(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】発光装置、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/068 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
H01S5/068
(21)【出願番号】P 2021570600
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2020001497
(87)【国際公開番号】W WO2021144962
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】曽我 技
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-078679(JP,A)
【文献】特開2014-063590(JP,A)
【文献】特開2017-004735(JP,A)
【文献】特開2012-080019(JP,A)
【文献】特開2014-003143(JP,A)
【文献】特開2018-202811(JP,A)
【文献】特開2018-041938(JP,A)
【文献】特開2014-229691(JP,A)
【文献】特開2014-103319(JP,A)
【文献】特開2009-231330(JP,A)
【文献】特開2014-230296(JP,A)
【文献】特開2017-005793(JP,A)
【文献】特開2017-021938(JP,A)
【文献】特表2018-510469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0183208(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点灯と消灯を周期的又は非周期的に繰り返し行う発光装置であって、
パルス駆動される発光素子と、
プロセッサと、
前記プロセッサからの電流値指示信号に基づいて電流出力を制御する電流出力制御型のスイッチング電源と、
前記スイッチング電源の出力を平滑化するコンデンサと、
前記プロセッサからの点灯指示信号に基づいて前記発光素子への電流のオンオフを行うスイッチと、
前記コンデンサの電圧を調整する電圧源と、
を備え、
前記プロセッサは、
記憶部を有し、
前記電流値指示信号および前記点灯指示信号を同時にオンして、前記発光素子を点灯させ、
点灯期間中に、
前記スイッチング電源の出力電圧を測定し、
測定した前記スイッチング電源の出力電圧を基準電圧として前記記憶部に記憶させ、
前記電流値指示信号および前記点灯指示信号を同時にオフして、前記発光素子を消灯させ、
次の点灯直前に、
前記記憶部に記憶された基準電圧に基づいて、前記電圧源の出力を制御することで前記コンデンサの電圧を
、前記記憶部に記憶された基準電圧となるように調整する
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
消灯期間中に、
前記プロセッサは、前記記憶部に記憶された基準電圧より低い電圧を出力電圧として前記電圧源から出力させることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記基準電圧より低い電圧は、前記消灯期間の時間の長さに応じて設定することを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
パルス駆動される発光素子と、
プロセッサと、
前記プロセッサからの電流値指示信号に基づいて電流出力を制御する電流出力制御型のスイッチング電源と、
前記スイッチング電源の出力を平滑化するコンデンサと、
前記プロセッサからの点灯指示信号に基づいて前記発光素子への電流のオンオフを行うスイッチと、
前記コンデンサの電圧を調整する電圧源と、
を備えた、
点灯と消灯を周期的又は非周期的に繰り返し行う発光装置を駆動する駆動装置であって、
前記プロセッサと、アナログスイッチと、前記電圧源と、デジタルスイッチとを含んで構成され、
前記プロセッサは、
前記発光素子に流れる電流のオン状態における電流値に対応する前記電流値指示信号をアナログ出力により行う第1デジタルアナログコンパレータと、
前記点灯指示信号に対応する第1PWM信号を前記スイッチへ出力し、前記発光素子に流れる電流のオンオフを行う第1PWM回路と、
前記スイッチング電源の出力を測定するアナログデジタルコンパレータと、
測定した前記スイッチング電源の出力電圧を基準電圧として記憶する記憶部と、
前記第1PWM回路が出力する前記第1PWM信号と、同じ周期かつ同期した第2PWM信号をアンプ出力信号として前記デジタルスイッチへ出力する第2PWM回路と、
前記記憶部に記憶された基準電圧を前記電圧源へ出力する第2デジタルアナログコンパレータと、
を有し、
前記アナログスイッチは、前記電流値指示信号を前記点灯指示信号と連動させるスイッチであり、
前記電圧源は、+端子に入力される前記基準電圧と、-端子に入力される前記スイッチング電源の出力を比較して、両電圧が同じ電圧となるよう電流の出力を行うオペアンプであり、
前記デジタルスイッチは、入力される前記アンプ出力信号がハイレベルのとき、前記オペアンプの出力を前記スイッチング電源の出力へ接続するスイッチであり、
前記第1PWM回路は前記点灯指示信号をオンし、前記アナログスイッチは、前記第1デジタルアナログコンパレータがアナログ出力する前記発光素子に流れる電流のオン状態における電流値に対応する前記電流値指示信号を、前記点灯指示信号のオンに連動させて同時にオンして、前記発光素子を点灯させ、
点灯期間中に、
前記アナログデジタルコンパレータは、前記スイッチング電源の出力電圧を測定し、測定した前記スイッチング電源の出力電圧を基準電圧として前記記憶部に記憶させ、
前記第1PWM回路は前記点灯指示信号をオフし、前記アナログスイッチは、前記電流値指示信号を、前記点灯指示信号のオフに連動させて同時にオフして、前記発光素子を消灯させ、
次の点灯直前に、
前記電圧源は、前記電圧源は、+端子に入力される前記基準電圧と、-端子に入力される前記スイッチング電源の出力を比較して、前記第2PWM回路がハイレベルの前記アンプ出力信号を出力して前記デジタルスイッチをオンさせている期間、両電圧が同じ電圧となるよう電流の出力を行うことにより、前記コンデンサの電圧を調整する
ことを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LD(Laser Diode;発光素子)をパルス駆動する駆動回路として、定電圧電源と定電流ドライバの組み合わせが広く用いられている。
これに対して、定電圧電源とFETスイッチ(発光素子への電流のオンオフを行うスイッチ)の組み合わせが省電力化駆動回路として知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許第5660936号公報
【文献】日本国特開2005-63997号公報
【文献】日本国特開昭62-118590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の省電力化駆動回路では、正確な矩形パルスでLDを駆動することが不可能であった。
【0005】
例えば、特許文献1の駆動回路は、スイッチング電源と、平滑コンデンサと、負荷回路(LDが直列接続された回路)と、定電流源(発光素子への電流のオンオフを行うFETスイッチと抵抗器との複合回路)と、遅延回路と、を備える構成を有している。
この構成のため、スイッチング電源では電力効率は良いが、平滑コンデンサを必要とする。単純に電源回路でパルス駆動しようとすると、その平滑コンデンサへの電荷が溜まることによる電圧上昇に要する時間が、パルス(LDの光出力に対応するパルスであって、光量がHレベルのときON(点灯)、LレベルのときOFF(消灯)を表す)の立ち上がり(LレベルからHレベルの移行を表す)を遅らせる原因となっている。
【0006】
特許文献1では、パルスOFFの過程で、先ず負荷回路を遮断し、遅延回路によって所定時間後にスイッチング電源をOFFにする手順を踏んでいる。この様にすることで、パルスOFF後、負荷回路への行き場を失った電荷が平滑コンデンサの電圧(VA)を上昇させる。これによって、次のパルスでの電圧上昇時間を短くし、スイッチング電源でもパルス間隔を短くすることができる。
【0007】
このように、特許文献1では、前のパルスから次のパルスの間での出力コンデンサ(平滑コンデンサ)の放電量が一定であるときに安定して動作する。そのため、撮像のための照明など、パルス発光周期(パルスのON・OFFの繰り返しからなる期間)が一定ではない場合(点灯と消灯とを非周期に繰り返し行う場合)では、パルス開始時点での出力開始電圧が消灯期間の長さの影響を受ける。パルス間隔が広く開いてしまったときは、リークや自然放電の時間が長くなり他のパルス間隔に比べて出力コンデンサの電圧が低くなってしまう問題があった。
【0008】
また、特許文献2では、電圧源と電流源を組み合わせてパルス電流(LDに流れるLD電流)の波形を変形させている。電流波形立ち上がりの傾斜によるパルス(LDの光出力に対応するパルスであって、光量がHレベルのときON(点灯)、LレベルのときOFF(消灯)を表す))あたりの光量の低下を補うための手段として発明されたものではあるが、電圧源の調整によってはパルス初期の電圧を下げて、パルスのオーバーシュートの抑制にも応用できると想像できる。
【0009】
しかし、特許文献2では、パルス点灯(ON)しながら、途中で電圧源から電流源への切替を行っているため、その切り替わり時点で、電圧源の出力電圧と電流源によってLDの端子間に生じる電圧(Vf)で差が発生する。さらに、電圧源、電流源の出力は、それぞれ別々のスイッチ(SW2,SW11-1)で切り替えているため、同時でも、どちらを先にしても、パルスの途中でのLD駆動電流の段差を避けることができない。従って、光パルスの途中で光量に段差が生じる問題があった。LDを撮影機器の照明光として使用した場合、撮影画像にムラができる恐れがある。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的は、点灯と消灯とを繰り返し行なう発光素子の発光制御において、パルス周期に因らない省電力化と、光パルス波形の調整を行うことが可能な電力発光装置、および駆動装置を提供することにある。
【0011】
なお,特許文献3には、パルス点灯における温度変化による光パルス(光出力)のオーバーシュートを抑える手法を開示しているが、本願の発光装置、および駆動装置の構成に相当する構成が明示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様に係る発光装置は、点灯と消灯を周期的又は非周期的に繰り返し行う発光装置であって、パルス駆動される発光素子と、プロセッサと、前記プロセッサからの電流値指示信号に基づいて電流出力を制御する電流出力制御型のスイッチング電源と、前記スイッチング電源の出力を平滑化するコンデンサと、前記プロセッサからの点灯指示信号に基づいて前記発光素子への電流のオンオフを行うスイッチと、前記コンデンサの電圧を調整する電圧源と、を備え、前記プロセッサは、記憶部を有し、前記電流値指示信号および前記点灯指示信号を同時にオンして、前記発光素子を点灯させ、点灯期間中に、前記スイッチング電源の出力電圧を測定し、測定した前記スイッチング電源の出力電圧を基準電圧として前記記憶部に記憶させ、前記電流値指示信号および前記点灯指示信号を同時にオフして、前記発光素子を消灯させ、次の点灯直前に、前記記憶部に記憶された基準電圧に基づいて、前記電圧源の出力を制御することで前記コンデンサの電圧を、前記記憶部に記憶された基準電圧となるように調整することを特徴とする発光装置である。
【0013】
本発明の第2の態様に係る発光装置は、上記第1の態様において、消灯期間中に、前記プロセッサは、前記記憶部に記憶された基準電圧より低い電圧を出力電圧として前記電圧源から出力させることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様に係る発光装置は、上記第2の態様において、前記基準電圧より低い電圧は、前記消灯期間の時間の長さに応じて設定することを特徴とする。
【0015】
本発明の第1の態様に係る駆動装置は、パルス駆動される発光素子と、プロセッサと、前記プロセッサからの電流値指示信号に基づいて電流出力を制御する電流出力制御型のスイッチング電源と、前記スイッチング電源の出力を平滑化するコンデンサと、前記プロセッサからの点灯指示信号に基づいて前記発光素子への電流のオンオフを行うスイッチと、前記コンデンサの電圧を調整する電圧源と、を備えた、点灯と消灯を周期的又は非周期的に繰り返し行う発光装置を駆動する駆動装置であって、前記プロセッサと、アナログスイッチと、前記電圧源と、デジタルスイッチとを含んで構成され、前記プロセッサは、前記発光素子に流れる電流のオン状態における電流値に対応する前記電流値指示信号をアナログ出力により行う第1デジタルアナログコンパレータと、前記点灯指示信号に対応する第1PWM信号を前記スイッチへ出力し、前記発光素子に流れる電流のオンオフを行う第1PWM回路と、前記スイッチング電源の出力を測定するアナログデジタルコンパレータと、測定した前記スイッチング電源の出力電圧を基準電圧として記憶する記憶部と、前記第1PWM回路が出力する前記第1PWM信号と、同じ周期かつ同期した第2PWM信号をアンプ出力信号として前記デジタルスイッチへ出力する第2PWM回路と、前記記憶部に記憶された基準電圧を前記電圧源へ出力する第2デジタルアナログコンパレータと、を有し、前記アナログスイッチは、前記電流値指示信号を前記点灯指示信号と連動させるスイッチであり、前記電圧源は、+端子に入力される前記基準電圧と、-端子に入力される前記スイッチング電源の出力を比較して、両電圧が同じ電圧となるよう電流の出力を行うオペアンプであり、前記デジタルスイッチは、入力される前記アンプ出力信号がハイレベルのとき、前記オペアンプの出力を前記スイッチング電源の出力へ接続するスイッチであり、前記第1PWM回路は前記点灯指示信号をオンし、前記アナログスイッチは、前記第1デジタルアナログコンパレータがアナログ出力する前記発光素子に流れる電流のオン状態における電流値に対応する前記電流値指示信号を、前記点灯指示信号のオンに連動させて同時にオンして、前記発光素子を点灯させ、点灯期間中に、前記アナログデジタルコンパレータは、前記スイッチング電源の出力電圧を測定し、測定した前記スイッチング電源の出力電圧を基準電圧として前記記憶部に記憶させ、前記第1PWM回路は前記点灯指示信号をオフし、前記アナログスイッチは、前記電流値指示信号を、前記点灯指示信号のオフに連動させて同時にオフして、前記発光素子を消灯させ、次の点灯直前に、前記電圧源は、前記電圧源は、+端子に入力される前記基準電圧と、-端子に入力される前記スイッチング電源の出力を比較して、前記第2PWM回路がハイレベルの前記アンプ出力信号を出力して前記デジタルスイッチをオンさせている期間、両電圧が同じ電圧となるよう電流の出力を行うことにより、前記コンデンサの電圧を調整することを特徴とする駆動装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の各態様によれば、点灯と消灯とを繰り返し行なう発光素子の発光制御において、パルス周期に因らない省電力化と、光パルス波形の調整を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す発光装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る発光装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図3に示す発光装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示す発光装置100は、電流出力制御スイッチング電源10(電流出力制御型のスイッチング電源)、FETスイッチ2(スイッチ)、オペアンプ3(電圧源)、アナログスイッチ4(アナログスイッチ)、マイコン50(プロセッサ)、デジタルスイッチ5(デジタルスイッチ)、出力コンデンサ6(コンデンサ)、発光素子7を含んで構成されている。
【0019】
電流出力制御スイッチング電源10は、マイコン50からの電流値指示信号に基づいて電流出力を制御する。
ここでは、より具体的に、電流出力制御スイッチング電源10の構成について説明する。
電流出力制御スイッチング電源10は、電流出力制御スイッチング電源10は、典型的な降圧同期整流型を例にしている。すなわち、電流出力制御スイッチング電源10は、バッテリ1に蓄電された直流電圧を入力VINとして、その入力Vinを出力Voutに降圧変換して、変換した出力VOUTを出力する装置である。
【0020】
そのため、電流出力制御スイッチング電源10は、OSC(オシレータ)11、PMW信号発生回路12、アンプ13、アンプ14、トランジスタQ1、トランジスタQ2、インダクタL1、抵抗器R1を含んで構成されている。
OSC11の出力であるClock信号に合わせて、PMW信号発生回路12は、トランジスタQ1とトランジスタQ2を交互にOn(オン)にする動作を繰り返す。
【0021】
トランジスタQ1がOn(トランジスタQ2はOff(オフ))の時、入力VINから出力VOUTの方向に電流I1が流れる。次にトランジスタQ2がOn(トランジスタQ1はOff)に切り替わると、インダクタの作用でインダクタL1の電流は流れ続け、電流I2が出力VOUTに流れる。トランジスタQ1,Q2のOnの割合(=Duty)によって出力の強弱を制御できる。
【0022】
抵抗器R1は電流検出用の抵抗器を示している。オームの法則に従い、通過電流に比例した電圧が抵抗器R1の両端に生じる。アンプ13は抵抗器R1の両端の電圧を入力として、その差電圧を、アンプ14での演算範囲に適応する電圧値に変換して、電圧信号Sig1として出力する。
アンプ14は、2つの電圧信号である電流値指示信号Ictrlと電圧信号Sig1を比較して、その差を信号Sig2として出力する。
【0023】
ここで、電流値指示信号Ictrlは、LDに流したいパルス電流(所望電流)に基づいた電圧信号を示している。そして、電圧信号Sig1は先に述べたように、現在の電流値に基づいた電圧値を示している。つまり、電流値指示信号Ictrlと電圧信号Sig1との差を求めることによって、信号Sig2は、LDへ所望電流を流すために電源出力を上げるべきか、下げるべきかを判断した結果を示している。
【0024】
信号Sig2は、PMW信号発生回路12に入力される。PMW信号発生回路12は、信号Sig2の電圧値に基づき、トランジスタQ1,Q2のOnの割合を変化させて、出力量を変化させる。
【0025】
すなわち、抵抗器R1、アンプ13で得られた現在の電流値に相当する電圧信号Sig1は、所望の電流値指示電圧Ictrlとアンプ14で比較され、現在の電流値が所望値より低い場合は、トランジスタQ1、Q2のDutyを上げて、電源出力量を増す。
逆に、現在の電流値が所望値より高い場合は、トランジスタQ1、Q2のDutyを下げて、電源出力量を減らす。
【0026】
これらを繰り返して、抵抗器R1を経由して出力される電流値は、電流値指示信号Ictrlに基づく電流値と相似関係になる。電流値指示信号Ictrlがパルス電圧の場合、その電圧に比例したパルス電流が出力VOUTに流れる。
ただし、出力コンデンサ6(平滑コンデンサ)の容量によって、発光素子7に流れるLD電流は、電流値指示信号Ictrlの変化に対して遅延(パルスのなまり)が生じる。
【0027】
続いて、発光装置100の各構成要素について詳述する。
出力コンデンサ6(コンデンサ)は、電流出力制御スイッチング電源10の出力を平滑化するコンデンサである。
【0028】
発光素子7は、レーザーダイオード(Laser Diode:LD)素子であって、パルス駆動される(電流出力制御スイッチング電源10からLD電流が供給される)ことにより、LD光出力を発する発光素子である。
【0029】
上述したように、電流出力制御スイッチング電源10は、電流指示値信号Ictrlの電圧に比例した電流出力を行う。すなわち、電流出力制御スイッチング電源10は、マイコン50からの電流値指示信号Ictrlに基づいて電流出力を制御する。
【0030】
FETスイッチ2(スイッチ)は点灯指示信号LDENに基づきLDへの電流をOn/Offする。すなわち、FETスイッチ2は、マイコン50からの点灯指示信号に基づいて発光素子7へのLD電流のオンオフを行うスイッチである。
【0031】
マイコン50(プロセッサ)は、上述のように、電流値指示信号Ictrlと点灯指示信号LDENとを出力するが、このための構成について
図1を参照しつつ説明する。
【0032】
マイコン50(プロセッサ)は、CPU51と、第1デジタルアナログコンパレータ52(図中DAC1で示している)と、第1PWM回路53(図中PWM1で示している)と、アナログデジタルコンパレータ54(図中ADCで示している)と、第2PWM回路55(図中PWM2で示している)と、第2デジタルアナログコンパレータ56(図中DAC2で示している)と、を含んで構成されている。
【0033】
CPU51は、マイコン50における中央処理装置であって、上記第1デジタルアナログコンパレータ52と、第1PWM回路53と、アナログデジタルコンパレータ54と、第2PWM回路55と、第2デジタルアナログコンパレータ56と、を制御する。ただし、本実施形態において、「CPU51は、第1デジタルアナログコンパレータ52を制御して、~を行わせる。」との記載は、説明の便宜上、「第1デジタルアナログコンパレータ52は、~を行う。」との記載で説明することとする。
【0034】
第1デジタルアナログコンパレータ52(DAC1)は、LD(発光素子7)の駆動電流値(LD電流)の指示を行うためのアナログ出力で、電流出力制御スイッチング電源10の出力電流値の指示を行う。
ここで、電流値指示信号Ictrlは、アナログスイッチ4によって点灯指示信号LDENに合わせて変化する。
【0035】
パルスOn(点灯指示信号LDEN=H)のとき、電流値指示信号Ictrlは、DAC1での値(第1デジタルアナログコンパレータ52が出力するアナログ値)になる。
一方、パルスOff(点灯指示信号LDEN=L)のとき、電流値指示信号Ictrlは、GNDレベルになり、電流出力制御スイッチング電源10に対して出力電流をゼロにさせる。
【0036】
すなわち、第1デジタルアナログコンパレータ52は、発光素子7に流れる電流のオン状態における電流値に対応する電流値指示信号Ictrlをアナログ出力により行う。
ここで、アナログスイッチ4は、電流値指示信号Ictrlを点灯指示信号LDENと連動させるスイッチである。
【0037】
第1PWM回路53(PWM1)は、パルスタイミングを生成し、点灯指示信号LDEN信号を出力してFETスイッチ2に指示を行い、LDの電流のOn/Offを行う。
すなわち、第1PWM回路53は、点灯指示信号LDENに対応する第1PWM信号をFETスイッチ2へ出力し、発光素子7に流れる電流のオンオフを行う。
【0038】
ここで、アナログスイッチ4は、第1PWM回路53が点灯指示信号LDENをオンして発光素子7を点灯させる際、第1デジタルアナログコンパレータ52がアナログ出力する発光素子7に流れる電流(LD電流)のオン状態における電流値に対応する電流値指示信号Ictrlを、点灯指示信号LDENのオンに連動させて同時にオンする。
また、アナログスイッチ4は、第1PWM回路53が点灯指示信号LDENをオフして発光素子7を消灯させる際、電流値指示信号Ictrlを、点灯指示信号LDENのオフに連動させて同時にオフする。
【0039】
アナログデジタルコンパレータ54(ADC)は、電流出力制御スイッチング電源10の出力電圧(VOUT)を測定するアナログデジタルコンバータである。
すなわち、アナログデジタルコンパレータ54は、電流出力制御スイッチング電源10(スイッチング電源)の出力VOUTを測定する。
【0040】
第2PWM回路55(PWM2)は、第1PWM回路53(PWM1)と同じ周期、かつ同期して、第1PWM回路53の出力に先立ったタイミングでパルスを出力し、オペアンプ3の出力のOn/Off信号(アンプ出力信号AMPEN)を生成する。
すなわち、第2PWM回路55は、第1PWM回路53が出力する第1PWM信号と、同じ周期かつ同期した第2PWM信号をアンプ出力信号AMPENとしてデジタルスイッチ5へ出力する。
【0041】
ここで、デジタルスイッチ5は、入力されるアンプ出力信号AMPENが例えばH(ハイ)レベルのとき、オペアンプ3の出力を電流出力制御スイッチング電源10(スイッチング電源)の出力VOUTへ接続するスイッチである、
【0042】
また、オペアンプ3(電圧源)は、+端子と-端子の電圧を比較して、両電圧が同じ電圧になるように電流の出力(電流ソースと呼ばれる)または入力(電流シンクと呼ばれる。慣例的に吸い込みとも表現される。)を行うオペアンプで、アンプ出力信号AMPENがハイレベルのときにのみ、電流出力制御スイッチング電源10(スイッチング電源)の出力VOUTに接続される。
すなわち、オペアンプ3は、+端子に入力される基準電圧と、-端子に入力される電流出力制御スイッチング電源10(スイッチング電源)の出力VOUTを比較して、両電圧が同じ電圧となるよう電流の出力を行うオペアンプである。
【0043】
ここで、CPU51に内蔵される記憶部は、アナログデジタルコンパレータ54(ADC)が測定した電流出力制御スイッチング電源10の出力電圧(VOUT)を基準電圧として記憶する。
【0044】
また、第2デジタルアナログコンパレータ56(DAC2)は、オペアンプ3の+端子に対して、出力電圧VOUTの調整目標電圧(記憶部に記憶された基準電圧)を出力する。
すなわち、第2デジタルアナログコンパレータ56(DAC2)は、記憶部に記憶された基準電圧をオペアンプ3(電圧源)の+端子へ出力する。
【0045】
以上説明したマイコン50(プロセッサ)と、アナログスイッチ4と、オペアンプ3(電圧源)と、デジタルスイッチ5とを含んで構成される駆動装置は、
図2に示すパルス発光タイミング(点灯と消灯を周期的又は非周期的に繰り返し行う発光装置におけるタイミング)において、次のように作用する。
【0046】
図2は、
図1に示す発光装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図2においては、
図1に示す発光装置100における電流値指示信号Ictrl、点灯指示信号LDEN、アンプ出力信号AMPEN、出力VOUTの電圧値[V]、LD電流の電流値[A]、LD光出力[W]それぞれの波形の時間経過を表している。
ここで、パルス発光タイミングとは、発光装置100が、パルスON(発光素子7が点灯する点灯期間中)と、パルスOFF(発光素子7が消灯する消灯期間中)を周期的または非周期的に繰り返し行うことを言う。
【0047】
パルスOnは、点灯指示信号LDEN=Hのとき、電流値指示信号Ictrlの指示値に基づいて電流出力制御スイッチング電源10(スイッチング電源)の出力VOUTで発光素子7(LD)にLD電流が流れる。電流出力制御スイッチング電源10は、自身で電流値検出を行いながら、パルスOnの間、一定の電流を出力する。
【0048】
また、パルスOff時は、電流値指示信号Ictrlがゼロ(GNDレベル)になっているため、電流出力制御スイッチング電源10は出力を停止している。
その間に、意図しない漏れ電流や、コンデンサの自己放電などで、出力電圧VOUTが低下した場合でも、オペアンプ3を介して、パルス点灯に先立って、アンプ出力信号AMPEN=Hの期間に、出力コンデンサ6(コンデンサ)の電圧VOUTを調整することで、パルス点灯の冒頭から適正な電圧で発光素子7(LD)にLD電流として定電流を流すことが可能になる。
【0049】
ここで、適正な電圧とは、1つ前のパルス点灯時の電流出力制御スイッチング電源10の出力電圧VOUT(図中破線の〇で囲まれた出力VOUTの電圧値)とする。
アナログデジタルコンパレータ54(ADC)は、出力電圧VOUTを測定し、その値(基準電圧)を記憶部に保存し、保存された値をそのまま第2デジタルアナログコンパレータ56(DAC2)の+端子に設定する。
これにより、オペアンプ3(電圧源)は出力コンデンサ6(コンデンサ)へ充電または放電を行って、後続パルスの開始時点で、定電流(LD電流)に相当する電圧(出力電圧VOUT)になる。
【0050】
以上説明したシーケンス処理によって、LD電流は理想の矩形波となり、LD光出力もLD電流に応じた望ましい波形となる。
【0051】
実施形態1においては、出力VOUTにおいて消灯期間中に降圧した電圧を点灯直前にオペアンプ3(電圧源)により調整する。
これにより、特許文献1の課題である「パルス発光周期(パルスのON・OFFの繰り返しからなる期間)が一定ではない場合(点灯と消灯とを非周期に繰り返し行う場合)では、パルス開始時点での出力開始電圧が消灯期間の長さの影響を受ける。パルス間隔が広く開いてしまったときは、リークや自然放電の時間が長くなり他のパルス間隔に比べて出力コンデンサの電圧が低くなってしまう問題」を解決できる。
【0052】
また、
図2に示すように、LD電流波形において、パルス開始時の出力VOUTが既にVfと一致しているため、LD電流は急峻に立ち上がる。また、LD電流波形において、オーバーシュートもない。
これにより、特許文献2の課題である「パルス点灯(ON)しながら、途中で電圧源から電流源への切替を行っているため、その切り替わり時点で、電圧源の出力電圧と電流源によってLDの端子間に生じる電圧(Vf)で差が発生する。さらに、電圧源、電流源の出力は、それぞれ別々のスイッチ(SW2,SW11-1)で切り替えているため、同時でも、どちらを先にしても、パルスの途中でのLD駆動電流の段差を避けることができない。従って、光パルスの途中で光量に段差が生じる問題」を解決できる。
【0053】
すなわち、本実施形態によれば、パルス消灯の際に、出力に出力コンデンサ6(平滑コンデンサ)を有する電流出力制御スイッチング電源10(電流出力制御型のスイッチング電源)への電流値指示信号IctrlおよびLD電流(LDへの電流)をON、OFFするFETスイッチ2(スイッチ)への点灯指示信号LDENを同時にOFFすることによって、所定電流駆動時の電圧が平滑コンデンサに残る。
【0054】
このとき、次のパルスの開始時点までに平滑コンデンサ自身や周辺の部品によるリーク放電され、パルス消灯期間中に駆動に適切な電圧を下回ることがあるが、付加したオペアンプ3(電圧源)によって、平滑コンデンサの電圧を次のパルスに必要な電圧に調整することで、パルス発光周期が一定で無くても確実に、平滑コンデンサの電圧を調整できる。これにより、LD電流は理想の矩形波となり、LD光出力もLD電流に応じた望ましい波形となる。
【0055】
<第2の実施形態>
第2の実施形態については第1の実施形態との対比で説明する。第1の実施形態で説明に用いた
図1と
図2に対して、
図3と
図4がそれぞれ対応する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る発光装置の構成例を示すブロック図である。また、
図4は、
図3に示す発光装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0056】
第1の実施形態では、LD電流を理想の矩形波とする事ができた。しかし、特許文献3で述べられた通り、発光素子7(LD)の温度特性として、同じ電流値では、温度が低いほうが出力される光が強くなる。従って、LD電流が理想の矩形では、光パルスにオーバーシュートが見られた(
図2参照)。
そこで、第1の実施形態に対して、下記の演算を基準電圧に対して加える。
【0057】
第1の実施形態では、第2デジタルアナログコンパレータ56(DAC2)の+端子に設定される値(基準電圧)は、ADCで測定された値をそのまま設定していた。
すなわち、1つ前のパルス点灯時の電流出力制御スイッチング電源10の出力電圧VOUT(
図2中破線の〇で囲まれた出力VOUTの電圧値)を、アナログデジタルコンパレータ54(ADC)で測定し、その値(基準電圧値)を記憶部に保存し、保存された値をそのまま第2デジタルアナログコンパレータ56(DAC2)の+端子に設定していた。
これにより、オペアンプ3(電圧源)は出力コンデンサ6(コンデンサ)へ充電または放電を行って、後続パルスの開始時点で、定電流(LD電流)に相当する電圧(出力電圧VOUT)にしていた。
【0058】
これに対し、第2の実施形態では、1つ前のパルス点灯時の電流出力制御スイッチング電源10の出力電圧VOUT(
図4中破線の〇で囲まれた出力VOUTの電圧値)を、アナログデジタルコンパレータ54(ADC)で測定し、その値(基準電圧値)を記憶部に保存し、「基準電圧値より低い電圧」を第2デジタルアナログコンパレータ562(DAC2)の+端子に設定する。
これにより、オペアンプ3(電圧源)は「基準電圧値より低い電圧」を出力し、後続パルスの開始時点で、出力電圧VOUTを「基準電圧値より低い電圧」にする。
【0059】
これにより、パルス開始時の電圧VOUTを基準電圧より下げる作用を行い、パルス冒頭でLDの電流の立ち上がりを緩やかにする。従って、LDから出力される光のオーバーシュートを抑制することができる(
図4参照)。
【0060】
なお、「基準値より低い電圧」は、消灯期間の時間の長さに応じて設定されるのが好ましい。
例えば、消灯期間の期間tが設定可能な最長の期間tmaxのとき、出力コンデンサ6の放電量が最も大きくなり、出力電圧VOUTは最小値である出力電圧VOUTminとなる。一方、消灯期間の期間tが設定可能な最短の期間tminのとき、出力コンデンサ6の放電量が最も小さくなり、「基準電圧より低い値」である出力電圧VOUTmaxとなる。
【0061】
そのため、「基準値より低い電圧」を、期間tminと期間tmaxの間において検出し、検出された「基準値より低い電圧」を用いたときに、LDから出力される光のオーバーシュートが抑制できることを確認する。そして、確認できた消灯期間の時間の長さに対応する「基準値より低い電圧」に設定する。
なお、基準値より低い電圧を、消灯期間の時間の長さに応じて設定されるとする代わりに、アンプ出力信号AMPENがHレベルである期間に応じて設定してもよい。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態およびその変形例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
上記各態様の発光装置、駆動装置によれば、点灯と消灯とを繰り返し行なう発光素子の発光制御において、パルス周期に因らない省電力化と、光パルス波形の調整を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
2 FETスイッチ(スイッチ)
3 オペアンプ
4 アナログスイッチ
5 デジタルスイッチ(デジタルスイッチ)
6 出力コンデンサ(コンデンサ)
7 発光素子
10 電流出力制御スイッチング電源(電流出力制御型のスイッチング電源)
50 マイコン(プロセッサ)
51 CPU
52 第1デジタルアナログコンパレータ
53 第1PWM回路
54 アナログデジタルコンパレータ
55 第2PWM回路
56,562 第2デジタルアナログコンパレータ
Ictrl 電流値指示信号
LDEN 点灯指示信号
AMPEN アンプ出力信号