(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】器具取り付けシステム
(51)【国際特許分類】
F21V 21/04 20060101AFI20230905BHJP
F21S 8/02 20060101ALI20230905BHJP
F21V 21/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
F21V21/04 300
F21S8/02 420
F21V21/00 140
F21V21/00 130
(21)【出願番号】P 2020561573
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 US2019014534
(87)【国際公開番号】W WO2019144115
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-11
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520268997
【氏名又は名称】サバント システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Savant Systems,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】クリスティー,ケアリー,エル
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0001958(KR,U)
【文献】実開平06-084629(JP,U)
【文献】特開2013-214442(JP,A)
【文献】特開2014-072136(JP,A)
【文献】特開2009-140650(JP,A)
【文献】特開2013-110076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0221620(US,A1)
【文献】特開2016-152465(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104428580(CN,A)
【文献】国際公開第2017/169549(WO,A1)
【文献】特開2016-103404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 21/00-21/40
H04R 1/00-1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁または天井の表面内の穴の中に保持されるよう構成された取
り付けリングであって、
中空のキャビティを画定する内側表面を有する取り付けリング本体、および
取り付けリング本体から延出する取
り付けリングフラン
ジを含む取り付けリング;および
取
り付けリング内に挿入されるよう構成された器具キャニスターであって、
取り付けリング本体によって画定された中空のキャビティ内部に嵌合する寸法付けられた器具キャニスター本体、
器具の機能を提供するよう構成された内部器具、
一つまたはより多くの第一のバネクリップ、および
器具キャニスター本体から延出し、取り付けリングフランジに係合するよう構成された器具キャニスターフランジを含む器具キャニスター
を含み、器具を壁または天井に設けるための取り付けシステムであって:
器具キャニスターが取り付けリング内部に
、器具キャニスターフランジと取り付けリングフランジとの間の磁気吸引力
と、一つまたはより多くの第一のバネクリップのバネ力の組み合わせによって保持される、取り付けシステム。
【請求項2】
一つまたはより多くの第一のバネクリップは器具キャニスター本体に固定され、その外側表面から延出して取り付けリング本体の内側表面または上部リムに係合する、請求項
1の取り付けシステム。
【請求項3】
取り付けリングフランジは強磁性金属を含み、そして取り付けシステムはさらに:
器具キャニスターフランジに配置され、取り付けリングフランジの強磁性金属を磁気的に引き付ける一つまたはより多くの磁石を含む、請求項1
又は2の取り付けシステム。
【請求項4】
器具はアクティブスピーカーまたはパッシブスピーカーを含み、そして内部器具は少なくともスピーカーコーンおよびボイスコイルを含む、請求項1
~3の何れか1つの取り付けシステム。
【請求項5】
器具キャニスターの少なくとも一部分を覆うグリルをさらに含み、グリルは器具キャニスターフランジ
に配置された一つまたはより多くの磁石に磁気的に引き付けられる一つまたはより多くの強磁性金属片を含み、そして器具キャニスターフランジに配置された一つまたはより多くの磁石は器具キャニスターを取り付けリング内部に保持すると共にグリルを器具キャニスターに保持する両方の役割を果たす、請求項
3に従属する請求項4の取り付けシステム。
【請求項6】
器具は、照明器具、カメラ、煙検出器または一酸化炭素検出器の少なくとも一つを含む、請求項1
~3の何れか1つの取り付けシステム。
【請求項7】
取り付けリングは、壁面または天井面の穴に直接保持されるよう構成されている、請求項1
~6の何れか1つの取り付けシステム。
【請求項8】
取り付けリングフランジは壁面または天井面の外側表面に係合するよう構成され、そして取り付けシステムはさらに、取り付けリング本体に固定され、その外側表面から延出して壁面または天井面の内側面に係合する、一つまたはより多くの第二のバネクリップを含み、取り付けリングは壁面または天井面の穴の中に、一つまたはより多くの第二のバネクリップにより生じる挟み込み作用によって保持されるよう構成されている、請求項
1~7の何れか1つの取り付けシステム。
【請求項9】
壁または天井に配置された取り付け前ブラケットをさらに含み、
取り付けリングは取り付け前ブラケットの内部に保持されるよう構成されている、請求項1
~6の何れか1つの取り付けシステム。
【請求項10】
取り付けリング本体に固定され、その外側表面から延出して取り付け前ブラケットに少なくとも部分的に係合する、一つまたはより多くの第二のバネクリップを含み、取り付けリングは壁または天井にある取り付け前ブラケットの中に、一つまたはより多くの第二のバネクリップにより生じる挟み込み作用によって保持されるよう構成されている、請求項
9の取り付けシステム。
【請求項11】
取り付けリング本体および器具キャニスター本体は両方とも実質的に円筒形であり、取り付けリングフランジは取り付けリング本体の端部において半径方向に延出し、そして器具キャニスターフランジは器具キャニスター本体の端部から半径方向に延出する、請求項1
~10の何れか1つの取り付けシステム。
【請求項12】
器具を壁または天井に設けるための器具取り付けシステムであって:
壁または天井の表面内の穴に保持されるよう構成された取
り付けリングと;
器具の機能をもたらすよう構成された内部器具を保持する器具キャニスター
であって、器具キャニスターは取り付けリング内部に挿入されるよう構成され、器具キャニスターは
一つまたはより多くの磁石、および
一つまたはより多くの第一のバネクリップを含んで
いる器具キャニスターと、および
器具キャニスターの少なくとも一部分を覆うグリルと
を含み、
器具キャニスターは取り付けリング内部に、一つまたはより多くの磁石によって生成される磁気吸引力と、一つまたはより多くの第一のバネクリップにより生成されるバネ力の組み合わせによって保持さ
れ、
一つまたはより多くの磁石は器具キャニスターを取り付けリング内部に保持すると共にグリルを器具キャニスターに保持する両方の役割を果たす、取り付けシステム。
【請求項13】
器具はアクティブスピーカーまたはパッシブスピーカーを含み、そして内部器具は少なくともスピーカーコーンおよびボイスコイルを含む、請求項
12の取り付けシステム。
【請求項14】
器具は、照明器具、カメラ、煙検出器または一酸化炭素検出器の少なくとも一つを含む、請求項
12の取り付けシステム。
【請求項15】
取り付けリングは、壁面または天井面の穴に直接保持されるよう構成されている、請求項
12~14の何れか1つの取り付けシステム。
【請求項16】
取り付けリングは壁または天井に配置された取り付け前ブラケットの内部に保持されるよう構成されている、請求項
12~14の何れか1つの取り付けシステム。
【請求項17】
取り付けリン
グおよび器具キャニスタ
ーは両方とも実質的に円筒形である、請求項
12~16の何れか1つの取り付けシステム。
【請求項18】
器具を壁または天井に設けるための方法であって:
一回目に、
壁または天井の表面の穴の中に取り付けリングを挿入し、取り付けリングは取り付けリングフランジを有し、および
取り付けリングを壁または天井に保持し;そして
一回目の後の二回目に、
内部器具を保持する器具キャニスターを取り付けリングの中に挿入し、器具キャニスターは取り付けリングフランジに重なって延出し係合する器具キャニスターフランジを有し、および
器具キャニスターフランジと取り付けリングフランジとの間の磁気吸引力
と、一つまたはより多くの第一のバネクリップのバネ力の組み合わせによって、器具キャニスターを取り付けリング内部に保持することを含む、方法。
【請求項19】
取り付けリングを保持すること
は:
一つまたはより多くの第二のバネクリップのバネ力によって取り付けリングを壁または天井に保持することを含む、請求項
18の方法。
【請求項20】
器具キャニスターを取り付けリング内部に保持することが、工具を使用せずに行われる、請求項
18または19の方法。
【請求項21】
磁気吸引力は器具キャニスターフランジおよび/または取り付けリングフランジに配置された一つまたはより多くの磁石により生成される、請求項18~20の何れか1つの方法。
【請求項22】
一つまたはより多くの第一のバネクリップは器具キャニスターの器具キャニスター本体に固定され、その外側表面から延出して取り付けリングの取り付けリング本体の内側表面または上部リムに係合して、バネ力を生成する、請求項18~21の何れか1つの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的に、住宅および商業施設の構造に器具を設置することに関し、より特定的には、壁埋込み式および天井埋込み式の器具取り付けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
壁埋込み式および天井埋込み式の器具、例えば壁埋込み式および天井埋込み式のスピーカー、照明設備、カメラ、煙および/または一酸化炭素検出器その他は、住宅および商業施設の用途において、ますます普及してきている。こうした器具は、自立型の器具や表面装着型の器具と対比して幾つもの利点をもたらすが、その理由は、それらが床面積を消費せず、また一般に、外観が邪魔にならないからである。しかしながら、既存の壁埋込み式および天井埋込み式の器具取り付けシステムには幾つかの欠点がある。中でも特に、既存の壁埋込み式および天井埋込み式の器具についての設置手順は通常、時間がかかると共に、間違いを起こしやすい。こうした欠点は、改築(後付け)用および新築用の両方について当てはまる。
【0003】
後付けで壁埋込み式または天井埋込み式のスピーカーを設置する場合を考えてみる。こうした場合に、施工者(例えばオーディオ/ビデオ(A/V)施工者)は、既存の壁面または天井面(例えば石膏ボード(乾式壁))の選択した場所に穴を開け、その壁または天井を通してケーブルを引き回してよい。施工者は次いでケーブルを接続し、開けた穴の中へとスピーカーを直接に設置する。スピーカーは典型的には、幾つかの(例えば4つ)、くの字型の装着アセンブリを含んでいる。これらのアセンブリは典型的には、スピーカーのフランジ部分を通って延びるネジと、ネジに取り付けられたプラスチック製または金属製のくの字部品からなる。ネジが締められると、くの字部品は後退位置から伸長位置へと旋回し、壁面または天井面(例えば石膏ボード)の内側の面に対して締め付けられる。こうした締め付けにより、フランジは壁面または天井面(例えば石膏ボード)の外側表面に引き寄せられる。くの字部品とフランジとの間での挟み込み動作により、スピーカーはその場所に保持される。
【0004】
しかしながら、そうした取り付けシステムは、幾つもの欠点を有している。ネジを締め付けるために、施工者は設置に際して工具、例えばネジ回しまたはドリル/ドライバを使用することが必要とされる。施工者がネジを締め付け過ぎると、スピーカーのフランジが曲がってしまうことがあり、スピーカーのグリルの設置が妨げられたり、またはスピーカーを装着しようとする壁面または天井面(例えば石膏ボード)を傷つけることがある。施工者がネジを十分に締め付けない場合は、壁または天井内部にスピーカーをしっかりと固定することができないであろう。施工者がスピーカーを取り外すことが必要となった場合(例えば、ケーブルの接続を変更またはチェックしたり、或いは他の目的のために)、そのプロセスには最新の注意を要しうる。くの字部品は必ずしも、邪魔にならないように旋回して戻る訳ではなく、取り外しを妨げる。また、取り付けと取り外しを繰り返すと、壁面または天井面(例えば石膏ボード)に傷を付ける場合があるが、これはくの字部品とフランジがそれらの表面に対して直接に係合するためである。この傷が、フランジ(および/またはグリルまたは表面プレート)によって隠される部分を越えて拡大した場合には、外観上見苦しくならないように、補修を行うことが必要になりうる。建築工程を単純化するために、施工者は他の作業を行うついでに、建築プロジェクトの早い段階で器具を設置しようとする傾向がある。取り外しを繰り返すと壁面または天井面(例えば石膏ボード)に傷が付く可能性があるため、施工者はまた、器具をその場所に残したままにしようとする傾向がある。こうした早期の設置は、現場で行われている作業中に存在する塵埃、破片、衝撃、湿気その他による損傷に対して、器具の内部をより多く曝すことになりうる。こうした欠点は、スピーカーに限ったことではない。他の種類の後付けの壁埋込み式または天井埋込み式の器具の設置も、同様の問題に直面している。
【0005】
次に、新築で壁埋込み式または天井埋込み式のスピーカーを設置する場合について考えてみる。施工者は、壁面または天井面(例えば石膏ボード)を設置する前に、ケーブルを引き回し、そして間柱または梁へと、取り付け前ブラケット(「ラフイン」ブラケットとも呼ばれる)を取り付けてよい。典型的な取り付け前ブラケットは、一対の装着ウイングに取着された装着フレームを含んでいる。この装着フレームは比較的薄いフレームであり、予定しているスピーカーに適切な大きさの穴を開けるための型板として役立つ。装着ウイングは、装着フレームの両側から梁または間柱の間に渡されるように延びる、薄いフランジ(典型的には金属薄板)である。この装着ウイングは、柱間の両側で梁または間柱に釘止めまたはネジ止めされて、装着フレームを選択された位置に保持する。壁面または天井面(例えば石膏ボード)が設置された後、取り付け前ブラケットに基づいて穴が開けられる。施工者は次いで、ケーブルを接続し、開けた穴の中にスピーカーを設置する。スピーカーは典型的には、後付けの用途において使用されるものと類似しており、くの字型の取り付けアセンブリを含んでいる。しかしながら新築用途の場合には、ネジが締め付けられると、くの字部品は外側へと旋回し、壁面または天井面(例えば石膏ボード)の内側表面自体ではなく、表面の内側面上に配置されている取り付け前ブラケットに対して係合する。
【0006】
それでも、取り付け前ブラケットを使用した設置は、幾つもの欠点を有している。施工者は依然として、取り付け前ブラケットにより画定された穴の中にスピーカーを設置するために、工具を使用することが必要とされる。くの字部品のアセンブリは、壁面または天井面(例えば石膏ボード)それ自体の内側表面ではなく、取り付け前ブラケットに係合するのではあるが、ネジの締め過ぎまたは締め不足、取り外しの難しさ、および表面に対する潜在的な損傷についての問題が依然として存在しうる。繰り返しになるが、これらの欠点はスピーカーに限ったことではない。新築の壁埋込み式または天井埋込み式の、他の種類の器具の設置も、同様の問題に直面している。
【0007】
従って、これらの欠点の幾つかまたは全部に対処することのできる、新たな壁埋込み式および天井埋込み式の器具取り付けシステムに対するニーズが存在している。そうした器具取り付けシステムが、スピーカー、照明器具、カメラ、煙および/または一酸化炭素検出器その他といった、広範囲の器具に適用可能であり、また後付け用途および新築用途の両方に適用可能であれば、それは望ましいことである。
【発明の概要】
【0008】
一つの例示的な実施形態において、住宅および商業施設において、壁埋込み式および/または天井埋込み式で使用するための、後付け用途および新築用途の両方に適した器具取り付けシステムが提供される。このシステムは、器具の取付けを支援する取り付けリングおよび器具キャニスター(例えばスピーカーキャニスター、照明キャニスター、カメラキャニスター、煙および/または一酸化炭素検出器キャニスターその他)を含んでおり、器具キャニスター(缶)は内部器具(例えばアクティブスピーカーまたはパッシブスピーカー、投光、スポットまたはウォールウォッシャーといった照明器具、カメラ、煙および/または一酸化炭素検出器その他)を含んでいる。
【0009】
例示的な施工においては、施工者が一回目に取り付けリングを設置するが、これは多くの場合、プロジェクトの比較的早い段階である。後付けの場合には、取り付けリングは、既存の壁面または天井面(例えば既存の石膏ボード)の選択された位置に開けられた穴の中へと設置される。この取り付けリングは、壁または天井の外側表面(例えば石膏ボードの外側表面)に係合する取り付けリングのフランジ(例えばスチールのような強磁性金属から作成されている)と、そして取り付けリング本体に固定され、壁または天井の内側表面(例えば石膏ボードの内側表面)に係合する幾つもの(例えば4つの)バネクリップによって保持される。バネクリップによって生成される挟み込み動作が、取り付けリングをその場に保持する。
【0010】
新築用途の場合には、壁面または天井面(例えば石膏ボード)が取り付け設置される前に、取り付け前ブラケット本体およびウイングを含む取り付け前ブラケットが設置される。取り付け前ブラケットは、ウイングを固定具(例えば釘)によって間柱または梁に取り付けることによって保持される。取り付け前ブラケットは、壁面または天井面に穴を開ける(例えば石膏ボードを切開する)ためのガイドとして使用されてよく、または面一の埋め込み式設置の場合には、漆喰またはコンパウンドを塗布してよいマッド(漆喰)ハウジングおよびマッド(漆喰)リングを一緒に使用してよく、それによって穴が画定される。取り付けリングは取り付け前ブラケットによって画定された穴の中に装填され、幾つもの(例えば4つの)バネクリップによって、後付け用途の場合と同じようにして保持される。
【0011】
典型的には、器具キャニスターは二回目に、プロジェクトの比較的後の段階で設置される。器具キャニスターは、取り付けリング内部へと挿入され、そして取り付けリングのフランジに引き付けられる幾つもの(例えば4つの)磁石と、取り付けリングの本体の内側表面に係合する幾つもの(例えば4つの)付加的なバネクリップとの組み合わせによって、取り付けリング内に保持される。幾つかの場合には、器具キャニスターが配置されたならば、グリルまたは表面プレートを適用して、仕上がった外観をもたらすようにしてよい。
【0012】
こうした器具取り付けシステムは、幾つもの利点を有しうる。壁面または天井面(例えば石膏ボード)の穴または取り付け前ブラケットの中に取り付けリングを設置すること、そして器具キャニスターを取り付けリングの中に設置することは、工具不要でありうる(すなわちネジ回し、ドリル/ドライバ、ハンマーまたは他の手動工具または電動工具の使用を必要としない)。従って、ネジの締め過ぎまたは締め不足の問題、およびそれによって生ずる潜在的な傷またはしっかりとした取り付けの欠落が、回避されうる。さらに、器具キャニスター(内部器具を保持する)の全体を、壁面または天井面を傷付けずに(例えば石膏ボードを傷付けずに)、壁または天井から簡単に、さらには繰り返して取り外すことができる。さらにまた、作業の課題を、プロジェクトの工程中において、より適した時点で行うことができる。例えば、器具キャニスター (内部器具を保持する)の設置は、プロジェクトの後の段階まで保留しておいてよい。このことは、壊れやすい可能性のある内部器具に対する、塵埃、破片、衝撃、湿気その他による損傷のリスクを最小限にしうる。
【0013】
この発明の概要において記載した以外の、種々の付加的な特徴および代替的な実施形態を実施してよいことが理解されるべきである。この発明の概要は単に、読み手に対する簡単な導入部であることを意図しており、ここに記載した例が本開示のすべての態様を包含したり、本開示の必要なまたは本質的な態様であることを示すものでも、示唆するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の説明は、例示的な実施形態についての添付図面を参照するが、そこにおいて:
【
図1】
図1は、器具がアクティブスピーカーである実施形態における、例示的な器具取り付けシステムを示す斜視図であり;
【
図2】
図2は、
図1の例示的な器具取り付けシステムを示す正面図であり;
【
図3】
図3は、
図1の例示的な器具取り付けシステムの器具キャニスターの上面図であり;
【
図4】
図4は、
図1の例示的な器具取り付けシステムの取り付けリングの上面図であり;
【
図5】
図5は、
図1の例示的な器具取り付けシステムの器具キャニスターの底面図あり;
【
図6】
図6は、
図1の例示的な器具取り付けシステムの取り付けリングの底面図であり;
【
図7】
図7は、器具がスピーカーである実施形態における器具キャニスターの底部を覆ってよい例示的なグリルであり;
【
図8】
図8は、器具がパッシブスピーカーである実施形態において用いられる、例示的な器具取り付けシステムを示す斜視図であり;
【
図9a】
図9aは、器具が照明器具、具体的には投光である実施形態において用いられる、例示的な取り付けシステムを示す斜視図であり;
【
図9b】
図9bは、器具が照明器具、具体的にはスポットである実施形態において用いられる、例示的な取り付けシステムを示す斜視図であり;
【
図9c】
図9cは、器具が照明器具、具体的にはウォールウォッシャーである実施形態において用いられる、例示的な取り付けシステムを示す斜視図であり;
【
図10】
図10は、器具がカメラである実施形態において用いられる、例示的な器具取り付けシステムを示す斜視図であり;
【
図11】
図11は、器具が煙および一酸化炭素検出器の組み合わせである実施形態において用いられる、例示的な器具取り付けシステムを示す斜視図であり;
【
図12】
図12は、例示的な器具取り付けシステムと共に使用されてよい例示的な取り付け前ブラケットを示す斜視図であり;そして
【
図13】
図13は、面一の埋め込み式設置を可能にするため、例示的な取り付け前ブラケットに取着されうる、例示的なマッドハウジングおよびマッドリングを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1-6を参照すると、器具がアクティブスピーカーである実施形態について、例示的な器具取り付けシステム100が示されている。このシステム100は、取り付けリング110と器具キャニスター(例えばスピーカーキャニスター)120を含んでいる。取り付けリング110は実質的に円筒形の取り付けリング本体130を含み、これは中空のキャビティを画定し、またその下端から半径方向に延びる取り付けリングフランジ135を画定している。取り付けリング本体130および取り付けリングフランジ135は、一片の強磁性金属(例えばスチール)から一体的に形成されてよい。代替的には、取り付けリング本体130および取り付けリングフランジ135は別個の部品であってよく、一体に接合される。こうした場合、取り付けリングフランジ135だけが強磁性金属(例えばスチール)から作成され、そして本体は別の材料から作成されるようにしてよい。幾つもの(例えば4つの)バネクリップ140が、取り付けリング本体130の外側表面に固定されている。これらのバネクリップは、スロット接続によって取り付けリング本体130に摺動固定されてよく、そこではバネクリップ140の内側部分が、取り付けリング本体130に形成されたスロットを通して組み付けられている。スロット接続は、バネクリップ140が、ある動作範囲にわたって垂直方向に移動することを許容し、簡単な設置を容易にし、そして設置された場合に、壁面または天井面の厚さの相違(例えば異なる厚さの石膏ボード)および取り付け前ブラケットの厚さの相違に対処することを許容する。代替的には、バネクリップ140は、例えば固定具(例えばリベット、ネジ、その他)を使用して、取り付けリング本体130にしっかりと固定されてよい。バネクリップ140の外側部分は、後屈部分145を含んでいてよい。バネクリップ140は、大きく撓んだ後に元の形状に戻る、バネ鋼のような材料から作成されていてよい。
【0016】
典型的な設置例において、施工者は一回目に(多くの場合、プロジェクトの比較的早い段階において)、取り付けリング110を設置する。後付けの用途においては、取り付けリング110はケーブル配線を探している場合に設置されてよいが、しかし新しい部品(例えばA/V部品)はまだ装着されていない。施工者は、壁面または天井面の(例えば石膏ボードの)選択した位置に、取り付けリング本体130の断面よりも僅かに大きな直径を有する穴を開ける。この穴はフリーハンドで、または型枠その他のガイドの助けを借りて切り取ってよい。次いで、取り付けリング本体130が挿入される。挿入に際して、バネクリップ140は取り付けリング本体130に対して押し付けられるが、次いで壁または天井のキャビティ内に入ると再度跳ね戻る。取り付けリング110は壁または天井の中へときっちりと押し込まれ、かくしてバネクリップ140はその動作範囲にわたって摺動され、後屈部分145は壁面または天井面の内側表面(例えば石膏ボードの内側表面)に係合する。取り付けリングのフランジ135は、壁面または天井面の外側表面(例えば石膏ボードの外側表面)に係合する。バネクリップ140によって生成される挟み込み動作は、取り付けリング110をその場所に保持する。
【0017】
新築用途においては、取り付けリング110は、取り付け前ブラケット1200、ケーブル配線、並びに壁面および天井面(例えば石膏ボード)が設置された後に、しかし現場における建築が完成するよりは前に取り付けられてよい。
図12を参照すると、取り付け前ブラケット1200は取り付け前ブラケット本体1220およびウイング1210を含んでいる。取り付け前ブラケット1220は、面材(例えば石膏ボード)を壁または天井に付加するより前に、ウイング1210を固定具(例えば釘)によって間柱または梁へと取り付けることによって保持される。幾つかの設置例では、取り付け前ブラケット1200は、壁面(例えば石膏ボード)に穴を開けるためのガイドとして使用されてよい。面材(例えば石膏ボード)が配置された後、取り付けリング110は取り付け前ブラケットによって画定された穴の中に挿入される。面一の埋め込み式設置においては、取り付け前ブラケットはマッドハウジング1310およびメッシュ状のマッドリング1320と組み合わせて使用してよい。マッドハウジング1310は、壁面または天井面(例えば石膏ボード)の設置に先立って、取り付け前ブラケットに取着してよく、そして面材(例えば石膏ボード)がハウジングのところまで設置される。マッドリング1320はこれに装着されてよく、そして漆喰またはコンパウンドが塗布される。
【0018】
取り付けリング110は、壁面または天井面(例えば石膏ボード)の中に直接設置する場合と同様にして、取り付け前ブラケット1200に設置される。取り付けリングは取り付け前ブラケット1200によって画定された穴の中へと挿入され、そして挿入の間にはバネクリップ140は取り付けリング本体130に対して押し付けられるが、次いで穴の内部に入ったならば跳ね戻る。取り付けリング100は穴の中にきっちりと押し込まれ、かくしてバネクリップ140はその動作範囲にわたって摺動され、後屈部分145は取り付け前ブラケットの内側表面に係合する。典型的な設置例では、取り付けリングのフランジ135は、壁面または天井面の外側表面(例えば石膏ボードの外側表面)に係合する。面一の埋め込み式設置においては、取り付けリングのフランジ135はマッドハウジングに係合してよい。バネクリップ140によって生成される挟み込み動作は、取り付けリング110をその場所に保持する。
【0019】
器具キャニスター120は、取り付けリング本体130よりも僅かに小さな直径の大きさの、実質的に円筒形の器具キャニスター本体150、および下端部から器具キャニスター本体150の半径方向に延出する器具キャニスターフランジ155を含んでいる。器具キャニスター本体150および器具キャニスターフランジ155は一体的に形成されてよく、または別個の部品が相互に接合されたものでもよい。幾つもの(例えば4つの)磁石160が器具キャニスターフランジ155に配置されている。これらの磁石160は、器具キャニスターフランジ155の上側表面から下側表面まで貫通して延びる孔に配置されてよい。代替的には、磁石160は凹部内に配置されてよく、または表面上に配置されてよい。磁石160は、圧入、接着、または他の形式の固定取着によって、その場に保持されていてよい。器具キャニスターフランジ155は、取り付けリングフランジ135よりも僅かに大きな直径を有する、隆起したリップ部157を有していてよい。この隆起したリップ部157は、器具キャニスターフランジ155の上側および下側の両方に盛り上がっていてよい。
【0020】
図7を参照すると、器具が
図1から
図6に示されたアクティブスピーカーのようなスピーカーである実施形態について、グリルまたは表面プレート170が提供されてよい。このグリルまたは表面プレート170は、隆起したリップ部157よりも僅かに小さな直径を有して、かくして器具キャニスターフランジ155に取り付けられた場合に、リップ部157の内側に嵌合するようにされてよい。グリル170は、フレーム上に引き伸ばされた繊維材料から作成されていてよい。磁石160と一致する位置において、幾つもの強磁性金属(スチール)片が、フレームに配置されていてよい。
【0021】
幾つもの(例えば4つの)付加的なバネクリップ165が、器具キャニスター本体150に固定され、そこから外側へと延びていてよい。これらの付加的なバネクリップ165は、固定具(例えばリベット、ネジその他)または他の尖った接続形態を使用して器具キャニスター本体150に固定されてよく、そして大きく撓んだ後に元の形状に復帰する材料(例えばバネ鋼)から作成されていてよい。
【0022】
内部器具が、器具キャニスター120内に配置されてよい。器具が
図1から
図6に示すアクティブスピーカーのようなスピーカーである実施形態においては、スピーカーコーン、サラウンド、およびダストキャップ159(
図5参照)を器具キャニスター本体150の底面に配置し、器具キャニスター本体150の内側に設けられたボイスコイルおよびスピーカーマグネット(図示せず)によって駆動してよい。アクティブスピーカーの実施形態において、内部器具はまた、パワーオーバーイーサネット(POE)ポート185を含む、アクティブクロスオーバー部品およびアンプアセンブリ175をも含んでいてよい。他の実施形態においては、内部器具は他の形態を取ってよい。
図8を参照すると、器具が増幅性能を欠くパッシブスピーカーである実施形態においては、内部器具は、スピーカーレベルのオーディオビアポート190を含む、パッシブスピーカー背面アセンブリ177を含んでいてよい。
図9aから
図9cを参照すると、器具が照明器具である実施形態においては、内部器具は、投光エレメント(例えば発光ダイオード(LED)の投光照明電球)910、スポットライトエレメント(例えばLEDのスポットライト照明電球)920、またはウォールウォッシャーエレメント(例えば指向性マウント内のLED電球)930を含んでいてよい。
図10を参照すると、器具がカメラ1000である実施形態においては、内部器具はレンズ、イメージセンサーおよび付属の電子回路を含んでいてよい。
図11を参照すると、器具が煙および一酸化炭素検出器の組み合わせ1100である実施形態においては、内部器具は、煙の光学的検知を行うためのLEDおよび光電セル、イオン化に基づいて煙の検出を行うためのイオン化チャンバーおよび電極、一酸化炭素検出を行うための金属酸化物半導体または電気化学的センサー、警告用スピーカー、並びに他の付属の電子回路および接続を含んでいてよい。多種多様な他の器具について、代替的に器具取り付けシステム100の使用を行ってよく、そして内部器具は数多くの異なる形態を取ってよいことが理解されるべきである。
【0023】
典型的な設置例においては、施工者は二回目に、多くの場合にはプロジェクトの遅い段階において、器具キャニスター120を設置する。後付けの用途においては、この二回目というのは、すべての配線が設置され、プロジェクトが完了に向かって進んでいる時点であってよい。新築用途においては、この二回目は、建築が実質的に完了し、デリケートな内部器具が、塵埃、破片、衝撃、湿気その他による損傷をより受けにくくなった時点であってよい。器具キャニスター120を設置するために、施工者は配線ケーブルを器具キャニスターに接続し、次いで器具キャニスター本体150を取り付けリング本体130によって画定された中空のキャビティ内へと挿入し、そして内部へと押し込む。器具キャニスター120は、取り付けリングフランジ135に引き付けられる磁石160と、取り付けリング本体130の内側表面および上部リムに係合して追加の設置安全性をもたらす付加的なバネクリップ165のバネ力との組み合わせによって保持される。幾つかの場合には、例えば器具がアクティブスピーカーまたはパッシブスピーカーである場合には、施工者は器具キャニスター120の下側表面に対してグリルまたは表面プレート170を適用し、磁石160によってその位置に保持されるようにすることによって、設置を完了させてよい。こうした場合、磁石160は二つの役割を果たしてよく、器具キャニスター120を取り付けリング110に保持するのを補助し、そしてグリルまたは表面プレート170を保持するという両者に資する。
【0024】
必要であるならば、器具キャニスターフランジ155を掴んで引っ張ることによって、施工者は器具キャニスター120を取り付けリング120から取り外すことができる。追加的なバネクリップ165は、より円滑な取り外しを可能にし、また器具キャニスター120が落下する可能性を最小限にする。磁石は距離の増大とともに、強い吸引力から弱い吸引力へと迅速に遷移する。こうした遷移は、施工者を驚かせることがあり、器具キャニスター120を落とすリスクを増大させる。追加的なバネクリップ165は、取り付けリング本体130の内壁に係合して引きずられるものであるから、より長い距離にわたって抵抗力をもたらしてよく、取り外しに必要とされる力をより円滑にする。
【0025】
この器具取り付けシステム100は、従来の設計に対して幾つもの利点をもたらしうる。例えば、器具キャニスター120の取り付けリング110内への設置、および取り付けリング110の壁面または天井面(例えば石膏ボード)の穴の中への設置は工具不要であってよく、圧入によって簡単に行われる。ネジの締め過ぎまたは締め不足の問題、およびフランジまたは壁面または天井面(例えば石膏ボード)に対する潜在的な傷の問題、またはしっかりとした取付けの欠落の問題は、回避される。さらに、器具キャニスター120は取り付けリング110から容易に取り外し可能である。繰り返しての取り外しが必要とされる場合でも、それは壁面または天井面(例えば石膏ボード)の摩耗や潜在的な傷付けなしに行うことができる。さらにまた、この器具取り付けシステム100は融通性をもって使用されてよく、新築および後付けの作業工程中で最も都合が良く、内部器具に対する損傷が最も回避されうる時点で作業を行うことが可能となる。
【0026】
寸法および種類の異なる器具に対応するために、器具取り付けシステム100は多種多様な異なるサイズで構成してよいことが理解されねばならない。例えば、器具取り付けシステムは特に、4インチ(100ミリ)、5インチおよび6.5インチの構成で使用されてよい。
【0027】
さらに、器具取り付けシステム100に対して多くの異なる改変および修正を行ってよいことが理解されねばならない。例えば上記においては、取り付けリング110および器具キャニスター120がそれぞれ実質的に円筒形の本体130、150を有してよい例示的な実施形態について記載されているが、取り付けリング本体130および器具キャニスター本体150が種々の異なる種類の角柱に実質的に類似してよいように、取り付けリング110および器具キャニスター120は異なる断面(例えば矩形断面、角を丸くした矩形断面、正方形断面、楕円形断面、その他)を有してよいことが理解されねばならない。したがって、「リング」および「キャニスター(缶)」という用語は、異なる断面、および円筒形以外を形成する種類の角柱を包含するように広く解釈されるべきである。
【0028】
さらに、上記においては、取り付けリングフランジ135が強磁性金属(例えばスチール)で作成され、グリルまたは表面プレート170が強磁性金属(例えばスチール)片を含んでいて、器具キャニスターフランジ155にある磁石160が両者に対して引き付けられる、例示的な実施形態について記載しているが、磁石の引き付けの原理を異なる仕方で利用する、異なる構成配置が可能であることが理解されねばならない。例えば磁石は、取り付けリングフランジ135および/またはグリルまたは表面プレート170に設けて、器具キャニスターフランジ155にある磁石160と相互作用するようにしてよい。代替的には、磁石は取り付けリングフランジ135および/またはグリルまたは表面プレート170に設けて、器具キャニスターフランジ155には磁石を設けないようにしてもよい。こうした場合、器具キャニスターフランジ155は強磁性金属(例えばスチール)で構成して、引き付けが可能となるようにしてよい。一つまたはより多くの磁石を使用する多種多様な追加的な構成が、明示的に考慮されている。
【0029】
付加的に、上記においては、器具キャニスター120が取り付けリング110に対して、磁石160の磁力による引き付けおよび追加のバネクリップ165のバネ力の両者の組み合わせによって保持される、例示的な実施形態が記載されているが、これらの態様の単一のものだけを使用してよいことが理解されねばならない。例えば、器具キャニスター120は、磁石160の磁力による引き付けのみによって保持されてよく、または器具キャニスター120は、追加のバネクリップ165のバネ力のみによって保持されてよい。
【0030】
何よりも、上記の実施形態は、例示としてのみ考慮されることが意図されていることが理解されねばならない。