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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】テストベンチを作動させるための方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/02 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
G01M15/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020534421
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018086510
(87)【国際公開番号】W WO2019122304
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】A51075/2017
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ビーア・マクシミーリアーン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・マーティン
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-314683(JP,A)
【文献】特表2017-535785(JP,A)
【文献】特開2012-088188(JP,A)
【文献】国際公開第2006/120728(WO,A1)
【文献】特開2000-039381(JP,A)
【文献】特開平10-239219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 15/00 - 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニット(2)を駆動させるか又は駆動ユニット(2)に負荷を印加するために連結シャフト(3)を用いて負荷機械(4)に接続される前記駆動ユニット(2)によって試験運転を実行するためのテストベンチ(1)を作動させるための方法であって、
前記テストベンチ(1)にある前記負荷機械(4)が、前記試験運転を実行するために制御装置(5)によって制御され、前記駆動ユニット(2)が、前記試験運転を実行するために駆動ユニット制御装置(6)によって制御され、
前記駆動ユニット(2)の回転数の予め設定されている時間推移とトルクの予め設定されている時間推移とが、前記試験運転を実行するためにシミュレートされる当該方法において、
目標の内部実効トルク(MINT_EFF_SOLL)に対して設定された目標値又は目標の実効トルク(MEFF_SOLL)に対して設定された目標値と、前記駆動ユニット(2)の駆動中に前記テストベンチ(1)で実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)に対して算出された実際値又は実際の実効トルク(MEFF_IST)に対して算出された実際値とに基づいて、前記駆動ユニット(2)内部実効トルク(MINT_EFF又は実効トルク(MEFF)が、前記駆動ユニット制御装置(6)によって制御されること、及び
前記駆動ユニット(2)のアクセルペダル位置(α)又は前記回転数又は前記トルクのフィードフォワード制御が、前記駆動ユニット(2)の前記内部実効トルク(MINT_EFF)又は前記実効トルク(MEFF)を制御するために使用され、前記アクセルペダル位置(α)又は前記回転数又は前記トルクのフィードフォワード制御値又は当該制御の目標値が、伝達関数(UF)としてのむだ時間(Δt)によって補正されることによって、当該制御時の前記駆動ユニット(2)の制御動特性、すなわち時間応答が相殺されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)は、前記負荷機械(4)又は前記駆動ユニット(2)又は前記連結シャフト(3)で測定される実際の回転数(NIST)と、前記負荷機械(4)又は前記駆動ユニット(2)又は前記連結シャフト(3)で測定される前記実際の実効トルク(MEFF_IST)と、前記駆動ユニット(2)の既知の慣性(I)とから算出されること、及び
前記実際の実効トルク(MEFF_IST)は、測定によって前記連結シャフト(3)で検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該測定された実際の回転数(NIST)が、時間微分され、前記駆動ユニットの前記既知の慣性(I)と乗算され、その積が、当該測定された実際の実効トルク(MEFF_IST)に加算されることによって、前記実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)が算出されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
内燃機関エンジンが、駆動ユニット(2)として使用されること、及び
前記実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)が、シリンダ圧力を検出する方法によって内燃機関エンジンで検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)は、検出された実際のトルク(MINDI_IST)と摩擦トルク(M)との間の差から算出され、当該検出された実際のトルク(MINDI_IST)は、前記シリンダ圧力を検出する方法によって検出されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記目標の内部実効トルク(MINT_EFF_SOLL)は、前記駆動ユニット(2)の回転数の予め設定されている推移と、前記駆動ユニット(2)のトルクの予め設定されている推移と、前記駆動ユニット(2)の既知の慣性(I)とから算出されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
当該予め設定されている回転数の推移が、時間微分され、前記駆動ユニット(2)の前記既知の慣性(I)と乗算され、その積が、前記駆動ユニット(2)のトルクの当該予め設定されている推移に加算されることによって、前記目標の内部実効トルク(MINT_EFF_SOLL)が算出されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アクセルペダル位置(α)又は前記回転数又は前記トルクのフィードフォワード制御値が、回転数若しくは実際の回転数(NIST)又は予め設定されている回転数と、目標トルク、前記目標の内部実効トルク(MINT_EFF_soll)、前記目標の実効トルク(MEFF_soll)、前記伝達関数(UF)によって補正された目標の内部実効トルク(MINT_EFF_soll_UH)又は前記伝達関数(UF)によって補正された目標の実行トルク(MEFF_soll_UH)とから算出され、又は特性図KFから算出されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
当該制御の前記目標値又は前記アクセルペダル位置(α)又は前記回転数又は前記トルクのフィードフォワード制御値が、前記伝達関数(UF)によって時間軸上でむだ時間(Δt)だけシフトされることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記むだ時間(Δt)は、前記駆動ユニット(2)の全ての動作点に対して同じ大きさに確定されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記むだ時間(Δt)は、前記駆動ユニット(2)の動作点に依存して確定されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記駆動ユニット(2)の1つの動作点に対するむだ時間(Δt)は、この動作点における前記目標の内部実効トルク(MINT_EFF_SOLL)又は前記目標の実効トルク(MEFF_SOLL)の推移の勾配に依存して確定されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記むだ時間(Δt)は、前記駆動ユニット(2)又は基準駆動ユニットを前記テストベンチ(1)上で測定することによって算出されることを特徴とする請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記駆動ユニット(2)のアクセルペダル位置(α)又は前記回転数又は前記トルクが急激に変化され、当該アクセルペダル位置(α)又は前記回転数又は前記トルクの急激な変化と当該急激な変化によって引き起こされた前記実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)の変化との間の期間が測定されることによって、前記むだ時間(Δt)が測定されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
駆動ユニット(2)を駆動させるか又は駆動ユニット(2)に負荷を印加するために連結シャフト(3)を用いて負荷機械(4)に接続されている前記駆動ユニット(2)によって試験運転を実行するためのテストベンチ(1)であって、
前記試験運転を実行するために前記テストベンチ(1)にある前記負荷機械(4)を制御する制御装置(5)が設けられていて、前記試験運転を実行するために前記駆動ユニット(2)を制御する駆動ユニット制御装置(6)が設けられていて、
前記テストベンチ(1)は、前記駆動ユニット(2)の回転数の予め設定されている時間推移及びトルクの予め設定されている時間推移として前記試験運転を実行するために設けられている当該テストベンチ(1)において、
前記駆動ユニット制御装置(6)は、前記駆動ユニット(2)内部実効トルク(MINT_EFF又は実効トルク(MEFF)を制御し、この駆動ユニット制御装置(6)は、当該制御のために目標の内部実効トルク(MINT_EFF_SOLL)に対する目標値又は目標の実効トルク(MEFF_SOLL)に対する目標値を取得し、この駆動ユニット制御装置(6)は、実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)に対する実際値又は実際の実効トルク(MEFF_IST)に対する実際値を前記駆動ユニット(2)の駆動中に前記テストベンチ(1)で算出すること、及び
前記駆動ユニット(2)のアクセルペダル位置(α)又は前記回転数又は前記トルクのフィードフォワード制御が、前記駆動ユニット(2)の前記内部実効トルク(MINT_EFF)又は前記実効トルク(MEFF)を制御するために設けられていて、前記アクセルペダル位置(α)又は前記回転数又は前記トルクのフィードフォワード制御値又は当該制御の目標値が、前記駆動ユニット制御装置(6)によって伝達関数(UF)としてのむだ時間(Δt)を用いて補正されることによって、前記駆動ユニット(2)の制御動特性、すなわち時間応答が相殺されることを特徴とするテストベンチ(1)。
【請求項16】
前記テストベンチ(1)は、前記実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)の実際値を算出するために監視手段(10)をハードウェア又はソフトウェアとして有することを特徴とする請求項15に記載のテストベンチ(1)。
【請求項17】
前記監視手段(10)は、前記実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)を、前記負荷機械(4)又は前記駆動ユニット(2)又は前記連結シャフト(3)で測定される実際の回転数(NIST)と、前記負荷機械(4)又は前記駆動ユニット(2)又は前記連結シャフト(3)で測定される前記実際の実効トルク(MEFF_IST)と、前記駆動ユニット(2)の既知の慣性(I)とから算出さるために設けられていることを特徴とする請求項16に記載のテストベンチ(1)。
【請求項18】
内燃機関エンジンが、駆動ユニット(2)として設けられていること、及び
シリンダ圧力検出装置が、前記内燃機関エンジンのシリンダ圧力を検出するために前記テストベンチ(1)に設けられていて、前記実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)が、前記シリンダ圧力を検出する方法から検出されることを特徴とする請求項15に記載のテストベンチ(1)。
【請求項19】
前記実際の内部実効トルク(MINT_EFF_IST)は、検出された実際のトルク(MINDI_IST)と摩擦トルク(M)との間の差から算出され、当該検出された実際のトルク(MINDI_IST)は、前記シリンダ圧力を検出する方法によって検出されることを特徴とする請求項18に記載のテストベンチ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットを駆動させるか又は駆動ユニットに負荷を印加するために連結シャフトを用いて負荷機械に接続される当該駆動ユニットによって試験運転を実行するためのテストベンチを作動させるための方法であって、当該テストベンチにある当該負荷機械が、当該試験運転を実行するために制御装置によって制御され、当該駆動ユニットが、当該試験運転を実行するために駆動ユニット制御装置によって制御され、当該駆動ユニットの回転数の予め設定されている時間推移とトルクの予め設定されている時間推移とが、当該試験運転を実行するためにシミュレートされる当該方法に関する。さらに、本発明は、試験運転を実行するためのテストベンチに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば内燃機関エンジン、電気モータ、又は内燃機関エンジンと電気モータとから成る組み合わせ(所謂ハイブリッド駆動装置)のような駆動ユニットの開発の場合、長年にわたって、テストベンチが使用されている。当該テストベンチの基本構造及び操作方法は、周知である。この場合、駆動ユニットの駆動シャフトに対する予め設定されている回転数プロフィール/トルクプロフィールの可能な限り正確で且つ再現可能なシミュレーションを保証することが、このようなテストベンチで従来から非常に要求されている。このため、駆動ユニットは、連結シャフトを介して負荷機械(ダイナモメータ)に接続される。
【0003】
一般に、テストベンチでは、回転数は、負荷機械によって調整され、トルクは、駆動ユニットによって調整される。駆動技術及び測定技術又は制御装置及び調整装置の可用性が制限されていたので、当初は、主に静的な動作点(回転数/トルクの組み合わせ)だけが調整され測定され得た。多くのテストベンチにとって、静的な動作点に取り組むだけで十分であった。駆動ユニットに対する高まる要求(例えば、高いエンジン出力、低い燃費、内燃機関エンジンの場合の有害物質の少ない排出)に起因して、及び上記の技術分野に対する進展する発展に起因して、また駆動ユニットの検査に対する高まる要求又は規制に起因して、静的な動作点だけを調整するのではなくて、動的な回転数推移/トルク推移も調整することがあり得るか又は必要である。
【0004】
この場合、「動的」は、特に静的な動作点だけを意味するのではなくて、特に急激な回転数の変化及び/又はトルクの変化も意味する。これらのプロフィールは、例えば、有害物質の放出に対する限界値の順守に関する証明を提出するための、法律で予め設定されている内燃機関エンジンの排ガス規制のための測定サイクルである。しかし、駆動ユニットの出力及び燃費を最適にするためには、例えば駆動ユニットを自動車駆動部として使用する場合は、道路又は試験区間上での試乗運転中に自動車によって測定される高ダイナミックで且つ標準化されていない運転プロフィールが、多くの場合に実際に使用される。当該動的なプロフィールに対するテストベンチの制御の要求は非常に高い。当該高い要求は、今日まで十分に満たされていない。
【0005】
一般に、所謂制御方法N/MEFFが、テストベンチで使用される。この場合、テストベンチの負荷機械が、目標プロフィールに基づいて予め設定されている駆動ユニットの回転数Nを調整し、駆動ユニットが、負荷機械と駆動ユニットとの間の連結シャフトで発生する予め設定されている実効トルクMEFFを調整する。しかしながら、これらの両変数N又はMEFFは、当該駆動ユニットの慣性を介して互いに強く結び付いている。内燃機関エンジンの場合、当該駆動ユニットの制御変数は、内部実効トルクMINT_EFFに直接に作用する、例えばアクセルペダル位置αである、すなわち内燃機関エンジンの慣性に直接に作用するトルクである。加速過程及び制動過程中に、当該連結シャフトで発生する実効トルクMEFFが、内部実効トルクMINT_EFFと内燃機関エンジンの慣性を加速又は減速させて回転数を変化せるために必要であるトルクとの重畳から得られる。
【0006】
しかし、内部実効トルクMINT_EFFは、直接に測定可能ではない。それ故に、従来では、連結シャフトで発生する測定可能なトルクMEFFが制御された。しかし、特に、動的な試験運転の場合、連結シャフトで発生する実効トルクMEFFを回転数Nに依存しないで制御することは可能でない。多くの場合、駆動ユニットの制御変数(内燃機関エンジンの場合は、例えばアクセルペダル位置α)は、入力として回転数Nと実効トルクMEFFとを有する存在する静的な特性図(測定される静的な動作点)から算出される。このような特性図に基づく「フィードフォワード」制御の場合、制御変数の値が不正確である。何故なら、動的な試験サイクルの場合の動作点において駆動シャフトで発生する実効トルクMEFFの測定される値が、静的な動作の場合の対応する動作点における値と一致しないからである。さらに、一般に、駆動ユニットの制御動特性は、通常のテストベンチの負荷機械の制御動特性よりも著しく小さい。
【0007】
これにより、内燃機関エンジンのトルクが、負荷機械の回転数に比べて遅れて調整される。ここでは、制御動特性は、どのくらい早くトルクの制御変数の変化が制御されるかを意味する。内燃機関エンジンの例では、アクセルペダル位置の変化が、トルクに直接に作用するのではなくて、通常は所定の期間後に初めて、大抵は数秒の範囲内で作用する。これは、動的な試験運転の場合のテストベンチでの試験運転の従来の制御において、どうして悪い結果しか得られないかの主な理由である。
【0008】
刊行物のGRUENBACHER, E. Et. Al., 2008. Adaptive Control of Engine Torque with Input Delays. In: 17th World Congress of the International Federation of Automatic Control.Seoul, Korea, July 6-11, 2008では、エンジンテストベンチ上での試験運転時に、燃焼に起因するトルクを制御することが推奨されるが、当該内部トルクは、内燃機関エンジンの複数のシリンダ内の燃焼時の個々の膨張行程の重畳であるので、当該制御は、実際には困難であることが説明されている。さらに、この内部トルクは、直接に測定可能ではなくて評価される必要がある。さらに、この刊行物では、動的な回転数推移による試験運転が考慮されない。
【0009】
欧州特許出願公開第3067681号明細書は、エンジンテストベンチ又は駆動ユニットテストベンチを作動させるための方法を記す。この場合、燃焼室の圧力を検出するための検出装置が使用される。この場合、燃焼室の圧力が、クランクシャフトの検出されたトルクと実効トルクとに正確に換算される。当該トルクは、負荷機械を制御するために使用される。しかしなが、この方法の場合、シリンダの圧力を測定するためには、内燃機関エンジンの燃焼室が、機械的な加工によってアクセスされる必要があり、当該測定方法は、非常に面倒であり、コストがかかることが欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第3067681号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】GRUENBACHER, E. Et. Al., 2008. Adaptive Control of Engine Torque with Input Delays. In: 17th World Congress of the International Federation of Automatic Control.Seoul, Korea, July 6-11, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、駆動ユニットの限定された制御動特性を考慮する、テストベンチ上で試験運転を実行するために当該駆動ユニットのトルクを制御するための簡単な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、この課題は、内部実効トルクに対する目標値又は実効トルクに対する目標値が予め設定され、当該内部実効トルクに対する実際値又は当該実効トルクに対する実際値が、当該駆動ユニットの駆動中に当該テストベンチで算出されることによって、当該駆動ユニットの当該内部実効トルク又は当該実効トルクが、当該駆動ユニット制御装置によって制御されること、及び、当該制御の当該目標値が、伝達関数によって補正されることによって、当該制御時の当該駆動ユニットの制御動特性が、当該伝達関数によって考慮されること、又は、当該駆動ユニットの制御変数のフィードフォワード制御が、当該駆動ユニットの当該内部実効トルク又は当該実効トルクを制御するために使用され、当該制御変数のフィードフォワード制御値又は当該制御の目標値が、当該伝達関数によって補正されることによって解決される。当該制御動特性を考量することによって、様々な駆動ユニットのトルクの立ち上がりにおける異なる時間遅れが相殺補正され得る。これにより、制御精度が向上する。
【0014】
一般に駆動ユニットと負荷機械との間の連結シャフトで測定される実効トルクに向かう当該駆動ユニットのトルクを制御する代わりに、所謂内部実効トルクが制御されてもよい。当該内部実効トルクは、当該実効トルクに対して当該駆動ユニットの慣性の加速度の影響だけ補正されたトルクである。これにより、主に、回転数とトルクとが、テストベンチで分離可能である。これにより、トルクの制御が改善され得る。当該実際の内部実効トルクは、当該連結シャフトで発生する実際の実効トルクとは違って直接に測定され得ないが、例えば監視手段によって算出され得る。当該慣性の加速度の影響に依存しない内部実効トルクの値を算出する全ての既知のアルゴリズムが、監視手段として使用され得る。フィードフォワード制御には、駆動ユニット制御装置が、より小さい偏差を調整するだけで済むという利点がある。
【0015】
特に、実際の当該内部実効トルクは、当該負荷機械又は当該駆動ユニット又は当該駆動シャフトで測定される実際の回転数と、当該負荷機械又は当該駆動ユニット又は当該駆動シャフトで測定される実際の実効トルクと、当該駆動ユニットの既知の慣性とから算出されるか、又は、実際の当該実効トルクは、測定によって当該駆動シャフトで検出される。実際の当該内部実効トルク算出するため、当該測定された実際の回転数が、時間微分され、当該駆動ユニットの当該既知の慣性と乗算され、その積が、当該測定された実際の実効トルクに加算され得る。
【0016】
内燃機関エンジンが、駆動ユニットとして使用される場合、実際の当該内部実効トルクが、シリンダ圧力を検出する方法によって内燃機関エンジンで検出され得る。このため、特に実際の当該内部実効トルクが、検出された実際のトルクと摩擦トルクとの間の差から算出され、当該検出された実際のトルクは、当該シリンダ圧力を検出する方法によって検出される。
【0017】
目標の当該内部実効トルクは、当該駆動ユニットの回転数の予め設定されている推移と、当該駆動ユニットのトルクの予め設定されている推移と、当該駆動ユニットの既知の慣性とから算出され得る。特に、当該予め設定されている回転数の推移が、時間微分され、当該駆動ユニットの当該既知の慣性と乗算され、その積が、当該駆動ユニットのトルクの当該予め設定されている推移に加算されることによって、目標の当該内部実効トルクが算出され得る。当該予め設定されている推移は、例えば、駆動ユニットの記録された測定データから、法律で予め規定されている測定サイクルから、又は別の情報源から算出され得る。当該慣性は、-開発の目的に応じて-基準運転の駆動ユニットの慣性に応じて、又は検査すべき駆動ユニットの慣性に応じて選択され、既知と仮定される。同様に、当該内部実効トルクの目標値が、例えば駆動ユニット制御装置(例えば内燃機関エンジンのECU)の記録されたデータから算出され得る。
【0018】
好ましくは、アクセルペダル位置が、フィードフォワード制御の制御変数として使用される。
【0019】
特に、当該制御変数のフィードフォワード制御値が、回転数、特に実際の回転数又は予め設定されている回転数と、目標トルク、特に目標の内部実効トルク、目標の実効トルク、当該伝達関数によって補正された目標の内部実効トルク又は当該伝達関数によって補正された目標トルクとから算出され、特に特性図KFから算出される。
【0020】
最も簡単な場合、当該伝達関数による補正は、当該制御の当該目標値又は当該制御変数のフィードフォワード制御値が当該伝達関数によって時間軸上でむだ時間だけシフトされることによって実行され得る。この場合、当該むだ時間は、当該駆動ユニットの全ての動作点に対して同じ大きさに確定され得るか、又は当該駆動ユニットの動作点に依存して確定され得る。したがって、内部実効トルク又は実効トルクの立ち上がり中の異なる動特性が、異なる動作点に対して相殺補正され得る。これにより、制御の精度がさらに向上する。
【0021】
当該駆動ユニットの1つの動作点に対するむだ時間は、この動作点における目標の内部実効トルク又は目標の実効トルクの推移の勾配に依存して確定されることによって、異なる動作点の考慮が達成され得る。当該目標の内部実効トルク又は当該目標の実効トルクの推移を分析することによって、追加の測定経費が不要である。これにより、例えば、トルクの立ち上がり時とトルクの立下り時との駆動ユニットの異なる時間遅れ応答を考慮することが可能である。
【0022】
しかし、特に、当該駆動ユニットの制御変数が急激に変化され、当該制御変数の急激な変化と当該急激な変化によって引き起こされた実際の当該内部実効トルク又は当該実際の実効トルクの変化との間の期間が測定されることで、当該むだ時間は、当該駆動ユニット又は基準駆動ユニットを当該テストベンチ上で測定することによっても算出され得る。例えば、駆動ユニット用のむだ時間の特性図を、同様に予測される制御動特性によって、例えば排気量、過給、シリンダ数、定格回転数に依存して作成することが考えられる。
【0023】
以下に、本発明を、例示的に、概略的に且つ限定しないで本発明の好適な構成を示す図1~7に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】テストベンチの一般的な構成を示す。
図2】監視手段の機能を示す。
図3a】本発明のフローチャートを示す。
図3b】本発明のフローチャートを示す。
図3c】本発明のフローチャートを示す。
図4】基準試験運転を示す。
図5】従来の制御方式N/MEFFの場合の結果を示す。
図6】制御方式N/MINT_EFFの場合の結果を示す。
図7】目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLをむだ時間Δtだけシフトさせることによる制御方式N/MINT_EFFの場合の結果を示す。
図8】アクセルペダル位置αのフィードフォワード制御値をむだ時間Δtだけシフトさせることによる制御方式N/MINT_EFFの場合の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、トルクを伝達するための連結シャフト3によって負荷機械4に連結されている駆動ユニット2と、この負荷機械4を制御するための制御装置5と、この駆動ユニット2を制御するための駆動ユニット制御装置6とを有するテストベンチ1の公知の従来の構成を示す。制御装置5及び駆動ユニット制御装置6は、適切なハードウェア及び/又はソフトウェアによって(又は共通のハードウェア上に)実装され得る。駆動ユニット2は、エンジン回転数NMを測定するために回転数測定装置7を有し、負荷装置4も、同様に回転数測定装置8を有する。トルク測定装置9が、駆動ユニット2の実効トルクMEFFを測定するために駆動ユニット2と負荷機械4との間の連結シャフト3に配置されている。
【0026】
負荷機械4は、連結シャフト3に直接に連結されている、例えば直流機、非同期機又は三相同期機のような従来の電気機器を意味するだけではなくて、例えば所謂試験リグギヤ装置システム(Test Rig Transmission System(TRT))の形態の、例えば電気機器とギヤ装置とを組み合わせたものも意味する。この場合、例えば2つ又は複数の電気機器が、加算ギヤ装置によって連結されてもよい。駆動ユニット2によって駆動させるため又は負荷を印加するため、この加算ギヤ装置自体が、連結シャフト3に連結されている。当該2つ(又は複数)の電気機器の出力が、この加算ギヤ装置で加算される。この場合、回転数レベルが、所定の回転数レベルに移行されてもよい。当然に、これらの構成は、例示にすぎない。その他の全ての適切な機械又は機械とギヤ装置との組み合わせも、負荷機械4として使用され得る。駆動ユニット2の実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTを算出するため、例えば監視手段10が設けられ得る。同様に、当該監視手段10も、適切なハードウェア及び/又はソフトウェアとして構成され得る。この場合、全ての公知のアルゴリズムが、監視手段10として使用され得る。当該アルゴリズムは、駆動ユニット2の慣性Iの加速度によって補正されたトルクを算出する。当該補正されたトルクは、実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTとして本発明にしたがって使用される。監視手段10の機能は、原理的に公知であるが、完全を期すため、基本機能を図2に基づいて以下で簡単に説明する。
【0027】
駆動ユニット2が、内燃機関エンジンとして構成されている場合、監視手段10の代わりに、シリンダ圧力を検出する方法が、実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTを検出するために使用されてもよい。したがって、内燃機関エンジンの燃焼室内のシリンダ圧力が、クランク角度に応じて正確に測定され得て、検出された実際のトルクMINT_ISTが、熱力学の法則を用いて当該測定されるシリンダ圧力に基づいて算出され得る。この検出された実際のトルクMINT_ISTが、当該内燃機関エンジンの(例えば、当該内燃機関エンジンの動作範囲にわたる特性図として存在する)既知の内部摩擦だけ補正されると、必要な実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTが得られる。当該摩擦の影響は、例えば摩擦トルクMRとして、テストベンチ1にある内燃機関エンジンの引き摺りトルク測定によって、又は別の適切な方法によって算出され得る。当該シリンダ圧力を検出する方法は、周知であるので、ここでは詳しく説明しない。詳しい説明は、例えば欧州特許出願公開第3067681号明細書から読み取ることができる。
【0028】
一般に、必要な変数が取得可能である限り、本発明の方法は、特定の駆動ユニット2に限定されているのではなくて、例えば内燃機関エンジン、電気モータ、電気モータと内燃機関エンジンとの組み合わせ(所謂ハイブリッド駆動装置)のような様々な駆動ユニット2に対して使用され得る。また、当該方法は、例えばパワートレインで使用され得る。当該パワートレインの場合、上記の駆動ユニット2は、ギヤ装置、クラッチ、差動ギヤ装置、ハーフシャフト等を介して連結シャフト3に連結され得る。
【0029】
図2は、駆動ユニット2としての、例えば内燃機関エンジンの内部実効トルクMINT_EFFを算出するための監視手段10の公知の簡略化された機能をブロック図に基づいて例示する。この場合、エンジン回転数Nが、当該内燃機関エンジンにある回転数測定装置7によって測定され、フィルタFを用いて1運転サイクル(例えば、4サイクルエンジンの場合の720°のクランク角度)と当該内燃機関エンジンのシリンダ数とによって平均化される。当該内燃機関エンジンのシリンダ内の燃焼と、当該内燃機関エンジンの対応するシリンダ数とから発生し、エンジン回転数Nを変化させる、当該内燃機関エンジンの1運転サイクルによるトルクの不均一な印加が、この平均化によって相殺補正される。例えば、4サイクルエンジンの場合、それぞれのシリンダにおいて、720°のクランク角度ごとに、1回の燃焼が発生する。この燃焼は、力をそのピストンに発生させ、引き続きトルクをクランク軸に印加させる。このことは、例えば4気筒エンジンの場合はトルクが180°のクランク角度ごとに印加されることを意味し、例えば6気筒エンジンの場合はトルクが120°のクランク角度ごとに印加されることを意味する、等々。上記のエンジン回転数Nのフィルタリングの結果、フィルタリングされたエンジン回転数NM_FILTが得られる。同様に、このような平均化又はフィルタリングは、実効トルクMEFFにも適用され得る。これにより、フィルタリングされた実効トルクMEFF_FILTが得られる。その後に、当該フィルタリングされたNM_FILTが、微分器Dによって時間微分される。これにより、角加速度φが得られる。その次のステップでは、当該えられた角加速度φが、乗算器M内で当該内燃機関エンジンの提供された既知の慣性Iと乗算され、補正トルクΔMが得られる。次いで、当該得られた補正トルクΔMと、例えば当該内燃機関エンジンの1運転サイクルとシリンダ数とによって新たにフィルタリングされた実効トルクMM_FILTとが、加算器S内で加算され、内部実効トルクMINT_EFFが得られる。したがって、エンジン回転数NMの推移と、当該エンジン回転数Nの推移から生成された、当該フィルタリングされたエンジン回転数NM_FILT又は時間微分又は角加速度φの符号とに依存して、当該測定され、当該内燃機関エンジンの1運転サイクルとシリンダ数とによって平均化された連結シャフト3の実効トルクMM_FILTが増大又は減少される。これにより、当該内燃機関エンジンの慣性Iの動的な影響が考慮される。この計算は、実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTを算出するために監視手段10によって「オンライン」で使用され得て、テストベンチ1で試験運転を実行するための予め設定されている基準の回転数プロフィール/トルクプロフィールから目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLを算出するために「オフライン」又は「オンライン」で使用され得る。
【0030】
この関係において、「オンライン」は、テストベンチ1上での試験運転中に実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTを算出することを意味し、「オフライン」は、テストベンチ1上での試験運転中でないときに目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLを算出することを意味する。しかし、実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTの「オンライン」の算出時でも、フィルタリングのステップが省略され得る。しかしながら、この種のフィルタリングは主に、駆動ユニット制御装置6の使用される制御器の特性によって間接的に実行され、駆動ユニット2の遅延挙動によって間接的に実行される。内燃機関エンジンを自動車で使用する場合、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLは、例えば、実際の試乗運転の記録された測定データ(回転数プロフィール/トルクプロフィール)から算出され得るか、又はその他の情報源から算出されてもよい。当然に、説明されている監視手段の方法は、内燃機関エンジンでの使用に限定されず、例えば電気モータ、ハイブリッド駆動装置等のような別の駆動ユニット2でも使用可能である。
【0031】
この場合、駆動ユニット2の慣性Iは、既知とみなされ得る。様々な慣性Iが、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLを計算するために使用されてもよい。例えば、テストベンチ1にある駆動ユニット2の慣性Iが使用され得る。しかし、当該テストベンチでシミュレートされなければならない基準試験(Referenzlauf)に基づく駆動ユニット2の慣性Iが使用されてもよい。すなわち、テストベンチ1にある駆動ユニット2の慣性Iは、当該基準試験を作成又は測定した駆動ユニットの慣性と一致する必要はない。この場合、例えば内部排気量(駆動ユニット2としての内燃機関エンジンの燃焼室内の排気量(Leistungen))が、当該基準試験に良好に対応する。基準試験が、当該テストベンチでシミュレートされ、駆動ユニット2の実際の慣性Iが、当該テストベンチで使用される場合、連結シャフトの出力が、当該基準試験に良好に対応する。
【0032】
図3は、フローチャートに基づく本発明の方法の基本シーケンスを示す。ブロックAによって示された第一ステップでは、テストベンチ1で実行すべき試験運転に対する駆動ユニット2の回転数とトルクとに対するシミュレートすべき推移が生成又は提供される。駆動ユニット回転数の基準値NA_REFと、実効トルクの基準値MEFF_REFと、駆動ユニット2の慣性Iとが必要とされる。これらのデータは、例えば実際の運転(基準試験)の測定データによって提供され得るが、これらのデータは、法律で規定された測定サイクルによって予め設定されてもよく、又は別の情報源から由来するものでもよい。
【0033】
ブロックBによって示された次のステップでは、実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTを算出するための図2の監視手段10に基づいて既に説明されたのと同じ方法によって、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLが、予め設定されている基準データから計算される。駆動ユニット2を内燃機関エンジンとして構成する場合、基準エンジン回転数NEFF_REFが、特に内燃機関エンジンの1運転サイクルとシリンダ数とによってフィルタリングされ時間微分される。これにより、基準角加速度φ REFが得られる。
【0034】
エンジン回転数の取得可能な基準データNM_REFの品質に依存して、例えば、このような平均化が、基準データの算出中に既に実行された場合、又は、駆動ユニットが、電気モータとして構成されているときに、トルクが、回転によってほぼ均一に印加される場合は、1運転サイクルとシリンダ数とによる平均化が省略され得る。その後に、基準角加速度φREFが、駆動ユニット2(例えば、内燃機関エンジンのI)の既知の慣性Iと乗算され、基準補正トルクΔMM_REFが得られる。最後に、この基準補正トルクΔMM_REFが、基準実効トルクMEFF_REFと(内燃機関エンジンの場合は、内燃機関エンジンの1運転サイクルとシリンダ数とによって平均された基準実効トルクMEFF_REF_FILTと)加算される。当該算出から、駆動ユニット2を制御するために使用され得る目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLが得られる。
【0035】
同様に、取得可能な基準データの品質に依存して、例えば、このような平均化が、基準データの算出中に既に実行された場合、又は、(例えば電気モータとしての)駆動ユニット2の構成に依存して、内燃機関エンジンの1運転サイクルとシリンダ数とによる内部実効トルクMINT_EFF_SOLLの平均化が省略されてもよい。このような方法のための必要な測定データが取得可能でない場合、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLを、取得可能な基準データから算出するのと同様な方法が使用され得る。
【0036】
例えば、対応する駆動ユニット2を有する自動車の試験運転中に、車体を加速させるための必要なトルクが、測定される自動車加速度から計算され、当該試験運転のために必要な内部実効トルクMINT_EFFが、既知の慣性、ギヤ比等によって計算され、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLとして使用され得る。駆動ユニット2の目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLを、例えば内燃機関エンジンのエンジン制御装置(ECU)のような駆動ユニット制御装置の記憶されたデータから算出することも考えられる。代わりに、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLのための値が、上記のように基準試験の指標データから算出されてもよい。
【0037】
当該算出された目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLは、駆動ユニット2、例えば内燃機関エンジンをテストベンチ1で制御するために使用され得る。当該制御は、ブロックDによって示されている。このため、実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTが、上記のように試験運転中に、例えば監視手段10内で算出され得るか、又は内燃機関エンジンの場合はシリンダ圧力を検出する方法によっても検出され得る。このとき、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLと実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTとの間の偏差が、適切な制御器、例えば簡単なPI制御器によってテストベンチ1で補正され得る。
【0038】
しかし、当該制御は、フィードフォワード制御中に制御変数、例えばエンジン回転数N及び実効トルクMEFF又は内部実効トルクMINT_EFFに対する内燃機関エンジンのアクセルペダル位置α用の予め設定されている特性図KFを使用してもよい。このため、制御変数のフィードフォワード制御値、例えばアクセルペダル位置αが、実効トルクMEFF又はフィルタリングされた実効トルクMM_FILT)とエンジン回転数NM(又は包括的に言うと、駆動ユニットの回転数)とから成る特性図KFから算出される。このとき、制御器、特に駆動ユニット制御装置6が、制御器の制御変数を算出する。目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLと実際の内部実効トルクMINT_EFF_ISTとの間の偏差が、当該制御器に再度供給される。このとき、特性図KFの誤差から発生するより小さい偏差だけが、この制御器の制御変数によって補正される。
【0039】
したがって、駆動ユニット2用の制御変数が、フィードフォワード制御の制御変数と制御器の制御変数との和として公知の方法で得られる。このような特性図KFは、例えば静的なテストベンチ測定によって駆動ユニット2の関連する動作範囲内の異なる複数の動作点で算出され得る。内燃機関エンジンの場合、複数の静的な動作点が、例えばアクセルペダル位置αとエンジン回転数Nとによって設定され、連結シャフト3の実効トルクMEFFが、それぞれの動作点で測定され、特性図KF内に記憶される。慣性の動特性が存在しないので、静的な動作時の実効トルクMEFFは、内部実効トルクMINT_EFFに相当する。内部実効トルクMINT_EFFとエンジン回転数Nとに対して記録されたアクセルペダル位置αの特性図KFが得られるように、当該得られた特性図は変換される。
【0040】
基本的に、適切なあらゆる制御器が、制御器として使用され得る。当該制御器は、場合によっては公知の方法で特別仕様にパラメータ化される必要もあり、当該制御器は、特にハードウェア又はソフトウェアとして駆動ユニット制御装置6内に実装されている。
【0041】
本発明によれば、テストベンチ1にある駆動ユニット2の限定された制御動特性が、試験運転の実行時に考慮される。この場合、試験運転が、内部実効トルクMINT_EFFによって実行されるか又は連結シャフト3に作用する実効トルクMEFFによって実行されるかは重要でない。内部実効トルクMINT_EFFが使用される場合、この内部実効トルクMINT_EFFは、上記のように算出され使用され得る。実効トルクMEFFは、連結シャフト3で簡単に測定され得る。したがって、当該制御動特性の考慮は、内部実効トルクMINT_EFFの使用に依存せず、当該使用されるトルクに依存しない実行され得る。好適な構成では、試験運転が、内部実効トルクMINT_EFFによって実行され、駆動ユニット2の制御動特性が、以下で説明するようにテストベンチ1での試験運転の実行時に考慮される。
【0042】
当該制御動特性を考慮するため、駆動ユニット2の時間応答を補正する伝達関数UFが、駆動ユニット2の制御時に使用される。駆動ユニット2の時間応答は、主に制御区間(すなわち、制御変数の設定とトルクの立ち上がりとの間の全区間)の時間遅れを示し、当該制御変数に対する駆動ユニット2の遅延したトルクの立ち上がりを示し、例えば、アクセルペダル位置αの設定と内部実効トルクMINT_EFF(又は実効トルクMEFF)の遅延した上昇(又は降下)との間の期間を示す。
【0043】
電気モータの物理作用に起因して、当該電気モータは、一般に内燃機関エンジンよりも高い制御動特性を有する。それ故に、試験運転の実行時の制御動特性の考慮は、特に内燃機関エンジンの場合に有益である。何故なら、内燃機関エンジンが、その潜在的な物理プロセスに起因して、要求トルクに変換するための多大な時間、すなわち制御変数(例えば、アクセルペダル位置α)の予めの設定と実際のトルクの立ち上がりとの間の期間を必要とするからである。例えば、直噴式と排気過給とによる内燃機関エンジンは、過給圧力の立ち上げ、混合物生成、燃焼等のための十分な期間を必要とする。これに対して、電気モータでは、僅かな物理プロセスで済み、例えば磁場を生成するためには、遥かに短い期間しか必要とされない。
【0044】
簡単な構成では、伝達関数UFが、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLL(又は目標の実効トルクMEFF_SOLL)の値を時間軸上で所謂むだ時間Δtだけシフトできる。したがって、むだ時間Δtだけシフトされている目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLL_UH(又は目標の実効トルクMEFF_SOLL_UH)が得られる。当該事項は、図3a及び図3bにブロックCによって示されている。MINT_EFF_SOLL_UH(又はMEFF_SOLL_UH)が、制御のための目標値として使用され得る(ブロックD)。
【0045】
代わりに、付随する時間補正された制御変数、例えばアクセルペダル位置αが、伝達関数UFによって目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLL(又は目標の実効トルクMEFF_SOLL)と目標の回転数NMとから算出され得る。このため、図3cに示されているように、制御変数が、例えば、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLL(又は目標の実効トルクMEFF_SOLL)と目標の回転数Nとから成る特性図KFによって算出され得て、当該制御変数が、むだ時間Δtだけシフトされ得る。こうして時間シフトされている制御変数αUHが、内部実効トルクMINT_EFF又は実効トルクMEFFをフィードフォワード制御するために使用され得る。当該事項は、ブロックDによって示されている。
【0046】
この場合、むだ時間Δtは、最も簡単な場合には予め設定されている時間値又はパラメータ化された一定の時間値でもよい。しかし、理想的には、むだ時間Δtは、駆動ユニット2の動作点(トルク/回転数)に依存して規定され得る。このため、むだ時間Δtは、当該むだ時間Δtが駆動ユニットの回転数NMと駆動ユニット2の内部実効トルクMINT_EFF(Δt=f(N,MINT_EFF))又は実効トルクMEFF(Δt=f(N,MEFF))とに依存して記録されている特性図から算出され得る。このような特性図は、例えば、上記のテストベンチ1上での駆動ユニット2の測定によって算出され得るか、又は経験値から大まかに算出され得るか、又は同様な構成の基準駆動ユニットの測定から算出され得る。同様な構成の内燃機関エンジンは、例えば同様な特性変数、例えば同様な排気量、同じシリンダ数、同じ過給方式、同じ混合物生成等を有する内燃機関エンジンでもよい。
【0047】
上記の駆動ユニット2をテストベンチ1上で測定することによってむだ時間Δtを算出する場合、特に、駆動ユニット2のトルクの上昇に対する特性図と、駆動ユニット2のトルクの降下に対する特性図とがそれぞれ算出される。この場合、特に駆動ユニット2の選択された動作点で、内燃機関エンジンの制御変数、例えばアクセルペダル位置αの急激な変化又は電流の変化が、短いランプとして、内燃機関エンジンの場合は所謂αランプとして予め設定され、内部実効トルクMINT_EFF又は実効トルクMEFFの遅延応答までのむだ時間Δtが測定される。当該むだ時間Δtは、主に、駆動ユニット2のトルクの立ち上がりの時間遅れに対する目安である。当該むだ時間Δtのこの算出は、内部実効トルクMINT_EFF又は実効トルクMEFFの急激な上昇と急激な降下との双方に対してランプによって実行されなければならない。これにより、2つのむだ時間特性図が生成される。この場合、最大動特性が、駆動ユニット2によって要求されるように、当該ランプが急峻に選択されなければならない。しかし、駆動ユニット2の動作点に対するむだ時間Δtは、内部実効トルクMINT_EFF又は実効トルクMEFFの推移を分析することによって算出されてもよく、例えば、むだ時間Δtは、対応する動作点における内部実効トルクMINT_EFFの推移の勾配に依存して確定され得る。独立した測定が、むだ時間Δtを算出するために駆動ユニット2で実行され得ないか又は存在しないときに、この方法が特に選択される。
【0048】
しかし、伝達関数UFは、別の方法で任意に生成されてもよい。この場合、伝達関数UFは、通常の場合は内部実効トルクMINT_EFF又は実効トルクMEFFの関数、すなわちUF=f(MINT_EFF又はMEFF)である。特に、伝達関数UFは、駆動ユニット2の動作点の関数、すなわちUF=f(MINT_EFF又はMEFF)である。
【0049】
このとき、伝達関数UFとしてのむだ時間Δtの例で説明されるように、駆動ユニット2の時間応答(制御動特性)を考慮するため、内部実効トルクMINT_EFF又は実効トルクMEFFの予め設定されている目標値が、伝達関数UFによって補正される。
【0050】
試験運転を実行するため、予め設定されている目標値が、むだ時間Δtだけシフトされ、特に時間的に進みシフトされ、上記のように試験運転を実行するためにテストベンチ1で調整される。
【0051】
後続する絶対時間値のデータ点よりも大きい絶対時間値を有する全てのデータ点が消去されるように、対応するむだ時間Δtだけのシフト後に発生する、予め設定されている内部実効トルクMINT_EFF又は実効トルクMEFFの推移がさらに適合されてもよい。これにより、連続して上昇する時間ベクトルが生成される。その次のステップでは、ブロックDによって示された駆動ユニット2の制御をテストベンチ1で適切に実行するため、当該発生した目標値の推移が、駆動ユニットの基準回転数NEFF_REFの推移と一緒に共通の時間軸上に移動されなければならない。
【0052】
図4は、例えば内燃機関エンジンとして構成された駆動ユニット2の基準運転試験の測定によるグラフを示す。この場合、エンジン回転数の基準値NM_REFの推移が、一点鎖線として、連結シャフト3で発生する実効トルクの基準値MEFF_REFの推移が、実線として、アクセルペダル位置の基準値α_EFFの推移が、破線として時間tに対して描かれている。この例では、当該基準運転試験は、3回のギヤチェンジによる加速と引き続く減速とを伴う走行である。以下に、この基準運転試験に基づいて、本発明の方法の達成された改善点を例示する。基準運転試験が、試験すべき駆動ユニット2によって実行され得るか、又は別の基準駆動ユニットによって実行されてもよい。しかし、基準値は、別の情報源に由来するものでもよく、例えば法律で予め規定されている測定サイクルでもよい。説明を分かりやすくする目的のため、以下では、図4に示されているように、基準運転試験の時間t1と基準運転試験の時間t2との間の期間Z内の結果を説明する。
【0053】
図5は、従来のN/MEFFの制御方式による時間t1と時間t2との間の期間Z内の第1の試験運転の結果を示す。この場合、エンジン回転数Nが、負荷機械4の制御装置5を用いて制御され、連結シャフト3で発生する実効トルクMEFFが、駆動ユニット制御装置6を用いてアクセルペダル位置αの制御変数によって制御される。この場合、第1の試験運転の測定される実際値の推移が、図4から既知の基準運転試験の基準値の推移と対比されている。同様に、エンジン回転数の基準値NM_REFの推移が、一点鎖線として、連結シャフト3で発生する実効トルクの基準値MEFF_REFの推移が、実線として、アクセルペダル位置の基準値α_EFFの推移が、破線として描かれている。測定される実際値NM_IST、MEFF_IST及びα_ISTの対応する推移がそれぞれ、円い目印を有する。エンジン回転数Nは、テストベンチ1で非常に正確に調整され得ることが分かる。当該正確な調整は、適切な制御特性を有する高性能な負荷機械4に由来する。さらに、実効トルクMEFFの基準の推移と実際の推移とが、あまり一致していなく、アクセルペダル位置αの基準の推移と実際の推移とが、あまり一致していない。これは、冒頭で述べたように、内燃機関エンジンの慣性Iを介したエンジン回転数Nと実効トルクMEFFとの強い結び付きに由来する。
【0054】
図6は、本発明の制御方式N/MINT_EFFによる時間t1と時間t2との間の期間Z内の第2の試験運転の結果を示す。この場合、エンジン回転数Nが、負荷機械4の制御装置5を用いて制御され、内部実効トルクMINT_EFFが、駆動ユニット制御装置6を用いてアクセルペダル位置αの制御変数によって制御される。この場合、第2の試験運転の測定される実際値の推移が、図4から既知の基準運転試験の基準値の推移と対比されている。同様に、エンジン回転数の基準値NM_REFの推移が、一点鎖線として、連結シャフト3で発生する実効トルクの基準値MEFF_REFの推移が、実線として、アクセルペダル位置の基準値α_ISTの推移が、破線として描かれている。測定される実際値NM_IST、MEFF_IST及びα_ISTの対応する推移がそれぞれ、円い目印を有する。実効トルクMEFFの基準の推移と実際の推移とが、定性的により良好に一致していて、アクセルペダル位置αの基準の推移と実際の推移とが、定性的により良好に一致しているが、基準の推移と実際の推移との時間的なずれtvも認識可能であることが分かる。このずれtvは、主に内燃機関エンジンの伝達関数UFの説明されている時間応答、すなわち制御変数の信号と実際に測定可能なトルクの立ち上がりとの間のトルクの立ち上がりの時間遅れに由来する。説明されているように、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLが、以下に図7に基づいて説明されるようにむだ時間Δtだけ進みシフトされることによって、内燃機関エンジンの伝達関数UFの時間応答が考慮されることが有益である。
【0055】
図7は、本発明の制御方式N/MINT_EFFによる時間t1と時間t2との間の期間Z内の第3の試験運転の結果を示す。この場合、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLが、100msの一定のむだ時間Δtだけ進みシフトされる。この場合、エンジン回転数Nが、負荷機械4の制御装置5を用いて制御され、内部実効トルクMINT_EFFが、駆動ユニット制御装置6を用いてアクセルペダル位置αの制御変数によって制御される。この場合、第3の試験運転の測定される実際値の推移が、図4から既知の基準運転試験の基準値の推移と対比されている。同様に、エンジン回転数の基準値NM_REFの推移が、一点鎖線として、連結シャフト3で発生する実効トルクの基準値MEFF_REFの推移が、実線として、アクセルペダル位置の基準値α_REFの推移が、破線として描かれている。測定される実際値NM_IST、MEFF_IST及びα_ISTの対応する推移がそれぞれ、円い目印を有する。実効トルクMEFF及びアクセルペダル位置αの基準の推移と実際値の推移とが著しくより良好に一致することが分かる。この場合、実効トルクの実際値MEFF_ISTの推移時の上昇及びアクセルペダル位置の実際値α_ISTの推移時の上昇は、例えば、駆動ユニット制御装置6の使用される制御器が、むだ時間Δtだけ補正した目標値(目標トルクMINT_EFF_SOLL)によって、トルクの上昇中に一定の制御偏差を受けることに由来する。その結果、制御変数(アクセルペダル位置α)が、使用される制御器の積分(I)成分によって非常に増大する。この増大は、制御器の別のパラメータ化によって回避され得る。
【0056】
しかし、この効果は、フィードフォワード制御が内部実効トルクMINT_EFFを制御するために使用され、時間応答の補正が目標トルクMINT_EFF_SOLL(又はMEFF_SOLL)に使用されるのではなくて、フィードフォワード制御の制御変数のフィードフォワード制御値に使用されることによっても回避され得る。このため、アクセルペダル位置αのフィードフォワード制御値が、例えば特性図KFを用いて目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLと目標回転数NM_SOLLとから算出される。次いで、このフィードフォワード制御値(アクセルペダル位置α)が、むだ時間Δtだけシフトされる。このとき、内部実効トルクMINT_EFFが、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLの補正なしに駆動ユニット制御装置6によって制御され(図3c参照)、当該むだ時間Δtだけシフトされたフィードフォワード制御値(アクセルペダル位置α)は、駆動ユニット制御装置6の制御器の制御出力に加算される。その結果が、図8に示されていて、実効トルクの実際値MEFF_ISTとアクセルペダル位置の実際値MEFF_ISTとの推移時に、上昇が発生しないことが認識される。しかし、代わりに、目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLが、伝達関数UFによって補正され、フィードフォワード制御値が、特性図KFを用いて当該補正された目標トルクMINT_EFF_SOLLと目標回転数NM_SOLLとから算出されてもよい。
【0057】
本発明の特に好適な構成によれば、内部実効トルクMINT_EFF_SOLLが、駆動ユニット2の動作点に依存して選択されるむだ時間Δtだけシフトされる。したがって、実効トルクMEFF及びアクセルペダル位置αの基準の推移と実際値の推移との一致度がさらに改善され得る。このため、上記のように、動作点に依存する特性図が、むだ時間Δtのために作成され得る。当該特性図は、図3に基づいて既に説明したように、例えば駆動ユニット2をテストベンチ1上で事前に測定することによって算出され得る。
【0058】
事前の測定が可能でない場合、駆動ユニット2の動作点におけるむだ時間Δtが、例えば目標の内部実効トルクMINT_EFF_SOLLの推移の勾配に依存して当該対応する動作点ごとに算出されてもよい。しかし、図7の第3の試験運転の結果に基づいて説明したように、一定のむだ時間Δtが、近似的に選択されてもよい。当然に、むだ時間Δtのための特性図を、経験値に基づいて又は基準の駆動ユニットの測定に基づいて作成することも可能である。これに関しては、基準の内燃機関エンジンは、例えば構造的に類似する内燃機関エンジンでもよく、例えば、同様な排気量、同じシリンダ数、同じ過給概念、同じ混合生成物等のような匹敵する特性変数を有する内燃機関エンジンでもよい。これに関してさらに指摘すると、本発明の方法を内燃機関エンジンに基づいて例示したが、当該方法は、別の駆動ユニット2、例えば電気モータ、ハイブリッド駆動装置、パワートレイン等に対しても適する。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る:
1.
駆動ユニット(2)を駆動させるか又は駆動ユニット(2)に負荷を印加するために連結シャフト(3)を用いて負荷機械(4)に接続される前記駆動ユニット(2)によって試験運転を実行するためのテストベンチ(1)を作動させるための方法であって、
前記テストベンチ(1)にある前記負荷機械(4)が、前記試験運転を実行するために制御装置(5)によって制御され、前記駆動ユニット(2)が、前記試験運転を実行するために駆動ユニット制御装置(6)によって制御され、
前記駆動ユニット(2)の回転数の予め設定されている時間推移とトルクの予め設定されている時間推移とが、前記試験運転を実行するためにシミュレートされる当該方法において、
内部実効トルク(M INT_EFF_SOLL )に対する目標値又は実効トルク(M EFF_SOLL )に対する目標値が予め設定され、前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )に対する実際値又は前記実効トルク(M EFF_IST )に対する実際値が、前記駆動ユニット(2)の駆動中に前記テストベンチ(1)で算出されることによって、前記駆動ユニット(2)の前記内部実効トルク(M INT_EFF )又は前記実効トルク(M EFF )が、前記駆動ユニット制御装置(6)によって制御されること、及び
当該制御の前記目標値が、伝達関数(UF)によって補正されることによって、当該制御時の前記駆動ユニット(2)の制御動特性が、前記伝達関数(UF)によって考慮されること、又は
前記駆動ユニット(2)の制御変数のフィードフォワード制御が、前記駆動ユニット(2)の前記内部実効トルク(M INT_EFF )又は前記実効トルク(M EFF )を制御するために使用され、前記制御変数のフィードフォワード制御値又は当該制御の目標値が、前記伝達関数(UF)によって補正される当該方法。
2.
実際の前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )は、前記負荷機械(4)又は前記駆動ユニット(2)又は前記駆動シャフト(3)で測定される実際の回転数(N IST )と、前記負荷機械(4)又は前記駆動ユニット(2)又は前記駆動シャフト(3)で測定される実際の実効トルク(M EFF_IST )と、前記駆動ユニット(2)の既知の慣性(I )とから算出されること、又は
実際の前記実効トルク(M EFF_IST )は、測定によって前記駆動シャフト(3)で検出される上記1に記載の方法。
3.
当該測定された実際の回転数(N IST )が、時間微分され、前記駆動ユニットの前記既知の慣性(I )と乗算され、その積が、当該測定された実際の実効トルク(M EFF_IST )に加算されることによって、実際の前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )が算出される上記2に記載の方法。
4.
内燃機関エンジンが、駆動ユニット(2)として使用されること、及び
前記実際の前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )が、シリンダ圧力を検出する方法によって内燃機関エンジンで検出される上記1に記載の方法。
5.
実際の前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )は、検出された実際のトルク(M INDI_IST )と摩擦トルク(M )との間の差から算出され、当該検出された実際のトルク(M INDI_IST )は、前記シリンダ圧力を検出する方法によって検出される上記4に記載の方法。
6.
目標の前記内部実効トルク(M INT_EFF_SOLL )は、前記駆動ユニット(2)の回転数の予め設定されている推移と、前記駆動ユニット(2)のトルクの予め設定されている推移と、前記駆動ユニット(2)の既知の慣性(I )とから算出される上記1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.
当該予め設定されている回転数の推移が、時間微分され、前記駆動ユニット(2)の前記既知の慣性(I )と乗算され、その積が、前記駆動ユニット(2)のトルクの当該予め設定されている推移に加算されることによって、目標の前記内部実効トルク(M INT_EFF_SOLL )が算出される上記6に記載の方法。
8.
アクセルペダル位置(α)が、制御変数として使用される上記1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.
前記制御変数のフィードフォワード制御値が、回転数、特に実際の回転数(N IST )又は予め設定されている回転数と、目標トルク、特に目標の内部実効トルク(M INT_EFF_soll )、目標の実効トルク(M EFF_soll )、前記伝達関数(UF)によって補正された目標の内部実効トルク(M INT_EFF_soll_UH )又は前記伝達関数(UF)によって補正された目標トルク(M EFF_soll_UH )とから算出され、特に特性図KFから算出される上記1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.
当該制御の前記目標値又は前記制御変数のフィードフォワード制御値が、前記伝達関数(UF)によって時間軸上でむだ時間(Δt)だけシフトされる上記1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.
前記むだ時間(Δt)は、前記駆動ユニット(2)の全ての動作点に対して同じ大きさに確定される上記10に記載の方法。
12.
前記むだ時間(Δt)は、前記駆動ユニット(2)の動作点に依存して確定される上記10に記載の方法。
13.
前記駆動ユニット(2)の1つの動作点に対するむだ時間(Δt)は、この動作点における目標の内部実効トルク(M INT_EFF_SOLL )又は目標の実効トルク(M EFF_SOLL )の推移の勾配に依存して確定される上記12に記載の方法。
14.
前記むだ時間(Δt)は、前記駆動ユニット(2)又は基準駆動ユニットを前記テストベンチ(1)上で測定することによって算出される上記11~13のいずれか1つに記載の方法。
15.
前記駆動ユニット(2)の制御変数が急激に変化され、当該制御変数の急激な変化と当該急激な変化によって引き起こされた実際の前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )の変化との間の期間が測定されることによって、前記むだ時間(Δt)が測定される上記14に記載の方法。
16.
駆動ユニット(2)を駆動させるか又は駆動ユニット(2)に負荷を印加するために連結シャフト(3)を用いて負荷機械(4)に接続されている前記駆動ユニット(2)によって試験運転を実行するためのテストベンチ(1)であって、
前記試験運転を実行するために前記テストベンチ(1)にある前記負荷機械(4)を制御する制御装置(5)が設けられていて、前記試験運転を実行するために前記駆動ユニット(2)を制御する駆動ユニット制御装置(6)が設けられていて、
前記テストベンチ(1)は、前記駆動ユニット(2)の回転数の予め設定されている時間推移及びトルクの予め設定されている時間推移として前記試験運転を実行するために設けられている当該テストベンチ(1)において、
前記駆動ユニット制御装置(6)は、前記駆動ユニット(2)の前記内部実効トルク(M INT_EFF )又は前記実効トルク(M EFF )を制御し、この駆動ユニット制御装置(6)は、当該制御のために内部実効トルク(M INT_EFF_SOLL )に対する目標値又は実効トルク(M EFF_SOLL )に対する目標値を取得し、この駆動ユニット制御装置(6)は、前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )に対する実際値又は前記実効トルク(M EFF_IST )に対する実際値を前記駆動ユニット(2)の駆動中に前記テストベンチ(1)で算出すること、及び
前記駆動ユニット(2)の制御動特性を考慮するため、前記駆動ユニット制御装置(6)は、当該制御のために当該制御の目標値を伝達関数(UF)によって補正すること、又は
前記駆動ユニット(2)の制御変数のフィードフォワード制御が、前記駆動ユニット(2)の前記内部実効トルク(M INT_EFF )又は前記実効トルク(M EFF )を制御するために設けられていて、前記制御変数のフィードフォワード制御値又は当該制御の目標値が、前記駆動ユニット制御装置(6)によって前記伝達関数(UF)を用いて補正されることを特徴とするテストベンチ(1)。
17.
前記テストベンチ(1)は、前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )の実際値を算出するために監視手段(10)をハードウェア又はソフトウェアとして有する上記16に記載のテストベンチ(1)。
18.
前記監視手段(10)は、実際の前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )を、前記負荷機械(4)又は前記駆動ユニット(2)又は前記駆動シャフト(3)で測定される実際の回転数(N IST )と、前記負荷機械(4)又は前記駆動ユニット(2)又は前記駆動シャフト(3)で測定される実際の実効トルク(M EFF_IST )と、前記駆動ユニット(2)の既知の慣性(I )とから算出さるために設けられている上記17に記載のテストベンチ(1)。
19.
内燃機関エンジンが、駆動ユニット(2)として設けられていること、及び
シリンダ圧力検出装置が、前記内燃機関エンジンのシリンダ圧力を検出するために前記テストベンチ(1)に設けられていて、前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )が、前記シリンダ圧力を検出する方法から検出される上記16に記載のテストベンチ(1)。
20.
実際の前記内部実効トルク(M INT_EFF_IST )は、検出された実際のトルク(M INDI_IST )と摩擦トルク(M )との間の差から算出され、当該検出された実際のトルク(M INDI_IST )は、前記シリンダ圧力を検出する方法によって検出される上記19に記載のテストベンチ(1)。
【符号の説明】
【0059】
1 テストベンチ
2 駆動ユニット
3 連結シャフト
4 負荷機械
5 制御装置
6 駆動ユニット制御装置
7 回転数測定装置
8 回転数制御装置
9 トルク測定装置
10 監視手段
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図8