(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】接着剤調合物
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20230905BHJP
C09J 133/12 20060101ALI20230905BHJP
C09J 175/02 20060101ALI20230905BHJP
C09J 163/02 20060101ALI20230905BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230905BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J133/12
C09J175/02
C09J163/02
C09J11/04
C09J175/08
(21)【出願番号】P 2020536487
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 US2018043029
(87)【国際公開番号】W WO2019055129
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-07-19
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】520082968
【氏名又は名称】ディーディーピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス エイト,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ピウォワル、アラン エム.
(72)【発明者】
【氏名】クナイゼル、アンドリュー アール.
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、リーロン
(72)【発明者】
【氏名】ゴールデン、マイケル アール.
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-306345(JP,A)
【文献】特開平04-018328(JP,A)
【文献】特開平08-109247(JP,A)
【文献】特表2018-530643(JP,A)
【文献】特表2015-518063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)30~70重量%のエポキシベースの接着性ポリマー
樹脂組成物と;
(II)0.1~3重量%のリン元素含有化合物と
を含む接着剤組成物
であって、
前記エポキシベースの接着性ポリマー樹脂組成物が、(a)硬化性エポキシ化合物又は2種以上の硬化性エポキシ化合物の組み合わせと;(b)35,000以下の数平均分子量、少なくとも1,000原子質量単位の重量を有する少なくとも1つのポリエーテル及び/又はジエンゴムセグメント、及びキャップされたイソシアネート基を有する、1種以上の反応性ウレタン基含有及び/又は尿素基含有ポリマーと、(c)少なくとも1種のエポキシ硬化触媒と、(d)硬化剤とを含む混合物であり、
前記リン元素含有化合物が、ホスホエチルメタクリレートモノエステルと、ホスホエチルメタクリレートジエステルと、リン酸と、メチルメタクリレートとの混合物である、
前記接着剤組成物。
【請求項2】
前記
硬化性エポキシ化合物がビスフェノールAジグリシジルエーテルである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記エポキシベースの接着性ポリマー
樹脂組成物の量が
、40重量パーセント
~60重量パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、金属基材を接合するためのエポキシベースの構造用接着剤調合物に関する。
【背景技術】
【0002】
耐食性又は腐食抑制は、金属基材が要素に曝されるであろう場合にとりわけ示すべき金属基材にとっての重要な特性である。アルミニウム(Al)は、一般に、自動車産業において自動車の製造に使用され;典型的には、アルミニウム金属は、自動車の製造中に別の基材に接着剤で接合される。接着強度に加えて、耐食性(又は腐食抑制)は、構造用接着剤調合物へ組み込まれるよう自動車産業によって望まれる重要な特性である。車両の長い耐用年数は、接着剤が長年接合を維持することを要求する。この時間中に、車両及び接着剤は、温度の変化に並びに水、油、塩、ほこり及び他の汚染物質に曝される。これらの条件は、接着剤を弱体化し得る。したがって、例えばアルミニウムなどの金属基材を他の金属又は他の似ていない基材に接合するために、増加した耐食性を提供する接着剤調合物が、例えば自動車産業において使用するのに非常に望ましい。
【0003】
M.Witten and C.-T.Lin,「Coating Performance of Polyester-Melamine Enamels Catalyzed by an in Situ Phosphatizing Reagent on Aluminum」,Ind.Eng.Chem. Res.,vol.38,pp.3903-3910,1999;並びにH.Neuder,C.Sizemore,M.Kolody,R.Chiang and C.-T.Lin,「Molecular design of in situ phosphatizing coatings(ISPCs)for aerospace primers」,Progress in Organic Coatings,vol.47,pp.225-232、2003に記載されているように、有機ホスフェート又は無機ホスフェートが使用される場合に耐食性及び接着強度改善が金属基材上の有機コーティングについて得ることができることは、業界では既に公知である。上記の参考文献において、用語その場リン酸化(ISP)は、コーティング調合物の耐食性を増加させるためのプロセスを記載するために用いられる。このISPプロセスはまた、「Additive package for in situ phosphatizing paint,paint and method」という表題の、及び1994年6月21日に供与された、C.-T.Linによる米国特許第5,322,870号明細書にも記載されている。上記の参考文献の全ては、参照により本明細書に援用される。上記の参考文献は、軟鋼上のペイントにおけるその場リン酸化試薬(ISPR)を研究することを指向している。上記のM.Witten及びC.-T.Lin参考文献はまた、アルミニウム上のポリエステル-メラミンエナメルコーティングへのISPR(例えばアリールホスホン酸)の添加が、塩水浸漬試験後に対照と比べて接着強度を改善したことを示している。
【0004】
いくつかの特許及び学術論文は、耐食性が有機及び無機ホスフェートの使用で改善できることを示している。例えば、米国特許第5,191,029号明細書は、水溶性多価金属化合物を含有するリン含有ポリマー組成物の使用を記載している。上記の特許は、「改善された耐溶剤性、耐化学薬品性、耐印刷性、耐食性及び金属への接着性を与えるための(a)ペンダント及び/又は末端リン基…を含有する1種以上のポリマーを含むポリマー組成物」を教示している。
【0005】
例えば、米国特許第7,297,748 B2号明細書は、耐食性を改善するためにリン酸及び有機ホスフェートのいくらかの便益が存在することを示している。上記の特許は、接着性及び耐食性を改善するためのリン酸化モノマーとともにアクリルポリオールを含有するダイレクト・ツー・メタルコーティングを記載している。上記の特許は、高級モノエステルポリアルキレンオキシドアクリレートホスフェートエスエルとポリイソシアネートとを含む二液型アプローチの使用を記載している。
【0006】
金属及び他の基材に強く接合し、且つ、良好な耐食性を示すワンパート構造用エポキシ接着剤を提供することが非常に望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、増加した金属基材耐腐食性を提供する接着剤組成物を、及び低レベルのリン元素含有(PEC)添加物を接着剤組成物に組み込むことによって接着剤組成物の耐腐食性を増加させる方法を指向する。
【0008】
本発明の一実施形態は、(I)エポキシベースの接着性ポリマー樹脂組成物と;(II)PEC化合物とを含む一液型接着剤組成物を指向する。1つの好ましい実施形態において、エポキシベースの接着性ポリマーは、(a)硬化性エポキシ化合物又は2つ以上の硬化性エポキシ化合物の組み合わせと;(b)35,000以下の数平均分子量、少なくとも1,000原子質量単位の重量を有する少なくとも1つのポリエーテル及び/又はジエンゴムセグメント、及びキャップされたイソシアネート基を有する1種以上の反応性ウレタン基含有及び/又は尿素基含有ポリマーと、(c)少なくとも1種のエポキシ硬化触媒と、(d)硬化剤とを含む組成物又は混合物であることができる。
【0009】
本発明の別の実施形態は、上記の接着剤組成物の製造方法を指向する。
【0010】
本発明の更に別の実施形態は、接着剤組成物の耐腐食性を増加させる方法を指向する。
【0011】
そして本発明のその上別の実施形態は、金属基材上記の構造用接着剤組成物に接合する方法を指向する。
【0012】
本発明の一目的は、アルミニウム又は接着剤の初期製品特性を変えることなしに、エポキシベースの構造用接着剤に結合したアルミニウム基材について耐食性を改善することによって金属接着剤に有用な改善された製品を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】2つの光学像(最上部列A)及び4つの電子顕微鏡写真(中央列B及び底部列C)を含む、ラップせん断試験後の露出アルミニウム表面を示す試験サンプルの一連の画像である。
【
図2】2つの光学像(最上部列A)及び4つの電子顕微鏡写真(中央列B及び底部列C)を含む、ラップせん断試験後の露出アルミニウム表面を示す試験サンプルの一連の画像である。
【
図3】PEC化合物での処理前(左欄I)及びPEC化合物での処理後(右欄II)のアルミニウム試験サンプルの研磨表面を示す一連の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1つの一般的な実施形態において、本発明は、(I)エポキシベースの接着性ポリマー樹脂組成物と;(II)リン元素含有化合物(PEC)とを含む接着剤組成物を含む。
【0015】
本発明に有用な、エポキシベースの接着性ポリマー組成物、構成成分(I)は、少なくとも以下の構成成分:(a)硬化性エポキシ化合物又は2つ以上の硬化性エポキシ化合物の組み合わせと;(b)35,000以下の数平均分子量、少なくとも1,000原子質量単位の重量を有する少なくとも1つのポリエーテル及び/又はジエンゴムセグメント、及びキャップされたイソシアネート基を有する1種以上の反応性ウレタン基含有及び/又は尿素基含有ポリマーと、(c)少なくとも1種のエポキシ硬化触媒と、(d)硬化剤とを含有する硬化性ポリマー組成物を含む。
【0016】
本発明に有用なエポキシベースの接着性ポリマー樹脂組成物は、硬化性エポキシ化合物及び2種以上の硬化性エポキシ化合物の組み合わせを含み得る。本発明に有用な、役立つエポキシ樹脂は、液体、固体、及びそれらの混合物を含む。エポキシ化合物は、単量体である(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ノボラックベースのエポキシ樹脂、及びトリス-エポキシ樹脂);より高い分子量の樹脂(例えば、ビスフェノールAで進展させられた(advanced)ビスフェノールAのジグリシジルエーテル);又はホモポリマーに若しくはコポリマーに重合する不飽和モノエポキシド(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等)であることができるエポキシ樹脂である。エポキシ化合物は、平均して、1分子当たり少なくとも1個のペンダント又は末端1,2-エポキシ基(すなわち、ビシナルエポキシ基)を含有する。本発明に使用され得る固体エポキシ樹脂は、主として、ビスフェノールAをベースとする。本発明に有用な、好ましい固体エポキシ樹脂としては、Olin Corporationから商業的に入手可能な、例えばD.E.R. 664 UE固体エポキシなどのビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。本発明に有用な、他の好適なエポキシ樹脂としては、全てOlinから商業的に入手可能な、例えば、D.E.R. 331、D.E.R.332、D.E.R. 383、D.E.R. 431及びD.E.R.736が挙げられ得る。
【0017】
接着剤は、少なくとも1種のエポキシ樹脂、非ゴム変性であり、且つ、非リン変性である構成成分(a)を含有する。「非ゴム変性」とは、硬化前に、エポキシ樹脂が、以下に記載されるようにゴムに化学結合していないことを意味する。「非リン変性」とは、接着剤を硬化させる前に、エポキシ樹脂が、リン酸、ポリリン酸、リン酸塩若しくはポリリン酸塩、又はリン酸エステル若しくはポリリン酸エステルと反応して、樹脂構造中へ次の構造:
【化1】
を有する1つ以上の部分を導入していないことを意味する。
【0018】
単一の非ゴム変性の、非リン変性エポキシ樹脂のみが存在する場合、エポキシ樹脂は、23度摂氏(℃)で液体である。2種以上の非ゴム変性の、非リン変性エポキシ樹脂が存在する場合、混合物内の個々のエポキシ樹脂はそれら自体23℃で固体であってもよいが、それらの混合物は、23℃で液体である。
【0019】
参照により本明細書に援用される、米国特許第4,734,332号明細書の2欄66行~4欄24行において記載されているようなものなどの、広範囲のエポキシ樹脂を、非ゴム変性の、非リン変性エポキシ樹脂として使用することができる。エポキシ樹脂は、1分子当たり平均少なくとも1.8個、好ましくは少なくとも2.0個のエポキシド基を有するべきである。エポキシ当量は、例えば、75~350、140~250及び又は150~225であり得る。非ゴム変性の、非リン変性エポキシ樹脂の混合物が存在する場合、混合物は、平均少なくとも1.8個、好ましくは少なくとも2.0個のエポキシ官能性、及び前文章におけるようなエポキシ当量を有するべきであり、より好ましくは混合物中の各エポキシ樹脂は、そのようなエポキシ官能性及びエポキシ当量を有する。
【0020】
本発明に有用な、好適な非ゴム変性の、非リン変性エポキシ樹脂としては、例えばレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシルフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK及びテトラメチルビフェノールなどの多価フェノール化合物のジグリシジルエーテル;例えばC2~24アルキレングリコールなどの脂肪族グリコールのジグリシジルエーテル;フェノール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂(エポキシノボラック樹脂)、アルキル置換フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール-ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル;並びにそれらの任意の2種以上の任意の組み合わせが挙げられる。
【0021】
本発明に有用な、好適なエポキシ樹脂としては、呼称D.E.R.(登録商標)330、D.E.R. 331、D.E.R.332、D.E.R.383、D.E.R.661及びD.E.R.662樹脂でOlin Corporationによって販売されているものなどの、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル樹脂が挙げられる。
【0022】
エポキシノボラック樹脂をまた、本発明に使用することができる。そのようなエポキシノボラック樹脂としては、例えば、Olin Corporationから商業的に入手可能であるD.E.N.(登録商標)354、D.E.N. 431、D.E.N.438及びD.E.N. 439が挙げられる。
【0023】
本発明に有用な、他の好適な非ゴム変性の、非リン変性エポキシ樹脂は、脂環式エポキシドである。脂環式エポキシドは、下記の構造:
【化2】
(式中、Rは、脂肪族、脂環式及び/又は芳香族基であり、nは、1~10、好ましくは2~4の数である)
によって例示されるように、炭素環中の2つのビシナル原子に結合したエポキシ酸素(O)を有する飽和炭素環を含む。nが1である場合、脂環式エポキシドは、モノエポキシドである。nが2以上である場合、ジエポキシド又はポリエポキシドが形成される。モノエポキシド、ジエポキシド及び/又はポリエポキシドの混合物を使用することができる。参照により本明細書に援用される、米国特許第3,686,359号明細書に記載されているような脂環式エポキシ樹脂が、本発明で使用され得る。特に興味のある脂環式エポキシ樹脂は、(3,4-エポキシシクロヘキシル-メチル)-3,4-エポキシ-シクロヘキサンカルボキシレート、ビス-(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノオキシド及びそれらの混合物である。
【0024】
本発明に有用な、他の好適なエポキシ樹脂としては、米国特許第5,112,932号明細書に記載されているようなオキサゾリドン含有化合物が挙げられる。加えて、例えばD.E.R.592及びD.E.R. 6508として商業的に販売されているものなどの進展させられたエポキシ-イソシアネートコポリマーを使用することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、非ゴム変性の、非リン変性エポキシ樹脂は、225以下のエポキシ当量を有するビスフェノールの第1ジグリシジルエーテルと、225超~750のエポキシ当量を有するビスフェノールの第2ジグリシジルエーテルとを含む。混合物がその温度で液体であるという条件で、第1ジグリシジルビスフェノールエーテルは、23℃でそれ自体液体であってもよいし、第2ジグリシジルビスフェノールエーテルは、23℃でそれ自体固体であってもよい。これらのそれぞれは、示されるようなエポキシ当量を得るために部分的に進展させられていてもよい、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテルであってもよい。
【0026】
構成成分(a)は、接着剤の総重量の少なくとも20重量パーセント(重量%)、少なくとも30重量%又は少なくとも40重量%を構成し得るし、接着剤の総重量の80重量%以下、70重量%以下又は60重量%以下を構成し得る。
【0027】
構成成分(b)は、35,000以下の数平均分子量、少なくとも1,000原子質量単位の重量を有する少なくとも1つのポリエーテル又はジエンゴムセグメント、及びキャップされたイソシアネート基を有する1種以上の反応性ウレタン基含有及び/又は尿素基含有ポリエーテルである。有用なそのような物質は、例えば、米国特許第5,202,390号明細書、同第5,278,257号明細書、国際公開第2005/118734号パンフレット、同第2007/003650号パンフレット、同第2012/091842号パンフレット、米国特許出願公開第2005/0070634号明細書、同第2005/0209401号明細書、同第2006/0276601号明細書、欧州特許出願公開第A-0 308 664号明細書、同第A-1 498 441号明細書、同第A-1 728 825号明細書、同第A-1 896 517号明細書、同第A-1 916 269号明細書、同第A-1 916 270号明細書、同第A-1 916 272号明細書及び同第A-1 916 285号明細書に記載されており、それらの全ては、参照により本明細書に援用される。
【0028】
構成成分(b)は、好都合には、イソシアネート末端ポリエーテル及び/又はジエンゴムを形成する工程と、イソシアネート基をフェノール又はポリフェノールでキャップする工程とを含むプロセスで製造される。イソシアネート末端ポリエーテル及び/又はジエンゴムは、好都合には、ヒドロキシル末端若しくはアミン末端ポリエーテル、ヒドロキシル末端若しくはアミン末端ジエンゴム、又は両方の混合物を、過剰のポリイソシアネートと反応させてウレタン又は尿素基及び末端イソシアネート基を有する付加体を生成することによって製造される。必要に応じて、イソシアネート末端ポリエーテル及び/又はジエンゴムは、キャッピング反応を行うと同時に又は行う前に鎖延長する及び/又は分岐化することができる。
【0029】
イソシアネート末端ポリエーテル又はイソシアネート末端ジエンポリマーは、芳香族又は脂肪族イソシアネート基を有することができる。この物質を調製するのに使用されるポリイソシアネートは、好ましくは、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基及び1分子当たり300グラム(g/モル)以下の分子量を有する。ポリイソシアネートは、例えばトルエンジイソシアネート又は2,4’-及び/若しくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、又は例えばイソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化トルエンジイソシアネート、水素化メチレンジフェニルイソシアネート(H12MDI)などの脂肪族ポリイソシアネートであり得る。
【0030】
ヒドロキシル末端又はアミン末端ポリエーテルは、テトラヒドロフラン(テトラメチレンオキシド)、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの1つ以上のポリマー又はコポリマーであってもよく、ポリマー又はコポリマーの総重量を基準として、少なくとも70重量%の、テトラヒドロフラン、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド及び1,2-プロピレンオキシドのポリマー又はコポリマーが好ましい。ポリマー又はコポリマーの総重量を基準として、少なくとも80重量%のテトラヒドロフランのポリマーが、とりわけ好ましい。出発ポリエーテルは、好ましくは、1分子当たり2~3個、より好ましくは2個のヒドロキシル基及び/又は第一級若しくは第二級アミノ基を有する。出発ポリエーテルは、好ましくは900~8,000、より好ましくは1,500~6,000又は1,500~4,000の数平均分子量を有する。
【0031】
ヒドロキシル末端又はアミン末端ジエンポリマーは、好ましくは、ポリイソシアネートとの反応の前に、-20℃以下、好ましくは-40℃以下のガラス転移温度を有する。ジエンポリマーは、共役ジエンの液体ホモポリマー又はコポリマー、とりわけジエン/ニトリルコポリマーである。共役ジエンは、好ましくは、ブタジエン又はイソプレンであり、とりわけブタジエンが好ましい。好ましいニトリルモノマーは、アクリロニトリルである。好ましいコポリマーは、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマーである。ゴムは、好ましくは、凝集体中に、30重量%以下の重合不飽和ニトリルモノマー、好ましくは約26重量%以下の重合ニトリルモノマーを含有する。ヒドロキシル末端又はアミン末端ジエンポリマーは、好ましくは、1分子当たり1.8~4個、より好ましくは2~3個のヒドロキシル基及び/又は第一級若しくは第二級アミノ基を有する。出発ジエンポリマーは、好ましくは900~8,000、より好ましくは1,500~6,000、更により好ましくは2,000~3,000の数平均分子量を有する。
【0032】
イソシアネート末端ポリマーは、好都合には、出発ポリエーテル又はジエンゴム上のヒドロキシル基及び/又は第一級若しくは第二級アミノ基の1当量当たり、少なくとも1.5当量、好ましくは1.8当量~2.5当量又1.9当量~2.2当量のポリイソシアネートの比での、前述のポリイソシアネートと、ヒドロキシル末端若しくはアミン末端ポリエーテル及び/又はヒドロキシル末端若しくはアミン末端ジエンゴムとの反応によって調製される。
【0033】
イソシアネート末端ポリマーを生成するための反応は、任意選択的に、イソシアネート基とポリエーテル又はジエンポリマーのイソシアネート反応性基との反応のための触媒の存在下で、出発ポリエーテル及び/又はジエンゴムをポリイソシアネートと組み合わせ、60℃~120℃に加熱することによって行うことができる。イソシアネート含有量が一定値に若しくは目標値に減少するまで、又は出発ポリエーテル若しくはジエンポリマーのアミノ基及び/若しくはヒドロキシル基が消費されるまで反応は続行される。
【0034】
必要に応じて、出発ポリエーテル又はジエンポリマーとポリイソシアネートとの間の反応へ、又はその後の工程で分岐剤を添加することによって分岐を行うことができる。本発明の目的のためには、分岐剤は、599以下、好ましくは50~500の分子量と、1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基、第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリオール又はポリアミン化合物である。仮にも使用される場合、分岐剤は、一般に、分岐剤と出発ポリエーテル又はジエンポリマーとの総合重量の10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更により好ましくは2重量%以下を構成する。本発明に有用な分岐剤の例としては、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン、トリメチロールエタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、スクロース、ソルビトール、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのポリオール、並びに599以下、とりわけ500以下の数平均分子量を有するそれらのアルコキシレートが挙げられる。
【0035】
鎖延長は、必要に応じて、i)イソシアネート末端ポリエーテル及び/若しくはジエンポリマーを形成する反応へ鎖延長剤を組み込むこと、又はii)イソシアネート末端ポリエーテル及び/若しくはジエンポリマーを、キャッピング工程を行う前に若しくは行いながら鎖延長剤と反応させることによって行うことができる。本発明に有用な鎖延長剤としては、749以下、好ましくは50~500の分子量、並びに1分子当たり2個のヒドロキシル基、第一級アミノ及び/又は第二級アミノ基を有するポリオール又はポリアミン化合物が挙げられる。本発明に有用な、好適な鎖延長剤の例としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオール;例えばエチレンジアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミンなどの脂肪族又は芳香族ジアミン、並びに例えばレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールM、テトラメチルビフェノール及びo,o’-ジアリル-ビスフェノールAなどの2個のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。これらの化合物の中でも、2個のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物が好ましい。
【0036】
イソシアネート末端ポリエーテル又はジエンポリマーのイソシアネート基は、キャッピング剤との反応によってキャップされる。本発明に有用な、好適なキャッピング剤は、例えば、参照により本明細書に援用される、国際公開第2017/044359号パンフレットに記載されており、以下に更に記載されるような様々なモノ-及びポリフェノール、並びに様々なアミン化合物、ベンジルアルコール、ヒドロキシ官能性アクリレート又はメタクリレート化合物、チオール化合物、例えばアセトアミドなどの少なくとも1個のアミン水素を有するアルキルアミド化合物、及びケトキシム化合物を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、少なくとも90%のイソシアネート基、より好ましくは少なくとも95%のイソシアネート基は、モノフェノール又はポリフェノールでキャップされる。本発明に有用なモノフェノールの例としては、フェノール、それぞれ1個の炭素原子~30個の炭素原子を含有し得る1個以上のアルキル基を含有するアルキルフェノール、ハロゲン化フェノール、カルダノール、又はナフトールが挙げられる。本発明に有用な、好適なポリフェノールは、1分子当たり2個以上、好ましくは2個のフェノール性ヒドロキシル基を含有し、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールM、テトラメチルビフェノール及びo,o’-ジアリル-ビスフェノールA、並びにそれらのハロゲン化誘導体が挙げられる。そのような実施形態において、10%以下、好ましくは最大でも5%のイソシアネート基が、例えば上に述べられたものなどの他のキャッピング剤でキャップされてもよい。
【0038】
キャッピング反応は、任意選択的に、イソシアネート基とキャピング剤のイソシアネート反応性基との反応のための触媒の存在下において、既に記載された一般的な条件下に、すなわち、記載される比で物質を組み合わせ、それらを室温又は例えば60~120℃などの高温で反応させることによって行うことができる。反応は、イソシアネート含有量が、好ましくは、0.1重量%未満である、一定値に減少するまで続行される。イソシアネート基の3%未満、好ましくは1%未満は、キャップされないままであり得る。
【0039】
キャッピング反応は、同時に、又は別個のキャッピング工程として行うことができ、イソシアネート末端ポリエーテル及び/又はジエンポリマーが形成される。
【0040】
結果として生じる構成成分(b)物質は、1,000以上の分子量を表すそれらのピークのみを考慮して、GPCによって測定されるように、好適には、少なくとも3,000、好ましくは少なくとも4,000、約35,000まで、好ましくは約20,000まで、より好ましくは約15,000までの数平均分子量を有する。
【0041】
構成成分(b)の多分散性(数平均分子量に対する重量平均分子量の比)は、好適には、約1~約4、好ましくは約1.5~2.5である。
【0042】
構成成分(b)は、接着剤の総重量の少なくとも0.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%を構成し得るし、接着剤の総重量の40重量%以下、30重量%以下又は25重量%以下を構成し得る。
【0043】
エポキシ硬化触媒、構成成分(c)は、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を触媒する1種以上の物質である。本発明に有用なエポキシ硬化触媒は、好ましくは、封入されているか、又はさもなければ、高温への暴露時にのみ活性になる潜在的なタイプのものである。本発明に有用な、好ましいエポキシ触媒の中に、例えばp-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(モヌロン)、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(フェヌロン)、3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)、N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N’,N’-ジメチル尿素(クロルトルロン)などの尿素、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ピペリジン又はこれらの誘導体のようなtert-アクリル-若しくはアルキレンアミン、例えば欧州特許第1 916 272号明細書に記載されているものなどの様々な脂肪族尿素化合物;例えば2-エチル-2-メチルイミダゾール若しくはN-ブチルイミダゾールなどの、C1~C12アルキレンイミダゾール又はN-アリールイミダゾール、及び6-カプロラクタム、ポリ(p-ビニルフェノール)マトリックスへ統合された2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(欧州特許第0 197 892号明細書に記載されているような)、又は米国特許第4,701,378号明細書に記載されているものなどの、ノボラック樹脂へ統合された2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールがある。
【0044】
構成成分(c)は、構成成分(a)~(d)の総重量の、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.25重量%又は少なくとも0.5重量%を構成し得るし、例えば、構成成分(a)~(d)の総重量の、5重量%以下、3重量%以下又は2重量%以下を構成し得る。
【0045】
本発明に有用な、硬化剤、構成成分(d)は、接着剤が少なくとも60℃の硬化温度を示すように構成成分(c)と一緒に選択される。硬化温度は、好ましくは、少なくとも80℃であり、少なくとも100℃、少なくとも120℃、少なくとも130℃又は少なくとも140℃であってもよい。硬化温度は、例えば、180℃ほどに高くてもよい。「硬化温度」は、本明細書では、構造用接着剤が、2時間以内の完全硬化において接着剤のラップせん断強度(DIN ISO 1465)の少なくとも30%を達成する最低温度を言う。「完全硬化」におけるラップせん断強度は、180℃で30分(min)間硬化させたサンプルに関して測定され、その条件は、「完全硬化」条件を表す。きれいな(脱気した)1.2ミリメートル(mm)HC420LAD+Z100亜鉛めっき鋼基材、10×25mmの接合エリア及び0.3mmの接着剤層厚さが、上記の評価を行うための好適なパラメータである。
【0046】
硬化剤、構成成分(d)は、少なくとも2個のエポキシ基と反応してそれらの間に結合を形成する化合物である。本発明に有用な、好適な硬化剤としては、例えば三塩化ホウ素錯体/アミン及び三フッ化ホウ素/アミン錯体、ジシアンジアミド、メラミン、ジアリルメラミンなどの物質、例えばジシアンジアミド、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、アセトグアニミン及びベンゾグアニミンなどのグアニミン、例えば3-アミノ1,2,4-トリアゾールなどのアミノトリアゾール、例えばアジピン酸ジヒラジド、ステアリン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジド、セミカルバジド、シアノアセトアミド、並びに例えばジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。ジシアンジアミド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド及び/又は4,4’-ジアミノジフェニルスルホンが、本発明で使用するために特に好ましい。
【0047】
構成成分(d)は、組成物を硬化させるのに十分な量で存在する。典型的には、組成物中に存在するエポキシド基の少なくとも80%を消費させるのに十分な硬化剤が提供される。エポキシド基の全てを消費させるために必要とされるその量よりも大過剰は、一般に必要とされない。好ましくは、硬化剤は、接着剤の少なくとも約1.5重量%、より好ましくは少なくとも約2.5重量%、更により好ましくは少なくとも3.0重量%を構成する。硬化剤は、好ましくは、接着剤の約15重量%以下、それの約10重量%以下、それの約8重量%以下、約7重量%以下、又はそれの約5重量%以下を構成する。
【0048】
構成成分(a)~(d)の重量は、例えば、接着剤の総重量の30重量%~100重量%、50重量%~100重量%、50重量%~90重量%又は50重量%~85重量%を構成し得る。構成成分(a)~(d)が接着剤の総重量の100%未満を構成する場合、接着剤はまた、1種以上の任意選択的な成分を含有し得る。
【0049】
本発明の接着剤は、例えばフィラー、粘着性付与剤、強化剤、軟化剤、硬化触媒、安定触媒、着色添加剤、二量化脂肪酸、反応性及び/又は非反応性希釈剤、顔料及び染料、難燃剤、チキソトロピー剤、発泡剤、フロー制御剤、接着促進剤、酸化防止剤、粘度調整剤、溶媒、腐食防護剤並びにカラスビーズなどの、任意選択的な添加剤を更に含有し得る。好適な発泡剤としては、物理的タイプ剤及び化学的タイプ剤の両方が挙げられる。接着剤はまた、国際公開第2005/118734号パンフレットに記載されているように、例えばポリビニルブチラール又はポリエステルポリオールなどの熱可塑性樹脂粉末も含有し得る。接着剤調合物に有用な、好適な任意選択的な成分としては、物理的タイプ剤及び化学的タイプ剤の両方が挙げられ得る。例えば、材料を耐洗い落とし性にするための、又は調合物を低い温度で硬化させるための成分が、使用され得る。
【0050】
例えば、本発明の接着剤調合物は、1種以上の微粒子フィラーを含有し得る。フィラーは、硬化反応において達する温度で固体である。これらのフィラーは、例えば(1)接着剤のレオロジーを望ましい方法で改良すること、(2)1単位重量当たりの全体コストを低減させること、(3)接着剤から若しくは接着剤が適用される基材から水分若しくは油を吸収すること、及び/又は(4)接着破壊よりもむしろ、凝集破壊を促進することなどの、いくつかの機能を果たす。好適な無機フィラーの例としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、タルク、カーボンブラック、織物繊維、ガラス粒子又は繊維、アラミドパルプ、ホウ素繊維、炭素繊維、無機シリケート、雲母、粉末状石英、水和酸化アルミニウム、ベントナイト、ウォラストナイト、カオリン、ヒュームドシリカ、シリカエアロゲル、ポリ尿素化合物、ポリアミド化合物、例えばアルミニウム粉末若しくは鉄粉末などの金属粉末及び発泡性マイクロバルーンが挙げられる。少なくともヒュームドシリカ及び酸化カルシウムを含み、且つ、炭酸カルシウム、カオリン及び/又はウォラストナイトを更に含むフィラーの混合物を使用することができる。微粒子フィラーは、例えば、接着剤の総重量の少なくとも5重量%、少なくとも10重量%又は少なくとも12重量%を構成し得るし;接着剤の総重量の35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下又は20重量%以下を構成し得る。無機フィラーがヒュームドシリカを含む場合、接着剤は、10重量%以下、好ましくは1重量%~6重量%のヒュームドシリカを含有し得る。
【0051】
無機フィラーの全て又は一部は、1μm~50μmの直径(D50、顕微鏡法により測定されるように)及び6~20のアスペクト比を有する繊維の形態にあり得る。繊維の直径は、2~30μm又は2~16μmであり得るし、アスペクト比は、8~40又は8~20であり得る。繊維の直径は、繊維と同じ断面積を有する円の直径とみなされる。繊維のアスペクト比は、例えば6~40、6~25、8~20又は8~15などの、6以上であり得る。
【0052】
或いは、無機フィラーの全て又は一部は、5以下、とりわけ2以下のアスペクト比、及び100μm以下、好ましくは25μm以下の最長寸法を有する低アスペクト比の粒子の形態にあり得る。
【0053】
本発明でのエポキシ樹脂を使用する便益の1つは、構造接着のための強化された接着剤を提供する可能性である。本接着剤は有利にも室温で低粘度樹脂であり、したがって本接着剤は、室温で適用することができる。例えば、構造用接着剤として使用される強化システムとしては、脂肪族ベースのウレタンポリマー(Aliphatic-based Urethane Polymer)P92-500、ポリウレタンアダクト(Polyurethane Adduct)P99-0151、ポリウレタンアダクトP15-0346、ポリウレタンアダクトEUP27(P10-0078)、脂肪族ベースのウレタンポリマー(Aliphatic-based Urethane Polymer)P16-0227及び/又はブタジエン-アクリルコポリマーが挙げられ得る。25℃で室温ポンプ送液可能な接着剤の粘度は、一実施形態においては、一般に、レオメータによって測定される3 l/sせん断速度で約400パスカル-秒(Pa.s)~約4,000Pa.s;別の実施形態においては約600Pa.s~約2,500Pa.s;及び更に別の実施形態においては約800Pa.s~約1,500Pa.sである。
【0054】
別の実施形態において、本発明に有用な、任意選択的な成分の中に、1種以上のゴムがある。これらとしては、例えば、構成成分(a)とは異なるゴム変性エポキシ樹脂、すなわち、少なくとも300g/モル、好ましくは少なくとも500g/モルの脂肪族鎖によって分離された少なくとも2個のエポキシド基を有する化合物が挙げられる。脂肪族鎖は、例えば、アルキレン基;アルケニル基;ジエンポリマー若しくはコポリマー;又は、例えばポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)若しくはプロピレンオキシドとエチレンオキシドとのコポリマーなどのポリエーテルであり得る。本発明に有用な他のゴム変性エポキシ樹脂としては、エポキシ化脂肪酸(それは、二量化又はオリゴマー化され得る)、及びエポキシ基を含有するように変性されているエラストマーポリエステルが挙げられる。ゴム変性エポキシ樹脂は、硬化前に、-20℃以下、好ましくは-30℃以下のガラス転移温度を有し得る。
【0055】
任意選択的なゴムとしては、それらが仮にも存在する場合、コア-シェルゴム粒子が接着剤の総重量の最大でも7重量%を構成するという条件で、コア-シェルゴム粒子が挙げられる。好ましくは、コア-シェルゴムは、接着剤の総重量の5重量%以下、2.5重量%以下、又は1%以下を構成し、接着剤から不在であってもよい。
【0056】
200ミクロン以下の平均粒径及び1立方センチメートル当たり0.4グラム(g/cc)以下の密度を有するガラスマイクロバルーンが、本発明の接着剤中に存在し得る。存在する場合、ガラスマイクロバルーンは、接着剤の総重量の5重量%以下、より好ましくはそれの2重量%以下又は1%以下の量で使用することができる。本発明に有用な、好適なマイクロバルーンとしては、3M Corporation製の、3M(登録商標)Glass Bubbles K25が挙げられる。したがって、いくつかの実施例において、ガラスマイクロバルーンは、接着剤の総重量の0.5重量%以下又は0.25重量%以下の量で存在するし、不在であってもよい。
【0057】
別の実施形態において、モノマー又はオリゴマーの、付加重合性エチレン性の、エチレン性不飽和物質が任意選択的に接着剤組成物中に存在する。この物質は、約1,500未満の分子量を有し得る。この物質は、例えば、アクリレート若しくはメタクリレート化合物、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、又は不飽和ポリエステル樹脂のエポキシ付加体であり得る。この物質を重合させるためのフリーラジカル源を提供するために、フリーラジカル開始剤を同様にうまく接着剤組成物中に含めることができる。このタイプのエチレン性不飽和物質の接着剤組成物への包含は、エチレン性不飽和の選択的重合による接着剤の部分硬化をもたらす可能性を提供する。
【0058】
エポキシベースの樹脂ポリマー組成物、構成成分(I)は、好ましくは、PEC化合物、構成成分(II)を添加する前に、前述の構成成分を一緒に混合することによって調製される。或いは、PEC化合物、構成成分(II)は、構成成分(a)~(d)と混ぜ合わせて本発明の接着剤を形成することができる。
【0059】
一実施形態において、構成成分(I)として本発明に使用され得るエポキシベースの樹脂ポリマー組成物は、PEC化合物を添加する前に別個の構成成分として提供される。この実施形態において、エポキシベースの樹脂ポリマー組成物は、商品名BETAMATE(登録商標)で販売され、The Dow Chemical Companyから商業的に入手可能な任意の数のエポキシベースの樹脂ポリマー組成物を含み得る。本発明に有用な、いくつかの特定のBETAMATE製品としては、例えば、BETAMATE 1620US、BETAMATE 1480V203、BETAMATE 1486、BETAMATE 1489HM、BETAMATE 4601、BETAMATE 6160、BETAMATE 1630US、及びBETAMATE 1640USが挙げられ得る。
【0060】
接着剤調合物に使用されるエポキシベースの樹脂ポリマー組成物の濃度は、一実施形態においては、BETAMATE 1620 USを基準として、約30重量%~約70重量%;別の実施形態においては約40重量%~約65重量%;更に別の実施形態においては約45重量%~約60重量%の範囲にあることができる。
【0061】
本発明に有用なPEC化合物としては、例えば、有機及び無機化学種が挙げられ得る。好ましい実施形態において、PEC化合物中のリン元素は、1~4個の酸素原子に結合している。本発明に有用な、代表的なPEC化合物としては、オルトリン酸;ポリリン酸/ポリホスホン酸;ホスフェート及びホスファイトなどの誘導共役塩基;並びに例えばホスホエチルメタクリレート、ホスホ-ジ(エチルメタクリレート)、及びアリルホスフェートなどのリン含有モノマーとともにペンダント及び/又は末端リン基を含有する1種以上のポリマーを含むポリマー組成物が挙げられ得る。
【0062】
接着剤調合物中のPEC化合物の濃度は、一実施形態においては約0.01重量%~約10重量%;別の実施形態においては約0.1重量%~約5重量%;及び更に別の実施形態においては約0.1重量%~約3重量%の範囲にあることができる。
【0063】
本発明の接着剤組成物の製造方法は、上に記載されたような、エポキシベースの接着性ポリマー、構成成分(I)と、上に記載されたような、PEC化合物、構成成分(II)とを、室温で、及び55℃を越えない、より好ましくは50℃を越えない温度で混ぜ合わせる工程を含む。結果として生じる接着剤は、前述の構成成分が一緒に混合され、その後適用され、硬化させられる一液型接着剤である。時期尚早の硬化が起こらないほど十分に温度が低いという条件で、成分を組み合わせる方法は、特に決定的に重要であるわけではない。過度の熱は製品の保存可能期間に悪影響を及ぼし得るので、混合温度を制御することは重要である。加えて、添加の順番は、好ましくは、安定した製品を生成するように、実施される。例えば、一実施形態において、成分は、早期に添加され、調整される。別の実施形態において、成分は、熱履歴を最小限にするために後で添加される。高容量適用を容易にするための短期暴露については、構成成分を一緒に混合する最高温度は、最大で55℃まで上げることができる。
【0064】
調合接着剤は、少なくとも1日の期間、例えば、100℃以下、80℃以下、60℃以下又は40℃以下の温度で貯蔵することができ、その後接着剤は適用され、硬化させられる。
【0065】
上記の方法によって製造された本発明の結果として生じる接着剤組成物製品は、構成成分の均一な液体ブレンドである。接着剤製品は、周囲条件で安定しており;基材に容易に適用することができる。「安定している」とは、接着剤製品が、周囲条件で流動性であり、一般に、約1500Pa.s未満の粘度を有し;個々の構成成分が不活性である、すなわち、成分が、一緒に混合された場合に互いに反応して望ましくない副生物を提供しないことを意味する。
【0066】
本発明の調合物が上に記載されたように調製されるとすぐに、調合物は、様々な用途に使用することができる。本発明の1つの幅広い実施形態において、調合物は、2つの基材を接合するための接着剤として使用され得る。例えば、一実施形態において、前述の接着剤組成物は、2つの基材間のボンドラインにおいて層に形成されてアセンブリを形成することができ、次に接着剤層は、ボンドラインにおいて硬化させられて、2つの基材のそれぞれに接合した硬化接着剤を形成する。
【0067】
本発明の接着剤は、任意の好都合な技術によって基材に適用することができる。例えば、本発明の接着剤調合物は、刷毛塗り、カレンダー掛け、スプレーイング、浸漬、ローリング又は他の従来の手段によって基材の少なくとも一部に適用することができる。必要に応じて、接着剤は、冷たいまま適用するか又は温めて適用することができる。接着剤は、例えば、コーキングガン、他の押出装置、又はジェットスプレーイング法を用いて、手動及び/又はロボットで適用することができる。接着剤組成物が基材の少なくとも1つの表面に適用されると、基材は、接着剤が基材間のボンドラインに位置するように接触させられる。
【0068】
適用後に、接着剤は、接着剤の硬化温度に、又はそれよりも上に接着剤を加熱することによって硬化させられる。いくつかの場合に、特により長い硬化時間が許容され得る場合に、より低い温度を用いることができるが、一般に、少なくとも130℃に接着剤を加熱することによって硬化工程を行うことが好ましい。加熱温度は、220℃以上ほどに高くてもよいが、本発明の利点は、より低い硬化開始温度であるので、硬化温度は、好ましくは、200℃以下、180℃以下、170℃以下又は165℃以下である。
【0069】
本発明の接着剤は、例えば、木材、金属、被覆金属、例えば鋼、亜鉛、銅、ブロンズ、マグネシウム、チタン及び/又はアルミニウムなどの金属、様々なプラスチック及びフィラー入りプラスチック基材、繊維ガラスなどの様々な基材を一緒に接合するために使用することができる。
【0070】
基材は、異なる材料であることができる。基材組み合わせの例としては、例えば鋼及びアルミニウム;鋼及びマグネシウム;並びにアルミニウム及びマグネシウムなどの異なる金属の組み合わせ;例えば鋼、マグネシウム、アルミニウム又はチタンなどの金属と、例えば熱可塑性有機ポリマー又は熱硬化性有機ポリマーなどのポリマー材料との組み合わせ;並びに例えば鋼アルミニウム、マグネシウム又はチタンなどの金属と、例えば炭素繊維複合材料又はガラス繊維複合材料などの繊維複合材料との組み合わせが挙げられる。
【0071】
1つの好ましい実施形態において、本発明の接着剤組成物は、有利には、同じ又は似ていない金属基材を一緒に接合するために;又は金属を、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、強化プラスチック、若しくはガラスなどの他の基材に接合するために使用することができる。基材の接合方法は、例えば、(A)(I)エポキシベースの接着性ポリマーと;(II)PEC化合物とを混ぜ合わせて構造用接着剤調合物を形成する工程と;(B)第1基材を別の第2基材と接触させる前に工程(A)からの調合物を第1基材の表面の少なくとも一部に接触させ、2つの基材間のボンドラインにおいて工程(A)の接着剤の層を形成する工程であって;工程(B)における層が、0.1mm~3mmの厚さを有することができ、厚さを維持するために例えばカラスビーズなどの固体スペーサーを含有し得る工程と;(C)2つの基材間のボンドラインにおける接着剤調合物の層を介して第1基材と第2基材とを接触させてアセンブリを形成する工程と;(D)ボンドラインにおける接着剤層を、少なくとも130℃の温度に加熱することによって硬化させてボンドラインにおいて2つの基材に接合した硬化接着剤を形成する工程とを含み;ここで、本発明の接着剤調合物のラップせん断強度は、35℃及び5%のNsCl塩水噴霧への500時間の暴露後(ASTM B117-16)少なくとも約30倍だけ増加する。
【0072】
本発明の調合物は、第1基材を第2基材に接合するための接着剤として使用され得る。第1及び第2基材は、似ていない基材であることができるし、又は第1及び第2基材は同じ基材であり得る。一実施形態において、第1基材は、例えばアルミニウムなどの金属、及び例えば炭素鋼などの鉄系金属から選択される。好ましい実施形態において、第1金属基材はアルミニウムである。
【0073】
第2基材は、例えば、アルミニウム及び鋼などの金属、ガラス、布地、ゴム及び複合材料などの様々なタイプの基材から選択することができる。好ましい実施形態において、第2基材は、例えばアルミニウム金属などの別の金属である。
【0074】
1つの好ましい実施形態において、接着剤は、自動車の部品を互いに接合するために、又は自動車部品を自動車上へ接合するために使用される。特に興味のある用途は、自動車若しくは他の車両フレーム構成部品の互いへの又は他の構成部品への接合である。組み立てられた自動車及び他の車両フレーム部材は、多くの場合、ベーク硬化を必要とするコーティング材料でコートされている。コーティングは、典型的には、160℃から210℃と同じ程度までの範囲であり得る温度でベーキングされる。そのような場合には、多くの場合、接着剤をフレーム構成部品に適用し、次にコーティングを適用し、接着剤を硬化させ、同時にコーティングがベーキングされ、硬化させられることが好都合である。接着剤を適用する工程と、コーティングを適用する工程との間に、アセンブリは、硬化工程が行われるまで、基材と接着剤とを互いに対して固定された位置に維持するために一緒に固定され得る。機械的手段を固定デバイスとして用いることができる。これらは、例えば、硬化工程が完了したら除去することができる、様々なタイプのクランプ、バンドなどの一時的な機械的手段を含む。例えば、様々なタイプの溶接、リベット、スクリュー、及び/又は圧着法などの、機械的固定手段は、永久的であり得る。或いは又は加えて、コーティングが適用された後、最終硬化工程が行われるまで、接着剤の残部を未硬化のままにしながら、接着剤組成物の1つ以上の特定の部分をスポット硬化させて基材間に1つ以上の局在化した接着接合を形成することによって固定を行うことができる。
【0075】
本発明の接着剤調合物の結果として生じる便益としては、例えば、(1)エポキシベースの構造用接着剤に結合した例えばアルミニウム基材などの金属基材についての耐食性の増加;(2)接着剤の接着強度の保持;及び(3)接着剤のサイクル後の破壊モードの減少が挙げられる。
【0076】
硬化接着剤は、45℃で、少なくとも25パスカル(Pa)、少なくとも50Pa又は少なくとも70Pa、1,000Pa以下、700Pa以下、400Pa以下又は200Pa以下のキャッソン(Casson)塑性粘度を有し得る。
【0077】
接着剤によって示される耐腐食性が大きければ大きいほど、接着剤が構造用接着剤として使用される場合にとりわけより良好である。耐食性の観点からの性能向上は、ASTM B117-16に概説される促進腐食条件への暴露後の接合金属基材(本発明の接着剤で一緒に結合した)のラップせん断性能の改善として観察され得る。例えば、ラップせん断強度は、エポキシベースの接着剤について
35℃で5重量%のNaCl溶液を使用する500時間の塩水噴霧試験後にメガパスカル(MPa)として測定することができる。
【0078】
一般に、本発明のPEC添加物を含有する接着剤調合物の耐腐食性は、PEC添加物なしの接着剤の元の耐腐食性から増加し得る。PEC添加物なしの接着剤調合物の耐腐食性は、約0.4MPaである。一般に、本発明の接着剤調合物の耐腐食性、ラップせん断強度は、一実施形態においては0.4MPaよりも約32倍高い、別の実施形態においては0.4MPaよりも約31倍高い、及び更に別の実施形態においては0.4MPaよりも約30倍高いところで測定することができる。他の実施形態において、接着剤調合物の耐腐食性は、0.4MPaよりも約18倍高い~0.4MPaよりも約30倍高いことができる。
【0079】
前述のように、本発明の特別な利点は、接着剤が腐食老化への優れた耐性を有することであり;本発明の目的のためには、耐食性試験は、ASTM B117-16によるラップせん断強度試験によって評価される。サンプルは、以下の実施例に説明されるように調製される。未老化試験サンプルのラップせん断強度が測定される。同一の試験サンプルが調製され、Volkswagen PV 1210腐食老化プロトコルの90サイクルに曝され、サンプルのラップせん断強度が測定される。本発明の接着剤は、多くの場合、未老化サンプルのラップせん断強度と比べて、腐食プロトコル後にラップせん断強度の40%以下の喪失を示す。いくつかの実施例において、腐食老化へのこの優れた耐性は、接着剤が非常に少量(総接着剤重量を基準として、例えば0.75重量%以下などの)のガラスマイクロスフェアを含有する場合でさえも、又は接着剤がガラスマイクロスフェアを欠いている場合でさえも達成される。
【0080】
いくつかの実施例における硬化接着剤は、少なくとも25MPa、少なくとも28MPa又は少なくとも30MPa、50MPa以下の、以下の実施例におけるように調製される試験サンプルに関して測定される、未老化せん断強度を示す。腐食老化後のラップせん断強度は、少なくとも16MPa、少なくとも17MPa、少なくとも18MPa又は少なくとも20MPaであり得る。
【0081】
金属基材への本発明の接着剤の適用は、接着剤中に存在するホスフェート含有添加物での金属のその場クリーニング/表面改質によって耐食性に関連した製品性能を改善することを理論化される。
【0082】
硬化接着剤は、様々な基材への強い接合を形成する。接着剤によって示される接着強度特性が大きければ大きいほど、接着剤が構造用接着剤として使用される場合にとりわけより良好である。一般に、本発明の接着剤調合物の接着強度特性は、接合基材のタイプ及び剛性に依存して少なくとも15MPa超、50MPa以下であることができる。一実施形態において、本発明の接着剤調合物の接着強度特性は、約10MPa~約50MPa、別の実施形態においては約12MPa~約45MPa、及び更に別の実施形態においては約15MPa~約40MPaであり得る。有利にも、本発明のPEC添加物を含有する接着剤調合物の接着強度特性は、PEC添加物なしの接着剤の元の耐腐食性から低下しない。例えば、約0.1重量%~約0.5重量%の範囲の量での調合接着剤中のリン含有添加物の存在は、本発明のPEC添加物なしで調合された接着剤と比べて接着剤の初期接着強度を変えない。一実施形態において、接着剤の接着強度特性は、約34%超ほども、別の実施形態においては約20%~約25%超ほども、及び最も好ましい実施形態においては約0%~約5%超ほども低下しない。
【0083】
構造用接着剤として使用される場合、本発明の調合物が基材を一緒に接合し損なわないことが一般に望ましい。本発明の調合接着剤を使用することの便益としては、接着剤の破壊モードサイクルの低減が挙げられる。有利にも、本発明のPEC添加物を含有する接着剤調合物の破壊モードサイクルは、PEC添加物なしの接着剤の元の破壊モードサイクルから低減する。例えば、本発明の調合接着剤中のPEC添加物の存在は、PEC添加物なしで調合された接着剤と比べて、一実施形態においては接着剤と基材との間の約100%未満、別の実施形態においては約40%~約60%、及び更に別の実施形態においては約90%~約100%の破壊へと接着剤の破壊モードサイクルを低減する。
【0084】
本発明の調合接着剤において、約0.1重量%~約0.5重量%の範囲の量でのPEC添加物の存在は、約3%~約15%の範囲で接着剤(添加物なし)の初期粘度を増加させることによって接着剤の初期粘度を変え得る。粘度の72時間測定で、本発明の調合接着剤の初期粘度は、約30%~約400%増加し得る。しかしながら、粘度の上記の増加は、金属基材への本発明の接着剤の適用を制限しない。
【0085】
硬化接着剤は、少なくとも800MPa少なくとも、少なくとも1,500MPa又は少なくとも1,800MPaの弾性率を有し得る。硬化接着剤は、少なくとも25MPa又は少なくとも28MPaの引張強度を示し得る。硬化接着剤は、少なくとも2%、少なくとも4%又は少なくとも6%、40%以下、20%以下、15%以下又は10%以下の破断点伸びを有し得る。
【0086】
前述のように、PEC化合物をエポキシベースの接着性ポリマーに添加すると、接着剤調合物の腐食特性が増加する。加えて、接着剤の接着強度は、同じもののままであるか、又は有意に悪化しない。例えば、BETAMATE 1620 USへのリン酸(0.1重量%)、QM1326(0.5重量%)又はSIPOMER(登録商標)PAM(0.5重量%)の低レベル添加は、結合Al 6111について耐食性を増加させる。500時間及び1000時間腐食試験後に、添加物なしのBETAMATEサンプルは、アルミニウム上でそのラップせん断強度のほぼ90%を喪失する。本発明添加物入りで、腐食試験されたサンプルは、著しくより良好に動作する(表Iを参照されたい)。
【0087】
【0088】
本発明のPEC添加物を含有する接着剤によって結合した2つの金属基材について35℃での3%のNaCl塩水噴霧の促進腐食条件への500時間の暴露後の改善されたラップせん断性能は、PEC添加物とアルミニウム基材及びエポキシ樹脂との相互作用によって生じること;並びに (1)PEC添加物は、金属表面をきれいにして/エッチして金属表面から外来の有機汚染物質をその場除去し、それによって接着剤中の活性構成成分と基材表面との間の相互作用を向上させる;(2)PEC添加物は、アルミニウム基材について酸化物/水酸化物厚さを低減し、接着剤中の活性構成成分と基材表面との間の相互作用を増加させる;(3)PEC添加物は、約0.1ナノメートル(nm)~約7nmの範囲の厚さの不溶性金属-リン層のコーティングを生成し、それによって接着剤中の活性構成成分と基材表面との間の相互作用を向上させる;(4)PEC添加物は、接着性ポリマー樹脂のエポキシ官能性を含む接着剤調合物の少なくとも一部と化学反応し、新しい有機ホスフェートを生成するエステル接合を形成し、それは、順繰りに、接着剤調合物中の構成成分と基材表面との間の相互作用を向上させ得ることが理論化される。
【実施例】
【0089】
以下の実施例は、詳細に本発明を更に例示するために示されるが、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。特に明記しない限り、全ての部及び百分率は重量による。
【0090】
実施例に用いられる様々な用語及び呼称は、本明細書で以下に説明される。
「PEM」は、ホスホエチルメタクリレートを表す。
「SST」は、塩水噴霧試験を表す。
「Ave」は、平均を表す。
「Stdev」は、標準偏差を表す。
【0091】
Al6111は、0.7~1.1%のケイ素、0.5~1%のマグネシウム、0.15~0.45%のマンガン、最大0.4%のFe、最大0.15のウラン、最大0.1%のクロム、最大0.1%のチタン、及び残りアルミニウムを含有するアルミニウム金属の銘柄である。Al6111は、ACT,Hillsdale,MIから商業的に入手可能である。
【0092】
FERROCOTE(登録商標)61 AUSは、鉱油、スルホン酸、石油、及びカルシウム塩を含む自動車認可油ベース錆止め試薬である。FERROCOTE 61 AUSは、Quaker Chemical Corporationから商業的に入手可能である。
【0093】
Alcoa 951は、ビニルホスホン酸/ホスフィン酸、ポリアクリレートであり、Arconicから商業的に入手可能である。
【0094】
BETAMATE 1620USは、強化エポキシド化学に基づくエポキシ構造用接着剤であり、The Dow Chemical Companyから商業的に入手可能である。BETAMATE 1620USは、例えばビスフェノールAベースのエポキシドとカルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)との付加体などの従来の強化剤と一緒に、キャップされたポリウレタンプレポリマーを一次強化剤として使用する強化技術に基づくものである。BETAMATEは、The Dow Chemical Companyの商標である。BETAMATE 1620USは、単独で、初期状態において未処理アルミニウム上で良好な強度及び妥当な破壊モードを与えるが、例えば500時間~1000時間塩水噴霧暴露などの腐食試験後に非常に不十分な結果を与える。
【0095】
以下の実施例において、3つのホスフェート含有添加物:(1)85%リン酸;(2)QM1326;及び(3)SIPOMER PAM 4000をBETAMATE 1620 US中へ調合した。添加物を重量パーセント基準でシステム中へ調合した。
【0096】
QM1326は、アクリル又はスチレンアクリル系へ組み込まれた場合に金属基材への接着性を改善するために使用される接着剤製品である。QM1326は、ホスホエチルメタクリレート(PEM)モノエステルと、PEMジエステルと、リン酸とメチルメタクリレートプラスモノマー不純物との混合物である。QM1326は、The Dow Chemical Companyから商業的に入手可能であり;1993年にRohm and Haasに対して発行された米国特許第5,191,029号明細書に一般的に記載されている。
【0097】
SIPOMER PAM 4000は、ホスホエチルメタクリレートポリマーであり、Rhodia Solvay Groupから商業的に入手可能である。SIPOMER PAM-4000は、Rhodia Solvay Groupの商標である。
【0098】
D.E.R. 331は、182~192のEEWを有するビスフェノールAベースのエポキシ樹脂であり;Olin Corporationから商業的に入手可能である。
【0099】
以下の実施例において、添加物の貯蔵安定性は、異なる重量パーセント値での添加物の溶液を、D.E.R. 331ビスフェノールAベースのエポキシ樹脂と混合することによって評価した。混合後に、溶液をガラスジャーへ入れ、25℃での水浴中で平衡化し、次に、#5又は7スピンドル付きの及び0.3~20rpmでのBrookfield Viscometer Model DV-Eを用いて粘度を測定した。サンプルを24時間及び72時間43℃オーブン中へ入れ、粘度を再び測定した。結果を表IIに提供する。これらの粘度値は、ローディングのいくつか(例えば、5重量%のQM1326)が、高い粘度値のために更なる検討にとって許容できないことを示す。
【0100】
ラップせん断試験は、ASTM D1002-10(2010年10月)に従って行った。初期ラップせん断サンプルを、50kNロードセルを用いるInstron Tensile Tester Model 5500Rで引っ張った。試験の速度は、2インチ/分(50mm)であった。
【0101】
試験される接着剤の粘度は、25℃で3 1/秒のせん断速度でレオメータによって測定した。
【0102】
塩水噴霧試験は、ASTM B117-l6(2016年4月)に従って実施した。塩水噴霧サンプルを、塩水噴霧キャビネットに入れ、ASTM B117-l6に従って500時間及び1000時間暴露させた。条件は、35℃及び噴霧用の5%のNaCl溶液であった。
【0103】
金属基材の表面上で検出される酸素は、SEM/EDSを用いて測定することができる。「SEM/EDS」は、走査電子顕微鏡法を表す。
【0104】
金属基材において見出される金属元素のレベルは、XPSによって測定することができる。「XPS」は、X線光電子顕微鏡法を表す。
【0105】
実施例1~10及び比較例A
一連の混合物サンプルを表IIに記載されるように調製し;サンプルの粘度測定を、上に記載された粘度測定手順に従って行った。粘度測定の結果を表IIにリストアップする。
【0106】
【0107】
表IIの結果から、接着樹脂への余りにも多く(例えば、約3重量%超)のPECの添加が、粘度を23℃で72時間後に著しく(初期の3倍超)増加させ得るし、不安定な溶液を生み出し得ることを理解することができる。したがって、接着樹脂への余りにも多くのPECの添加は、接着樹脂を含有するBETAMATE 1620 USの不安定性を生み出し得る。低レベル(例えば、約3重量%未満)のPECを接着樹脂に添加する場合、混合物は、安定しているように思われる。「安定性」は、本明細書では、100%未満の粘度増加を意味し;粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計によって測定される。
【0108】
実施例11~20及び比較例B
一連の調合接着剤サンプル及び一連のラップせん断サンプルを、表IIIに記載されるように調製した。様々なPECをBETAMATE 1620 USに添加し、試験した。
【0109】
【0110】
【0111】
これらの実施例において、アルミニウム基材、未処理Al 6111を使用した。1インチ(25.4mm)×4インチ(101.6mm)ストリップにプレカットされた、アルミニウム基材を供給した。金属基材ストリップのそれぞれの厚さは1mmであった。Al 611金属が自動車の例えばドア及びボンネットなどの密閉パネル用に使用される典型的な自動車グレード金属であるので、この金属を選択した。Al 611金属はまた、接着剤の良好な差別化要因である。
【0112】
ラップせん断サンプルを、サンプルの表面上の存在するミル油をアセトンで先ず落とし、次に、FERROCOTE 61AUS、相手先商標製品の製造会社(OEM)によって使用される一般的な打ち抜き油をサンプルの表面に適用することによって調製した。次に、スパチュラを用いてサンプルの接合表面一面に接着剤を広げることによって、接着剤サンプルをラップせん断サンプルに適用した。接着剤の接合厚さを、固体カラスビーズを用いて0.25mmに制御した。接合部のオーバーラップを、接合固定具を用いて0.5インチ(12.5mm)に制御した。接合後に、接合部の両側にバインダークリップを置くことによって接合部を一緒に保持した。次に、163℃の温度に設定されたオーブン中に接合部を入れ、接合部を163℃で20分間加熱することによって接着剤を硬化させた。表IIIの各実施例について3つの反復試験を、各条件について行った。ラップせん断試験を、ASTM D1002-10に従って行った。
【0113】
ラップせん断サンプルを室温(約25℃)に冷却した後、初期ラップせん断サンプルを、50kNロードセルを用いるInstron Tensile Tester Model 5500Rで引っ張った。試験の速度は、2インチ/分(50mm/分)であった。
【0114】
表IIIの結果から、余りにも大きい重量%のPECが、BETAMATE 1620 USを使用してAl6111を接着するために使用される場合、初期ラップせん断強度は、対照と比べて低下することが分かった。例えば、BETAMATE 1620 US中に3重量%のQM1326を調合すると、対照と比べて約35%だけ初期ラップせん断強度が低下する。他方では、適切な量のPECがBETAMATE 1620 USに添加される場合、初期ラップせん断は、影響を受けない(表IIIを参照されたい)。例えば、BETAMATE 1620 USの対照サンプルについての初期ラップせん断は、ほぼ16.2MPaである。適切な量のPECが接着剤に添加された状態で、ラップせん断値は、約16.5~16.6MPaである。
【0115】
実施例21~26並びに比較例C及びD
これらの実施例において、表IV及び表Vに記載される一連の塩水噴霧サンプルを、塩水噴霧キャビネットに入れ、ASTM B117-l6に従って、表IVに記載されるように500時間及び表Vに記載されるように1000時間暴露させた。塩水噴霧試験の条件は、35℃及び噴霧用の5%のNaCl溶液であった。キャビネットから取り出した後、塩水噴霧サンプルを、試験前に周囲条件で24時間平衡化させた。
【0116】
上記試験の結果は、最適量のPEC入りBETAMATE 1620 USを使用してAl6111が接着させられ、500時間(表IVを参照されたい)及び1000時間(表Vを参照されたい)塩水噴霧(3重量%のNaCl)に曝される場合に、PECを含有するシステムが、ラップせん断の観点から対照サンプルより著しく性能が優れていることを示す。例えば、500時間暴露で、対照サンプルは、ほぼ0.4MPaのラップせん断を有するのに対して、様々なPEC入りで調合されたシステムは、約12~13MPaの範囲である。
【0117】
【0118】
【0119】
分析試験をBETAMATE 1620 USの様々なサンプルに関して行い、そのような試験の結果を
図1~3に関連して記載する。
【0120】
分析実験1
図1において、1000時間の塩水噴霧(3%のNaCl)に曝された対照サンプル(左欄I)及びQM1326調合BETAMATE 1620 USサンプル(右欄II)のラップせん断試験後の露出アルミニウム表面の試験サンプルの2つの光学像(最上部列A)及び4つの電子顕微鏡写真(中央列B及び底部列C)を含む一連の画像を示す。対照サンプルの表面上に、暗及び明ドメインを観察することができる。明領域は、Oが5重量%~10重量%の範囲にある状態で、Al及びOで占められ、一方、暗領域は、Oが25重量%~60重量%の範囲にある状態で、Al及びOの主要な寄与を含む。比較のために、初期未暴露基準A1サンプルを調べることができ、A1サンプルは、およそ3重量%のOを含有することができる。それ故、促進腐食条件への対照サンプルの暴露は、アルミニウム表面においてO(たぶん酸化アルミニウム)の量を増加させているように思われる。比較して、QM1326調合BETAMATE 1620 USシステムは、1000時間塩水噴霧試験に曝された場合に、促進腐食条件に曝されなかったサンプルにほとんど似ているように思われ、サンプルへの大きな表面改質がないことを示唆する。
図1の顕微鏡写真はまた、暗領域及び明領域を示す。明領域は、初期基準アルミニウムと一致する、Alとおよそ3重量%のOとの主要な寄与を含む。暗領域は、接着剤の存在と一致する、大きいレベルのCのエリアを表す。
【0121】
上記実験からの結果は、BETAMATE 1620 US対照サンプルが、促進腐食条件への暴露後に、増加した量の酸素及び酸化アルミニウムをサンプルの表面において含有し、それは、酸化物形成と一致することを示す。表面上で検出される酸素の量は、SEM/EDSを用いて調べた場合に20倍増加していた。この増加層は、容易に剥離し、不十分なラップせん断性能のもっともらしい根本原因である。比較すると、接着剤がPECを含有する場合、促進腐食の兆候は、
図1に示されるように観察されない。
【0122】
分析実験2
図2において、初期(促進腐食条件に曝されていない)対照サンプル(左欄I)及びQM1326調合BETAMATE 1620 USサンプル(右欄II)についてのラップせん断試験後の露出アルミニウム表面の試験サンプルの2つの光学像(最上部列A)及び4つの電子顕微鏡写真(中央列B及び底部列C)を含む一連の画像を示す。
図2は、いくつかの暗ドメインが接着剤の領域を示す状態で、ほとんど特徴のない対照サンプルの表面を示す。連続領域は、基準アルミニウムサンプルと一致する、約3重量%のOを持った、Alからの主要な寄与を含む。一般に、この領域及び他の領域についての顕微鏡写真は、BETAMATE 1620 USの対照サンプルが大部分基材に対して接着破壊した(failed adhesively to)ことを示す。より低いエネルギー顕微鏡写真(例えば、5keV;示されていない)は、より少ない程度の凝集破壊又は残存打ち抜き油を示す試験サンプルの表面でのいくらかの残存炭素を示唆する。比較して、QM1326調合BETAMATE 1620 USシステムは、凝集破壊と一致する、表面での著しくより多い炭素ドメインを含有する。
図2の画像は、QM1326を使って接着剤を調合すると、初期システムについての破壊モードが変わることを示す。
【0123】
上記実験からの結果は、BETAMATE 1620 USへのQM1326の添加が、
図2に示されるように非腐食条件下で、ラップせん断試験中の破壊モードを、対照についてほとんど接着破壊からほとんど凝集破壊に変えることを示す。これは、接着剤と金属表面との間の相互作用の変更を示唆する。しかしながら、この変更は、初期接着強度の増加をもたらさない。
【0124】
分析実験3
図3において、QM1326での処理前(左欄I)及びQM1326での処理後(右欄II)のアルミニウム基材、Al6111の研磨表面の幾つかの電子顕微鏡写真を示す。星印及び矢印は、特徴場所について画像中へ挿入されている。顕微鏡写真についてのスケールバーは、5ミクロンである。
図3は、接着剤へのQM1326の添加で、残存有機汚染物質が金属から除去されることを示す。この有機汚染物質除去は、非局在化暗領域がQM1326暴露前には見出されるが、QM1326暴露後には見出されない画像で最も良く視覚化することができる。画像中に観察される相違が、QM1326と表面との相互作用によるものであり、追加のクリーニング(暴露後に表面は水及びアセトンで洗浄された)からではない場合、画像は、QM1326での処理がアルミニウムをエッチし、きれいにし得ることを示している。QM1326処理アルミニウム表面からの第2観察は、一連の小さい暗領域が処理表面上に現れることである。これらの小さい暗領域は、
図3の画像の右下隅において最も良く視覚化することができる。同様なエリアは、前に調べたサンプル(示されていない)において観察されたし、QM1326がアルミニウム表面をエッチするという現象を支持する表面の点蝕を示唆する。
【0125】
図3、表VI及び表VIIに関連して、様々なPECへのAl6111の暴露が、(i)酸化アルミニウム層厚さを減少させる(表VIを参照されたい)、(ii)Al上に薄いリン含有層を生成する(表VIIを参照されたい)、(iii)残存炭素リッチ表面材料を除去する(
図3を参照されたい)、及び(iv)表面をエッチし、小さい「穴」を生成する(
図3を参照されたい)ことを観察することができる。上記プロセスはまた、PECが接着剤中に調合成分として適用される場合にも起こると考えられる。
【0126】
【0127】
【0128】
上記試験の結果はまた、QM1326で処理され、3%のNaCl中に浸漬されたAlが対照と比べて腐蝕便益を提供しないことを示す。それ故、改善された耐食性は、金属と1620USとの間の改善された接着性/バリア性に関連して現れる。更に、攻撃的な溶媒クリーニング又は紙やすりでの摩耗によって改質されたアルミニウム基材は、PECの使用で観察されたものに似た便益を提供する(表IV及びVを参照されたい)。これは、表面改質が耐食性改善に重要な役割を果たしていることを示す。また、PECは、エポキシド基の開環によってビスフェノールAジグリシジルエーテル、つまりBADGEと相互作用し、ホスフェート基とエステル接合を形成することが観察される。QM1326及びSIPOMER PAM 4000の場合には、この反応は、エステル含有アクリレート構成成分での変性エポキシの形成をもたらす。これらの新たに形成された有機ホスフェートが耐食性を改善するのに役割を果たすことが理論化され得る。そして、Al6111をPEC添加物とともにエポキシ(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル)に曝すことは、金属の化学を変える。具体的には、Mg、C、Ca及びNaが金属表面から除去される。これは、PECが、エポキシ有機配送システムで配送される場合に金属表面と相互作用できることを強く支持する。
本発明は、以下の態様にも関する。
(1)(I)エポキシベースの接着性ポリマーと;(II)リン元素含有化合物とを含む接着剤組成物であって、前記接着剤組成物の耐食性が、少なくとも約10メガパスカルであり;及び前記接着剤組成物の接着強度の減少が、約40パーセント未満に最小化される組成物。
(2)前記リン元素含有化合物が、ホスホエチルメタクリレートモノエステルと、ホスホエチルメタクリレートジエステルと、リン酸と、メチルメタクリレートとの混合物である、上記(1)に記載の接着剤組成物。
(3)前記エポキシベースの接着性ポリマーが、(a)硬化性エポキシ化合物又は2種以上の硬化性エポキシ化合物の組み合わせと;(b)35,000以下の数平均分子量、少なくとも1,000原子質量単位の重量を有する少なくとも1つのポリエーテル及び/又はジエンゴムセグメント、及びキャップされたイソシアネート基を有する1種以上の反応性ウレタン基含有及び/又は尿素基含有ポリマーと、(c)少なくとも1種のエポキシ硬化触媒と、(d)硬化剤とを含む混合物である、上記(1)に記載の接着剤組成物。
(4)前記エポキシベースの接着性ポリマーがビスフェノールAジグリシジルエーテルである、上記(1)に記載の接着剤組成物。
(5)前記エポキシベースの接着性ポリマーが尿素強化ポリマーである、上記(1)に記載の接着剤組成物。
(6)エポキシベースの接着性ポリマーの量が、約40重量パーセント~約60重量パーセントである、上記(1)に記載の組成物。
(7)リン元素含有化合物の量が、約20重量パーセント以下である、上記(1)に記載の組成物。
(8)リン元素含有化合物の量が、約0.1重量パーセント~約5重量パーセントである、上記(1)に記載の組成物。
(9)前記組成物の前記耐食性が、約10メガパスカル~約13メガパスカルである、上記(1)に記載の組成物。
(10)前記組成物の前記接着強度が、約7.1メガパスカル~約13メガパスカルである、上記(1)に記載の組成物。
(11)(a)エポキシベースの接着性ポリマーと;(b)リン元素含有化合物とを混ぜ合わせる工程を含む接着剤組成物の製造方法。
(12)リン元素含有化合物をエポキシベースの接着性ポリマーに添加する工程を含む、接着剤組成物の前記耐腐食性の増加方法。
(13)リン元素含有化合物添加物が、金属表面から表面汚染物質を同時にまた除去しながら、前記接着剤と前記金属表面との間の高められた相互作用を促進する、その場表面クリーナーとして働く、請求項12に記載の方法。
(14)(A)(a)エポキシベースの接着性ポリマーと;(b)リン元素含有化合物とを混ぜ合わせて構造用接着剤調合物を形成する工程と;(B)第1基材を別の第2基材と接触させる前に工程(A)からの前記調合物を前記第1基材の表面の少なくとも一部に接触させ、前記2つの基材間のボンドラインにおいて工程(A)の前記接着剤の層を形成してアセンブリを形成する工程と;(C)前記2つの基材間の前記ボンドラインにおける前記接着剤調合物の前記層を介して前記第1基材と第2基材とを接触させてアセンブリを形成する工程と;(D)前記ボンドラインにおける前記接着剤層を、少なくとも130℃の温度に加熱することによって硬化させて前記ボンドラインにおいて前記2つの基材に接合した硬化接着剤を形成する工程と、を含む2つの基材の接合方法であって、前記接着剤調合物の前記耐食性が、少なくとも20パーセントだけ増加する方法。
(15)前記第1基材がアルミニウムである、上記(14)に記載の方法。
(16)前記第2基材が複合材料である、上記(14)に記載の方法。
(17)前記第1基材が鋼であり、前記第2基材が鋼である、上記(14)に記載の方法。
(18)前記第1基材が鋼であり、前記第2基材がアルミニウムである、上記(14)に記載の方法。
(19)前記第1基材が鋼であり、前記第2基材が複合材料である、上記(14)に記載の方法。
(20)前記第1基材がアルミニウムであり、前記第2基材がアルミニウムである、上記(14)に記載の方法。
(21)前記第1基材がアルミニウムであり、前記第2基材が複合材料である、上記(14)に記載の方法。
(22)前記接着剤が、アンダーボンディングのために使用される、上記(14)に記載の方法。