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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】二次電池の集電体および二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20230905BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20230905BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/70 Z
H01M4/64 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021072121
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166718
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】堀川 大介
(72)【発明者】
【氏名】進藤 洋平
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-153140(JP,A)
【文献】特開2019-071208(JP,A)
【文献】特開2000-192260(JP,A)
【文献】国際公開第00/042669(WO,A1)
【文献】特開2012-048913(JP,A)
【文献】特開平05-251082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
H01M 4/70
H01M 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、
多数の孔が形成され、前記樹脂層の両面を覆う金属箔と、を有し、
前記金属箔は、前記多数の孔のうちの少なくとも一部の周囲にそれぞれ形成され、前記樹脂層の側に向かって突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記樹脂層内に突入しており、
前記樹脂層の一部は、前記多数の孔の内部に入り込んでいる、
二次電池の集電体。
【請求項2】
前記樹脂層の前記一部は、前記突出部よりも前記金属箔の外側面の側まで前記多数の孔の内部に入り込み、前記多数の孔を塞いでいる、
請求項1に記載の二次電池の集電体。
【請求項3】
前記突出部の突出高さは、0.01μm以上3μm以下である、
請求項1または2に記載の二次電池の集電体。
【請求項4】
前記孔の直径は、0.001μm以上100μm以下である、
請求項1~3のいずれか一つに記載の二次電池の集電体。
【請求項5】
前記金属箔の前記多数の孔が形成された部分における前記多数の孔の開口率は、10%以上80%以下である、
請求項1~4のいずれか一つに記載の二次電池の集電体。
【請求項6】
前記樹脂層の融点は、255℃以下である、
請求項1~5のいずれか一つに記載の二次電池の集電体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載の集電体上に正極活物質層が形成された正極シートと、
請求項1~6のいずれか一つに記載の集電体上に負極活物質層が形成された負極シートと、のうちの少なくとも一方を備える二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の集電体と二次電池とに関する。
【背景技術】
【0002】
イオンを吸蔵する活物質層を集電体上に形成した電極シートを有する二次電池が従来から知られている。例えば特許文献1には、粗面化した2枚の金属箔の粗面化した面同士を向い合せ、2枚の金属箔の間に空隙を有する、または樹脂を挟んだ積層金属箔を備えたリチウムイオン電池用が開示されている。金属箔上には、リチウムイオンを吸蔵する活物質層が形成される。特許文献1によれば、金属箔の間の空隙または樹脂が活物質層の膨張を緩和するため、充放電に伴って活物質が集電体から剥離することが抑制される、とされる。そのため、サイクル特性に優れたリチウムイオン電池を得ることが可能になる、とされている。
【0003】
また、特許文献2には、貫通孔を形成した集電体上に活物質合材層を形成した電極を有するリチウムイオン二次電池が開示されている。これらの貫通孔の周囲は、集電体の他の部分よりも突出した突出部となっている。特許文献2によれば、孔周囲の突出部により、集電体表面に形成する活物質合材層の保持能力が向上し、活物質合材層の集電体からの剥離を防止することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-26913号公報
【文献】特開2008-311171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここでは、活物質層が剥離しにくく、かつ、内部短絡時に二次電池をシャットダウンしやすい二次電池の集電体を提案する。また、そのような集電体を備えた二次電池を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで提案される二次電池の集電体は、樹脂層と、樹脂層の両面を覆う金属箔と、を有しており、金属箔には、多数の孔が形成されている。かかる二次電池の集電体によれば、活物質層を集電体から剥離しにくくすることができる。また、かかる二次電池の集電体によれば、内部短絡時に二次電池をよりシャットダウンしやすい。
【0007】
上記集電体において、金属箔は、多数の孔のうちの少なくとも一部の周囲にそれぞれ形成され、樹脂層の側に向かって突出する突出部を有していてもよい。突出部の突出高さは、好ましくは、0.01μm以上3μm以下であってもよい。かかる二次電池の集電体によれば、二次電池のサイクル特性を向上させることができ、集電体と活物質層との剥離強度を向上させることができる。
【0008】
上記集電体において、孔の直径は、0.001μm以上100μm以下であってもよい。かかる二次電池の集電体によれば、二次電池のサイクル特性を向上させることができ、集電体と活物質層との剥離強度を向上させることができる。また、上記集電体において、金属箔における多数の孔の開口率は、10%以上80%以下であってもよい。かかる二次電池の集電体によれば、二次電池のサイクル特性、および、集電体と活物質層との剥離強度をさらに向上させることができる。
【0009】
上記集電体において、樹脂層の融点は、255℃以下であってもよい。かかる二次電池の集電体によれば、内部短絡時に二次電池をよりシャットダウンしやすくすることができる。
【0010】
二次電池は、上記したいずれかの集電体上に正極活物質層が形成された正極シート、および、上記したいずれか集電体上に負極活物質層が形成された負極シートのうちの少なくとも一方を備えることができる。かかる二次電池によれば、集電体によって向上する特性を二次電池に持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】二次電池の断面図である。
図2】負極シートの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、二次電池の一実施形態を説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、各図は、模式図であり、必ずしも実際の実施品が忠実に反映されたものではない。以下では、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
[二次電池の構成]
図1は、二次電池100の断面図である。図1に示すように、二次電池100は、電池ケース10と、電極体20と、電極端子50と、を備えている。電池ケース10は、電極体20と、電解液とを収容している。図1に示すように、電池ケース10は、ケース本体11と蓋体12とを備えている。ケース本体11は、略直方体の扁平な角型の容器である。
【0014】
電極体20は、シート状の負極シート30と、シート状の正極シート40とがセパレータシート21、22を介して重ねられ、略直方体形状に形成されたものである。電極体20は、ケース本体11に収容されている。第1セパレータシート21、正極シート40、第2セパレータシート22、負極シート30はこの順に重ねられて捲回され、ケース本体11内に収容されている。なお、本実施形態では、電極体20は、正極シート40と、負極シート30と、セパレータシート21、22とが巻回された巻回電極体であるが、正極シートと、負極シートと、セパレータシートとが積層された積層電極体であってもよい。
【0015】
負極シート30は、予め定められた幅および厚さの箔状の集電体31の両面に、負極活物質を含む負極活物質層32が形成された部材である。負極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、天然黒鉛のように、充電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時に吸蔵したリチウムイオンを放電時に放出しうる材料である。負極活物質は、一般的に天然黒鉛以外にも種々提案されており、特に限定されない。負極の集電体31の構成については後述する。
【0016】
正極シート40は、予め定められた幅および厚さの箔状の集電体41の両面に、正極活物質を含む正極活物質層42が形成された部材である。正極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、リチウム遷移金属複合材料のように、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸収しうる材料である。正極活物質は、一般的にリチウム遷移金属複合材料以外にも種々提案されており、特に限定されない。正極の集電体41の構成については後述する。負極シート30および正極シート40は、それぞれ電池ケース10の外部に設けられた電極端子50に接続されている。
【0017】
[集電体の構成]
以下では、負極の集電体31の構成について説明する。図2は、負極シート30の模式的な断面図である。図2に示すように、負極の集電体31は、樹脂層33と、樹脂層33の両面を覆う金属箔34、35と、を有している。金属箔34および35には、それぞれ多数の孔34a、35aが形成されている。金属箔34および35は、例えば、銅箔である。ただし、金属箔34および35の材料は、負極の集電箔として使用できるものであれば特に限定されない。金属箔34および35の厚さは、好ましくは、2μm以上10μm以下であってもよい。金属箔34の多数の孔34aは、金属箔34を厚さ方向に貫通している。孔34aの直径は、好ましくは、0.001μm以上100μm以下であってもよい。孔34aは、比較的大きい場合には、パンチング加工により形成されてもよい。孔34aは、比較的小さい場合には、レーザーによる孔開け加工や、薬液によるエッチング等によって形成されてもよい。
【0018】
多数の孔34aは、ここでは、金属箔34において概ね均一に分散配置されている。ただし、多数の孔34aは、例えば、金属箔34のうち負極活物質層32が形成される部分にだけ形成されていてもよい。金属箔34の多数の孔34aが形成された部分では少なくとも、多数の孔34aは概ね均一に分散配置されていることが好ましい。金属箔34の多数の孔34aが形成された部分における多数の孔34aの開口率は、10%以上80%以下であってもよい。開口率は、金属箔34のうち多数の孔34aが形成された部分において、金属箔34の表面に占める孔34aの割合である。
【0019】
金属箔34は、多数の孔34aの周囲にそれぞれ形成され、樹脂層33の側に向かって突出する突出部34bを有している。ただし、突出部34bは、多数の孔34aのうちの少なくとも一部の周囲に形成されていればよく、全ての孔34aの周囲に形成されていなくてもよい。突出部34bは、孔34aを加工する際にできる抜きバリであってもよい。突出部34bの突出高さは、0.01μm以上3μm以下であってもよい。突出部34bは、樹脂層33内に突入している。
【0020】
金属箔35も、金属箔34と同様に構成されている。金属箔35の突出部35bも、樹脂層33の側に向かって突出している。ただし、孔35aの直径および開口率は、金属箔34の孔34aの直径および開口率と同じでなくてもよい。突出部35bの突出高さは、金属箔34の突出部34bの突出高さと同じでなくてもよい。
【0021】
樹脂層33は、2つの金属箔34および35に挟まれている。樹脂層33は、ここでは、ポリエチレン(PE)によって構成されている。ただし、樹脂層33は、ある程度低い融点を有する限りで限定されない。樹脂層33の融点は、好適には、255℃以下であってもよい。PEの融点は、分子量等によって異なるが、95℃から135℃程度である。樹脂層33の厚さは、例えば、10μm以上30μm以下であってもよい。
【0022】
集電体31は、例えば、孔34aおよび35aがそれぞれ形成された金属箔34および35の間に樹脂層33を挟み、加圧圧縮(ホットプレス)することによって製作される。金属箔34および35の外表面(樹脂層33に接した面の裏面)には、負極活物質層32が形成される。
【0023】
正極シート40の集電体41は、金属箔の材料を除いて負極シート30の集電体31と同様に構成されていてもよい。正極の金属箔の材料は、例えばアルミニウムである。ただし、二次電池100は、集電体41上に正極活物質層42が形成された正極シート40、および、集電体31上に負極活物質層32が形成された負極シート30のうちの少なくとも一方を備えていればよい。従って、正極シート40または負極シート30は、典型的な従来の正極シートまたは負極シートと同様に、金属箔に活物質層が形成されたものであってもよい。
【0024】
[集電箔の評価試験結果]
表1および表2は、集電体の評価試験の結果を示す表である。
【表1】
【表2】
ここでは、25のサンプルを用意して評価試験を行った。表1および表2に示すように、サンプル1~25は、樹脂層の有無および材料、金属箔の孔の有無、突出部の高さ(突出部の高さ「0」は、突出部を設けなかったことを表す)、孔の直径、および孔の開口率(孔の直径「0」および孔の開口率「0」は、孔を設けなかったことを表す)を変えて製作した評価用サンプルである。
【0025】
評価試験のために作成したサンプル1~25では、金属箔(銅箔)の厚さは、5μmとした。また、樹脂層の厚さは、20μmとした。サンプル1~25のうち、金属箔の孔の直径が100μmよりも大きいものは、パンチング加工によって孔を形成した。金属箔の孔の直径が5μmよりも大きく、100μm以下のものは、レーザー加工によって孔を形成した。金属箔の孔の直径が5μm以下のものは、薬液によるエッチングによって孔を形成した。突出部は、電磁誘導加熱法により金属箔を急速加熱して金属箔の一部を垂れさせることによって形成した。突出部の突出高さは、加熱時間により制御した。ここで使用したPEの融点は、120℃である。ホットプレスは、温度100℃、圧力5MPa、時間30秒の条件で行った。
【0026】
容量保持率は、電圧3.3V~4.2Vの間の充放電を、60℃の環境下で200サイクル実施した前後の容量を比較して算出された。容量保持率は、200サイクル後の容量を初期の容量で除した値である。初期および200サイクル後の容量は、それぞれ、満充電状態とした二次電池を所定条件で放電した後の容量を使用した。二次電池を満充電状態とする際には、1/3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行った。二次電池を満充電状態とした後の放電は、1/3Cの電流値で電圧が3Vになるまで行った。容量測定時の温度は25℃とした。容量保持率の算出では、このときの容量を使用した。
【0027】
安全性評価では、電流値1/3C、充電上限電圧を4.2Vとして定電流充電を行った後に、電流値が1/10Cになるまで定電圧充電することによって満充電状態とした二次電池に対して、直径3mmの鉄製の釘を10mm/sの速度で電池中央部に貫通させた。このときの電池の外表面温度を熱電対で測定し、最高温度が200℃未満を「〇」、200℃以上を「×」とした。試験温度は、25℃とした。ただし、表2に示す樹脂層の材料の評価においては、上記と同じ温度測定を行った後、最高温度が150℃未満を「〇」、150℃以上を「×」とした。安全性評価は、釘を打ち込むことにより二次電池を内部短絡させ、内部短絡後の集電体の溶断性を評価する試験である。
【0028】
剥離強度の測定では、活物質層の表面に幅24mm、長さ300mmの一般用粘着テープを貼り付けて試験板に固定し、試験板に対して90°の角度で活物質層を引き剥がすことができたときの力を測定し、剥離強度とした。測定した剥離強度は、サンプル1の剥離強度を基準として規格化した。
【0029】
[樹脂層および金属箔の孔の作用効果]
表1において、サンプル1および2と、サンプル11とを比較する。表1に示すように、樹脂層が設けられなかったサンプル1および2では、安全性試験の結果が「×」となっている。樹脂層が設けられたサンプル11では、安全性試験の結果が「〇」となっている。これは、樹脂層が設けられた集電体では、内部短絡が起こったときに、二次電池の外表面温度が200℃になる前に金属箔が溶断したことを示している。内部短絡により金属箔の温度が上昇すると、その熱により集電体の樹脂層が溶融する。孔が多数設けられた金属箔は破断しやすいため、樹脂層が溶融すると、支持を失って部分的に断裂する。これにより、サンプル11では、電流の経路が減少して局所的な過熱が進行する。この局所的な過熱部分の溶断が連鎖することによって、集電体は、金属箔の融点(ここでは、銅の融点約1084℃)よりも低温で破断する。よって、サンプル11に係る集電体によれば、内部短絡時に二次電池をよりシャットダウンしやすい。
【0030】
また、表1に示すように、サンプル11の剥離強度は、サンプル1および2の剥離強度よりも大きい。これは、サンプル11では活物質層が金属箔の多数の孔に入り込み、孔に引っ掛かるためであると考えられる。
【0031】
さらに、表1に示すように、サンプル11の容量保持率は、サンプル1および2の容量保持率よりも高い。よって、サンプル11は、サンプル1および2よりもサイクル特性が良好と考えられる。これは、2つの金属箔の間に樹脂層が存在することにより、充放電による活物質層の膨張収縮の影響が緩和されて活物質層が集電体から剥離しにくくなるためと考えられる。
【0032】
[突出部の作用効果]
表1において、サンプル1~4と、サンプル13~15とを比較する。突出部の高さが低い場合(サンプル1~3、突出部が存在しない場合を含む)と、突出部の高さが高い場合(サンプル4)とは、突出部の高さが好適な場合(サンプル13~15)と比べて、容量保持率が低く、規格化剥離強度が小さい。ある程度の高さ以上の突出部を設けることにより、サイクル特性が向上し、剥離強度が大きくなる。ただし、突出部の高さが好適な高さよりも高くなると、再びサイクル特性が悪くなり、剥離強度が低下する。表1に示すように、突出部の突出高さが0.01μm以上3μm以下では少なくとも、それ以外の範囲よりもサイクル特性が向上し、剥離強度が大きくなる。突出部の突出高さが適度なときにサイクル特性が向上するのは、樹脂層と金属箔との結合力が適度な結合力となり、充放電時に金属箔と樹脂層とが動き得、かつ剥離しにくいためであると推測される。突出部の突出高さが高すぎるとサイクル特性が悪くなるのは、樹脂層と金属箔との結合力が強すぎ、充放電時に金属箔と樹脂層とが動きにくく、集電体が破損しやすいためであると推測される。突出部の突出高さが適度なときに剥離強度が向上するのは、剥離試験時に金属箔と樹脂層とが適度に動いて剥離力の一部を吸収するためであると推測される。突出部の突出高さが高すぎると剥離強度が悪くなるのは、逆に、剥離試験時に金属箔と樹脂層とが動きにくいためであると推測される。突出部の突出高さが小さいと効果が見られないのは、突出高さが低すぎて突出部として機能しないためであると推測される。また、突出部の突出高さが適度なときに安全性試験の結果も向上することが期待される。本願発明者は、突出部の突出高さが3μmよりも高いときには、樹脂層と金属箔とが一緒に動きやすく、金属層が破断しにくくなることを確認している。
【0033】
[孔径の作用効果]
表1において、サンプル5、6と、サンプル2および16~19とを比較する。金属箔の孔の直径が小さい場合(サンプル5)と大きい場合(サンプル6)とには、孔の直径が好適な場合(サンプル2および16~19)よりも、容量保持率が低く、規格化剥離強度が小さい。孔の直径をある程度よりも大きくすることにより、サイクル特性が向上し、剥離強度が大きくなる。ただし、孔の大きさが好適な大きさよりも大きくなると、再びサイクル特性が悪くなり、剥離強度が低下する。表1に示すように、金属箔の孔の直径が0.001μm以上100μm以下では少なくとも、それ以外の範囲よりもサイクル特性が向上し、剥離強度が大きくなる。金属箔の孔の直径が50μm以上100μm以下では、サイクル特性および剥離強度は、より良好な値を示す。孔の大きさが適度なときにサイクル特性が向上するのは、樹脂層が適度に孔に入り込み、充放電時に金属箔と樹脂層とが動き得、かつ剥離しにくいためであると推測される。孔の大きさが適度なときに剥離強度が大きくなるのは、活物質層が孔に入り込み、かつ、強固に孔に引っ掛かるためであると推測される。
【0034】
[開口率の作用効果]
表1において、サンプル7~10と、サンプル8および20~23とを比較する。金属箔における孔の開口率が小さい場合(サンプル7および8)と大きい場合(サンプル9および10)とは、孔の開口率が好適な場合(サンプル8および20~23)よりも、容量保持率が低く、規格化剥離強度が小さい。孔の開口率をある程度よりも大きくすることにより、サイクル特性が向上し、剥離強度が大きくなる。ただし、開口率が好適な開口率よりも高くなると、再びサイクル特性が悪くなり、剥離強度が低下する。表1に示すように、金属箔における孔の開口率が10%以上80%以下では少なくとも、それ以外の範囲よりもサイクル特性が向上し、剥離強度が大きくなる。開口率が適度なときにサイクル特性が向上するのは、樹脂層が適度に孔に入り込み、充放電時に金属箔と樹脂層とが動き得、かつ剥離しにくいためであると推測される。開口率が適度なときに剥離強度が大きくなるのは、多くの活物質層が孔に入り込み、かつ、金属箔の強度も好適な強度に保たれているためであると考えられる。また、孔の開口率が10%以上80%以上のときに安全性試験の結果も向上することが確認されている。本願発明者は、孔の開口率が10%以上80%以上のときに、表2に示すより厳しい安全性試験(判定閾値150℃)に二次電池が合格することを確認している。
【0035】
[樹脂層の融点の作用効果]
表2において、サンプル24と、サンプル2および25とを比較する。表2に示すように、樹脂層の融点が高い場合(サンプル24)には、樹脂層の融点が好適な場合(サンプル2および25)よりも、内部短絡時の電池の温度が高くなる。表1に示すように、樹脂層の融点が255℃以下の場合には少なくとも、二次電池は、判定閾値が低い(ここでは、判定閾値が150℃の)より厳しい安全性試験に合格する。樹脂層の融点が265℃の場合には、二次電池はこの試験に合格しないことから、樹脂層に融点が255℃以下の材料を使用すれば、より厳しい安全性試験レベルの安全性を確保できることが分かる。このように、樹脂層に融点が255℃以下の材料を使用すれば、内部短絡時に二次電池がよりシャットダウンしやすくなる。
【0036】
以上、ここで提案される二次電池の集電体および二次電池の一実施形態について説明した。しかし、上記実施形態は一例に過ぎず、他の態様で実施することもできる。上記した実施形態は、特に言及された場合を除いて本発明を限定しない。
【符号の説明】
【0037】
10 電池ケース
11 ケース本体
12 蓋体
20 電極体
21 第1セパレータシート
22 第2セパレータシート
30 負極シート
31 集電体
32 負極活物質層
33 樹脂層
34 金属箔
34a 孔
34b 突出部
35 金属箔
35a 孔
35b 突出部
40 正極シート
41 集電体
42 正極活物質層
50 電極端子
100 二次電池
図1
図2