IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シザーストリートの特許一覧 ▶ 古川 武志の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】毛髪仕上げコーム及びコーミング方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 24/02 20060101AFI20230906BHJP
   A45D 24/36 20060101ALI20230906BHJP
   A45D 44/00 20060101ALI20230906BHJP
   B25B 9/04 20060101ALN20230906BHJP
【FI】
A45D24/02
A45D24/36 B
A45D44/00 Z
B25B9/04
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020556162
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044676
(87)【国際公開番号】W WO2020100973
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2018215108
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518408316
【氏名又は名称】株式会社シザーストリート
(73)【特許権者】
【識別番号】512324971
【氏名又は名称】古川 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】古川 武志
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第2714246(CN,Y)
【文献】中国特許出願公開第102100436(CN,A)
【文献】実開昭48-095892(JP,U)
【文献】国際公開第2015/133644(WO,A1)
【文献】特開平04-202629(JP,A)
【文献】特開2006-193790(JP,A)
【文献】特開昭52-045445(JP,A)
【文献】特開2011-115526(JP,A)
【文献】特開2008-029687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 24/00-24/36
B26B 13/00
B25B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される前記複数の歯と、
を少なくとも一体に備えるコームであって、
前記コームの面粗さ測定による表面性状が、
前記コームの、前記胴、前記複数の歯の垂直方向に位置する前記胴、及び、前記複数の歯の上面及び下面、並びに、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記胴の側面について、0.070μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.40μm以下の最大高さ(Sz)、及び、12.000以下のクルトシス(Sku)であると共に、
前記コームの素材が、
C含有量:0.80%以上1.35%以下、Si含有量:0.25%以下、Mn含有量:0.35%以下、P含有量:0.03%以下、S含有量:0.006%以下、Ni含有量:1.30%以下、Cr含有量:0.50%以下の化学組成を有する炭素鋼、C含有量:1.00%以上1.50%以下、Si含有量:0.30%以下、Mn含有量:0.30%以下、P含有量:0.025%以下、S含有量:0.02%以下、Cr含有量:0.15%以上0.50%以下、V含有量:0.50%以下、W含有量:2.50%以下の化学組成を有する特殊鋼、及び、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下の化学組成を有するステンレス鋼の中から選択されるいずれかであることを特徴とするコーム。
【請求項2】
前記算術平均粗さ(Sa)が0.070μm以下であり、前記最大高さ(Sz)が1.00μm以下であり、前記クルトシス(Sku)が7.000以下であることを特徴とする請求項1に記載のコーム。
【請求項3】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される前記複数の歯と
前記胴の先端にあって、前記胴に延設される肩を介し、前記複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖と、
を少なくとも一体に備えるコームであって、
前記コームの面粗さ測定による表面性状が、
前記胴、前記複数の歯、前記肩、及び、前記櫛尖の垂直方向に位置する上面及び下面、並びに、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記胴及び前記肩の側面、並びに、前記櫛尖の先端方向に位置する側面について、0.070μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.40μm以下の最大高さ(Sz)、及び、12.000以下のクルトシス(Sku)であると共に、
前記コームの素材が、
C含有量:0.80%以上1.35%以下、Si含有量:0.25%以下、Mn含有量:0.35%以下、P含有量:0.03%以下、S含有量:0.006%以下、Ni含有量:1.30%以下、Cr含有量:0.50%以下の化学組成を有する炭素鋼、C含有量:1.00%以上1.50%以下、Si含有量:0.30%以下、Mn含有量:0.30%以下、P含有量:0.025%以下、S含有量:0.02%以下、Cr含有量:0.15%以上0.50%以下、V含有量:0.50%以下、W含有量:2.50%以下の化学組成を有する特殊鋼、及び、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下の化学組成を有するステンレス鋼のいずれかいずれかであることを特徴とするコーム。
【請求項4】
前記算術平均粗さ(Sa)が0.070μm以下であり、前記最大高さ(Sz)が1.00μm以下であり、前記クルトシス(Sku)が7.000以下であることを特徴とする請求項3に記載のコーム。
【請求項5】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される前記複数の歯と、
前記胴の先端にあって、前記胴に延設される肩を介し、前記複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖と、
前記胴及び前記複数の歯から前記櫛尖の反対方向に延設される櫛体と、
を少なくとも一体に備えるコームであって、
前記コームの面粗さ測定による表面性状が、
前記胴、前記複数の歯、前記肩、前記櫛尖、及び、前記櫛体の垂直方向に位置する上面及び下面、並びに、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記胴、前記肩、及び、前記櫛体の側面、並びに、前記櫛尖の先端方向に位置する側面について、0.070μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.40μm以下の最大高さ(Sz)、及び、12.000以下のクルトシス(Sku)であると共に、
前記コームの素材が、
C含有量:0.80%以上1.35%以下、Si含有量:0.25%以下、Mn含有量:0.35%以下、P含有量:0.03%以下、S含有量:0.006%以下、Ni含有量:1.30%以下、Cr含有量:0.50%以下の化学組成を有する炭素鋼、C含有量:1.00%以上1.50%以下、Si含有量:0.30%以下、Mn含有量:0.30%以下、P含有量:0.025%以下、S含有量:0.02%以下、Cr含有量:0.15%以上0.50%以下、V含有量:0.50%以下、W含有量:2.50%以下の化学組成を有する特殊鋼、及び、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下の化学組成を有するステンレス鋼のいずれかであることを特徴とするコーム。
【請求項6】
前記算術平均粗さ(Sa)が0.070μm以下であり、前記最大高さ(Sz)が1.00μm以下であり、前記クルトシス(Sku)が7.000以下であることを特徴とする請求項5に記載のコーム。
【請求項7】
前記複数の歯の対抗する側面の面粗さ測定による表面性状が、
0.070μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.40μm以下の最大高さ(Sz)、及び、12.000以下のクルトシス(Sku)であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のコーム
【請求項8】
前記複数の歯の対抗する側面の面粗さ測定による表面性状が、
0.070μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.00μm以下の最大高さ(Sz)、及び、7.000以下のクルトシス(Sku)であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のコーム。
【請求項9】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される前記複数の歯と、
前記胴の先端にあって、前記胴に延設される肩を介し、前記複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖と、
前記胴及び前記複数の歯から前記櫛尖の反対方向に延設される櫛体と、
前記櫛体に延設される把手と、
を少なくとも一体に備えているコームであって、
前記コームの面粗さ測定による表面性状が、
前記胴、前記複数の歯の垂直方向に位置する前記胴、及び、前記複数の歯の上面及び下面、並びに、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記胴の側面、並びに、前記肩及び前記櫛尖の垂直方向に位置する上面及び下面、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記肩の側面、並びに、前記櫛尖の先端方向に位置する側面、並びに、前記櫛体の垂直方向に位置する上面及び下面、並びに、前記櫛体の側面について、0.070μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.40μm以下の最大高さ(Sz)、及び、12.000以下のクルトシス(Sku)であると共に、
前記コームの素材が、
C含有量:0.80%以上1.35%以下、Si含有量:0.25%以下、Mn含有量:0.35%以下、P含有量:0.03%以下、S含有量:0.006%以下、Ni含有量:1.30%以下、Cr含有量:0.50%以下の化学組成を有する炭素鋼、C含有量:1.00%以上1.50%以下、Si含有量:0.30%以下、Mn含有量:0.30%以下、P含有量:0.025%以下、S含有量:0.02%以下、Cr含有量:0.15%以上0.50%以下、V含有量:0.50%以下、W含有量:2.50%以下の化学組成を有する特殊鋼、及び、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下の化学組成を有するステンレス鋼の中から選択されるいずれかであることを特徴とするコーム。
【請求項10】
前記算術平均粗さ(Sa)が0.070μm以下であり、前記最大高さ(Sz)が1.00μm以下であり、前記クルトシス(Sku)が7.000以下であることを特徴とする請求項9に記載のコーム。
【請求項11】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される前記複数の歯と、
前記胴の先端にあって、前記胴に延設される肩を介し、前記複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖と、
前記胴及び前記複数の歯から前記櫛尖の反対方向に延設される櫛体と、
前記櫛体に前記複数の歯の歯先と同じ方向に傾斜して延設される把手と、
を少なくとも一体に備えているコームであって
前記コームの面粗さ測定による表面性状が、
前記胴、前記複数の歯の垂直方向に位置する前記胴、及び、前記複数の歯の上面及び下面、並びに、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記胴の側面、並びに、前記肩及び前記櫛尖の垂直方向に位置する上面及び下面、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記肩の側面、並びに、前記櫛尖の先端方向に位置する側面、並びに、前記櫛体の垂直方向に位置する上面及び下面、並びに、前記櫛体の側面について、0.070μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.40μm以下の最大高さ(Sz)、及び、12.000以下のクルトシス(Sku)であると共に、
前記コームの素材が、
C含有量:0.80%以上1.35%以下、Si含有量:0.25%以下、Mn含有量:0.35%以下、P含有量:0.03%以下、S含有量:0.006%以下、Ni含有量:1.30%以下、Cr含有量:0.50%以下の化学組成を有する炭素鋼、C含有量:1.00%以上1.50%以下、Si含有量:0.30%以下、Mn含有量:0.30%以下、P含有量:0.025%以下、S含有量:0.02%以下、Cr含有量:0.15%以上0.50%以下、V含有量:0.50%以下、W含有量:2.50%以下の化学組成を有する特殊鋼、及び、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下の化学組成を有するステンレス鋼の中から選択されるいずれかであることを特徴とするコーム。
【請求項12】
前記算術平均粗さ(Sa)が0.070μm以下であり、前記最大高さ(Sz)が1.00μm以下であり、前記クルトシス(Sku)が7.000以下であることを特徴とする請求項11に記載のコーム。
【請求項13】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される前記複数の歯と、
前記胴の先端にあって、前記胴に延設される肩を介し、前記複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖と、
前記胴及び前記複数の歯から前記櫛尖の反対方向に延設される櫛体と、
前記櫛体に前記複数の歯の歯先と同じ方向に傾斜して延設される把手と、
前記把手の後端に形設される母指孔と、
を少なくとも一体に備えているコームであって、
前記コームの面粗さ測定による表面性状が、
前記胴、前記複数の歯の垂直方向に位置する前記胴、及び、前記複数の歯の上面及び下面、並びに、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記胴の側面、並びに、前記肩及び前記櫛尖の垂直方向に位置する上面及び下面、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記肩の側面、並びに、前記櫛尖の先端方向に位置する側面、並びに、前記櫛体の垂直方向に位置する上面及び下面、並びに、前記櫛体の側面について、0.100μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.60μm以下の最大高さ(Sz)、及び、12.000以下のクルトシス(Sku)であると共に、
前記コームの素材が、
C含有量:0.80%以上1.35%以下、Si含有量:0.25%以下、Mn含有量:0.35%以下、P含有量:0.03%以下、S含有量:0.006%以下、Ni含有量:1.30%以下、Cr含有量:0.50%以下の化学組成を有する炭素鋼、C含有量:1.00%以上1.50%以下、Si含有量:0.30%以下、Mn含有量:0.30%以下、P含有量:0.025%以下、S含有量:0.02%以下、Cr含有量:0.15%以上0.50%以下、V含有量:0.50%以下、W含有量:2.50%以下の化学組成を有する特殊鋼、及び、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下の化学組成を有するステンレス鋼の中から選択されるいずれかであることを特徴とするコーム。
【請求項14】
前記算術平均粗さ(Sa)が0.070μm以下であり、前記最大高さ(Sz)が1.00μm以下であり、前記クルトシス(Sku)が7.000以下であることを特徴とする請求項13に記載のコーム。
【請求項15】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される前記複数の歯と、
前記胴の先端にあって、前記胴に延設される肩を介し、前記複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖と、
前記胴及び前記複数の歯から前記櫛尖の反対方向に延設される櫛体と、
前記櫛体に前記複数の歯の歯先と同じ方向に傾斜して延設される把手と、
前記把手の後端に形設される母指孔とを一体に備えたコーム本体と、
動把手と前記動把手の一端に形設される薬指孔及び小指掛けとを一体に備えたコーム操作補助体の他端とが、
前記櫛体のほぼ中央において、軸を架け渡される要によって所定の回転角を回動可能に枢結されているコームであって、
前記コームの面粗さ測定による表面性状が、
前記胴、前記複数の歯の垂直方向に位置する前記胴、及び、前記複数の歯の上面及び下面、並びに、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記胴の側面、並びに、前記肩及び前記櫛尖の垂直方向に位置する上面及び下面、前記複数の歯の歯先と反対方向に位置する前記肩の側面、並びに、前記櫛尖の先端方向に位置する側面、並びに、前記櫛体の垂直方向に位置する上面及び下面、並びに、前記櫛体の側面について、0.070μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.40μm以下の最大高さ(Sz)、及び、12.000以下のクルトシス(Sku)であると共に、
前記コームの素材が、
C含有量:0.80%以上1.35%以下、Si含有量:0.25%以下、Mn含有量:0.35%以下、P含有量:0.03%以下、S含有量:0.006%以下、Ni含有量:1.30%以下、Cr含有量:0.50%以下の化学組成を有する炭素鋼、C含有量:1.00%以上1.50%以下、Si含有量:0.30%以下、Mn含有量:0.30%以下、P含有量:0.025%以下、S含有量:0.02%以下、Cr含有量:0.15%以上0.50%以下、V含有量:0.50%以下、W含有量:2.50%以下の化学組成を有する特殊鋼、及び、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下の化学組成を有するステンレス鋼の中から選択されるいずれかであることを特徴とするコーム。
【請求項16】
前記算術平均粗さ(Sa)が0.070μm以下であり、前記最大高さ(Sz)が1.00μm以下であり、前記クルトシス(Sku)が7.000以下であることを特徴とする請求項15に記載のコーム。
【請求項17】
前記複数の歯の対抗する側面の面粗さ測定による表面性状が、
0.070μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.40μm以下の最大高さ(Sz)、及び、12.000以下のクルトシス(Sku)であることを特徴とする請求項9~16のいずれか一項に記載のコーム。
【請求項18】
前記複数の歯の対抗する側面の面粗さ測定による表面性状が、
0.070μm以下の算術平均粗さ(Sa)、1.00μm以下の最大高さ(Sz)、及び、7.000以下のクルトシス(Sku)であることを特徴とする請求項9~16のいずれか一項に記載のコーム。
【請求項19】
前記複数の歯の前記上面は、直線状の傾斜面又は円弧状の傾斜面であって、前記複数の歯の前記下面は略水平であって、前記直線状の傾斜面と前記下面とが形成する傾斜角又は前記円弧状の傾斜面の接線と前記下面とが形成する傾斜角が5°以上15°以下であることを特徴とする請求項1~18のいずれか一項に記載のコーム。
【請求項20】
前記下面との傾斜角が39°以上90°未満で切断される歯先先端面を有することを特徴とする請求項19のいずれか一項に記載のコーム。
【請求項21】
前記胴に垂設される歯の先端部分の歯先の直線状の傾斜面と前記下面とが形成する傾斜角又は前記胴に垂設される歯の先端部分の歯先の円弧状の傾斜面の接線と前記下面とが形成する傾斜角が6°以上26°以下で、前記歯先の前記下面からの高さが0.7mm以上1.1mm以下となるように歯先収束面が形成されており、前記下面との傾斜角が39°以上90°未満で切断される歯先先端面を有することを特徴とする請求項20のいずれか一項に記載のコーム。
【請求項22】
前記歯先先端面を、更に、前記歯先先端面の幅が0.15mm以上0.45mm以下、前記歯先先端面の長さが0.15mm以上0.45mm以下の突起体を形成するように、前記下面との傾斜角が36°以上90°未満で前記歯先先端面を歯元側から切断して形設される歯先傾斜面を有することを特徴とする請求項20又は21に記載のコーム。
【請求項23】
前記歯先傾斜面が、歯先右傾斜面と歯先中央傾斜面とを有し、前記歯先右傾斜面と前記歯先中央傾斜面が同一平面状にある、又は、前記歯先中央傾斜面が窪んでいることを特徴とする請求項22に記載のコーム。
【請求項24】
前記歯先中央傾斜面の底辺の延長線又は接線が前記複数の歯の直交線と形成する傾斜角が0°以上45°以下であることを特徴とする請求項23に記載のコーム。
【請求項25】
前記歯先傾斜面に0.05mm以上0.45mm以下の幅及び深さの溝が形成されていることを特徴とする請求項2224のいずれか一項に記載のコーム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を清潔にして美しく整える、理美容に好適な毛髪仕上げコーム及びそのコームを用いて毛髪を清潔にして美しく整えることができるコーミング方法に関する。更に詳しくは、毛髪及び頭皮に付着した過剰な皮脂を除去し、脱毛を防止し育毛を促進する効果があると共に、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正することができる上、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にする効果がある、理美容に好適な毛髪仕上げコーム及びそのコームを用いた理美容に好適なコーミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
男女を問わず、清潔で整えられた毛髪に憧れる気持ちは強い。特に、女性の場合、くせ毛のないサラサラした艶のある美しい毛髪にしたいという需要が年代を問わず幅広く存在し、毛髪の理美容に対する出費が少ないとは言えない。このことは、総務省統計局の「サービス産業動向調査」平成28年の拡大調査結果から分かるように、理容業と美容業を合わせた理美容市場が約2兆700億円にも及んでいることから理解される(非特許文献1)。
【0003】
このような需要に対して、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、頭垢(フケ)等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保ち、脱毛を防止する技術、並びに、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪する技術が、古くから種々検討されてきた。
【0004】
毛髪及び頭皮に付着した上記油成分を除去して毛髪を清潔に保ち、脱毛を防止する一般的な方法は、マッサージも兼ねた洗髪(頭皮の洗浄)であり、それに適したシャンプーばかりか、化粧品を落とすクレンジングオイル、炭酸水の使用も推奨されている。また、過剰な皮脂の発生を抑制するため、油を多く含む食物の摂取を減らすと共にビタミンの摂取に心掛ける生活習慣の改善にまで及んでいる。しかし、頭皮は人体の中で最も皮脂線が多く、顔の約3倍ある上、毛穴が大きく、その数も多いので、皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等の油脂成分が溜まり易く落ちにくい。そのため、様々な状況に応じた洗浄装置及び洗浄器具が考案されてきた。
【0005】
業務用に考案されたと考えられる洗浄装置には、毛髪や毛穴等に付着した油脂成分を吸い込み除去する洗浄装置及び洗い流して除去する洗浄装置がある。前者としては、真空ポンプの吸引口に、弾性体から成る突起管を備えたヘッド管を有する吸引ノズルがホースを介して接続され、真空ポンプにより、脇の下の毛穴に多いポアクリン油脂を除去するが提案されており、頭皮に多い皮脂にも対応できることが記載されている(特許文献1及び非特許文献4)。後者としては、回転する突起を頭皮に接触させながら、その突起から帯電水の微細な液滴及び銅や銀等の特殊金属の微細な粉体を噴霧して、頭皮を洗浄すると共に、抗酸化作用、除菌作用等を付与することができる頭皮ケア装置(特許文献2)、フケ取り、脱毛防止、毛髪再生、脂漏防止等の頭皮を処置する化粧品を圧縮ガスにより頭皮に噴霧するエアブラシを備えた化粧学的処置を施すことができる洗浄装置(特許文献3)等が提案されている。しかしながら、これらの装置は、真空ポンプ、静電霧化装置、金属微粒子化装置、回転駆動源、圧縮機等の複雑で高価な装置が必須であるため、業務用としても取り扱いが困難である上、頭皮を処置する帯電水の液滴、金属粉体、化学品等の特別な物質を頭皮に激しく衝突する必要があるため、頭皮に物理的又は化学的な悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
一方、シャンプーを塗布し、指で毛髪及び頭皮を揉み擦る洗髪においては、揉めば揉む程、また、擦れば擦る程、油脂成分を除去することができるが、毛髪のキューティクルを痛めたり、頭皮に損傷を与えたりするため、ブラシ形状のハンドル部に駆動源と駆動部材を備え、そのヘッド部に駆動源と駆動部材によって咀嚼運動する平行に配列された三角歯が備えられた電動頭皮洗髪機が提案されている(特許文献4)。毛髪を三角歯の咀嚼運動で洗髪するため、毛髪を痛めることなく、また、頭皮に損傷を与えることがなく、毛髪や毛穴等に付着した油脂成分を除去できると記載されている。
【0007】
より簡便な洗浄器具としては、本来、毛髪の縺れを解したり、毛髪を整える道具であるが、毛髪をブラッシング又はコーミングすることによって頭皮や毛髪に付着している皮脂やフケ等を取り除く作用があるヘアブラシ又はコームに改良が施されてきた。
【0008】
ヘアブラシの場合、ヘアブラシの毛が頭皮の毛穴に届かないという問題を解決しようとすることを目的としており、種々の毛の構造及び形状が提案されてきた。例えば、ブラシの毛を植設する座部に、複数の長短二種の櫛歯を備え、短い櫛歯の先端に毛束を備えることによって、長い櫛歯で毛髪を掻き分け、短い櫛歯の毛束で頭皮に付着した皮脂やフケ等を取り除きやすくしたブラシ(特許文献5)、毛穴よりも細いテーパーの付いた毛の毛束を座部に植設したブラシ(特許文献6)、更には、毛の代わりに、不織布で形成した先端が面状の突起部を複数備えたブラシ(特許文献7)等が開示されている。
【0009】
一方、コームの場合は、歯の先端が頭皮の毛穴に届かないということがないため、光触媒で被覆した歯の内部に紫外線を含む光源を備えたコームが提案されている(特許文献8)。紫外線が照射された光触媒の酸化作用により、毛髪や毛穴等に付着した油脂成分を親水性物質に分解するため、洗髪することなく、少量の水で除去できることが記載されている。
【0010】
更に、コームの材質に着目し、油脂成分を吸着しやすい紙で組み立てられたコーム(特許文献9)、同様に、油脂成分を吸着しやすいパルプで樹脂成型方法を用いて製造されるコーム(特許文献10)が開示されている。これらは、洗髪することなくコームを用いてコーミングするだけで油脂成分を除去することが可能な最も簡便な方法であるといえる。
【0011】
以上、皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等の油脂成分を除去する洗浄装置及び洗浄器具が種々考案されているが、上述した特殊なヘアブラシ又はコームを用いてブラッシング又はコーミングだけで油脂成分を除去する方法が、毛髪及び頭皮に損傷を与えず、洗髪する必要もない簡便な洗浄器具及び洗浄方法であるといえる。しかし、これらの洗浄器具及び洗浄方法は、くせ毛を矯正することができる能力はない。
【0012】
くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪する技術については、直毛をカールさせるアイロンパーマを逆用した、ヘアアイロンとパーマネント薬剤を併用する方法が数多く提案されてきた(特許文献11、13、15、及び、16)。しかし、毛髪に、熱を与えるだけでなく、パーマネント薬剤として第1薬剤(還元剤)及び第2薬剤(酸化剤)を塗布する二浴式パーマネント薬剤であるため、毛髪だけでなく頭皮にも損傷を与えるという問題や矯正力とその保持力が不足しているという問題があった。そのため、パーマネント第1薬剤の改良(特許文献13)や、一浴式パーマネント薬剤の適用が施されてきた(特許文献16)。また、ヘアアイロンの場合、毛髪が凹凸を有するアイロン面で強く挟み込まれる上、毛髪の根元から毛先に向かって扱かれる場合もあり、例え、アイロン面がテフロン(登録商標)加工等の表面処理が施されていたとしても、毛髪に与える損傷は大きいため、ヘアアイロンとして熱源を内蔵した可撓性賦形冶具を適用する技術が提案されている(特許文献15)。
【0013】
一方、パーマネント薬剤を用いないくせ毛の矯正方法として、2本のヘアブラシの毛が対向するようにハンドル部がヒンジで接続されたツインブラシによるブラッシングが古くから使用されてきた(特許文献12)。しかし、矯正力及びその保持力に問題があり、パーマネント薬剤を用いる方法(特許文献14)、ツインブラシとヘアアイロンを併用する方法(非特許文献5)が提案されている。
【0014】
しかし、近年、パーマネント薬剤を使用することなく、毛髪及び頭皮に損傷を与えない矯正方法として、電解水を用いる方法が提案された(特許文献17)。この方法は、圧縮気体に接続されたエアーブラシ又はエアスプレーにより、アルカリ性電解水を毛髪に噴霧した後、酸性電解水を毛髪に噴霧する方法である。この方法により、縮毛の矯正が可能であったとしても、毛髪や毛穴に固着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等の油脂成分を除去できる効果は記載されていない。また、洗髪と同様、電解装置が必要であり、多量の水を必要とする。
【0015】
更に、毛髪の方向付け器具(コーム)及びそのコームを用いた毛髪方向付け方法が開示された(特許文献18)。パーマネント薬剤及び熱を使用しないため、毛髪及び頭皮に損傷を与えることがなく、ニュートラルな状態の毛髪を所定の方向に方向付けすることが可能である上、毛穴に溜まっている皮脂等を除去することが可能であると記載されている。しかしながら、このコームを用いた毛髪方向付け方法は、毛髪に当接されるコームの先端にある面積の小さな当接部を毛髪の頭皮近傍に押さえつけた状態で、頭の形状に沿うようにコームを所定方向に移動させて毛髪の方向付けを行うため、毛髪及び頭皮を損傷することが容易に推測される。その上、この方法によって、くせ毛を矯正できる効果が発現するという記載がなく、発現する要素も認められない。また、この方法による皮脂等の除去については、このコームの当接部の厚さが略2mmで、先端に向かって弧形状に形成されているため、毛穴に近い大きさ(すなわち、約直径0.2mm程度、非特許文献6及び7)の当接部を毛髪に当接させ、毛髪を頭皮に押さえ付けて移動するため、毛穴に溜まっている皮脂等を除去することが可能となると記載されており、毛髪及び頭皮を損傷する危険性があるものと考えられる。しかも、小さな面積の当接部を毛髪に当接させ、頭皮に押さえつける操作は熟練が必要である。
【0016】
このように、水、洗髪剤、パーマネント薬剤、熱等を用いず、毛髪及び頭皮を損傷することなく、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保ち、脱毛を防止する技術、並びに、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる技術は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開平9-253193号公報
【文献】特開2012-066047号公報
【文献】特開2016-195768号公報
【文献】特開2004-136042号公報
【文献】特開平9-327333号公報
【文献】特開2008-067768号公報
【文献】特開2008-119236号公報
【文献】特表2015-528712号公報
【文献】特開2005-066248号公報
【文献】特開2017-029286号公報
【文献】特開平6-189818号公報
【文献】実開平6-029434号公報
【文献】特開2004-002459号公報
【文献】特開2004-208821号公報
【文献】特開2008-067816号公報
【文献】特開2004-292318号公報
【文献】特開2004-035074号公報
【文献】特開2018-015332号公報
【非特許文献】
【0018】
【文献】総務省統計局ホームページ、http://www.stat.go.jp/data/mssi/kekka/pdf/k2016k.pdf、「サービス産業動向調査」平成28年の拡大調査結果(確報)結果の概要、平成30年3月30日
【文献】生活向上情報サイト「イオプラス」ホームページ、http://eooplus.info/itake_the_oil_of_the_scalp-794.html、「頭皮の油を取る6つの方法」
【文献】日本経済新聞プラスワン、「体にも「Tゾーン」あり 皮脂、汗をきれいに落とす入浴法」、2012年10月4日、http://style.nikkei.com/article/DGXDZO46647050Y2A920C1W13001?channel=DF130120166090及び&page2
【文献】花王ホームページ、https://www.kao.co.jp/8x4men/machanism、「汗と臭いのメカニズム」
【文献】Achfiloホームページ、https://www.achfilo.com/straigt/entry8556.html、「縮毛矯正するうえで大切な9つのこと」
【文献】Oracleclinicホームページ、http://japan.oracleclinic.com/xe/index.php?mid=mogong、「毛穴」
【文献】花王ホームページ、https://www.kao.com/jp/haircare/structure_03.html、「髪の太さとかたさ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、水、洗髪剤、パーマネント薬剤、熱等を用いず、毛髪及び頭皮を損傷することなく、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保ち、脱毛を防止する技術、並びに、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明者は、従来のブラシ及びコーム、並びに、ブラッシング及びコーミングの興味ある特徴及び現象に着目し、コームの形状、素材、形態・構成、及び、コーミング方法を種々検討した。その結果、表面が鏡面化されたコーム、磁性を有する鉄基合金を素材としたコーム、若しくは、表面が鏡面化され、磁性を有する鉄基合金を素材としたコーム、又は、胴、櫛尖(しつせん)、櫛体(しつたい)、把手、及び、母指孔とを一体に備えたコーム、若しくは、胴、櫛尖、櫛体、把手、及び、母指孔とを一体に備えたコーム本体と、動把手、薬指孔、及び、小指掛けとを一体に備えたコーム操作補助体とが、櫛体の中央で要によって回動可能に枢結されたコームを用いることによって、水、洗髪剤、パーマネント薬剤、及び、熱等を用いず、毛髪及び頭皮を損傷することなく、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保つと共に、毛髪に艶とコシを付与してくせ毛を矯正し、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にする効果があることを見出すと共に、コーミング方法によってもその効果を高めることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0021】
第一に、本発明のコームは、複数の歯を支える胴と、この胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される複数の歯とを少なくとも一体に備え、少なくとも、胴及び複数の歯の垂直方向に位置する胴及び複数の歯の上面及び下面、並びに、複数の歯の歯先と反対方向に位置する胴の側面の表面性状が、0.100μm以下の面粗さ測定による算術平均粗さ(Sa)であることを特徴とするコームである。このような鏡面は、種々の研磨によって形成することができるが、Saが小さい程好ましく、0.070μm以下であることがより好ましい。又は、これらの表面性状が、1.60μm以下、より好ましくは、1.40μm以下の面粗さ測定による最大高さ(Sz)を満足するコームであってもよい。また、このようなSa又はSzに研磨された表面性状が、12.000以下の面粗さ測定によるクルトシス(Sku)を兼ね備えていることがより更に好ましい。
【0022】
このようなコームを使用することによって、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保つと共に、毛髪に艶とコシを付与してくせ毛を矯正し、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる効果が明らかに認められた。それに対し、コームの同じ部位が研磨されていない場合には、このような効果は認められなかった。
【0023】
この実験結果の科学的根拠は不明であるが、コームで毛髪をコーミングする際に毛髪及び頭皮と少なくとも接触する、胴及び複数の歯の垂直方向に位置する胴及び複数の歯の上面及び下面、並びに、複数の歯の歯先と反対方向に位置する胴の側面が鏡面化されることによって、これらの部位が研磨されていないコームよりも、毛髪及び頭皮との接触面積が増加し、毛髪及び頭皮との相互作用が高まり、接触、摩擦、そして、剥離によって帯電して蓄積される毛髪及び頭皮の静電気量の増大と関係している可能性があるという仮説を立てている。
【0024】
この仮説は、コームの上記表面性状の表面粗さを、Saが0.100μm以下であって、かつ、Szが1.00μm以下となるまで小さくすることによって、上記コーミング効果が向上するという実験結果から支持されるだけでなく、コームの上記表面性状の表面尖りを、Saが0.100μm以下であって、かつ、Skuが7.000以下となるまで少なくすることによって、上記コーミング効果が向上するという実験結果からも支持される。
【0025】
従って、コームの形態・構成、特に、毛髪及び頭皮と接触するコームの部位が増加することによって、上記効果が次第に高まる。少なくとも、複数の歯を支える胴と、胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される複数の歯とを一体に備えた上記コームに、胴の先端にあって、胴に延設される肩を介し、複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖が備えられ、少なくとも、櫛尖の垂直方向に位置する上面及び下面、並びに、櫛尖の先端方向に位置する側面の表面形状が、0.100μm以下のSaであることが好ましく、0.070μm以下のSaであることがより好ましい。又は、これらの表面性状が、1.60μm以下のSzであることが好ましく、1.40μm以下のSzであることがより好ましい。また、このようなSa又はSzに研磨された表面性状が、12.000以下のSkuを兼ね備えていることがより更に好ましい。その上、Saが0.100μm以下であって、かつ、Szが1.00μm以下となるまで、表面粗さを小さくすること、又は、Saが0.100μm以下であって、かつ、Skuが7.000以下となるまで、表面尖りを少なくすることによって飛躍的にコーミング効果が高まる。
【0026】
更に、少なくとも、複数の歯を支える胴と、胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される複数の歯と、胴の先端にあって、胴に延設される肩を介し、複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖とを一体に備えた上記コームに、胴及び複数の歯から櫛尖の反対方向に延設される櫛体が備えられ、少なくとも、櫛体の垂直方向に位置する上面及び下面、並びに、複数の歯の歯先と反対方向に位置する櫛体の側面の表面性状が、0.100μm以下のSaであることが好ましく、0.070μm以下のSaであることがより好ましい。又は、これらの表面性状が、1.60μm以下のSzであることが好ましく、1.40μm以下のSzであることがより好ましい。また、このようなSa又はSzに研磨された表面性状が、12.000以下のSkuを兼ね備えていることがより更に好ましい。その上、Saが0.100μm以下であって、かつ、Szが1.00μm以下となるまで、表面粗さを小さくすること、又は、Saが0.100μm以下であって、かつ、Skuが7.000以下となるまで、表面尖りを少なくすることによって飛躍的にコーミング効果が高まる。
【0027】
また、頭皮とは接触しないが、コームの毛髪と接触する面としては、複数の歯が対向する側面があり、この側面の表面性状も、0.100μm以下のSaであることが好ましく、0.070μm以下のSaであることがより好ましい。又は、これらの表面性状が、1.60μm以下のSzであることが好ましく、1.40μm以下のSzであることがより好ましい。また、このようなSa又はSzに研磨された表面性状が、12.000以下のSkuを兼ね備えていることがより更に好ましい。その上、Saが0.100μm以下であって、かつ、Szが1.00μm以下となるまで、表面粗さを小さくすること、又は、Saが0.100μm以下であって、かつ、Skuが7.000以下となるまで、表面尖りを少なくすることによって飛躍的にコーミング効果が高まる。
【0028】
このようなコーム表面の研磨加工は、一般的な、機械研磨、電解研磨、及び、化学研磨を使用することができる。材料に限定されず、鏡面の光沢を出すためには、機械研磨が好ましく、特に、バフ研磨が好ましい。
【0029】
そして、バフ研磨を最終仕上げに適用する場合、予めサンドペーパー等で予備研磨を施しておくことが好ましい。更に、最終研磨のバフ研磨も、荒仕上げ用鉄バフ、中間仕上げ用青バフ、及び、仕上げ用白バフが使用されることが好ましいが、これに限定されるわけではない。この青バフを用いた中間仕上げ及び白バフを用いた仕上げが、本発明の表面性状を発現する上で重要な工程である。それと共に、青バフとしては、綿布で、グラインダーの軸を挿入する穴の周辺だけを縫製したバラバフが好ましく、白バフとしては、綿布でもキャラコを用いたバラバフが好ましい。また、研磨剤は、トリポリ系、アルミナ系、青棒系、グリーンライム系、樹脂系、及び、グリース棒系等を使用できるが、最終仕上げ用の酸化クロム系青棒、酸化アルミナ系白棒、酸化アルミナ系ノンクロム、及び、樹脂系ノンクロム等が好ましい。
【0030】
しかし、複数の歯が対向する側面の研磨に機械研磨を適用することは、多大な労力を有するという問題がある。ステンレス等の金属系素材の場合には、電解研磨及び化学研磨を適用することが可能であるが、電解研磨の場合、対抗電極を設けることが困難であるため、化学研磨同様、所望の表面粗さを形成することが困難な素材もあり、コームの素材が限定される。鉄基合金、特に、炭素鋼、特殊鋼、及び、ステンレス鋼であることがより好ましく、ステンレス鋼であることがより更に好ましい。電解研磨において、複数の歯が対向する空間に対抗電極設けて行う場合は、電解研磨のコストが高騰するが、所望の表面粗さを幅広い金属系素材に適用できる。また、金属系素材のコームの場合、電解研磨及び化学研磨と機械研磨を併用することが好ましい。
【0031】
このように、複数の歯が対向する側面の研磨には問題があるため、複数の歯が対向する側面の研磨を施さないコームを用いた実験を行った結果、上述したように、少なくとも、毛髪及び頭皮と接触するコームの、複数の歯が対向する側面を除く外周部のSaが少なくとも0.100μm以下であれば、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保つと共に、毛髪に艶とコシを付与してくせ毛を矯正し、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる効果が明らかに認められたので、複数の歯が対向する側面の研磨は必ずしも施す必要はない。
【0032】
第二に、本発明のコームは、複数の歯を支える胴と、胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される複数の歯とを少なくとも備えるコームであって、コームの素材が、C含有量:0.80%以上1.35%以下、Si含有量:0.25%以下、Mn含有量:0.35%以下、P含有量:0.03%以下、S含有量:0.006%以下、Ni含有量:1.30%以下、Cr含有量:0.50%以下の化学組成を有する炭素鋼、C含有量:1.00%以上1.50%以下、Si含有量:0.30%以下、Mn含有量:0.30%以下、P含有量:0.025%以下、S含有量:0.02%以下、Cr含有量:0.15%以上0.50%以下、V含有量:0.50%以下、W含有量:2.50%以下の化学組成を有する特殊鋼、及び、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下の化学組成を有するステンレス鋼の中から選択される少なくとも一つ以上であることを特徴とするコームである。
【0033】
このような特殊な鉄基合金をコームの素材に使用することによっても、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保つと共に、毛髪に艶とコシを付与してくせ毛を矯正し、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる効果が明らかに認められた。このような素材は、磁性を有しているので、磁性を持たない例えばプラスチック製のコームでは、このような効果を認めることはできなかった。
【0034】
この実験結果の科学的根拠も不明であるが、磁気が肩凝りや頭痛等の解消に効果を発揮するように、磁性を有する素材のコームに地球の磁場が関与し、磁性を有するコームが、毛髪及び頭皮との接触、摩擦、及び、剥離を繰り返すことによって、毛髪及び頭皮に何らかの影響を与えるのではないかと推測される。
【0035】
従って、表面粗さ同様、コームの形態・構成の影響もあり、上記複数の歯を支える胴と、胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される複数の歯とを少なくとも備えるコームの胴の先端に、胴に延設される肩を介し、複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖が新たに備えられることによって、更には、このような胴、複数の歯、肩、及び、櫛尖を備えたコームに、胴及び複数の歯から櫛尖の反対方向に延設される櫛体を更に新たに少なくとも一体に備えることによって、上記効果をより一層高められることが認められた。その上、コームの各部位の表面性状が、0.100μm以下のSaであることが好ましく、0.070μm以下のSaであることがより好ましい。又は、これらの表面性状が、1.60μm以下のSzであることが好ましく、1.40μm以下のSzであることがより好ましい。また、このようなSa又はSzに研磨された表面性状が、12.000以下のSkuを兼ね備えていることがより更に好ましい。その上、Saが0.100μm以下であって、かつ、Szが1.00μm以下となるまで、表面粗さを小さくすること、又は、Saが0.100μm以下であって、かつ、Skuが7.000以下となるまで、表面尖りを少なくすることによって飛躍的にコーミング効果が高まる。
【0036】
第三に、本発明のコームは、複数の歯を支える胴と、胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される複数の歯と、胴の先端にあって、胴に延設される肩を介し、複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖と、胴及び複数の歯から櫛尖の反対方向に延設される櫛体と、櫛体に延設される把手とを少なくとも一体に備えていることを特徴とするコームである。
【0037】
このような胴、複数の歯、肩、櫛尖、及び、櫛体を備えたコームに、櫛体に延設される把手を少なくとも一体に備えることは、コームの上面を上方に向け、コームの背を頭皮と接触又は非接触で頭皮に沿って縦横無尽に平行往復移動するコーミングを行うために重要な役割を果たす。特に、この把手が、複数の歯の歯先と同じ方向に傾斜して延設されることが好ましく、この把手の後端に母指孔が形設するとより操作し易い。その結果として、コームの表面粗さ及び素材とは関係なく、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる。
【0038】
更に、このような、複数の歯を支える胴と、胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される複数の歯と、胴の先端にあって、胴に延設される肩を介し複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖と、胴及び複数の歯から櫛尖の反対方向に延設される櫛体と、櫛体に複数の歯の歯先と同じ方向に傾斜して延設される把手と、把手の後端に形設される母指孔とを一体に備えたコームをコーム本体として、このコーム本体と、動把手と動把手の一端に形設される薬指孔及び小指掛けとを一体に備えたコーム操作補助体の他端とが、櫛体のほぼ中央において、軸を架け渡される要によって所定の回転角を回動可能に枢結されるコームは、母指、薬指、及び、小指を用いて、ハサミと同じような感覚で扱え、胴から櫛体に至る背を頭皮に接触又は非接触で、頭皮に沿ってコームを縦横無尽に平行往復移動させることができ、最適なコーミングを行えるので、極めて好ましい形態・構成である。また、従来のコームにはない特殊なコームの形態・構成である。その結果として、コームの表面粗さ及び素材とは関係なく、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる。
【0039】
コームの操作性が、このような毛髪及び頭皮に及ぼす効果を奏する要因は、コームの操作速度が向上し、コームと毛髪及び頭皮との接触、摩擦、及び剥離回数が飛躍的に増加し、毛髪及び頭皮に蓄積される静電気量が増大するためであると考えられる。従って、操作性に勝る上記種々のコームの各部位の表面粗さが次のように形成されることによって、コームが毛髪と頭皮に及ぼす影響を一層高めることができる。
【0040】
まず、少なくとも、胴及び複数の歯の垂直方向に位置する胴及び複数の歯の上面及び下面、並びに、複数の歯の歯先と反対方向に位置する胴の側面の表面性状が、0.100μm以下のSaであることが好ましく、0.070μm以下のSaであることがより好ましい。又は、これらの表面性状が、1.60μm以下のSzであることが好ましく、1.40μm以下のSzであることがより好ましい。また、このようなSa又はSzに研磨された表面性状が、12.000以下のSkuを兼ね備えていることがより更に好ましい。その上、Saが0.100μm以下であって、かつ、Szが1.00μm以下となるまで、表面粗さを小さくすること、又は、Saが0.100μm以下であって、かつ、Skuが7.000以下となるまで、表面尖りを少なくすることによって飛躍的にコーミング効果が高まる。
【0041】
次いで、胴及び複数の歯の垂直方向に位置する胴及び複数の歯の上面及び下面、並びに、複数の歯の歯先と反対方向に位置する胴の側面に加え、肩及び櫛尖の垂直方向に位置する上面及び下面、複数の歯の歯先と反対方向に位置する肩の側面、並びに、櫛尖の先端方向に位置する側面の表面性状が、0.100μm以下のSaであることが好ましく、0.070μm以下のSaであることがより好ましい。又は、これらの表面性状が、1.60μm以下のSzであることが好ましく、1.40μm以下のSzであることがより好ましい。また、このようなSa又はSzに研磨された表面性状が、12.000以下のSkuを兼ね備えていることがより更に好ましい。その上、Saが0.100μm以下であって、かつ、Szが1.00μm以下となるまで、表面粗さを小さくすること、又は、Saが0.100μm以下であって、かつ、Skuが7.000以下となるまで、表面尖りを少なくすることによって飛躍的にコーミング効果が高まる。
【0042】
そして、胴、複数の歯、肩、及び、櫛尖の垂直方向に位置する胴及び複数の歯の上面及び下面、並びに、複数の歯の歯先と反対方向に位置する胴及び肩の側面、並びに、櫛尖の先端方向に位置する側面に加え、櫛体の垂直方向に位置する上面及び下面、並びに、櫛体の側面の表面性状が、0.100μm以下のSaであることが好ましく、0.070μm以下のSaであることがより好ましい。又は、これらの表面性状が、1.60μm以下のSzであることが好ましく、1.40μm以下のSzであることがより好ましい。また、このようなSa又はSzに研磨された表面性状が、12.000以下のSkuを兼ね備えていることがより更に好ましい。その上、Saが0.100μm以下であって、かつ、Szが1.00μm以下となるまで、表面粗さを小さくすること、又は、Saが0.100μm以下であって、かつ、Skuが7.000以下となるまで、表面尖りを少なくすることによって飛躍的にコーミング効果が高まる。
【0043】
また、必ずしも必要とはしないが、更に、複数の歯が対向する側面の表面性状が、0.100μm以下のSaであることが好ましく、0.070μm以下のSaであることがより好ましい。又は、これらの表面性状が、1.60μm以下のSzであることが好ましく、1.40μm以下のSzであることがより好ましい。また、このようなSa又はSzに研磨された表面性状が、12.000以下のSkuを兼ね備えていることがより更に好ましい。その上、Saが0.100μm以下であって、かつ、Szが1.00μm以下となるまで、表面粗さを小さくすること、又は、Saが0.100μm以下であって、かつ、Skuが7.000以下となるまで、表面尖りを少なくすることによって飛躍的にコーミング効果が高まる。
【0044】
一方、コーム本体の把手及びコーム操作補助体は、毛髪と接触することはないので、把手自体の表面の鏡面化は必ずしも必要ではない。しかし、汚染防止効果があり、コーム全体の外観上の高級感を付与することができるので、少なくとも、Saが0.100μm以下であることが望ましく、0.070μm以下であることがより望ましい。
【0045】
操作性に優れた形態・構成及び/又は最適化された表面形状のコームは、特に素材が限定されるものではないが、樹脂、ガラス繊維強化樹脂、炭素繊維強化樹脂、セラミックス、金属、合金、及び、鉄基合金の中から少なくとも選択される一つ以上であることが、コームの強度、寿命、耐食性、及び、成形加工等の観点から好ましい。
【0046】
例えば、樹脂系素材としては、一般的な熱可塑性又は熱硬化性の汎用プラスチック、ポリアミド(Polyamide、PA)、ポリエーテルエーテルケトン(Polyetheretherketone、PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(Polyphenylenesulfide、PPS)、ポリイミド(Polyimide、PI)、ポリオキシメチレン(Polyoxymethylene、POM)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)、フェノール樹脂(Phenolic resin)、ポリオレフィン樹脂(Polyorefin)、超高分子量ポリエチレン樹脂(Ultra High Molecular Weight Polyethylene、UHMWPE)、及び、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂等のエンジニアリングプラスチック、及び、これらの中から選択される樹脂がガラス繊維又は炭素繊維で強化された樹脂が、コームの素材として適用される。また、各種セラミックス、鉄等の金属、黄銅等の合金、及び、ステンレス等の鉄基合金をコームの素材として例示することができる。そして、これらから選択される少なくとも一つ以上を用いて成形することが好ましい。
【0047】
中でも、金属、合金、及び、鉄基合金を素材として用いたコームが好ましく、鉄基合金であることがより好ましく、炭素鋼、特殊鋼、及び、ステンレス鋼のいずれかであることがより更に好ましい。機械研磨に加え、電解研磨及び化学研磨を適用することを考慮すると、ステンレス鋼であることが最も好ましい。
【0048】
コームの素材として金属及び合金を使用する場合、磁性を有しているものが好ましく、特に磁性を有する鉄基合金が好ましく、コームの寿命及び耐食性という観点から、磁性を有する炭素鋼、特殊鋼、及び、ステンレス鋼がより更に好ましい。既に記載したように、磁性を有する金属及び合金が好ましい科学的根拠は不明であるが、実験結果より、磁性を有する素材のコームに地球の磁場が関与し、そのコームが毛髪及び頭皮に与える影響が顕著になるものと推測される。そして、同じく、コームの操作速度が向上すると、磁性を有するコームが毛髪及び頭皮に与える影響が増大するものと考えられる。
【0049】
また、コームの表面形状を維持するためには、金属及び合金であることが好ましく、特に、150以上の焼き戻し後のブリネル硬度(HB)を有している、又は、55以上の焼き戻し後のロックウェル硬度(HRC)を有している金属及び合金であることが好ましい。
【0050】
更に、コームの素材が鉄基合金である場合、上記磁性及び硬度を考慮すると、C含有量:0.80%以上1.35%以下、Si含有量:0.25%以下、Mn含有量:0.35%以下、P含有量:0.03%以下、S含有量:0.006%以下、Ni含有量:1.30%以下、Cr含有量:0.50%以下の化学組成を有する炭素鋼、C含有量:1.00%以上1.50%以下、Si含有量:0.30%以下、Mn含有量:0.30%以下、P含有量:0.025%以下、S含有量:0.02%以下、Cr含有量:0.15%以上0.50%以下、V含有量:0.50%以下、W含有量:2.50%以下の化学組成を有する特殊鋼、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下の化学組成を有するステンレス鋼のいずれかであることが好ましく、機械研磨に加え、電解研磨及び化学研磨を適用することを考慮すると、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下の化学組成を有するステンレス鋼がより好ましい。
【0051】
このような鉄基合金を素材とするコームは、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にするだけでなく、毛穴及び毛髪に付着した様々な老廃物や油性の整髪料等を除去する効果が極めて大きい。従って、科学的根拠は不明であるが、このような化学組成の鉄基合金は、毛穴及び毛髪に付着した様々な老廃物や油性の整髪料等との相互作用が大きいのではないかと考えられる。
【0052】
以上、本発明のコームは、その素材の効果を最大限に発揮するには、より高い磁性を有し、焼き戻し後のブリネル硬度(HB)が150以上、又は、焼き戻し後のロックウェル硬度(HRC)が55以上である炭素鋼、特殊鋼、及び、ステンレス鋼、更により好ましい化学組成を有する、上記炭素鋼、特殊鋼、及び、ステンレス鋼のいずれかの鉄基合金単体で成形されることが好ましいが、これらを母材とするクラッド材料を適用することもできるが、層構成によっては、金属、合金、セラミックス等幅広い素材を母材と使用することが可能である。また、クラッド材料にも様々な構成があるが、母材と毛髪との接触面積が大きい構成である方が好ましい。具体的には、シングルレイ(全面2層)、センターレイ(中付2層)、サイドレイ(片付2層)、ダブルサイドレイ(平行片付2層)、UDサイドレイ(両面片付3層)、リバースレイ(両面段違い付3層)、オールインレイ(全面3層)、センターインレイ(中付3層)、サイドインレイ(片付3層)、ダブルサイドインレイ(平行片付3層)、シングルエッジレイ(側面片付)、ダブルエッジレイ、及び多積層等の構成のクラッド材料を用いることができる。
【0053】
以上、毛髪及び頭皮に付着した過剰な皮脂を除去し、脱毛を防止し育毛を促進する効果があると共に、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正することができる上、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にする効果がある、理美容に好適な毛髪仕上げコームには、最適な表面形状、素材、及び、形態・構成があることを詳説してきた。しかし、コームの胴、歯、肩、櫛尖、櫛体、及び、把手等の各部位の形状及びその相互位置関係等も、上記効果をより顕著に発現させるためには重要な要素であることを見出した。
【0054】
まず、歯の形状については、胴に垂設されている複数の歯の垂直方向に非対称であることが好ましく、複数の歯の上面は、直線状の傾斜面又は円弧状の傾斜面であって、複数の歯の下面は略水平であって、直線状の傾斜面と下面とが形成する傾斜角又は円弧状の傾斜面の接線と下面とが形成する傾斜角が5°以上15°以下であることが好ましく、3°以上12°以下であることがより好ましい。このような傾斜面を成形された歯先の先端面は、下面との傾斜角が39°以上90°未満で切断されていることが好ましく、50°以上80°以下で切断されていることがより好ましい。コームの操作を行う場合、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる好適なコームの形状であることが実験的に認められた。その原因は定かではないが、歯と毛髪とが接触する角度に関連しているものと考えられ、適度な歯及び歯先先端面の傾斜が必要であると推測される。
【0055】
胴に垂設されている歯の先端部分の歯先は、更に傾斜している方が、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にするためにより好ましい。具体的には、胴に垂設される歯の先端部分の歯先の直線状の傾斜面と下面とが形成する傾斜角又は胴に垂設される歯の先端部分の歯先の円弧状の傾斜面の接線と下面とが形成する傾斜角が6°以上26°以下で、歯先の下面からの高さが0.7mm以上1.1mm以下となるように歯先収束面が形成されており、その歯先先端面は、下面との傾斜角が39°以上90°未満、好ましくは、50°以上80°以下で切断される歯先先端面を有することである。
【0056】
歯先先端部の歯先収束面の有無にかかわらず、歯先先端面を、更に、歯先先端面の幅が0.15mm以上0.45mm以下、歯先先端面の長さが0.15mm以上0.45mm以下の突起体を形成するように、歯の下面との傾斜角が36°以上90°未満、より好ましくは、50°以上80°以下で歯先先端面を歯元側から切断して形設される一平面状の歯先傾斜面を設けることが好ましいが、この新たな歯先傾斜面に、歯先右傾斜面と歯先中央傾斜面とを設け、歯先右傾斜面より歯先中央傾斜面が窪んでいる方が好ましい。更に、歯先傾斜面の底辺の延長線又は歯先中央傾斜面底辺の接線が複数の歯の直交線と形成する傾斜角が0°以上45°以下であり、歯先傾斜面、特に、収束面と交差する付近に、0.05mm以上0.45mm以下、より好ましくは、0.05mm以上0.24mm以下の幅及び深さの溝が設けられていることがより更に好ましい。
【0057】
上記歯先の形状において、歯、歯先収束面、歯先先端面、及び、歯先傾斜面と歯裏面との傾斜角は、歯の傾斜角、歯先収束面の傾斜角、歯先傾斜面の傾斜角、及び、歯先先端面の傾斜角の順に大きくなっていることが好ましい。
【0058】
このような複雑な歯先の形状は、毛髪1本の平均直径が、欧米人の場合、0.05mmであり、日本人の場合、0.08mmであることと密接に関係しており、歯先の先端の突起体及び溝が、絡んだ毛髪を解すと共に、毛髪1本毎にコーミング可能な形状となっている。この形状によって、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にするだけでなく、毛髪の表皮に付着した様々な老廃物や油性の整髪料等を除去することができる。
【0059】
このようなコームの歯先の微細な形状以外にも、コームの胴、歯、肩、櫛尖、櫛体、及び、把手等の各部位の形状、並びに、それらの相互位置関係に関して、次のような重要な要素があることを見出した。
【0060】
第一に、胴と胴に垂設される複数の歯とが形成する歯元を連結した連結線が、直線又は円弧状曲線であって、この直線と櫛体側に傾斜する複数の歯とが形成する傾斜角、又は、この円弧状曲線の接線と櫛体側に傾斜する複数の歯とが形成する傾斜角が75°以上90°以下であることが好ましい。
【0061】
第二に、肩、胴、及び、櫛体とで形成される背、並びに、胴と胴に垂設される複数の歯とが形成する歯元を連結した連結線が、円弧状曲線であって、円弧上の曲線の曲率が0.0001以上0.0008以下であることが好ましい。
【0062】
第三に、櫛尖の厚さが1.5mm以上3.0mm以下、櫛尖の幅が1.0mm以上3.0mm以下、櫛尖の長さが5.0mm以上7.0mm以下、櫛尖の側面が作る円弧状曲線の曲率が0.21以上0.40以下であって、肩の側面が作る円弧状曲線の曲率が0.08以上0.21以下であることが好適である。特に、櫛尖の厚さが2.3mm以上2.4mm以下、櫛尖の幅が1.5mm以上2.5mm以下、櫛尖の長さが5.5mm以上6.5mm以下であることがより好ましい。
【0063】
第四に、肩、胴、及び、櫛体とで形成される背が、直線又は円弧状曲線であって、直線の背に対する把手の傾斜角、又は、円弧状曲線の背の接線に対する把手の傾斜角が26°以上46°以下、歯の長さが4mm以上11mm以下、胴の幅が0.5mm以上4.5mm以下、歯の幅が0.7mm以上1.1mm以下、歯の間隔が0.8mm以上1.4mm以下であることが好適である。特に、歯の幅は0.9mm以上1.0mm以下、歯の間隔が1.0mm以上1.2mm以下であることがより好ましい。
【0064】
第五に、櫛体の厚さが2.5mm以上3.5mm以下、櫛体の幅が7mm以上17mm以下、櫛体の長さが23mm以上33mm以下、把手の厚さが3.5mm以上4.5mm以下、把手の長さが21mm以上31mm以下、及び、櫛尖の先端から櫛体までの胴に垂設される歯の全長が50mm以上70mm以下であることが好ましい。
【0065】
第六に、コーム本体とコーム操作補助体とが枢結されたコームにおいては、全長が160mm以上170mm以下、要から櫛尖の先端までの長さが67mm以上77mm以下、要から把手の後端までの長さが62mm以上72mm以下、要から母指孔の中心までの長さが48mm以上58mm以下、要から動把手の後端までの長さmが90mm以上100mm以下、要から薬指孔の中心までの長さが60mm以上70mm以下、小指掛けの長さоが10mm以上20mm以下、肩、胴、及び、櫛体とで形成される直線の背に対する動把手の傾斜角、又は、肩、胴、及び、櫛体とで形成される円弧状曲線の背の接線に対する動把手の傾斜角が0°以上5°以下であることが好ましい。
【0066】
このような六つの形状に関する特徴は、絡んだ毛髪を解すと共に、毛髪1本毎にコーミング可能となり、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にするだけでなく、毛髪の表皮に付着した様々な老廃物や油性の整髪料等を除去することができる。また、本発明のコームを用いてコーミングする際に、毛髪及び頭皮を損傷することなく、操作しやすい形状となっている。
【0067】
以上、本発明のコームに最適な表面形状、素材、及び、形態・構成、並びに、コームの胴、歯、肩、櫛尖、櫛体、及び、把手等の各部位の形状、並びに、それらの相互位置関係等について説明したが、既にコームの操作速度で触れたように、本発明のコームを用いたコーミング方法によっても、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にするだけでなく、毛穴及び毛髪に付着した様々な老廃物や油性の整髪料等を除去する効果が異なってくる。すなわち、本発明のコームを用いたコーミング方法は、コームの上面を上方に向け、コームの肩、胴、及び、櫛体とで形成される直線状の背又は円弧状の背を頭皮と接触させた又は接触することなく、頭皮に沿うように縦横無尽に平行往復移動する方法である。このコーミング方法によって、毛髪及び頭皮に損傷を与えることがなく、毛髪調整効果、並びに、毛髪、毛穴、及び、頭皮に付着した老廃物や油性成分の除去効果を最大限に発揮することができる。
【発明の効果】
【0068】
本発明のコーム及びコーミング方法によれば、水、洗髪剤、パーマネント薬剤、熱等を用いず、毛髪及び頭皮を損傷することなく、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる上、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保ち、脱毛を防止することができる。本発明のコームの背が頭皮と接触して平行往復移動することによって、頭皮のマッサージ効果が得られるので、頭皮の血行が良くなり、毛髪への栄養分の供給が増加するので、育毛促進、生え癖や痩せ髪の改善等といった種々の効果も期待できる。
【0069】
本発明のコームの表面形状、素材、及び、形態・構成がコーミング効果に及ぼす影響は大きく、特に、本発明のコームの表面形状及び素材だけを従来の一般的なコームに適用するだけでその効果が発現する。しかし、形態・構成、更には、コームの胴、歯、肩、櫛尖、櫛体、及び、把手等の各部位の形状、並びに、それらの相互位置関係等が相乗的にコーミング効果を発現し、本発明のコーミング方法によって最大限に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明の一実施形態に係る第一のコームの上面からの概略模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る図1に示した第一のコームの歯側からの側面模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る図1に示した第一のコームの背側からの側面模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第二のコームの上面からの概略模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る第二のコームの下面からの概略模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る図4に示した第二のコームの歯側からの側面模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る図4に示した第二のコームの背側からの側面模式図である。
図8】本発明の一実施形態に係る図4に示した第二のコームの各部位に適した寸法を示した概略模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る第一及び第二のコームの胴、背、歯、及び、歯元に関する好ましい寸法を示した下面からの概略部分模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係る第一及び第二のコームの歯、目、肩、及び、櫛尖に関する好ましい寸法を示した下面からの概略模式図である。
図11】本発明の一実施形態に係る第一及び第二のコームの歯、目、及び、第一の歯先に関する好ましい寸法を示した上面からの概略斜視模式図である。
図12】本発明の一実施形態に係る第二のコームの歯先を変形した第二の歯先を備えたコームの上面からの概略模式図である。
図13図12に示した第二のコームに備えた第二の歯先に関する好ましい寸法を示した上面からの概略模式図である。
図14図12に示した第二のコームに備えた第二の歯先の下面からの概略模式図である。
図15】本発明の一実施形態に係る第二のコームの運指を示す写真である。
図16】本発明の一実施形態に係る第二のコームを使用したコーミン法の一例を示す写真である。
図17】本発明の一実施形態に係る第二の歯先を備えた第二のコームを使用して、本発明の一実施形態であるコーミング法でコーミングする前後の第二の歯先を備えた第二のコームの歯の拡大写真で、本発明のコームのコーミングによる老廃物除去効果を示している。
図18】本発明の一実施形態に係る第二の歯先を備えた第二のコームを使用して、本発明の一実施形態であるコーミング法でコーミングする前後の毛穴付近の写真で、本発明のコームのコーミングによる皮脂除去効果を示している。
図19】本発明の一実施形態に係る第二の歯先を備えた第二のコームを使用して、本発明の一実施形態であるコーミング法でコーミングする前後の毛髪の模式図で、本発明のコームのコーミングによる毛髪調整効果を示している。
図20】本発明の一実施形態に係る第二の歯先を備えた第二のコームを使用して、本発明の一実施形態であるコーミング法でコーミングする前後の毛髪の写真で、本発明のコームのコーミングによるくせ毛矯正効果を示している。
図21】本発明の一実施形態に係る第二の歯先を備えた第二のコームを使用して、本発明の一実施形態であるコーミング法でコーミングする前後の毛髪の写真で、本発明のコームのコーミングによるつむじ遮蔽効果を示している。
図22】本発明のコームの面粗さ測定によって評価された表面性状について、本発明のコームに特徴的な高さパラメーター及びその定義を示している。
図23】本発明の一実施形態に係る、鏡面仕上げが施されたコームの面粗さ測定を行った結果を示している。
図24】本発明の一実施形態に係る、超鏡面仕上げが施されたコームの面粗さ測定を行った結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、図面に示した一実施形態を用い、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0072】
本発明のコームの実施形態として使用した素材は、次の三種である。すなわち、C含有量:0.80%以上1.35%以下、Si含有量:0.25%以下、Mn含有量:0.35%以下、P含有量:0.03%以下、S含有量:0.006%以下、Ni含有量:1.30%以下、Cr含有量:0.50%以下の化学組成であって、磁性を有し、焼き戻し後のHRCが60以上である炭素鋼、C含有量:1.00%以上1.50%以下、Si含有量:0.30%以下、Mn含有量:0.30%以下、P含有量:0.025%以下、S含有量:0.02%以下、Cr含有量:0.15%以上0.50%以下、V含有量:0.50%以下、W含有量:2.50%以下であって、磁性を有し、焼き戻し後のHRCが60以上である特殊鋼、及び、C含有量:3.00%以下、Si含有量:1.00%以下、Mn含有量:1.00%以下、P含有量:0.04%以下、S含有量:0.03%以下、Ni含有量:0.49%以下、Cr含有量:4.50%以上20.0%以下、Mo含有量:5.00%以下、V含有量:3.00%以下、W含有量:6.00%以下、Co含有量8.00%以下であって、磁性を有し、焼き戻し後のHBが150以上であるステンレス鋼である。本実施例では、特に、上記ステンレス鋼については、V金10(武生特殊鋼(株)製)を用い、コームを作製した。
【0073】
しかし、コームの表面形状が最適化されれば、これらに限定されるものではない。最適化された表面形状を、図1のコームを例に取り上げ説明する。本実施例では、胴1、複数の歯4、肩3、櫛尖6、櫛体7の垂直方向に位置する胴1、複数の歯4、肩3、櫛尖6、及び櫛体7の上面及び下面、並びに、複数の歯4の歯先4-2-1と反対方向に位置する胴1、肩3、及び、櫛体7の側面2、3-1、並びに、櫛尖6の先端方向に位置する側面6-1の各部位の表面の線粗さ曲線における算術平均粗さが0.050μm未満となるように研磨した。この場合、樹脂、ガラス繊維強化樹脂、炭素繊維強化樹脂、又は、セラミックス、金属、合金、及び、鉄基合金等を使用することができる。
【0074】
そして、本実施例の研磨は、機械的研磨であるバフ研磨を仕上げ研磨とする研磨方法を採用した。具体的には、図1のコーム本体が切削加工された後、更に複数の歯4の部分を砥石で切削した上記三種の鉄基合金について、上記コームの各部位を♯400~♯1000のサンドペーパーを用いて研磨した後、最終仕上げとしてバフ研磨を行った。そして、バフ研磨は、酸化クロム系青棒、綿布の青バラバフを用いたバフ研磨を行った鏡面仕上げと、中間仕上げとして、酸化クロム系青棒、綿布の青バラバフを用いたバフ研磨を行い、次いで、最終仕上げとして、酸化クロム系青棒、キャラコの白バラバフを用いたバフ研磨を行った超鏡面仕上げの二通りの方法で施された。
【0075】
研磨された上記各部位の表面形状は、Zygo社製の走査型白色干渉計(型番New view 600s)を用い、0.701mm×0.526mmの測定領域の面粗さ測定が行われ、図22に示す式に基づいて、算術平均粗さSa、最大高さSz、及び、クルトシスSkuが算出された。なお、フィルターは掛けられておらず、コームの僅かに凸上に湾曲した面を水平に引き延ばす、4th Order Removeが施された。
【0076】
図23には、本発明の一実施形態に係る、鏡面仕上げが施されたコームの胴1の上面の面粗さ測定を行った結果を示している。図から明らかなように、Sa=0.045μm、Sz=1.38μm、Sku=9.222であった。(なお、本白色干渉計が発売された当時は、Sa、Sz、及び、Skuが規格化が定まっておらず、このような表記がなく、Ra、Rz、及び、Rkuと表示されている。)
【0077】
図24には、本発明の一実施形態に係る、超鏡面仕上げが施されたコームの胴1の上面の面粗さ測定を行った結果を示している。Sa=0.051μm、Sz=0.52μm、Sku=3.888であった。
【0078】
次いで、本発明のコームの最適な形態・構成について説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る第一のコームの上面からの概略模式図を示した。胴1が複数の歯4を支えており、胴1に所定の間隔を有する目5設け、複数の歯4が一列に垂設されている。胴1の先端には、胴1に延設された肩3を介し、複数の歯4の先端の歯に所定の間隔を置いて櫛尖6が形設され、その反対側に、最後端の歯元4-1-1から胴1が延びて拡がるように櫛体7が延設されている。そして、櫛体7に歯4の歯先4-2-1と同じ方向に傾斜して把手8が延設され、把手8の後端に母指孔9が形設されている。
【0079】
従来の胴、背、歯、歯元、目、及び、肩を一体に備えた櫛と呼ばれる構造は、図1を用いれば、胴1、背2、歯4、歯元4-1、目5、及び、肩3に備えられているが、本発明のコームは、胴1が延びて拡がって成形されている櫛体7、その櫛体7から、歯4の歯先4-2-1の方向に傾斜して延設される把手8、及び、把手8に形設される母指孔9を備えていることを特徴としている。ただし、上記素材及び表面形状とした場合、従来のコームの形態・構成でも、優れたコーミング効果を発現する。図1のコームは、本発明の目的とする、コームを用い、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる上、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保つためのコーミング、すなわち、コームを操作し易くするために考案したものである。この場合には、上記素材及び表面形状ではない場合にも、コームの操作速度が速く、優れたコーミング効果を発現する。
【0080】
図1に示した第一のコームの構造をより分かりやすくするため、図2及び図3には、それぞれ、歯4側から見た側面模式図及び背2側から見た側面模式図を示した。
【0081】
図4には、本発明の一実施形態に係る第二のコームの上面からの概略模式図を示した。コーム本体12は、要17を除いて、図1で説明した第一のコームとほぼ同様の構造をしているので、説明を省略する。第二のコームの特徴は、動把手13と動把手13の一端に形設される薬指孔及び小指掛けとを一体に備えたコーム操作補助体16が、コーム本体12の櫛体7のほぼ中央において、軸を架け渡される要17によって所定の回転角を回動可能にコーム本体と枢結されていることを特徴としている。コーム本体12とコーム操作補助体16との枢結により、動把手13が回動して用いられるため、コーム本体12には、薬指孔14が形設された外縁が、母指孔9が形設された外縁と接触する部分に緩衝点10を設けると共に、動把手13が回動しやすくするための、ハサミと同じ構造である触点11を設けている。
【0082】
第二のコームについても、その構造をより分かりやすくするため、図5図6、及び、図7には、それぞれ、裏面から見た概略模式図、歯4側から見た側面模式図、及び、背2側から見た側面模式図を示した。
【0083】
第二のコームの特徴であるコーム操作補助体16は、このコームを用いてコーミングする際、コーム本体12を把手8及び動把手13の二本で安定して支えることができ、コーム本体12の操作性を格段に向上させるために考案された。コーミングは、一般的に、理容師が行うことが多く、ハサミを使い慣れているため、ハサミを使用する感覚でコームを操作することができることもその要因であり、第一のコーム以上の速度の操作が可能となる。
【0084】
特に、第二のコームを用いて、本発明で成形したコームの厚さの一例を図7に示した。櫛尖6の厚さaは1.5mm以上3.0mm以下であることが好ましいが、2.3mm以上2.4mm以下であることがより好ましい。櫛体7の厚さbは2.5mm以上3.5mm以下、把手8及び動把手13は3.5mm以上4.5mm以下、小指掛け15は4.5mm以上5.5mm以下であることが好ましい。これらの寸法は、第一のコームにも適用される。しかし、これらの寸法に限定されるものではない。
【0085】
同様に、第二のコームを用いて、本発明で成形したコーム全体の長さや傾斜角の一例を図8に示した。図から明らかなように、第二のコームの全長eは160mm以上170mm以下、要17から櫛尖6先端までの長さfは67mm以上77mm以下、要17から把手8後端までの長さgは62mm以上72mm以下、要17から母指孔9の中心までの長さhは48mm以上58mm以下、 歯4の全長iは50mm以上70mm以下、櫛体7の長さjは23mm以上33mm、把手8の長さkは21mm以上31mm以下、櫛体7の幅lは7mm以上17mm以下、要17から動把手13後端までの長さmは90mm以上100mm以下、要17から薬指孔14の中心までの長さnは60mm以上70mm以下、小指掛けの長さоは10mm以上20mm以下であることが好ましい。また、把手8及び動把手13は、背2に対して、歯4の歯先4-2-1の方向に傾斜していることが好ましい。把手8は、背2が直線の場合には、その直線と把手8との傾斜角αが、背2が円弧状曲線の場合には、その円弧状曲線の接線と把手8との傾斜角αが、26°以上46°以下であることが好ましい。動把手13は、背2が直線の場合には、その直線と動把手13との傾斜角βが、背2が円弧状曲線の場合には、その円弧状曲線の接線と動把手13との傾斜角βが、0°以上5°以下であることが好ましい。この場合も、これらの寸法は、第一のコームにも適用される。しかし、これらの寸法に限定されるものではない。
【0086】
このようなコーム全体の長さや傾斜角は、コームを操作する上で好ましい一例を示したが、操作する人の個人差もあり、必ずしもこれに限定されるものではないが、把手8及び動把手13が、歯4の歯先4-2-1の方向に傾きを持っていることは、コーミングの操作上特に重要な特徴である。
【0087】
図9には、本発明の一実施形態に係る第一及び第二のコームの胴1、背2、歯4、及び、歯元4-1に関する好ましい寸法の一例を示した裏面からの概略部分模式図である。胴1の幅qは0.5mm以上4.5mm以下、歯4の長さpは4mm以上11mm以下であることが好ましい。歯4は、櫛体7の方向に傾斜していることが好ましく、歯元4-1を結ぶ歯元連結線18が直線の場合は、歯4と直線との傾斜角γが、歯元4-1を結ぶ歯元連結線18が円弧状曲線の場合は、歯4と円弧状曲線の接線との傾斜角γが、75°以上90°以下であることが最適である。図9に示すように、胴1の幅q及び歯4の長さpは、櫛尖6から櫛体7にかけて、連続的に大きくなるように成形されていることが好ましく、歯4の傾斜角γは、櫛尖6から櫛体7にかけて、連続的に小さくなるように成形されていることが好ましい。このような形状によって効果的に毛髪を解すことが可能になるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、上述した寸法及び傾斜角の範囲において、一定の長さ及び傾斜角であっても構わない。
【0088】
また、背2及び歯元連結線18は、直線状であっても問題ないが、円弧状曲線である方が、コーミングが滑らかで、毛髪を解す効果が高く、毛髪及び頭皮に損傷を与えることがない。特に、背2の曲率κ及び歯元連結線18の曲率κ18が0.0001以上0.0008以下の円弧状曲線であることが好ましい。
【0089】
更に、図10は、本発明の一実施形態に係る第一及び第二のコームの歯、目、肩、及び、櫛尖に関する好ましい寸法の一例を示した裏面からの概略模式図である。本発明のコームは、図に示すように、歯4の幅rが0.7mm以上1.1mm以下、歯4の間隔、すなわち、目5の幅sが0.8mm以上1.4mm以上で成形されることが好ましいが、歯4の幅rが0.9mm以上1.0mm以下、目5の幅sが1.0mm以上1.2mm以下で成形されることが、毛髪を解して、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にする上でより好ましい。ただし、これに限定されるものではない。
【0090】
歯4の幅r及び目の幅sと同様の意味で、胴1から肩3を介してコームの最先端に成形される櫛尖6の形状もコーミングにおいて重要な要素である。図に示すように、櫛尖の幅tが1.0mm以上3.0mm以下、櫛尖の長さtが5.0mm以上7.0mm以下であることが好ましいが、櫛尖の幅tが1.5mm以上2.5mm以下、櫛尖の長さtは5.5mm以上6.5mm以下であることがより好ましい。更に、櫛尖7先端の側面6-1及び肩3の側面3-1は、円弧状曲面となっていることが好ましく、櫛尖側面6-1の曲率κは0.21以上0.40以下、肩側面3-1の曲率κは0.08以上0.21以下であることが最適である。
【0091】
特に先端の形状は、毛髪を解して、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることや、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去することよりも、コーミングにおける毛髪及び頭皮に与える損傷を防止する上で重要な要素である。
【0092】
以上のように、コームの各部位の形状の詳細な寸法を説明してきたが、歯4の表面4-3、側面4-4、及び、裏面4-5、並びに、歯先4-2の形状も本発明のコームの機能に大きな影響を及ぼす。
【0093】
図11は、本発明の一実施形態に係る第一及び第二のコームの歯及び第一の歯先に関する好ましい寸法を示した表面からの概略斜視模式図である。歯側面4-4及び歯裏面4-5は、略平面であることが好ましく、歯裏面4-5は略水平で、歯側面4-4は、歯裏面4-5に略垂直に成形される。歯表面4-3は、直線状の傾斜面又は円弧状の傾斜面であることが好ましい。直線状の傾斜面の場合、歯表面4-3と歯裏面4-5との傾斜角δが、円弧状の傾斜面の場合、円弧状の傾斜面の接線と歯裏面4-5との傾斜角δが、5°以上15°以下であることが好ましい。
【0094】
歯先4-2は、歯表面4-5が一定の傾斜角を持った第一の歯先収束面4-2-11が成形され、第一の歯先先端面4-2-12で切断されたような形状であることが好ましい。第一の歯先収束面4-2-11と裏面4-5との傾斜角ζは、6°以上26°以下であることが好ましい。また、第一の歯先先端面4-2-12も傾斜していることが好ましく、第一の歯先先端面4-2-12と裏面4-5との傾斜角εは39°以上90°未満であることが好ましいが、50°以上80以下であることがより好ましい。更に、第一の歯先先端面4-2-12は、略正方形であることが好ましく、第一の歯先先端面4-2-12の高さuは0.7mm以上1.1mm以下で成形される。ただし、本発明のコームの歯先4-2の形状も、これらの数値に限定されるものではない。
【0095】
図12は、本発明の一実施形態に係る第二のコームの歯先を変形した第二の歯先4-2-2を備えたコームの表面からの概略模式図である。図4図7に示した第二のコームの歯先だけを変形したもので、歯先以外の形状の全ての寸法は図7図10に準じる。
【0096】
図13は、図12に示した第二のコームに備えた第二の歯先4-2-2に関する好ましい寸法を示した表面からの概略模式図である。第二の歯先4-2-2の形状は、図11に示した第一の歯先収束面4-2-11を、この収束面の始まるところから、傾斜角ηで一部を切削したように、第二の歯先収束面4-2-21、第二の歯先先端面4-2-22、第二の歯先右傾斜面4-2-23、及び、第二の歯先中央傾斜面を、それぞれ略長方形となるように成形し、第一の歯先先端面の一部を歯先突起体のように残した形状となっている。ここで、第二の歯先右傾斜面4-2-23よりも第二の歯先中央傾斜面が窪んでいる。その結果、第二の歯先収束面4-2-21の傾斜角ζ及び第二の歯先先端面4-2-22の傾斜角εに変化はなく、歯先突起体の幅y及び歯先突起体の長さyが0.15mm以上0.45mm以下で、略正方形の歯裏面4-5から楔形のような側面をした歯先突起体になっており、その側面に沿って、略長方形の第二の歯先右傾斜面4-2-23及び第二の歯先中央傾斜面4-2-24が、傾斜角ηで第二の歯先収束面4-2-21の始まり(第一の歯先収束面4-2-11の始まりと同じ位置)から歯裏面4-5に向かって成形されている。この傾斜角ηは36°以上90°未満であることが好ましく、50°以上80°以下であることがより好ましい。歯裏面に対する歯表面の傾斜角δ、歯裏面に対する第一及び第二の歯先先端面の傾斜角ε、歯裏面に対する第一及び第二の歯先収束線面の傾斜角ζ、及び、歯裏面に対する第2の歯先傾斜面の傾斜角ηの大小関係は、δ<ζ<η<εとなっていることが好ましい。ただし、これらの数値についても限定されるものではない。
【0097】
更に、第二の歯先中央傾斜面4-2-24と第二の歯先収束面4-2-21が交差する付近に、溝19を成形しておくことがより好ましく、溝の幅及び深さxは0.05mm以上0.45mm以下であることが好ましく、0.05mm以上0.24mm以下であることがより好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0098】
最後に、図14には、図13で示した第二の歯先の形状を理解するために、図12に示した第二のコームに備えた第二の歯先の裏面からの概略模式図を示した。第二の歯先には、歯先突起体が出ていることが分かる。特に、ここでは、図13では認知することができない、第二の歯先傾斜面底辺4-2-25が胴1から垂設されている歯4の直交線と成す角が0°以上45°以下に成形されることが好ましいことを示している。
【0099】
以上、本発明のコームの形態・構成、更には、コームの胴、歯、肩、櫛尖、櫛体、及び、把手等の各部位の形状、並びに、それらの相互位置関係について詳説してきた中で、形状の寸法を限定した場合の方が、コーミングにおける結果として好ましい効果が発現する。しかしながら、コームを成形する素材及びコームの表面形状の影響が著しいため、必ずしもこれらの形態・構成、更には、コームの胴、歯、肩、櫛尖、櫛体、及び、把手等の各部位の形状、並びに、それらの相互位置関係を規定する数値に限定する必要はない。
【0100】
このようにして試作された、素材がV金10で、胴1、複数の歯4、肩3、櫛尖6、櫛体7の垂直方向に位置する胴1、複数の歯4、肩3、櫛尖6、及び櫛体7の上面及び下面、並びに、複数の歯4の歯先4-2-1と反対方向に位置する胴1、肩3、及び、櫛体7の側面2、3-1、並びに、櫛尖6の先端方向に位置する側面6-1の各部位の表面が、図23に示したような表面性状となる鏡面仕上げを施した、図12に示す第二のコームを用い、コーミングを行い、コーミング前後のコームの状態、頭皮の状態、毛髪の状態を比較した。
【0101】
図15は、本発明の図12に示した上記第二のコームの試作品で、その持ち方を示している。母指孔9、薬指孔14、小指掛け15にそれぞれ対応する指を備え、動把手13に示指及び中指を備える。
【0102】
図16は、本発明の一実施形態であるコーミング方法を示している。ここでは、毛髪を持ち上げ、その持ち上げられた毛髪の頭皮の付近に、図12のコームの表面を上方に向け、肩3、胴1、及び、櫛体7とで形成される直線状の背2又は円弧状の背2を頭皮と接触させて又は接触することなく、頭皮に沿うように水平方向に往復移動を行っている。この動作を、頭のどの位置においても同様に行うだけでよい。すなわち、コームの表面を上方に向け、コームの背を頭皮に接触させて又は接触することなく、頭皮に沿うように縦横無尽に平行往復移動すればよい。
【0103】
図17は、本発明の一実施形態に係る第二の歯先を備えた第二のコームを使用して、本発明の一実施形態であるコーミング法でコーミングする前後の第二の歯先を備えた第二のコームの歯の拡大写真で、本発明のコームのコーミングによる老廃物除去効果を示している。コーミング前(a)の歯Gには何ら異物が付着していないが、コーミング後(b)の歯Gには、毛髪や頭皮に付着していた皮脂、フケ等の老廃物Hがおびただしく付着している。
【0104】
このことは、コーミング前後の頭皮の毛穴の状態を観察することによって裏付けられた。図18は、本発明の一実施形態に係る第二の歯先を備えた第二のコームを使用して、本発明の一実施形態であるコーミング法でコーミングする前後の毛穴付近の写真で、本発明のコームのコーミングによる皮脂除去効果を証明している。コーミング前(a)には、毛穴に多量の皮脂Iが付着していたが、コーミング後(b)の毛穴には皮脂が認められない。
【0105】
図19は、本発明の一実施形態に係る第二の歯先を備えた第二のコームを使用して、本発明の一実施形態であるコーミング法でコーミングする前後の毛髪の模式図で、本発明のコームのコーミングによる毛髪調整効果を示している。コーミング前(a)は、毛髪が絡んだり、折れたりして、毛髪のボリュームがなく、くせ毛になっているが、コーミング後(b)は、毛髪が一本毎に解され、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にされる。
【0106】
図20は、本発明の一実施形態に係る第二の歯先を備えた第二のコームを使用して、本発明の一実施形態であるコーミング法でコーミングする前後の毛髪の写真で、本発明のコームのコーミングによるくせ毛矯正効果を示している。コーミング前(a)は、丸で囲まれた毛髪が縮れて跳ねているが、コーミング後(b)は、丸で囲まれた毛髪がまっすぐに伸びた状態に矯正されている。この効果は、約2~3週間続くことを確認している。
【0107】
図21は、本発明の一実施形態に係る第二の歯先を備えた第二のコームを使用して、本発明の一実施形態であるコーミング法でコーミングする前後の毛髪の写真で、本発明のコームのコーミングによるつむじ遮蔽効果を示している。コーミング前(a)とコーミング後(b)のつむじを比較すると、写真から明らかなように、コーミング後のつむじは認めにくくなっている。
【0108】
本実施例では、鏡面仕上げのコームの効果を示したが、その後、超鏡面仕上げを施したコームでは、これ以上の効果が安定して発現することを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のコームは、従来にない新しい構造及び形状に加え、磁性、硬度、耐食性を有する炭素鋼、特殊鋼、ステンレス鋼という材質を適用することによって、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にできると共に、毛髪や頭皮に付着する油性成分を除去できる。従って、ペットのコームとして応用することができるのは言うまでもなく、絨毯、毛布等のボリューム感を回復させ、清潔に保つためのコーム等として応用することができる。更に、本発明の合金を毛に加工することによって、本発明と同様の効果を発現するブラシを製造することができる可能性がある。
【符号の説明】
【0110】
1:胴
2:背(胴側面)
3:肩
3-1 肩側面
4:歯
4-1:歯元
4-1-1:最後端の歯元
4-2:歯先
4-2-1:第一の歯先
4-2-11:第一の歯先収束面
4-2-12:第一の歯先先端面
4-2-2:第二の歯先
4-2-21:第二の歯先収束面
4-2-22:第二の歯先先端面
4-2-23:第二の歯先右傾斜面
4-2-24:第二の歯先中央傾斜面
4-2-25:第二の歯先傾斜面底辺
4-3:歯上面
4-4:歯側面
4-5:歯下面
5:目
6:櫛尖
6-1:櫛尖側面
7:櫛体
8:把手
9:母指孔
10:緩衝点
11:触点
12:コーム本体
13:動把手
14:薬指孔
15:小指掛け
16:コーム操作補助体
17:要(かなめ)
18:歯元連結線
19:溝
a:櫛尖の厚さ
b:櫛体の厚さ
c:播種の厚さ
d:小指掛けの厚さ
e:全長
f:要から櫛尖先端までの長さ
g:要から把手後端までの長さ
h:要から母指孔の中心までの長さ
i:歯の全長
j:櫛体の長さ
k:把手の長さ
l:櫛体の幅
m:要から動把手後端までの長さ
n:要から薬指孔の中心までの長さ
о:小指掛けの長さ
p:歯の長さ
q:胴の幅
r:歯の幅
s:目の幅
:櫛尖の幅
:櫛尖の長さ
u:歯先の高さ
x:第二の歯先傾斜面の溝の幅及び深さ
:歯先突起体の幅
:歯先突起体の長さ
α:背接線に対する把手の傾斜角
β:背接線に対する動把手閉止時の傾斜角
γ:歯元連結線の接線に対する歯の傾斜角
δ:歯下面に対する歯上面の傾斜角
ε:歯下面に対する第一及び第二の歯先先端面の傾斜角
ζ:歯下面に対する第一及び第二の歯先収束面の傾斜角
η:歯下面に対する第二の歯先傾斜面の傾斜角
θ:歯先との直交線に対する第二の歯先傾斜面底辺の傾斜角
κ:背側面の曲率
κ18:歯元連結線の曲率
κ:肩側面の曲率
κ:櫛尖側面の曲率
κ:歯上面の曲率
A:本発明のコーム
B:母指
C:示指
D:中指
E:薬指
F:小指
G:本発明のコームの歯
H:皮脂等の老廃物
I:皮脂
J:毛髪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24