(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置の室内機、および羽根車
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0022 20190101AFI20230905BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
F24F1/0022
F04D29/44 P
(21)【出願番号】P 2021548000
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037280
(87)【国際公開番号】W WO2021059328
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-11-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠
(72)【発明者】
【氏名】小見山 嘉浩
(72)【発明者】
【氏名】岡田 成浩
(72)【発明者】
【氏名】大渕 忍
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-295891(JP,A)
【文献】特開2014-190656(JP,A)
【文献】実開昭64-041695(JP,U)
【文献】国際公開第2014/061642(WO,A1)
【文献】特開2015-114089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0022、1/0047
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられる熱交換器と、
前記筐体に設けられるベルマウスと、
前記ベルマウスから空気を吸い込んで前記熱交換器へ空気を吹き付ける羽根車と、を備え、
前記ベルマウスの内側端は、前記筐体の平坦な内面に連接し、かつ前記ベルマウスの前記内側端と前記筐体の平坦な前記内面とは、実質的に同一平面上にあり、
前記内面は、前記熱交換器に連接し、
前記羽根車は、
放射状に広がる主板部と、
前記主板部から突出して環状に配列される複数の翼部と、を備え、
前記複数の翼部は、開放型であり、
前記複数の翼部が描く最外径は、前記主板部の最外径より大きく、
前記複数の翼部の突出端は、実質的に同一面上に揃い、かつ前記ベルマウスの前記内側端に達して前記ベルマウスの前記内側端に倣い、
前記複数の翼部の前記突出端が描く平面と、前記ベルマウスの前記内側端と、前記筐体の平坦な前記内面とは、前記羽根車が回転可能な限度で接近している冷凍サイクル装置の室内機。
【請求項2】
それぞれの前記翼部は、前記主板部のみに連接している、請求項1に記載の冷凍サイクル装置の室内機。
【請求項3】
それぞれの前記翼部の前記主板部に連接する縁は、前記主板部の縁の一部に連接している、請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置の室内機。
【請求項4】
前記主板部は、それぞれの前記翼部に連接する複数の第一縁と、隣り合う一対の前記第一縁を繋ぐ複数の第二縁と、を有し、
それぞれの前記第一縁とそれぞれの前記第二縁とは、前記主板部の周方向において隙間を隔てて向かい合う、請求項1から3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置の室内機。
【請求項5】
それぞれの前記翼部の翼型は、翼弦に対して凸状に湾曲する実質的に一様な厚さの板形状である、請求項1から4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置の室内機。
【請求項6】
前記主板部の中心部に設けられるハブ部を備え、
前記ハブ部および前記複数の翼部は、同じ方向へ前記主板部から突出し、
前記主板部を基準とする前記ハブ部の突出高さは、前記複数の翼部の突出高さより低い、請求項1から5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置の室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷凍サイクル装置の室内機、および羽根車に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体内の略中央部に設けられるターボファンと、ターボファンの外周部を囲むように設けられる熱交換器と、を備える冷凍サイクル装置の室内機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷凍サイクル装置の室内機は、ターボファンの吸込側にベルマウスを備えている。また、従来の冷凍サイクル装置の室内機のターボファンは、羽根(ブレード)の先端を連結するシュラウドを備えている。このシュラウドは、ベルマウスの近傍に配置されている。
【0005】
そして、発明者らは、ベルマウスの近傍にターボファンのシュラウドが配置されている従来の冷凍サイクル装置の室内機では、ベルマウスの背面側(筐体の内側)、かつシュラウドの径方向外側の領域に渦が発生することを見出した。この渦は、熱交換器へ吹き付ける空気の風量を低下させて室内機の熱交換効率を低下させる。
【0006】
そこで、本発明は、熱交換器へ効率的に空気を吹き付けて、熱交換効率の低下を抑制可能な冷凍サイクル装置の室内機、および羽根車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の室内機は、筐体と、前記筐体内に設けられる熱交換器と、前記筐体に設けられるベルマウスと、前記ベルマウスから空気を吸い込んで前記熱交換器へ空気を吹き付ける羽根車と、を備えている。前記ベルマウスの内側端は、前記筐体の平坦な内面に連接し、かつ前記ベルマウスの前記内側端と前記筐体の平坦な前記内面とは、実質的に同一平面上にあり、前記内面は、前記熱交換器に連接している。前記羽根車は、放射状に広がる主板部と、前記主板部から突出して環状に配列される複数の翼部と、を備えている。前記複数の翼部は、開放型であり、前記複数の翼部が描く最外径は、前記主板部の最外径より大きく、前記複数の翼部の突出端は、実質的に同一面上に揃い、かつ前記ベルマウスの前記内側端に達して前記ベルマウスの前記内側端に倣い、前記複数の翼部の前記突出端が描く平面と、前記ベルマウスの前記内側端と、前記筐体の平坦な前記内面とは、前記羽根車が回転可能な限度で接近している。
【0010】
それぞれの前記翼部は、前記主板部のみに連接していることが好ましい。
【0011】
それぞれの前記翼部の前記主板部に連接する縁は、前記主板部の縁の一部に連接していることが好ましい。
【0012】
前記主板部は、それぞれの前記翼部に連接する複数の第一縁と、隣り合う一対の前記第一縁を繋ぐ複数の第二縁と、を有し、それぞれの前記第一縁とそれぞれの前記第二縁とは、前記主板部の周方向において隙間を隔てて向かい合うことが好ましい。
【0013】
それぞれの前記翼部の翼型は、翼弦に対して凸状に湾曲する実質的に一様な厚さの板形状であることが好ましい。
【0014】
前記主板部の中心部に設けられるハブ部を備え、前記ハブ部および前記複数の翼部は、同じ方向へ前記主板部から突出し、前記主板部を基準とする前記ハブ部の突出高さは、前記複数の翼部の突出高さより低いことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱交換器へ効率的に空気を吹き付けて、熱交換効率の低下を抑制可能な冷凍サイクル装置の室内機、および羽根車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の室内機の模式的な斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の室内機の模式的な縦断面図。
【
図3】本実施形態に係る羽根車を底面側から示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る冷凍サイクル装置の室内機、および羽根車の実施形態について
図1から
図6を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号を付している。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の室内機の模式的な斜視図である。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の室内機の模式的な縦断面図である。
【0020】
本実施形態に係る冷凍サイクル装置は、
図1に示す、利用側としての室内に設置される室内機1と、熱源側としての室外に設置される室外機(図示省略)と、を備えている。
【0021】
また、冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル(図示省略)を備えている。冷凍サイクルは、熱源側の熱交換器(図示省略)と、圧縮機(図示省略)と、利用側の熱交換器2と、膨張機(図示省略)と、これらの機器に冷媒を流通させる冷媒管(図示省略)と、を備えている。冷凍サイクルは、冷凍サイクル装置の冷却運転と加熱運転とを切り替える四方弁(図示省略)を備えていても良い。
【0022】
室内機1は、冷凍サイクルの利用側の熱交換器2を収容している。室外機は、冷凍サイクルの熱源側の熱交換器、圧縮機、および四方弁を収容している。膨張機は、室内機1に収容されていても良いし、室外機に収容されていても良い。室外機と室内機とは、渡り配管(図示省略)を介して接続されている。渡り配管は、冷媒管の一部である。冷凍サイクル装置は、室外機側の熱交換器と室内機1側の熱交換器2との間で冷媒を循環させて室内の空気を調和させる。
【0023】
室内機1の設置場所は建築物の室内である。室内機1は、室内の天井に埋め込まれたり、天井や梁から吊り下げられたりして設置される。
【0024】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る室内機1は、筐体5と、筐体5内に設けられる熱交換器2と、筐体5に設けられるベルマウス7と、ベルマウス7から空気を吸い込んで熱交換器2へ空気を吹き付けるターボファン8と、を備えている。
【0025】
また、室内機1は、冷凍サイクルの膨張機である電動膨張弁(図示省略)を備えている。
【0026】
筐体5は、矩形の天面、矩形の4つの側面、および矩形の底面を有する箱体である。筐体5の天面は天板11で塞がれている。天板11の下面には、ターボファン8が設けられている。筐体5の4つの側面は、側板12で塞がれている。側面と側面との間の角部は、面取りのように傾斜している。この面取り部分は、傾斜板13で塞がれている。
【0027】
筐体5の底面は、底板14で覆われている。底板14の中央部には、室内機1の下方から空気を吸い込む円形の吸込口16が設けられている。底板14の外縁部には、空気を下向きに吹き出す複数の矩形の吹出口17が設けられている。それぞれの吹出口17は、筐体5の矩形の底面のそれぞれの辺に沿っている。したがって、室内機1は、筐体5の底面の吸込口16から室内の空気を吸い込み、熱交換器2で冷媒と空気とを熱交換させて、筐体5の底面の吹出口17から調和された空気を吹き出させる。
【0028】
熱交換器2は、筐体5の天板11に固定されている。熱交換器2は、フィンアンドチューブ式であって、整列する多数のアルミニウム合金製のフィンと、ファンを貫通する冷媒管と、を備えている。
【0029】
熱交換器2は、筐体5の内部に設けられてターボファン8の径方向外側を囲んでいる。熱交換器2の内周面は、ターボファン8に対向し、熱交換器2の外周面は、側板12の内面に対向している。熱交換器2は、筐体5のそれぞれの側板12に対向する平板部分2aと、隣り合う2つの側板12の間の傾斜板13に対向して湾曲し、隣り合う2つの平板部分2aを繋ぐ湾曲板部分2bと、を有している。平板部分2aは4つあって、湾曲板部分2bは3つある。つまり、熱交換器2は、一続きの環状ではない。
【0030】
底板14の吸込口16には、ベルマウス7が設けられている。ベルマウス7の外側端7a(ベルマウス7の吸込側の開口縁)は、底板14の外面14aに連接している。ベルマウス7の内側端7b(ベルマウス7の吹出側の開口縁)は、底板14の内面14bに連接している。底板14の内面14bは、平面であって、ベルマウス7の内側端7bから熱交換器2に達している。
【0031】
なお、熱交換器2の下方には、熱交換器2の表面で生じる結露水を受けるドレンパン(図示省略)が設けられていても良い。熱交換器2が蒸発器として機能する冷房運転時には、熱交換器2を通過する空気に含まれる水分、つまり室内の湿気が熱交換器2の表面で結露し、結露水として熱交換器2に付着し、熱交換器2から滴り落ちる。ドレンパンは、熱交換器2から落ちる結露水を受ける。ドレンパンに貯留される結露水は、筐体5内に設けられるドレンポンプ(図示省略)によって揚水され、排水管(図示省略)を通じて室内機1の外部に排水される。
【0032】
ドレンパンは、ベルマウス7の内側端7bから熱交換器2へ広がる平面部分が、熱交換器2に極力接近している箇所に結露水を受ける凹部を有していることが好ましい。ドレンパンは、筐体5の底板14に一体化された断熱材に形成されていることが好ましい。
【0033】
ターボファン8は、筐体5のほぼ中心において、上下方向へ延びる回転軸21を有するファンモーター22と、回転軸21に回転一体に固定される羽根車23と、を備えている。
【0034】
ファンモーター22は、羽根車23を回転駆動する。ファンモーター22は、筐体5の天板11の内面に固定具25を介して固定されている。
【0035】
回転駆動する羽根車23は、筐体5の周囲の空気を吸込口16から吸い込み、熱交換器2へ向けて吸い込んだ空気を吹き出す。
【0036】
平面視において、実質的に環状な熱交換器2の中心、ターボファン8の回転中心、および円形の吸込口16の中心は、一致している。ターボファン8の最大外径は、吸込口16の開口径よりも大きい。
【0037】
羽根車23は、円形に広がる主板部31と、環状に配列される複数の翼部32と、主板部31の中心部に設けられるハブ部33と、を備えている。羽根車23の回転中心線は、ファンモーター22の回転軸21に一致し、室内機1を設置した状態で鉛直方向に延びる。
【0038】
空気調和機を冷房運転する場合には、室外機の圧縮機は、高温高圧のガス冷媒を吐出して、室外側の熱交換器(凝縮器)へ送る。室外側の熱交換器は、その内部を流れる冷媒と室外の空気とを熱交換し、冷媒を凝縮させる。凝縮された液冷媒は、冷媒配管を通じて室内機1に送られる。室内機1は、冷媒配管から流れ込む液状の冷媒を、電動膨張弁で膨張させ、低温の気液混合冷媒を熱交換器2(蒸発器)へ送る。熱交換器2は、その内部を流れる低温の冷媒と室内の空気とを熱交換し、冷媒をガス化させる。この際に、室内は室内機1から吹き出る低温の空気によって冷房される。
【0039】
空気調和機を暖房運転する場合には、室外ユニットの圧縮機は、高温高圧のガス冷媒を吐出して、室内機1の熱交換器2(凝縮器)へ送る。熱交換器2は、その内部を流れる冷媒と室内の空気とを熱交換し、冷媒を凝縮させる。この際、室内は室内機1から吹き出る高温の空気によって暖房される。
【0040】
次いで、羽根車23について詳細に説明する。
【0041】
図3は、本実施形態に係る羽根車を底面側から示す斜視図である。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
図1および
図2に加えて、
図3から
図6に示すように、本実施形態に係る羽根車23は、放射状に広がる主板部31と、主板部31から突出して環状に配列される複数の翼部32と、主板部31の中心部に設けられるハブ部33と、を備えている。
【0046】
羽根車23は、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、FRP)製、アルミニウム合金製、またはマグネシウム金属製の一体成形品である。羽根車23は、例えば繊維強化プラスチック製であって、ハンドレイアップ法で一体成形されている。
【0047】
主板部31は、平板状である。主板部31は、ハブ部33から放射状に広がる複数の花弁部35の集合である。
【0048】
それぞれの花弁部35は、曲線形状の縁を有する第一辺部35aと、直線状の縁を有する第二辺部35bと、を有して、中心側(ハブ部33側)からテーパー状に延びている。複数の花弁部35の第一辺部35aは、主板部31の第一縁であり、複数の花弁部35の第二辺部35bは、主板部31の第二縁である。
【0049】
隣り合う一対の花弁部35について、一方の花弁部35の第一辺部35aは、他方の花弁部35の第二辺部35bに対向している。換言すると、一方の花弁部35の第一辺部35aと他方の花弁部35の第二辺部35bとは、主板部31の周方向において隙間を隔てて向かい合っている。第一辺部35aは、同一の花弁部35の第二辺部35bから離れる方へ凸の曲線形状、例えば円弧形状である。換言すると、第一辺部35aは、対向する隣の花弁部35の第二辺部35bへ近づく方へ凸の曲線形状である。花弁部35の根元は、ハブ部33の外周を密に囲んでいる。換言すると、隣り合う一対の花弁部35について、一方の花弁部35の第一辺部35aの根元は、他方の花弁部35の第二辺部35bの根元に一致している。全ての花弁部35の形状は、実質的に同じである。それぞれの花弁部35の、ターボファン8の径方向外側に位置する端、つまり花弁部35の突出端は、仮想円で結ばれる。この仮想円は、主板部31の最外径に相当する。
【0050】
複数の翼部32は、開放型である。つまり、羽根車23は、複数の翼部32の突出端32aを繋ぐシュラウドを有していない。それぞれの翼部32は、主板部31のみに連接し、ハブ部33に非接触であり、非連結である。
【0051】
それぞれの翼部32の主板部31に連接する縁32b(翼部32の根元端)は、主板部31の縁の一部である、それぞれの花弁部35の第一辺部35aに連接している。換言すると、翼部32の縁32bは、主板部31の第一縁に連接している。つまり、それぞれの翼部32は、それぞれの花弁部35の第一辺部35aから突出している。それぞれの翼部32は、ターボファン8の周方向、かつそれぞれの花弁部35の第二辺部35bから離れる方向へ傾いている。また、それぞれの翼部32は、ターボファン8の径方向外側へ傾いている。
【0052】
翼部32の平面形は、四角形、例えば平行四辺形に近い。矩形の一辺は、花弁部35の第一辺部35aに連接している。翼部32の翼型は、第一辺部35aの曲線形状に一致する一様な厚さの板状である。翼部32の翼弦は、第一辺部35aの一方の端(ターボファン8の径方向内側に位置する端)と第一辺部35aの他方の端(ターボファン8の径方向外側に位置する端)とを結ぶ直線で代表される。それぞれの翼部32の翼型は、翼弦に対して凸状に湾曲する実質的に一様な厚さの板形状である。
【0053】
全ての翼部32の形状は、実質的に同じである。全ての翼部32の突出端32aは、線状に延びており、かつ同一の仮想平面上に並ぶ。
【0054】
ここで、それぞれの翼部32の突出端32aの2つの端点のうち、ターボファン8の径方向内側に位置する端点を内側端点36と呼び、ターボファン8の径方向外側に位置する端点を外側端点37と呼ぶ。
【0055】
そして、内側端点36を結ぶ仮想円の直径D1iは、主板部31の最外径D2よりも小さく、外側端点37を結ぶ仮想円の直径D1oは、主板部31の最外径D2よりも大きい。換言すると、複数の翼部32が描く最外径D1oは、主板部31の最外径D2より大きい。
【0056】
ハブ部33および複数の翼部32は、同じ方向へ主板部31から突出している。ハブ部33は、ハブ部33の突出端へ向かって細る円錐台形状を有している。主板部31を基準とするハブ部33の突出高さは、複数の翼部32の突出高さより低い。
【0057】
そして、
図2に示すように、ターボファン8の翼部32の突出端32aは、実質的に同一平面上に並んでいて、ベルマウス7の内側端7b(ベルマウス7の吹出側の開口縁)に近接している。
【0058】
ファンモーター22によって回転駆動される羽根車23は、ベルマウス7を介して空気を吸い込む。羽根車23に吸い込まれる空気は、複数の翼部32とハブ部33に囲まれた羽根車23の内側空間に流れ込み、回転する羽根車23の翼部32からエネルギーを与えられる。エネルギーを与えられた空気は、羽根車23の径方向外側へ向かって吹き出す。
【0059】
このとき、本実施形態に係る羽根車23では、翼部32の突出端32aが実質的に同一平面上に並んでいて、ベルマウス7の内側端7bに近接しているため、羽根車23の周囲では、従来の室内機に見られるような、渦、つまりベルマウスの背面側(筐体の内側)、かつシュラウドの径方向外側の領域に生じる渦の発生が、抑制される。そのため、本実施形態に係る室内機1は、羽根車23の径方向外側の領域で実質的に乱れのない流れを生じさせることができる。この流れは、室内機1の熱交換器2を効率良く吹き抜けて室内機1の熱交換効率を向上させる。
【0060】
また、エネルギーを与えられた空気は、翼部32の円弧に沿って翼部32の根元に向かう速度成分を有している。そこで、羽根車23は、エネルギーを与えられた空気を花弁部35の第一辺部35aと第二辺部35bとの間の空間からも吹き出させる。この空間を通過する空気は、それぞれの翼部32の縁32bとそれぞれの花弁部35の第一辺部35aとが連接しているため、流れを阻害されることなく円滑に吹き出す。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る室内機1は、筐体5の平坦な内面に連接する内側端7bを有するベルマウス7と、ベルマウス7の内側端7bに達する翼部32の突出端32aを有する羽根車23と、を備えている。複数の翼部32が描く最外径D1oは、主板部31の最外径D2より大きい。そのため、室内機1は、羽根車23から吹き出して熱交換器2へ吹き付ける空気に流れに生じる乱れを抑制して、熱交換効率の低下を防ぐことができる。
【0062】
また、本実施形態に係る羽根車23は、シュラウドレスであって、同一平面上に並ぶ突出端32aを有する複数の翼部32と、を備えている。複数の翼部32が描く最外径D1oは、主板部31の最外径D2より大きい。そのため、羽根車23は、平坦な面に連接する内側端7bを有するベルマウス7から空気を吸い込み、平坦な面に沿った乱れのない空気の流れを生じさせることができる。
【0063】
また、従来の遠心式多翼羽根車では吸込みの気流方向と吹出しの気流方向とが垂直に交差する関係を有する一方、羽根車23は、複数の翼部32の最外径D1oの位置、および翼部32の突出高さ調節することで、吸込みの気流方向と吹出しの気流方向とが垂直に交差する関係にとどまらず、他の流れの関係に調整できる。
【0064】
さらに、羽根車23は、シユラウドを有していないので、一体成形が可能である。そのため、羽根車23は、溶接不良、溶着不良など、別体のシュラウドを翼部に接合する場合における不良発生要因を排除し、かつ、別体のシュラウドを翼部に接合する場合に比べて回転バランスの不均衡量を低減できる。
【0065】
また、本実施形態に係る羽根車23は、主板部31のみに連接する複数の翼部32を備えている。そのため、羽根車23は、シュラウドやフレームを有する従来の羽根車に比べて容易に軽量化可能であり、また、空気の流れの障害を排除できる。
【0066】
さらに、本実施形態に係る羽根車23は、主板部31の縁の一部である、それぞれの花弁部35の第一辺部35aに連接する縁32bを有する翼部32を備えている。そのため、羽根車23は、翼部32でエネルギーを与えられた空気の流れを円滑に吹き出すことができる。
【0067】
また、本実施形態に係る羽根車23は、主板部31の周方向において隙間を隔てて向かい合う第一縁(花弁部35の第一辺部35a)と第二縁(花弁部35の第二辺部35b)とを有している。そのため、羽根車23は、翼部32でエネルギーを与えられた空気を隣り合う花弁部35の隙間を通じて吹き出すことができる。このような空気の流れは羽根車23の送風機能を向上させる。また、隣り合う花弁部35の隙間は、羽根車23を一体成形する際の、ハンドレイアップ法における各工程の作業性を高め、かつ離型を容易にする。
【0068】
さらに、本実施形態に係る羽根車23は、翼弦に対して凸状に湾曲する実質的に一様な厚さの板形状の翼部32を備えている。そのため、羽根車23の翼部32は、揚力を発生させながら、遠心力を低減し、振動を抑制できる。
【0069】
また、本実施形態に係る羽根車23は、ハブ部33の突出高さより突出高さが高い複数の翼部32を備えている。そのため、羽根車23は、ハブ部33の気流抵抗を低減させて、翼部32で気流を容易に押し出すことができる。
【0070】
したがって、本実施形態に係る室内機1、および羽根車23によれば、熱交換器2へ効率的に空気を吹き付けて、熱交換効率の低下を抑制できる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1…室内機、2…熱交換器、2a…平板部分、2b…湾曲板部分、5…筐体、7…ベルマウス、7a…外側端、7b…内側端、8…ターボファン、11…天板、12…側板、13…傾斜板、14…底板、16…吸込口、17…吹出口、21…回転軸、22…ファンモーター、23…羽根車、25…固定具、31…主板部、32…翼部、32a…突出端、32b…縁(根元端)、33…ハブ部、35…花弁部、35a…第一辺部、35b…第二辺部、36…翼部の突出端の内側端点、37…翼部の突出端の外側端点。