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特許7343496航空機用一体型燃料逆止装置およびこのような装置を製造するための方法
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  • 特許-航空機用一体型燃料逆止装置およびこのような装置を製造するための方法 図1
  • 特許-航空機用一体型燃料逆止装置およびこのような装置を製造するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】航空機用一体型燃料逆止装置およびこのような装置を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/02 20060101AFI20230905BHJP
   F16K 15/16 20060101ALI20230905BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20230905BHJP
   B64F 5/10 20170101ALI20230905BHJP
【FI】
F16K15/02
F16K15/16 A
B64C1/00 A
B64F5/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020528019
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 FR2018052713
(87)【国際公開番号】W WO2019102089
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】1760998
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514235879
【氏名又は名称】サフラン エアロテクニクス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・コルマン
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-39928(JP,Y1)
【文献】実開昭62-153469(JP,U)
【文献】国際公開第2017/115866(WO,A1)
【文献】特開2001-248741(JP,A)
【文献】特開昭54-15569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00-15/20
B64C 1/00
B64F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を受け取るように意図されたチャンバ(5)を画定し、少なくとも1つの開口(3)を有する本体(2)を含み、前記チャンバ(5)は、内壁(6)を有し、前記内壁から弾性復帰部材(8)が延在し、前記弾性復帰部材(8)は、前記内壁(6)の一体部分を形成し、前記弾性復帰部材(8)からバルブシャッタ(9)が延在しており、前記弾性復帰部材(8)は前記バルブシャッタ(9)と一体の部分を形成しており、前記弾性復帰部材(8)は、前記チャンバ(5)に存在する前記燃料が前記開口(3)を介して出て行くことを防止するように前記バルブシャッタ(9)が前記開口(3)を閉鎖する位置にこれを押し込み、前記内壁(6)は、前記バルブシャッタ(9)に対する座部(10)を有し、前記内壁(6)の前記座部(10)は下流に向けて直径が大きくなる円錐台形状を有する上流部分と、下流に向けて直径が小さくなる円錐台形状を有する下流部分と、を有し、前記バルブシャッタ(9)は、前記内壁(6)の前記座部(10)の前記上流部分と相補的円錐台形状を有する上流部分と、前記内壁(6)の前記座部(10)の前記下流部分と相補的円錐台形状を有する下流部分と、を有している、燃料逆止装置(1)。
【請求項2】
前記本体(2)、前記弾性復帰部材(8)および前記バルブシャッタ(9)は、プラスチック材料からなることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記本体(2)、前記弾性復帰部材(8)および前記バルブシャッタ(9)は、金属からなることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記弾性復帰部材(8)はらせん状圧縮ばねであることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記バルブシャッタ(9)の前記上流部分の周囲に構成された座部(12)にシールを配置して、前記バルブシャッタ(9)と前記本体(2)との間の密封を確実にすることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記バルブシャッタ(9)の前記座部(12)は周辺環状溝として形成されることを特徴とする、請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記本体(2)は、下流開口(4)と上流開口(3)との間にチャンバ(5)を画定している管状構造を有し、前記弾性復帰部材(8)は、前記チャンバ(5)の前記内壁(6)を前記下流開口(4)から延在し、前記バルブシャッタ(9)が前記上流開口(3)を閉鎖するように延在することを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料逆止装置(1)を製造するための方法であって、前記本体(2)、前記弾性復帰部材(8)および前記バルブシャッタ(9)を層ごとに付加製造によって製造することからなり、前記本体(2)、前記弾性復帰部材(8)および前記バルブシャッタ(9)がともに単一の一体部分を形成する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行機、ヘリコプタなどのような航空機における燃料循環の技術分野に関し、より詳細には、回路内に設置することができる逆止装置、および上記装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールバルブ、フラップバルブなどのような逆止装置が、先行技術から知られている。これらの動作は、流体、たとえば燃料がパイプを通って一方向のみに流れることを可能にすることからなる。すべてのこれらの装置はいくつかの構成要素を含む。特に、これらは、ボール、バルブなどのような遮断要素を閉位置へ押し込むばねタイプの弾性要素を含む。したがって、流体は、一定の圧力下で、ばねを圧縮することによって遮断要素に抗して流れることができるが、その戻りは、上記遮断要素によって遮断される。
【0003】
このタイプの逆止装置は一般に、それを構成する要素間の電気的導通が可能でないという欠点を有する。航空の分野においては爆発の危険である、静電荷の出現を回避するため、たとえば導電性ワイヤで構成要素を互いに接続する、または追加の表面処理および保護を実装する必要があり、製造プロセスがより複雑になってその費用が増加する。
【0004】
また、このタイプの逆止装置の製造は、取り付けおよび組み立て動作を伴い、ねじ、ワッシャ、シールなどの追加の構成要素の使用、および/または適切な道具および機械が要求される、圧着動作などのような特定の動作を伴う。
【0005】
結果として、このタイプの逆止装置の設計および製造は、時間と費用がかかり、面倒である。
【0006】
さらに、利用可能なばねの形状は限定される。これにより、設計者は、たとえばその剛性または漸進性のようなばね特性の選択が限定される。
【0007】
本発明の目的の1つはしたがって、設計が簡素かつ安価であり、その電気的導通が最適である燃料逆止装置を提案することによって、これらの欠点を解決することである。
【0008】
本発明の他の目的は、たとえば振動および共振の問題により良く対処することによって装置の性能を向上させるため、弾性挙動および特性の拡張された選択を有するこのような逆止装置を提供することである。
【0009】
上述の問題を解決するため、燃料を受け取るように意図されたチャンバを画定し、少なくとも1つの開口を有する本体を含む燃料逆止装置が開発されてきた。チャンバは、弾性復帰部材によって拡張された内壁を有し、この弾性復帰部材は、上記内壁と一体の部分を形成し、上記弾性復帰部材は、上記弾性復帰部材と一体の部分を形成しているバルブシャッタによって拡張されている。弾性復帰部材は、チャンバに存在する燃料が開口を介して出て行くことを防止するようにバルブシャッタが開口を閉鎖する位置にこれを押し込む。
【0010】
このように、この逆止装置は、電気的導通が最適に保証されるように一体である。この装置はより安全で設置がより容易である。ステンレス鋼またはアルミニウムの間などの金属間腐食のリスクはしたがって最小化、さらには排除される。
【0011】
単独で、または組み合わせて考慮される他の有利な特徴によれば、
- 本体、弾性復帰部材およびバルブシャッタは、プラスチック材料からなり、
- 本体、弾性復帰部材およびバルブシャッタは、金属からなり、
- 弾性復帰部材はらせん状圧縮ばねであり、
- 弾性復帰部材は板ばねであり、
- 開口またはバルブシャッタの周囲に構成された座部にシールを配置して、バルブシャッタと本体との間の密封を確実にし、
- 開口は傾斜周壁を有し、バルブシャッタは相補的な傾斜リムを有し、
- バルブシャッタの傾斜リムは、シール座部を形成している周辺環状溝を有し、
- 本体は、上流開口と下流開口との間にチャンバを画定している管状構造を有し、弾性復帰部材は、チャンバの内壁を下流開口から拡張し、バルブシャッタが上流開口を閉じるように延在する。
【0012】
このように、本発明は、簡素、安価であり、設計中の適合の可能性をより多く提供する逆止装置を提案する。
【0013】
本発明はまた、この逆止装置を製造するための方法に関する。本発明によれば、これは、本体、弾性復帰部材およびバルブシャッタを層ごとに付加製造によって製造することからなり、本体、弾性復帰部材およびバルブシャッタがともに単一の一体部分を形成するようにする。この装置は、
- 本体が、燃料を受け取るように意図されたチャンバを画定し、少なくとも1つの開口を有し、
- チャンバが、弾性復帰部材によって拡張された内壁を有し、
- 弾性復帰部材が、バルブシャッタによって拡張されており、チャンバに存在する燃料が開口を介して出て行くことを防止するように上記バルブシャッタが開口を閉鎖する位置にこれを押し込む
ように製造される。
【0014】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付の図面を参照して、参照用のみであって決して限定的ではない、以下に提供する説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による逆止装置の縦断面概略図である。
図2】第2の実施形態による、本発明の逆止装置の縦断面概略図である。
【0016】
本発明は、航空機における燃料回路に設置することができる燃料逆止装置(1)に関する。
【0017】
本発明による装置(1)は、層ごとに、付加製造技術によって、複合材料、金属、セラミック、ステンレス鋼、プラスチック、または任意の適切な材料から作製される。燃料との適合性のため、金属が好ましい。
【0018】
図1に示す、本発明の第1の実施形態によれば、装置(1)は、実質的に円筒状であり、細長くて軸対称である本体(2)を含む。本体(2)はその両端に2つの開口、一方は上流(3)、他方は下流(4)を有する。本体(2)は、上流開口(3)から下流開口(4)の方へ流れることができる燃料を受け取るように意図されたチャンバ(5)を画定し、流体は、以下で詳細に説明するように、上流開口(3)の方へ戻ることが防止されている。「上流」および「下流」という用語は、逆止装置(1)によって可能な燃料の流れの方向に関する。
【0019】
チャンバ(5)は、中心縦軸(7)に沿って管状構造を備えた内壁(6)を有し、装置(1)に沿って可変の直径を有する。
【0020】
内壁(6)は、上記内壁(6)と一体の部分を形成している弾性復帰部材(8)によって拡張されている。この第1の実施形態によれば、弾性復帰部材(8)はらせん状ばねである。ばね(8)は、上記ばね(8)と一体の部分を形成しているバルブシャッタ(9)によって拡張されている。換言すれば、内壁(6)、ばね(8)およびバルブシャッタ(9)は、一体アセンブリを形成する。ばね(8)は、内壁(6)を下流開口(4)から拡張し、バルブシャッタ(9)が上流開口(3)を閉じるように延在する。
【0021】
もちろん、ばね(8)は、図示したものとは異なる形状を有することができ、たとえばばね(8)は、中心軸(7)に沿って可変の直径を含むことができる。
【0022】
ばね(8)を構成するワイヤも、ばね(8)に沿って可変の直径を有して、漸進性質を有利に有することができる。したがって、ばね(8)は非線形開曲線を有することができ、これにより、振動下での良好な性能などの特定の要件により良く対処することが可能になる。
【0023】
内壁(6)は同様に、バルブシャッタ(9)用の座部(10)を有する。装置(1)が金属製であるとき、バルブシャッタ(9)の座部(10)は円錐状上流構造を有利に有し、その最大直径は下流に位置する。バルブシャッタ(9)の上流部分は相補的な円錐状構造を有する。実際、円錐状構造により、付加製造作業が容易になり、座部(10)が自重で潰れることが防止される。逆に、装置が、たとえば、プラスチック製であれば、円錐状構造は不要であり、座部(10)は、中心軸(7)に対して直交する肩の形態で作製することができる。
【0024】
特定の一実施形態によれば、座部(10)の壁およびバルブシャッタ(9)の相補的なリムは、中心軸(7)に対して30度と60度との間の角度を画定する。バルブシャッタ(9)の上流端(11)で、バルブシャッタ(9)と内壁(6)との間に径方向の隙間が存在する。この隙間は0.2mmより小さく、たとえば0.1mmに等しい。同様に、バルブシャッタ(9)の傾斜壁と内壁(6)との間に隙間が存在し、0.6mmより小さく、たとえば0.495mmに等しい。バルブシャッタ(9)の座部(10)は同様に、円錐状構造であるが、上流より下流で直径が小さい下流に位置する部分を有する。バルブシャッタ(9)は相補的な構造を有する。したがって、バルブシャッタ(9)は、ばね(8)に抗して、下流開口(4)の方へ移されると、壁(6)の円錐状部分に載ることができる。バルブシャッタ(9)の移動はこのように制限され、ばね(8)は、たとえば、降伏点を超えないように保護される。すでに述べたように、円錐状構造は、金属部品の製造を容易にするものであり、プラスチック部品では必要ない。
【0025】
閉位置における密封を確実にするため、バルブシャッタ(9)は、シールを受けるため、バルブシャッタ(9)の周囲に配置された周辺環状溝の形態の座部(12)を有する。シール(図示せず)は、たとえば、フルオロシリコーンOリングとすることができる。もちろん、シールはあるいは、内壁(6)に形成された溝に配置することができる。シールは、密封を確実にするため、バルブシャッタ(9)と内壁(6)との間に存在する径方向の隙間より大きい。シールは、装置(1)を製造した後に配置される。
【0026】
静止時、ばね(8)はバルブシャッタ(9)を座部(10)に押し付ける。したがって、シールは、壁(6)に押し付けられ、燃料が上流開口(3)の方へ戻ることを防止する。上流開口(3)を介して装置(1)内を貫通するため、燃料はバルブシャッタ(9)に圧力を加える。圧力が十分であると、ばね(8)は圧縮され、燃料は、チャンバ(5)内へ、壁(6)とバルブシャッタ(9)との間のスペースを通って下流開口(4)の方へ流れることができる。もちろん、必要な圧力レベルはばね(8)の剛性によって決定される。
【0027】
上流に加えられる圧力が一定のしきい値より低いとき、バルブシャッタ(9)は、特にばね(8)および任意選択で内部圧力によってバルブシャッタ(9)の座部(10)に押し付けられる。シールは、内壁(6)に支えられ、上流の開口(3)を通って燃料が戻ることを防止する。
【0028】
図2を参照すると、第2の実施形態によれば、弾性復帰部材は板ばね(8)である。板ばね(8)は、内壁(6)を横方向に拡張し、バルブシャッタ(9)によって拡張されており、壁(6)、板ばね(8)およびバルブシャッタ(9)は、一体アセンブリを形成している。
【0029】
もちろん、板ばね(8)は、任意の適切な方法で、たとえば1枚の板として、またはバルブシャッタ(9)の両側に1枚の2枚の板などとして、製造することができる。板は、ばね(8)の弾性挙動を要件に最良に適合させるため、可変の断面を有することができる。
【0030】
有利には、本発明による装置(1)を製造するための方法は、本体(2)、弾性復帰部材(8)およびバルブシャッタ(9)を層ごとに付加製造によって製造することからなり、本体(2)、弾性復帰部材(8)およびバルブシャッタ(9)がともに単一の一体部分を形成するようにし、この装置(1)は、
- 本体(2)が、燃料を受け取るように意図されたチャンバ(5)を画定し、少なくとも1つの開口(3)を有し、
- チャンバ(5)が、弾性復帰部材(8)によって拡張された内壁(6)を有し、
- 弾性復帰部材が、バルブシャッタ(9)によって拡張されており、チャンバ(5)における燃料が開口(3)を介して出て行くことを防止するように上記バルブシャッタ(9)が開口(3)を閉鎖する位置にこれを押し込む
ように製造される。
【0031】
したがって、本発明による装置(1)は一体である。換言すれば、設計、検証、製造、調達、保管の面で管理すべき部品が1つのみである。製造は容易、迅速かつ安価である。また、装置(1)が、固定手段なしで単一部品として作製されるとすれば、電気的導通は最適であり、装置は軽量で、金属間腐食のリスクは最小化、さらには排除される。
【0032】
本発明は、取り扱いおよび組み立て作業を回避し、方法の反復性を改善することを可能にする。
【符号の説明】
【0033】
1 流体逆止装置
2 本体
3 上流開口
4 下流開口
5 チャンバ
6 内壁
7 中心縦軸
8 弾性復帰部材
9 バルブシャッタ
10 座部
11 上流端
12 座部
図1
図2