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特許7343697導電性フィルム、導電性フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】導電性フィルム、導電性フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20230905BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20230905BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20230905BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230905BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20230905BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20230905BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/1395
H01M4/134
H01B13/00 501Z
H01B5/14 Z
B32B7/025
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022519366
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2021099434
(87)【国際公開番号】W WO2022147961
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】202110032066.9
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522118469
【氏名又は名称】重慶金美新材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING JIMAT NEW MATERIAL TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.12,Jinfu 2nd Road,Qiaohe Industrial Park,Gunan Street,Qijiang District,Chongqing 401421,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】臧 世▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 文▲卿▼
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-174009(JP,A)
【文献】特開2010-056037(JP,A)
【文献】特開2019-147357(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112712918(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111048788(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109994740(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108336357(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
10/05-10/0587
10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィルムの製造方法であって、
支持層を選択した後、前記支持層の上面と下面のそれぞれに第1の金属層を塗布するステップS10と、
前記第1の金属層の一方の表面に第1のフィルムを複合化し、前記第1の金属層の他方の表面に第2のフィルムを複合化するステップS20と、
フィルム複合化技術を用いて前記第1のフィルム及び前記第2のフィルムの表面に第3のフィルムを複合化し、前記第3のフィルム及び前記第2のフィルムには、深さが前記第3のフィルムと前記第2のフィルムの合計厚さに等しい複数の円形貫通孔をエッチングにより形成するステップS30と、
真空塗膜技術を用いて、前記第3のフィルムの外面及び前記円形貫通孔の内壁に第2の金属層を塗布するステップS40と、
第2のフィルムの円形貫通孔の内壁に塗布された前記第2の金属層を保持しながら、前記第3のフィルムを前記第2のフィルムから剥離し、
前記円形貫通孔内に難燃剤を充填し、難燃剤の上に一層の変性パラフィンを充填してシールを行い、
又は、前記円形貫通孔内に難燃剤を充填し、難燃剤の上に一層の変性パラフィンを充填し、且つ前記変性パラフィンの上に難燃剤をさらに充填し、変性パラフィンでシールし、
複合フィルムを得るステップS50と、
真空塗膜技術を用いて、複合フィルムの上面と下面に第3の金属層を塗布し、ロールプレスして導電性フィルムを得るステップS60とを含む、
前記第1の金属層及び前記第3の金属層は200~300nmの銅層又はアルミ層であり、前記第2の金属層は20~100nmのリチウム層である、
ことを特徴とする導電性フィルムの製造方法。
【請求項2】
ステップS10において、真空塗膜設備を用いて前記支持層の表面に前記第1の金属層を塗布し、真空塗膜設備はマグネトロンスパッタリング装置又は真空蒸着装置を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項3】
ステップS20において、塗膜複合化設備を用いて前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを複合化する、ことを特徴とする請求項1に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項4】
ステップS30において、前記円形貫通孔の直径が500~600nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項5】
ステップS40において、前記第3のフィルムの外面及び前記円形貫通孔内に前記第2の金属層を塗布した後、エッチング技術を用いて、前記円形貫通孔の中央における金属層を除去し、前記円形貫通孔の内壁に一層の金属層を保持する、ことを特徴とする請求項1に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項6】
ステップS50において、前記難燃剤はリン酸トリメチルである、ことを特徴とする請求項1に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項7】
ステップS50において、前記変性パラフィンの成分は、パラフィン6~7部、塩化リチウム0.5~1部、導電性黒鉛0.5~3部、及びn-ドデカン酸1~3部を含み、前記変性パラフィンの軟化点が65~80℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項8】
導電性フィルムであって、
支持層、第1の金属層、第1のフィルム、第2のフィルム及び第3の金属層を含み、
前記支持層の上面及び下面の両方に前記第1の金属層が塗布されており、前記第1のフィルム及び前記第2のフィルムはそれぞれ2つの前記第1の金属層の表面に複合化されており、
前記第1のフィルム及び前記第2のフィルムには複数の円形貫通孔が設けられ、前記円形貫通孔の内壁には横断面が環状である第2の金属層が塗布され、前記第2の金属の孔内に難燃層が充填され、
前記第1のフィルムの外面及び前記第2のフィルムの外面の両方に前記第3の金属層が塗布されている、
前記第1の金属層及び第3の金属層は200~300nmの銅層又はアルミ層であり、第2の金属層は20~100nmのリチウム層である、
ことを特徴とする導電性フィルム。
【請求項9】
前記難燃層は、底層に位置する難燃剤と、前記難燃剤の上に位置する変性パラフィンとを含み、前記難燃剤はリン酸トリメチルである、ことを特徴とする請求項に記載の導電性フィルム。
【請求項10】
前記難燃層は、底層に位置する第1の難燃剤と、第1の難燃剤の上に位置する第1の変性パラフィンと、第1の変性パラフィンの上に位置する第2の難燃剤と、第2の難燃剤の上に位置する第2の変性パラフィンとを含み、前記第1及び第2の難燃剤はリン酸トリメチルである、ことを特徴とする請求項に記載の導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム製造の技術分野に関し、より具体的には、本発明は、導電性フィルム、導電性フィルムの製造方法及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することによって働く二次電池(充電池)であり、国の呼びかけや世界的な気候変動の現状により、リチウムイオン電池はクリーンなエネルギーとしての重要性が高まっている。
【0003】
現在、リチウムイオン電池では、主にリチウムイオン電池のエネルギー密度及び安全性能が注目を集めており、これはリチウムイオン電池の普及や応用に関係している。安全の点では、リチウムイオン電池の実際の使用中に、リチウムイオン電池の発熱や燃焼爆発の主な原因が「熱暴走」である。「熱暴走」とは、何らかの原因で電池内部の熱が連続的に増加し、止まらなくなる現象である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の欠陥を解決するために、本発明は、電池が過熱して燃焼してしまうことを防止し、導電性フィルムの導電性及び引張強さを向上させることができる導電性フィルム、導電性フィルムの製造方法及びリチウムイオン電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明がその技術的課題を解決するために採用する技術的解決手段は導電性フィルムの製造方法であり、その改良として、該製造方法は、
支持層を選択した後、支持層の上面と下面のそれぞれに第1の金属層を塗布するステップS10と、
第1の金属層の一方の表面に第1のフィルムを複合化し、第1の金属層の他方の表面に第2のフィルムを複合化するステップS20と、
フィルム複合化技術を用いて第1のフィルム及び第2のフィルムの表面に第3のフィルムを複合化し、第3のフィルム及び第2のフィルムには、深さが第3のフィルムと第2のフィルムの合計厚さに等しい複数の円形貫通孔をエッチングにより形成するステップS30と、
真空塗膜技術を用いて、第3のフィルムの外面及び円形孔の内壁に第2の金属層を塗布するステップS40と、
第2のフィルムの円形孔の内壁に塗布された第2の金属層を保持しながら、第3のフィルムを第2のフィルムから剥離し、
円形孔内に難燃剤を充填し、難燃剤の上に一層の変性パラフィンを充填してシールを行い、
又は、円形孔内に難燃剤を充填し、難燃剤の上に一層の変性パラフィンを充填し、且つ変性パラフィンの上に難燃剤をさらに充填し、変性パラフィンでシールし、
複合フィルムを得るステップS50と、
真空塗膜技術を用いて、複合フィルムの上面と下面に第3の金属層を塗布し、ロールプレスして導電性フィルムを得るステップS60とを含む。
【0006】
さらに、ステップS10において、真空塗膜設備を用いて第1の支持層の表面に第1の金属層を塗布し、真空塗膜設備はマグネトロンスパッタリング装置又は真空蒸着装置を含む。
【0007】
さらに、前記第1の金属層及び第3の金属層は200~300nmの銅層又はアルミ層であり、第2の金属層は20~100nmのリチウム層である。
【0008】
さらに、ステップS20において、塗膜複合化設備を用いて第1のフィルムと第2のフィルムを複合化する。
【0009】
さらに、ステップS30において、円形孔の直径が500~600nmである。
【0010】
さらに、ステップS50において、前記難燃剤はリン酸トリメチルである。
【0011】
さらに、ステップS50において、前記変性パラフィンの成分は、パラフィン6~7部、塩化リチウム0.5~1部、導電性黒鉛0.5~3部、及びn-ドデカン酸1~3部を含み、変性パラフィンの軟化点が65~80℃である。
【0012】
別の態様では、本発明はまた、導電性フィルムを提供し、その改良として、支持層、第1の金属層、第1のフィルム、第2のフィルム及び第3の金属層を含み、
前記支持層の上面及び下面の両方に第1の金属層が塗布されており、第1のフィルム及び第2のフィルムはそれぞれ2つの第1の金属層の表面に複合化されており、
前記第1のフィルム及び第2のフィルムには複数の円形貫通孔が設けられ、円形孔の内壁には横断面が環状である第2の金属層が塗布され、第2の金属の孔内に難燃層が充填され、
前記第1のフィルムの外面及び第2のフィルムの外面の両方に第3の金属層が塗布されている。
【0013】
上記した構成において、前記難燃層は、底層に位置する難燃剤と、難燃剤の上に位置する変性パラフィンとを含み、該難燃剤はリン酸トリメチルである。
【0014】
上記した構成において、前記難燃層は、底層に位置する第1の難燃剤と、第1の難燃剤の上に位置する第1の変性パラフィンと、第1の変性パラフィンの上に位置する第2の難燃剤と、第2の難燃剤の上に位置する第2の変性パラフィンとを含み、前記難燃剤はリン酸トリメチルである。
【0015】
上記した構成において、前記第1の金属層及び第3の金属層は200~300nmの銅層又はアルミ層であり、第2の金属層は20~100nmのリチウム層である。
【0016】
別の態様では、本発明はまた、リチウムイオン電池を提供し、その改良として、導電性フィルムを含み、該導電性フィルムは、上述したいずれかの導電性フィルムの製造方法で製造される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。第2のフィルムの円形孔内に変性パラフィンでシールされる難燃剤が設けられることにより、温度が変性パラフィンの軟化点に達すると、パラフィンは孔内で溶融し、難燃剤は孔から放出され、このように、電池が高すぎる温度のため燃焼することを回避できる。第2の金属層をリチウム層とすることにより、難燃剤が放出された後、電池のエネルギー密度を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の導電性フィルムの製造方法の模式的なフローチャートである。
図2】本発明の導電性フィルムの製造方法のステップS10における構造の模式図である。
図3】本発明の導電性フィルムの製造方法のステップS20における構造の模式図である。
図4】本発明の導電性フィルムの製造方法のステップS30における構造の模式図である。
図5】本発明の導電性フィルムの製造方法のステップS40における構造の模式図である。
図6】本発明の導電性フィルムの製造方法のステップS50の第1の実施例の図である。
図7】本発明の導電性フィルムの製造方法のステップS60の第1の実施例の図である。
図8】本発明の導電性フィルムの製造方法のステップS50の第2の実施例の図である。
図9】本発明の導電性フィルムの製造方法のステップS60の第2の実施例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面及び実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【0020】
以下、本発明の目的、特徴及び効果を十分に理解できるように、実施例及び図面を参照して本発明の構想、具体的な構造及びこれらによる技術的効果を明確かつ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではなく、当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の実施例は、本発明の特許範囲に属する。また、特許にかかわる全ての結合/接続関係は、構成要素が直接連結されるだけではなく、実施の具体的な状況に応じて、結合補助部材を増減することにより、より好ましい結合構造を構成することを意味する。本発明における各技術的特徴は、互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせてもよい。
【0021】
実施例1
図1を参照して、本発明は導電性フィルムの製造方法を開示し、本実施例では、該製造方法は以下のステップを含む。
【0022】
S10、支持層20を選択した後、支持層10の上面と下面のそれぞれに第1の金属層101を塗布する。ここで、支持層10はPETフィルムであり、形成される構造は図2に示される。
【0023】
本実施例では、真空塗膜設備を用いて第1の支持層10の表面に第1の金属層101を塗布する。真空塗膜設備は、マグネトロンスパッタリング装置又は真空蒸着装置を含む。第1の金属層101は厚さ200nmの銅層である。
第1の金属層101は、主に導電性能を向上させる役割を果たし、これに加えて、導電性フィルム全体の破断伸びを高めることができる。本実施例では、真空塗膜設備はマグネトロンスパッタリング装置であり、且つマグネトロンスパッタリングの真空度が0.1×10-3Pa-1.0×10-3Paであり、マグネトロンスパッタリングでは、アルゴンガスをスパッタリングガス、流速を50~60ml/minとする。このような圧力の強さ及び速度とすると、プロセスを効率化し、生産効率を向上させることができる。
【0024】
S20、第1の金属層101の一方の表面に第1のフィルム201を複合化し、第1の金属層101の他方の表面に第2のフィルム202を複合化する。本実施例では、図3に示すように、上方の第1の金属層101の表面に第2のフィルム202を複合化し、下方の第1の金属層101の表面に第1のフィルム201を複合化し、かつ、塗膜複合化設備を用いて第1のフィルム201と第2のフィルム202を複合化する。
【0025】
S30、フィルム複合化技術を用いて第1のフィルム201及び第2のフィルム202の表面に第3のフィルム203を複合化し、第3のフィルム203及び第2のフィルム202には、深さが第2のフィルム202と第3のフィルム203の合計厚さに等しい複数の円形貫通孔204をエッチングにより形成する。図4は、第3のフィルム203にエッチングにより形成した複数の円形孔204の構造模式図であり、且つ、円形孔204の直径は500nmである。
【0026】
S40、真空塗膜技術を用いて、第3のフィルム203の外面及び円形孔204の内壁に第2の金属層102を塗布する。図5に示すように、このとき、円形孔204の内壁には第2の金属層102が塗布されているが、第2の金属層102は円形孔204を完全に遮断しておらず、このため、第2の金属層102には複数の止まり穴が形成されるようになる。
【0027】
S50、第2のフィルム202の円形孔204の内壁に塗布された第2の金属層102を保持しながら、第3のフィルム203を第2のフィルム202から剥離し、且つ、第2の金属層102は100nmのリチウム層である。
【0028】
本実施例では、図6に示すように、止まり穴内に難燃剤301が充填され、難燃剤301の上に一層の変性パラフィン302が充填されてシールを行う。前記難燃剤301はリン酸トリメチルであり、かつ、前記変性パラフィン302の成分は、パラフィン6部、塩化リチウム0.5部、導電性黒鉛0.5部、及びn-ドデカン酸1部を含む。一般には、パラフィンは50~60℃では軟化し始めるのに対し、本実施例では、変性パラフィン302はパラフィンの軟化点を65~80℃に向上させることができ、これにより、その耐熱性が向上する。
【0029】
S60、真空塗膜技術を用いて、複合フィルムの上面と下面に第3の金属層103を塗布し、ロールプレスして導電性フィルムを得る。その構造を図7に示す。また、第3の金属層103は200nmの銅層である。
【0030】
図7に示すように、本発明はまた、支持層10、第1の金属層101、第1のフィルム201、第2のフィルム202及び第3の金属層103を含む導電性フィルムを提供する。支持層10はPETフィルムであり、支持層10の上面及び下面の両方に第1の金属層101が塗布されており、第1の金属層101は厚さ200nmの銅層である。第1のフィルム201及び第2のフィルム202は、それぞれ、2つの第1の金属層101の表面に複合化され、前記第1のフィルム201及び第2のフィルム202には複数の円形貫通孔204が設けられ、円形孔204の内壁には横断面が環状である第2の金属層102が塗布され、第2の金属層102の中央の孔内に難燃層が充填されている。第1のフィルム201の外面及び第2のフィルム202の外面の両方に第3の金属層103が塗布されている。本実施例では、第1のフィルム201及び第2のフィルム202は全てPPであるが、第1のフィルム及び第2のフィルムは、PP、PI、PET、PEから選択されるいずれかであってもよい。
【0031】
本実施例では、図7に示すように、前記難燃層は、底層に位置する難燃剤301と、難燃剤301の上に位置する変性パラフィン302とを含む。該難燃剤301はリン酸トリメチルである。また、第3の金属層103は厚さ200nmの銅層であり、第2の金属層102は100nmのリチウム層である。
【0032】
別の態様では、本発明はまた、導電性フィルムを含むリチウムイオン電池を提供し、該導電性フィルムは、上述した導電性フィルムの製造方法で製造される。
【0033】
上述した実施例では、第2のフィルム202の円形孔204内に変性パラフィン302でシールされた難燃剤301が設けられることにより、温度が変性パラフィン302の軟化点に達すると、パラフィンは孔内で溶融し、難燃剤301は孔から放出され、これにより、電池が高すぎる温度のため燃焼することを防止できる。第2の金属層102をリチウム層とすることにより、難燃剤301が放出された後、電池のエネルギー密度を増加させることもできる。また、第1のフィルム201と第2のフィルム202との間に第1の金属層101が増設されることにより、導電性フィルムの導電性能及び引張強さが向上する。
【0034】
実施例2
図1に示すように、本発明は導電性フィルムの製造方法を開示し、本実施例では、該製造方法は以下のステップを含む。
【0035】
S10、支持層10を選択した後、支持層10の上面と下面のそれぞれに第1の金属層101を塗布する。ここで、支持層10はPETフィルムであり、形成される構造は図2に示される。
【0036】
本実施例では、真空塗膜設備を用いて第1の支持層10の表面に第1の金属層101を塗布する。真空塗膜設備は、マグネトロンスパッタリング装置又は真空蒸着装置を含むが、もちろん、真空コータが使用されてもよい。第1の金属層101は厚さ300nmのアルミ層である。
【0037】
第1の金属層101は、主に導電性能を向上させる役割を果たし、これに加えて、導電性フィルム全体の破断伸びを高めることができる。本実施例では、真空塗膜設備はマグネトロンスパッタリング装置であり、且つマグネトロンスパッタリングの真空度が0.1×10-3Pa-1.0×10-3Paであり、マグネトロンスパッタリングでは、アルゴンガスをスパッタリングガス、流速を50~60ml/minとする。このような圧力の強さ及び速度とすると、プロセスを効率化し、生産効率を向上させることができる。
【0038】
S20、第1の金属層101の一方の表面に第1のフィルム201を複合化し、第1の金属層101の他方の表面に第2のフィルム202を複合化する。本実施例では、図3に示すように、上方の第1の金属層101の表面に第2のフィルム202を複合化し、下方の第1の金属層101の表面に第1のフィルム201を複合化し、かつ、塗膜複合化設備を用いて第1のフィルム201と第2のフィルム202を複合化する。
【0039】
S30、フィルム複合化技術を用いて第1のフィルム201及び第2のフィルム202の表面に第3のフィルム203を複合化し、第3のフィルム203及び第2のフィルム202には、深さが第2のフィルム202と第3のフィルム203の合計厚さに等しい複数の円形貫通孔204をエッチングにより形成する。図4は、第3のフィルム203にエッチングにより形成した複数の円形孔204の構造模式図であり、孔の直径は600nmである。
【0040】
S40、真空塗膜技術を用いて、第3のフィルム203の外面及び円形孔204の内壁に第2の金属層102を塗布する。図5に示すように、このとき、円形孔204の内壁には第2の金属層102が塗布されているが、第2の金属層102は円形孔204を完全に遮断しておらず、このため、第2の金属層102には複数の止まり穴が形成されるようになる。
【0041】
S50、第2のフィルム202の円形孔204の内壁に塗布された第2の金属層102を保持しながら、第3のフィルム203を第2のフィルム202から剥離し、且つ、第2の金属層102は100nmのリチウム層である。
【0042】
本実施例では、図8に示すように、止まり穴内に難燃剤301が充填され、難燃剤301の上に一層の変性パラフィン302が充填され、変性パラフィン302に加えてさらに難燃剤301が充填され、変性パラフィン302でシールを行い、複合フィルムが得られる。前記難燃剤301はリン酸トリメチルであり、かつ、前記変性パラフィン302の成分は、パラフィン7部、塩化リチウム1部、導電性黒鉛3部、及びn-ドデカン酸3部を含む。一般には、パラフィンは50~60℃では軟化し始めるのに対し、本実施例では、変性パラフィン302はパラフィンの軟化点を65~80℃に向上させることができ、これにより、その耐熱性が向上する。
【0043】
S60、真空塗膜技術を用いて、複合フィルムの上面と下面に第3の金属層103を塗布し、ロールプレスして導電性フィルムを得る。その構造を図9に示す。また、第3の金属層103は200nmの銅層である。
【0044】
図9に示すように、本発明はまた、支持層10、第1の金属層101、第1のフィルム201、第2のフィルム202及び第3の金属層103を含む導電性フィルムを提供する。支持層10はPETフィルムであり、支持層10の上面及び下面の両方に第1の金属層101が塗布されており、第1の金属層101は厚さ300nmの銅層である。第1のフィルム201及び第2のフィルム202は、それぞれ、2つの第1の金属層101の表面に複合化され、前記第1のフィルム201及び第2のフィルム202には複数の円形貫通孔204が設けられ、円形孔204の内壁には横断面が環状である第2の金属層102が塗布され、第2の金属層102の中央の孔内に難燃層が充填されている。第1のフィルム201の外面及び第2のフィルム202の外面の両方に第3の金属層103が塗布されている。本実施例では、第1のフィルム201及び第2のフィルム202は全てPIであるが、第1のフィルム201及び第2のフィルム202は、PP、PI、PET、PEから選択されるいずれかであってもよい。
【0045】
本実施例では、図9に示すように、前記難燃層は、底層に位置する第1の難燃剤303と、第1の難燃剤303の上に位置する第1の変性パラフィン304と、第1の変性パラフィン304の上に位置する第2の難燃剤305と、第2の難燃剤305の上に位置する第2の変性パラフィン306とを含み、リチウムイオン電池の燃焼を繰り返して防止することができ、電池の安全性をさらに向上させることができる。前記難燃剤301はリン酸トリメチルである。また、第3の金属層103は厚さ300nmの銅層であり、第2の金属層102は100nmのリチウム層である。
【0046】
別の態様では、本発明はまた、導電性フィルムを含むリチウムイオン電池を提供し、該導電性フィルムは上述した導電性フィルムの製造方法で製造される。
【0047】
上述した実施例では、第2のフィルム202の円形孔204内に変性パラフィンでシールされた難燃剤が設けられることにより、温度が変性パラフィンの軟化点に達すると、パラフィンは孔内で溶融し、難燃剤は孔から放出され、これにより、電池が高すぎる温度のため燃焼することを防止できる。第2の金属層102をリチウム層とすることにより、難燃剤が放出された後、電池のエネルギー密度を増加させることができる。また、第1のフィルム201と第2のフィルム202との間に第1の金属層101が増設されることにより、導電性フィルムの導電性能及び引張強さが向上する。
【0048】
実施例3
図1を参照して、本発明は導電性フィルムの製造方法を開示し、本実施例では、該製造方法は以下のステップを含む。
【0049】
S10、支持層10を選択した後、支持層10の上面と下面のそれぞれに第1の金属層101を塗布する。ここで、支持層10はPETフィルムであり、形成される構造は図2に示される。
【0050】
本実施例では、真空塗膜設備を用いて第1の支持層10の表面に第1の金属層101を塗布する。真空塗膜設備は、マグネトロンスパッタリング装置又は真空蒸着装置を含み、もちろん、真空コータが使用されてもよい。第1の金属層101は厚さ250nmの銅層である。
【0051】
第1の金属層101は、主に導電性能を向上させる役割を果たし、これに加えて、導電性フィルム全体の破断伸びを高めることができる。本実施例では、真空塗膜設備はマグネトロンスパッタリング装置であり、且つマグネトロンスパッタリングの真空度が0.1×10-3Pa-1.0×10-3Paであり、マグネトロンスパッタリングでは、アルゴンガスをスパッタリングガス、流速を50~60ml/minとする。このような圧力の強さ及び速度とすると、プロセスを効率化し、生産効率を向上させることができる。
【0052】
S20、第1の金属層101の一方の表面に第1のフィルム201を複合化し、第1の金属層101の他方の表面に第2のフィルム202を複合化する。本実施例では、図3に示すように、上方の第1の金属層101の表面に第2のフィルム202を複合化し、下方の第1の金属層101の表面に第1のフィルム201を複合化し、かつ、塗膜複合化設備を用いて第1のフィルム201と第2のフィルム202を複合化する。
【0053】
S30、フィルム複合化技術を用いて第1のフィルム201及び第2のフィルム202の表面に第3のフィルム203を複合化し、第3のフィルム203及び第2のフィルム202には、深さが第2のフィルム202と第3のフィルム203の合計厚さに等しい複数の円形貫通孔204をエッチングにより形成する。図4は、第3のフィルム203にエッチングにより形成した複数の円形孔204の構造模式図であり、孔の直径は600nmである。
【0054】
S40、真空塗膜技術を用いて、第3のフィルム203の外面及び円形孔204の内壁に第2の金属層102を塗布する。図5に示すように、このとき、円形孔204の内壁には第2の金属層102が塗布されているが、第2の金属層102は円形孔204を完全に遮断しておらず、このため、第2の金属層102には複数の止まり穴が形成されるようになる。
【0055】
S50、第2のフィルム202の円形孔204の内壁に塗布された第2の金属層102を保持しながら、第3のフィルム203を第2のフィルム202から剥離し、且つ、第2の金属層102は20nmのリチウム層である。
【0056】
本実施例では、図6に示すように、止まり穴内に難燃剤301が充填され、難燃剤301の上に一層の変性パラフィン302が充填されてシールを行う。前記難燃剤301はリン酸トリメチルであり、かつ、前記変性パラフィン302の成分は、パラフィン6部、塩化リチウム0.5部、導電性黒鉛0.5部、及びn-ドデカン酸1部を含む。一般には、パラフィンは50~60℃では軟化し始めるのに対し、本実施例では、変性パラフィン302はパラフィンの軟化点を65~80℃に向上させることができ、これにより、その耐熱性が向上する。
【0057】
S60、真空塗膜技術を用いて、複合フィルムの上面と下面に第3の金属層103を塗布し、ロールプレスして導電性フィルムを得る。その構造を図7に示す。また、第3の金属層103は200nmの銅層である。
【0058】
図7に示すように、本発明はまた、支持層10、第1の金属層101、第1のフィルム201、第2のフィルム202及び第3の金属層103を含む導電性フィルムを提供する。支持層10はPETフィルムであり、支持層10の上面及び下面の両方に第1の金属層101が塗布されており、第1の金属層101は厚さ250nmの銅層である。第1のフィルム201及び第2のフィルム202は、それぞれ、2つの第1の金属層101の表面に複合化され、前記第1のフィルム201及び第2のフィルム202には複数の円形貫通孔204が設けられ、円形孔204の内壁には横断面が環状である第2の金属層102が塗布され、第2の金属層102の中央の孔内に難燃層が充填されている。第1のフィルム201の外面及び第2のフィルム202の外面の両方に第3の金属層103が塗布されている。本実施例では、第1のフィルム201及び第2のフィルム202は全てPETであるが、第1のフィルム201及び第2のフィルム202は、PP、PI、PET、PEから選択されるいずれかであってもよい。
【0059】
本実施例では、図7に示すように、前記難燃層は、底層に位置する難燃剤301と、難燃剤301の上方に位置する変性パラフィン302とを含む。該難燃剤301はリン酸トリメチルである。また、第3の金属層103は厚さ250nmの銅層であり、第2の金属層102は20nmのリチウム層である。
【0060】
別の態様では、本発明はまた、導電性フィルムを含むリチウムイオン電池を提供し、該導電性フィルムは上述した導電性フィルムの製造方法で製造される。
【0061】
上述した実施例では、第2のフィルム202の円形孔204内に変性パラフィン302でシールされた難燃剤301が設けられることにより、温度が変性パラフィン302の軟化点に達すると、パラフィンは孔内で溶融し、難燃剤301は孔から放出され、これにより、電池が高すぎる温度のため燃焼することを防止できる。第2の金属層102をリチウム層とすることにより、難燃剤301が放出された後、電池のエネルギー密度を増加させることもできる。また、第1のフィルム201と第2のフィルム202との間に第1の金属層101が増設されることにより、導電性フィルムの導電性能及び引張強さが向上する。
【0062】
また、本発明は以下の2つの比較例をさらに提供する。
【0063】
一、比較例の製造:
1、比較例1の製造方法は従来技術の手法であり、フィルムの上面と下面の両方に一層の金属が塗布され、本実施例では、両方に銅が塗布されている。
2、中間の支持層10に金属を塗布しない以外、比較例2の製造方法は本発明に係る方法と同様である。
3、実施例は本発明に係る方法により得られるサンプルである。
以上のサンプルをそれぞれ、長さ20CM、幅2CMのサンプルに切ってテストを行い、引張機として中諾計器製のインテリジェント電子引張試験機を用い、軟化点のテストにはアスファルト軟化点テスターを用いる。
【0064】
A、引張強さのテスト
【表1】
比較した結果、本発明に係る方法により製造された導電性フィルムは、引張強さが明らかに向上した。
【0065】
B、導電性能のテスト
方法:マルチメータの正極と負極を非金属材料の両端に直接接続し、スイッチをオームレンジにして測定したデータをその電気抵抗とし、電気抵抗が高いほど、導電性に優れた。
【表2】
比較した結果、本発明に係る方法により製造された導電性フィルムは、電気抵抗の数値が小さく、その導電性能が明らかに向上した。
【0066】
C、変性パラフィン302の軟化点のテストデータ:
【表3】
【0067】
二、比較例のリチウムイオン電池の製造:
2つの比較例を比較し、比較例1のリチウムイオン電池を組み立てる際には、正極板を製造し、すなわち、厚さ2μmのPETの両面に一層の厚さ1μmの金属アルミ層を塗布した後、この金属アルミ層の上に一層の活物質層を塗布した。この活物質の組成には、活物質であるリン酸鉄リチウム、導電剤としてアセチレンブラック、バインダとしてポリフッ化ビニリデンが含まれる。活物質、導電剤及びバインダの比率は7:1:2である。負極板では、PETを基材とし、PETの上に一層の金属銅を塗布した。該PETの厚さは2μmであり、銅金属層の厚さは1μmであり、負極活物質はチタン酸リチウムであり、バインダはポリフッ化ビニリデンを用い、導電剤は黒鉛であり、ここでは、負極活物質:バインダ:導電剤の比率は8:1:1である。電解液は1MのLiPF6溶液電解液である。次に、上述のものを組み立ててボタン型電池とした。
【0068】
実施例1のリチウムイオン電池の製造:実施例のリチウムイオン電池は、比較例1で得られたリチウムイオン電池に比べて、負極板の基材として本発明に係る導電性フィルムを用いる以外、残りは同様である。
比較例2の製造:実施例に比べて、該比較例2において、実施例の孔、及び孔内の難燃層のようなものがない点が異なる。残りは同様である。
実施例2の製造:実施例2のリチウムイオン電池は、負極板の基材に使用される導電性フィルムが第2の難燃剤及び第2の変性パラフィンを内部に使用する以外、実施例1の電池と同様である。
【0069】
上述で得られた各電池をオーブンに入れて、1分あたり5℃の速度で100℃に昇温した後、30分間保温し、発火、発煙しないようにすることが好ましい。以下の結果が得られる。
【表4】
上記実験を受けた実施例1-1及び1-2を取り出して冷却した後、実施例2と比較し、同様に実施例1及び実施例2を1分あたり5℃の速度で110度に昇温し、次に30min保持する。

以下のデータが得られる。
【表5】
【0070】
以上は本発明の好適な実施を具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨を逸脱せずに様々な同等変形や置換を行うことができ、これらの同等変形や置換は全て本願の請求項が限定される範囲に含まれる。
【0071】
本発明は、導電性フィルム、導電性フィルムの製造方法及びリチウムイオン電池を提供し、第2のフィルムの円形孔内に変性パラフィンでシールされた難燃剤が設けられることにより、温度が変性パラフィンの軟化点に達すると、パラフィンは孔内で溶融し、難燃剤は孔から放出される。これにより、電池が高すぎる温度のため燃焼することを防止し、リチウムイオン電池の安全性を向上させることができる。第2の金属層をリチウム層とすることにより、難燃剤が放出された後、電池のエネルギー密度を増加させることもでき、これにより、リチウムイオン電池には普及させる将来性が期待できる。よって、本発明の導電性フィルム、導電性フィルムの製造方法及びリチウムイオン電池は実用性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9