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  • 特許-焼結用原料の配合方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】焼結用原料の配合方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/16 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
C22B1/16 N
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019196081
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070832
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】水谷 守利
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-133209(JP,A)
【文献】特開平08-239720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒度が0.1~1.0mmであり、かつ気孔率が10体積%以下の緻密質鉄鉱石の含有量が新原料の総質量に対して5質量%以上となり、かつ、
前記緻密質鉄鉱石を除く新原料、粒度が1.0mm以下の新原料を含み、
前記粒度が1.0mm以下の新原料が以下の条件(1)及び(2)を満たすように、焼結用原料を配合することを特徴とする、焼結用原料の配合方法。
(1)塩基度(CaO/SiOの質量比)が1.65以上。
(2)Al濃度が1.5質量%以上、またはMgO濃度が1.0質量%以下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結用原料の配合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結鉱の製造方法は概略以下の通りである。まず、焼結鉱の原料となる焼結用原料を所定の配合比で配合して配合原料とした後、水とともに造粒する。ここに、焼結用原料は、主原料である鉄系原料、焼結反応及び成分調整のために必要な副原料、熱源である炭材(固体燃料)、雑原料、及び返鉱等で構成される。鉄系原料は、例えば粉鉱石、微粉鉱石等の鉄鉱石である。副原料は、例えば石灰石、ドロマイト、転炉スラグ、蛇紋岩、珪石および橄欖岩等である。炭材は、例えばコークス粉および無煙炭等である。雑原料は、例えば製鉄ダスト、製鋼ダスト、スケール等の含鉄リサイクル原料である。これらの焼結用原料のうち、炭材及び返鉱を除く焼結用原料を新原料とも称する。
【0003】
ついで、配合原料の造粒物を焼結機の焼結パレットに層状に装入する。ここに、配合原料の造粒物は、粗大な核粒子と、核粒子の表面に付着した付着粉層とを含む。ついで、原料充填層の表面から原料充填層中の固体燃料に着火し、原料充填層の上から下の厚み方向に吸引通風する。これによって、原料充填層の燃焼ゾーンを順次下層側に移行させ、焼結反応を進行させる(焼結過程)。焼成後の焼結パレット内の焼結ケーキは高炉用焼結鉱として適した所定粒度となるように解砕、整粒される。以上の工程により、焼結鉱が作製される。
【0004】
配合原料を造粒物としてから焼結機に装入することで、原料充填層の空隙率及び気孔を大きくすることができる。したがって、原料充填層の通気性が向上するので、焼結鉱の生産性が向上することが期待される。
【0005】
ところで、焼結過程では、5~7割程度の体積比率で生成した流体によって残部の固体部分(すなわち非同化部)が結合される液相焼結反応が進行する。一方で、焼結鉱の高炉内での反応性(被還元性)は焼結鉱の気孔構造、および生地部(気孔以外の部分)の反応性に影響される。したがって、被還元性の優れた焼結鉱を製造するためには、焼結過程で生成した流体の特性を制御して、気孔構造及び生地部を造り込むことが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭58-039746号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】佐々木ら、「焼結反応からみた焼結鉱の組織と品質」(鉄と鋼、1982年、68巻、6号、p.563-571)
【文献】佐藤ら、「焼結鉱組織と還元性状の関係」(鉄と鋼、1982年、68巻、15号、p.2215-2222)
【文献】坂本ら、「焼結鉱組織の被還元性の反応速度論」(鉄と鋼、1984年、70巻、6号、p.504-511)
【文献】肥田ら、「焼結鉱中針状カルシウム・フェライトの生成機構」(鉄と鋼、1987年、73巻、15号、p.1893-1900)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここに、生地部の組織に関して、幅10μm前後の針状カルシウムフェライト(CF)の反応性は柱状CFの反応性よりも良好であることが知られている(非特許文献1~3)。したがって、生地部内に含まれる針状CFが多いほど、生地部の反応性が高まり、ひいては焼結鉱の被還元性が高まることになる。
【0009】
このため、針状CFの生成機構に関する研究が鋭意行われている。例えば、上述した焼結過程において1300℃以下の低温で配合原料を焼成することで針状CFが生成しやすいこと、針状CFの生成には一定量のSiOあるいはAl等の脈石成分が必要であることが知られている(非特許文献1、4)。
【0010】
しかし、従来の知見はあくまで定性的な評価にとどまっており、生地部中の針状CFの含有量を高めるための定量的な条件は明らかになっていなかった。特に、非特許文献1~4の知見が得られた当時に比べて鉄鉱石の鉱物形態が変化しており、中長期的には鉄鉱石資源の劣質化も進んでいる。このため、焼結鉱の被還元性を高めることは非常に重要な課題となっている。一方、特許文献1には、焼結過程で生成する流体の成分を制御する技術が開示されている。しかし、特許文献1では、流体の各成分が針状CFの生成に及ぼす影響を何ら検討していなかった。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、焼結鉱中の針状CFの含有量を高め、ひいては焼結鉱の被還元性を高めることが可能な、新規かつ改良された焼結用原料の配合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、平均粒度が0.1~1.0mmであり、かつ気孔率が10体積%以下の緻密質鉄鉱石の含有量が新原料の総質量に対して5質量%以上となり、かつ、緻密質鉄鉱石を除く新原料、粒度が1.0mm以下の新原料を含み、粒度が1.0mm以下の新原料が以下の条件(1)及び(2)を満たすように、焼結用原料を配合することを特徴とする、焼結用原料の配合方法が提供される。
(1)塩基度(CaO/SiOの質量比)が1.65以上。
(2)Al濃度が1.5質量%以上、またはMgO濃度が1.0質量%以下。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記観点によれば、焼結鉱中の針状CFの含有量を高め、ひいては焼結鉱の被還元性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る造粒ラインの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<1.本発明者による検討>
本発明者は、生地部中の針状CFの含有量を定量的に評価する方法を見出すために、まず、焼結鉱の生地部組織及び元素分布を画像解析により観察した。ここに、生地部組織は、上述した針状CF、柱状CFの他、シリケートスラグ(SS)等で構成される。この結果、焼結鉱中の針状CFは、Caの濃度勾配が大きい領域で多く生成されていることがわかった。したがって、焼結鉱中にCa濃度勾配が大きい領域を多く形成することができれば、焼結鉱中に多くの針状CFが生成されると推察される。
【0017】
Caの濃度勾配が大きくなる条件としては、「低温焼成」、「緻密質鉄鉱石(以下、「緻密鉱」とも称する)の添加」、「焼結過程で生成する流体の高粘度化」、「冷却速度上昇」が考えられた。そこで、本発明者は、これらが針状CFの生成に寄与する大きさを知るために、基礎的な実験(タブレット焼成実験)を行った。ここに、タブレット焼成実験では以下の処理を行った。まず、鉄系原料と石灰石とを配合原料の配合比率に基づいて混合した。ついで、混合物をタブレットに成形し、作製されたタブレットを実際の焼結反応を模擬したヒートパターンで焼成した。ついで、焼結体の断面を画像解析することで、焼結鉱の生地部組織及び元素分布を観察した。その結果、本発明者は、緻密鉱の添加が針状CFの生成に大きく寄与すること、緻密鉱の添加に加えて流体粘度を上昇させることにより、さらに針状CFの含有量が増加することを知見した。さらに、本発明者は、緻密鉱の添加量、粒度、及び流体粘度を様々に変更してタブレット焼成実験を行い、得られた焼結体の高温還元性(R1200)を測定することで、これらのパラメータの好適な範囲を特定した。本発明者は、以上の知見に基づいて、本実施形態に係る焼結用原料の配合方法に想到した。
【0018】
<2.焼結用原料の配合方法>
つぎに、本実施形態に係る焼結用原料の配合方法について説明する。ここに、焼結用原料は、上述したように、主原料である鉄系原料、焼結反応及び成分調整のために必要な副原料、熱源である炭材(固体燃料)、雑原料、及び返鉱等で構成される。鉄系原料は、例えば粉鉱石、微粉鉱石等の鉄鉱石である。詳細は後述するが、本実施形態における鉄鉱石には、平均粒度が0.1~1.0mmであり、かつ気孔率が10体積%以下の緻密鉱が含まれる。副原料は、例えば石灰石、ドロマイト、転炉スラグ、蛇紋岩、珪石および橄欖岩等である。炭材は、例えばコークス粉および無煙炭等である。雑原料は、例えば製鉄ダスト、製鋼ダスト、スケール等の含鉄リサイクル原料である。これらの焼結用原料のうち、炭材及び返鉱を除く焼結用原料を新原料とも称する。本実施形態では、以下の条件A、Bが満たされるように、焼結用原料を配合する。
【0019】
(条件A)
本実施形態では、平均粒度が0.1~1.0mmであり、かつ気孔率が10体積%以下の緻密鉱の含有量が新原料の総質量に対して5質量%以上となるように、焼結用原料を配合する。
【0020】
ここに、鉄鉱石の平均粒度はJIS-M8706(2008)「鉄鉱石及び還元鉄-ふるい分けによる粒度分布の測定方法」に則り、乾式で段重ね非連続式機械ふるい分けの方法で測定される。使用する篩は、0.25mm、0.5mm、1.0mm、2.0mm、4.0mmの5段とし、6つの粒度区分の代表粒度を細粒から0.125mm、0.375mm、0.75mm、1.5mm、3mm、7mmとする。平均粒度の計算は付属書Jに準じる。すなわち、代表粒度に各粒度区分の質量比率を乗じた算術平均とする。
【0021】
鉄鉱石の気孔率はその断面の画像解析で測定される。すなわち、試料埋め研磨して、得られた試料の断面を画像解析し、観察視野の総面積に対する気孔部分の面積率(%)を求める。この面積率を試料の気孔率とする。いくつかの観察視野について同様の処理を行い、得られた面積率の算術平均値を試料の代表気孔率とする。観察視野数は、算術平均として得られる代表値の1の桁が十分精度のあるものとなる数とする。後述する実施例では、これらの方法により平均粒度及び気孔率を測定した。
【0022】
このように、本実施形態では、平均粒度が0.1~1.0mmという比較的微細な緻密鉱を使用する。これにより、焼結鉱中にCa濃度勾配が大きい領域を多く形成することができる。より具体的には、Ca濃度勾配が大きい領域の数が多く、かつ当該領域の総面積が大きくなる。焼結過程では、原料充填層の一部が同化して流体となり、この流体が残部の固体部分(すなわち非同化部)同士を結合する(液相焼結反応)。その後、流体は冷却されて凝固し、同化部となる。したがって、焼結鉱中の生地部は流体が凝固した同化部と、流体と同化しなかった非同化部とを含む。平均粒度が0.1~1.0mmである緻密鉱は、液相焼結反応時に流体と同化しにくく、非同化部(言い換えれば残留元鉱部)として生地部内に残留することが多い。したがって、このような緻密鉱の周囲ではFe濃度勾配が大きくなる。つまり、生地部中の各領域のFe濃度は、当該領域が緻密鉱に近いほど高くなる。そして、このようなFe濃度勾配とトレードオフとなる形で、Ca濃度勾配が形成される。つまり、生地部中の各領域のCa濃度は、当該領域が緻密鉱に近いほど低くなる。そして、本実施形態では、大きなCa濃度勾配を形成する緻密鉱が焼結鉱内に分散しているので、焼結鉱中にCa濃度勾配が大きい領域を多く形成することができる。
【0023】
緻密鉱の平均粒度は0.1~1.0mmであることが必要である。緻密鉱の平均粒度が0.1mm未満となる場合、焼結過程において緻密鉱が直ちに流体と同化してしまい、Ca濃度勾配がほとんど形成されない。緻密鉱の平均粒度が1.0mmを超える場合、緻密鉱は流体と同化しにくいので、緻密鉱の周囲に大きなCa濃度勾配が形成される。しかし、緻密鉱の粒子の数が少なくなるので、Ca濃度勾配が形成される領域が少なくなる。
【0024】
以下の表1に鉄鉱石の代表例を示す。これらの例のうち、鉄鉱石D、F~Gが緻密鉱に分類される。さらに、鉄鉱石F、Gが本実施形態で使用される緻密鉱となる。なお、表1において、各成分の値は鉄鉱石の総質量に対する質量%を意味する。各成分の質量%は、JIS M8202(2000)の通則に従って測定された値である。なお、Al濃度はM8220:アルミニウム定量方法、SiO濃度はM8214:珪素定量方法、あるいはそれらで更正されたM8205:蛍光X線分析方法に従って測定される。気孔率及び平均粒度の測定方法は上述した通りである。
【0025】
【表1】
【0026】
本実施形態では、平均粒度が0.1~1.0mmである緻密鉱の質量%は、新原料の総質量に対して5質量%以上となる。好ましくは10質量%以上である。緻密鉱の質量%が5質量%未満となる場合、Ca濃度勾配が十分に形成されない。緻密鉱の質量%が5質量%以上、好ましくは10質量%以上となることで、Ca濃度勾配が大きい領域を多く形成することができる。
【0027】
(条件B)
本実施形態では、上記緻密鉱を除く新原料、粒度が1.0mm以下の新原料を含み、粒度が1.0mm以下の新原料が以下の条件(1)及び(2)を満たすように、焼結用原料を配合する。
(1)塩基度(CaO/SiOの質量比。所謂C/S)が1.65以上。
(2)Al濃度が1.5質量%以上、またはMgO濃度が1.0質量%以下。
【0028】
条件Bは、粒度が1.0mm以下の新原料(ただし緻密鉱除く。以下同じ)が満たすべき条件を規定したものである。焼結過程で生成する流体の体積比率は、原料充填層の総体積に対して概ね5~7割程度であると考えられる。このような流体の体積比率と、一般的な配合原料の粒度分布を考慮すると、粒度が1.0mm以下の新原料は焼結過程でほぼ完全に同化し、流体となると考えられる。したがって、条件Bは、流体となる新原料が満たすべき条件を規定したものであるとも言える。なお、粒度1.0mm以下の新原料は、上記緻密鉱を除く全ての新原料を目開き1.0mmの篩で分級することで取得することができる。
【0029】
条件(1)は、新原料の塩基度を規定したものである。塩基度は、粒度が1.0mm以下の新原料に含まれるCaOとSiOの質量比である。CaO成分の質量はJIS M8221:カルシウム定量方法に従って測定される。SiO成分の質量は上述した方法で測定される。ドイツ鉄鋼協会著「Slag Atlas」等に開示されたCaO-SiO-Fe状態図によれば、塩基度が1.65以上となる場合に、CFが生成する。
【0030】
条件(2)は、粒度が1.0mm以下の新原料のAl濃度またはMgO濃度が満たすべき条件を規定したものである。なお、Al濃度は上述した方法で測定される。MgO濃度はJIS M8222:マグネシウム定量方法に従って測定される。条件(2)が満たされる場合、焼結過程で生成する流体の粘度が高くなるので、生地部中にCa濃度勾配が大きい領域を多く形成することができる。より具体的に説明すると、条件(2)が満たされる場合、同化しにくい緻密鉱の周囲を高粘度の流体が取り囲むようになる。このような高粘度の流体は、緻密鉱の周囲に形成されたCa濃度勾配を維持した状態で凝固する。したがって、焼結鉱中にCa濃度勾配が大きい領域を多く形成することができ、ひいては、焼結鉱中に多くの針状CFを形成することができる。
【0031】
なお、従来では、焼結鉱の強度を高める等の理由により、流体の粘度をなるべく低くすることが行われていた。これに対し、本発明者は、流体の粘度を高めることで、焼結鉱中に多くの針状CFを形成することができ、ひいては、焼結鉱の被還元性を高めることができることを見出した。したがって、本発明者による知見は従来全く考慮されていなかったものである。
【0032】
条件(2)におけるAl濃度の上限値及びMgO濃度の下限値は特に制限されない。ただし、Al濃度が高すぎるか、またはMgO濃度が低すぎる場合、流体の粘度が非常に高くなり、焼結鉱の強度が低下する可能性がある。このような観点から、Al濃度の上限値は2.2%であることが好ましく、MgO濃度の下限値は0.5%であることが好ましい。
【0033】
(Al濃度の調整方法)
条件(2)が満たされない場合、例えば以下の処理によりAl濃度を調整してもよい。すなわち、Al成分は主に鉄鉱石から持ち込まれる。したがって、Al濃度が高い鉄鉱石の配合量を増加させるか、または、Al濃度が高い鉄鉱石の粒度が1.0mm以下となるように粉砕してもよい。
【0034】
(MgO濃度の調整方法)
条件(2)が満たされない場合、例えば以下の処理によりMgO濃度を調整してもよい。すなわち、MgO成分は一部のMgO含有副原料(例えば橄欖岩等)に多く含まれる。したがって、MgO含有副原料の配合量を減少させてもよい。あるいは、MgO含有副原料を目開き1.0mmの篩で分級し、粒度1.0mm以下のMgO含有副原料の配合量を低下させてもよい。あるいは、粒度1.0mm以下のMgO含有副原料を塊成化し、粒度を1.0mm超としてもよい。
【0035】
以上述べた通り、本実施形態に係る焼結用原料の配合方法によれば、条件A、Bを満たすように焼結用原料を配合することによって、焼結鉱中にCa濃度勾配が大きい領域を多く形成することができる。この結果、焼結鉱中に多くの針状CFを形成することができ、ひいては、焼結鉱の被還元性を高めることができる。
【0036】
<3.造粒ラインの例>
つぎに、上述した焼結用原料の配合方法を実現するための造粒ラインの例について説明する。図1は本実施形態に係る焼結鉱製造工程の一例である。焼結鉱製造工程(より具体的には、焼結鉱製造工程を実現するための設備)10は、造粒ライン1及び焼結機20を備える。焼結鉱製造工程10では、単一の造粒ラインで焼結用原料を造粒する。
【0037】
造粒ライン1は、複数の原料ホッパ11と、造粒機12と、ベルトコンベア1a、1bを備える。各原料ホッパ11は、それぞれ異なる焼結用原料をベルトコンベア1aに供給する。ここに、焼結用原料は、上述したように、主原料である鉄系原料、焼結反応及び成分調整のために必要な副原料、熱源である炭材(固体燃料)、雑原料、及び返鉱等で構成される。鉄系原料は、例えば粉鉱石、微粉鉱石等の鉄鉱石である。副原料は、例えば石灰石、ドロマイト、転炉スラグ、蛇紋岩、珪石および橄欖岩等である。炭材は、例えばコークス粉および無煙炭等である。雑原料は、例えば製鉄ダスト、製鋼ダスト、スケール等の含鉄リサイクル原料である。
【0038】
焼結用の粉鉱石の粒度は、例えば10mm以下である。平均粒度でみると2~3mm程度となる。微粉鉱石は、選鉱処理によって鉄分を高めた鉄鉱石である。その粒度は500μm以下程度である。もちろん、本実施形態に適用可能な粉鉱石及び微粉鉱石はこれらの例に限られず、焼結鉱の分野において粉鉱石及び微粉鉱石と称される鉄鉱石は全て本実施形態に適用可能である。また、本実施形態における鉄系原料には、平均粒度が0.1~1.0mmであり、かつ気孔率が10体積%以下の緻密鉱が含まれる。
【0039】
各原料ホッパ11は、各焼結用原料を所定の配合比でベルトコンベア1aに供給する。ここに、各原料ホッパ11は、上述した条件A、Bが満たされるように各焼結用原料をベルトコンベア1aに供給する。ベルトコンベア1a上では、これらの焼結用原料が配合されて配合原料とされる。
【0040】
ついで、ベルトコンベア1aは、配合原料を造粒機12に供給する。造粒機12は、配合原料を造粒することで、配合原料の造粒物を作製する。造粒機12は、配合原料を造粒できる装置であればどのようなものであってもよい。造粒機12の例としては、ドラムミキサー、パンペレタイザ等が挙げられる。造粒機12は、配合原料の造粒物をベルトコンベア1bに排出する。ベルトコンベア1bは、配合原料の造粒物を焼結機20に装入する。焼結機20は、配合原料の造粒物を焼成することで、焼結鉱を作製する。なお、本実施形態における造粒ラインは造粒ライン1に限られず、上述した焼結用原料の配合方法を実現可能な造粒ラインであればどのようなものであってもよい。例えば、複数の造粒ライン(主造粒ライン及び副造粒ライン)を有する造粒ラインを用いてもよい。
【実施例
【0041】
つぎに、本実施形態の実施例について説明する。本実施例では、本実施形態の条件A、Bを満たす場合に焼結鉱の被還元性が高まることを確認した。まず、鉄系原料として表1に示す鉄鉱石A~Gを準備した。これらの鉄鉱石A~G、石灰石、生石灰、橄欖岩、返鉱、及び炭材を配合し、配合原料を作製した。各焼結用原料の配合比は表2、3に示す条件が満たされるように調整した。具体的な配合比は表4~6に示すとおりである。ここに、粒度1.0mm以下の新原料中のAl濃度は、Al濃度の高い鉄鉱石Aの配合比を0、10、20、30質量%(新原料中の総質量に対する質量%)のいずれかとすることで調整した。粒度1.0mm以下の新原料中のMgO濃度は、橄欖岩の配合比を1.0、1.5質量%(新原料中の総質量に対する質量%)のいずれかとすることで調整した。炭材の質量%は新原料の総質量に対して4.7質量%とした。表4~6において、各焼結用原料の数値は新原料の総質量に対する質量%である。したがって、新原料の質量%は内数であり、返鉱及びコークス(Coke)の質量%は外数である。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
ついで、ドラムミキサーに配合原料及び7質量%(配合原料の総質量に対する質量%)の水分を投入し、混合1分、造粒4分で造粒した。ついで、鍋試験を行った。鍋試験は、原料充填層の層厚:600mm、負圧:1500mmAq、点火時間:60secの条件で行った。焼成完了後、シンターケーキを2mの高さから4回落下させることで破砕した。破砕後の焼結鉱を篩で分級し、粒度が15mm超20mm以下の鉄鉱石を回収した。ついで、回収した鉄鉱石の被還元性(R1200)を細谷ら、「焼結鉱の軟化溶融性状評価法の開発」(鉄と鋼、1997年、83巻、2号、p.97-102)に記載された測定方法に準拠して測定した。結果を表2、3に示す。
【0048】
表2、3から明らかな通り、本実施形態の条件Aを満たさない鉄鉱石D(平均粒度0.057mm)を使用した比較例1~8では、焼結鉱の被還元性(R1200)が60.8~64.5%と低くなった。比較例9、10では、本実施形態の条件Aを満たす鉄鉱石Fを使用しているが、条件Bが満たされない。このため、焼結鉱の被還元性(R1200)が63.5~65.8と低くなった。比較例11~12では、本実施形態の条件Aを満たす鉄鉱石Gを使用しているが、条件Bが満たされない。このため、焼結鉱の被還元性(R1200)が62.8~65.3と低くなった。比較例13~20では、C/Sが1.65未満となっており、条件Bが満たされない。このため、焼結鉱の被還元性(R1200)が62.1~64.3と低くなった。比較例21、22では、C/Sが1.65以上となっているものの、Al濃度及びMgO濃度のいずれもが条件Bを満たさない。一方、条件A、B共に満たす実施例1~18では、焼結鉱の被還元性(R1200)が66.7~67.5と高くなった。したがって、条件A、Bを満たすように焼結用原料を配合することで、被還元性の高い焼結鉱を作製できることが確認できた。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0050】
10 造粒システム
1 造粒ライン
11 原料ホッパ
12 造粒機
20 焼結機
図1