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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】経皮薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20230905BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230905BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230905BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 31/4409 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/12
A61K31/4409
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020530416
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 US2018023073
(87)【国際公開番号】W WO2019032147
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】62/543,580
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520046476
【氏名又は名称】アブロ ライフ サイエンシーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ラクハニ,シャキル
(72)【発明者】
【氏名】サラニ,キーアン
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-504359(JP,A)
【文献】SHIDEHAYE, S.S. et al.,AAPS PharmSciTech,米国,2008年,Vol. 9, No. 3,pp. 909-916
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膚パッチの製造方法であって、
最初に皮膜形成剤及び可塑剤を水に添加し、混合物を室温(25°C)で撹拌するステップと、
生体接着性ポリマー及び天然多糖を徐々に加え、前記生体接着性ポリマーが溶解して粘度が低下するまで混合物を攪拌するステップと、
皮膜形成剤及び角質溶解薬を添加し、均一な混合物が得られるまで2~5時間撹拌するステップと、
前記混合物に1つ以上の活性薬を添加し、該混合物を1~4時間攪拌して、前記角質溶解薬、前記可塑剤、及び前記皮膜形成剤に分散された前記生体接着性ポリマーを含む粘着性のポリマーマトリクスを得るステップと、
前記ポリマーマトリクスを一群の複数の裏地層に流し込むステップと、
前記複数の裏地層を80°Cで4~8時間焼成することにより、前記裏地層の1つ以上が、外表皮膚が乾燥した状態から濡れた状態になった後に前記外表皮膚に対する接着性を維持するような親水性を有する皮膚パッチを製造するステップと、
を備えた耐水性且つ耐汗性の皮膚パッチの製造方法。
【請求項2】
前記生体接着性ポリマーは、キトサン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、又はこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記皮膜形成剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ゼラチン、デキストリン、ポリエチレンオキシド、グアーガム、キサンタンガム、又はこれらの組合せである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン‐プロピレングリコール、又はこれらの組合せである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記天然多糖は、寒天、アルギン酸塩、キチン、グルコマンナン、ゲランガム、ゼラチン、グアーガム、アラビアゴム、ローカストビーンガム、ペクチン、キサンタン、又はこれらの組合せである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記角質溶解薬は、尿素、乳酸、アラントイン、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、又はこれらの組合せである、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体接着性ポリマーはキトサンであり、前記皮膜形成剤はポリビニルピロリドンであり、前記可塑剤はグリセロールであり、前記天然多糖はアラビアゴムであり、前記角質溶解薬は乳酸である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記裏地層は、テフロン、金属箔、金属化ポリフォイル、複合箔、ポリエステル含有フィルム、又は発泡体を備えた、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記活性薬は、1つ以上の抗ヒスタミン薬、カリウムチャネル遮断薬、鎮痛薬、抗糖尿病薬、疼痛緩和薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬、血管拡張薬、利尿薬のうちの1つ以上である、カルシウムチャネル遮断薬、抗ニキビ薬、抗老化剤、抗生物質、抗真菌薬、ACE阻害薬、GERD薬、抗炎症薬、オピオイド、抗喘息薬、コルチコステロイド、ニコチン性コリン作動性受容体アゴニスト、抗酸化薬、抗原生動物薬、止痒薬、抗ウイルス薬、化学療法薬、免疫修飾薬、角質溶解薬、レチノイド、又は中枢神経系刺激薬である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記活性薬は、1つ以上のジフェンヒドラミン、デスロラタジン、セチリジン、ロラタジン、トリヘキシフェニジル、アセナピン、プロスタサイクリン、ブスピロン、ブトルファノール、カプトプリル、カルビドパ、アルブテロール、ナルトレキソン、イバブラジン、デキサメタゾン、フェニレフリン、フルオシノロンアセトニド、デクスランソプラゾール、フロセミド、イスラジピン、ベンラファキシン、又はエナラプリルである、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記皮膚パッチは、直径の長さが1~8cm、表面積が4~8cm、及び作用開始が15分以内であり、1つ以上の活性薬を8~24時間に亘って持続的に送達し、前記皮膚パッチは約320mm/minの剥離速度を有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記皮膚パッチは、カフェイン、アリピプラゾール、テオフィリン、ジフィリン、ペントキシフィリン、エンプロフィリン、アミノフィリン、オクストリフィリン、テオブロミン、プロペントフィリン、キサンチノール、ドキソフィリン、パマブロム、リソフィリン、ガンシクロビル、フェネチリン、キサンチン、尿酸、ロロフィリン、レプロテロール、カフェドリン及びテオドレナリン、又はこれらの任意の組合せに対して閉塞的である、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記活性薬の65%から100%が8から24時間以内に哺乳動物の皮膚に拡散する、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物はヒト対象である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2017年8月10日になされた米国仮出願番号62/543580の利益を主張する。
【分野】
【0002】
本明細書では、哺乳動物の皮膚へ適用するための、皮膚刺激がなく、敏感肌の対象での使用に特に適した、耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを提供する。開示する経皮送達システムは小さなサイズのパッチを備えており、投与に必要な皮膚表面積を抑えた多量の活性薬の送達、作用の迅速な開始、8~24時間に及ぶ持続可能な薬物送達、及び粘着強度を可能にする。また、開示する経皮薬物送達システムを製造する方法、経皮送達システムを使用してアレルギー反応、免疫系障害及び心血管疾患を治療する方法も提供する。
【背景】
【0003】
経皮薬物送達は経口投与を代替する魅力的な選択肢である。特に、長期一定送達が望ましい場合や、小児科集団や高齢者集団でのように、患者のコンプライアンスを確保するために経口の錠剤や丸剤を置換する必要がある場合に魅力的な選択肢である。
【0004】
経皮薬物送達には、薬物の経口投与に対して課題である、薬物の肝臓による代謝を回避できるという利点がある。加えて、経皮薬物送達は苦痛がなく非侵襲的であり、自己投与が可能であり、長時間放出を提供する。しかしながら、経皮投与に適した薬物は限られている。現在の経皮送達デバイスは親油性の低分子薬物を成功裡に送達しているかもしれないが、親水性の薬物を皮膚を介して血流まで経皮的に送達することは依然として困難である。したがって、親油性の薬物、親水性の薬物及び両親媒性の薬物を持続可能に送達することができ、作用開始が速く、皮膚を刺激しない経皮送達薬物システムに対する要求がある。
【概要】
【0005】
ここでは、高分子薬物及び低分子薬物が血流へ経皮的に成功裡に送達可能であることが示される。これらの知見に基づき、哺乳動物の皮膚に貼付するための耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムが提供される。この耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムは、直径の長さが1~8cmで表面積が4~8cmのパッチを備える。該パッチは幅が約1~5mmのモノリシック層を含み、該モノリシック層は10~30%(w/w)の生体接着ポリマーと、10~40%(w/w)の皮膜形成剤と、10~60%(w/w)の可塑剤と、1~20%(w/w)の天然多糖と、10~50%(w/w)の角質溶解薬と、1~60%(w/w)の1つ以上の活性薬と、を備える。該パッチは、哺乳動物の皮膚へ貼布してから15分以内に作用が開始し、1つ以上の活性薬を8~24時間に亘って持続可能に送達する。該パッチは、約320mm/minの剥離速度によって示されるように、優れた粘着強度を有する。
【0006】
いくつかの例では、生体接着性ポリマーには、キトサン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの例では、皮膜形成剤には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ゼラチン、デキストリン、ポリエチレンオキシド、グアーガム、キサンタンガム、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの追加例では、可塑剤には、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン‐プロピレングリコール、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの他の例では、天然多糖には、寒天、アルギン酸塩、キチン、グルコマンナン、ゲランガム、ゼラチン、グアーガム、アラビアゴム、ローカストビーンガム、ペクチン、キサンタン、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの例では、角質溶解薬には、尿素、乳酸、アラントイン、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、又はこれらの組合せが含まれ得る。したがって、一例では、モノリシック層は、10~30%(w/w)のキトサンと、10~40%(w/w)のポリビニルピロリドンと、10~60%のグリセロールと、1~20%(w/w)のアラビアゴムと、10~50%(w/w)の乳酸とを含んでもよい。
【0007】
いくつかの例では、ここで提供する耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムは、円形の接着性裏地層をさらに含み得る。裏地層に適した材料には、テフロン(登録商標)、金属箔、金属化ポリフォイル、ポリエステルテレフタレート、ポリエステル若しくはアルミニウム被覆ポリエステルなどのポリエステルを含んだ複合箔又は複合フィルム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルブロックアミド共重合体、ポリエチレンメチルメタクリレートブロックコポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、シリコーンエラストマー、ゴムベースのポリイソブチレン、スチレン、スチレン‐ブタジエン及びスチレン‐イソプレンコポリマー、ポリエチレン、並びにポリプロピレンが含まれるが、これらに限らない。加えて、裏地層には、ポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリウレタン発泡体、及びポリエチレン発泡体などの様々な発泡体が含まれるが、これらに限らない。
【0008】
ここで提供する耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムは、非常に多様な活性薬を皮膚に送達し得る。いくつかの例では、一度に1つの活性薬のみが皮膚に送達される。他の例では、複数の活性薬の組合せが、連続的に又は同時に皮膚に送達される。活性薬の例には、1つ以上の抗ヒスタミン薬、カリウムチャネル遮断薬、鎮痛薬、抗糖尿病薬、疼痛緩和薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬、血管拡張薬、利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗ニキビ薬、抗老化剤、抗生物質、抗真菌薬、ACE阻害薬、GERD薬、抗炎症薬、オピオイド、抗喘息薬、コルチコステロイド、ニコチン性コリン作動性受容体アゴニスト、抗酸化薬、抗原生動物薬、止痒薬、抗ウイルス薬、化学療法薬、免疫修飾薬、角質溶解薬、レチノイド、及び中枢神経系刺激薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0009】
例示的な抗ヒスタミン薬には、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、デスロラタジン、及びセチリジンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗うつ薬及び抗不安薬には、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、ベンラキサフィン、デュロキセチン、シュウ酸エシタロプラム、アルプラゾラム、及びロラゼパムが含まれるが、これらに限定されない。例示的なADHD薬物には、アンフェタミンアスパラギン酸塩、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート塩酸塩、デキスメチルフェニデート塩酸塩、及びアミトリプチリンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗パーキンソン薬には、レボドパ、カルビドパ、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、アポモルフィン、塩酸セレギン、ラサギリン、及びベンズトロピンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な多発性硬化症薬物には、テリフルノミド、ダルファンプリジン、フマル酸ジメチル、ナタリズマブ、フィンゴリモド、及び酢酸グラチラマーが含まれるが、これらに限定されない。例示的なアルツハイマー病の薬物には、ドネゼピル、リバスチグミン、及びガランタミンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な鎮痛薬には、メタドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、ブプレノルフィン、ヒドロコドン、モルヒネ、及びヒドロコドンが含まれるが、これらに限定されない。例示的なGERD薬には、エソメプラゾール、オメプラゾール、及びパントプラゾールが含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗コレステロール剤には、オンダンセントロン、ピオグリタゾン、オルリスタット、レナリドマイド、ソフスボビル、ロスバスタチン、アムロジピン、シンバスタチン、及びメトホルミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
いくつかの例では、活性薬は、ジフェンヒドラミン、デスロラタジン、セチリジン、ロラタジン、トリヘキシフェニジル、アセナピン、プロスタサイクリン、ブスピロン、ブトルファノール、カプトプリル、カルビドパ、アルブテロール、ナルトレキソン、イバブラジン、デキサメタゾン、フェニレフリン、フルオシノロンアセトニド、デクスランソプラゾール、フロセミド、イスラジピン、ベンラファキシン、及びエナラプリルの内の1つ以上である。
【0011】
また、ここでは、1つ以上の分子に対して閉塞的であるパッチを備えた耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムも提供する。これらの分子には、カフェイン、アリピプラゾール、テオフィリン、ジフィリン、ペントキシフィリン、エンプロフィリン、アミノフィリン、オクストリフィリン、テオブロミン、プロペントフィリン、キサンチノール、ドキソフィリン、パマブロム、リソフィリン、ガンシクロビル、フェネチリン、キサンチン、尿酸、ロロフィリン、レプロテロール、カフェドリン及びテオドレナリン、並びにこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
ここで提供する耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムは、ヒト亜集団などの様々な哺乳動物対象亜集団での使用に適したいくつかの魅力的な特徴と望ましい特性を示す。例えば、パッチのすべての成分は皮膚を刺激せず、発疹、発赤、炎症又は皮膚の変色を引き起こさないため、耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムは、敏感肌を持つ傾向がある高齢者や小児集団に特に適している。
【0013】
さらに、パッチのサイズが小さいため、ここで提供する耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムは、大きな表面対体積比により大量の薬物を送達し、投与に必要な皮膚の表面積を最小化することを可能にし、作用開始が5~15分以内であり、1つ以上の薬物の約65%から約100%が8~24時間以内に哺乳動物の皮膚に拡散することを可能にする。したがって、ここで提供する耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムは、皮膚から血流への迅速な送達を達成し、一般的な副作用を軽減し、患者のコンプライアンスを改善する剤形を提供する。
【0014】
ここでは、耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムの製造方法も提供する。この方法は、最初に皮膜形成剤と可塑剤を水に添加し、室温(25°C)で混合物を攪拌するステップと、生体接着性ポリマーと天然多糖を徐々に加え、生体接着性ポリマーが溶解して粘度が低下するまで混合物を攪拌するステップと、次に、皮膜形成剤及び角質溶解薬を添加し、均一な混合物が得られるまで2~5時間撹拌するステップと、1つ以上の活性薬を添加し、混合物を1~4時間攪拌して製剤を得るステップと、また、オプションとして、製剤を一群の複数の裏地層に流し込み、複数の裏地層を80°Cで4~8時間焼成するステップと、を備える。
【0015】
いくつかの例では、生体接着性ポリマーには、キトサン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの例では、皮膜形成剤には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ゼラチン、デキストリン、ポリエチレンオキシド、グアーガム、キサンタンガム、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの追加例では、可塑剤には、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン‐プロピレングリコール、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの例では、天然多糖には、寒天、アルギン酸塩、キチン、グルコマンナン、ゲランガム、ゼラチン、グアーガム、アラビアゴム、ローカストビーンガム、ペクチン、キサンタン、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの例では、角質溶解薬には、尿素、乳酸、アラントイン、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、又はこれらの組合せが含まれ得る。一例では、パッチは10~30%(w/w)のキトサンと、10~40%(w/w)のポリビニルピロリドンと、10~60%のグリセロールと、1~20%(w/w)のアラビアゴムと、10~50%(w/w)の乳酸と、を備えてもよい。
【0016】
いくつかの実施例において、パッチは裏地層を含んでもよい。裏地層に適した材料には、テフロン、金属箔、金属化ポリフォイル、ポリエステルテレフタレート、ポリエステル若しくはアルミニウム被覆ポリエステルなどのポリエステルを含んだ複合箔又は複合フィルム、 ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルブロックアミド共重合体、 ポリエチレンメチルメタクリレートブロックコポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、シリコーンエラストマー、ゴムベースのポリイソブチレン、スチレン、スチレン‐ブタジエン及びスチレン‐イソプレンコポリマー、ポリエチレン、並びにポリプロピレンが含まれるが、これらに限らない。加えて、裏地層には、ポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリウレタン発泡体、及びポリエチレン発泡体などの様々な発泡体が含まれるが、これらに限らない。
【0017】
いくつかの例では、提供する方法は、2~15%(w/w)の1つ以上の脂肪酸を添加することを更に含み得る。脂肪酸には、酒石酸、オレイン酸、ラウリン酸、マレイン酸、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、提供する方法は、2~15%(w/w)の1つ以上の精油を加えることを更に含み得る。精油には、L‐メントール、チュアンシオン油、クローブ油、シナモン油、テレビン油、ユーカリ油、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
提供する方法は、非常に多様な活性剤を皮膚に送達することができる、耐水性且つ耐汗性の経皮的薬物送達システムを生産する。いくつかの例では、一度に1つの活性薬のみが皮膚に送達される。他の例では、複数の活性薬の組合せが、連続的又は同時に皮膚に送達される。活性薬の例には、1つ以上の抗ヒスタミン薬、カリウムチャネル遮断薬、鎮痛薬、抗糖尿病薬、疼痛緩和薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬、血管拡張薬、利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗ニキビ薬、抗老化剤、抗生物質、抗真菌薬、ACE阻害薬、GERD薬、抗炎症薬、オピオイド、抗喘息薬、コルチコステロイド、ニコチン性コリン作動性受容体アゴニスト、抗酸化薬、抗原生動物薬、止痒薬、抗ウイルス薬、化学療法薬、免疫修飾薬、角質溶解薬、レチノイド、及び中枢神経系刺激薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
例示的な抗ヒスタミン薬には、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、デスロラタジン、及びセチリジンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗うつ薬及び抗不安薬には、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、ベンラキサフィン、デュロキセチン、シュウ酸エシタロプラム、アルプラゾラム、及びロラゼパムが含まれるが、これらに限定されない。例示的なADHD薬物には、アンフェタミンアスパラギン酸塩、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート塩酸塩、デキスメチルフェニデート塩酸塩、及びアミトリプチリンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗パーキンソン薬には、レボドパ、カルビドパ、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、アポモルフィン、塩酸セレギン、ラサギリン、及びベンズトロピンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な多発性硬化症薬物には、テリフルノミド、ダルファンプリジン、フマル酸ジメチル、ナタリズマブ、フィンゴリモド、及び酢酸グラチラマーが含まれるが、これらに限定されない。例示的なアルツハイマー病の薬物には、ドネゼピル、リバスチグミン、及びガランタミンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な鎮痛薬には、メタドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、ブプレノルフィン、ヒドロコドン、モルヒネ、及びヒドロコドンが含まれるが、これらに限定されない。例示的なGERD薬には、エソメプラゾール、オメプラゾール、及びパントプラゾールが含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗コレステロール剤には、オンダンセントロン、ピオグリタゾン、オルリスタット、レナリドマイド、ソフスボビル、ロスバスタチン、アムロジピン、シンバスタチン、及びメトホルミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
いくつかの例では、活性薬は、ジフェンヒドラミン、デスロラタジン、セチリジン、ロラタジン、トリヘキシフェニジル、アセナピン、プロスタサイクリン、ブスピロン、ブトルファノール、カプトプリル、カルビドパ、アルブテロール、ナルトレキソン、イバブラジン、デキサメタゾン、フェニレフリン、フルオシノロンアセトニド、デクスランソプラゾール、フロセミド、イスラジピン、ベンラファキシン、及びエナラプリルの内の1つ以上である。
【0021】
ここで提供する方法は、1つ以上の分子に対して閉塞的であるパッチを備えた耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを更に生産し得る。これらの分子には、カフェイン、アリピプラゾール、テオフィリン、ジフィリン、ペントキシフィリン、エンプロフィリン、アミノフィリン、オクストリフィリン、テオブロミン、プロペントフィリン、キサンチノール、ドキソフィリン、パマブロム、リソフィリン、ガンシクロビル、フェネチリン、キサンチン、尿酸、ロロフィリン、レプロテロール、カフェドリン及びテオドレナリン、並びにこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
ここで提供する方法は、哺乳動物の皮膚への適用の15分以内に作用が開始する耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを生産し、8~24時間にわたって1つ以上の活性薬を持続的に送達する。提供する方法で製造された経皮送達システム内のパッチは、約320mm/minの剥離速度で示されるように、優れた接着強度を持ち、活性薬の65%から100%が8~24時間以内に哺乳動物の皮膚に拡散するのを可能にする。哺乳動物は、例えば、動物又はヒトの対象である。
【0023】
さらに、ここでは必要とする対象の季節性アレルギー性鼻炎を治療する方法も提供され、この方法は、1つ以上の抗ヒスタミン薬を含む耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを対象の皮膚に適用し、この耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを対象の皮膚と8~24時間接触させ、これにより対象の季節性アレルギー性鼻炎を治療する。例示的な抗ヒスタミン薬には、ジフェンヒドラミン、デスロラチジン、セチリジン、ロラタジン、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用した最初の1時間の間に600μg/cm/hである。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用する全時間に亘って少なくとも100μg/cm/hである。
【0024】
さらに、ここでは必要とする対象の季節性慢性特発性蕁麻疹を治療する方法も提供され、この方法は、ここで提供され、1つ以上の抗ヒスタミン薬を含む耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを対象の皮膚に適用し、この耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを対象の皮膚と8~24時間接触させ、これにより対象の季節性慢性特発性蕁麻疹を治療する。例示的な抗ヒスタミン薬には、ジフェンヒドラミン、デスロラチジン、セチリジン、ロラタジン、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用した最初の1時間の間に600μg/cm/hである。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用する全時間に亘って少なくとも100μg/cm/hである。
【0025】
さらに、ここでは、耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムも提供され、パッチは、10~30%(w/w)のキトサンと、10~40%(w/w)のポリビニルピロリドンと、10~60%のグリセロールと、1~20%(w/w)のアラビアゴムと、10~50%(w/w)の乳酸と、治療上有効な量の1つ以上の抗ヒスタミン薬と、を備えたモノリシック層である。例示的な抗ヒスタミン薬には、ジフェンヒドラミン、デスロラチジン、セチリジン、ロラタジン、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用した最初の1時間の間に600μg/cm/hである。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用する全時間に亘って少なくとも100μg/cm/hである。いくつかの例では、モノリシック層は、2~15%(w/w)の1つ以上の脂肪酸を更に含んでもよい。脂肪酸には、酒石酸、オレイン酸、ラウリン酸、マレイン酸、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。 いくつかの例では、モノリシック層は、2~15%(w/w)の1つ以上の精油を更に含んでもよい。精油には、L‐メントール、チュアンシオン油、クローブ油、シナモン油、テレビン油、ユーカリ油、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本開示の前述の及び他の特徴は、添付の図面を参照しながらなされる、いくつかの実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、キトサンの構造を示す。
図2図2は、本明細書で提供される経皮薬物送達システムの平面図及び側面図である。本図の上から1番目:本明細書において提供される一経皮薬物送達システムの平面図である。この経皮薬物送達システムは粘着性のポリマーマトリクス内に分散された薬物を含み、これは乳酸、グリセリン及びポリビニルピロリドン(PVP:polyvinyl pyrrolidone)中に溶解されたキトサンの層を含む。この液体マトリクスは裏地層へ注がれ、溶媒蒸発によって固化される。パッチは環状であり、4cmの直径を有する。裏地層とマトリクスはサイズが等しい。キトサンとポリビニルピロリドンのマトリクスは、最終的な厚さがおよそ1mmである。本図の上から2番目:一経皮薬物送達システムの平面図である。この経皮薬物送達システムは、粘着性のポリマーマトリクス内に分散された薬物を含み、これは乳酸、グリセリン及びポリビニルピロリドン(PVP)中に溶解されたキトサンの層を含む。この液体マトリクスは裏地層へ注がれ、溶媒蒸発によって固化される。このマトリクスサイズは3cmに縮小されて、4cmの直径を有する追加的な裏地層に載置される。マトリクスの厚さと一致させるため、裏地層の端部には医療用接着剤が流し込まれる。本図の上から3番目:一経皮薬物送達システムの側面図である。この経皮薬物送達システムは、粘着性のポリマーマトリクス内に分散された薬物を含み、これは、乳酸、グリセリン及びポリビニルピロリドン(PVP)中に溶解されたキトサンの層を含む。この液体マトリクスは裏地層へ注がれ、溶媒蒸発によって固化される。パッチは環状であり、4cmの直径を有する。裏地層はマトリクスと面一である。キトサンとポリビニルピロリドンのマトリクスは、最終的な厚さがおよそ1mmである。本図の上から4番目:一経皮薬物送達システムの側面図である。この経皮薬物送達システムは、粘着性のポリマーマトリクス内に分散された薬物を含み、これは乳酸、グリセリン及びポリビニルピロリドン(PVP)中に溶解されたキトサンの層を含む。この液体マトリクスは裏地層へ注がれ、溶媒蒸発によって固化される。このマトリクスサイズは3cmに縮小されて、4cmの直径を有する追加的な裏地層に載置される。マトリクスの厚さと一致させるため、裏地層の端部には医療用接着剤が流し込まれる。
図3図3は、様々な薬物の皮膚シミュレーション膜を介した気水界面での経時的なin vitroでの拡散を示す。●シュウ酸エスシタロプラム;▲4―アミノピリジン;■二塩酸セチリジン;◆アリピプラゾール。修正フランツ拡散セルに55mlのリン酸緩衝液を充填し、気水界面の各セルに皮膚模擬膜を配置し、有孔キャップで固定した。セルを水浴に入れ、温度を38°Cに保った。薬物を充填したパッチを、膜の上に静かに置いて軽く押し下げた。さまざまな時点で、薬液を収集して新鮮な緩衝液と交換し、紫外線(UV)吸光度をきれいな石英キュベットを用いて200~300nmで測定し、標準曲線を用いて薬物濃度と経時的な累積薬物放出率を求めた。
図4図4は、ここで提供する経皮薬物送達システムを介した経時的な4‐アミノピリジンのパーセンテージ拡散を示す。経皮薬物送達システムのパッチは、23%(w/w)のグリセロール、16%(w/w)のアラビアゴム、11%(w/w)の中分子量キトサン、及び48%(w/w)の乳酸からなる。パッチは、液体マトリクスゲルを適当なテフロン裏地層に流し込み、55°Cで18時間乾燥させることにより準備した。結果として得られた拡散プロファイルは、同じ実験を3回行うことで得られた。パッチのサンプルは、同一の実験が行われた回数の番号を示す。
図5図5は、ここで提供する経皮薬物送達システムを介した4‐アミノピリジンの経時的なパーセンテージ拡散を示す。この経皮薬物送達システムのパッチは、50%(w/w)のグリセロール、14%(w/w)のPVP、18%(w/w)の中分子量キトサン、及び18%(w/w)の乳酸からなる。このパッチは、液体マトリクスゲルを適当なテフロン裏地層に流し込み、80°Cで3時間乾燥させることにより準備した。結果として得られた拡散プロファイルは、同一の実験を8回行って得られた。パッチのサンプルは、同一の実験が行われた回数の番号を示す。
図6図6は、ここで提供する経皮的薬物送達システムを介した4‐アミノピリジンの経時的なパーセンテージ拡散を示す。この経皮薬物送達システムのパッチは、36%(w/w)のグリセロール、15.3%のPVP、0.7%(w/w)のアラビアゴム、9.5%(w/w)の中分子量キトサン、及び38.5%(w/w)の乳酸からなる。このパッチは、液体マトリクスゲルを適当なテフロン裏地層に流し込み、80°Cで5時間乾燥させることにより準備した。結果として得られた拡散プロファイルは、同一の実験を3回行うことで得られた。パッチのサンプルは、同一の実験が行われた回数の番号を示す。
図7図7は、ここで提供する経皮薬物送達システムにおけるパッチの走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electronic microscopy)画像である。デスロラタジンを有する経皮パッチを、先ずは一定量の水にグリセロールと乳酸を添加し、室温(25°C)で混合物を攪拌しながら形成した。次に、キトサンとアラビアゴムを徐々に加えて、キトサンの溶解を促進し、粘度を下げた。次いで、PVPをマトリクスに添加し、混合物を2~5時間撹拌した。次に、デスロラタジンを添加し、混合物を1~4時間撹拌した。次いで、調合物を一群のテフロン裏地に流し込み、80°Cで4~8時間焼成した。SEM画像は、画像中の白い粉状物質で表される医薬品有効成分(API:active pharmaceutical ingredient)であるデスロラタジンの大部分が暗い背景で表されるポリマーマトリクスに溶解していることを示す一方で、いくつかのデスロラタジン結晶を確認でき、ポリマーがAPIで飽和していることが示されている。
【詳細な説明】
【0028】
用語と方法に関する以下の説明は、本開示をより良く記載するとともに、本開示の実施において当業者をガイドするために提供される。本明細書で使用される「備える(comprising)」は「含む(including)」を意味する。また、単数形「1つの(a)」または「1つの(an)」または「その(the)」は、文脈が別段の意を表す場合は格別、複数についての言及を含む。例えば、「1つの治療薬を備える」と言う場合、1つ又は複数の治療薬を含む。「又は」との用語は、文脈が別段の意を表す場合は格別、記載された選択的要素のうちの単一の要素又は2つ以上の要素の組合せを意味する。例えば、「A又はB」という句は、A、B、又はAとBの両方の組合せを指す。さらに、本明細書で説明する様々な要素、特徴及びステップ、並びに各要素、特徴又はステップに係る他の既知の均等物は、当業者が混合及び整合をして、本明細書において記載される原理に従った方法を行うことが可能である。様々な要素、機能、及びステップのうち、個別の例において、一部は具体的に含まれ、他の一部は特に含まれない。
【0029】
特段の説明がなされない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本開示が属する技術分野において通常の知識を有する者によって共通して理解されるところと同一の意味を有する。ここに記載されたものと類似又は均等な方法及び材料を本開示の実施又は試験において使用することは可能であるが、適切な方法及び材料について以下に述べる。材料、方法、及び例は説明のみを目的としており、限定的となることを意図していない。ここで引用された全ての文献は、参照によりそれらの全体が組み入れられる。
【0030】
いくつかの例において、一定の態様について記載してクレームするために使用される、成分の量、分子量のような特性、反応条件などを表現する数は、いくつかの場合においては、「約(about)」又は「およそ(approximately)」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。例えば、「約」又は「およそ」は、それが記述する値の+/-20%の変動を示すことができる。したがって、いくつかの実施形態では、ここに記載の数値パラメータは、特定の実施形態の所望の特性に応じて変化しうる近似である。いくつかの例の広い範囲を示す数値範囲及び数値パラメータは近似ではあるが、具体例において述べられている数値は実施可能である限り正確に報告されている。ここにおいて複数の値に係る複数の範囲への言及は、単に、当該範囲内に入る個々の値を個別に言及することの簡便な方法として資することを意図している。
【0031】
この開示の様々な実施形態のレビューを促進するため、いくつかの具体的な用語に関する説明を以下にて提供する:
【0032】
投与する:対象に抗ヒスタミン薬などの活性剤を、有効な経路を介して供給し又は与えること。投与は全身的又は局所的でありうる。例示的な投与経路には、(例えば、経口、舌下、口腔、直腸などの)局所経路、経皮経路、頬側経路、膣経路、鼻腔内経路、直腸経路、吸入経路、眼球経路、耳経路、経腸経路、及び(例えば、(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、及び静脈内などの)注射などの)非経口経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
空気‐液体界面(ALI:Air‐Liquid Interface):セルの基底表面が液体培地に接する一方で、そのセルの頂端表面が空気に晒されているセルの培養。一般的なアプローチでは、セルがセル培養インサートの透過性膜上に播種され、これには最初は頂部及び基底部の両方に対して培地が供給される。コンフルエントに一度達すると、セルは「エアリフト」され、培地は基底にのみ供給される。この構成は、ヒトの皮膚上での空気路において発見された条件を模倣するものである。
【0034】
鎮痛薬:痛みを和らげるために使用される薬物又は薬物群。鎮痛薬は末梢神経系及び中枢神経系に様々な方法で作用し、可逆的に感覚を排除する麻酔薬とは異なる。
【0035】
アナログ:他のものに類似する構造を有するが、例えば、1つ以上の原子、官能基、又は部分構造がそれとは異なっている化合物。
【0036】
麻酔薬:感覚の減退又は消失を引き起こす活性剤。
【0037】
抗ニキビ薬:ニキビの部位に局所的に投与されると、尋常性ざ瘡の上皮状態に関連した症状が視覚的に減退させる化学的及び/又は生物学的な物質。
【0038】
老化防止薬:皮膚の老化兆候を治療し若しくは少なくとも抑制し、皮膚の外観を改善し、皮膚の1つ以上の層の厚さを増大し、皮膚の弾力性、伸縮性又はハリを改善し、皮膚の水分補給又は湿潤を改善し、細い線及び/又はしわの外観を隠し若しくは抑制し、又は皮膚の質感若しくは滑らかさを改善する物質。
【0039】
抗生物質:細菌及び他の微生物の既存のコロニーの成長を阻害するか、又は既存のコロニーを破壊することにより、細菌感染を治療できる化学物質。
【0040】
抗真菌薬:真菌の成長を阻害し又は破壊することができる活性薬。
【0041】
抗ヒスタミン薬:ヒスタミンの受容体をブロックすることにより、体内のヒスタミンの作用を阻害する薬。抗ヒスタミン薬の例には、約2mgから約10mgの用量で効果的なアレルギー治療に使用される三環系H1抗ヒスタミン薬であるジフェンヒドラミン、デスロラタジン及びロラタジンや、約2mgから約10mgの用量で効果的な、花粉症、アレルギー、血管浮腫、じんましんの治療に使用される第2世代の抗ヒスタミン薬であるセチリジンが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
抗炎症薬:炎症と腫れを抑制する活性剤。
【0043】
酸化防止剤:酸素又は過酸化物によって促進される酸化又は反応を阻害する活性剤。
【0044】
抗原生動物薬:原虫類微生物の成長を阻害し、又は原虫類微生物を破壊することができる活性薬。
【0045】
止痒薬:痒みを抑制し、排除し又は予防する活性薬。
【0046】
抗ウイルス薬:ウイルスの複製を阻害し又は破壊する活性薬。
【0047】
バイオ接着剤:潤いのある肌のような高度に水和された生体表面に対して粘着性の感圧特性を示すポリマー。バイオ接着性ポリマーの例には、キトサン、ポリカルボフィル(ジビニルグリコールで架橋された多環式酸、カルボポール/カルボマー(カルボキシポリメチレン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC(セルロース2‐ヒドロキシプロピルメチルエーテル);ヒドロキシエチルセルロース;キサンタンガム;グアーガム;ヒドロキシプロピルグアー;キトサン;アルギン酸ナトリウム;カラギーナン;ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(e‐カプロラクトン)及び共重合体;並びにポリ(オルトエステル)が含まれる。
【0048】
化学療法薬又は化学療法:異常なセル増殖を特徴とする疾患の治療に治療上有用な化学物質。そのような疾患には、腫瘍、新生物、及び癌が含まれる。一例では、化学療法薬は放射性の化合物である。一例では、化学療法薬はモノクローナル抗体などの生物製剤である。いくつかの例では、開示された方法を使用して活性薬で治療された対象は、化学療法で現在治療されており、将来治療され、又は以前治療されていた。典型的な化学療法薬は、Slapak及びKufe著、Harrison’s Principles of Internal Medicine(第14版)第86章のPrinciples of Cancer Therapy;Perry他著、Abeloff,Clinical Oncology(第2版)第17章のChemotherapy(2000年、Churchill Livingstone, Inc);Baltzer及びBerkery(編):Oncology Pocket Guide to Chemotherapy(第2版)(St.Louis,Mosby‐Year Book,1995年);Fischer Knobf及びDurivage(編):The Cancer Chemotherapy Handbook(第4版)(St.Louis,Mosby‐Year Book,1993年)、において提供されている。
【0049】
接触:直接的な物理的関連における配置;固体及び液体の両形態を含む。接触は、単離されたセルを用いてin vitroで(例えば、組織培養皿若しくは他の容器内で)、又は活性薬剤を対象に投与することによりin vivoで起こり得る。
【0050】
コントロール:参照となる基準。いくつかの例において、コントロールは、貧血でない又は貧血の対象を示す値のような、ある既知の値又は複数の値を含んだある範囲である。いくつかの例において、コントロールは、治療薬が存在しない状態での反応を示すある値又は複数の値を含むある範囲である。
【0051】
架橋された:共有結合又は非共有結合によって生じる、分子内及び/又は分子間の架橋を含んだ組成物。「非共有」結合には、水素結合と静電(イオン)結合の両方が含まれる。
【0052】
薬(物)又は活性薬(活性薬剤):所望の薬理学的又は生理学的効果をもたらす化学物質又は化合物であり、治療上有効、予防上有効、又は薬用化粧上有効な薬(剤)を含む。これらの用語にはまた、ここで具体的に言及された活性薬(剤)の薬学的に受容可能で、薬理学的に活性な誘導体及びアナログが含まれ、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性な代謝物質、包接錯体、アナログなどが含まれる(これらに限定されない。)。ここで提供される経皮薬物送達システムに組み込まれ、経皮的に送達されうる適当な活性薬(剤)には、以下のものを含む(以下に限定されない。):アドレナリン作用薬;副腎皮質ステロイド;副腎皮質の反応抑制物質;アルコール抑制物;アルドステロン拮抗薬;アミノ酸;アンモニア解毒剤;蛋白同化薬;蘇生薬;鎮痛薬;アンドロゲン剤;麻酔薬;食欲抑制化合物;食欲抑制剤;拮抗薬;下垂体前葉活性化薬及び下垂体前葉抑制薬;抗ニキビ薬;抗アドレナリン作動薬;抗アレルギー薬;抗アメーバ薬;抗アンドロゲン薬;抗貧血薬;抗狭心症薬;抗不安薬;抗関節炎薬;抗喘息薬及び他の呼吸薬;抗アテローム性動脈硬化薬;抗バクテリア薬;抗腫瘍薬を含む抗癌薬、及び抗癌補助増強薬;抗コリン作用薬;抗胆石形成薬;抗凝血薬;抗コクシジウム薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;止痢薬;抗利尿薬;解毒薬;抗運動障害薬;抗嘔吐薬;抗てんかん薬;抗エストロゲン薬;抗線溶薬;抗真菌薬;緑内障治療薬;駆虫薬;抗血友病剤;抗血友病因子;抗出血薬;抗ヒスタミン薬;抗高脂血症薬;抗高リポタンパク血症薬;血圧降下薬;降圧薬;抗生物質や抗ウイルス薬などの抗感染薬;ステロイド性及び非ステロイド性の抗炎症薬;抗角質化薬;抗マラリア薬;抗菌薬;片頭痛治療薬;抗有糸分裂薬;抗真菌薬;抗嘔吐薬;抗腫瘍薬;抗好中球減少薬;抗強迫観念薬;抗寄生虫薬;抗パーキンソン症候群薬;抗ニューモシスチス薬;抗増殖薬;前立腺肥大症治療薬;抗原生動物薬;止痒薬;抗乾癬剤;抗精神病薬;解熱薬;鎮痙薬;抗リューマチ薬;抗住血吸虫薬;抗脂漏薬;抗痙攣薬;抗歯石薬及び抗結石薬;抗血栓症薬;抗結核薬;鎮咳薬;抗潰瘍薬;抗尿結石薬;抗ウイルス薬;GERD薬、抗不安薬;食欲抑制薬;注意欠如障害(ADD:attention deficit disorder)薬及び注意欠如多動性障害(ADHD:attention deficit hyperactivity disorder)薬;静菌薬及び殺菌薬;良性前立腺過形成治療薬;血糖調整薬;骨吸収阻害薬;気管支拡張薬;炭酸脱水酵素阻害薬;抗狭心症薬、抗不整脈薬、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、心臓抑制薬、心・血管作動薬、心臓保護薬、及び強心薬を含む循環器官用薬;中枢神経系(CNS:central nervous system)薬;中枢神経興奮薬;利胆薬;コリン性薬;コリン作動薬;コリンエステラーゼ非活性化物;コクシジウム阻止薬;認知補助薬及び認知強化薬;充血除去薬を含む咳・風邪薬;抑制薬;診断補助薬;利尿薬;ドーパミン作動薬;外部寄生虫駆除薬;催吐薬;プラーク、結石又は虫歯の形成を阻害する酵素;酵素阻害薬;エストロゲン;線維素溶解剤;フッ化物の虫歯予防/抗腐食薬;遊離酸素ラジカルスカベンジャ;胃腸運動薬;遺伝物質;グルココルチコイド;性腺刺激素;発毛剤;止血薬;薬草剤;ヒスタミンH2受容体拮抗薬;ホルモン;抗ホルモン薬(hormonolytics);催眠薬;コレステロール低下薬;血糖降下薬;脂質低下薬;血圧降下薬;HMGCoA還元酵素阻害薬;免疫薬;免疫修飾物質;免疫調節物質;免疫増強薬;免疫抑制薬;インポテンス治療添加物;阻害薬;角質溶解薬;ロイコトリエン阻害薬;LHRHアゴニスト;肝障害治療物;黄体融解薬;記憶補助薬;知的能力増強薬;エチレンジアミン四酢酸、四ナトリウム塩などの金属キレート薬;有糸分裂阻害薬;気分調整薬;粘液溶解薬;粘膜保護薬;筋弛緩薬;散瞳薬;麻薬拮抗薬;抗鼻閉薬;神経弛緩薬;神経筋遮断薬;神経保護薬;ニコチン;NMDA拮抗薬;非ホルモンステロール誘導体;ビタミン、必須アミノ酸及び脂肪酸などの栄養薬;抗緑内障薬などの点眼薬;オキシトシン薬;鎮痛薬;副交感神経遮断薬;ペプチド薬物;プラスミノーゲン活性化因子;血小板活性因子拮抗薬;血小板凝集阻害薬;脳卒中後治療物及び頭部外傷後治療物;増強薬;プロゲスチン;プロスタグランジン;前立腺成長抑制物質;創傷クレンジング薬としての蛋白分解酵素;チロトロピン支持薬;精神刺激薬;向精神薬;放射性薬剤;調整薬;弛緩薬;再分割薬;疥癬虫撲滅薬;硬化薬;鎮静薬;催眠鎮静薬;選択的アデノシンA1拮抗薬;セロトニン拮抗薬;セロトニン阻害薬;セロトニン受容体拮抗薬;プロゲストゲン、エストロゲン、コルチコステロイド、アンドロゲン及び同化薬を含むステロイド;禁煙薬;覚せい剤;抑制薬;交感神経興奮薬;相乗薬;甲状腺ホルモン;抗甲状腺薬;甲状腺模倣薬;トランキライザ;歯の脱感作薬;過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過酸、及びこれらの組合せなどの歯のホワイトニング薬;不安定狭心症薬;尿酸排泄薬;血管収縮薬;大冠動脈、末梢及び脳を含む血管拡張薬;傷薬;創傷治癒薬;キサンチン酸化酵素阻害薬;及びこれらと同種のもの。
【0053】
有効量又は治療有効量:障害又は疾患の症状及び/又は根底にある原因を予防、治療、軽減及び/又は改善するなど、所望の応答を誘導し、又は幹セルを含むセルの増殖を増やすなど、セルの数を増やすために十分であるような、治療薬の量(単独で又は1つ以上の他の治療薬とともに)。一例では、ある「有効量」は、アレルギー性鼻炎の徴候又は症状などの疾患の症状を軽減し又は排除するのに十分である。別の例において、ある有効量は、疾患自体を克服するのに十分な量である。さらに別の例において、抗ヒスタミン薬などの治療薬の有効量は、抗ヒスタミン薬で治療されていないか又は賦形剤のみで治療されているカルチャー又は対象などのコントロールと比較して、アレルギー性鼻炎などの疾患の症状を統計的に有意に減少させる量である。
【0054】
医薬品製剤が有効であるためには、アレルギー性鼻炎や蕁麻疹などの症状や疾患を完全に阻害する必要はない。治療には病気の進行を一時的に遅らせることを含みうるが、病気の進行を永久に停止させ又は逆転させることをさらに含みうる。例えば、ある医薬品製剤は、症状を、その医薬品製剤がない状態での症状と比較して、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、さらに少なくとも100%減少させることにより、アレルギー性鼻炎又は蕁麻疹に関連した1つ以上の兆候又は症状を緩和する。
【0055】
治療薬の有効量は、単独で又は1つ以上の他の治療薬とともに、アレルギー性鼻炎又は蕁麻疹などの状態に関連する1つ以上の兆候又は症状の減少を対象において分析し又は治療される状態に関連した1つ以上の分子のレベルを測定するなど、多くの異なる方法により決定できる。有効量はまた、ここに記載のアッセイを含む、様々のin vitro、in vivo又はin situアッセイにより求めることが可能である。
【0056】
乳化剤:油と水の界面張力を低下させ、小球の形成により表面エネルギーを最小限に抑える界面活性剤。限定するものでないが、例えば、モノステアリン酸グリセリル、メチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、三ステアリン酸ソルビタン、トラガカント、オレイン酸トリエタノールアミン、ポリエチレンソルビタンモノラウレート、ポロキサマー、及びこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0057】
ヒドロゲル:かなりの量の水を吸収して弾性ゲルを形成できる水膨潤性高分子マトリクス。このマトリクスは、共有結合架橋又は非共有結合架橋により一体的に保持された高分子の三次元ネットワークである。水性環境に配置されると、乾燥ヒドロゲルは架橋度で許容される程度まで膨潤する。
【0058】
ヒドロゲル組成物:ヒドロゲルを含むか、又は完全にヒドロゲルで構成された組成物。したがって、「ヒドロゲル組成物」は、ヒドロゲルそれ自体だけでなく、ヒドロゲルと1つ又は複数の非ヒドロゲル成分若しくは組成物、例えば疎水性相に分布した親水性成分(ヒドロゲルを含んでもよいし、ヒドロゲルであってもよい)を含むハイドロコロイドを含む組成物も包含する。
【0059】
親水性:100%の相対湿度(rh)で10%/wを超える水を吸収できるポリマー、物質、又は化合物。
【0060】
疎水性:100%の相対湿度(rh)で精々1%/wの水を吸収可能なポリマー、物質、又は化合物。
【0061】
吸湿性:100%の相対湿度(rh)で20重量%以上の水を吸収可能なポリマー、物質、又は化合物。
【0062】
免疫反応:身体が非自己と解釈する物質に対する反応及びこれとの相互作用。免疫反応は、活動している胸腺と、幹セルのBリンパ球及びTリンパ球への転換とに依存する。これらのリンパ球は、抗体産生、セル性免疫及び免疫記憶に寄与する。異常な免疫反応(免疫障害)に関連する病理学的状態は、免疫抑制、ガンマグロブリンの過剰産生、外因性の抗原に対する過剰反応、又は自身のセル及び組織に対する身体の異常な反応に起因する場合がある。免疫反応の抑制を引き起こし又は寄与するかもしれない要因には、以下が含まれる。(1)胸腺、又はBリンパ球及びTリンパ球の前駆体である幹セルの先天的無形成;(2)抗体合成セルの生存にとって必須の特定の栄養素の不足が存在する、栄養失調;(3)癌、ウイルス感染、広範囲の火傷。これらはすべて、免疫反応メカニズムに過重負担をかけ、抗原特異的抗体の供給を急速に減少させる;(4)アルコールやヘロイン、いくつかの抗生物質、抗精神病薬、及び癌治療に使用される抗腫瘍薬を含む、一定の薬物。ガンマグロブリンの過剰産生は、形質セルの過剰な増殖(多発性骨髄腫)によって明らかになる。過敏症は、身体に侵入する物質への過剰反応の結果である。
【0063】
疾病又は疾患の阻害:例えば、疾病のリスクがあるか、アレルギー性鼻炎や蕁麻疹などの特定の疾病に罹っている対象において、疾病ないし疾患の進行を低減させ、遅延させ、又は停止をもさせること。
【0064】
角質溶解薬:皮膚を薄くし又は柔らかくする薬。例示的な角質溶解薬には、尿素、乳酸、アラントイン、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、硫黄、トレチノイン、フルオロウラシル、トリクロロ酢酸、及びグリコール酸が含まれる。
【0065】
親油性:極性がある又は水性の環境と比較して、非極性環境に親和性がある物質又は化合物。
【0066】
局所投与:身体の特定の部位における治療薬の投与。
【0067】
マトリクス:ポリマー繊維からなる、細孔を含んだ3次元ネットワーク。細孔サイズ、多孔度、細孔の相互接続性/ねじれ度及び表面積などの細孔の構造パラメータは、マトリクス内に分散された薬(剤)がマトリクスの内外にどのように移動するかに影響する。
【0068】
パッチ:局所パッチは、単層及び多層の接着剤中薬物形態、マトリクス形態、並びに格納体形態を含む複数の形態をとることができ、有限のサイズ及び形状を有する。したがって、皮膚上の適用領域は、患部の大きさではなく、パッチの大きさによって定められる。
【0069】
浸透強化剤:生体膜を通過する共投与された薬(剤)の輸送を促進する天然の又は合成された分子。
【0070】
pH調製剤:製剤で所望のpH制御を実現するために使用される分子又は緩衝剤。例示的なpH調整剤には、酸(例えば、酢酸、アジピン酸、炭酸、クエン酸、フマル酸、リン酸、ソルビン酸、コハク酸、酒石酸)、塩基性pH調整剤(例えば、酸化マグネシウム、リン酸三カリウム)、及びこれらの薬学的に許容される塩が含まれる。
【0071】
薬学的に受容可能な担体:この開示に役立つ薬学的に受容可能な担体は従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences,E.W.Martin著,Mack Publishing Co.,Easton,PA,第19版(1995年)は、本明細書に開示されている組成物(抗ヒスタミン薬など)の薬剤送達に適した組成物及び製剤について説明している。例えば、治療薬は、非天然又は天然の薬学的に許容される担体分子を含む、1つ又は複数の薬学的に許容される担体の存在下で投与することができる。
【0072】
担体の性質は、採用されている具体的な投与様式に依存しうる。例えば、経皮製剤は通常、賦形剤として、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的且つ生理学的に受容可能な液体を含む。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤又は乳化剤、防腐剤、及びpH緩衝剤などの少量の非毒性補助物質、例えば酢酸ナトリウムやモノラウリン酸ソルビタンを含むことができる。当業者に知られているように、他の医薬組成物の態様は、従来の薬学的に許容される担体、アジュバント、及び対イオンを用いて調製することができる。
【0073】
可塑剤:ポリマーに添加されると、最終製品に柔軟性、作業性、及び他の特性の向上をもたらす材料。例示的な可塑剤には、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
ポリマー:ホモポリマー、直鎖ポリマー構造及び分岐ポリマー構造、架橋ポリマー、コポリマー(これは架橋されていても、されていなくてもよい。)、ブロックコポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマーなどが含まれる。オリゴマーは、分子量が約1000Da未満のポリマーである。
【0075】
ポリビニルピロリドンないしPVP:直鎖1‐ビニル‐2‐ピロリジノン基からなる合成ポリマーであり、約10,000~約700,000の範囲の平均分子量を有する一連の製品として商業的に生産されている。10%以下のPVPを含む溶液の粘度は水の粘度と本質的に同じであるが、10%を超える濃度の溶液は、使用するポリマーの濃度と分子量に応じて、粘性がより高くなる。
【0076】
感圧接着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive):短時間(例えば、1~5秒)にわたって非常にわずかな外圧を加えるだけで、任意の表面に強力な接着結合を形成するポリマー材料。
【0077】
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electronmicroscope):集束電子ビームを表面に走査して画像を作成する技術。ビーム内の電子はサンプルと相互作用し、表面の形態や組成に関する情報を取得するために使用できる様々な信号を生成する。電子ビームはラスタースキャンパターンで走査され、ビームの位置は検出された信号と組み合わされて画像が生成される。SEMは1ナノメートルよりも優れた分解能を達成できる検体は、従来のSEMにおける高真空において、又は可変圧力若しくは環境SEMの低真空若しくは湿潤状態において、また、特殊な機器を使用して広範囲の低温又は高温で観察することができる。
【0078】
皮膚:いくつかの層からなる身体で最大の器官。皮膚は生物学的恒常性において重要な役割を果たし、表皮と真皮で構成される。角質層から始まっていくつかの層で構成される表皮は、皮膚の最も外側の層であり、深層真皮は最も内側の皮膚層である。皮膚には、熱調節、代謝機能(ビタミンD代謝)、及び免疫機能などの複数の機能がある。人間では、皮膚の通常の厚さは1~2mmだが、一部の領域では皮膚の厚さは5mmを超える場合がある。
【0079】
表皮は、環境対する身体の緩衝ゾーン及び外傷からの保護を提供し、毒素及び微生物を排除し、半透膜を構成する。角質層は、環境に対する障壁として機能し、表皮を介した水分損失を防ぐ無血管の多層構造である。角質層の下には表皮淡明層、果粒層、胚芽層、及び基底層があり、それぞれ特殊な機能を備えた生セルを含んでいる。毛包、皮脂腺、汗腺、爪、足指の爪を含む皮膚の付属器官は、表皮に由来し、真皮毛包内に突出している。皮脂腺は、皮膚を滑らかにする分泌物の原因であり、汗腺の分泌物は皮膚のpHを制御して皮膚感染を防ぐ。汗腺、皮膚の血管、及び小さな筋肉は、身体の表面の温度を制御する。皮膚の神経終末は、痛み、触覚、暑さ、寒さの受容体を含む。基底膜は、表皮と真皮を分離して接続する。真皮は、表皮を支え栄養を与える血管構造である。加えて、真皮には感覚神経終末があり、痛み、圧力、暑さ、寒さに関する信号を送信する。表皮真皮はセル外マトリクス(コラーゲン、エラスチン、及び基質)からなり、血管、リンパ管、上皮セル、結合組織、筋肉、脂肪、神経組織を含む。真皮の血管供給は、表皮に栄養を与え、体温を調節する役割を果たす。線維芽セルは、皮膚のコラーゲンとエラスチンの成分を生成し、皮膚に膨満感を与えます。フィブロネクチンとヒアルロン酸は繊維芽セルによって分泌される。真皮深層は皮下脂肪の上にあり、血管とコラーゲン繊維のより大きなネットワークを含んで引張強度を提供する。また、主にコラーゲンで構成される線維弾性結合組織からなる。
【0080】
皮膚シミュレーション膜:拡散試験で皮膚を複製するために使用される半透膜。
【0081】
対象:生きている多セル脊椎動物。ヒト及び非ヒト哺乳動物、さらには鳥(鶏や七面鳥など)、魚、爬虫類を含むカテゴリーである。例示的な対象には、ヒト及び非ヒト霊長類、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマなどの哺乳動物が含まれる。
【0082】
表面又は体表面:人体上に又は体の開口部内に位置する表面。したがって、「体表面」には、例として、粘膜内層を有する体腔の内部表面を含む、皮膚、歯、皮膚又は粘膜組織が含まれる。
【0083】
粘着性:PKIタック測定、TRBTタック測定、又はPSAタック測定/Polyken Probe(Solutia,Inc.)で得られた値を使用して定量化できる。用語「実質的に非粘着性」は、約25g/cm/s未満の粘着性値を有するヒドロゲル組成物を意味し;「わずかに粘着性がある」とは、約25g/cm/sから約g/cm/sの範囲の粘着性値を有するヒドロゲル組成物を意味し;「粘着性がある」とは、少なくとも100g/cm/sのタック値を有するヒドロゲル組成物を意味する。
【0084】
経皮薬物送達システム:薬物が皮膚組織を通過して個体の血流に入るように、個体の皮膚又は粘膜に薬剤を投与するシステム。「経皮」という用語は、「経粘膜」薬物投与、すなわち、薬物が粘膜組織を通過して個体の血流に流れるように個体の粘膜(例えば、舌下、頬、膣、直腸、尿道)表面に薬物を投与することも含み得る。例えば、経皮薬物送達デバイスは、1つ以上の薬物又は薬剤が分散されているマトリクス、裏地層、速度制御膜、及びシステムを体表面に固定するための接着手段を含み得る。
【0085】
局所投与:例えば、様々な皮膚疾患の予防または治療における局所薬物投与、化粧品(保湿剤、マスク、日焼け止めなどを含む)の適用などにおけるように、皮膚や粘膜などの体表面への薬剤の送達。局所投与は、経皮投与とは対照的に、全身的効果ではなく局所的効果をもたらす
【0086】
~するのに十分な条件下で:所望のアクティビティを可能とする任意の環境を記述するために使用される句。
【0087】
不水溶性:20°Cの水で測定したときの水への溶解度が5%/w未満、3%/w未満、又は1%/w未満のポリマー、化合物、又は組成物。
【0088】
水膨潤性:水性媒体に浸漬すると、自重の少なくとも25%/w超の、又は少なくとも50%/w超の水量を吸収できるポリマー、化合物、又は組成物。
【0089】
経皮薬物送達システム
経皮薬物送達システムについて開示する。開示する経皮薬物送達システムは、長さが1~8cmの直径及び4~7.5cmの表面積を有するパッチを含む。パッチのサイズが小さいため耐水性及び耐汗性の経皮薬物送達システムは大きな表面積対体積比を提供でき、大量の薬物が皮膚から血流に送達され、投与に必要な皮膚の最小化される。この経皮送達システムは、5~15分以内に作用を開始し、1つ以上の薬物の約65%~約100%が8~24時間以内に哺乳動物の皮膚に拡散することを可能にする。
【0090】
ここに提供する経皮薬物送達システムは、耐水性且つ耐汗性を有する。パッチは、水(例えば、発汗、シャワー)との接触で剥がれない。むしろ、パッチの親水性により、濡れたときに、皮膚に対するより高い接着性がもたらされる。さらに、水によりパッチの粘度が低下し、パッチが皮膚のポケットに流れ込んで接着面積を増加させる場合がある。
【0091】
さらに、ここに開示する経皮薬物送達システムは、敏感肌での使用に特に適してもいる。パッチは幅が約1~5mmのモノリシック層を含み、モノリシック層は10~30%(w/w)の生体接着性ポリマーと;10~40%(w/w)の皮膜形成剤と;10~60%(w/w)の可塑剤と;1~20%(w/w)の天然多糖と;10~50%(w/w)の角質溶解薬と;1~60%(w/w)の1つ以上の薬(剤)と、を備える。パッチのコンポーネントとその比率を具体的に選択することにより、パッチが皮膚を刺激せず、長期間使用しても赤みや腫れが生じないようにすることができる。したがって、開示の経皮薬物送達システムは、高齢者や小児集団などの敏感肌の対象での使用に特に適している。
【0092】
いくつかの例では、生体接着性ポリマーには、キトサン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの例では、皮膜形成剤には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ゼラチン、デキストリン、ポリエチレンオキシド、グアーガム、キサンタンガム、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの追加の例では、可塑剤には、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン‐プロピレングリコール、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの他の例では、天然多糖には、寒天、アルギン酸塩、キチン、グルコマンナン、ゲランガム、ゼラチン、グアーガム、アラビアゴム、ローカストビーンガム、ペクチン、キサンタン、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの例では、角質溶解薬には、尿素、乳酸、アラントイン、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、又はこれらの組合せが含まれ得る。
【0093】
いくつかの例では、パッチは、キトサン(10~30%w/w)、ポリビニルピロリドン(PVP)(10~40%w/w)、グリセロール(10~60%w/w)、アラビアゴム(20%w/w未満)、及び乳酸(10~50%w/w)を含む。何らかの理論に結び付けられることなく、キトサンは粘度を高め、皮膚刺激を減少させ;PVPは凝集性と耐水性を高め、接着性を低下させ;グリセロールは粘着性を高め、凝集力と剛性を低下させ;アラビアゴムは接着力を高め、凝集力を低下させ;乳酸は均一性を高め、皮膚の刺激と凝集力を低下させる。さらに、パッチは、剥離速度がおよそ320mm/minの優れた接着強度を有する。
【0094】
開示する経皮薬物送達システムは、特に、脂肪族鎖、芳香環、ピリジン環、プリン環、イミダゾール環、ハロゲン化芳香環、アルコール、エーテル、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、エステル、一級アミン、二級アミン、三級アミン、一級アミド、二級アミド、三級アミド、チオール、スルフィン、スルホン、スルホンアミド、チオアミド、スルホノエステル及びチオエステルを含むが、これらに限定されない多種多様な官能基を持つ異なる小分子を送達することができる。
【0095】
パッチは、以下に挙げる薬物(これらに限定されない。)の保持及び送達が可能である:ジフェンヒドラミン、デスロラタジン、セチリジン、ダルファンプリジン、アミトリプチリン、エトリコキシブ、グリカジド、リシノプリル、トラマドール、プロプラノロール、オンダンセトロン、ジフェンヒドラミン、フルオキセチン、デュロキセチン、レボドパ、ロラタジン、オルリスタット、ベンラファキシン、ピオグリタゾン、フィンゴリモド、エスシタロプラム、カルビドパ、アルプラゾラム、クロナゼパム、モダフィニル、アルモダフィニル、デキストロアンフェタミン、フルオレノール、アニラセタム、コルラセタム、ファソラセタム、ネフィラセタム、オキシラセタム、フェニルピラセタム、ピラセタム、プラミラセタム、アドラフィニル、アルファ‐GPC、重酒石酸コリン、シチコリン、クレアチン、チロシン、ブロマンタン、コチニン、L‐テアニン、N‐アセチルシステイン、ヌーペプト、プロリンタン、チアネプチン、ブプロプリオン、シタロプラム、セルトラリン、トラゾドン、ミルタザピン、パロキセチン、アミトリプチリン、ラモトリジン、ノルトリプチリン、クエチアピン、トラマドール、ドキセピン、オランザピン、リスペリドン、イミプラミン、リチウム、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、プレドニゾン、フマル酸ジメチル、ミトキサントロン、ナタリズマブ、テリフルノミド、デキサメサゾン、プレドニゾロン、バラシクロビル、アザチオプリン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸、ハロペリドール、エソメプラゾール、リバーロキサバン、オキシコドン、バルサルタン、メマンチン、クエチアピン、セベラマー、ブデソニド、ヒドロコドン、ドキシサイクリン、エスゾピクロン、フェノフィブラート、メトプロロール、バルプロエート、オメプラゾール、メトホルミン、アムロジピン、ロサルタン、ゾルピデム、ヒドロクロロチアジド、パントプラゾール、アモキシシリン、タムスロシン、フルチカゾン、カルベジロール、ワルファリン、メロキシカム、クロピドグレル、アテノロール、タダラフィル、サルブタモール、アルブテロール、シクロベンザプリン、カプサイシン、セレコキシブ、バクロフェン、アクリバスチン、プソイドエフェドリン、ロクサピン、リオシグアト、ルビプロストン、プロスタサイクリン、ベンズフェタミン、ボルテゾミブ、ブスルファン、シナカルセト、ナドロール、フェノルドパム、シプロヘプタジン、システアミン、デシタビン、ダリフェナシン、Dacogen(登録商標)、デスベンラファキシン、アンフェプラモン、クアゼパム、ファモチジン、プラスグレル、エレトリプタン、エプレレノン、ペルフェナジン、メルファラン、エキセメスタン、エゼチミブ、ペンシクロビル、フェノロパム、フェソテロジン、フルオルコルチゾン、ヒドロコドン、フロバトリプタン、チゲサイクリン、ジプラシドン、グリピジド、ミグリトール、グアネチジン、グアンファシン、カンプトテシン、ヒオスシアミン、イブルチニブ、イブチリド、及びイロプロスト。
【0096】
いくつかの例では、活性薬(剤)又は薬物は、1つ以上のジフェンヒドラミン、デスロラタジン、セチリジン、ロラタジン、トリヘキシフェニジル、アセナピン、プロスタサイクリン、ブスピロン、ブトルファノール、カプトプリル、カルビドパ、アルブテロール、ナルトレキソン、イバブラジン、デキサメタゾン、フェニレフリン、フルオシノロンアセトニド、デクスランソプラゾール、フロセミド、イスラジピン、ベンラファキシン、及びエナラプリルである。以下の表1は、ここで提供される経皮薬物送達システムにより経皮送達が可能な薬物のいくつかの構造を示す。
【0097】
【表1】
【0098】
活性薬(剤)又は薬物は、拡散によりパッチ内のポリマーマトリクスから放出され得る。その放出は、制御放出型、遅延放出型又は徐放型でありうる。パッチ中の1つ以上の活性薬(剤)又は薬物の濃度は、組成物の少なくとも1%w/w、組成物の少なくとも2%w/w、組成物の少なくとも3%w/w、組成物の少なくとも4%w/w、組成物の少なくとも5%w/w、組成物の少なくとも6%w/w、組成物の少なくとも7%w/w、組成物の少なくとも8%w/w、組成物の少なくとも9%w/w、組成物の少なくとも10%w/w、組成物の少なくとも11%w/w、組成物の少なくとも12%w/w、組成物の少なくとも13%w/w、組成物の少なくとも14%w/w、組成物の少なくとも15%w/w、組成物の少なくとも16%w/w、組成物の少なくとも17%w/w、組成物の少なくとも18%w/w、組成物の少なくとも19%w/w、組成物の少なくとも20%w/w、組成物の少なくとも30%w/w、組成物の少なくとも40%w/w、組成物の少なくとも50%w/w、又は組成物の少なくとも60%w/wである。
【0099】
皮膚に経皮的に送達される1つ以上の活性薬(剤)又は薬物の含有量とこれらの皮膚への浸透/流れは、時間の関数として測定することができる。いくつかの例では、この流れは、実施例で説明するように、フランツ拡散セルに取り付けられた膜又はヒトの死体の皮膚をシミュレートする人工皮膚を使用して決定される。
【0100】
オプションで、開示の経皮薬物送達システムは、裏地層を備え、所望のサイズにトリミングされてもよい。裏地層に適した材料には、以下のものが含まれる(これらに限定されない。):テフロン、金属箔、金属化ポリフォイル、ポリエステルテレフタレート、ポリエステル若しくはアルミニウム化ポリエステルなどのポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルブロックアミドコポリマー、ポリエチレンメチルメタクリレートブロックコポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、シリコーンエラストマー、ゴムベースのポリイソブチレン、スチレン、スチレン‐ブタジエン及びスチレン‐イソプレンコポリマー、ポリエチレン、並びにポリプロピレン。加えて、裏地層は、ポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリウレタン発泡体、及びポリエチレン発泡体などの、様々な発泡体を含んでもよい(これらに限定されない。)。
【0101】
裏地層は、閉塞剤を含むか、パッチのコンポーネントに対して実質的に不浸透性であってよい。いくつかの例では、経皮薬物送達システムは、以下の1つ以上の分子に対して閉塞的である(これらに限定されない。):カフェイン、アリピプラゾール、テオフィリン、ジフィリン、ペントキシフィリン、エンプロフィリン、アミノフィリン、オックストリフィリン、テオブロミン、プロペントフィリン、キサンチノール、ドキソフィリン、パマブロム、リソフィリン、ガンシクロビル、フェネチリン、キサンチン、尿酸、ロロフィリン、レプロテロール、カフェドリン及びテオドレナリン、並びにこれらの任意の組合せ。
【0102】
ここに提供される経皮薬物送達システムは、皮膚に適用されて1つ以上の薬物を送達し、除去される前に、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、少なくとも24時間、少なくとも25時間、少なくとも26時間、少なくとも27時間、少なくとも28時間、少なくとも29時間、少なくとも30時間、少なくとも31時間、少なくとも32時間、少なくとも33時間、少なくとも34時間、少なくとも35時間、少なくとも36時間、少なくとも37時間、少なくとも38時間、少なくとも39時間、少なくとも40時間、少なくとも41時間、少なくとも42時間、少なくとも43時間、少なくとも44時間、少なくとも45時間、少なくとも46時間、少なくとも47時間、少なくとも48時間、少なくとも49時間、少なくとも50時間、少なくとも51時間、少なくとも52時間、少なくとも53時間、少なくとも54時間、少なくとも55時間、少なくとも56時間、少なくとも57時間、少なくとも58時間、少なくとも59時間、少なくとも60時間、少なくとも61時間、少なくとも62時間、少なくとも63時間、少なくとも64時間、少なくとも65時間、少なくとも66時間、少なくとも67時間、少なくとも68時間、少なくとも69時間、少なくとも70時間、少なくとも71時間、少なくとも72時間、少なくとも73時間、少なくとも74時間、少なくとも75時間、少なくとも76時間、少なくとも77時間、少なくとも78時間、少なくとも79時間、少なくとも80時間、少なくとも81時間、少なくとも82時間、少なくとも83時間、少なくとも84時間、少なくとも85時間、少なくとも86時間、少なくとも87時間、少なくとも88時間、少なくとも89時間、少なくとも90時間、少なくとも91時間、少なくとも92時間、少なくとも93時間、少なくとも94時間、少なくとも95時間、少なくとも96時間、少なくとも97時間、少なくとも98時間、少なくとも99時間、少なくとも100時間、少なくとも110時間、又は少なくとも120時間、皮膚上に放置されてもよい。

【0103】
開示の経皮薬物送達システムは、浸透促進剤をさらに含んでもよい。浸透促進剤の非限定的な例には、グリセロールモノラウレート(GML:glycerol monolaurate)、レシチン、又は植物油、例えばベニバナ油、綿実油及びトウモロコシ油、が含まれる。
【0104】
開示の経皮薬物送達システムは、酸化防止剤をさらに含んでもよい。典型的な酸化防止剤には、以下のものが含まれる(これらに限定されない。):アスコルビン酸(ビタミンC)及びその塩、脂肪酸のアスコルビルエステル、アスコルビン酸誘導体(リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビルリン酸ナトリウム、ソルビン酸アスコルビル)、トコフェロール(ビタミンE)、ソルビン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロールの他のエステル、ブチル化ヒドロキシ安息香酸及びその塩、ビオフラボノイド、クルクミン、リジン、メチオニン、プロリン、スーパーオキシドジスムターゼ、シリマリン、茶抽出物、ブドウ抽出物、メラニン、及びローズマリー抽出物。酸化防止剤は、パッチの0.1%~10%w/wの濃度で存在しうる。
【0105】
パッチは、補助剤、例えば、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝剤、着色剤、香味料及び/又は香料などを含み、これらは活性化合物と有害的に反応しない。
【0106】
したがって、ここで提供される耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムは、皮膚から血流への迅速な送達を達成し、一般的な副作用を軽減し、患者のコンプライアンスを改善する剤形を提供する。
【0107】
開示に係る経皮薬物送達システムの製造方法
ここでは、耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムの製造方法も提供する。この方法は、最初に皮膜形成剤と可塑剤を水に加え、室温(25°C)で混合物を攪拌し;生体接着性ポリマーと天然多糖を徐々に加えて、生体接着性ポリマーが溶解して粘度が低下するまで混合物を攪拌し;次に、皮膜形成剤及び角質溶解薬を添加し、均一な混合物が得られるまで2~5時間撹拌し;1つ以上の活性薬を添加し、混合物を1~4時間攪拌して調合物を得て;オプションとして、その調合物を一群の複数の裏地層に流し込み、複数の裏地層を80°Cで4~8時間焼成して、1つの裏地層を有する1つのパッチを得る。
【0108】
生体接着性ポリマーには、キトサン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、又はこれらの組合せが含まれ得る。皮膜形成剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ゼラチン、デキストリン、ポリエチレンオキシド、グアーガム、キサンタンガム、又はこれらの組合せを含み得る。いくつかの追加の例において、可塑剤はグリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン‐プロピレングリコール、又はこれらの組合せを含み得る。天然多糖には、寒天、アルギン酸塩、キチン、グルコマンナン、ゲランガム、ゼラチン、グアーゴム、アラビアゴム、ローカストビーンガム、ペクチン、キサンタン、又はこれらの組合せが含まれ得る。角質溶解薬には、尿素、乳酸、アラントイン、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、又はこれらの組合せが含まれ得る。いくつかの例において、パッチは、10~30%(w/w)のキトサンと;10~40%(w/w)のポリビニルピロリドンと;10~60%のグリセロールと;1~20%(w/w)のアラビアゴムと;10~50%(w/w)の乳酸と、を備える。
【0109】
いくつかの例において、開示の経皮薬物送達システムは裏地層を含んでもよい。裏地層に適した材料には、テフロン、金属箔、金属化ポリフォイル、ポリエステルテレフタレート、ポリエステル若しくはアルミニウム化ポリエステルなどのポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルブロックアミドコポリマー、ポリエチレンメチルメタクリレートブロックコポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、シリコーンエラストマー、ゴムベースのポリイソブチレン、スチレン、スチレン‐ブタジエン及びスチレン‐イソプレンコポリマー、ポリエチレン、並びにポリプロピレン。加えて、裏地層は、ポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリウレタン発泡体、及びポリエチレン発泡体などの、様々な発泡体を含んでもよい(これらに限定されない。)。
【0110】
いくつかの例では、提供する方法は、2~15%(w/w)の1つ以上の脂肪酸を添加することをさらに含み得る。脂肪酸には、酒石酸、オレイン酸、ラウリン酸、マレイン酸、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、提供する方法は、2~15%(w/w)の1つ以上の精油を加えることをさらに含み得る。精油には、L‐メントール、チュアンシオン油、クローブ油、シナモン油、テレビン油、ユーカリ油、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
提供された方法により、非常に多様な活性薬を皮膚に送達することができる、耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムが生産される。いくつかの例では、当該時に1つの活性薬のみが皮膚に送達される。他の例では、活性薬の組合せが、連続的に又は同時に皮膚に送達される。活性薬(剤)の例には、1つ以上の抗ヒスタミン薬、カリウムチャネル遮断薬、鎮痛薬、抗糖尿病薬、疼痛緩和薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬、血管拡張薬、利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗ニキビ薬、抗老化剤、抗生物質、抗真菌薬、ACE阻害薬、GERD薬、抗炎症薬、オピオイド、抗喘息薬、コルチコステロイド、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、抗酸化薬、抗原生動物薬、止痒薬、抗ウイルス薬、化学療法薬、免疫修飾薬、角質溶解薬、レチノイド、及び中枢神経系刺激薬が含まれるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの例では、活性薬(剤)は、1つ以上のジフェンヒドラミン、デスロラタジン、セチリジン、ロラタジン、トリヘキシフェニジル、アセナピン、プロスタサイクリン、ブスピロン、ブトルファノール、カプトプリル、カルビドパ、アルブテロール、ナルトレキソン、イバブラジン、デキサメタゾン、フェニレフリン、フルオシノロンアセトニド、デクスランソプラゾール、フロセミド、イスラジピン、ベンラファキシン、及びエナラプリルである。
【0112】
例示的な抗ヒスタミン薬には、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、デスロラタジン、及びセチリジンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗うつ薬及び抗不安薬には、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、ベンラキサフィン、デュロキセチン、エスシタロプラムシュウ酸塩、アルプラゾラム、及びロラゼパムが含まれるが、これらに限定されない。例示的なADHD薬物には、アンフェタミンアスパルタート、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート塩酸塩、デキスメチルフェニデート塩酸塩、及びアミトリプチリンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗パーキンソン薬には、レボドパ、カルビドパ、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、アポモルフィン、塩酸セレギン、ラサギリン、及びベンズトロピンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な多発性硬化症薬物には、テリフルノミド、ダルファンプリジン、フマル酸ジメチル、ナタリズマブ、フィンゴリモド、及びグラチラマー酢酸塩が含まれるが、これらに限定されない。例示的なアルツハイマー病治療薬には、ドネゼピル、リバスチグミン、及びガランタミンが含まれるが、これらに限定されない。例示的な鎮痛薬には、メタドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、ブプレノルフィン、ヒドロコドン、モルヒネ、及びヒドロコドンが含まれるが、これらに限定されない。例示的なGERD薬には、エソメプラゾール、オメプラゾール、及びパントプラゾールが含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗コレステロール剤には、オンダンセントロン、ピオグリタゾン、オルリスタット、レナリドミド、ソフスボビル、ロスバスタチン、アムロジピン、シンバスタチン、及びメトホルミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
ここで提供される方法は、1つ以上の分子に対して閉塞的であるパッチを含む耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムをさらに生成し得る。これらの分子には、カフェイン、アリピプラゾール、テオフィリン、ジフィリン、ペントキシフィリン、エンプロフィリン、アミノフィリン、オクストリフィリン、テオブロミン、プロペントフィリン、キサンチノール、ドキソフィリン、パマブロム、リソフィリン、ガンシクロビル、フェネチリン、キサンチン、尿酸、ロロフィリン、レプロテロール、カフェドリン及びテオドレナリン、並びにこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
ここで提供される方法は、長さが1~8cmの直径、4~8cmの表面積、及び哺乳動物の皮膚への適用後15分以内の作用開始を有し、8~24時間に亘って持続的に1つ以上の活性薬を送達する耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを生成する。提供する方法により製造された経皮送達システム内のパッチは、約320mm/minの剥離速度で示されるように優れた接着強度を持ち、8~24時間の間に活性薬の65%から100%が哺乳動物の皮膚に拡散するのを可能にする。哺乳動物は、例えば動物又はヒト対象である。
【0115】
治療法
ここに提供した経皮薬物送達システムを使用する治療法も開示する。ここで提供するのは、必要とする対象における季節性アレルギー性鼻炎を治療する方法であって、その方法は、対象の皮膚に1つ以上の抗ヒスタミン薬を含む耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを適用し、耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを対象の皮膚と8~24時間接触させて維持し、これにより対象の季節性アレルギー性鼻炎を治療することを備える。例示的な抗ヒスタミン薬には、ジフェンヒドラミン、デスロラチジン、セチリジン、ロラタジン、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用した最初の1時間の間に600μg/cm/hである。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用する全時間に亘って少なくとも100μg/cm/hである。
【0116】
ここでは、必要とする対象における季節性慢性特発性蕁麻疹を治療する方法も提供され、この方法は、1つ以上の抗ヒスタミン薬を含む耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを対象の皮膚に適用し、耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを対象の皮膚と8~24時間接触させて維持し、これにより対象の季節性慢性特発性蕁麻疹を治療することを備える。例示的な抗ヒスタミン薬には、ジフェンヒドラミン、デスロラチジン、セチリジン、ロラタジン、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用した最初の1時間の間に600μg/cm/hである。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用する全時間に亘って少なくとも100μg/cm/hである。
【0117】
1つ以上の抗ヒスタミン薬を含む経皮薬物送達システム
また、ここでは、耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムであって、モノリシック層が、10~30%(w/w)のキトサンと、10~40%(w/w)のポリビニルピロリドンと、10~60%のグリセロールと、1~20%(w/w)のアラビアゴムと、10~50%(w/w)の乳酸と、治療上有効な量の1つ以上の抗ヒスタミン薬と、を備えた耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムも提供される。例示的な抗ヒスタミン薬には、ジフェンヒドラミン、デスロラチジン、セチリジン、ロラタジン、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用した最初の1時間の間に600μg/cm/hである。いくつかの例では、パッチからの1つ以上の抗ヒスタミン薬の放出速度は、パッチを適用する全時間に亘って少なくとも100μg/cm/hである。いくつかの例では、モノリシック層は、2~15%(w/w)の1つ以上の脂肪酸をさらに含んでもよい。脂肪酸には、酒石酸、オレイン酸、ラウリン酸、マレイン酸、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、モノリシック層は、2~15%(w/w)の1つ以上の精油をさらに含んでもよい。精油には、L‐メントール、チュアンシオン油、クローブ油、シナモン油、テレビン油、ユーカリ油、及びこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
実施例
実施例1:経皮薬物送達システムの製造方法
乳酸、グリセロール及びポリビニルピロリドンに溶解したキトサンの層を含む液体マトリクスをテフロン裏地層に注ぎ、溶媒蒸発により凝固される。このようにして形成されたパッチは円形で、直径は4cmである。裏地層とマトリクスはサイズが等しい。キトサンとポリビニルピロリドンのマトリクスは、およそ1mmの最終厚さを有する。図2の上から1番目と3番目を参照されたい。
【0119】
別の方法では、経皮薬物送達システムは、乳酸、グリセロール及びポリビニルピロリドンに溶解したキトサンの層を備えた接着性ポリマーマトリクスに分散された薬物を含む。液体マトリクスをテフロン裏地層に注ぎ、溶媒蒸発により凝固される。マトリクスのサイズは3cmに縮小され、直径が4cmの追加的な裏地層に取り付けられる。テフロン裏地層の端は、マトリクスの厚さと揃うように医療用接着剤で成型される。図2の上から2番目と4番目を参照されたい。
【0120】
実施例2:皮膚模擬膜を介したIn Vitroでの薬物拡散
皮膚に経皮的に送達された幾つかの薬物の浸透ないし流動を、気水界面でフランツ拡散セルに取り付けられた人工の皮膚模擬膜を使用して、時間の関数としてin vitroで測定した。エスシタロプラムシュウ酸塩、4‐アミノピリジン、セチリジン二塩酸塩及びアリピプラゾールの経時的な流量を求めるために、いくつかの測定を行った。修正フランツ拡散セルに55mlのリン酸塩緩衝液を充填し、各セルに皮膚模擬膜を気水界面で配置し、有孔キャップで固定した。これらのセルを水浴に入れ、温度が38°Cとなるに保った。薬物を充填したパッチを、膜の上に静かに置いて軽く押し下げた。さまざまな時点で、薬液を収集して新鮮な緩衝液と交換し、紫外線(UV)吸光度をきれいな石英キュベットを用いて200~300nmで測定し、標準曲線を用いて薬物濃度と経時的な累積薬物放出率を求めた。図3はシステムがエスシタロプラムシュウ酸塩、4‐アミノピリジン、及びセチリジン二塩酸塩の拡散に対して透過性であることを示しているが、システムはアリピプラゾールの拡散に対しては時間が経過しても不透過性である。
【0121】
これらの結果を考慮すると、一部の薬物及び小分子はポリマーマトリクス内に「閉じ込められ」、パッチから沈殿し又はフィルム内で再結晶化して、接着特性が減少した効果的に不活性で、薬物送達能力がないパッチになると結論付けられた。更なる実験により、パッチマトリクスを介して皮膚や血流に浸透できない小分子には、カフェイン、アリピプラゾール、テオフィリン、ジフィリン、ペントキシフィリン、エンプロフィリン、アミノフィリン、オキシトリフィリン、テオブロミン、プロペントフィリン、キサンチノール、ドキソフィリン、パマブロム、リソフィリン、ガンシクロビル、フェネチリン、キサンチン、尿酸、ロロフィリン、レプロテロール、カフェドリン及びテオドレナリンが含まれることが示された。
【0122】
実施例3:経皮薬物送達システムを介したIn Vivoでの薬物拡散
ここで提供する経皮薬物送達システムを介した4‐アミノピリジンのパーセンテージ拡散を、異なるパッチ組成物を使用して、経時的に測定した。図4は、23%(w/w)のグリセロール、16%(w/w)のアラビアゴム、11%(w/w)の中間分子量キトサン、48%(w/w)の乳酸からなるパッチを介した4‐アミノピリジンのパーセンテージ拡散を示す。パッチは、液体マトリクスゲルを適当なテフロン裏地層に流し込み、55°Cで18時間乾燥して準備した。得られた拡散プロファイルは、ここで提供する経皮薬物送達システムが、4‐アミノピリジンの経時的な透過及び拡散を可能にすることを示している。
【0123】
図5は、50%(w/w)のグリセロール、14%(w/w)のPVP、18%(w/w)の中分子量キトサン、及び18%(w/w)の乳酸からなるパッチを介した4‐アミノピリジンのパーセンテージ拡散を示す。パッチは、液体マトリクスゲルを適当なテフロン裏地層に流し込み、80°Cで3時間乾燥して準備した。得られた拡散プロファイルは、ここで提供する経皮薬物送達システムが、4‐アミノピリジンの経時的な透過及び拡散を可能にすることを示している。
【0124】
図6は、36%(w/w)のグリセロール、15.3%のPVP、0.7%(w/w)のアラビアゴム、9.5%(w/w)の中分子量キトサン、及び38.5%(w/w)の乳酸からなるパッチを介した4‐アミノピリジンのパーセンテージ拡散を示す。パッチは、液体マトリクスゲルを適当なテフロン裏地層に流し込み、80°Cで5時間乾燥し準備した。得られた拡散プロファイルはここで提供する経皮薬物送達システムが、4‐アミノピリジンの経時的な透過及び拡散を可能にすることを示している。
【0125】
実施例4:経皮薬物送達によるアレルギー性鼻炎の治療
季節性アレルギー性鼻炎の重度の症状を患っている対象が、ジフェンヒドラミン、デスロラチジン、セチリジン、及びロラタジンを備えた抗ヒスタミンカクテルで治療される。抗ヒスタミンカクテルは、開示する耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムを適用することにより、ヒト対象の皮膚に経皮的に投与される。耐水性且つ耐汗性の経皮薬物送達システムは、対称の皮膚と24時間接触したまま維持される。治療の終了時には、対象は季節性アレルギー性鼻炎に関連する症状がなく、アレルゲンへの新たな曝露後も再発しない。
【0126】
本発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、図示された実施形態は本発明の例に過ぎず、本発明の範囲に対する制限と見なされるべきではないことを認識されたい。むしろ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。したがって、我々は、添付の請求項の範囲及び精神に属するすべてを、我々の発明として請求する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7