(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】鋳造部品用鋳型及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20230905BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B22D17/22 B
B22C9/06 D
(21)【出願番号】P 2021515130
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2019075166
(87)【国際公開番号】W WO2020058401
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】102018215966.1
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504174917
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト・ツァー・フォデラング・デル・アンゲワンテン・フォーシュング・エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェストマン フランツ-ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥム ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ゾルトマン クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ブッセ マティーアス
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-258355(JP,A)
【文献】特開2013-176796(JP,A)
【文献】米国特許第04704079(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0050155(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0233378(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087627(US,A1)
【文献】中国実用新案第206632339(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/06
B22D 17/22,17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属および/または合金からなる少なくとも1つの鋳造用フレームと、
前記少なくとも1つの鋳造用フレームに導入される1つ以上のセラミック鋳造用インサートと、を備え、
前記セラミック鋳造用インサートは、製造される部品の
ネガティブの形の輪郭もしくは当該
ネガティブの形の輪郭の一部、または1つ以上の鋳造用コアと製造される部品との組合せの
ネガティブの形の輪郭もしくは当該
ネガティブの形の輪郭の一部を有し
、
前記少なくとも1つの鋳造用フレームに導入される複数のセラミック鋳造用インサートを更に備え、
前記複数のセラミック鋳造用インサートは、製造される部品のネガティブの形の輪郭もしくはネガティブの形の輪郭の一部、または1つ以上の鋳造コアと製造される部品との組合せのネガティブの形の輪郭もしくはネガティブの形の輪郭の一部を有し、
前記複数のセラミック鋳造用インサートは、それぞれ、材料を含む、または当該材料からなり、
前記複数のセラミック鋳造用インサートのうちの少なくとも2つの材料は、互いに異なる熱伝導率および/または異なる熱膨張係数を有することを特徴とする、鋳造部品用鋳型。
【請求項2】
前記セラミック鋳造用インサートは、AlN、SiAlON、SiN、SiSiC、SiC、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ATIおよびこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、または当該材料からなることを特徴とする、請求項1に係る鋳造部品用鋳型。
【請求項3】
前記セラミック鋳造用インサートは、1.5~50W/mKの熱伝導率および/または0.5~3.5・e
-6/Kの熱膨張率を有する材料を含む、または当該材料から
なることを特徴とする、請求項1または2に係る鋳造部品用鋳型。
【請求項4】
前記セラミック鋳造用インサートは、100~220W/mKの熱伝導率および/または4.0~5.6・e
-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、または当該材料から
なることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に係る鋳造部品用鋳型。
【請求項5】
前記鋳造用フレームに導入される前記複数のセラミック鋳造用インサートのうちの少なくとも1つは、1.5~50W/mKの熱伝導率および/または0.5~3.5・e
-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、または当該材料からなり
、および/または
前記鋳造用フレームに導入される前記複数のセラミック鋳造用インサートのうちの少なくとも1つは、100~220W/mKの熱伝導率および/または4.0~5.6・e
-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、または当該材料から
なることを特徴とする、請求項
1に係る鋳造部品用鋳型。
【請求項6】
前記セラミック鋳造用インサートは、シリコン浸透炭化ケイ素(SiSiC)を含む、またはシリコン浸透炭化ケイ素(SiSiC)からなることを特徴とする、請求項1に係る鋳造部品用鋳型。
【請求項7】
前記セラミック鋳造用インサートは、少なくとも1つのパッシベーション層が設けら
れ
ることを特徴とする、請求項
6に係る鋳造部品用鋳型。
【請求項8】
前記金属または前記合金は、鉄-ニッケル合金
、鉄-ニッケル-コバルト合金
、工具鋼、鋳鉄、およびこれらの混合物および合金からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に係る鋳造部品用鋳型。
【請求項9】
製造される部品の
ネガティブの形の輪郭もしくは当該
ネガティブの形の輪郭の一部、または1つ以上の鋳造用コアと製造される部品との組合せの
ネガティブの形の輪郭もしくは当該
ネガティブの形の輪郭の一部を有している鋳造用インサートが、金属または合金で作られた少なくとも1つの鋳造用フレームに導入されることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に係る鋳型の製造方法。
【請求項10】
前記セラミック鋳造用インサートは、シリコン浸透炭化ケイ素(SiSiC)を含む、またはシリコン浸透炭化ケイ素(SiSiC)からなることを特徴とする、請求項
9に係る方法。
【請求項11】
前記セラミック鋳造用インサートは、少なくとも1つのパッシベーション層が設けら
れることを特徴とする、請求項
10に係る方法。
【請求項12】
前記セラミック鋳造用インサートは、少なくとも1つのパッシベーション層が設けられ、
先ず、前記パッシベーション層の材料を有する少なくとも1つの層が前記セラミック鋳造用インサートに適用さ
れることを特徴とする、請求項
11に係る方法。
【請求項13】
一つ以上の部品を鋳造する方法における請求項1から
8のいずれかに記載される鋳型の使用で
あることを特徴とする、鋳型の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造部品用鋳型に関する。鋳型は、金属および/または合金からなる少なくとも1つの鋳造用フレームと、当該少なくとも1つの鋳造用フレームに導入される1つ以上のセラミック鋳造用インサートとを含む。鋳造用インサートは、製造される部品の負(negative)の輪郭もしくは負の輪郭の一部、または1つ以上の鋳造用コアと製造される部品との組合せの負の輪郭もしくは負の輪郭の一部を有している。また、本発明は、本発明に係る鋳型の製造方法および本発明に係る鋳型の使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
低圧ダイキャストと加圧ダイキャストによる金属性永久鋳型での成形は、鋳造部品を製作するための経済的な方法を提供する。ここで、金属製鋳型あるいは金型に対する要求は高い。高い融点を有する金属のキャスティングは、溶融材料とダイとの間の個々の点での溶接または合金形成のリスクと共に、ダイに対する高い熱負荷をもたらす。加圧ダイキャストの場合、高圧と溶融速度からさらなる荷重が掛かる。工具コストが高いため、経済的な製造のためには長い耐用年数が求められる。成形工具の局所的に過負荷を受ける領域は、早期故障につながる可能性がある。
【0003】
低圧ダイキャストにおける金属ダイスの使用は鋳造部品を製造するための経済的なプロセスを提供する。溶融炉、ライザーおよびダイの典型的な配置は、金属溶融体の対象を絞った凝固を可能にする。サンドキャストと比較して、金属ダイスにおける高い冷却速度は、より微細な結晶粒および緻密な微細構造体を可能にする。工具コストが高いため、経済的な製作には長い耐用年数が求められる。急速冷却と融点の高い金属(例えば銅含有合金)のキャスティングは、溶融材料とダイの間の個々の点での溶接または合金形成のリスクと共に、ダイに対する高い熱負荷をもたらす。このため、摩耗限界に達するまでの鋳造可能回数が減少する。サイジングを行うことで、鋳造部品の鋳型壁面への接着に対する保護を与える。しかし、コーティングの頻繁な更新は生産性の低下につながってしまう。
【0004】
サイジングを行うことにより、ダイを早期摩耗から保護することができる。サイジングは、液体として、または粉末としてダイの表面に適用することができる。サイジングは、黒鉛、脱硫モリブデンまたは窒化ホウ素および従来の放出剤を基にする。コーティングは、部分的に、耐摩耗性は高くなく、したがって、コーティングの欠陥が、溶融体とダイの金属との間の反応を可能にするリスクをもたらす。また、サイジングは鋳造部品の表面欠陥につながる可能性がある。溶融体とダイの間の熱の移動は、不均一なコーティングによって阻害される可能性があり、不合格となる鋳造部品の量を増加させる可能性がある。従前の解決策は、コーティング組成とコーティング方法の改善に基づいている。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこから進み、本発明の目的は、摩耗の影響を受けにくく、ひいてはより長い耐用年数を有する鋳造部品用鋳型を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の特徴により、鋳型として達成される。また、請求項10に記載の特徴により、かかる鋳型の製造方法として達成される。請求項14には、本発明による鋳型の使用の可能性が記載されている。従属請求項は有利な改善に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、鋳造部品用鋳型が説明される。当該鋳型は、金属および/または(金属)合金からなる少なくとも1つの鋳造用フレーム(または鋳造用スライド)と、また、鋳造用フレーム(または鋳造用スライド)に導入されたセラミック鋳造用インサート、もしくは少なくとも1つの鋳造用フレーム(または鋳造用スライド)に導入されたセラミック鋳造用インサートとを含む。鋳造用インサートは、(鋳型と共に)製造される部品の負(negative)の輪郭または負の輪郭の一部を有し、あるいは、鋳造用インサートは、(鋳型と共に)製造される部品と1つ以上の鋳造用コアとの組合せの負の輪郭または負の輪郭の一部を有する。
【0008】
セラミック鋳造用インサートは、耐摩耗性および耐久性が高い。本発明に係る鋳型は、結果的に摩耗の影響を受けにくく、したがって、より長い耐用年数を有する。すなわち、耐摩耗性、耐久性が高いため、従来の金型や鋳型に比べて鋳造可能個数が増加する。
【0009】
1つ以上のセラミックモールドインサートを、金属製の成形フレームまたは成形スライドに導入し、追加のコアの有無に関わらず、製造されるべき部品を再現することができる。セラミックモールドインサートは、剥離剤の使用を減らすことができるように構成することができる。加えて、材料は、鋳造されるべき部品が所望の方法で凝固するように選択されてもよい。セラミックモールドインサートの幾何学的成形は、製造が可能な限り単純化され、部品が必要に応じてコアの助けを借りて所望の輪郭を達成するように選択することができる。急速放熱のためには、高熱伝導率(100~160W/mKかつ4~4.8・e-6/K WAK)またはAlN(180~220W/mKかつ4.5~5.6・ e-6/K WAK)を有するSi-SiC製のインサートを使用することができる。窒化ケイ素またはSiAlON製のインサート(4~50W/mKかつ2.1~3・e-6/K WAK)によって、遅い冷却速度が達成され得る。モールドのマトリックスは、セラミックインサートから完全に形成されてもよく、または、金属モールドの特に重要な領域において部分的にのみ使用されてもよい。セラミックインサートは、凝固を制御するために冷却速度が遅い領域、または摩耗から保護するために特に負荷の大きい領域の、圧力ダイキャスト成形に使用することができる。
【0010】
鋳造プロセス中の熱伝導に影響する可能性は、鋳造部品の品質を高める可能性がある。金属性ダイの特に負荷のかかる領域をセラミックインサートによって強化することで、より長く使用することができる。サイジングの適用に関連する努力は低減され、生産性が向上し得る。
【0011】
本発明による鋳型の好ましい実施形態は、セラミック鋳造用インサートが、AlN(窒化アルミニウム)、SiAlON(酸化シリコン-窒化アルミニウム)、SiN(窒化シリコン)、SiSiC(シリコン浸透炭化シリコン)、SiC(炭化シリコン)、酸化ジルコニウム(ZrO2、酸化ジルコニウム)、酸化アルミニウム(Al2O3)、ATI(チタン酸アルミニウム)およびこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、または当該材料からなることを特徴とする。
【0012】
さらに好ましい実施形態は、セラミック鋳造用インサートが、1.5~50W/mKの熱伝導率および/または0.5~3.5e-6/Kの熱膨張率を有する材料を含む、またはかかる材料からなることを特徴とする。鋳造用インサートの材料は、ここでは、SiN、SiAlON、ATI(チタン酸アルミニウム)およびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0013】
熱伝導率は、例えば、ASTM E1461-13に従って決定されてもよい。この特許出願に規定されている他のすべての熱伝導率も、同様に決定することができる。
【0014】
熱膨張係数は、例えば、DIN51045に従って決定されてもよい。この特許出願に明記されている他のすべての熱膨張係数も、同様に決定することができる。
【0015】
さらなる好ましい実施形態は、セラミック鋳造用インサートが、100~220W/mKの熱伝導率および/または4.0~5.6・e-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、またはかかる材料からなることを特徴とする。鋳造用インサートの材料は、ここでは、AlN、SiSiC、およびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0016】
セラミック鋳造用インサートは、好ましくは、
・100~160W/mKの熱伝導率および/または4.0~4.8・e-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、またはかかる材料から成り、鋳造用インサートの材料は、好ましくはSiSiCである、および/または
・180~220W/mKの熱伝導率および/または4.5~5.6・e-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、またはかかる材料から成り、鋳造用インサートの材料は、好ましくはAlNである。
【0017】
本発明による鋳型のさらなる好ましい実施形態によれば、鋳型は、少なくとも1つの鋳造用フレームに導入される複数のセラミック鋳造用インサートを含み、この鋳造用インサートは、製造される部品の負の輪郭もしくは負の輪郭の一部、または1つ以上の鋳造コアと製造される部品との組合せの負の輪郭もしくは負の輪郭の一部を有する。セラミック鋳造用インサートは、各々、材料を含む、または当該材料から成り、セラミック鋳造用インサートのうちの少なくとも2つの材料は、異なる熱伝導率および/または異なる熱膨張係数を有する。これは、鋳造用インサートのうちの1つの材料が、鋳造用インサートのうちの少なくとも1つの別の材料とは異なる熱伝導率および/または熱膨張係数を有していることを意味する。
【0018】
さらに好ましくは、
・鋳造用フレームに導入されるセラミック鋳造用インサートのうちの少なくとも1つは、1.5~50W/mKの熱伝導率および/または0.5~3.5・e-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、またはかかる材料からなる。ここで、当該材料は、好ましくは、SiN、SiAlON、ATI(チタン酸アルミニウム)およびこれらの混合物からなる群から選択される、および/または
・鋳造用フレームに導入されるセラミック鋳造用インサートのうちの少なくとも1つは、100~220W/mKの熱伝導率および/または4.0~5.6・e-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、またはかかる材料からなる。ここで、当該材料は、好ましくは、AlN、SiSiC、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0019】
また、好ましくは、
・鋳造用フレームに導入されるセラミック鋳造用インサートのうちの少なくとも1つは、1.5~50W/mKの熱伝導率および/または0.5~3.5・e-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、またはかかる材料からなる。ここで、当該材料は、好ましくは、SiN、SiAlON、ATI(チタン酸アルミニウム)およびこれらの混合物からなる群から選択される、および/または
・鋳造用フレームに導入されるセラミック鋳造用インサートのうちの少なくとも1つは、100~160W/mKの熱伝導率および/または4.0~4.8・e-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、またはかかる材料からなる。ここで、当該材料は、好ましくはSiSiCである、および/または
・前記鋳造用金型フレームに導入される前記セラミック鋳造用金型インサートの少なくとも1つは、180~220W/mKの熱伝導率および/または4.5~5.6・e-6/Kの熱膨張係数を有する材料を含む、またはかかる材料からなる。ここで、当該材料はAlNである。
【0020】
本発明に係る鋳型のさらなる好ましい実施形態は、前記セラミック鋳造用インサートが、シリコン浸透炭化ケイ素(SiSiC)を含む、またはシリコン浸透炭化ケイ素(SiSiC)からなることを特徴とする。
【0021】
より大きなインサートを、SiSiCからニアネットシェイプまで製造することもできる。炭化珪素(SiC)は、高強度で耐食性があるのが特徴である。シリコンを浸透させたSiCで作られたインサートは、開気孔率を有していない。SiSiCは、従来の金属製ダイスを超える非常に高い熱伝導率を有している。熱伝導率はここでは材料の構造に影響される(典型的な値は100~160 W/mk)。熱伝導率が高いほか、熱膨張率が低い(4~4.8・10-6/K)。熱伝導の容量は、浸透したシリコンによって増加する。工具インサートは、調整された熱膨張性を有する金属支持体内で使用することができ、鋳造工具内に設置することができる。
【0022】
SiSiCを材料として使用するため、サイジングの適用に関する労力はさらに減少し、したがって、生産性を向上させる。良好な熱伝導率およびSiSiCの微細構造を介した熱伝導率への影響の可能性は、より短いサイクル時間および溶融体の制御された凝固のために利用することができる。
【0023】
さらに、(シリコン浸透炭化シリコン(SiSiC)を含む、またはからなる)セラミック鋳造用インサートは、少なくとも1つのパッシベーション層(passivation layer)を備えることが好ましい。パッシベーション層は、好ましくは、炭素、窒化ケイ素およびこれらの混合物からなる群の材料から選択されるパッシベーション層である。
【0024】
シリコンと溶融体との反応を避け、工具インサートの化学抵抗を増加させるために、工具インサートの表面に薄層を適用し、これを覆うことで、表面のシリコン領域を不動態化する。この層は、好ましくは、高温かつ不活性雰囲気中で、シリコンと共に炭化ケイ素を形成する炭素を含む。
【0025】
本発明による鋳型のさらなる好ましい実施形態において、(鋳造用フレームの)金属または(鋳造用フレームの)合金は、鉄-ニッケル合金、例えばインバール、鉄-ニッケル-コバルト合金、例えばコバール、工具鋼、鋳鉄、およびこれらの混合物および合金からなる群から選択される。
【0026】
本発明による鋳型は、好ましくは、複数の鋳造用フレーム、例えば2つ、3つまたは4つの鋳造用フレームを備えることができる。
【0027】
鋳造用インサートは、好ましくは、それぞれ少なくとも10mmの壁厚を有することが好ましい。
【0028】
少なくとも1つの鋳造用フレームは、それぞれ少なくとも25mmの壁厚を有することが好ましい。
【0029】
少なくとも1つの鋳造用フレームは、少なくとも1つの鋳造用フレームおよび/または鋳造用インサートの温度を制御するためのチャネルを有することが好ましい。
【0030】
少なくとも1つの鋳造用フレームは、キャリアプレート上、好ましくは工具鋼からなるキャリアプレート上に取り付けられることが好ましい。キャリアプレートには、(シリンダやエジェクタを閉じるための連結プレート等)の他の部品を取り付けてもよい。
【0031】
本発明は、本発明による鋳型の製造方法にも関し、この方法では、製造される部品の負の輪郭もしくは負の輪郭の一部、または1つ以上の鋳造用コアと製造される部品との組合せの負の輪郭もしくは負の輪郭の一部を有している鋳造用インサートが、金属または(金属)合金で作られた少なくとも1つの鋳造用フレームに導入または利用される。
【0032】
本発明に係る方法の好ましい変形例は、セラミック鋳造用インサートが、シリコン浸透炭化ケイ素(SiSiC)を含む、またはシリコン浸透炭化ケイ素(SiSiC)からなることを特徴とする。
【0033】
ここで、セラミック鋳造用インサートには、少なくとも1つのパッシベーション層が設けられていることが好ましい。パッシベーション層は、好ましくは、炭素、窒化シリコンおよびこれらの混合物からなる群から選択される材料から選択されるパッシベーション層である。
【0034】
さらに好ましくは、セラミック鋳造用インサートに少なくとも1つのパッシベーション層が設けられ、先ず、パッシベーション層の材料を有する少なくとも1つの層がセラミック鋳造用インサートに適用され、次いで、少なくとも1つの適用層が温度処理、好ましくは不活性ガス雰囲気中、特に好ましくは窒素ガス雰囲気中で処理される。当該温度処理は、1000℃から1400℃の範囲の温度、および/または12時間から120時間の期間で実施されることが好ましい。
【0035】
本発明は、さらに、1つ以上の部品を鋳造する方法における本発明に係る鋳型の使用に関し、当該方法は低圧ダイキャスト法が好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の実施例に基づいて、本発明を、ここに示す特定の実施形態およびパラメータに限定する意図なく、より詳細に説明する。
【実施例】
【0037】
2つの金型部品からなる低圧ダイキャスト用鋳型は、以下のように構成される。各金型半分は鋳造用フレームからなり、そこには窒化アルミニウムからなる鋳造用インサートが挿入される。適切な負の部品の輪郭は、鋳造用インサートの上側に形成される。インサートのさらなる設計は、特に、繰返し熱的ストレスの結果として生じる応力の最小化に関して、セラミックに適したものとなっている。インサートの最小肉厚は10mmである。鋳造用インサートの下面と側面は、鉄-ニッケル-コバルト合金(Fe54Ni29Co17)から製造された鋳造用フレームで囲まれている。当該フレームは、セラミックモールドインサートの下面および側面との平面接触が可能なように成形される。鋳造用フレームは、25mmの最小肉厚を有し、鋳造用フレームおよび鋳造用インサートの温度を制御するためのチャネルを備えている。鋳造用フレームは、工具鋼製のキャリアプレート上に取り付けられ、このキャリアプレートには、他の部品(例えば、シリンダ、エジェクタ等を閉じるための連結プレート)が取り付けられている。各金型半分は、開閉のために、工具鋼で作られたベースプレート上にガイドされる。ライザから閉じた鋳型への遷移のために、内側に円錐形であるチタン酸アルミニウム製のスリーブをベースプレートに挿入する。鋳型は油温制御システムにより鋳造用フレームを介して温度制御され、鋳造用フレームでの最高温度は350℃を超えない。記載の鋳型は、800℃までの軽金属鋳造に使用される。