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特許7343683シリル変性ポリマーシーラント用安定剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】シリル変性ポリマーシーラント用安定剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 15/22 20060101AFI20230905BHJP
   C09K 15/08 20060101ALI20230905BHJP
   C09K 15/30 20060101ALI20230905BHJP
   C08L 101/10 20060101ALI20230905BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230905BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20230905BHJP
   C08K 5/134 20060101ALI20230905BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C09K15/22
C09K15/08
C09K15/30
C08L101/10
C08L71/02
C08K5/20
C08K5/134
C08K5/3435
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022500545
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2020069511
(87)【国際公開番号】W WO2021005201
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】19185580.8
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(73)【特許権者】
【識別番号】518453383
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】デラ・ジャン-イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ディ・リージオ・アントーニオ
(72)【発明者】
【氏名】カヌニ・ムフシン
(72)【発明者】
【氏名】バッティスティ・アンドレーア
(72)【発明者】
【氏名】グラッシーニ・ダヴィード
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-506055(JP,A)
【文献】特表2013-535535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む安定剤組成物:
(A)成分AとしてのUV吸収剤、ここで、UV吸収剤Aは、式(I)に従う1種または複数のオキサルアニリド系化合物から構成される
【化1】
[式中、
およびRは、互いに独立して、水素、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、1~20個の炭素原子と1~4個の酸素原子とを有するアルコキシ基から選択される];
(B)成分Bとしてのヒンダードアミン系光安定剤、
(C)成分Cとしての酸化防止剤、ここで酸化防止剤Cは、式(III)aおよび/または(III)bに従う1種または複数のフェノール系化合物から構成される:
【化2】
[式中、
およびRは、互いに独立して、水素、ハロゲンまたは1~10個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;
は、水素または1~10個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;
は、ヒドロキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、1~4個のアルキル炭素原子を有するフェニルアルコキシ基、5~8個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、または式(III)cの基から選択され
【化3】
(式中、ZおよびZは、互いに独立して、水素、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基および5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基から選択される);
Xは、-O-(CH-O-;-(OCH-CH-O-;-O-(CH-S-(CH-O;-NH-(CH-NH-;-NH-NH-から(qは1~12の整数である)、または基
【化4】
から選択され;
pは、ゼロまたは1~6の整数である];
(D)任意選択的に、成分Dとしての少なくとも1種の希釈剤、および
(E)任意選択的に、成分Eとしての少なくとも1種のさらに別の添加剤。
【請求項2】
以下を含む、請求項1に記載の安定剤組成物:
(A)安定剤組成物全体を基準として、10~89重量%のUV吸収剤A;
(B)安定剤組成物全体を基準として、10~89重量%のヒンダードアミン系光安定剤B;
(C)安定剤組成物全体を基準として、1~80重量%の酸化防止剤C;
(D)任意選択的に、安定剤組成物全体を基準として、0~50重量%の少なくとも1種の希釈剤D;
(E)任意選択的に、安定剤組成物全体を基準として、0~10重量%の少なくとも1種のさらに別の添加剤E。
【請求項3】
以下を含む、請求項1または2に記載の安定剤組成物:
(A)安定剤組成物全体を基準として、20~79重量%のUV吸収剤A;
(B)安定剤組成物全体を基準として、20~79重量%のヒンダードアミン系光安定剤B;
(C)安定剤組成物全体を基準として、1~60重量%の酸化防止剤C。
【請求項4】
以下を含む、請求項1または2に記載の安定剤組成物:
(A)安定剤組成物全体を基準として、20~69重量%のUV吸収剤A;
(B)安定剤組成物全体を基準として、20~69重量%のヒンダードアミン系光安定剤B;
(C)安定剤組成物全体を基準として、10~59重量%の酸化防止剤C;
(D)安定剤組成物全体を基準として、1~30重量%の少なくとも1種の希釈剤D。
【請求項5】
UV吸収剤Aが、以下の式(I)-1~(I)-7の化合物から選択される1種または複数のオキサルアニリド系化合物から構成される、請求項1~4のいずれか1つに記載の安定剤組成物:
【化5】
【請求項6】
ヒンダードアミン系光安定剤Bが、成分Bを基準として、65~95重量%の少なくとも1種の式(II)aの化合物、成分Bを基準として、5~35重量%の少なくとも1種の式(II)bの化合物、および成分Bを基準として、0~10重量%の少なくとも1種の式(II)cの化合物から構成される、請求項1~5のいずれか1つに記載の安定剤組成物:
【化6】
[式中、
nおよびmは、互いに独立して、0~100の数であり、ただし、nおよびmが両方とも0ではないことを条件とし;
は、水素、5~7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、または1~12個の炭素原子を有するアルキル基であり;
およびRは、互いに独立して、水素、1~18個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるか、またはそれらを連結する炭素原子と一緒に5~13員環であるか、またはそれらを連結する炭素原子と一緒に式(II)dの基であり
【化7】
(式中、Rは上記で定義したとおりである);そして
およびRは、互いに独立して、水素、1~22個の炭素原子を有するアルキル基、酸素ラジカルO、-OH、-NO、-CHCN、ベンジル、アリル、1~30個の炭素原子を有するアルキルオキシ基、5~12個の炭素原子を有するシクロアルキルオキシ基、アリール基がさらに置換されていてもよい6~10個の炭素原子を有するアリールオキシ基、アリール基がさらに置換されていてもよい7~20個の炭素原子を有するアリールアルキルオキシ基、3~10個の炭素原子を有するアルケニル基、3~6個の炭素原子を有するアルキニル基、1~10個の炭素原子を有するアシル基、ハロゲン、非置換フェニルまたはC~C-アルキル置換フェニルから選択される]。
【請求項7】
ヒンダードアミン系光安定剤Bが、式(II)aおよび(II)b、および任意選択的に(II)cの化合物から構成され、
式中、nおよびmは、互いに独立して、0~5の数であり、ただし、nおよびmが両方とも0ではないことを条件とし;
は、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり;
およびRは、それらを連結する炭素原子と一緒に6~12員のシクロアルキル環であるか、またはそれらを連結する炭素原子と一緒に式(II)dの基であり;
およびRは、互いに独立して、水素、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、1~6個の炭素原子を有するアルキルオキシ基、5~6個の炭素原子を有するシクロアルキルオキシ基、および1~4個の炭素原子を有するアシル基から選択される、
請求項6に記載の安定剤組成物。
【請求項8】
酸化防止剤Cが、式(III)bのフェノール系化合物であって、同式中、
およびRは、互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する分岐状アルキル基から選択され;
は、水素または1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;
Xは、-O-(CH-O-(qは、2~4の整数である)であり;そして
pは、1~4の整数である、
前記化合物を含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の安定剤組成物
【請求項9】
UV吸収剤Aが、式(I)-1
【化8】
のオキサルアニリド系化合物を含み、そして
酸化防止剤Cが、フェノール系化合物であるビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-フェニル)ブタン酸)-グリコールエステルを含む、
請求項1~8のいずれか1つに記載の安定剤組成物。
【請求項10】
成分A、B、C、および任意選択的にDおよび/またはEが混合される、請求項1~9のいずれか1つに記載の安定剤組成物を製造するための方法。
【請求項11】
シリル変性ポリマーをベースとするシーラントまたは接着剤における安定剤としての、請求項1~9のいずれか1つに記載の安定剤組成物の使用。
【請求項12】
以下を含むポリマー組成物:
(P)シリル変性ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーP;
(S)以下から構成される安定剤組み合わせS
UV吸収剤A;
ヒンダードアミン系光安定剤B;および
酸化防止剤C;
(ここで、成分A、BおよびCは請求項1~9において定義されるとおりである);
(F)任意選択的に、少なくとも1種のフィラーF;
(G)任意選択的に、少なくとも1種のさらに別の添加剤G。
【請求項13】
以下を含む、請求項12に記載のポリマー組成物:
(P)ポリマー組成物全体を基準として、5~99重量%の、シリル変性ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーP;
(S)以下から構成される安定剤組み合わせS
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%のUV吸収剤A;
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%のヒンダードアミン系光安定剤B;および
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%の酸化防止剤C;
(F)任意選択的に、ポリマー組成物全体を基準として、0~85重量%の少なくとも1種のフィラーF;
(G)任意選択的に、ポリマー組成物全体を基準として、0~35重量%の少なくとも1種のさらに別の添加剤G。
【請求項14】
以下を含む、請求項12または13に記載のポリマー組成物:
(P)ポリマー組成物全体を基準として、7.5~95重量%の、シリル変性ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーP;
(S)以下から構成される安定剤組み合わせS
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%のUV吸収剤A;
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%のヒンダードアミン系光安定剤B;および
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%の酸化防止剤C;
(F)ポリマー組成物全体を基準として、1~80重量%の少なくとも1種のフィラーF;
(G1)ポリマー組成物全体を基準として、1~25重量%の、さらに別の添加剤G1としての少なくとも1種の可塑剤;
(G2)ポリマー組成物全体を基準として、1~10重量%の、さらに別の添加剤G2としての少なくとも1種の接着促進剤;
(G3)ポリマー組成物全体を基準として、0.01~3重量%の、さらに別の添加剤G3しての少なくとも1種の触媒;
(G)および任意選択的に、ポリマー組成物全体を基準として、0~10重量%の、G1~G3とは異なる少なくとも1種のさらに別の添加剤G。
【請求項15】
シリル変性ポリマーPが、以下の式(P-II)のシリル変性ポリエーテルから選択される、請求項12~14のいずれか1つに記載のポリマー組成物:
【化9】
[式中、
、QおよびQは、互いに独立して、1~40個の炭素原子を有するアルキル基、1~10個の炭素原子を有するアルキルオキシ(alkyoxy)基から選択され、ただし、Q、QおよびQのうちの少なくとも1つは架橋性加水分解性シリル基であることを条件とし、
そして、nおよびnは、互いに独立して、0~1000の整数であり、ただし、n+nは少なくとも50であることを条件とする]。
【請求項16】
UV吸収剤Aが、式(I)-1
【化10】
のオキサルアニリド系化合物を含み、そして
酸化防止剤Cが、フェノール系化合物であるビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-フェニル)ブタン酸)-グリコールエステルを含む、
請求項12~15のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のオキサルアニリド系UV吸収剤、少なくとも1種のヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤、および任意選択的にさらに別の成分を含む安定剤組成物に向けられる。前記安定剤組成物は、好ましくは、シリル変性ポリマー(SMP)をベースとするシーラントまたは接着剤に使用される。本発明はまた、オキサルアニリド系UV吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)およびフェノール系酸化防止剤の新規安定剤組み合わせを含む、シリル変性ポリマー(SMP)をベースとするポリマー組成物を扱う。
【0002】
さらに、本発明は、前記安定剤組成物を製造するための方法、ならびにSMPシーラントおよび接着剤における熱および/またはUV安定剤としてのこれらの安定剤組成物の使用に向けられる。
【背景技術】
【0003】
シリル変性ポリマー(SMP)、例えばシリル変性ポリエーテル(MSポリマーとしても知られている)、シリル変性ポリウレタン(SPURポリマーとしても知られている)、およびシリル変性アクリルポリマー、ならびに、それらの例えば建築および建設産業におけるシーラントおよび接着剤としての使用は、長年にわたって知られている。例えば、US2002/198308(特許文献1)、US6,077,896(特許文献2)、EP-A1288247(特許文献3)およびUS2003/0105261(特許文献4)を参照されたい。市販のSMP製品の例としては、Kaneka MS Polymers(登録商標)(例えばMS Polymer(登録商標)S203H、MS Polymer(登録商標)S303H)、またはEvonikからのPolymers STが挙げられる。広範囲のMS Polymer(登録商標)グレードが市販されており、これらは、広範囲の粘性範囲において、官能化の程度(主鎖に結合した基の数および性質)および主鎖構造が異なる。
【0004】
そのようなシリル変性ポリマーは、湿気硬化性1Kまたは2Kシーラントまたは接着剤組成物の基礎とすることができ、そのような組成物は、実質的に湿気を含まない状態で貯蔵することができ、そして、大気条件に曝されると、表面から急速に硬化を受ける。典型的には、SMPシーラントは液体またはゲル状態から弾性固体まで硬化し、ここで、硬化はシリル基の加水分解および架橋反応によるポリマー鎖の架橋を伴う。
【0005】
シリル変性ポリマー(SMP)は、例えば、長年にわたり、建築および建設産業、航空宇宙産業、自動車産業、海洋産業および他の関連産業の用途において、シーラントおよび接着剤の両方として使用されている。これらの製品は、典型的には、(イソ)シアネートおよび溶媒不含であり、良好な特性、例えば広範囲の基材材料上への接着、限定された表面処理での接着の優れた耐久性、ならびに良好な温度およびUV安定性を示す。典型的には、SMPシーラントの重要な特徴は、それらが極めて可撓性であり、塗装可能であることである。
【0006】
SMPシーラントおよび接着剤の安定性、特にそれらの耐候性および/または熱安定性を、異なる安定剤、例えば酸化防止剤、UV安定剤およびHALSの添加によって改善することが知られている。
【0007】
WO2016/081823(特許文献5)には、有機材料をUV光および熱分解から保護するための安定剤組成物が記載されている。前記安定剤組成物は、オルトヒドロキシフェニルトリアジン化合物、オルトヒドロキシベンゾフェノン化合物、オルトヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール(orthohydroxyphenyl benzotriaziole)化合物およびベンゾオキサジノン化合物から選択されるUV吸収剤、共活性剤(例えば、C12-C60アルコール、脂肪酸エステル、およびそれらのアルコキシル化誘導体から選択される)、ならびにヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を含む。
【0008】
文献US2010/0087576(特許文献6)には、オキサルアニリドUV安定剤を含む湿気硬化性有機ケイ素組成物が記載されている。さらに、シリル変性ポリマーシーラントにおけるUV吸収剤およびヒンダードアミン系光安定剤の組み合わせは、例えば、JP2010/248408(特許文献7)およびCN107892900(特許文献8)に記載されている。
【0009】
文献CN106833479(特許文献9)は、熱安定剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤および酸化防止剤を含む自動車用シランポリエーテルシーラントを開示している。
【0010】
文献JP2010/270241(特許文献10)には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤およびUV吸収剤を含む安定剤を含有するシリコーンフォームが記載されている。
【0011】
WO2012/010570(特許文献11)は、シーラント(例えば、シラン末端化ポリエーテルをベースとするシーラント)のための添加剤組み合わせを教示しており、この添加剤組み合わせは、少なくとも2種の異なる立体障害性アミン、例えば、Tinuvin(登録商標)622およびTinuvin(登録商標)144、ならびにUV吸収剤、例えば、Tinuvin(登録商標)312を含む。
【0012】
現在、ヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール型UV吸収剤との組み合わせが、光および熱安定化のためにSMPシーラント産業において頻繁に使用されている。しばしば、HALSであるビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート(bis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinyl) sebacat)(CAS-No.52829-07-9)とUV吸収剤である2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(CAS-No.3896-11-5)との組み合わせが、光および熱安定化を付与するために使用される。さらに、オキサルアニリド系UV吸収剤と塩基性HALS安定剤とのブレンドである安定剤Tinuvin(登録商標)5866が、SMP組成物において頻繁に使用される。不利な点として、これらの安定剤は、Classification, Labelling and Packaging of Chemical Substances(化学物質の分類、表示および包装)に関する現在のEU規則により危険有害性として分類される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】US2002/198308
【文献】US6,077,896
【文献】EP-A1288247
【文献】US2003/0105261
【文献】WO2016/081823
【文献】US2010/0087576
【文献】JP2010/248408
【文献】CN107892900
【文献】CN106833479
【文献】JP2010/270241
【文献】WO2012/010570
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
改善された耐熱性および耐候性を有し、初期の黄変(yellowing)(これはポリマーとの混合(例えばカートリッジにおける)後、硬化ステップの前の黄変を意味する)を引き起こさず、危険有害性の化合物を含まず、熱処理後に、安定化SMP組成物の色の損傷を引き起こさず、最後にSMPシーラントの性能、例えば、機械的特性、耐薬品性、接着性およびレオロジー特性を損なわない、SMPシーラントのための新規かつ改善された安定剤組み合わせを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことに、少なくとも1種のオキサルアニリド系UV吸収剤、少なくとも1種の選択されたヒンダードアミン系光安定剤(HALS)および少なくとも1種の選択されたフェノール系酸化防止剤の安定剤の組み合わせ、特に相乗的な安定剤の組み合わせが、SMPシーラントの固有の有利な特性に影響を及ぼすことなく、光および熱安定化の領域において顕著な改善を提供することが見出された。
【0016】
発明の説明
本発明は、以下を含む(または好ましくは以下からなる)安定剤組成物に向けられている:
(A)成分AとしてのUV吸収剤、ここで、UV吸収剤Aは、式(I)に従う1種または複数のオキサルアニリド系化合物から構成される
【0017】
【化1】
[式中、
およびRは、互いに独立して、水素、1~20個、好ましくは2~12個の炭素原子を有するアルキル基、1~20個、好ましくは2~12個の炭素原子および1~4個、好ましくは1~2個の酸素原子(アルコキシ基(単数または複数)の酸素原子)を有するアルコキシ基から選択される];
(B)成分Bとしてのヒンダードアミン系光安定剤;
(C)成分Cとしての酸化防止剤、ここで酸化防止剤Cは、式(III)aおよび/または(III)bに従う1種または複数のフェノール系化合物から構成される:
【0018】
【化2】
[式中、
およびRは、互いに独立して、水素、ハロゲンまたは1~10個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;
は、水素または1~10個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;
は、ヒドロキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、1~4個のアルキル炭素原子を有するフェニルアルコキシ基、5~8個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、または式(III)cの基から選択され
【0019】
【化3】
(式中、ZおよびZは、互いに独立して、水素、1~18個を有するアルキル基、フェニル基および5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基から選択される);
Xは、-O-(CH-O-;-(OCH-CH-O-;-O-(CH-S-(CH-O;-NH-(CH-NH-;-NH-NH-から(qは1~12の整数である)、または基
【0020】
【化4】
から選択され;そして
pはゼロまたは1~6、好ましくは1~4の整数である];
(D)任意選択的に、成分Dとしての少なくとも1種の希釈剤、および
(E)任意選択的に、成分Eとしての少なくとも1種のさらに別の添加剤。
【0021】
本発明の安定剤組成物は、有利には、シリル変性ポリマー、例えばシリル変性ポリエーテルに基づくシーラントおよび接着剤において使用することができる。前記安定剤組成物は、標準的な安定化(例えば、Tinuvin(登録商標)5866)と比較して、改善されたUV及び熱安定性をもたらし、SMPシーラントの初期黄変を防止する。さらに、本発明の安定剤組成物は、安定化されたSMP組成物の熱処理後に、色(例えばCIE表色系に基づく)の損傷を引き起こさない。好ましくは、安定化されたSMP組成物の機械的特性は等しいかまたは改善される。
【0022】
好ましくは、本発明の安定剤組成物は、化学物質の分類、表示および包装(Classification, Labeling and Packaging of Chemical Substances:CLP)に関する現在のEU規則に従って危険有害性として分類する必要がない。特に、前記規則は、指令67/548/EEC及び指令1999/45/ECを改正および廃止し、規則(EC)第1907/2006号を改正する、物質及び混合物の分類、表示及び包装に関する2008年12月16日の欧州議会及び理事会の規則(EC)第1272/2008号に記載されているように、適用される。
【0023】
本発明の安定剤組成物は、固体組成物の形態、特に粉末形態であってもよく、好ましくは固体希釈剤D(例えば炭酸カルシウム)が使用されてよい。さらに、本発明の安定剤組成物は、液体組成物、例えば溶液、分散液、エマルション、懸濁液、またはペースト、好ましくは懸濁液の形態であってもよい。特に、前記安定剤組成物は、液体希釈剤Dが使用される場合、および/または成分A、B、CおよびEの1つまたは複数が液体形態である場合、液体形態である。
【0024】
本発明の目的のために、語句「アルキル」は、線状直鎖または分枝状アルキルを含む。直鎖C1~C20アルキル、特に直鎖C1~C18アルキル、好ましくは直鎖C1~C12-アルキルおよび分岐状C3~C20アルキル、特に分岐状C3~C18アルキル、好ましくは分岐状C3~C12アルキルが好ましい。アルキル基の例としては、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、1-メチルブチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、2,3-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、n-ヘプチル、n-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチル-ペンチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシルおよびn-エイコシルが挙げられる。
【0025】
本発明の目的のために、語句「アルコキシ」は、酸素原子を介して結合したアルキル基であり、ここで、アルキル基の炭素鎖は、1個または複数の、好ましくは1~3個の非隣接ヘテロ原子-O-によって中断され得る。上記のアルキル基が好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ、1,1-ジメチルエトキシ、n-ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシまたは1-エチル-2-メチルプロポキシ、ヘキソキシ、基-(OC-(OC-H(式中、uおよびvは、互いに独立して、0~19、好ましくは0~12の数であり、ただし、u+vは1~20、好ましくは2~12である)が挙げられる。
【0026】
安定剤組成物
好ましい実施態様では、前記安定剤組成物は以下を含む(または好ましくは以下からなる):
(A)安定剤組成物全体を基準として、10~89重量%、好ましくは20~78重量%、より好ましくは30~50重量%の、UV吸収剤A;
(B)安定剤組成物全体を基準として、10~89重量%、好ましくは20~78重量%、より好ましくは25~50重量の、ヒンダードアミン系光安定剤B;
(C)安定剤組成物全体を基準として、1~80重量%、好ましくは2~60重量%、より好ましくは5~40重量%の、酸化防止剤C;
(D)任意選択的に、安定剤組成物全体を基準として、0~50重量%、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0~20重量%の、少なくとも1種の希釈剤D;
(E)任意選択的に、安定剤組成物全体を基準として、0~10重量%、好ましくは0~5重量%、より好ましくは0~2重量%の、少なくとも1種のさらに別の添加剤E。
【0027】
任意成分Dおよび/またはEが存在する場合、成分Aの量は、量の合計が100重量%であるように、または100重量を超えないように適合され得る。
【0028】
好ましくは、UV吸収剤Aおよびヒンダードアミン系光安定剤Bは、本発明の安定剤組成物中に、10:1~1:10、好ましくは5:1~2:1、より好ましくは1:1~1.5:1の範囲のA:Bの重量比で存在する。
【0029】
好ましくは、UV吸収剤Aおよび酸化防止剤Cは、本発明の安定剤組成物中に、10:1~1:5、好ましくは8:1~1.5:1、より好ましくは5:1~1:1の範囲のA:Cの重量比で存在する。
【0030】
好ましい実施態様において、本発明の安定剤組成物は以下を含む(または好ましくは以下からなる):
(A)安定剤組成物全体を基準として、20~79重量%、より好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~46重量%の、UV吸収剤A;
(B)安定剤組成物全体を基準として、20~79重量%、より好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~46重量の、ヒンダードアミン系光安定剤B;
(C)安定剤組成物全体を基準として、1~60重量%、好ましくは5~40重量%、より好ましくは8~20重量%の、酸化防止剤C。
【0031】
別の好ましい実施態様において、本発明の安定剤組成物は以下を含む(または好ましくは以下からなる):
(A)安定剤組成物全体を基準として、20~69重量%、より好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~45重量%の、UV吸収剤A;
(B)安定剤組成物全体を基準として、20~69重量%、より好ましくは20~50重量%、より好ましくは25~35重量の、ヒンダードアミン系光安定剤B;
(C)安定剤組成物全体を基準として、10~59重量%、好ましくは10~40重量%、より好ましくは10~30重量%の、酸化防止剤C;
(D)安定剤組成物全体を基準として、1~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%の、好ましくは炭酸カルシウムから選択される、少なくとも1種の希釈剤D。
【0032】
別の好ましい実施態様において、本発明の安定剤組成物は等量の成分A、BおよびCを含む(または好ましくはそれらからなる)。
【0033】
UV吸収剤(成分A)
本発明の安定剤組成物は、成分AとしてのUV吸収剤を含み、前記UV吸収剤は、オキサルアニリド(N,N’ジフェニルシュウ酸ジアミド,CAS-No.620-81-5)またはその誘導体である1種または複数のオキサルアニリド系化合物から構成される。好ましくは、UV吸収剤成分Aは、ヒドロキシ置換オキサルアニリド系化合物を含まない。
【0034】
好ましくは、UV吸収剤Aは、安定剤組成物全体を基準として、10~89重量%、好ましくは20~78重量%、より好ましくは30~50重量%、また好ましくは35~46重量%の量で存在する。
【0035】
UV吸収剤Aは、式(I)に従う1種または複数のオキサルアニリド系化合物から構成される
【0036】
【化5】
[式中、
およびRは、互いに独立して、水素、1~20個、好ましくは2~12個の炭素原子を有するアルキル基、1~20個、好ましくは2~12個の炭素原子および1~4個、好ましくは1~2個の酸素原子(すなわち、アルコキシ酸素原子)を有するアルコキシ基から選択される。]
置換基Rおよび/またはRは、好ましくは、オルトおよび/またはパラ位にある。好ましくは、各環上の1つの置換基RまたはRは水素である。好ましくは、各環上の1つの置換基RまたはRは水素であり、水素ではない置換基RまたはRは、各環上でオルト位にある。
【0037】
好ましい実施態様において、一方の環上の1つの置換基RまたはRは、1~20個、好ましくは2~12個、より好ましくは2~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、そして他方の環上の1つの置換基RまたはRは、1~20個、好ましくは2~12個の炭素原子および1~4個、好ましくは1~2個の酸素原子を有するアルコキシ基である。より好ましくは、一方の環上の1つの置換基RまたはRはメチル、エチルまたはプロピル、より好ましくはエチルであり、そして他方の環上の1つの置換基RまたはRはC~Cアルコキシ基、より好ましくは-OCHCHである。
【0038】
好ましいUV吸収剤Aは、以下の式(I)-1~(I)-7の化合物から選択される1種または複数のオキサルアニリド系化合物から構成される:
【0039】
【化6】
好ましい実施態様において、UV吸収剤Aは上記のオキサルアニリド系化合物のうちの1つから構成される。
【0040】
好ましくは、UV吸収剤Aは、上記のような式(I)-1に従うオキサルアニリド系化合物(N-(2-エトキシフェニル)-N’-(2-エチルフェニル)-エチレンジアミド;2-エチル-2’-エトキシ-オキサルアニリド、CAS-No.23949-66-8)を含む(またはそれから構成される)。
【0041】
UV吸収剤成分Aの好ましい実施態様は、US5,969,014および/またはUS6,916,867に記載されている。
【0042】
ヒンダードアミン系光安定剤(成分B)
本発明の安定剤組成物は、成分Bとしてヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を含む。好ましくは、ヒンダードアミン系光安定剤は、式(II)に従うテトラメチルピペリジニル(tetramethylpiperdinyl)基を含む1種または複数の化合物から構成される:
【0043】
【化7】
(式中、Rは、水素、1~20個、好ましくは2~12個の炭素原子を有するアルキル基、1~20個、好ましくは2~12個の炭素原子および1~4個、好ましくは1~2個の酸素原子(すなわち、アルコキシ酸素原子)を有するアルコキシ基から選択される)。
【0044】
好ましくは、成分Bとして使用されるヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、Classification, Labelling and Packaging of Chemical Substances (CLP)に関する現在のEU規則により危険有害性としての分類を必要としない。
【0045】
適切なヒンダードアミン系光安定剤の例としては、2-ドデシル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)スクシンイミド(CAS-No79720-19-7);ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート(sebacat)(CAS-No52829-07-9);ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート(sebacat)(CAS-No41556-26-7);ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート(sebacat)(CAS-No129757-67-1);2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-20-(2,3-エポキシ-プロピル)ジスピロ-(5.1.11.2)-ヘンエイコサン-21-オン(CAS-No.64338-16-5);2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-20-(2,3-エポキシ-プロピル)ジスピロ-(5.1.11.2)-ヘンエイコサン-21-オンおよびエピクロヒドリン(Hostavin(登録商標)N30)との反応生成物、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
好ましい実施態様において、前記のヒンダードアミン系光安定剤Bは、オリゴマーヒンダードアミン系光安定剤である。より好ましくは、ヒンダードアミン系光安定剤は、以下に定義されるような式(II)aおよび(II)bおよび任意選択的に(II)cによるオキサジアザ-スピロデカン化合物の混合物から構成されるオリゴマーヒンダードアミン系光安定剤である。
【0047】
好ましい実施態様において、ヒンダードアミン系光安定剤Bは、成分Bを基準として、65~95重量%、好ましくは75~94重量%、より好ましくは85~95重量%の、少なくとも1種の式(II)aの化合物、成分Bを基準として、5~35重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは5~12重量%の、少なくとも1種の式(II)bの化合物、および成分Bを基準として、0~10重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは1~3重量%の、少なくとも1種の式(II)cの化合物から構成される:
【0048】
【化8】
[式中、nおよびmは、互いに独立して、0~100、好ましくは0~10、より好ましくは0~5の数であり、ただし、nおよびmが両方とも0ではないことを条件とし;
は、水素、5~7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、または1~12個の炭素原子を有するアルキル基であり;
およびRは、互いに独立して、水素、1~18個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるか、またはそれらを連結する炭素原子と一緒に5~13員のシクロアルキル環であるか、またはそれらを連結する炭素原子と一緒に式(II)dの基であり
【0049】
【化9】
(式中、ここで、Rは上記で定義したとおりである);そして
およびRは、互いに独立して、水素、1~22個の炭素原子を有するアルキル基、酸素ラジカルO、-OH、-NO、-CHCN、ベンジル、アリル、1~30個の炭素原子を有するアルキルオキシ基、5~12個の炭素原子を有するシクロアルキルオキシ基、アリール基がさらに置換されていてもよい6~10個の炭素原子を有するアリールオキシ基、アリール基がさらに置換されていてもよい7~20個の炭素原子を有するアリールアルキルオキシ基、3~10個の炭素原子を有するアルケニル基、3~6個の炭素原子を有するアルキニル基、1~10個の炭素原子を有するアシル基、ハロゲン、非置換フェニルまたはC~C-アルキル置換フェニルから選択される]。
【0050】
好ましくは、ヒンダードアミン系光安定剤Bは、安定剤組成物全体を基準として、10~89重量%、好ましくは20~78重量%、より好ましくは25~50重量%、また好ましくは25~46重量%の量で存在する。
【0051】
好ましくは、本発明の安定剤組成物は、成分Bを基準として、65~95重量%、好ましくは75~94重量%、より好ましくは85~95重量%の、上記のような少なくとも1種の式(II)aの化合物、成分Bを基準として、5~35重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは5~12重量%の、上記のような少なくとも1種の式(II)bの化合物、および成分Bを基準として、0~10重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは1~3重量%の、上記のような少なくとも1種の式(II)cの化合物から構成されるヒンダードアミン系光安定剤Bを含み;
ここで、
nおよびmは、互いに独立して、0~100、好ましくは0~10、より好ましくは0~5の数であり、ただし、nおよびmが両方とも0ではないことを条件とし;
は、水素、5~7個、好ましくは6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、または1~12個、好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり;
およびRは、互いに独立して、水素、1~18個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるか、またはそれらを連結する炭素原子と一緒に5~13員のシクロアルキル環であるか、またはそれらを連結する炭素原子と一緒に上記に定義されるような式(II)dの基であり;そして
およびRは、互いに独立して、水素、1~22個の炭素原子を有するアルキル基、酸素ラジカルO、-OH、-NO、-CHCN、ベンジル、アリル、1~30個の炭素原子を有するアルキルオキシ基、5~12個の炭素原子を有するシクロアルキルオキシ基、アリール基がさらに置換されていてもよい6~10個の炭素原子を有するアリールオキシ基、アリール基がさらに置換されていてもよい7~20個の炭素原子を有するアリールアルキルオキシ基、3~10個の炭素原子を有するアルケニル基、3~6個の炭素原子を有するアルキニル基、1~10個の炭素原子を有するアシル基、ハロゲン、非置換フェニルまたはC~C-アルキル置換フェニルから選択される。
【0052】
好ましい実施態様において、上記のようなHALS成分Bは、本発明の安定剤組成物に含まれる唯一のヒンダードアミン系光安定剤である。
【0053】
式(II)a、(II)b、および任意選択的に(II)cによる化合物の混合物である安定剤成分Bの好ましい実施態様は、例えば、US6,174,940および/またはUS2005/0228086に記載されている。式(II)a~(II)dの置換基R~Rならびに添字nおよびmは、US6,174,940に定義されている対応する置換基および添字を表す。
【0054】
好ましくは、HALS成分Bは、式(II)aおよび(II)b、および任意選択的に(II)cに従う化合物から構成され、ここで、置換基R~Rは同じ定義を有する。
【0055】
好ましくは、HALS成分Bは、式(II)aおよび(II)b、および任意選択的に(II)cに従う化合物から構成され、ここで、
nおよびmは、互いに独立して、0~10、より好ましくは0~5の数であり、ただし、nおよびmが両方とも0ではないことを条件とし;
は、水素、6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、または1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり;
およびRは、互いに独立して、水素、1~6個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるか、またはそれらを連結する炭素原子と一緒に6~12員のシクロアルキル環であるか、またはそれらを連結する炭素原子と一緒に式(II)dの基であり;そして
およびRは、互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を有するアルキル基、酸素ラジカルO、-OH、-NO、-CHCN、ベンジル、アリル、1~10個の炭素原子を有するアルキルオキシ基、5~6個の炭素原子を有するシクロアルキルオキシ基、アリール基がさらに置換されていてもよい6~7個の炭素原子を有するアリールオキシ基、アリール基がさらに置換されていてもよい7~10個の炭素原子を有するアリールアルキルオキシ基、3~6個の炭素原子を有するアルケニル基、3~6個の炭素原子を有するアルキニル基、1~4個の炭素原子を有するアシル基、ハロゲン、非置換フェニルまたはC~C-アルキル置換フェニルから選択される。
【0056】
より好ましくは、HALS成分Bは、式(II)aおよび(II)b、および任意選択的に(II)cに従う化合物から構成され、ここで、
nおよびmは、互いに独立して、0~5の数であり、ただし、nおよびmが両方とも0ではないことを条件とし;
は、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくはメチルであり;
およびRは、それらを連結する炭素原子と一緒に、6~12員のシクロアルキル環、好ましくは12員のシクロアルキル環であるか、またはそれらを連結する炭素原子と一緒に、式(II)dの基であり;
およびRは、互いに独立して、水素、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、1~6個の炭素原子を有するアルキルオキシ基、5~6個の炭素原子を有するシクロアルキルオキシ基、および1~4個の炭素原子を有するアシル基から選択される。
【0057】
好ましくは、式(II)a~(II)dにおける置換基Rは、互いに独立して、水素または1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、より好ましくは全ての置換基Rはメチルである。
【0058】
好ましくは、式(II)a~(II)cにおける置換基RおよびRは、それらを連結する炭素原子と一緒に、12員のシクロアルキル環である。
【0059】
好ましくは、式(II)a~(II)dにおける置換基RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、アセチル、オクチルオキシまたはシクロヘキシルオキシから選択される。
【0060】
好ましい実施態様において、HALS成分Bは、式(II)aおよび(II)b、および任意選択的に(II)cに従う化合物から構成され、ここで、
nおよびmは、互いに独立して、0~10、より好ましくは0~5の数であり、ただし、nおよびmが両方とも0ではないことを条件とし;
はメチル基であり;
およびRは、それらを連結する炭素原子と一緒に、12員のシクロアルキル環であり、そして
は、水素である。
【0061】
より好ましい実施態様において、ヒンダードアミン系光安定剤Bは、成分Bを基準として、85~95重量%の少なくとも1種の式(II)aの化合物、成分Bを基準として、5~12重量%の少なくとも1種の式(II)bの化合物、および成分Bを基準として、1~3重量%の少なくとも1種の式(II)cの化合物から構成され、ここで
nおよびmは、互いに独立して、0~10、より好ましくは0~5の数であり、ただし、nおよびmが両方とも0ではないことを条件とし;
はメチル基であり;
およびRは、それらを連結する炭素原子と一緒に、12員のシクロアルキル環であり、そして
は、水素である。
【0062】
典型的には、HALS成分Bは、1.500g/molを超える(重量平均)分子量を有する。
【0063】
上記で定義されるような式(II)aおよび(II)bおよび任意選択的に(II)cに従うオキサジアザ-スピロデカン化合物の混合物である安定剤成分Bは、好ましくはポリアルキル-1-オキサジアザスピロデカンを、エピハロゲノヒドリン(epihalogenohydrin)、特にエピクロルヒドリンと反応させることによって得られる。適切な安定剤Bの製造は、例えば、US4,340,534および/またはUS2005/228086に記載されている。
【0064】
特に、(II)a、(II)bおよび(II)cによるオキサジアザ-スピロデカン化合物の混合物は、一般式(II)eの化合物
【0065】
【化10】
(式中、基R、R、RおよびRは、上記で定義されるとおりであり、Rは、主族(V)、(VI)または(VII)元素のプロトン酸のアニオン、特に、塩化物アニオンである)
を、式(II)fのエピハロゲノヒドリン:
【0066】
【化11】
(式中、Halはハロゲンであり、塩素、臭素またはヨウ素原子、好ましくは塩素を意味すると理解される)
と反応させることによって得られる。
【0067】
典型的には、第1のステップにおいて、式(II)cの化合物が形成され、引き続き反応混合物を加熱することにより、式(II)aおよび(II)bの化合物の形成がもたらされる。好ましくは、化合物(II)eおよび(II)fを、1:1~1:2.9;好ましくは1:1~1:2.7、特に1:2~1:2.5のモル比で反応させる。特に、反応は、式(II)eの化合物に対して4~20倍モル量のアルカリ金属水酸化物の存在下で不活性有機溶媒中で行われる。典型的には、反応温度は、20~220℃、好ましくは40~120℃、特に60~90℃の範囲内にある。
【0068】
好ましい不活性有機溶媒は、例えば、脂肪族または芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、石油留分、トルエン、シクロヘキサン、メシチレンまたはキシレンである。芳香族炭化水素、特にキシレンが特に好ましい。不活性有機溶媒は、好ましくは、化合物(II)eに対して、2:1~1:5、より好ましくは2:1~1:3、特に2:1~1:2の重量比で使用される。
【0069】
典型的には、相間移動触媒が反応に使用される。例えば、使用される相間移動触媒は、式(II)eの化合物の量に対して、1.5~10重量%、好ましくは3~7重量%、特に4~6重量%の量的割合の、ポリエチレングリコール、好ましくは平均オリゴマー化度を有するポリエチレングリコール、特にポリエチレングリコール200である。例えば、使用される相間移動触媒は、化合物(II)eに対して、特に0.1~5重量%の量的割合の、第四級アンモニウムハロゲン化物、例えば塩化トリカプリルメチルアンモニウムであり得る。
【0070】
化合物(II)eおよび(II)fの反応は、概して30~60分後に終了する。反応に続いて、過剰のエピハロヒドリンを、好ましくは蒸留によって、反応混合物から除去する。有機相および水性相を分離し;有機相を水で洗浄し、不活性有機溶媒を、好ましくは蒸留によって、除去する。得られた混合物は、さらなる精製ステップなしに、100~240℃、好ましくは120~220℃、特に150~200℃で、好ましくは減圧下で、加熱することにより、式(II)a、(II)bおよび(II)cの所望の混合物に転化することができる。
【0071】
使用される式(II)eの化合物の量、エピハロヒドリン(II)fの量、使用されるアルカリ金属水酸化物の量および使用される相間移動触媒の量を変えることによって、成分(II)a、(II)bおよび(II)cの混合物の組成を調整することができる。成分(II)a、(II)bおよび(II)cの混合物の組成は、通例の分光学的方法(IR及び13C-NMR分光法)により示すことができる。
【0072】
特に好ましい実施態様において、HALS成分Bは、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-20-(2,3-エポキシ-プロピル)ジスピロ-(5.1.11.2)-ヘンエイコサン-21-オンおよびエピクロロヒドリンの反応生成物を含む(または好ましくはそれからなる)。前記反応生成物は、典型的には、上記のように得られる。好ましくは、前記の反応生成物は、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-20-(2,3-エポキシ-プロピル)ジスピロ-(5.1.11.2)-ヘンエイコサン-21-オンおよびエピクロロヒドリンを、1:2~1:2.5のモル比で、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-20-(2,3-エポキシ-プロピル)ジスピロ-(5.1.11.2)-ヘンエイコサン-21-オンのモル量に対して4~20倍モル量のアルカリ金属水酸化物の存在下で、有機溶媒中において、相間移動触媒を使用して反応させることにより、得られる。
【0073】
フェノール系酸化防止剤(成分C)
驚くべきことに、UV吸収剤Aおよびヒンダードアミン系光安定剤Bと組み合わせたフェノール系酸化防止剤の添加が、特に熱安定性、耐UV性/耐候性および色の観点からの、安定剤の組み合わせの相乗的改善をもたらすことが見出された。
【0074】
好ましくは、酸化防止剤Cは、安定剤組成物全体を基準として、1~80重量%、好ましくは2~60重量%、より好ましくは5~40重量%、また好ましくは8~20重量%の量で存在する。
【0075】
本発明の安定剤組成物は、成分Cとしての酸化防止剤を含み、ここで上記酸化防止剤は、上で示されるような式(III)aおよび/または(III)bに従う1種または複数のフェノール系化合物から構成され、
式中、RおよびRは、互いに独立して、水素、ハロゲンまたは1~10個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;
は、水素または1~10個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;
は、ヒドロキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、1~4個のアルキル炭素原子を有するフェニルアルコキシ基、5~8個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、または式(III)cの基から選択され
【0076】
【化12】
(式中、ZおよびZは、互いに独立して、水素、1~18個、好ましくは1~10個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基および5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基から選択される);
Xは、-O-(CH-O-;-(OCH-CH-O-;-O-(CH-S-(CH-O;-NH-(CH-NH-;-NH-NH-(qは1~12、好ましくは1~6の整数である)、または基
【0077】
【化13】
から選択され;
pはゼロまたは1~6、好ましくは1~4の整数である。
【0078】
好ましい実施態様において、本発明の安定剤組成物において使用されるフェノール系酸化防止剤化合物Cは、アミン基を含まない。
【0079】
好ましくは、RおよびRは、互いに独立して、1~10個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個の炭素原子を有する分岐状アルキル基から選択される。より好ましくは、RおよびRの一方または両方が、tert-ブチル基である。
【0080】
好ましくは、Xは、-O-(CH-O-からの基(qは、1~12、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の整数である)である。
【0081】
好ましい実施態様において、酸化防止剤Cは、式(III)a’および/または(III)b’に従う1種または複数のフェノール系化合物から構成される:
【0082】
【化14】
(式中、置換基および添字は、式(III)aおよび(III)bについて上述したとおりである)。
【0083】
好ましい実施態様において、酸化防止剤Cは、式(III)b、または好ましくは(III)b’に従うフェノール系化合物を含み(または好ましくはそれからなり)、ここで
およびRは、互いに独立して、1~6個、より好ましくは1~4個の炭素原子を有する分岐状アルキル基から選択され、より好ましくは、RおよびRの一方または両方がtert-ブチル基であり;
は、水素または1~4個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;
Xは、-O-(CH-O-(qは、2~4の整数である)であり、そして
pは、1~4の整数である。
【0084】
好ましい実施態様において、酸化防止剤Cは、ビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-フェニル)ブタン酸)-グリコールエステル(CAS-No.32509-66-3)を含む(または好ましくはそれからなる)。
【0085】
好ましい実施態様において、酸化防止剤Cは、式(III)-1に従うフェノール系化合物;ビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-フェニル)ブタン酸)-グリコールエステル(CAS-No.32509-66-3)を含む(または好ましくはそれからなる)。
【0086】
【化15】
酸化防止剤成分Cの好ましい実施態様は、US6,270,692および/またはGB1440391にも記載されている。
【0087】
本発明の安定剤組成物の好ましい実施態様において、UV吸収剤Aは、式(I)-1のオキサルアニリド系化合物を含み(または好ましくはそれからなり)、そして酸化防止剤Cは、フェノール系化合物ビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-フェニル)ブタン酸)-グリコールエステルを含む(または好ましくはそれからなる)。
【0088】
本発明の安定剤組成物のより好ましい実施態において、UV吸収剤Aは、式(I)-1のオキサルアニリド系化合物を含み(または好ましくはそれからなり)、ヒンダードアミン系光安定剤Bは、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-20-(2,3-エポキシ-プロピル)ジスピロ-(5.1.11.2)-ヘンエイコサン-21-オンおよびエピクロロヒドリンの反応生成物を含み(または好ましくはそれからなり)、そして酸化防止剤Cは、フェノール系化合物ビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-フェニル)ブタン酸)-グリコールエステルを含む(または好ましくはそれからなる)。
【0089】
希釈剤(成分D)
本発明の安定剤組成物は、任意成分として1種または複数の希釈剤Dを含んでいてよい。好ましくは、少なくとも1種の希釈剤Dが、安定剤組成物全体を基準として、0~50重量%、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0~20重量%、また好ましくは5~25重量%、また好ましくは10~20重量%の量で存在する。
【0090】
好ましくは、希釈剤Dは、固体無機粉末、例えばタルク、雲母、ドロマイト、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラックから、あるいは適切な液体希釈剤、例えば適切な溶媒または液体可塑剤から選択することができる。好ましくは、少なくとも1種の希釈剤Dは、炭酸カルシウム、特に、チョーク、大理石、石灰石、沈降炭酸カルシウム(PCC)、被覆沈降炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム(GCC)(特に、チョーク、大理石および/または石灰石をベースとするGCC)および被覆粉砕炭酸カルシウムから選択される1種または複数の炭酸カルシウムである。例えば、脂肪酸で被覆されたPCCおよび/またはGCCを希釈剤Dとして使用することができる。
【0091】
好ましい実施態様において、安定剤組成物は、希釈剤Dとして、安定剤組成物全体を基準として、1~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%の、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび酸化チタン、より好ましくは炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種の希釈剤Dを含む。
【0092】
さらに別の添加剤(成分E)
本発明の安定剤組成物は、任意成分として、1種または複数のさらに別の添加剤E、例えば、安定剤組成物およびSMPシーラントおよび接着剤のための一般的な添加剤を含み得る。
【0093】
好ましくは、前記の任意の少なくとも1種の添加剤Eが、安定剤組成物全体を基準として、0~10重量%、好ましくは0~5重量%、より好ましくは0~2重量%、また好ましくは0.01~10重量%、また好ましくは0.1~1重量%の量で存在する。
【0094】
前記のさらに別の添加剤Eは、一般的な添加剤、例えば、静電防止剤、防炎剤(flame proofing agents)、軟化剤、核形成剤、金属不活性化剤、殺生物剤、耐衝撃性改良剤、顔料および殺真菌剤、殺細菌剤から選択することができる。さらに、本発明の安定剤組成物には、下記で添加剤Gとして記載される1種または複数の添加剤を使用してもよい。
【0095】
安定剤組成物の製造方法
本発明はまた、成分A、B、C、および任意選択的にDおよび/またはEが混合される、本発明の安定剤組成物を製造するための方法に関する。特に、混合は、成分A、B、C、および任意選択的にDおよび/またはEを乾燥固体形態、特に粉末形態で混合することによって実施することができる。
【0096】
好ましくは、本発明の安定剤組成物の製造方法は、成分A、B、Cおよび任意選択的にDおよび/またはEの1種または複数を粉砕するステップを含み得る。好ましくは、前記の安定剤組成物は、例えば粉砕ステップ(例えば微粉化)により、10~1000μmの範囲の粒度d50を有する固体の形態で、得ることができる。
【0097】
さらなる実施態様において、安定剤組成物の製造方法は、成分A、Bおよび/またはCから選択される少なくとも1種の固体成分を液体中に分散させるステップを含むことができ、ここで前記液体は、液体希釈剤Dおよび/または液体形態の成分A、B、CまたはEの1種または複数であってよい。
【0098】
さらに、本発明は、シリル変性ポリマーをベースとするシーラントまたは接着剤における安定剤としての本発明の安定剤組成物の使用に向けられる。特に、本発明の安定剤組成物は、シリル変性ポリマーをベースとするシーラントまたは接着剤のUVおよび熱安定性、すなわち、UV放射および/または熱への暴露下での機械的および/または光学表面特性の低下に対する耐性を改善するために使用される。
【0099】
ポリマー組成物
さらに、本発明は、上記のようなUV吸収剤A、ヒンダードアミン系光安定剤Bおよびフェノール系酸化防止剤Cの上記の安定剤組み合わせを含む、シリル変性ポリマー(SMP)をベースとするポリマー組成物に向けられる。本発明は、以下を含むポリマー組成物に向けられる
(P)シリル変性ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーP;
(S)以下から構成される安定剤組み合わせS
UV吸収剤A;
ヒンダードアミン系光安定剤B;および
酸化防止剤C;
ここで、成分A、BおよびCは、本発明の安定剤組成物に関して定義された通りである;
(F)任意選択的に少なくとも1種のフィラーF;
(G)任意選択的に少なくとも1種のさらに別の添加剤G(好ましくは可塑剤G1、接着促進剤G2、触媒G3および水分捕捉剤G4から選択される)。
【0100】
好ましい実施態様において、本発明は、以下を含む(または好ましくは以下からなる)ポリマー組成物を対象とする:
(P)ポリマー組成物全体を基準として、5~99重量%、好ましくは10~80重量%、より好ましくは15~40重量%の、シリル変性ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーP;
(S)以下から構成される安定剤組み合わせS
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.1~0.8重量%の、UV吸収剤A;
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.1~0.8重量の、ヒンダードアミン系光安定剤B;および
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.3重量%の、酸化防止剤C;
(F)任意選択的に、ポリマー組成物全体を基準として、0~85重量%、好ましくは0~80重量%、より好ましくは1~70重量%の、好ましくは炭酸カルシウムから選択される、少なくとも1種のフィラーF;
(G)任意選択的に、ポリマー組成物全体を基準として、0~35重量%、好ましくは0~33重量%、より好ましくは1~30重量%の、少なくとも1種のさらに別の添加剤G(好ましくは可塑剤G1、接着促進剤G2、触媒G3および水分捕捉剤G4から選択される)。
【0101】
任意成分Fおよび/またはGが存在する場合、成分Pの量は、量の合計が100重量%であるように、または100重量%を超えないように適合され得る。
【0102】
上述のような成分A、BおよびCの好ましい実施態様は、本発明のポリマー組成物にも同様に適用される。
【0103】
好ましい実施態様では、前記ポリマー組成物は以下を含む(または好ましくは以下からなる):
(P)ポリマー組成物全体を基準として、7.5~95重量%、好ましくは12.5~72重量%、より好ましくは17~57重量%の、シリル変性ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーP;
(S)以下から構成される安定剤組み合わせS
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.1~0.8重量%の、UV吸収剤A;
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.1~0.8重量の、ヒンダードアミン系光安定剤B;および
ポリマー組成物全体を基準として、0.001~3重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.3重量%の、酸化防止剤C;
(F)ポリマー組成物全体を基準として、1~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは30~70重量%の、少なくとも1種のフィラーF;
(G1)ポリマー組成物全体を基準として、1~25重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%の、さらに別の添加剤G1としての少なくとも1種の可塑剤;
(G2)ポリマー組成物全体を基準として、0.5~5重量%、好ましくは0.8~3重量%、より好ましくは1~2重量%の、さらに別の添加剤G2としての少なくとも1種の接着促進剤;
(G3)ポリマー組成物全体を基準として、0.01~3重量%、好ましくは0.1~2重量%、より好ましくは0.2~1重量%の、さらに別の添加剤G3としての少なくとも1種の触媒;
(G4)ポリマー組成物全体を基準として、0.5~5重量%、好ましくは1.2~5重量%、より好ましくは1.5~3重量%の、さらに別の添加剤G4としての少なくとも1種の水分捕捉剤;
(G)および任意選択的に、ポリマー組成物全体を基準として、0~10重量%の、G1~G4とは異なる少なくとも1種のさらに別の添加剤G。
【0104】
好ましい実施態様において、成分P、S、FおよびGは100重量%まで合計され、特に成分Pおよび/またはFの量を適合させることができる。
【0105】
特に、本発明のポリマー組成物は、上記のような本発明の安定剤組成物を使用して得ることができる。特に、前記ポリマー組成物は、ポリマー組成物全体を基準として、0.01~5重量%、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.2~1重量%の、本発明の安定剤組成物を含む。
【0106】
シリル変性ポリマーP
典型的には、シリル変性ポリマーPは、少なくとも1つ、好ましくは2つの末端架橋性加水分解性シリル基を有する有機ポリマー、特にポリエーテル、ポリウレタンおよび/またはアクリルポリマーをベースとする有機ポリマーから選択される。好ましくは、末端架橋性加水分解性シリル基は、シリル変性ポリマーPにおいて唯一の架橋性加水分解性シリル基である。
【0107】
例えば、適切なシリル変性ポリマーPは、市販製品Kaneka MS Polymers(登録商標)(例えば、MS polymer(登録商標)S203H、MS polymer(登録商標)S303H)またはEvonikからのポリマーST(これらは、ポリエーテルおよびポリウレタンブロックを含むシリル変性ポリマーである)、あるいはVORASIL(登録商標)という商品名でThe Dow Chemical Companyから入手可能なポリマー(これらはポリウレタンポリマー主鎖を有するシリル変性ポリマーである)である。
【0108】
シリル変性ポリマーを製造するための重合方法は、本技術分野で一般に知られており、例えば、US3,971,751およびEP-A1288247に記載されている。
【0109】
特に、架橋性加水分解性シリル基は、以下の式(P-I)で表すことができる:
-SiY 3-a (P-I)
[式中、
は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基および7~20個の炭素原子を有するアラルキル基から選択され、
Yは、ヒドロキシル基または加水分解性基であり;
aは、1、2または3であり、そして、2つ以上の基RまたはYが存在する場合、それらは同じであってもまたは異なっていてもよい]。
【0110】
例えば、加水分解性基Yは、水素、ハロゲン原子、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、好ましくはメトキシ基もしくはエトキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基から選択することができる。好ましくは、加水分解性基Yは、アルコキシ基、特にメトキシおよびエトキシから選択される。
【0111】
少なくとも1種のシリル変性ポリマーPは、少なくとも1つの架橋性加水分解性シリル基を含む1種または複数のシリル変性ポリウレタンおよび/またはシリル変性ポリウレタン/ポリエーテルコポリマーを含み得る。特に、シリル変性ウレタンポリマーは、例えば、芳香族ポリイソシアネート、例えばトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネート、または脂肪族ポリイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネート)と、ポリオールとの反応から誘導されてよい。
【0112】
好ましい実施態様において、少なくとも1種のシリル変性ポリマーPは、少なくともシリル変性ポリエーテルを含む(または好ましくはそれからなる)。典型的には、シリル変性ポリエーテルは、少なくとも1つの架橋性加水分解性シリル基によって、より好ましくは2つの末端架橋性加水分解性シリル基によって変性されたポリエーテル主鎖を含む。例えば、ポリエーテル主鎖は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドおよび/またはポリフェニレンオキシドから選択される繰り返し単位を含むことができる。さらに、ポリエーテルは、主鎖にウレタン結合または尿素結合を含み得る。好ましくは、シリル変性ポリエーテルは、ポリエーテル主鎖にポリエチレンオキシド繰り返し単位を含み、ここで好ましくは、前記繰り返し単位の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%がポリエチレンオキシド繰り返し単位である。2つの末端架橋性加水分解性シリル基を有する好ましいシリル変性ポリエーテルは、例えば、US3,971,751およびUS2002/198308に記載されている。
【0113】
好ましい実施態様において、シリル変性ポリマーPは、以下の式(P-II)のシリル変性ポリエーテルから選択される:
【0114】
【化16】
[式中、
、QおよびQは、互いに独立して、1~40個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基、1~10個、好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキルオキシ(alkyoxy)基、例えばメトキシまたはエトキシおよびアセチルオキシから選択され、ただし、Q、QおよびQのうちの少なくとも1つは、好ましくは、メトキシ、エトキシおよびアセチルオキシから選択される、架橋性加水分解性シリル基であることを条件とし、そして、nおよびnは、互いに独立して、0~1000、好ましくは0~500、より好ましくは0~300の整数であり、ただし、n+nは少なくとも50、好ましくは少なくとも100であることを条件とする]。
【0115】
より好ましい実施態様において、シリル変性ポリマーPは、以下の式(P-III)および(P-IV)のシリル変性ポリエーテルから選択される:
【0116】
【化17】
[式中、nは、5~1000、好ましくは10~500、より好ましくは20~500、また好ましくは50~300の整数である]。
【0117】
好ましくは、例えば式(P-I)~(P-III)に記載されるような、シリル変性ポリエーテルのポリエーテル主鎖の分子量は、500~30,000g/mol、好ましくは1,000~15,000g/mol、より好ましくは3,000~12,000g/molの範囲である。
【0118】
好ましくは、1種または複数のジメトキシシリル末端化ポリエーテル(DMS MS)および/またはトリメトキシシリル末端化ポリエーテル(TMS MS)がシリル変性ポリマーPとして使用される。より好ましくは、1種または複数のジメトキシシリル末端化ポリエーテル(DMS MS)がポリマーPとして使用される。より具体的には、メチルジメトキシシリル末端化ポリエーテルが使用される。
【0119】
典型的には、ポリマーPとして使用される、好ましくは2つの末端架橋性加水分解性シリル基を有する、シリル変性ポリエーテルは、約1,000~50,000g/mol、好ましくは約5,000~約40,000g/mol、より好ましくは約8,000~約35,000g/mol、より好ましくは約10,000~約30,000g/molの範囲の分子量(特に数平均分子量)を有する。
【0120】
典型的には、ポリマーPとして使用される、好ましくは2つの末端架橋性加水分解性シリル基を有する、シリル変性ポリエーテルは、約1~約50Pa s、好ましくは約3~約40Pa s、より好ましくは約5~約30Pa s、より好ましくは約7~約20Pa sの範囲の粘度を示す。典型的には、粘度はブルックフィールド粘度計を用いて測定される。例えば、ブルックフィールド粘度(mPa・sで特定される)は、例えばブルックフィールドRVスピンドルセットから選択される、測定されるべき粘度レンジに適した適切なスピンドルを使用して、100rpmで24℃±3℃でBrookfield DV III Ultra viscometerによって測定される。典型的には、スピンドルがサンプル中に挿入されると、100rpmの一定の回転速度で測定が開始される。報告されるブルックフィールド粘度値は、測定開始から60秒後に表示された値である。
【0121】
好ましい実施態様において、シリル変性ポリマーPは、2つの末端メチルジメトキシシリル基を有する少なくとも1種のシリル変性ポリエーテル(例えばKaneka MS polymer S203Hおよび/またはKaneka MS polymer S303H)を含む(または好ましくはそれからなる)。
【0122】
フィラーF
好ましくは、本発明のポリマー組成物は、少なくとも1種のフィラーFを、ポリマー組成物全体を基準として、1~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは30~70重量%の量で含む。
【0123】
好ましくは、前記少なくとも1種のフィラーFは、木粉、クルミ殻粉、籾殻粉、パルプ、綿チップ、雲母、グラファイト、珪藻土、チャイナクレー、カオリン、クレー、タルク、シリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ、無水ケイ酸、石英粉末、ガラスビーズ、炭酸カルシウム(例えば、チョーク)、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄(II)、酸化亜鉛、カーボンブラック、ガラスバルーン、ガラス繊維および炭素繊維から選択される。フィラーFは、上述のフィラーのうちの1種、または2種以上の組み合わせであってもよい。好ましくは、前記の少なくとも1種のフィラーは、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック;およびそれらの組み合わせから選択される。適切なフィラーは、US6,077,896およびEP1288247にも記載されている。
【0124】
好ましくは、少なくとも1種のフィラーFは、炭酸カルシウム、特に、チョーク、大理石、石灰石、沈降炭酸カルシウム(PCC)、被覆沈降炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム(GCC)(特に、チョーク、大理石および/または石灰石をベースとするGCC)および被覆粉砕炭酸カルシウムから選択される1種または複数の炭酸カルシウムである。例えば、脂肪酸で被覆されたPCCおよび/またはGCCをフィラーFとして使用することができる。
【0125】
好ましくは、フィラーFは、少なくとも1種の炭酸カルシウム、特に脂肪酸で被覆された少なくとも1種の沈降炭酸カルシウムを含む(または好ましくはそれから構成される)。
【0126】
添加剤G
好ましい実施態様において、本発明のポリマー組成物は、可塑剤G1、接着促進剤G2、触媒G3、水分捕捉剤G4およびSMPシーラントのための他の一般的に公知の添加剤から選択される少なくとも1種の添加剤Gを含む。好ましくは、本発明のポリマー組成物は、添加剤Gとして、少なくとも1種の可塑剤G1、少なくとも1種の接着促進剤G2、少なくとも1種の触媒G3および少なくとも1種の水分捕捉剤G4を含む。
【0127】
SMPシーラントおよび接着剤のためのこのような典型的な添加剤は、例えば、US6,077,896、EP-A1288247およびUS2003/105261に記載されている。
【0128】
好ましくは、本発明のポリマー組成物は、少なくとも1種の可塑剤G1を、ポリマー組成物全体を基準として、1~25重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%の量で含む。
【0129】
好ましくは、前記の少なくとも1つの可塑剤G1は、フタル酸エステル可塑剤、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソウンデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジラウリルおよびフタル酸ジシクロヘキシル、エポキシ化可塑剤、例えばエポキシ化ダイズ油、エポキシ化アマニ油およびベンジルエポキシステアレート;脂肪酸エステル、例えばC~C28脂肪酸のアルキルおよびフェニルエステル、二塩基酸および二価アルコールに由来するポリエステル可塑剤、ポリエーテル、例えばポリプロピレングリコールおよびその誘導体;ポリスチレン類、例えばポリ-C.-メチルスチレンおよびポリスチレン;ポリブタジエン、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン、塩素化パラフィン等から選択される。
【0130】
可塑剤G1は、上述の可塑剤のうちの1種、または2種以上の組み合わせであってもよい。
【0131】
好ましくは、可塑剤G1は、フタレート化合物を含まない。好ましくは、可塑剤G1は、少なくとも1種のC10-C21アルカンスルホン酸フェニルエステル(例えば、Mesamoll(登録商標)として入手可能)を含む(または好ましくはそれから構成される)。
【0132】
好ましくは、本発明のポリマー組成物は、少なくとも1種の接着促進剤G2を、ポリマー組成物全体を基準として、0.5~5重量%、好ましくは0.8~3重量%、より好ましくは1~2重量%の量で含む。
【0133】
好ましくは、前記の少なくとも1種の接着促進剤G2は、例えば、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基、イソシアネート基、イソシアヌレート、ハロゲンなどから選択される、少なくとも1つの追加的な官能基を有するシラン化合物から選択される。典型的には、接着促進剤G2は、エポキシシランおよびアミノシランから選択される。
【0134】
例えば、接着促進剤G2は、以下から選択され得る:
イソシアナト基含有シラン、例えばγ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシランおよびγ-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン;
例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランから選択される、アミノ基含有シラン;
メルカプト基含有シラン、例えばγ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよびγ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン;
エポキシ基含有シラン、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよびβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;
カルボキシシラン、例えばβ-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シランおよびN-β-(カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン;
ハロゲン含有シラン、例えばγ-クロロプロピルトリメトキシシラン;およびイソシアヌレートシラン、例えばトリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート。
【0135】
好ましい実施態様において、前記の少なくとも1種の接着促進剤G2は、アミノ基含有シラン、特にアミノ基含有トリメトキシシランから選択される。好ましくは、前記の少なくとも1種の接着促進剤G2は、少なくとも1種のアミノ基含有トリメトキシシラン、好ましくは3-アミノプロピルトリメトキシシラン(例えば、Degussa EvonikからのDynasylan(登録商標)AMMO)を含む。
【0136】
好ましくは、本発明のポリマー組成物は、少なくとも1種の触媒G3を、ポリマー組成物全体を基準として、0.01~3重量%、好ましくは0.1~2重量%、より好ましくは0.2~1重量%の量で含む。
【0137】
典型的には、前記の少なくとも1種の触媒G3は、一般的に公知のシラノール縮合触媒から選択される。適切な触媒G3は、例えば、US6,077,896およびEP1288247に記載されている。
【0138】
そのような縮合触媒は、例えば、四価スズ化合物、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズフタレート、ジブチルスズビスアセチルアセトネート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジエチルヘキサノレート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジ(メチルマレエート)、ジブチルスズジ(エチルマレエート)、ジブチルスズジ(ブチルマレエート)、ジブチルスズジ(イソオクチルマレエート)、ジブチルスズジ(トリデシルマレエート)、ジブチルスズジ(ベンジルマレエート)、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジステアレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジ(エチルマレエート)、ジオクチルスズジ(イソオクチルマレエート)、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズビスノニルフェノキシドおよびジブテニルスズオキシド;二価スズ化合物、例えば、オクチル酸第一スズ、ナフテン酸第一スズおよびステアリン酸第一スズ;チタネートエステル、例えばテトラブチルチタネートおよびテトラプロピルチタネート;オルガノアルミニウム化合物、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート;キレート化合物、例えばジルコニウムテトラアセチルアセトネートおよびチタンテトラアセチルアセトネート(titanium tetraacetylacetoante);オクチル酸鉛;アミン化合物、例えばブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-エチル-4-メチルイミダゾールおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、またはこれらのアミン化合物とカルボン酸との塩;アミン化合物-オルガノスズ化合物反応生成物および混合物、例えばラウリルアミン-オクチル酸第一スズ反応生成物または混合物;過剰のポリアミンおよび多塩基酸から得ることができる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物からの反応生成物;アミノ基含有シランカップリング剤、例えばγ-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(β-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン;ならびに同様のシラノール縮合触媒、ならびにさらに他の公知のシラノール縮合触媒、例えば酸性触媒および塩基性触媒、であり得る。
【0139】
触媒G3は、上述の触媒のうちの1種、または2種以上の組み合わせであってもよい。
【0140】
好ましくは、前記の少なくとも1種の触媒G3は、四価チタンをベースとする金属有機化合物(例えばジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトネート)および/または四価スズをベースとする有機化合物(例えばジアルキルスズビスアセチルアセトネート化合物、およびジアルキルスズフタレートエステル)から選択される。このような触媒は、例えば、TIB Chemicalsから入手可能である。好ましくは、触媒G3は、少なくとも1種のオルガノスズ化合物、より好ましくはジブチルスズビスアセチルアセトネート(dibutyltin bis-acetylacetonat)および/またはジオクチルスズビスアセチルアセトネート(例えば、TIB KAT 223、ジオクチルスズジケタノエート(dioctyltindiketanoat))を含む。
【0141】
好ましくは、本発明のポリマー組成物は、少なくとも1種の水分捕捉剤G4を、ポリマー組成物全体を基準として、0.5~5重量%、好ましくは1.2~5重量%、より好ましくは1.5~3重量%の量で含む。
【0142】
好ましくは、水分捕捉剤G4は、ビニルシラン、特にビニル型不飽和基含有シラン、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランおよびγ-アクリルオキシプロピルメチルトリエトキシシランから選択される。例えば、水分捕捉剤G4は、ビニルトリメトキシシラン(例えば、Degussa EvonikからのDynasylan(登録商標)VTMO)である。
【0143】
更に、前記ポリマー組成物は、G1、G2、G3及びG4とは異なり並びにA、B及びCとは異なる少なくともさらに別の添加剤G、例えば相容化剤、粘着付与剤、物理特性改質剤、貯蔵安定性改善剤、金属不活性化剤、オゾン分解防止剤、光安定剤、熱安定剤、リン含有過酸化物分解剤、潤滑剤、顔料(例えば、TiO及びカーボンブラック)、チキソトロープ剤(thixitrope agents)(例えば、ポリアミドワックス、フュームドシリカ、水素化ヒマシ油)、発泡剤、難燃剤及び静電防止剤を、それぞれ適切な量で、0~10重量%含んでいてもよい。
【0144】
さらに、本発明はまた、本発明のポリマー組成物を製造するための方法を包含し、ここで、当該方法は、成分PおよびS、ならびに任意選択的にFおよび/またはGを混合することを含む。
【0145】
SMPシーラントを製造するためのいくつかの方法が知られており、従来技術に記載されている。典型的には、前記製造方法は、上記成分を任意の順序で混合し、得られた混合物を、常温でまたは加熱しながら、ミキサー、ローラー、ニーダーなどを用いて混練することを含む。前記組成物は、例えば、化合物A、B、Cおよび任意選択的にFおよびGをシリル変性ポリマーPに添加し、均一な分散および溶解をもたらし、必要に応じて、例えば加熱および撹拌条件を調節することによって、製造することができる。典型的には、成分の混合は、公知の装置、例えばニーダー(遊星ミキサー)、真空および加熱系を備えた多軸ミキサーで行われる。さらに、前記製造方法は、適切な溶媒の適切なポーションを使用して、1つまたは複数の成分を溶解し、次いで、当該溶液をよく混合することを包含し得る。必要に応じて、分散改善剤を使用してもよい。
【0146】
典型的には、SMPポリマー組成物は、空気および湿気の非存在下で製造され、それらの製造の直後に、カートリッジなどの閉鎖可能な容器に充填される。
【0147】
上記の様式で得られた本発明のポリマー組成物は、一液型硬化性組成物として施与することができる。そのような硬化性組成物は、本発明のポリマー組成物を実質的に水分を含まない状態で製造することにより得ることができる。このような組成物はしっかりと閉じた状態で貯蔵されると、長期間の貯蔵に耐えることができ、大気条件に曝されると、表面から急速に硬化する。
【0148】
本発明の硬化性ポリマー組成物は、建築および建設工事の分野および工業用途において、弾性シーラントまたは接着剤として有用である。また、塗料、接着剤、注入フィラー、コーティング材料などとして使用することもできる。
【0149】
別段の記載がない限り、%で与えられる全ての値は重量%を指し、与えられる全ての比は重量比に基づく。別段の記載がない限り、語句ppmはmg/kgを意味する。
【0150】
図面の説明
図1図4は、表面クラッキング耐性および熱安定性の観点からの統計モデル(ANOVA)の結果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0151】
図1図1は、フェノール系酸化防止剤C1の濃度の関数としての熱安定性の変化を示す。
図2図2は、0.1%の一定のC1含有量での、HALS成分B1およびUV吸収剤A1の濃度の関数としての熱安定性の変化を示す。
図3図3は、表面クラッキングと熱安定性との相関を示し、ここで、C1負荷は0%(□四角)、;0.1%(◇ひし形)および0.2%(△三角)である。
図4図4は、A1およびC1の濃度の関数としての表面クラッキングの変化を示す。
【0152】
本発明を以下の例および特許請求の範囲によりさらに説明する。
【実施例
【0153】

1.安定剤組成物SCの製造
以下の安定剤組成物を、乾燥固体粉末形態で成分を混合することによって製造した。安定剤成分A1、B1およびC1は、以下に定義される通りである。フィラー成分D1は、1.7μmの重量メジアン径d50、8μmのトップカットd90および4.5m/gのBET表面積を有するステアリン酸表面処理炭酸カルシウムである。
【0154】
【表1】
【0155】
以下のSMP組成物を、SMP1(Kaneka(登録商標)S303H、シリル末端化ポリエーテル)および安定剤組成物SC1、SC2またはSC3の1つを使用して製造し、ここで、成分SMP1、F1、G1、G2、G3およびG4は、上記の通りであった:
【0156】
【0157】
対応するSMP組成物を、以下に記載されるような参照安定剤R1またはR2を使用して製造した。SMPサンプルの製造、および熱安定性および表面クラッキング耐性の試験を、下記のように実施した。結果を以下の表2にまとめる。
【0158】
【表2】
【0159】
2.SMP試験サンプルの製造および試験(統計的モデリング)
以下の成分を使用した:
【0160】
成分P:
SMP1:Kaneka(登録商標)S303H、シリル末端化ポリエーテル
【0161】
安定剤S:
A1:UV吸収剤、2-エチル-2’-エトキシ-オキサルアニリド(CAS-No.23949-66-8);
B1:HALS、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-20-(2,3-エポキシ-プロピル)ジスピロ-(5.1.11.2)-ヘンエイコサン-21-オンおよびエピクロロヒドリンの反応生成物(ClariantからのHostavin(登録商標)N30);
C1:フェノール系酸化防止剤、ビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert.ブチルフェニル)ブタン酸)-グリコールエステル(CAS-No.32509-66-3);
R1:参照1は以下の組み合わせである
A2 UV吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(2-(2’-Hydroxy-3’-tert-butyl-5’-methylphenyl)-5-chlorobenzortriazole)(CAS-No.3896-11-5)、および
B2 HALS、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)デカンジオエート(bis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinyl)decandioat)(CAS-No. 52829-07-9)
R2:参照2は、UV吸収剤と塩基性HALSとのブレンドであるTinuvin(登録商標)5866(BASFから)であり、HALS成分ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートが含まれる。
【0162】
フィラー成分F:
F1:Hakuenka(登録商標)CCR-S10、脂肪酸で被覆された沈降炭酸カルシウム
【0163】
さらに別の成分G:
G1:可塑剤、Mesamoll(登録商標)、C10-C21アルカンスルホン酸フェニルエステル、
G2:接着促進剤、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan(登録商標)AMMO,Degussa Evonik);
G3:触媒TIB KAT 223,ジオクチルスズジケタノエート(Dioctyltindiketanoat)、
G4:水分捕捉剤、ビニルトリメトキシシラン(Dynasylan(登録商標)VTMO,Degussa Evonik);
【0164】
150mlのspeed mixer用カップ(PP 250ml)において、52.0gのフィラーF1を、29.2gのポリマーSMP1および14.6gの可塑剤G1に添加した。混合物を、SpeedMixer DAC 600.1 FVZにおいて、2300rpmで30秒間、周囲温度で撹拌した。以下の表3、4および5に従う量の成分A1、B1およびC1を、得られた混合物に添加し、2300rpmでさらに60秒間撹拌した。最後に、0.9gの接着促進剤G2、2.0gの水分捕捉剤G4および0.5gの触媒G3を、得られた混合物に添加し、2300rpmで追加的に30秒間撹拌した。参照サンプルRef.1~Ref.6を、参照安定剤R1およびR2を用いて相応に製造した。
【0165】
熱安定性、表面クラッキング耐性および色を、以下の例5に記載されるような試験方法を使用して、各サンプルについて決定した。
【0166】
表3に記載されるような以下の基本的な処方を使用した:
【0167】
【表3】
【0168】
試験結果を以下の表4および5にまとめる。
【0169】
UV吸収剤A1、HALS B1およびフェノール系酸化防止剤C1の本発明の組合せを使用すると、参照材料(Ref 1~Ref 6)の熱安定性および表面クラッキング耐性が満たされるかまたは改善されることが実証される。通常、本発明の安定剤の組み合わせは、参照例と比較して、44%大きい熱安定性および67%大きい表面クラッキング耐性を示す。
【0170】
さらに、実験データにより(例えば図4に示されるように)、フェノール系酸化防止剤C1の添加が、熱安定性および表面クラッキング耐性の有意な相乗的改善をもたらすことが示される。
【0171】
初期黄色度指数(0時間でのYI)は、サンプル間で有意な変動を有さない。6.29という平均YIは、Ref1~Ref4の結果と一致し、Ref5~Ref6の結果よりも低い。
【0172】
【表4】
【0173】
【表5】
【0174】
試験計画及び試験結果の解析は、分散分析(ANOVA)を用いた統計モデルを用いて行った:
【0175】
図1は、フェノール系酸化防止剤C1の濃度の関数としての熱安定性の変化を示し、ここで、線はモデル予測である。
【0176】
図2は、0.1%の一定のC1含有量での、HALS成分B1およびUV吸収剤A1の濃度の関数としての熱安定性の変化を示す。
【0177】
図3は、表面クラッキング耐性と熱安定性との相関を示す。点は、フェノール系酸化防止剤C1の異なる濃度に対して、すなわち0%四角(□);0.1%菱形(◇)および0.2%三角(△)に対して与えられる。
【0178】
図4は、UV吸収剤A1およびフェノール系酸化防止剤C1の濃度の関数としての表面クラッキング耐性の変化を示す。
【0179】
安定剤成分A1、B1およびC1の含有量の統計的有意性を、ANOVAによって分析した。結果を以下にまとめる:
-安定剤成分C1の濃度は、耐熱性に強い効果を有し(p<0.0001)、これは0.2重量%超、好ましくは0.1重量%超のC1の濃度を超えると平らになる傾向がある。安定剤成分A1(p=0.0501)および安定剤成分B1(p=0.0410)は、耐熱性に対して同等の統計的に妥当な効果を示す。
-安定剤成分C1は、表面クラッキング耐性に対して強い(二次)効果を有し(UV安定性)、これはより高い濃度で平坦化する。安定剤成分A1は、表面クラッキング耐性(UV安定性)に関して統計的に妥当な効果(p=0.0018)を有し、安定剤成分B1は、統計的に妥当な効果を有さない(p=0.1759)。
-dEは、主にC1に依存する有意なモデルを有する(RSquared 0.672)。
-表面クラッキングと熱安定性との間には強い相関(0.95)がある。
-フェノール系酸化防止剤C1の濃度は、系の安定化において、特に表面クラッキング耐性の改善のための1つの重要な因子である。
【0180】
さらに、驚くべきことに、フェノール系酸化防止剤の化学的性質が重要であること、および本発明の安定剤成分AおよびB、特にA1およびB1と組み合わせてフェノール系酸化防止剤C1を使用すると有利な相乗的組合せが達成されることが見出された。
【0181】
3.SMP試験サンプルの製造と試験(酸化防止剤Cの影響)
SMP試験サンプルは、例2で使用した成分および方法に基づいて製造した。熱安定性、表面クラッキング耐性および色を、例5に記載されるような試験方法を使用して、各サンプルについて決定した。処方は、上記表4の例Ex4をベースとしており、以下のように与えられる(全ての量はg):
【0182】
【0183】
成分SMP1、F1、G1、G2、G4およびG3は、上記の通りである。以下の安定剤A、BおよびCが使用される:
【0184】
A1:UV吸収剤、2-エチル-2’-エトキシ-オキサルアニリド(CAS-No.23949-66-8);
B1:HALS、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-20-(2,3-エポキシ-プロピル)ジスピロ-(5.1.11.2)-ヘンエイコサン-21-オンおよびエピクロロヒドリンの反応生成物(ClariantからのHostavin(登録商標)N30);
B3:Tinuvin(登録商標)622(BASF SE)、ポリ(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール-alt-1,4-ブタン二酸)(CAS-No.65447-77-0);
B4:Tinuvin(登録商標)144(BASF SE)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(CAS-No.63843-89-0);
C1:フェノール系酸化防止剤、ビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert.ブチルフェニル)ブタン酸)-グリコールエステル(CAS-No.32509-66-3);
C2:ClariantからのHostanox(登録商標)P-EPQ、主成分としてテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスホナイト(CAS 38613-77-3)として有する多成分系;
C3:Irganox(登録商標)1010、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、CAS-No.6683-19-8;
C4:Tinuvin(登録商標)144(BASF SE)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(CAS-No.63843-89-0)。
【0185】
比較の安定剤Tinuvin(登録商標)144(BASF SE)は、フェノール基ならびにヒンダードアミン基を含み、比較フェノール系酸化防止剤C4として、およびHALS成分B4として使用された。SMP処方および試験結果を以下の表6および7にまとめる。
【0186】
【表6】
【0187】
【表7】
【0188】
フェノール系酸化防止剤の化学的性質の重要な影響が、上記の例によって実証される。本発明の安定剤成分AおよびB、特にA1およびB1と組み合わせてフェノール系酸化防止剤C1を使用すると有利な相乗的組合せが達成されることが見出された。改善された熱安定性および改善された表面クラッキング耐性(UV安定性)に関する有利な効果は、別の酸化防止剤、例えば比較安定剤C2、C3またはC4を使用しても達成されない。
【0189】
4.比較データ
以下のポリマー組成物を、例2に記載のように製造した。基本的な処方を表8に記載する:
【0190】
【表8】
【0191】
以下の安定剤成分A、BおよびCを使用した:
【0192】
安定剤S:
A1:UV吸収剤、2-エチル-2’-エトキシ-オキサルアニリド(CAS-No.23949-66-8);
A2:UV吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(2-(2’-Hydroxy-3’-tert-butyl-5’-methylphenyl)-5-chlorobenzortriazole)(CAS-No.3896-11-5);
B1:HALS、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-20-(2,3-エポキシ-プロピル)ジスピロ-(5.1.11.2)-ヘンエイコサン-21-オンおよびエピクロロヒドリンの反応生成物(ClariantからのHostavin(登録商標)N30);
B5:HALS、-β-アラニン、N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、ドデシル&テトラデシルの混合物;
B6:HALS、プロパン二酸(propanedioic acid)、[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)エステル、CAS-No147783-69-5;
B7:HALS、N-アセチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ピロリジン-2,5-ジオン;
B8:HALS、3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ピロリジン-2,5-ジオン;
C1:フェノール系酸化防止剤、ビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert.ブチルフェニル)ブタン酸)-グリコールエステル(CAS-No.32509-66-3);
C2:ClariantからのHostanox(登録商標)P-EPQ、主成分としてテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスホナイト(CAS 38613-77-3)として有する多成分系。
【0193】
参照2(Ref.2)(Tinuvin(登録商標)5866)は、成分A、BおよびCのための比較材料としても使用された。
【0194】
上記のような添加剤が、表9および11に示すような濃度(重量%)で使用される。熱安定性(110℃におけるまたは180℃における)および表面クラッキング耐性を、例5において下記で示されるような試験方法を使用して、各サンプルについて決定した。試験結果を以下の表10および12にまとめる。
【0195】
【表9】
【0196】
【表10】
【0197】
【表11】
【0198】
【表12】
【0199】
全ての安定剤A+B+Cの合計は、実験Ex16~Ex25のそれぞれにおいて2重量%である。HALS B1と組み合わせたUV吸収剤A1をベースとする材料の110℃での熱安定性が、UV安定剤とHALSの他の組み合わせよりも高いことが実証される。例えば、Ex23(HALS B1と組み合わせたUV吸収剤A1をベースとする)の110℃での熱安定性は、Ex16-20の材料(異なるHALS、すなわち、B5、B6、B7、B8との組み合わせをベースとする)と比較してより高い。例えば、Ex22(HALS B1と組み合わせたUV吸収剤A1をベースとする)の110℃での熱安定性は、Ex21の材料(異なるUV吸収剤A2をベースとする)と比較してより高い。さらに、Ex24(UV吸収剤A1をHALS B1と組合せて使用する)の110℃での熱安定性およびUV安定性は、参照材料Ex25(参照2、Tinuvin(登録商標)5866を使用する)と比較してより良好である。
【0200】
A1およびB1の組み合わせにおけるホスホナイト酸化防止剤C2は、110℃での改善された熱安定性も改善されたUV安定性ももたらさないことがさらに実証される(例Ex24およびEx22を比較)。
【0201】
酸化防止剤C1をベースとするSMP材料(Ex28)の180℃での熱安定性は、酸化防止剤C2をベースとする材料(Ex27)および参照材料Ex25(参照2、Tinuvin(登録商標)5866を使用)よりも有意に高い。
【0202】
5.試験方法
熱安定性
上記のように製造したSMPサンプルの熱安定性を、以下の手順によって試験した。25×25×2mmの試験片を硬化フィルムから切り出し、厚紙パネル上に置いて、均一な温度を確保した。パネルをオーブンの中央部分に置き、110℃(Memmert UF30換気オーブン)または180℃(非換気オーブン)のいずれかの設定温度で予熱した。オーブンは、23±1℃の制御された温度および50±5%の制御された湿度で実験室環境において操作された。サンプルを定期的にチェックした。110℃では、観察間の最大間隔は100時間であった。180℃では、観察間の最大間隔は1時間であった。サンプルは、クラッキングの最初の兆候で「不合格」と分類され、オーブンから取り出された。熱安定性は上記の表に報告されるように、不合格までの時間で与えられる。
【0203】
表面クラッキング耐性
上記のように製造されたSMPサンプルのUV安定性(表面クラッキング耐性)を、ISO4892-2 E2013 wet/dryに従って、weather-o-meter(WoM)を使用して決定した。硬化したサンプルを、102分の乾燥期間、それに続く18分のフレッシュな脱塩水を用いた水噴霧のサイクルで、UV放射に曝露した。放射強度は60W/m(300-400nm)であった。試験は、ISO 4892-2 E2013に従って、相対湿度50%、および65℃+/-3℃の温度(黒色標準)で行った。
【0204】
サンプルを500時間ごとに2000時間まで確認し、表面クラックの目視チェックおよび色測定が含まれた。表面クラックが目に見える場合に、サンプルは「不合格」として記録された。表面クラッキング耐性は、不合格までの時間で与えられる。2000時間で小さなクラックのみを有するサンプルは、2500時間の「不合格」を割り当てた。
【0205】
黄変
試験サンプルの黄色度指数(YI)は、ASTM E313に従って熱処理なしで測定した。さらに、換気オーブン中で110℃での1000hの熱曝露の前後に、CIE表色系に基づく色測定を行った。CIE LAB値L、aおよびbならびにdEは、分光光度計Minolta CM-3600d(ゼロボックスおよび白色対照板を用いる校正)を使用して決定した。ここで、Lは明度を示し、aは赤/緑値、bは黄/青値を示す。熱処理前後のCIE LAB値の差を上記表に示す。
【0206】
重量メジアン粒径d50
本発明を通して、d50は、表面反応炭酸カルシウム以外の全ての粒状材料についての重量による重量メジアン粒径であり、すなわち、粒子の50重量%がより粗くまたはより細かくなるような粒径を表す。
【0207】
重量メジアン粒径は、沈降法に従って測定した。沈降法は、重量場における沈降挙動の分析である。測定は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraphTM 5100を用いて行う。前記方法および装置は当業者に公知であり、フィラーおよび顔料の粒度を決定するために一般的に使用される。測定は、0.1重量%Naの水溶液において行われる。高速撹拌器および超音波を用いてサンプルを分散させた。
【0208】
比表面積(BET)
比表面積は、窒素およびISO9277:2010に従うBET法を用いて測定した。
図1
図2
図3
図4