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特許7343501有機化合物における、または、それに関連する改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】有機化合物における、または、それに関連する改善
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/34 20060101AFI20230905BHJP
   C07C 49/637 20060101ALI20230905BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230905BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20230905BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230905BHJP
【FI】
C07C45/34
C07C49/637
B01J35/02 J
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020530550
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018083322
(87)【国際公開番号】W WO2019110493
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】1720211.0
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】シュローダー,フリッチョフ
(72)【発明者】
【氏名】ファイファー, ニコル
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534927(JP,A)
【文献】国際公開第2012/001018(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0172625(US,A1)
【文献】特開平05-246913(JP,A)
【文献】An-Cheng Huang, et al.,Production of the Pepper Aroma Compound, (-)-Rotundone, by Aerial Oxidation of α-Guaiene,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2014年,Vol.62, No.44,10809-10815
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリル酸化プロセスであって、以下:
α-グアイエンおよび鉄(III)-Xポルフィリン錯体触媒を含有する混合物をサステナブル溶媒中に形成すること、
ここでXは、Cl、Br、I、メシラート、トリフラート、およびカルボキシラートからなる群から選択され、
分子酸素を混合物中へ導入すること、ならびに
アリル酸化を生じさせ、α,β-不飽和ケトンであるロタンドンを生成すること、
を含み、
ここで、サステナブル溶媒は、水、アセトン、エタノール、2-プロパノール、酢酸エチル、イソプロピルアセタート、メタノール、メチルエチルケトン、1-ブタノール、t-ブタノール、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、メチルシクロヘキサン、メチルt-ブチルエーテル、イソオクタン、アセトニトリル、キシレン、ジメチルスルホキシド、酢酸、エチレングリコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される、
前記プロセス。
【請求項2】
サステナブル溶媒が、水、アセトン、エタノール、2-プロパノール、酢酸エチル、イソプロピルアセタート、メタノール、メチルエチルケトン、1-ブタノール、t-ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
サステナブル溶媒が、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、メチルシクロヘキサン、メチルt-ブチルエーテル、イソオクタン、アセトニトリル、キシレン、ジメチルスルホキシド、酢酸、エチレングリコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子酸素の存在において、および、サステナブル溶媒(sustainable solvent)中で触媒量の鉄(III)ポルフィリン錯体を使用するα-グアイエンのアリル酸化によって、α,β-不飽和ケトンであるロタンドン2を調製するプロセスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
α-グアイエン(1,4-ジメチル-7-プロパン-2-イリデン-2,3,4,5,6,8-ヘキサヒドロ-1H-アズレン)からロタンドン((3S,5R,8S)-5-イソプロペニル-3,8-ジメチル-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1(2H)-アズレノン)への、競争的選択性および収率をもつ、単純で、サステナブルな合成経路に対する需要がある。
【化1】
【0003】
α-グアンイエンなどの不飽和テルペンは、アリル酸化後、ロダンドンなどの価値あるフレーバーおよびフレグランス成分を与える、フレーバーおよびフレグランス産業における重要な物質である。この物質の酸化的変化は、物質が酸化に対して感受性がある複数の部位を有し、および、競合するエポキシ化、エン酸化または選択的アリル酸化副反応から生じる様々な酸化生成物を与え得るため、とくに難易度が高い。
【化2】
可能性のある副生成物は、ロツンドール3、エポキシ-グアイエン4、ヒドロキシ-ロタンドン6、およびコリンボロン7を包含する。
【0004】
方法は、ロタンドンが単離されるよりもむしろ反応生成混合物中で使用される場合、固有の香りを有する任意の副生成物がロタンドンの香りプロファイルに悪影響を及ぼさない、ロタンドンの高く十分な選択性および収率を提供しなければならない。方法はまた、ロタンドンはフレグランスにおける使用が意図されるので、アリル物質、安価で非有害な触媒、およびサステナブル溶媒(単数または複数)として、α―グアイエンのあらゆる供給源を利用すべきである。
【0005】
アガーウッドからのグアイエンセスキテルペンの単離および酸化は、Ishiharaら、Phytochemistry 30、3343 (1991)によって報告された。単離されたグアイエンの粗混合物は、ジクロロメタン中ピリジニウムクロロクロマートおよびセライトの撹拌された懸濁液中で酸化に供与され、ロタンドンを産出した。
【0006】
コバルト(II)2-エチルヘキサノアート、コバルト(II)アセチルアセトナートおよびコバルト(II)ナフテナート触媒および4-メチル-2-ペンタノンの組み合わせを使用するアセチル化、アリル酸化、これに続く酢酸の熱分解除去の錯体プロセスによる(-)-グアイオールからのロタンドンの合成が、Nakanishiら、Journal of Agricultural and Food Chemistry 65、4464 (2017)によって報告された。
【0007】
Taylorらは、数週間にわたるジクロロメタン中α-グアイエンの溶液への酸素の吹き込み(bubbling)による純粋なα―グアイエンの酸化によって、ロタンドン、グアイエンのα-トランスおよびβ-シスモノエポキシド、そのジケトン、および1または2の酸素原子を組み込む無数の少量の酸化生成物を生成したことを、Journal of Agricultural and Food Chemistry、62、10809、(2014)で報告した。同様の結果が、他の有機溶媒、例えばエーテル、クロロホルムおよびアセトニトリルなどを使用して得られた。
【0008】
アセトンなどの様々な技術的グレードの溶媒中で共酸化剤テトラクロロ-N-ヒドロキシフタルイミド、ピリジン、酪酸およびLiClOを使用する電気化学的アリル酸化によるグアイエンファミリー中の天然生成物の酸化が、HornおよびRosenらによって、Nature、Vol.533、77 (5 May 2016)への投稿で報告された。
【0009】
WO2011/106166は、アリル酸化触媒に関する。例示の方法は、パラジウム、金、およびチタンを含むアリル酸化触媒を使用するアリル化合物の酸化を触媒するステップを含む。例4は、30barで酸素が充填されたオートクレーブ中で触媒(2.5%Au+2.5%Pd/TiO)を使用するグアイエンの酸化によってロタンドンを形成することを開示した。収率の結果は報告されなかった。
【0010】
酸素の存在下、サステナブル溶媒中で安価かつ非毒性の触媒を使用してα,β-不飽和ケトンであるロタンドンを形成するための効率的なアリル酸化方法に対する需要が残っている。上記に議論されたアリル酸化プロセスにおいてこれまで使用された溶媒、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、およびエーテルなどは、例えば、Dunn and Perryら、Green Chemistry 10、31-36 (2008)によって指摘されているとおり所望されないと考えられる。サステナブルと考えられない他の溶媒は、数ある中でも四塩化炭素、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセタートを包含する。
【発明の概要】
【0011】
アリル酸化プロセスであって、αーグアイエンおよび鉄(III)-Xポルフィリン錯体触媒を含有する混合物をサステナブル溶媒中に形成すること、分子酸素を混合物中へ導入すること、ならびにアリル酸化を生じさせ、α,β-不飽和ケトンであるロタンドンを生成することを含む、前記プロセスが提供される。Xは、Cl、Br、I、メシラート、トリフラート、およびカルボキシラート、好ましくはCl、BrおよびI、さらに好ましくはClから選択される。
【0012】
具体的な態様において、ロタンドンが主生成物として生成されることを特徴とする、本明細書に記載のとおりのアリル酸化プロセスが提供される。「主生成物」によって、本発明の文脈において、α-グアイエンの酸化によって得られる、最も存在する酸化生成物を意味する。これは、例としてガスクロマトグラフィー(GC)によって容易に測定され得る。
【0013】
さらなる態様において、アリル酸化によって得られる酸化生成物に基づく相対的なピーク面積%において測定される10%以上(例として、13、15、20、22、23、24、25、26、27、28、29、30)のGC純度をもつロタンドンが生成されることを特徴とする、本明細書に記載のとおりのアリル酸化プロセスが提供される。GC純度の計算に使用されるGC方法は、本明細書の下記に記載される(非極性GCを参照)。
【0014】
対象プロセスのある態様において、触媒は、式(I)
【化3】
式中
Xは、Cl、BrおよびIから選択され;ならびに
Rは、フェニル、ペンタフルオロフェニル、p-メトキシフェニル、ジクロロフェニル、ベンゼンスルホナート、ブロモフェニル、クロロフェニル、およびメチルフェニルから選択される、
で表される、鉄(III)ポルフィリン錯体である。
【0015】
対象プロセスのある態様において、触媒は、塩化物対イオンを有する、鉄(III)ポルフィリン錯体である。好ましい態様において、ポルフィリン錯体は、Rがフェニル、テトラフェニル、およびp-メトキシフェニルから選択される、式(I)で表される錯体である。具体的に好ましい態様において、触媒は、クロロ(テトラフェニルポルフィリナト)鉄(III)であり、すなわち、XはClであり、および、Rはフェニルである。
ある態様において、触媒の濃度は、α-グアイエンのモル数に基づき、0.01~10mol%、好ましくは0.5~2mol%、例として、1.1mol%を包含する1~1.5mol%の範囲にあってもよい。
【0016】
対象プロセスにおいて、混合物は、塩基配位化合物、例えば、トリエチルアミンなどのアミンまたはKCOなどの無機塩基を加えて含有してもよい。塩基配位化合物は、好ましくはN-ヘテロ環(Nを含有するヘテロ環)、例えばピリジン、イミダゾールまたはN-メチルイミダゾールなど、さらに好ましくはイミダゾールである。
【0017】
対象プロセスにおいて使用されるサステナブル溶媒は、水、アセトン、エタノール、2-プロパノール、酢酸エチル、イソプロピルアセタート、メタノール、メチルエチルケトン、1-ブタノール、t-ブタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択されてもよく、好ましくはエタノール/水混合物であってもよい。この反応のための溶媒としての水性エタノールの好適性は驚くべきであり、なぜならかかるとおりエタノールは酸化され得、且つ水は有機化学反応において典型的に使用される溶媒ではないからである。
加えて、または、代替的に、対象のプロセスにおいて使用されるサステナブル溶媒は、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、メチルシクロヘキサン、メチルt-ブチルエーテル、イソオクタン、アセトニトリル、キシレン、ジメチルスルホキシド、酢酸、エチレングリコールおよびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0018】
対象プロセスは、当該技術分野において知られている任意の好適な手段によって混合物を攪拌することを好ましくは包含する。好ましい態様において、反応は-10℃(水/エタノール反応混合物の凝固点)~78℃(水/エタノール反応混合物の沸点)で進行してもよい。好ましい範囲は、約35~約55℃である。
【0019】
対象プロセスにおいて、分子酸素を混合物中へ導入するステップは、酸素ガスを混合物中へ吹き込むことを含む。ある態様において、分子酸素の混合物中への導入は、空気を混合物中へ吹き込むことを含む。代替的に、分子酸素は、酸素雰囲気において、強い攪拌と共に反応させることによって混合物中へ導入されてもよい。分子酸素はまた、反応物をフローリアクター中で処理することによって混合物中へ導入されてもよい。
【0020】
必ずしも要求されるものではないが、対象プロセスは、混合物を、電磁放射線、好ましくはUVおよび可視光放射線に曝露することを包含してもよい。混合物を曝露するために使用される光の波長範囲は、約200nm~約800nmの範囲にあってもよい。代替的に、プロセスは、暗中または環境光条件下で実行されてもよい。
【0021】
対象プロセスにおいて、混合物中で得られる、生成されたα,β-不飽和ケトンであるロタンドンは、当業者に知られている手段によってさらに精製されてもよい。例えば、粗混合物は、例として、約150~230℃で、0.04~0.1mbarで、バルブ・ツー・バルブ蒸留(bulb-to-bulb distillation)、任意にこれに続くフラッシュクロマトグラフィーによって精製されてもよい。
【0022】
グアイエンは、様々な植物供給源から単離されている天然化学化合物である。グアイエンは、分子式C1524をもつセスキテルペンである。α-グアイエンは、グアイアックウッド(guaiac wood)油から初めて単離された。α-グアイエンの別の天然供給源として、ある者はパチョリ油またはその軽質留分に言及するかもしれない。バイオテクノロジー的生成によって、例として糖の発酵によって得られるα-グアイエンもまた使用されてもよい。バイオテクノロジー的生成は、例えばWO 2011/141855 A1およびPlant Physiol 2010、154、1998-2007に記載される。本明細書に記載のプロセスに使用されるα-グアイエンを含む混合物は、好ましくは少なくとも15重量%(20wt%、30wt%、40wt%、50wt%、60wt%、70wt%、75wt%、80wt%、85wt%、90wt%以上を包含する)のα-グアイエンを含有する。
【0023】
本開示は今や、以下の非限定例を参照してさらに記載される。これらの例は例示のみの目的のためであり、変更および改変は当業者によってなされ得ることが理解される。
【0024】
採用した分析手順
極性GCMS:35℃/2min、50℃まで10℃/min、240℃まで2.5℃/min、240℃/5min。Thermo Scientific TSQ8000evo + Trace 1310 system。極性カラム:Varian VF-WAX(極性、PEG相)。カラム寸法:30m長さ、0.25mmID、0.25mフィルム厚。インジェクタ:スプリットレス。流量:1.2ml/min。キャリアガス:ヘリウム。注入体積:1μl。インジェクタ温度:230℃。移送ライン:250℃。MS-四重極(quadrupol):160℃。MS-供給:230℃。イオン化モード:70 eVでの電子衝撃(EI)。この方法によって、GC変換および生成物分布を測定し、主構成成分1~7の相対的なピーク面積を%において与える。
【0025】
非極性GC:100℃/2min、240℃まで15℃/min、240℃/5min。Thermo Focus GC。非極性カラム:Agilent Technology J&W Scientific DB-5 (非極性、5%フェニル-メチルポリシロキサン)。カラム寸法:30m長さ、0.32mmID、0.25μmフィルム厚。インジェクタ:スプリット。インジェクタ温度:240℃。検出器:FID。検出器温度:270℃。注入体積:1μl。キャリアガス:ヘリウム。スプリット比率:1/42.3。圧力:70kPa。積分器:Hewlett Packard。この方法によって、蒸留後のロタンドン2のGC純度を%rpa(相対的なピーク面積)において測定した。
【0026】
α-グアイエン91%を、改変した文献の手順(D.K.Taylor ら、Agric & Food Chem.63、1932、2015)によってグアイアックウッド油から単離した。α-グアイエン91%の純度を、内部標準アニスアルデヒドを有するH-NMRによって決定した。NMRスペクトルを、400MHzで、CDCl中で測定した。
【0027】
(4S,7R)-4-メチル-7-(プロパ-1-エン-2-イル)-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロアズレン-1(2H)-オン(化合物5;ケトン5)を、本明細書に記載のとおりの対象プロセスにおいて得たすべての混合物中で同定した。その香りは、ウッディ、シダー(cedary)、ドライ、イソラルディン-グアイアック(isoraldeine-guaiac)、スモーキー、フルーティ、スパイシーであると説明した。
【化4】
【0028】
ケトン5の分析データ:1H-NMR (ベンゼン-D6、400 MHz): 4.85 - 4.9 (2 s、2 H)、3.1 - 3.14 (2 H)、2.5 - 1.4 (10 H)、1.75 (s、3 H)、0.9 (d、3 H) ppm。13C-NMR (ベンゼン-D6、400 MHz): 206.5 (s)、176.6 (s)、150.3 (s)、139.0 (s)、108.9 (t)、45.2 (d)、36.4 (d)、33.8 (t)、32.1 (t)、30.9 (t)、29.5 (t)、28.1 (t)、20.4 (q)、16.5 (q) ppm。13C-NMR (CDCl3、400 MHz): 209.3 (s)、179.9 (s)、150.6 (s)、139.2 (s)、108.9 (t)、45.3 (d)、36.85 (d)、34.3 (t)、32.3 (t)、31.0 (t)、30.15 (t)、27.2 (t)、20.6 (q)、17.0 (q) ppm。
【0029】
構造を以下のNMR分析方法によって確認した: COSYDQF、HSQC、HMBCおよびNOESY。IR (cm-1): 2661 (w)、2922 (m)、2854 (w)、1697 (s)、1642 (m)、1452 (w)、1438 (w)、1375 (w)、1304 (w)、1286 (w)、1260 (w)、1236 (w)、1173 (w)、1154 (w)、1071 (w)、1042 (w)、1023 (w)、992 (w)、886 (m)、532 (w)。GCMS (EI、m/z): 204 (2%、[M]+)、189 (11%、[M - 15]+)、161 (12%)、148 (51%)、147 (48%)、134 (10%)、133 (100%)、121 (18%)、119 (28%)、107 (19%)、106 (11%)、105 (43%)、93 (25%)、91 (18%)、91 (39%)、81 (34%)、81 (17%)、79 (27%)、77 (22%)。[α]D22 = -11.4 (c 0.35、CHCl3)。HRMS (ESI): Calcd for C14H21O [M+H]+: 205.1587;Found: 205.1586。
【0030】
例1.Fe(III)触媒作用および光照射(光触媒作用)下でのαーグアイエン1からのロタンドン2の調製。
クロロ(テトラフェニルポルフィリナト)鉄(III)(34mg、0.05mmol)およびイミダゾール(6.7mg、0.1mmol)を、攪拌下、1:1エタノール/水混合物(20ml)中α-グアイエン91%(1g、4.5mmol)へ添加した。酸素を緑色を帯びた濁った混合物中へ吹き込み、完全な変換を検知するまで(8~16時間)、300 W Osram Ultra Vitalux lumpでの光照射下、45℃で攪拌した。生成物分布には、ロタンドン2(31%)、ケトン5(9%)、ヒドロキシ-ロタンドン6(16%)およびコリンボロン7(1%)が含まれていた。緑褐色の濁った混合物を減圧下で部分的に蒸発させ、残渣をtert-ブチルメチルエーテルを用いて抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残余の褐色の油(1.22g)を、150~230℃/0.045mbarでバルブ・ツー・バルブ蒸留することによって、45%GC純度(29%corr.収率)の0.63g ロタンドン2および0.39gの残渣が与えられた。
【0031】
例2.暗(光排除)中Fe(III)触媒作用下でのα-グアイエン1からのロタンドン2の調製。
クロロ(テトラフェニルポルフィリナト)鉄(III)(34mg、0.05mmol)およびイミダゾール(6.7mg、0.1mmol)を、攪拌下、1:1エタノール/水混合物(20ml)中α-グアイエン91%(1g、4.5mmol)へ添加した。酸素を、45℃で緑色を帯びた濁った混合物中へ吹き込んだ。反応フラスコをアルミニウム箔で包んで、光を排除した。8時間後、GCMSによってロタンドン2(25%)、ロツンドール3(1%)、エポキシ-グアイエン4(4%)、ケトン5(5%)、およびヒドロキシ-ロタンドン6(20%)を含む混合物への完全な変換が示された。緑褐色の濁った混合物を減圧下で部分的に蒸発させ、残渣をtert-ブチルメチルエーテルを用いて抽出した。合わせた有機層を、MgSO上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残余の褐色の油(1.22g)を、150~230℃/0.045mbarでバルブ・ツー・バルブ蒸留することによって、43%GC純度の0.77g ロタンドン2(34%corr.収率)および0.24gの残渣が与えられた。
【0032】
例3.Fe(III)触媒作用および空気下でのα-グアイエン1からのロタンドン2の調製
空気を、攪拌下および45℃で、1:1エタノール/水混合物(20ml)中クロロ(テトラフェニルポルフィリナト)鉄(III)(34mg、0.05mmol)、イミダゾール(6.7mg、0.1mmol)およびα-グアイエン91%(1g、4.5mmol)の緑色を帯びた濁った混合物中へ吹き込んだ。49時間後、GSMSによって、ロタンドン2(21%)、エポキシ-グアイエン4(5%)、ケトン5(4%)、ヒドロキシ-ロタンドン6(10%)、およびコリンボロン7(1%)を含む混合物への96%変換が示された。減圧下でエタノールの蒸発後、暗色の混合物を水に対してtert-ブチルメチルエーテルを用いて抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、1.3gの褐色の残渣まで蒸発させ、それを150~230℃/0.025mbarでバルブ・ツー・バルブ蒸留によって精製することによって、41%GC純度をもつ0.76gのロタンドン2および0.28gの残渣が得られた。
【0033】
例4~12.様々な溶媒または溶媒の混合物中Fe(III)触媒作用下でのα-グアイエン1からのロタンドン2の調製。
例4から12は、1%((クロロ(テトラフェニルポルフィリナト)鉄(III)))および2%イミダゾールを有する混合物中1g α-グアイエン1(91%)のケトン(ロタンドン2)へのアリル酸化を実証している。
通常の条件に、45℃での20ml溶媒または溶媒の混合物の使用が包含されている。他に指し示されない限り、混合物の意図的な照射がないか、光排除であった。
【0034】
表1
【表1】
蒸留後のモル収率(mol%における)(蒸留後の生成物の純度および基質純度によって修正した)。溶媒混合物は、他に指し示されない限り1:1である。
化合物:α-グアイエン1、ロタンドン2、ロツンドール3、エポキシ-グアイエン4、ケトン5、ヒドロキシ-ロタンドン6、およびコリンボロン7。
【0035】
分子酸素を混合物へ吹き込むことは、バルーンを介して分子酸素を導入するより有利に見受けられる。
【0036】
例13~15.様々なリガンドをもつFe(III)触媒作用下でのα-グアイエン1からのロタンドン2の調製。
例13~15は、異なる置換されたポルフィリンリガンドを有する鉄ポルフィリン触媒を用いる、α-グアイエン1のケトン(ロタンドン2)へのアリル酸化を実証している。通常の条件に、45℃で、分子酸素が流入口を通して1:1のモル比での20mlのEtOH/HO溶媒混合物へ導入されると共に、1g α-グアイエン1(91%)、1mol%鉄ポルフィリン触媒、2mol%イミダゾールを混合することが包含されている。化合物1~7のパーセンテージを、単離後GCMSによって決定した。
【0037】
表2
【表2】
Fe-ポルフ(クロロ(テトラフェニルポルフィリナト)鉄(III))。蒸留後のモル収率(mol%における)(蒸留後の生成物の純度および基質純度によって修正した)。
【0038】
例16~19.様々な温度、Fe(III)-触媒作用下でのα-グアイエン1からのロタンドン2の調製。
例16から19は、様々な温度条件での1%Fe-ポルフィリンおよび2%イミダゾールを有する混合物中、1g α-グアイエン1(91%)のケトン(ロタンドン2)へのアリル酸化を実証している。通常の条件に、20ml溶媒EtOH/HO(1:1)中混合物の1000rpmの混合と共に、30分、Oを流入口を通して吹き込むこと、次いでバルーンを用いてO雰囲気を提供することが包含される。化合物1~7のパーセンテージを、GCMSによって決定した。
【0039】
表3
【表3】
a蒸留後のモル収率(mol%における)(蒸留後の生成物の純度および基質純度によって修正した)。
【0040】
例20:より大きいスケールでのα-グアイエン1からのロタンドン2の調製
酸素を、攪拌下および45℃で、1:1エタノール/水混合物(200ml)中クロロ(テトラフェニルポルフィリナト)-鉄(III)(172mg、0.245mmol)、イミダゾール(67mg、1mmol)およびα-グアイエン91%(10g、45mmol)の緑色を帯びた濁った混合物中へ吹き込んだ。1h後、酸素流入口を、酸素バルーンによって置き換えた。45℃でさらに7h攪拌した後、GCMSによってロタンドン2(30%)、エポキシ-グアイエン4(3%)、ケトン5(7%)、ヒドロキシ-ロタンドン6(13%)、およびコリンボロン7(1%)を含む混合物への定量的な変換が指し示された。減圧下でのエタノールの蒸発後、暗褐色の混合物を水に対してtert-ブチルメチルエーテルを用いて抽出した。合わせた有機層を、MgSO上で乾燥させ、濾過し、蒸発して、14.3gの茶褐色の残渣を与え、それを150~230℃/0.1mbaでバルブ・ツー・バルブ蒸留によって精製することによって、38%GC純度(33%corr.収率)をもつ8.6gのロタンドンおよび2.3gの褐色の残渣を与えられた。