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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】シェルアンドチューブ型熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 1/06 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
F28D1/06 A
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021057298
(22)【出願日】2021-03-30
(62)【分割の表示】P 2020523348の分割
【原出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2021119323
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】17198990.8
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512061836
【氏名又は名称】スタミカーボン・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドーリン・ポパ
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02256882(US,A)
【文献】特開2002-020360(JP,A)
【文献】米国特許第03254705(US,A)
【文献】中国特許出願公開第106839530(CN,A)
【文献】特開昭57-062391(JP,A)
【文献】特開平08-029090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0119603(US,A1)
【文献】実開昭55-126595(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/06
F28D 7/16
F28F 9/02
B01D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル(1)及び少なくとも1つのチューブバンドル(103)を備える容器(102)を備えるシェルアンドチューブ型熱交換器(101)であって、前記シェル(1)が容器空間(104)を包囲し、前記チューブバンドル(103)が端部(3)を有するチューブ(2)を備え、シェル空間(105)が前記チューブ(2)と前記シェル(1)との間に設けられており、
前記熱交換器が前記容器空間(104)内に位置する再分配チャンバ(7)を更に備え、前記再分配チャンバが前記再分配チャンバ(7)の内側の第2の流体から前記シェル空間(105)内の第1の流体を分離する壁(8)を備え、
複数の前記チューブ(2a、2b)が単一の再分配チャンバ(7)に接続されており、これにより、前記第2の流体が前記チューブ(2a、2b)と前記再分配チャンバ(7)との間に流れることができ、
前記シェルアンドチューブ型熱交換器(101)が前記シェル(1)内の前記第2の流体用の開口部(10)から前記容器空間(104)を通って前記再分配チャンバ(7)まで延びるダクト(9)を更に備え、これにより、前記第2の流体がチューブ端部(3)と前記シェル内の前記第2の流体用の前記開口部(10)との間を前記再分配チャンバ(7)及び前記ダクト(9)を通って流れることができ、前記ダクトは、前記再分配チャンバの壁に接続された第1のダクト端部と、前記シェルに接続された第2の端部とを有し、
前記再分配チャンバ(7)の壁は、複数のボアホールを有する平らなプレートを備え
前記チューブ端部(3)が、内部ボア溶接によって前記再分配チャンバの壁(8)に取り付けられており、
前記再分配チャンバが前記再分配チャンバの前記壁を提供する複数の要素を備え、前記要素のうちの少なくとも1つが前記再分配チャンバの前記内側へのアクセスを提供するように開閉可能である、シェルアンドチューブ型熱交換器。
【請求項2】
前記シェル空間(105)内でカルバメートを凝縮するように構成されており、
前記容器が、前記シェル空間(105)への気体導入口(4)と、前記シェル空間(105)からの液体用の導出口(5)とを備え、
前記容器が、前記シェル空間に凝縮される気体を分配する、前記気体導入口(4)に接続された気体分配器(6)を更に備える、請求項1に記載のシェルアンドチューブ型熱交換器。
【請求項3】
前記シェルアンドチューブ型熱交換器(101)が、導入口ダクト及び導出口ダクトを備える前記ダクトのうちの少なくとも2つを備え、かつ前記導入口ダクトから複数のチューブへ冷却流体供給を分配する導入口再分配チャンバ及び複数のチューブから前記導出口ダクトへ加熱された冷却流体を組み合わせる導出口再分配チャンバを備える前記再分配チャンバのうちの少なくとも2つを備える、請求項2に記載のシェルアンドチューブ型熱交換器。
【請求項4】
前記シェルアンドチューブ型熱交換器(101)が動作中に水平に配設されるように構成され、前記チューブが直線状チューブ部を備えるか又は直線状チューブ部からなり、前記気体分配器及び前記直線状チューブ部が平行に配設される、請求項3に記載のシェルアンドチューブ型熱交換器。
【請求項5】
前記シェルが、本質的に円筒形の中間部と、前記中間部を両端部で閉鎖する2つのキャップ部とを備え、
前記シェル空間が、前記中間部及びキャップ部によって画定される単一のシェル空間であり、これにより、流体が前記気体分配器から前記キャップ部の両方に流れることができる、請求項2~4のいずれか一項に記載のシェルアンドチューブ型熱交換器。
【請求項6】
複数の再分配チャンバが互いに積み重ねられており、
ボアホールを有するプレート要素が前記複数の再分配チャンバに共通である、請求項1~のいずれか一項に記載のシェルアンドチューブ型熱交換器。
【請求項7】
前記チューブバンドルがU字形チューブを備え、各チューブが屈曲部及び2つの脚部を有し、前記複数の再分配チャンバが、再分配チャンバの同じ積み重ね内に配設されている、同じU字形チューブバンドルの導入口再分配チャンバ及び導出口再分配チャンバを備える、請求項に記載のシェルアンドチューブ型熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧カルバメート凝縮器に関する。
【背景技術】
【0002】
凝縮器は、シェルに取り付けられたチューブバンドルを備えるシェルアンドチューブ型熱交換器を備える。高圧カルバメート凝縮器は、特に、ストリッピング型の尿素製造プラントにおいてカルバメートを凝縮するために使用され得る。いくつかの実施形態では、カルバメートを含む腐食性溶液は、動作中に、シェル側及びチューブ側の両方、特にチューブバンドルの少なくともいくつかのチューブの内側、及びチューブ間の空間内の両方に存在する。
【0003】
導入
一般に使用されるタイプのカルバメート凝縮器は、「A lower cost design for urea」,Nitrogen no.222,July-August 1996,page 29-31に記載のプール凝縮器である。このようなプール凝縮器は、チューブシートを備える。チューブシートは、より一般的には、シェルアンドチューブ型熱交換器タイプの高圧カルバメート凝縮器の典型的な部品である。チューブシートは、典型的には、ヘッダから凝縮器内のシェル空間を区切る平面金属プレートである。チューブシートは更に、典型的に円筒形のシェルの一方の端部を封止する。チューブシートには、多数のボアホールが設けられている。チューブは、ボアホールを通して挿入されるか、又はホールと位置合わせされたチューブシートに接合されて、これにより、流体がヘッダとチューブとの間を流れることができる。チューブバンドルは、多くの場合、非常に多数のチューブ、例えば100超のチューブ、又は更には1000超のチューブを有する。ヘッダを使用して、導入口から複数のチューブへ流体を分配する、又は複数のチューブから導出口へ流体を収集する。
【0004】
既知のカルバメート凝縮器では、チューブシートは、一般に、高圧に耐えることができる必要がある。更に、特に高圧カルバメート凝縮の高い温度では、カルバメートが非常に腐食性であるため、腐食を防ぐのは難しい。高い機械的強度及び高い腐食耐性を達成するために、既知のチューブシートは、腐食性媒体に露出した側面(又は複数の側面)上が二相ステンレス鋼合金などの高腐食耐性鋼の層で内張りされた炭素鋼から作製されることが多い。これにより、例えばチューブをチューブシートに溶接することが困難になるため、構築コストが増加する。
【0005】
尿素プラントにおけるケトル型カルバメート凝縮器用の既知のチューブシートは、欧州特許第0464307号及び米国特許第4082797号に例示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チューブシートの構築は、一般に困難かつ高価である。本発明は、一般に、チューブシートに関連する構築コストが高いことなどの、チューブシートを有する既知の高圧カルバメート凝縮器の欠点に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、第1の態様では、シェル及び少なくとも1つのチューブバンドルを備える容器を備えるシェルアンドチューブ型熱交換器を備える高圧カルバメート凝縮器であって、シェルが容器空間を包囲し、チューブバンドルが端部を有するチューブを備え、シェル空間がチューブとシェルとの間に設けられており、熱交換器が容器空間内に位置する再分配チャンバを更に備え、再分配チャンバが再分配チャンバの内側の第2の流体からシェル空間内の第1の流体を分離する壁を備え、複数のチューブが単一の再分配チャンバに接続されており、これにより、第2の流体がチューブと再分配チャンバとの間に流れることができ、凝縮器がシェル内の第2の流体用の開口部から容器空間を通って再分配チャンバまで延びるダクトを更に備え、これにより、第2の流体がチューブ端部とシェル内の第2の流体用の開口部との間を再分配チャンバ及びダクトを通って流れることができる、高圧カルバメート凝縮器に関する。
【0008】
本発明はまた、反応器と、ストリッパと、高圧カルバメート凝縮器とを備える高圧尿素合成セクションを備える尿素製造プラントであって、高圧カルバメート凝縮器が、記載のものであり、所望により、反応器及び高圧カルバメート凝縮器が、ストリッパに接続された液体導出口を有する単一の容器に組み合わされている、尿素製造プラントに関する。
【0009】
本発明は更に、尿素が反応器内で形成されて、尿素合成溶液が得られ、尿素合成溶液の少なくとも一部がストリッパ内でストリッピングされて、ストリッピングされた尿素溶液が得られ、ストリッパからの気体が、高圧カルバメート凝縮器で凝縮される、尿素製造プロセスであって、プロセスは、記載されとおりのプラントで実施される、かつ/又は高圧カルバメート凝縮器は、記載のものである、尿素製造プロセスに関する。
【0010】
より一般的には、本発明はまた、このような容器を備え、かつこのようなシェルと、チューブバンドルと、再分配チャンバと、ダクトとを備えるシェルアンドチューブ型熱交換器に関する。シェルアンドチューブ型熱交換器は、例えば、カルバメート以外の化合物の凝縮、及び/又は100バール未満の圧力での動作、及び/又は凝縮以外の熱交換プロセスのために構成される。熱交換器は、尿素製造において並びに他のプラント及びプロセスにおいて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】チューブシートを備えた本発明によらない基準カルバメート凝縮器を示す図である。
図2A】本発明による高圧カルバメート凝縮器の一例を示す図である。
図2B】本発明による高圧カルバメート凝縮器の一例を示す図である。
図2C】本発明による高圧カルバメート凝縮器の一例を示す図である。
図2D】本発明による高圧カルバメート凝縮器の一例を示す図である。
図3】本発明による尿素プラントの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本出願では、プロセス流(すなわち蒸気ラインではない)の場合、高圧(HP)は、100バール超、例えば120~300バール、典型的には150~200バールである。中圧(MP)は、例えば、10~70バール(30~70バールの中間圧力を含む)、特に15~25バールであり、低圧(LP)は、例えば、0~10バール、特に1~8バール又は2~5バールである。本明細書で使用する場合、「カルバメート」は、カルバミン酸アンモニウムを指す。
【0013】
高圧カルバメート凝縮器は、好ましくは、流下薄膜凝縮器とは対照的な浸漬凝縮器である。浸漬凝縮器の動作では、凝縮は、連続相として液体を有する空間内で実施され、凝縮される気体が液体中に分散される。したがって、液面が凝縮空間内に存在する。例えば、チューブは、動作中に(チューブの内側又は外側が)凝縮された液体で覆われ、好ましくはチューブは、凝縮された液体中に浸漬される。シェルアンドチューブ型熱交換器を備える浸漬凝縮器は、チューブの内側又はシェル空間内で凝縮するように構成される。好適には、凝縮はシェル空間内で実施される。シェル空間は、チューブの外表面が露出する空間である。シェル空間はシェルによって閉じ込められる。シェル空間における凝縮は、凝縮物が凝縮器内で十分な滞留時間を有する、比較的単純な構築を提供するための1つの選択肢である。これにより、有利には、尿素の一部が既に凝縮器内で形成されることを可能にする。より多くのチューブ及び/又はより大きな直径を有するチューブを使用することによるチューブ内での凝縮の場合にも、滞留時間を長くすることができる。
【0014】
凝縮器は、例えば、プール凝縮器設計に基づいて、例えば、シェル空間内で実施される凝縮を伴う浸漬凝縮器として構成された高圧カルバメート凝縮器であるが、このような再分配チャンバ及びダクトのうちの1つ以上を有するように変更される。例示的なプール凝縮器設計は、Nitrogen No.222,July-August 1996,pages 29-31に例示されている。好ましくは、冷却流体がチューブに提供される。本発明では、冷却流体は、例えば、尿素及びカルバメートを含む溶液などのプロセス流であり、この溶液は、チューブを通過するときに加熱され、所望により、加えて、水(プロセス縮合物)が冷却流体として使用される。
【0015】
高圧カルバメート凝縮器は、例えば、垂直構成を有し、尿素プラントに設置されたときに、チューブ(の直線部分)が重力に対して垂直に配設される。一般に、垂直カルバメート凝縮器は、シェル空間内又はチューブ内、好ましくはシェル空間内で凝縮するように構成される。凝縮器は、例えば、U字形又は直線チューブバンドル、好ましくはU字形チューブバンドルを有する。例えば、米国特許第6518457号に記載されているタイプの垂直カルバメート凝縮器、及び/又は底部にチューブ端部があるチューブバンドルを有する垂直カルバメート凝縮器を、本発明による再分配チャンバ及びダクトを用いて変更することができる。更に、頂部にチューブ端部があるチューブバンドルを有する垂直凝縮器には、本発明による再分配チャンバ及びダクトが設けられてもよく、これらは例えば、凝縮器の頂部に配置される。
【0016】
高圧カルバメート凝縮器は、好ましくは、水平構成を有し、尿素プラントに設置されたときに、チューブ(の直線部分)が重力に対して水平に配設される。例えば、水平向きの高圧カルバメート凝縮器は、チューブ内で凝縮するように、かつシェル空間内で冷却流体を受け入れるように構成され得る。例えば、欧州特許第0464307号又は米国特許第4899813号に記載されるようなケトル型カルバメート凝縮器を、本明細書に記載される再分配チャンバ及びダクトを用いて変更することができる。
【0017】
一実施形態では、凝縮器は、水平浸漬凝縮器として構成される。これは、より低い高さのプラントを可能にするのに有利である。好ましい実施形態では、凝縮器は、シェル側(すなわち、シェル空間内)で凝縮するように動作する水平浸漬凝縮器として構成される。これにより、凝縮器の滞留時間が長くなるように、凝縮器容積を容易に設計できるという更なる利点を提供する。これはまた、プール反応器を作製するために使用されてもよい。シェル側での凝縮はまた、シェル側に高圧媒体を有することにつながり、これは、凝縮器の製造をより容易にし、特に再分配チャンバの設計をより単純にすることができる。
【0018】
したがって、好ましい実施形態では、容器は、凝縮される気体のための、シェル空間への気体導入口を備える。気体導入口は、シェル内に開口部を備える。気体導入口により、シェル空間内、及びチューブ内の冷却流体内で凝縮するように動作することを可能にする。容器は、シェル空間からのカルバメート含有液体流などの液体の導出口を更に備える。導出口は、シェル内に開口部を備える。容器は、好ましくは、気体導入口に接続された気体分配器を備える。気体分配器は、好ましくは、気体導入口からシェル空間への気体のための複数の通路を備える。気体分配器は、シェル空間にわたって、かつシェル空間内に、特に動作中に液体の中に凝縮される気体を分配するために使用することができる。気体分配器は、好ましくは、動作中は液面の下に配設される。気体分配器は、例えば、容器の長さにわたって延びる1つ以上のチューブを有するスパージャを備え、チューブは、チューブの両側で容器の幅にわたって延びるアームを提供し、アームは、アームの上側に気体のための多数の開口部(例えば、アーム当たり50個超の開口部)を有する。凝縮される気体は、例えば、高圧ストリッパからのCO及びNHを含む混合物である。容器は更に好ましくは、シェル空間にアンモニア及び/又はカルバメート再循環流を含む液体流を導入するためのシェル空間への液体導入口を備える。例示的実施形態では、例えば、尿素プラントの中圧セクションからのカルバメート再循環流は、シェルの頂部にあるシェル内の開口部を通ってシェル空間内に導入される。これにより、カルバメート再循環液体が、シェル空間内の凝縮混合物よりも高い密度を有するため、混合を改善することができる。カルバメート再循環のためのシェル内の開口部は、好ましくは、長さ方向に再分配チャンバから1m未満の間が開けられる。これにより、再分配チャンバの近くのシェル空間内の流体を良好に混合する。
【0019】
カルバメート凝縮器は、例えば、水平配設又は垂直配設される。気体分配器を備えた水平カルバメート凝縮器の場合、気体分配器は、水平方向に離間している気体分配器の様々な導出口において、シェル空間内で凝縮される気体を導入するように、水平にかつチューブ(の直線部分)と平行に延びる。この実施形態では、長さ方向もまた、水平である。チューブは好ましくはU字形である。
【0020】
凝縮器は、好ましくは、複数の開口部でシェル空間内に液体を分配するための液体分配器を備える。これらの開口部は、好ましくは、凝縮器の長さ方向に離間している。液体分配器は、例えば、アンモニア供給用の圧縮機への液体流接続などにより、アンモニア供給部材に接続される。典型的には、液体分配器(例えば、アンモニア分配器)は、シェル内の開口部に接続され、動作中、例えば、シェル空間内に存在する液体に浸漬される。
【0021】
チューブバンドルは一般に、複数のチューブを備え、チューブは直線状チューブ部を備えるか、又は直線状チューブ部からなる。典型的には、チューブの直線部分は、互いに平行にかつ離間して配設される。本出願で使用する場合、凝縮がシェル内で実施される場合、単一のチューブバンドルのチューブは、同じ冷却流体を含む。したがって、再分配チャンバは、好ましくは単一のチューブバンドルのチューブに接続される。更なる実施形態では、2つ以上の冷却流体は、(別個の供給部材を備える)チューブに使用され、凝縮器は複数のチューブバンドルを収容する。チューブバンドルは、組み合わされたチューブバンドル内で組み合わされ得る。組み合わされたチューブバンドル内の全チューブの直線部分は、好ましくは互いに平行である。
【0022】
十分な熱交換表面を有するために、高圧カルバメート凝縮器は、例えば、バンドル内に合計で少なくとも300チューブ、典型的には、合計で1500~3000チューブなど1000~4000チューブ、例えば、各チューブバンドル内に少なくとも100チューブなど1つ以上のチューブバンドルを有する。チューブは、例えば、その長さにわたって一定の内径を有する。好ましくは、各再分配チャンバは、単一のチューブバンドルの導入口端部のみ又は導出口端部のみに接続される。
【0023】
いくつかの実施形態では、チューブバンドルは、チューブバンドルの長さ方向の両側にチューブ端部がある直線チューブを備える。再分配チャンバは、チューブバンドルの各端部に提供され得る。原則として、また、一方の端部でチューブシートを使用することができ、反対側の端部で再分配チャンバを使用することができる。チューブバンドルは、容器の長さにおける任意の位置、例えば容器の端部又は中心部に位置することができる。チューブの直線部分は、例えば、容器の長さの20~90%の長さ、例えば、容器の長さの好ましくは少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、若しくは少なくとも60%、及び/又は例えば、最大90%、最大80%、若しくは最大70%を有する。いくつかの実施形態では、チューブの直線部分は、容器の長さの60~90%の長さを有し、好ましくは凝縮器内で凝縮することによって得られる凝縮物は高圧反応器に供給される。いくつかの実施形態では、チューブの直線部分は、容器の長さの20~60%の長さを有し、好ましくは凝縮器内で凝縮することによって得られる凝縮物は高圧ストリッパに供給される。例えば、凝縮物はストリッパに直接供給され、これにより、高圧ストリッパが凝縮器の導出口で液体と同じ組成を有する凝縮物を受け入れる。このような実施形態による尿素プラントでは、反応器及び凝縮器は、単一の容器内で組み合わされる。
【0024】
いくつかの実施形態では、再分配チャンバは、チューブの(好ましくは直線チューブバンドルの)両端部に設けられ、再分配チャンバは、チューブバンドルの片端部又は両端部において、容器の長さにおいて、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、又は少なくとも20%の距離だけ長さ方向に容器から離間される。再分配チャンバと容器との間の間隔がより大きいと、チューブバンドルの片端部又は両端部において、凝縮物のためのシェル空間が比較的大きくなり、シェル空間内での凝縮物の滞留時間をより長くするのに寄与し得る。これにより、尿素形成が生じ、例えば、プール反応器としての動作を可能にすることができる。凝縮されたカルバメートは、典型的には、尿素反応器に送られ、いくつかの実施形態では、動作中にストリッパに直接送られる。特に、5m超、10m超、20m超、又は30m超などの、より大きいチューブ長(直線状チューブ部に基づく)については、直線チューブの製造はU字形チューブよりも単純であり得る。
【0025】
更なる実施形態では、チューブバンドルはU字形チューブのバンドルであり、各チューブは屈曲部及び2つの脚部を備え、脚部は直線状チューブ部である。カルバメート凝縮器は、例えば、プール反応器の場合に限定するものではないが、所望により、U字形チューブバンドルの屈曲部とシェル(チューブ脚部の反対側)との間に反応器部分を備える。例示的なプール反応器は、米国特許第5767313号に記載される。U字形チューブバンドルのチューブの直線部分は、シェルの長さ方向に配設される。いくつかの実施形態では、シェルは、直径及び長さを有し、両端部にキャップ部がある本質的に円筒形の中間部を備える。U字形チューブバンドルの場合、例えば、実質的に半球状のキャップ(所望によりマンホール付き)が、チューブバンドルのチューブ-バンドルの屈曲部に近い中間部の端部、及び中間部の他の端部に接合される。先行技術では、例えば米国特許第5767313号のように、チューブシートをU字形チューブバンドルの屈曲部から離れた端部に設け、チューブ端部をヘッダを通って供給ライン及びドレインラインと接続する。
【0026】
本発明は、広く賢明な洞察に基づいて、再分配チャンバをシェルの内側に配置し、チューブバンドルのチューブを再分配チャンバに接続し、再分配チャンバをシェル内の開口部を通って供給ライン又はドレインラインに接続するダクトを提供する。ダクトは、シェルの内側に配設され、再分配チャンバがシェルから離間することを可能にする。ダクトは、動作中に、片方の側で冷却流体と接触し、かつもう一方の側で凝縮される気体及び/又は凝縮器内に形成された凝縮物と接触する。再分配チャンバの壁についても同様である。シェル側(チューブの外側)で凝縮する実施形態では、シェルは、高圧凝縮媒体を収容し、内側でその媒体と接触する装置部品である。シェルの外側は、典型的には周囲に露出される。
【0027】
典型的な実施形態では、チューブバンドルの全てのチューブは2つのチューブ端部を有し、各チューブについて、一方のチューブ端部が(複数のチューブに流体を分配するための)導入口再分配チャンバに接続され、他方のチューブ端部は、(複数のチューブから流体を収集するための)導出口再分配チャンバに接続される。
【0028】
好ましい実施形態では、容器は、例えば、2つの異なる冷却流体のための2つのチューブバンドルを備え、各チューブバンドルには導入口再分配チャンバ及び導出口再分配チャンバがあり、これにより、容器は4つの再分配チャンバを収容する。
【0029】
再分配チャンバは壁を備える。壁はボアホールを有する壁部を備える。動作中、流体は、再分配チャンバと、ボアホールを通って再分配チャンバに接続されたチューブとの間を流れる。しかし、従来のチューブシートとは異なり、この壁部、より具体的には再分配チャンバ全体が、シェルから離間している。したがって、典型的には、シェル(の内部表面)と直接接触している再分配チャンバの部分はない。
【0030】
再分配チャンバはチューブ端部に接続される。特に、ボアホールを有する壁部は、例えば、隙間のない継手でチューブ端部に接続される。
【0031】
したがって、少なくともいくつかのチューブ端部は、シェルによって包囲された空間(容器空間)の内側に位置し、再分配チャンバ及び再分配チャンバとシェルとの間に延びるダクトを通ってシェル内の開口部に(流体流れのために)接続される。再分配チャンバは、そのシェル開口部から、例えば、少なくとも5cm、少なくとも10cm、又は少なくとも40cm離間している。再分配チャンバはまた、シェルから、好ましくは少なくとも5cm、少なくとも10cm、又は少なくとも40cm好ましくは完全に離間している。これらの間隔は、好ましくは、動作中に冷却流体又は凝縮媒体で充填することができる空間によって設けられる。支持要素は、再分配チャンバとシェルとの間、及びダクトの間に存在し得る。
【0032】
有利には、チューブ内に冷却流体がある好ましい実施形態では、高圧は、再分配チャンバの外側にかかり、内側にはかからない。
【0033】
有利には、再分配チャンバの壁は、チューブシートと比較して再分配チャンバの寸法が小さいため、既知のチューブシートよりも厚さが小さくなり得る。特に、再分配チャンバは、シェル及びシェルを封止するチューブシートと比較して、容器の長さに垂直な断面における表面積がより小さい。これは、再分配チャンバ壁の設計に盛り込む必要がある力(応力)を大幅に小さくする。
【0034】
好ましい実施形態では、再分配チャンバ(又は再分配チャンバの積み重ねに共通)のボアホールを有する(プレート)要素は、例えば、チューブバンドルの周りに、例えば、各チューブバンドルの外チューブから、各チューブバンドルの周りの各側に40cm未満、20cm未満、又は10cm未満などの比較的小さいフランジのみを有する。
【0035】
再分配チャンバは、例えば、スペーサなどの内部荷重支持構造体を備えることができる。再分配チャンバの壁は、二相ステンレス鋼などの腐食耐性材料の単一のシートから作製されてもよく、又はこれらからなっていてもよい。再分配チャンバへのチューブの溶接接続は、特に炭素鋼露出の危険性がないため、単一のシート壁を有する好ましい実施形態の製造がより容易である。
【0036】
更に、有利には、再分配チャンバの壁はまた、動作中に片側で冷却流体と接触し、もう一方の側で凝縮媒体と接触することができるため、熱交換表面にも寄与する。
【0037】
本発明はまた、記載される高圧カルバメート凝縮器と、反応器と、ストリッパとを備える高圧尿素合成セクションを備える尿素製造プラントにも関する。反応器、凝縮器、及びストリッパはそれぞれ、高圧で動作する。ストリッパは凝縮器への気体フローラインを有し、凝縮器は反応器への液体フローラインを有し、反応器は尿素溶液の少なくとも一部のために、ストリッパへの液体フローラインを有する。反応器及び凝縮器は、所望により、単一の容器内で組み合わされ、例えば水平に配置され、そこから凝縮物がストリッパに直接供給される。このような単一の容器は、例えば、凝縮器部分と反応器部分とを備える。また、凝縮器及び別個の容器として設けられる反応器(典型的には垂直反応器容器を備える)の場合には、所望によりいくらかの尿素が既に凝縮器内で形成される。例えば、プラントは、ストリッパからシェル空間への気体フローラインと、ストリッパからカルバメート凝縮器のチューブバンドルへの液体フローラインとを備え、又は例えば、プラントは、ストリッパからチューブバンドルへの気体フローラインと、ストリッパからカルバメート凝縮器のシェル空間への液体フローラインとを備え、チューブバンドルへのフローラインは、記載されるダクト及び再分配チャンバを通る。
【0038】
動作中、尿素、水、並びにCO及びNH(部分的にはカルバメートとして)を含む、反応器からの尿素合成流は、ストリッパに少なくとも部分的に供給される。カルバメートは、ストリッパ内でCO及びNHに解離され、未反応成分の一部は、気体として溶液から除去される。ストリッパでは、解離を促進するために、ストリップ気体との加熱及び向流接触によってカルバメートの解離を促進する。ストリッパは、加熱、及び例えばストリッピング剤として高圧COの供給を使用する、いわゆる熱ストリッピングもまた可能である。ストリッパ内での加熱は、典型的には、蒸気との間接的熱交換であり、典型的には、シェル側の蒸気と、ストリッパとして使用されるシェルアンドチューブ型熱交換器のチューブ内の尿素合成流との間接的熱交換である。いくらかのカルバメート及びNHを更に含有するストリッピングされた尿素溶液は、典型的には、膨張して圧力を下げ、より多くのカルバメートが尿素溶液から除去される回収セクションに供給され、回収セクションは、例えば、下流に直列にLP回収セクションを備えるMP回収、又はLP回収のみを含む。NH及びCOを含有するストリッパからの混合気体流は、高圧凝縮器のチューブ又はシェル空間のいずれかに供給される。
【0039】
好ましい実施形態では、混合気体流は、シェル内の開口部を通ってシェル空間に供給される。1つ以上の冷却流体は、記載されるダクト及び再分配チャンバを通ってチューブに供給される(異なる冷却流体用に別個のダクト及び再分配チャンバを備える)。液体凝縮物は、形成され、シェル空間内に存在するこの好ましい実施形態では、シェル空間の頂部部分には所望により気体が存在する。凝縮された液体は、縮合物が典型的には過冷却されるようにチューブと接触している。
【0040】
この好ましい実施形態では、気体分配器(例えばスパージャ)を使用して、特に凝縮器の長さ方向に分配するように、シェル空間内で凝縮される気体を分配する。スパージャは、例えば、シェルの導入口開口部に接続された導入口を有し、所望によりアームを備え、気体用の複数の導出口開口部を有するチューブであり、導出口開口部は、長さ方向に離間している。アームは、容器の幅にわたって延び、気体用の開口部を有する。好ましいカルバメート凝縮器は、このようなスパージャを備える。水平凝縮器では、気体分配器及びチューブの直線部分の両方が、長さ方向に平行に延び、好ましくは、気体分配器の少なくとも一部が、直線部分の下に配設される。これは、有利には、シェル内の凝縮熱の分配を改善する。
【0041】
いくつかの実施形態では、アンモニアはまた、特にCOストリッパが使用される場合に、例えば液体分配器を使用して、シェル空間に導入される。
【0042】
いくつかの実施形態では、凝縮熱は、シェル空間内で凝縮する場合には、チューブの少なくとも一部内で、チューブ内で凝縮する場合には、シェル空間内で、蒸気を生成すること(水の気化)によって少なくとも部分的に取り除かれ、蒸気は、例えば、プロセス凝縮物から形成される。
【0043】
特に高温でプロセス媒体(例えば、凝縮器内で高圧で凝縮するプロセス媒体)と接触しているカルバメート凝縮器の部品は、通常、腐食耐性材料、特に、オーステナイト-フェライト系二相ステンレス鋼(二相鋼)などの尿素グレード鋼から作製される。例えば、シェルは、内側に、典型的には、オーバーレイ溶接(すなわち、溶接オーバーレイ)、又は尿素グレード鋼又は他の腐食耐性金属、例えば、二相オーステナイト-フェライト系ステンレス鋼、AISI 316L鋼、又はINOX 25/22/2 Cr/Ni/Mo鋼から作製された内張りが設けられる。このような内張りは、高圧カルバメート凝縮器のシェルに典型的である。外側シェルは、例えば、炭素鋼シェルであり、例えば、少なくとも30mm又は少なくとも40mmの厚さである。
【0044】
いくつかの実施形態では、HPカルバメート凝縮器は、2つのチューブバンドルを備える。これは、2つの異なる冷却流体を、例えば、水から蒸気を生成するための第1のチューブバンドル、並びに尿素及びカルバメートを含む水溶液が加熱されてカルバメートの解離を引き起こす第2のチューブバンドルに使用するプロセスを実装するために使用することができる。
【0045】
このような凝縮器は、例えば、米国特許出願公開第2015/0119603号に記載されているプラント及びプロセスにおいて使用することができる。
【0046】
一実施形態では、第1のチューブバンドルにおいて、蒸気が水(凝縮物とも呼ばれる)から生成される尿素製造プロセスで、2つのチューブバンドルを有するHP凝縮器が使用される。第2のチューブバンドルでは、カルバメート(及びまた典型的には尿素)を含有する溶液を、シェル側の高圧プロセス媒体から受ける凝縮熱によって加熱し、これにより、第2のチューブバンドル内の溶液中のカルバメートの少なくとも一部がNH及びCOに解離する。溶液は、例えば、HPストリッパからストリッピングされた尿素溶液として、又はHPストリッパ内にストリッピングされていない反応器から尿素合成溶液の一部として得られる。例えば、反応器から(所望により、凝縮器及び反応器を備える組み合わせ容器から)の液体の一部である尿素溶液、及び/又はストリッパからの液体の少なくとも一部である尿素溶液は、所望により、膨張及び気体/液体分離(フラッシング)などの中間工程で、第2のチューブバンドルに供給され、特に、導入口再分配チャンバ及び導入口ダクトを通って第2のチューブバンドルに供給される。例えば、ストリッパを出る尿素溶液の全て又は一部は、膨張され、所望によりフラッシングされ、所望により更に膨張され、中圧(例えば、10~35バール)で第2のチューブバンドルに供給される。
【0047】
いくつかの実施形態では、第2のチューブバンドルは、例えば、尿素製造プロセスにおいて、カルバメート含有溶液を受け入れ、この尿素製造プロセスは、反応器(又は反応器部分)から、例えば、反応器、ストリッパから、又は回収セクションから、好ましくは導入口ダクト及び導入口再分配チャンバを通って直接又は間接的に第2のチューブバンドルへ尿素溶液を供給することを含む。このような実施形態では、カルバメートの(CO気体及びNH気体への)熱的解離は、第2のチューブバンドル内で起こり得る。
【0048】
高圧凝縮器は、例えば、ストリッピング型の尿素製造プロセスで使用することができ、反応器からの尿素溶液の一部が高圧ストリッパに送られ、溶液の別の部分がストリッパを迂回し、中圧で溶液を加熱することによるカルバメートの解離を伴う中圧処理工程に送られる。本発明はまた、このようなプロセスにも関する。異なるタイプの高圧凝縮器を使用する、このようなプロセスの一例は、米国特許出願公開第2004/0116743号に記載されている。本発明の高圧カルバメート凝縮器の動作において、及び本発明の好ましいプロセスにおいて、中圧処理工程は、例えば、尿素溶液を高圧カルバメート凝縮器の(第2の)チューブバンドルに通して、ストリッパから受ける凝縮器内の凝縮気体と間接的熱交換接触させることによって実施される。更なる実施形態では、カルバメート凝縮器は、(例えば、チューブバンドル内の)蒸気を生成するために使用され、この蒸気は、ストリッパから得られた尿素溶液又は反応器からのストリッピングされていない尿素溶液の中圧解離工程に熱を供給するために使用される。
【0049】
従来のHPカルバメート凝縮器における、動作中にチューブのうちの少なくともいくつかの内、及びシェル空間内にカルバメート含有液体を有する場合の課題は、腐食の危険性であり、例えば、チューブシートを有するプール凝縮器について、チューブをチューブシートに接続する方法は、米国特許出願公開第2015/0119603号に示される。本発明は、両側が腐食性カルバメート含有溶液に露出した再分配チャンバ、特に、ボアホールを有する壁部が、一実施形態では、単一のシート二相ステンレス鋼などの単一のシート腐食耐性鋼から作製され得る(及びこれらからなり得る)という重要な利点を提供する。これは特に、凝縮がシェル側である場合である。特に、全ての層が腐食耐性材料でできている場合、多層壁のチャンバも可能である。いくつかの実施形態では、チューブのボアホールを有する壁部の厚さは、再分配チャンバの壁の任意の他の部分の厚さの0.5~2倍であり、ボアホールを有する壁部は平らなプレートである。例えば、再分配チャンバの他の部分が厚さ1~2cmの壁を有する場合、チューブのボアホールを有する壁部は、0.5~4cmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、チューブのボアホールを有する壁部の厚さは、再分配チャンバの壁の他の部分の厚さの0.9~1.1倍である。本発明の利点は、チューブのボアホールを有する壁部が、チューブシートの場合などのような非常に厚いプレートである必要はないことである。
【0050】
例示的実施形態では、凝縮器は、垂直方向にABBAで配設された2つのU字形チューブバンドルを備え、Aは第1のチューブバンドルの直線部分であり、Bは第2のチューブバンドルの直線部分であるか、又はAは第2のチューブバンドルの直線部分であり(例えば、動作中のカルバメートの解離の使用)、Bは第1のチューブバンドルの直線部分であり(例えば、動作中の蒸気の生成に使用)、好ましくは、2つのチューブバンドルに接続された4つの再分配チャンバが垂直に積み重ねられる。このような実施形態では、U字形チューブバンドルの屈曲部は、同心状に(特に、長さ高さ平面内の断面に)配設することができる。あるいは、配設はAABBであってもよく、このAABBは、例えば、各チューブバンドルの同心内に2つのセットの屈曲部を与え、2つのセットが互いに上方に配設される。
【0051】
本発明の尿素製造プラントの好ましい実施形態では、高圧カルバメート凝縮器は、再分配チャンバ及びダクトを通って供給ラインに接続されたチューブバンドルを備える。供給ラインは、カルバメートも含有する尿素溶液をチューブバンドルのチューブに供給するために使用される。供給ラインは、ストリッパからストリッピングされた尿素溶液を受け入れるためにストリッパに接続されており、及び/又は反応器から尿素溶液の一部を受け入れるために反応器に接続される。好ましい実施形態では、供給ラインは、膨張デバイスを備え、好ましくは、膨張した尿素溶液から気体を分離するための気体/液体分離器を備える。好ましくは、供給ラインは、膨張した尿素溶液の少なくとも一部をダクトに供給するように構成されている。
【0052】
好ましい実施形態では、チューブバンドル(カルバメートも含む尿素溶液を受け入れる)は、導出口再分配チャンバ及びダクトを通って気体/液体分離器に接続される。気体/液体分離器は、好ましくは、回収セクションへの液体流接続及び第2の凝縮器への気体流接続を有する。チューブ内のカルバメートの熱的解離によって得られるアンモニア及びCOは、第2の凝縮器内で少なくとも部分的に凝縮される。好ましくは第2の凝縮器は中圧で動作する。好ましくは、凝縮は、尿素プラントの蒸発セクションと熱交換接触して実施され、これにより、凝縮熱を使用して、尿素溶液から水を蒸発させる。好ましくは、第2の凝縮器は、高圧カルバメート凝縮器、より好ましくはシェル空間へのカルバメート再循環流のための液体流接続を有する。
【0053】
加えて、HP凝縮器は、凝縮物(すなわち水)を処理するための供給ラインに接続され、かつ蒸気用のドレインラインに接続された第2のチューブバンドルを含んでもよい。
【0054】
好ましい実施形態では、凝縮器は、1つ以上のダクト対を備え、各対は導入口ダクト及び導出口ダクトを備える。凝縮器は、好ましくは、1つ以上の再分配チャンバ対を備え、各対は、導入口ダクトから複数のチューブへ冷却流体供給を分配する導入口再分配チャンバ及び複数のチューブから導出口ダクトへ加熱された冷却流体を組み合わせる導出口再分配チャンバを備える。各対において、再分配チャンバは、典型的には、U字形チューブバンドルの場合、直線状チューブ部の同じ側に、又は直線チューブバンドルの場合、チューブの反対側(長さ方向)に配設される。
【0055】
好ましい実施形態では、再分配チャンバは、複数の要素(プレート要素など)を備え、したがって完全に一体ではない。これらの要素は共に、再分配チャンバの壁を提供する。要素のうちの少なくとも1つには、チューブ用のボアホールが設けられ、同じ又は別の要素(例えば、他のプレート)には、ダクト用のホールが設けられている。好ましくは、少なくとも1つの他の要素は、開閉可能であり、例えば、取り外し可能であり、それによって、再分配チャンバの内側へのアクセスを提供する。要素は、例えば、カバープレートである。この要素を使用して、例えば人間及び/又はデバイスがアクセス可能な再分配チャンバの内側を作製することができる。このようにして、再分配チャンバの内側、すなわち流体を受け入れるための空間は、再分配チャンバの内側及びチューブのメンテナンス及び検査、特に、チューブの内側の検査及びチューブのプラギングのためにアクセス可能である。チューブのプラギングは、プラグをチューブ内の再分配チャンバに接続されたチューブ端部に配置することを含むことができる。好ましい実施形態では、再分配チャンバは、開放可能要素を、ボルトなどの少なくとも1つの他の要素に締結するための締結具を備える。例えば、開放可能な前部プレートを有するボックス形状の再分配チャンバは、開口部を有する前部プレートと、開口部と位置合わせされたくぼみ(例えば、ねじ穴)を有する側部プレートとを備えてもよい。開口部及びくぼみは、ボルトなどの締結具を受け入れることができる。
【0056】
再分配チャンバは、例えば、圧縮力に対する抵抗をもたらすように、壁部(例えば、プレート要素)を互いに離間させるためのスペーサを更に含んでもよい。
【0057】
容器は、好ましくは、再分配チャンバのための支持体を備え、例えば、再分配チャンバの下方及びシェル上に配設されている。例えば、ボアホールを備える壁部の下方(及び例えば、容器の長さ方向のボアホールを備える壁部と同じ位置に)に支持要素を設けることができる。支持体は、再分配チャンバを定位置にロックするための再分配チャンバのラグを受け入れるためのくぼみを備えてもよい。再分配チャンバ又は例えば再分配チャンバの積み重ねは、例えば、チャンバをシェル内の定位置に保持するための固定手段を備える。
【0058】
好ましくは、再分配チャンバの横断面の表面積(容器の長さ軸に垂直な断面)は、容器の断面の表面積の(特に、断面におけるシェルによって包囲された表面積の)90%未満、又は80%未満、又は40%未満である。
【0059】
再分配チャンバの(垂直)積み重ねの場合、幅高さ平面における積み重ねの断面の表面積(容器の中心長さ軸に垂直)は、例えば、容器の断面の表面積の(特に、断面におけるシェルによって包囲された表面積の)90%未満、又は80%未満、又は70%未満である。
【0060】
好ましくは、シェル空間は、空間の全ての部分が互いに流体連通している単一の非分割空間であり、また、このような実施形態では、シェル空間は、シェル空間を互いに完全に封止されていないコンパートメントに分割するバッフルを備えることができる。好ましくは、シェルはシェル空間と接触し、好ましくは、シェルの内面全体がシェル空間と接触している。好ましくは、各ダクトはシェル空間を通って延びる。好ましくは、各ダクトは長さセグメントを備え、ダクトの外側壁全体がシェル空間に露出している。好ましくは、(1つの又は各)ボックス形状の再分配チャンバの前部プレート(反対側の後部プレート内のチューブと接続するためのホールを有する)は、シェル空間に露出した外側にある。
【0061】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの再分配チャンバは、動作中に凝縮された液体中に少なくとも部分的に浸漬され、好ましくは各再分配チャンバは、凝縮された液体中に少なくとも部分的に浸漬され、好ましくは少なくとも1つの再分配チャンバは、凝縮された液体中に完全に浸漬され、凝縮された液体は、シェル空間内で凝縮される。
【0062】
好ましい実施形態では、シェルは、本質的に円筒形の中間部と、2つのキャップ部とを備える。各キャップ部は、複数のシェル部を含んでもよい。キャップ部は、例えば、所望によりマンホール及びプレートを有する実質的に半球状の部分である。2つのキャップ部は、対向する端部、特に長さ方向の対向する端部で中間部を閉鎖する。好ましくは、シェル空間は、中間部及びキャップ部によって画定される単一のシェル空間である。好ましくは、シェル空間は、例えば分割壁によって分割されないが、バッフルを備えることができる。好ましくは、流体は、気体分配器から両キャップ部に流れることができる。
【0063】
高圧カルバメート凝縮器は、本発明のカルバメート凝縮器には好ましい多数の特徴が、他のタイプの熱交換器、特に高温気体冷却器とは異なる。シェル内で凝縮するように構成された水平カルバメート凝縮器は、例えば、バッフル(又は隔壁)を備えてもよく、バッフルは、長さ方向にシェル空間をコンパートメントに分割し、容器の底部から延びるが、完全に頂部まではなく、それによって、シェルの頂部に気体放出領域を残し、バッフルの頂部は、動作中の凝縮物の液面を画定する。バッフルの一部は、例えば、チューブバンドルの垂直高さに開口部を有することができる。典型的には、最も下流のバッフルは、開口部を有さず、これにより、液体凝縮物がシェル内でバッフル頂部を超えて液体導出口へと流れる。したがって、シェルセクションは堰を備える。これにより、凝縮器内の凝縮物のレベルを、特にチューブバンドルを完全に浸漬するように制御することが可能になる。更に、典型的には、チューブバンドル、特にU字形チューブバンドルは、貫流構成又は各冷却流体(尿素溶液及び/又はプロセス凝縮物)を有する。
【0064】
チューブ内で凝縮する、例えば、水平ケトル型のカルバメート凝縮器は、例えば、カルバメート溶液の導入口にエジェクタを備え、例えば、凝縮される気体及びカルバメート溶液の導入口のための混合ゾーンを備える。カルバメート凝縮器は、例えば、チューブの導出口端部から凝縮される気体用の導入口までカルバメート溶液を再循環させるための導管を有する。
【0065】
シェル空間内で凝縮するように構成された垂直カルバメート凝縮器の場合、凝縮器は、例えば、頂部のパックされた部分、例えば、パックされた部分の上方のシェルの導入口、特に、カルバメート溶液用の導入口を通じて供給される溶液で発生気体を擦るためのパッキンを有する部分と、パックされた部分の下方にあるが、チューブバンドルのU屈曲部の上方であり、屈曲部より下方の凝縮器の一部まで配設されている立下り管とを備える。垂直カルバメート凝縮器は、好ましくは、シェルの液体用の導出口を有し、所望により、立下り管を備え、これにより、動作時に、チューブ端部が容器の底部にあるチューブバンドルのU屈曲部の上方に液面が維持される。
【0066】
ダクトは、好ましくは、二相ステンレス鋼などの腐食耐性鋼を含むか、又はこれらから作製される。例えば、ダクトは、完全にそのような鋼で作製される。再分配チャンバの壁部、及び動作中にカルバメートと接触するスペーサなどの任意の内部構造は、好ましくは二相ステンレス鋼などの腐食耐性鋼製である。チューブ、及びシェルの好ましい内張りは、好ましくは二相ステンレス鋼などの腐食耐性鋼で作製される。
【0067】
カルバメート凝縮器のこの部分に好適な二相ステンレス鋼としては、例えば、Safurex(登録商標)鋼として入手可能であり、29Cr-6.5Ni-2Mo-Nの組成を有し、ASMEコード2295-3及びUNS S32906とも表記される鋼、又は例えば、DP28W(商標)鋼として入手可能であり、27Cr-7.6Ni-1Mo-2.3W-Nの組成を有し、ASMEコード2496-1及びUNS S32808とも表記される鋼が挙げられる。Safurex(登録商標)鋼は、例えば、次のような組成(質量%)を有する:C:最大0.05、Si:最大0.8、Mn:0.3~4.0、Cr:28~35、Ni:3~10、Mo:1.0~4.0、N:0.2~0.6、Cu:最大1.0、W:最大2.0、S:最大0.01、Ce:0~0.2、残部はFe及び(不可避の)不純物。好ましくは、フェライト含有量は、30~70体積%であり、より好ましくは30~55体積%である。より好ましくは、鋼は、次を含有する(質量%):C最大0.02、Si最大0.5、Cr29~33、Mo1.0~2.0、N0.36~0.55、Mn0.3~1.0、残部はFe及び不純物。また、次の組成物重量%(重量%):C最大0.030;Si最大0.8;Mn最大2.0;Cr29.0~31.0;Ni5.0~9.0;Mo4.0未満;W4.0未満;N0.25~0.45;Cu最大2.0;S最大0.02;P最大0.03;残部はFe及び発生が不可避の不純物;を有する二相ステンレス鋼も好適であり、Mo+Wの含有量は、3.0よりも多いが5.0(重量%)未満であり、更に、好ましくは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2017/014632号に記載されているような鋼組成物である。いくつかの実施形態では、シェルは、そのような鋼から作製された内張りを備える。
【0068】
各ダクトは、再分配チャンバの壁に接続された第1のダクト端部と、シェルに接続された第2の端部とを有する。第1のダクト端部は壁内の開口部と位置合わせされ、第2のダクト端部はシェル内の開口部と位置合わせされ、これにより、流体はシェルの外側から再分配チャンバへとダクトを通って流れることができる。ダクトは少なくとも部分的に容器内に位置する。第1のダクト端部は容器内に位置する。ダクトは容器空間を通って延びる。更に、ダクトの外表面は、シェル空間に露出する。
【0069】
ダクトは、1つ以上のダクト部分、例えば、直列に配設され、互いに接続されたダクト部分からなってもよい。
【0070】
第1のダクト端部は、例えば、溶接によって再分配チャンバに接続される。第1のダクト端部は、例えば、その再分配チャンバに接続されたチューブ端部の半径方向外向きに配置され、すなわち、容器の中心長さ軸から長さに垂直な方向に更に移動される。底部、頂部、前部、後部、及び2つの側部プレートを有するボックス形状の再分配チャンバの例示的実施形態では、ダクト端部は、例えば、側部、頂部、又は底部プレートに取り付けられ、チューブ端部は、後部プレートに取り付けられ、前部プレートは、例えば、メンテナンス及び検査のために開けることができるカバープレートである。原則として、ダクトはまた、後部プレート又は前部プレートにも接続され得る。ボックス形状の再分配チャンバの例示的実施形態では、ダクトは前部プレートに接続され、側部プレートは開けることができる。
【0071】
好ましい実施形態では、複数の再分配チャンバは、互いに積み重ねられて、好ましくはボックス形状の再分配チャンバの積み重ね、好ましくは垂直積み重ねをもたらす。好ましくは、プレート要素は、積み重ねられた再分配チャンバ、好ましくはボアホールを有するプレート要素に共通である。好ましくは、チューブバンドルはU字形チューブを含み、各チューブは屈曲部及び2つの脚部を有する。好ましくは、再分配チャンバの積み重ねは、導入口再分配チャンバと、同じU字形チューブバンドルに接続された導出口再分配チャンバとを含む。
【0072】
好ましくはボックス形状の再分配チャンバの(垂直)積み重ねの場合、様々なプレートが、積み重ねの再分配チャンバと共通であることができ、これは、例えば、後部プレート(例えば、チューブバンドルと接続するためのボアホールを有する)及び側部プレートの場合であり得る。水平プレートは、2つの隣接するチャンバに共通であることができ、特に、チャンバが動作中に同じ圧力で流体を受け入れるときに、頂部プレート及び底部プレートを提供する。4つ以上の再分配チャンバの垂直積み重ねの場合、頂部再分配チャンバでは、ダクトを頂部プレートに接続することができ、底部再分配チャンバでは、ダクトを底部プレートに接続することができ、中間の再分配チャンバでは、ダクトを側部プレートに接続することができる。好ましい実施形態では、再分配チャンバは、2つの対向する側部プレートにダクトを備え、これらは、動作中に、例えば、両方を導入口として又は両方を導出口として使用される。これは、チューブにわたる流体の良好な分配、及びチューブからの流体の効率的な除去に有利に寄与し得る。特に、いくつかの実施形態では、ボックス形状の再分配チャンバは、再分配チャンバの高さよりも長い幅(端から端)を有し、ホールを備えた後部プレートの領域にも同様に当てはまるためである。
【0073】
再分配チャンバの積み重ねの例示的実施形態では、その積み重ねに接続された全てのダクトは、シェルの頂部まで延びる。例えば、シェル底部とチューブバンドルとの間の容器内のチューブバンドルの支持構造と組み合わせて、これにより、装置の膨張及び/又は収縮に適応することができる。再分配チャンバの積み重ねの場合、チャンバは、例えば、共通共有後部プレートを有してもよく、垂直積み重ねでは共通共有側部プレートも有してもよい。
【0074】
いくつかの例示的実施形態では、ダクトの第1の端部と第2の端部との間の長さ方向の間隔は、1つ以上のダクトについて(又は更には全てのダクトについて)、容器の長さの20%未満若しくは10%未満、又はチューブの直線部分の長さの20%未満若しくは10%未満である。
【0075】
更なる実施形態では、1つ以上のダクトは、長さ方向に延び、例えば、ダクトは、チューブ(の直線部分)と実質的に平行(例えば、5°未満の偏位)に配設される。いくつかの例示的実施形態では、ダクトの第1の端部と第2の端部との間の長さ方向の間隔は、1つ以上のダクト又は更には全てのダクトについて、チューブの直線部分の長さの10%超又は20%超である。
【0076】
一般に、再分配チャンバの場合、その再分配チャンバに接続されたチューブの数は、その再分配チャンバに接続されたダクトの数よりも少なくとも10倍多く、例えば、少なくとも50倍又は少なくとも100倍多い。したがって、ダクトは、一般に、ダクトの内部流れ空間の横断面(流れ方向に対して垂直)の表面積が、チューブのそれよりも少なくとも10倍又は少なくとも20倍大きい。
【0077】
各ダクトは、少なくとも2つのダクト端部を有する。ダクト端部は端部部分を指し、側縁部のみではない。ダクトはまた、Y字形ダクトの場合には、例えば、3つのダクト端部を有してもよい。ダクト端部は、再分配チャンバに接続される。例えば、ダクト縁部は、再分配チャンバ壁の(平面)側に、隙間のない継手で隣接されてもよい。ダクト端部はまた、再分配チャンバ壁内の開口部を通して挿入されてもよく、例えば、壁とダクト部分との間の隙間は、溶接によって封止される。
【0078】
同様に、ダクト端部(端部部分)がシェルに接続され、例えば、ダクト端部が、例えば、隙間のない継手でシェルに隣接されてもよい。シェル壁が炭素鋼要素を含み、ダクトを通って輸送される流体がカルバメートを含む場合、ダクト端部又はダクトの一部は、シェル内の開口部を通して挿入され得る。挿入されたダクト部分とシェルのホール表面(任意の露出した炭素鋼を含む)との間の隙間は、ウェルの場所がアクセス可能となるため、シェルの内側でも溶接することによって閉鎖することができる。所望により、(例えば、二相ステンレス鋼の)スリーブなどのダクト部分は、最初にホールを通して挿入され、隙間は、例えば、溶接によって封止され、挿入されたダクト部分(例えば、スリーブ)は、例えば、内部ボア溶接によって別のダクト部品に接続される。例えば、凝縮器は、シェル内の開口部を通して挿入され、挿入されたダクト部分とシェルとの間に封止された隙間を有するダクト端部部分を備える。
【0079】
再分配チャンバが複数のダクトを備える一実施形態では、これらのダクトは、所望により、容器の内側又は外側に配置され得るヘッダ(又は継手セグメント)に接続される。いくつかの実施形態では、ダクトは、少なくとも3つのダクトセグメントを接続する継手セグメント(例えば、T継手)を備える。このようなダクトでは、2つのダクト端部を、例えば、再分配チャンバに接続し、及び1つのダクト端部を、シェルに接続することができる。例示的実施形態では、導入口ダクトは、それぞれが底部プレートに接続された2つ以上のダクトセグメント、シェルに接続された少なくとも1つのダクトセグメント、及びダクトセグメントを接合する容器空間の内側に位置する継手セグメントによって、再分配チャンバの垂直積み重ねの底部再分配チャンバの底部プレートに接続される。再分配チャンバに接続された少なくとも2つのダクトセグメントは、チューブにわたって流体を最適に分配するために互いに離間され得る。
【0080】
凝縮器は、例えば、支持バッフル上などのシェル(少なくとも1つの開放端部を有する)内にチューブバンドルを取り付ける工程を含む方法で構築することができる。本発明はまた、このような構築方法にも関する。本方法は、チューブバンドルに取り付ける前又は後に、例えば、内部ボア溶接を使用して、再分配チャンバをチューブ端部に接続する工程を含み得る。例えば、再分配チャンバの積み重ねに接続されたチューブバンドルは、シェル内に取り付けられる。本方法は、チューブバンドルを取り付けた後に、ダクトを再分配チャンバに接続する工程を含んでもよい。ダクトは、取り付けの前又は後にシェルを通して挿入され得る。本方法は、例えば、閉鎖キャップ(例えば、半球状ヘッド)を、少なくとも1つの開放端部を有する容器の本質的に円筒形の中間部、例えば、再分配チャンバが位置する中間部端部に接合することによって、容器を閉鎖する工程を含むことができる。
【0081】
本発明の例示的実施形態は、図面に関連して例示及び説明され、これらの図面は、本発明又は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0082】
図1は、本発明によらない基準高圧カルバメート凝縮器を示す。凝縮器(100)は、シェルアンドチューブ型熱交換器(101)として提供され、冷却流体のためのU字形チューブバンドル(103)を備えた水平浸漬凝縮器として構成され、動作中、気体はシェル空間(105)内で凝縮される。凝縮器(100)の下半分の一部を図1に示す。熱交換器(101)は容器(102)を備え、容器はシェル(1)及びチューブバンドル(103)を備える。シェルは高圧に耐え、容器空間(104)を包囲するように設計される。容器(102)はまた、ヘッダ(107)を備える。ヘッダ(107)は、シェル(1)によって包囲されず、容器空間(104)の外側にある。チューブバンドル(103)のチューブ(2)は、容器空間(104)に設けられている。チューブ(2)とシェル(1)との間の空間は、凝縮される気体を受け入れるためのシェル空間(105)である。したがって、容器は、シェル空間(105)への気体導入口(4)と、シェル空間(104)からの液体用の導出口(5)と、シェル(1)内のプロセス媒体用のそれぞれの開口部とを備える。容器は、シェル(1)内に開口部を備えるカルバメート再循環導入口(13)を更に備える。容器は、気体導入口(4)に接続された気体分配器(6)を更に収容する。気体分配器(6)は、シェル空間(105)内に凝縮される気体(例えば、尿素プラントの高圧ストリッパからの混合気体)を分配するように構成されている。
【0083】
容器(102)はチューブシート(108)を更に備える。チューブシートは、シェル空間(105)をヘッダ(107)から分離するので、大きな圧力差に耐える必要がある。本質的に円筒形のシェル(1)の1つの開放端部は、チューブシート(108)によって封止されている。チューブシートは、冷却流体のためのボアホール(110)を備える。チューブ(2)の端部(3)は、チューブとヘッダ(107)との間に流体が流れることができるようにチューブシート(108)に接続される。ヘッダには、導入口又は導出口として使用される開口部(109)が設けられており、これにより、冷却流体は、開口部(109)と多数のチューブ(2)、例えば、100超のチューブとの間に流れる。チューブシート(108)は、例えば、本質的に円形の金属プレートであり、典型的には、シェル空間(105)に露出した側が腐食耐性鋼、例えば、二相ステンレス鋼合金内張り(例えば、溶接オーバーレイを含む)などで内張りされた厚い炭素鋼プレート(例えば、約30~60cmの炭素鋼)である。
【0084】
図1の基準カルバメート凝縮器(本発明によらない)では、チューブシート(108)の構造は、高圧に耐える必要性、腐食性が高いプロセス媒体への少なくとも1つの側面の露出、及び非常に多数のチューブを考慮すると、困難かつ高価である。更に、チューブとチューブシートとの間の任意の隙間は、カルバメート含有媒体と接触しているため、隙間腐食が生じる危険性が高い。例えば、ボアホールを通って延びるチューブ脚部で、例えば、チューブの外径よりもボア直径が(わずかに)大きい場合、隙間が存在する。隙間腐食は、カルバメートと接触する金属部分にとって特に深刻である。隙間腐食は、隙間内の流れが制限されることに起因する、隙間内に不動態化剤(酸素など)を有する鋼上の不動態化層を維持することの困難さを意味することができる。腐食はまた、炭素鋼がそのような隙間内で露出している場合には隙間内にも生じる。したがって、既知のプール凝縮器では、チューブは、ボアに挿入されないことが多いが、例えば、内部ボア溶接を使用して、チューブシートに隙間のない方法で接合される。チューブシートの炭素鋼部分を露出させることで、ボア内の縮合物及び蒸気を処理することは、問題とならない。
【0085】
カルバメートも含有する尿素溶液が、冷却流体としてヘッダ(107)に供給される場合、例えば、米国特許出願公開第2015/0119603号に記載されているようなプロセスに使用される場合、腐食保護層はまた、ヘッダ(107)に露出したチューブシート(108)の側にも必要であり、ボアホール(110)の炭素鋼表面は、冷却流体に曝露されるべきではない。単一のシート二相ステンレス鋼合金チューブシートの代替物は、高圧媒体を収容するのに十分な厚さ(例えば、30~60cm)を有する均質な二相ステンレス鋼プレートを少なくとも実用的に許容可能な方法で製造することができないため、実質的に実現可能ではない。
【0086】
米国特許出願公開第2015/0086440号では、スリーブがチューブシートを通って延びるように、スリーブがチューブシートを通してボアホールに挿入される構築方法が記載されている。スリーブは、チューブよりもはるかに短い。チューブシールドの炭素鋼層がシェル空間(105)内の流体から、及びヘッダ(107)内の流体から封止されるように、スリーブをチューブシートの両側に(外部で)溶接することができる。チューブシートの片側において、スリーブはその後、U字形チューブバンドルの脚部と内部ボア溶接で接続される。したがって、スリーブをチューブシートに溶接した後、低圧側(ヘッダ側)からスリーブ内に溶接プローブを挿入し、内部ボア溶接を形成することにより、チューブ端部を内側から溶接することによってスリーブに接続する。
【0087】
したがって、チューブバンドル(多数の緊密に離間したチューブを有する)がチューブシートの片側でアクセスを防止するため、スリーブをチューブシートへ外部溶接してから、スリーブをチューブバンドルに接続する。しかし、各チューブに3つの溶接が必要であり、構築コストが高くなるという欠点がある。
【0088】
米国特許出願公開第2015/0086440号の方法において、スリーブを省略し、チューブを内部ボア溶接でチューブシートに直接接続した場合、チューブシートの内側の炭素鋼プレートは、ボアホールにて、チューブの内側の冷却流体として使用される尿素溶液中に存在するカルバメートに露出する。これにより、腐食を誘発するだろう。チューブがボアホールに挿入された場合、ボアホールに挿入されたチューブ端部とチューブシートとの間に隙間が、すなわち、チューブの外側とチューブシートホールの内側との間に間隙が存在することになり、プロセス媒体がチューブシートの炭素鋼部分に接触することが可能となる。本発明では、再分配チャンバの壁(従来のチューブシートのようなボアホールを有する壁部を含む)を、有利には、単一のシート二相ステンレス鋼から作製することができ、これにより、冷却流体として使用されるカルバメートを含有する尿素溶液を、腐食の危険性を過度に誘発することなくボアホールの表面と接触させることができる。
【0089】
図1の凝縮器内のシェル空間内における凝縮物の滞留時間を長くするための1つの選択肢は、例えば、米国特許第5767313号に示されるように、シェルがチューブバンドルよりもかなり大きい断面積を有するように、シェルの直径を大きくすることである。欠点は、シェルの一方の端部を封止するためにチューブシートを使用するため、チューブシートの直径もまた大きくなり、したがって、圧力差によって誘発される応力もまた増加することである。
【0090】
図2Aは、本発明によるカルバメート凝縮器(100)の一例を示す。図2Bは、拡大された部分を示す。図1のようなヘッダ(107)及びチューブシート(108)の代わりに、カルバメート凝縮器(100)は、壁(8)を有する再分配チャンバ(7)を収容する。壁(8)は、再分配チャンバ(7)内の流体を、シェル空間(105)内の流体から分離するように構成されている。これらの2つの流体は、一般に、動作中に異なる組成物を有する。再分配チャンバ(7)は、容器空間(104)の内側に設けられ、したがって、シェル(1)によって包囲される。シェル(1)は、チューブ(2)の外表面と流体接触する流体を保持するように構成されている。複数のチューブ(2a、2b)は、各単一の再分配チャンバ(7)に接続されており、これにより、流体は、壁(8)の一部(11)に設けられた壁(8)内の開口部(12)(例えば、ボアホール)を通って、チューブ(2)と再分配チャンバ(7)との間を流れることができる。チューブ(2)の端部(3)は、チューブ端部の開口部が壁(8)の開口部(12)と位置合わせされるように、壁(8)に取り付けられる。これは、図2Cに概略的に示されており、チューブ(2a、2b)の直径は、再分配チャンバ(7)と比較して拡大されている。チューブ端部(3)の取り付けは、例えば、内部ボア溶接を用いる。再分配チャンバ(7)は、ダクト(9)によって(冷却)流体のためにシェル(1)内の開口部(10)に接続される。ダクト(9)は、容器空間(104)内に配置され、好ましくは、シェル空間(105)に露出される。ダクト(9)は、シェル(1)の開口部(10)と再分配チャンバ(7)との間に、より具体的には、再分配チャンバ(7)の開口部(14)まで延びる。このようにして、冷却流体がシェル空間(105)内のプロセス媒体流体から分離されている間に、シェル(1)内の開口部(10)とチューブ(2)との間を再分配チャンバ(7)及びダクト(9)を通して冷却流体を移送することができる。動作中、ダクト(9)は、内側が冷却流体と接触し、外側がシェル空間(105)内のプロセス媒体と接触する。図2A及び図2Bに示されるように、カルバメート凝縮器(100)はまた、マンホール(106)及びバッフル(15)を備える。
【0091】
図2Dは、例示的実施形態の長さに垂直な断面図を概略的に示す。カルバメート凝縮器(100)は、それぞれがダクト(9)を有する4つのボックス形状の再分配チャンバ(7)の垂直積み重ねを備え、ボアホールを有する部分(11)が各再分配チャンバ(7)に示される。図2Dのダクト(9)の配設は概略的であり、多数の変形形態が可能である。ダクト(9)は、一般に、再分配チャンバから外向きにシェル(1)の開口部(1)まで延びる。図1及び図2で同じである参照番号は、好ましくは、図2において、図1に関連して説明されるのと同じ特徴を有する。
【0092】
図3は、本発明による例示的な尿素プラントを示す。プラントは、尿素反応器R、ストリッパS、及びHPカルバメート凝縮器HPCCを備える高圧合成セクションを備える。反応器Rは、水蒸気との間接的熱交換による加熱に加えて、ストリッピングのためにCO供給を使用するストリッパSへの尿素合成溶液USSのための液体流接続を有する。所望により、反応器Rは、ストリッパSへの液体流接続を有する単一の容器内の凝縮器HPCCと組み合わされる。尿素合成溶液USSはまた、カルバメート、アンモニア、及び水を含有し、これらは、ストリッパSと、低圧セクションを備え、例えば、中圧セクションなしで低圧セクションからなる回収セクションRECとを使用して、最終尿素生成物から(少なくとも部分的に)除去される。RECの下流には、所望により、水を除去して尿素溶解物UMを得るために蒸発セクションEVAPが設けられ、UMは、所望により、仕上げセクションFINISHで固化されて、固体尿素生成物SUが得られる。ストリッパSは、凝縮器HPCCへの混合気体SGの気体接続を有する。凝縮器HPCCは、2つのU字形チューブバンドルT1及びT2を備える。各チューブバンドル(T1、T2)は、多数のチューブ(例えば、100超のチューブ)を備える。各チューブは、一方の端部が導入口再分配チャンバRC1A、RC2Aに接続され、他方の端部が導出口再分配チャンバRC1B、RC2Bに接続される。導入口再分配チャンバ(RC1A、RC2A)は導入口ダクトD1a、D2aに接続される。導出口再分配チャンバ(RC1B、RC2B)は導出口ダクト(D1b、D2b)に接続される。
【0093】
凝縮はHPCCのシェル側で行われ、これにもNH供給が供給される。ストリッパSは、膨張デバイス(例えば、膨張バルブ)V1を通って気体/液体分離用のフラッシュ容器F1へのストリッピングされた尿素溶液SUSSの液体流接続を有する。フラッシュ容器F1は、依然としてカルバメートを含有する中圧尿素溶液MPUSのチューブバンドルT2への液体接続を有する。チューブバンドルT2において、MPUS溶液は加熱されるため、MPUS中のカルバメートは分解される。チューブバンドルT2の導出口から、MPUS溶液は、気体/液体分離器、例えば、フラッシュ容器(F2)に送られる。気体G1は、典型的には中圧(MP)で動作し、例えば、蒸発セクションEVAPと熱交換する凝縮器MPCに送られる。分離器F2からの液体US1は、例えば、カルバメート及び水を更に除去するために低圧回収セクション(REC)に送られ、次いで尿素溶液US2として蒸発セクションEVAPに送られる。回収セクションRECでは、尿素溶液は、典型的には、低圧で加熱することによってカルバメートの解離に供され、除去された気体は、液体カルバメート再循環流CR2に凝縮される。凝縮器MPCはまた、フラッシュ容器F1からの気体G2及びHPCCからの凝縮されていない気体G3及びRからの発生気体(図示せず)を受け入れてもよい。MPCからの凝縮物は、ポンプ(図示せず)を使用して、液体カルバメート再循環CR1として、通常は回収セクションRECからの液体カルバメート再循環(CR2)と組み合わされて、合成セクションに、特にHPCC凝縮器のシェル空間に送られる。凝縮器HPCCは、反応器への凝縮物Cの液体流接続を有する。代替的に又は追加的に、USSの一部は、ストリッパSを迂回して、RからチューブバンドルT2(例えばF)に送られ得る。チューブバンドルT1では、水(典型的には、凝縮物)を蒸気に変換する(図示せず)。
【0094】
本明細書で使用する場合、1つ(a)」及び「1つ(an)」は、1つ以上を含む。用語「含む(comprising)」は、列挙されたもの以外の要素の存在を可能にする。様々な例示的実施形態が、部分的に添付図面を参照して上で説明されてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。別個に記載された実施形態の特徴は、当業者にとって明らかであるように、一般に、互いに組み合わせることができる。製造プロセスの工程は、本発明のプラントの対応するユニット及び流体流接続を用いて実装することができる。本発明のプロセスは、好ましくは、記載されるプラントにおいて、プロセスに関して等しく適用される全ての好ましいデバイス特徴部を用いる記載される高圧カルバメート凝縮器を使用して実施される。特許請求の範囲における図面の参照符号は、例示的な説明のみを提供し、特許請求の範囲を限定するものではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3