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特許7343641神経伝達物質放出剤としてのビニローグフェネチルアミン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】神経伝達物質放出剤としてのビニローグフェネチルアミン
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/28 20060101AFI20230905BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 25/12 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C07C211/28 CSP
A61K31/135
A61P3/04
A61P25/20
A61P25/00
A61P25/22
A61P25/32
A61P25/30
A61P43/00 105
A61P25/12
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022040355
(22)【出願日】2022-03-15
(62)【分割の表示】P 2018554713の分割
【原出願日】2017-05-11
(65)【公開番号】P2022101537
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】62/335,191
(32)【優先日】2016-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507021506
【氏名又は名称】リサーチ トライアングル インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ブルース ブロウ
(72)【発明者】
【氏名】アン デッカー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ロスマン
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第12/096129(WO,A1)
【文献】特開2014-062108(JP,A)
【文献】特表2016-503028(JP,A)
【文献】特表2012-514038(JP,A)
【文献】特表2012-524108(JP,A)
【文献】特表2011-529923(JP,A)
【文献】米国特許第06337351(US,B1)
【文献】国際公開第01/017943(WO,A1)
【文献】国際公開第00/023418(WO,A1)
【文献】国際公開第14/152917(WO,A1)
【文献】国際公開第06/044823(WO,A1)
【文献】REGISTRY(STN)[online],1987.04.18[検索日 2021.01.28]CAS登録番号 107638-85-7
【文献】Rodrigues, Nuno; Bennis, Khalil et al.,Synthesis and structure-activity relationship study of substituted caffeate esters as antinociceptiv,European Journal of Medicinal Chemistry,2014年,75,,391-402
【文献】REN, Y. et al.,Synthesis and antiarrhythmic activity of some (erythro)-phenylpropanediolamine compounds,Acta Pharmaceutica Sinica,1997年,Vol.32, No.4,264-270
【文献】Hiebert, Charles K. et al.,1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine analogs. Inactivation of monoamine oxidase by conforma,Journal of Medicinal Chemistry,1988年,Vol.31, No.8,1566-1570
【文献】Ventura, Wellington Martins et al.,A Concise Synthesis of (E)-3-Amino-1-phenyl-1-butene, a Monoamine Oxidase Inhibitor,Organic Preparations and Procedures International,2014年,46(4),,381-385
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の群:
【化1】
から選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
前記化合物が、(3Z)-1-メチル-4-フェニル-ブタ-3-エニルアミンである、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本出願は、2016年5月12日に出願された米国仮出願第62/335,191号明
細書に対する優先権を主張する。そのような関連仮出願の開示は、その全体が参照により
本明細書に組み込まれる。
【0002】
(本発明における政府の権利)
本発明は、国立衛生研究所の国立薬物乱用研究所(NIDA)から与えられた助成金R
01-12970の下での政府の支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有
する。
【技術分野】
【0003】
本開示は、モノアミン神経伝達物質放出剤として有用なビニローグフェネチルアミンを
含むフェネチルアミン化合物、治療または使用計画でそれを使用する方法、およびそのよ
うな化合物を含有する医薬組成物に関する。
【0004】
特に、本開示は、二重ドーパミンおよびセロトニン(DA/5HT)放出剤またはドー
パミン放出剤およびセロトニン取り込み阻害剤として機能することができるモノアミン神
経伝達物質放出剤である化合物を対象とする。本開示は、1つ以上の二重DA/5HT放
出剤またはドーパミン放出剤およびセロトニン取り込み阻害剤を含有する医薬組成物であ
って、1つ以上の追加の治療剤も含み得る医薬組成物も対象とする。本開示はさらに、二
重DA/5HT放出剤またはドーパミン放出剤およびセロトニン取り込み阻害剤の投与に
応答するさまざまな疾患、病状および/または障害、例えば薬物乱用、うつ病および他の
同様の症状または神経疾患の治療方法を対象とする。
【背景技術】
【0005】
血漿膜生体アミン輸送体(BAT)は、先に放出されたモノアミン神経伝達物質‐ドー
パミン、ノルエピネフリン、およびセロトニン(DA、NE、および5-HTは、DAT
(ドーパミン輸送体)、NET(ノルエピネフリン輸送体)、およびSERT(セロトニ
ン輸送体)をそれぞれ介して輸送される)‐を、シナプスからニューロンの細胞質に戻し
て輸送することにより、中枢神経系におけるニューロンのシグナル伝達を調節する。BA
Tと相互作用するリガンドは、2つの一般的なクラスに分類される:再取り込み阻害剤お
よび基質型放出剤。両タイプのリガンドは、細胞外神経伝達物質濃度を上昇させるが、異
なる機構を介して作用する。再取り込み阻害剤は、輸送体に結合し、神経伝達物質の輸送
体媒介再取り込みを遮断する。基質型放出剤は、輸送体上の基質部位に結合し、ニューロ
ンの内部で輸送され、担体媒介交換によって神経伝達物質流出を促進する。BAT機能の
中断は、うつ病、不安、パーキンソン病、統合失調症、および精神刺激薬中毒などの多く
の神経疾患の病態生理学において重要な役割を果たす。
【0006】
コカインおよびメタンフェタミンのような精神刺激薬は、中枢神経系および末梢神経系
のBATを標的とし、ヒトにさまざまな有害生理作用を引き起こす中毒性薬物である。精
神刺激薬中毒を治療するための1つの潜在的戦略は、アゴニスト置換療法と呼ばれ、これ
によれば、患者は、あまり強力でなく、中毒性の少ない刺激薬様薬剤を投与される。BA
T放出剤は、潜在的なアゴニスト薬剤として評価される化合物の1つのクラスを表す。
【0007】
いくつかの研究は、S(+)-アンフェタミン:
【化1】
の能力を実証しており、これは、5-HTに比べてDAをより放出する高い選択性を有し
、刺激薬依存のアゴニスト療法として作用する。
【0008】
アカゲザルにおけるS(+)-アンフェタミンでの慢性治療は、累進比率、選択肢およ
び2次スケジュールを用いた食物維持応答と比較して、コカイン自己投与の選択的用量依
存性低下をもたらす。二重盲検、プラセボ対照臨床試験では、S(+)-アンフェタミン
による治療は、コカイン使用の減少をもたらし、アゴニスト治療を試験する他の臨床試験
と一致する。しかしながら、薬剤としてS(+)アンフェタミンを使用することの重大な
制約は、中脳辺縁系ドーパミンニューロンの活性化によるその乱用の可能性である。
【0009】
これまでの証拠は、DAと5-HTの両方の欠損は離脱症状と関連しており、細胞外5
-HTの上昇は刺激薬とDA(刺激薬中毒の二重欠損モデル)の強化効果とを相殺する可
能性があることを示唆している。アゴニスト薬剤として二重DA/5-HT放出剤を使用
することの1つの考えられる利点は、乱用傾向(5-HT放出)を低減しながら治療有効
性(すなわちDA放出)に必要な刺激薬様特性を提供するそれらの複合能力である。この
ように、複数の証拠により、5-HT上昇が薬物探索行動を減少させることが示されてい
る。ラットで実施されたin vivo研究は、5-HT放出がアンフェタミン型薬物の
刺激作用を減少させること、例えば、フェンフルラミン(5-HT放出剤)が、キュー回
復したコカイン探索行動を用量依存的に軽減させることを明らかにする。ラットで観察さ
れる薬物探索行動の減少は、ヒトについて、フェンフルラミンが断薬中のコカイン依存症
患者におけるコカイン離脱症状を大幅に減少させると言い換えられる。さらに、予備臨床
試験では、食欲抑制薬フェンテルミン(DA放出剤)とフェンフルラミン(Fen-Ph
en)との併用が、コカインおよびアルコール依存症の治療に有望であることが示され、
治療薬として二重DA/5-HT放出剤を使用するという考えを支持している。しかしな
がら、Fen-Phenおよび他の類似の神経伝達物質放出剤も、有害作用を通常伴う活
性を有する。
【0010】
当該技術分野では、物質乱用治療に有用であり、他の治療効果を提供し、神経伝達物質
放出剤および/または取り込み阻害剤として有効な既知化合物の有害作用に通常関連する
オフターゲットでの活性がほとんどないまたは全くない神経伝達物質放出剤および/また
は取り込み阻害剤が必要である。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、神経伝達物質放出剤および/または取り込み阻害剤として有用な化合物に関
する。そのような化合物およびそれらを含有する医薬組成物は、肥満、睡眠障害、神経疾
患、うつ病、不安、ADHD、ならびにコカインおよびメタンフェタミン中毒などの刺激
薬中毒およびアルコール中毒を含む物質使用障害の治療において治療的有用性があり得る
。本開示は、化合物を含む医薬組成物およびそのような化合物の合成方法を提供する。さ
らに、本開示は、モノアミン放出剤および/またはモノアミン取り込み阻害剤の投与に応
答する疾患、病状および/または障害の治療を含む。
【0012】
一態様では、本開示は、モノアミン神経伝達物質放出剤および/または取り込み阻害剤
として機能することができるフェネチルアミン化合物を提供する。いくつかの態様では、
該化合物は、二重ドーパミン/セロトニン(DA/5HT)放出剤として機能し得る。他
の態様では、該化合物は、ある輸送体の放出剤および別の輸送体の遮断剤または取り込み
阻害薬として機能し得る。一例として、いくつかの態様では、該化合物は、ドーパミン放
出剤および5HT取り込み阻害剤として機能し得る。さらに、本開示の化合物は、セロト
ニン2受容体サブタイプでの活性からの実質的な有害作用を与えることなく、治療上の利
益をもたらす。
【0013】
別の態様では、本開示は、式I:
【化2】
[式中、AはC3-4アルキニルもしくはC2-4アルケニルであり;R~Rおよび
は、それぞれ独立して、H、OH、任意に置換されたC1-3アルキル、任意に置換
されたC1-2アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケニル、任意に置換されたC
2-3アルキニル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNOから選択され;R10
よびR11はHもしくはC1-3アルキルである]のフェネチルアミン化合物;または薬
学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異性体
を提供する。好ましくは、式Iの化合物は、モノアミン神経伝達物質放出剤および/また
はモノアミン取り込み阻害剤として機能することができることになる。
【0014】
別の態様では、本開示は、式II:
【化3】
[式中、R~RおよびRは、それぞれ独立して、H、OH、任意に置換されたC
-3アルキル、任意に置換されたC1-2アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケ
ニル、任意に置換されたC2-3アルキニル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNO
から選択され;RおよびRは、それぞれ独立して、HもしくはC1-3アルキルか
ら選択され;Rは、H、OH、任意に置換されたC1-3アルキル、任意に置換された
1-2アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケニル、任意に置換されたC2-3
アルキニル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNOから選択され;R10およびR
11はHもしくはC1-3アルキルである]のビニローグフェネチルアミン化合物;また
は薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異
性体を提供する。好ましくは、式IIの化合物は、モノアミン神経伝達物質放出剤および
/またはモノアミン取り込み阻害剤として機能することができることになる。
【0015】
別の態様では、本開示は、式IまたはIIのフェネチルアミン化合物と、薬学的に許容
される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0016】
さらなる態様では、本開示は、モノアミン輸送体取り込み阻害剤および/またはモノア
ミン輸送体基質型放出剤による活性に応答する疾患、病状および/または障害を治療する
方法であって、それを必要とする被験体に、治療有効量の式Iまたは式IIのフェネチル
アミン化合物を投与する工程を含む方法を提供する。そのような方法は、セロトニン2受
容体サブタイプでの活性からの実質的な有害作用を与えることなく、被験体に治療上の利
益をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「and」
および「the」は、文脈上別段に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。同
様の数は、全体を通して同様の要素を指す。
【0018】
本開示は、生体アミン輸送体活性を有するが、5-HT受容体サブタイプにおいて実
質的な活性を欠くモノアミン神経伝達物質取り込み阻害剤および/または放出剤化合物を
提供する。
【0019】
一態様では、本開示は、式I:
【化4】
[式中、AはC3-4アルキニルもしくはC2-4アルケニルであり;R~Rおよび
は、それぞれ独立して、H、OH、任意に置換されたC1-3アルキル、任意に置換
されたC1-2アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケニル、任意に置換されたC
2-3アルキニル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNOから選択され;R10
よびR11はHもしくはC1-3アルキルである]のフェネチルアミン化合物;または薬
学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異性体
を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、AはC2-4アルケニルである。他の実施形態では、AはC
3-4アルキニルであり、R10およびR11はHである。さらなる実施形態では、R
およびR11はHであり、および/またはR~Rの少なくとも3つはHである。さ
らなる実施形態では、R~Rの少なくとも4つはHである。さらなる実施形態では、
アルキル基は置換されていない。
【0021】
別の態様では、本開示は、式II:
【化5】
[式中、R~RおよびRは、それぞれ独立して、H、OH、任意に置換されたC
-3アルキル、任意に置換されたC1-2アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケ
ニル、任意に置換されたC2-3アルキニル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNO
から選択され;RおよびRは、それぞれ独立して、HもしくはC1-3アルキルか
ら選択され;Rは、H、OH、任意に置換されたC1-3アルキル、任意に置換された
1-2アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケニル、任意に置換されたC2-3
アルキニル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNOから選択され;R10およびR
11はHもしくはC1-3アルキルである]のビニローグフェネチルアミン化合物;また
は薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異
性体を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、R10およびR11はHであり、および/またはR~R
の少なくとも3つはHである。さらなる実施形態では、R~Rの少なくとも4つはH
である。さらなる実施形態では、アルキル基は置換されていない。
【0023】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、任意に置換されていてもよい飽和直鎖また
は分岐炭化水素基を意味する。特定の実施形態では、アルキルは、1~3個の炭素原子(
「C1-3アルキル」)を含む基を指す。さらなる実施形態では、アルキルは、1~2個
の炭素原子(「C1-2アルキル」)、または2~3個の炭素原子(「C2-3アルキル
」)を含む基を指す。特定の実施形態では、アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、
エチル、プロピルまたはイソプロピルを指す。
【0024】
一実施形態では、ビニローグフェネチルアミンは、式IIa:
【化6】
の構造を有する。
【0025】
用語「任意に置換された」は、所望の医薬効果を排除しない1つ以上の別個の置換基を
その中に任意に含有する部位を指し、可能な例としては、以下の置換基の1つ以上などで
ある:ハロ(例えば、Cl、F、Br、およびI);ハロゲン化アルキル(例えば、CF
、2-Br-エチル、CHF、CHCl、CHCF、またはCF);CF
;ヒドロキシル;アミノ;カルボキシレート;カルボキサミド;アルキルアミノ;アルコ
キシ;ニトロ;アジド;シアノ;チオ;スルホン酸;サルフェート;ホスホン酸;ホスフ
ェート;ホスホネート。
【0026】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、少なくとも1つの飽和C-C結合が二重
結合に置換されているアルキル部位を意味する。特定の実施形態では、アルケニルは、2
~4個の炭素原子を含む基(「C2-4アルケニル」)を指す。さらなる実施形態では、
アルケニルは、2~3個の炭素原子(「C2-3アルケニル」)、または3~4個の炭素
原子(「C3-4アルケニル」)を含む基を指す。
【0027】
本明細書で使用される用語「アルキニル」は、少なくとも1つの飽和C-C結合が三重
結合に置換されているアルキル部位を意味する。特定の実施形態では、アルキニルは、3
~4個の炭素原子を含む基(「C3-4アルキニル」)を指す。
【0028】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、酸素原子によって連結された直鎖または
分岐鎖アルキル基(すなわち、-O-アルキル)を意味し、ここでアルキルは上記の通り
である。特定の実施形態では、アルコキシは、1~3個の炭素原子を含む酸素結合基(「
C1-3アルコキシ」)を指す。
【0029】
本明細書で使用される用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、また
はヨウ素を意味する。
【0030】
本明細書で使用される用語「アルキルチオ」は、1つ以上のアルキル置換基を有するチ
オ基を意味し、ここでアルキルは上記のように定義される。
【0031】
本明細書で使用される用語「アミノ」は、構造NRで表される部位を意味し、第一ア
ミン、ならびにアルキルで置換された第二および第三アミン(すなわち、アルキルアミノ
)を含む。したがって、Rは、2個の水素原子、2つのアルキル部位、または1個の水
素原子および1つのアルキル部位を表し得る。
【0032】
本明細書で使用される用語「誘導体」は、別の分子または原子を開始化合物に結合させ
ることによって、類似の開始化合物から形成される化合物を意味する。さらに、本開示に
よる誘導体は、1つ以上の原子または分子の追加によって、または2つ以上の前駆体化合
物を組み合わせることによって、前駆体化合物から形成される1つ以上の化合物を包含す
る。
【0033】
本明細書で使用される用語「プロドラッグ」は、哺乳動物に投与されたときに、その全
体または一部が本開示の化合物に変換される任意の化合物を意味する。
【0034】
本明細書で使用される用語「活性代謝物」は、本開示の化合物またはそのプロドラッグ
の代謝から、そのような化合物またはプロドラッグが哺乳動物に投与されたときに生じる
生理学的に活性な化合物を意味する。
【0035】
本開示の化合物は、式Iまたは式IIのフェネチルアミン化合物と、薬学的に許容され
る担体とを含む医薬組成物に含まれ得る。そのような医薬組成物は、モノアミン放出剤お
よび/またはモノアミン取り込み阻害剤の投与に応答する疾患、病状もしくは障害の治療
または緩和において、実質的な望ましくない効果を引き起こすことなく有用であり得る。
そのような疾患、病状または障害には、肥満、睡眠障害、神経疾患、うつ病、不安、AD
HD、ならびにコカインおよびメタンフェタミン中毒などの精神刺激薬中毒およびアルコ
ール中毒を含む物質使用障害が含まれ得る。
【0036】
用語「精神刺激薬」は、中枢神経系および末梢神経系を刺激し、心血管刺激、気分上昇
および睡眠欲求の減少を含む、ヒトにおいて多種多様な効果を生じる広く定義されたクラ
スの化合物または薬物を指す。高用量で、または長期間の使用後に、精神刺激薬は、重篤
な精神病エピソードを含む、一連の無秩序な思考過程を引き起こす可能性がある。精神刺
激薬の例には、コカイン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、アンフェタミン、置
換アンフェタミン、フェンテルミン、ジエチルプロピオン、フェンジメトラジン、ベンズ
フェタミン、および3,4-メチレンジオキシメタンフェタミンが含まれる。
【0037】
用語「二重ドーパミン/セロトニン(DA/5HT)放出剤」は、ドーパミンとセロト
ニンの両方についての少なくとも部分的な基質型放出剤として機能することができる化合
物を指す。基質型放出剤は、例えばドーパミンおよびセロトニン輸送体などの輸送体上の
基質部位に結合し、ニューロン内部で輸送され、担体媒介交換によって神経伝達物質流出
を促進する。ドーパミン放出が治療有効性に必要とされると考えられる刺激薬様特性を提
供し、5HT放出が乱用傾向を減少させると考えられるため、そのような二重ドーパミン
/セロトニン(DA/5HT)放出化合物は、刺激薬型放出剤の治療効果を最小限に強化
しながら提供することができ得る。二重ドーパミン/セロトニン(DA/5HT)放出化
合物は、取り込み阻害および放出アッセイの両方において活性であり得る。
【0038】
用語「再取り込み阻害剤」は、輸送体に結合し、モノアミン神経伝達物質の輸送体媒介
再取り込みを遮断する化合物を指す。
【0039】
本明細書で使用される用語「モノアミン」は、モノアミン神経伝達物質および神経調節
物質を包含する。特にこれは、ドーパミン、ノルエピネフリン、およびセロトニンを指す
ために使用される。モノアミン輸送体は、これらのモノアミンの個体のプレシナプスへの
再取り込みまたは再吸収を促進する。
【0040】
本明細書で使用される用語「治療有効量」または「治療有効用量」は、交換可能であり
、本明細書に記載の治療方法に従って所望の治療効果を引き出すのに十分な、本開示の化
合物またはその生物学的に活性な変異体の濃度を意味する。
【0041】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」は、生物学的に活性な薬剤の貯
蔵、投与、および/または治癒効果を促進するために当該技術分野で従来使用されている
担体を意味する。
【0042】
本開示は、薬学的に許容される担体と、式I:
【化7】
[式中、AはC3-4アルキニルもしくはC2-4アルケニルであり;R~Rおよび
は、それぞれ独立して、H、OH、任意に置換されたC1-3アルキル、任意に置換
されたC1-2アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケニル、任意に置換されたC
2-3アルキニル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNOから選択され;R10
よびR11はHもしくはC1-3アルキルである]のフェネチルアミン;または薬学的に
許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異性体とを含
む医薬組成物を提供する。
【0043】
本開示は、薬学的に許容される担体と、式II:
【化8】
[式中、R~RおよびRは、それぞれ独立して、H、OH、任意に置換されたC
-3アルキル、任意に置換されたC1-2アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケ
ニル、任意に置換されたC2-3アルキニル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNO
から選択され;RおよびRは、それぞれ独立して、HもしくはC1-3アルキルか
ら選択され;Rは、H、OH、任意に置換されたC1-3アルキル、任意に置換された
1-2アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケニル、任意に置換されたC2-3
アルキニル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNOから選択され;R10およびR
11はHもしくはC1-3アルキルである]のビニローグフェネチルアミン;または薬学
的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異性体と
を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0044】
式Iおよび式IIの化合物は、好ましくは、二重ドーパミン/セロトニン(DA/5H
T)放出剤として、またはドーパミン放出剤および5HT取り込み阻害剤として機能する
ことができる。本開示の化合物は、患者におけるモノアミン再取り込みを阻害することに
より、または1つ以上のモノアミン輸送体に選択的に結合することによって緩和される疾
患、病状および/もしくは障害を治療するまたはその進行を遅延させるための方法におい
て有用である。
【0045】
本明細書中で使用される用語「治療する」、「治療」、または「治療している」は、特
定の疾患、障害、ならびに/もしくは病状の1つ以上の症状または特徴の、部分的または
完全な軽減、改善、緩和、阻害、予防、発症の遅延、重症度の軽減および/もしくは発生
率の低下のために使用される任意の方法を指す。
【0046】
本明細書で使用される用語「被験体」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウ
ス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類)を指す。多
くの実施形態では、被験体はヒトである。被験体は患者であってよく、それは疾患、病状
および/または障害の診断または治療のために医療提供者のもとに来るヒトを指す。用語
「被験体」は、本明細書では、「個体」または「患者」と交換可能に使用される。被験体
は、疾患、病状または障害に罹患しているまたはかかりやすい場合があるが、疾患、病状
または障害の症状を示してもしなくてもよい。
【0047】
本開示は、モノアミン輸送体取り込み阻害剤および/またはモノアミン輸送体基質型放
出剤に応答する疾患、病状または障害を治療する方法であって、それを必要とする被験体
に、治療有効量の式Iもしくは式IIのフェネチルアミン化合物または薬学的に許容され
るそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異性体を投与する工程
を含む方法を具体的に提供する。
【0048】
本開示の化合物は、5HT受容体、特に5HT2bおよび5HT2a受容体における実
質的なアゴニスト活性の欠如のために、以前から知られているモノアミン輸送体取り込み
阻害剤および/またはモノアミン輸送体基質型放出剤の投与後に示される副作用を回避す
る。「オフターゲット」での実質的な活性の欠如は、本明細書中に開示されるモノアミン
輸送体取り込み阻害剤および/またはモノアミン輸送体基質型放出剤の、生体アミン輸送
体での活性によって調節可能な疾患、病状および/または障害の治療を必要とする被験体
への投与による有害作用の軽減または減弱を可能にする。
【0049】
本開示のフェネチルアミンで治療される疾患、病状および/または障害には、肥満、睡
眠障害、神経疾患、うつ病、不安、ADHD、ならびにコカインおよびメタンフェタミン
中毒などの刺激薬中毒およびアルコール中毒を含む物質使用障害が含まれ得る。実施形態
では、病状または障害は、刺激薬、より詳細には、精神刺激薬中毒である。
【0050】
本開示の一態様では、精神刺激薬中毒を治療する方法であって、それを必要とする被験
体に、治療有効量の式I:
【化9】
[式中、AはC3-4アルキニルもしくはC2-4アルケニルであり;R~Rおよび
は、それぞれ独立して、H、OH、任意に置換されたC1-3アルキル、任意に置換
されたC1-2アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケニル、任意に置換されたC
2-3アルキニル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNOから選択され;R10
よびR11はHもしくはC1-3アルキルである]の構造の化合物;または薬学的に許容
されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異性体を投与する
工程を含む方法が提供される。
【0051】
本開示の別の態様では、精神刺激薬中毒を治療する方法であって、それを必要とする被
験体に、治療有効量の式II:
【化10】
[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、HもしくはC1-3アルキルから選択さ
れ、Rは、H、OH、任意に置換されたC1-3アルキル、任意に置換されたC1-2
アルコキシ、任意に置換されたC2-3アルケニル、任意に置換されたC2-3アルキニ
ル、ハロ、アミノ、CN、CF、およびNOから選択される]の構造の化合物;また
は薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異
性体を投与する工程を含む方法が提供される。
【0052】
活性剤として本明細書に開示されるフェネチルアミン化合物は、(R)もしくは(S)
配置のいずれかであり得るキラル中心を含んでいてもよく、またはそれらの混合物を含ん
でいてもよい。したがって、本開示は、適用可能であれば、個々にまたは任意の割合で混
合された、本明細書に記載の化合物の立体異性体も含む。立体異性体は、エナンチオマー
、ジアステレオマー、ラセミ混合物、およびそれらの組み合わせを含み得るが、これらに
限定されない。そのような立体異性体は、従来技術を用いて、エナンチオマー出発物質を
反応させるか、または本明細書に開示される化合物の異性体を分離することによって調製
および分離することができる。異性体は幾何異性体を含み得る。幾何異性体の例には、シ
ス異性体または二重結合を横切るトランス異性体が挙げられるが、これらに限定されない
。本開示の化合物の間では、他の異性体が企図される。異性体は、純粋な形態で、または
本明細書に記載の化合物の他の異性体との混合物のいずれかで使用することができる。
【0053】
光学活性形態を調製し、活性を決定するためのさまざまな方法が当該技術分野において
知られている。そのような方法には、本明細書に記載の標準試験および当該技術分野でよ
く知られている他の同様の試験が含まれる。本開示による化合物の光学異性体を得るため
に用いることができる方法の例には、以下が含まれる:
i)個々のエナンチオマーの巨視的結晶を手動で分離する結晶の物理的分離。この技術は
、別個のエナンチオマーの結晶が存在する場合(すなわち、物質が集合体である場合)に
特に使用され、結晶は視覚的に区別される;
ii)個々のエナンチオマーがラセミ体の溶液から別個に結晶化される同時結晶化であっ
て、後者が固体状態の集合体である場合にのみ可能である;
iii)エナンチオマーと酵素との反応速度が異なることによってラセミ体を部分的また
は完全に分離する酵素分解;
iv)酵素不斉合成であって、合成の少なくとも1つの工程が酵素反応を用いてエナンチ
オマー的に純粋な所望のエナンチオマーまたはその富化された合成前駆体を得る合成技術

v)生成物中で非対称性(すなわち、キラリティー)を生じる条件下で、所望のエナンチ
オマーがアキラル前駆体から合成される化学不斉合成であって、キラル触媒またはキラル
補助剤を用いて達成され得る;
vi)ジアステレオマー分離であって、ラセミ化合物と、個々のエナンチオマーをジアス
テレオマーに変換させるエナンチオマー的に純粋な試薬(キラル補助剤)とを反応させる
。次いで、得られたジアステレオマーを、より明確になったそれらの構造的相違によりク
ロマトグラフィーまたは結晶化によって分離し、その後キラル補助剤を除去して所望のエ
ナンチオマーを得る;
vii)一次および二次非対称変換であって、ラセミ体からのジアステレオマーが平衡し
、所望のエナンチオマーからのジアステレオマーの溶液中で優勢になるか、または所望の
エナンチオマーからのジアステレオマーの優先的結晶化が平衡を摂動させ、最終的には原
理的に全ての物質が所望のエナンチオマーから結晶性ジアステレオマーに変換される。次
いで、所望のエナンチオマーをジアステレオマーから遊離させる;
viii)速度論的分割であって、エナンチオマーとキラルな非ラセミ試薬もしくは触媒
との速度論的条件下での不等な反応速度によるラセミ体の部分的または完全な分割(また
は部分的に分割された化合物のさらなる分割)を含む;
ix)非ラセミ前駆体からのエナンチオ特異的合成であって、所望のエナンチオマーが非
キラル出発物質から得られ、立体化学的完全性が合成の過程で損なわれないまたは最小限
にしか損なわれない;
x)キラル液体クロマトグラフィーであって、ラセミ体のエナンチオマーが、固定相との
それらの相互作用が異なることにより液体移動相で分離される。固定相は、キラル物質か
ら作製することができるか、または移動相は追加のキラル物質を含み、異なる相互作用を
引き起こすことができる;
xi)キラルガスクロマトグラフィーであって、ラセミ体を揮発させ、エナンチオマーを
、ガス移動相における、固定された非ラセミキラル吸着相を含有するカラムとのそれらの
異なる相互作用により分離する;
xii)キラル溶媒での抽出であって、特定のキラル溶媒への1つのエナンチオマーの優
先的溶解によってエナンチオマーが分離される;ならびに
xiii)キラル膜を通した輸送であって、ラセミ体が薄い膜障壁と接触して配置される
。障壁は、典型的には、1つがラセミ体を含有している2つの混和性流体を分離し、濃度
差または圧力差などの推進力が、膜障壁を横切る優先的な輸送を引き起こす。分離は、ラ
セミ体の一方のエナンチオマーのみが通過することを可能にする膜の非ラセミキラル性質
の結果として生じる。
【0054】
化合物は任意に、エナンチオマー的に富化された組成物中に、例えば1つのエナンチオ
マーが過剰に、特に60%以上、75%以上、90%以上、95%以上、または98%以
上、100%を含む程度で存在するエナンチオマー混合物などに提供されてもよい。
【0055】
本開示の化合物は、それ自体で、または薬学的に許容されるエステル、アミド、塩、溶
媒和物、プロドラッグ、もしくは異性体の形態で利用されてもよい。例えば、化合物は、
薬学的に許容される塩として提供され得る。使用される場合、薬物化合物の塩は、薬理学
的かつ薬学的に許容されるものでなければならないが、薬学的に許容されない塩は、遊離
活性化合物またはその薬学的に許容される塩を調製するために便宜的に使用されてもよく
、本開示の範囲から排除されない。
【0056】
そのような薬理学的および薬学的に許容される塩は、文献に詳述されている標準的な方
法を用いて、薬物を有機酸または無機酸と反応させることによって調製することができる
。本開示で有用な化合物の薬学的に許容される塩の例には、酸付加塩が含まれる。しかし
ながら、薬学的に許容されない酸の塩は、例えば、化合物の調製および精製において有用
であり得る。本開示による適切な酸付加塩には、有機酸および無機酸が含まれる。好まし
い塩には、以下から形成される塩が挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、クエ
ン酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢
酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン
酸、およびイセチオン酸。他の有用な酸付加塩には、以下が挙げられる:プロピオン酸、
グリコール酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチ
ル酸など。薬学的に許容される塩の特定の例には以下が挙げられるが、これらに限定され
ない:硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素
塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩
、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カ
プリル酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、ス
ベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブタン-1,4-ジオエート、
ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジ
ニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン
酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸
塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンス
ルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-
スルホン酸塩、およびマンデル酸塩。
【0057】
本開示の化合物は未処理の化学的形態で投与することが可能であるが、化合物を医薬製
剤として送達することが好ましい。したがって、本開示によって、二重DA/5-HT放
出剤またはDA放出剤および5HT再取り込み阻害剤として機能することができる少なく
とも1つの化合物を含む医薬組成物が提供される。このように、本開示の製剤は、上記の
ような式Iの化合物もしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容されるエステル、
アミド、塩、または溶媒和物を、1つ以上の薬学的に許容される担体、したがって、任意
に、他の治療成分とともに含む。
【0058】
「薬学的に許容される担体」とは、薬剤の保存、投与および/または治癒効果を促進す
るために従来技術で使用されている担体を意味する。担体(単数または複数)は、製剤の
他の成分と相性がよく、そのレシピエントに過度に有害ではないという意味で、薬学的に
許容されなければならない。担体は、薬剤の望ましくない副作用も低減し得る。そのよう
な担体は当該技術分野で知られている。
【0059】
本開示の製剤に使用するためのアジュバントまたは補助成分には、結合剤、充填剤、潤
滑剤、崩壊剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤、防腐剤、香味剤および着色剤など、当該技
術分野において一般的に許容可能とみなされる任意の医薬成分が含まれ得る。組成物は、
以下をさらに含み得る:希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤、潤滑剤、防腐剤(酸
化防止剤を含む)、香味剤、味マスキング剤、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗菌
剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、甘味料、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「T
WEEN 20」および「TWEEN 80」などのポリソルベート、ならびにBASF
から入手可能なF68およびF88などのプルロニック)、ソルビタンエステル、脂質(
例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリンなどのリン脂質、ホスファチジルエタ
ノールアミン、脂肪酸および脂肪酸エステル、ステロイド(例えば、コレステロール))
、およびキレート剤(例えば、EDTA、亜鉛および他の適切なカチオン)。本開示によ
る組成物での使用に適した他の薬学的賦形剤および/または添加剤は、以下に掲載されて
いる:“Remington: The Science & Practice of Pharmacy,” 19th ed., Williams & Wi
lliams, (1995)、“Physician´s Desk Reference,” 52nd ed., Medical Economics, Mo
ntvale, N.J. (1998)、および“Handbook of Pharmaceutical Excipients,” Third Ed.,
Ed. A. H. Kibbe, Pharmaceutical Press, 2000。
【0060】
本開示による医薬製剤は、経口、非経口(静脈内、筋肉内、皮下、皮内、および経皮を
含む)、局所(真皮、口腔、および舌下を含む)ならびに直腸投与を含むさまざまな送達
様式に適している。最も有用および/または有益な投与様式は、特に、治療を受けるレシ
ピエントおよび障害の状態に応じて変化し得る。
【0061】
医薬製剤は、単位剤形で都合よく利用できるようにすることができ、そのような製剤は
、医薬分野で一般的に知られている方法のいずれかによって調製することができる。一般
に、そのような調製方法は、本開示による式Iまたは式IIの化合物(または薬学的に許
容されるそのエステル、アミド、塩、もしくは溶媒和物)などの活性剤を、1つ以上の成
分からなり得る適切な担体または他のアジュバントと(さまざまな方法によって)合わせ
る工程を含む。次いで、活性成分と1種以上のアジュバントとの組み合わせを物理的に処
理し、送達に適した形態(例えば、錠剤への成形または水性懸濁液の形成)で製剤を提供
する。
【0062】
経口投与として適切な本開示による医薬製剤は、それぞれが所定量の活性剤を含む、錠
剤、カプセル、カプレット、およびウエハー(急速溶解または発泡を含む)などのさまざ
まな形態を取り得る。製剤は、粉末または顆粒、水性もしくは非水性液体の溶液または懸
濁液、および液体エマルジョン(水中油および油中水)の形態であってもよい。活性薬剤
は、ボーラス、舐剤、またはペーストとして送達されてもよい。上記剤形の調製方法は一
般に当該技術分野で知られており、そのような方法は、本開示による化合物の送達に使用
されるそれぞれの剤形の調製に適していると一般に理解されている。
【0063】
本開示による化合物を含有する錠剤は、当業者に既に知られている任意の標準的な方法
、例えば圧縮または成形によって、任意に1つ以上のアジュバントまたは補助成分ととも
に製造され得る。錠剤は、任意にコーティングまたはスコアリングされてもよく、活性剤
の徐放または制御放出をもたらすように製剤化され得る。
【0064】
固体剤形は、コーティング剤の塗布などによって、活性剤の遅延放出をもたらすように
処方され得る。遅延放出コーティングは当該技術分野で知られており、それを含有する剤
形は、任意の既知の適切な方法によって調製され得る。そのような方法は、一般に、固体
剤形(例えば、錠剤またはカプレット)の調製後に、遅延放出コーティング組成物を適用
することを含む。塗布は、エアレススプレー、流動床コーティング、コーティングパンの
使用などの方法によって行うことができる。遅延放出コーティング剤として使用される材
料は、セルロース系材料(例えば、酪酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロース、およびカルボキシメチルエチルセルロース)などのポリマー性のも
の、ならびにアクリル酸、メタクリル酸、およびそれらのエステルのポリマーおよびコポ
リマーであってもよい。
【0065】
本開示による固体剤形はまた、徐放性(すなわち、長期間にわたって活性剤を放出する
)であってもよく、遅延放出であってもなくてもよい。徐放性製剤は、当該技術分野で知
られており、徐々に分解するまたは加水分解する材料、例えば不溶性プラスチック、親水
性ポリマー、もしくは脂肪化合物などのマトリックス内に薬物を分散させることによって
通常調製される。あるいは、固体剤形をそのような材料でコーティングしてもよい。
【0066】
非経口投与のための製剤には水性および非水性滅菌注射溶液が含まれ、それらは、酸化
防止剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されるレシピエントの血液と製剤を等張にするため
の溶質などの追加の薬剤をさらに含有し得る。製剤は、懸濁化剤および増粘剤を含有する
水性および非水性滅菌懸濁液を含み得る。非経口投与のためのそのような製剤は、例えば
密封されたアンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数用量の容器で提供されても
よく、使用の直前に滅菌液体担体、例えば水(注射用)の添加のみを必要とする凍結乾燥
(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時注射溶液および懸濁液は、前述の種類の滅菌
粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0067】
本開示による化合物はまた、経皮投与されてもよく、ここで、活性薬剤は、長期間にわ
たりレシピエントの表皮と密接に接触し続けるように構成された積層構造(一般に「パッ
チ」と呼ばれる)に組み込まれている。典型的には、そのようなパッチは、単一層の「接
着剤中薬物」パッチとして、または活性剤が接着層から離れた層に含まれる多層パッチと
して入手可能である。両タイプのパッチはまた、一般に、バッキング層と、レシピエント
の皮膚に接着する前に取り外されるライナーとを含む。経皮薬物送達パッチはまた、レシ
ピエントの皮膚から半透膜および接着層によって分離されたバッキング層の下にあるリザ
ーバから構成されてもよい。経皮薬物送達は、受動拡散によって起こり得るか、または電
気輸送またはイオントフォレシスを使用して促進され得る。
【0068】
本開示の化合物の直腸送達のための製剤には、直腸坐剤、クリーム、軟膏、および液体
が挙げられる。坐剤は、ポリエチレングリコールなどの当該技術分野で一般的に知られて
いる担体と組み合わせて活性剤として提供され得る。そのような剤形は、迅速にまたは長
期間にわたって崩壊するように設計されてもよく、崩壊が完了する時間は、約10分など
の短時間から約6時間などの長期間にまで及ぶことができる。
【0069】
上記の式Iまたは式IIの化合物は、経口、口腔、直腸、局所、経鼻、経眼、または非
経口(腹腔内、静脈内、皮下、または筋肉内注射を含む)投与に適した組成物を含む組成
物に製剤化されてもよい。組成物は、単位剤形で提供するのが好都合な場合があり、薬学
の分野でよく知られている方法のいずれかによって調製され得る。
【0070】
製剤化の方法は、典型的には、式Iまたは式IIの化合物を、1つ以上の副成分を構成
する担体と会合させる工程を含む。一般に、組成物は、本開示の化合物を液体担体と会合
させて溶液もしくは懸濁液を形成するか、あるいは、固体、場合によって微粒子生成物を
形成するのに適した製剤成分と本開示の化合物を会合させ、次いで、必要とされる場合に
は、生成物を所望の送達形態に成形することによって調製される。本開示の固体製剤は、
微粒子の場合、典型的には、約1ナノメートル~約500ミクロンの範囲のサイズの粒子
を含む。一般に、静脈内投与用の固体製剤の場合、粒子は、典型的には、直径が約1nm
~約10ミクロンの範囲にある。
【0071】
製剤中の式Iまたは式IIの化合物の量は、選択される特定の化合物、剤形、標的患者
集団、および他の考察に応じて変化し、当業者によって容易に決定されるであろう。
【0072】
製剤中の式Iまたは式IIの化合物の量は、治療有効量の化合物をそれを必要とする患
者に送達し、本開示の化合物に関連する治療効果の少なくとも1つを達成するのに必要な
量となる。実際には、これは、特定の化合物、その活性、治療される病状の重症度、患者
集団、製剤の安定性などに応じて大きく異なるであろう。
【0073】
本開示による治療方法は、一般に、治療有効量の式Iまたは式IIの化合物の、任意に
1つ以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物中での投与を含み、ここで治療有効
量は、好ましくは、ドーパミンとセロトニンの放出をもたらすか、またはドーパミンの放
出およびセロトニンの取り込み阻害をもたらすのに十分である。治療有効量は、さらに好
ましくは、患者が治療を受けている疾患、病状または障害の症状の軽減を患者にもたらす
のに十分である。
【0074】
組成物は、一般に、本開示の化合物を約1重量%~約99重量%、典型的には約5重量
%~約70重量%、より典型的には約10重量%~約50重量%含むことになるが、組成
物中に含まれる賦形剤/添加剤の相対量にも依存する。
【0075】
特定の実施形態では、式IもしくはIIの化合物、または薬学的に許容されるそのエス
テル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異性体は、本明細書で論じられる
疾患、病状および/または障害の治療に有用であると一般的に認識されている他の生物活
性薬剤と組み合わせて使用されてもよい。本開示のフェネチルアミン化合物と組み合わせ
て使用されるそのような生物活性薬剤には、例として、選択的セロトニン再取り込み阻害
剤(SSRI)、三環系、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤ならびにノルエ
ピネフリンおよびドーパミン再取り込み阻害剤(NDRI)などの抗うつ薬、モノアミン
オキシダーゼ阻害剤(MAOI)、気分安定剤、抗過眠症薬、または抗精神病薬が挙げら
れ得る。
【実施例
【0076】
本開示は、本明細書に開示される構造の化合物を調製する方法も包含する。二重DAお
よび5-HT放出剤として有効な化合物を得るために、比較化合物としての1-ナフチル
-2-アミノプロパン(PAL-287(PAL、フェニルアミンライブラリー))に関
して得られる情報を評価した。PAL-287、
【化11】
は、放射標識した神経伝達物質を、DAT、SERT、およびNETからそれぞれ12.
6nM、3.4nM、および11.1nMのEC50値で放出する(表1)。ラットにお
けるin vivo微量透析実験は、PAL-287(1~3mg/kg Lv.)が前
頭皮質の細胞外DAおよび5-HTを増加させ、5-HTに対する効果がより大きいこと
を示すことによって(133%増と比較して464%増)、in vitroデータを裏
付けている。さらに、ラットにおいて、PAL-287は、5-HTと比較してDAを放
出する効力が71倍高いS(+)-アンフェタミンと比較して、著しく低い運動刺激を生
じる;重要なことに、高用量のPAL-287は皮質5-HTの枯渇を引き起こさない。
コカインを自己投与するように訓練されたアカゲザルでは、PAL-287は、コカイン
自己投与の用量依存的な減少をもたらし、1.0mg/kg/時間でのコカイン対食物維
持応答を有意に減少させる。全体として、非アンフェタミン類似体であるPAL-287
で収集されたデータは、二重DA/5-HT放出剤が、最小限に強化しながら、アンフェ
タミン型放出剤の治療効果を保持するという仮説を支持する。
【0077】
したがって、一連のフェネチルアミンを合成し、輸送体活性について評価した。フェネ
チルアミン類似体の4つの群を以下に示すように合成した。
【化12】
【0078】
群Iは、ラセミアルキニルアイソスター4、ならびに2つのキラルアイソスター、S-
4およびR-4からなっていた。群IIは、ラセミおよびキラル(E)-アルケニルアイ
ソスター(6、S-6、R-6)からなり、対して群IIIは、その対応する(Z)-ア
ルケニルアイソスター(8、S-8、R-8)からなっていた。群IVの類似体(10、
11)は、フェニル環とアミン基との間の炭素が1つ少ない。全ての類似体は、市販の材
料から3つまたは4つの工程で合成された。スキーム1は、群I~IIIからの(S)-
立体異性体の合成を示す。
【化13】
【0079】
群IのアルキンS-4を合成するために、市販のアルコールR-3をトシラートに変換
し、アジドへの立体配置の反転を伴う置換を経て、シュタウディンガー条件下で還元して
S-4を得た。同じ市販の出発アルコールR-3を、水素化アルミニウムリチウム(LA
H)またはリンドラー触媒で選択的に還元し、対応する(E)-または(Z)-オレフィ
ン、R-5およびR-7をそれぞれ得た。次いで、これらのオレフィンを、同じ3工程の
トシル化/アジド形成/シュタウディンガー還元工程を使用して、アミンS-6およびS
-8にそれぞれ変換した。群I~IIIの(R)立体異性体およびラセミ体は、対応する
市販の(S)-アルコールおよびラセミアルコールでそれぞれ開始する同じ経路を用いて
合成した。
【0080】
スキーム2は、安定性の問題のためにトシル化の代わりにメシル化を行ったこと以外は
スキーム1で合成した化合物と同じ経路を使用した、市販のアルコール9からの群IVビ
ニローグフェネチルアミン(10、11)の合成を示す。
【化14】
【0081】
Rothmanおよび共同研究者によって開発されたプロトコル(Rothman, et al., E
ur. J. Pharmacol. 2002, 447(1), 51)に従い、ラット脳ホモジネートから調製したシナ
プトソームを用いて、BAT活性を測定した。化合物を、取り込み阻害および放出アッセ
イにおいて最初にスクリーニングし、薬物作用の正確な様式を決定した。両アッセイにお
いて活性な化合物は放出剤であり、一方、取り込み阻害アッセイでのみ活性な化合物は取
り込み阻害剤である。活性化合物を、その作用機序に対応するアッセイにおいて8点濃度
応答曲線を実行することによって完全に特性評価した。基質逆転実験を行い、基質活性を
検証した。類似体を、前述のようにトランスフェクトHEK293細胞におけるin v
itroカルシウム動員アッセイを用いて、セロトニン2受容体サブタイプ(5-HT
、5-HT2B、5-HT2C)でのアゴニスト活性についても試験した。5-HT
アゴニストが幻覚誘発性であると考えられる一方、5-HTアゴニストは弁膜性心疾患
および肺高血圧に関連するため、これらの受容体は乱用薬物の薬理学に関連する;これら
の受容体での活性は、オフターゲットの責任とみなされる。一方、5-HT2Cのアゴニ
ストは、薬物乱用および食欲抑制の潜在的な薬物療法として有益であり得る。
【0082】
表1は、類似体の輸送体データを示す。全ての化合物は、さまざまな効力でDATおよ
びNET放出剤として活性であり、2つの化合物10および11以外の全てがSERT放
出剤として活性であった。DATでは、群Iアルキンは同様の効力を有し、S-4が44
3nMのEC50値で最も強力であった。SERTでは、アルキンはまた同様の効力を有
し、R-4が288nMのEC50値で最も強力であった。NETでは、アルキンR-4
が最も強力であり(EC50=496nM)、4が最も弱かった(EC50=2980n
M)。群II(E)-アルケンは、3つの輸送体全てにおいて強力であり、EC50値は
540nM未満であった。DATでは、群II(E)-アルケンは同様の効力を有し、R
-6が最も効力が弱く(EC50=540nM)、S-6が206nMのEC50値で最
も強力であった。
【0083】
SERTおよびNETでは、S-6がこの群において最も活性な化合物であり、EC
値はそれぞれ40nMおよび138nMであった。DATでは、群III(Z)-アル
ケンは1500nM未満であり、S-8は304nMで最も強力であった。SERTでは
、類似体8およびS-8は同様の効力を有し、8がわずかにより強力であった(EC50
=646nM)。NETでは、S-8は、170nMのEC50値で最も強力な類似体で
あった。群IVの類似体はSERTでは不活性であり、DATでは比較的弱い放出剤であ
り、10が最も強力であった(EC50=666nM)。しかし、両類似体は、NET(
EC50≒300nM)で同様の効力を有していた。
【表1】
【0084】
表1において、a:EC50値を下記のように測定し、各値は平均±SD(n=3)で
ある;b:カルシウム動員EC50値を下記のように測定した;c:データはRothman, R
B.; Blough, B. E.; Baumann, M. H. Trends Pharmacol. Sci. 2006, 27(12), 612から
である;IA=10μMで不活性。
【0085】
構造活性の観点から、全ての化合物は輸送体の基質であり、輸送体が以前に考えられて
いたよりも大きな構造を移行させることができることを示した。群IVを除く全ての化合
物は、二重DA/5-HT放出剤であるが、輸送体選択性の程度は様々であった。ラセミ
類似体4およびR-4は、DATにおいて、それぞれ2.6倍および2.3倍強力であっ
ただけであるため、群IアルキンはDAと比較して5-HTを放出する選択性を示さなか
った。S-4は、DATおよびSERTにおいて本質的に等効力であった。群IIのアル
ケンは全て、DATと比較してSERTでより選択的であり、SERTで5倍の効力であ
った。この群は、輸送体での活性が全て類似しており、キラル異性体、R-6およびS-
6、ならびにラセミ体6の間に差異がないことを示しているため、興味深い。群III(
Z)-オレフィンは群Iアルキンと類似しており、類似体はそれほどSERT/DAT選
択性を示さなかった。ラセミ類似体8およびR-8は、DAに対して5-HTを放出する
効力を有したが(それぞれ1.4倍および1.2倍)、5~8は5-HTに比べてDAを
放出するのにわずかに強力であった(2.2倍)。アルケンとアミン(群IV)との間の
炭素を除去すると、DATおよびNETで選択的であった類似体が得られた。これらの化
合物はSERTで不活性であり、移行部位に結合できないことを示した;この活性プロフ
ァイルは、化合物が弱い刺激薬であり得ることを示唆している。
【0086】
いくつかの研究では、NE放出はほぼ常に、わずかに高い効力でDA放出と同等である
ことが見出されている。ビニローグ類似体の大部分はDA/NE放出傾向に従うが、いく
つかの化合物はDATまたはNETの選択性を示す。群Iのラセミアルキン4は、DAの
放出において、NEと比較して、それぞれ997nMおよび2980nMのEC50値で
3倍強力であった。類似体S-4は、DATおよびNETにおいて、それぞれ660nM
および496nMのEC50値であり、典型的な傾向に従ったが、類似体R-4について
のDATおよびNETでの活性は、それぞれ443nMおよび784nMのEC50値で
逆転した。全ての群II(E)-アルケンおよび2つの群III(Z)-アルケンは、典
型的な傾向に従った;しかしながら、群III(Z)-アルケンR-8は、NEの放出に
ついて、DAと比べて6.7倍選択的であり、EC50値はそれぞれ211nMおよび1
416nMであった。両群IV類似体、10および11は、NETではDATと比較して
より強力であったが、異なる選択性を有していた(それぞれ2.2倍および3.7倍)。
【0087】
群II(E)-アルケンは他の3つの群と比較して最も活性な化合物であった。DAT
、SERT、およびNETにおいて最も強力な類似体は(E)-アルケン5~6であり、
EC50値がそれぞれ206nM、40nM、および138nMあった。この類似体は、
S(+)-アンフェタミンと同じ立体配置を保持し、PAL-287と同数の炭素をフェ
ニル基とアミン基との間に有し、より立体障害のある(Z)-オレフィンと比較して、P
AL-287と類似の立体配座を有する。PAL-287は、3つの輸送体全てにおいて
S-6より10倍強力であるが、化合物はいくらかの活性特性を共有する。S-6は、5
倍の5-HT/DA放出効力を有し、3.7倍の選択性を有する比較化合物PAL-28
7と類似である。S-6は、NE放出と比較して、5-HT放出について3.5倍高い効
力を有し、これはPAL-287の3.3倍の選択性に類似しており、両化合物はほぼ同
等のDA/NE放出効力を有する。
【0088】
本開示のビニローグ類似体を、in vitroカルシウム動員アッセイ(表1)を用
いて、5-HT2A、5-HT2B、および5-HT2C受容体でのアゴニスト活性につ
いても評価した。全体として、類似体は3つの受容体全てにおいてさまざまな程度の弱い
活性を示し、PAL-287(表1)よりS(+)-アンフェタミン(3つのアッセイ全
てにおいて不活性)に似ている。以前の機能的研究は、PAL-287が、5-HT2A
および5-HT2B受容体において完全アゴニストであり(それぞれEC50=466n
Mおよび40nM)、5-HT2Cにおいて部分アゴニスト(EC50=2.3nM、E
MAX=20%)であることを明らかにしている。5-HT2Aでは、ビニローグ類似体
は全てPAL-287よりも効力が低いが、それはその大部分が不活性であるか(S-6
,10,11)、またはEC50値>10μM(4、R-4、R-6、R-8)であった
ためである。残りの類似体は、マイクロモル範囲の効力を有していた。類似体S-8は、
EC50値が1600nM、EMAXが102%であり、最も強力で効果的な類似体であ
った。ラセミ類似体8は、同様の効力(EC50=1860nM)および有効性(EMA
=90%)を有していた。活性であった唯一の他の化合物はアルキンS-4およびラセ
ミアルケン6であり、これらは8と比較して、それぞれ2.7倍および3倍の効力の低下
を示した。これらの化合物も有効ではなく、EMAX値は80%未満の範囲であった。5
-HT2Bでは、全ての類似体が不活性であった。これは興味深いが、なぜなら、PAL
-287はEC50値40nMのアゴニストとして5-HT2Bで活性であったためであ
る。5-HT2Cでは、群III(Z)-アルケン8およびS-8のみが、10μMで5
0%未満の対照5-HT EMAXの活性を有する弱いアゴニストであった。最も活性な
輸送体化合物(S-6)は、3つ全ての受容体で不活性であり、この化合物が5-HT2
受容体でのアゴニスト活性に関連する典型的な効果を生じない場合があることを示してい
る。類似体S-6は、in vitro 5-HTカルシウム動員アッセイにおいても
不活性であり、潜在的なin vivo効果を示さなかった。
【0089】
実験的合成および活性の調査を、以下に詳細に記載する。
【0090】
(実施例1)
【化15】
1-メチル-4-フェニル-ブタ-3-イニルアミン(4)。
既知アルコールR-3(432mg、2.70mmol)のピリジン(1.7mL)撹
拌溶液に、0℃N下で、ピリジン(1mL)中のp-トルエンスルホニルクロリド(1
.03g、5.40mmol)をゆっくり添加した。反応混合液をゆっくりと室温に温め
、次いで一晩撹拌した。反応混合液を、氷および10%HCl水溶液を入れた三角フラス
コに移し、CHClを使用して移送を補助し、それが室温に達するまで撹拌した。二
相混合液を分液漏斗で分配した。水層をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液
を10%HCl水溶液で3回、水で1回、ブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥さ
せ、濾過した。減圧濃縮し、いくつかの未反応の出発物質でコンタミされた粗トシラート
を褐色油状物として得た。
【0091】
粗トシラート(849mg、2.70mmol)のDMF(9mL)撹拌溶液に、Na
(702mg、10.8mmol)を添加し、懸濁液を一晩激しく撹拌した。反応混
合液を水およびエーテルに注ぎ、20分間撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。
水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水で2回およびブラインで1回洗浄
し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュク
ロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキサンでの溶離)により、258mg(収率52
%)のアジドを透明油状物として得た。
【0092】
アジド(158mg、0.853mmol)のTHF(4.5mL)撹拌溶液に、N
下で、PPh(449mg、1.71mmol)を添加した。次いで、水(0.53m
L)を滴加し、反応混合液を一晩撹拌した。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した
。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出
液を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、
シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl~20%
MeOH/CHCl勾配での溶離)により、114mg(収率84%)のアミン4を
淡黄色油状物として得た。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.42-7.39 (m, 2H), 7.29-7.27
(m, 3H), 3.24-3.14 (m, 1H), 2.56-2.37 (brと合わせたqd. s, 4H), 1.21 (d, J = 6.0
Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) ppm 131.6, 128.2, 127.8, 123.6, 87.1, 82.7, 46.
4, 30.3, 22.7; MS (APCI) (M+1)+ 160.2, 実測値160.1. 塩酸塩の融点は131~132℃であ
った; 分析 (C11H14ClN) C, H, N.
【0093】
(実施例2)
(1S)-1-メチル-4-フェニル-ブタ-3-イニルアミン(S-4)。
【化16】
既知アルコールR-3(580mg、3.62mmol)のピリジン(2mL)撹拌溶
液に、0℃N下で、ピリジン(1.6mL)中のp-トルエンスルホニルクロリド(1
.38g、7.24mmol)をゆっくり添加した。反応混合液をゆっくりと室温に温め
、次いで一晩撹拌した。反応混合液を、氷および10%HCl水溶液を入れた三角フラス
コに移し、CHClを使用して移送を補助し、それが室温に達するまで撹拌した。二
相混合液を分液漏斗で分配した。水層をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液
を10%HCl水溶液で3回、水で1回、ブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥さ
せ、濾過した。減圧濃縮し、949mg(収率83%)の粗トシラートを白色固体として
得た。
【0094】
粗トシラート(949mg、3.02mmol)のDMF(10mL)撹拌溶液に、N
aN(787mg、12.1mmol)を添加し、懸濁液を一晩激しく撹拌した。反応
混合液を水およびエーテルに注ぎ、20分間撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した
。水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水で2回およびブラインで1回洗
浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュ
クロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキサンでの溶離)により、490mg(収率8
8%)のアジドを透明油状物として得た。
【0095】
アジド(490mg、2.65mmol)のTHF(14mL)撹拌溶液に、N下で
、PPh(1.39g、5.30mmol)を添加した。次いで、水(1.7mL)を
滴加し、反応混合液を一晩撹拌した。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した。二相
混合液を分液漏斗で分配した。水層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水
およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカ
ゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl~20%MeO
H/CHCl勾配での溶離)により、261mg(収率62%)のアミンS-4を淡
黄色油状物として得た。[α]20 D +11.4 g/mL (c 0.0007, MeOH); 1H NMR (CD3OD, 300 MH
z) δ 7.40-7.36 (m, 2H), 7.31-7.28 (m, 3H), 3.14-3.05 (m, 1H), 2.48-2.46 (m, 2H)
, 1.21 (d, J = 6.0 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) ppm 131.6, 128.2, 127.7, 123
.7, 87.3, 82.6, 46.4, 30.7, 23.0; MS (APCI) (M+1)+ 160.2, 実測値160.1. 塩酸塩の
融点は141~142℃であった; 分析 (C11H14ClN0・0.2H2O) C, H, N.
【0096】
(実施例3)
(1R)-1-メチル-4-フェニル-ブタ-3-イニルアミン(R-4)。
【化17】
既知アルコールS-3(560mg、3.50mmol)のピリジン(2mL)撹拌溶
液に、0℃N下で、ピリジン(1.5mL)中のp-トルエンスルホニルクロリド(1
.33g、7.00mmol)をゆっくり添加した。反応混合液をゆっくりと室温に温め
、次いで一晩撹拌した。反応混合液を、氷および10%HCl水溶液を入れた三角フラス
コに移し、CHClを使用して移送を補助し、それが室温に達するまで撹拌した。二
相混合液を分液漏斗で分配した。水層をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液
を10%HCl水溶液で3回、水で1回、ブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥さ
せ、濾過した。減圧濃縮し、いくつかの未反応の出発物質でコンタミされた粗トシラート
を褐色油状物として得た。
【0097】
粗トシラートのDMF(11mL)撹拌溶液に、NaN(826mg、12.7mm
ol)を添加し、懸濁液を一晩激しく撹拌した。反応混合液を水およびエーテルに注ぎ、
20分間撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をエーテルで2回抽出し、合
わせた有機抽出液を水で2回およびブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾
過した。減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(5%EtOA
c/ヘキサンでの溶離)により、370mg(収率63%)のアジドを透明油状物として
得た。
【0098】
アジド(370mg、2.00mmol)のTHF(11mL)撹拌溶液に、N下で
、PPh(1.05g、4.00mmol)を添加した。次に、水(1.3mL)を滴
加し、反応混合液を一晩撹拌した。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した。二相混
合液を分液漏斗で分配した。水層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水お
よびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカゲ
ルでのフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl~20%MeOH
/CHCl勾配での溶離)により、213mg(収率67%)のアミンR-4を淡黄
色油状物として得た。[α]20 D -4.2 g/mL (c 0.0050, MeOH); 1H NMR (CDCl3, 300 MHz)
δ 7.43-7.40 (m, 2H), 7.29-7.27 (m, 3H), 3.24-3.14 (m, 1H), 2.44 (qd, J = 54.0,
42.0, 24.0, 6.0 Hz, 2H), 1.81 (br. s, 2H), 1.22 (d, J = 6.0 Hz, 3H); 13C NMR (CD
Cl3, 75 MHz) ppm 131.6, 128.2, 127.7, 123.7, 87.3, 82.6, 46.5, 30.6, 23.0; MS (A
PCI) (M+1)+ 160.2, 実測値160.0. 塩酸塩の融点は143~144℃であった; 分析 (C11H14Cl
N) C, H, N.
【0099】
(実施例4)
(3E)-1-メチル-4-フェニル-ブタ-3-エニルアミン(6)。
【化18】
LAH(12.5mL、THF中1M、12.5mmol)の無水THF(15mL)
撹拌溶液に、0℃N下で、無水THF(3mL)中のアルコール3a(500mg、3
.12mmol)をゆっくり添加した。注意:Hガスの発生に起因する発泡が生じる。
発泡が止まった後、反応混合液をゆっくりと室温に温め、次いで5時間還流した。室温に
冷却した後、0℃に冷却し、0.47mLのHO、0.47mLの3M HCl水溶液
、1.4mLのHO、および1.4mLの3M HCl水溶液を連続的に添加し、反応
混合液を慎重にクエンチした。注意:Hガスの発生に起因する激しい発熱および発泡が
生じる。発泡が止まった後、クエンチした反応混合液をゆっくりと室温に温め、30分間
撹拌し、分液漏斗に移した。水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有機抽出液を飽和N
aHCO水溶液、水、およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。
減圧濃縮し、446mg(収率88%)の粗(E)-オレフィン5を透明油状物として得
た。
【0100】
(E)-オレフィン5(738mg、4.55mmol)のピリジン(3mL)撹拌溶
液に、0℃N下で、ピリジン(1.6mL)中のp-トルエンスルホニルクロリド(1
.73g、9.10mmol)をゆっくり添加した。反応混合液をゆっくりと室温に温め
、次いで一晩撹拌した。反応混合液を、氷および10%HCl水溶液を入れた三角フラス
コに移し、CHClを使用して移送を補助し、それが室温に達するまで撹拌した。二
相混合液を分液漏斗で分配した。水層をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液
を10%HCl水溶液で3回、水で1回、ブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥さ
せ、濾過した。減圧濃縮し、いくつかの未反応の出発物質でコンタミされた粗トシラート
を褐色油状物として得た。
【0101】
粗トシラートのDMF(15mL)撹拌溶液に、NaN(1.18g、18.2mm
ol)を添加し、懸濁液を一晩激しく撹拌した。反応混合液を水およびエーテルに注ぎ、
20分間撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をエーテルで2回抽出し、合
わせた有機抽出液を水で2回およびブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾
過した。減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(5%EtOA
c/ヘキサンでの溶離)により、640mg(収率75%)のアジドを透明油状物として
得た。
【0102】
アジド(640mg、3.42mmol)のTHF(18mL)撹拌溶液に、N下で
、PPh(1.79g、6.84mmol)を添加した。次いで、水(2.1mL)を
滴加し、反応混合液を一晩撹拌した。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した。二相
混合液を分液漏斗で分配した。水層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水
およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカ
ゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl~20%MeO
H/CHCl勾配での溶離)により、404mg(収率73%)のアミン6を白色固
体として得た。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.37-7.17 (m, 5H), 6.44 (d, J = 15.0 Hz
, 1H), 6.23-6.13 (m, 1H), 3.09-2.98 (m, 1H), 2.34-2.25 (m, 1H), 2.23-2.13 (m, 1H
), 1.83 (br. s, 2H), 1.12 (d, J = 6.0 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) ppm 137.5
, 132.5, 128.5, 127.4, 127.1, 126.1, 46.9, 43.6, 23.4; MS (APCI) (M+1)+162.2, 実
測値162.2. 塩酸塩の融点は147~148℃であった; 分析 (C11H16ClN ・0.1H2O) C, H, N.
【0103】
(実施例5)
(1S,3E)-1-メチル-4-フェニル-ブタ-3-エニルアミン(S-6)。
【化19】
LAH(12.5mL、THF中1M、12.5mmol)の無水THF(15mL)
撹拌溶液に、0℃N下で、無水THF(3mL)中のアルコールR-3(500mg、
3.12mmol)をゆっくり添加した。注意:Hガスの発生に起因する発泡が生じる
。発泡が止まった後、反応混合液をゆっくりと室温に温め、次いで5時間還流した。室温
に冷却した後、0℃に冷却し、0.47mLのHO、0.47mLの3M HCl水溶
液、1.4mLのHO、および1.4mLの3M HCl水溶液を連続的に添加し、反
応混合液を慎重にクエンチした。注意:Hガスの発生に起因する激しい発熱および発泡
が生じる。発泡が止まった後、クエンチした反応混合液をゆっくりと室温に温め、30分
間撹拌し、分液漏斗に移した。水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有機抽出液を飽和
NaHCO水溶液、水、およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した
。減圧濃縮し、417mg(収率82%)の粗(E)-オレフィンR-5を透明油状物と
して得た。
【0104】
(E)-オレフィンR-5(417mg、2.57mmol)のピリジン(2mL)撹
拌溶液に、0℃N下で、ピリジン(1mL)中のp-トルエンスルホニルクロリド(9
80mg、5.14mmol)をゆっくり添加した。反応混合液をゆっくりと室温に温め
、次いで一晩撹拌した。反応混合液を、氷および10%HCl水溶液を入れた三角フラス
コに移し、CHClを使用して移送を補助し、それが室温に達するまで撹拌した。二
相混合液を分液漏斗で分配した。水層をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液
を10%HCl水溶液で3回、水で1回、ブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥さ
せ、濾過した。減圧濃縮し、いくつかの未反応の出発物質でコンタミされた粗トシラート
を褐色油状物として得た。
【0105】
粗トシラートのDMF(8.6mL)撹拌溶液に、NaN(670mg、10.3m
mol)を添加し、懸濁液を一晩激しく撹拌した。反応混合液を水およびエーテルに注ぎ
、20分間撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をエーテルで2回抽出し、
合わせた有機抽出液を水で2回およびブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、
濾過した。減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(5%EtO
Ac/ヘキサンでの溶離)により、440mg(収率91%)のアジドを透明油状物とし
て得た。
【0106】
アジド(440mg、2.35mmol)のTHF(12mL)撹拌溶液に、N下で
、PPh(1.23g、4.70mmol)を添加した。次いで、水(1.5mL)を
滴加し、反応混合液を一晩撹拌した。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した。二相
混合液を分液漏斗で分配した。水層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水
およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカ
ゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl~20%MeO
H/CHCl勾配での溶離)により、190mg(収率50%)のアミンS-6を透
明油状物として得た。[α]20 D +24.1 g/mL (c 0.0039, MeOH); 1H NMR (CDCl3, 300 MHz)
δ 7.37-7.17 (m, 5H), 6.45 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 6.26-6.13 (m, 1H), 3.09-3.01 (
m, 1H), 2.34-2.25 (m, 1H), 2.23-2.13 (m, 1H), 1.80 (br. s, 2H), 1.12 (d, J = 6.0
Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) ppm 137.5, 132.5, 128.5, 127.4, 127.1, 126.1,
46.9, 43.6, 23.4; MS (APCI) (M+1)+162.2, 実測値162.3. 塩酸塩の融点は172~173℃で
あった; 分析 (C11H16ClN) C, H, N.
【0107】
(実施例6)
(1R,3E)-1-メチル-4-フェニル-ブタ-3-エニルアミン(R-6)。
【化20】
LAH(12.5mL、THF中1M、12.5mmol)の無水THF(15mL)
撹拌溶液に、0℃N下で、無水THF(3mL)中のアルコールS-3(500mg、
3.12mmol)をゆっくり添加した。注意:Hガスの発生に起因する発泡が生じる
。発泡が止まった後、反応混合液をゆっくりと室温に温め、次いで5時間還流した。室温
に冷却した後、0℃に冷却し、0.47mLのHO、0.47mLの3M HCl水溶
液、1.4mLのHO、および1.4mLの3M HCl水溶液を連続的に添加し、反
応混合液を慎重にクエンチした。注意:Hガスの発生に起因する激しい発熱および発泡
が生じる。発泡が止まった後、クエンチした反応混合液をゆっくりと室温に温め、30分
間撹拌し、分液漏斗に移した。水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有機抽出液を飽和
NaHCO水溶液、水、およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した
。減圧濃縮し、500mg(収率99%)の粗(E)-オレフィンS-5を白色固体とし
て得た。
【0108】
(E)-オレフィンS-5(500mg、3.08mmol)のピリジン(2.1mL
)撹拌溶液に、0℃N下で、ピリジン(1mL)中のp-トルエンスルホニルクロリド
(1.17g、6.16mmol)をゆっくり添加した。反応混合液をゆっくりと室温に
温め、次いで一晩撹拌した。反応混合液を、氷および10%HCl水溶液を入れた三角フ
ラスコに移し、CHClを使用して移送を補助し、それが室温に達するまで撹拌した
。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽
出液を10%HCl水溶液で3回、水で1回、ブラインで1回洗浄し、NaSOで乾
燥させ、濾過した。減圧濃縮し、いくつかの未反応の出発物質でコンタミされた粗トシラ
ートを褐色油状物として得た。
【0109】
粗トシラートのDMF(10mL)撹拌溶液に、NaN(800mg、12.3mm
ol)を添加し、懸濁液を一晩激しく撹拌した。反応混合液を水およびエーテルに注ぎ、
20分間撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をエーテルで2回抽出し、合
わせた有機抽出液を水で2回およびブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾
過した。減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(5%EtOA
c/ヘキサンでの溶離)により、370mg(収率64%)のアジドを透明油状物として
得た。
【0110】
アジド(370mg、1.98mmol)のTHF(10mL)撹拌溶液に、N下で
、PPh(1.04g、3.96mmol)を添加した。次いで、水(1.2mL)を
滴加し、反応混合液を一晩撹拌した。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した。二相
混合液を分液漏斗で分配した。水層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水
およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカ
ゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl~20%MeO
H/CHCl勾配での溶離)により、146mg(収率46%)のアミンR-6を透
明油状物として得た。[α]20 D -5.7 g/mL (c 0.0021, MeOH); 1H NMR (CDCl3, 300 MHz)
δ 7.38-7.20 (m, 5H), 6.45 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 6.24-6.16 (m, 1H), 3.12-3.01 (m
, 1H), 2.37-2.17 (br. m, 4H), 1.15 (d, J = 6.0 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz)
ppm 137.4, 132.7, 128.5, 127.2, 126.1, 47.0, 43.3, 23.1; MS (APCI) (M+1)+ 162.2,
実測値162.2. 塩酸塩の融点は172~174℃であった; 分析 (C11H16ClN ・0.1H2O) C, H,
N.
【0111】
(実施例7)
(3Z)-1-メチル-4-フェニル-ブタ-3-エニルアミン(8)。
【化21】
Paarボトル中のアルコール3(900mg、5.62mmol)、リンドラー触媒
(720mg、80重量%)、およびキノリン(9mL、76.4mmol)のMeOH
(250mL)混合液を、Paar水素化装置において43psiで3時間振とうした。
混合液をセライトで濾過し、MeOHで洗浄し、次いで減圧濃縮した。残渣をCHCl
および10%水性HClに溶解した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をCH
Clで2回抽出し、合わせた有機抽出液を10%HCl水溶液で2回、ブラインで1回
洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮し、~10%の完全に飽和した化
合物でコンタミされた粗(Z)-オレフィン7を褐色油状物として得た。
【0112】
粗(Z)-オレフィン7のピリジン(2mL)撹拌溶液に、0℃N下で、ピリジン(
4mL)中のp-トルエンスルホニルクロリド(2.14g、11.2mL)をゆっくり
添加した。反応混合液をゆっくりと室温に温め、次いで一晩撹拌した。反応混合液を、氷
および10%HCl水溶液を入れた三角フラスコに移し、CHClを使用して移送を
補助し、それが室温に達するまで撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をC
Clで2回抽出し、合わせた有機抽出液を10%HCl水溶液で3回、水で1回、
ブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮し、1.74g(
収率97%)の粗トシラートを橙色油状物として得た。
【0113】
粗トシラート(1.74g、5.50mmol)のDMF(18mL)撹拌溶液に、N
aN(1.43g、22.0mmol)を添加した。一晩撹拌した後、反応混合液を水
およびエーテルに注ぎ、20分間撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をエ
ーテルで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水で2回およびブラインで1回洗浄し、Na
SOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグ
ラフィー(5%EtOAc/ヘキサンでの溶離)により、アジドを透明油状物として得て
、これをさらに精製することなく使用した。
【0114】
アジドのTHF(29mL)撹拌溶液に、N下で、PPh(2.89g、11.0
mmol)を添加した。次いで、水(3.4mL)を滴加し、反応混合液を一晩撹拌した
。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層
をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水およびブラインで洗浄し、Na
で乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフ
ィー(5%MeOH/CHCl~20%MeOH/CHCl勾配、次いで100
%MeOHでの溶離)により、367mg(収率41%)のアミン8を淡黄色油状物とし
て得た。塩酸塩の融点は115~117℃であった;1H NMR (CD3OD, 300 MHz) δ 7.38-
7.25 (m, 5H), 6.69 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 5.71-5.63 (m, 1H), 3.44-3.38 (m, 1H), 2
.78-2.57 (m, 2H), 1.29 (d, J = 6.0 Hz, 3H); 13C NMR (CD3OD, 75 MHz) ppm 138.1, 1
34.1, 129.8, 129.6, 128.3, 127.4, 126.5, 49.2, 34.6, 18.5; MS (ESI) (M+1)+ 162.2
, 実測値162.2(遊離塩基); 分析 (C11H16ClN) C, H, N.
【0115】
(実施例8)
(1S,3Z)-1-メチル-4-フェニル-ブタ-3-エニルアミン(S-8)。
【化22】
Paarボトル中のアルコールR-3(350mg、2.18mmol)、リンドラー
触媒(280mg、80重量%)、およびキノリン(3.5mL、29.6mmol)の
MeOH(200mL)混合液を、Paar水素化装置において43psiで3時間振と
うした。混合液をセライトで濾過し、MeOHで洗浄し、次いで減圧濃縮した。残渣をC
Clおよび10%水性HClに溶解した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層
をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液を10%HCl水溶液で2回、ブライ
ンで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮し、~10%の完全に飽
和した化合物でコンタミされた粗(Z)-オレフィンR-7を褐色油状物として得た。
【0116】
粗(Z)-オレフィンR-7ピリジン(1mL)撹拌溶液に、0℃N下で、ピリジン
(1mL)中のp-トルエンスルホニルクロリド(831mg、4.36mmol)をゆ
っくり添加した。反応混合液をゆっくりと室温に温め、次いで一晩撹拌した。反応混合液
を、氷および10%HCl水溶液を入れた三角フラスコに移し、CHClを使用して
移送を補助し、それが室温に達するまで撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水
層をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液を10%HCl水溶液で3回、水で
1回、ブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮し、粗トシ
ラートを橙色油状物として得た。
【0117】
粗トシラートのDMF(3.7mL)撹拌溶液に、NaN(291mg、4.48m
mol)を添加した。一晩撹拌した後、反応混合液を水およびエーテルに注ぎ、20分間
撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有
機抽出液を水で2回およびブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。
減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキ
サンでの溶離)により、アジドを透明油状物として得て、これをさらに精製することなく
使用した。
【0118】
アジドのTHF(5.9mL)撹拌溶液に、N下で、PPh(588mg、2.2
4mmol)を添加した。次いで、水(0.7mL)を滴加し、反応混合液を一晩撹拌し
た。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水
層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水およびブラインで洗浄し、Na
SOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラ
フィー(5%MeOH/CHCl~20%MeOH/CHCl勾配、次いで10
0%MeOHでの溶離)により、118mg(収率65%)のアミンS-8を透明濃厚油
状物として得た。塩酸塩の融点は83~84℃であった;[α]20 D -27.9 g/mL (c 0.0014
, MeOH); 1H NMR (CD3OD, 300 MHz) δ 7.38-7.23 (m, 5H), 6.69 (d, J = 12.0 Hz, 1H)
, 5.71-5.63 (m, 1H), 3.44-3.33 (m, 1H), 2.77-2.56 (m, 2H), 1.29 (d, J = 6.0 Hz,
3H); 13C NMR (CD3OD, 75 MHz) ppm 138.1, 134.1, 129.8, 129.5, 128.3, 126.5, 49.2,
34.6, 18.5; MS (ESI) (M+1)+ 162.2, 実測値162.4; 分析 (C11H16ClN ・0.45H2O) C, H
, N.
【0119】
(実施例9)
(1R,3Z)-1-メチル-4-フェニル-ブタ-3-エニルアミン(R-8)。
【化23】
Paarボトル中のアルコールS-3(350mg、2.18mmol)、リンドラー
触媒(280mg、80重量%)、およびキノリン(3.5mL、29.6mmol)の
MeOH(200mL)混合液を、Paar水素化装置において43psiで3時間振と
うした。混合液をセライトで濾過し、MeOHで洗浄し、次いで減圧濃縮した。残渣をC
Clおよび10%水性HClに溶解した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層
をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液を10%HCl水溶液で2回、ブライ
ンで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮し、~10%の完全に飽
和した化合物でコンタミされた粗(Z)-オレフィンS-7を褐色油状物として得た。
【0120】
粗(Z)-オレフィンS-7のピリジン(1mL)撹拌溶液に、0℃N下で、ピリジ
ン(1mL)中のp-トルエンスルホニルクロリド(831mg、4.36mmol)を
ゆっくり添加した。反応混合液をゆっくりと室温に温め、次いで一晩撹拌した。反応混合
液を、氷および10%HCl水溶液を入れた三角フラスコに移し、CHClを使用し
て移送を補助し、それが室温に達するまで撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。
水層をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液を10%HCl水溶液で3回、水
で1回、ブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮し、粗ト
シラートを橙色油状物として得た。
【0121】
粗トシラートのDMF(3.7mL)撹拌溶液に、NaN(291mg、4.48m
mol)を添加した。一晩撹拌した後、反応混合液を水およびエーテルに注ぎ、20分間
撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有
機抽出液を水で2回およびブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。
減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキ
サンでの溶離)により、アジドを透明油状物として得て、これをさらに精製することなく
使用した。
【0122】
アジドのTHF(5.9mL)撹拌溶液に、N下で、PPh(588mg、2.2
4mmol)を添加した。次いで、水(0.7mL)を滴加し、反応混合液を一晩撹拌し
た。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水
層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水およびブラインで洗浄し、Na
SOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラ
フィー(5%MeOH/CHCl~20%MeOH/CHCl勾配、次いで10
0%MeOHでの溶離)により、102mg(収率56%)のアミンR-8を透明濃厚油
状物として得た。塩酸塩の融点は83~84℃であった;[α]20 D +20 g/mL (c 0.00085,
MeOH); 1H NMR (CD3OD, 300 MHz) δ 7.38-7.22 (m, 5H), 6.69 (d, J = 12.0 Hz, 1H),
5.71-5.63 (m, 1H), 3.44-3.33 (m, 1H), 2.77-2.56 (m, 2H), 1.29 (d, J = 6.0 Hz, 3
H); 13C NMR (CD3OD, 75 MHz) ppm 138.1, 134.1, 129.8, 129.5, 128.3, 126.5, 49.2,
34.6, 18.5; MS (ESI) (M+1)+ 162.2, 実測値162.2(遊離塩基); 分析 (C11H16ClN ・0.5H
2O) C, H, N.
【0123】
(実施例10)
(2E)-1-メチル-3-フェニル-プロパ-2-エニルアミン(10)。
【化24】
LAH(13.7mL、THF中1M、13.7mmol)の無水THF(17mL)
撹拌溶液に、0℃N下で、無水THF(3mL)中のアルコール9(500mg、3.
42mmol)をゆっくりと添加した。注意:Hガスの発生に起因する発泡が生じる。
発泡が止まった後、反応混合液をゆっくりと室温に温め、次いで5時間還流した。室温に
冷却した後、0℃に冷却し、0.52mLのHO、0.52mLの3M HCl水溶液
、1.6mLのHO、および1.6mLの3M HCl水溶液を連続的に添加し、反応
混合液を慎重にクエンチした。注意:Hガスの発生に起因する激しい発熱および発泡が
生じる。発泡が止まった後、クエンチした反応混合液をゆっくりと室温に温め、30分間
撹拌し、分液漏斗に移した。水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有機抽出液を飽和N
aHCO水溶液、水、およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。
減圧濃縮し、粗(E)-オレフィンを透明油状物として得た。
【0124】
粗(E)-オレフィンのCHCl(34mL)撹拌溶液に、0℃N下で、NEt
(0.95mL、6.84mmol)およびMsCl(0.40mL、5.13mmo
l)を添加した。反応混合液を0℃で1時間、次いで室温で1時間撹拌した後、それを飽
和NaHCO水溶液でクエンチし、水およびCHClで希釈した。二相混合液を分
液漏斗で分配した。水層をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水およびブ
ラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮し、粗メシラートを褐色
油状物として得て、これを精製することなく使用した。
【0125】
粗メシラートのDMF(11mL)撹拌溶液に、NaN(891mg、13.7mm
ol)を添加した。一晩撹拌した後、反応混合液を水およびエーテルに注ぎ、20分間撹
拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有機
抽出液を水で2回およびブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減
圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキサ
ンでの溶離)により、570mg(収率96%)のアジドを透明油状物として得た。
【0126】
アジド(570mg、3.29mmol)のTHF(17.3mL)撹拌溶液に、N
下で、PPh(1.73g、6.58mmol)を添加した。次いで、水(2.1mL
)を滴加し、反応混合液を一晩撹拌した。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した。
二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出液
を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、シ
リカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(5%MeOH/CHCl~20%Me
OH/CHCl勾配、次いで100%MeOHでの溶離)により、70mg(収率1
4%)のアミン11を透明油状として得た。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.38-7.20 (m,
5H), 6.48 (d, J = 18.0 Hz, 1H), 6.20 (dd, J = 15.0, 6.0 Hz, 1H), 3.72-3.64 (m,
1H), 2.00 (br. s, 2H), 1.26 (d, J = 6.0 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) ppm 135
.7, 128.5, 128.2, 127.3, 126.3, 49.3, 23.7; MS (ESI) (M+1)+ 148.2, 実測値146.2.
塩酸塩の融点は151~152℃であった; 分析 (C10H14ClN) C, H, N.
【0127】
(実施例11)
(2Z)-1-メチル-3-フェニル-プロパ-2-エニルアミン(11)。
【化25】
Paarボトル中のアルコール9(100mg、0.684mmol)、リンドラー触
媒(80mg、80重量%)、およびキノリン(1.1mL、9.31mmol)のMe
OH(100mL)混合液を、Paar水素化装置において43psiで4時間振とうし
た。混合液をセライトで濾過し、次いで減圧濃縮した。残渣をCHClおよび10%
水性HClに溶解した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をCHClで2回抽
出し、合わせた有機抽出液を10%HCl水溶液で2回、ブラインで1回洗浄し、Na
SOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮し、~10%の完全に飽和した化合物でコンタミ
された粗(Z)-オレフィンを褐色油状物として得た。
【0128】
粗(Z)-オレフィンのCHCl(6.8mL)撹拌溶液に、0℃N下で、NE
(0.19mL、1.36mmol)およびMsCl(0.16mL、2.04mm
ol)を添加した。反応混合液を0℃で1時間、次いで室温で1時間撹拌した後、それを
飽和NaHCO水溶液でクエンチし、水およびCHClで希釈した。二相混合液を
分液漏斗で分配した。水層をCHClで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水および
ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮し、粗メシラートを褐
色油状物として得て、これを精製することなく使用した。
【0129】
粗メシラートのDMF(2.3mL)撹拌溶液に、NaN(177mg、2.73m
mol)を添加した。一晩撹拌した後、反応混合液を水およびエーテルに注ぎ、20分間
撹拌した。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有
機抽出液を水で2回およびブラインで1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。
減圧濃縮した後、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキ
サンでの溶離)により、118mg(収率100%)のアジドを透明油状物として得た。
【0130】
アジド(118mg、0.682mmol)のTHF(3.6mL)撹拌溶液に、N
下で、PPh(357mg、1.36mmol)を添加した。次いで、水(0.43m
L)を滴加し、反応混合液を一晩撹拌した。反応混合液を酢酸エチルおよび水で希釈した
。二相混合液を分液漏斗で分配した。水層をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出
液を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。減圧濃縮した後、
シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(5%MeOH/CHCl~20%M
eOH/CHCl勾配、次いで100%MeOHでの溶離)により、46.2mg(
収率46%)のアミン12を透明油状として得た。塩酸塩の融点は149~151℃であ
った;1H NMR (CD3OD, 300 MHz) δ 7.48-7.45 (m, 2H), 7.37-7.28 (m, 3H), 6.77 (d,
J = 15.0 Hz, 1H), 6.26 (dd, J = 15.0, 6.0 Hz, 1H), 4.11-4.02 (m, 1H), 1.50 (d, J
= 9.0 Hz, 3H); 13C NMR (CD3OD, 75 MHz) ppm 137.1, 135.5, 129.8, 129.6, 127.8, 1
26.9, 50.7, 19.6; MS (APCI) (M+1)+ 148.2, 実測値146.3(遊離塩基); 分析 (C10H14ClN
) C, H, N.
【0131】
(実施例12)
(生物学的アッセイ)
ドーパミン輸送体(DAT)、ノルエピネフリン輸送体(NET)、およびセロトニン輸
送体(SERT)アッセイ
全ての動物実験は、実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)の完全認可を受けた施
設で行われ、実験は、国立薬物乱用研究所所内研究プログラム(NIDA IRP)の動
物実験委員会(IACUC)に従って実施された。ラットをCO麻酔によって安楽死さ
せ、従来から記載されているように脳を処理してシナプトソームを得た(Rothman, R B,
et al., Eur. J. Pharmacol. 2002, 447(1), 51.)。DATアッセイ用にはシナプトソー
ムをラット線条体から調製したが、NETおよびSERTアッセイ用にはシナプトソーム
を線条体および小脳をなくした全脳から調製した。
【0132】
取り込み阻害アッセイのために、5nM[H]DA、10nM[H]ノルエピネフ
リン(NE)および5nM[H]5-HTを用いて、それぞれDAT、NET、および
SERTにおける輸送活性を評価した。取り込みアッセイの選択性は、競合する輸送体に
よる[H]伝達物質の取り込みを防ぐための非標識遮断剤を含むことによって、単一の
輸送体に対して最適化された。取り込み阻害アッセイは、100μlの組織懸濁液を、9
00μLのクレブス-リン酸緩衝液(126mMのNaCl、2.4mMのKCl、0.
83mMのCaCl、0.8mMのMgCl、0.5mMのKHPO、0.5m
MのNaSO、11.1mMのグルコース、0.05mMのパルギリン、1mg/m
Lのウシ血清アルブミン、および1mg/mLのアスコルビン酸、pH7.4)に添加す
ることによって開始された。取り込み阻害アッセイを、ワットマンGF/Bフィルターに
よる急速真空濾過により終了させ、保持された放射能を液体シンチレーション計数によっ
て定量した。濃度-応答曲線を作成してIC50値を得た。
【0133】
放出アッセイのために、DATおよびNETの放射標識基質として9nM[H]1-
メチル-4-フェニルピリジニウム([H]MPP+)を使用し、SERTの基質とし
て5nM[H]5-HTを使用した。放出アッセイ法で使用される全ての緩衝液は、基
質の小胞取り込みを遮断するための1μMのレセルピンを含有した。放出アッセイの選択
性は、競合輸送体による[H]MPP+または[H]5-HTの取り込みを防ぐため
の非標識遮断剤を含むことによって、単一の輸送体に対して最適化された。シナプトソー
ムには、クレブス-リン酸緩衝液中で放射標識した基質を1時間(定常状態)予備負荷し
た。放出アッセイは、850μLの予備負荷されたシナプトソームを150μLの試験薬
物に添加することによって開始された。放出を真空濾過によって終了させ、保持された放
射能を取り込み阻害について記載のように定量した。濃度-応答曲線を作成してEC50
値を得た。
【0134】
基質活性を検証するために基質逆転実験を行った。試験化合物の放出能力を、EC80
濃度で、取り込み阻害剤(DATについては250nMのGBR1209、NETについ
ては166nMのデシプラミン、SERTについては100nMのフルオキセチン)の非
存在下および存在下で試験した。試験剤が放出剤であった場合、取り込み阻害剤は試験剤
の効果を低下させた。試験剤が取り込み阻害剤である場合、第2の取り込み阻害剤の添加
は、放出アッセイにおいて変化しないか、または効果の増加をもたらした。
【0135】
(カルシウム動員アッセイ)
ヒト5-HT2A受容体を安定して発現するHEK293細胞を用いた。アッセイの前
日に、細胞を、10%ウシ胎仔血清、100ペニシリンストレプトマイシン単位、および
15mMのHEPESを補充したDMEM-HG中、40,000細胞/ウェルの96ウ
ェル黒壁アッセイプレートに播種した。細胞を37℃、5%COで一晩インキュベート
した。アッセイに先立ち、カルシウム5色素(Molecular Devices)を
製造元の説明書に従って再構成した。再構成された色素を、予め温めた(37℃)アッセ
イ緩衝液(1×HBSS、20mMのHEPES、2.5mMプロベネシド、pH7.4
で37℃)中に1:40で希釈した。増殖培地を除去し、細胞を100μLの予め温めた
(37℃)アッセイ緩衝液で穏やかに洗浄した。細胞を、45分間、37℃、5%CO
で、200μLの希釈カルシウム5色素中でインキュベートした。試験化合物の連続希釈
液を1%DMSO/アッセイ緩衝液中で調製し、96ウェルポリプロピレンプレートに等
分し、37℃に加温した。色素負荷インキュベーション期間後、細胞を25μLの9%D
MSO/アッセイ緩衝液で前処理し、15分間37℃でインキュベートした。前処理イン
キュベーション期間後、プレートをFlexStation(登録商標)II(Mole
cular Devices)で読み取った。FlexStation(登録商標)II
が19秒の時点(485nmでの励起、525nmでの検出)で25μLの試験化合物希
釈液を添加しながら、蛍光のカルシウム媒介変化を60秒間にわたって1.52秒ごとに
モニターした。ピーク速度論的還元(SoftMax、Molecular Devic
es)相対蛍光単位(RFU)を化合物濃度に対してプロットした。データを適切な3パ
ラメーターロジスティック曲線に適合させ、EC50値を生成した(GraphPad
Prism 6.0、GraphPad Software社、サンディエゴ、カリフォ
ルニア州)。5-HT2Bおよび5-HT2Cカルシウム動員アッセイを、安定な5-H
2Bおよび5-HT2C HEK293細胞で同じ方法で実施したが、40,000細
胞/ウェルの代わりに35,000細胞/ウェルを使用した。結果を上記の表1に示す。
【0136】
本開示は、その特徴、態様および実施形態に関して本明細書でさまざまに説明されてい
るように、特に、そのような特徴、態様および実施形態のいくつかまたは全てを含む、そ
れらからなる、または本質的になるように構成されてもよく、ならびにそれらの要素およ
び構成要素は、本開示のさまざまなさらなる実装を構成するために集約される。本開示は
、それに応じて、そのような特徴、態様および実施形態、またはそれらの選択された1つ
または複数を、さまざまな順列および組み合わせで、本開示の範囲内にあるものとして意
図している。
【0137】
本開示は、特定の態様、特徴および例示的な実施形態を参照して本明細書に記載されて
いるが、本開示の有用性はこのように限定されるものではなく、むしろ多数の他の変形、
修正および代替実施形態にまで及んでそれらを包含することは自明であり、クレームされ
た分野の当業者は思い及ぶように、そのような変形、修正および代替実施形態の全てがそ
の主旨および範囲内に含まれるものとして広く理解され、解釈されると意図される。