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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/107 20060101AFI20230905BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20230905BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H01L31/10 B
H01L27/146 A
G01J1/42 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021128916
(22)【出願日】2021-08-05
(62)【分割の表示】P 2018053353の分割
【原出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2021185606
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】国分 弘一
(72)【発明者】
【氏名】松本 展
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-041746(JP,A)
【文献】米国特許第04321611(US,A)
【文献】特開昭54-049083(JP,A)
【文献】特開2004-319576(JP,A)
【文献】米国特許第07667400(US,B1)
【文献】特開2014-225647(JP,A)
【文献】特開平07-074385(JP,A)
【文献】特表2013-511854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0185700(US,A1)
【文献】特開2006-179828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0092801(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0139970(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0271108(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0339398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
G01J 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形のシリコン層と、
前記シリコン層内に設けられ、第1導電形であり、不純物濃度が前記シリコン層のキャリア濃度よりも高い第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられ、第2導電形であり、前記第1半導体層とpn境界を形成する第2半導体層と、
前記シリコン層内に設けられ、第1導電形であり、不純物濃度が前記シリコン層の不純物濃度よりも高く、前記第1半導体層から離隔した第3半導体層と、
前記シリコン層の下に設けられ、前記シリコン層に接続された第1電極と、
前記第2半導体層に接続された第2電極と、
を備え、
前記第3半導体層は、前記第1半導体層よりも前記pn境界の境界面に対して垂直な方向において下方に位置し、
前記pn境界の境界面に対して垂直な方向において平面視した場合に、前記第3半導体層は前記第1半導体層の中央部とは重ならず、
前記pn境界の境界面に対して垂直な方向において平面視した場合に、前記第3半導体層は前記第1半導体層の端部と重なり、
前記第3半導体層の不純物濃度は前記シリコン層の不純物濃度の10倍以上であり、
前記第3半導体層は前記シリコン層を介して前記第1電極から離隔した光検出装置。
【請求項2】
前記第1電極は金属材料により形成されている請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記第1電極の端子は前記第1電極の下面に接続されている請求項1または2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記第2電極は前記シリコン層上に配置され、導電性透明材料により形成されている請求項1~のいずれか1つに記載の光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転を実現する手段の1つとして、車載用LIDAR(Light Detection and Ranging:光検出測距装置)が開発されている。車載用LIDERは、赤外線レーザを発振するレーザ発振器、赤外線レーザを走査するスキャン光学系、目標物から反射した赤外線を検出する光検出装置、及び制御回路等によって構成されている。これにより、遠距離にある目標物の形状や距離を識別することができる。光検出装置として、SiPM(Silicon Photomultiplier:シリコン光電子増倍管)を用いることができる。しかしながら、シリコンは赤外線の吸収率が低いため、SiPMにおいては、PDE(Photon Detection Efficiency:光検出効率)の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許9,780,247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、光検出効率が高い光検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る光検出装置は、第1導電形のシリコン層と、前記シリコン層内に設けられ、第1導電形であり、不純物濃度が前記シリコン層のキャリア濃度よりも高い第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられ、第2導電形であり、前記第1半導体層とpn境界を形成する第2半導体層と、前記シリコン層内に設けられ、第1導電形であり、不純物濃度が前記シリコン層の不純物濃度よりも高く、前記第1半導体層から離隔した第3半導体層と、前記シリコン層の下に設けられ、前記シリコン層に接続された第1電極と、前記第2半導体層に接続された第2電極と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る光検出装置を示す平面図である。
図2図1の領域Aを示す平面図である。
図3図2に示すB-B’線による断面図である。
図4】第1の実施形態に係る光検出装置を示す回路図である。
図5】実施形態に係る光検出装置の動作を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る光検出装置の有効領域を示す図である。
図7】横軸に周辺p形層の不純物濃度をとり、縦軸に光検出効率(RDE)をとって、周辺p形層の不純物濃度が光検出効率に及ぼす影響を示すグラフ図である。
図8】第1の実施形態の変形例に係る光検出装置を示す断面図である。
図9】比較例に係る光検出装置を示す断面図である。
図10】第2の実施形態に係る光検出装置を示す断面図である。
図11】第3の実施形態に係る光検出装置を示す断面図である。
図12】第4の実施形態に係る光検出装置を示す断面図である。
図13】第5の実施形態に係る光検出装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る光検出装置を示す平面図である。
図2は、図1の領域Aを示す平面図である。
図3は、図2に示すB-B’線による断面図である。
図4は、本実施形態に係る光検出装置を示す回路図である。
なお、各図は模式的なものであり、各構成要素は適宜簡略化又は省略されている。後述する図についても同様である。
【0008】
図1に示すように、本実施形態に係る光検出装置1においては、複数のSiPM素子11がマトリクス状に配列されている。光検出装置1においては、例えば、48個のSiPM素子11が6行8列に配列されている。光検出装置1は、半導体プロセスによって形成されたものである。
【0009】
図2及び図3に示すように、光検出装置1においては、シリコン基板20が設けられている。シリコン基板20は、例えば、単結晶のシリコン(Si)からなる。シリコン基板20上には、シリコンからなるエピタキシャル層21が設けられている。エピタキシャル層21は、シリコン基板20の上面を起点としてシリコンがエピタキシャル成長したものであり、導電形はp形である。
【0010】
エピタキシャル層21上の一部には、例えば、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)膜、STI(Shallow Trench Isolation)又はDTI(Deep Trench Isolation)30が設けられている。以下、説明を簡潔にするために、総称して「LOCOS膜30」と記す。上方、すなわち、シリコン基板20からエピタキシャル層21に向かう方向から見て、LOCOS膜30の形状は格子状である。格子状のLOCOS膜30によって区画された各領域に、各SiPM素子11が形成されている。
【0011】
各SiPM素子11において、エピタキシャル層21の上層部分内には、p形層22が設けられている。p形層22の導電形はp形であり、そのキャリアとなる不純物の濃度(以下、単に「不純物濃度」ともいう)は、エピタキシャル層21における不純物濃度よりも高い。p形層22の不純物濃度は、例えば、4.5×1016cm-3以上である。
【0012】
形層22上には、n形層23が設けられている。n形層23の導電形はn形である。n形層23はp形層22と接し、pn境界24を形成している。n形層23の不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上である。p形層22及びn形層23により、ダイオード25が形成されている。上方から見て、n形層23の外縁はp形層22の外縁の外側に位置している。p形層22及びn形層23はSiPM素子11毎に設けられており、隣のSiPM素子11のp形層22及びn形層23からはLOCOS膜30によって分離されている。
【0013】
そして、エピタキシャル層21内におけるLOCOS膜30の直下域を含む領域には、周辺p形層26が設けられている。上方から見て、周辺p形層26の形状は、LOCOS膜30と同一、又は、一回り太い格子状である。周辺p形層26の導電形はp形であり、その不純物濃度はエピタキシャル層21における不純物濃度よりも高い。例えば、周辺p形層26における不純物濃度はエピタキシャル層21の不純物濃度の10倍以上である。例えば、エピタキシャル層21における不純物濃度は1×1013~1×1016cm-3であり、例えば、3×1015cm-3以下である。周辺p形層26の不純物濃度は1×1015cm-3以上である。
【0014】
周辺p形層26はp形層22よりも下方に配置されており、p形層22から離隔している。周辺p形層26とp形層22との間には、エピタキシャル層21の部分21aが介在する。部分21aには周辺p形層26及びp形層22から不純物が拡散しているため、部分21aの不純物濃度はエピタキシャル層21の平均的な不純物濃度よりも高いが、周辺p形層26の不純物濃度の半分よりは低い。また、上方から見て、周辺p形層26はp形層22を囲んでいるが、周辺p形層26の端部はp形層22の端部と重なっていてもよい。重なっている部分の幅は、例えば0~1μmである。また、周辺p形層26がp形層22を囲んでいる場合は、それらの間隔は、例えば0~1μmである。
【0015】
シリコン基板20の下面上には、電極膜31が設けられている。電極膜31は、例えば金属材料により形成されている。電極膜31の上面はシリコン基板20の下面と接している。このため、電極膜31はシリコン基板20を介してエピタキシャル層21に接続されている。
【0016】
エピタキシャル層21の上面上には、電極膜32が設けられている。電極膜32は、例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide:スズドープ酸化インジウム)等の導電性透明材料により形成されている。電極膜32の下面はエピタキシャル層21の上面と接している。このため、電極膜32はエピタキシャル層21の最上層部分を介してn形層23に接続されている。電極膜32は所定の形状にパターニングされている。また、LOCOS膜30上には、例えばポリシリコンからなる抵抗素子33が設けられている。抵抗素子33は電極膜32に接続されている。
【0017】
これにより、図4に示すように、光検出装置1においては、電極膜31と電極膜32と間に、複数のSiPM素子11が並列に接続されている。各SiPM素子11においては、ダイオード25及び抵抗素子33が直列に接続されている。
【0018】
次に、本実施形態に係る光検出装置の動作について説明する。
図5は、本実施形態に係る光検出装置の動作を示す図である。
図6は、本実施形態に係る光検出装置の有効領域を示す図である。
図7は、横軸に周辺p形層の不純物濃度をとり、縦軸に光検出効率(PDE)をとって、周辺p形層の不純物濃度が光検出効率に及ぼす影響を示すグラフ図である。
【0019】
図5及び図6に示すように、電極膜31と電極膜32との間に、電極膜31が負極となり、電極膜32が正極となるような電圧を印加する。これにより、pn境界24を起点として空乏層40が上下に拡がる。空乏層40は、n形層23内及びエピタキシャル層21内に到達する。これにより、空乏層40を挟む寄生キャパシタが形成され、電荷が蓄積される。
【0020】
この状態で、図5の矢印41で示すように、あるSiPM素子11に赤外線の光子pが入射する。これにより、矢印42で示すように、エピタキシャル層21内において、電子eと正孔hの対が発生する。この対発生位置は、空乏層40内である場合もあり、空乏層40外である場合もある。空乏層40内で発生した電子eと正孔hの対のうち、電子eは、矢印43で示すように、電極膜31と電極膜32によって形成される電界により、電極膜31に向かって進み、pn境界24に到達する。一方、空乏層40外で発生した電子eと正孔hの対のうち、電子eは、拡散により空乏層40内まで移動し、その後は電界により移動し、pn境界24に到達する。これにより、pn境界24においてアバランシェ降伏が生じ、ダイオード25が導通状態となり、矢印44で示すように、寄生キャパシタに蓄積されていた電荷が電極膜31と電極膜32との間で導通する。電荷が流れることにより、抵抗素子33において電圧降下が発生し、ダイオード25が再び非導通状態に戻る。このとき流れた電流を検出することにより、光子pの入射を検出する。
【0021】
各SiPM素子11は1個の光子pに反応してアバランシェ電流を流すため、1個の光子pを検出することができる。一旦、アバランシェ電流が流れたSiPM素子11は、基本的に再充電されるまで使用できなくなるが、周囲のSiPM素子11には影響を及ぼさない。光検出装置1には複数個、例えば、48個のSiPM素子11が設けられているため、一度に複数個の光子を連続して検出することができる。
【0022】
なお、各SiPM素子11は赤外線の入射角度を検出できないため、光検出装置1自体には空間分解能は無い。しかしながら、例えば、複数の光検出装置1を1列に配列させて、適当な光学系を設けることにより、1次元的な空間分解能を実現することができる。また、スキャン光学系(図示せず)によって赤外線レーザを走査することにより、2次元的な空間分解能を実現することができる。更に、赤外線レーザを発振してから検出するまでの時間差を計測することにより、3次元的な空間分解能を実現することができる。なお、複数の光検出装置1を2次元に配列させて2次元的な空間分解能を実現し、時間差を計測することにより、3次元的な空間分解能を実現することもできる。
【0023】
そして、図6に示すように、本実施形態に係る光検出装置1においては、周辺p形層26が設けられているため、光子pを捕獲できる有効領域45が大きい。有効領域45とは、光子pがシリコン原子に衝突して電子eと正孔hの対を発生させる位置であって、発生した電子eがpn境界24に到達してアバランシェ崩壊を生じさせる位置の集合である。有効領域45の外側で光子pが電子eと正孔hの対を発生させても、発生した電子eはpn境界24に到達せず、従って、アバランシェ崩壊も発生せず、この光子pは検出されない。このため、各SiPM素子11において有効領域45が大きいほど、PDE(光検出効率)が高い。
【0024】
周辺p形層26が設けられていることにより、有効領域45が大きくなる理由としては、以下の理由が考えられる。
第1に、周辺p形層26が電子eに対して障壁となるため、電子eは周辺p形層26を迂回して流れることになり、アバランシェ崩壊が発生するpn境界24に到達しやすくなる。
第2に、周辺p形層26が空乏層40の伸張を抑えるため、LOCOS膜30の直下域、すなわち、SiPM素子11の周辺部において空乏層40が小さくなり、電子eが空乏層40を介してSiPM素子11の周辺部に抜ける確率が低減する。
第3に、エピタキシャル層21と周辺p形層26との正孔の濃度差に起因して、エピタキシャル層21から周辺p形層26に向かう電界が発生するため、pn境界24を通過する電気力線が外側に拡がる。電子eは電気力線に沿って流れるため、pn境界24を通過する電気力線が外側に拡がると、SiPM素子11の周辺部で発生した電子がpn境界24に到達しやすくなる。
【0025】
また、本実施形態においては、周辺p形層26の不純物濃度をエピタキシャル層21の不純物濃度の10倍以上としているため、上述の効果を確実に得ることができる。
図7に示すように、シミュレーションの結果、エピタキシャル層21の不純物濃度を1×1014cm-3としたとき、周辺p形層26の不純物濃度が1×1015cm-3以上、すなわち、エピタキシャル層21の不純物濃度の10倍以上であると、光検出効率が顕著に向上した。
【0026】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、SiPM素子11の周辺部分において、エピタキシャル層21内に周辺p形層26を設けることにより、光子pを捕獲できる有効領域45を拡大し、光検出効率を向上させることができる。特に、上方から見て、周辺p形層26の端部がp形層22の端部と重なっている、あるいは周辺p形層26の端部がp形層22の端部と近いことにより、電子を効率よくpn境界24に誘導することができる。この結果、各SiPM素子11の光検出効率が高く、従って、全体の光検出効率が高い光検出装置を実現することができる。
【0027】
また、空乏層40の延伸距離を短くし、光子pの一部を空乏層40の外側においてシリコン原子に衝突させて、電子eと正孔hの対を発生させる場合は、電子eはエピタキシャル層21内を拡散によって移動する。この場合は、周辺p形層26によって電子の流れを変える効果がなだらかになり、制御が容易になる。
【0028】
(第1の実施形態の変形例)
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。
図8は、本変形例に係る光検出装置を示す断面図である。
【0029】
図8に示すように、本実施形態に係る光検出装置1aにおいては、周辺p形層26が、p形層22とほぼ同じ深さに位置している。周辺p形層26はp形層22から離隔している。周辺p形層26の不純物濃度は、エピタキシャル層21の不純物濃度の10倍以上である。
【0030】
本変形例によっても、前述の第1の実施形態(図6参照)と同様に、光子pを捕獲できる有効領域45を拡大し、光検出効率を向上させることができる。
本変形例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0031】
(比較例)
次に、比較例について説明する。
図9は、本比較例に係る光検出装置を示す断面図である。
【0032】
図9に示すように、本比較例に係る光検出装置101においては、周辺p形層26(図3参照)が設けられていない。このため、有効領域45が小さく、光検出効率が低い。これは、空乏層40が、SiPM素子11の中央部よりも周辺部において下方に伸張するため、あたかも電子がこの空乏層40に引き寄せられるかのような流れが生じ、周辺に流れるためと考えられる。なお、図6及び図9に示す有効領域45及び空乏層40の形状は、シミュレーション結果をトレースしたものである。後述する図についても同様である。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図10は、本実施形態に係る光検出装置を示す断面図である。
【0034】
図10に示すように、本実施形態に係る光検出装置2は、前述の第1の実施形態に係る光検出装置1(図3参照)と比較して、周辺p形層26の替わりに周辺絶縁層27が設けられている点が異なっている。周辺絶縁層27は、例えば、シリコン酸化物(SiO)からなり、上方から見た形状は、LOCOS膜30と同一、又は、一回り太い格子状である。また、周辺絶縁層27はLOCOS膜30及びp形層22よりも下方に配置されており、LOCOS膜30及びp形層22から離隔している。
【0035】
本実施形態においても、周辺絶縁層27が電子の移動を阻止すること、及び、空乏層40(図5参照)の伸張を妨げることにより、有効領域45を拡大することができる。この結果、光検出装置2は光検出効率が高い。
本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0036】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図11は、本実施形態に係る光検出装置を示す断面図である。
【0037】
図11に示すように、本実施形態に係る光検出装置3においては、前述の第2の実施形態に係る光検出装置2(図10参照)と比較して、LOCOS膜30及び周辺絶縁層27の替わりに、周辺絶縁部材28が設けられている点が異なっている。
【0038】
周辺絶縁部材28は例えばシリコン酸化物により形成されている。上方から見て、周辺絶縁部材28の形状は格子状であり、周辺絶縁部材28によって囲まれた領域にSiPM素子11が形成されている。周辺絶縁部材28はp形層22から離隔している。周辺絶縁部材28におけるp形層22よりも下方に配置された部分の端部は、上方から見て、p形層22の端部と重なっている。周辺絶縁部材28の上面28aはエピタキシャル層21の上面よりも上方に位置し、下面28bはSiPM素子11の内側、すなわち、p形層22の中央部の直下域に向かうにつれて高くなるように傾斜して迫り出している。
【0039】
本実施形態によれば、周辺絶縁部材28の下面28bがSiPM素子11の内側に向かうにつれて高くなるように傾斜していることにより、電子の流れをpn境界24に向かうように誘導することができる。これにより、有効領域45がより拡大し、光検出効率がより向上する。
本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第2の実施形態と同様である。
【0040】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図12は、本実施形態に係る光検出装置を示す断面図である。
【0041】
図12に示すように、本実施形態に係る光検出装置4は、前述の第1の実施形態に係る光検出装置1(図3参照)と比較して、周辺p形層26の替わりに周辺導電層29が設けられている点が異なっている。周辺導電層29は導電性材料、例えば金属材料、例えばアルミニウム(Al)からなり、上方から見た形状は、LOCOS膜30と同一、又は、一回り太い格子状である。また、周辺導電層29はLOCOS膜30及びp形層22よりも下方に配置されており、LOCOS膜30及びp形層22から離隔している。
【0042】
本実施形態においては、周辺導電層29が電子の移動を阻止すること、及び、空乏層40(図5参照)の伸張を妨げることに加えて、周辺導電層29が電気力線を引き寄せることにより、有効領域45を拡大することができる。この結果、光検出装置4の光検出効率を向上させることができる。
本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0043】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
図13は、本実施形態に係る光検出装置を示す断面図である。
【0044】
図13に示すように、本実施形態に係る光検出装置5は、前述の第1の実施形態に係る光検出装置1(図3参照)と比較して、周辺p形層26が設けられていない点、及び、上方から見てp形層22の中央部に穴22aが形成されている点が異なっている。穴22aは、p形層22を上下方向に貫通している。穴22a内には、エピタキシャル層21の部分21bが進入している。部分21bにはp形層22から不純物が拡散しているため、部分21bの不純物濃度はエピタキシャル層21の平均的な不純物濃度よりは高いが、p形層22の不純物濃度よりは低い。
【0045】
本実施形態においては、p形層22の中央部に穴22aを形成することにより、SiPM素子11の中央部において、空乏層40を下方に大きく延伸させることができる。これにより、電子が空乏層40を介してpn境界24に到達しやすくなる。この結果、光検出効率が向上する。
本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0046】
なお、p形層22に穴22aを形成せず、p形層22の中央部付近において、不純物濃度を少し低くするだけでも、上述の効果をある程度得ることができる。
【0047】
また、本実施形態は、上述の各実施形態と組み合わせて実施してもよい。例えば、p形層22に穴22aを形成しつつ、第1の実施形態又はその変形例のように、周辺p形層26(図3図8参照)を設けてもよく、第2の実施形態のように、周辺絶縁層27(図10参照)を設けてもよく、第3の実施形態のように、周辺絶縁部材28(図11参照)を設けてもよく、第4の実施形態のように、周辺導電層29(図12参照)を設けてもよい。
【0048】
また、上述の各実施形態において、各部の導電形を逆にしてもよい。この場合は、正孔がアバランシェ崩壊を引き起こすキャリアとなる。但し、電子をキャリアとした方が、効率が高い。
【0049】
以上説明した実施形態によれば、光検出効率が高い光検出装置を実現することができる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。また、前述の実施形態は、相互に組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1、1a、2、3、4、5:光検出装置
11:SiPM素子
20:シリコン基板
21:エピタキシャル層
21a、21b:部分
22:p形層
22a:穴
23:n形層
24:pn境界
25:ダイオード
26:周辺p形層
27:周辺絶縁層
28:周辺絶縁部材
28a:上面
28b:下面
29:周辺導電層
30:LOCOS膜
31、32:電極膜
33:抵抗素子
40:空乏層
45:有効領域
101:光検出装置
:電子
:正孔
p:光子
図1
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