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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】測量システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20230905BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 103A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022114423
(22)【出願日】2022-07-18
(62)【分割の表示】P 2018132983の分割
【原出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2022141815
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 清泰
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0019101(US,A1)
【文献】特許第6201252(JP,B1)
【文献】特開2012-053004(JP,A)
【文献】特開2015-078849(JP,A)
【文献】特開2017-158532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光をスキャンし点群データを取得するレーザスキャナと、測距光を反射するターゲットを有するターゲット装置とを具備し、該ターゲット装置は、ポールと該ポールに設けられ、測距光を反射するターゲットとを有し、該ターゲットは前記ポールの軸心を中心とした回転体の形状を有すると共に既知の曲面を有し、該曲面は前記軸心上の一点を基準点として有し、該基準点とポール下端との距離が既知であり、前記レーザスキャナは、測距光を射出し、反射光を受光して測距を行う測距部と、測距光を2次元に偏向可能な測距光偏向部と、該測距光偏向部を制御する演算制御部とを具備し、該演算制御部は、前記測距光偏向部により前記ターゲットの表面、及び該ターゲットの上下のポール部分を通過する様測距光をスキャンし、前記ターゲットの表面のスキャンで得られる点群データに基づき前記ターゲット表面の曲面を演算し、該曲面に基づき基準点を求め、該基準点を測距し、前記上下のポール部分で得られる点群データに基づき前記ポールの傾斜角、傾斜方向を演算し、前記基準点の測距結果と前記ポールの傾斜角、傾斜方向と前記基準点とポール下端との距離に基づき前記ポール下端の3次元座標を演算する様構成され
更に前記演算制御部は、前記測距光偏向部により前記測距光を8の字スキャンパターンでスキャンする様構成された測量システム。
【請求項2】
測距光をスキャンし点群データを取得するレーザスキャナと、測距光を反射するターゲットを有するターゲット装置とを具備し、該ターゲット装置は、ポールと該ポールに設けられ、測距光を反射するターゲットとを有し、該ターゲットは前記ポールの軸心を中心とした回転体の形状を有すると共に既知の曲面を有し、該曲面は前記軸心上の一点を基準点として有し、該基準点とポール下端との距離が既知であり、前記レーザスキャナは、測距光を射出し、反射光を受光して測距を行う測距部と、測距光を2次元に偏向可能な測距光偏向部と、該測距光偏向部を制御する演算制御部とを具備し、該演算制御部は、前記測距光偏向部により前記ターゲットの表面、及び該ターゲットの上下のポール部分を通過する様測距光をスキャンし、前記ターゲットの表面のスキャンで得られる点群データに基づき前記ターゲット表面の曲面を演算し、該曲面に基づき基準点を求め、該基準点を測距し、前記上下のポール部分で得られる点群データに基づき前記ポールの傾斜角、傾斜方向を演算し、前記基準点の測距結果と前記ポールの傾斜角、傾斜方向と前記基準点とポール下端との距離に基づき前記ポール下端の3次元座標を演算する様構成され
前記ターゲットは、底面で合体する上下2つの円錐台で構成された測量システム。
【請求項3】
測距光をスキャンし点群データを取得するレーザスキャナと、測距光を反射するターゲットを有するターゲット装置とを具備し、該ターゲット装置は、ポールと該ポールに設けられ、測距光を反射するターゲットとを有し、該ターゲットは前記ポールの軸心を中心とした回転体の形状を有すると共に既知の曲面を有し、該曲面は前記軸心上の一点を基準点として有し、該基準点とポール下端との距離が既知であり、前記レーザスキャナは、測距光を射出し、反射光を受光して測距を行う測距部と、測距光を2次元に偏向可能な測距光偏向部と、該測距光偏向部を制御する演算制御部とを具備し、該演算制御部は、前記測距光偏向部により前記ターゲットの表面、及び該ターゲットの上下のポール部分を通過する様測距光をスキャンし、前記ターゲットの表面のスキャンで得られる点群データに基づき前記ターゲット表面の曲面を演算し、該曲面に基づき基準点を求め、該基準点を測距し、前記上下のポール部分で得られる点群データに基づき前記ポールの傾斜角、傾斜方向を演算し、前記基準点の測距結果と前記ポールの傾斜角、傾斜方向と前記基準点とポール下端との距離に基づき前記ポール下端の3次元座標を演算する様構成され
前記ターゲットは、上面で合体する上下2つの円錐台で構成された測量システム。
【請求項4】
前記ターゲットは、円錐台で構成される請求項1に記載の測量システム。
【請求項5】
前記ターゲットは、球体で構成される請求項1に記載の測量システム。
【請求項6】
前記ターゲットは、上円錐台の円錐角と下円錐台の円錐角が異る様構成された請求項2又は請求項3に記載の測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はターゲットの向きを気にすることなくオフセット観測が可能な測量システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定対象の形状測定を行う測定装置としてレーザスキャナがある。通常、レーザスキャナは測距光であるレーザ光線を鉛直方向に回転照射しつつ、更に水平回転することで全周囲の点群データを取得する。
【0003】
又、ターゲットを測定点に設置しターゲットを測定し、測定点のオフセット観測が行われるが、オフセット観測の場合、通常はターゲットを視準し、測定を行うトータルステーションが用いられている。又、トータルステーションでは厳密な視準が要求されていた。
【0004】
従って、形状測定を行う場合と、オフセット観測を行う場合、或は複数の測定点について測定が要求される場合は、レーザスキャナとトータルステーションの2つの測量機を準備する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-151422号公報
【文献】特開2016-151423号公報
【文献】特開2016-161411号公報
【文献】特開2017-106813号公報
【文献】特開2017-96629号公報
【文献】特開2015-230229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、レーザスキャナによりオフセット観測を可能とした測量システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、測距光をスキャンし点群データを取得するレーザスキャナと、測距光を反射するターゲットを有するターゲット装置とを具備し、該ターゲット装置は、ポールと該ポールに設けられ、測距光を反射するターゲットとを有し、該ターゲットは前記ポールの軸心を中心とした回転体の形状を有すると共に既知の曲面を有し、該曲面は前記軸心上の一点を基準点として有し、該基準点とポール下端との距離が既知であり、前記レーザスキャナは、測距光を射出し、反射光を受光して測距を行う測距部と、測距光を2次元に偏向可能な測距光偏向部と、該測距光偏向部を制御する演算制御部とを具備し、該演算制御部は、前記測距光偏向部により前記ターゲットの表面、及び該ターゲットの上下のポール部分を通過する様測距光をスキャンし、前記ターゲットの表面のスキャンで得られる点群データに基づき前記ターゲット表面の曲面を演算し、該曲面に基づき基準点を求め、該基準点を測距し、前記上下のポール部分で得られる点群データに基づき前記ポールの傾斜角、傾斜方向を演算し、前記基準点の測距結果と前記ポールの傾斜角、傾斜方向と前記基準点とポール下端との距離に基づき前記ポール下端の3次元座標を演算する様構成された測量システムに係るものである。
【0008】
又本発明は、前記演算制御部は、前記測距光偏向部により前記測距光を8の字スキャンパターンでスキャンする様構成された測量システムに係るものである。
【0009】
又本発明は、前記ターゲットは、底面で合体する上下2つの円錐台で構成される測量システムに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記ターゲットは、上面で合体する上下2つの円錐台で構成される測量システムに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記ターゲットは、円錐台で構成される測量システムに係るものである。
【0012】
又本発明は、前記ターゲットは、球体で構成される測量システムに係るものである。
【0013】
更に又本発明は、前記ターゲットは、上円錐台の円錐角と下円錐台の円錐角が異る様構成された測量システムに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測距光をスキャンし点群データを取得するレーザスキャナと、測距光を反射するターゲットを有するターゲット装置とを具備し、該ターゲット装置は、ポールと該ポールに設けられ、測距光を反射するターゲットとを有し、該ターゲットは前記ポールの軸心を中心とした回転体の形状を有すると共に既知の曲面を有し、該曲面は前記軸心上の一点を基準点として有し、該基準点とポール下端との距離が既知であり、前記レーザスキャナは、測距光を射出し、反射光を受光して測距を行う測距部と、測距光を2次元に偏向可能な測距光偏向部と、該測距光偏向部を制御する演算制御部とを具備し、該演算制御部は、前記測距光偏向部により前記ターゲットの表面、及び該ターゲットの上下のポール部分を通過する様測距光をスキャンし、前記ターゲットの表面のスキャンで得られる点群データに基づき前記ターゲット表面の曲面を演算し、該曲面に基づき基準点を求め、該基準点を測距し、前記上下のポール部分で得られる点群データに基づき前記ポールの傾斜角、傾斜方向を演算し、前記基準点の測距結果と前記ポールの傾斜角、傾斜方向と前記基準点とポール下端との距離に基づき前記ポール下端の3次元座標を演算する様構成されたので、レーザスキャナによるオフセット観測が可能となり、又スキャン軌跡が前記ターゲット及び前記ポールのターゲットの上下部分を通過する様測距光をスキャンし、前記ターゲット及び前記ポールからの反射光を受光することで、厳密な視準を必要とせず前記ポール下端の3次元座標測定作業が可能であるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施例に係るシステム概略図である。
図2】(A)(B)は、第1の実施例に於けるターゲットとスキャンパターンとの関係を示す説明図である。
図3】(A)(B)は、第1の実施例のターゲットの変形例を示す図である。
図4】第2の実施例に係るターゲットとスキャンパターンとの関係を示す説明図である。
図5】(A)(B)は、第3の実施例に係るターゲットとスキャンパターンとの関係を示す説明図である。
図6】(A)(B)は、第4の実施例に係るターゲットとスキャンパターンとの関係を示す説明図である。
図7】スキャンパターンの一例である8の字スキャンパターンを示す図である。
図8】該8の字スキャンパターンを用いたオフセット観測の概略説明図である。
図9】(A)は該8の字スキャンパターンを用いた詳細説明図であり、(B)は点群データと直接フィッティングの関係を示す図である。
図10】点群データと断面形状のパターンフィッティングの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る第1の実施例を示す概略図である。
【0018】
図1中、1は本実施例に係る測量システムを示し、2は該測量システムに用いられるターゲット装置、3はレーザスキャナを示している。
【0019】
先ず、前記ターゲット装置2について説明する。
【0020】
該ターゲット装置2は、下端が測定点Pを指示する様に尖端となったポール5と、該ポール5の所定位置に設けられたターゲット6とを有している。
【0021】
前記ターゲット6は、3角形を前記ポール5の軸心8を中心に回転させて得られる回転体であり、前記ターゲット6を上下にポール5が貫通している。従って、前記ターゲット6は、2つの円錐台を底面を境界に上下に合体させた形状を有している。又、前記ターゲット6は上下の中心位置に最大径となる稜線7を有し、該稜線7の直径Dは既知となっている。前記2つの円錐台は、既知の形状を有し、円錐台を構成する上円錐曲面16a(図2参照)、下円錐曲面16b(図2参照)は既知の曲面となっている。又、前記軸心8は前記上円錐曲面16aの底面(又は下円錐曲面16bの底面)の中心を垂直に通過する。この底面の中心は、前記ターゲット6の中心となると共に前記ターゲット6の基準点となる。
【0022】
尚、前記上円錐曲面16aと前記下円錐曲面16bの円錐角を異なる角度とすれば、前記上円錐曲面16a、前記下円錐曲面16bの曲面の相違を判別することで、前記ターゲット6の上下の判別が可能となる。尚、以下の説明では前記上円錐曲面16a、前記下円錐曲面16bを同一曲面としている。
【0023】
又、前記ターゲット6の中心(基準点)は、前記軸心8上にあり、ポール5の下端から前記ターゲット6の基準点迄の距離Lは、既知となっている。
【0024】
前記ターゲット6の表面は、前記レーザスキャナ3からの測距光を反射する様、反射率の高い白色とするか、或は更に、反射率の高い反射シートで覆われていることが好ましい。
【0025】
又、前記ポール5の前記ターゲット6から上下に延びる所要範囲が、前記ターゲット6と同様白色であるか、或は反射シートで覆われている。尚、前記ポール5の全長を白色、或は反射シートとしてもよい。
【0026】
前記レーザスキャナ3は、2次元の局所スキャン(2次元局所スキャン)を行う機能を有し、更に円スキャンも実行できる機能を有するレーザスキャナが用いられる。
【0027】
尚、レーザスキャナ3としては、特許文献4或は特許文献5に示されるレーザスキャナを用いることができる。
【0028】
該レーザスキャナ3について略述すると、該レーザスキャナ3は主に、演算制御部11、測距部12、測距光偏向部13を有している。
【0029】
前記測距部12は、パルス光、或は特許文献3に示される断続変調光(即ち、バースト光)を測距光15として射出し、前記ターゲット6で反射された反射測距光を受光し、測距光の発光タイミングと受光タイミングの時間差と、光速に基づき測定対象迄の距離を測定する。前記測距部12は、光波距離計(EDM)として機能する。前記測距光15は、可視光又は不可視光のいずれでもよい。
【0030】
前記測距光偏向部13に於いて、2次元スキャンしている状態でのスキャン中心をスキャン中心光軸とする。前記測距光偏向部13は、前記スキャン中心光軸に対して測距光を2軸(水平/鉛直)に偏向し、所要のパターンで測距光をスキャンする機能を有する。尚、前記測距光偏向部13による偏向作用がない状態での光軸を基準光軸Rとする。
【0031】
尚、前記測距光偏向部13として、特許文献1に示される測量装置が有する一対の円板の光学プリズムで構成される光軸偏向ユニットを用いることができる。或は、前記測距光偏向部13として、2軸ガルバノミラーを用いた偏向手段を用いることもできる。
【0032】
尚、2軸ガルバノミラーを用いた偏向手段については、例えば、特許文献6に示されている。
【0033】
前記演算制御部11は、主にCPU、記憶部、入出力制御部等を有し、前記測距部12を制御して測距を行うと共に、前記測距光偏向部13を制御して、測距光を水平、鉛直の2軸に偏向し、所要のパターンで測距光を2次元にスキャンさせる。
【0034】
尚、スキャンの2次元パターンとしては、例えば円パターンがある。円パターンを実行する場合、前記演算制御部11は、基準光軸Rに対して任意の偏角で、前記基準光軸Rを中心に測距光を回転することで、円スキャンが実行される。又、その他、2次元スキャンとしては、例えば、図7に示される8の字スキャンパターン9が実行される。尚、スキャンパターンについては、円パターン、楕円パターン、螺旋パターン等、任意のパターンが選択可能である。
【0035】
更に、スキャン実行中、パルス毎に測距が行われ、パターン軌跡に沿って点群データが取得される。尚、図1中、前記ターゲット6上の破線の点は、測定点を示している。
【0036】
以下、図1に於ける前記ターゲット装置2により、オフセット観測をする場合について説明する。
【0037】
先ず、前記ターゲット装置2が鉛直、又は略鉛直の状態で支持されている場合を説明する。
【0038】
前記レーザスキャナ3を前記ターゲット装置2に向け、所要の範囲で局所スキャンを実行し、スキャン軌跡が前記ターゲット6を上下に横切る状態を実現させる。即ち、スキャン軌跡aが前記ターゲット6の前記上円錐曲面16aと前記下円錐曲面16bとを横切る状態を実現させる。
【0039】
図2(A)、図2(B)は、前記ターゲット6とスキャン軌跡17との関係を示している。図2(A)、図2(B)中、前記スキャン軌跡17上の…は、パルス光の照射点、即ち測定点を示している。前記スキャン軌跡17に沿って点群データ17aが取得される。又、図2(A)で示されるスキャンパターンは、前記ターゲット6上(前記上円錐曲面16a、前記下円錐曲面16b上)で交点が形成されるパターンとなっている。
【0040】
以下、図1図2(A)、図2(B)を参照して作用を説明する。又、以下の説明では測距光15を可視光として説明する。
【0041】
前記ターゲット装置2を測定点Pに立設する。
【0042】
前記レーザスキャナ3を前記ターゲット装置2に向ける。所定の2次元スキャンパターンを選択して、スキャンを開始する。スキャン最初は、2次元スキャンパターンの中心が前記基準光軸Rとし、前記測距光偏向部13が持つ最大偏角の範囲で測距光15をスキャンさせる。又、スキャン最初は、高速でスキャン可能な2次元スキャンが好ましく、例えば円スキャンa(図1参照)が選択される。
【0043】
スキャンパターンを同一形状に維持しつつ、偏角の範囲を縮小していく。前記ターゲット装置2からの反射光が得られると、反射光に基づき測定点(測距光が照射された点)の測距値、測角値が取得される。この測距値、測角値がスキャンパターンの中心となる様に、スキャン中心光軸を前記基準光軸Rに対して偏向する。又、測距値、測角値が複数得られる場合は、その平均値にスキャン中心光軸を偏向する。
【0044】
更に、スキャンパターンの範囲(大きさ)を、前記ターゲット6が含まれる程度に縮小する。
【0045】
スキャンパターンを上下に移動し、測距値が急激に変化する部分を探索する。
【0046】
測距値が急激に変化する部分が探索されると、その部分が前記ターゲット6であると判断される。本実施例に於いては、前記ターゲット6を探索できたときが、前記ターゲット6を視準した状態として差支えない。従って、前記ターゲット6を視準する場合に、前記スキャン中心光軸が前記ターゲット6の中心に合致していなくてもよい。
【0047】
前記スキャン中心光軸を固定し、前記ターゲット6を通過する軌跡上の点群データを取得する。
【0048】
前記演算制御部11は、前記点群データの測距値に、既知の曲面である前記上円錐曲面16a、前記下円錐曲面16bをフィッティングし、それぞれの母線(図2(B)に見られる上下の傾斜線)及び前記稜線7を求める。更に、前記演算制御部11は、該稜線7から前記上円錐曲面16a(又は下円錐曲面16b)の底面を求め、底面中心(基準点)を演算し、更に底面の傾斜角、傾斜方向を演算する。更に、前記演算制御部11は、底面の傾斜角、傾斜方向から前記軸心8の傾斜角、傾斜方向を演算する。
【0049】
前記演算制御部11は、前記レーザスキャナ3から前記ターゲット6の基準点迄の距離を前記測距値、前記ターゲット6の稜線7の直径に基づき演算する。更に、前記レーザスキャナ3から前記ターゲット6中心迄の距離と、前記ポール5の下端から前記ターゲット6の基準点迄の距離と、前記軸心8の傾斜、傾斜方向に基づき測定点Pの位置を演算する。
【0050】
前記ターゲット6は、前記軸心8を中心とする回転体の形状であるので、前記軸心8を中心とする360゜の方向から、即ち任意の方向から前記ターゲット6の測定(オフセット観測)を行うことができる。
【0051】
尚、前記ターゲット6の上下の判断は、前記上円錐曲面16aと前記下円錐曲面16bの形状を異ならせることで可能である。
【0052】
更に前記ポール5の上部5a(図8参照)と下部5b(図8参照)の直径を異ならせ、スキャン軌跡17が前記上部5aと前記下部5bを通過した時の測距値で判断してもよい。又、前記上部5aの直径と前記下部5bの直径とを既知としておけば、スキャン軌跡17が前記上部5aの直径と前記下部5bのいずれか一方を通過すれば、前記ターゲット装置2の上下判断が可能である。
【0053】
尚、前記ポール5の軸心8の傾斜、傾斜方向の測定については、前記円スキャンaより大径の円スキャンbを実行することで求めてもよい。該円スキャンbは、前記ターゲット6に掛らない大径とし、前記円スキャンbは前記ターゲット6の上方、下方で前記ポール5を横切る様に設定される。
【0054】
前記円スキャンbが前記ポール5を横切る際の点群データから、前記軸心8の上下2点の3次元座標を求め、該2点の3次元座標で前記軸心8の傾斜、傾斜方向を測定する。
【0055】
図3(A)、図3(B)は、図2(A)、図2(B)で示したターゲット装置2の変形例を示している。尚、図3(A)、図3(B)中、図2(A)、図2(B)中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0056】
図3の変形例のターゲット6′は、図2で示されるターゲット6の稜線7の保護の為、稜線部7aを切除している。
【0057】
前記ターゲット6′では、上円錐曲面16a、下円錐曲面16bの延長によって仮想の稜線7が設定され、該稜線7の直径も既知とされる。
【0058】
前記ターゲット6′についての測定については、前記ターゲット6と同様であるので説明を省略する。
【0059】
図4は、ターゲットの第2の実施例を示している。
【0060】
第2の実施例に於けるターゲット18について説明する。
【0061】
尚、図4中、図2(A)、図2(B)中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0062】
該ターゲット18は、2つの円錐台を上面を境界に上下に合体させた形状を有している。又、前記ターゲット18は上下の中心位置(中間位置)に最小径となる凹稜線7′を有し、該凹稜線7′の直径Dは既知となっている。前記ターゲット18の場合、前記円錐台の上面の中心が前記ターゲット18の基準点となる。
【0063】
前記2つの円錐台は、既知の形状を有し、円錐台を構成する上円錐曲面18a、下円錐曲面18bは既知の曲面となっている。又、ポール5の軸心8は前記上円錐曲面18aの上面(又は下円錐曲面18bの上面)の中心、即ち前記ターゲット18の中心を垂直に通過する。
【0064】
尚、前記上円錐曲面18aと前記下円錐曲面18bの円錐角を異なる角度とすれば、前記上円錐曲面18a、前記下円錐曲面18bの曲面の相違を判別することで、前記ターゲット18の上下の判別が可能となる。尚、以下の説明では前記上円錐曲面18a、前記下円錐曲面18bは同一曲面としている。
【0065】
又、前記ターゲット18の中心(基準点)は、前記軸心8上にあり、ポール5の下端から前記ターゲット6の基準点迄の距離は、既知となっている。
【0066】
前記ターゲット18の表面は、前記レーザスキャナ3からの測距光を反射する様、反射率の高い白色とするか、或は更に、反射率の高い反射シートで覆われていることが好ましい。
【0067】
第2の実施例に於いても、前記上円錐曲面18a、前記下円錐曲面18bを通過するスキャン軌跡17上の点群データ17aから前記上円錐曲面18a、前記下円錐曲面18bが演算され、更に前記凹稜線7′、該凹稜線7′が形成する円(上面)が求められ、円の中心から前記ターゲット18の基準点の位置、更に前記円の傾斜から前記ポール5の軸心8の傾斜角、傾斜方向が求められる。
【0068】
而して、前記レーザスキャナ3から前記ターゲット18中心迄の距離(図1参照)と、前記ポール5の下端から前記ターゲット18の基準点迄の距離と、前記軸心8の傾斜、傾斜方向に基づき測定点Pの位置が演算される。
【0069】
図5(A)、図5(B)はターゲットの第3の実施例を示している。
【0070】
第3の実施例に示されるターゲット19は、球体となっている。該球体の中心はポール5の軸心8上に有り、中心とポール5下端との距離は既知となっている。球体の場合、基準点は球体の中心となる。
【0071】
該ターゲット19を通過するスキャン軌跡17上の点群データ17aに基づき前記ターゲット19の球面が演算され、球面から球面の中心、即ち前記ターゲット19の中心の位置が演算される。中心の位置に基づき測定点Pのオフセット観測が実行される。
【0072】
図6(A)、図6(B)はターゲットの第4の実施例を示している。
【0073】
ターゲット20は、円錐形状となっている。尚、図6では倒立円錐形が示されているが、正立円錐形でも同様である。該ターゲット20自身は、中心点をもっていないが、形状によって観測点を示すことができる。
【0074】
円錐形(ターゲット20)の軸心とポール5の軸心とは合致している。又、円錐形の底面とポール5の軸心8とは直交し、底面(円)の直径と円錐の頂角は既知となっている。従って、円錐曲面20aも既知の曲面となっている。
【0075】
円錐形の軸心と前記ポール5の軸心8とは合致していることから、円錐形の頂点は前記軸心8上に位置する。前記ターゲット20を有するターゲット装置2では、円錐形の頂点Qの位置をターゲット装置2の観測点とし、前記頂点Qと前記ポール5の下端との距離を既知の値とする。前記ターゲット20の場合、前記頂点Qが基準点となり、該頂点Qは前記円錐曲面20aによって特定される。
【0076】
第4の実施例に於いて、前記円錐曲面20a上を通過するスキャン軌跡17で得られる点群データ17aより、前記円錐曲面20aが演算され、更に該円錐曲面20aの頂点Qの位置が演算される。
【0077】
又、該円錐曲面20aが演算されることで円錐の軸心が求められ、その際軸心(即ち、前記ポール5の軸心8)の傾斜角、傾斜方向も演算される。
【0078】
第4の実施例に於いても、前記円錐曲面20a上での点群データ17aが取得できればよいので、スキャン中心光軸を厳密に前記ターゲット20に合致させる必要はない。即ち、厳密に視準しなくてもよい。
【0079】
従って、前記ターゲット20をレーザスキャナ3による視準状態とし、前記ターゲット20をスキャンし、点群データ17aを取得する。点群データ17aによって前記円錐曲面20aが演算され、該円錐曲面20aによって頂点Qが特定される。前記頂点Qを求め、更に軸心8の傾斜角、傾斜方向を求めることで、測定点Pのオフセット観測が行える。
【0080】
尚、前記測距光偏向部13が、前記ポール5の任意の2点を通過する様、測距光をスキャンさせ、前記2点の測距値を得ることで、より簡単に且つ高精度に前記軸心8の傾斜角、傾斜方向を演算することができる。
【0081】
図8は、図7で示した8の字スキャンパターン9を選択して、ターゲット6についてオフセット観測をした場合を示している。
【0082】
前記8の字スキャンパターン9の交点9aが前記ターゲット6上に位置する様に視準する。
【0083】
前記8の字スキャンパターン9を実行することで、前記ターゲット6についての点群データが取得できると共に前記ポール5の2点(上部5a及び下部5b)の測距データが得られ、頂点Qと前記ポール5の傾斜角、傾斜方向が得られ、測定点Pのオフセット観測が行える。
【0084】
前記8の字スキャンパターン9による測定点Pのオフセット観測について、図9図10に於いて、更に説明する。
【0085】
前記8の字スキャンパターン9が前記ポール5の上下2箇所を横切ることで、上下2箇所の前記ポール5についての点群データが取得でき、この点群データから前記軸心8の上下2点8a,8bの3次元データが取得できる。更に、この2点8a,8bの3次元座標から前記軸心8の傾斜、傾斜方向が測定できる。
【0086】
従って、前記ターゲット6を通過する前記8の字スキャンパターン9で取得される点群データ22を前記軸心8からの距離に換算できる。この点群データ22に直線フィッティングすることで稜線7が得られる(図9(B)参照)。この稜線7の半径(D/2)は、前記ターゲット6の半径(D/2)であり、既知の値となる。
【0087】
該稜線7を含み前記軸心8に直交する平面と前記軸心8との交点が、ターゲット装置2の基準位置となる。従って、点群データ22の測距値から基準位置の3次元座標が求まる。更に、この基準位置とポール5下端との距離Lは既知であり、基準位置の3次元座標、前記軸心8の傾斜、傾斜方向から測定点Pのオフセット観測が行える。
【0088】
図10は、点群データ22に対する直線フィッティングに代え、前記ターゲット6の断面形状と点群データ22とのマッチングを行い基準位置を求める様にしたものである。
【0089】
前記ターゲット6の半断面形状をマッチングパターン23として用意し、点群データ22を取得した後、前記マッチングパターン23を前記軸心8に沿って上下させることでマッチング位置を検出する。マッチング後、前記マッチングパターン23の頂点を通過する垂線と前記軸心8との交点が基準点となる。
【0090】
前記マッチングパターン23を全ての点群データ22に同時にマッチングさせるので、点群データ22のバラツキの影響が少なく、容易に且つ精度よくマッチングが可能となる。
【0091】
尚、前記ターゲットの形状については、上記した形状に限定されることはなく、軸心方向に沿って径が変化する回転体の既知の形状であればよい。
【符号の説明】
【0092】
1 測量システム
2 ターゲット装置
3 レーザスキャナ
5 ポール
6 ターゲット
7 稜線
8 軸心
11 演算制御部
12 測距部
13 測距光偏向部
17 スキャン軌跡
18 ターゲット
19 ターゲット
20 ターゲット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10