(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ラジカル硬化シリコーン感圧接着剤及び組成物、並びにその調製方法及びフレキシブルディスプレイデバイスにおける使用方法
(51)【国際特許分類】
C09J 183/04 20060101AFI20230905BHJP
C09J 183/02 20060101ALI20230905BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230905BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230905BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J183/02
C09J11/06
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2022575268
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 CN2021090248
(87)【国際公開番号】W WO2022226779
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2022-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カオ、チン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、イェン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、ポーチー
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-527268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン感圧接着剤を形成するためのラジカル反応硬化性組成物であって、
(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分であって、
出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、0重量%~16.3重量%の、単位式(R
M
2R
USiO
1/2)
2(R
M
2SiO
2/2)
aの(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムであって、式中、各R
Mが、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の独立して選択された一価炭化水素基であり、各R
Uが、2~30個の炭素原子の独立して選択された一価脂肪族不飽和炭化水素基であり、下付き文字aが、前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムに20mil(0.51mm)~80mil(2.03mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、可塑性が、ASTM D926に基づいて、25℃で3分間1kgの荷重を重量4.2gの球形試料に適用することによって測定され、結果が1000分の1インチ(mil)で測定され、手順がASTM D926に基づく、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム、及び
34.7~51.8重量%の単位式((HO)R
M
2SiO
1/2)
2(R
M
2SiO
2/2)
a’の(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムであって、式中、各R
Mが、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の独立して選択された一価炭化水素基であり、各下付き文字a’
は、(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムに20mil(0.51mm)~80mil(2.03mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、ここで、可塑性は、ASTM D926に基づいて、25℃で3分間1kgの荷重を重量4.2gの球形試料に適用することによって測定され、結果は、1/1000インチ(mil)で測定され、手順は、ASTM D926に基づく、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガム、
を含み、
ただし、(A-1)前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム:(A-2)前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムの重量比{(A-1):(A-2)比}<0.47:1である、ポリジオルガノシロキサンガム成分と、
39.3重量%~45.4重量%の単位式(R
M
3SiO
1/2)
z’(SiO
4/2)
o’Z
p’の(B)ポリオルガノシリケート樹脂であって、式中、各R
Mが、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の独立して選択された一価炭化水素基であり、
Zは加水分解性基含有基を表し、下付き文字p’が、前記樹脂に>3%~10%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値を有し、下付き文字z’及びo’が、z’>4、o’>1であるような値を有し、数量(z’+o’)が、前記樹脂に500g/mol~5,000g/molの数平均分子量を提供するのに十分な値を有し、
(A)前記ポリジオルガノシロキサンガム成分及び(B)前記ポリオルガノシリケート樹脂が、(B):(A)(樹脂:ガム比)
=0.7:1~0.9:1の重量比で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂と、
出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、0.01重量%~5重量%の(C)ラジカル開始剤と、
出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、0.3重量%~7.1重量%の(D)トリアルキルボレートと、
前記組成物中の全出発材料を組み合わせた重量に基づいて、0重量%~90重量%の(E)溶剤と、を含む、ラジカル反応硬化性組成物。
【請求項2】
(A)前記ポリジオルガノシロキサンガム成分において、各R
Mが、1~6個の炭素原子の独立して選択されたアルキル基であり、各R
Uが、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から独立して選択され、下付き文字aが、(A-1)前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムに対して30mil(0.76mm)~70mil(1.78mm)の可塑性を提供するのに十分であり、下付き文字a’が、(A-2)前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムに対して30mil(0.76mm)~70mil(1.78mm)の可塑性を提供するのに十分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(B)前記ポリジオルガノシリケート樹脂において、各R
Mが、1~6個の炭素原子の独立して選択されたアルキル基であり、各Zが、OHであり、前記数量(z’+o’)が、3,800g/mol~4,300g/molの数平均分子量を有する(B)前記ポリオルガノシリケート樹脂を提供するのに十分な値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(C)前記ラジカル開始剤が、ジベンゾイルペルオキシドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
(D)前記トリアルキルボレートが、トリエチルボレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
湿式鋳造方法であって、
1)請求項1に記載の組成物を基材に適用することと、
2)前記組成物を硬化させて、前記基材上に前記シリコーン感圧接着剤を形成することと、を含む、湿式鋳造方法。
【請求項7】
乾式鋳造方法であって、
1)請求項1に記載の組成物を剥離ライナーに適用することと、
2)前記組成物を硬化させて、前記剥離ライナー上に前記シリコーン感圧接着剤を形成することと、
3)前記シリコーン感圧接着剤を基材に適用することと、を含む、乾式鋳造方法。
【請求項8】
前記基材が、シリコーンエラストマーである、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の方法によって調製された、物品。
【請求項10】
前記物品が、フレキシブルディスプレイデバイスにおけるレンズ(フレーム)取り付け層の構成要素である、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記物品が、フレキシブルディスプレイデバイスにおけるシリコーンヒンジ及び結合層の構成要素である、請求項9に記載の物品。
【請求項12】
前記物品が、フレキシブルディスプレイデバイスの光学構成要素であり、前記基材が、光学シリコーンエラストマーである、請求項9に記載の物品。
【請求項13】
折り畳み可能なディスプレイデバイスの構成要素であって、
I)シリコーンエラストマー層、及び
II)前記シリコーンエラストマー層に接着されたシリコーン感圧接着剤層であって、前記シリコーン感圧接着剤層が、請求項1~5のいずれか一項に記載のラジカル反応硬化性組成物の生成物である、シリコーン感圧接着剤層を含む、構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
なし
【0002】
(発明の分野)
本発明は、シリコーン感圧接着剤並びにその調製及び使用の方法に関する。より具体的には、本発明は、硬化して、フレキシブルディスプレイデバイスにおける使用に好適なシリコーン感圧接着剤を形成するラジカル反応硬化性組成物に関する。
【0003】
序論
曲げ、折り畳み、屈曲、圧延、又は伸張などによって変形され得るフレキシブルディスプレイデバイスが開発されている。フレキシブルディスプレイデバイスは、消費者のニーズ又はフレキシブルディスプレイデバイスが使用される状況に応じて変形させることができる。典型的には、ディスプレイデバイスの様々な構成要素は、複数の層で作製され、層が互いに接着し、フレキシブルディスプレイデバイスが変形されるとき、構成要素の故障を引き起こす損傷を受けないことが重要である。
【0004】
液体シリコーンゴム(liquid silicone rubbers、LSR)及び高粘度ゴム(high consistency rubbers、HCR)を含む、様々なシリコーンエラストマーは、フレキシブルディスプレイデバイスにおいて異なる層を形成するのに有用であり得る。市販のLSRとしては、SILASTIC(商標)9202-50 LSR、SILASTIC(商標)LCF 3760、及びSILASTIC(商標)LCF 3600が挙げられる。光学LSRとしては、成形可能な光学シリコーンエラストマーである、SILASTIC(商標)MS-1001、MS-1002、MS-1003、MS-4001、MS-4002、及びMS-4007、並びにこれらも光学シリコーンエラストマーである、SYLGARD(商標)182、184、及び186が挙げられる。市販のHCRとしては、XIAMETER(商標)RBB-2030-40EN、XIAMETER(商標)RBB-6660-60EN、XIAMETER(商標)RBB-2002-30 Base、XIAMETER(商標)RBB-2004-60、及びXIAMETER(商標)RBB-2220-70が挙げられる。DOWSIL(商標)VE-8001フレキシブルシリコーン接着剤などの充填シリコーンエラストマーもまた好適である。全てのこれらのシリコーンエラストマーは、Midland,Michigan,USAのDow Silicones Corporationから市販される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上で説明したようなシリコーンエラストマーは、フレキシブルディスプレイデバイス内の他の層に接着することが困難であるという欠点に悩まされ得る。したがって、シリコーンエラストマーに接着することができ、かつフレキシブルディスプレイデバイスにおいて故障を引き起こさないシリコーン感圧接着剤に対する産業上の必要性が存在する。
【0006】
ラジカル反応硬化性組成物は、シリコーン感圧接着剤を形成することができる。組成物を作製するための方法、及び組成物を使用して物品を製造するための方法が提供される。物品は、フレキシブルディスプレイデバイスの構成要素を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、フレキシブルディスプレイデバイス100の構成要素の部分断面図を示す。
【0008】
参照番号
100 フレキシブルディスプレイデバイス構成要素の部分
101 基材
101b 基材101の表面
102 シリコーン感圧接着剤
102a シリコーン感圧接着剤102の表面
102b シリコーン感圧接着剤102の反対側の表面
103 シリコーンエラストマー
103a シリコーンエラストマー103の表面
【発明を実施するための形態】
【0009】
シリコーン感圧接着剤を形成するためのラジカル反応硬化性組成物は、
(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分であって、
出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、0重量%~16.3重量%の、単位式(RM
2RUSiO1/2)2(RM
2SiO2/2)aの(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムであって、式中、各RMは、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の独立して選択された一価炭化水素基であり、各RUは、2~30個の炭素原子の独立して選択された一価脂肪族不飽和炭化水素基であり、下付き文字aは、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムに20mil(0.51mm)~80mil(2.03mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有する、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム、及び
34.7重量%~<51.8重量%の単位式((HO)RM
2SiO1/2)2(RM
2SiO2/2)a’の(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムであって、式中、各RMは、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の独立して選択された一価炭化水素基であり、各下付き文字a’は、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムに20mil(0.51mm)~80mil(2.03mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有する、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムを含み、
ただし、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム:(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムの重量比{(A-1):(A-2)比}が、0~<0.47:1である、ポリジオルガノシロキサンガム成分と、
39.3重量%~45.4重量%の単位式(RM
3SiO1/2)z’(SiO4/2)o’Zp’の(B)ポリオルガノシリケート樹脂であって、式中、各RMは、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の独立して選択された一価炭化水素基であり、下付き文字p’は、樹脂に>3%~10%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値を有し、下付き文字z’及びo’は、z’>4、o’>1であるような値を有し、数量(z’+o’)は、樹脂に500g/mol~5,000g/molの数平均分子量を提供するのに十分な値を有し、
(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分及び(B)ポリオルガノシリケート樹脂は、(B):(A)(樹脂:ガム比)<1.1:1の重量比で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂と、
出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、0.01重量%~5重量%の(C)ラジカル開始剤と、
出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、0.03重量%~7.1重量%の(D)トリアルキルボレートと、
組成物中の全出発材料を組み合わせた重量に基づいて、0重量%~90重量%の(E)溶剤と、を含む。
【0010】
(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分
ラジカル反応硬化性組成物は、(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分を含む。ポリジオルガノシロキサンガム成分は、(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムを含む。ポリジオルガノシロキサンガム成分は、任意選択的に、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムを更に含み得る。
【0011】
出発材料(A-1)、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムは、単位式:(RM
2RUSiO1/2)2(RM
2SiO2/2)aを有し、式中、各RMは、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子の独立して選択された一価炭化水素基であり、各RUは、2~30個の炭素原子の独立して選択された一価脂肪族不飽和炭化水素基であり、下付き文字aは、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムに、20mil(0.51mm)~80mil(2.03mm)、代替的に30mil(0.76mm)~70mil(1.78mm)、及び代替的に50mil(1.27mm)~65mil(1.65mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、可塑性は、ASTM D926に基づいて、25℃で3分間1kgの荷重を重量4.2gの球形試料に適用することによって測定され、結果は、1/1000インチ(mil)で測定され、手順は、ASTM D926に基づく。
【0012】
単位式(A-1)において、各RMは、脂肪族不飽和を含まない炭素原子1~30個の独立して選択された一価炭化水素基である。代替的に、各RMは1~12個の炭素原子、及び代替的に1~6個の炭素原子を有し得る。RMに好適な一価炭化水素基は、アルキル基並びにアリール基及びアラルキル基などの芳香族基によって例示される。「アルキル」は、環状、分岐状又は非分岐状の飽和一価炭化水素基を意味する。アルキルは、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、並びにデシル、並びに炭素原子6個以上の分岐状アルキル基;並びにシクロペンチル及びシクロヘキシルなどの環状アルキル基によって例示されるが、これらに限定されない。「アリール」とは、完全に不飽和の環状炭化水素基を意味する。アリールは、シクロペンタジエニル、フェニル、アントラセニル及びナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。単環式アリール基は、炭素原子5~9個、代替的に炭素原子6~7個、及び代替的に炭素原子5~6個を有し得る。多環式アリール基は、炭素原子10~17個、代替的に炭素原子10~14個、及び代替的に炭素原子12~14個を有し得る。「アラルキル」とは、ペンダント及び/若しくは末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を意味する。例示的なアラルキル基としては、トリル、キシリル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル及びフェニルブチルが挙げられる。代替的に、各RMは、アルキル及びアリールからなる群から独立して選択されてもよい。代替的に、各RMはメチル及びフェニルから独立して選択されてもよい。代替的に、各RMはアルキルであってもよい。代替的に、各RMはメチルであってもよい。
【0013】
単位式(A-1)において、各RUは、2~30個の炭素原子の独立して選択された一価脂肪族不飽和炭化水素基である。代替的に、各RUは、2~12個の炭素原子、及び代替的に2~6個の炭素原子を有し得る。好適な一価脂肪族不飽和炭化水素基としては、アルケニル基及びアルキニル基が挙げられる。「アルケニル」とは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。好適なアルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、及びヘプテニル(3~7個の炭素原子の、分岐状異性体及び直鎖状異性体を含む)、及びシクロヘキセニルによって例示される。「アルキニル」とは、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。好適なアルキニル基は、エチニル、プロピニル、及びブチニル(炭素原子2~4個の分岐状異性体及び直鎖状異性体を含む)によって例示される。代替的に、各RUは、ビニル、アリル、又はヘキセニルなどのアルケニルであってもよい。
【0014】
ポリジオルガノシロキサンガムは、当該技術分野において既知であり、対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化などの方法により調製することができる。ラジカル反応硬化性組成物において使用するための好適なポリジオルガノシロキサンガムの例は、
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニル)シロキサン、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニル)シロキサン、
iv)フェニル、メチル、ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
v)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
vi)ジメチルヘキセニル-シロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニル)シロキサン、
vii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニル)シロキサン、
viii)i)~vii)のうちの2つ以上の組み合わせによって例示される。代替的に、ポリジオルガノシロキサンガムは、i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
v)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、並びにi)及びv)の組み合わせ、からなる群から選択されてもよい。
【0015】
出発材料(A-1)、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムは、任意選択的であり、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムの量は、ラジカル反応硬化性組成物中で0であり得る。ラジカル反応硬化性組成物中に存在するとき、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムは、>0、代替的に少なくとも5重量%、代替的に少なくとも6重量%、代替的に少なくとも0重量%、及び代替的に少なくとも10重量%の量で存在し得、同時に、その量は、出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、最大16.3重量%、代替的に最大15重量%、代替的に最大11重量%、及び代替的に最大10重量%であり得る。代替的に、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムの量は、出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、>0重量%~16.3重量%、代替的に10重量%~16.3重量%、及び代替的に11重量%~16.3重量%であり得る。
【0016】
出発材料(A)ポリジオルガノシロキサン成分は、(A-2)単位式:{(HO)RM
2SiO1/2}2(RM
2SiO2/2)a’のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムを含み、式中、RMは、上記の通りであり、下付き文字a’は、(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムに20mil(0.51mm)~80mil(2.03mm)、代替的に30mil(0.76mm)~70mil(1.78mm)、及び代替的に50mil(1.27mm)~65mil(1.65mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、可塑性は、ASTM D926に基づいて、25℃で3分間1kgの荷重を重量4.2gの球形試料に適用することによって測定され、結果は、1/1000インチ(mil)で測定され、手順は、ASTM D926に基づく。
【0017】
出発材料(A-2)としての使用に好適なヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムは、当該技術分野において知られており、対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化などの方法によって調製され得る。ラジカル反応硬化性組成物における出発材料(A-2)として使用するための好適なヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムの例は、
i)ビス-ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ビス-ヒドロキシル末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
iii)ビス-ヒドロキシル末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
iv)フェニル、メチル、ヒドロキシル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
v)i)~iv)のうちの2つ以上の組み合わせによって例示される。代替的に、出発材料(A-2)は、ビス-ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンを含む。
【0018】
出発材料(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムは、出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、34.7重量%~51.8重量%の量でラジカル反応硬化性組成物中に存在する。代替的に、(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムは、少なくとも34.7重量%、代替的に少なくとも35重量%、代替的に少なくとも37重量%、代替的に少なくとも38重量%の量で存在し得、一方で同時に、この量は、同じ基準で、最大51.8重量%、代替的に最大40.3重量%、及び最大40重量%であり得る。
【0019】
出発材料(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムは、任意選択的であり、その量は、ラジカル反応硬化性組成物中で0であり得る。しかしながら、出発材料(A-1)が存在するとき、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム、及び(A-2)ビス-ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンは、重量比(A-1):(A-2)が、>0:1~0.47:1、代替的に>0:1~0.4:1、及び代替的に>0:1~0.3:1であり得るような量で存在し得る。代替的に、重量比(A-1):(A-2)は、少なくとも0.1:1、代替的に少なくとも0.2:1、及び代替的に少なくとも0.28:1であり得、一方で同時に、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムが存在するとき、重量比(A-1):(A-2)は、最大0.47:1、代替的に最大0.3:1、及び代替的に最大0.3:1であり得る。代替的に、比(A-1):(A-2)は、0.28:1~0.47:1であってもよい。
【0020】
(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分
ラジカル反応硬化性組成物は、出発材料(B)ポリオルガノシリケート樹脂を更に含む。式RM
3SiO1/2(式中、RMは上記の通りである)の一官能性単位(「M」単位)、及び式SiO4/2の四官能性シリケート単位(「Q」単位)を含む、ポリオルガノシリケート樹脂。代替的に、RM基の少なくとも1/3、代替的に少なくとも2/3はアルキル基(例えば、メチル基)である。代替的に、M単位は(Me3SiO1/2)及び(Me2PhSiO1/2)により例示され得る。ポリオルガノシリケート樹脂は、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びヘプタンなどの液体炭化水素によって例示される下記のものなどの溶剤に、又は低粘度の直鎖状及び環状ポリジオルガノシロキサンなどの液体有機ケイ素化合物に可溶性である。
【0021】
調製された場合、ポリオルガノシリケート樹脂は、上記のM単位及びQ単位を含み、ポリオルガノシロキサンはケイ素結合ヒドロキシル基を有する単位を更に含み、式Si(OSiRM
3)4[式中、RMは上記の通りである]のネオペンタマーを含んでもよく、例えば、ネオペンタマーはテトラキス(トリメチルシロキシ)シランであってもよい。29Si NMRスペクトル法を用いて、M単位及びQ単位のヒドロキシル含有量及びモル比を測定することができ、この比は、M単位及びQ単位をネオペンタマーから外した{M(樹脂)}/{Q(樹脂)}として表される。M:Q比は、ポリオルガノシリケート樹脂における樹脂性部分のトリオルガノシロキシ基(M単位)の総数の、樹脂性部分中のシリケート基(Q単位)の総数に対するモル比を表す。M:Q比は、0.5:1~1.5:1であってもよい。
【0022】
ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、存在するRMによって表される炭化水素基の種類などの様々な要因によって異なる。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、ネオペンタマーを表すピークが測定値から除外されるとき、GPCを使用して測定される数平均分子量を指す。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、500g/mol~5,000g/mol、代替的に2,500g/mol~5,000g/mol、代替的に2,700g/mol~4,900g/mol、代替的に2,900g/mol~4,700g/mol、及び代替的に3,800g/mol~4,300g/molである。Mnを測定するための好適なGPC試験方法は、米国特許第9,593,209号第31欄の参考例1にて開示されている。
【0023】
米国特許第8,580,073号、第3欄5行目~第4欄31行目、及び米国特許出願公開第2016/0376482号、段落[0023]~[0026]は、MQ樹脂を開示するために参照により本明細書に組み込まれ、このMQ樹脂は、本明細書に記載のラジカル反応硬化性組成物における使用に好適なポリオルガノシリケート樹脂である。ポリオルガノシリケート樹脂は、対応するシランの共加水分解又はシリカヒドロゾルキャッピング法などの任意の好適な方法によって調製することができる。ポリオルガノシリケート樹脂は、Daudtらの米国特許第2,676,182号、Rivers-Farrellらの米国特許第4,611,042号、及びButlerらの米国特許第4,774,310号に開示されるものなどのシリカヒドロゾルキャッピングプロセスによって調製され得る。上記のDaudtらの方法は、酸性条件下でシリカヒドロゾルと、トリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン又はこれらの混合物とを反応させることと、M単位及びQ単位を有するコポリマーを回収することと、を伴う。得られるコポリマーは、概して、2~5重量パーセントのヒドロキシル基を含む。
【0024】
ポリオルガノシリケート樹脂を調製するために使用される中間体は、トリオルガノシラン及び4つの加水分解性置換基を含むシラン又はアルカリ金属シリケートであり得る。トリオルガノシランは、式RM
3SiX1(式中、RMは上記の通りであり、X1は、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、ヒドロキシル、オキシモ、又はケトキシモなどの加水分解性置換基、代替的にハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルなどの加水分解性置換基を表す)を有し得る。4つの加水分解性置換基を有するシランは、式SiX2
4を有し得、式中、各X2は、ハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルである。好適なアルカリ金属シリケートとしては、ナトリウムシリケートが挙げられる。
【0025】
上記のように調製されたポリオルガノシリケート樹脂はキャップされていない樹脂であり、この樹脂は典型的には、ケイ素結合ヒドロキシル基、すなわち式HOSi3/2及び/又はHORM
2SiO1/2のものを含有する。ポリオルガノシリケート樹脂は、NMR分光法による測定で>3%~10%であるケイ素結合ヒドロキシル基を含んでもよい。
【0026】
出発材料(B)、ポリオルガノシリケート樹脂は、単位式(RM
3SiO1/2)z’(SiO4/2)o’Zp’を有し得、式中、RMは、上記の通りであり、下付き文字z’及びo’は、o’>1、かつ下付き文字z’>4であるような値を有し、数量(o’+z’)は、樹脂に上記のようなMn(例えば、500g/mol~5,000g/mol、代替的に1,000g/mol~4,700g/mol、代替的に2,900g/mol~4,700g/mol、代替的に2,900g/mol~4,500g/mol、及び代替的に3,800g/mol~4,300g/mol)を与えるのに十分な値を有し、下付き文字p’は、樹脂に上記のような加水分解性基含有量(例えば、>3%~10%)を与えるのに十分な値を有する。出発材料(B)ポリオルガノシリケート樹脂は、出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、>0重量%~1.5重量%、代替的に1.25重量%~1.45重量%、及び代替的に1.26重量%~1.42重量%の量で存在し得る。
【0027】
ラジカル反応硬化性組成物は、(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分を、出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、39.3重量%~45.4重量%、代替的に39.3重量%~45重量%、代替的に39.3重量%~44.9重量%、及び代替的に39.3重量%~43.9重量%の量で含む。
【0028】
出発材料(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分、及び出発材料(B)ポリオルガノシリケート樹脂は、ラジカル反応硬化性組成物中に、(B)ポリオルガノシリケート樹脂:(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分の重量比{すなわち、(B):(A)比}≦1.1:1を提供するのに十分な量で存在し得る。代替的に、(B):(A)比は、少なくとも0.77:1、代替的に少なくとも0.8:1であり得、一方で同時に(B):(A)比は、最大1:1、代替的に最大0.8:1であり得る。代替的に、(B):(A)比は、0.7:1~0.9:1であり得、代替的に0.77:1~0.88:1であり得る。
【0029】
(C)ラジカル開始剤
ラジカル反応硬化性組成物中の出発材料(C)は、ラジカル開始剤である。好適なラジカル開始剤は、ペルオキシド化合物、アゾ化合物、又はレドックス対を含んでもよい。ペルオキシド化合物は、ベンゾイルペルオキシド;4-モノクロロベンゾイルパーオキシド;t-ブチルペルオクトエート;t-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルクミルパーオキシド、tert-ブチルオキシド2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサン;2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド;ジ-tertブチルパーオキシ-ジイソプロピルベンゼン;1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサン-3,2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン;クミル-tert-ブチルパーオキシド;ジクミルパーオキシド;ジ-t-ブチルペルオキシド;t-ブチルヒドロペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;ジ-t-アミルペルオキシド、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせなどの、有機ペルオキシド又はヒドロペルオキシドであり得る。加えて、ジ-ペルオキシドラジカル開始剤は、単独で、又は他のラジカル開始剤と組み合わせて使用され得る。かかるジ-パーオキシドラジカル開始剤としては、限定されるものではないが、1,4-ビス-(t-ブチルパーオキシカルボ)シクロヘキサン、1,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、及び2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシンが挙げられる。好適なペルオキシド化合物は、当技術分野において既知であり、St.Louis,Missouri,USAのSigma-Aldrich,Inc.などの様々な供給業者から市販される。
【0030】
アゾ系化合物は、1-t-アミルアゾ-l-シアノシクロヘキサン、アゾ-ビス-イソブチロニトリル、及び1-t-ブチルアゾ-シアノシクロヘキサン、2,2’-アゾ-ビス-(2-メチル)ブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(シアノバレリックアシッド)、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせなどの脂肪族アゾ系化合物であってもよい。アゾ化合物は、当該技術分野において既知であり、例えば、Wilmington,Delaware,USAのThe Chemours Companyから商品名VAZO(商標)WSPの下、市販される。
【0031】
代替的に、(C)ラジカル開始剤は、イソアスコルビン酸を含み得る。代替的に、(C)ラジカル開始剤は、酸化成分としての開始剤と、還元成分と、を含むレドックス対であり得る。代替的に、イソアスコルビン酸及びt-アミルヒドロペルオキシド又はt-ブチルヒドロペルオキシドなどの疎水性有機ヒドロペルオキシドを含むレドックス対は、(C)ラジカル開始剤として使用され得る。好適な開始剤及び/又はレドックス対の実施例は、Bardmanらの米国特許第6,576,051号、第11欄、第16行から始まる、に開示されている。
【0032】
出発材料(C)は、1つのラジカル開始剤又は2つ以上のラジカル開始剤の組み合わせを含み得る。ラジカル反応硬化性組成物に添加される出発材料(C)の量は、選択されるラジカル開始剤の種類及び量、並びに(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分及び(B)ポリオルガノシリケート樹脂の選択を含む、様々な要因によって決まるが、(C)ラジカル開始剤は、出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、0.1重量%~5重量%、代替的に1重量%~4重量%、代替的に2重量%~3重量%の量で存在し得る。
【0033】
(D)トリアルキルボレート
ラジカル反応硬化性組成物中の出発材料(D)は、式B(ORA)3のトリアルキルボレートであり、式中、各RAは、1~30個の炭素原子、代替的に1~12個の炭素原子、及び代替的に1~6個の炭素原子の独立して選択されたアルキル基である。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル若しくはn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、若しくはsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、若しくはtert-ペンチル)、ヘキシル、6個の炭素原子の分岐状アルキル基、又はシクロペンチル若しくはシクロヘキシルなどの環状アルキル基であってもよい。好適なトリアルキルボレートの例としては、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリブチルボレート、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。代替的に、トリアルキルボレートは、トリエチルボレートであってもよい。
【0034】
トリアルキルボレートは、当技術分野で既知であり、Stangeの米国特許第3,020,308号に記載されているような既知の方法によって作製され得る。トリアルキルボレートもまた市販されており、例えば、トリエチルボレートは、Meryer(Shanghai)Chemical Technology Co.,Ltd.から入手可能であり、DOWSIL(商標)7429 PSA添加剤などのシリコーン組成物用のトリアルキルボレート添加剤もまた、当該技術分野で既知であり、Dow Silicones Corporationから入手可能である。
【0035】
ラジカル硬化性組成物に添加される(D)トリアルキルボレートの量は、出発材料(A)~(D)を組み合わせた重量に基づいて、0.3重量%~7.1重量%である。代替的に、(D)トリアルキルボレートの量は、少なくとも0.3重量%、代替的に少なくとも1重量%、及び代替的に少なくとも1.5重量%であり得、一方で同時に、この量は、同じ基準で、最大7.1重量%、代替的に最大4重量%、代替的に最大3.92重量%、代替的に最大1.6重量%、及び代替的に最大1.58重量%であり得る。代替的に、(D)トリアルキルボレートの量は、同じ基準で、1.5重量%~7.1重量%、及び代替的に3.9重量%~7.1重量%であり得る。
【0036】
(E)溶剤
ラジカル反応硬化性組成物は、任意選択的に、出発材料(E)溶剤を更に含み得る。溶剤は、炭化水素、ケトン、酢酸エステル、エーテル、及び/又は平均重合度が3~10の環状シロキサンなどの有機溶剤であってもよい。溶剤に好適な炭化水素は、(E-1)ベンゼン、ベンゼン、トルエン、若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素、(E-2)ヘキサン、ヘプタン、オクタン、若しくはイソパラフィンなどの脂肪族炭化水素、又は(E-3)これらの組み合わせ、であり得る。代替的に、溶剤は、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテルであり得る。好適なケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが挙げられる。好適な酢酸エステルとしては、酢酸エチル又は酢酸イソブチルが挙げられる。好適なエーテルとしては、ジイソプロピルエーテル又は1,4-ジオキサンが挙げられる。重合度が3~10、代替的に3~6である好適な環状シロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。代替的に、溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、エチルベンゼン、エチルアセテート、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0037】
溶剤の量は、ラジカル反応硬化性組成物のために選択された溶剤の種類、並びに選択された他の出発材料の量及び種類を含む、様々な要因によって決まる。しかしながら、溶剤の量は、ラジカル反応硬化性組成物中の全ての出発材料を組み合わせた重量に基づいて、0重量%~90重量%、代替的に0重量%~60重量%、代替的に20~60重量%、代替的に45重量%~65重量%、及び代替的に50重量%~60重量%の範囲であり得る。溶剤は、例えば、上記の1つ以上の出発材料の混合及び送達を補助するために、ラジカル反応硬化性組成物の調製中に添加することができる。溶剤の全て又は一部分は、他の出発材料のうちの1つ以上とともに添加され得る。例えば、ポリオルガノシリケート樹脂及び/又はラジカル開始剤は、ラジカル反応硬化性組成物中の他の出発材料と組み合わせる前に、溶剤に溶解させてもよい。溶剤の全て又は一部分は、任意選択的に、ラジカル反応硬化性組成物の調製後に除去され得る。
【0038】
ラジカル反応硬化性組成物の作製方法
ラジカル反応硬化性組成物は、周囲温度又は高温における混合などの任意の都合のよい手法により、上記の全ての出発材料を組み合わせることを含む方法によって調製することができる。例えば、ラジカル反応硬化性組成物が高温で調製されるとき、及び/又はラジカル反応硬化性組成物が一液型組成物として調製されるとき、ラジカル反応抑制剤は、ラジカル開始剤の前に添加され得る。
【0039】
方法は、溶剤中に1つ以上の出発材料(例えば、ラジカル開始剤及び/又はポリオルガノシリケート樹脂)を送達することを更に含んでもよく、ラジカル反応硬化性組成物中の他の出発材料のうちの1つ以上と組み合わせるときに、溶剤中に溶解させてもよい。当業者であれば、結果として得られるラジカル反応硬化性組成物が無溶剤である(すなわち、溶剤を含有しないか、又は出発材料の送達に由来する微量の残留溶剤を含有し得る)ことが所望される場合、出発材料のうちの2つ以上を混合した後で溶剤が除去され得、この場合では、溶剤は、ラジカル反応硬化性組成物中に意図的に添加されないことを理解するであろう。
【0040】
代替的に、ラジカル反応硬化性組成物は、例えば、ラジカル反応硬化性組成物を使用前に長期間、例えば、ラジカル反応硬化性組成物を光学シリコーンエラストマー又は他の基材上に適用する前に最大6時間貯蔵するとき、多液型組成物として調製され得る。多液型組成物では、ラジカル開始剤は、ケイ素結合水素ヒドロキシル基、例えば、(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分及び(B)ポリオルガノシリケート樹脂を有する任意の出発材料とは別の部分内に貯蔵され、この部分は、ラジカル反応硬化性組成物の使用直前に組み合わされる。
【0041】
例えば、多液型組成物は、混合などの任意の都合のよい手法により、ポリジオルガノシロキサンガム成分、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンのうちの少なくともいくつかを含む出発材料、及び任意選択的に、上記の1つ以上の他の出発材料(ラジカル開始剤以外)を組み合わせて、基部を形成することによって調製され得る。硬化剤は、混合などの任意の都合のよい手法により、ラジカル開始剤を含む出発材料、及び任意選択的に上記の1つ以上の他の出発材料(ポリジオルガノシロキサンガム成分及びポリオルガノシリケート樹脂以外)を組み合わせることによって調製され得る。出発材料は、周囲温度又は高温で混合され得る。溶剤は、基部、硬化剤部、又は別個の追加部に添加され得る。代替的に、ポリオルガノシリケート樹脂を含む出発材料、及び溶剤の一部又は全てを、別個の追加部に添加してもよい。二液型組成物が使用される場合、ベース部の量の、硬化剤部に対する重量比は、1:1~10:1の範囲とすることができる。ラジカル反応硬化性組成物は、ラジカル反応を介して硬化して、シリコーン感圧接着剤を形成する。
【0042】
使用方法
上述の方法は、1つ以上の追加の工程を更に含んでもよい。上記のように調製したラジカル反応硬化性組成物を使用して、基材上に接着剤物品、例えば、(上記のラジカル反応硬化性組成物を硬化させることにより調製された)シリコーン感圧接着剤を形成してもよい。したがって、方法は、ラジカル反応硬化性組成物を基材に適用することを更に含み得る。
【0043】
基材にラジカル反応硬化性組成物を適用することは、任意の都合の良い手法によって実施され得る。例えば、ラジカル反応硬化性組成物は、グラビアコーター、コンマコーター、オフセットコーター、オフセットグラビアコーター、ローラーコーター、リバースローラーコーター、エアナイフコーター、又はカーテンコーターによって基材上に適用され得る。
【0044】
基材は、ラジカル反応硬化性組成物を硬化させて、基材上にシリコーン感圧接着剤を形成するために使用される硬化条件(以下に記載)に耐えることができる任意の材料であり得る。例えば、120℃以上、代替的に150℃以上の温度での熱処理に耐えることができる任意の基材が、好適である。かかる基材のために好適な材料の例としては、ポリマーフィルム及び/又は発泡体を含み、これらは、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(polyamideimide、PAI)、ポリエーテルスルフィド(polyether sulfide、PES)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane、TPU)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer、TPE)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、又はポリプロピレン(polypropylene、PP)を含み得る。代替的に、基材は、ガラスであり得る。代替的に、基材は、例えば、シリコーン感圧接着剤が、乾式鋳造法において使用されるとき、剥離ライナーであってもよい。基材の厚さは重要ではないが、厚さは、5μm~300μm、代替的に10μm~200μmであり得る。代替的に、基材は、PE、PU、TPE、TPU、及びシリコーンエラストマーからなる群から選択され得る。
【0045】
液体シリコーンゴム(LSR)及び高粘度ゴム(HCR)が、シリコーンエラストマー用に使用され得る。シリコーンエラストマーは、フレキシブルディスプレイデバイスにおける用途、すなわち、製作されるフレキシブルディスプレイデバイスの構成要素に基づいて、選択され得る。
【0046】
例えば、光学シリコーンエラストマー(光学LSR)は、当該技術分野において既知であり、例えば、Hasegawaらの米国特許第8,859,693号、及びAkitomoらの米国特許第8,853,332号に記載されている。光学LSRは、市販される。例えば、光学LSRは、成形可能な光学シリコーンエラストマーであるSILASTIC(商標)MS-1001、MS-1002、MS-1003、MS-4001、MS-4002、及びMS-4007を含み、並びにSYLGARD(商標)182、184、及び186は、他の光学シリコーンエラストマーであり、これらは全てDow Silicones Corporationから市販されている。これらのLSRは、フレキシブルディスプレイデバイスにおける光学構成要素を製作するために好適である。
【0047】
代替的に、製作されるフレキシブルディスプレイデバイスの構成要素が、レンズ(フレーム)構成要素であるとき、SILASTIC(商標)9202-50 LSR、SILASTIC(商標)LCF 3760、及びSILASTIC(商標)LCF 3600などのLSR、又はXIAMETER(商標)RBB-2030-40EN、XIAMETER(商標)RBB-6660-60EN、XIAMETER(商標)RBB-2002-30 Base、XIAMETER(商標)RBB-2004-60、若しくはXIAMETER(商標)RBB-2220-70などのHCRが使用され得る。
【0048】
代替的に、製作されるフレキシブルディスプレイデバイスの構成要素がヒンジ構成要素であるとき、DOWSIL(商標)VE-8001フレキシブルシリコーン接着剤などの充填シリコーンエラストマーが、使用され得る。全てのシリコーンエラストマーブランドのDOWSIL(商標)、SILASTIC(商標)、SYLGARD(商標)、及びXIAMETER(商標)は、Dow Silicones Corporationから市販される。
【0049】
シリコーン感圧接着剤の基材への結合を改善するために、接着剤物品を形成するための方法は、任意選択的に、ラジカル反応硬化性組成物又はシリコーン感圧接着剤を適用する前に、基材を処理することを更に含み得る。基材の処理は、ラジカル反応硬化性組成物又はシリコーン感圧接着剤を基材に適用する前に、プライマーを適用すること、又は基材をコロナ放電処理、エッチング、若しくはプラズマ処理に供することなどの任意の都合のよい手法によって実施され得る。
【0050】
本明細書で記載される方法は、任意選択的に、例えば、接着剤物品の使用前のシリコーン感圧接着剤を保護するために、基材の反対側のシリコーン感圧接着剤に取り外し可能な剥離ライナーを適用すること、を更に含み得る。剥離ライナーは、ラジカル反応硬化性組成物の硬化前、硬化中、又は硬化後に、代替的に硬化後に、適用することができる。接着剤物品は、光学構成要素、レンズ(フレーム)構成要素、又はヒンジ構成要素などの、フレキシブルディスプレイデバイスにおいて使用するための構成要素であってもよい。
【0051】
フレキシブルディスプレイデバイスの構成要素におけるシリコーン感圧接着剤の使用
図1は、フレキシブルディスプレイデバイス構成要素(100)の部分断面図を示す。構成要素(100)は、表面(102a)及び反対側の表面(102b)を有するシリコーン感圧接着剤(102)を含む。シリコーン感圧接着剤(102)の反対側の表面(102b)は、シリコーンエラストマー(103)の表面(103a)に、以下の実施例に記載される試験方法によって測定される際、>400g/インチの剥離接着力で接着する。シリコーン感圧接着剤(102)は、10μm~200μmの厚さを有し得る。シリコーン感圧接着剤(102)は、表面(101a)及び反対側の表面(101b)を有する基材(101)に接着する。シリコーン感圧接着剤(102)の表面(102a)は、基材(101)の反対側の表面(101b)に接触する。基材(101)は、PE、PU、TPU、TPE、及びシリコーンエラストマー(シリコーンエラストマー(103)と同じであっても異なっていてもよい)からなる群から選択され得、10μm~200μmの厚さを有し得る。シリコーンエラストマー(103)は、上記のようにHCRであってもよい。
【0052】
上記のラジカル反応硬化性組成物及び方法は、湿式鋳造を介するフレキシブルディスプレイデバイス構成要素(100)の製作において使用され得る。例えば、ラジカル反応硬化性組成物は、基材(101)の反対側の表面(101b)に適用され、硬化して、シリコーン感圧接着剤(102)を形成し得る。代替的に、本明細書おいて説明されたラジカル反応硬化性組成物は、シリコーンエラストマー(103)の表面(103a)に適用され、硬化して、シリコーン感圧接着剤(102)を形成し得る。代替的に、ラジカル反応硬化性組成物は、剥離ライナーの表面に適用され、硬化して、シリコーン感圧接着剤(102)を形成し得る。その後、シリコーンエラストマー(103)は、シリコーン感圧接着剤(102)の反対側の表面(102b)と接触させてもよく、基材(101)は、シリコーン感圧接着剤(102)の表面(102a)と接触し得る。圧力が適用されて、基材(101)、シリコーン感圧接着剤(102)、及びシリコーンエラストマー(103)の層をともに接着させてもよい。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は、当業者に本発明を例解するために提供され、特許請求の範囲内に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。本明細書において使用された出発材料を表1に記載する。
【0054】
【0055】
表1では、DOWSIL(商標)、SILASTIC(商標)、及びSYL-OFF(商標)ブランドの出発材料は、Dow Silicones Corporationから市販された。
【0056】
この参考例1では、ラジカル反応硬化性組成物の試料を、以下の表2及び表3に示される出発材料及び量を使用して、以下のように調製した。量は、別様に示されない限り重量部である。出発材料(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分及び出発材料(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分を、得られる混合物が均質になるまで混合しながら(E)溶剤に溶解させた。次いで、出発材料(D)トリアルキルボレートを、上記混合物に十分にブレンドした。次いで、出発材料(C)ラジカル開始剤1、BPOを上記混合物に十分にブレンドした。全ての出発材料を、RTで混合した。
【0057】
【0058】
【0059】
表1のラジカル反応硬化性組成物は、出発材料とともに導入された少量の残留溶剤1を含有した。
【0060】
ラジカル反応硬化性組成物をPET基材上にコーティングする前に、DOWSIL(商標)7499 PSAプライマーを、オーブン内で、120℃で0.5分間加熱した後、0.20gsmの乾燥コーティング重量を提供するのに十分な厚さで基材上にコーティングした。基材上のプライマー層は、基材と硬化したシリコーン感圧接着剤との間に十分な結合を提供した。この参考例2では、ラジカル反応硬化性組成物を、基材上にコーティングし、以下の手順に従って硬化させた。上記のように調製された各試料を、50μm厚のPETフィルム(7499プライマーコーティング面)上に、80℃で2分間及び160℃で2分間オーブン内で加熱した後、50μm厚の乾燥コーティング重量を提供するのに十分な厚さで適用した。
【0061】
次いで、結果として得られたテープ試料を、幅1インチに切断し、次いで、シリコーン感圧接着剤が被着体に接触するように被着体に適用した。被着体は、SUS及びSi Rubber Aであり、試験前にシリコーン感圧接着剤を被着体に接触させた後、試料をRTで20分間保持した。この試験を繰り返したが、試験前、試料を70℃で1日間保持した。
【0062】
【0063】
【0064】
この参考例3では、参考例2において説明されたように調製した試料を、以下のように試験した。上記のように調製した各テープ試料を、各テープを被着体から剥離させ、PETフィルムから被着体上に移動したシリコーン感圧接着剤がいくらか存在するかを確認することによって、SUS及びSiゴムA被着体への接着力に関して試験した。接着力/剥離試験機AR-1500を使用した。各PETシートの幅は1インチであった。剥離速度及び剥離角度は、それぞれ0.3m/分及び180°であった。単位はグラム/インチであった。結果は、以下の表6及び表7に示される。
【0065】
SUS試験方法に対する接着力は、試験規格ASTM D3330を参照する。
ステンレス鋼プレートを溶剤で洗浄する。テープ試料(幅1インチ)をステンレス鋼プレートに適用する。標準的な2kgの試験ローラを用いて10mm/秒の速度で各方向に2回回転させる。20分の滞留時間後に、300mm/分の速度で180°の剥離角度を有するAR-1500を用いて鋼プレートから試料を剥離する。
【0066】
シリコーンゴムAへの接着力試験方法は、試験規格ASTM D3330を参照する。シリコーンゴムシートを溶剤で洗浄する。テープ試料(幅1インチ、25.4mm)をシリコーンゴムシートに適用する。標準的な2kgの試験ローラを用いて10mm/秒の速度で各方向に2回回転させる。20分の滞留時間後に、剥離角度180°、速度300mm/分で、AR-1500を使用して、シリコーンゴムシートから試料を剥離する。
【0067】
シリコーンゴムへの接着力(70℃-1日)試験方法は、試験規格ASTM D3330を参照する。シリコーンゴムシートを溶剤で洗浄する。テープ試料(幅1インチ、25.4mm)をシリコーンゴムシートに適用する。標準的な2kgの試験ローラを用いて10mm/秒の速度で各方向に2回回転させる。試料を70℃で1日(24時間)エージングさせた後、剥離角度180°、速度300mm/分で、AR-1500を使用して、シリコーンゴムシートから試料を剥離する。
【0068】
レオロジーデータ(-30℃、-20℃、25℃及び100℃におけるTg、G’)試験方法は、試験規格ASTM D4440-15を参照する。
各々0.5mm~1.5mmの厚さを有する硬化した純粋なシリコーン感圧接着剤フィルム(基材なし)を、TA DHR-2又はARES-G2のいずれかのレオメーター上の直径8mmの平行プレート上でレオロジー特性試験のために調製した。異なる温度(すなわち、200℃~-80℃)における損失弾性率G’’及び貯蔵弾性率G’を、1Hz及び0.25%の歪み下で3℃/分の冷却速度で振動モードを有する温度ランププログラムによって測定した。タンデルタを、G”/G’によって計算した。ガラス転移温度は、タンデルタのピーク点における温度として定義した。結果は、以下の表6及び表7に示される。
【0069】
【0070】
【0071】
産業上の利用可能性
上記の実施例は、ラジカル反応硬化性組成物が調製され得、これが硬化して、ステンレス鋼への接着力が>300g/インチ、シリコーンエラストマーへの接着力がRTで>500g/インチ、及びシリコーンエラストマーへの接着力が70℃で>1,400g/インチという望ましい接着力特性を有するシリコーン感圧接着剤を形成することを示す。高い接着力は、シリコーン感圧接着剤と基材(被着体)との間のインターフェースを、(例えば、折り畳み、曲げ、圧延、又は伸張試験による)フレキシブルディスプレイデバイスの繰り返される変形試験にわたって層間剥離に抵抗するのに十分な強度にする。シリコーン感圧接着剤はまた、Tg≦5℃、-30℃におけるG’<3MPa、-20℃におけるG’<2MPa、25℃におけるG’<0.4MPa、及び100℃におけるG’<0.1MPaを有してもよい。広い温度範囲における低いTg及び低いG’は、シリコーン感圧接着剤を、(例えば、折り畳み、曲げ、圧延、及び伸張試験によって)繰り返される変形試験中に他の層にかかる応力が低い状態で、広い温度範囲における使用に好適なものにする。この特性の組み合わせは、シリコーン感圧接着剤を、フレキシブルディスプレイデバイスの多層構成要素、特に、光学構成要素、
レンズ(フレーム)取り付け層、並びにシリコーンヒンジ及び結合層の作製における使用に好適なものにする。
【0072】
用語の定義及び使用
全ての量、比率、及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。明細書の文脈により別途指定がない限り、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、各々1つ以上を指す。「~を含む(comprising)」、「~から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「~からなる(consisting of)」の移行句は、Manual of Patent Examining Procedure Ninth Edition,Revision 08.2017,Last Revised January 2018のセクション2111.03 I.、II.、及びIIIに記載されているように使用される。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example, but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as, but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書において使用される略語は、表8における定義を有する。
【0073】
【0074】
本発明は例示的な様式で記載されており、使用されている用語は、限定というよりむしろ説明語の性質であるように意図されることを理解されたい。本明細書で個々の特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各々の要素は、個々にかつ又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0075】
更に、本発明を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は部分の値が明記されていなくても、その中の全部及び/又は部分の値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分範囲は、関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分及び範囲内に包含される任意の他の部分範囲に更に描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、範囲「0.3~7.1」は、下から3分の1、すなわち「0.3~2.5」、中間の3分の1、すなわち「2.6~4.8」、及び上から3分の1、すなわち「4.9~7.1」と更に描かれることができ、代替的に、範囲「0.3~7.1」は、部分範囲「0.3~1.5」、「1.5~7.1」、及び「3.9~7.1」並びに個々の値7.07、3.92、及び1.58を含み、各々、個別的かつ集合的に添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に個別的及び/又は集合的に依拠する場合があり、それらに適切な根拠を提供し得る。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。