカンが直鎖状である確率が高くなることを理解すべきである。従って、100%のα-1,3結合を備える不溶性α-グルカンは、完全に直鎖状であると考えられる。所定の実施形態では、不溶性α-グルカンは、分岐点を有していないか又はポリマー内のグリコシド結合のパーセントとして約5%、4%、3%、2%又は1%未満の分岐点を有する。分岐点の例としては、α-1,3結合骨格から生じるα-1,6、α-1,2及びα-1,4分岐点が挙げられる。
【0047】
本明細書の不溶性α-グルカンは、一部の態様では、少なくとも約100のDPw又はDPnの分子量を有し得る。一部の実施形態におけるDPw又はDPnは、少なくとも約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100若しくは1200(又は、100~1200の間の任意の整数)であり得る。α-グルカンのDPw又はDPnは、任意選択的にこれらの数値の任意の2つの間の範囲(例えば、100~1200、400~1200、700~1200、100~1000、400~1000、700~1000)として表示し得る。
【0048】
本明細書のα-グルカンは、本明細書のグルコシルトランスフェラーゼ反応の条件(例えば、pH4~8、下記を参照)等の非苛性水性系内で不溶性である。一般に、本明細書の水性状況におけるグルカンポリマーの溶解度は、その結合プロファイル、分子量及び/又は分岐度に関連する。例えば、≧95%の1,3結合を備えるα-1,3-グルカンは、概して、20℃の水性条件において8以上のDPwで不溶性である。一般に、分子量が増大するにつれて、α-1,3-グルカン不溶性のために必要とされるα-1,3結合のパーセンテージは減少する。
【0049】
一部の実施形態では、不溶性α-グルカンは、少なくとも約30%のα-1,3結合、並びにα-グルカン中のα-1,3結合及びα-1,6結合の両方の合計を100%にするパーセンテージのα-1,6結合を含む。例えば、α-1,3結合及びα-1,6結合のパーセンテージは、それぞれ、約30~40%及び60~70%であり得る。一部の態様では、少なくとも約30%のα-1,3結合を含む不溶性α-グルカンは、直鎖状である。少なくとも約30%のα-1,3結合を含む不溶性α-グルカンを生成するためのグルコシルトランスフェラーゼは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0232819号明細書に開示されている。
【0050】
一部の実施形態における不溶性α-グルカンは、(i)少なくとも約100000ダルトンの分子量を備える(例えば、少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%のα-1,6結合を備える)デキストランを含む骨格、及び(ii)少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%のα-1,3-グルコシド結合を含むα-1,3-グルカン側鎖を有するコポリマー(例えば、グラフトコポリマー)の形態であり得る。そのようなコポリマーは、参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第2017/079595号パンフレットに開示された通りであり得る。
【0051】
上記の任意の結合プロファイル及び/又は分子量プロファイルは、例えば、本明細書では本明細書の不溶性α-グルカンを適切に特徴付けるために結合され得る。一部の態様では、そのようなα-グルカンの結合及び/又は分子量プロファイルは、それらの全部が参照により本明細書に組み込まれる下記の刊行物:米国特許第7000000号明細書及び同第8871474号明細書、米国特許出願公開第2015/0232819号明細書及び国際特許出願公開第2017/079595号パンフレットの何れかに開示されている通りであり得る。上記の実施形態の不溶性α-グルカンは、例えば、下記に開示したグルカン合成反応プロセスの何れかの生成物であり得る。
【0052】
本明細書の不溶性α-グルカンは、水溶性であるアルテルナン(交互1,3及び1,6結合)を含んでいない。本明細書の不溶性α-グルカンは、典型的には不活性容器中(典型的には無細胞条件下)で酵素的に引き出されるが、細胞壁(例えば、真菌細胞壁)からは引き出されない。
【0053】
一部の態様における不溶性α-グルカンは、少なくとも水、スクロース及び不溶性α-グルカンを合成するグルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む反応組成物中で酵素的に生成され得る。そのような酵素反応物は、上記に開示した任意の不溶性α-グルカン分子(例えば≧90%若しくは≧95%のα-1,3-結合)を生成するグルコシルトランスフェラーゼ酵素を使用することができる。
【0054】
不溶性α-グルカンを生成するための所定の実施形態におけるグルコシルトランスフェラーゼ酵素は、例えば、米国特許出願公開第2014/0087431号明細書、同第2017/0166938号明細書、同第2017/0002335号明細書及び同第2018/0072998号明細書(米国特許出願第15/702,893号明細書)(それらの全部が参照により本明細書に組み込まれる)の何れかに開示されたアミノ酸配列を含み得る。そのような配列の例としては、米国特許出願公開第2014/0087431号明細書に開示されている配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、26、28、30、34若しくは59と100%同一であるか又は少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%若しくは99.5%同一であり、及びグルコシルトランスフェラーゼ活性を有する配列が挙げられる。米国特許出願公開第2014/0087431明細書に開示された配列番号2、4、8、10、14、20、26、28、30若しくは34を有するグルコシルトランスフェラーゼ酵素は、一部の態様では少なくとも約90%のα-1,3-グリコシド結合を含む不溶性α-1,3-グルカンを合成することができる。
【0055】
所定の態様におけるグルコシルトランスフェラーゼ酵素のアミノ酸配列は、その酵素が所定量のスクロース基質からより多くの生成物(不溶性α-グルカン及びフルクトース)とより少ない副生物(例えば、グルコース、例えばロイクロース等のオリゴ糖)とを生成するように改変されている。例えば、本明細書のグルコシルトランスフェラーゼの触媒ドメインの1、2、3、4個又はそれ以上のアミノ酸残基を改変/置換すると、より多くの生成物(不溶性α-グルカン及びフルクトース)を生成する酵素を得ることができる。
【0056】
本明細書のグルコシルトランスフェラーゼ酵素は、細菌等の任意の微生物源に由来し得る。細菌グルコシルトランスフェラーゼ酵素の例は、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種又はラクトバチルス(Lactobacillus)種に由来する酵素である。ストレプトコッカス(Streptococcus)種の例としては、S.サリバリウス(S.salivarius)、S.ソブリナス(S.sobrinus)、S.デンチロウセッティ(S.dentirousetti)、S.ダウネイ(S.downei)、S.ミュータンス(S.mutans)、S.オラリス(S.oralis)、S.ガロリティクス(S.gallolyticus)及びS.サングイニス(S.sanguinis)が挙げられる。ロイコノストック(Leuconostoc)種の例としては、L.メセンテロイデス(mesenteroides)、L.アメリビオスム(amelibiosum)、L.アルゲンチナム(argentinum)、L.カルノスム(carnosum)、L.シトレウム(citreum)、L.クレモリス(cremoris)、L.デキストラニカム(dextranicum)及びL.フルクトサム(fructosum)が挙げられる。ラクトバチルス(Lactobacillus)種の例としては、L.アシドフィルス(L.acidophilus)、L.デルブリュッキイ(L.delbrueckii)、L.ヘルベチクス(L.helveticus)、L.サリバリウス(L.salivarius)、L.カゼイ(L.casei)、L.クルバツス(L.curvatus)、L.プランタルム(plantarum)、L.サケイ(sakei)、L.ブレビス(L.brevis)、L.ブフネリ(L.buchneri)、L.フェルメンタム(L.fermentum)及びL.ロイテリ(L.reuteri)が挙げられる。
【0057】
本明細書の反応組成物の温度は、必要に応じて制御することができ、例えば、約5~50℃、20~40℃、30~40℃、20~30℃、20~25℃、20℃、25℃、30℃、35℃若しくは40℃とすることができる。
【0058】
本明細書の反応組成物中のスクロースの初期濃度は、例えば、約20~400g/L、75~175g/L又は50~150g/Lであり得る。一部の態様では、初期スクロース濃度は、少なくとも約50、75、100、150若しくは200g/Lであるか又は約50~600g/L、100~500g/L、50~100g/L、100~200g/L、150~450g/L、200~450g/L若しくは250~600g/Lである。「スクロースの初期濃度」は、全ての反応成分(例えば、少なくとも水、スクロース、グルコシルトランスフェラーゼ酵素)が添加/結合された直後の反応組成物中のスクロース濃度を意味する。
【0059】
所定の実施形態における反応組成物のpHは、約4.0~9.0、4.0~8.5、4.0~8.0、5.0~8.0、5.5~7.5又は5.5~6.5であり得る。一部の態様では、pHは、約4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5又は8.0であり得る。pHは、リン酸塩、トリス、クエン酸塩又はそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない、好適な緩衝剤の添加又は組み入れによって調整又は制御され得る。本明細書の反応組成物中の緩衝剤濃度は、例えば、約0.1~300mM、0.1~100mM、10~100mM、10mM、20mM又は50mMであり得る。
【0060】
グルコシルトランスフェラーゼ反応物は、本明細書に開示の1つ以上の反応条件を適用するために好適な任意の容器(例えば、不活性容器(vessel/container)に含有させられ得る。一部の態様における不活性容器は、ステンレス鋼製、プラスチック製若しくはガラス製であり得る(又は、これらの構成要素の2つ以上を含み得る)、及び特定の反応物を含有するのに好適なサイズであり得る。例えば、不活性容器の体積/容積(及び/又は本明細書の反応組成物の体積)は、約又は少なくとも約1、10、50、100、500、1000、2500、5000、10000、12500、15000若しくは20000リットルであり得る。不活性容器は、任意選択的に、撹拌装置を装備することができる。例えば上記の特徴の何れかを使用すると、本明細書の単離された反応物を特徴付けることができる。
【0061】
本明細書の反応組成物は、例えば、1種、2種又はそれ以上のグルコシルトランスフェラーゼ酵素を含有することができる。一部の実施形態では、反応組成物中に1種のみ又は2種のグルコシルトランスフェラーゼ酵素が含まれる。本明細書のグルコシルトランスフェラーゼ反応物は、無細胞(例えば、細胞が全く存在しない)であり得る、及び典型的には無細胞である。
【0062】
所定の実施形態における反応の完了は、視覚的に(例えば、不溶性α-グルカンがもはや蓄積しない)、且つ/又は溶液中に残ったスクロース(残留スクロース)の量を測定することによって決定できるが、この場合、少なくとも約90%、95%又は99%のスクロース消費率は反応完了を指示し得る。一部の態様では、反応は、そのスクロース含量が約2~5g/L以下にある場合に完了したと見なし得る。開示したプロセスの反応は、例えば、約1時間~約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、36、48、60、72、96、120、144又は168時間に渡り実施され得る。反応は、任意選択的に、グルコシルトランスフェラーゼ活性を(例えば、少なくとも約65℃へ少なくとも約30~60分間加熱することによって)停止させるために終了させる、及び/又はさもなければ処理することができる。
【0063】
本明細書の不溶性α-グルカンを合成するために好適な他の条件及び/又は成分の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0087431号明細書、同第2017/0166938号明細書及び同第2017/0002335号明細書に開示されている。
【0064】
本明細書のグルコシルトランスフェラーゼ反応において生成された不溶性α-グルカンは、典型的には、(i)約50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカンを含むケーキとして単離される。そのようなケーキは、任意選択的にフィルターケーキ若しくはウェットケーキとして特徴付けることができ、及び本開示の粒子を調製するために使用できる(下記を参照されたい)。ケーキ調製のために不溶性α-グルカンを単離する工程は、少なくとも遠心分離(ケーキはペレット化グルカンである)及び/又は濾過(ケーキは濾過グルカンである)の工程を含み得る。例えば、本明細書のウェットケーキは、漏斗、フィルター(例えば、回転真空ドラムフィルター、クロスフローフィルター、スクリーンフィルター、ベルトフィルター、スクリュープレス若しくは膜の圧搾能力有り若しくは無しのフィルタープレス等の表面フィルター;或いはサンドフィルター等のデプスフィルター)及び/又は遠心分離を使用して得ることができる;濾過は、例えば、重力、真空若しくは加圧濾過によってでよい。単離は、任意選択的に、更に遠心分離及び/又は濾過α-グルカンを1回,2回又はそれ以上に渡り水若しくは他の水性液体で洗浄する工程を含み得る。洗浄容積は、任意選択的に、例えば、不溶性α-グルカンを生成ずるために使用されたグルコシルトランスフェラーゼ反応物の容積の少なくとも約10~100%であり得る。洗浄は、所望に応じて、置換又は再スラリー洗浄による等の様々な方式で実施され得る。一部の態様では、生じたケーキの水性部分は、(検出可能な)溶存糖を有していないか又は約0.1~1.5、0.1~1.25、0.1~1.0、0.1~.75、0.1~0.5、0.2~0.6、0.3~0.5、0.2、0.3、0.4、0.5若しくは0.6重量%の溶存糖を有する。そのような溶存糖としては、例えば、スクロース、フルクトース、ロイクロース及び/又は可溶性グルコ-オリゴ糖を挙げることができる。本明細書の不溶性α-グルカンは、典型的には、その酵素的合成後及びそれを粉末形に加工処理する前に乾燥させられない;従って、本明細書のα-グルカンは、任意選択的に一度も乾燥させられていないと特徴付けることができる。
【0065】
一部の態様における粒子は、不溶性α-グルカンの約10重量%~50重量の不溶性カチオン性エーテルを含み得る。そのようなエーテルは、例えば、本明細書に開示した任意の不溶性α-グルカンのカチオン性エーテル誘導体であり得る。単純に1つの例として、エーテル誘導体化のためのα-1,3-グルカンは、(i)約、若しくは少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%のα-1,3結合、及び/又は(ii)約、若しくは少なくとも約100、250、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、500~1200、500~1100、500~1000、500~900、500~800、800~1200、800~1100、800~1000若しくは800~900のDPwを有し得る。典型的には単一タイプの不溶性カチオン性エーテルが使用され得るが、2つ以上のタイプの不溶性カチオン性エーテルが任意選択的に使用され得る。一部の態様では、不溶性カチオン性エーテルは1つのタイプの正荷電有機基を含むが、他方他の態様では、不溶性カチオン性エーテルは2つ以上のタイプの正荷電有機基を含む。
【0066】
本明細書の不溶性カチオン性α-グルカンエーテルのDoS(正荷電エーテル基を備える)は、例えば、約(又は0.001~約)0.3、0.29、0.28、0.27、0.26、0.25、0.24、0.23、0.22、0.21、0.2、0.15若しくは0.1又は約0.01~0.3、0.01~0.25、0.01~0.2、0.01~0.15、0.01~0.1、0.05~0.3、0.05~0.25、0.05~0.2、0.05~0.15若しくは0.05~0.1までであってよい。正荷電基は、例えば、本明細書に参照により組み込まれる米国特許出願公開第2016/0311935号明細書に開示されている何れかであってよい。正荷電基は、例えば、置換アンモニウム基を含み得る。置換アンモニウム基の例は、第一級、第二級、第三級及び第四級アンモニウム基である。アンモニウム基は、1つ、2つ若しくは3つのアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基)で置換され得る。置換アンモニウム基の基の1つは、グラフトコポリマーへのエーテル結合内に1個の炭素又は1本の炭素鎖を含み、そのような炭素若しくは炭素鎖は、例えば、-CH、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-若しくは-CHCHCHCHCH-であってよい。この状況における炭素若しくは炭素鎖は、任意選択的に1個の酸素原子(例えば、アルコール基)及び/又はアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)との少なくとも1つの置換を有し得る。一部の態様における1つ以上の正荷電有機基は、トリメチルアンモニウムヒドロキシルプロピル基(構造I
【化1】

(式中、R、R及びRのそれぞれはメチル基である)であり得る。
【0067】
本開示の所定の実施形態は、本明細書に記載した粒子を含む組成物を調製する方法に関する。そのような方法は:(a)少なくとも(i)約50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカン又はその不溶性カチオン性エーテルを含む第1組成物を提供する工程、並びに(b)(例えば、第1組成物を好適な粒子形成装置と接触させる工程によって)約0.1~10mmの平均サイズを備える第1組成物の粒子を提供する工程を含み得る。そのような方法は、任意選択的に、本明細書では不溶性α-グルカン(又はその不溶性カチオン性エーテル)粒子形成法であると特徴付けることができる。
【0068】
本明細書の不溶性α-グルカン粒子形成法において使用するための第1組成物は、例えば、上記に開示した不溶性α-グルカンのケーキ(例えば、フィルターケーキ若しくはウェットケーキ)であり得る。そのようなケーキは、約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、50~90、50~80、50~70、50~60、60~90、60~80、60~70、55~65、55~80若しくは70~80重量%の水若しくは水溶液を含み得る。一部の実施形態におけるケーキ中の水溶液は、(検出可能な)溶存糖を有し得ないか又は約0.1~1.5、0.1~1.25、0.1~1.0、0.1~0.75、0.1~0.5、0.2~0.6、0.3~0.5、0.2、0.3、0.4、0.5若しくは0.6重量%の溶存糖を有し得る。そのような溶存糖としては、例えば、スクロース、フルクトース、ロイクロース及び/又は可溶性グルコ-オリゴ糖を挙げることができる。一部の態様におけるケーキ中の水溶液は、1種以上の塩/緩衝剤(例えば、Na、Cl、NaCl、リン酸塩、トリス、クエン酸塩)(例えば、≦0.1、0.5若しくは1.0重量%)及び/又はグルコシルトランスフェラーゼ反応条件について上記に列挙したようなpH(例えば、pH6.0~8.0)を有し得る。一部の態様では、本明細書の水溶液の溶媒は、約又は少なくとも約80、85、90、95、96、97、98、99、99.5若しくは100重量%の水を含み得る;溶媒の残りは、例えば、極性若しくは有機溶媒であってよい。不溶性α-グルカン又はその不溶性カチオン性エーテルのケーキは、例えば、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、10~50、10~40、10~30、10~20、20~50、20~40、20~30、30~50、30~40、40~50、30~45、35~45、37.5~42.5、35~40若しくは40~45重量%の不溶性α-グルカン又はその不溶性カチオン性エーテルを含み得る。そのようなケーキは、水及び不溶性α-グルカン(及び/又はその不溶性カチオン性エーテル)並びに任意選択的に上記に開示した他の成分(例えば、溶存糖、塩、緩衝剤及び/又は極性有機溶媒)の何れかを含み得るか又はそれらから成る可能性がある。本明細書のケーキは、典型的には、約0.5、0.1若しくは0.05重量%(又は検出可能な量を含まない)の例えば充填剤(例えば、木材、パルプ若しくは任意の他の固体物質)又は可塑剤(例えば、グリセロール)等の任意の他の物質を含むか又は全く含まない。
【0069】
不溶性α-グルカン粒子形成法は、(b)約0.1~10mmの平均サイズを備える第1組成物の粒子を提供する工程を含む。水は、典型的にはこの工程中には加えられない(即ち、第1組成物中に既に存在する水に加えて水は添加されない)。一部の態様における粒子を提供する工程は、第1組成物(例えば、不溶性α-グルカンのケーキ)を好適な粒子形成装置と、約0.1~10mmの平均サイズを備える粒子が生成されるように接触させる工程を含み得る。この粒子形成工程は、任意選択的に造粒又は粒子状化であると特徴付けることができる。一部の態様における粒子形成工程は、所定の平均サイズ範囲の粒子が直接的に調製されるように実施され得る;これは、例えば、適切なサイズ寸法を備える好適な粒子形成装置を使用して実施することができる。追加して、若しくは又は、所定の平均サイズ範囲の粒子は、好適なサイズ選択ツール(例えば、スクリーン/ふるい)を粒子の集団に適用することによって調製され得る。工程(b)において生成された平均粒子サイズは、例えば、上記に列挙したそれらのサイズ/範囲の何れかであってよい。粒子の形成は、任意選択的に、最初に切り刻まれ、粉々にされ、及び/又はさもなければケーキより小さい破片に壊されている不溶性α-グルカンのケーキを使用して実施され得る。
【0070】
一部の態様における粒子形成装置は、例えば、シュレッダー、シェーバー、グレーター、タンブラー、スクリーン、ふるい、グラインダー又はミルであってよい。1つ以上の粒子形成装置は、要望通りに使用され得る。一部の態様における粒子形成装置は、それを通して第1組成物(例えば、不溶性α-グルカンのケーキ)が強制的に通過させられる複数の0.1mm~10mmの通路を含む。そのような装置の例としては、スクリーン若しくはふるい(例えばグレーターのスクリーン若しくはふるい)が挙げられる。本明細書のスクリーン/ふるいの通路の寸法(例えば、メッシュサイズ)は、例えば、平均粒子サイズについて上記に列挙した寸法の何れかであってよい。例えば、スクリーン/ふるいは、おおよそ1、2、3、4、5、6、7、8、9及び/又は10mmの通路を有し得る。更に、例えば、スクリーン/ふるいは、下記の(所定の商業的に利用可能なスクリーン/ふるいに対応する)おおよその通路サイズ:9.5、8.0、6.7、6.4、6.3、5.7、5.7、4.8、4.0、3.4、2.8、2.4、2.0、1.7、1.4、1.2、1.0、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15若しくは0.1mmを備えるメッシュを有し得る。更に例えば、スクリーン/ふるいは、下記の:3/8インチ、5/16インチ、0.265インチ、1/4インチ、No.3 1/2、No.4、No.5、No.6、No.7、No.8、No.10、No.12、No.14、No.16、No.18、No.20、No.25、No.30、No.35、No.40、No.45、No.50、No.60、No.70、No.80、No.100若しくはNo.120の米国ふるい/メッシュ表示を備えるメッシュを有し得る。本明細書のスクリーン/ふるいの通路は、典型的には正方形又は別の四角形の通路であるが、これらの通路は一部の態様では他の形状(例えば、円形/楕円形)であってよい。
【0071】
本開示の所定の実施形態は、本明細書に記載した粒子を含む組成物を保管する及び/又は移動させるためのシステムに関する。そのようなシステムは、1つの容器であって、その容器の底部部分に配置された少なくとも1つの開閉可能な排出口を備える容器を含み、その容器の少なくとも一部分は排出口に向かってテーパ付けされており、組成物は容器内にあり、排出口が開放している場合は容器の外へ連続的に流出する容器を含む。
【0072】
本明細書の容器は、典型的には、少なくとも約100、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100若しくは1200kg又は少なくとも約1、2、5、10、20、25、50、75若しくは100(米国若しくはメートル)トンの本開示の不溶性α-グルカン粒子を保持/保管するために好適である(容積を有する)。本明細書の容器は、任意選択的に、その容器が使用される方法に任意選択的に依存して、商業的(市販のサイズの)容器、バルク容器、保管容器、輸送用若しくは貨物輸送用コンテナ等の用語として特徴付けることができる。容器は、ビン(例えば、剛性壁のビン)、ホッパー、サイロ、フレキシブル中間バルクコンテナ(FIBC)(別名、バルクバッグ;例えば、Super Sacks(商標))又は大量(例えば、少なくとも100kg)の本明細書に開示した粒子を保管及び/又は輸送するために好適な他の容器であってよい。一部の態様では、容器の内壁(即ち、粒子と接触する表面)は、金属(例えば、ステンレス綱)又はプラスチック(容器の壁がプラスチックであるか又は容器がプラスチックライナーを有する)から製造され得る。一部の容器(例えば、ホッパー若しくはサイロ)は、例えば出口コーン(上向きの密閉先端を備える円錐形インサート)及び/又は出口の上方に支持されて出口と同心性である開放出口を備える内部漏斗(別名、重円錐構造)等の内部構成成分を含有し得る。
【0073】
本明細書に開示したシステムは、任意選択的に、不溶性α-グルカン(若しくはその不溶性エーテル)粒子を生成及び/又は保管するための施設を含み得る;その中の容器は、任意選択的に、固定容器であると特徴付けることができる。そのようなシステムは、一部の例では、工場及び/又は保管施設であると見なすことができる。一部の実施形態では、システムは、本明細書に開示した粒子を輸送するための要素、例えばトラック(例えば、トラクタートレーラー)又は電車/鉄道車両を含み得る;その中の容器は、任意選択的に、輸送用又は貨物用コンテナであると特徴付けることができる。
【0074】
本明細書の容器は、容器の底部部分に配置された少なくとも1つの開閉可能な排出口を有する。例えば、1、2、3、4個又はそれ以上の出口が存在してよい。典型的な実施形態では、排出口は容器の底側に配置されており、容器が単一出口を有する場合は、中心に配置される(2つ以上の出口を備える容器においては、それらは典型的には最長底部寸法の中心軸に沿って等間隔にある)。しかし、出口は、一部の態様では容器の底部部分から側面方向に突き出ることができる。本明細書の出口は、典型的には、円形、楕円形、正方形(又は別の四角形)又は三角形である。
【0075】
容器の少なくとも一部分は、その1つ以上の排出口に向かってテーパ付けされている。テーパリングの水平断面積(仮想薄片)は、典型的には出口と同一形状であるが、必ずしも同一形状ではない。1つの排出口を備える容器は、任意選択的にその全垂直長さ若しくは大多数(例えば、≧80又は90%)のその垂直長さに沿ってテーパ付けされているか又はテーパリングは、容器の垂直長さのより小さい部分(例えば、≦80、70、60、50、40、30、20又は10%)を表す可能性がある。本明細書の単一出口の実施形態における出口の形状は、典型的には、容器の水平断面積(仮想薄片)の形状と同一である。一部の実施形態では、出口に向かうテーパリングは、垂直から少なくとも約60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、25~50、30~50、25~45若しくは30~45度である。一部の態様におけるテーパリングは、(i)単一傾斜(テーパの開始部から出口の端部までの垂直定数からの角度)であり得る、(ii)2つ以上の傾斜(垂直からのテーパリングのより大きな角度が垂直からのより小さな角度に出口に近付く各傾斜遷移部で出会う)を有し得るか又は(iii)徐々に増加する傾斜(出口に近付くより少ない急勾配からより大きな急勾配への傾斜曲線)を有し得る。
【0076】
一部の態様における排出口の最小断面積は、約又は少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、24、30、36、42、48、4~48、8~48、10~48、4~36、8~36、10~36、4~24、8~24、10~24、4~18、8~18、10~18、4~12、8~12、10~12、4~10、8~10又は4~8インチの範囲を有する。そのような範囲は、任意選択的に、それぞれ円形若しくは楕円形である出口を備える直径若しくは最長直径であると言うことができる。三角形、四角形又は他の非円形出口の範囲は、典型的には、出口断面積の最長寸法(又は内部寸法の何れか長い方)である。
【0077】
一部の態様における排出口は、パイプ、チューブ、ホース、シュート、シリンダー又はダクト等の導管に操作可能に連結され得る。そのような操作可能に連結された導管は、容器の物理的部分(例えば、容器本体と溶接されているか又はさもなければ連続しているパイプ)又はさもなければ出口と連絡している別個の装置/機序であり得る。操作可能に連結された導管は、例えば、容器(container)から異なる容器(vessel)への粒子の流出を方向付けるのに役立ち得る。操作可能に連結された導管の最小断面積の範囲は、典型的には、出口の最小断面積の範囲より小さくない。
【0078】
本明細書の排出口は、例えば材料を容器内に入れるために使用される上部開口部若しくは上側開口部等の容器の任意の他の開口部又はワイヤー(例えば、電源コード)、機械的装置又は検出/監視装置等の補助機能の進入/位置決めを可能にする開口部と混同されてはならない。
【0079】
本明細書の容器は、排出口が開放している場合に容器からの本明細書に開示した粒子の流出を促進する装置(「流動促進装置」)を有し得るか又は欠如し得る。一部の態様における容器は、(i)流動促進装置を含んでいないか又は(ii)流動促進装置を含むが、この装置は排出口が開放している場合に粒子を容器から流出させるために能動的であることは必要とされない。流動促進装置は、バイブレーター、ジャイレーター、機械的攪拌器(例えば、スクリューフィーダー)、空気圧装置(例えば、空気大砲、空気枕)又は例えば、作動させられた場合に容器の排出口を通して粒子の流動を刺激する任意の他の装置若しくは作動を含み得る。流動促進装置は、任意選択的に、一部の実施形態では「ライブボトム」装置であると特徴付けることができる。流動促進装置は、容器の内側(例えば、本明細書に開示した粒子と直接接触している)又は外側(しかし連絡している)に配置することができる。一部の態様では、流動促進装置は、容器からの粒子の流動を開始させるために約1、2、3、4若しくは5秒間未満に渡り活性化/作動させることができ、その時間の後には流動が継続される(及び流動促進装置のスイッチはオフのままにされる)。本明細書に開示した粒子の連続的流動は、容器を完全に空にする又は例えば(流動終了後に)保持能力容積の多くとも5%、4%、3%、2%、1%、0.5%若しくは0.1%である粒子の体積しか容器内に残さない(流動促進装置の連続的作動を必要としない)途絶されない流動を意味する。本明細書に開示した粒子は、典型的には、粒子が容器から流出する間にブリッジ/アーチ、ラットホール及び/又は壁を形成しない;一部の態様では、そのような粒子構造は一時的に形成される可能性があるが、しかし流動が継続するにつれて容易に粉々になる。バルク材料のブリッジ/アーチは、出口の開口部を横断して発生するブリッジ/アーチ構造である。ラットホールは、バルク材料を出口に導く自立式円形構造である。本明細書の粒子の流動は、粒子材料の流動を促進する任意の構成成分/成分の添加を必要としない。本明細書の連続的流動は、道路若しくは鉄道輸送中の粒子沈降等の本明細書に開示した粒子を圧縮する活動の一様な追跡を実現することが企図されている。
【0080】
本明細書に開示した粒子を保管及び/又は輸送する方法は、少なくとも、粒子を保持する容器を提供する工程、及び粒子が容器から継続的に流出することを可能にするための容器の排出口を開放する工程を含み得る。上記又は下記の実施例において記載した任意の特徴は、任意選択的にそのような方法を特徴付けることができる。
【0081】
本開示の所定の実施形態は、本明細書に記載した粒子を含む組成物を輸送するためのシステムであって、導管に通して組成物を輸送するための導管及びガス(起動ガス)を含むシステムに関する。任意選択的に、システムの作動圧は、約5~105絶対psiである、及び/又は起動ガスは、空気若しくは不活性ガスである。このシステムは、例えば、本明細書に開示した容器を充填するために又は本明細書に開示した粒子をその保管及び/又は輸送後に容器内に移動させるために使用され得る。このシステムは、任意選択的に、空気圧式搬送システムとして特徴付けることができる。本明細書の導管は、パイプ、チューブ、ホース、シュート、シリンダー、ダクト又はその他の類似の装置/ハードウエアであり得る。
【0082】
本明細書の空気圧式搬送システムの作動圧は、任意選択的に、大気圧(14.7絶対psi)を除く約5~105絶対psiであり得る。そのような圧力は、導管内で適用することができ、それにより本明細書に開示した粒子を導管内に押したり/引いたりする(即ち、粒子を運搬する)ことができる。一部の態様では、作動圧は、それにより粒子の減圧気送を許容する大気圧より下(例えば、約5~10若しくは5~14絶対psi)であってよい。一部の態様では、作動圧は、陽圧流動を許容する、大気圧より上(例えば、約15~35、15~30、20~35若しくは20~30絶対psi)であってよい。作動圧は、例えば、真空、ブロワー又は圧縮空気装置を使用してシステムに提供され得る。本明細書の空気圧式搬送システムにおいて使用されたガスは、例えば、空気又は不活性ガスであってよい。本明細書の不活性ガスは、本明細書の不溶性α-グルカンと反応しない(又はさもなければそれを包含する反応を惹起しない)。好適な不活性ガスの例としては、窒素、二酸化炭素及びアルゴンが挙げられる。
【0083】
本明細書に開示する組成物及び方法の非限定的な例には、下記が挙げられる:
1. 約0.1~10mmの平均サイズを備える粒子を含む組成物であって、粒子が少なくとも(i)約50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカン又はその不溶性α-グルカンの不溶性カチオン性エーテルを含み、ここで不溶性α-グルカンは、α-1,3-グリコシド結合を含み、及び少なくとも100の重量平均重合度(DPw)を有する組成物。
2. 不溶性α-グルカンは、少なくとも50%のα-1,3-グリコシド結合を有する、実施形態1に記載の組成物。
3. 粒子は、約30重量%~45重量%の不溶性α-グルカン又はその不溶性カチオン性エーテルを含む、実施形態1又は2に記載の組成物。
4. 組成物は、粉末状である、実施形態1、2又は3に記載の組成物。
5. 不溶性α-グルカンは、少なくとも水、スクロース及び不溶性α-グルカンを合成するグルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む反応組成物中で酵素的に生成される、実施形態1、2、3又は4に記載の組成物。
6. 粒子は、第1組成物を粒子形成装置と接触させる工程によって生成され、ここで第1組成物は少なくとも(i)約50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカンを含む、実施形態1、2、3、4又は5に記載の組成物。
7. 第1組成物は、不溶性α-グルカンのケーキである、実施形態6の組成物。
8. 粒子は、前記不溶性α-グルカンを含む、実施形態1、2、3、4、5、6又は7に記載の組成物。
9. 実施形態1~8の何れかに記載の組成物を調製する方法であって:(a)少なくとも(i)約50重量%~90重量%の水若しくは水溶液、及び(ii)約10重量%~50重量%の不溶性α-グルカン又はその不溶性α-グルカンの不溶性カチオン性エーテルを含む第1組成物を提供する工程、及び(b)約0.1~10mmの平均サイズを備える第1組成物の粒子を提供する工程を含む方法。
10. 第1組成物は、不溶性α-グルカンのケーキである、実施形態9の方法。
11. 工程(b)は、第1組成物と粒子形成装置を接触させる工程であって、任意選択的に、ここで粒子形成装置は第1組成物が強制的に移動させられる複数の0.1mm~10mmの通路を含み、及び任意選択的に更に、粒子形成装置はスクリーンを含む、実施形態9又は10に記載の方法。
12. システムは、1つの容器であって、その容器の底部部分に配置された少なくとも1つの開閉可能な排出口を備える容器を含み、その容器の少なくとも一部分は排出口に向かってテーパ付けされており、組成物は容器内にあり、排出口が開放している場合は容器の外へ連続的に流出する容器を含む、実施形態1~8の何れかに記載の組成物を保管及び/又は移動させるためのシステム。
13. 容器は、ホッパー、ビン、サイロ又はバルクバッグである、実施形態12に記載のシステム。
14. 放出出口の最小断面積は少なくとも約4インチの範囲を有する、実施形態12又は13に記載のシステム。
15. 容器の少なくとも一部分のテーパリングは、垂直から少なくとも60度である、実施形態12、13又は14に記載のシステム。
16. システムは、導管及びその導管に通して生成物を輸送するためのガスを含み、任意選択的にシステムの作動圧は約5~105絶対psiであり、及び任意選択的にガスは空気若しくは不活性ガスである、実施形態1~8の何れかに記載の組成物を輸送するためのシステム。
【実施例
【0084】
以下の実施例において、本開示の実例を更に示す。これらの実施例は、本発明の特定の好ましい態様を示しているが、単に説明の目的でのみ示されていると理解されるべきである。上記の考察及びこれらの実施例から、当業者は、開示された実施形態の本質的な特徴を確認することができ、それらの精神及び範囲を逸脱することなく、開示された実施形態を様々な使用及び条件に適合させるために様々な変更及び修正を行うことができる。
【0085】
実施例1
高含水量を備える粒状のα-グルカン調製物
この実施例では、高含水量を備える粒状のα-グルカン組成物を調製することについて記載する。特に、粒状のα-1,3-グルカン試料は、約25若しくは40重量%(即ち、それぞれ75若しくは60重量%の水を含む)の固体含量を用いて生成された。
【0086】
不溶性α-1,3-グルカンを(高収率で)生成するアミノ酸改質S.サリバリウス(S.salivarius)グルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む反応物を調製した。手短には、例えば、米国特許出願公開第2017/0166938号明細書、同第2017/0002335号明細書及び同第2018/0072998号明細書(米国特許出願第15/702,893号明細書)(それらの全部は参照により本明細書に組み込まれる)に記載された方法に類似する方法で、水、スクロース、緩衝剤及びアミノ酸改質グルコシルトランスフェラーゼ酵素を含むグルカン合成反応を実施した。反応後、α-1,3-グルカン生成物(不溶性、約100%のα-1,3結合、約1000のDPw)の試料を濾過し、大部分のフルクトース及び他の残留糖を除去するために洗浄し、フィルタープレスを使用して約25若しくは40重量%の固体へ圧搾した。生じたグルカンフィルターケーキは、それぞれ約75若しくは60重量%の水及び約0.4重量%の糖を含有していた。各フィルターケーキを切り刻み、その後6mmのグレーターを用いて平均径が約1/4インチの顆粒にグレーティングした。高含水量を有するにも関わらず、どちらの粒状のα-1,3-グルカン試料も、それぞれ粉末状の外観を有していた。
【0087】
実施例2
粒状のα-グルカンの流動性
本実施例は、上記の実施例1において調製した粒状のα-1,3-グルカン試料の流動性の試験について記載する。
【0088】
サイロ、ホッパー及び保管容器からのバルク固体材料の流動性は、その材料を保管庫から取り出して下流プロセスへ送達する容易さに重大な影響を及ぼし得る。流動性が不良な材料は、排出を促進するために極めて大きな努力を必要とする可能性があり、保管容器の排出開口部を完全に遮断するか又はフレキシブル中間バルクコンテナ(FIBC法、別名バルクバッグ又はSuper Sacks(登録商標))からの排出を拒絶する可能性がある。バルク固体の機械的特性(凝集強さ、バルク密度及びプロセス装置の壁面に対する摩擦)は、被験物に適用される圧縮力の量に伴って変動するであろう。事実上全てのバルク材料は、圧縮力の増大に伴って凝集強さを獲得し、圧縮状態で保持された場合、多くは長期間に渡って更に強度を獲得するであろう。バルク密度は、圧縮力に伴って増加する。プロセス装置に対する摩擦係数は、一定値であり得るか又は圧縮力が増加すると変動する可能性がある。
【0089】
本明細書で参照により組み込まれるJenike(Storage and Flow of Solids,Bulletin 123 of the University of Utah Engineering Station,1964)は、凝集強さ、バルク密度及び壁面摩擦の測定値をホッパーからのバルク材料の易流動性の排出のために必要な出口サイズの推定値に変換させるための方法を提供している。凝集強さは、重力が(バルク密度からの)流動を促進する間の流動を妨害するように作用する。壁面摩擦は、ホッパー内の流動パターンを決定する。(例えば、この考察のために、ホッパーは、出口開口部に向かって収束する断面積を有する剛性容器であってよい。伝統的なサイロは、典型的には、底部ではホッパー区間及びその上方にある直線壁の垂直区間を有する)。流動特性が不良な材料は、より大きなホッパー出口を必要とするが、時々は強度に必要とするであろう。Jenikeの計算は、ホッパーの形状、サイズ及び充填レベル並びにその上方の任意の垂直伸張部に対応する圧縮応力でのバルク固体の特性の測定を必要とする。
【0090】
Jenikeは、ホッパーからバルク固体が排出される場合の2つの考えられる流動パターンのタイプについて記載している。「マスフロー(mass flow)」では、出口から任意の材料が引き出される場合は常にホッパーの全含量が動作中である。バルク固体は、壁面に沿って滑る。「ファンネルフロー(funnel flow)」では、ホッパーの壁面に対するバルク固体の摩擦は、その領域内での流動を防止する。その代わりに、バルク固体はホッパーの中心部分に向かって自然に滑り落ちる。流動パターンによってバルク固体に負荷される応力のために、マスフローホッパーは、ファンネルフローホッパーにおいて使用された出口よりも感知できるほど小さい出口から排出するであろう。マスフロー型ホッパー内では、出口が小さ過ぎる場合には、バルク固体が出口の開口部を超えるアーチ形を許容して流動閉塞が発生し得る。ファンネルフローホッパー内では、流動パターンはラットホール又はパイピングとして公知の異なる種類の封鎖をもたらし得る。ラットホールは、ホッパーの出口を取り囲んでいるバルク固体の自立式円形構造である。マスフローパターン及びファンネルフローパターンの両方について、ホッパーの出口が、アーチ又はラットホール(それぞれ)が虚脱することを引き起こすために十分に大きい場合に、排出が発生するであろう。しかし、流動が不良な固体については、必要とされる出口寸法は、非現実的なほど大きい可能性がある。実際に、アーチ形閉塞物を防止することと比較して、ラットホール閉塞物を防止するためには、はるかに大きなホッパー出口の使用が必要とされる。従って、ラットホール化の回避は、粒子状生成物の開発業者及びプロセス設計者にとって重要な問題である。
【0091】
ホッパー区間の壁面に対するバルク固体の摩擦は、ホッパー壁面の傾斜と組み合わせると、固体が壁面に沿って滑る(マスフロー)か又は壁面の領域内で停滞したままである(ファンネルフロー)かを決定する。マスフローは、ほぼ常に望ましいが、必要とされる垂直高さのためにホッパーの構造を作成するには非現実的である程急勾配であるホッパー壁面を必要とする場合がある。そびえ立つ壁面を備えるホッパーは、可動式装置においても、及び更により浅いデザインの周囲に設計されている可能性がある現行のバルク取り扱いシステムへの組み込みにおいても非現実的である。
【0092】
Jenikeの手技は、最初は特定のバルク固体のための、重要な計算結果である必要なホッパーの傾斜角及び出口寸法を備える、ビスポーク型ホッパーを設計するための手段であることが意図された。しかし、様々なホッパーにおいて使用され得るバルク固体の流動性を評価する場合又は2つのバルク固体の流動性を相互に比較する場合、定義された形状及び充填レベルの仮想サイロ内で必要とされるであろう臨界出口直径を決定することが好都合であろう。臨界直径より大きな出口を備えるホッパーは、排出するであろう。この決定は、マスフローサイロ(その中ではアーチ形を克服するための出口直径が計算される)又はそのために臨界ラットホール直径が計算されるファンネルフローサイロのために実施され得る。各場合において、出口直径の単位は、比例してより不良な流動性を示すより大きな直径を必要とする出口を備えて、線形である。Jenike法における理論的限界のために、試験及び計算は、実際のサイロ直径を超えるラットホール直径を示す可能性がある。しかし、これらの結果は、比較目的のためには依然として有用である。実際に、実行する上で、臨界ラットホール直径はサイロ直径に近付くか又は超える場合は、重力流は不可能となる可能性があり、大規模外部流動促進装置(例えば、振動放出メカニズム)が必要とされるであろう。
【0093】
Jenike手技は、伝統的には、参照により本明細書に組み込まれるASTM規格D6128-16若しくはD6773-16に記載されたもの等の二軸式剪断セルから得られる凝集強さ及びバルク密度の数値を利用する。これらの試験からの結果は、引き続いてJenike法を使用して解釈される。しかし、臨界ラットホール直径の推定値は、コンピューター制御Johanson Hang-Up Indicizer(登録商標)(Bell et al.,Bulk Solids Handling 14:164-171;参照により本明細書に組み込まれる)によってより能率的に得ることができる。この装置は、使用者が仮想サイロ直径を入力することを可能にし、本システムは、必要とされる試験条件を計算し、試験を遂行する。結果は、仮想サイロについての臨界ラットホール直径である。Johanson装置では、試料は、浅い垂直の円筒形の型内に閉じ込められ、その後にサイロ内で遭遇するであろう負荷に対応する下向きの応力で圧縮される。圧縮後、型の底部の中心部分から二重底が取り除かれ、圧縮試料を支持する環状レッジを残す。プローブは次に、シリンダー内に上部から挿入される。プローブの下方への運動は、圧縮試料のプラグを型の底部にある穴を通して推し進める。型の底部からプラグを押し出すために必要な力が測定される。試料の剪断強さは、プローブの寸法及び力の測定から推定し、ラットホール直径を計算するために使用することができる。
【0094】
2種の固体含量(上記の実施例1で生成した40若しくは25重量%、サイズが4mmを超える粒子は除去されている)での粒状のα-1,3-グルカンについての流動性試験結果は、下記の表1に表示した。試験結果は、更に、流動特性が不良である便宜的な参照材料である10倍に粉末化した糖(即ち、粉砂糖)についても表示した(表1)。96mL(最大容積)試験セルを備えるJohanson Hang-up Indicizer(登録商標)を使用して、各試験は、周囲温度(約70°F)で研究室規模で短時間圧縮した各試料を用いて実施し、次に(「即時に」)試験したか又は試験前の960分間までに渡り適用した圧縮力を用いて実施した。試験条件は、直径が10フィートである典型的なサイロをシミュレートした。
【0095】
【表1】
【0096】
表1内のデータは、粒状のα-1,3-グルカンの40重量%の固体形が不良であると考えられるが、粉砂糖よりは相当に良好である初期(「即時」)流動性を有することを示している。しかし、60分間以上に渡り負荷下で粒状の40重量%のα-1,3-グルカンの保管後、臨界ラットホール直径は劇的に増大し、負荷下の追加の時間は更に臨界ラットホール直径の増加を生じさせた。形成されたラットホールのサイズを前提にすると、表1に記載の結果は、商業的サイズのホッパー又は他の大きな保管容器からの粒状のα-1,3-グルカンの連続的流動を許容するためには、全体として大きな出口直径(例えば、少なくとも約14フィート)が必要になるであろうことを示唆している。
【0097】
4mm以下の粒子サイズを備える粒状の40重量%及び25重量%のα-1,3-グルカンのサラサラとしたバルク密度は、それぞれ約37及び32ポンド/立方フィートであると測定された。約15~20、65~70、260~265若しくは520~525ポンド/立方フィートの圧縮後のこれらの40及び25重量%の材料のバルク密度はそれぞれ、40重量%の材料については約37、38、40及び42であり、25重量%の材料については約33、35、38及び42であった。
【0098】
先行する試験結果(表1)に基づくと、25~40重量%の固体グルカンにおけるホッパー排出には厳しい困難が予想された。予想される困難に適応するために、周囲温度(約70°F)での試験は、Metalfab Posibin(登録商標)(Metalfab Materials Handling Systems,Vernon,NJ)として公知の積極的なホッパー排出装置を用いて実施した。Posibin(登録商標)は、全直径回転式ライブボトム排出装置が装備されたポータブルホッパーである。全ホッパー区間は、スイッチをオン及びオフできる電動式偏心振動器に接続されている。ビンの内径は僅かに36インチより小さく、その側壁の高さはおおよそ53インチであり、約35立方フィートの作業能率を提供する。回転式ライブボトムを用いた場合に典型的であるように、ビンの内側にはビン出口の数インチ上方に円錐形のバッフルプレートが存在した。バッフルの下方には、直径が約10インチ(0.8フィート)の出口があった。ホッパーの壁面及び円錐形のバッフルプレートは、それらが重力によって排出される場合はファンネルフローパターンが予想されるように、極めて浅い傾斜を有していた。
【0099】
Posibin(登録商標)の出口は、機械的に閉塞され、その後実施例1で調製したサラサラとした粒状の40重量%のα-1,3-グルカンをビンに負荷した(粒子は除去しなかった)。追加の圧縮応力(約30ポンド/立方フィート)(即ち、グルカン材料自体の重量によって既に存在している圧縮応力に追加して)は、ビンの底部部分における総圧縮応力が約150~200ポンド/立方フィートであるように、負荷されたグルカンの上部にコンクリートブロックを積み重ねることによって適用した。重りは、数時間までの期間に渡り適用した;この圧縮からの粒状のα-グルカンの密度は、約40ポンド/立方フィートであると推定された。指定時間後、コンクリートの重りを取り除き、その機械的停止具を取り除くことによって出口を開放した。数回のトライアルのそれぞれにおいて、ビンからのグルカンの重力排出は、振動式排出機序のスイッチを決して入れない場合でさえ、出口を開放すると直ちに始まった。グルカンは、ビンが空になるまでビンから流出し続けた。この結果は、ビンの直径0.8フィートの出口は上記の検査室規模の試験結果(表1)から示唆された流動のために必要であると予想された14フィート(又はそれ以上)の出口よりはるかに小さかったので、完全に予想外であった。類似のPosibin(登録商標)流動試験の結果は、(6mmのグレーターの代わりに)3mmのグレーターを使用して調製されていた40重量%の粒状のα-1,3-グルカンを使用して得た。
【0100】
別の試験では、ビンに40重量%の粒状のα-1,3-グルカンを再装填し、重りを用いて再負荷し、一晩(おおよそ15時間)放置した。翌朝、出口の機械的閉塞物をスライドして外したが、ビンは即時には排出を開始しなかった。振動器のモーターに約2秒間電圧を加えると、その後流動が直ちに開始され、(振動式排出メカニズムにそれ以上電圧を加えなくても)ビンが空になるまで持続した。
【0101】
ホッパーの振動式ライブボトム(排出メカニズム)は、振動がバルク材料の圧縮及びその後の排出問題を引き起こし得るので、ビンの出口を閉鎖したまま作動させてはならない。高速道路輸送において発生し得る振動のシミュレーションとして、ライブボトムを使用してビン内のグルカンの滞留量を振動させた。この試験では、Posibin(登録商標)に40重量%の粒状のα-1,3-グルカン(しかし追加の重量は負荷しなかった)を充填し、その後ライブボトムを連続2分間に渡り作動させ、その後スにイッチを切ったが、その全ての間、ビンの出口は機械的に閉塞させたままであった。作業の停止後、機械的ブロックを取り外すと、流動を開始させるための振動器の使用を必要とせずにビンは完全に排出した。従って、本明細書の粒状のグルカンは、典型的にはそれらの輸送後に他のタイプのバルク材料に影響を及ぼす流動性の問題を作り出すことなく容器内で輸送され得ることが企図されている。
【0102】
FIBC(バルクバッグ)法は、パレット上の単一包装内の約1トンまでのバルク材料を輸送するための経済的方法であり得る。バッグは、フレキシブルな壁面を有し、底部出口注ぎ口を通して排出するためにフレームから吊り下げられている。バッグの底部は、ほぼフラットである。従って、排出流動パターンは、ファンネルフローである。生成物は、数カ月間待機した後の使用のためにバッグ内に滞留することができる。特にハイスループット作動において、排出を促進するためにバッグを機械的に振動させるか又は揉み出すことは不都合である。しかし、上記の検査室規模の流動性試験に基づくと(表1)、粒状の25~40重量%のα-1,3-グルカンが充填されたバルクバッグを排出させる際の困難が予想された。
【0103】
直径が19インチ(1.6フィート)の出口注ぎ口を備える2つのバルクバッグを試験した。これらのバッグは僅かに円錐形の底部を有していたので、それらがパレットから持ち上げられた場合は、底部は浅いホッパー形を形成した。これらのバッグには40重量%の粒状のα-1,3-グルカンを充填し、その後に48時間保管してから排出試験を実施した。排出させるために、バッグは、フォークリフト付トラックを用いてビンの上方に吊り下げた。その後、各バッグの注ぎ口を開放すると、その後にバッグは迅速に排出した。バッグは、バッグからの粒状のグルカンの大部分の流動を促進するために刺激又は任意の他の形態の撹拌を必要としなかった。この空にする工程後、少量の残留材料は、少し振動させると各バッグの隅から容易に排出された。グルカンの流動によるこの容易な除去は、上記で考察した理由のために予想外であった。
【0104】
実施例3
粒状のカチオン性α-グルカンエーテルの流動性
この実施例は、粒状のカチオン性エーテル誘導体化α-1,3-グルカンの流動性の試験について記載している。
【0105】
(上記の実施例1に記載したものに類似するグルコシルトランスフェラーゼ反応において生成された)不溶性α-1,3-グルカンは、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル-トリメチルアンモニウムクロリドを使用してエーテル誘導体化した。生じたカチオン性エーテル誘導体であるトリメチルアンモニウムヒドロキシプロピルα-1,3-グルカンは、水不溶性であり、0.15未満の置換度(DoS)を有していた。0.3未満のDoSを有し得る不溶性カチオン性α-1,3-グルカンエーテルは、例えば、米国特許出願公開第2016/0311935号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)の開示に従い、それに従ってα-1,3-グルカン対カチオン性エーテル化剤の比率を調整することによって調製した。
【0106】
カチオン性α-1,3-グルカンエーテル試料を水で洗浄し、その後に上記の実施例1に記載した手順に類似する手順に従って粒状化した。各粒状試料は、粉末状の外観及び38~40重量%の固体含量を有していた。粒子サイズは、実施例1で生成した非誘導体化α-1,3-グルカン粒子の粒子サイズと同様であった。
【0107】
流動性の評価は、粒状のカチオン性α-1,3-グルカン試料のそれぞれについて実施した。実施例2におけるような自動化Johanson Hang-Up Indicizer(登録商標)を使用する代わりに、ポータブル試験スタンド(van der Kraan and Scarlett, Proc.of PARTEC 95 and 3rd European Symposium-Storage and Flow of Particulate Solids,Nuremberg,1995,pp.57-68;参照により本明細書に組み込まれる)を使用して、圧縮応力及び圧縮応力が印加される時間の量の関数としての圧縮グルカンエーテル試料の剪断強さを測定した。Johanson装置を用いた場合と同様に、下向きの応力を浅い円筒形の型内に密閉した試料に印加した。しかし、ポータブル試験機とともに、下向きの応力を直径が4フィートのサイロ又はホッパー内で遭遇するであろう応力に対応する鉄の重りを用いて印加した。ある期間の後、型の底部の中心部分と同様に、重りを取り除いた。型の底部を通して圧縮カチオン性グルカンエーテル試料のプラグを押すために必要な(グラム重量で測定した)力を次に測定した。類似の試験材料について、ポータブル試験機において測定した剪断力は、Johanson装置からのラットホール指数と直接的に相関している。
【0108】
粒状のカチオン性グルカンの試料を1、60、360及び900分間の圧縮時間について試験した。繰り返し試験(通常は試験期間それぞれについて5試料)を実施した。比較として、実施例2において試験した粒状の非誘導体化α-1,3-グルカン生成物を同一条件下で試験した。表2は、各試験について(グラム重量で測定した)平均剪断強さを示している。
【0109】
【表2】
【0110】
ポータブルの試験機は、固定具内の試料のプラグの重量よりも少ない剪断力を決定することはできない。この場合には、プラグの重量は、おおよそ26gである。非誘導体化α-1,3-グルカンを試験する際には、各試料は型の底部の中心部分が取り除かれた時点に固定具の底部から落下するので、従ってプローブからの力は必要とされなかった。
【0111】
表2は、粒状のカチオン性α-1,3-グルカンエーテル試料が、類似の圧縮時間後に粒状の非誘導体化α-1,3-グルカン試料よりも実質的に高い剪断強さを有したことを示している。実施例2において考察したように、表1に記載のデータは、粒状の非誘導体化α-1,3-グルカンが取り扱い時に実質的なラットホール化問題を経験するであろうことを予想させるであろう。結果として、粒状のカチオン性α-1,3-グルカンを取り扱う場合の一層より深刻なラットホール化問題が予想されるであろう。しかし驚くべきことに、カチオン性α-1,3-グルカンエーテルは、感知できる困難を伴わずに一連の取り扱い及び加工処理装置を通して加工処理できるであろうことが見出された。これらの装置は、ベルトコンベヤー、スクリューコンベヤー、スクリューフィーダー及びフライス盤を含んでいた。加工処理順序の1つの部分では、カチオン性α-1,3-グルカンエーテルは、幅7インチ、長さ12インチの長方形の出口を備える上部が3フィート×3フィート及び高さ27インチであるピラミッド型ホッパー内に装填された。この形状を備えるホッパーは、ファンネルフロー排出パターンを有するであろう。出口の下方の標準型スクリューコンベヤーはホッパーに排出した。このホッパー内のカチオン性α-1,3-グルカンエーテルの何らかのラットホール化を克服するには、剪断強さデータ(表2)が深刻な流動問題が存在する可能性を予測したにもかかわらず、極めて僅かな介入しか必要としなかった。