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  • 特許-メイタンシノールの調製 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】メイタンシノールの調製
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/18 20060101AFI20230905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 31/537 20060101ALN20230905BHJP
【FI】
C07D498/18
A61P35/00
A61K31/537
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021551848
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 US2020020452
(87)【国際公開番号】W WO2020180709
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】62/812,379
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509307635
【氏名又は名称】セルジーン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フィッツジェラルド・トラバース
(72)【発明者】
【氏名】ナレッシュクマール・ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】スリナス・ティルマライラジャン
(72)【発明者】
【氏名】サンジーバニ・ゴーン
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-506738(JP,A)
【文献】国際公開第2016/061718(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 498/18
A61P 35/00
A61K 31/537
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIの化合物を調製する方法であって、
【化1】
式Iの化合物(式中、Rは、アルキル、分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ならびに置換された炭素またはヘテロ原子を含有するアルキル、分岐アルキル、アリール、アルケニルまたはアルキニルからなる群から選択される)を、極性非プロトン性エーテル溶媒中で、少なくとも1つの有機金属試薬と反応させて前記式IIの化合物を生成することと、前記式IIの化合物を単離することと、を含前記有機金属試薬が、メチルマグネシウムハライド、エチルマグネシウムハライド、プロピルマグネシウムハライド、ブチルマグネシウムハライド、およびヘキシルマグネシウムハライドからなる群から選択され、前記ハライドは、塩化物、臭化物、またはヨウ化物である、方法。
【請求項2】
前記式Iの化合物が、アンサミトシンから提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式Iの化合物が、アンサミトシンP-3(AP-3)として提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機金属試薬が臭化メチルマグネシウムである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記極性非プロトン性エーテル溶媒が、1,4ジオキサン、ジエチルエーテル、シクロプロピルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、メチルtert-ブチルエーテル、ジグリム、テトラヒドロピランおよび2-メチルテトラヒドロフランからなる群から選択される、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機金属試薬を用いるメイタンシノイドからメイタンシノールを調製するための規模を増大した方法を提供する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第62/812,379に対して、35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を有するものであり、本明細書にその全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
メイタンシン誘導体は、抗体薬物複合体(ADC)に不可欠なペイロードとして使用される毒性の高い化学療法剤である。開発中のADCの30%はメイタンシン誘導体を用いる。Chemical and Engineering News,93:3,13(2014)。メイタンシン誘導体は、概して、アルコールを介してリンカーに結合されて、リンカー‐ペイロードエンティティを生じ、これは次いで抗体に結合される。メイタンシノールは、メイタンシン誘導体の形成、従ってメイタンシン誘導体ADCの構築に必要な中間体である。メイタンシノイド、アンサミトシン、例えばアンサミトシンP-3(AP-3)は、メイタンシノールのエステルの混合物の自然発生源である。例えば、AP-3は、微生物アクチノシネマ・プレチオスム(Actinosynnema pretiosum)から単離されたポリケチド抗生物質である。各メイタンシノイドエステル部分を除去して、アルコール、メイタンシノールを得ることができる。
【0004】
メイタンシンの発見は、もともとKupchan,SM,J Am Chem Soc,1354(1972)によって報告された。メイタンシノールも数年後に同様に報告された。Kupchan,SM,J Am Chem Soc,5294(1975);Kupchan,SM,J Med Chem,31(1978)。水素化アルミニウムリチウムを用いたメイタンシノイドの単離およびメイタンシノイドのメイタンシノールへの変換は、当技術分野において周知である。米国特許第4308269号および第4362663号;Asai,M,Tetrahedron,1079(1979)。リチウム/ナトリウムアルミニウムアルコキシド水素化物を使用したメイタンシノイドのメイタンシノールへの変換およびワークアップ。例えば、米国特許第6333410号および第7411063号;J Med Chem 4392(2006)を参照されたい。
【0005】
メイタンシノールを曝露するために種々のエステル部分を除去する以前の説明は、水素化アルミニウムを使用する。メイタンシノール1は、以前は、一般に4~9当量の水素化アルミニウムリチウム(LAH;LiAlH4)または水素化リチウムトリメトキシアルミニウム(LiAlH(OMe)3)などの、その変異体を使用してAP-3を還元することによって調製され、それ自体はLAHから調製される。J.Med.Chem.49,4392(2006)。しかしながら、この方法論の主な欠点としては、(a)過剰還元副産物の形成、および(b)des-クロロ-メイタンシノールの形成が挙げられる。最新の高収率手順では、メタノールをLiAlH4に加えることにより反応前に形成されたLiAlH(OMe)3が利用されている。現行の高収率反応では、複数当量の水素ガスが生成されるため、火災の危険性を最小限に抑えるために特別な安全装置が必要となる。現行の最先端技術の手順は、LiAlH(OMe)3を形成するために、LiAlH4にメタノールを直接添加する必要がある。米国特許第6,333,410号。試薬は、水素の危険な放出により、発熱反応の規模を増大させるうえで困難が生じる。現行の最先端技術の反応では、水や水/ギ酸などのプロトン性溶媒を反応混合物に直接クエンチすることを必要とする。この直接クエンチは、反応の規模が増大するにつれて制御することがより困難になる水素ガスの放出をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、メイタンシノール、式II、
【化1】
および関連する類似体を調製する、規模を増大できるプロセスに関し、式Iの化合物および関連する類似体(式中、Rは、本質的にアルキル、分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ならびにそれらの置換された変異体からなる群から選択される)を、少なくとも1つの有機金属試薬と反応させて、例えば、式IIの化合物を生成することと、例えば、式IIの化合物を単離することと、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、アンサミトシンから提供される。さらなる実施形態において、式Iの化合物は、アンサミトシンP-3(AP-3)として提供される。
【0008】
いくつかの実施形態において、有機金属試薬は、有機マグネシウム試薬である。
【0009】
いくつかの実施形態において、有機金属試薬は、メチルマグネシウムハライド、エチルマグネシウムハライド、プロピルマグネシウムハライド、ブチルマグネシウムハライド、およびヘキシルマグネシウムハライドから本質的になる群から選択され、ここでハライドは塩化物、臭化物、またはヨウ化物である。さらなる実施形態において、有機金属試薬は臭化マグネシウムを含む。なおさらなる実施形態において、有機金属試薬は臭化メチルマグネシウムである。
【0010】
いくつかの実施形態において、有機金属試薬は求核有機金属試薬である。さらなる実施形態において、求核有機金属試薬は、本質的に、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、およびトリメチルアルミニウムが挙げられるが、これに限定されないアルキルアルミニウム試薬、および有機クプラートからなる群から選択される。
【0011】
式Iの化合物(式中、Rは、アルキル、分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ならびに炭素およびそのヘテロ原子置換されたバリエーションから本質的になる群より選択される)を、少なくとも1つの有機金属試薬と反応させて式IIの化合物を生成させ、そして式IIの化合物を単離することによって調製される式IIの化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明のプロセスによるメイタンシノールのエステルのメイタンシノールへの変換を図示する。
図2図2は、R-M(式中、R=アルキルまたは分岐アルキル、またM=金属、例えば、Mg、Li、Al、Cu)の存在下でのAP-3のメイタンシノールへの変換を図示する。
図3図3は、本明細書に記載されるように効率的に生成されたメイタンシノールを、次いで、3-(S-(N-メチルアラニニル)メイタンシノールエステル、または3-(S-(N-メチルアラニニル)メイタンシノールエステルの誘導体に変換することができることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で言及されるすべての刊行物および特許は、参照により組み込まれる。
【0014】
メイタンシノールのエステルの混合物、例えば、AP-3を変換して、ADCまたは他の毒素共役化合物のその後の製造のためのかなりの量のメイタンシノールを得るための規模を増大したプロセス方法が提供される。本明細書に記載のアンサミトシン、例えばAP-3のメイタンシノールへの変換は、有機金属試薬を使用する。アンサミトシンP-3メイタンシノイドの切断のための従来の方法は、エステルカルボニルの水素化アルミニウム還元を用いる。対照的に、本明細書に記載される方法は、水性ワークアップの際にメイタンシノールの遊離をもたらすエステルのカルボニルを攻撃するために有機金属試薬の使用を用いる。この新しい方法は、天然に存在するアンサミトシンP-3源を、例えばペイロードなどのメイタンシンを有する抗体薬物結合体に変換する際の重要なステップである。以下の実施例IIIを参照されたい。
【0015】
本明細書で使用される場合、規模を増大したプロセスとは、メイタンシノールの商業生産規模を指す。製造は、メイタンシノールのバッチ当たり約100mg~1kgまたはそれ以上の範囲とすることができる。
【0016】
AP-3からのメイタンシノール1の調製
実質的に水および酸素を含まない不活性雰囲気、例えば、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスは、本明細書に記載される反応を行うための好ましい環境である。反応工程では、当業者に明らかな広範囲の温度を使用することができる。約-80℃~約20℃の範囲が考えられる。約-40℃~約-15℃の範囲が好ましい。反応時間は、例えば、約1分ぐらいから約4時間またはそれ以上とすることができる。
【0017】
出発物質、例えば、AP-3(例えば、式I)を参照すると、出発エステル上の多種多様なR基は、本明細書に記載の反応を受けやすい。
【化2】
【0018】
Rは、例えば、それぞれ約1~約20個の炭素原子を含有するアルキル、分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ならびにそれらのバリエーションおよび置換されたバリエーションとすることができる。天然に存在するメイタンシノイド、例えば、AP-3集団における対応するR基は、通常、約1~5個の炭素を含有する。
【0019】
本明細書に記載のプロセスは、特に、臭化メチルマグネシウムを含むが、これに限定されない有機金属試薬を使用する。臭化エチルマグネシウム、臭化プロピルマグネシウム、臭化ブチルマグネシウム、または臭化ヘキシル臭化マグネシウムのような、しかしこれらに限定されない臭化メチルマグネシウムと機能が類似している有機マグネシウム試薬を使用することができる。代替のアルキルマグネシウムハライドも使用されてもよく、ハロゲンとしては臭化物に加えて塩化物およびヨウ化物が挙げられる。また、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、またはヘキシルリチウムが挙げられるが、これらに限定されない求核有機金属試薬、トリメチルアルミニウムのようなアルキルアルミニウム試薬、およびアルキルクプラートも使用することができる。
【0020】
テトラヒドロフラン(THF)(オキソラン)、ならびに1,4ジオキサン、ジエチルエーテル、シクロプロピルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、メチルtert-ブチルエーテル、ジグライム、テトラヒドロピラン、または2-メチルテトラヒドロフランが挙げられるがこれらに限定されない他の極性非プロトン性エーテル溶媒も、本プロセスにおける溶媒として使用することができる。
【0021】
アセトン、メチルエチルケトンまたは酢酸エチルが挙げられるがこれらに限定されない種々のカルボニルを使用して、過剰の有機金属試薬、例えば臭化メチルマグネシウムをクエンチすることができる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、またはtert-ブタノールが挙げられるが、これらに限定されないプロトン源を使用することもできる。
【0022】
得られた沈殿剤は、例えば、水、または水とテトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、または2-メチルテトラヒドロフランなどの有機溶媒との混合物を添加することによって溶解することができる。あるいは、沈殿物を濾過によって除去することもできる。
【0023】
当業者に知られている水非混和性溶媒を使用して、メイタシノールを抽出することができ、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、塩化メチレン、クロロホルム、2-メチルテトラヒドロフラン、またはトルエンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0024】
水性ワークアップが実行される。得られた生成物含有有機層を水で洗浄して、無機含有物、例えば、特にマグネシウム塩を減少させることができる。有機層を含有する生成物は、例えば、水、次いで塩化ナトリウムで飽和した水で洗浄することができる。次いで、合わせた有機層を水で洗浄し、次いで食塩水で洗浄する。適切な代替水性ワークアップは、当技術分野において公知である。有機層を含む生成物中の残留水分は、一連の(suie of)脱水剤を使用することによって低減することができる。Na2SO4、3Aまたは4Aモレキュラーシーブ、または硫酸マグネシウムが好ましい乾燥剤である。適切な代替の乾燥剤もまた、当技術分野において公知である。乾燥剤の使用は好ましいが、それでもなお、任意である。あるいは、例えば、共沸蒸留によって水を除去することができる。
【0025】
単離・精製
精製は、DCM中の1~10%v/vメタノールの勾配で溶離することにより、順相カラムクロマトグラフィーによることが好ましい。他のクロマトグラフィーシステム、例えば逆相HPLCおよびSFC(超臨界流体クロマトグラフィー)を使用することができる。生成物、メイタンシノールを精製するために、順相クロマトグラフィーに対して当技術分野で公知の異なる溶離液を使用することもできる。結晶化も用いることもできる。
【0026】
メイタンシノールはしばしば3-(S-(N-メチルアラニニル)メイタンシノールエステル、または3-(S-(N-メチルアラニニル)メイタンシノールエステルの誘導体に変換される。エステルは活性にとって重要であると報告されている。図3参照を参照されたい。Kupchan,S.M.et al.,Journal of Medicinal Chemistry,Vol 21,No.1,pg 31-37(1978)。次いで、これをさらにリンカーに結合させて、最終的にADCのモノクローナル抗体(mAb)と結合させる。
【実施例
【0027】
以下の研究で使用されたAP-3は、約75~80%のイソブチル、約10%のtert-ブチル、および約5%のエチルエステルの組成を有することが決定された(LC-MSにより)。
【0028】
実施例I
グリニャール試薬は、合成有機化学者によって、特にエステル、ケトン、およびアルデヒドのカルボキシル官能基を修飾するために広く使用されてきた。AP-3を-30℃で3当量の臭化メチルマグネシウム(MeMgBr)で処理し、次いで0℃に温める試みを行った。反応はLC‐MSで定期的にモニターし、3時間の撹拌後にメイタンシノール1(+50%AP‐3)への約50%変換をもたらすことが観察されたが、より長く撹拌するとこれまでに知られていない不純物の形成をもたらした。この初期の成功により、反応は10~12当量のMeMgBrで繰り返され、メイタンシノール1への約90%変換をもたらすことが分かった。最初に、HCL水溶液を用いて反応を0℃でクエンチした。しかしながら、後に、過剰のtert-ブタノールまたはアセトンのいずれかで反応をクエンチすると、クエンチ中に他の不純物の形成がもたらされることが決定された。クエンチングにアセトンを使用した場合、析出物が得られ、次いでこれに水を添加し、続いて生成物を酢酸エチルで抽出することにより溶解した。一方、t-ブタノールを用いた場合は、均一な溶液が得られた。クエンチング剤としてアセトンを使用すると、水の添加後に副生成物としてtert-ブタノールをもたらすことになるため、その後のすべての反応にアセトンを使用した。アセトンを使用することにより、クエンチング時のメタンガスの放出も最小限に抑えることができる。従って、反応を250mgのAP‐3を用いてスケールアップし、塩化メチレン(DCM)中の1~10%v/vメタノールの勾配で溶離する順相カラムクロマトグラフィーにより精製した後、約160mg(約70%収率)のメイタンシノール1を単離した。
【0029】
実施例II
溶媒としてDCM中でMeMgBrを使用した反応を試みたが、室温(rt)で一晩(16h)撹拌してもAP‐3の約30%が依然として残っている点で動きが鈍いことが観察された。反応を改善するために、13当量の「ターボグリニャール」(iPr‐MgCl+LiClの混合物;THF中1.3M溶液)を使用する試みも行ったが、動きが鈍いことが観察され、主な生成物として脱水されたメイタンシノールをもたらした。
【0030】
実施例III
清浄な、マグネチックスターラーを備えた乾燥した25mLの丸底フラスコに、AP-3(250mg、0.39mmol)を入れ、続いてTHF(2.0mL)を入れた。混合物をアルゴン下、室温で15~20分間撹拌して、透明な均一な溶液を得た。得られた溶液を-30℃に冷却し、次いで、MeMgBr(1.94M;2.4mL;4.72mmol;12当量)を、アルゴン下、シリンジを介して-30℃で滴下して添加した。添加終了後、反応混合物を0℃に加温し、その時点でLC-MS分析は主に(≧90%)所望の生成物を示した。この時点で、アセトン(10~15mL)を、反応混合物に0℃で最初は徐々に、次いでその後一度に添加した。白色の沈殿が形成され、これをブレーカー(breaker)に移し、次いで水(15~20mL)を加えて溶かした。得られた溶液を、酢酸エチル(5×25~30mL)を用いて抽出した。次いで、合わせた有機層を水、食塩水で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、次いで濃縮して粗生成物を得、これをDCM中1~10%v/vメタノールの勾配で溶離することにより順相カラムクロマトグラフィーによって精製した。所望の生成物を含有する画分をプールし、濃縮して0.158g(71%)のメイタンシノール1を白色固体として得た。
【0031】
実施例IV
エステル加水分解の典型的な条件は水性塩基である。水性塩基は、本明細書に記載される結果をもたらさない、すなわち:
【化3】
【0032】
水性塩基はこの反応では作用しない。本明細書に記載される結果をもたらすために、長年にわたって専門家によって以前試みられた条件のサマリーは、以下の通りである:
メイタンシン(1a)は、Kupchan et al.J.Am.Chem Soc.,1354(1972)によって、1972年に初めて報告された。ノカルディア(Nocardia)のブロスからAsaiらが分離したアンサミトシン(メイタニノイド)は、Carbon 3.Tetrahedron,1079(1979)のさまざまなエステルに図1の命名法が割り当てられた。
【化4】
【0033】
C-3で酸エステルを除去すると、第二級アルコールメイタンシノール(2)が得られる。
【化5】
【0034】
明らかにされた第二級アルコールは、メイタンシンを抗体薬物結合体に使用されるリンカーに連結するために使用される。Pillow,T.et al.J.Med.Chem.7890(2014)参照されたい。2を形成するための最初に報告されたエステル除去はKupchan,et al.J.Am.Chem Soc.,1354(1972)によって報告された。テトラヒドロフラン中のLiAlH4は、メイタンシン(1a)をメイタシノール(maytasinol)(2)に収率40%で変換することが報告されている。Kupchan et al.in 1978.J Med Chem,31により詳細が提供された。この手順の材料には、3回の精製、2回の分取薄層クロマトグラフィー、それに続くアルミナカラムが必要であった。
【0035】
アルコールに対するエステルの除去のために複数の報告された方法が存在するが、1から2へのエステル部分の除去が重要であることは、当技術分野において周知である。Greene,T.W.,Wuts,P.G.M.Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,pg 149 to 178(1999)。Widdesonらは、一般的なエステル除去ストラテジーが化合物を分解することを報告した。J.Med.Chem.,4392(2006)。例えば、塩基性加水分解によりエステルが脱離し、新しいオレフィンを形成する。DIBAL、NaBH4、およびRed‐AlのようなLiAlH4に対するいくつかの代替還元剤は、低収率および多重副生成物をもたらした。エステラーゼのワイドパネルも成功しなかった。
【0036】
実際、Widdesonらによると、
‐‐「メイタンシノイド中のC3エステル基は、α,β‐不飽和メイタンシノイドメイシンを与えるマイルドな塩基条件(pH>9)で脱離しやすいので、エステル加水分解は還元的開裂プロセスによって達成された。C3エステルの還元的開裂のための前述の方法(Kupchan,SM,et al.,J.Med.Chem.21:31(1978))は、水素化アルミニウムリチウムを使用し、いくつかの副生成物を有するメイタンシノールの低い収率を与えた。DIBAL、NaBH4、Red‐Al、またはRed‐Al+1当量メタノールを含むいくつかの他の還元剤は、低い収率、および複数の副生成物を与えた。市販のエステラーゼおよびリパーゼのワイドパネルを用いたエステルの試みられた酵素的切断もまた、検出可能な加水分解を伴わずに、成功しなかった。しかしながら、アンサミトシン中のエステル基は、マイルドな還元剤リチウムトリメトキシアルミニウムヒドリドを用いて、制御された温度(-30~-40℃)下で効率的に切断され、メイタンシノールを良好な収率で得た。より高い反応温度はエポキシド開口をもたらしたが、より低い反応温度は未反応の出発物質の高い割合をもたらした。」‐‐
J.Med.Chem.,49:4392(2006)。
【0037】
2001年、Chariは、LiAlH4の代替としてリチウムまたはナトリウムアルコキシ水素化物の使用を報告した。米国特許第6,333,410号。Chari およびWiddisonは、後に、架橋アセタール中間体を選択的に切断して高い収率で生成物2を得るためには、特異的なワークアップ条件が必要であることを報告した。国際特許公開広報第2007/05650号。代替的なワークアップ検査は、収率を低下させる。前述の手順はすべて、純粋な2を得るためにシリカゲルクロマトグラフィーを必要とする。
***
【0038】
本明細書に言及されるすべての刊行物および特許は、参照により組み込まれる。記載される主題の様々な修正および変形は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の実施形態に関連して説明されたが、特許請求される本発明は、これらの実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、本発明を実施するための種々の変形は、当業者にとって自明であり、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。
図1
図2
図3