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特許7343658接地インピーダンスおよび不良検出システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】接地インピーダンスおよび不良検出システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20230905BHJP
   G01R 31/08 20200101ALI20230905BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/08
H02J7/00 Q
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022087030
(22)【出願日】2022-05-27
(65)【公開番号】P2023010583
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】17/372,133
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519447732
【氏名又は名称】トランスポーテーション アイピー ホールディングス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレスマン,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】バーケル,ネイル
(72)【発明者】
【氏名】クマール,アジス クッタンナイル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーデン,ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ジル,ロバート
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206281924(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0272039(US,A1)
【文献】特開2010-019603(JP,A)
【文献】特開2014-126510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01R 31/08
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリストリングと負荷とを接続するバスと、前記負荷間の接地基準と、を有する回路における地絡の場所を識別する方法であって、
前記回路の前記バスを前記接地基準に対して第1の方向にシフトさせることと、
前記バッテリストリングと前記接地基準との間の前記回路における第1のインピーダンスを判定することと、
前記回路の前記バスを前記接地基準に対して第2の方向にシフトさせることと、
前記バッテリストリングと前記接地基準との間の前記回路における第2のインピーダンスを判定することと、
前記第1のインピーダンスと前記第2のインピーダンスとの間の関係に基づいて、前記地絡の場所および/または重大度を識別することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記バスが、前記バッテリストリングの正極端部と前記負荷との間に配設された正極側スイッチを閉じることによって、前記接地基準に対して前記第1の方向にシフトされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バスが、前記バッテリストリングの負極端部と前記負荷との間に配設された負極側スイッチを閉じることによって、前記接地基準に対して前記第2の方向にシフトされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インピーダンスが、電圧増幅器、発光ダイオード、またはグリッド抵抗のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
バッテリセルを識別することが、
測定された前記第1のインピーダンスと前記バッテリセルの電圧との間の第1の関係を識別することと、
判定された前記第2のインピーダンスと前記バッテリセルの前記電圧との間の第2の関係を識別することと、
前記バッテリセルのうちのどれが前記第1の関係および前記第2の関係に関連付けられているかを判定することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の関係および前記第2の関係の各々が、異なる関係の異なるセットに含まれ、前記異なる関係の各々が、前記バッテリセルの異なるセルに関連付けられている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記異なるセットの各々における前記異なる関係が、交差する死角で互いに交差し、前記バスを前記第1の方向または前記第2の方向にシフトすることが、前記交差する死角を変化させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記バスが、第1のコンタクタによって前記バッテリストリングを充電する電源と、第2のコンタクタによって前記バッテリストリングにより電力供給される負荷と、に結合されており、前記バスを前記第1の方向にシフトさせることと、前記第1のインピーダンスを判定することと、前記バスを前記第2の方向にシフトさせることと、前記第2のインピーダンスを判定することと、が、前記第1のコンタクタおよび前記第2のコンタクタの両方が開いている間に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バスが、第1のコンタクタによって前記バッテリストリングを充電する電源と、第2のコンタクタによって前記バッテリストリングにより電力供給される負荷と、に結合されており、
前記バッテリストリングの正極端部と前記負荷との間に配設された正極側スイッチと、前記バッテリストリングの負極端部と前記負荷との間に配設された負極側スイッチと、を開くことであって、前記第1のコンタクタおよび前記第2のコンタクタが開いている間に、前記正極側スイッチおよび前記負極側スイッチが開かれる、開くことと、
前記正極側スイッチおよび前記負極側スイッチが開いている間に、前記負荷における第3のインピーダンスを判定することによって、前記バスが前記第1の方向または前記第2の方向にシフトされているかどうかを判定することであって、前記第3のインピーダンスが、前記第1のコンタクタおよび前記第2のコンタクタが開いている間に測定される、判定することと、
前記第3のインピーダンスに基づいて前記バスがシフトされたことを判定することに応答して、前記第1のコンタクタまたは前記第2のコンタクタのいずれかが閉じることを防ぐことと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記回路が、いくつかの回路のうちの第1の回路であり、前記バスを前記第1の方向にシフトさせることと、前記第1のインピーダンスを判定することと、前記バスを前記第2の方向にシフトさせることと、前記第2のインピーダンスを判定することと、が、前記回路の異なるセットに対して同時に実行され、前記セット内の前記回路のうちのいずれかに前記地絡が存在するかどうかを判定する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バスが、抵抗器と前記負荷との間の1つ以上のスイッチを閉じることによって、前記接地基準に対して前記第1の方向および前記第2の方向にシフトされる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
オペレータにバッテリセルが前記地絡を有することを通知する、アラートを生成することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記バスが、前記バッテリストリングと結合されたインバータを作動させるか、または前記接地基準を基準とする抵抗器および追加の回路を前記バスに結合するかのうちの1つ以上によって、前記接地基準に対して前記第1の方向および前記第2の方向にシフトされる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
システムであって、
バッテリストリングと負荷とを接続するバスと、前記負荷間の接地基準と、を有する回路における地絡の場所を識別するように構成されたコントローラを備え、前記コントローラが、前記回路の前記バスを前記接地基準に対して第1の方向にシフトさせることと、前記バッテリストリングと前記接地基準との間の前記回路における第1のインピーダンスを判定することと、前記回路の前記バスを前記接地基準に対して第2の方向にシフトさせることと、前記バッテリストリングと前記接地基準との間の前記回路における第2のインピーダンスを判定することと、前記第1のインピーダンスと前記第2のインピーダンスとの間の関係に基づいて、前記バッテリストリング内のいくつかのバッテリセルのうちのバッテリセルを前記地絡を有するものとして識別することと、によって、前記地絡の前記場所を識別するように構成されている、システム。
【請求項15】
前記コントローラが、前記バッテリストリングの正極端部と前記負荷との間に配設された正極側スイッチを閉じることによって、前記バスを前記接地基準に対して前記第1の方向にシフトさせるように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラが、前記バッテリストリングの負極端部と前記負荷との間に配設された負極側スイッチを閉じることによって、前記バスを前記接地基準に対して前記第2の方向にシフトさせるように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記バスが、前記バスがシフトされている間、前記接地基準に対して中心に置かれない、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記地絡を有するバッテリセルを前記負荷から非アクティブ化するまたは切断することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の主題は、エネルギー貯蔵システム内の地絡の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の考察
様々なエネルギー貯蔵システムが、電力供給システムの1つ以上の構成要素に電力を供給するために、バッテリ内に貯蔵された電気エネルギーを使用し得る。エネルギー貯蔵システムでは、地絡が発生する機会が多い場合がある。エネルギー貯蔵装置およびシステムは、より生産性の高いものになってきており、それはより多くの潜在的な故障点を生み出す可能性がある。さらに、エネルギー貯蔵装置は、より安全性が重要な用途(高速での自動運転車など)で使用されており、これらの装置の電圧は増加し続けており、地絡のリスクを増加させている。第2のまたは追加の地絡は、エネルギー貯蔵システムに弊害または惨事をもたらす可能性があるため、できるだけ早く地絡を検出することが望ましい。
【0003】
いくつかの既知の地絡検出システムは、地絡を検出するために甚大な機器および/または専用のパッシブ回路を追加する必要がある。どちらも、エネルギー貯蔵システムとパッケージ化するための高いコストおよび余分な構成要素につながり得る。また、他のシステムは、地絡障害が検出されない可能性のある死角を有し得る。
【0004】
したがって、甚大な機器または専用のパッシブ回路の追加を必要としない、エネルギー貯蔵システムにおいて地絡を検出するシステムおよび方法の必要性が存在する。
【0005】
簡単な説明
一実施形態では、バッテリストリングと負荷とを接続するバスと、負荷間の接地基準と、を有する回路内の地絡の場所および/または大きさを識別する方法が提供される。方法は、回路のバスを接地基準に対して第1の方向にシフトさせることと、バッテリストリングと接地基準との間のバスにおける第1のインピーダンスを判定することと、回路のバスを接地基準に対して第2の方向にシフトさせることと、バッテリストリングと接地基準との間のバスにおける第2のインピーダンスを判定することと、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの間の関係に基づいて、地絡の場所および/または重大度を識別することと、を含むことができる。
【0006】
一実施形態では、2つ以上のバッテリセルを有する少なくとも1つのバッテリストリングと結合されたインバータを作動させることを含む別の方法が提供される。インバータが、第1の周波数で作動され、第1の電流を少なくとも1つのバッテリストリングに送るか、または第1の電流を少なくとも1つのバッテリストリングから引き出すか、のうちの1つ以上を行う。この方法はまた、少なくとも1つのバッテリストリングに送られる、または少なくとも1つのバッテリストリングから引き出される、第1の電流を判定することと、インバータを第2の周波数で作動させて、少なくとも1つのバッテリストリングに第2の電流を送るか、または少なくとも1つのバッテリストリングから第2の電流を引き出すか、のうちの1つ以上を行うことと、少なくとも1つのバッテリストリングに送られる、または少なくとも1つのバッテリストリングから引き出される、第2の電流を判定することと、インピーダンスならびに測定された第1の電流および第2の電流からのインピーダンスの位相角を判定することと、少なくとも1つのバッテリストリングおよびインバータを有する回路における絶縁不良を識別することであって、絶縁不良が、閾値を超える位相角、または時間に関連して変化する位相角に応答して識別される、識別することと、を含む。
【0007】
一実施形態では、システム(例えば、接地インピーダンスおよび不良検出システム)が提供され、システムは、バッテリストリングと負荷とを接続するバスと、負荷間の接地基準と、を有する回路における地絡の場所を識別するように構成されたコントローラを含む。コントローラは、回路のバスを接地基準に対して第1の方向にシフトさせることと、バッテリストリングと接地基準との間のバスにおける第1のインピーダンスを判定することと、回路のバスを接地基準に対して第2の方向にシフトさせることと、バッテリストリングと接地基準との間のバスにおける第2のインピーダンスを判定することと、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの間の関係に基づいて、バッテリストリング内のいくつかのバッテリセルのうちのバッテリセルを地絡を有するものとして識別することと、によって、地絡の場所を識別するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の主題は、添付の図面を参照して、非限定的な実施形態の以下の説明を読むことから理解され得る。
【0009】
図1】接地インピーダンスおよび/または不良検出能力を有するエネルギー貯蔵システムの一例を示す。
図2】回路のストリング内の接地インピーダンスおよび/または不良の場所および/または大きさを識別する方法の一例のフローチャートを示す。
図3】スイッチが開いた状態で導電バスがシフトされている間の、バッテリストリング内の地絡の異なる重大度に関連付けられた特性関係の正のセットを示す。
図4】両方のスイッチが開いた状態でバスがシフトされている間の、ストリング内の地絡の異なる重大度に関連付けられた特性関係の負のセットを示す。
図5】バスが図3に示す特性関係の正のセットとは異なる方向にシフトされている間の、ストリング内の地絡の異なる重大度に関連付けられた特性関係の別の正のセットを示す。
図6】バスが図4に示す関係とは異なる方向にシフトされている間の、ストリング内の地絡の異なる重大度に関連付けられた特性関係の別の負のセットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載される主題の実施形態は、接地インピーダンスおよび/または不良検出能力を有するエネルギー貯蔵システム、ならびにエネルギー貯蔵システム内の地絡を検出するために使用され得る、接地インピーダンスを判定する関連する方法に関する。エネルギー貯蔵システムは、バッテリセルなどのエネルギー貯蔵装置を有し得る。システムおよび方法は、エネルギー貯蔵システムのコントローラのソフトウェアまたは他のプログラミングを変更または追加することにより、実装するのに費用対効果が高い可能性がある。エネルギー貯蔵装置は、エネルギー貯蔵装置を保護するためのスイッチのセット(コンタクタなど)を使用して、接続および/または切断することができる。エネルギー貯蔵装置は、電圧を測定する、または高電圧インジケータとして機能するなどのために、(エネルギー貯蔵装置を導電的に結合する)導電性バッテリバス上の接地基準を基準とするインピーダンスを有し得る。これらのインピーダンスは、スイッチのいずれかの側にあり、スイッチを開閉するときに接地基準をシフトさせ、またはそうでなければ移動させるために使用することができる。接地基準をシフトさせることによって、プリチャージ抵抗器、インバータ、絶縁コンタクタなどの、電力供給システム内の既存の構成要素を使用して、エネルギー貯蔵システム内の不良の可視化がもたらされる。インバータ(または同様のスイッチング構成要素)は、追加の構成要素なしでタンデルタテストなどのテストを達成するために使用することもできる。
【0011】
検出は、パッケージへの余分な構成要素、および追加の構成要素に付随する高コストの追加なく、達成することができる。他の構成要素によって占有される任意のスペースにより、貯蔵されたエネルギーのためのスペースが少なくなり、電力供給システムにおいてより多くのコストがかかる。
【0012】
一実施形態では、エネルギー貯蔵システムにおける電圧測定は、接地インピーダンスを判定するために使用され、これは、エネルギー貯蔵システム内の地絡の大きさおよび場所を検出するために使用することができる。エネルギー貯蔵システムの接地基準は、スイッチ(例えば、絶縁ストリングコンタクタ)を閉じて接地インピーダンスを判定することによってシフトすることができる。このインピーダンスが、指定された閾値インピーダンスを下回ると、地絡が検出され得る。閾値インピーダンスは、バッテリセル(例えば、セルの化学物質、セルが並列であるか直列であるか、セルの電力レベル、セルの電圧、セルの温度、セルの経年など)に基づいて変更してもよい。地絡の検出に応答して、オペレータへのアラームまたは他の通知が生成されてもよく、エネルギー貯蔵システムによって少なくとも部分的に電力を供給されている電力供給システム(例えば、車両または固定式システム)の動作が変更もしくは非アクティブ化などされてもよい。
【0013】
図1は、エネルギー貯蔵システム100の一例を示している。システムは、電力供給システム108の回路106内の電気的に制御可能なスイッチ104(例えば、スイッチ104A、104B)の状態を制御するように動作するコントローラ102を含む。回路は、回路の構成要素を互いに導電的に接続する導電バス128を含む。このバスは、1つ以上のワイヤ、トレース、またはケーブルなどを表し得る。スイッチ104Aは、このスイッチが、ストリングの正の端子、端部、または出力と回路の残りの部分との間にあるため、正極側スイッチと呼ぶことができる。スイッチ104Bは、このスイッチが、ストリングの負の端子、端部、または出力と回路の残りの部分との間にあるため、負極側スイッチと呼ぶことができる。スイッチは、コンタクタまたは他のタイプの電気スイッチであり得る。図1に示す回路の構成要素の数および/または配置は、一例として提供されるに過ぎない。追加の、またはより少ない構成要素が提供されてもよく、かつ/または構成要素は、示しているものとは異なる配置であってもよい。
【0014】
コントローラは、導電経路(例えば、ワイヤ、ケーブル、導電バス、導電トレースなど)を介して信号を送信し、かつ/または信号をスイッチに無線で送信して、どのスイッチが開いているか、どのスイッチが閉じているか、およびいつスイッチを開閉するかを制御するように動作する、1つ以上のプロセッサ(例えば、1つ以上の集積回路、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ、1つ以上のマイクロプロセッサなど)を含み、かつ/またはそれらの1つ以上のプロセッサと接続されている、ハードウェア回路を表すことができる。コントローラは、これらの信号を自動的に生成することができ、かつ/または入力(例えば、オペレータおよび/または電力供給システムから)に基づいて信号を生成することができる。
【0015】
回路は、電力供給システムの1つ以上の負荷114にエネルギー(例えば、直流)を供給して負荷に電力を供給する、バッテリセル112の1つ以上のストリング110を含む。本明細書に記載されるように、バッテリセルは、化学反応から電気エネルギーを生成することができ、かつ/または後に使用するために電気エネルギーを貯蔵することができる装置である、電気化学セルを指すことができる。セル群は、互いに並列に接続された2つ以上のバッテリセルを指すことができる。セルスタックは、互いに直列に接続された2つ以上のセル群を指すことができる。パックは、互いに直列に接続された2つ以上のセルスタックを指すことができ、任意選択で、パッケージまたはハウジング内に配設することができる。ストリングは、互いに直列に接続された2つ以上のパックを指すことができる。任意選択で、スイッチうちの1つ以上は、ストリングのうちの少なくとも1つの、サブパーツ間に配設されてもよい。例えば、正極側スイッチおよび/または負極側スイッチは、ストリング内のセル間、セル群間、セルスタック間、またはパック間に配設されてもよい。
【0016】
回路は、ストリングを負荷と結合するために開閉される充電スイッチまたはコンタクタ134と、ストリングを充電するための外部電源とストリングとを結合するために開閉される放電スイッチまたはコンタクタ136と、を含み得る。回路は、抵抗素子または負荷132をストリングおよびバスと接続または切断して、バスをプリチャージするために使用されるプリチャージスイッチまたはコンタクタ130を含むことができ、これは、充電および放電スイッチまたはコンタクタを閉じてストリングを負荷に結合する前に、ならびに/または正および負極側スイッチを閉じて外部電源(例えば、ユーティリティグリッド、発電機、発電機として動作するトラクションモータなど)をストリングに結合してストリングを充電する前に使用される。回路は、ストリングから負荷(複数可)への電流の伝導を制御するインバータ138を含むことができる。インバータは、異なる時間に始動して(例えば、閉じる)、ストリングから供給される直接電流を、負荷(複数可)に供給される交流電流に変換することができる。
【0017】
電力供給システムは、バッテリストリング内のバッテリセルに貯蔵された電気エネルギーによって少なくとも部分的に電力供給される固定式または移動式システムを表すことができる。例えば、電力供給システムのエネルギー需要の全てが、バッテリストリングによって提供されてもよいし、または電力供給システムのエネルギー需要の全てよりも少ないエネルギーが、バッテリストリングによって提供されてもよい。電力供給システムは、鉱業用車両、鉄道車両、自動車、トラック、バス、船舶、または農業用車両などの乗り物であり得る。負荷は、モータ、ランプ、プロセッサ、またはブロアなどを表すことができる。
【0018】
回路は、ストリング間の場所にインピーダンス装置118(図1の「Rvam」)によってストリングと結合された第1の接地基準接続部116(図1の「接地」)を含む。本明細書に記載の接地基準接続部は、回路とアース接地基準または別の接地基準(例えば、車体またはシャシー)とを接続する。インピーダンス装置は、回路の負荷を表すことができる。例として、インピーダンス装置は、ランプもしくは発光ダイオード、電圧増幅器、またはグリッド抵抗などを表すことができる。任意選択で、インピーダンス装置は、図1にラベル付けされた場所でインピーダンス、または電圧などを測定するセンサ(例えば、電圧計および電流計、またはRvam)を表すことができる。インピーダンス装置は、本明細書に記載されるように、装置がストリング(複数可)によって電力供給されるときにインピーダンスを測定するために使用され得る。接地基準と正極側スイッチ(またはストリングの正極端部)との間のインピーダンス装置は、正極側インピーダンス装置と呼ぶことができる。接地基準と負極側スイッチ(またはストリングの負極端部)との間のインピーダンス装置は、負極側インピーダンス装置と呼ぶことができる。
【0019】
回路は、ストリングの各々とスイッチとの間の場所に追加のインピーダンス装置によってストリングと結合された第2の接地基準接続部120を含む。第3の接地基準接続部122は、正極側スイッチとダイオード124のセットとの間の場所、および負極側スイッチと負荷(複数可)との間の別の場所に、追加のインピーダンス装置によってストリングと結合されている。1つ以上の追加の接地基準接続部126は、追加のインピーダンス装置およびダイオードのセットによってストリングと結合されている。エネルギー貯蔵システムは、任意選択で、図1に示すストリングと並列に配設された他の同等のストリングを有してもよい。これらの追加の接地基準接続部は、正極側スイッチと負荷(複数可)との間のダイオードのセットによって正極側スイッチと結合され、かつ負極側スイッチと結合されている。図1に示すものよりも1つ以上の追加のまたはより少ない接地基準接続部が提供されてもよい(図1の円によって表されているように)。
【0020】
ストリング内の地絡は、接地基準に対するストリングの正および負の電圧測定値の不一致によって明らかになる(またはより明らかになる)ようにすることができる。スイッチを閉じる前後の接地に対する(これらの測定電圧を使用して算出できる)インピーダンス、または電圧などの特性を比較することによって、地絡の大きさおよび場所を明らかにすることができる。特性の測定の間に正極側スイッチまたは負極側スイッチを閉じることによって、回路の接地基準をシフトさせて、地絡の大きさおよび場所を識別することができる。地絡の大きさは、図1に「Rfault」とラベル付けされている。
【0021】
図1に示す回路を引き続き参照して、図2は、回路のストリング内の地絡の場所および/または大きさを識別する方法200の一例のフローチャートを示している。方法は、回路および/または電力供給システムの既存の構成要素を使用して実行することができる。別の言い方をすれば、ストリング内の地絡の場所および/または大きさは、本明細書に記載の動作を実行することによるが、回路または電力供給システムに任意の新たな構成要素を追加する必要なく、識別することができる。インピーダンス装置は、車両内部のディスプレイ上のライト、動的破壊によって作り出された回生エネルギーを熱として放散させる抵抗器、または電力供給システム内に既に存在する電圧計/電流計(例えば、オペレータにストリングの電圧を表示するセンサ)などの、他の動作を実行する電力供給システムの既存の装置であり得る。スイッチは、負荷(複数可)がストリングから直接電流を受け取っているとき、ストリングの充電中のとき、などを制御するために、ストリングをバスから接続または切断するなどの、他の目的で使用される既存のスイッチまたはコンタクタであり得る。
【0022】
202において、回路のバスは、接地基準に対して第1の方向にシフトされる。このシフトは、スイッチのうちの一方を閉じ、スイッチのうちの他方を開いたままにするように変更することによって実装することができる。これは、アース接地または車両シャシー(例えば、接地基準接続部)と比較したときの、バスの電位を変化させる。シフトは、負極側スイッチを閉じたまま正極側スイッチを開くことによって、第1の方向に発生し得る。コントローラは、スイッチと(例えば、有線および/または無線接続を介して)通信して、どのスイッチが開いており、どのスイッチが閉じているかを制御することができる。
【0023】
204において、特性は、ストリングと接地基準との間で判定され得る。特性は、インピーダンス装置のうちの1つ以上によって測定される、またはインピーダンス装置(複数可)によって測定される別の特性から計算される、もしくはそうでなければ導出される、インピーダンス、または電圧などであり得る。例えば、インピーダンス装置は、ストリングと接地基準との間の電圧および/または電流を測定してもよい。この、またはこれらの測定値は、コントローラによって通信または取得することができ、コントローラは、測定された電圧および/または電流に基づいて(例えば、測定された電圧を測定された電流で割ることによって)インピーダンスを計算することができる。
【0024】
206において、回路のバスは、接地基準に対して第1の方向とは異なる第2の方向にシフトされる。このシフトは、202、204においてどのスイッチが開いているか、および202、204においてどのスイッチが閉じているかを変更することによって実装することができる。例えば、202、204において正極側スイッチが開かれ、負極側スイッチが閉じられる場合、206(および後述するように、208)において正極側スイッチが閉じられ、負極側スイッチが開かれる。逆に、202、204において正極側スイッチが閉じられ、負極側スイッチが開いている場合、206(および後述するように、208)において正極側スイッチが開いており、負極側スイッチが閉じられる。
【0025】
208において、ストリングと接地基準との間の特性が判定される。特性は、インピーダンス装置のうちの1つ以上によって測定、計算、またはそうでなければ導出されるインピーダンス、または電圧などであり得る。204で特性を判定するために使用される同じまたは異なるインピーダンス装置を使用して、208で特性を判定してもよい。
【0026】
回路のバスは、両方のスイッチが開いているとき、接地に対して中心に置かれ得る。例えば、バスは、正極側スイッチおよび負極側スイッチの両方が開いている間、いかなる電位(正または負)も有していない場合がある。または、両方のスイッチが開いているときに、バスが接地に対して中心に置かれない場合がある。バスは、正極側スイッチおよび負極側スイッチが開いている間、正または負の電位(例えば、電圧)を有し得る。いずれのシナリオでも、スイッチを開閉し、202、204、206、208に関連して上述したように特性を判定することによって、バスの電位をシフトさせることができる。
【0027】
バスのシフトは、両方のスイッチが開いている、または両方のスイッチが閉じている状態で起こり得る。例えば、202で両方のスイッチを開いてもよく、両方のスイッチが開いている間、204で特性を判定してもよい。次いで、206で一方または両方のスイッチが閉じられてもよく、一方または両方のスイッチが閉じている間、208で他の特性が判定されてもよい。別の例として、202で両方のスイッチが閉じられてもよく、両方のスイッチが閉じている間、204で特性が判定されてもよい。次いで、206で一方または両方のスイッチが開かれてもよく、一方または両方のスイッチが開いている間、208で他の特性が判定されてもよい。
【0028】
210において、地絡は、判定された特性に基づいて、または判定された特性を使用して、ストリング内で識別される。地絡は、不良の場所および/または重大度を判定することによって識別することができる。地絡の場所は、地絡を有するバッテリセル、セル群、セルスタック、またはパック(例えば、望ましくなくまたは意図せずに接地基準に接続されたセル、セル群、セルスタック、またはパック)であり得る。地絡の重大度は、地絡のインピーダンスであり得る。ストリング内の地絡の場所と接地との間の接続は、インピーダンスまたは抵抗を有し得る。この接続のインピーダンスまたは抵抗が増加すると、後続の地絡の重大度が減少する可能性がある。この接続のインピーダンスまたは抵抗が減少すると、地絡の重大度が増加する。
【0029】
図3は、両方のスイッチが開いた状態でバスがシフトされている間、ストリング内の地絡の異なる重大度に関連付けられた特性関係302A~Kの正のセット300を示している。図3に示す関係は、バスがシフトされたとき(例えば、202でシフトされ、204で測定または計算されたとき)、正極側インピーダンス装置のうちの1つ以上を使用して測定または計算される。図4は、バスが意図的に中心に置かれている間、ストリング内の地絡の異なる重大度に関連付けられた特性関係402(例えば、関係402A~K)の負のセット400の例を示している。バスは、接地の両側のインピーダンスが等しいときに意図的に中心に置かれてもよく、これはまた、接地の両側の電位が等しいことを意味することができる。あるいは、図4に示す関係の負のセットは、別の状態を表し得る(例えば、バスが意図的に中心に置かれていない場合)。図4に示す関係は、バスがシフトされたとき(例えば、202でシフトされ、204で測定または計算されたとき)、負極側インピーダンス装置のうちの1つ以上を使用して測定または計算される。各セット内の異なる関係は、ストリング内の異なる場所(例えば、異なるセル、異なるセル群、異なるセルスタック、または異なるパック)、および異なる重大度(例えば、不良の場所と接地との間の異なるインピーダンス)に関連付けられる。それぞれの場所および重大度に関連付けられた関係は、異なる場所に地絡を作り出し、正および負極側インピーダンス装置を使用して特性を測定することなどにより、実験的に判定または測定することができる。
【0030】
正極側の関係302A~Kは、正極側インピーダンス装置を使用して判定された特性の異なる値を表す水平軸304と、ストリング内の異なる場所(例えば、ストリングの異なる電位)を表す垂直軸306と、に沿って示される。ストリング内のセルは、部分的または完全に、互いに直列に接続されている場合があるため、垂直軸に沿った異なる電位は、ストリング内の異なる場所を表すことができる。負極側の関係402A~Kは、負極側インピーダンス装置を使用して判定された特性の異なる値を表す水平軸404と、上述の垂直軸306と、に沿って示される。
【0031】
(一例による)動作では、スイッチを開くことができ、正極側インピーダンス装置を使用して、バスの特性を測定または判定することができる。図示の例では、正極側インピーダンス装置は、図3に示すように、特性として400ボルトの電圧310を測定するか、または計算するために使用することができる。しかし、この単一の特性だけでは、コントローラが地絡の場所または重大度を判定するのに有用ではない場合がある。図3に示すように、400ボルトの測定された特性は、垂直軸に沿って異なる電圧で302D~Kと交差する。したがって、この単一の特性だけから、地絡の場所が、水平軸に沿った400ボルトの複数の交点および関係302D~Kに対応する垂直軸に沿った任意の値にあるかどうかは不明である。さらに、関係302A~Kは、水平軸に沿った特性値が死角において関係302A~Kの全てと交差することから、地絡の重大度が不明であり得る死角308において互いに交差する。
【0032】
同様の問題は、負極側インピーダンス装置によって測定された特性でも生じる。(一例による)動作において、スイッチを開くことができ、負極側インピーダンス装置を使用して、(図4に示すように)-850ボルトなどのバスの特性410を測定または判定することができる。しかし、この単一の特性だけでは、水平軸に沿った特性の値が、垂直軸に沿った異なる値において複数の関係402D~Kと交差するため、コントローラが地絡の場所または重大度を判定するのに有用ではない場合がある。上述したように、この単一の特性だけから、地絡の場所が、水平軸に沿った-850ボルトの複数の交点および関係402D~Kに対応する垂直軸に沿った任意の値にあるかどうかは不明である。さらに、関係402A~Kは、水平軸に沿った特性値が死角において関係402A~Kの全てと交差することから、地絡の重大度が不明であり得る死角408において互いに交差する。
【0033】
地絡の場所および重大度は、上述したように、バスをシフトさせることによって識別され得る。バスをシフトさせることによって、上述の死角の場所を移動または変更することができる。このことにより、この第2の回路が、202および204が実行されたときの状態では回路になかった新しいまたは異なるインピーダンス装置を導入するため、未知について解くために使用され得る第2の等価回路が作り出される。図5は、バスが特性関係の正のセット300とは異なる方向にシフトされている間に、ストリング内の地絡の異なる重大度に関連付けられた特性関係502A~Kの別の正のセット500を示している。例えば、関係302A~Kは、両方のスイッチを開くことによってシフトされたバスに関連付けられ得るが、関係502A~Kは、一方のスイッチを閉じ(例えば、負極側スイッチ)、他方のスイッチを開いたままにすることによってシフトされたバスに関連付けられ得る。図5に示す関係は、バスがシフトされたとき(例えば、206でシフトされ、208で測定または計算されたとき)、1つ以上の正極側インピーダンス装置を使用して測定または計算される。図5の正極側の関係502A~Kは、上述の水平軸304および垂直軸306に沿って示される。
【0034】
図6は、バスが関係402A~Kとは異なる方向にシフトされている間(例えば、負極側スイッチが閉じているが、正極側スイッチが開いたままの状態で)、ストリング内の地絡の異なる重大度に関連付けられた特性関係602A~Kの別の負のセット600を示している。図6に示す関係は、バスがシフトされたとき(例えば、206でシフトされ、208で測定または計算されたとき)、負極側インピーダンス装置のうちの1つ以上を使用して測定または計算される。各セット内の異なる関係は、ストリング内の異なる場所および異なる重大度に関連付けられている。それぞれの場所および重大度に関連付けられた関係は、異なる場所に地絡を作り出し、正および負極側インピーダンス装置を使用して特性を測定することなどにより、実験的に判定または測定することができる。負極側の関係602は、上述の水平軸404および垂直軸306に沿って示される。
【0035】
正極側インピーダンス装置を使用して400ボルトの電圧を測定または計算し(図3に示す)、負極側インピーダンス装置を使用して850ボルトの電圧を測定または計算した(図4に示す)後、正極側スイッチまたは負極側スイッチを閉じ、再度正極側インピーダンス装置を使用して電圧を測定または計算して、再度負極側インピーダンス装置を使用して電圧を測定または計算することによって、バスをシフトさせることができる。図5および図6に示す例では、正極側インピーダンス装置は、700ボルトの電圧510を測定するか、または計算するために使用され(図5に示す)、負極側インピーダンス装置は、550ボルトの電圧610を測定するか、または計算するために使用される(図6に示す)。
【0036】
バスをシフトさせる前(図3および図4)およびバスをシフトさせた後(図5および図6)に、正極側インピーダンス装置および負極側インピーダンス装置を使用して測定または計算された、全て関係302F、402Fと交差するこれらの特性(例えば、電圧310、410、510、610)は、地絡の場所および/または重大度を判定するために使用され得る。図3図6に示す例では、測定または計算された電圧310、410、510、610は全て、関係302F、402F、502F、602F(これらは全て、図3図4図5、および図6の凡例で200000とラベル付けされており、200,000オームのインピーダンスなどの短絡の大きさを示す)の、ストリング内の同じ場所(例えば、図3図6の垂直軸に沿った275ボルト)と交差する。逆に、計算または測定された電圧310、410、510、610は、任意の他の関係の、垂直軸に沿った同じ場所に交差しない。したがって、潜在的な地絡の場所は、275ボルトの電位に関連付けられたストリングにあり、潜在的な地絡の大きさは、200kオームとして識別される。潜在的な地絡の大きさが、指定されたまたはカスタマイズ可能な閾値未満である場合、コントローラは、地絡が存在すると判定することができる。
【0037】
このような地絡の検出に応答して、コントローラは、アラーム(例えば、可聴音、または点滅ライトなど)を生成または発報し、識別された不良(不良の場所および/または重大度を含む)を電力供給システムのオペレータに通知し、かつ/または不良が位置するストリングを絶縁することができる。ストリングは、ストリングの反対側のスイッチを開いてバスからストリングを切断することによって絶縁することができる。コントローラは、電力供給システムまたはエネルギー貯蔵システムの動作中に、地絡についてこのテストを1回以上実行することができる。例えば、コントローラは、バッテリストリングが充電されていない、または任意の負荷がかかっていない間に、1日1回(または頻度がより多くまたはより少なく)このテストを実行してもよい。コントローラは、負極側スイッチを閉じ(正極側スイッチが開いている間)、それから正極側スイッチを閉じる(負極側スイッチが開いている間)、一連のサイクルを繰り返すことができる。コントローラは、この一連の(a)正および負極側スイッチが開いている間(例えば、正極側スイッチがまだ開いている間に負極側スイッチを閉じてから開くまでのスイッチングの間、または負極側スイッチがまだ開いている間に正極側スイッチを閉じる前の間)、ならびに(b)負極側スイッチまたは正極側スイッチが閉じている間に、正極側インピーダンス装置および負極側インピーダンス装置を使用して取得された測定値を取得することができる。コントローラは、上述したように、これらの測定値(または特性)を使用して、地絡の場所および/または重大度を判定することができる。
【0038】
任意選択で、コントローラは、正および負極側スイッチが同時に開いている期間(一時的または短い期間であっても)を識別することによって、地絡に対するこのテストを実行することができる。コントローラは、インピーダンス装置のうちの1つ以上を使用して、バス上の電位を測定または計算することができる。バスが正または負の電位を有する場合、コントローラは、正または負極側スイッチのいずれかを閉じる必要なく、バッテリストリング内の地絡を識別することができる。コントローラは、地絡が検出されたことについてのアラームを生成または発報することができるが、地絡の場所または重大度をオペレータに通知しない場合がある。コントローラは、正および負極側スイッチを制御し開いたままにして、地絡が電力供給システムまたはエネルギー貯蔵システムの構成要素を損傷させないようにすることができる。
【0039】
エネルギー貯蔵システムは、同じ負荷のうちの1つ以上と結合されている図1に示す回路のいくつかを有してもよい。各回路は、別個のコントローラを有してもよく、または同一のコントローラを使用して、本明細書に記載の地絡テスト方法を実施してもよい。地絡について異なる回路内のストリングをテストするために必要な時間は、複数のストリングを同時に調べることによって削減され得る(例えば、地絡を有する回路が識別されるまで、各テスト反復中に回路を異なるセットとより小さなセットとに分割する)。例えば、エネルギー貯蔵システムは、第5のストリング内の未検出の地絡を伴う8つのストリングを有する場合がある。コントローラ(複数可)は、上述したように、第1から第4までのストリングに接続されたバスの電位を判定して、地絡が存在するかどうかを調べることができる。地絡が検出されない場合、コントローラ(複数可)は、第5から第8までのストリングに接続されたバスの電位を調べて、地絡が存在するかどうかを判定することができる。第5から第8までのストリング内で地絡が検出された場合、コントローラ(複数可)は、第4および第5のストリング内のバスの電位を調べて、地絡が存在するかどうかを判定することができる。地絡の存在が検出されると、コントローラ(複数可)は次いで、第4のストリングに接続されたバスの電位、および次いで第5のストリングに接続されたバスの電位を別々に調べて、地絡が第5のストリングに存在すると判定することができる。コントローラは次いで、上述したように、第5のストリングに接続されたバスをシフトさせて、第5のストリング内の地絡の場所および重大度を判定することができる。このように多くのストリングをテストすることによって、地絡を識別するために必要なテスト数を削減することができる。
【0040】
回路のバスは、(上述のように)正または負極側スイッチのうちの一方を閉じる以外の1つ以上の方法でシフトされてもよい。例えば、回路内のインバータのうちの1つ以上は、接地に対してストリングをシフトさせるために始動または閉じることができる。別の例として、プリチャージスイッチまたはコンタクタを閉じて、抵抗器および/または追加の回路をバスに接続することができる(ここで、抵抗器および/もしくは追加の回路は、接地もしくは接地基準を基準とする、または接地もしくは接地基準に接続されている)。
【0041】
検出システムは、任意選択で、回路内に既に存在する構成要素を使用してタンデルタテストを実行して、バスまたは他の導電性構成要素の周囲の絶縁体の障害または減退を識別することができる。コントローラは、第1の周波数でインバータのうちの少なくとも1つを作動させて、ストリングからの電流を伝導するか、またはストリングに電流を伝導することができる。例えば、コントローラは、インバータ内のスイッチを、第1の周波数で開放状態と閉鎖状態との間で切り替えて、電流が第1の周波数でストリングからインバータ(複数可)を通って負荷(複数可)に向かって伝導されることを可能にするか、または電流が第1の周波数でインバータ(複数可)を通ってストリングに向かって伝導されることを可能にすることができる。第1の周波数でインバータ(複数可)を作動させる(または始動させる)ことによって、正弦波形などの、インバータ(複数可)を出る電流の波形を作り出すことができる。
【0042】
インピーダンス装置のうちの1つ以上は、生成されているこの波形によってバスを通して伝導される電流を測定することができる。例えば、インピーダンス装置のうちの1つ以上は、バスを通して伝導される電流を測定する電流計を表す、または含むことができる。次いで、コントローラは、第1の周波数とは異なる第2の周波数でインバータ(複数可)を作動させることができる。第2の周波数で作動されるインバータ(複数可)は、第1の周波数で作動されたインバータ(複数可)と同じまたは異なってもよい。同じまたは他のインピーダンス装置(複数可)は、インバータ(複数可)が第2の周波数で作動している間、電流を再度測定することができる。次いで、コントローラは、(第1の周波数および第2の周波数での)電流のこれらの測定値から位相角(および任意選択でインピーダンス)を計算することができる。コントローラは、位相角を閾値と比較し、位相角が閾値を超える場合、コントローラは、絶縁体(例えば、バスおよび/またはストリングの周り)が不良となった、または保守もしくは交換が必要であると判定する。任意選択で、コントローラは、位相角を繰り返し計算して、経時的に増加している、または指定された速度を超える速度で増加している位相角に応答して(位相角がまだ閾値を超えていない場合でも)、絶縁体が不良となった、不良している、または保守もしくは交換が必要であると判定することができる。任意選択で、第1のストリングの位相角は、別のストリングの位相角と比較されてもよい。位相角が異なる場合、この差は問題(例えば、絶縁障害)を示し得る。次いで、コントローラは、(上述のように)アラームを発報し、別の装置(例えば、保守スケジューリングシステム)に信号を送信して回路の保守をスケジュールし、かつ/または(例えば、正および負極側スイッチを開くことによって)ストリングを非アクティブ化して、絶縁不良が損傷を引き起こさないようにすることができる。
【0043】
一実施形態では、バッテリストリングと負荷とを接続するバスと、負荷間の接地基準と、を有する回路内の、地絡の場所および/または大きさを識別する方法が提供される。方法は、回路のバスを接地基準に対して第1の方向にシフトさせることと、バッテリストリングと接地基準との間のバスにおける第1のインピーダンスを判定することと、回路のバスを接地基準に対して第2の方向にシフトさせることと、バッテリストリングと接地基準との間のバスにおける第2のインピーダンスを判定することと、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの間の関係に基づいて地絡の場所および/または重大度を識別することと、を含むことができる。
【0044】
バスは、バッテリストリングの正極端部と負荷との間に配設された正極側スイッチを閉じることによって、接地基準に対して第1の方向にシフトすることができる。バスは、バッテリストリングの負極端部と負荷との間に配設された負極側スイッチを閉じることによって、接地基準に対して第2の方向にシフトすることができる。インピーダンスは、電圧増幅器、発光ダイオード、またはグリッド抵抗のうちの1つ以上を含むことができる。
【0045】
バッテリセルを識別することは、測定された第1のインピーダンスとバッテリセルの電圧との間の第1の関係を識別することと、判定された第2のインピーダンスとバッテリセルの電圧との間の第2の関係を識別することと、バッテリセルのうちのどれが第1の関係および第2の関係に関連付けられているかを判定することと、を含むことができる。第1の関係および第2の関係の各々は、異なる関係の異なるセットに含まれ得、異なる関係の各々は、バッテリセルの異なるセルに関連付けられている。異なるセットの各々における異なる関係は、交差する死角で互いに交差することができ、バスを第1の方向または第2の方向にシフトすることが、交差する死角を変化させる。
【0046】
バスは、第1のコンタクタによってバッテリストリングを充電する電源と、第2のコンタクタによってバッテリストリングにより電力供給される負荷と、に結合され得る。バスを第1の方向にシフトさせることと、第1のインピーダンスを判定することと、バスを第2の方向にシフトさせることと、第2のインピーダンスを判定することと、は、第1のコンタクタおよび第2のコンタクタの両方が開いている間に起こり得る。
【0047】
バスは、第1のコンタクタによってバッテリストリングを充電する電源と、第2のコンタクタによってバッテリストリングにより電力供給される負荷と、に結合され得る。方法はまた、バッテリストリングの正極端部と負荷との間に配設された正極側スイッチと、バッテリストリングの負極端部と負荷との間に配設された負極側スイッチと、を開くことを含むことができる。第1のコンタクタおよび第2のコンタクタが開いている間に、正極側スイッチおよび負極側スイッチを開くことができる。方法はまた、正極側スイッチおよび負極側スイッチが開いている間に負荷における第3のインピーダンスを判定することによって、バスが第1の方向または第2の方向にシフトされているかどうかを判定することを含み得、第3のインピーダンスは、第1のコンタクタおよび第2のコンタクタが開いている間に測定され、第3のインピーダンスに基づいてバスがシフトされたことを判定することに応答して、第1のコンタクタまたは第2のコンタクタのいずれかが閉じることを防ぐ。回路は、いくつかの回路のうちの第1の回路であり得、バスを第1の方向にシフトさせることと、第1のインピーダンスを判定することと、バスを第2の方向にシフトさせることと、第2のインピーダンスを判定することと、が、回路の異なるセットに対して同時に実行され、セット内の回路のいずれかに地絡が存在するかどうかを判定することができる。バスは、抵抗器と負荷との間の1つ以上のスイッチを閉じることによって、接地基準に対して第1の方向および第2の方向にシフトすることができる。
【0048】
方法はまた、オペレータにバッテリセルが地絡を有することを通知する、アラートを生成すること、かつ/または地絡を有するバッテリセルを負荷から非アクティブ化するまたは切断することと、のうちの1つ以上を含むことができる。
【0049】
バスは、バッテリストリングと結合されたインバータを作動させること、かつ/または接地基準を基準とする抵抗器および追加の回路をバスに結合することと、のうちの1つ以上によって、接地基準に対して第1の方向および第2の方向にシフトされ得る。
【0050】
一実施形態では、2つ以上のバッテリセルを有する少なくとも1つのバッテリストリングと結合されたインバータを作動させることを含む、別の方法が提供される。インバータは、第1の周波数で作動され、第1の電流を少なくとも1つのバッテリストリングに送るか、または第1の電流を少なくとも1つのバッテリストリングから引き出すか、のうちの1つ以上を行う。この方法はまた、少なくとも1つのバッテリストリングに送られる、または少なくとも1つのバッテリストリングから引き出される第1の電流を判定することと、インバータを第2の周波数で作動させて、少なくとも1つのバッテリストリングに第2の電流を送るか、または少なくとも1つのバッテリストリングから第2の電流を引き出すか、のうちの1つ以上を行うことと、少なくとも1つのバッテリストリングに送られる、または少なくとも1つのバッテリストリングから引き出される第2の電流を判定することと、インピーダンスならびに測定された第1の電流および第2の電流からのインピーダンスの位相角を判定することと、少なくとも1つのバッテリストリングおよびインバータを有する回路における絶縁不良を識別することであって、絶縁不良が、閾値を超える位相角、または時間に関連して変化する位相角に応答して識別される、識別することと、を含む。方法はまた、絶縁不良を識別することに応答して、回路の保守をスケジュールすること、または少なくとも1つのバッテリストリングを非アクティブ化すること、を含むことができる。
【0051】
一実施形態では、システム(例えば、接地インピーダンスおよび不良検出システム)が提供され、システムは、バッテリストリングと負荷とを接続するバスと、負荷間の接地基準と、を有する回路における地絡の場所を識別するように構成されたコントローラを含む。コントローラは、回路のバスを接地基準に対して第1の方向にシフトさせることと、バッテリストリングと接地基準との間のバスにおける第1のインピーダンスを判定することと、回路のバスを接地基準に対して第2の方向にシフトさせることと、バッテリストリングと接地基準との間のバスにおける第2のインピーダンスを判定することと、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの間の関係に基づいて、バッテリストリング内のいくつかのバッテリセルのうちのバッテリセルを地絡を有するものとして識別することと、によって地絡の場所を識別するように構成されている。
【0052】
コントローラは、バッテリストリングの正極端部と負荷との間に配設された正極側スイッチを閉じることによって、バスを接地基準に対して第1の方向にシフトさせるように構成され得る。コントローラは、バッテリストリングの負極端部と負荷との間に配設された負極側スイッチを閉じることによって、バスを接地基準に対して第2の方向にシフトさせるように構成され得る。バスは、バスがシフトされている間、接地基準に対して中心に置かれない場合がある。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「プロセッサ」および「コンピュータ」、ならびに関連する用語、例えば、「処理装置」、「コンピューティング装置」、および「コントローラ」は、コンピュータとして当該技術分野で言及されるそれらの集積回路だけに限定されないが、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブル論理コントローラ(PLC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ、およびアプリケーション固有の集積回路、ならびに他のプログラマブル回路を指し得る。好適なメモリは、例えば、コンピュータ可読媒体を含み得る。コンピュータ可読媒体は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリなどのコンピュータ可読不揮発性媒体であり得る。「非一時的コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールおよびサブモジュール、または任意の装置内の他のデータなどの情報の短期および長期記憶のために実装される有形のコンピュータベースの装置を表す。したがって、本明細書に記載される方法は、記憶装置および/またはメモリ装置を含むが、これらに限定されない、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体に具現化される実行可能命令として符号化され得る。そのような命令は、プロセッサによって遂行されると、プロセッサに、本明細書に記載される方法の少なくとも一部を実行させる。このように、この用語は、揮発性および不揮発性媒体、ならびにファームウェア、物理的および仮想記憶、CD-ROM、DVD、ならびにネットワークまたはインターネットなどの他のデジタルソースなどのリムーバブルおよび非リムーバブル媒体を含むが、これらに限定されない、非一時的なコンピュータ記憶装置を含むが、これらに限定されない、有形のコンピュータ可読媒体を含む。
【0054】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数形の参照を含む。「任意選択の」または「任意選択的に」は、続いて記載される事象または状況が生じ得るか、または生じ得ず、その記載が、その事象が生じる場合と生じない場合とを含み得ることを意味する。本明細書および特許請求の範囲全体を通してここで使用される近似言語は、それが関連し得る基本機能の変更をもたらすことなく許容可能で変化し得る任意の定量的表現を修正するために適用され得る。したがって、「約」、「実質的に」、および「およそ」などの用語または複数の用語によって修飾される値は、指定された正確な値に限定され得ない。少なくともいくつかの場合では、近似言語は、値を測定するための器具の精度に対応し得る。ここで、ならびに本明細書および特許請求の範囲を通して、範囲制限は組み合わされ得、かつ/または交換され得、そのような範囲は識別され得、文脈または言語が別途指示しない限り、その中に含まれる全てのサブ範囲を含み得る。
【0055】
この書面による説明は、実施例を使用して、最良の態様を含む実施形態を開示し、かつ当業者が、任意のデバイスまたはシステムの製造および使用ならびに任意の組み込まれた方法の実行を含む実施形態を実践することを可能にする。特許請求の範囲は、本開示の特許可能な範囲を定義し、当業者に生じる他の例を含む。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文字通りの言語と差異のない構造的要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文字通りの言語と実体なく異なる同等の構造的要素を含む場合、特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【0056】
以下の条項は、本明細書に記載される主題の1つ以上の発明的な態様を列挙する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6