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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/103 20210101AFI20230905BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230905BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20230905BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20230905BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M10/04 W
H01M50/119
H01M50/131
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021039916
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139498
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】原 尊
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-287456(JP,A)
【文献】特開2015-092460(JP,A)
【文献】特開2011-134685(JP,A)
【文献】特開2013-008665(JP,A)
【文献】特開2013-246892(JP,A)
【文献】特開2016-110716(JP,A)
【文献】国際公開第2021/193326(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/103
H01M 10/04
H01M 50/119
H01M 50/131
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、および該正極と該負極とを離隔するセパレータを備え、少なくとも一対の矩形面を有する電極体と、該電極体を収容する電極体ホルダと、該電極体を収容する金属製の電池ケースと、を備える二次電池であって、
前記電池ケースは、一対の矩形状幅広面と、該一対の幅広面の間にある4つの矩形状側面と、を有する六面箱型状に形成されており、
前記電極体は、前記電極体ホルダに覆われた状態で、該電極体の前記矩形面が前記電池ケースの前記幅広面と対向するように、前記電池ケースに収容されており、
ここで、前記電池ケースは、内部に突出部を備えており、
前記突出部は、
前記電池ケースと別体である、平面矩形状の金属製板材であり、
前記幅広面に接合されており、
前記電池ケースに収容され、前記電極体ホルダに覆われた状態の前記電極体の前記矩形面の長辺方向の中心線を含む中央領域の少なくとも一部に、該電極体ホルダの外側から接触している、二次電池。
【請求項2】
前記電極体における前記矩形面の長辺方向の長さL1と、前記中央領域の前記長辺方向の長さL2との比(L2/L1)は、1/8以上1/2以下である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記電極体における前記矩形面の長辺方向の長さL1は、100mm以上である、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記正極は、長尺な帯状の正極シートであり、
前記負極は、長尺な帯状の負極シートであり、
前記電極体は、前記正極シートおよび前記負極シートが、前記セパレータを介在させつつ積層されて、シート長手方向に直交する捲回軸を中心として捲回された捲回電極体であり、
ここで、前記正極シート、前記負極シート、および前記セパレータの積層面は、前記捲回軸方向の両端から前記電極体の外部に対して開放されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記電極体を複数備えており、
複数の前記電極体は、所定の一方向に配列された状態で前記電池ケースに収容されており、
前記突出部は、前記配列方向における両端の前記電極体に接触している、請求項1~4に記載の二次電池。
【請求項6】
各電極体の間には、インサート部材が備えられており、
前記インサート部材は、該インサート部材と隣接する前記電極体の前記中央領域の少なくとも一部に接触している、請求項5に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池は、車両や携帯端末等の様々な分野において広く使用されている。この種の二次電池の典型例として、正極、負極、および該正極と該負極とを離隔するセパレータを備える電極体と、該電極体を収容する電池ケースと、を備える構成のものが挙げられる。
【0003】
上記構成の二次電池を製造する方法として、例えば特許文献1に記載の方法が挙げられる。特許文献1では、電極体が電池ケースに収容されており、かつ、電解液が注液されていない状態の電池組立体の内部を乾燥させる工程について、記載されている。当該文献で開示される製造方法は、以下の工程:電極体が電池ケースに収容された状態の電池組立体を真空乾燥炉の内部に配置する配置工程;真空乾燥炉の内部を昇温かつ減圧された状態にして、電池組立体を乾燥させる乾燥工程;および、電池組立体を乾燥させた後に、真空乾燥炉の内部を昇圧する昇圧工程、を包含する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-6261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような電池組立体の乾燥において、電極体の内部に乾燥ムラがあると、電流の分布や電位の分布に不均一さを生じさせる要因となり得るため、好ましくない。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電極体の内部における乾燥ムラの発生を抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される二次電池は、正極、負極、および該正極と該負極とを離隔するセパレータを備え、少なくとも一対の矩形面を有する電極体と、該電極体を収容する電池ケースと、を備える。上記電池ケースは、一対の矩形状幅広面と、該一対の幅広面の間にある4つの矩形状側面と、を有する六面箱型状に形成されている。上記電極体は、該電極体の上記矩形面が上記電池ケースの上記幅広面と対向するように、上記電池ケースに収容されている。ここで、上記電池ケースは、内部に突出部を備えており、上記突出部は、上記電池ケースに収容された上記電極体の上記矩形面の長辺方向の中心線を含む中央領域の少なくとも一部に接触している。
【0008】
本発明者の検討により、電池組立体の乾燥工程において、電極体の中央領域に水分が残る傾向があるとわかっている。上記二次電池は、電池ケースの内部に、上記中央領域の少なくとも一部に接触する突出部が備えられる。これによって、電池組立体の乾燥工程において、上記中央領域への伝熱効率を向上することができる。そのため、上記中央領域からの水分の除去を促し、電極体の内部における乾燥ムラの発生を抑制することができる。
【0009】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、上記電極体における上記矩形面の長辺方向の長さL1と、上記中央領域の上記長辺方向の長さL2との比(L2/L1)は、1/8以上1/2以下である。上記比(L2/L1)を上記範囲となるように設定した構成において、ここで開示される技術の効果は、適切に実現され得る。
【0010】
ここに開示される二次電池の好適な他の一態様では、上記長さL1は、100mm以上である。ここで開示される技術の効果は、長さL1が100mm以上の電極体を有する電池組立体を乾燥させる時、好ましく発揮され得る。
【0011】
ここに開示される二次電池の好適な他の一態様では、上記正極は、長尺な帯状の正極シートであり、上記負極は、長尺な帯状の負極シートである。上記電極体は、上記正極シートおよび上記負極シートが、上記セパレータを介在させつつ積層されて、シート長手方向に直交する捲回軸を中心として捲回された捲回電極体である。ここで、上記正極シート、上記負極シート、および上記セパレータの積層面は、上記捲回軸方向の両端から上記電極体の外部に対して開放されている。上記構成の捲回電極体の乾燥では、電極体中の水分が開放積層面から外部に出ていくため、捲回電極体では乾燥ムラが発生しやすい。ここで開示される技術の効果は、捲回電極体を有する電池組立体を乾燥させる時、好ましく発揮され得る。
【0012】
ここに開示される二次電池の好適な他の一態様では、上記電極体を複数備えている。複数の上記電極体は、所定の一方向に配列された状態で上記電池ケースに収容されている。上記突出部は、上記配列方向における両端の上記電極体に接触している。ここで開示される技術の効果は、複数の電極体を備える電池組立体を乾燥させる時においても、適切に発揮され得る。
【0013】
ここに開示される二次電池の好適な他の一態様では、各電極体の間には、インサート部材が備えられている。上記インサート部材は、該インサート部材と隣接する上記電極体の上記中央領域の少なくとも一部に接触している。かかる構成によると、各電極体の間にインサート部材を備えることによって、電極体の中央領域への伝熱効率をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う模式的な横断面図である。
図3】第1実施形態に係る二次電池のケース本体を展開した状態の斜視図である。
図4】第1実施形態に係る二次電池の電極体を模式的に示す斜視図である。
図5】第1実施形態に係る二次電池の電極体の構成を示す模式図である。
図6】第2実施形態に係る二次電池の構成を示す横断面図である。
図7】第3実施形態に係る二次電池の構成を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、ここで開示される技術を特徴付けない二次電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0016】
本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0017】
本明細書において参照する各図における符号Xは「奥行方向」を示し、符号Yは「幅方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示す。また、奥行方向XにおけるFは「前」を示し、Rrは「後」を示す。幅方向YにおけるLは「左」を示し、Rは「右」を示す。そして、高さ方向ZにおけるUは「上」を示し、Dは「下」を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、二次電池の設置形態を何ら限定するものではない。
【0018】
<第1実施形態>
ここで開示される二次電池の一例を、図1,2に示す。図1は、第1実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う模式的な横断面図である。二次電池100は、電極体20、電極体20を覆う電極体ホルダ70、および図示されない電解液と、該電極体、該電極体ホルダ、および該電解液を収容する電池ケース10と、を備えている。二次電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。なお、電解液については、この種の二次電池において使用され得るものを特に制限なく使用することができ、ここに開示される技術を特徴づけるものではないため詳細な説明を省略する。
【0019】
電池ケース10は、開口を有するケース本体12と、開口を塞ぐ蓋体14と、を備えている。電池ケース10は、ケース本体12の開口の周縁に蓋体14が接合されることによって、一体化されて気密に封止(密閉)されている。蓋体14には、注液孔15と、安全弁17と、正極外部端子30と、負極外部端子40と、が設けられている。注液孔15は、電池ケース10内に電解液を注液するための孔であり、封止栓16により封止されている。安全弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。正極外部端子30および負極外部端子40は、電池ケース10内に収容された電極体と電気的に接続されている。
【0020】
電池ケース10は、一対の矩形状幅広面12bと、一対の幅広面12bの間にある4つの矩形状側面と、を有する六面箱型状に形成されている。電池ケース10は、一対の矩形状幅広面12bの他、矩形状の底面12aと、一対の矩形状幅狭面12cと、を有している。即ち、図1において、上記4つの矩形状側面のうちの3つが、底面12aと、一対の幅狭面12cとで構成されており、残りの一つが蓋体14で構成されている。
【0021】
図2に示すように、電池ケース10は、内部に突出部13を備えている。突出部13は、電池ケース10に収容された電極体20(詳しくは、後述する中央領域の少なくとも一部)に接触している。突出部13は、電極体20を挟んで、奥行方向XのF側およびRr側のいずれにも配置されており、両側から電極体20と接触している。なお、「電極体20に接触している」とは、電極体ホルダ70に覆われた状態の電極体20に接触していることを包含する。
【0022】
電池ケース10は、例えば金属製である。電池ケース10を構成する金属材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0023】
図3に、ケース本体12の構成の一例を示す。当該図は、第1実施形態に係る二次電池のケース本体を展開した状態の斜視図である。ケース本体12は、図3に示すような一枚の板材11から形成されている。板材11は、1つの底面部11a、2つの幅広面部11b、および2つの幅狭面部11cを有している。2つの幅広面部11bは、いずれも底面部11aの長辺側で、底面部11aと隣接している。2つの幅狭面部11cは、いずれも底面部11aの短辺側で、幅狭面部11cと隣接している。底面部11aは、ケース本体12の底面12aの構成部であり、矩形状である。図1,3に示すように、底面部11aの長辺に沿って幅広面部11bを折り曲げると、ケース本体12の底面12aから立ち上がった幅広面12bが形成される。底面部11aの短辺に沿って幅狭面部11cを折り曲げると、ケース本体12の底面12aから立ち上がった幅狭面12cが形成される。そして、上記のような折り曲げの後、幅広面部11bの短辺と、幅狭面部11cの長辺とを溶接することによって、ケース本体12が得られる。
【0024】
板材11の幅広面部11bには、突出部13が形成されている。例えば、突出部13は板材11とは別体であり、突起部13を構成する部材(例えば板材)と、幅広面部11bとを接合することによって、突出部13と板材11とを一体化することができる。上記のように幅広面部11bを折り曲げると、ケース本体12の幅広面12bに突出部が形成される(図2参照)。突起部13は、例えば、金属製である。突起部13は、板材11の構成材料と同じでもよく、異なってもよい。また、板材11と突起部13との接合方法は特に限定されず、レーザ溶接、超音波接合、および抵抗溶接等従来公知の方法を使用してよい。突出部13の厚みは、電極体20と接触できるように適宜設定され得る。
【0025】
幅広面部11bにおける突出部13の形成面積は、電極体20の中央領域との接触面積が所定範囲となるように設定され得る。ここで、上記中央領域の面積を100%としたときに、当該接触面積は、40%以上とすることができ、例えば50%以上であり、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、100%に近いほど(例えば90%以上、あるいは95%以上)よい。
【0026】
突出部13は、上記接触面積を実現するように形成されていればよいため、その形状は特に限定されない。突出部13は、図3に示すような平面矩形状であってよく、ドット状、リブ構造等のその他の形状であってよい。
【0027】
電極体20は、二次電池100の発電要素であり、正極、負極、および該正極と該負極とを離隔するセパレータを備えている。図4は、第1実施形態に係る二次電池の電極体を模式的に示す斜視図である。図5は、第1実施形態に係る二次電池の電極体の構成を示す模式図である。図2,4に示すように、電極体20には、正極内部端子50と負極内部端子60とが取り付けられている。正極内部端子50は、正極外部端子30(図1参照)と接続される。負極内部端子60は、負極外部端子40(図1参照)と接続される。
【0028】
図5に示すように、電極体20は、正極22および負極24を有する。電極体20は、ここでは、長尺な帯状の正極シート22と帯状の長尺な帯状の負極シート24とが長尺な帯状のセパレータ26を介して積層され、シート長手方向に直交する捲回軸WLを中心として捲回された、扁平形状の捲回電極体である。図4に示すように、電極体20は、一対の矩形面20aと、一対の幅方向Yの端面20bと、を有している。端面20bは、正極22、負極24、およびセパレータ26の積層面であり、電極体20の外部に対して開放されている。
【0029】
詳細な図示は省略するが、電極体20は、捲回軸WLが幅方向Yと平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。図1,2の電池ケース10内に収容された状態において、電極体20の一対の矩形面20aは、電池ケース10の幅広面12bと対向している。また、一対の端面20bは、幅狭面12cと対向している。
【0030】
正極シート22は、長尺な帯状の正極集電箔22c(例えばアルミニウム箔)と、正極集電箔22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aとを有する。特に限定するものではないが、正極シート22の幅方向Yにおける一方の側縁部には、必要に応じて、正極保護層22pが設けられていてもよい。なお、正極活物質層22aや正極保護層22pを構成する材料は、この種の二次電池において使用されるものを特に制限なく使用することができ、ここに開示される技術を特徴づけるものではないため、ここでの詳細な説明は省略する
【0031】
正極集電箔22cの幅方向Yの一方の端部(図4の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、それぞれ幅方向Yの一方側(図4の左側)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、正極板22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、正極集電箔22cの一部であり、正極集電箔22cの正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されていない部分(集電箔露出部)である。複数の正極タブ22tは幅方向Yの一方の端部(図4の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成している。正極タブ群23に、正極内部端子50が接合されている(図2,4参照)。
【0032】
負極シート24は、長尺な帯状の負極集電箔24c(例えば銅箔)と、負極集電箔24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。なお、負極活物質層24aを構成する材料は、この種の二次電池において使用されるものを特に制限なく使用することができ、ここに開示される技術を特徴づけるものではないため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0033】
負極集電箔24cの幅方向Yの一方の端部(図4の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、幅方向Yの一方側(図4の右側)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、負極板24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。負極タブ24tは、ここでは負極集電箔24cの一部であり、負極集電箔24cの負極活物質層24aが形成されていない部分(集電箔露出部)である。複数の負極タブ24tは幅方向Yの一方の端部(図4の右端部)で積層され、負極タブ群25を構成している。負極タブ群25に、負極内部端子60が接合されている(図2,4参照)。
【0034】
電極体20の中央領域201は、図4に示すように、電極体20の矩形面20aの長辺方向Y(以下、「幅方向Y」を適宜「長辺方向Y」ともいう。)の中心線Cを含む領域である。ここで、「中心線Cを含む」とは、中央領域201中に中心線Cを含んでいればよく、当該領域の中心線が中心線Cである場合と、当該領域の中心線が中心線Cでない場合とを包含する。中央領域201の中心線が中心線Cでない場合、中央領域201の中心線と中心線Cとの距離が1/4L2以下となるように設定するとよい(長さL2については後述)。
【0035】
電極体20の矩形面20aの長辺方向Yにおける長さL1と、中央領域201の同方向の長さL2との比(L2/L1)は、例えば、1/8以上とすることができ、乾燥ムラを低減する観点から、好ましくは1/6以上であり、より好ましくは1/4以上である。また、比(L2/L1)は、例えば、1/2以下とすることができ、乾燥ムラを低減する観点から、好ましくは2/5以下であり、より好ましくは1/3以下である。
【0036】
本発明者の検討によると、上記長さL1が大きくなるほど乾燥ムラが発生しやすいことがわかっている。ここで開示される技術の効果は、上記長さL1が100mm以上の電極体を有する二次電池の製造において好ましく実現され得る。また、上記長さL1が200mm以上、250mm以上、あるいは300mm以上であっても、ここで開示される技術の効果を好ましく実現することができる。上記長さL1は、特に限定するものではないが、例えば、1000mm以下とすることができる。
【0037】
二次電池100の製造方法は、少なくとも以下の工程(1)および(2):
(1)電池組立体作製工程;および、
(2)乾燥工程、
を包含する。
【0038】
(1)電池組立体作製工程では、電池ケースに電極体を収容して、電池組立体を作製する。本工程は、電極体20および蓋体14との合体物を作製すること、該合体物をケース本体12に収容すること、および、ケース本体12を封口すること、を含み得る。本工程を限定する意図はないが、まず、電極体20を従来公知の方法で作製する。次いで、電極体20の正極タブ群23に正極内部端子50を取り付け、さらに負極タブ群25に負極内部端子60を取り付けて、電極体と内部端子との合体物(第1合体物)を用意する。次いで、第1合体物と蓋体14とを一体化して、第2合体物を用意する。具体的には、例えば、蓋体14に予め取り付けられた正極外部端子30と第1合体物の正極内部端子50とを接合する。同様に、蓋体14に予め取り付けられた負極外部端子40と第1合体物の負極内部端子60とを接合する。接合手段としては、例えば、超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接等を用いることができる。
【0039】
次いで、第2合体物を、ケース本体12に収容する。具体的には、例えば、絶縁性の樹脂シート(例えばポリエチレン(PE)等のポリオレフィン製)を、袋状または箱状に折り曲げて作製した電極体ホルダ70に電極体20を収容する。そして、電極体ホルダ70で覆われた電極体20を、ケース本体に挿入する。この状態で、ケース本体12の開口部に蓋体14を重ね合わせて、ケース本体12と蓋体14とを溶接する。このようにして、ケース本体12を封口し、電池組立体を作製する。
【0040】
(2)乾燥工程では、電池組立体の内部を乾燥させる。特に限定するものではないが、電池組立体の乾燥方法としては、例えば、乾燥チャンバを使用することが挙げられる。具体的には、例えば、まず、乾燥チャンバ内に電池組立体と発熱体(プレートヒータ、電熱ヒータ等)とを収容し、発熱体のスイッチをオンにして、乾燥チャンバ内を加熱する。乾燥チャンバ内の温度が予め定められた温度になるまで加熱し、当該温度に達してから所定の時間(例えば、10分~4時間)維持するとよい。当該温度は、電池組立体の内部から水分を十分に除去し得る温度であれば特に限定されないが、例えば、100℃以上150℃以下となるように設定するとよい。
【0041】
この時、乾燥チャンバ内を減圧するとよい。例えば、乾燥チャンバに真空ポンプを接続し、該真空ポンプのスイッチをオンにして、乾燥チャンバ内を減圧する。乾燥チャンバ内の圧力が予め定められた圧力まで低下するまで減圧し、当該圧力に達してから所定の時間(例えば、1時間~3時間)維持するとよい。当該圧力は、特に限定されないが、大気圧(0.1MPa)に対して、例えば、-0.05MPa以下、-0.08MPa以下、-0.09MPa以下とすることができ、より低い圧力であるほどよい。
【0042】
乾燥工程の後、発熱体のスイッチをオフにして、乾燥チャンバ内および電池組立体の温度を低下させる。また、乾燥チャンバ内を減圧している場合は、真空ポンプのスイッチをオフにして、概ね大気圧と同程度になるまで乾燥チャンバ内を昇圧する。
【0043】
電池組立体を乾燥チャンバから取り出し、従来公知の方法にて注液孔15を介して、電池ケース10に電解液を注液する。その後、注液孔15を封止栓16にて封止することで、二次電池100が得られる。そして、所定の条件の下、二次電池100の初期充電およびエージング処理を行うことで、使用可能状態とすることができる。
【0044】
二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0045】
以下、本発明者が行った試験例を説明する。
【0046】
<電池組立体の構築>
正極活物質としてのNCMと、バインダとしてのPVdFと、導電材としてのアセチレンブラックとを、質量比が98:1:1となるように秤量し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中で混合して、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを、長尺な帯状の正極集電体(アルミニウム箔)の両面に塗布し、乾燥させた。これを所定のサイズに切り取り、ロールプレスで圧延することにより、正極集電体の両面に正極活物質層を備えた正極シートを得た。
【0047】
負極活物質としての黒鉛粉末と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバーと、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースとを、質量比が、98:1:1となるように秤量し、水を中で混合して、負極スラリーを調製した。この負極スラリーを長尺な帯状の負極集電体(銅箔)の両面に塗布し、乾燥させた。これを所定のサイズに切り取り、ロールプレスで圧延することにより、負極集電体の両面に負極活物質層を備えた負極シートを得た。次に、上記作製した正極シートと負極シートとを、ポリエチレン製のセパレータシートを介して対向させて積層した。これをシート長手方向に捲回することにより、図4に示すような捲回電極体を作製した。
【0048】
次いで、正極シート(正極タブ群)には正極内部端子としてのアルミリードを溶接し、負極シート(負極タブ群)には負極内部端子としてのニッケルリードを溶接した。なお、電極体の寸法関係については、以下のとおり:
W:11.6mm±0.2mm;
L1:332mm±1.6mm;
H1:94mm±0.25mm;および、
H2:81mm
であった。なお、各符号は、図4に記載のとおりである。具体的には、Wは、電極体20の厚みである。L1は、電極体20の幅である。H1は、電極体20の高さである。H2は、電極体20の矩形面20aの高さである。また、上記寸法関係は、3つ電極体を作製して得られた平均値である。
【0049】
次いで、正極内部端子および負極内部端子を介して、電極体と電池ケースの蓋体とを接続した。これをケース本体に挿入し、該ケース本体と蓋体とを溶接した。このようにして、試験用の電池組立体を構築した。
【0050】
<電池組立体の乾燥>
次いで、上記試験用電池組立体を、プレートヒータを備えた乾燥チャンバ内に収容した。乾燥チャンバ内では、プレートヒータ上に試験用電池組立体を配置した。次いで、乾燥チャンバに接続された真空ポンプのスイッチと、プレートヒータのスイッチとをオンにして、該乾燥チャンバ内を所定の圧力まで減圧し、かつ、所定の温度まで加熱した。その後、この減圧状態および加熱状態を所定の時間維持した。上記所定の時間経過後、真空ポンプのスイッチとプレートヒータのスイッチをオフにして、乾燥チャンバ内を昇圧、かつ、冷却した。その後、試験用電池組立体を乾燥チャンバから取り出した。
【0051】
<水分測定>
乾燥前後の試験用電池組立体における水分量を測定して、試験用電池組立体における乾燥状態を評価した。具体的には、まず、ドライルーム内にて、乾燥前後の試験用電池組立体の正極シートから、2cm×2cmの試験片を切り出した。当該試験片の用意に関して、電極体20の矩形面20aを、長辺方向Yにおいて、3つの領域(左側端部領域202、中央領域201、および右側端部領域203)に区分けし(図4参照)、各領域から3枚ずつの試験片を切り出した。なお、当該3つの領域の同方向の長さは、いずれも1/3L1であった。
【0052】
次いで、カールフィッシャー水分測定装置を用いて、上記試験片における水分量を測定した。測定時の加熱温度は、150℃であった。各領域における乾燥前後の水分量を比較して、乾燥によって電極体から水分が一定量除去されたことを確認した。表1の「水分残量」欄に、各領域における水分残量(即ち、乾燥後の水分量)として、右側端部領域における水分残量を1としたときの相対値を示す。なお、上記各領域から切り出した3枚の試験片における測定値を用いて得られた平均値を用いて表1に記載の数値を算出した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示す結果から、乾燥後の電極体の中央領域における水分残量は、該中央領域を除く他の領域(即ち、端部領域)よりも多かった。即ち上記試験用電池組立体の電極体では、乾燥ムラが生じていることがわかった。
【0055】
ここで開示される二次電池では、電池ケース10が、内部に突出部13を備えている。突出部13は、電池ケース10に収容された電極体20の矩形面20aの長辺方向Yの中心線Cを含む中央領域201の少なくとも一部に接触している。電池ケース10が上記のような突出部13を備えることによって、二次電池製造時における、電池組立体の乾燥工程で、電極体20の中央領域201への伝熱効率を選択的に高めることができる。このため、当該領域からの水分の除去を促進して、電極体20における乾燥ムラの発生を抑制することができる。
【0056】
捲回電極体の乾燥に関して、捲回電極体内の水分は、電極体の外部に対して開放された積層面(図4における端面20b)から除去される。捲回電極体では、本発明者の検討例にも示されるとおり、中央領域に水分が残り、乾燥ムラが発生しやすい。ここで開示される技術を、捲回電極体を備える二次電池の製造に適用することで、捲回電極体における乾燥ムラの発生を抑制することができる。
【0057】
上述した第1実施形態は、ここで開示される二次電池の一例に過ぎない。ここで開示される技術は、他の形態にて実施することができる。以下、ここで開示される技術の他の実施形態について説明する。
【0058】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、図2に示すように、二次電池100が備える電極体20が1である。しかし、ここで開示される二次電池が備える電極体の数は、1に限定されない。即ち、ここで開示される二次電池は、電極体を複数(2つ以上)備えてよい。図6は、第2実施形態に係る二次電池の構成を示す横断面図である。図6に示すように、第2実施形態に係る二次電池200は、複数の電極体20を備えている。複数の電極体20は、所定の一方向(図6においては奥行方向X)に配列された状態で電池ケース10(ケース本体12)に収容されている。複数の電極体20は、上記方向に配列され、かつ、電極体ホルダ70に収容された状態で、電池ケース10内に収容されている。突出部13は、配列方向(奥行方向X)における両端の電極体20に接触している。かかる構成においても、電池組立体の乾燥工程において、各々の電極体20の中央領域への熱伝導効率を選択的に高めることができる。そのため、乾燥ムラの発生を抑制することができる。なお、図6では、電極体20の数を便宜上3としているが、これに限定されない。また、第2実施形態に係る二次電池200は、上述した点を除いて、第1実施形態に係る二次電池100と同様であってよい。図6における符号22tは「正極タブ」、符号24tは「負極タブ」、符号50は「正極内部端子」、符号60は「負極内部端子」を示す。
【0059】
<第3実施形態>
上記第2実施形態では、電池ケース10内に収容された複数の電極体20のうちの、配列方向(奥行方向X)における両端の電極体20のみに突出部13が接触している。しかし、これに限定されない。図7は、第3実施形態に係る二次電池の構成を示す横断面図である。図7に示すように、第3実施形態に係る二次電池300は、複数の電極体20を備えており、各電極体20の間には、インサート部材80が備えられている。インサート部材80は、該インサート部材と隣接する電極体20の中央領域201(図4参照)の少なくとも一部に接触している。複数の電極体20は、インサート部材80を間に介在させながら所定の一方向(図7においては奥行方向X)に配列され、かつ、電極体ホルダ70に収容された状態で、電池ケース10内に収容されている。突出部13は、配列方向(奥行方向X)における両端の電極体20に接触している。
【0060】
特に限定するものではないが、インサート部材80は、例えば金属製である。インサート部材80を構成する金属材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。インサート部材80の構成材料は、電池ケース10や突出部13の構成材料と同じであってよく、異なっていてもよい。インサート部材80を用いることによって、電池組立体の乾燥工程における、各々の電極体20の中央領域への選択的な熱伝導効率をより高めることができる。そのため、乾燥ムラの発生をより高度に抑制することができる。なお、図7では、電極体20の数を便宜上3としているが、これに限定されない。また、第3実施形態に係る二次電池300は、上述した点を除いて、第1実施形態に係る二次電池100と同様であってよい。図7における符号22tは「正極タブ」、符号24tは「負極タブ」、符号50は「正極内部端子」、符号60は「負極内部端子」を示す。
【0061】
<その他の変形例>
上記実施形態における突出部13は、板材11の幅広面部11bに形成されている(図3参照)。しかし、突出部13は、電極体20の中央領域201に接触するように備えられていればよいため、上記構成に限定されない。例えば、板材11の底面部11aに形成されてもよい。また、上記実施形態では、相互に別体である突出部13と板材11とを接合することによって一体化させているが、これに限定されず、これらを必ずしも一体化させなくてよい。また、上記実施形態では、一枚の板材11を所定形状に打ち抜くことによって、ケース本体12を作製している。しかし、これに限定されず、複数の板材を組み合わせてケース本体12を作製してよい。あるいは、深絞り加工によって、ケース本体12を作製してよい。
【0062】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される技術には上記の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、ここで開示される技術は、ナトリウムイオン二次電池にも適用することができる。また、ここで開示される技術は、積層電極体を備える二次電池にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 電池ケース
11 板材
12 ケース本体
14 蓋体
15 注液孔
16 封止栓
17 安全弁
20 電極体
22 正極(正極シート)
23 正極タブ群
24 負極(負極シート)
25 負極タブ群
26 セパレータ
30 正極外部端子
40 負極外部端子
50 正極内部端子
60 負極内部端子
70 電極体ホルダ
80 インサート部材
100 二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7