(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】高ラジウム-228含量を有する少なくとも1本のジェネレータを準備するための方法
(51)【国際特許分類】
G21G 4/08 20060101AFI20230905BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20230905BHJP
B01D 15/20 20060101ALI20230905BHJP
B01D 15/42 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G21G4/08 G
B01D15/00 N
B01D15/20
B01D15/42
(21)【出願番号】P 2021526331
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 FR2019052675
(87)【国際公開番号】W WO2020099769
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-07
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521125578
【氏名又は名称】オラノ・メッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・トルグ
(72)【発明者】
【氏名】レミ・デュロー
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0166993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 4/08
B01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリウム-232及びラジウム-228を含む水溶液A1から、ラジウム-228を含む少なくとも1本のジェネレータを準備するための方法であって、
少なくとも以下の工程、
a) 第1のクロマトグラフィーカラム(10)に、体積V1の水溶液A1を循環させる工程であって、第1のクロマトグラフィーカラムが、トリウムに対してラジウムを選択的に保持する固体材料からなる第1の固定相(20)を含む工程と、
b) 第1の固定相(20)を水溶液A2で少なくとも1度洗浄する工程と、
c) ラジウム-228を錯化する薬剤を含む体積V3の水溶液A3を用いて、第1の固定相からラジウム-228を溶出する工程であって、体積V3が、第1のクロマトグラフィーカラムを循環した水溶液A1の体積V1の0.005%~1%の間であり、それによりラジウム-228錯体を含む水溶液A4を得る工程と、
d) 水溶液A4のpHを改変することによって、水溶液A4中に存在するラジウム-228錯体を解離し、それにより脱錯化
形態のラジウム-228を含む水溶液A5を得る工程と、
e) 第2のクロマトグラフィーカラム(40)に水溶液A5を添加する工程であって、第2のクロマトグラフィーカラムが、第1の固定相と同じ材料からなる第2の固定相(50)を含む工程と、
f) 第2の固定相(50)を水溶液A6で少なくとも1度洗浄し、それにより前記少なくとも1本のジェネレータを得る工程と
を含む方法。
【請求項2】
水溶液A1が、天然トリウム塩を水に溶解することによって得られた溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水溶液A1が、0.01mol/L~4mol/Lの硝酸を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水溶液A2が、0.01mol/L~4mol/Lの硝酸を含む酸性水溶液である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ラジウム-228を錯化する薬剤が、アミノポリカルボン酸又はアミノポリカルボン酸塩である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アミノポリカルボン酸が、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸又はジエチレントリアミン五酢酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水溶液A3が、0.03mol/L~1mol/Lのエチレンジアミン四酢酸又はその塩を含み、10~11のpHを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程d)における水溶液A4のpHの改変が、水溶液A4のpHを3~5の値にするための酸性化である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程d)が、酸性水溶液を用いて第1の固定相(20)を少なくとも1度洗浄することと、その洗浄から出た水溶液の全部又は一部を水溶液A4に加えることとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程d)が、
-
そのpHが、3~5である緩衝液を用いる、第1の固定相(20)の第1の洗浄と、
-
0.1mol/L~4mol/Lの硝酸を含む酸性水溶液を用いる、第1の固定相(20)の第2の洗浄と、
その洗浄から出た溶液の全部又は一部を水溶液A4に加えることと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程d)が、水溶液A4に酸を加えることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
水溶液A5が、3~5のpHを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程f)が、
-
そのpHが、少なくとも3に等しい緩衝液を用いる、第2の固定相(50)の第1の洗浄と、
-
酸性水溶液を用いる、第2の固定相(50)の第2の洗浄と
を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
水溶液A1を循環させる工程a)が、第1の固定相によるラジウム-228保持収率が閾値以上である限り実施される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
閾値が、80%である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
単一の第1のクロマトグラフィーカラム及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムを使用し、
- 工程a)~d)が、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nが、2以上の整数であり、それによりn回分の水溶液A5が生成され、それらが別々に又は一緒に収集されて、水溶液A5の混合物が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)が、n回分の水溶液A5又は水溶液A5の混合物を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)が、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる、
請求項1から10及び12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
単一の第1のクロマトグラフィーカラム、m本の第2のクロマトグラフィーカラム及びm相の第2の固定相を使用し、
- 工程a)~d)が、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nが、3以上の整数であり、それによりn回分の水溶液A5が生成され、それらが別々に又は一緒に収集されて、水溶液A5の混合物が得られ、
- m本の第2のカラムに添加する工程e)が、n回分の水溶液A5又は水溶液A5の混合物を用いて実施され、mが、2以上であるがn未満の整数であり、
- m相の第2の固定相を洗浄する工程f)が、水溶液A6を用いて実施され、それによりm本のジェネレータが得られる、
請求項1から10及び12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
単一の第1のクロマトグラフィーカラム及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムを使用し、
- 工程a)~c)が、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nが、2以上の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが別々に収集され、
- 工程d)が、酸をn回分の水溶液A4に加えることによって実施され、それによりn回分の水溶液A5が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)が、n回分の水溶液A5を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)が、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる、
請求項1から8及び11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
単一の第1のクロマトグラフィーカラム及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムを使用し、
- 工程a)~c)が、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nが、2以上の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが一緒に収集されて、水溶液A4の混合物が得られ、
- 工程d)が、酸を水溶液A4の混合物に加えることによって実施され、それにより水溶液A5が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)が、水溶液A5を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)が、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる、
請求項1から8及び11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
単一の第1のクロマトグラフィーカラム、m本の第2のクロマトグラフィーカラム及びm相の第2の固定相を使用し、
- 工程a)~c)が、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nが、3以上の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが別々に収集され、
- 工程d)が、酸をn回分の水溶液A4に加えることによって実施され、それによりn回分の水溶液A5が得られ、
- m本の第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)が、n回分の水溶液A5を用いて実施され、mが、2以上であるがn未満の整数であり、
- m相の第2の固定相を洗浄する工程f)が、水溶液A6を用いて実施され、それによりm本のジェネレータが得られる、
請求項1から8及び11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
単一の第1のクロマトグラフィーカラム、m本の第2のクロマトグラフィーカラム及びm相の第2の固定相を使用し、
- 工程a)~c)が、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nが、3以上の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが一緒に収集されて、水溶液A4の混合物が得られ、
- 工程d)が、酸を水溶液A4の混合物に加えることによって実施され、それにより水溶液A5が得られ、
- m本の第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)が、水溶液A5を用いて実施され、mが、2以上であるがn未満の整数であり、
- m相の固定相を洗浄する工程f)が、水溶液A6を用いて実施され、それによりm本のジェネレータが得られる、
請求項1から8及び11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
l本の第1のクロマトグラフィーカラム、l相の第1の固定相及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムを使用し、
- 工程a)~d)が、l本の第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nが、2以上の整数であり、lが、2以上であるがn以下の整数であり、それによりn回分の水溶液A5が生成され、それらが別々に又は一緒に収集されて、水溶液A5の混合物が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)が、n回分の水溶液A5又は水溶液A5の混合物を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)が、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる、
請求項1から10及び12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
l本の第1のクロマトグラフィーカラム、l相の第1の固定相及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムを使用し、
- 工程a)~c)が、l本の第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、
nが、2以上の整数であり、lが、2以上であるがn以下の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが別々に又は一緒に収集されて、水溶液A4の混合物が得られ、
- 工程d)が、酸をn回分の水溶液A4又は水溶液A4の混合物に加えることによって実施され、それによりn回分の水溶液A5が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)が、n回分の水溶液A5を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)が、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる、
請求項1から8及び11から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジオアイソトープとしても知られる放射性同位元素の生成の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、トリウム-232及びラジウム-228を含む水溶液から、高ラジウム-228含量を有する1つ又は複数のジェネレータを準備するための方法に関する。
【0003】
この又はこれらのジェネレータは、特にトリウム-228を生成するために働くことができ、トリウム-228からラジウム-224、次に鉛-212及びビスマス-212を得ることができる。
【0004】
したがって、準備を可能にする方法及び準備されたジェネレータは、核医学、特に癌治療のための標的アルファ放射線治療での使用に適切な、特に鉛-212又はビスマス-212をベースとした放射性医薬品の製造に用途を見出す可能性がある。
【背景技術】
【0005】
標的アルファ線治療としても知られる標的アルファ放射線治療は、癌細胞の表面上に存在する特異的部位を非常に正確に標的にすることができる、抗体等のベクターに結合した放射性同位元素を注入することからなる。次に、ラジオアイソトープの自然放射性壊変によって放出されたエネルギーは、周囲の健康な細胞への損傷を抑えながら、癌細胞を破壊することを可能とする。
【0006】
トリウム-232の壊変生成物の一部、特に鉛-212、及び鉛-212の娘核ラジオアイソトープであるビスマス-212は、標的アルファ線治療において、特に膵癌、他の腹腔内癌及び黒色腫、特に米国において標的アルファ線治療が前臨床試験の対象となっている疾患の治療において使用することができる。
【0007】
鉛-212及びビスマス-212を含むトリウム-232の自然壊変又は崩壊連鎖を表す添付の
図1に示されるとおり、
- 鉛-212は、ラジウム-224の放射性壊変によって生成することができ、
- ラジウム-224は、トリウム-228の放射性壊変によって生成することができ、
- トリウム-228は、ラジウム-228の放射性壊変によって生成することができ、一方、
- ラジウム-228は、モナザイト又はトーライト等の鉱石から抽出される天然トリウムの主な構成材料を代表するトリウム-232の放射性壊変によって生成することができる。
【0008】
鉛-212、ラジウム-224及びトリウム-228の生成は、「ジェネレータ」として知られるもの、すなわち液体クロマトグラフィーカラムを用いることによって実施することができ、この液体クロマトグラフィーカラムは、通常は、親ラジオアイソトープがその上に選択的に固定される固体固定相を含み、親ラジオアイソトープの放射性壊変によって形成される娘核ラジオアイソトープを溶出することを可能にする液相を用いて、定期的に洗浄される。
【0009】
トリウム-228の生成を意図しており、したがって親ラジオアイソトープとしてラジウム-228を含むジェネレータを準備するために、トリウム-232及びラジウム-228の両方を含む天然トリウム塩の水溶液を、固体固定相がトリウムに対してラジウムを選択的に保持することができるカラムに循環させることが知られている。
【0010】
トリウムに対してラジウムを選択的に保持することができる固定相材料は、例えば、放射された水溶液を分析前に濃縮し、妨害物質からラジウムを分離するための、IBC Advanced Technologies, Inc.社によって照会名AnaLig(商標)Ra-01で提供されている材料である。
【0011】
理論上、クロマトグラフィーカラムの固定相によって保持されるラジウム-228の量は、固定相材料の供給業者によって示されるとおり、明らかにこの固定相材料による理論的ラジウム-228保持能の制限内で、このカラム内の循環に入れられるトリウム塩溶液の体積と共に増大すると予測される。
【0012】
しかし実際には、このことは、クロマトグラフィーカラム内の循環に入れられるトリウム塩溶液の体積が増大すると、固定相材料によるラジウム-228保持収率の低減が生じ、結果的にトリウム-232と一緒に溶出されるラジウム-228の量が増大するので、当てはまらない。
【0013】
例えば、AnaLig(商標)Ra-01粒子36gを含むクロマトグラフィーカラムについて、本発明者らは、これらの粒子によるラジウム-228保持収率が、最初は99%であるが、トリウム塩溶液2200Lをクロマトグラフィーカラムに循環させた後に約50%以下になることを観察した(未発表データ)。
【0014】
したがって、所与の操作条件下でラジウム-228を保持するその実際の能力に対応する固定相材料の有効容量は、その供給業者によって示されるような理論的保持能を著しく下回る。
【0015】
その結果は、クロマトグラフィーカラムがその後トリウム-228ジェネレータとして使用される時、このジェネレータの生成能が、固定相によるラジウム-228の保持がより良好な場合に得られたかもしれない能力には満たないということである。これにより、一方では、トリウム-228を回収するために実施されるこのジェネレータのその後の溶出が、利用可能なトリウム-228の充填量がより少ないだけでなく、トリウム-228が更に希釈された溶出液を生じることになり、他方では、ジェネレータをより頻繁に置き換える必要が生じることになる。
【0016】
更に、ジェネレータを準備する時に固定相材料によって保持されないラジウム-228は、リサイクルされなければならず、そうしなければこのラジウムは喪失される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって本発明者らは、これらの問題の解決法を見出すことを、自らの目的とした。
【0018】
より具体的には、本発明者らは、トリウムに対してラジウムを選択的に保持することができる固定相材料の有効容量を増大させる、すなわちこの材料によって保持される、材料の質量単位当たりのラジウム-228の量を増大させる、又は換言すれば、トリウム-232及びラジウム-228の溶液から高ラジウム-228含量を有するジェネレータを生成することに成功することを、自らの目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の開示
この目的は、以下の、
a) 第1のクロマトグラフィーカラムに、体積V1の水溶液A1を循環させる工程であって、第1のクロマトグラフィーカラムが、トリウムに対してラジウムを選択的に保持する固体材料からなる第1の固定相を含む工程と、
b) 第1の固定相を水溶液A2で少なくとも1度洗浄する工程と、
c) ラジウム-228を錯化する薬剤を含む体積V3の水溶液A3を用いて、第1の固定相からラジウム-228を溶出する工程であって、体積V3が、第1のクロマトグラフィーカラムを循環した水溶液A1の体積V1の0.005%~1%の間、好ましくは0.01%~1%の間であり、それによりラジウム-228錯体を含む水溶液A4を得る工程と、
d) 水溶液A4のpHを改変することによって、水溶液A4中に存在するラジウム-228錯体を解離し、それにより脱錯化ラジウム-228を含む水溶液A5を得る工程と、
e) 第2のクロマトグラフィーカラムに水溶液A5を添加する工程であって、第2のクロマトグラフィーカラムが、第1の固定相と同じ材料からなる第2の固定相を含む工程と、
f) 第2の固定相を水溶液A6で少なくとも1度洗浄し、それにより前記少なくとも1本のジェネレータを得る工程と
を含む、トリウム-232及びラジウム-228を含む水溶液A1から、ラジウム-228を含む少なくとも1本のジェネレータを準備するための方法を提唱する本発明によって達成される。
【0020】
本発明によれば、トリウム-232及びラジウム-228を含む水溶液A1は、好ましくは、天然トリウム、すなわちモナザイト又はトーライト等のトリウム鉱石から抽出されたトリウムの塩を水に溶解させることによって得られた水溶液である。
【0021】
この天然トリウム塩は、好ましくは硝酸トリウムであり、この場合、水溶液A1は硝酸を含む。
【0022】
しかし天然トリウム塩は、硝酸塩以外の塩化トリウム等の塩であってもよく、この場合、水溶液A1は塩酸を含む。
【0023】
本発明によれば、第1及び第2の固定相を構成する材料は、トリウムに対してラジウムを選択的に保持することができる任意の固定相材料であってよい。
【0024】
そのような材料は、無機固体基材(シリカ若しくはアルミナ粒子又はシリカゲル等)、有機固体基材(ポリマー等)又は無機-有機固体基材を含むことができ、これは、水溶液A1中に存在するラジウムイオン(Ra2+)を、イオン交換、分子認識又は他の任意の機序によって、やはりこの水溶液に存在するトリウムイオン(Th4+)に対して選択的に保持することができる有機分子により、グラフト又は含浸によって官能化される。
【0025】
そのような材料は、特に、ラジウムの有機配位子の分子でグラフトされたシリカ粒子を含む材料、例えばオキサクリプタンドからなってもよい。本発明による方法の実施形態に特に良好に適している1つの材料は、例えば、IBC Advanced Technologies, Inc.社によって照会名AnaLig(商標)Ra-01で提供されている材料である。
【0026】
水溶液A1の硝酸含量は、好ましくは固定相材料の供給業者によって推奨される酸性度範囲内におかれ、例えばAnaLig(商標)Ra-01については0.01mol/L~4mol/Lの硝酸である。
【0027】
水溶液A2は、有利には、水溶液A1と同じ酸及び同じ酸濃度を含む酸性水溶液である。
【0028】
したがって水溶液A2は、水溶液A1自体が0.01mol/L~4mol/Lの硝酸濃度を有する場合には、好ましくはそのような濃度の硝酸を含む水溶液からなる。
【0029】
工程c)において、第1の固定相によって保持されたラジウム-228は、このラジウム-228を錯化又はキレート化(これらの用語は、ここでは同義とみなされる)によって第1の固定相から脱離する薬剤を用いることによって溶出される。
【0030】
本発明によれば、この錯化剤又はキレート剤は、好ましくは、アミノポリカルボン酸又はアミノポリカルボン酸塩である。
【0031】
したがって、錯化剤又はキレート剤は、特にニトリロ三酢酸(又はNTA)、エチレンジアミン四酢酸(又はEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(又はDTPA)又はその塩の1つからなっていてよいが、EDTA及びその塩、例えばそのナトリウム塩が好ましい。
【0032】
したがって水溶液A3は、優先的には、有利には0.03mol/L~0.1mol/Lの間、より好ましくは0.09mol/Lに等しいEDTA濃度であり、そのpHが、強塩基、例えば水酸化ナトリウムを加えることによって10~11の範囲の値にされている、EDTA又はその塩を含む溶液である。
【0033】
したがって、こうして得られた溶出液、すなわち水溶液A4は、錯化形態のラジウム-228を含む。
【0034】
したがって工程d)は、工程e)において第2のクロマトグラフィーカラムに、脱錯化ラジウム-228、又は換言すれば遊離ラジウム-228を含む水溶液を添加できることを視野に入れて、溶出液に存在するラジウム-228錯体を解離させることを意図している。
【0035】
本発明によれば、この解離は、水溶液A4のpHを、ラジウム-228を錯化する錯化剤の能力が低減する値にするように、このpHを改変することによって実施される。
【0036】
したがって、例えば錯化剤がEDTA又はその塩の1つである場合、ラジウム-228錯体の解離は、水溶液A4を酸性にして、この溶液のpHを、EDTAが析出するのを防止するために少なくとも3に等しい値にし、好ましくはラジウム-228に関するEDTAの錯化力が十分に低減されるように最大5に等しい値にすることによって実施される。この場合、好ましいpH値は、4~5の間である。
【0037】
この酸性化は、酢酸等の弱酸であってよいが、加えられる酸の体積を制限するために、好ましくは硝酸等の強酸である酸を、単に水溶液A4に加えることによって実施することができる。
【0038】
しかし、本発明の範囲においては、水溶液A4の酸性化は、好ましくは第1の固定相を少なくとも1つの酸性水溶液で洗浄し、この洗浄から出た水溶液のすべて又は一部を水溶液A4に加えることによって実施される。
【0039】
より好ましくは、水溶液A4を酸性にするためには、第1の固定相を、
- そのpHが少なくとも3に等しい、好ましくは最大5に等しい、理想的には4.5に等しい酢酸ナトリウム緩衝液等の緩衝液を用いる1度目の洗浄、並びに
- 有利には、水溶液A1及びA2と同じ酸を含み、したがって、水溶液A1及びA2自体が0.01mol/L~4mol/Lの硝酸濃度を有する場合には、好ましくはそのような濃度の硝酸を含む水溶液である酸性水溶液を用いる2度目の洗浄
で2度洗浄し、
これら2度の洗浄から出た溶液のすべて又は一部を、水溶液A4に加えることが好ましい。
【0040】
実際この手順は、水溶液A4を酸性にするだけでなく、第1の洗浄を用いて、遊離EDTA及び第1の固定相の間隙容量に保持された228Ra-EDTA錯体を除去し、第2の洗浄を用いて、この固定相のその後の再使用を視野に入れた第1の固定相の再調整を可能にするので、この手順に従うことが有利である。
【0041】
水溶液A4の酸性化が、第1の固定相の洗浄から出た1つ又は複数の溶液を加えることによって実施される場合、本方法は、工程d)~e)の間に、この酸性化から生じる水溶液A5のpHをモニタリングし、必要に応じてこのpHを3~5の間、好ましくは4~5の間の値に調整することを含むことができる。
【0042】
工程e)において、第2のクロマトグラフィーカラムへの水溶液A5の添加は、単にこの混合物をこのカラムに循環させることからなるが、その循環は、好ましくは第2の固定相によるラジウム-228の保持を促進するように低流速で、例えば1mL/分~5mL/分で実施される。
【0043】
上述のとおり、第2のクロマトグラフィーカラムに水溶液A5が添加されたら、このカラムに含有された第2の固定相は、水溶液A6で少なくとも1度洗浄され(本方法の工程f))、その水溶液A6は、好ましくは酸性水溶液である。
【0044】
より好ましくは、第2の固定相は、
- 第2の固定相の間隙容量に存在する錯化剤を除去するための第1の洗浄(錯化剤がEDTAである場合には、例えば少なくとも3に等しい、好ましくは最大5に等しい、理想的には4.5に等しいpHの酢酸ナトリウム緩衝液等の緩衝液を用いて実施される)、及び
- 第2の固定相を調整するための第2の洗浄(第2のクロマトグラフィーカラムを、その後、例えばトリウム-228のジェネレータとして使用することを視野に入れて、有利には、水溶液A1、A2及びA3と同じ酸及び酸濃度を含む酸性水溶液を用いて実施され、したがってこの水溶液は、水溶液A1、A2及びA3自体が0.01mol/L~4mol/Lの硝酸濃度を有する場合には、好ましくはそのような濃度の硝酸を含む)
の2度の洗浄を受ける。
【0045】
本発明によれば、工程a)は、好ましくは、第1の固定相によるラジウム-228保持収率が閾値以上である限り実施される。換言すれば、工程a)は、第1の固定相によるラジウム-228保持収率が、この閾値未満に低下するとすぐに停止される。
【0046】
その結果、工程a)からの水溶液A1の体積V1は、第1の固定相によるラジウム-228保持収率が閾値以上である限り、このカラムを循環する水溶液A1の体積に相当する。
【0047】
好ましくは、この閾値は、80%、より好ましくは90%である。
【0048】
本発明による方法の第1の好ましい実施形態では、単一の第1のクロマトグラフィーカラム及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムが使用され、
- 工程a)~d)は、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、2以上、通常は2~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、それによりn回分の水溶液A5が生成され、それらが別々に又は一緒に収集されて、水溶液A5の混合物が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)は、n回分の水溶液A5又は水溶液A5の混合物を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる。
【0049】
本発明の第2の好ましい実施形態では、単一の第1のクロマトグラフィーカラム、m本の第2のクロマトグラフィーカラム及びm相の第2の固定相が使用され、
- 工程a)~d)は、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、3以上、通常は3~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、それによりn回分の水溶液A5が生成され、それらが別々に又は一緒に収集されて、水溶液A5の混合物が得られ、
- m本の第2のカラムに添加する工程e)は、n回分の水溶液A5又は水溶液A5の混合物を用いて実施され、mは、2以上であるがn未満の整数であり、
- m相の第2の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それによりm本のジェネレータが得られる。
【0050】
本発明による方法の第3の好ましい実施形態では、単一の第1のクロマトグラフィーカラム及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムが使用され、
- 工程a)~c)は、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、2以上、通常は2~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが別々に収集され、
- 工程d)は、酸をn回分の水溶液A4に加えることによって実施され、それによりn回分の水溶液A5が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)は、n回分の水溶液A5を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる。
【0051】
本発明による方法の第4の好ましい実施形態では、単一の第1のクロマトグラフィーカラム及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムが使用され、
- 工程a)~c)は、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、2以上、通常は2~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが一緒に収集されて、水溶液A4の混合物が得られ、
- 工程d)は、酸を水溶液A4の混合物に加えることによって実施され、それにより水溶液A5が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)は、水溶液A5を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる。
【0052】
本発明による方法の第5の好ましい実施形態では、単一の第1のクロマトグラフィーカラム、m本の第2のクロマトグラフィーカラム及びm相の第2の固定相が使用され、
- 工程a)~c)は、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、3以上、通常は3~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが別々に収集され、
- 工程d)は、酸をn回分の水溶液A4に加えることによって実施され、それによりn回分の水溶液A5が得られ、
- m本の第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)は、n回分の水溶液A5を用いて実施され、mは、2以上であるがn未満の整数であり、
- m相の第2の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それによりm本のジェネレータが得られる。
【0053】
本発明による方法の第6の好ましい実施形態では、単一の第1のクロマトグラフィーカラム、m本の第2のクロマトグラフィーカラム及びm相の第2の固定相が使用され、
- 工程a)~c)は、第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、3以上、通常は3~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが一緒に収集されて、水溶液A4の混合物が得られ、
- 工程d)は、酸を水溶液A4の混合物に加えることによって実施され、それにより水溶液A5が得られ、
- m本の第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)は、水溶液A5を用いて実施され、mは、2以上であるがn未満の整数であり、
- m相の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それによりm本のジェネレータが得られる。
【0054】
本発明による方法の第7の好ましい実施形態では、単一の第1のクロマトグラフィーカラム及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムが使用され、
- 工程a)~e)は、第1及び第2のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、2以上、通常は2~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる。
【0055】
本発明による方法の第8の好ましい実施形態では、単一の第1のクロマトグラフィーカラム及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムが使用され、
- a)~f)は、第1及び第2のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、2以上、通常は2~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、それによりn回の工程a)~f)後に単一のジェネレータが得られる。
【0056】
本発明による方法の第9の好ましい実施形態では、l本の第1のクロマトグラフィーカラム、l相の第1の固定相及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムが使用され、
- 工程a)~d)は、l本の第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、2以上、通常は2~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、lは、2以上であるがn以下の整数であり、それによりn回分の水溶液A5が生成され、それらが別々に又は一緒に収集されて、水溶液A5の混合物が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)は、n回分の水溶液A5又は水溶液A5の混合物を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる。
【0057】
本発明による方法の第10の好ましい実施形態では、l本の第1のクロマトグラフィーカラム、l相の第1の固定相及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムが使用され、
- 工程a)~c)は、l本の第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、2以上、通常は2~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、lは、2以上であるがn以下の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが別々に収集され、
- 工程d)は、酸をn回分の水溶液A4に加えることによって実施され、それによりn回分の水溶液A5が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)は、n回分の水溶液A5を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる。
【0058】
本発明による方法の第11の好ましい実施形態では、l本の第1のクロマトグラフィーカラム、l相の第1の固定相及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムが使用され、
- 工程a)~c)は、l本の第1のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、2以上、通常は2~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、lは、2以上であるがn以下の整数であり、それによりn回分の水溶液A4が生成され、それらが別々に又は一緒に収集されて、水溶液A4の混合物が得られ、
- 工程d)は、酸を水溶液A4の混合物に加えることによって実施され、それにより水溶液A5が得られ、
- 第2のクロマトグラフィーカラムに添加する工程e)は、水溶液A5を用いて実施され、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる。
【0059】
本発明による方法の第12の好ましい実施形態では、l本の第1のクロマトグラフィーカラム、l相の第1の固定相及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムが使用され、
- 工程a)~e)は、l本の第1のクロマトグラフィーカラム及び第2のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、2以上、通常は2~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、lは、2以上であるがn以下の整数であり、それにより単一の第2のクロマトグラフィーカラムが得られ、
- 第2の固定相を洗浄する工程f)は、水溶液A6を用いて実施され、それにより単一のジェネレータが得られる。
【0060】
本発明による方法の第13の好ましい実施形態では、l本の第1のクロマトグラフィーカラム、l相の第1の固定相及び単一の第2のクロマトグラフィーカラムが使用され、
- 工程a)~f)は、l本の第1のクロマトグラフィーカラム及び第2のクロマトグラフィーカラムを用いることによってn回実施され、nは、2以上、通常は2~10の間、より好ましくは4~6の間の整数であり、lは、2以上であるがn以下の整数であり、それにより単一の第2のジェネレータが得られる。
【0061】
実施形態9~13がnに等しい整数lで実施される場合、このことは、n回の工程a)~c)又はa)~d)を実施するために毎回異なる第1のカラムが使用されることを意味することが分かる。
【0062】
本発明による方法の実施形態にかかわらず、得られたジェネレータが、好ましくは、トリウム-228を生成することを意図している。
【0063】
本発明による方法の更なる特色及び利点は、この方法の好ましい実施形態の2つに関する以下の補足的な説明を読む際に明らかになろう。
【0064】
明らかにこれらの実施形態は、単に本発明の主題の例示によって与えられ、この主題を決して制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】既に説明されているとおり、トリウム-232の放射性壊変系列を表す。
【
図2】本発明による方法の第1の実施形態の模式図を表す。
【
図3】本発明による方法の第2の実施形態の模式図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
具体的な実施形態の詳細な開示
最初に、本発明による方法の第1の実施形態を模式的に表す
図2を参照する。
【0067】
この第1の実施形態では、本方法が、単一のジェネレータを準備することを意図している。
【0068】
本方法は、最初に、固定相20を含む単一の第1のクロマトグラフィーカラム10を用いることによって、以下の工程a)~d):
a) 固定相20によるラジウム-228保持収率が、少なくとも閾値に等しい限り、トリウム-232、ラジウム-228及び硝酸を含む水溶液A1をカラム10に循環させる工程と、
b) ラジウム-228保持収率が閾値未満になる場合、硝酸を含む水溶液A2で固定相20を洗浄して、固定相20から、この固定相の間隙容量に存在するトリウム-232を除去する工程と、
c) 錯化剤としてEDTAを含む水溶液A3を用いて、固定相20からラジウム-228を溶出し、228Ra-EDTA錯体の形態のラジウム-228を含む溶出液、すなわち水溶液A4を容器30に収集する工程と、
d) 酸性pHの緩衝液を用いる第1の洗浄及び硝酸水溶液を用いる第2の洗浄の、固定相20の2度の連続する洗浄を用いて228Ra-EDTA錯体を解離し、カラム10からの2つの洗浄溶液を、その出口で容器30に収集し、それにより脱錯化ラジウム-228を含む水溶液A5を得る工程と
のシーケンスをn回実施することを含み、nは、2に等しい、通常は2~10の間、好ましくは4又は5に等しい整数である。
【0069】
工程a)~d)のn回のシーケンスの工程c)及びd)は、n個の容器30を使用して実施することができ、各容器は単一の工程c)及び単一の工程d)のために働き、その場合、工程a)~d)のn回のシーケンスの最終工程d)の後に、n回分の水溶液A5が得られる。
【0070】
或いは、工程a)~d)のn回のシーケンスの工程c)及びd)は、単一の容器30を使用して実施することができ、その場合、工程a)~d)のn回のシーケンスの最終工程d)の後に、n回分の水溶液A5の混合物が得られる。
【0071】
次に、本方法は、固定相50を含む単一の第2のクロマトグラフィーカラム40を用いることによって、以下の2つの工程:
e) 第2のカラム40に、n回分の水溶液A5又はn回分の水溶液A5の混合物を添加して、固定相50上に、これらの溶液又はこの混合物に含有されているラジウム-228を固定する工程と、
f) この固定相からEDTAを除去するための、酸性pHの緩衝液を用いる第1の洗浄、及びクロマトグラフィーカラム40をその後ジェネレータとして使用することを視野に入れて固定相50を調整するための、硝酸を含む水溶液を用いる第2の洗浄により、固定相50を2度連続して洗浄する工程と
を実施することを含む。
【0072】
本方法のすべての工程は、以下に詳説されるが、好ましくは室温で、すなわち20℃~25℃の温度で実施される。
【0073】
*工程a):
カラム10は、AnaLig(商標)Ra-01粒子からなる固定相20を含む。この固定相は、同位体にかかわらずトリウムに対して、同位体にかかわらずラジウムを選択的に保持する。
【0074】
例えば、このカラムは、78.54mLのベッドボリューム(又はBV)を有し、AnaLig(商標)Ra-01粒子34~37gを含有する。
【0075】
工程のn回のシーケンスの第1の工程a)を実施する前に、固定相20は、0.01mol/L~4mol/L、好ましくは0.05mol/L~1mol/L、より好ましくは0.1mol/Lの硝酸を含む水溶液を浸透させることによって調整される。
【0076】
この調整が実施されたら、天然硝酸トリウムを水に溶解することによって得られ、0.01mol/L~4mol/Lの間、好ましくは0.05mol/L~1mol/Lの間、より好ましくは0.1mol/Lである硝酸含量を有する水溶液A1を、カラム10に供給する。
【0077】
この水溶液は、その起源であるトリウム-232と好ましくは放射性平衡である、ラジウム-228(例えば、1MBq/Lの速度)を含有する。
【0078】
カラム10には、ラジウム-228保持収率が、好ましくは80%、より好ましくは90%である閾値以上である限り、通常は10mL/分~100mL/分の間の流速で水溶液が連続的に供給される。
【0079】
ラジウム-228保持収率が閾値未満に低下したら、カラム10への供給を停止する。
【0080】
RTと参照される保持収率は、カラム10に入る際及びカラム10から出る際に採取される水溶液A1の試料におけるラジウム-228の放射能量を決定し、次式を適用することによって計算される。
【0081】
【0082】
式中、
Aini:カラム10に入る際の水溶液A1中のラジウム-228の放射能量(MBqで表される)、
Afin:カラム10から出る際の水溶液A1中のラジウム-228の放射能量(MBqで表される)。
【0083】
それ自体が公知であるとおり、ラジウム-228の放射能量は間接的に決定され、すなわち試料を採取した後4日間の期間の最後において、その娘核であるアクチニウム-228によって示される放射能量から計算され、アクチニウム-228の放射能量自体は、ガンマ分光法によって試料において直接的に測定される。
【0084】
*工程b):
固定相20の洗浄は、0.01mol/L~4mol/L、好ましくは0.05mol/L~1mol/L、より好ましくは0.1mol/Lの硝酸を含む数BV、例えば15BVの水溶液A2を、例えば40mL/分の流速でカラム10に循環させることによって実施される。
【0085】
*工程c):
固定相20からのラジウム-228の溶出は、0.03mol/L~0.1mol/Lの間、好ましくは0.09mol/LのEDTAを含み、そのpHが、強塩基、例えば水酸化ナトリウムを加えることによって好ましくは10~11の値にされている水溶液A3をカラム10に循環させることによって実施される。
【0086】
カラム10における循環に入れられる水溶液A3のBVの数は、ラジウム-228の濃縮溶出液、すなわちラジウム-228の放射能量が、水溶液A1におけるラジウム-228の放射能量の少なくとも100倍高い水溶液A4を生じるラジウム-228の溶出液を得るために、工程a)中にこのカラムを循環した水溶液A1の体積の0.005%~1%の間、好ましくは0.01%~1%の間の水溶液A3の体積に相当するようなやり方で選択される。
【0087】
したがって、カラム10を循環した1000L~1200Lの体積の水溶液A1について、ラジウム-228の溶出は、50mL~12Lの間、好ましくは250mL~12Lの間の体積に相当する数BVの水溶液A3を用いて、すなわち例えば、78.54mLのBVを有するカラム10については6BVを用いて実施される。
【0088】
最適な溶出のためには、水溶液A3は、好ましくは2つの工程でカラム10の循環に入れられる。したがって、例えば6BVについては、2BVが最初に流速10mL/分で使用され、次に20分の中断の後、残りの4BVが流速5mL/分で使用される。
【0089】
しかし、水溶液A3をカラム10に連続的に(すなわち中断が想定されない)且つ/又は単一の流速で循環させることが完全に可能であり、この流れは、潜在的に1mL/分~30mL/分の範囲になる。
【0090】
他方では、固定相20の固体基材を形成するシリカ粒子を溶解するリスクを最小限に抑えるために、水溶液A3のpHを最大11に等しい値に維持することが重要である。
【0091】
*工程d):
上述のとおり、この工程は、固定相20を2度連続して洗浄し、これらの2度の洗浄から得られた溶液を容器30に収集することからなり、その容器には、工程c)において、228Ra-EDTA錯体の形態のラジウム-228を含む溶出液、すなわち水溶液A4が収集されている。
【0092】
遊離EDTA及びこの固定相の間隙容量に保持された228Ra-EDTA錯体を固定相20から除去することを可能にする第1の洗浄は、そのpHが、カラム10内側でEDTAが析出するのを防止するために少なくとも3に等しく、最大5に等しい、数BV、例えば5BVの緩衝液をカラム10に循環させることによって実施される。
【0093】
この緩衝液は、例えば、pH4.5の酢酸ナトリウム緩衝液である。
【0094】
以下の工程a)~d)のシーケンスの実施形態においてその再使用を視野に入れて固定相20を再調整することを、それ自体可能にする第2の洗浄は、その酸性度により固定相20の精製を可能にする数BV、例えば5BVの硝酸水溶液をカラム10に循環させるが、EDTAが析出するのを防止するために、この混合物のpHを3未満に低減するこの第2の洗浄から得られた溶液を、容器30に既に存在している混合物に加えることなく実施される。
【0095】
したがって、この硝酸水溶液は、好ましくは0.1mol/L~1mol/L、より好ましくは0.1mol/Lの硝酸含量を有する。
【0096】
カラム10における緩衝液及び硝酸水溶液の循環速度は、有利には10mL/分であるが、1mL/分~60mL/分の範囲であってもよい。
【0097】
これらの2度の洗浄からの溶液の収集は、洗浄溶液が、収集される時に溶出液と混合され、したがってこの溶出液を酸性にするように、撹拌しながら実施される。
【0098】
これによって、ラジウム-228に関するEDTAの錯化力を低減し、それによりラジウム-228が脱錯化されている水溶液A5を得ることが可能になる。
【0099】
*工程e)
クロマトグラフィーカラム40は、好ましくは、同じBV及び同じ質量のAnalig(商標)Ra-01粒子を含むカラム10と完全に同一のカラムである。
【0100】
工程e)を実施する前に、そのpHが、n回分の水溶液A5(n個の容器30が、工程a)~d)のn回のシーケンスの工程c)及びd)中に使用された場合)又は水溶液A5の混合物(単一の容器30が、工程a)~d)のn回のシーケンス中に使用された場合)中に存在するEDTAがカラム40内側で析出するのを防止するために、少なくとも3に等しく、最大5に等しい緩衝液を浸透させることによって、固定相50を調整する。
【0101】
この緩衝液は、例えば、pH4.5の酢酸ナトリウム緩衝液である。
【0102】
この調整が実施されたら、n回分の水溶液A5又は水溶液A5の混合物のpHを少なくとも3に等しい、好ましくは最大5に等しい、理想的には4~5の値に必要に応じて調整した後に、n回分の水溶液A5又はその混合物をカラム40に添加する。
【0103】
この添加は、Analig(商標)Ra-01粒子によるラジウム-228の保持を促進するために、n回分の水溶液A5(カラムに相次いで注入する)又は水溶液A5の混合物を、このカラムに低流速で、例えば1mL/分~5mL/分で循環させることによって実施される。
【0104】
*工程f)
上述のとおり、この工程は、pH3~5の間の緩衝液を用いる第1の洗浄及び硝酸水溶液を用いる第2の洗浄で、固定相50を2度連続して洗浄することからなる。
【0105】
固定相50から、この固定相の間隙容量に保持されている遊離EDTAを除去することを可能にする第1の洗浄は、そのpHが、カラム40内側でEDTAが析出するのを再び防止するために少なくとも3に等しく、間隙のEDTAがラジウム-228を再錯化するのを防止するために最大5に等しい、数BV、例えば2.5BVの緩衝液を、カラム40に循環させることによって実施される。
【0106】
工程d)の第1の洗浄の場合と同じように、この緩衝液は、例えば、pH4.5の酢酸ナトリウム緩衝液である。
【0107】
固定相50を調整することを可能にする第2の洗浄は、数BV、例えば3BVの弱く濃縮した硝酸水溶液、例えば0.1mol/L~1mol/L、好ましくは0.1mol/Lの硝酸を含む水溶液を、カラム40に循環させることによって実施される。
【0108】
カラム40における緩衝液及び硝酸水溶液の循環速度は、有利には5mL/分であるが、1mL/分~5mL/分の範囲であってもよい。
【0109】
ここで、本発明による方法の第2の実施形態を表す
図3を参照する。
【0110】
複数のジェネレータを準備することを意図したこの実施形態は、
- 工程a)~d)のシーケンスの数が、3以上、通常は3~10の間、より好ましくは4~6の間であり、
- 工程e)及びf)が、m本の第2のカラム40を用いて実施され、mが2以上の整数であるが、工程a)~d)のシーケンスの回数n未満である
点だけが、
図2に例示されている実施形態とは異なる。
【0111】
したがって工程e)は、m本の第2のカラム40に、工程a)~d)のn回のシーケンスの最後の工程d)後に得られたn回分の水溶液A5又は水溶液A5の混合物、好ましくはm本の第2のカラム40の間で均等分布の、すなわち等しい画分のn回分の水溶液A5又は水溶液A5の混合物を添加することを含む。
【0112】
次に工程f)は、固定相50から、これらの固定相に保持されている遊離EDTAを除去するための、酸性pHの緩衝液を用いる第1の洗浄、及びm本の第2のクロマトグラフィーカラム40をその後ジェネレータとして使用することを視野に入れて第2の固定相50を調整するための、硝酸を含む水溶液を用いる第2の洗浄により、m相の固定相50を2度連続して洗浄することを含む。
【実施例】
【0113】
(本発明による方法の実施形態の例)
本発明による方法を、「本発明の開示」に記載される第13の実施形態に従って実施して、ラジウム-228を含有する単一のジェネレータを提供した。
【0114】
以下を、この実施例で使用した。
- 3個の第1のカラム10(すなわちlは3に等しい)及び単一の第2のカラム40(それぞれ78.54mLのBVを有し、それぞれ34g~37gの間のAnalig(商標)Ra-01粒子を含む)、
- 1個の第1のカラム10につき1個の容器30(すなわち合計3個の容器30)、並びに
- 以下の操作パラメータ:
* シーケンスa)~f)が実施される回数n:3、シーケンスごとに以下のとおり。
* 工程a):1MBq/Lのラジウム-228(すなわち1200Lにつき1200MBq)及び0.1mol/Lの硝酸を含有する1200Lの水溶液A1を、第1のカラム10の1個に平均流速35mL/分で循環させ、次に
* 工程b):0.1mol/Lの硝酸を含有する15BVの水溶液A2を、第1のカラム10の1個に流速40mL/分で循環させ、次に
* 工程c):0.09mol/LのEDTAを含有するpH10~11の水溶液A3を、2BVを流速10mL/分、中断20分、4BVを流速5mL/分のシーケンスに従って、第1のカラム10の1個に循環させ、次に
* 工程d):pH4.5の5BVの酢酸ナトリウム緩衝液を、第1のカラム10の1個に流速10mL/分で循環させ、次に0.1mol/Lの硝酸を含む5BVの水溶液を、流速10mL/分で循環させて、脱錯化ラジウム-228を含有する16BVの溶液A5を、各容器30に収集し、
* 工程e):工程d)後に容器30のそれぞれに収集された16BVを、単一の第2のカラム40に流速5mL/分で循環させ、
* 工程f):第2のカラム40に、pH4.5の2.5BVの酢酸ナトリウム緩衝液を流速5mL/分で循環させ、次に0.1mol/Lの硝酸を含有する3BVの水溶液を流速5mL/分で循環させる。
【0115】
工程a)~f)を2度反復した後、AnaLig(商標)Ra-01粒子1g当たり82MBqのラジウム-228、すなわち合計3018MBqのラジウム-228を含むカラム40を得た。
【0116】
このことは、固定相50を形成するAnaLig(商標)Ra-01粒子の有効容量が、固定相20を形成するAnaLig(商標)Ra-01粒子の有効容量に対して2.5倍増大したことを意味する。
【符号の説明】
【0117】
10 第1のクロマトグラフィーカラム
20 第1の固定相
30 容器
40 第2のクロマトグラフィーカラム
50 第2の固定相