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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】電子内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
A61B8/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022551159
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2021027018
(87)【国際公開番号】W WO2022064826
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2020159687
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】萩原 雅之
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-245705(JP,A)
【文献】特開2007-061431(JP,A)
【文献】特開2018-191799(JP,A)
【文献】特開2004-363997(JP,A)
【文献】特開2020-146285(JP,A)
【文献】特開2012-055692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像を取得する電子内視鏡システムであって、
生体組織に超音波を繰り返し付与してエコー信号を順次得る超音波プローブを先端部に有する電子内視鏡と、
前記超音波プローブから出力する前記エコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部と、前記エコー信号のうちの第1エコー信号に含まれ、予め設定した閾値レベル以上の周期的に発生するノイズ成分を検出するノイズ検出部と、前記第1エコー信号の後に出力する第2エコー信号に付加されることにより前記第2エコー信号において前記ノイズ成分の発生を抑制するノイズ抑制成分を生成し、前記第2エコー信号に付加するノイズ抑制部と、を有する超音波画像用プロセッサと、
を備え、
前記ノイズ検出部は、さらに、前記ノイズ抑制成分が付加された前記第2エコー信号に含まれる前記ノイズ成分を検出し、
前記電子内視鏡システムは、前記超音波画像を表示画面に表示するよう構成された表示部をさらに備え、前記表示部は、前記ノイズ抑制成分が付加された前記第2エコー信号中に前記ノイズ成分が検出された場合に、前記ノイズ成分の抑制を促す表示を前記表示画面に表示させる、ことを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記ノイズ抑制成分は、前記ノイズ成分と逆位相の成分である、請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記ノイズ抑制部は、前記ノイズ抑制成分が付加された前記第2エコー信号において前記ノイズ成分のレベルが低減されるよう、前記ノイズ抑制成分の振幅、周波数、及び位相の少なくともいずれか1つを調整するノイズ抑制成分補正部を備える、請求項1又は2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記ノイズ検出部は、前記ノイズ成分が周期的に発生するノイズ発生周期を算出し、前記ノイズ発生周期の最小値と最大値から周期幅を算出する周期幅検出部を備え、前記ノイズ検出部は、前記ノイズ発生周期と前記周期幅を利用して前記ノイズ成分を検出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記ノイズ検出部は、
前記ノイズ成分のない教師用超音波画像と、前記ノイズ成分のある教師用超音波画像とを教師データとして前記ノイズ成分の有無を予め機械学習したノイズ成分推論モデルを作成し、
前記ノイズ成分推論モデルに、前記超音波画像処理部で生成される前記超音波画像を入力することにより、前記ノイズ成分の有無を判定する、請求項1又は2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
超音波画像を取得する電子内視鏡システムであって、
生体組織に超音波を繰り返し付与してエコー信号を順次得る超音波プローブを先端部に有する電子内視鏡と、
前記超音波プローブから出力する前記エコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部を有する超音波画像用プロセッサと、
を備え、
前記電子内視鏡又は前記超音波画像用プロセッサのいずれか一方が、
前記超音波プローブから出力する前記エコー信号を伝送するケーブルに重畳する外部ノイズ成分を検出するノイズ検出部と、
前記外部ノイズ成分を抑制するノイズ抑制成分を生成し、前記ケーブルに印加するノイズ抑制部と、を備え、
前記ノイズ検出部は、さらに、前記ノイズ抑制成分が付加された前記第2エコー信号に含まれる前記ノイズ成分を検出し、
前記電子内視鏡システムは、前記超音波画像を表示画面に表示するよう構成された表示部をさらに備え、前記表示部は、前記ノイズ抑制成分が付加された前記第2エコー信号中に前記ノイズ成分が検出された場合に、前記ノイズ成分の抑制を促す表示を前記表示画面に表示させる、ことを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記ノイズ抑制成分は、前記外部ノイズ成分と逆位相の成分である、請求項6に記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記電子内視鏡又は前記超音波画像用プロセッサのいずれか一方は、前記ケーブルから前記外部ノイズ成分を取得するアンテナを備える、請求項6又は7に記載の電子内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像を取得する電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体内部の生体組織の観察や治療に電子内視鏡システムが使用されている。電子内視鏡システムは、生体組織の画像として、撮像素子を用いて被検体の光学観察像を取得することに加えて、超音波プローブを備える超音波内視鏡では、超音波画像(超音波断層像)を得ることができる。超音波内視鏡と接続したプロセッサは、超音波診断装置として機能して、検査や診断を行う。以下、撮像素子及び超音波プローブを備える内視鏡を超音波内視鏡(あるいは電子内視鏡)という。
【0003】
超音波内視鏡は、撮像素子と超音波プローブを備え、超音波内視鏡からプロセッサに延びる可撓管内には、挿入部の先端に設けた撮像素子と、プロセッサに接続するコネクタとの間を接続する撮像信号用伝送線が配設され、撮像信号用伝送線を通じて撮像信号が伝送される。また、上記可撓管内には、挿入部の先端に設けた超音波プローブと、プロセッサに接続するコネクタとの間を接続する超音波信号用伝送線が配設され、超音波信号線を通じて超音波信号が伝送される。
【0004】
超音波による検査や診断を行う際には、プロセッサから超音波プローブに電力供給を行い、超音波プローブは生体組織に超音波を送信して反射波を受信する。超音波プローブで受信した反射波は、エコー信号に信号化され、エコー信号は、超音波信号用伝送線を通じてプロセッサに送られ、プロセッサで信号処理を行って超音波画像となる。
【0005】
プロセッサは、超音波内視鏡からの送信信号(超音波信号、撮像信号)を用いてデータ処理を行う信号処理部、画像表示を制御する制御部等の他、スイッチング電源を備える。スイッチング電源は、超音波内視鏡及びプロセッサ内の各構成デバイスを動作させるための必要な電圧を生成し供給する。プロセッサは、撮像画像や超音波画像を表示するためのモニタと接続される。
【0006】
超音波プローブのエコー信号に基づいて得られモニタに表示される超音波画像には、超音波内視鏡あるいはプロセッサ内で発生するノイズやAC電源に重畳されて外部から進入するノイズがノイズ成分として混入する場合がある。このノイズ成分は、例えば、スイッチング電源のスイッチングに起因したノイズ成分、あるいは、上記伝送線間の相互干渉に起因したノイズ成分を含む。例えば、可撓管内では、撮像信号用伝送線と超音波信号用伝送線とが近接して設けられているため、伝送線間の静電結合あるいは電磁結合が強くなり、撮像素子を制御するパルス制御信号等が、超音波プローブや超音波信号用伝送線に干渉してエコー信号にノイズ成分が混入する。
【0007】
さらに、超音波画像には、アーチファクト(実際には存在しない虚像)と呼ばれる超音波特有のノイズが発生する場合もある。超音波を発生させて、生体内から反射したエコーを受信してエコー信号を得るが、サイドロープアーチファクト、グレーティングローブや多重反射等の原因により虚像、即ちアーチファクトがノイズとなって発生する。また、スイッチング電源で発生する高周波ノイズが超音波信号の受信信号に重畳することで、超音波診断画像で生成される超音波画像にアーチファクトが表れる場合もある。
【0008】
これらの超音波画像内のノイズ成分に対して、特開2014-003801号公報ではDC/DCコンバータの動作に起因する周期的なノイズを除去できる超音波画像用プロセッサを開示している。電源入力部から電源を入力し、定電圧の電源を出力する主コンバータと、この定電圧の電源を入力し、超音波画像用プロセッサを構成する回路に電源を出力する複数の従コンバータとを備え、主コンバータ及び従コンバータのスイッチング動作を同期させることにより、スパイクノイズを減らしている。
【0009】
特開2019-076707号公報は、超音波画像上に表れるスイッチングノイズの増加を抑制するために、スイッチング電源のスイッチング周波数を、予め設定された変更幅ずつ変更する方法を開示している。スイッチング周波数が、スキャンを実行する際に超音波パルスを送信する周波数であるパルス繰返し周波数の整数倍になると、B(Brightness)モードスキャン又はM(Motion)モードスキャンの実行により生成される超音波画像データに基づく超音波画像上に、スイッチングに起因するスイッチングノイズが表れるからである。
【0010】
特開2017-080040号公報は、画像生成部と、検出部と、制御部とを具備し、検出部で外部装置又は超音波プローブからの出力の時間方向における特異な変化を検出すると、制御部は、検出部による特異な変化の検出に応じて、表示部に表示されている超音波画像と実質的に同じ位置の医用画像を含む参照画像を表示部に表示し、ノイズを除去する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
超音波内視鏡及びプロセッサを備える電子内視鏡システムでは、より精度の高い診断のためにノイズ成分に埋もれ易いエコー信号を精度よく取り出し、画像化することが好ましい。さらに、超音波内視鏡が体腔内に挿入される患者の肉体的負担を軽くするために、今後さらなる可撓管の細径化が求められる。従来の伝送線のシールド構造でノイズの進入を抑えていた超音波信号用伝送線及び撮像信号用伝送線では、細径化によるシールド構造の制約によりシールド性能の低下を余儀なくされ、ノイズ成分が発生し易くなる。
【0012】
また、超音波内視鏡及びプロセッサを駆動するための電力源であるAC電源に外部からノイズが重畳した場合は、電源回路やフィルタ回路によりある程度は低減されるが、ノイズレベルが大きい場合や、EMIノイズ等が意図しないルートでエコー信号に重畳した場合は、超音波画像のノイズ成分となり画質の低下を招く。さらには高精細化のために、微小なエコー号の検出も要求され、超音波画像のノイズ成分をいかに抑制するかが大きな課題となっている。
【0013】
本発明は、超音波プローブを用いて超音波画像を取得する際、超音波画像に含まれる周期的に発生するノイズ成分を効率よく検出してノイズ成分の抑制を行い、精度の高い超音波画像を生成することができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、超音波画像を取得する電子内視鏡システムであって、
生体組織に超音波を繰り返し付与してエコー信号を順次得る超音波プローブを先端部に有する電子内視鏡と、
前記超音波プローブから出力する前記エコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部と、前記エコー信号のうちの第1エコー信号に含まれ、予め設定した閾値レベル以上の周期的に発生するノイズ成分を検出するノイズ検出部と、前記第1エコー信号の後に出力する第2エコー信号に付加されることにより前記第2エコー信号において前記ノイズ成分の発生を抑制するノイズ抑制成分を生成し、前記第2エコー信号に付加するノイズ抑制部と、を有する超音波画像用プロセッサと、
を備える。
【0015】
前記ノイズ抑制成分は、前記ノイズ成分と逆位相の成分であることが好ましい。
【0016】
前記ノイズ抑制部は、前記ノイズ抑制成分が付加された前記第2エコー信号において前記ノイズ成分のレベルが低減されるよう、前記ノイズ抑制成分の振幅、周波数、及び位相の少なくともいずれか1つを調整するノイズ抑制成分補正部を備えることが好ましい。
【0017】
前記ノイズ検出部は、さらに、前記ノイズ抑制成分が付加された前記第2エコー信号に含まれる前記ノイズ成分を検出することが好ましい。
【0018】
前記電子内視鏡システムは、前記超音波画像を表示画面に表示するよう構成された表示部をさらに備え、前記表示部は、前記ノイズ抑制成分が付加された前記第2エコー信号中に前記ノイズ成分が検出された場合に、前記ノイズ成分の抑制を促す表示を前記表示画面に表示させることが好ましい。
【0019】
前記ノイズ検出部は、前記ノイズ成分が周期的に発生するノイズ発生周期を算出し、前記ノイズ発生周期の最小値と最大値から周期幅を算出する周期幅検出部を備え、前記ノイズ検出部は、前記ノイズ発生周期と前記周期幅を利用して前記ノイズ成分を検出することが好ましい。
【0020】
前記ノイズ検出部は、
前記ノイズ成分のない教師用超音波画像と、前記ノイズ成分のある教師用超音波画像とを教師データとして前記ノイズ成分の有無を予め機械学習したノイズ成分推論モデルを作成し、
前記ノイズ成分推論モデルに、前記超音波画像処理部で生成される前記超音波画像を入力することにより、前記ノイズ成分の有無を判定することが好ましい。
【0021】
本発明の別の態様は、超音波画像を取得する電子内視鏡システムであって、
生体組織に超音波を繰り返し付与してエコー信号を順次得る超音波プローブを先端部に有する電子内視鏡と、
前記超音波プローブから出力する前記エコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部を有する超音波画像用プロセッサと、
を備える。
前記電子内視鏡又は前記超音波画像用プロセッサのいずれか一方は、
前記超音波プローブから出力する前記エコー信号を伝送するケーブルに重畳する外部ノイズ成分を検出するノイズ検出部と、
前記外部ノイズ成分を抑制するノイズ抑制成分を生成し、前記ケーブルに印加するノイズ抑制部と、を備える。
【0022】
前記ノイズ抑制成分は、前記外部ノイズ成分と逆位相の成分であってもよい。
【0023】
前記電子内視鏡又は前記超音波画像用プロセッサのいずれか一方は、前記ケーブルから前記外部ノイズ成分を取得するアンテナを備えてもよい。
【発明の効果】
【0024】
上述の電子内視鏡システムによれば、超音波プローブを用いて超音波画像を取得する際、超音波画像に含まれる周期的に発生するノイズ成分を効率よく検出してノイズ成分の抑制を行い、高品質の超音波画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態の電子内視鏡システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2】一実施形態の電子内視鏡システムで用いる超音波プローブを備えた電子内視鏡の一例を説明する図である。
図3】一実施形態の電子内視鏡システムで用いる電子内視鏡及び撮像画像用プロセッサの概略構成の一例を示すブロック図である。
図4図4A図4Cは、一実施形態の電子内視鏡システムにおける超音波画像の画像形成原理を説明する図である。
図5】超音波画像を取得する際のエコー信号がBモードの超音波画像として表示されるまでの信号処理の一例を説明する図である。
図6図6A図6Bは、図4Aで示したAモードのエコー信号が増幅回路及び積分回路を通過した後のエコー信号及び輝度変調された輝度の一例を示す図である。
図7】一実施形態の電子内視鏡システムで得られるBモードの超音波画像の一例を示す図である。
図8】一実施形態の電子内視鏡システムで得られるBモードの超音波画像における超音波ビームのスキャン位置とノイズ成分の発生部の例を示す図である。
図9】一実施形態の電子内視鏡システムで得られるBモードの超音波画像に表れるノイズ成分の発生周波数の例を説明する図である。
図10】一実施形態の電子内視鏡システムで得られる超音波画像に表れる周期性のあるノイズ成分のパワースペクトルの例を模式的に示す図である。
図11】一実施形態の電子内視鏡システムで用いる複数のスイッチング電源のノイズがエコー信号に重畳された例を示す図である。
図12】一実施形態の電子内視鏡システムで用いる電子内視鏡挿入部でのノイズ要因の例を説明する図である。
図13】一実施形態の電子内視鏡システムで用いる電子内視鏡位置測定装置の一例の概略を示す図である。
図14】一実施形態の電子内視鏡システムで周期的に発生するノイズ成分が重畳されたエコー信号の例を示す図である。
図15】一実施形態の電子内視鏡システムで用いるノイズ抑制部の一例を説明する図である。
図16】一実施形態の電子内視鏡システムで用いるノイズ抑制成分の例を示す図である。
図17】一実施形態の電子内視鏡システムにおいてノイズ抑制成分が付加されたエコー信号を示す図である。
図18】一実施形態の電子内視鏡システムにおいてAI(人工知能)による学習と周期的に発生するノイズ成分の有無の判断をおこなうプロセスの例を説明する図である。
図19】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて行うノイズ抑制の動作フローの一例を示す図である。
図20】一実施形態の電子内視鏡システムで用いるノイズ抑制部の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(電子内視鏡システムの全体構成)
図1は、一実施形態の電子内視鏡システムの全体構成を示すブロック図である。超音波画像を取得する電子内視鏡システム10は、電子内視鏡12と、撮像画像用プロセッサ22と、超音波画像用プロセッサ30と、を備える。
【0027】
電子内視鏡12は、生体組織を照射する照明部14と、生体組織を撮像する撮像素子16と、撮像素子16で撮像された信号を前処理するドライバ信号処理部18と、生体組織に超音波を付与してエコー信号を得る超音波プローブ20とを備える。超音波プローブ20は、超音波を出力する複数のプローブ要素が所定の方向に配列した各プローブ要素が所定の時間差をもって超音波を出力することにより、種々の方向に沿ったエコー信号を取得することができるフェーズドアレイ方式のプローブである。超音波プローブ20は、このような超音波の付与を繰り返し行い、エコー信号を順次得る。
【0028】
ドライバ信号処理部18には、生体組織の画像信号が撮像素子16より所定のフレーム周期で入力され、撮像画像用プロセッサ22のシステムコントローラ102や撮像画像処理部26へ出力する。フレーム周期は、例えば、1/30秒、1/60秒である。
【0029】
ドライバ信号処理部18はまた、メモリ92にアクセスして電子内視鏡12の固有情報を読み出す。メモリ92に記録される電子内視鏡12の固有情報には、例えば、撮像素子16の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等が含まれる。
【0030】
撮像画像用プロセッサ22は、照明部14に光源を伝送する光源部24と、撮像素子16から出力される撮像信号を処理して撮像画像を生成する撮像画像処理部26を備える。
【0031】
超音波画像用プロセッサ30は、超音波プローブ20への駆動信号を送信し、エコー波を受信する送受信部38と、超音波プローブ20からのエコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部32と、エコー信号(第1エコー信号)に含まれ、予め設定した閾値レベル以上の周期的に発生するノイズ成分を検出するノイズ検出部34と、後続して出力するエコー信号(第2エコー信号)に付加されることにより、検出したノイズ成分が当該エコー信号において抑制されるノイズ抑制成分を生成し、当該エコー信号に付加するノイズ抑制部36と、を備える。
【0032】
超音波画像処理部32は、デジタルエコー信号に基づいて、例えば輝度変調により濃淡画像データとして所定の演算が施され、一方向に沿った一次元のBモード画像を生成する。さらに、超音波画像処理部32は、フェーズドアレイ方式の超音波プローブ20から得られるエコー信号に基づいて生成される複数の方向に沿った一次元のBモード画像を、フェーズドアレイの走査に合わせて所定の方位方向に沿って配置することにより、1つの二次元のBモード画像を作成する。さらに、作成された画像にゲイン処理、コントラスト処理等の公知の技術を用いた画像処理をおこなうとともに、超音波画像表示部46における画像の表示レンジに対応した階調処理を行う。
【0033】
超音波画像用プロセッサ30は、生成した超音波画像の表示とタッチパネル方式で入力可能な入力機能とを有する表示部46を備えている。さらに、超音波画像用プロセッサ30は、超音波画像用プロセッサ30の操作を行う入力部42と、電源部44と、AC電源入力部48を備える。
【0034】
入力部42は、キーボード、マウス、タッチパネル等を用いて、各種情報の入力を受け付ける。超音波画像表示部46は、生成された超音波画像を含む各種情報を表示する。電源部44は、超音波画像用プロセッサ30の他、電子内視鏡12と撮像画像用プロセッサ22を駆動するための電力を供給する。電源部44は、例えば、スイッチング電源であるDC/DCコンバータを構成デバイスとして備え、DC/DCコンバータにおけるスイッチング周波数により直流電圧を生成している。DC/DCコンバータは複数個備えられており、入力の直流電圧を各DC/DCコンバータで所望の直流電圧に変換し、各デバイスに電力を供給する。
【0035】
ノイズ検出部34は、受信したエコー信号のうちのエコー信号(第1エコー信号)に予め設定した閾値レベル以上の周期的に発生するノイズ成分が含まれているか否かを検出する。ノイズ成分の検出方法は、特に制限されないが、例えば、ノイズ成分が周期的に発生するノイズ発生周期を算出し、ノイズ発生周期の最小値と最大値から周期幅を算出する周期幅検出部(後述する振幅等抽出部)を備え、ノイズ検出部は、ノイズ発生周期と周期幅を利用してノイズ成分を検出することが好ましい。
【0036】
ノイズ検出部34は、さらに、FFT(Fast Fourier Transform)を利用した周波数分析を行うことにより、設定された閾値レベル以上のスペクトルピークが存在するか否かを判定してもよい。生体組織の境界面で反射するエコー信号は、周期性を有さないため、スペクトルピークが存在することは少なく、このため、スペクトルピークは、周期的に発生するノイズ成分のピークである可能性が高い。
【0037】
ノイズ抑制成分は、検出したノイズ成分が、超音波プローブ20から後続して出力するエコー信号(第2エコー信号)において、その発生が抑制されるよう、当該エコー信号に付加される成分である。ノイズ抑制成分については後述する。
【0038】
(電子内視鏡)
図2は、一実施形態の電子内視鏡システムで用いる超音波プローブを備えた電子内視鏡の一例を説明する図である。
【0039】
電子内視鏡12は、操作部52と、先端部56及び主に内部に軟性部58を備えた挿入部54と、ライトガイドケーブルを内部に備えた可撓性ケーブル60と、スキャナコネクタケーブル62と、コネクタ64と、スキャナコネクタ66と、を備える。
【0040】
先端部56は、生体組織を検査するセンサであり、撮像素子部68、射出端面70及び超音波プローブ20を備える。超音波プローブ20には、プローブ要素として複数の超音波振動子、例えば圧電素子をアレイ状に配列した振動子アレイを有している。これらの振動子は、それぞれ駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの反射波を受信してアナログの受信信号を出力する。各振動子は、例えば、圧電セラミックであるPZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)や、高分子圧電素子であるPVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)等からなる圧電体の両端に電極を形成した素子を用いて構成される。
【0041】
先端部56の撮像素子部68には、撮像素子部68には、撮像素子16と、撮像素子16による撮像のための対物レンズや照明レンズ等(図示略)が設けられている。対物レンズは、照明光により照射された生体組織からの戻り光を、撮像素子16の受光面上で結像させる。撮像素子16は、例えば、ベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。単板式カラーCCDイメージセンサは、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の色成分に対応した画像信号を生成して出力する。撮像素子16は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置を用いることもできる。撮像素子16はまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。
【0042】
先端部56にある射出端面70からは、入射された照明光が、配光レンズを通して射出される。照明光は、ライトガイド94(図3)を介して、電子内視鏡12の照明部14に入射される。
【0043】
先端部56の外側部分は硬質樹脂で構成されている。
【0044】
さらに、先端部56は、液体あるいは気体を吐出するあるいは吸引する送気・送水ノズル72を備える。送気・送水ノズル72は、撮像素子16に付随した対物レンズ及び照明レンズの表面を洗浄する水等の液体を吐出したり、対物レンズ及び照明レンズの表面に残存する液体や異物を除去するために空気等の気体を吐出したりする。また、先端部56には、液体を充填して生体組織に接触させて超音波診断を行うために用いるバルーン(図示略)が装着されるようになっており、バルーン注水口88とバルーン吸水口90が設けられている。さらに、先端部56には、可撓性を有する穿刺針(図示略)を生体組織に接触させるための鉗子起上台76が設けられ、この鉗子起上台76を通して生体組織上の液体や気体の吸引を行なう開口も設けられている。
【0045】
挿入部54には、上下方向及び左右方向に湾曲する湾曲部78が設けられている。湾曲部78より基端側(操作部52の側)の部分は自重や施術者の操作に追従して屈曲することができる可撓性のある軟性部58となっている。
【0046】
軟性部58は、湾曲部78と操作部52の間に設けられ、先端部56に設けられるセンサの信号線、及び、上記開口から気体あるいは流体が流れる複数の個別流路がその内部に設けられている。これらの個別流路は、管、チューブ、あるいは長孔により形成されている。
【0047】
操作部52の先端部56の側には、可撓性を備え、穿刺針を挿入するための処置具挿入口突起80と鉗子起上ワイヤ洗浄口74が突設している。処置具挿入口突起80の端部開口にはキャップが着脱可能に取り付けてある。挿入部54の内部には、処置具挿入口突起80から先端部56側に向かって延び、かつ可撓性を有する処置具挿通兼吸引管が設けられている。処置具挿通兼吸引管は、鉗子起上台76で開口している。処置具挿入口突起80から処置具挿通兼吸引管に挿入された穿刺針は、鉗子起上台76にある処置具挿通兼吸引管の先端開口から外側に突出可能であり、先端開口から突出させて生体組織を触診するために用いられる。
【0048】
操作部52は、流路切換スイッチの複数の操作ボタン84を備え、コネクタ64から可撓性ケーブル60内を延びる、流体が流れる共通流路がその内部に設けられている。湾曲操作レバー82は、湾曲部78を、上下方向及び左右方向に湾曲させるために、術者が操作するレバーである。湾曲操作レバー82の回転操作に応じて湾曲部78が上下方向及び左右方向に湾曲する。
【0049】
可撓性ケーブル60は、撮像画像用プロセッサ22に接続するコネクタ64と操作部52を接続する。コネクタ64には、流体の供給あるいは吸引を行うための共通流路の開口ポートも設けられている。
【0050】
コネクタ64は、光源差込部86を有し、撮像画像用プロセッサ22に接続される。撮像画像用プロセッサ22にある光源ユニットで生成された照明光は、コネクタ64から、可撓性ケーブル60、操作部52、及び挿入部54内のライトガイドケーブル内を通り先端部56に向けて伝送される。さらに、コネクタ64からは、撮像画像用プロセッサ22から可撓性ケーブル60内の信号線を介して撮像素子16へ駆動信号が送られる。撮像素子16で撮像した画像信号は、可撓性ケーブル60、操作部52、及び挿入部54内の信号線を介して撮像画像用プロセッサ22へ送られる。
【0051】
スキャナコネクタ66は、超音波画像用プロセッサ30に接続され、超音波プローブ20でスキャンしたエコー信号を、スキャナコネクタケーブル62を介して超音波画像処理部32に送る。超音波画像処理部32は、エコー信号を処理して、検査対象の生体組織の診断用画像を生成し、生成した画像を表示部46に表示する。さらに、スキャナコネクタケーブル62は、超音波画像用プロセッサ30から、超音波プローブ20の駆動信号を、超音波プローブ20の圧電素子へ送信する。圧電素子は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換でき、電圧変化による伸縮で超音波を発生する。
【0052】
コネクタ64は、ドライバ信号処理部18に接続される。ドライバ信号処理部18には、撮像素子16より生体組織の画像信号が所定のフレーム周期で入力され、撮像画像用プロセッサ22のシステムコントローラや撮像画像処理部26へ出力される。フレーム周期は、例えば、1/30秒、1/60秒である。
【0053】
(電子内視鏡用プロセッサ)
図3は、一実施形態の電子内視鏡システムで用いる電子内視鏡及び撮像画像用プロセッサの概略構成の一例を示すブロック図である。撮像画像用プロセッサ22は、制御用のシステムコントローラ102及びタイミングコントローラ100を備えている。システムコントローラ102は、メモリ104に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム10全体を統合的に制御する。また、システムコントローラ102は、操作パネル95に接続されている。
【0054】
システムコントローラ102は、操作パネル95より入力されるオペレータからの指示に応じて、電子内視鏡システム10の各動作、各動作のためのパラメータを変更する。オペレータによる入力指示には、電子内視鏡システム10の動作モードの切り替え指示等が含まれる。一実施形態によれば、動作モードとして、通常モードと特殊モードがある。タイミングコントローラ100は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム10内の各部分に出力する。
【0055】
光源部96は、ライトガイド94を通して、電子内視鏡12の照明部14へ照明光を伝送する。光源には、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプが用いられる。光源より伝送された照明光は、図示されない集光レンズによって集光され、絞りを介して適正な光量に制限される。絞りには、図示されないアームやギヤ等の伝達機構を介してモータが機械的に連結している。絞りは、撮像画像表示部28の表示画面に表示される映像を適正な明るさにするため、開度が変えられる。
【0056】
絞りを通過した照明光は、ライトガイド94を介して、電子内視鏡12の照明部14に入射される。入射された照明光は、配光レンズを通して先端部56にある射出端面70より射出される。
【0057】
光源部96の光源は、白色光を射出する白色光源に替えて、所定の波長域の光を発光する発光ダイオードやレーザーダイオードの半導体発光素子を用いてもよい。
【0058】
システムコントローラ102は、電子内視鏡12の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ102は、生成された制御信号を用いて、撮像画像用プロセッサ22に接続されている電子内視鏡12に適した処理がなされるように撮像画像用プロセッサ22内の各種回路の動作やタイミングを制御する。システムコントローラ102は、ドライバ信号処理部18で読み出されたメモリ92の固有情報を取得する。
【0059】
タイミングコントローラ100は、システムコントローラ102によるタイミング制御に従って、ドライバ信号処理部18にクロックパルスを供給する。ドライバ信号処理部18は、タイミングコントローラ100から供給されるクロックパルスに従って、撮像素子16を撮像画像用プロセッサ22側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。
【0060】
撮像画像用プロセッサ22は、撮像画像処理部26を備えている。撮像画像処理部26は、システムコントローラ102が、メモリ104に記録されたプログラムを読み出して実行することにより機能を発揮する。したがって、撮像画像処理部26は、システムコントローラ102と一体となって機能するため、システムコントローラ102内に設けてもよい。
【0061】
撮像画像処理部26には、前段信号処理回路が設けられており、ドライバ信号処理部18よりフレーム周期で入力されるR、G、Bの各画像信号に対してデモザイク処理を施す。具体的には、Rの各画像信号についてG、Bの周辺画素による補間処理が施され、Gの各画像信号についてR、Bの周辺画素による補間処理が施され、Bの各画像信号についてR、Gの周辺画素による補間処理が施される。これにより、画像信号が全て、R、G、Bの3つの色成分の情報を持つ画像データに変換される。さらに、前段信号処理回路は、色補正、マトリックス演算、及びホワイトバランス補正等の周知の処理を施す。
【0062】
撮像画像処理部26は、後段信号処理回路を備えてもよい。後段信号処理回路は、画像データに所定の信号処理を施して動画データを生成し、所定のビデオフォーマット信号に変換する。変換されたビデオフォーマット信号は、表示部28で動画の表示のために用いられる。これにより、生体組織の動画が表示画面に表示される。
【0063】
(超音波画像用プロセッサの撮影モード)
超音波画像用プロセッサ30の撮影モードは、Aモード、及びBモードを少なくとも含む。Aモードは、被検体内の所定の方向におけるエコー信号を時間軸上に振幅情報を表示するモードである。Bモードは、被検体内の組織の形状を表す所定の方向に沿った一次元の画像あるいは二次元の画像を生成し表示するモードである。
【0064】
図4A図4Cは、一実施形態の電子内視鏡システムにおける超音波画像の画像形成原理を説明する図である。超音波を利用した画像形成は、超音波パルス反射法を基礎にしている。図4Aは、生体内で超音波プローブ20から超音波ビームを発生している状態である。超音波ビームは、超音波プローブ20から、例えば10MHz前後の超音波をパルス状に生体内に放射される。放射された超音波は、生体内での体内組織の音響インピーダンスの差により反射波となり、再度超音波プローブ20で受信される。この反射波は、エコー信号となる。
【0065】
電子内視鏡12での超音波ビームのスキャンは、フェーズドアレイ方式によるセクタスキャンであり、このセクタスキャンにより、所定の方向に沿ったエコー信号を得ることができる。図4Bには、Aモードの表示によるエコー信号の一例が示されている。Aモードでは、横軸に時間、縦軸に反射強度(振幅)を採り、エコー信号が表示される。時間は生体深度を表し、体内組織及び体内組織間の距離となる。
【0066】
このAモードのエコー信号の波形を、図4Cに示すように、反射強度に応じて輝度変調して輝度に変換し、輝度により断層像を濃淡画像として表わすのがBモードである。超音波画像用プロセッサ30の撮影モードは、この他に、周知のMモード、ドプラモードを含んでもよい。
【0067】
図5は、従来用いられている、超音波画像を取得する際のエコー信号が、Bモードの超音波画像として表示されるまでの信号処理の一例を説明する図である。超音波プローブ20で得られるエコー信号は、増幅回路120で増幅され、積分回路122で積分され高調波ノイズが除去される。増幅回路120と積分回路122は、一体化した反転増幅型積分回路により、増幅機能とローパスフィルタ機能を備えてもよい。次に、アナログ信号であるエコー信号は、A/D変換器124でクロック信号126によるサンプリング周期でデジタル化され、デジタルエコー信号となる。
【0068】
デジタルエコー信号は、輝度変調部128で、反射強度に応じて輝度変調して輝度に変換される。輝度に変換されたデジタルエコー信号は、超音波画像生成部130において画像処理され二次元のBモードの断層像となる。このデジタル画像信号をD/A変換器132でアナログ信号に変換し、超音波画像表示部46でBモードの断層像として表示される。
【0069】
図6A図6Bは、図4Aで示したAモードのエコー信号が、増幅回路120及び積分回路122を通過した後のエコー信号及び輝度信号の一例を示す図である。図6Aに示すように、図4Aで示したAモードのエコー信号は、高周波ノイズが除去されている。このAモードのエコー信号は、図6Bに示すように、高周波ノイズが除去された輝度信号となる。このように、従来の超音波画像のノイズ処理は、基本的には図5で示した増幅回路120と積分回路122、或はこれらを一体化した反転増幅回路により行われる。なお、A/D変換器124のクロック信号126によるサンプリング周波数の1/2以上の周波数は、サンプリングによるデジタル化されない周波数であり、A/D変換器124も一種のローパスフィルタとなる。
【0070】
(周期的に発生するノイズ成分)
図7は、一実施形態の電子内視鏡システムで得られるBモードの超音波画像の一例を示す図である。セクタスキャンによる扇型の部分が超音波画像であり、上部の白い部分が超音波プローブ20の駆動信号に相当する。この例では、矢印で示したように、放射状に延びる白い湾曲した曲線が現れており、周期(厳密には、ある範囲内で変動する周期)を持ったノイズ成分となっている。
【0071】
図8は、一実施形態の電子内視鏡システムで得られるBモードの超音波画像における超音波ビームのスキャン位置と、ノイズ成分の発生部の例を示す図である。スキャン位置が相違するスキャンA、スキャンBとスキャンCにおけるノイズの発生部をマル印で示している。例えば、スキャンBにおいてノイズの発生する位置は4か所であり、その時間間隔をT1、T2、T3とすると、T1、T2、T3はある幅を持って発生している。時間間隔T1、T2、T3は、一定ではなく、ある範囲内の時間間隔である。
【0072】
さらにスキャンAとスキャンCにおけるノイズの発生の時間間隔も、スキャンB同様に、一定ではなく、ある範囲内の時間間隔で発生していることが分かる。従って、放射状の湾曲曲線として表れるノイズ成分はスキャンにおいて、ある範囲内の周期幅を持つ。すなわち、周波数領域ではある周波数帯域の中で周期的に発生する周期ノイズ成分と考えられる。
【0073】
図9は、一実施形態の電子内視鏡システムで得られるBモードの超音波画像に表れるノイズ成分の発生周波数の例を説明する図である。ノイズ成分を表す高輝度点の間隔xを測定すると、5.3cmが得られる。生体内の音速をvとすると、ノイズ発生周波数fnは、fn=v/2xで表すことができる。音速vを例えば1540m/sとすると、ノイズ成分の発生周波数fnは14.5kHzとなる。この周波数は、積分回路122あるいは反転増幅型積分回路におけるローパスフィルタの周波数特性の通過帯域になり、従来のノイズ処理では対応できない。なお、音速は生体組織に依存し、例えば、血液は1570m/s、脂肪は1450m/s、腎臓は1560m/s、筋肉は1590m/sである。平均的には1540m/sとなる。
【0074】
図10は、一実施形態の電子内視鏡システムで得られる超音波画像に表れる周期性のあるノイズ成分のパワースペクトルの例を模式的に示す図である。ノイズ成分の発生周期は一定ではなく、ある範囲の周期幅も持って変動しており、これにともない周波数領域におけるパワースペクトルのピーク位置もある帯域幅の範囲内で変動している。測定されるノイズ成分の最小周期をTmin、最大周期をTmaxとすると、図10で示すように、パワースペクトルは、最小周波数1/Tmaxと最大周波数1/Tminの間で変動している。
【0075】
周期的に発生するノイズ成分として図7に示した超音波画像のノイズ発生周波数fnは、一例として計算した値は、14.5kHzであった。この周波数は、電子内視鏡12や超音波画像用プロセッサ30で使用される信号が数MHzであり、スイッチング電源のスイッチング周波数も数百KHz以上であるのに対してかなり低い。
【0076】
このような周期的に発生するノイズ成分は、以下の発生要因に起因すると考えられる。
(1)複数の構成デバイスで用いるクロック信号の周波数あるいは複数の構成デバイスのスイッチング信号の周波数の整数倍の周波数が同期することにより、発生するノイズ成分。
(2)スイッチング電源で発生するノイズ成分。
(3)電子内視鏡挿入部54で発生するノイズ成分。
【0077】
(1)について
例えば、超音波画像用プロセッサ30で、超音波プローブ20の駆動信号の繰り返し周波数PRF(Pulse Repetition Frequency)をスイッチング電源のスイッチング周波数の整数倍にして同期させ、二次元Bモード画像を生成する場合を考える。スイッチング周波数をPRFの略整数倍にして超音波を出力した場合、Bモード画像にアーチファクトが発生する可能性がある。
【0078】
スイッチング周波数をPRFのほぼ整数倍にして超音波プローブ20と超音波画像用プロセッサ30との間で送受信を行うとき、エコー信号を検出する時間内にスイッチング電源のスイッチングが行われる。このため、エコー信号のそれぞれにスイッチングに由来するノイズ成分が発生することとなる。同じ超音波ビームから得られた複数のエコー信号を加算した場合、各エコー信号のそれぞれに発生したスイッチングに起因するノイズ成分が加算されてしまう。そのため、加算されるエコー信号の数に応じてスイッチングに起因するノイズ成分も加算され、これが輝度変調によって高輝度の輝度信号となり、Bモード画像で周期的に発生するノイズ成分となる。
【0079】
(2)について
スイッチング電源、例えば降圧型DC/DCコンバータは、スイッチング素子として、例えばMOSFETを使用している。MOSFETのオン/オフ時にコンバータのループ内に寄生要素である寄生インダクタンスと寄生容量で共振が起き、高周波ノイズが発生し、降圧型DC/DCコンバータの出力インダクタの浮遊容量を介して、DC/DCコンバータの出力にノイズ成分がのる。
【0080】
DC/DCコンバータ等のスイッチング電源では、ノイズ成分となるサージ/リンギング電圧を抑制することを目的としたサージ吸収素子やスナバ回路が設けられる。しかしながら、このようなノイズ対策を行ったとしても、完全にノイズ成分を無くすことは困難であり、スイッチング周波数を変えたとしても、ノイズ成分の発生タイミング(周期)が変わるだけで、無くならない。このため、スイッチング周波数を変えることが、複数のスイッチング電源からのノイズ成分が同期して重畳される現象を防ぐ点から好ましい。
【0081】
図11は、一実施形態の電子内視鏡システムで用いる複数のスイッチング電源のノイズがエコー信号に重畳された例を示す図である。例えば、3個のスイッチング電源の直流出力Vda、Vdb、Vdcに重畳されたノイズ成分が、あるタイミングで同期して共振ノイズ成分となり、エコー信号に重畳される。この共振ノイズ成分が、スイッチング周波数の設定によって周期的に発生する場合がある。この場合、この共振ノイズ成分がBモード画像において周期的に発生するノイズ成分となる。
【0082】
(3)について
図12は、一実施形態の電子内視鏡システムで用いる電子内視鏡の挿入部でのノイズ要因の例を説明する図である。挿入部54の先端には、上述したように、照明部14、撮像素子16と超音波プローブ20が設けられている。照明部14には、ライトガイド94により光が伝送されている。撮像素子16には、撮像素子駆動信号ライン142と撮像素子出力信号ライン144が接続されている。超音波プローブ20には、超音波素子の駆動信号と出力信号が伝送する超音波素子駆動・出力信号ライン146が接続されている。また、挿入部54には、必要に応じて、後述する電子内視鏡位置測定装置110の送信コイル118が巻回されている。
【0083】
なお、電子内視鏡システム10を用いるとき、体腔内に挿入した電子内視鏡12が体腔内のどの位置にあるかを、磁気を利用して位置を特定することができる電子内視鏡位置測定装置110を用いる場合もある。ここで、電子内視鏡位置測定装置110について説明する。
【0084】
図13は、一実施形態の電子内視鏡システム10で用いる電子内視鏡位置測定装置110の一例の概略を示す図である。電子内視鏡位置測定装置110に用いられる送信コイル118は、電子内視鏡12の挿入部54に所定の間隔で複数個巻回され、電流によって磁界を発生する。複数個の送信コイル118-1、118-2、・・・、118-nは、電子内視鏡12を体腔内に挿入したときに、各位置で磁界を発生し、受信コイル116で受信して内視鏡の位置を測定する。なお、図13では、送信コイル118が挿入部54にあり、受信コイル116が外部にある場合を示しているが、送信コイル118が外部にあり、受信コイル116が内視鏡にある場合もある。
【0085】
受信コイル116は、複数のコイルブロックを有し、例えば、ベッドの横に配置される。受信コイル116の各コイルブロックは、3方向にそれぞれのコイル面が直交するように巻回されている。コイルはそのコイル面に直交する軸方向成分の磁界の強度に比例した信号を検出するようになっている。コイルブロックは、発生している磁界を受信して電圧信号に変換し、この電圧信号を検出結果として出力している。これらの送信コイル118及び受信コイル116は、駆動部112によって動作状態が制御される。
【0086】
各送信コイル118-1、118-2、・・・、118-nは、撮像画像用プロセッサ22を介して駆動部112から高周波数の正弦波が供給される。各送信コイル118-1、118-2、・・・、118-nは、正弦波が印加されることで、磁界を伴う電磁波を周囲に放射する。なお、駆動部112は、各送信コイル118-1、118-2、・・・、118-nが磁界を発生するタイミングを個別に指定することもできる。
【0087】
受信コイル116は、送信コイル118が発生した磁界を受信し、受信した磁界により電流を発生し、電圧の信号に変換する。信号は、受信コイル116から駆動部112に送られる。駆動部112は、受信コイル116からの信号を位置特定部114に与え、増幅処理等の所定の信号処理を施した後A/D変換により、デジタルデータにする。
【0088】
位置の特定は、デジタルデータに対して高速フーリエ変換により周波数を抽出し、各送信コイル118-1、118-2、・・・、118-nの正弦波に対応する周波数成分の磁界検出情報に分離抽出する。分離した磁界検出情報の各デジタルデータから超音波プローブ20に設けられた各送信コイル118-1、118-2、・・・、118-nの空間位置座標を算出する。さらに位置特定部114は、各送信コイル118-1、118-2、・・・、118-nの位置座標を連結して、線状の挿入形状画像を電子内視鏡位置画像として生成する。
【0089】
また、挿入部の入口部分に位置するコイル位置から挿入部の先端に位置するコイル位置にまでの長さを挿入長として算出することもできる。
【0090】
このような電子内視鏡位置測定装置110を用いた場合に、送信コイル118の駆動信号は、エコー信号に周期的に発生するノイズ成分の発生原因となる場合がある。
【0091】
(3)の説明に戻り、上記信号ライン及び送信コイル118の間には、浮遊容量が存在し、静電結合により超音波素子駆動・出力信号ライン146にノイズが誘導される。浮遊容量C1は、撮像素子駆動信号ライン142と超音波素子駆動・出力信号ライン146間の浮遊容量である。浮遊容量C2は、撮像素子出力信号ライン144と超音波素子駆動・出力信号ライン146間の浮遊容量である。浮遊容量C3は、超音波素子駆動・出力信号ライン146とアース間の浮遊容量である。浮遊容量C4は、超音波素子駆動・出力信号ラインと送信コイル118間の浮遊容量である。さらに、浮遊容量C5、C6、C7は、アースと撮像素子駆動信号ライン142、撮像素子出力信号ライン144、送信コイル118との間の浮遊容量である。
【0092】
上記浮遊容量により、超音波素子駆動・出力信号ライン146は各ラインと静電結合され、各ラインの信号として流れる電流が超音波素子駆動・出力信号ライン146にディファレンシャルモードのノイズ成分となって重畳される。さらに、各信号ラインとアースとの間に発生する浮遊容量C5~C7は、静電結合によりコモンモードのノイズ成分となって電流が流れ、このノイズ成分が超音波素子駆動・出力信号ライン146に重畳される。
【0093】
その他、送信コイル118の磁界及び外部EM波ノイズも超音波素子駆動・出力信号ライン146に重畳される。さらには、図6で示したように、エコー信号をデジタル化するA/D変換器124のクロック信号126にもEM波ノイズとして、超音波素子駆動・出力信号ライン146に重畳される可能性がある。通常これらのノイズは微小であるが、重畳された場合は超音波画像に周期性のあるノイズ成分として表れる場合がある。
【0094】
電子内視鏡内の撮像素子16及び超音波プローブ20への接続ラインは、シールド材を用いてノイズ成分を抑えている。具体的には、シールド材の反射損失、吸収損失、及び多重反射補正を利用して、ノイズ成分を抑えている。反射損失は、シールド材が反射することで生じる損失である。吸収損失は、シールド材にEM波が入射したときに流れる誘導電流が流れることで生じる損失である。多重反射補正では、シールド材内部に侵入したEM波の一部が境界で反射し、それが複数回繰り返すうちに外部に漏れることを利用してノイズ成分を抑える。多重反射補正では、シールド材の厚さ、表皮効果とEM波の波長を考慮して補正する。
【0095】
このようなシールド材による挿入部54のノイズ対策を行うと、挿入部54の外径は大きくなるため、挿入部54の細系化が十分にできない。また、電子内視鏡12の機器性能の向上のために、駆動信号あるいは出力信号を微小信号にする、あるいは高周波信号にすると、ノイズ成分の問題が発生し易くなるため、超音波画像の高画質化に悪影響を及ぼす可能性がある。このため、シールド材によるノイズ成分の抑制は難しい。
【0096】
周期的に発生するノイズ成分の発生原因は一つではなく、様々なノイズ成分の複合的な現象と考えられる。この周期的に発生するノイズ成分を抑制して超音波画像の高画質化を図るためには、エコー信号に周期的に発生する、予め設定した閾値レベル以上のノイズ成分を検出して、検出したノイズ成分を抑制することが必要である。ここで、ノイズ成分の抑制には、エコー信号に上記ノイズ成分が含まれないように抑制する方法と、ノイズ成分を含んだエコー信号から得られる二次元のBモード画像に対して画像処理をして、ノイズ画素を無くす方法がある。
【0097】
(ノイズ成分の抑制)
図14は、一実施形態の電子内視鏡システムで周期的に発生するノイズ成分が重畳されたエコー信号の例を示す図である。ノイズ成分はBモード画像において高輝度の部分に対応し、超音波プローブ20の駆動信号によって生体組織で反射したエコー信号よりも大きな振幅となっている波形である。このため、ノイズ検出部34で、予め設定した閾値レベル以上の信号をノイズ成分と判定して検出する。
【0098】
図15は、一実施形態の電子内視鏡システムで生成する超音波画像中のノイズ成分を抑制する方法の一例を説明する図である。エコー信号は、増幅回路120、積分回路122、A/D変換器124を通ってデジタルエコー信号となる。ノイズ検出部34は、予めノイズレベルの閾値を設定し、第1エコー信号に含まれ、この閾値以上の信号をノイズ成分と判定する。
【0099】
振幅等抽出部174は、ノイズ検出部34に設けられる。振幅等抽出部174は、ノイズ成分として検出されたデジタルエコー信号の振幅、周波数、及び位相を抽出する。振幅、周波数、及び位相は、Aモードのエコー信号の波形から抽出される。振幅等抽出部174は、予め設定した閾値以上のノイズレベルを有する成分をノイズ成分と判定するが、このような判定に代えて、例えば、FFTを利用した周波数分析を行うことにより、設定された閾値レベル以上のスペクトルピークが存在する成分をノイズ成分と判定してもよい。また、振幅等抽出部174は、ノイズ成分として検出されたデジタルエコー信号の周期(T1、T2、T3、・・・)を測定する。このとき、ある周期以下の短周期を除くのが好ましい。周期は、例えば、Aモード表示のデジタルエコー信号の波形から、デジタルエコー信号のFFTを利用した周波数分析により得られるパワースペクトルのピーク周波数から算出する周期を利用して、ノイズ成分の複数の発生時点を特定し、発生時点間の時間間隔を算出することで、周期(T1、T2、T3、・・・)を求めることができる。振幅等抽出部174は、上述した方法で、周期幅を算出する。このように振幅等抽出部174は、周期幅を算出し、ノイズ発生周期と周期幅を利用してノイズ成分を検出するので、検出精度は高い。
【0100】
ノイズ抑制成分生成部172は、振幅等抽出部174において抽出した振幅、周波数、及び位相を利用して、ノイズ抑制成分を生成する。ノイズ抑制成分生成部172は、生成したノイズ抑制成分を、超音波素子駆動・出力信号ライン146に出力し、第2エコー信号に印加する。
図16は、ノイズ抑制成分の一例を示す図であり、図14に示すノイズ成分を抑制する成分である。図16に示すノイズ抑制成分は、図14に示すノイズ成分と逆位相の成分である。図16に示すノイズ抑制成分の振幅及び周波数は、ノイズ成分の振幅及び周波数と等しい。なお、ノイズ抑制成分は、図16に示す例以外に、例えば、振幅がノイズ成分の振幅より小さいものであってもよい。図17は、ノイズ抑制成分が付加されたエコー信号の一例を示す図であり、図16に示すノイズ抑制成分が、図14に示すエコー信号に付加された信号を示す。
このように、ノイズ抑制成分がエコー信号に付加されることで、エコー信号に重畳したノイズ成分がキャンセルされ、エコー信号におけるノイズ成分の発生が抑制される。これにより、ノイズ成分の少ない高品質の超音波画像が生成される。ノイズ抑制成分の第2エコー信号への付加は、超音波プローブ20に駆動信号を送信しているときを除き、エコー信号を受信している間行われる。ノイズ抑制性成分は、後続して出力するすべてのエコー信号を第2エコー信号として付加されることが好ましい。
【0101】
より詳しく説明すると、電子内視鏡システム10では、超音波プローブ20から出力するエコー信号には様々なノイズが重畳されており、多くは高調波成分を含むランダムなノイズである。このため、高調波成分を除去することで高画質化を図っている。しかしながら、周期的に発生するノイズ成分は、多くの信号や、その高調波が同期して発生するものと思われ、高調波が同期する周期は低周波領域にあり、大きな振幅を有する。このため、超音波画像用プロセッサ30は、ノイズ検出部34を備え、予め設定した閾値レベル以上の周期的に発生するエコー信号をノイズと判断し、後続するエコー信号中での発生をノイズ抑制部36で抑制する。
【0102】
したがって、電子内視鏡システム10では、周期的に発生するノイズは振幅の大きなノイズ成分であることを利用して、閾値レベルを設けることにより検出する一方、検出したノイズ成分が後続するエコー信号において小さくなるように抑制部36がノイズ成分を抑制するので、高画質の超音波画像を得ることができる。
【0103】
ノイズ抑制成分が付加されたエコー信号は、ノイズ抑制成分補正部176(図15)において、補正されることが好ましい。補正は、ノイズ抑制成分が付加されたエコー信号においてノイズ成分のレベルが低減されるよう、ノイズ抑制成分の振幅、周波数、及び位相の少なくともいずれか1つを調整することにより行われる。周期的に発生するノイズ成分に周期幅があると、検出したノイズ成分の発生周期と異なる発生周期で、後続するエコー信号にノイズ成分が発生するおそれがある。また、ノイズ成分の振幅、周波数、位相は、検出後に、何らかの原因、例えば、他の部屋等においてAC電源を動力源とする装置の使用が開始されることで変化する可能性もある。そのため、検出したノイズ成分に基づいてノイズ抑制成分を生成し後続するエコー信号に付加しても、ノイズ成分の発生を十分に抑えられない場合がある。そこで、ノイズ抑制成分補正部176において、エコー信号に付加されたノイズ抑制成分を補正することで、ノイズ抑制成分を付加したエコー信号中のノイズ成分を低減することが好ましい。ノイズ成分が、ノイズ抑制成分の付加によって既に抑制されている場合は、さらにノイズレベルが低減される。このようにノイズ成分をフィードバック調整することより、ノイズ抑制成分が付加されたエコー信号において、生体組織で反射したエコー信号以外の成分を最小化でき、ノイズ成分の発生を抑制する効果が維持される。
【0104】
ノイズ抑制成分の補正は、具体的に、ノイズ抑制成分が付加された第2エコー信号のうち、振幅等抽出部174により検出された第1エコー信号中のノイズ成分と対応する成分の信号レベルを低減する処理を行う。そのような処理は、例えば、ノイズ抑制成分の振幅、周波数、位相を変化させることにより行われる。
【0105】
ノイズ検出部34は、ノイズ抑制成分が補正されたエコー信号を対象としてノイズ成分の検出を行うことが好ましい。ノイズ抑制成分を補正しても、エコー信号に含まれるノイズ成分を抑制できない場合に、例えば、ノイズが発生していることを術者に知らせることができる。そのため、超音波画像表示部46は、ノイズ抑制成分が付加されたエコー信号中にノイズ成分が検出された場合に、ノイズ成分の抑制を促す表示を表示画面に表示させることが好ましい。このような表示を行うことで、ノイズがあることを術者に知らせるとともに、術者にノイズ成分を抑制するための対策を講じることを促し、超音波画像での診断に影響がないようにすることができる。ノイズ成分の抑制を促す表示は、術者にノイズ成分を抑制するための対策を講じることを促す表示であり、そのような対策として、例えば、電子内視鏡システム10の保守、修理を行う業者への連絡や、AC電源入力部48のプラグの接続先(コンセント)を変更することが挙げられる。
【0106】
なお、第2エコー信号中のノイズ成分の検出に用いられる閾値レベルは、第1エコー信号中のノイズ成分の検出に用いられる閾値レベルと同じ値である。ノイズ抑制成分の補正は、超音波プローブ20に駆動信号を送信しているときを除き、ノイズ抑制成分を付加したエコー信号を受信している間行うことが好ましい。
【0107】
ノイズ成分の検出は、上述の実施形態では、予め設定した閾値を用いて検出する、或は周波数分析を用いて検出するが、これらに代えて機械学習をした予測モデルを用いて、すなわち、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を用いて検出してもよい。
【0108】
AIによる検出では、ノイズ検出部34において、周期的にノイズ成分が発生するエコー信号のない教師用超音波画像と、周期的にノイズ成分の発生している教師用超音波画像とを教師データとして機械学習により特徴量を抽出する。これにより、周期性のあるノイズ成分の有無を予め学習させることができる。この学習結果をもとに、入力された超音波画像の周期性のあるノイズ成分の有無を判定する。周期的にノイズ成分の発生している教師用超音波画像には、ノイズ検出部34あるいは振幅等抽出部174によって周期的に発生しているノイズ成分が検出された超音波画像を用いることも好ましい。
【0109】
図18は、一実施形態の電子内視鏡システムにおいて人工知能(AI)による学習と周期的に発生するノイズ成分の有無の判断をおこなうプロセスの例を説明する図である。ノイズ成分推論モデル230は、ノイズ成分有無の情報を与えた教師用超音波画像から機械学習により特徴量を抽出して作成される。このノイズ成分推論モデル230に超音波画像を入力することにより、ノイズ成分推論モデル230が内部で抽出した特徴量からノイズ成分の有無を判定することができる。特徴量としては、ノイズ成分の振幅、ノイズ成分の周期性、ノイズ成分の広がり等がある。
【0110】
ノイズ検出部34のノイズ成分推論モデル230は、例えば、ニューラルネットワークを利用して作成される。ニューラルネットワークは、例えば、画像認識で広く応用されている畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)が好適に用いられる。
【0111】
図19は、ノイズ抑制の動作フローを示す図である。まず、ステップS1において、超音波画像を生成する。超音波画像は、超音波プローブ20からのエコー信号を輝度変調部128で濃淡画素に変換し、超音波画像生成部130で生成される。ステップS2で、周期性のあるノイズを検出する。ノイズの検出は、予め定められた閾値以上の信号をノイズとして検出する。ノイズが検出されなかったときは、終了する。
【0112】
ノイズが検出されたときは、ステップS3で、ノイズ成分の振幅、周波数、位相の抽出を行う。抽出は、振幅等抽出部174により行われる。ステップS4では、抽出されたノイズ成分の振幅、周波数、位相を利用してノイズ抑制成分の生成を行う。ステップS5では、生成したノイズ抑制成分が第2エコー信号に付加される。ノイズ抑制成分の生成及び付加は、ノイズ抑制成分生成部172により行われる。ステップS6では、ノイズ抑制成分が付加された第2エコー信号においてノイズ抑制成分の補正を行い、ノイズが補正されているかを確認するため、ノイズ検出部34において、閾値レベル以上のノイズを検出する。ノイズが検出されたときは、ステップS7で警告を行い、終了する。警告は、超音波画像表示部46に表示する。この場合は、ノイズがあることを術者に知らせ、超音波画像での診断に影響がないようにする。ノイズが検出されなかったときは、終了する。
【0113】
図12を参照して説明したように、上述した電子内視鏡システムでは、静電結合及び/又は電磁結合の影響により外部ノイズが超音波素子駆動・出力信号ライン146に重畳する。そこで、一実施形態の電子内視鏡システムでは、超音波素子駆動・出力信号ライン146に重畳する外部ノイズを検出するために、超音波素子駆動・出力信号ライン146を含むケーブルのシールド(外部導体)の近くにアンテナを設ける。アンテナによって検出された外部ノイズ成分(振幅、周波数、位相)を利用してノイズ抑制成分を生成し、アンテナから超音波素子駆動・出力信号ライン146を含むケーブルのシールドにノイズ抑制成分を印加する。それによって、当該シールドにおいて外部ノイズ成分がキャンセルされ、超音波素子駆動・出力信号ライン146に重畳する外部ノイズ成分が低減する。
【0114】
図20は、一実施形態の電子内視鏡システムにおいて、超音波素子駆動・出力信号ライン146に重畳する外部ノイズを低減するための構成例を概念的に示している。
図20に示すように、一実施形態の電子内視鏡システムでは、超音波プローブ20から延びる超音波素子駆動・出力信号ライン146のケーブルのシールド148の近傍にアンテナ182が配置される。なお、シールド148は、超音波画像用プロセッサ30又は電子内視鏡12において接地されている。
アンテナ182から放射される電波が超音波素子駆動・出力信号ライン146に重畳しないように、例えば、アンテナ182と超音波素子駆動・出力信号ライン146の間の距離を確保する方策や、アンテナから放射される電波の向きと超音波素子駆動・出力信号ライン146が延びる方向とを直交させる方策等を採ることが好ましい。
【0115】
図20に示す電子内視鏡システムにおいて、アンテナ182に加え、サーキュレータ184、ノイズ検出部34A、及び、ノイズ抑制成分生成部172A(ノイズ抑制部の一例)は、全体として、ノイズ抑制部36Aを構成する。ノイズ抑制部36Aは、超音波画像用プロセッサ30内に設けられてもよいし、電子内視鏡12内に設けられてもよい。あるいは、ノイズ抑制部36Aの構成の一部が、超音波画像用プロセッサ30及び電子内視鏡12の一方に設けられ、ノイズ抑制部36Aの構成の一部が超音波画像用プロセッサ30及び電子内視鏡12の他方に設けられてもよい。
【0116】
サーキュレータ184は、アンテナ182による送信及び受信を切り替えるために設けられる。サーキュレータ184を設けることは必須ではなく、送信アンテナと受信アンテナを別個に設けてもよい。
アンテナ182は、例えばループアンテナやモノポールアンテナであり、良好な電磁結合が得られるようにシールド148の近くに配置する。それによって、ノイズ検出部34Aは、アンテナ182を介してシールド148に重畳する外部ノイズ成分を検出し、外部ノイズ成分の振幅、周波数、位相を取得する。
なお、ノイズ検出部34Aは、ノイズ検出前の前処理として、アンテナ182からの受信信号(外部ノイズ成分に相当する信号)に対して図15の増幅回路、積分回路、A/D変換器に対応する処理を行ってもよい。
【0117】
ノイズ抑制成分生成部172Aは、前述したノイズ抑制成分生成部は172と同様に、検出された外部ノイズ成分と逆位相の成分であるノイズ抑制成分を生成する。ノイズ抑制成分の振幅及び周波数は、外部ノイズ成分の振幅及び周波数と等しいことが好ましいが、ノイズ抑制成分の振幅は外部ノイズ成分の振幅より小さくてもよい。
ノイズ抑制成分生成部172Aは、外部ノイズ成分のレベルが最小化されるように、ノイズ抑制成分の振幅、周波数、及び位相の少なくともいずれか1つを調整することが好ましい。
ノイズ抑制成分生成部172Aによって生成されたノイズ抑制成分は、アンテナ182から超音波素子駆動・出力信号ライン146のシールド148に印加される。それによって、シールド148において外部ノイズがキャンセルされ、超音波素子駆動・出力信号ライン146に対するノイズ重畳を抑制することができる。結果として、高画質の超音波画像を得ることができる。
【0118】
ノイズ検出の期間(つまり、アンテナ182による受信期間)とノイズ抑制成分の印加の期間(つまり、アンテナ182の送信期間)の切り替えタイミングは限定されない。一実施形態では、所定時間ごとにノイズ検出を行い、ノイズ検出を行わない期間では、直前に行ったノイズ検出結果に基づくノイズ抑制成分がシールド148に印加される。
なお、ノイズ抑制成分が印加された後に、シールド148に重畳する外部ノイズ成分を検出し、当該外部ノイズ成分のノイズレベル(例えば振幅)が所定の閾値以下にならない場合には、例えば、警告を超音波画像表示部46に表示させるとよい。
【0119】
以上、本発明の電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の電子内視鏡システは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0120】
本発明は、2020年9月24日に日本国特許庁に出願された特願2020-159687の特許出願に関連しており、この出願のすべての内容がこの明細書に参照によって組み込まれる。
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