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特許7343752撚り構造体モデル作成装置、撚り構造体モデルのシミュレーション方法および撚り構造体モデル作成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】撚り構造体モデル作成装置、撚り構造体モデルのシミュレーション方法および撚り構造体モデル作成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20230906BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20230906BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20230906BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20230906BHJP
   D07B 1/16 20060101ALI20230906BHJP
   D07B 1/06 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/20
G01M17/02
B60C19/00 Z
D07B1/16
D07B1/06 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019092292
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020187590
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亘男
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-122279(JP,A)
【文献】特開2008-308801(JP,A)
【文献】特開2008-230375(JP,A)
【文献】特開2010-229558(JP,A)
【文献】特開2008-231605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/28
G01M 17/02
B60C 19/00
D07B 1/16
D07B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚り線と、前記撚り線に隣接し、前記撚り線を被覆する隣接母材とを含む構造体についてメッシュを作成する構造体メッシュ作成部と、
前記構造体を取り巻く母材本体についてメッシュを作成する母材メッシュ作成部と、
前記構造体メッシュ作成部によって作成したメッシュと前記母材メッシュ作成部によって作成したメッシュとを固着接触することにより、前記撚り線と前記撚り線を取り巻く母材とを有する撚り構造体モデルを作成する固着接触部と、
を含み、
前記母材メッシュ作成部によって作成するメッシュは、前記構造体メッシュ作成部によって作成するメッシュよりも粗いメッシュであり、
前記構造体メッシュ作成部によって作成したメッシュと前記母材メッシュ作成部によって作成したメッシュとを固着接触する境界の内側と外側とにおいて、メッシュの粗密度合いが不連続である
撚り構造体モデル作成装置。
【請求項2】
前記固着接触部によって作成された前記撚り構造体モデルの物理量を解析する解析部をさらに含む請求項1に記載の撚り構造体モデル作成装置。
【請求項3】
前記隣接母材で被覆した前記撚り線のモデルの外表面の平均要素長さをEL1、前記母材本体のモデルの内表面の平均要素長さをEL2、前記母材本体のモデルの外表面の平均要素長さをEL3としたとき、前記撚り構造体モデルの長手方向に垂直な方向の断面の要素長さ比Rは、
R=EL3/(EL1・EL2)で示され、10≦R≦120の関係を満足する請求項1または2に記載の撚り構造体モデル作成装置。
【請求項4】
前記撚り線を内接させる円の断面積をS1とし、前記構造体メッシュ作成部によって作成したメッシュと前記母材メッシュ作成部によって作成したメッシュとの固着接触の境界の断面積をS2としたとき、前記撚り構造体モデルの長手方向に垂直な方向の断面の断面積比Tは、T=S2/S1で示され、1.0<T≦20.0の関係を満足する請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の撚り構造体モデル作成装置。
【請求項5】
前記母材本体の最外形状は角柱形状である請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の撚り構造体モデル作成装置。
【請求項6】
前記撚り構造体モデルの延在方向に沿った長さと前記撚り線の撚りピッチとの比が0.50以上0.75以下である請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の撚り構造体モデル作成装置。
【請求項7】
撚り線と、前記撚り線に隣接し、前記撚り線を被覆する隣接母材とを含む構造体についてメッシュを作成する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて作成するメッシュよりも粗いメッシュであり、かつ、前記構造体を取り巻く母材本体についてメッシュを作成する第2のステップと、
前記第1のステップにおいて作成したメッシュと前記第2のステップにおいて作成したメッシュとを固着接触することにより、前記撚り線と前記撚り線を取り巻く母材とを有する撚り構造体モデルを作成する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて作成された前記撚り構造体モデルの物理量を解析する第4のステップと、
を含み、
前記第1のステップにおいて作成したメッシュと前記第2のステップにおいて作成したメッシュとを固着接触する境界の内側と外側とにおいて、メッシュの粗密度合いが不連続である
撚り構造体モデルのシミュレーション方法。
【請求項8】
コンピュータに、
撚り線と、前記撚り線に隣接し、前記撚り線を被覆する隣接母材とを含む構造体についてメッシュを作成する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて作成するメッシュよりも粗いメッシュであり、かつ、前記構造体を取り巻く母材本体についてメッシュを作成する第2のステップと、
前記第1のステップにおいて作成したメッシュと前記第2のステップにおいて作成したメッシュとを固着接触することにより、前記撚り線と前記撚り線を取り巻く母材とを有する撚り構造体モデルを作成する第3のステップと、前記第3のステップにおいて作成された前記撚り構造体モデルの物理量を解析する第4のステップと、
を実行させ
前記第1のステップにおいて作成したメッシュと前記第2のステップにおいて作成したメッシュとを固着接触する境界の内側と外側とにおいて、メッシュの粗密度合いが不連続である
撚り構造体モデル作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚り構造体モデル作成装置、撚り構造体モデルのシミュレーション方法および撚り構造体モデル作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤに用いられる補強材の力学特性評価は、タイヤの耐久性を議論する上で不可欠である。特許文献1に記載の技術では、撚り構造体を構成するモノフィラメント素線及び母材のソリッドモデルを作成した後、母材のソリッドモデルの内部に素線のソリッドモデルを組み込み、素線のソリッドモデルの表面及び母材のソリッドモデルの表面を複数の節点で構成される複数のメッシュで分割している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5434554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、メッシュが細かいため、計算精度が高い。しかしながら、特許文献1に記載の技術によると、計算時間が非常に長いため、シミュレーションの効率が低下する。計算精度を低下させずに、計算時間を短くすることが望ましく、特許文献1に記載の技術については、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、計算精度を低下させずに、計算時間を短くすることのできる撚り構造体モデル作成装置、撚り構造体モデルのシミュレーション方法および撚り構造体モデル作成プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様による撚り構造体モデル作成装置は、撚り線と、前記撚り線に隣接し、前記撚り線を被覆する隣接母材とを含む構造体についてメッシュを作成する構造体メッシュ作成部と、前記構造体を取り巻く母材本体についてメッシュを作成する母材メッシュ作成部と、前記構造体メッシュ作成部によって作成したメッシュと前記母材メッシュ作成部によって作成したメッシュとを固着接触することにより、前記撚り線と前記撚り線を取り巻く母材とを有する撚り構造体モデルを作成する固着接触部と、を含み、前記母材メッシュ作成部によって作成するメッシュは、前記構造体メッシュ作成部によって作成するメッシュよりも粗いメッシュであり、前記構造体メッシュ作成部によって作成したメッシュと前記母材メッシュ作成部によって作成したメッシュとを固着接触する境界の内側と外側とにおいて、メッシュの粗密度合いが不連続である。
【0007】
前記固着接触部によって作成された前記撚り構造体モデルの物理量を解析する解析部をさらに含むことが好ましい。
【0008】
前記隣接母材で被覆した前記撚り線のモデルの外表面の平均要素長さをEL1、前記母材本体のモデルの内表面の平均要素長さをEL2、前記母材本体のモデルの外表面の平均要素長さをEL3としたとき、前記撚り構造体モデルの長手方向に垂直な方向の断面の要素長さ比Rは、R=EL3/(EL1・EL2)で示され、10≦R≦120の関係を満足することが好ましい。
【0009】
前記撚り線を内接させる円の断面積をS1とし、前記構造体メッシュ作成部によって作成したメッシュと前記母材メッシュ作成部によって作成したメッシュとの固着接触の境界の断面積をS2としたとき、前記撚り構造体モデルの長手方向に垂直な方向の断面の断面積比Tは、T=S2/S1で示され、1.0<T≦20.0の関係を満足することが好ましい。
【0010】
前記母材本体の最外形状は角柱形状であることが好ましい。
【0011】
前記撚り構造体モデルの延在方向に沿った長さと前記撚り線の撚りピッチとの比が0.50以上0.75以下であることが好ましい。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様による撚り構造体モデルのシミュレーション方法は、撚り線と、前記撚り線に隣接し、前記撚り線を被覆する隣接母材とを含む構造体についてメッシュを作成する第1のステップと、前記第1のステップにおいて作成するメッシュよりも粗いメッシュであり、かつ、前記構造体を取り巻く母材本体についてメッシュを作成する第2のステップと、前記第1のステップにおいて作成したメッシュと前記第2のステップにおいて作成したメッシュとを固着接触することにより、前記撚り線と前記撚り線を取り巻く母材とを有する撚り構造体モデルを作成する第3のステップと、前記第3のステップにおいて作成された前記撚り構造体モデルの物理量を解析する第4のステップと、を含み、前記第1のステップにおいて作成したメッシュと前記第2のステップにおいて作成したメッシュとを固着接触する境界の内側と外側とにおいて、メッシュの粗密度合いが不連続である。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様による撚り構造体モデル作成プログラムは、コンピュータに、撚り線と、前記撚り線に隣接し、前記撚り線を被覆する隣接母材とを含む構造体についてメッシュを作成する第1のステップと、前記第1のステップにおいて作成するメッシュよりも粗いメッシュであり、かつ、前記構造体を取り巻く母材本体についてメッシュを作成する第2のステップと、前記第1のステップにおいて作成したメッシュと前記第2のステップにおいて作成したメッシュとを固着接触することにより、前記撚り線と前記撚り線を取り巻く母材とを有する撚り構造体モデルを作成する第3のステップと、前記第3のステップにおいて作成された前記撚り構造体モデルの物理量を解析する第4のステップと、を実行させ、前記第1のステップにおいて作成したメッシュと前記第2のステップにおいて作成したメッシュとを固着接触する境界の内側と外側とにおいて、メッシュの粗密度合いが不連続である、プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、計算精度を維持しつつ、計算時間を短くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、タイヤの回転軸を通る子午断面の例を示す断面図である。
図2図2は、本実施形態に係る撚り構造体モデルの作成装置の構成を示す説明図である。
図3図3は、本実施形態に係る撚り構造体モデルのシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、構造体に対応するメッシュと構造体を取り巻く母材本体に対応するメッシュとを固着接触したモデルの一例を示す断面図である。
図5図5は、構造体に対応するメッシュと構造体を取り巻く母材本体に対応するメッシュとを固着接触したモデルの他の例を示す断面図である。
図6図6は、撚り構造体モデルの要素長さの比を説明する図である。
図7図7は、構造体のメッシュと母材本体10のメッシュとを固着接触させた例を示す図である。
図8図8は、図7の一部を拡大して示す図である。
図9図9は、撚り構造体モデルを構成する撚り線と、固着接触の境界との断面積の関係を説明する図である。
図10図10は、母材本体の最外形状が角柱形状である場合の固着接触の概念を示す図である。
図11図11は、固着接触された状態で付与されるせん断変形を示す断面図である。
図12図12は、撚り構造体モデルを複数並べた状態を示す図である。
図13図13は、撚り構造体モデルの延在方向に沿った長さと撚り線の撚りピッチとの比を説明する図である。
図14図14は、比較例によるメッシュを示す図である。
図15図15は、図14の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。本発明の適用対象は、補強コードを有するタイヤであれば適用でき、空気入りタイヤに限られるものではない。以下においては、説明の便宜上、特に断りのない限り空気入りタイヤをタイヤという。
【0018】
[タイヤの例]
図1は、タイヤの回転軸を通る子午断面の例を示す断面図である。図1に示すように、タイヤ100の子午断面には、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4、ビードコア5が現れている。タイヤ100は、母材であるゴムを、強化材であるカーカス2、ベルト3、あるいはベルトカバー4等の補強コードによって補強した複合材料の構造体である。ここで、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4等の、金属繊維や有機繊維等のコード材料で構成される補強コードの層を、コード層という。
【0019】
カーカス2は、タイヤ100に空気を充填した際に圧力容器としての役目を果たす強度メンバーであり、その内圧によって荷重を支え、走行中の動的荷重に耐えるようになっている。ベルト3は、キャップトレッド6とカーカス2との間に配置されたゴム引きコードを束ねた補強コードの層である。なお、バイアスタイヤの場合にはブレーカと呼ぶ。ラジアルタイヤにおいて、ベルト3は形状保持及び強度メンバーとして重要な役割を担っている。
【0020】
ベルト3の接地面G側には、ベルトカバー4が配置されている。ベルトカバー4は、例えば有機繊維材料を層状に配置したものであり、ベルト3の保護層としての役割や、ベルト3の補強層としての役割を持つ。ビードコア5は、内圧によってカーカス2に発生するコード張力を支えているスチールワイヤの束である。ビードコア5は、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4及びトレッドとともに、タイヤ100の強度部材となる。キャップトレッド6の接地面G側には、溝7が形成される。これによって、雨天走行時の排水性を向上させる。また、タイヤ100の側部はサイドウォール8と呼ばれており、ビードコア5とキャップトレッド6との間を接続する。また、キャップトレッド6とサイドウォール8との間はショルダー部Shである。
【0021】
[撚り構造体モデル作成装置]
次に、本実施形態に係る撚り構造体モデルの作成方法を実行する装置について説明する。図2は、本実施形態に係る撚り構造体モデル作成装置の構成を示す説明図である。図2に示す撚り構造体モデル作成装置(以下、モデル作成装置という)50は、母材と複数のモノフィラメント素線を撚った撚り線とが組み合わされるとともに、構造物に埋め込まれて、その構造物を補強する撚り構造体について、コンピュータで解析可能な撚り構造体の解析モデルを作成するものである。そして、モデル作成装置50は、本実施形態に係る撚り構造体モデルの作成方法を実行して、撚り構造体の解析モデルを作成する。
【0022】
モデル作成装置50は、処理部50pと記憶部50mとを備えている。処理部50pと記憶部50mとは、入出力部(I/O)59を介して接続してある。処理部50pは、構造体メッシュ作成部51と、母材メッシュ作成部52と、固着接触部53と、条件設定部54と、FEM解析部55とを含んで構成される。これらが本実施形態に係る撚り構造体モデルの作成方法を実行する。構造体メッシュ作成部51と、母材メッシュ作成部52と、固着接触部53と、条件設定部54と、FEM解析部55とは入出力部59に接続されており、相互にデータをやり取りできるように構成されている。また、モデル作成装置50には、入出力装置60が接続されており、これに入力装置61及び表示装置62が接続される。入出力装置60は、入出力部(I/O)59を介して撚り構造体モデルの作成およびシミュレーションに必要な情報を処理部50pや記憶部50mへ入力する。
【0023】
構造体メッシュ作成部51は、構造体に対応するメッシュを作成する。構造体は、撚り線と、隣接母材とを含む。隣接母材は、撚り線に隣接し、撚り線を被覆する。構造体メッシュ作成部51は、例えば、構造体のソリッドモデル(図示せず)を作成し、そのソリッドモデルの表面にメッシュを作成する。構造体メッシュ作成部51が作成するメッシュは、構造体の表面を、単純な形状をした要素に分割したものである。メッシュは、要素と、要素同士を接続する節点とで構成される。メッシュは、有限要素法(FEM;Finite Element Method)を用いて離散化することによって作成される。メッシュの要素は、例えば、六面体とする。
【0024】
母材メッシュ作成部52は、構造体を取り巻く母材本体に対応するメッシュを作成する。母材本体は、上記の隣接母材と同じ材料によって構成される。母材メッシュ作成部52が作成するメッシュは、母材本体の表面を、単純な形状をした要素に分割したものである。母材メッシュ作成部52が作成するメッシュも要素と節点とで構成され、有限要素法を用いて離散化することによって作成される。
【0025】
母材メッシュ作成部52が作成するメッシュと、構造体メッシュ作成部51が作成するメッシュとは、別々に作成される。母材メッシュ作成部52が作成するメッシュは、構造体メッシュ作成部51が作成するメッシュの要素よりも大きな要素によって構成される。つまり、母材メッシュ作成部52が作成するメッシュは、構造体メッシュ作成部51が作成するメッシュよりも粗いメッシュである。
【0026】
固着接触部53は、構造体メッシュ作成部51によって作成した構造体のメッシュと母材メッシュ作成部52によって作成した母材本体のメッシュとを固着接触する。つまり、固着接触部53は、個別に作成した2つのメッシュを固着接触する。固着接触部53は、構造体のメッシュと母材本体のメッシュとを固着接触することにより、撚り線と撚り線を取り巻く母材とを有する撚り構造体モデルを作成する。固着接触とは、対をなす表面に対して並進と回転運動およびそれ以外の全ての有効自由度を等しくすることをいう。固着接触の際、メッシュを構成する節点は、表面が互いに近接している場所で結合される。
【0027】
条件設定部54は、解析を行う際の条件を設定する。解析を行う際の条件は、例えば、入出力装置60から入力される。解析を行う際の条件は、例えば、材料条件や境界条件である。
【0028】
FEM解析部55は、条件設定部54によって設定された条件に従って、撚り構造体モデルの解析を行うことによって、撚り線の物理量を解析する。物理量とは、例えば、応力、歪み、寸法値、体積、エネルギーなどである。FEM解析部55は、例えば、撚り線の引張剛性を再現する。
【0029】
記憶部50mには、後述する本実施形態に係る撚り構造体モデルの作成方法の処理手順を含むコンピュータプログラムや、各種のデータ等が格納されている。ここで、記憶部50mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、不揮発性のメモリ、ハードディスク装置、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。また、処理部50pは、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成できる。
【0030】
上記コンピュータプログラムは、処理部50pが備える構造体メッシュ作成部51、母材メッシュ作成部52、固着接触部53等へ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施形態に係る撚り構造体モデルのシミュレーション方法の処理手順を実現できるものであってもよい。また、このモデル作成装置50は、コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、処理部50pが備える構造体メッシュ作成部51と、母材メッシュ作成部52と、固着接触部53と、条件設定部54と、FEM解析部55との機能を実現するものであってもよい。
【0031】
[シミュレーション方法の手順]
図3は、本実施形態に係る撚り構造体モデルのシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。図4は、構造体に対応するメッシュと構造体を取り巻く母材本体に対応するメッシュとを固着接触したモデルの一例を示す断面図である。図5は、構造体に対応するメッシュと構造体を取り巻く母材本体に対応するメッシュとを固着接触したモデルの他の例を示す断面図である。
【0032】
本実施形態に係る撚り構造体モデルのシミュレーション方法を実行するにあたり、ステップS101において、図2に示すモデル作成装置50は、撚り構造の選定を行う。撚り構造の選定は、例えば、入力装置61からの入力に基づいて行われる。
【0033】
ステップS101が終了したらステップS102へ進み、図2に示すモデル作成装置50の構造体メッシュ作成部51は、構造体に対応するメッシュを作成する。撚り構造体モデル1に対応するメッシュは、例えば図4に示すように、撚り線9A、9Bの表面から所定距離だけ離間した位置に、境界11がある。撚り線9A、9Bの表面から離間した位置に、境界11が存在することにより、過度な応力集中を防ぐことができる。
【0034】
撚り線9A、9Bに対応するメッシュと境界11との間は、隣接母材10Aに対応するメッシュが存在する。つまり、撚り線9Aおよび9Bは、隣接母材10Aによって被覆されるため、隣接母材10Aと母材本体10との間に境界11が存在する。一方、図5は、撚り線9A、9Bの表面に境界11A、11Bが存在する場合を示す。図4に示す構造体には隣接母材10Aが存在するのに対し、図5に示す撚り構造体モデル1Aには隣接母材が存在しない。
【0035】
ステップS102が終了したらステップS103へ進み、図2に示すモデル作成装置50の母材メッシュ作成部52は、構造体を取り巻く母材本体10に対応するメッシュを作成する。母材本体10に対応するメッシュは、境界11の外側に位置するメッシュである。
【0036】
ステップS103が終了したらステップS104へ進み、図2に示すモデル作成装置50の固着接触部53は、構造体メッシュ作成部51によって作成した構造体のメッシュと母材メッシュ作成部52によって作成した母材本体10のメッシュとを固着接触する。構造体のメッシュと母材本体10のメッシュとの固着接触により、撚り線と撚り線を取り巻く母材とを有する撚り構造体モデルが作成される。撚り線9A、9Bと境界11との間の隣接母材10Aと母材本体10とは同じ材料であり、境界11は接触境界である。境界11は、構造体のメッシュと母材本体10のメッシュとの境界であり、固着接触する部分である。
【0037】
上述したように、母材メッシュ作成部52が作成するメッシュと、構造体メッシュ作成部51が作成するメッシュとは、別々に作成されるため、境界11の内側と外側とでは、メッシュが不連続になっている。境界11の内側と外側とで、メッシュが不連続であるため、内側と外側とでメッシュの粗密を大胆に変化させることができる。母材メッシュ作成部52が作成するメッシュは、構造体メッシュ作成部51が作成するメッシュよりも粗いメッシュであるため、境界11の内側と境界11の外側とで、メッシュの粗密度合いが不連続になる。このように、境界11の内側の、撚り線に近い領域についてはメッシュの密度が高く、境界11の外側は内側よりもメッシュの密度が低いため、計算精度を維持しつつ、計算時間を短くしてシミュレーション効率の低下を抑制できる。
【0038】
ステップS104が終了したらステップS105へ進み、図2に示すモデル作成装置50の条件設定部54は、例えば、入力装置61からの入力に基づいて、解析を行う際の条件を設定する。
【0039】
ステップS105が終了したらステップS106へ進み、図2に示すモデル作成装置50のFEM解析部55は、条件設定部54によって設定された条件に従って、撚り構造体モデルの解析を行う。
【0040】
ステップS106が終了したらステップS107へ進み、図2に示すモデル作成装置50は、FEM解析部55の解析結果を出力する。モデル作成装置50は、例えば、表示装置62に表示することによって、解析結果を出力する。
【0041】
ところで、上記のステップS104において固着接触によって作成される撚り構造体モデルについては、以下の条件を満足することが好ましい。図6は、撚り構造体モデルの要素長さの比を説明する図である。図6において、隣接母材10Aで被覆した撚り線のモデルの外表面エッジの平均要素長さをEL1、母材本体のモデルの内表面エッジの平均要素長さをEL2、母材本体のモデルの外表面エッジの平均要素長さをEL3とする。このとき、撚り構造体モデルの長手方向に垂直な方向の断面の要素長さ比Rは、式(1)で示される。
R=EL3/(EL1・EL2)…(1)
【0042】
そして、10≦R≦120の関係を満足することが好ましい。要素長さ比Rの値が下限である10未満であると、母材本体に対応するメッシュが粗くなりすぎ、固着接触の定義が破綻するため、好ましくない。要素長さ比Rの値が上限である120を超えると、母材本体に対応するメッシュが密になりすぎ、モデル作成装置50における計算コストが大きくなり、好ましくない。
【0043】
ここで、平均要素長さとは、エッジ上で分割された複数の要素長さの和をエッジ上の要素数で除したものである。平均要素長さEL1は、隣接母材10Aで被覆した撚り線のモデルの外表面のエッジによって算出する。なお、要素長さとは、要素を構成する節点と節点との間の距離である。
【0044】
表1は、要素長さ比Rの数値範囲に対する計算時間および計算精度を示す表である。表1において、計算時間は従来例を「100」としたときの、指数で表す。また、計算精度は、応力と歪みとの関係(例えば、引張剛性)について、実験を行った場合における値を基準とし、モデル作成装置50によるシミュレーション結果との差異を百分率で示す。
【0045】
表1において、実施例A、実施例Bおよび実施例Cは、要素長さ比Rが上記の数値範囲内の値である。比較例Aは、要素長さ比Rの値が下限未満である。比較例Bは、要素長さ比Rの値が上限を超えている。なお、従来例Aにおける「N/A」は該当する値が存在しないことを示す。以下の説明においても同様である。表1に示すように、10≦R≦120の関係を満足する場合に計算時間が短く、かつ、良好な計算精度を得ることができる。
【0046】
【表1】
【0047】
図7は、構造体のメッシュと母材本体10のメッシュとを固着接触させた例を示す図である。図8は、図7の一部を拡大して示す図である。図7において、互いに隣接する要素12A、12B、12Cおよび12Dは、節点13において接続されている。図7のメッシュを構成する他の要素についても節点において、隣接する要素と接続されている。図8において、互いに隣接する要素121A、121B、121Cおよび121Dは、節点131において接続されている。図8のメッシュを構成する他の要素についても節点において、隣接する要素と接続されている。
【0048】
図7および図8において、境界11の内側に、撚り線9A、9Bが存在する。図8において、撚り線9A、9Bと境界11との間には、隣接母材10Aが存在する。図7および図8から理解できるように、境界11の内側と境界11の外側とでメッシュが連続していない。すなわち、境界11において、内側のメッシュと外側のメッシュとが不連続になっている。境界11の外側のメッシュは、境界11の内側のメッシュよりも粗いメッシュである。
【0049】
[断面積比]
図9は、撚り構造体モデルを構成する撚り線と、固着接触の境界との断面積の関係を説明する図である。図9において、撚り線9Aおよび9Bを含む撚り構造体モデルと母材本体10とが固着接触する場合に、撚り線9Aおよび9Bを内接させる円を円C1とする。また、固着接触の境界上の円を円C2とする。円C1の断面積をS1とし、円C2の断面積をS2としたとき、撚り構造体モデルの長手方向に垂直な方向の断面の断面積比Tは、T=S2/S1で示される。
【0050】
そして、1.0<T≦20.0の関係を満足することが好ましい。断面積比Tが上限である20.0を超えると、メッシュの粗密の差が小さすぎて計算効率が向上しないため、好ましくない。なお、固着接触の境界は、円形であることが好ましいが、円に限らず楕円や矩形であってもよい。
【0051】
表2は、断面積比Tの数値範囲に対する計算時間および計算精度を示す表である。表2において、計算時間は従来例を「100」としたときの、指数で表す。また、計算精度は、応力と歪みとの関係(例えば、引張剛性)について、実験を行った場合における値を基準とし、モデル作成装置50によるシミュレーション結果との差異を百分率で示す。
【0052】
表2において、実施例Dおよび実施例Eは、断面積比Tが上記の数値範囲内の値である。比較例Cは、断面積比Tの値が上限を超えている。比較例Dは、断面積比Tの値が1である。表2に示すように、1.0<T≦20.0の関係を満足する場合に計算時間が短く、かつ、良好な計算精度を得ることができる。
【0053】
【表2】
【0054】
[母材本体の形状]
ところで、母材本体10の最外形状は角柱に限定されず、例えば、円柱でも良い。もっとも、母材本体10の最外形状が角柱形状であることが好ましい。図10は、母材本体10の最外形状が角柱形状である場合の固着接触の概念を示す図である。図11は、固着接触された状態で付与されるせん断変形を示す断面図である。図12は、撚り構造体モデルを複数並べた状態を示す図である。
【0055】
図10に示すように、撚り線9Aおよび9Bとこれらを被覆する隣接母材10Aとを含む構造体と、最外形状が角柱形状である母材本体10と、を固着接触させることにより、撚り構造体モデル1が構成される。母材本体10の最外形状が角柱形状であることにより、図11に示すように、矢印Y1の方向、矢印Y2の方向に、それぞれ力を加えたせん断変形を付与しやすくなる。図11において、撚り線9Aおよび9Bを被覆する隣接母材10Aと、隣接母材10Aを取り囲む母材本体10とによって、撚り構造体モデル1が構成される。撚り構造体モデル1は角柱形状であり、互いに対向する面の一方の面に矢印Y1の方向に力を加え、他方の面には矢印Y1とは逆の方向である矢印Y2の方向に力を加える。
【0056】
図10に示すように、母材本体10の最外形状が角柱形状であることにより、撚り構造体モデルを複数並べて配置でき、実タイヤの材料レイアウトを再現することができる。例えば、図12に示すように、複数の撚り構造体モデル1の側面同士を接触させて並べたレイアウトを再現することができる。このように、複数の撚り構造体モデル1を並べることにより、例えば、タイヤ100のベルト3のような積層板のモデルを解析する場合に、撚り線と撚り線との間に発生する歪量を算出することができる。
【0057】
撚り構造体モデル1の延在方向に沿った長さと撚り線の撚りピッチとの比は0.50以上0.75以下であることが好ましい。図13は、撚り構造体モデル1の延在方向に沿った長さと撚り線の撚りピッチとの比を説明する図である。図13においては、撚り構造体モデル1の延在方向に沿った長さを高さHとしている。また、撚り線9A、9Bの撚りピッチをPとする。このとき、高さHに対する撚りピッチPの比L=P/Hは、0.50≦L≦0.75の関係を満足することが好ましい。比Lが下限である0.50未満であると、撚りピッチ数が過剰に増え、計算時間が増大するため、好ましくない。比Lが上限である0.75を超えると、材料の圧縮強度よりも低い荷重でオイラー座屈が起こり、適切な評価ができないため、好ましくない。
【0058】
[比較例]
図14は、比較例によるメッシュを示す図である。図15は、図14の一部を拡大して示す図である。図14および図15を参照すると、母材本体10のメッシュと、撚り線9Aおよび9Bのメッシュとの間には、不連続な境界が存在せず、メッシュが連続している。撚り線9A、9Bの近傍では、メッシュの密度が高い。このため、計算時間が増大する。
【0059】
これに対し、構造体のメッシュと母材本体10のメッシュとを固着接触させた場合、図7および図8を参照して説明したように、境界11の内側と境界11の外側とでメッシュが連続しない。しかも、境界11の外側のメッシュは、境界11の内側のメッシュよりも粗いメッシュである。図7および図8に示すメッシュは、図14および図15に示すメッシュに比べて、境界11の外側において密度が低い。このため、図7および図8に示すメッシュによれば、図14および図15に示すメッシュよりも計算時間を短縮することができる。図14および図15に示すメッシュを採用すると計算時間が100(指数)であるのに対し、図7および図8に示すメッシュを採用すると計算時間が40(指数)になる。また、引張剛性の実測値を「100」とすると、図14および図15に示すメッシュを採用してシミュレーションを行うと、引張剛性の値は例えば「104」、図7および図8に示すメッシュを採用してシミュレーションを行うと引張剛性の値は例えば「105」であるため、計算精度が大きく低下することはない。
【0060】
[変形例]
上述したモデル作成装置50において、処理の一部を別の装置で行ってもよい。例えば、構造体メッシュ作成部51、母材メッシュ作成部52および固着接触部53によって、撚り構造体モデルを作成しておき、その撚り構造体モデルを用いた解析は別の装置において行ってもよい。その場合、別の装置において、例えば、条件設定部54およびFEM解析部55による処理を行えばよい。
【0061】
[撚り構造体モデルのシミュレーション方法]
以上説明した撚り構造体モデル作成装置においては、以下のシミュレーション方法が採用されている。すなわち、撚り線と、上記撚り線に隣接し、上記撚り線を被覆する隣接母材とを含む構造体についてメッシュを作成する第1のステップと、上記第1のステップにおいて作成するメッシュよりも粗いメッシュであり、かつ、上記構造体を取り巻く母材本体についてメッシュを作成する第2のステップと、上記第1のステップにおいて作成したメッシュと上記第2のステップにおいて作成したメッシュとを固着接触することにより、上記撚り線と上記撚り線を取り巻く母材とを有する撚り構造体モデルを作成する第3のステップと、上記第3のステップにおいて作成された上記撚り構造体モデルの物理量を解析する第4のステップと、を含む撚り構造体モデルのシミュレーション方法が採用されている。この方法を採用することにより、計算精度を維持しつつ、計算時間を短くすることができる。
【0062】
[撚り構造体モデル作成プログラム]
以上説明した撚り構造体モデル作成装置においては、以下のプログラムが用いられる。すなわち、コンピュータに、撚り線と、上記撚り線に隣接し、上記撚り線を被覆する隣接母材とを含む構造体についてメッシュを作成する第1のステップと、上記第1のステップにおいて作成するメッシュよりも粗いメッシュであり、かつ、上記構造体を取り巻く母材本体についてメッシュを作成する第2のステップと、上記第1のステップにおいて作成したメッシュと上記第2のステップにおいて作成したメッシュとを固着接触することにより、上記撚り線と上記撚り線を取り巻く母材とを有する撚り構造体モデルを作成する第3のステップと、上記第3のステップにおいて作成された上記撚り構造体モデルの物理量を解析する第4のステップと、を実行させるための撚り構造体モデル作成プログラムが用いられる。このプログラムを用いることにより、計算精度を維持しつつ、計算時間を短くすることができる。
【0063】
[実施例]
以上説明したモデル作成装置50の有効性を確認するため、1×2撚りコードを対象として、シミュレーションを実施した。解析の内容は、引張シミュレーションである。
【0064】
表3は、シミュレーション結果を示す表である。評価方法は、実施例1、比較例1および比較例2、従来例におけるシミュレーションについて、計算時間、計算精度を比較した。計算時間は従来例を「100」としたときの、指数で表す。計算精度は、応力と歪みとの関係(例えば、引張剛性)について、実験を行った場合における値を基準とし、モデル作成装置50によるシミュレーション結果との差異を百分率で示す。
【0065】
母材本体10および隣接母材10Aについては、ヤング率E=6[MPa]、ポアソン比ν=0.49である。撚り線9A、9Bについては、ヤング率E=205[GPa]、ポアソン比ν=0.30で、撚り線9A、9Bの各素線の径Φ=0.30[mm]である。
【0066】
表3の実施例1は、構造体と母材本体とが固着接触しており、構造体と母材本体とのメッシュが不連続でメッシュに粗密がある場合である。実施例1の場合、構造体の撚り線の素線の表面の外側に、構造体と母材本体との接触境界が存在する。実施例1の場合、メッシュの要素は六面体である。
【0067】
表3の従来例は、構造体と母材本体とが固着接触しておらず、構造体と母材本体とのメッシュが連続しており、メッシュに粗密がない場合である。この従来例の場合、接触境界は存在せず、メッシュの要素は四面体である。
【0068】
表3の比較例1は、構造体と母材本体とが固着接触しており、構造体と母材本体とのメッシュが不連続でメッシュに粗密がある場合である。比較例1の場合、構造体の撚り線の素線の表面に、構造体と母材本体との接触境界が存在する。比較例1の場合、メッシュの要素は六面体である。
【0069】
表3の比較例2は、構造体と母材本体とが固着接触しており、構造体と母材本体とのメッシュが不連続でメッシュに粗密がない場合である。比較例2の場合、構造体の撚り線の素線の表面に、構造体と母材本体との接触境界が存在する。比較例2の場合、メッシュの要素は六面体である。
【0070】
表3を参照すると、実施例1は、構造体と母材本体とが固着接触しており、構造体と母材本体とのメッシュが不連続でメッシュに粗密があるため、従来例よりも計算時間を短縮することができる。また、実施例1によれば、構造体の撚り線の素線の表面の外側に、構造体と母材本体との接触境界が存在するため、従来例に比べて計算精度を大きく低下させることはない。以上の結果から、本実施形態を採用すれば、計算精度を維持しつつ、シミュレーションを効率良く行えることがわかった。つまり、隣接母材で被覆した撚り線と母材本体とを個別に離散化し、それらを固着接触することで、撚り線の力学特性をシミュレーションで再現でき、しかも計算精度を大きく低下させずに維持できることがわかった。
【0071】
【表3】
【符号の説明】
【0072】
1、1A 撚り構造体モデル
2 カーカス
3 ベルト
4 ベルトカバー
5 ビードコア
6 キャップトレッド
7 溝
8 サイドウォール
9A、9B 撚り線
10 母材本体
10A 隣接母材
11、11A、11B 境界
12A~12D、121A~121D 要素
13、131 節点
50 撚り構造体モデル作成装置
50m 記憶部
50p 処理部
51 構造体メッシュ作成部
52 母材メッシュ作成部
53 固着接触部
54 条件設定部
55 解析部
59 入出力部
60 入出力装置
61 入力装置
62 表示装置
100 タイヤ
Sh ショルダー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15