(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】モデル登録装置、薬剤向き登録装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
(21)【出願番号】P 2019207312
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2018219763
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】益山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩貴
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-158743(JP,A)
【文献】特開2013-215344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が載置された載置部の画像から、前記載置部に載置され、かつ前記載置部から取出す対象とする薬剤の像を特定するために用いられる、薬剤を平面視したときの形状を示す形状モデルを登録するモデル登録装置であって、
薬剤を収容する容器の種類毎に、前記容器の概略形状を表す形状テンプレートが予め準備されており、
入力された前記容器の種類情報、及び前記容器のサイズ情報を取得する情報取得部と、
前記種類情報が示す種類に対応する形状テンプレートを特定し、前記サイズ情報に基づき、特定した形状テンプレートを拡大又は縮小することにより、前記形状モデルを作成するモデル作成部と、
前記モデル作成部が作成した形状モデルを登録するモデル登録部と、を備え
、
前記情報取得部は、少なくとも前記容器の種類情報について、ユーザにより入力された情報として取得する、モデル登録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモデル登録装置と共に用いられる薬剤向き登録装置であって、
読取位置に載置された薬剤から、前記薬剤に付された図形を読取ることにより、前記図形の向きを特定する図形向き特定部と、
前記読取位置に載置された薬剤の向きを設定する薬剤向き設定部と、
前記図形向き特定部により特定された前記図形の向きと、前記薬剤向き設定部により設定された前記薬剤の向きとに基づき、前記図形の向き及び前記薬剤の向きの関係を示す向き情報を、前記薬剤の種類に紐付けて登録する情報登録部と、を備える、薬剤向き登録装置。
【請求項3】
前記薬剤の向きは、ユーザ入力により設定される、請求項2に記載の薬剤向き登録装置。
【請求項4】
前記モデル作成部は、前記特定した形状テンプレートを定数倍することにより、前記形状モデルとして、前記特定した形状テンプレートと相似形状の形状モデルを作成する、請求項1に記載のモデル登録装置。
【請求項5】
請求項1に記載のモデル登録装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記情報取得部、前記モデル作成部及び前記モデル登録部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を収容するカセットを取り扱う薬剤カセット取扱装置、及び、薬剤カセット取扱装置を備えた薬剤払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、返品(回収)された薬剤を仕分ける薬剤仕分装置、及びトレイに収容された薬剤を払出す薬剤払出装置の開発が行われている。例えば、薬剤仕分装置の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の薬剤仕分装置では、仕分トレイ設置部に設置された仕分トレイから取り出した薬剤の種類を判別した後、当該薬剤を収納ボックスへと収納する。具体的には、仕分トレイ設置部には複数の仕分トレイを保管可能であり、保管された仕分トレイのうち、最上段に保管された仕分トレイ内の薬剤が、薬剤の種類判別対象として取り出される。
【0004】
なお、薬剤払出装置の周辺装置(例:プリンタ装置)に関する技術が、例えば特許文献2~5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-51040号公報(2015年3月19日公開)
【文献】特開2005-132565号公報(2005年5月26日公開)
【文献】特開2015-13177号公報(2015年1月22日公開)
【文献】特開2012-136240号公報(2012年7月19日公開)
【文献】WO2011/138857号公報(2011年11月10日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~5には、薬剤を平面視したときの形状を示す形状モデルの、薬剤師等のユーザによる登録に関する開示は無い。また、特許文献1~5には、薬剤の向きの登録に関する開示は無い。
【0007】
本発明の一態様は、薬剤師等のユーザが形状モデルを簡易に登録可能なモデル登録装置を実現することを第1の目的とする。
【0008】
また、本発明の一態様は、薬剤搬送装置が搬送先へ薬剤を搬送するときの薬剤搬送装置による薬剤の取出し、及び、薬剤搬送装置による搬送先での薬剤の載置を、精度良く行うことが可能とする薬剤向き登録装置を実現することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の第1の課題を解決するために、本発明の一態様に係るモデル登録装置は、薬剤が載置された載置部の画像から、前記載置部に載置され、かつ前記載置部から取出す対象とする薬剤の像を特定するために用いられる、薬剤を平面視したときの形状を示す形状モデルを登録するモデル登録装置であって、薬剤を収容する容器の種類毎に、前記容器の概略形状を表す形状テンプレートが予め準備されており、入力された前記容器の種類情報、及び前記容器のサイズ情報を取得する情報取得部と、前記種類情報が示す種類に対応する形状テンプレートを特定し、前記サイズ情報に基づき、特定した形状テンプレートを拡大又は縮小することにより、前記形状モデルを作成するモデル作成部と、前記モデル作成部が作成した形状モデルを登録するモデル登録部と、を備える。
【0010】
上記の第2の課題を解決するために、本発明の一態様に係る薬剤向き登録装置は、読取位置に載置された薬剤から、前記薬剤に付された図形を読取ることにより、前記図形の向きを特定する図形向き特定部と、前記読取位置に載置された薬剤の向きを設定する薬剤向き設定部と、前記図形向き特定部により特定された前記図形の向きと、前記薬剤向き設定部により設定された前記薬剤の向きとに基づき、前記図形の向き及び前記薬剤の向きの関係を示す向き情報を、前記薬剤の種類に紐付けて登録する情報登録部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係るモデル登録装置によれば、薬剤師等のユーザが形状モデルを簡易に登録できる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る薬剤向き登録装置によれば、上記薬剤搬送装置による薬剤の取出し及び搬送先での薬剤の載置を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る注射薬払出装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る注射薬払出装置を含む注射薬払出システムの構成の例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る注射薬払出装置の斜視図である。
【
図5】特定処理部及びカセット保持部の正面図である。
【
図7】特定処理部及び薬剤仕分部の、
図3とは別の角度からの斜視図である。
【
図8】特定処理部及び薬剤仕分部の一部の平面図である。
【
図10】(a)は、カセット移送部の、
図3とは別の角度からの斜視図であり、(b)は、(a)に示したカセット移送部の要部の拡大図である。
【
図11】注射薬払出装置の前面に平行な面における方向揃えカセットの断面図である。
【
図12】大型返品薬カセットの形状を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA-A線における断面図である。
【
図13】中小型返品薬カセットの形状を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB-B線における断面図であり、(c)は(a)のC-C線における断面図である。
【
図14】注射薬払出装置が注射薬を払い出す場合の動作を示すフローチャートである。
【
図15】返品薬に対する注射薬払出装置の動作を示すフローチャートである。
【
図16】カセット保持部に保持されるカセットの配置の例を示す図である。
【
図17】形状モデルの登録処理について説明するための図であり、(a)は当該登録処理の一例を示すフローチャートであり、(b)は形状モデルが示す注射薬の形状を模式的に表した図である。
【
図18】初期設定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図20】(a)~(c)は、座標変換処理を説明するための図である。
【
図21】カセットに収容された注射薬の吸着位置を決定する処理の一例を示す図である。
【
図22】(a)及び(b)は、画像におけるカセットの検出について説明するための図である。
【
図23】(a)及び(b)は、レンズ歪みに起因した位置ずれの補正を説明するための図である。
【
図24】注射薬の幅に起因した位置ずれの補正を説明するための図である。
【
図25】(a)~(c)は、投影に係る位置ずれの補正を説明するための図である。
【
図26】カセットの一例を示す図であり、(a)は分割部材を装着前の状態、(b)は分割部材を装着後の状態を示す図である。
【
図27】(a)及び(b)は、カセット移送部の詳細図である。
【
図28】注射薬払出装置の構成を示すブロック図である。
【
図29】カセットの保管位置の特定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図30】(a)及び(b)は、センサ及び反射板の設置位置の一例を説明するための図である。
【
図32】(a)は、薬剤搬送部の移動機構の構成例を示す図であり、(b)及び(c)は、薬剤搬送部の吸着機構の動作例を示す図である。
【
図33】(a)及び(b)は、期限読取用カメラによる画像処理のタイミング調整の一例について説明するための図である。
【
図34】(a)~(f)は、払出不可の注射薬があった場合の処理の一例を説明するための図である。
【
図35】小型トレイが搬送トレイに載置された状態を示す図である。
【
図36】(a)は、小型トレイの一例を示す斜視図、(b)は、小型トレイの一例を示す平面図、(c)は、小型トレイの一例を示すA-A’断面図である。
【
図38】プリンタ装置の一例を示すブロック図である。
【
図39】プリンタ装置の底部の一例を示す平面図である。
【
図40】搬送トレイ印字装置の一例を示す正面図である。
【
図41】(a)は、輸液ラベル払出装置、及び輸液ラベル搬送機構の一例を示す斜視図であり、(b)及び(c)は、輸液ラベル払出装置が備える輸液ラベル受取部の一例を示す斜視図である。
【
図42】輸液ラベル払出装置の一例を示す平面図である。
【
図43】(a)~(d)は、輸液ラベル搬送機構による輸液ラベルの把持動作の一例について説明するための図である。
【
図44】(a)~(d)は、輸液ラベル搬送機構による輸液ラベルの搬送動作の一例について説明するための図である。
【
図45】(a)及び(b)は、搬送トレイにおける輸液ラベルの載置位置について説明するための図である。
【
図46】注射箋払出装置の一例を示す図であり、(a)は、注射箋払出装置の一例を示す正面図であり、(b)及び(c)は、注射箋受取部の一例を示す斜視図である。
【
図47】(a)及び(b)は、注射箋搬送機構の一例を示す斜視図である。
【
図48】(a)~(d)は、注射箋把持機構による注射箋の搬送動作の一例について説明するための図である。
【
図49】(a)及び(b)は、輸液ラベル搬送機構が備える輸送ラベル把持部の一例を示す斜視図である。
【
図50】(a)は、分割部材を装着したときのカセットの一例を示す図であり、(b)は、カセットを2分割して使用するときのデータテーブルの一例を示す図である。
【
図51】別例のカセット保持部を備えた注射薬払出装置の一例を示す斜視図である。
【
図52】カセット兼薬剤保持部の一例を示す図であり、(a)は、カセット兼薬剤保持部の概略的な分解断面図であり、(b)は転がり防止シートの一例を示す斜視図であり、(c)は、光源が点灯した状態におけるカセット兼薬剤保持部の一例を示す平面図である。
【
図53】照明部材の概略的な配置例を示す図である。
【
図54】返品薬に対する注射薬払出装置の動作の別例を示すフローチャートである。
【
図55】タッチパネルに表示される画像の例を示す図である。
【
図56】別例の輸液ラベル受取部を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は正面図である。
【
図57】(a)~(d)は、輸液ラベルの搬送例について説明するための図である。
【
図58】大型返品薬カセットの一例を示す斜視図である。
【
図59】(a)は、大型返品薬カセットの平面図、(b)及び(c)は、中小型返品薬カセットの側面図である。
【
図60】大型返品薬カセットにおける凹部の傾斜の一例を示す断面図である。
【
図61】中小型返品薬カセットの一例を示す斜視図である。
【
図62】(a)は、中小型返品薬カセットの平面図、(b)及び(c)は、中小型返品薬カセットの側面図である。
【
図63】中型薬載置領域における凹部の傾斜の一例を示す断面図である。
【
図64】小型薬載置領域における凹部の傾斜の一例を示す断面図である。
【
図65】注射薬払出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図66】バイアルの一例と、バイアルの形状テンプレート及び簡易形状モデルの一例と、を示す図である。
【
図67】アンプルの一例と、アンプルの形状テンプレート及び簡易形状モデルの一例と、を示す図である。
【
図68】プラスチックアンプルの一例と、プラスチックアンプルの形状テンプレート及び簡易形状モデルの一例と、を示す図である。
【
図69】スティックアンプルの一例と、スティックアンプルの形状テンプレート及び簡易形状モデルの一例と、を示す図である。
【
図70】位置変更部における注射薬の載置方向と、注射薬に付された注射薬識別情報の向きとの対応関係の一例を示す図である。
【
図71】簡易形状モデルの登録処理、及び注射薬識別情報の向きの登録処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「1患者への投与に係る処方データ」は、少なくとも以下の(1)~(3)の何れかを指すものであっても構わない。
(1)1患者へ投与される薬剤に関するデータ(1患者単位の処方データ)。
(2)1患者へ投与される1回分の薬剤に関するデータ(1処方単位の処方データ)。
(3)1患者へ投与される1回分の薬剤に対して処方時に分類が付与されている場合の、その分類に関するデータ(1RP(レシピ)単位の処方データ)。
【0015】
また、薬剤とは、容器等に収容されていない薬剤自体のほか、容器等に収容された状態の薬剤(例:アンプル、バイアル、注射キット、及びPTP(Press Through Pack)シート)も含む。本実施形態では、主として、薬剤が注射薬(注射薬を収容したアンプル又はバイアルを含む)であるものとして説明する。
【0016】
〔注射薬払出システムの概要〕
図2は、本実施形態に係る注射薬払出装置100(薬剤カセット取扱装置)を含む注射薬払出システム1(薬剤払出装置)の構成の例を示す図である。
図2に示すように、注射薬払出システム1は、供給リフタ11と、注射薬払出装置100と、プリンタ装置13と、排出リフタ14とを備える。注射薬払出システム1は、医師等の処方に基づき患者に投与される注射薬の種類及び数等のデータを含む処方データが提供されることで動作する。注射薬払出システム1に提供される処方データは、注射薬の投与対象となる複数の患者分の注射薬の種類及び数等を含むデータである。処方データは、例えば、病棟によって管理されており、所定の期日毎に、所定の期間分の処方データが病棟から注射薬払出システム1へと送信される。注射薬払出システム1は、受信した処方データに基づいて、患者ごとの1回の投与に係る注射薬を払い出す。払い出された注射薬を受けるための搬送トレイ151a(
図7参照)が、注射薬払出システム1内を通過する。
【0017】
供給リフタ11は、処方データの提供に合わせて注射薬払出システム1内を通過する搬送トレイ151aを供給する装置である。注射薬払出装置100は、注射薬払出システム1に提供された処方データに含まれる、1患者への投与に係る処方データに基づいて搬送トレイ151aに注射薬を払い出す装置である。プリンタ装置13は、処方データに示されている注射薬の種類などの情報を搬送トレイ151aに印字する。排出リフタ14は、注射薬の払い出し及び情報の印字が終了した搬送トレイ151aを注射薬払出システム1から排出する。
【0018】
〔注射薬払出装置の構成〕
図1は、本実施形態に係る注射薬払出装置100の構成を示すブロック図である。
図3は、注射薬払出装置100の斜視図である。なお、
図3においては、注射薬払出装置100の内部を可視化するため、
図2において示されていた外装を取り外した状態を示している。
【0019】
図1及び
図3に示すように、注射薬払出装置100は、カセット棚110と、特定処理部120と、カセット保持部130と、カセット移送部140と、薬剤仕分部150と、記憶部180と、制御部190とを備える。特に、カセット棚110、特定処理部120、カセット保持部130、及びカセット移送部140を総称して薬剤カセット取扱装置200と称する。
【0020】
カセット棚110は、注射薬(薬剤)を収容するm個のカセットCaを保管する棚である。mは3以上の整数である。本実施形態では、カセット棚110は、鉛直面内で行列状にカセットCaを保管している。m個のカセットCaのそれぞれには、予め薬種毎に注射薬が収容される。また、少なくとも2つのカセットCaには互いに異なる種類の注射薬が収容されている。また、後述するように、m個のカセットの全てがカセットCaである必要は必ずしもなく、例えば、m個のカセットの一部として、返品薬を取り扱うためのカセットが含まれていても構わない。
【0021】
以下の説明では、カセットCaがカセット棚110に挿入される方向を奥行き方向と称する。また、水平面に平行な面において奥行き方向に垂直な方向を幅方向と称する。
【0022】
図4は、カセット棚110の拡大斜視図である。
図4に示すように、カセット棚110は、鉛直方向に平行、かつ奥行き方向に平行な複数の壁材111を備える。複数の壁材111の間隔は、カセットCaの幅よりも大きい。
【0023】
それぞれの壁材111からは、複数の支持部材112が幅方向に延出している。互いに隣接する壁材111の、互いに対向する面においては、それぞれの支持部材112の高さは互いに等しい。また、互いに対向する支持部材112の先端同士の間隔は、カセットCaの幅よりも小さい。このため、カセット棚110において、壁材111の間に挿入されたカセットCaは、幅方向における両端を支持部材112に支持された状態で保管される。
【0024】
カセットCaは、奥行き方向の手前側から奥側へ向かって挿入される。支持部材112の手前側端部の上面には、突起113が形成されている。突起113の上端と、突起113の上側の支持部材112との間の距離は、カセットCaの厚さ(高さ)よりも大きい。このため、カセットCaは、突起113の上側からカセット棚110に挿入されることができる。また、カセット棚110に保管されているカセットCaが手前側へ水平移動した場合、突起113に引っ掛かるため、カセットCaがカセット棚110から滑落する虞は小さい。
【0025】
カセットCaに収容される注射薬は、アンプル又はバイアルといった容器に収容されている。本実施形態では、注射薬は、整列していない状態でカセットCaに収容されている。ただし、注射薬は、整列した状態でカセットCaに収容されていても構わない。また、カセットCaに、注射薬の代わりに錠剤や軟膏といった薬品が収容されていてもよい。また、カセットCaに、薬剤以外の物品が収容されていてもよい。
【0026】
アンプル及びバイアルには、収容する注射薬の種類に応じて異なる形状を有するものが存在する。カセットCaは、当該カセットCaに収容するアンプル又はバイアルの形状に応じて異なる形状(例えば高さ)を有していてもよい。カセットCaは、例えば直径が28mm以下のアンプル又はバイアルを収容する小カセットと、直径が28mmを超えるアンプル又はバイアルを収容する大カセットとを含んでいてもよい。
【0027】
図5は、特定処理部120及びカセット保持部130の正面図である。
図5には、理解を助ける目的で、カセット棚110も併せて示されている。
【0028】
カセット保持部130は、カセット棚110に保管されているカセットCaのうち、特定処理部120による特定処理を受けるカセットCaをn個まで一時的に保持可能である。nの値は2以上かつm未満(m>n≧2)であってよく、本実施形態ではnの値は4である。
【0029】
図6は、カセット保持部130の平面図である。
図6に示すように、カセット保持部130は、4つのカセット保持部130a~130dの集合である。なお、カセット保持部130の数は、4つに限定されず、上述したnの値、すなわちカセット保持部130が保持可能なカセットCaの数に等しい。カセットCaは、カセット保持部130a~130dのいずれかに載置されることで保持される。また、カセット保持部130a~130dのそれぞれの下側には、カセット保持部130a~130dを奥行き方向に往復運動させる駆動機構133a~133dが設けられている。
【0030】
カセット保持部130a~130dには、カセット移送部140からカセットCaを受け入れるカセット受入位置131と、カセットCaが特定処理部120による特定処理を受けるための処理位置132とが存在する。詳細には、カセット保持部130a~130dのそれぞれについて、カセット受入位置131a~131dと、処理位置132a~132dとが存在する。カセット保持部130a~130dは、駆動機構133a~133dにより奥行き方向に往復運動することで、カセット受入位置131a~131dと処理位置132a~132dとの間でカセットCaを往復移動させる。換言すれば、カセット保持部130は、カセットCaを処理位置132へ向けて水平方向に移動させる。
図6では、カセット保持部130bが処理位置132bに位置し、他のカセット保持部130a、130c及び130dがそれぞれカセット受入位置131a、131c及び131dに位置する状態が示されている。このように、カセット保持部130a~130dのそれぞれは、互いに独立してカセットCaを往復移動させることができる。なお、カセット保持部130a~130dのうちの、2以上のカセット保持部が、対応する処理位置132a~132dに位置してもよい。
【0031】
また、カセット保持部130aには、カセットCaの重量を計測するためのロードセル134が設けられている。カセットCa自体の(すなわち注射薬の重量を含まない)重量、及びカセットCaに収容されている注射薬の1つ当たりの重量は既知である。このため、ロードセル134によりカセットCa全体の重量を計測することで、カセットCaに収容されている注射薬の数、すなわち注射薬払出装置100における注射薬の在庫を算出することができる。この算出処理は、例えばある日の夕方にその日の注射薬の払出処理がすべて完了し、各カセットCaに注射薬が充填された後、翌朝に注射薬の払出処理が開始されるまでの間に実行される。
【0032】
特定処理部120は、カセットCaに収容された注射薬に対して特定処理を行う。本実施形態では、特定処理は、払出対象となる注射薬を含むカセットCaをカセット棚110から取出し、注射薬の種類及び有効期限を特定するまでの処理を少なくとも含む。また、特定処理は、後述する返品薬を含む返品薬受入カセット161(
図16参照)、大型返品薬カセット163(
図12参照)又は中小型返品薬カセット164(
図13参照)をカセット棚110から取出し、返品薬の種類及び有効期限を特定するまでの処理を少なくとも含むものであってもよい。上記特定処理を実現すべく、特定処理部120は、薬剤搬送部121と、位置特定用カメラ122(第1撮影部)と、バーコードリーダー123及び124(読取部)と、期限読み取り用カメラ125(第2撮影部)と、位置変更部126と、薬剤回転部127と、第1判別処理部195(後述)と、第2判別処理部196(後述)と、を含む。
【0033】
位置特定用カメラ122は、カセット棚110の下側に設けられたカメラである。位置特定用カメラ122は、カセットCaから取り出す注射薬を特定するための撮影を行う。
【0034】
図5及び
図6に示すように、本実施形態の注射薬払出装置100は、位置特定用カメラ122として、2つの位置特定用カメラ122a及び122bを備える。
図6に示すように、位置特定用カメラ122aは、処理位置132a及び132bの境界線の中央付近の直上に設けられ、処理位置132a及び132bを含む撮影領域122cを撮影する。また、位置特定用カメラ122bは、処理位置132c及び132dの境界線の中央付近の直上に設けられ、処理位置132c及び132dを含む撮影領域122dを撮影する。したがって、2つの位置特定用カメラ122a及び122bにより、4つの処理位置132a~132dに位置するカセットCaの内部を撮影することができる。
【0035】
図7は、特定処理部120及び薬剤仕分部150の、
図3とは別の角度からの斜視図である。
図7においては、カセット保持部130は省略されている。
図8は、特定処理部120及び薬剤仕分部150の一部の平面図である。
【0036】
位置変更部126は、水平面に垂直な軸の周りで回転可能なターンテーブルである。位置変更部126の上面には、特定処理部120が受け入れた薬剤を搭載するための第1搭載部126a(搭載部)及び第2搭載部126b(搭載部)が設けられている。本実施形態では、第1搭載部126a及び第2搭載部126bは、位置変更部126の回転軸を挟んで互いに対向する位置に設けられている凹部である。
【0037】
位置変更部126は、第1搭載部126a及び第2搭載部126bの位置を、薬剤搬送部121から注射薬を受け入れる薬剤受入位置と、注射薬を払い出すために当該注射薬を上述の薬剤移動部153に受け渡す薬剤受渡位置との間で変更する。具体的には、位置変更部126が上述した軸の周りで回転することで、薬剤受入位置と薬剤受渡位置との間で第1搭載部126a及び第2搭載部126bの位置が変更される。
図8においては、第1搭載部126aが薬剤受入位置に、第2搭載部126bが薬剤受渡位置に、それぞれ存在している。
【0038】
薬剤回転部127は、バーコードリーダー123による読取り、又は期限読み取り用カメラ125による撮影のために、薬剤搬送部121によって搬送された注射薬を受け入れ、受け入れた注射薬を軸方向に回転させる。薬剤回転部127は、第1搭載部126a及び第2搭載部126bに設けられている。具体的には、薬剤回転部127は、第1搭載部126a及び第2搭載部126bの底部に設けられたベルトコンベヤであり、第1搭載部126a及び第2搭載部126bに搭載された注射薬を軸方向に回転させる。第1搭載部126a及び第2搭載部126bは、薬剤回転部127が受け入れた注射薬を搭載する。具体的には、第1搭載部126a及び第2搭載部126bのうち、薬剤受入位置に位置する搭載部が、薬剤搬送部121によって搬送された注射薬を搭載する。
【0039】
なお、本実施形態では、
図8に示すように、第1搭載部126aおよび第2搭載部126bの両方が薬剤回転部127を備えているが、これに限られない。例えば、第1搭載部126a及び第2搭載部126bの位置が固定であり、かつ、第2搭載部126bが、第2搭載部126bに載置された注射薬が一定の向きとなるような断面形状を有している場合には、第1搭載部126aにのみ薬剤回転部127が設けられていればよい。上記断面形状としては、例えば、略V字形状が挙げられる。なお、この場合、注射薬払出装置100は、第1搭載部126aから第2搭載部126bへと注射薬を搬送する搬送機構を有する。また、後述のバーコードリーダー124は不要である。
【0040】
また、注射薬払出装置100が備える搭載部の数は3以上であってもよく、1つであってもよい。ただし、搭載部の数が1つである場合、1つの注射薬の特定が完了するまで他の注射薬の搭載を待機する時間が生じるため、注射薬の払い出しに要する時間が増大する。この点を考慮すれば、注射薬払出装置100は、複数の搭載部を備え、当該搭載部の位置を薬剤受入位置と薬剤受渡位置との間で変更するように構成されることが好ましい。
【0041】
薬剤搬送部121は、カセットCaに収容された注射薬を払い出すために、注射薬をカセットCaから取り出し搬送する。本実施形態では、薬剤搬送部121は、
図5に示すように、吸着機構121aと、移動機構121bと、スライダ121cとを有する。吸着機構121aは、注射薬を吸着する吸着機構であり、鉛直下方に延伸可能である。移動機構121bは、吸着機構121aを奥行き方向に移動させ、かつ自身が幅方向に往復移動することが可能な機構である。移動機構121bは、スライダ121cに沿って幅方向に往復移動する。
【0042】
バーコードリーダー123は、注射薬に付された、当該注射薬の種類を示す情報(第1識別情報)を読み取る。本実施形態では、注射薬の種類を示す情報は、バーコードの形で注射薬に付されている。バーコードリーダー123は、薬剤受入位置の第1搭載部126a又は第2搭載部126bに搭載されている注射薬のバーコードを読み取る。
【0043】
バーコードリーダー124は、バーコードリーダー123と略同一の構成を有する。バーコードリーダー124は、薬剤受渡位置の第1搭載部126a又は第2搭載部126bに搭載されている注射薬について、姿勢を確認するためにバーコードを読み取る。例えば注射薬の断面が楕円形である場合、当該注射薬には吸着に適した姿勢と適していない姿勢とが存在する。そこで、注射薬が吸着に適した姿勢である場合にバーコードリーダー124によって読み取れる位置にバーコードを付し、バーコードを読み取れるように注射薬を薬剤回転部127により回転させることで、注射薬を吸着に適した姿勢にすることができる。バーコードの読み取りの可否による姿勢の確認が必要な注射薬を示す情報は、記憶部180に記憶されている。
【0044】
なお、注射薬の姿勢を別の方法で確認してもよい。この場合には、バーコードを上述の位置に付す必要はない。
【0045】
期限読み取り用カメラ125は、注射薬に付された、当該注射薬の有効期限を示す情報(第2識別情報)を撮影する。本実施形態では、注射薬の有効期限を示す情報は、文字で注射薬に付されている。
【0046】
以上の構成により、薬剤カセット取扱装置200においては、カセットCaがカセット棚110からカセット保持部130へカセット移送部140により移送される。さらに、特定処理部120により、カセットCaに収容された注射薬に対して特定処理が行われる。
【0047】
薬剤仕分部150は、特定処理部120での処理が終了した注射薬を仕分ける。薬剤仕分部150は、
図7に示すように、トレイ保持部151と、非払出薬保管部152と、薬剤移動部153とを備える。
【0048】
トレイ保持部151は、注射薬が払い出される搬送トレイ151aを保持する。トレイ保持部151は、注射薬払出システム1において搬送トレイ151aが流れる経路の一部として設けられている。
【0049】
非払出薬保管部152は、払出不可と判別された注射薬を保管する。非払出薬保管部152は、注射薬を複数の種類に分類して保管する。具体的には、非払出薬保管部152は、例えば、種類が適切でなかったものと、有効期限が適切でなかったものとのそれぞれについて、大型のものと中型又は小型のものとに分類する。
【0050】
薬剤移動部153は、注射薬の種類及び有効期限についての判別結果に基づいて、トレイ保持部151に保持された搬送トレイ151a、又は非払出薬保管部152のいずれかに注射薬を移動させる。なお、搬送トレイ151aは、複数の領域に仕切られ、領域ごとに異なる処方データ(例えば1患者への施用分等)の注射薬が払い出されてもよい。
【0051】
なお、上記特定処理は、種類及び有効期限が特定された注射薬を、搬送トレイ151a又は非払出薬保管部152へ仕分けるまでの処理を含んでもよい。この場合、特定処理部120は、薬剤仕分部150を含む。
【0052】
図9は、薬剤移動部153の正面図である。本実施形態の薬剤移動部153は、吸着機構153aと、移動機構153bと、スライダ153cとを有する。吸着機構153aは、注射薬を吸着する吸着機構であり、鉛直下方に延伸可能である。移動機構153bは、吸着機構153aを幅方向に移動させ、かつ自身が奥行き方向に往復移動することが可能な機構である。移動機構153bは、スライダ153cに沿って奥行き方向に往復移動する。
【0053】
具体的には、薬剤移動部153は、種類及び有効期限の両方について適切と判別された注射薬については、搬送トレイ151aに払い出す。一方、薬剤移動部153は、種類及び有効期限の少なくとも一方について不適切と判別された注射薬については、非払出薬保管部152に移動させる。
【0054】
カセット移送部140は、カセット保持部130に保持されるカセットCaを差し替えるために、カセット棚110とカセット保持部130との間でカセットCaを移送する。本実施形態では、カセット移送部140は、カセットCaをカセット棚110から引き出し、鉛直方向に移送してカセット受入位置131にあるカセット保持部130に載置する。特に、カセット移送部140は、受信した処方データのうち、1患者への投与に係る処方データに2種以上の注射薬が含まれている場合に、当該処方データ、及び後述する対応関係データに基づいて、当該注射薬が収容されたカセットCaをそれぞれカセット保持部130へと移送する。
【0055】
なお、1患者への投与に係る処方データには、注射薬のレシピ(組み合わせ)が複数含まれる場合がある。この場合には、注射薬をレシピごとに払い出し、複数回の払い出しで払い出された複数の上記レシピの注射薬をまとめて患者に投与することも考えられる。この場合には、カセット移送部140は、1つのレシピに2種以上の注射薬が含まれている場合に、当該注射薬が収容されたカセットCaをそれぞれカセット保持部130へと移送するものであってもよい。
【0056】
図10の(a)は、カセット移送部140の、
図3とは別の角度からの斜視図である。理解を助けるため、
図10にはカセット棚110も併せて示されている。
図10の(b)は、
図10の(a)に示したカセット移送部140の要部の拡大図である。
図10の(a)及び(b)に示すように、カセット移送部140は、爪部141と、爪部移動機構142と、梁部143と、支柱部144とを備える。
【0057】
爪部141は、鉛直上方へ突出する爪状の部材である。カセットCaは、奥行き方向における手前側の縁に、鉛直下方へ突出する形状の係合部を備えている。当該係合部に爪部141を係合させることで、カセット移送部140はカセット棚110からカセットCaを引き出すことができる。
【0058】
爪部移動機構142は、爪部141を奥行き方向に往復運動させる機構である。カセットCaは、カセット棚110から引き出された状態において、爪部移動機構142の下側に位置する。梁部143は、注射薬払出装置100の上部に配された、幅方向に平行な梁である。爪部移動機構142は、梁部143に沿って、幅方向に平行に移動することができる。支柱部144は、注射薬払出装置100の前面近傍の、幅方向における両端に配された2本の支柱である。梁部143は、両端を支柱部144に支持された状態で、鉛直方向に移動可能である。これらの、(i)奥行き方向への爪部141の移動、(ii)幅方向への爪部移動機構142の移動、及び(iii)鉛直方向への梁部143の移動、を組み合わせることで、爪部141に引掛けられた状態のカセットCaを移送することができる。
【0059】
また、カセット移送部140は、爪部移動機構142の下面に、衝撃吸収板145を備えている。衝撃吸収板145は、カセットCaがカセット棚110から引き出された状態において、カセットCaの上側を覆う。衝撃吸収板145は、衝撃に対して上下動可能に構成されている。カセットCaに対して加わった衝撃により注射薬が跳ね上がった場合、当該注射薬は衝撃吸収板145に衝突する。衝撃吸収板145は、注射薬の衝突による衝撃を上下動することにより緩和する。これにより、カセットCaに対して加わった衝撃により注射薬が破損する虞が低減される。
【0060】
また、カセット移送部140は、カセット棚110からカセットCaを取り出す場合、カセットCaの手前側を突起113の高さよりも浮かせた状態で引き出す。このため、カセット移送部140は、カセットCaを突起113に引っ掛けることなくカセット棚110から取り出すことができる。
【0061】
制御部190は、注射薬払出装置100の動作を制御する。制御部190は、移送制御部191と、駆動制御部192と、搬送制御部193と、吸着位置決定部194と、第1判別処理部195と、第2判別処理部196と、薬剤位置制御部197とを備える。
【0062】
移送制御部191は、カセット移送部140がカセットCaをカセット棚110からカセット保持部130へ移送する動作を制御する。駆動制御部192は、カセット保持部130の、カセットCaを処理位置とカセット受入位置との間で移動させる動作を制御する。搬送制御部193は、薬剤搬送部121及び薬剤移動部153の動作を制御する。
【0063】
吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122が撮影した画像を解析して、カセットCaから注射薬を取り出すために薬剤搬送部121が注射薬を吸着する吸着位置を決定する。
【0064】
第1判別処理部195は、バーコードリーダー123によって読み取られた注射薬の種類を示す情報を、1患者への投与に係る処方データに含まれている注射薬の種類を示す情報(注射薬の固有情報)と照合した結果に基づき、注射薬の払出しの可否を判別する。第2判別処理部196は、期限読み取り用カメラ125によって撮影された注射薬の有効期限を示す情報に基づき、注射薬の払出しの可否を判別する。具体的には、第2判別処理部196は、例えば上記有効期限と判別処理を行う日時とを照合した結果に基づき、注射薬の払出しの可否を判別してもよい。又は、第2判別処理部196は、例えば上記有効期限と注射薬を患者に投与する日時とを照合した結果に基づき、注射薬の払出しの可否を判別してもよい。この場合、注射薬を患者に投与する日時のデータは、例えば1患者への投与に係る処方データに含まれていてよい。
【0065】
第1判別処理部195および第2判別処理部196による処理は、上述した特定処理の一部である。このため、上述したとおり、特定処理部120は、第1判別処理部195および第2判別処理部196を含む。
【0066】
薬剤位置制御部197は、位置変更部126および薬剤回転部127の動作を制御する。具体的には、薬剤位置制御部197は、位置変更部126を回転させることで、第1搭載部126a及び第2搭載部126bの位置を制御する。また、薬剤位置制御部197は、薬剤回転部127を動作させ、第1搭載部126a又は第2搭載部126b内の注射薬を回転させる。
【0067】
また、制御部190は、1患者への投与に係る処方データに複数種類の注射薬が示されている場合に、注射薬の払出順序を決定する払出順序決定部(不図示)をさらに備える。払出順序決定部は、例えば1患者への投与に係る処方データに示されている順番を注射薬の払出順序として決定してもよい。また、払出順序決定部は、例えば注射薬の名称に基づいて注射薬の払出順序を決定してもよい。注射薬の払出順序、及び後述する対応関係データに基づいて、カセット移送部140により移送されるカセットCaの順序、及び、カセット保持部130に保持されたカセットCaがカセット受入位置131から処理位置132へ移動する順序などが決定される。
【0068】
記憶部180は、注射薬払出装置100の制御に必要な情報を記憶する。記憶部180は、例えば薬剤搬送部121、カセット移送部140、及び薬剤移動部153などの動作を制御するためのプログラムを記憶している。また、記憶部180は、m個のカセットCaのそれぞれと、当該m個のカセットCaのそれぞれに収容されている注射薬との対応関係を示す対応関係データを記憶している。また、記憶部180は、上述した、バーコードの読み取りの可否による姿勢の確認が必要な注射薬を示す情報を記憶している。
【0069】
また、記憶部180には、各注射薬に関する情報が記録された薬品マスタが記憶されている。具体的には、薬品マスタには、各注射薬を識別するための注射薬識別情報(注射薬コード、注射薬ID)に、種々の情報(例:注射薬の幅を示す注射薬幅情報)が紐付けられた状態で登録されている。
【0070】
なお、薬品マスタ、及び上述した他の情報は、ネットワークを介して注射薬払出装置100と接続可能なサーバ(不図示)に記憶されていても構わない。
【0071】
(返品薬について)
また、病院業務においては、一旦払い出された注射薬が、患者の容態の変化などにより、患者に投与されず返品されることがある。このような返品された注射薬(返品薬)について、種類ごとにカセットCaに戻すことには手間がかかる。そこで、注射薬払出装置100は、返品薬の種類および有効期限を特定した上で保管し、当該返品薬を再利用する機能を有する。当該機能を実現する具体的な構成について以下に説明する。
【0072】
カセット棚110は、
図11~
図13に示すように、返品薬受入カセット161と、方向揃えカセット162と、大型返品薬カセット163と、中小型返品薬カセット164と、を備える。これらのカセットは、例えばカセット棚110の幅方向における右端の列に保持されていてよい。
【0073】
返品薬受入カセット161は、返品薬を最初に受け入れるカセットである。ユーザは、返品薬を返品薬受入カセット161に投入する場合に、返品薬の種類又は方向などを気にせずに投入することができる。
【0074】
方向揃えカセット162は、返品薬の向きを一定の方向に揃えるためのカセットである。方向揃えカセット162は、断面が略V字形状の底面を有する。このため、返品薬受入カセット161に投入された返品薬の方向は、底面の形状に沿う一定の方向に揃えられる。
【0075】
図11は、注射薬払出装置100の前面に平行な面における方向揃えカセット162の断面図である。
図11に示すように、方向揃えカセット162の底面の断面は、単純なV字形状ではなく、上に凸な曲線と、下に凸な曲線とが組み合わせられた形状を有する。後述するように、返品薬についての動作には、方向揃えカセット162の内部を位置特定用カメラ122が撮影するステップが含まれる。このとき、方向揃えカセット162の底面の断面が完全なV字形状であると、底面で反射された光によって撮影を適切に行えない虞がある。このため、位置特定用カメラ122の方向への反射を抑制する目的で、方向揃えカセット162の底面の断面を、曲線を組み合わせた形状としている。
【0076】
大型返品薬カセット163及び中小型返品薬カセット164は、いずれも種類を判別した後の注射薬を収容するカセットである。大型の返品薬は、例えば直径が26mm以上の返品薬であってよい。また、中型以下の返品薬は、例えば直径が26mm未満の返品薬であってよい。なお、中型と小型との境界となるサイズについては適宜設定されてよく、また大型と中型以下との境界となるサイズについても上記の例に限定されない。
【0077】
図12は、大型返品薬カセット163の形状を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA-A線における断面図である。
図13は、中小型返品薬カセット164の形状を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB-B線における断面図であり、(c)は(a)のC-C線における断面図である。
図12の(b)、
図13の(b)および(c)において、紙面は注射薬払出装置100の奥行き方向および鉛直方向の両方に平行な面である。
【0078】
図12の(a)及び(b)に示すように、大型返品薬カセット163の底面には、複数の凹部163aが形成されている。一方、
図13の(a)~(c)に示すように、中小型返品薬カセット164の底面には、凹部163aよりも浅い凹部164aが、凹部163aの間隔よりも狭い間隔で複数形成されている。さらに、凹部164aよりも短く、かつ浅い凹部164bが、凹部164aの間に複数形成されている。
【0079】
大型の返品薬は、大型返品薬カセット163内の、いずれかの凹部163aの位置に収容される。中型の返品薬は、中小型返品薬カセット164内の、いずれかの凹部164aの位置に収容される。小型の返品薬は、中小型返品薬カセット164内の、凹部164bの位置に収容される。なお、小型の返品薬は、凹部164aの位置に収容されてもよい。
【0080】
なお、方向揃えカセット162、大型返品薬カセット163、及び中小型返品薬カセット164は、例えばカセットCaの底部に、上述した形状の底板を配することで構成されてよい。又は、方向揃えカセット162、大型返品薬カセット163、及び中小型返品薬カセット164は、それぞれ上述した形状の底部を有する専用のカセットであってもよい。
【0081】
〔注射薬払出時の動作例〕
図14は、注射薬払出装置100が注射薬を払い出す場合の動作を示すフローチャートである。注射薬を払い出す場合の注射薬払出装置100の動作について、以下に説明する。
【0082】
注射薬払出システム1に処方データが入力され、当該処方データに含まれる1患者への投与に係る処方データに基づく注射薬の払い出しが開始されると、まず、移送制御部191は、カセット移送部140により、払い出す注射薬の種類に対応するカセットCaを、カセット棚110からカセット保持部130のカセット受入位置131へ移送する(SA1)。駆動制御部192は、カセット受入位置131のカセットCaを処理位置132へ移動させる(SA2)。
【0083】
吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122により処理位置のカセットCaの内部の画像を撮影し、当該画像から注射薬の位置及び向きを解析して、吸着位置を決定する(SA3)。搬送制御部193は、ステップSA3で決定された吸着位置を薬剤搬送部121により吸着し、注射薬をカセットCaから第1搭載部126aに搬送する(SA4)。
【0084】
第1搭載部126aに搭載された注射薬について、第1判別処理部195および第2判別処理部196が種類および有効期限を特定する(SA5)。具体的には、第1判別処理部195がバーコードリーダー123により種類を読み取り、第2判別処理部196が有効期限を解析する。
【0085】
第1判別処理部195は、注射薬の種類が適切であるか否かを判定する(SA6)。注射薬の種類が適切である場合(SA6でYES)、第2判別処理部196は、注射薬の有効期限が適切であるか否かを判別する(SA7)。注射薬の有効期限が適切である場合(SA7でYES)、搬送制御部193は、薬剤移動部153により、当該注射薬を搬送トレイ151aに払い出す(SA8)。一方、注射薬の種類が適切でない場合(SA6でNO)、又は注射薬の有効期限が適切でない場合(SA7でNO)には、搬送制御部193は、薬剤移動部153により、当該注射薬を非払出薬保管部152へ移動させ、保管する(SA9)。
【0086】
以上の処理により、1つの注射薬が搬送トレイ151aに払い出されるか、又は非払出薬保管部152に保管される。注射薬払出装置100は、必要な注射薬が全て搬送トレイ151aに払い出されるまで、上記の処理を繰り返す。
【0087】
なお、上述した例では、ステップSA6およびSA7の処理はこの順で実行されたが、これらのステップは逆順で実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。
【0088】
注射薬を取り出された後のカセットCaは、ステップSA3以降の処理が実行されている間の任意のタイミングで、カセット移送部140によりカセット保持部130からカセット棚110へ戻されてよい。ただし、上述したステップSA6又はSA7において、カセットCaから取り出した注射薬の種類又は有効期限が適切でないと判別された場合、当該カセットCaから再度注射薬を取り出す必要が生じる。このため、注射薬を取り出した後のカセットCaは、ステップSA7でYESと判別された後にカセット棚110へ戻されることが好ましい。
【0089】
また、ステップSA6において、複数回連続してNOと判別され、かつ当該複数回の注射薬の種類が同じである場合、記憶部180に記憶されている対応付けとは異なる注射薬がカセットCaに収容されている可能性がある。制御部190は、このような場合に注射薬払出システム1の管理者に対して上記可能性を報知する報知部(不図示)を備えていてもよい。
【0090】
なお、注射薬払出装置100は、上記の処理をカセットCaごとに独立して行う必要はなく、並行して行ってもよい。すなわち、例えば移送制御部191は、1つのカセットCaについてステップSA1を実行した後、駆動制御部192がステップSA2を実行している間に、別のカセットCaについてステップSA1を実行してもよい。また、上記別のカセットCaについて搬送制御部193がステップSA4を実行している間に、既にステップSA4が終了したカセットCaをカセット保持部130がカセット受入位置131へ移動させ、カセット移送部140がカセット棚110へ戻してもよい。このように、カセット棚110に保管された多数のカセットCaのうちの一部について、並行して特定処理を実行することで、特定処理を高速化することができる。このように平行して特定処理を実行することによる処理の高速化は、より多数のカセットCaがカセット棚110に保管されているほど、より大きい効果を奏する。
【0091】
〔注射薬返品時の動作例〕
図15は、返品薬に対する注射薬払出装置100の動作を示すフローチャートである。
図16は、カセット保持部130に保持されるカセットの配置の例を示す図である。注射薬が返品された時の動作について、以下に説明する。
【0092】
まず、移送制御部191は、カセット移送部140により、返品薬受入カセット161、方向揃えカセット162、大型返品薬カセット163、及び中小型返品薬カセット164を、カセット保持部130へ移送する(SB1)。これらのカセットは、例えば
図16に示すように配されてよい。すなわち、最も位置変更部126に近い位置に方向揃えカセット162が配され、返品薬受入カセット161、大型返品薬カセット163、及び中小型返品薬カセット164の順に位置変更部126から遠ざかるように配されてよい。但し、この並び順に限定されない。
【0093】
次に、駆動制御部192は、返品薬受入カセット161及び方向揃えカセット162を処理位置132へ移動させる(SB2)。
【0094】
吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122により返品薬受入カセット161の内部の画像を撮影し、当該画像から返品薬の位置(及び向き)を解析して、薬剤搬送部121による吸着位置を決定する(SB3)。搬送制御部193は、吸着位置決定部194が決定した吸着位置で、薬剤搬送部121により返品薬を吸着し、返品薬受入カセット161から方向揃えカセット162へ搬送する(SB4)。
【0095】
方向揃えカセット162に搬送された返品薬は、方向揃えカセット162の底面の形状及び重力の作用により方向を揃えられる。吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122により方向揃えカセット162の内部の画像を撮影し、返品薬の位置に基づいて、薬剤搬送部121による吸着位置を決定する(SB5)。搬送制御部193は、吸着位置決定部194が決定した吸着位置で、薬剤搬送部121により返品薬を吸着し、方向揃えカセット162から第1搭載部126aへ搬送する(SB6)。
【0096】
第1搭載部126aへ搬送された返品薬について、上述したステップSA5と同様に、第1判別処理部195および第2判別処理部196が種類および有効期限を特定する(SB7)。第2判別処理部196は、返品薬の有効期限が適切であるか否かを判別する(SB8)。有効期限が適切であるか否かは、例えば当該有効期限とステップSB8を実行している日時とを照合した結果に基づいて判別される。
【0097】
有効期限が適切である場合(SB8でYES)、搬送制御部193は、薬剤搬送部121により、返品薬を大きさに基づいて大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164へ搬送する(SB9)。その後、第1判別処理部195が返品薬の種類を、搬送制御部193が返品薬の位置を、それぞれ記憶部180に記憶させる(SB10)。一方、有効期限が適切でない場合(SB8でNO)、搬送制御部193は、当該注射薬を非払出薬保管部152へ移動させ、保管する(SB11)。
【0098】
以上の処理により、1つの返品薬が、位置と種類との対応関係を認識された状態で大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に収容される。注射薬払出装置100は、返品薬受入カセット161内の返品薬がなくなるまでこの処理を繰り返す。
【0099】
また、処方データが注射薬払出システム1に入力された場合において、当該処方データに大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に収容されている注射薬が含まれている場合、注射薬払出装置100は、返品薬を再利用することができる。この場合、移送制御部191は、当該注射薬が収容されているカセットCaの代わりに、当該返品薬が収容されている大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164をカセット保持部130へ移送する。搬送制御部193は、記憶部180に記憶されている、返品薬の種類と位置との対応関係に基づいて、返品薬を第1搭載部126aへ搬送する。その後、注射薬払出装置100は、上述したステップSA5以降の処理を実行する。
【0100】
〔注射薬の取出しに係る具体的処理〕
次に、
図17~
図25を用いて、カセットCaから注射薬の取出しに係る具体的処理の一例について説明する。
【0101】
カセット保持部130に載置されたカセットCaから注射薬を取り出すために、吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122が撮影した画像を解析することで、カセットCaに収容された注射薬のうち、吸着対象とする注射薬を特定する。そして、吸着位置決定部194は、特定した注射薬の略中央部(バイアルであれば、円筒形状部分の略中央部付近)を吸着位置として決定する。搬送制御部193は、薬剤搬送部121を制御して、決定された吸着位置に吸着機構121aを下して、上記注射薬を吸着する。
【0102】
まず、吸着位置決定部194による吸着位置の決定処理において必要となる形状モデル、形状モデルの登録処理及び初期設定処理について説明する。
【0103】
(形状モデル)
まず、形状モデルについて説明する。形状モデルは、注射薬の形状情報に対して複数の条件を適用することで算出された複数の形状パターンを示すデータである。形状モデルは、位置特定用カメラ122が撮影した画像に含まれる注射薬の形状を特定するために、吸着位置決定部194によって参照されるデータである。
【0104】
形状情報は、各注射薬の輪郭を示す輪郭情報(エッジ情報)である。本実施形態では、形状情報は、注射薬の輪郭を示す、隣接するピクセルにおける位置情報を点列の集合として表現されており、サブピクセル程度の精度を有する。
【0105】
複数の条件としては、例えば、下記の(1)~(5)が挙げられる。
(1)形状情報が示す注射薬を回転させる範囲(例:0°以上360°未満)。
(2)当該注射薬を回転させるピッチ。
(3)当該注射薬をX軸方向へ伸縮させるための倍率の範囲。
(4)当該注射薬をY軸方向へ伸縮させるための倍率の範囲。
(5)当該注射薬のコントラスト(注射薬における前景及び後景の輝度差)。
【0106】
形状モデルは、各注射薬の注射薬識別情報に紐付けて、薬品マスタに登録されている。但し、薬品マスタではなく、各注射薬識別情報と形状モデルとが紐付けて登録された薬品形状マスタによって、形状モデルが管理されても構わない。また、形状モデルは予め作成され、薬品マスタに登録されていることが好ましい。但し、形状モデルを随時更新することが可能である。つまり、薬品マスタには最新の形状モデルが登録されていることになる。
【0107】
(形状モデルの登録処理)
次に、
図17を用いて、形状モデルの登録処理について説明する。
図17は、形状モデルの登録処理について説明するための図であり、(a)は当該登録処理の一例を示すフローチャートであり、(b)は形状モデルが示す注射薬の形状を模式的に表した図である。
【0108】
まず、ユーザは、登録対象とする注射薬をカセットCaに載置し、カセット棚110に載置する。カセット移送部140は、当該カセットCaをカセット棚110から取出し、カセット受入位置131にある任意のカセット保持部130に載置する。なお、カセット保持部130へのカセットCaの載置までユーザが行ってもよい。
【0109】
その後、
図17の(a)に示すように、搬送制御部193が、カセットCaを載置したカセット保持部130を処理位置132へと移送した後、位置特定用カメラ122は、カセットCa(つまり、カセットCa内の注射薬)を撮影する(SC1)。
【0110】
次に、吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122が取得した画像内において、注射薬と想定される領域を示す注射薬領域を検出する(SC2)。吸着位置決定部194は、例えば、画像に対して2値化処理を行い、所定範囲の階調値を有する画素を含む領域を注射薬領域として検出する。カセットCaは特定色(例:青色)であるため、吸着位置決定部194は、特定色と異なる色を有する領域を検出するだけでよい。そのため、吸着位置決定部194は、簡易に注射薬領域を特定できる。換言すれば、特定色のカセットCaを用いることで、注射薬領域の簡易な特定が可能となる。
【0111】
次に、吸着位置決定部194は、注射薬領域の輪郭に対して平滑化処理を行った後(SC3)、注射薬の向き(角度)を検出する(SC4)。吸着位置決定部194は、検出した注射薬の向きに基づき、登録する注射薬の向きを一定の方向(角度0°)に揃える(SC5:正規化処理)。なお、この向きは、例えば、
図19に示す画像Im1においてY軸方向(座標ImgColが設定される方向)を基準線としたときの、当該基準線と、注射薬の頭部の中心と底部の中心とを結ぶ直線とのなす角として規定される。
【0112】
次に、吸着位置決定部194は、平滑化処理及び正規化処理後の注射薬領域の形状を、注射薬の形状を示す形状情報として特定した後、当該形状情報に対して上記(1)~(5)の条件を適用することで複数の形状パターンを算出する。形状モデルが示す注射薬の形状及び向きを模式的に示せば、
図17の(b)のようになる。そして、この複数の形状パターンを上記注射薬の形状モデルとして、薬品マスタに登録する(SC6)。
【0113】
これにより、吸着位置決定部194は、吸着位置の決定処理時に、位置特定用カメラ122によって撮影された画像から検出された注射薬領域を、薬品マスタに登録された形状モデルと照合することで、吸着対象とする注射薬の形状を特定することが可能となる。
【0114】
(初期設定)
次に、
図18~
図20を用いて、初期設定処理について説明する。
図18は、初期設定処理の一例を示すフローチャートである。
図19は、各座標系を説明するための図である。
図20の(a)~(c)は、座標変換処理を説明するための図である。
【0115】
注射薬払出装置100は、少なくともその出荷当初に初期設定を行う。初期設定には、パラメータ設定処理及び座標変換処理が含まれる。
【0116】
図18に示すように、まずパラメータ設定処理が行われる。パラメータ設定処理は、内部パラメータ及び外部パラメータを設定(算出)する処理である。
【0117】
内部パラメータは、位置特定用カメラ122のレンズの特性を示す、レンズ固有(カメラ固有)のパラメータであり、カメラの製造元によりその値が公表されている。内部パラメータは、例えば、レンズの歪みの種類(例:樽型歪曲又は糸巻型歪曲)、及び歪み度合いを規定する。
【0118】
外部パラメータは、注射薬払出装置100に設置された位置特定用カメラ122の姿勢(レンズの姿勢)を示すパラメータである。つまり、外部パラメータは、位置特定用カメラ122がカセット棚110に設置され、かつ固定されることにより決定する値である。外部パラメータは、例えば、世界座標系における位置特定用カメラ122の位置(例:位置特定用カメラ122のx座標、y座標、z座標、x軸に対する回転角度、及びy軸に対する回転角度)を示す。
【0119】
具体的には、薬剤搬送部121は、パラメータ設定プレートが固定されたカセット保持部130を、位置特定用カメラ122の画角内に存在する処理位置132に載置する(SD1)。その後、位置特定用カメラ122は、パラメータ設定プレートを撮影することで、パラメータ設定画像を取得する(SD2)。
【0120】
パラメータ設定プレートは、内部及び外部パラメータを算出するために用いられるプレートであり、例えば多数の小さい黒点(ドットパターン)が印刷されている。なお、SD1の処理はユーザが行っても構わない。
【0121】
次に、吸着位置決定部194は、所定回数撮影したか否かを判定する(SD3)。所定回数撮影していない場合には(SD3でNO)、SD1の処理に戻る。つまり、所定回数撮影されていない場合、薬剤搬送部121は、撮影されたパラメータ設定プレートに印刷されたドットパターンとは異なるドットパターンが印刷されたパラメータ設定プレートを、処理位置132に載置する。本実施形態では、互いにドットパターンが異なるパラメータ設定プレートが6~10枚準備されている。内部及び外部パラメータを算出できるのであれば、準備されるパラメータ設定プレートは、5枚以下であっても、11枚以上であっても構わない。また、所定回数は、準備されたパラメータ設定プレートの数に設定される。
【0122】
所定回数撮影された場合には(SD3でYES)、吸着位置決定部194は、複数のパラメータ設定プレートの画像を解析することで、内部及び外部パラメータを算出する(SD4)。
【0123】
なお、上述のように、内部パラメータはカメラの製造元によって公表されている一定の値であるが、レンズの個体差によって、同種のレンズであっても公表されている値から誤差が生じている可能性もある。内部パラメータを算出することで、位置特定用カメラ122に使用されているレンズの実際の内部パラメータを正確に特定できる。
【0124】
次に、座標変換処理が行われる。座標変換処理は、画像における吸着位置と、カセットCaにおける実際の吸着位置とを整合させるための座標変換を行うための変換行列(Vector)を算出する処理である。変換行列は、画像座標系とロボット座標系との位置関係を特定するためのものであるともいえる。実際には、後述するように、撮像される画像には歪みが生じる。そのため、本実施形態では、ロボット座標系と、画像座標系を変換した、歪みが無い世界座標系と、の位置関係を特定するための変換行列を算出する。
【0125】
画像座標系は、位置特定用カメラ122が撮影した画像に設定される座標系である。本実施形態では、
図19に示すように、画像Im1の1つの角部(注射薬払出装置100の奥側(処理位置132側))を原点(Img(0,0))とし、注射薬払出装置100の奥側から手前側(カセット受入位置131側)に向けてX軸が規定され、座標(ImgRow,ImgCol)が規定される。
【0126】
ロボット座標系は、処理位置132における吸着機構121aの位置を規定する座標系である。本実施形態では、
図19に示すように、注射薬払出装置100の手前側を原点(Robo(0,0))とし、注射薬払出装置100の手前側から奥側に向けてY軸が規定され、座標(RoboX,RoboY)が規定される。
【0127】
世界座標系は、注射薬払出装置100における絶対的な座標系である。本実施形態では、
図19に示すように、注射薬払出装置100における任意の位置を原点(World(0,0))とし、注射薬払出装置100の奥側から手前側に向けてX軸が規定され、座標(WorldX,WorldY)が規定される。なお、原点(World(0,0))から見て位置特定用カメラ122のレンズが位置する方向がZ軸として規定され、座標(WorldZ)が規定される。原点(World(0,0))(基準位置)は、例えば、カセット保持部130a及び130b(又は、カセット保持部130c及び130d)の中心である。
【0128】
SD4の処理後、
図20の(a)に示すように、薬剤搬送部121は、ロボット原点治具501が固定されたカセット保持部130a及び130b(又は、カセット保持部130c及び130d)を、位置特定用カメラ122a(又は位置特定用カメラ122b)の画角内に存在する処理位置132a及び132b(又は処理位置132c及び132d)に載置する(SD5)。2つのロボット原点治具501は、
図20の(b)に示す座標変換プレート502をカセット保持部130a及び130bに載置したときに、座標変換プレート502に形成された治具孔502aに挿入される位置に固定される。また、2つのロボット原点治具501は、吸着機構121aの押下又は吸着によって位置ずれが生じない程度に固定される。なお、SD5の処理はユーザが行っても構わない。
【0129】
この状態において、搬送制御部193は、吸着機構121aを各ロボット原点治具501に下して、その先端部を接触させる。これにより、吸着位置決定部194は、ロボット座標系における、2つのロボット原点治具501の位置を特定する。
【0130】
座標変換プレート502には、
図20の(b)に示すように、ロボット原点治具501が挿入される2つの治具孔502aが形成されており、9つのターゲット(黒点)503が印刷されている。座標変換プレート502における、治具孔502aの位置とターゲット503の位置とは、予め記憶部180に記憶されている。つまり、これらの2つの位置関係は予め特定されている。そのため、吸着位置決定部194は、上述のように、ロボット座標系におけるロボット原点治具501の位置を特定することで、座標変換プレート502をカセット保持部130a及び130bに載置したときの、ロボット座標系におけるターゲット503の位置(RoboX,RoboY)も特定できる。
【0131】
SD5の処理後、
図20の(c)に示すように、ユーザは、座標変換プレート502に形成された治具孔502aにロボット原点治具501が挿入されるように、座標変換プレート502をカセット保持部130a及び130bを載置する(SD6)。載置後、位置特定用カメラ122は、座標変換プレート502を撮影することで、座標変換画像を取得する(SD7)。
【0132】
次に、吸着位置決定部194は、座標変換画像を解析することで、画像座標系におけるターゲット503の位置(ImgRow,ImgCol)を検出する(SD8)。
【0133】
次に、吸着位置決定部194は、座標変換画像の歪みを補正するために、画像座標系におけるターゲット503の位置を、世界座標系におけるターゲット503の位置(WorldX,WorldY)に変換する(SD9)。具体的には、吸着位置決定部194は、SD4で算出した内部パラメータ及び外部パラメータと、ターゲット503の高さを示すターゲット高さ情報とを用いて、画像座標系におけるターゲット503の位置から、世界座標系におけるターゲット503の位置を算出する。なお、ターゲット高さ情報は、予め記憶部180に記憶されている。
【0134】
次に、吸着位置決定部194は、SD9で算出した世界座標系におけるターゲット503の位置座標と、SD5で特定したロボット座標系におけるターゲット503の位置座標とを用いて、変換行列を算出する(SD10)。
【0135】
なお、本実施形態では、位置特定用カメラ122は2つ設けられているため、各位置特定用カメラ122a及び122bについて、内部パラメータ及び外部パラメータの算出、及び変換行列の算出が行われる。また、外部パラメータは、位置特定用カメラ122の設置位置に依存する。そのため、位置特定用カメラ122はカセット棚110に強固に固定されると共に、設置位置にずれが生じた場合には、外部パラメータは再度算出される。
【0136】
(吸着位置の決定処理)
次に、カセットCaに収容された注射薬の吸着位置を決定する処理について、
図21及び
図22を用いて説明する。
図21は、カセットCaに収容された注射薬の吸着位置を決定する処理の一例を示す図である。
図21の処理は、
図14に示すSA3の処理を具体的に説明するものである。
図22の(a)及び(b)は、画像におけるカセットCaの検出について説明するための図である。
【0137】
図21に示すように、吸着位置決定部194は、注射薬払出システム1に提供された処方データに含まれる注射薬識別情報と、薬品マスタに含まれる注射薬識別情報とを照合する。これにより、吸着位置決定部194は、処理位置132に載置されるカセットCaに収容された注射薬(撮影対象となる注射薬)の形状モデルを読み込む(SE1)。
【0138】
次に、位置特定用カメラ122は、処理位置132に移送されたカセット保持部130(つまり、当該カセット保持部130に載置されたカセットCa、及び当該カセットCaに収容された注射薬)を撮影する(SE2)。例えば、撮影対象となる注射薬が収容されたカセットCaがカセット保持部130bに載置されている場合、位置特定用カメラ122aにより、
図22の(a)に示すような画像Im2が撮影される。
【0139】
次に、吸着位置決定部194は、撮影された画像から、当該画像に含まれるカセットCaを検出する(SE3)。カセットCaは、処理位置132に筐体の色とは異なる特定色を有する。そのため、吸着位置決定部194は、特定色を検出することで、簡易にカセットCaを検出できる。特に、特定色が青色である場合、カセットCaを検出しやすい。
【0140】
なお、撮影領域122c又は122dに2つのカセット保持部130が載置されている場合であっても、吸着位置決定部194は、決定されている払出順序に基づき、撮影対象となる注射薬を特定できる。そのため、吸着位置決定部194は、撮影領域122c又は122dに載置された2つのカセット保持部130のうち、撮影対象となる注射薬を含むカセットCaを特定できる。
【0141】
ここで、
図22の(b)は、カセットCaを上方向から見た場合の図である。薬剤搬送部121は、カセットCa内部の端部領域(側壁の内側からの幅W2を有する領域)に存在する注射薬を吸着できない可能性がある。また、カセットCaの側壁部分(厚みW1)についても、注射薬を吸着する領域として特定することはできない。そのため、吸着位置決定部194は、画像においてカセットCaとして検出した領域から、上記側壁部分及び上記端部領域(カセットCaの外縁からの厚みW1及び幅W2を有する領域)を除いた領域を、注射薬の吸着可能領域Raとして特定する。
【0142】
なお、吸着可能領域Ra以外の領域に注射薬が存在する場合、吸着位置決定部194は、当該注射薬を吸着対象の注射薬として決定しない。つまり、吸着可能領域Ra内に存在する注射薬のみを吸着対象の注射薬として特定する。注射薬が吸着可能領域Ra以外の領域にしか存在しない場合、吸着位置決定部194は、注射薬を吸着できない旨の通知(警告)を行っても構わない。また、カセットCaが複数種類準備されている(例:互いに高さが異なるカセットCaが準備されている)場合には、カセットCaの種類毎に吸着可能領域Raが特定される。
【0143】
SE3の処理後、吸着位置決定部194は、画像内において注射薬領域を強調するための前処理を行う(SE4)。例えば、吸着位置決定部194は、ラベルと想定される領域を例えば特定色に変換することにより、画像におけるラベルを消去したり、注射薬の外縁を規定する輪郭と想定される領域(例:隣接するピクセルにおいて所定の輝度差又は色差がある領域)を強調する処理を行ったりする。その後、吸着位置決定部194は、画像から、当該画像に含まれる注射薬領域を検出する(SE5)。例えば、吸着位置決定部194は、SE4で処理した画像に対して2値化処理を行うことで、所定範囲の階調値を有するピクセルを含む領域(つまり、カセットCaの特定色とは異なる色を有する領域)を注射薬領域として特定する。その後、吸着位置決定部194は、特定した注射薬領域と、SE1で読み込んだ形状モデルとの照合を行う(SE6)。
【0144】
次に、吸着位置決定部194は、照合した結果の妥当性を検証する(SE7)。SE6の処理では、注射薬の輪郭部分を特定する処理となるため、複数の注射薬が隣接していたり、重なっていたりした場合には、複数の注射薬を1つの注射薬として特定してしまう場合がある。この場合、正確な吸着位置を特定することができない。
【0145】
例えば2つの注射薬が存在する場合、2つの注射薬の間の領域には、背景としてのカセットCaが存在することになる。そのため、吸着位置決定部194は、特定した注射薬領域において、注射薬領域を貫き、かつ特定色を含む領域が存在する場合には、複数の注射薬が存在するものと認定し、照合した結果が妥当ではないと判定する。この場合、照合結果が妥当であると判定されるまで、SE6の処理が行われる。
【0146】
SE7において、照合した結果が妥当であると判定した場合、画像上の注射薬領域における吸着位置(吸着座標)、及び注射薬領域の向きを算出する(SE8)。つまり、画像座標系における吸着位置を算出する。
【0147】
SE6において照合を行ったときに、画像における注射薬の頭部の位置を特定できるため、注射薬領域の向きを特定できる。この向きは、例えば、
図22の(a)に示す画像Im2においてY軸方向(座標ImgColが設定される方向、紙面左右方向)を基準線としたときの、当該基準線と、注射薬の頭部の中心と底部の中心とを結ぶ直線とのなす角として規定される。登録された形状モデル(角度0°)を基準として算出されても構わない。なお、吸着位置の算出方法については後述する。
【0148】
次に、吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122のレンズの歪み、及び当該レンズの設置位置を補正するために、算出した画像座標系における吸着位置を、世界座標系における吸着位置へと変換する(SE9)。この変換は、
図18に示すSD9の処理と同様、
図19に示すSD4で算出した内部パラメータ及び外部パラメータと、注射薬の幅を示す注射薬幅情報と用いることにより行われる。
【0149】
次に、吸着位置決定部194は、変換した世界座標系における吸着位置を、ロボット座標系における吸着位置へと変換する(SE10)。これにより、実空間における注射薬に対する吸着位置が特定される。この変換は、世界座標系における吸着位置に対して、
図18に示すSD10の処理で算出された変換行列を適用することにより行われる。
【0150】
なお、注射薬が返品されたときの吸着位置は、例えば公知の手法を用いて決定可能である。そのため、その具体的な決定方法の説明については割愛する。
【0151】
(吸着位置決定に係る補正処理)
次に、吸着位置決定に係る補正処理について、
図23~
図25を用いて説明する。
図23の(a)及び(b)は、レンズ歪みに起因した位置ずれの補正を説明するための図である。
図24は、注射薬の幅に起因した位置ずれの補正を説明するための図である。
図25の(a)~(c)は、投影に係る位置ずれの補正を説明するための図である。
【0152】
上述のように、注射薬払出装置100では、構成の制約上、
図5に示すように、2つの位置特定用カメラ122がカセット棚110の底面に設けられている。そのため、位置特定用カメラ122から、処理位置132(具体的には、処理位置132に存在するカセット保持部130に載置されたカセットCa)までの距離は、注射薬払出装置100の天井に位置特定用カメラ122が設けられる場合に比べて短くなる。
【0153】
従来の注射薬払出装置では、位置特定用カメラは注射薬払出装置の天井に設けられ、その直下に薬種の判別対象となる注射薬が載置されていた。つまり、注射薬払出装置100では、上記距離が従来の注射薬払出装置の場合よりも短くなるため、位置特定用カメラ122に用いられるレンズの視野角を大きくする必要がある。なお、例えば、注射薬払出装置100では上記距離が465mm程度であるのに対し、従来の注射薬払出装置では上記距離が1.1~1.2m程度である。
【0154】
また、一般に、レンズの視野角は、レンズ径が大きいほど小さくなる。上記距離が比較的大きいため、従来の注射薬払出装置では、レンズ径が比較的大きいレンズ(例:16mm)を使用できる。しかし、注射薬払出装置100で当該レンズを使用した場合、上記距離に対して視野角が小さすぎてしまい、処理位置132に載置されたカセットCa全体を撮影することができない。そのため、上記距離を考慮すれば、位置特定用カメラ122のレンズとしては、レンズ径が比較的小さいものを使用する必要がある。
【0155】
上記距離が465mm程度の場合、レンズ径が例えば8mmのレンズを用いることも考えられる。しかし、この場合、各処理位置132a~132dの全体を撮影するには、各処理位置132a~132dに対して1つずつ位置特定用カメラ122を設ける必要がある(つまり、装置全体として計4つの位置特定用カメラ122を要する)。そこで、本実施形態では、レンズ径が6mmのレンズを用いている。これにより、処理位置132a及び132bに対して共通する1つの位置特定用カメラ122aを設ける、又は、処理位置132c及び132dに対して共通する1つの位置特定用カメラ122bを設ける(つまり、装置全体として計2つの位置特定用カメラ122を設ける)だけで、各処理位置132a~132dの全体を撮影することが可能となる。
【0156】
但し、レンズ径が小さくなればなるほど、撮影した画像において歪みの度合いが大きくなる。この歪みは、カセットCaに存在する注射薬の実際の位置と、画像における注射薬の位置との間に誤差を生じさせる要因となる。そのため、この歪みを補正せずに注射薬の吸着位置を特定した場合には、注射薬の実際の位置とは異なる位置に、吸着機構121aを下してしまう可能性がある。
【0157】
また、位置特定用カメラ122を2つの処理位置132に対して共通となるように設けているため、処理位置132に載置されたカセットCaを斜め方向から撮影することになる。注射薬はある程度の幅を有するため、斜め方向から注射薬の撮影を行った場合には、画像における注射薬の位置が、注射薬の実際の位置とは異なる可能性がある。また、実際の注射薬において想定している吸着位置が、画像においては、当該吸着位置とは異なる位置となる可能性がある。そのため、これらの可能性も考慮しないと、上述のように、注射薬の実際の位置とは異なる位置に、吸着機構121aを下してしまう可能性がある。
【0158】
従って、吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122が撮影した画像を解析することで、以下に示す画像上の位置ずれを考慮して、画像における吸着位置(吸着座標)を補正する。
【0159】
(レンズ歪みに起因した位置ずれの補正)
上述のように、レンズにはレンズ固有の歪みが存在する。本実施形態では、位置特定用カメラ122のレンズとして、凸レンズが使用されている。そのため、画像には樽型歪曲が生じる。
【0160】
図23の(a)は、レンズ歪みが生じていない理想的な画像Ii示す。この場合、画像Irにおける各ターゲット(図中の4点の丸印)の位置関係は、実空間での各ターゲットの位置関係と比例関係となる。しかし、実際には樽型歪曲が生じる。この場合、
図23の(b)に示すような画像Irが撮影される。画像Irにおいては、画像Irの中心位置から離れた位置にあるターゲットほどレンズ歪みの影響を受ける。
図23の(a)に示す画像Iiと比較した場合、当該ターゲットほど、中心位置側によっていることが分かる。そのため、レンズ歪みに起因した位置ずれを補正するためには、画像における各位置に応じて、当該位置に存在する像を中心位置から外側へ移動させる補正を行う必要がある。
【0161】
上述のように、内部パラメータはレンズ固有の歪み度合いを規定する。つまり、内部パラメータを参照することで、画像の各位置における歪み度合いを特定できるため、像を中心位置から外側へと移動させるための補正量を位置毎に算出できる。
【0162】
また、画像Irにおける中心位置は、位置特定用カメラ122のレンズの姿勢に依存する。そのため、当該姿勢を規定した外部パラメータを参照することで、画像Irにおける中心位置を特定できる。つまり、中心位置を特定した後に上記補正量を算出することで、正確な補正量を算出できる。
【0163】
図21のSE9の処理においては、吸着位置決定部194は、画像座標系における吸着位置を上記補正量の分ずらすために、算出した内部パラメータ及び外部パラメータを用いて世界座標系における吸着位置を算出している。
【0164】
(注射薬の幅に起因した位置ずれの補正)
また、注射薬の幅(処理位置132に載置されたときの注射薬の高さ)によって、同じ位置に載置した注射薬であっても、画像においてはその位置が異なってくる。
図24に示すように、位置特定用カメラ122から真下以外の位置に、幅が異なる2つの注射薬DA及びDBが載置された場合を考える。この場合、注射薬の幅の大きさに応じて、注射薬の、載置面Faから最も離れた位置に対応する、画像における位置が異なる。
【0165】
具体的には、
図24に示すように、注射薬DAの、載置面Faから最も離れた位置PAに対応する、画像における位置DAiは、注射薬DAが載置された位置よりも距離d(A)だけ離れた位置となる。また、注射薬DBの、載置面Faから最も離れた位置PBに対応する、画像における位置DBiは、注射薬DBが載置された位置よりも距離d(B)だけ離れた位置となる。つまり、注射薬の幅が大きくなればなるほど、画像における上記位置が、実際に注射薬が載置されている位置よりも離れた位置となることが分かる。そのため、注射薬の幅に起因した位置ずれを補正するためには、画像における各位置に応じて、当該位置に存在する像を中心位置から内側へ移動させる補正を行う必要がある。
【0166】
上述のように、複数種類の注射薬のそれぞれについて、注射薬幅情報が薬品マスタに登録されている。そのため、当該注射薬幅情報が示す注射薬の幅、及び画像における注射薬の位置を用いて、上記距離を算出できる。つまり、像を中心位置から内側へと移動させるための補正量を位置毎に算出できる。また、上述のように、中心位置については、外部パラメータを参照することで特定できる。そのため、当該補正量についても正確に算出できる。
【0167】
図21のSE9の処理においては、吸着位置決定部194は、画像座標系における吸着位置を上記補正量の分ずらすために、算出した外部パラメータ、及び登録された注射薬幅情報を用いて、世界座標系における吸着位置を算出している。
【0168】
以上から、世界座標系における吸着位置は、レンズ歪みに起因した位置ずれの補正、及び注射薬の幅に起因した位置ずれの補正を行った結果としての吸着位置であるといえる。
【0169】
(投影に係る位置ずれの補正)
また、処理位置132のどの位置に注射薬が載置されているかによっても、注射薬の、載置面Faから最も離れた位置に対応する、画像における位置が異なってくる。
図25の(a)に示すように、位置特定用カメラ122から真下以外の位置に、注射薬DCが載置された場合を考える。この場合、注射薬DCの、載置面Faから最も離れた位置Paに対応する、画像における位置Pr1は、画像における注射薬の投影像DCi1における中心位置Pr2とは異なる位置となる。つまり、
図25の(b)に示すように、注射薬を真上から見たときには、上記位置Paは注射薬の中心位置であるが、
図25の(c)に示すように、投影像DCi1においては、上記位置Paは注射薬の中心からずれた位置となる。
【0170】
注射薬の上記位置Paは、対向する吸着機構121aに最も近い位置であるため、当該位置Paが注射薬の吸着位置として特定されることが好ましい。しかし、投影像DCi1における中心位置Pr2を注射薬の吸着位置として特定してしまうと、実際の注射薬の中心位置(つまり上記位置Pa)からずれた位置となってしまう。特にそのずれが大きい場合には、吸着機構121aは、注射薬を吸着できない可能性がある。そのため、このずれを補正する必要がある。
【0171】
そこで、吸着位置決定部194は、
図25の(a)に示すように、投影像DCi1を、注射薬DCの半径だけ位置特定用カメラ122の方向(鉛直方向)に移動させた投影像DCi2に変換する。注射薬DCの幅は注射薬幅情報として薬品マスタに登録されているため、吸着位置決定部194は、注射薬DCの半径を特定できる。なお、薬品マスタに、注射薬の半径を示す注射薬半径情報が登録されていても構わない。
【0172】
注射薬DCの半径を用いた、投影像DCi1を投影像DCi2への変換により、投影像DCi2における中心位置Pcが上記位置Paと略同一となる。つまり、上記変換は、
図25の(c)に示す投影像DCi1を、
図25の(b)に示す注射薬DCと略同一となるように回転した結果としての投影像DCi2を生成するものといえる。
図21のSE8の処理における、画像座標系における吸着位置の算出は、上記変換を行うことを意味する。
【0173】
(その他)
なお、位置特定用カメラ122に比較的高価なレンズを用いた場合、レンズ歪み及び注射薬の高さに起因した位置ずれは生じにくい。そのため、比較的高価なレンズを用いた場合には、吸着位置決定部194は、少なくとも投影に係る位置ずれの補正を行えばよい。但し、本実施形態では、レンズ歪み及び注射薬の高さに起因した位置ずれの補正も行うことで、比較的安価なレンズを用いることを可能にしている。
【0174】
また、上記では、レンズ径が6mmのレンズを用いた場合を例示して説明したが、これに限られない。各処理位置132に載置されたカセットCaの全体を撮影することが可能なレンズ径を有するレンズを用いることが可能である。例えば、上記距離を465mmよりも大きくすることで、レンズ径が8mmのレンズの使用も可能となる。
【0175】
(効果)
以上のとおり、本実施形態の注射薬払出装置100は、入力された処方データに基づき、1患者への投与に係る注射薬の種類及び有効期限を自動的に判別して払い出すことができる。したがって、病院などにおける注射薬の払い出し業務を効率化することができる。
【0176】
特に、注射薬払出装置100が備える薬剤カセット取扱装置200において、注射薬は、カセットCaごと移動させられるか、又は吸着機構に吸着されて移動させられる。このため、注射薬払出装置100においては、従来のランダム式の注射薬払出装置と比較して、注射薬が払い出される過程で当該注射薬が破損する虞が低減される。
【0177】
また、注射薬払出装置100においては、薬剤搬送部121と薬剤移動部153とが別個に設けられている。このため、(i)カセットCaからの注射薬の取出しと、(ii)搬送トレイ151aへの注射薬の払い出しとを並行して行うことができる。したがって、注射薬払出装置100によれば、注射薬の高速な払い出しを実現できる。
【0178】
〔上記構成の別表現〕
上記構成について、以下のように表現できる。
【0179】
[1]上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る薬剤カセット取扱装置は、薬剤を収容するm個のカセットを保管するカセット棚と、上記カセットに収容された薬剤に対して特定処理を行うための特定処理部と、上記カセットのうち、上記特定処理を受けるカセットをn個(m>n≧2)まで一時的に保持可能なカセット保持部と、上記カセット保持部に保持される上記カセットを差し替えるために、上記カセット棚と上記カセット保持部との間で上記カセットを移送するカセット移送部と、を備える。
【0180】
例えば、多数(m個)のカセットが保管されたカセット棚において特定処理を行おうとすると、カセット棚の各カセット保管位置へ、薬剤の取出及び搬送を行う搬送機構を移動させる必要がある。そのため、この場合には、薬剤カセット取出装置の機構が複雑になるとともに、搬送機構を移動させるための時間を要する。
【0181】
上記の構成によれば、多数のカセットのうちの一部(n個)をカセット保持部に一時的に保持させ、その領域において特定処理を集中的に行うことが可能となる。そのため、特定処理を効率良く行うことが可能となる。
【0182】
また、カセット保持部は2以上のカセットを保持できるため、あるカセットに対して特定処理が行われている間に他のカセットを差し替えることができる。このため、あるカセットに対する特定処理と、他のカセットに対する特定処理との間に生じる待ち時間の発生を抑制することができる。
【0183】
[2]さらに、本発明の一態様に係る薬剤カセット取扱装置では、上記カセット保持部は、上記カセット移送部から上記カセットを受け入れるカセット受入位置と、上記カセットが上記特定処理を受けるための処理位置との間で上記カセットを往復移動させても構わない。
【0184】
上記の構成によれば、特定処理部の動作とカセット移送部の動作との干渉を回避できる。
【0185】
[3]さらに、本発明の一態様に係る薬剤カセット取扱装置では、上記カセット棚は、鉛直面内で行列状に上記カセットを保管し、上記カセット移送部は、上記カセットを、上記カセット棚から引き出し、鉛直方向に移送して上記カセット受入位置にある上記カセット保持部に載置し、上記カセット保持部は、上記カセットを上記処理位置へ向けて水平方向に移動させても構わない。
【0186】
上記の構成によれば、カセットの移送動作において無駄な動作が生じにくい。そのため、カセットの差し替えを効率良く行うことができる。また、薬剤カセット取扱装置のスペースを有効活用できる。
【0187】
[4]さらに、本発明の一態様に係る薬剤払出装置は、上記[1]~[3]のいずれかに記載の薬剤カセット取扱装置を含む薬剤払出装置であって、上記特定処理部は、上記カセットに収容された薬剤を払出すために上記薬剤を上記カセットから取り出し搬送する薬剤搬送部を含んでも構わない。
【0188】
上記の構成によれば、薬剤カセット取扱装置によって取り出されたカセット内の薬剤を取り出し、別の箇所へと搬送できる。
【0189】
[5]さらに、本発明の一態様に係る薬剤払出装置では、上記特定処理部は、上記カセットから取り出す薬剤を特定するための撮影を行う第1撮影部を含んでも構わない。
【0190】
上記の構成によれば、撮影した画像データに基づき、カセットから取り出す薬剤を特定できる。
【0191】
[6]さらに、本発明の一態様に係る薬剤払出装置では、上記特定処理部は、上記薬剤に付された第1識別情報を読み取る読取部と、上記読取部によって読み取られた第1識別情報を、入力された薬剤の固有情報と照合した結果に基づき、上記薬剤の払出しの可否を判別する第1判別処理部と、を含んでも構わない。
【0192】
上記の構成によれば、第1識別情報に基づき、薬剤の払出しの可否を判別できる。なお、第1識別情報としては、例えば、薬剤の種類を読み取るためのバーコードが挙げられる。
【0193】
[7]さらに、本発明の一態様に係る薬剤払出装置では、上記特定処理部は、上記薬剤に付された第2識別情報を撮影する第2撮影部と、上記第2撮影部によって撮影された第2識別情報に基づき、上記薬剤の払出しの可否を判別する第2判別処理部と、を含んでも構わない。
【0194】
上記の構成によれば、第2識別情報に基づき、薬剤の払出しの可否を判別できる。なお、第2識別情報としては、例えば、薬剤の有効期限が挙げられる。
【0195】
[8]さらに、本発明の一態様に係る薬剤払出装置では、上記特定処理部は、上記読取部による読取り、又は上記第2撮影部による撮影のために、上記薬剤搬送部によって搬送された薬剤を受け入れ、受け入れた薬剤を軸方向に回転させる薬剤回転部を含んでも構わない。
【0196】
読取部又は第2撮像部が第1識別情報又は第2識別情報を取得するためには、薬剤における、第1識別情報又は第2識別情報が付された位置を、読取部又は第2撮像部と対向させる必要がある。
【0197】
上記の構成によれば、薬剤回転部により薬剤を軸方向に回転させることができるため、読取部又は第2撮像部により第1識別情報又は第2識別情報を取得できるように、上記位置を読取部又は第2撮像部と対向させることが可能となる。
【0198】
[9]さらに、本発明の一態様に係る薬剤払出装置では、受け入れた薬剤を搭載する複数の搭載部を有し、上記複数の搭載部の少なくとも1つは、上記薬剤回転部を備え、上記特定処理部は、上記複数の搭載部のそれぞれの位置を、上記薬剤搬送部から薬剤を受け入れる薬剤受入位置と、上記薬剤を払出すために薬剤を受け渡す薬剤受渡位置との間で変更する位置変更部を含んでも構わない。
【0199】
読取部又は第2撮像部により第1識別情報又は第2識別情報を取得するために、カセットから取り出された薬剤は、搭載部に搬送されることにより、搭載部に受け入れられる必要がある。一方、第1識別情報又は第2識別情報に基づき払出し可否の判別が行われた薬剤は、搭載部から別の箇所へ搬送されることにより、別の箇所へ受け渡される。この薬剤の受入動作及び受渡動作の対象となる搭載部が1つである場合、搭載部に受け入れられた薬剤が別の箇所へ搬送された後に、次の薬剤が搭載部に受け入れられる。つまり、この場合、受入動作と受渡動作との干渉が生じる。
【0200】
上記の構成によれば、各搭載部の位置を、薬剤受入位置と薬剤受渡位置との間で変更するため、上述したような受入動作と受渡動作との干渉を回避できる。また、当該干渉を回避できる結果、払出動作速度を向上させることができる。
【0201】
[10]さらに、本発明の一態様に係る薬剤払出装置では、上記m個のカセットのそれぞれと、上記m個のカセットのそれぞれに収容された薬剤との対応関係を示す対応関係データが記憶されており、上記カセット移送部は、受信した処方データのうち、1患者への投与に係る処方データに2種以上の薬剤が含まれている場合に、当該処方データ、及び上記対応関係データに基づいて、当該薬剤が収容されたカセットをそれぞれ上記カセット保持部へと移送しても構わない。
【0202】
上記の構成によれば、1患者への投与に係る処方データに2種以上の薬剤が含まれている場合に、各薬剤が収容されたカセットをそれぞれカセット保持部へ搬送した後、各カセットに収容された薬剤に対して特定処理を実行することが可能となる。そのため、上記処方データに基づく薬剤の払出しを効率良く行うことが可能となる。
【0203】
なお、対応関係データは、m個のカセットCaのそれぞれと、m個のカセットCaのそれぞれに収容された薬剤との対応関係を示すデータに限られない。m個のカセットが、カセットCaと、大型返品薬カセット163及び/又は中小型返品薬カセット164とから構成される場合、対応関係データは、カセットCaと、大型返品薬カセット163及び/又は中小型返品薬カセット164とから構成されるm個のカセットのそれぞれと、当該m個のカセットのそれぞれに収容された薬剤との対応関係を示すデータであればよい。
【0204】
≪その他の構成≫
以下に、主として、注射薬払出装置100の更なる構成及び処理等について説明する。但し、以下に示す説明において、上述した内容と重複する部分、又は具体的に記載した部分もあることに留意されたい。
【0205】
〔注射薬払出システム〕
図2を用いて上述したように、注射薬払出システム1は、プリンタ装置13が、処方データに示されている注射薬の種類等を示す情報を搬送トレイ151aに印字するものとして説明したが、これに限られない。プリンタ装置13は、輸液容器(輸液バッグ)に貼付けられる輸液ラベルを発行する輸液ラベル発行装置として機能しても構わない。この場合、注射薬払出システム1は、注射薬払出装置100及び輸液ラベル発行装置(プリンタ装置13)を含むシステムである。
【0206】
供給リフタ11から搬送される搬送トレイ151aには、輸液容器が載置される場合もある。輸液容器には、ブドウ糖液もしくは生理食塩水等の液体、又は、薬剤と液体との混合薬が含まれる。混合薬は、チューブを通して患者の体内へ注入される。液体と混合される薬剤は、注射薬払出装置100以外の装置から払出されるものであっても構わない。但し、注射薬払出装置100のカセットCaに当該薬剤が含まれている場合には、注射薬払出装置100から払出される薬剤であっても構わない。
【0207】
プリンタ装置13は、処方データに基づき、輸液容器の内容物を特定することで、当該内容物に関する情報を印字した輸液ラベルを発行する。プリンタ装置13は、発行した輸液ラベルを、当該輸液ラベルに対応する輸液容器が載置された搬送トレイ151aに載置する。後述のように、搬送トレイ151aに輸液ラベルを載置する輸液ラベル載置領域が設定されている場合には、当該輸液ラベル載置領域に輸液ラベルを載置する。この場合、注射薬払出装置100及びプリンタ装置13は、各搬送トレイ151aにおいて予め設定された輸液ラベル載置領域の位置に関する情報を記憶している。
【0208】
なお、プリンタ装置13は、注射薬の種類等を示す情報を搬送トレイ151aに印字する機能、及び、輸液ラベルを発行する機能の少なくともいずれかを有していればよい。
【0209】
〔注射薬払出装置〕
次に、主として、注射薬払出装置100の処理について説明する。
【0210】
〔カセット移送処理〕
<カセットの特定例>
まず、カセットCaの特定例について説明する。
図26は、カセットCaの一例を示す図であり、(a)は分割部材SP(仕切り板)を装着前の状態、(b)は分割部材SPを装着後の状態を示す図である。
図27の(a)及び(b)は、カセット移送部140の詳細図である。
【0211】
図26の(a)に示すように、カセットCaには、第1バーコードBC1及び第2バーコードBC2が付されている。また、
図27の(a)及び(b)に示すように、カセット移送部140には、カセットCaに付された第1バーコードBC1を読取るためのバーコードリーダー146が設けられている。
【0212】
カセット棚110に保管される複数のカセットCaのそれぞれには、カセットCaを識別するためのカセット固有情報(カセット識別子)(例:カセット番号)が付与されている。第1バーコードBC1は、カセットCaに付されたカセット固有情報を示すものである。第1バーコードBC1は、カセットCaの外側面のうち、カセット棚110に保管されたときに、カセット移送部140と対向する外側面(具体的には、バーコードリーダー146により読取可能な位置)に付されている。
【0213】
また、カセットCaのカセット固有情報は、カセットCaに収容された注射薬の種類を示す情報(注射薬識別情報、薬剤固有情報)と紐付けられて、記憶部180に記憶される。制御部190は、例えばユーザ入力に従って、カセットCaのカセット固有情報と、カセットCaに収容された注射薬の注射薬識別情報とを紐付ける。
【0214】
また、カセットCaのカセット固有情報と、複数のカセットCaのそれぞれがカセット棚110に保管される保管位置(カセット保管位置)を示す保管位置情報とが紐付けられて、記憶部180に記憶されている。例えば、カセット移送部140は、カセット棚110を走査することで、保管位置にカセットCaが保管されていれば、当該カセットCaの第1バーコードBC1をバーコードリーダー146で読取る。具体的には、カセット移送部140の、爪部141、爪部移動機構142及び衝撃吸収板145を含むカセット取出機構がカセット棚110を走査することで、バーコードリーダー146が各保管位置に保管されたカセットCaの第1バーコードBC1を読取る。カセット取出機構の位置と保管位置とは、予め紐付けられて記憶部180に記憶されている。そのため、移送制御部191は、第1バーコードBC1を読取ったときのカセット取出機構の位置を特定することで、カセットCaのカセット固有情報と保管位置情報とを紐付けることができる。
【0215】
このように、記憶部180には、カセットCaのカセット固有情報、当該カセットCaに収容されている注射薬の種類を示す情報、及び当該カセットCaの保管位置情報が紐付けて記憶されている。そのため、任意のカセットCaに任意の注射薬を収容し、かつ当該カセットCaを任意の保管位置に保管しても、各情報の紐づけを行えば、制御部190は、記憶部180を参照することで、任意のカセットCaに収容された注射薬、及び当該カセットCaの保管位置を特定できる。つまり、任意のカセットCaに任意の注射薬を自由に収容し、かつ当該カセットCaを任意の保管位置に自由に保管することが可能となる。換言すれば、カセットCaの、カセット棚110に対する格納の自由度を高めることができる。
【0216】
また、上述の通り、カセット移送部140は、バーコードリーダー146が設けられている。具体的には、バーコードリーダー146は、カセット棚110と対向する位置(本例では、カセット取出機構の上部)に設けられている。そのため、以下のような処理が実現可能である。
【0217】
移送制御部191は、受信した処方データに基づき、記憶部180に記憶されている、当該処方データが示す注射薬の種類を示す情報に紐付けられたカセット固有情報及び保管位置情報を読出す。移送制御部191は、読み出した保管位置情報が示す保管位置へカセット取出機構を移動する。
【0218】
移送制御部191は、当該保管位置へのカセット取出機構の移動が完了すると、バーコードリーダー146で第1バーコードBC1(つまりカセット固有情報)を読取る。移送制御部191は、読取ったカセット固有情報を、カセット取出機構の移動前に記憶部180から読出したカセット固有情報と照合する。
【0219】
移送制御部191は、カセット固有情報が一致した場合、カセット固有情報を読取ったカセットCaが、払出対象の注射薬を収容しているカセットCaと特定し、当該カセットCaをカセット棚110から取出す。一方、移送制御部191は、カセット固有情報が不一致であれば、カセット棚110から当該カセットCaを取出さず、例えば、カセット取出機構を別の保管位置に移動させ、当該保管位置にあるカセットCaのカセット固有情報を読取ることで、再度の照合を行う。また、移送制御部191は、処方データに基づく注射薬が収容されたカセットCaが取出せない旨の報知を行っても構わない。
【0220】
カセット棚110へのカセットCaの保管の自由度が高くなった場合、例えば、ユーザがカセットCaを所定の保管位置とは異なる位置に保管してしまう可能性が高まることになる。つまり、自由度が低い場合に比べ、払出対象の注射薬を収容しているカセットCaとは異なるカセットCaを取出してしまう可能性が高まることになる。
【0221】
上記のように、カセット固有情報に基づき、取出対象のカセットCaに収容された注射薬が払出対象の注射薬であるか否か(つまりカセットCaの取出可否)について判定を行うことで、上記のような可能性の発生を低減できる。つまり、カセット棚110へのカセットCaの保管の自由度を保証できる。
【0222】
なお、
図26の(a)に示すように、カセットCaには、当該カセットCaに注射薬を充填するときに用いられる第2バーコードBC2が付されていても構わない。第2バーコードBC2は、カセットCaが注射薬の充填先として適切であるか否かを照合するためのものである。ユーザは、第2バーコードBC2を専用のバーコードリーダー(不図示)で読取ることで、注射薬の充填先として適切であるかについて確認を行う。
【0223】
また、カセット固有情報は第1バーコードBC1の形態でカセットCaに付与されている必要は無く、カセットCaに付与されたカセット固有情報を、カセット移送部140が読取れる形態で付与されていればよい。この場合、バーコードリーダー146に代わる、カセット固有情報の読取部材がカセット移送部140に設けられていればよい。
【0224】
また、
図26の(a)及び(b)に示すように、カセットCaは、カセットCaに着脱可能な分割部材SP(仕切り板)によって、複数の注射薬収容領域に分割されても構わない。この場合、分割された複数の注射薬収容領域のそれぞれに、互いに異なる種類の注射薬を収容できる。そのため、カセットCaの使用の効率化を図ることができる。
【0225】
分割部材SPには、第3バーコードBC3が付与されていても構わない。第3バーコードBC3は、第2バーコードBC2と同様の機能を有するものである。分割部材SPに第3バーコードBC3が付されることで、複数の注射薬収容領域のそれぞれに対する、注射薬の充填支援を行うことが可能となる。
【0226】
<カセットの保管位置の特定例>
次に、カセットCaの保管位置の特定例について説明する。
図28は、注射薬払出装置100の構成を示すブロック図である。
図29は、カセットCaの保管位置の特定処理の一例を示すフローチャートである。
【0227】
(注射薬払出装置100の構成)
図28に示すように、注射薬払出装置100は、カセットの保管位置を特定する処理を行う場合、保管位置判定部198、報知制御部199及びタッチパネル210を備える。
【0228】
また本例では、任意のカセットCaのカセット固有情報と当該カセットCaの保管位置を示す保管位置情報とが紐付けられて、記憶部180に記憶されている。特に本例では、カセット固有情報と保管位置情報との紐付けが予め行われているものとする。つまり、本例では、カセットCaの保管位置が予め設定されている。また、カセットCaに第1バーコードBC1が付与されており、カセット移送部140にはバーコードリーダー146が設けられている。
【0229】
タッチパネル210は、各種ユーザ入力を受付ける操作部と、各種情報を表示する表示部とを備える。タッチパネル210は、各種ユーザ入力の受付け、又は各種情報の表示のために、
図1に示す注射薬払出装置100に備えられていても構わない。
【0230】
保管位置判定部198は、保管位置情報とカセット固有情報とに基づき、複数のカセットCaのそれぞれが所定の保管位置に保管されているか否かを判定する。
【0231】
カセット移送部140は、保管位置判定部198が所定の保管位置に保管されていないと判定したカセットCaについては、当該カセットCaが保管されている保管位置から、当該カセットCaが本来位置すべき保管位置へと移送する。
【0232】
また、報知制御部199は、保管位置判定部198が所定の保管位置に保管されていないと判定したカセットCaについては、当該カセットCaが本来位置すべき保管位置に保管するよう、タッチパネル210としての報知部に報知させる。
【0233】
なお本例では、本来位置すべき保管位置へのカセットの移送と、本来位置すべき保管位置へカセットを保管する旨の報知との両方の機能を備えるものとして説明する。しかし、これに限らず、注射薬払出装置100は、いずれか一方の機能のみを有するものであっても構わない。
【0234】
保管位置判定部198は、移送制御部191により、カセット棚110に対してカセット移送部140のカセット取出機構を走査させることで、保管位置のそれぞれにおいて、第1バーコードBC1の読取りを行わせる。
【0235】
保管位置にカセットCaが存在する場合には、バーコードリーダー146は第1バーコードBC1を読取る。保管位置判定部198は、記憶部180を参照することで、読み取った第1バーコードBC1が示すカセット固有情報に紐付けられた保管位置情報が示す保管位置を特定する。保管位置判定部198は、特定した保管位置が、カセット固有情報を読取ったカセット取出機構の位置と一致するか否かの判定を行う。
【0236】
保管位置判定部198は、不一致であると判定した場合、カセットCaが予め設定された保管位置に保管されていないと判定する。この場合、保管位置判定部198は、記憶部180を参照することで、当該カセットCaのカセット固有情報に紐付けられた保管位置情報が示す保管位置を特定する。移送制御部191は、特定した保管位置に当該カセットCaを移動させる。一方、一致する場合には特に処理を行わない。
【0237】
また、保管位置判定部198は、任意の保管位置でカセット固有情報が読み取れなかった場合、当該保管位置にカセットCaが存在しないと判定する。保管位置判定部198は、記憶部180を参照することで、当該保管位置にカセットCaが保管されていたか否かを判定する。当該保管位置にカセットCaが保管されていたと判定した場合、保管位置判定部198は、他の保管位置に当該カセットCaが無いか否かを判定する。カセット棚110に当該カセットCaが無いと判定された場合、報知制御部199は、タッチパネル210を介して、当該保管位置に本来保管されるべきカセットCaを保管するよう報知する。
【0238】
なお、保管位置判定部198は、上記不一致であると判定した場合、このときに読取ったカセット固有情報と保管位置情報とを紐付けて、誤った保管位置にあるカセットCaを示す情報として、記憶部180に記憶しても構わない。この場合、カセットCaの入替え動作時に、移送制御部191は、カセット取出機構を全保管位置に対して走査させた後に、当該情報を参照することで、誤った保管位置にあるカセットCaを特定し、かつ取出して、正しい保管位置に戻すことができる。
【0239】
また、本処理は、任意のタイミングで行われればよい。但し、本処理は、ユーザによって設定されたカセットCaの保管位置に、適切にカセットCaが保管されているか否かを確認すると共に、本来の保管位置にカセットCaを保管させるというものである。その点を考慮すれば、本処理は、注射薬の払出処理を行わない時間帯(例:1日1回、夜間)に行われればよい。なお、カセットCaの保管位置の確認を行う旨のユーザ入力を受付けたときに、本処理が行われても構わない。
【0240】
(注射薬払出装置100の処理)
カセットCaの保管位置を特定する処理の一例について説明する。本処理を行うことになった場合、移送制御部191は、カセット取出機構をカセット棚110に対して走査させる。
図29に示すように、保管位置判定部198は、任意の保管位置におけるカセットCaのカセット固有情報を、バーコードリーダー146が読取ったか否かを判定する(SF1)。
【0241】
保管位置判定部198は、バーコードリーダー146がカセット固有情報を読取った場合(SF1でYES)、現在のカセット取出機構の位置が、読取ったカセット固有情報に紐付けられた保管位置情報が示す所定の保管位置であるか否かを判定する(SF2)。
【0242】
保管位置判定部198は、現在のカセット取出機構の位置が所定の保管位置であると判定した場合(SF2でYES)、当該カセットCaが本来位置すべき保管位置にあると判定する。この場合、保管位置判定部198は、当該保管位置に存在するカセットCaに対する移動処理は行わない。一方、現在のカセット取出機構の位置が所定の保管位置でないと判定した場合(SF2でNO)、当該カセットCaが本来位置すべき保管位置にないと判定する。この場合、移送制御部191は、カセット移送部140を制御することで、当該カセットCaのカセット固有情報に紐付けられた保管位置情報が示す保管位置に、当該カセットCaを移動させる(SF3)。
【0243】
SF1でカセット固有情報を読み取れなかった場合(SF1でNO)、保管位置判定部198は、カセット固有情報の読取りを実施した保管位置に、カセットCaが無いと判定する。この場合、保管位置判定部198は、当該保管位置にカセットCaが保管されていたか否かを判定する。保管位置判定部198は、カセットCaが保管されていたと判定した場合、カセット取出機構を走査させることで、当該保管位置を示す保管位置情報に紐付けられたカセット固有情報を有するカセットCaが、他の保管位置にあるか否かを判定する(SF4)。なお、カセット固有情報の読取りを実施した保管位置に、元々カセットCaが保管されていない場合(当該保管位置を示す保管位置情報にカセット固有情報が紐付けられていない場合)には、本処理を終了する。
【0244】
カセット固有情報の読取りを実施した保管位置に保管されるべきカセットCaが他の保管位置にあった場合(SF4でYES)、SF3の処理が行われる。一方、当該カセットCaが他の保管位置にもなかった場合(SF4でNO)、保管位置判定部198は、カセットCaがカセット棚110から抜取られた状態であると判定する。この場合、報知制御部199は、当該カセットCaを本来位置すべき保管位置に保管する(返却する)よう、タッチパネル210を介して報知する(SF5)。
【0245】
なお、SF3において、保管位置判定部198は、カセットCa(第1カセットCa)の移動先の保管位置(つまり本来位置すべき保管位置)に別のカセットCa(第2カセットCa)が存在するか否かの判定を行っても構わない。保管位置判定部198は、第1カセットCaの移動先の保管位置に第2カセットCaが保管されていると判定した場合には、例えば以下の処理を行う。
【0246】
移送制御部191は、第2カセットCaを、カセット固有情報と保管位置情報との紐付けが行われていないカセット棚110内の保管位置(元々カセットCaが入っていない保管位置)(退避位置)へと一旦退避させる。その後、移送制御部191は、第1カセットCaを本来位置すべき保管位置へと移動させる。
【0247】
また、第1カセットCaの移動先の保管位置に第2カセットCaが保管されているか否かの判定は、第2カセットCaのカセット固有情報を読取ることができたか否かによって行われる。つまり、第2カセットCaを退避させる場合、退避前に第2カセットCaのカセット固有情報が読取られている。そのため、移送制御部191は、当該カセット固有情報を用いて、第2カセットCaを本来位置すべき保管位置に移動させても構わない。
【0248】
<支持機構の動作例>
次に、カセット移送部140が備える支持機構147の動作例について説明する。
図27の(a)及び(b)に示すように、支持機構147は、カセット棚110と対向する側に設けられており、カセットCaのカセット棚110からの取出時、又はカセット棚110への保管時に、カセットCaを支持(保持)する。また、支持機構147は、カセットCaの大きさ(高さ)に応じて昇降する。また、支持機構147にはローラが設けられている。これにより、支持機構147におけるカセットCaの移動を滑らかに行うことが可能となっている。
【0249】
カセット棚110には、複数種類のカセットCaが保管されても構わない。この場合、例えば、カセット棚110には、互いに異なる高さのカセットCa(例:互いに高さの異なる2種類のカセットCa)が保管される。支持機構147が昇降しない場合、高さが比較的高いカセットCaについては、カセットCaの取出時にカセット取出機構と衝突してしまい、カセット移送部140によりカセットCaを保持できない。
【0250】
支持機構147が昇降する機能を備えることで、互いに高さの異なる複数種類のカセットCaをカセット移送部140で保持して、カセット保持部130に移送できる。つまり、注射薬払出装置100において、互いに高さの異なる複数種類のカセットCaを使用できる。
【0251】
移送制御部191は、カセットCaの種類に応じて支持機構147を昇降させる。例えば、カセット固有情報に紐付けて支持機構147の昇降量を示す昇降量情報が記憶部180に記憶されている。なお、カセット固有情報に、カセットCaの高さを示すカセット高さ情報が紐付けられている場合、カセット高さ情報に昇降量情報が紐付けられていても構わない。
【0252】
移送制御部191は、取出すカセットCaに付されたカセット固有情報がバーコードリーダー146によって読出されると、記憶部180を参照することで、読出されたカセット固有情報に紐付けられた昇降量情報を特定する。移送制御部191は、特定した昇降量情報が示す昇降量に応じて、支持機構147を昇降させる。
【0253】
〔注射薬の撮影から払出までの処理〕
<吸着位置の決定例>
注射薬払出装置100では、位置特定用カメラ122によってカセットCaから取出す注射薬を特定すると共に、特定した注射薬を吸着機構121aによって吸着する。吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122が撮影した画像を解析することで吸着位置を決定し、搬送制御部193は、決定された吸着位置を吸着するように吸着機構121aを制御する。
【0254】
ここで、吸着位置決定部194は、注射薬の重心位置を吸着位置として決定しても構わない。この場合、薬品マスタには、注射薬識別情報に紐付けて、注射薬の重心位置及び全長を示す各情報が登録されている。注射薬の重心位置は、例えば、注射薬の底部からの距離として登録されている。
【0255】
吸着位置決定部194は、上記画像を解析することで、画像における注射薬の底部を特定する。吸着位置決定部194は、処方データに含まれる注射薬識別情報に紐付けられた注射薬の重心位置を示す情報を用いて、画像における注射薬の吸着位置を特定する。例えば、吸着位置決定部194は、薬品マスタに記憶された底部からの距離を、画像における距離に変換した後、画像において、変換した距離だけ底部から離れた注射薬上の位置を吸着位置として特定する。つまり、吸着位置決定部194は、注射薬の重心位置、又はその近傍を吸着位置として決定する。なお、この吸着位置の決定処理では、注射薬の向きを特定する処理までは行わない。
【0256】
<センサによる注射薬の載置位置の特定例>
次に、位置変更部126の第1搭載部126a及び第2搭載部126bにおける注射薬の載置位置の特定例について説明する。
【0257】
搬送制御部193は、画像解析、及び予め登録されている注射薬の重心位置又は全長を示す情報に基づき、画像において、注射薬の底部及び吸着位置を特定する。また、搬送制御部193は、特定した底部の位置及び吸着位置を考慮して、吸着した注射薬を第1搭載部126a又は第2搭載部126bに載置する。搬送制御部193は、例えば、注射薬の底部が第1搭載部126a又は第2搭載部126bの端部に近接するように、吸着した注射薬を載置する。
【0258】
ここで、搬送制御部193は、画像解析の結果、注射薬の頭部を底部として誤認識したとする。搬送制御部193は、底部の位置を考慮して注射薬を第1搭載部126a又は第2搭載部126bに載置するため、底部の誤認識により、実際に載置されるべき位置からずれた位置に注射薬を載置してしまう可能性がある。場合によっては、第1搭載部126a又は第2搭載部126bからはみ出した位置に、注射薬を載置してしまう可能性がある。注射薬が例えばガラス製のバイアルである場合には、注射薬が第1搭載部126a又は第2搭載部126bに衝突し、その結果割れてしまう可能性がある。
【0259】
本例では、
図30の(a)及び(b)に示すように、注射薬払出装置100は、第1搭載部126a又は第2搭載部126bの端部E1又はE2に衝突し得る注射薬を検知するためのセンサ171a及び171bと反射板172a及び172bとを備えている。
【0260】
センサ171a及び171bはそれぞれ、注射薬を検知するための光を出射すると共に、反射板172a及び172bのそれぞれで反射した当該光を受ける機構である。
【0261】
センサ171a及び反射板172aは、
図30の(b)で示す点線L1上を、センサ171aから出射された光、及び反射板172aで反射した光が通るように配置されている。点線L1は、第1搭載部126a及び第2搭載部126bの外側で、かつ、第1搭載部126a又は第2搭載部126bの端部E1付近を通る直線を示すものである。同様に、センサ171b及び反射板172bは、
図30の(b)で示す点線L2上を、センサ171bから出射された光、及び反射板172bで反射した光が通るように配置されている。点線L2は、第1搭載部126a及び第2搭載部126bの外側で、かつ、第1搭載部126a又は第2搭載部126bの端部E2付近を通る直線を示すものである。
【0262】
吸着機構121aに吸着した注射薬が点線L1又はL2上を通ると、当該注射薬で光の進行が遮られるため、センサ171a又は171bは、自機が出射した光を受けることができない。この場合、搬送制御部193は、吸着機構121aを制御することで、センサ171a及び171bが光を受けることができるようになるまで、端部E1及びE2を結ぶ直線方向(Y軸方向)に、注射薬の位置を変更する。
【0263】
具体的には、搬送制御部193は、センサ171a及び171bが光を受けている状態であるか否かを判定する。搬送制御部193は、センサ171a及び171bが光を受けている状態において、吸着機構121aが吸着した注射薬を第1搭載部126a又は第2搭載部126bに載置する。一方、搬送制御部193は、センサ171a又は171bが光を受けていない状態であると判定した場合には、上述のようにY軸方向に注射薬の位置を変更する。
【0264】
このように、センサ171a及び171b、並びに、反射板172a及び172bを配置することで、第1搭載部126a又は第2搭載部126bの端部E1又はE2に衝突し得る注射薬を検知できる。また、搬送制御部193は、センサ171a及び171bの検知結果に基づき、吸着機構121aのY軸方向の位置を制御する。これにより、第1搭載部126a又は第2搭載部126bの端部E1又はE2に衝突させることなく、注射薬を第1搭載部126a又は第2搭載部126bに載置できる。
【0265】
つまり、吸着位置決定部194が注射薬の向き(頭方向)を誤認識した場合であっても(換言すれば、注射薬の向きが+Y軸方向及び-Y軸方向のいずれであっても)、端部E1又はE2への注射薬の衝突を回避できる。そのため、衝突による払出動作の停止を回避できるので、間欠的に注射薬を払出すことができる。
【0266】
なお、点線L1及びL2上に存在する注射薬を検知できれば、上記の構成に限られない。例えば、センサ171a又は171bの位置に発光素子、反射板172a及び172bの位置に受光素子を載置しても構わない。つまり、反射板172a及び172bを設けずに、発光素子及び受光素子からなるセンサを用いても構わない。また、反射板172a及び反射板172bのX軸方向の位置を略一致させても構わない。
【0267】
<吸着機構の動作例>
次に、吸着機構121aの動作例について説明する。まず、吸着機構121aの移動速度の調整について説明する。
【0268】
注射薬払出装置100では、例えば、カセット移送部140によるカセットCaの移送、カセット保持部130の移動の速度をできるだけ高めている。また、例えば、薬剤搬送部121の吸着機構121a及び移動機構121bの移動、並びに、薬剤移動部153の吸着機構153a及び移動機構153bの移動の各速度をできるだけ高めている。これにより、注射薬の払出速度を高めている。
【0269】
しかし、注射薬の種類に関わらず一律の速度でカセットCa又は注射薬を移送又は移動させた場合、注射薬を適切に運ぶことができない可能性がある。例えば、注射薬の長さが長いほど、また重量が軽いほど、吸着機構121aを位置変更部126上で停止させたときに注射薬に対して慣性が働きやすい。つまり、停止したときの注射薬の揺れが大きくなる。当該注射薬に対して慣性が大きく働いた場合、注射薬が吸着機構121aから落下してしまう可能性がある。
【0270】
そこで本例では、搬送制御部193は、注射薬の種類に応じて吸着機構121aの移動速度を調整する。具体的には、注射薬の種類(例:注射薬の長さ、径、重量、又は素材(例:ガラス製、プラスチック製))に応じて、吸着機構121aのX軸方向、Y軸方向及び/又はZ軸方向の移動速度を設定しておく。つまり、記憶部180には、上記注射薬の種類に関する種類情報に紐付けて、吸着機構121aの移動速度を示す移動速度情報が記憶されている。
図31は、種類情報に紐付けられた移動速度情報の一例を示す表である。
図31の例では、慣性が働きやすいX軸方向の移動速度が、注射薬の種類に応じて異なるように設定されている。
【0271】
搬送制御部193は、例えば、記憶部180を参照することで、処方データに含まれる注射薬識別情報に紐付けられた種類情報を読出す。注射薬の長さ、重量及び素材等を示す種類情報は、注射薬識別情報に紐付けて薬品マスタに登録されていても構わない。搬送制御部193は、読出した種類情報に紐付けられた移動速度情報が示す移動速度で、カセット保持部130のカセットCaで吸着した注射薬(つまり、当該注射薬を吸着した吸着機構121a)を位置変更部126まで移動させる。
【0272】
これにより、例えば移動中又は停止時の注射薬に働く慣性を小さくすることができる。そのため、注射薬の安定した移動を実現できる。
【0273】
なお、吸着機構153aの移動速度についても同様に制御できる。但し、吸着機構153aについては、主として、位置変更部126から搬送トレイ151aへの移動において安定した移動が要求される。そのため、特にY軸方向の移動速度が、注射薬の種類に応じて設定されている。
【0274】
また、カセット移送部140によりカセットCaがZ軸方向に移動しているときに急停止すると、重量が軽い注射薬ほど、慣性により跳上がりやすい。また、X軸方向の移動においても急停止すると、重量が軽い注射薬ほど、また断面形状が略円形状であるほど、カセットCa内において注射薬は転がりやすい。そのため、注射薬の素材がガラス製である場合には、カセットCa又は他の注射薬と衝突した結果、割れてしまう可能性がある。
【0275】
カセット移送部140によるカセットCaの移送についても、吸着機構121aと同様、注射薬の種類に応じて移動速度(特にX軸方向及び/又はZ軸方向の移動速度)を制御することで、例えば注射薬が割れてしまうといった事態の発生を回避できる。
【0276】
次に、吸着機構121aのZ軸方向の移動量の調整について説明する。
図32の(a)は、移動機構121bの構成例を示す図であり、(b)及び(c)は、吸着機構121aの動作例を示す図である。
【0277】
図32の(a)に示すように、本例の移動機構121bは、フォトセンサ121d及びプレート121eを備えている。フォトセンサ121d及びプレート121eは、所定の径(例:処方データに含まれる注射薬識別情報が示す注射薬の径)よりも大きい径を有する物体を検知するリミットセンサとして機能する。つまり、フォトセンサ121d及びプレート121eは、所定の注射薬以外の物体を検知するためのリミットセンサとして機能する。なお、ボールねじ121fによって、吸着機構121aはZ軸方向に昇降する。
【0278】
フォトセンサ121dは、例えば溝型フォトセンサである。フォトセンサ121dの溝部に設けられた発光素子及び受光素子の間をプレート121eが通過したときに、発光素子からの光を受光素子で受けることができなくなる。このとき、搬送制御部193は、吸着機構121aが所定の注射薬以外の物体を検知したと判定し、その移動量を調整する。
【0279】
ここで、薬品マスタには、各注射薬識別情報に紐付けて注射薬の直径を示す径情報が登録されている。また、記憶部180には、径情報に紐付けて、吸着機構121aのZ軸方向の移動量を示す移動量情報が記憶されている。
【0280】
吸着機構121aの初期位置(吸着機構121aが処理位置132から最も離れているときの位置)と、処理位置132との間の距離(Z軸方向の距離)は不変である。そのため、注射薬の直径の大きさに応じて、処理位置132へ向かわせるときの吸着機構121aの第1移動量を、処理位置132上の注射薬に衝突しないように予め設定しておくことができる。この場合、注射薬毎に第1移動量を計算することなく、注射薬を吸着できる適切な位置まで吸着機構121aを移動させることが可能となる。また、その適切な位置まで高速に、吸着機構121aを移動させることが可能となる。
【0281】
また、注射薬払出装置100で使用されるカセットCaは、予め決められている。つまり、カセットCaの側壁の高さは予め決められている。そのため、処理位置132から位置変更部126へ注射薬を搬送するときの吸着機構121aの高さを、搬送中の注射薬がカセットCaの側壁に衝突しないように予め設定しておくことができる。従って、注射薬を吸着した吸着機構121aを引き上げるときの吸着機構121aの第2移動量を、注射薬の直径の大きさに応じて予め設定しておくことができる。この場合、注射薬毎に第2移動量を計算することなく、カセットCaの側壁に衝突せずに、かつ効率良く注射薬を搬送できる位置まで吸着機構121aを移動させることが可能となる。また、その位置まで高速に、吸着機構121aを移動させることが可能となる。
【0282】
制御部190は、カセットCaがカセット移送部140により取出される時点で、カセットCaに含まれる注射薬の種類を特定している。そのため、搬送制御部193は、カセットCa毎に移動量情報を特定している。搬送制御部193は、例えば、カセットCaから最初の薬剤を取出すときに薬品マスタを参照することで、処方データに含まれる注射薬識別情報に紐付けられた径情報を特定する。搬送制御部193は、記憶部180を参照することで、特定した径情報に紐付けられた移動量情報(第1移動量又は第2移動量を示す情報)を特定する。なお、特定した移動量情報は、カセット固有情報と紐付けて記憶部180に記憶しておいても構わない。
【0283】
搬送制御部193は、カセットCa毎に、特定した第1移動量の分、吸着機構121aを処理位置132側へと移動させる。また、搬送制御部193は、カセットCa毎に、特定した第2移動量の分、吸着機構121aを処理位置132から初期位置側へと移動させる。
【0284】
なお、注射薬識別情報に直接、移動量情報が紐付けられていても構わない。この場合、搬送制御部193は、記憶部180を参照することで、処方データに含まれる注射薬識別情報に紐付けられた移動量情報を特定する。
【0285】
図32の(b)に示すように、処理位置132に載置されたカセットCa内の注射薬の径がφaである場合、搬送制御部193は、径がφaである場合の第1移動量に従って、吸着位置Ap(停止位置)まで吸着機構121aを移動させる。その後、搬送制御部193は、径がφaである場合の第2移動量に従って、吸着機構121aを距離Da分引き上げる。
【0286】
ここで、
図32の(c)に示すように、カセットCaに収容されていると想定される注射薬(径:φa)とは異なる注射薬(径:φb>φa)が、当該カセットCaに含まれていたとする。この場合に、径φbの注射薬が搬送対象となった場合、搬送制御部193は、径φaの注射薬に基づく第1移動量で吸着機構121aを移動させるため、衝突位置Cpで径φbの注射薬に衝突してしまう。
【0287】
この反動を受けて、吸着機構121aは+Z軸方向に移動(上昇)することで、プレート121eがフォトセンサ121dの溝部に入り込む。これにより、搬送制御部193は、吸着機構121aが所定の径(φa)よりも大きい径(φb)を有する注射薬が、搬送対象であると判定する。
【0288】
この場合、搬送制御部193は、径φaの第2移動量の代わりに、最大径(径:φmax)を有する注射薬を示す注射薬識別情報に紐付けられた移動量情報が示す第2移動量に従って、距離Dmax分、注射薬を引き上げる。なお、距離Dmaxに対応する第2移動量は、注射薬払出装置100で取扱われると想定される注射薬のうち、最大径を有する注射薬を、カセットCaの側壁に衝突させることなく、処理位置132から位置変更部126へ搬送できる程度に設定されていればよい。
【0289】
吸着対象となる注射薬が径φaよりも大きいにも関わらず、径φaの第2移動量に従って注射薬を引き上げた場合、引き上げ量が足りず、注射薬がカセットCaの側壁に衝突してしまう可能性がある。しかし、搬送制御部193は、径φaの注射薬を収容するカセットCaにおいて、径φaよりも大きい径φbの注射薬が取出対象となった場合に、最大径の注射薬に対応する第2移動量に基づいて注射薬を引き上げるため、カセットCaの側壁との衝突を回避できる。
【0290】
なお、取出対象の注射薬が想定している注射薬の径よりも大きい場合、最大径の注射薬に対応する第2移動量を用いているが、これに限らず、例えば取出対象の注射薬に対応する第2移動量を用いて当該注射薬を引き上げても構わない。
【0291】
次に、吸着機構121a及び153aによる注射薬のリリース完了を特定するときの処理について説明する。薬剤搬送部121及び薬剤移動部153は、注射薬を吸着するための真空源(不図示)を有する。搬送制御部193は、注射薬を位置変更部126上又は搬送トレイ151a上でリリースする場合、真空源をオフにする。
【0292】
搬送制御部193は、注射薬のリリースのために真空源をオフにした後、再度オンにしても構わない。搬送制御部193は、真空源をオンにしたときに、真空源と吸着パッド121g(
図32の(a)参照)とを結ぶ空気管内の負荷(例:空気管内の圧力、又は空気管を流れる空気量)が変化するか否かを判定する。なお、薬剤搬送部121及び薬剤移動部153の吸着に関する構造は同一である。
【0293】
負荷が変化しなかった場合、搬送制御部193は、吸着パッド121gにおいて何も吸着していないと判定する。つまり、この場合、搬送制御部193は、吸着機構121a及び153aが注射薬を適切にリリースできていると判定する。一方、負荷が変化した場合、搬送制御部193は、吸着パッド121gに何かが吸着した状態であると判定する。つまり、この場合、搬送制御部193は、吸着機構121a及び153aが注射薬を適切にリリースできていないと判定する。
【0294】
このように、注射薬のリリース時に真空源のオン及びオフを制御することで、吸着機構121a及び153aが注射薬を適切にリリースできているか否かを確認できる。
【0295】
<画像処理のタイミング調整例>
次に、期限読み取り用カメラ125による画像処理のタイミング調整例について説明する。
図33の(a)及び(b)は、期限読み取り用カメラ125による画像処理のタイミング調整の一例について説明するための図である。
【0296】
薬剤搬送部121によって第1搭載部126aに注射薬が載置された場合、薬剤回転部127は注射薬を回転させる。この回転により、注射薬に付されたバーコードがバーコードリーダー123に対向した時点で、バーコードリーダー123が当該バーコードを読取る。これにより、第1判別処理部195による注射薬の種類の判別を行うことができる。
【0297】
バーコードは、注射薬の種類毎に、複数の線のそれぞれの太さ、及び線同士の間隔を異ならせて表現されたものである。そのため、第1判別処理部195は、バーコードリーダー123が読取ったバーコードを解析することで、バーコードに示される数字又は英字の並びを注射薬識別情報として認識できる。つまり、第1判別処理部195は、バーコードに示される数字又は英字の並びを認識できるため、当該並びと注射薬の向き(注射薬の載置方向)とを紐付けておくことで、注射薬の頭部又は底部がいずれの方向を向いているかについても認識できる。
【0298】
また、第2判別処理部196は、期限読み取り用カメラ125が撮影した画像を解析することで、注射薬に付された有効期限を認識する。
【0299】
ここで、バーコードは、バーコードリーダー123により瞬時に読取られる。そのため、バーコード読取時には、薬剤回転部127は、ある程度高速で注射薬を回転させることが可能である。一方、有効期限は、期限読み取り用カメラ125が撮影することで読取られる。そのため、有効期限読取時には、薬剤回転部127は、回転速度をバーコード読取時よりも遅くする必要がある。
【0300】
そのため、バーコードリーダー123によるバーコードの読取後、薬剤回転部127は回転速度を下げた後、期限読み取り用カメラ125による注射薬の撮影を開始する。期限読み取り用カメラ125は、注射薬を約1周させる間に複数回(例:20回程度)の撮影を行う。第2判別処理部196は、複数回に亘り撮影した画像の全てを解析することで、有効期限を認識する。この場合、有効期限が含まれていない画像も解析対象となるため、当該画像の解析の分、無駄な処理が発生することになる。
【0301】
そこで本例では、第2判別処理部196は、注射薬に付されたバーコードの位置及び注射薬の向きに基づき、注射薬に付された有効期限を認識するための処理を行う認識領域(有効期限記載領域)を決定する。換言すれば、第2判別処理部196は、注射薬に付されたバーコードの位置及び注射薬の向きに基づき、期限読み取り用カメラ125が有効期限を読取るための撮影を行う期限撮影領域Phaを決定する。
【0302】
ここで、薬品マスタには、注射薬の向きとバーコードの向き(バーコードに付された英数字の並び順)とが紐付けられて、注射薬識別情報毎に登録されている。また、薬品マスタには、バーコードが付された位置から有効期限が付された位置までの、注射薬の周方向上の第1距離を示す第1距離情報が、注射薬識別情報毎に登録されている。
【0303】
例えば、バーコードリーダー123が注射薬に付されたバーコードを読取ると、第2判別処理部196は、その時点で、薬剤回転部127の回転を一旦停止させる。その後、第2判別処理部196は、薬品マスタに登録された当該注射薬の向きを示す情報及び第1距離情報に基づき期限撮影領域Phaを決定する。
【0304】
具体的には、第2判別処理部196は、読取ったバーコードと薬品マスタと照合することで、注射薬の向きを特定する。また、第2判別処理部196は、薬品マスタの第1距離情報を参照することで、注射薬の向きに応じた期限撮影領域Phaを決定する。
【0305】
例えば、
図33の(a)及び(b)に示すように注射薬の回転方向が矢印方向である場合に、第2判別処理部196が、
図33の(a)に示すように注射薬の向きを特定したとする。この場合、第2判別処理部196は、第1距離情報に基づき、バーコードが付された位置近傍から有効期限が付された位置近傍までの領域を、期限撮影領域Phaとして決定する。より具体的には、
図33の(a)に示すように、第2判別処理部196は、撮影開始位置Pha1(読取開始位置)及び撮影終了位置Pha2(読取終了位置)を決定する。
【0306】
一方、第2判別処理部196が、
図33の(b)に示すように注射薬の向きを特定した場合も、
図33の(a)と同様に、期限撮影領域Phaとして決定する。但し、
図33の(b)に示すように、第2判別処理部196は、撮影開始位置Pha1及び撮影終了位置Pha2を決定する。
【0307】
期限撮影領域Phaの決定後、薬剤位置制御部197は、薬剤回転部127を、注射薬を撮影する場合の回転速度で回転させる。注射薬が回転した状態において、期限読み取り用カメラ125は、自機が撮影開始位置Pha1と対向したときに撮影を開始し、自機が撮影終了位置Pha2と対向したときに撮影を終了する。
図33の(a)及び(b)に示すように、期限読み取り用カメラ125は、実線の矢印で示す期限撮影領域Phaについては撮影し、点線の矢印で示す領域については撮影を行わない。
【0308】
つまり、期限読み取り用カメラ125は、決定された期限撮影領域Pha内のみ(換言すれば、注射薬の周方向全体ではなく、その一部の領域のみ)、有効期限を読取るために撮影する。このように、有効期限が付されていないと想定される領域(期限撮影領域Pha以外の領域)を撮影対象外とすることで、撮影枚数を低減できる。そのため、有効期限の認識のための画像処理を効率的に行うことが可能となる。
【0309】
なお、期限読み取り用カメラ125が撮影開始位置Pha1と対向するまでは、薬剤回転部127の回転速度をバーコード読取時の回転速度としても構わない。この場合、有効期限の認識処理をより効率的に(高速に)行うことが可能となる。
【0310】
また、有効期限が含まれるように期限撮影領域Phaが設定されていればよい。そのため、撮影開始位置Pha1をバーコードが付された位置近傍に設定する必要は無い。例えば、第2判別処理部196は、第1距離情報により有効期限が付された位置を特定した後、当該位置から所定距離離れた位置を撮影開始位置Pha1と決定しても構わない。但し、撮影開始位置Pha1は、期限撮影領域Phaに有効期限が含まれるように決定される必要はある。
【0311】
また、第1距離情報が登録されていない場合には、期限読み取り用カメラ125は、その注射薬の全周に亘り撮影を行う。第2判別処理部196は、撮影された画像を解析することで、当該注射薬に付された有効期限を読取る。このとき、第2判別処理部196は、当該注射薬に付されたバーコードの位置も特定しているため、撮影された画像を解析することで、当該バーコードの位置と有効期限の位置とに基づき、第1距離情報(つまり期限撮影領域Phaの位置)を決定する。第2判別処理部196は、決定した第1距離情報を、当該注射薬を示す注射薬識別情報に紐付けて薬品マスタに登録する。これにより、次回の有効期限の読取時から、登録された第1距離情報を用いることができる。
【0312】
また、第1距離ではなく、期限撮影領域Pha(撮影開始位置Pha1及び撮影終了位置Pha2を含む)を示す撮影領域情報(有効期限記載領域に関する情報)が、薬品マスタに登録されていても構わない。
【0313】
<払出不可の注射薬があった場合の処理例>
次に、払出不可の注射薬があった場合の処理例について説明する。
図34の(a)~(f)は、払出不可の注射薬があった場合の処理の一例を説明するための図である。第1判別処理部195又は第2判別処理部196により払出不可の注射薬と判定された場合、その時点で注射薬の払出しが停止してしまう可能性がある。
【0314】
注射薬払出装置100では、注射薬の種類及び有効期限を認識するために、位置変更部126の薬剤搬送部121側(処理位置132側)において、注射薬に付されたバーコードを読取ると共に、注射薬に付された有効期限を撮影する。第1判別処理部195は、読取られたバーコードに基づく注射薬の種類の認識処理を行うと共に、第2判別処理部196は、撮像された画像を解析することで、有効期限の認識処理を行う。これらの処理(特に有効期限の認識処理)には、所定の時間を要する。
【0315】
そのため、薬剤位置制御部197は、薬剤搬送部121側でバーコードの読取り及び有効期限の撮影が完了すると、注射薬の種類及び有効期限の認識処理の結果を待たずに、位置変更部126を回転させる。その結果、注射薬は、薬剤移動部153側(非払出薬保管部152側)に位置する。これにより、薬剤搬送部121側に、注射薬の種類及び有効期限の認識処理の対象となる次の注射薬を載置できる。このようにして、効率的に注射薬の払出を行う(つまり、注射薬の払出速度を上げる)ことが可能となる。なお、注射薬の種類及び有効期限の認識処理の結果は、当該注射薬が薬剤移動部153側に位置している間に行われる。
【0316】
つまり、効率的に順次注射薬を払出していくために、注射薬は、以下の箇所で払出しを待機している。
・薬剤搬送部121の吸着機構121a(位置P1)。つまり、吸着機構121aが注射薬を吸着した状態。
・位置変更部126の薬剤搬送部121側(位置P2)。つまり、注射薬に付されたバーコードを読取り、かつ注射薬に付された有効期限を撮影する位置に、注射薬が有る状態。・位置変更部126の薬剤移動部153側(位置P3)。つまり、薬剤移動部153が搬送トレイ151a又は非払出薬保管部152に注射薬を移動する前の状態。
【0317】
ここで、注射薬払出装置100は、1患者に対する払出対象の注射薬を同一の搬送トレイ151aに収容するものとする。換言すれば、任意の払出対象の注射薬と、その次の払出対象の注射薬とが、同一患者に対する払出対象の注射薬でない場合、注射薬払出装置100は、これらの注射薬を互いに異なる搬送トレイ151aに収容するものとする。
【0318】
この場合、第1判別処理部195又は第2判別処理部196により注射薬が払出不可と判定され、かつ当該注射薬とその次の払出対象の注射薬とが同一患者への投与に係る処方データに示される注射薬ではないと判定されると、当該注射薬を払出すことができない。具体的には、この場合、払出不可と判定された注射薬と次の払出対象の注射薬とは、互いに異なる搬送トレイ151aに収容される。そのため、払出不可と判定された注射薬と同種の注射薬が払出されない限り、次の払出対象の注射薬を払出すことはできない。つまり、この場合、前の注射薬を追い越して払出しを行うことはできない。結果として、注射薬の払出しが停止してしまう。
【0319】
そのため、払出不可と判定された注射薬を位置P3から非払出薬保管部152へ移動させたとしても、その次の払出対象の注射薬は位置P2又はP3、更にその次の払出対象の注射薬は位置P1又はP2で滞留してしまうことになる。
【0320】
特に、注射薬払出システム1は、注射薬払出装置100の他、種々の装置と連動して動作する。そのため、注射薬払出装置100による停止は、注射薬払出システム1の処理に影響を与える。
【0321】
なお、払出不可と判定された注射薬と次の払出対象の注射薬とが、同一患者への投与に係る処方データに示される注射薬である場合には、上述の通り、一般に同一の搬送トレイ151aに収容される。そのため、払出不可と判定された注射薬と同種の払出を待たずに、次の払出対象の注射薬を払出しても構わない。
【0322】
そこで本例では、第1判別処理部195及び第2判別処理部196は、注射薬を払出不可と判定した場合、払出可能と判定されるまで、当該注射薬と同種の薬剤を、払出可否の判定対象とする払出可否判定部として機能する。また、搬送制御部193は、注射薬が払出不可と判定された場合、当該注射薬の次に払出される注射薬の払出しを待機する払出制御部として機能する。
【0323】
特に、上述したように、第1判別処理部195及び第2判別処理部196が、下記(1)及び(2)の判定を行った場合、搬送制御部193は、第2注射薬を待機させる。
(1)注射薬を払出不可と判定した場合。
(2)当該注射薬(第1注射薬)と、当該注射薬の次に払出される注射薬(第2注射薬、次薬剤)とが、互いに異なる患者への投与に係る処方データに示される薬剤であると判定した場合。
【0324】
上述の処理を実現するために、注射薬払出装置100には、第2注射薬を仮置きしておく仮置部が備えられている。仮置部は、例えば、非払出薬保管部152の一部の領域に設けられても構わないし、非払出薬保管部152とは別に、その近傍に設けられても構わない。
【0325】
図34を用いて、注射薬MA、MB及びMCが払出される場合の処理例について説明する。本例では、
図34の(a)において、第1判別処理部195及び/又は第2判別処理部196が注射薬MAを払出不可の注射薬と判定しているものとする。具体的には、注射薬MAについて、第1判別処理部195が、読取ったバーコードが示す注射薬識別情報と、処方データが示す注射薬識別情報とが不一致であると判定しているか、又は、第2判別処理部196がその有効期限が切れていると判定している。
【0326】
この場合、
図34の(b)に示すように、薬剤移動部153は、注射薬MAを非払出薬保管部152へと移動させた後、位置変更部126が回転することで、注射薬MBを位置P2から位置P3へと移動させる。この状態において、薬剤搬送部121は、注射薬MCを位置変更部126に載置することで、位置P1から位置P2へと移動させる。その後、薬剤移動部153が注射薬MBを仮置部へと移動させた後、位置変更部126が回転することで、注射薬MCを位置P2から位置P3へと移動させる。
【0327】
次に、
図34の(c)に示すように、薬剤搬送部121は、払出不可と判定された注射薬MAと同種の注射薬MA(ここでは注射薬MA’とする)を処理位置132のカセットCa内から取出し、位置変更部126に載置する。つまり、注射薬MA’を位置P1から位置P2へと移動させる。その後、注射薬MA’に対して、第1判別処理部195及び第2判別処理部196による払出可否の判定が行われる。
【0328】
次に、
図34の(d)に示すように、位置変更部126が回転することで、注射薬MA’を位置P2から位置P3へ(注射薬MCを位置P3から位置P2へ)と移動させる。注射薬MA’が払出不可と判定された場合、薬剤移動部153は、注射薬MA’を非払出薬保管部152へと移動させた後、
図34の(c)に示す処理に戻る。つまり、注射薬MAが搬送トレイ151aに払出されるまで、次に払出される注射薬MB及びMCが払出しを待機した状態となる。一方、注射薬MA’が払出可と判定された場合、薬剤移動部153は、注射薬MA’を搬送トレイ151aへと移動させる。
【0329】
注射薬MA’が払出可と判定された場合、注射薬MA’の払出し後、
図34の(e)に示すように、薬剤移動部153は、仮置部にて注射薬MAの払出しを待機していた注射薬MBを位置変更部126(具体的には位置P3)へと戻す。その後、位置変更部126が回転することで、注射薬MBを位置P3から位置P2へ(注射薬MCを位置P2から位置P3へ)と移動させる。これにより、注射薬MAの次の払出対象である注射薬MBに対して、第1判別処理部195及び第2判別処理部196による払出可否の判定を行うことができる。
【0330】
位置P2で注射薬MBに付されたバーコード及び有効期限の読取りが完了すると、位置変更部126が回転することで、注射薬MBを位置P2から位置P3へ(注射薬MCを位置P3から位置P2へ)と移動させる。注射薬MBが払出可と判定された場合、薬剤移動部153は、注射薬MBを搬送トレイ151aへと移動させる。その後、
図34の(f)に示すように、注射薬MCに対して第1判別処理部195及び第2判別処理部196による払出可否が行われ、払出可と判定された場合には、薬剤移動部153は注射薬MCを搬送トレイ151aへと移動させる。
【0331】
一方、
図34の(e)において、注射薬MBが払出不可と判定された場合には、薬剤移動部153は、注射薬MBを非払出薬保管部152へと移動させた後、位置変更部126が回転することで、注射薬MCを位置P2から位置P3へと移動させる。その後、薬剤搬送部121は、払出不可と判定された注射薬MBと同種の注射薬MB(ここでは注射薬MB’とする)を処理位置132のカセットCa内から取出し、位置変更部126(具体的には位置P2)に載置する。そして、注射薬MB’に対して第1判別処理部195及び第2判別処理部196による払出可否が行われる。注射薬MBが払出されるまで、この処理が繰り返される。つまり、注射薬MBが搬送トレイ151aに払出されるまで、次に払出される注射薬MCが払出しを待機した状態となる。
【0332】
また、
図34の(f)において、注射薬MCが払出不可と判定された場合には、薬剤移動部153は、注射薬MCを非払出薬保管部152へと移動させる。その後、薬剤搬送部121は、払出不可と判定された注射薬MCと同種の注射薬MC(ここでは注射薬MC’とする)を処理位置132のカセットCa内から取出し、位置変更部126(具体的には位置P2)に載置する。そして、注射薬MC’に対して第1判別処理部195及び第2判別処理部196による払出可否が行われる。注射薬MCが払出されるまで、この処理が繰り返される。
【0333】
注射薬MA、MB及びMCまでの払出処理が完了すると、注射薬MCの次の注射薬が処方データに従って位置変更部126へと搬送される。そして、注射薬が払出不可と判定された場合には上述した処理が行われる。
【0334】
このように、注射薬が払出不可と判定された場合、次の払出対象の注射薬を仮置部(退避位置)へ一時的に退避させることで、払出不可と判定された注射薬と同種の注射薬の再払出しが自動で実行される。そのため、注射薬の払出しを継続的に行うことが可能となる。
【0335】
なお、
図34の例では、注射薬MA、MB及びMCがそれぞれ別患者への投与に係る処方データに示される注射薬(注射薬MA、MB及びMCが別処方)である場合について説明した。同一患者に係る処方データに示される注射薬については、上述の通り、払出不可と判定された注射薬の次の注射薬を払出しても構わない。
【0336】
また、上記では、任意の注射薬が搬送トレイ151aへ払出されるまで、次の注射薬の払出しが待機状態となっている。但し、任意の注射薬の欠品が確定するまで(例:注射薬MAを収容するカセットCaが空になるまで)、次の注射薬の払出しが待機状態であっても構わない。
【0337】
<搬送トレイへの注射薬の載置処理例>
次に、異種の薬剤を収容するための搬送トレイ151a(小型トレイ151b)への注射薬の載置処理例について説明する。なお、本例の説明においては、プリンタ装置13が輸液ラベル発行装置であるものとして説明する。
【0338】
(小型トレイの構造例)
まず、注射薬載置例の前提となる構成として、搬送トレイ151aに載置される小型トレイ151bについて説明する。
図35は、小型トレイ151bが搬送トレイ151aに載置された状態を示す図である。
図36の(a)は、小型トレイ151bの一例を示す斜視図、(b)は、小型トレイ151bの一例を示す平面図、(c)は、小型トレイ151bの一例を示すA-A’断面図である。
【0339】
上述のように、注射薬払出システム1では、搬送トレイ151aは、供給リフタ11から、注射薬払出装置100及びプリンタ装置13を介して、排出リフタ14へと搬送される。つまり、本例の搬送トレイ151aは、注射薬払出装置100が払出した複数種類の注射薬と、プリンタ装置13が発行した輸液ラベルと、が収容されるトレイである。
【0340】
図35に示すように、本例の搬送トレイ151aには、小型トレイ151bが載置できるようになっている。この場合、例えば1患者への投与に係る処方データに示される注射薬を、注射薬の使用時刻毎(例:朝、昼、夕及び就寝前)に分割して払出すことが可能となる。なお、
図35の例では、小型トレイ151bが、搬送トレイ151aが搬送される方向に対して、4つ設けることが可能となっている。
【0341】
また、
図36の(a)~(c)に示すように、小型トレイ151bの底部には、突出部151cが設けられている。突出部151cは、当該底部を、複数の分割領域151dに分割するものである。
【0342】
図36の(b)に示すように、分割領域151dの幅151wは、注射薬の向きが突出部151cの延伸方向となるように薬剤移動部153が注射薬を載置する場合、例えば1~2本載置できる程度の長さとなっている。この場合、例えば、注射薬が比較的太いバイアルであれば1本載置でき、注射薬が比較的細いバイアルであれば2本載置できる。
【0343】
注射薬払出装置100では、薬剤移動部153の吸着機構153aが吸着した注射薬を搬送トレイ151aに載置する。そのため、搬送トレイ151aにおける注射薬の位置を特定して載置できる。つまり、吸着した注射薬を、小型トレイ151bの各分割領域151dを狙って載置できる。また、注射薬の向きを揃えて載置することも可能であるため、分割領域151dにある程度整然と注射薬を載置できる。
【0344】
また、搬送トレイ151aの移動に伴い、注射薬は幅方向に移動する可能性がある。移動量が大きい場合には、注射薬同士が衝突し、その結果割れてしまう可能性がある。分割領域151dを備えることで、注射薬の幅方向の移動量を小さくすることができる。そのため、注射薬同士の衝突の可能性を低減できる。また、衝突したとしても移動量が小さいため、注射薬が割れてしまう可能性を低減できる。
【0345】
また、
図36の(c)に示すように、小型トレイ151bの底部は、突出部151cから小型トレイ151bの側壁へ向けて(突出部151cから幅方向に)傾斜した傾斜部151sを有する。傾斜部151sは、突出部151c側よりも小型トレイ151bの側壁側の方が低くなっている。これにより、
図36の(c)に示すように、突出部151c寄りに注射薬を載置すれば、注射薬の自重により、小型トレイ151bの側壁側から順に注射薬を載置できる。そのため、所定の分割領域151dに注射薬を載置できれば、それ以上の精密な載置位置の特定は不要となる。また、注射薬の載置時に、注射薬同士が衝突して割れてしまうことを防止できる。
【0346】
なお、小型トレイ151bの底部には、注射薬の移動防止機構が設けられていても構わない。移動防止機構としては、例えばスポンジ、又は微細な略V字形状を有する部材が挙げられる。移動防止機構により、例えば搬送トレイ151aの移動に伴い注射薬が衝突して割れてしまうことを更に確実に防止できる。
【0347】
また、
図36の(b)に示すように、小型トレイ151bにおいて、複数の分割領域151dのうちの1つの分割領域151dのうちの少なくとも一部には、プリンタ装置13が発行した輸液ラベルが載置される輸液ラベル載置領域151rが設けられている。
【0348】
上述のとおり、注射薬払出装置100及びプリンタ装置13は、各小型トレイ151bにおいて予め設定された輸液ラベル載置領域151rの位置に関する情報を記憶している。そのため、注射薬払出装置100は、輸液ラベル載置領域151r以外の領域に注射薬を載置できると共に、プリンタ装置13は、輸液ラベル載置領域151rに輸液ラベルを載置できる。そのため、注射薬の上に輸液ラベルが載置されることが無い。その結果、輸液ラベルが飛ばされる可能性を低減できる。また、ユーザによる輸液ラベルの確認が容易になる。さらに、突出部151cにより、移動してきた注射薬によって、輸液ラベルが小型トレイ151bの外に押し出されてしまうことを防止できる。
【0349】
また、突出部151cを設け、かつ、注射薬と輸液ラベルとを互いに異なる領域に載置できることにより、小型トレイ151bの外に輸液ラベルが押し出されてしまうことを防止できるため、輸液ラベルの上に重石として注射薬を載置する必要は無い。そのため、小型トレイ151bに、注射薬を載置した後に輸液ラベルを載置することが可能となる。つまり、小型トレイ151bを用いることで、搬送トレイ151aが搬送される側から順に、注射薬払出装置100及びプリンタ装置13を設けた注射薬払出システム1を構築できる。但し、注射薬払出装置100及びプリンタ装置13の設置順は逆であっても構わない。
【0350】
なお、本例では、小型トレイ151bに、複数の分割領域151d及び輸液ラベル載置領域151rを設けた構成について説明したが、これに限らず、搬送トレイ151aに直接これらの構成が設けられていても構わない。つまりこの場合、搬送トレイ151a自体が小型トレイ151bの機能を有し、小型トレイ151bは搬送トレイ151aに載置されない。
【0351】
また、プリンタ装置13は、輸液ラベル載置領域151rの位置に関する情報に基づき、発行した輸液ラベルを輸液ラベル載置領域151rに搬送して載置する輸液ラベル搬送機構を有している。輸液ラベル搬送機構は、例えば、発行された輸液ラベルを把持又はリリースする把持機構と、輸液ラベルを発行する発行機構と搬送トレイ151aとの間で把持機構を移動させる移動機構とを備える。
【0352】
(注射薬の載置処理例)
次に、搬送トレイ151aに対する注射薬の載置処理例について説明する。以下では、小型トレイ151bに注射薬を搬送するものとして説明するが、これに限らず、搬送トレイ151aに直接注射薬を搬送しても構わない。
【0353】
上述のように、制御部190は、バーコードリーダー123がバーコードを取得することにより、注射薬の向きを特定できる。同じ原理で、制御部190は、バーコードリーダー124がバーコードを取得することにより、注射薬の向きを特定できる。
【0354】
また、薬品マスタには、注射薬に付されたバーコードの位置から、注射薬名(薬剤名)等が記載された注射薬ラベルの略中心位置までの、注射薬の周方向上の第2距離を示す第2距離情報が、各注射薬識別情報に紐付けて登録されていても構わない。薬剤位置制御部197は、注射薬の向きと、バーコードリーダー124がバーコードを読取ったときのバーコードの位置と、第2距離情報が示す第2距離とに基づいて、薬剤回転部127の回転量を決定する。薬剤位置制御部197は、決定された回転量の分、薬剤回転部127を回転させることで、注射薬に貼り付けられた注射薬ラベルを上向き(+Z軸方向)にする。
【0355】
つまり本例では、薬剤位置制御部197は、注射薬に付された注射薬識別情報(処方データに含まれる注射薬識別情報と照合するための情報)の位置に基づき、注射薬に付された注射薬名の位置を特定する位置特定部として機能する。そして、薬剤位置制御部197は、薬剤回転部127を制御することで、注射薬名の位置が上向きとなるように、注射薬を軸方向に回転させる。
【0356】
搬送制御部193は、注射薬ラベルが上向きとなった注射薬を吸着した後、そのままの状態で、小型トレイ151bの所定位置に載置する。つまり、搬送制御部193は、薬剤移動部153を制御することで、薬剤回転部127が回転した注射薬の向きを変えることなく、小型トレイ151bへと移送し、小型トレイ151bに載置する。
【0357】
また、上述のとおり、注射薬の向きも特定しているため、搬送制御部193は、注射薬の向きが所定方向を向くように、小型トレイ151bに注射薬を載置する。この場合、注射薬ラベルに付された文字の向きを一定方向に揃えて、小型トレイ151bに注射薬を載置できる。
【0358】
このように小型トレイ151bに注射薬を載置することで、ユーザは、小型トレイ151bの内容物に対する目視鑑査を行うときに、注射薬を持ち上げたり、回転させたりする必要が無い。そのため、目視鑑査を容易に行うことが可能となる。また、注射薬払出システム1が、小型トレイ151bの内容物を撮影する撮影機構(不図示)を備えることで、撮影機構が撮影した画像を用いた目視鑑査を行うことも可能となる。
【0359】
なお、注射薬ラベルを上向きにして小型トレイ151bに注射薬を載置しているが、これに限らず、例えばバーコードを上向きにして載置しても構わない。ユーザが携帯型バーコードリーダー(不図示)を用いての画像監査を行いやすい向きに、注射薬を載置できればよい。
【0360】
また、バーコードリーダー124側で、注射薬の向きを特定すると共に注射薬を上向きにしているが、これに限らず、バーコードリーダー123側でこれらの処理を行っても構わない。
【0361】
また、搬送制御部193は、例えば以下のように、分割領域151dに注射薬を載置しても構わない。例えば、注射薬の載置対象となる分割領域151dの順序、及び、任意の分割領域151d内での注射薬の載置位置の順序が予め決められていても構わない。この場合、薬剤移動部153は、その順序に従って注射薬を載置する。また例えば、搬送制御部193は、特定した注射薬の種類又は形状毎に仕分けて、注射薬の載置位置を特定しても構わない。
【0362】
また、バーコードリーダー123又は124でバーコードを読取ることで、注射薬の向きを特定できる。この注射薬の向きを用いて、薬剤移動部153が注射薬を搬送トレイ151aへ搬送するときの吸着位置を決定しても構わない。
【0363】
例えば上述したように、薬品マスタに、注射薬の底部からの距離としての注射薬の重心位置を示す情報が登録されているとする。また、注射薬の底部が第1搭載部126a又は第2搭載部126bの端部近傍にとなるように、第1搭載部126a又は第2搭載部126bに注射薬が載置されるものとする。この場合、吸着位置決定部194は、注射薬の向きを特定することにより、注射薬の底部が位置する側の、第1搭載部126a又は第2搭載部126bの端部を特定する。吸着位置決定部194は、上記注射薬の底部からの距離に、予め設定された端部と底部との間の距離を加算した距離だけ、当該端部から離れた位置を、注射薬の重心位置として特定する。吸着位置決定部194は、特定した重心位置を吸着位置として決定する。
【0364】
〔返品時の動作についての補足〕
注射薬払出装置100の返品時の動作例については、
図15を用いて説明した。しかしこれに限らず、例えば、薬剤搬送部121及び薬剤移動部153は、搬送トレイ151a側からカセットCa側へと注射薬を移送することにより、注射薬をカセットCaへと返品しても構わない。
【0365】
ここで、薬剤搬送部121及び薬剤移動部153は、払出時には、カセットCa側から搬送トレイ151a側へと注射薬を移送する。つまり、上記の例では、払出時の注射薬の移送順序とは逆の順序で、カセットCaへ注射薬を返品する。払出時のモードを第1モードと称すれば、返品時のモードを第2モードと称することもできる。
【0366】
第2モードでは、例えば以下のような処理が行われる。例えば、薬剤移動部153は、ユーザにより搬送トレイ151aに返品された注射薬(返品薬)を搬送トレイ151aから取出し、位置変更部126に載置する。バーコードリーダー123によるバーコードの読取り、及び期限読み取り用カメラ125による有効期限の撮影により、制御部190は、注射薬の種類及び有効期限を認識する。
【0367】
有効期限が切れていると判定された場合には、薬剤移動部153は、非払出薬保管部152に返品薬を載置する。一方、有効期限内であると判定された場合には、カセット移送部140は、認識した返品薬の種類に基づき、当該返品薬と同種の注射薬を収容しているカセットCaを取出し、カセット保持部130に保持する。薬剤搬送部121は、位置変更部126に載置された返品薬を、処理位置132に移動させたカセットCaに収容する。カセット移送部140は、返品薬を収容したカセットCaをカセット棚110に再び保管する。
【0368】
このような処理を返品薬の全てについて行う。なお、返品薬と同種の注射薬を収容したカセットCaが存在しない場合には、返品薬を空きのカセットCaに収容しても構わないし、非払出薬保管部152に載置しても構わない。
【0369】
<上記構成の別表現>
上記構成について、以下のように表現できる。
【0370】
[A]<薬剤取扱装置の全体構成>
本発明の一態様に係る薬剤取扱装置(注射薬払出装置100)は、
それぞれ同種の薬剤を収容するためのm個のカセットを保管するカセット棚と、
上記m個のカセットのうちのn個(m>n≧2)を一時的に保持可能なカセット保持部と、
薬剤を一時的に保持しつつ、当該薬剤の種類を判別する薬剤判別部と、
異種の薬剤を収容するためのトレイを保持するトレイ保持部と、
上記カセット棚と上記カセット保持部との間で上記カセットを移送するカセット移送部と、
上記カセット保持部に保持されたカセットと上記薬剤判別部との間で薬剤を移送する第1薬剤移送部と、
上記薬剤判別部と上記トレイ保持部に保持されたトレイとの間で薬剤を移送する第2薬剤移送部と、を備える。
【0371】
上記の構成によれば、多数(m個)のカセットのうちの一部(n個)のカセットをカセット保持部に一時的に保持させ、そのカセットに収容された薬剤を、その種類の判別対象及びトレイへの移送対象とする。そのため、多数のカセットが保管された薬剤取扱装置において、薬剤の種類の判別及びトレイへの搬送処理を効率的に行うことができる。
【0372】
なお、上記の構成における薬剤判別部としては、バーコードリーダー123、124、期限読み取り用カメラ125、位置変更部126、第1搭載部126a、第2搭載部126b及び薬剤回転部127を含む機構が挙げられる。また、第1薬剤移送部は薬剤搬送部121に相当し、第2薬剤移送部は薬剤移動部153に相当する。トレイは、搬送トレイ151a又は小型トレイ151bに相当する。
【0373】
また、上記の構成は、主として、上記≪その他の構成≫欄よりも前で説明した事項に基づくものである。
【0374】
さらに、本発明の一態様に係る薬剤取扱装置では、
上記第1薬剤移送部及び上記第2薬剤移送部は、上記カセット側から上記トレイ側へと薬剤を移送する第1モードで動作しても構わない。
【0375】
上記の構成によれば、第1モードの場合、カセットの薬剤をトレイに収容できる。なお、上記の構成は、主として、上記≪その他の構成≫欄よりも前で説明した事項に基づくものである。
【0376】
さらに、本発明の一態様に係る薬剤取扱装置では、
上記第1薬剤移送部及び上記第2薬剤移送部は、上記トレイ側から上記カセット側へと薬剤を移送する第2モードで動作しても構わない。
【0377】
上記の構成によれば、第2モードの場合、トレイに収容された薬剤をカセットへ戻すことが可能となる。
【0378】
[B]<払出不可の薬剤があった場合の処理>
本発明の一態様に係る薬剤払出装置(注射薬払出装置100)は、
上記薬剤を払出不可と判定した場合、払出可能と判定されるまで、当該薬剤と同種の薬剤を、払出可否の判定対象とする払出可否判定部(第1判別処理部195、第2判別処理部196)と、
上記薬剤が払出不可と判定された場合、当該薬剤の次に払出される薬剤の払出を待機する払出制御部(搬送制御部193)と、を備える。
【0379】
薬剤払出装置は、例えば1患者への投与に係る処方データに基づき、薬剤を順次払出していく。そのため、払出不可の薬剤と判定された場合、その時点で薬剤の払出しが停止してしまう。薬剤払出装置が他の装置と連動している場合には、システム全体の処理が停止してしまうため、薬剤の払出停止の影響は大きくなる。
【0380】
上記の構成によれば、薬剤を払出不可と判定した場合、当該薬剤と同種の薬剤が払出可能と判定されるまで、次に払出される薬剤の払出しを待機させる。そのため、払出不可の薬剤があった場合でも、薬剤の払出しを継続できる。
【0381】
さらに、本発明の一態様に係る薬剤払出装置では、
上記払出可否判定部が、(1)上記薬剤を払出不可と判定し、かつ、(2)当該薬剤と、当該薬剤の次に払出される薬剤である次薬剤とが、互いに異なる患者への投与に係る処方データに示される薬剤であると判定した場合に、上記払出制御部は、当該次薬剤を待機させても構わない。
【0382】
同一患者への投与に係る処方データに基づき払出される薬剤は、一般に同じトレイに収容される。そのため、互いに異なる患者への投与に係る処方データに示される薬剤同士の順序を入れ替えることは、トレイの順序を入れ替えることになるため困難である。一方、同一患者への投与に係る処方データに示される薬剤については、トレイの順序を入れ替える必要が無いため、払出される順序は任意であっても構わない。
【0383】
上記の構成によれば、薬剤を払出不可と判定した場合であっても、当該薬剤と次薬剤とが、同一患者への投与に係る処方データに示される薬剤である場合には、次薬剤を待機させずに払出すことができる。そのため、薬剤を払出不可と判定した場合の、払出処理の迅速化を図ることができる。
【0384】
[C]<薬剤名の位置を上向きにしてトレイへ載置する場合の処理>
本発明の一態様に係る薬剤取扱装置(注射薬払出装置100)は、
薬剤に付された識別情報の位置に基づき、薬剤に付された薬剤名の位置を特定する位置特定部(薬剤位置制御部197)と、
上記位置特定部が特定した薬剤名の位置が上向きとなるように、上記薬剤を軸方向に回転させる薬剤回転部と、
上記薬剤回転部が回転した上記薬剤の向きを変えることなく、当該薬剤を、異種の薬剤を収容するためのトレイへと移送し、当該トレイに載置する薬剤移送部(薬剤移動部153)と、を備える。
【0385】
例えば1患者への投与に係る処方データに基づき、トレイに薬剤が払出される場合、トレイ内の薬剤について、医師又は薬剤師等の医療従事者(つまりユーザ)が目視鑑査を行う。薬剤名の位置を考慮せずに、トレイに薬剤をランダムに載置した場合、ユーザが薬剤を取り上げて薬剤名を確認する必要がある。
【0386】
上記の構成によれば、薬剤に付された薬剤名の位置が上向きとなるように、トレイ内に払出すことができる。また、このように薬剤がトレイに載置されるため、トレイ内の薬剤を撮影することで、撮影した画像を目視鑑査用の画像として利用でき、さらに監査履歴を残すことができる。つまり、上記の構成によれば、目視鑑査時のユーザの手間を低減できる。
【0387】
なお、上記識別情報は、注射薬の種類を示す情報(第1識別情報)である。上記識別情報としては、例えば、注射薬識別情報を示すバーコードが挙げられる。
【0388】
[D]<カセット位置の確認>
本発明の一態様に係る薬剤カセット取扱装置(注射薬払出装置100、薬剤カセット取扱装置200)は、
複数のカセットのそれぞれが保管される保管位置を示す保管位置情報と、カセットを識別するためのカセット固有情報とに基づき、当該複数のカセットのそれぞれが所定の保管位置に保管されているか否かを判定する保管位置判定部と、
上記保管位置判定部が所定の保管位置に保管されていないと判定したカセットについては、当該カセットが保管されている保管位置から、当該カセットが本来位置すべき保管位置へと移送するカセット移送部と、を備える。
【0389】
さらに、本発明の一態様に係る薬剤カセット取扱装置は、
複数のカセットのそれぞれが保管される保管位置を示す保管位置情報と、カセットを識別するためのカセット固有情報とに基づき、当該複数のカセットのそれぞれが所定の保管位置に保管されているか否かを判定する保管位置判定部と、
上記保管位置判定部が所定の保管位置に保管されていないと判定したカセットについては、当該カセットが本来位置すべき保管位置に保管するよう報知する報知部(報知制御部199、タッチパネル210)と、を備える。
【0390】
例えば、ユーザによって各カセットの保管位置が予め定められている場合、カセットが本来位置すべき保管位置に保管されていないと、ユーザが所望するカセットを取出すときに当該カセットを探す手間が増える。そのため、カセットへの薬剤の充填作業等の作業効率が低下する可能性がある。
【0391】
上記の構成によれば、本来位置すべき保管位置にカセットが存在しない場合であっても、当該カセットを当該保管位置に保管できる。そのため、作業効率の低下を抑制できる。
【0392】
[E]<トレイの構造>
本発明の一態様に係るトレイは、
薬剤を払出す薬剤払出装置が払出した複数種類の薬剤と、輸液容器に貼付けられる輸液ラベルを発行する輸液ラベル発行装置(プリンタ装置13)が発行した輸液ラベルと、が収容されるトレイであって、
上記トレイの底部には、当該底部を、複数の分割領域に分割する突出部が設けられており、
上記複数の分割領域のうちの1つの分割領域のうちの少なくとも一部は、上記輸液ラベル発行装置が発行した輸液ラベルが載置される輸液ラベル載置領域である。
【0393】
トレイに輸液容器が載置される場合、トレイには、ユーザが輸液容器に貼付ける輸液ラベルも載置される。輸液ラベルは薄いため、トレイに載置された場合、例えばトレイの移動に伴って、トレイから飛ばされ易い。特に、トレイに、薬剤を載置した後に輸液ラベルを載置した場合には、薬剤の上に輸液ラベルが載置されることになるため、トレイから輸液ラベルが飛ばされ易い。
【0394】
任意のトレイから別のトレイへ輸液ラベルが入り込んでしまうと、輸液容器の内容物と輸液ラベルの記載内容とが一致せず、重大な事故を引き起こす可能性がある。
【0395】
そのため、一般には、輸液ラベルをトレイに載置した後に、輸液ラベルの上に薬剤(具体的には薬剤が収容される容器。バイアル等。)を載置することで、輸液ラベルが飛ばされることを防止する。
【0396】
上記の構成によれば、輸液ラベル載置領域に輸液ラベルを載置し、それ以外の領域に薬剤を載置できる。そのため、薬剤の上に輸液ラベルが載置されることが無い。その結果、輸液ラベルが飛ばされる可能性を低減できる。また、薬剤が輸液ラベルの上に載置されることを防止できる。そのため、ユーザによる輸液ラベルの確認が容易になると共に、薬剤が輸液ラベルの上に移動することに起因して、輸液ラベルがトレイの外に押し出されてしまうことを防止できる。
【0397】
また、輸液ラベル載置領域に輸液ラベルが載置されるので、輸液ラベルの上に重石として薬剤を載置する必要は必ずしも無い。そのため、トレイに薬剤を載置した後に、輸液ラベルを載置することが可能となる。つまり、上記の構成を有するトレイを用いることで、トレイが搬送される側から順に、薬剤払出装置及び輸液ラベル発行装置を設けた薬剤払出システムを構築できる。
【0398】
なお、上記トレイは、小型トレイ(151b)であっても構わない。この場合、複数種類の薬剤が収容される大型トレイ(搬送トレイ151a)に、上記突出部を有する複数の小型トレイが配置される。
【0399】
[F]<返品機能>
本発明の一態様に係る薬剤払出装置(注射薬払出装置100、薬剤カセット取扱装置200)は、
薬剤が収容されるm個のカセットを保管するカセット棚と、
上記m個のカセットのうち、複数種類の薬剤が収容された第1カセットと、種類が判別した薬剤を収容する第2カセットとを一時的に保持可能なカセット保持部と、
上記第1カセットに収容された薬剤を一時的に保持しつつ、当該薬剤の種類を判別する薬剤判別部と、
上記第1カセットに収容された薬剤を上記薬剤判別部に移送すると共に、上記薬剤判別部によってその種類が判別された薬剤を、上記第2カセットへと移送する薬剤移送部と、を備える。
【0400】
上記の構成によれば、複数種類の薬剤が収容された第1カセットから、種類が判別した薬剤を収容する複数の第2カセットへと薬剤を仕分けることができる。
【0401】
なお、上記の構成における薬剤判別部としては、バーコードリーダー123、124、期限読み取り用カメラ125、位置変更部126、第1搭載部126a、第2搭載部126b及び薬剤回転部127を含む機構が挙げられる。また、薬剤移送部は、薬剤搬送部121に相当する。また、第1カセットは、返品薬受入カセット161に相当し、第2カセットは、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に相当する。
【0402】
また、上記の構成は、主として、上記≪その他の構成≫欄よりも前で説明した事項に基づくものである。
【0403】
≪その他の構成2≫
以下に、主として、注射薬払出装置100の更なる構成及び処理、並びに、注射薬払出装置100の周辺装置であるプリンタ装置13の更なる構成及び処理等について説明する。但し、以下に示す説明において、上述した内容と重複する部分、又は具体的に記載した部分もあることに留意されたい。
【0404】
〔注射薬払出装置における処理の別例〕
まず、注射薬払出装置100における処理の別例について説明する。
図50の(a)は、分割部材SPを装着したときのカセットCaの一例を示す図であり、
図50の(b)は、カセットCaを2分割して使用するときのデータテーブルの一例を示す図である。
【0405】
図26を用いて上述したように、カセットCaに分割部材SPを装着することで、カセットCaを2分割することができる。
図50の(a)に示すように、分割部材SPで仕切られることにより、カセットCaは、第1分割領域CaA及び第2分割領域CaBに分割されている。なお、本例では、注射薬払出装置100の前面側(カセット移送部140が配置されている側)の分割領域を第1分割領域CaAと称する。
【0406】
ここで、第1分割領域CaA及び第2分割領域CaBの大きさは、収容対象となる注射薬又は溶解液の形状(大きさ)又は収容数に応じて、分割部材SPの装着位置を変更することで変更されても構わない。
【0407】
また、各カセットCaには、カセットCaを一意に識別可能なカセット固有情報が付与されている。
図50の(b)に示すように、カセット固有情報(カセットバーコード)には、注射薬が収容される領域を特定するためのカセット領域情報と、カセットCaに収容される注射薬の種類を示す情報(注射薬の種類の一意に識別可能な情報(薬品コード))とが紐付けられている。移送制御部191は、このデータテーブルを参照することで、どのカセットCaのどの領域に、どのような注射薬が収容されているかを判別できる。
【0408】
図50の(b)に示すように、カセット領域情報として、本例では、「0」、「1」及び「2」が設定されている。「0」は、カセットCaの全域が注射薬の収容対象となっていることを示し、「1」は、第1分割領域CaAが注射薬の収容対象となっていることを示し、「2」は、第2分割領域CaBが注射薬の収容対象となっていることを示す。
【0409】
なお、カセット領域情報は、この3つの収容パターンを特定できればどのような情報であっても構わない。また、カセットCaの分割数は2つに限れられず、3つ以上であっても構わない。この場合、カセット領域情報は、分割した領域数に応じて収容パターンを特定できる情報であればよい。
【0410】
このように1つのカセットCaを2分割し、かつ上記データテーブルを有している場合、当該カセットCaには、以下のように注射薬等を収容できる。
(A)異なる種類の注射薬を収容するパターン。この場合、同種の注射薬毎に第1分割領域CaA及び第2分割領域CaBに分割して収容する。
(B)同一種類の注射薬を収容するパターン。この場合、有効期限に基づき第1分割領域CaA及び第2分割領域CaBに分割して注射薬を収容する。
(C)溶解液付きの注射薬を収容するパターン。この場合、溶解液及び注射薬をそれぞれ分割して収容する。例えば、注射薬を第1分割領域CaAに収容した場合、溶解液を第2分割領域CaBに収容する。
【0411】
<(A)異なる種類の注射薬を収容するパターン>
本パターンの場合、上記データテーブルには、データパターンDP2に示すような形態でデータが保存される。つまり、第1分割領域CaAと第2分割領域CaBとには種類の異なる注射薬が収容され(同一の分割領域内には同種の注射薬が収容され)、その収容状態が上記データテーブルに反映される。
図50の(b)の例では、「00005」のカセットCaにおいて、第1分割領域CaAに注射薬「CCC01」が収容されており、第2分割領域CaBに注射薬「DDD03」が収容されていることが示されている。
【0412】
注射薬払出装置100が、注射薬払出システム1の全体を統括的に制御する制御装置(不図示)から1患者への投与に係る処方データの払出指示を受信した場合、移送制御部191は、当該処方データ及び上記データテーブルに基づきカセットCaから注射薬を取出す。上記の例において、上記処方データに示される注射薬が注射薬「CCC01」であった場合、移送制御部191は、上記データテーブルを参照することで、注射薬「CCC01」が「00005」のカセットCaの第1分割領域CaAに収容されていることを特定する。この特定により、移送制御部191は、注射薬「CCC01」を「00005」のカセットCaの第1分割領域CaAから取出すことができる。
【0413】
また、第1判別処理部195は、位置変更部126において、バーコードリーダー123で読取られた注射薬の種類を示す情報に基づき、注射薬の払出しの可否を判別する。そのため、払出すべき注射薬とは異なる注射薬が取出されたとしても、第1判別処理部195による判別により当該注射薬の払出しを行わないようにすることができる。例えば、実際に第1分割領域CaA及び第2分割領域CaBに収容された注射薬と、上記データテーブルに示される情報との間で齟齬があった場合であっても、誤った注射薬の払出しを防止できる。
【0414】
なお、カセットCaの領域を3つ以上に分割した場合も、同一の分割領域には同種の注射薬が収容され、かつ、複数の分割領域において互いに異なる種類の注射薬が収容されていればよい。
【0415】
<(B)同一種類の注射薬を収容するパターン>
上述のように、この場合、注射薬は、有効期限に基づき第1分割領域CaA及び第2分割領域CaBに分割して収容される。ロッド番号又は製造番号が注射薬毎に付されているため、これらの番号から有効期限を特定しても構わない。
【0416】
本パターンの場合、上記データテーブルには、データパターンDP1に示すような形態でデータが保存される。つまり、同種の注射薬が、有効期限に基づき、第1分割領域CaA及び第2分割領域CaBに物理的に分割されて収容されているが、上記データテーブル上では分割されていない。
図50の(b)の例では、「00003」のカセットCaに注射薬「AAA03」が有効期限に基づき分割して収容されているとしても、上記データテーブルでは、第1分割領域CaA及び第2分割領域CaBの両方に当該注射薬が収容されていることのみ示される。
【0417】
移送制御部191は、上記払出指示に基づき注射薬をカセットCaから取出した場合、当該カセットCaをカセット保持部130へと移送する。その後、カセット保持部130に載置されたカセットCaは、処理位置132において、位置特定用カメラ122で撮像される。吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122で撮像された画像を解析することで、カセットCaが分割されていることを認識する。つまり、吸着位置決定部194は、カセットCaが物理的に分割されており、かつ、上記データテーブル上では当該カセットCaのカセット領域情報が「0」であることを特定した場合に初めて、有効期限で分割してカセットCaに収容された注射薬の取出しであることを認識できる。
【0418】
搬送制御部193は、予め決められた順序でカセットCaから注射薬を取出す。初期状態において、搬送制御部193による注射薬の取出領域は、第1分割領域CaAに設定されている。この場合、搬送制御部193は、第1分割領域CaAに収容された注射薬から順に取出していく。その後、第1分割領域CaAが欠品となった場合に、搬送制御部193は、第2分割領域CaBから注射薬を取出す。
【0419】
このように、カセットCaを分割して、有効期限に基づき、同種の注射薬を第1分割領域CaA及び第2分割領域CaBに収容し、かつ取出し順序を決めておくことで、搬送制御部193は、注射薬を収容した順に取出すことができる。つまり、注射薬払出装置100は、カセットCaに収容した順に払出す(所謂「先入れ先出し」を行う)ことができる。
【0420】
また、比較的古い注射薬を第1分割領域CaAへ収容すると共に、比較的新しい注射薬を第2分割領域CaBへ収容することで、搬送制御部193は、古い注射薬から順に取出していくことが可能となる。
【0421】
なお、第1分割領域CaAが欠品となったり、第1分割領域CaAに注射薬を充填したりする場合、第2分割領域CaBに収容されていた注射薬を第1分割領域CaAに移した後、第2分割領域CaBに、移した注射薬よりも新しい注射薬を収容(充填)する。またこのとき、制御部190は、上記注射薬の取出領域を初期状態に戻す。これにより、再び第1分割領域CaAからの注射薬の取出し(古い注射薬からの取出し)が可能となる。
【0422】
例えば、制御部190は、位置特定用カメラ122が撮像した画像に基づき、第1分割領域CaAの状態が空の状態から、注射薬が収容された状態へと変化したことを認識したときに、上記注射薬の取出領域を初期状態に戻す。この他、制御部190は、ユーザ入力により払出処理が中断され、かつカセットCaが取出されたことを検知したときに、初期状態に戻しても構わない。
【0423】
ここで、カセットに注射薬を整列させて収容する注射薬払出装置では、収容時に注射薬を古い順に収容させることができる。しかし、カセットにランダムに(つまり非整列状態で)注射薬を収容する注射薬払出装置の場合、1つのカセットから古い順に注射薬を収容することは困難である。上記のような処理及び注射薬の収容を行うことで、注射薬払出装置100においては、所謂「先入れ先出し」を実現できる。
【0424】
なお、カセットCaの領域を3つ以上に分割した場合も、分割領域毎に有効期限が異なる同種の注射薬が収容されればよい。この場合も、3つ以上の分割領域について取出し順を予め決めておき、先に収容された注射薬から取出されるように、各分割領域に注射薬を収容することで、所謂「先入れ先出し」を実現できる。
【0425】
また、注射薬の取出順序は任意に設定できる。例えば、注射薬の取出順序が、初期状態では第2分割領域CaBに設定されており、第2分割領域CaBに欠品が生じた場合に、第1分割領域CaAから注射薬を取出すように設定されていても構わない。
【0426】
<(C)溶解液付きの注射薬を収容するパターン>
注射薬の中には、溶解液で溶解して使用される溶解液付きの注射薬が存在する。この場合、注射薬と溶解液とが互いに異なる容器で保管されるが、注射薬及び溶解液はセットで搬送トレイ151aに払出される必要がある。
【0427】
本パターンの場合、上記データテーブルには、データパターンDP2に示すような形態でデータが保存される。つまり、第1分割領域CaA及び第2分割領域CaBの何れか一方に注射薬が収容され、他方に溶解液が収容される。そして、その収容状態が上記データテーブルに反映される。例えば、第1分割領域CaAに注射薬、第2分割領域CaBに溶解液が収容されている場合を考える。この場合、
図50の(b)の例では、「00005」のカセットCaにおいて、第1分割領域CaAに注射薬「CCC01」が収容されており、第2分割領域CaBに溶解液「DDD03」が収容されていることが示されている。注射薬払出装置100は、上記データテーブルを参照することで、上記(A)の場合と同様に、第1分割領域CaAから注射薬を、第2分割領域CaBから溶解液をそれぞれ取出すことができる。
【0428】
注射薬及び溶解液は、納品時同一の梱包であることが多く、また、必ずセットで払出されるため、カセットCaを2分割にし、かつ分割領域毎に注射薬及び溶解液を分割して収容しやすい。また、このように分割して収容しておくことで、1度のカセットCaの取出動作で、注射薬及び溶解液をセットで取出すことができる。つまり、同一のカセットCaに注射薬及び溶解液を収容しておくことで、注射薬及び溶解液をそれぞれ別々のカセットCaに収容する場合に比べ、効率良く注射薬及び溶解液を払出すことができる。
【0429】
ここで一般に、薬剤には、薬剤を一意に識別するための薬剤識別情報が付与されている。例えば、注射薬には、注射薬識別情報(例:注射薬コードとしてのGS1コード)が付与されている。一方、溶解液には、薬剤のように、薬剤識別情報(例:GS1コード)が付与されていない。つまり、溶解液が保存された容器には、バーコードリーダー123が読取る可能なバーコードが付されていない。
【0430】
そのため、上述の制御装置は、上位システム(不図示)から受信した処方データを解析した結果、当該処方データに溶解液付きの注射薬が含まれている場合には、注射薬及び溶解液のそれぞれに予め定められた薬品コードが登録された、薬剤に関するマスタデータを参照する。そして、処方データにこれらの薬品コードを追加する。また、上記データテーブルに、当該溶解液に対応する薬品コードとカセット固有情報とが紐づけられて記憶されている。これにより、注射薬払出装置100は、制御装置から受信した処方データを解析すると共に、上記データテーブルを参照することで、注射薬及び溶解液が収容されたカセットCaを特定できる。
【0431】
なお、注射薬については、処方データにおいて、注射薬識別情報に薬品コードが紐付けられている。また、形状モデルについては、当該薬品コードに紐付けて登録されている。さらに、注射薬については注射薬識別情報をそのまま使用し、溶解液については当該注射薬識別情報に紐付けられた薬品コードが付与されても構わない。つまり、少なくとも溶解液に、溶解液を識別するための溶解液識別情報が付与されていればよい。
【0432】
ここで、注射薬については注射薬識別情報が付与されているため、バーコードリーダー123で読取ることができる。そのため、第1判別処理部195により、搬送トレイ151aに実際に注射薬を払出す前に、位置変更部126に載置された注射薬が払出されるべき注射薬であるか否かを判別できる。一方、上述の通り、溶解液にはバーコードリーダー123が読取り可能な情報が付与されていない。そのため、第1判別処理部195は、バーコードリーダー123の読取結果に基づき、位置変更部126に載置された溶解液が払出されるべき溶解液であるか否かを判別できない。
【0433】
そこで、第1判別処理部195は、受信した1患者への投与に係る処方データに溶解液付きの注射薬が含まれ、かつ、バーコードリーダー123から所定時間読取結果を受取らなかった場合(すなわち、注射薬識別情報が付されていない物体であると判断した場合)に、位置変更部126に載置された物体を、払出されるべき溶解液であると判別する。これにより、溶解液についても搬送トレイ151aへ払出すことができる。
【0434】
ここで、吸着位置決定部194は、処理位置132で吸着位置を特定するときに形状モデルを参照することで、吸着対象の注射薬(実際には注射薬が保存されている容器)の形状を特定する。また、薬品コードに形状モデルが紐付けられているため、吸着位置決定部194は、注射薬と同様に溶解液についても、吸着対象の溶解液(実際には溶解液が保存されている容器)の形状を特定する。このように、吸着位置決定部194は、薬品コードに紐付けられた形状モデルに基づき、吸着対象の溶解液を特定している。そのため、この時点で払出対象となる溶解液を正確に特定していると推察できる。
【0435】
つまり、溶解液について、注射薬払出装置100では、1患者への投与に係る処方データ、上記データテーブル及び形状モデル等に基づいて、払出対象となる溶解液を位置変更部126に載置する。そのため、第1判別処理部195による、バーコードリーダー123の読取結果に基づく判別が行われなくても、上記処方データに基づく溶解液の払出しを行うことができる。
【0436】
このように本例では、第1判別処理部195は、注射薬については注射薬識別情報に基づき注射薬の払出し可否を判別すると共に、溶解液については注射薬識別情報に準ずる情報が読取れるか否かによって溶解液の払出し可否を判別する。具体的には上述のように、第1判別処理部195は、受信した1患者への投与に係る処方データに溶解液付きの注射薬が含まれる場合であって、注射薬と共に払出対象となっている物体について注射薬識別情報に準ずる情報が読取れなかった場合、当該物体を払出対象の溶解液であると判別する。これにより、溶解液についても容易な手法で払出すことができる。
【0437】
また、吸着位置決定部194は、上述のように形状モデル等に基づき、カセットCaから取出す対象とする注射薬及び溶解液を特定する。そのため、注射薬払出装置100では、払出し対象となる注射薬及び溶解液について、形状モデル等に基づく特定と、第1判別処理部195による判別との2段階で判別しているといえる。また、制御部190は、溶解液付きの注射薬を払出す場合、少なくとも形状に基づいて溶解液の払出し可否を判定する第1判定部と、少なくとも薬種に基づいて注射薬の払出し可否を判定する第2判定部とを備えているともいえる。さらに、溶解液については、形状モデルに基づく特定により、第1判別処理部195による判別を補完しているともいえる。
【0438】
〔プリンタ装置の概要〕
次に、プリンタ装置13について説明する。プリンタ装置13は、注射薬(薬剤)を搬送する搬送トレイ151a(トレイ)又は小型トレイ151b(トレイ)に収容された注射薬に関する情報を印字する印字装置として機能する。上記では、プリンタ装置13が、注射薬の種類等を示す情報を搬送トレイ151aに印字する機能、及び、輸液容器の内容物を示す内容物情報が印字された輸液ラベル(ラベル)を発行する(払出す)機能の少なくともいずれかを有するものとして説明した。以降では、プリンタ装置13が、この2つの機能以外に、収容物情報を印字した収容物印字シート(処方箋(例:注射箋))を払出す機能、及び、非収容物情報を印字した非収容物印字シート(例:欠品箋)を払出す機能を備える構成について説明する。つまり、以降では、プリンタ装置13が上記4つの機能を有する構成(上記4つの機能のそれぞれを有する4つの装置を1つの筐体内に設けたプリンタ装置13)について説明する。
【0439】
上記4つの装置を1つの筐体内に設けることで、注射薬払出システム1の省スペース化を図ることができる。また、後述するように、上記4つの装置に加え、輸液ラベル及び収容物印字シートのそれぞれを搬送する搬送機構を配置することで、プリンタ装置13の処理を効率良く行うことができる。
【0440】
図37は、プリンタ装置13の一例を示す斜視図である。また、
図38は、プリンタ装置13の一例を示すブロック図である。
【0441】
具体的には、
図37及び
図38に示すように、プリンタ装置13は、搬送トレイ印字装置300(トレイ書込部)、輸液ラベル払出装置400(ラベル払出部、輸液ラベル払出部)、注射箋払出装置500(第1シート払出部)、及び欠品箋払出装置600(第2シート払出部)を備える。また、プリンタ装置13は、輸液ラベル搬送機構700(ラベル搬送部)、注射箋搬送機構800、及びトレイ搬送機構900を備える。さらに、
図38に示すように、プリンタ装置13は、これらの各装置または各機構を制御する制御部1000を備える。
【0442】
以下ではまず、各装置及び各機構の具体的な構成について説明する前に、プリンタ装置13における動作の流れについて説明する。また、以下の説明においては、収容物印字シートが注射箋であり、非収容物印字シートが欠品箋であるものとして説明する。
【0443】
〔プリンタ装置における動作〕
プリンタ装置13における動作の流れについて説明する。
図39は、プリンタ装置13における動作の流れについて説明するための図である。具体的には、
図39は、搬送トレイ151aが搬送される順序を説明するための、プリンタ装置13の底部の一例を示す平面図である。
【0444】
プリンタ装置13では、前段に設けられた注射薬払出装置100から搬送された搬送トレイ151aは、トレイ搬送機構900によって、後段に設けられた排出リフタ14まで搬送される。トレイ搬送機構900は、まず、注射薬払出装置100から第1位置P101まで搬送された搬送トレイ151aを第2位置P102へと移動させる。つまり、第1位置P101は、注射薬払出装置100から搬送トレイ151aを受入れるトレイ受入位置である。
【0445】
搬送トレイ印字装置300は、処方データに基づき、第2位置P102に配置された搬送トレイ151aに対して搬送先情報を書込む。搬送先情報としては、例えば、患者名及び病棟名が挙げられる。搬送先情報には、注射薬の種類を示す情報が含まれても構わない。また、輸液ラベル搬送機構700は、処方データに基づき輸液ラベル払出装置400により払出された輸液ラベルを、第2位置P102に配置された搬送トレイ151aまで搬送し載置する。つまり、第2位置P102は、搬送トレイ151aに搬送先情報が書込まれ、かつ搬送トレイ151aに輸液ラベルが載置される位置である。
【0446】
第2位置P102の上方には、2つの輸液ラベル払出装置400a及び400bが配置されており、その間に貫通孔400hが形成されている(
図42参照)。具体的には、貫通孔400hは、第2位置P102の少なくとも一部と対向する位置に設けられている。2つの輸液ラベル払出装置400a及び400bから払出された輸液ラベルは、輸液ラベル搬送機構700によって、貫通孔400hを介して搬送トレイ151aに載置される。
【0447】
本実施形態では、第2位置P102の1箇所で搬送先情報の印字及び輸送ラベルの載置を行っているため、これらの処理を効率良く行うことができる。そのため、プリンタ装置13における処理速度を向上させることができる。
【0448】
なお、本実施形態では、第1位置P101から第2位置P102へ搬送トレイ151aを移動させているが、注射薬払出システム1の設計上可能であれば、第2位置P102が第1位置P101(トレイ受入位置)として機能しても構わない。例えば、プリンタ装置13は、プリンタ装置13の前面から、注射薬払出装置100から搬送された搬送トレイ151aを受入れ、当該搬送トレイ151aを第2位置P102まで移動させても構わない。この構成の場合、注射薬を払出した後に輸液ラベル及び注射箋等の印刷物を払出す注射薬払出システム1において、注射薬払出装置100のメンテナンスを容易に行うことができる共に、排出リフタ14の小型化を図ることが可能となる。また、この構成の場合、当該注射薬払出システム1において、搬送トレイ印字装置300による搬送トレイ151aの側面への印字を効率良く行うことが可能となる。
【0449】
第2位置P102での搬送先情報の印字、及び、輸送ラベルの載置が完了すると、トレイ搬送機構900は、第3位置P103まで搬送トレイ151aを移動させる。注射箋搬送機構800は、処方データに基づき注射箋払出装置500により払出された注射箋を、第3位置P103に配置された搬送トレイ151aまで搬送し載置する。
【0450】
また、第3位置P103の上方には、欠品箋払出装置600が配置されている。欠品箋払出装置600は、搬送トレイ151aに収容されるべき注射薬が収容されていない場合に、その注射薬を示す欠品情報を印字した欠品箋を、当該搬送トレイ151aに払出す。
【0451】
第3位置P103において注射箋の載置、場合によっては欠品箋の載置が完了すると、トレイ搬送機構900は、搬送トレイ151aを排出リフタ14へと搬送する。
【0452】
このように、本例のプリンタ装置13は、搬送トレイ151aに載置される(又は載置された)輸液容器に対応する輸液ラベル、及び、搬送トレイ151aに載置された注射薬に対応する注射箋を、当該搬送トレイ151aに払出す。また、プリンタ装置13は、搬送トレイ151aに載置された注射薬等に対応する患者の患者名等を、当該搬送トレイ151aに書込む。また、プリンタ装置13は、場合によっては欠品箋を当該搬送トレイ151aに払出す。
【0453】
上記の例では、注射箋が搬送トレイ151aの最上面となるように載置される。注射箋の載置は、搬送先情報の印字後、及び輸液ラベルの載置後に行われる。注射箋の最上面への配置により、注射薬等の目視鑑査を行うユーザの利便性が向上する。但し、この点を考慮しなければ、印字及び載置順序は、上記の例に限定されない。つまり、搬送先情報の印字、並びに、輸液ラベル及び注射箋(場合によっては欠品箋)の払出しの順序(印字又は払出しの位置)は、上記の順序に限定されない。
【0454】
ここで、制御部1000は、例えば、注射薬払出装置100により注射薬の払出しが完了した、1患者への投与に係る処方データを、注射薬払出システム1の全体を統括的に制御する制御装置(不図示)から受信する。また、当該1患者への投与に係る処方データを受信するときに、当該注射薬が払出された搬送トレイ151aを注射薬払出装置100から受取る。
【0455】
例えば、注射薬払出装置100は、1患者への投与に係る処方データに示された注射薬の払出しが完了すると、当該払出しの完了を示す払出完了情報を制御装置に送信する。また、当該1患者への投与に係る処方データに示された注射薬の欠品が生じた場合には、例えば、注射薬払出装置100は、欠品の注射薬を示す欠品情報を払出完了情報に紐付けて、制御装置に送信する。制御装置は、この払出完了情報を確認することで、払出しが完了した1患者への投与に係る処方データ(場合によっては欠品情報)をプリンタ装置13に送信する。また、制御装置は、この確認により、当該1患者への投与に係る処方データに示された注射薬が載置された搬送トレイ151aをプリンタ装置13に搬送するように、注射薬払出装置100に指示する。
【0456】
これにより、制御部1000は、1患者への投与に係る処方データに基づく搬送先情報を、印字対象となる搬送トレイ151aを誤認することなく、当該搬送トレイ151aに印字できる。また、制御部1000は、当該1患者への投与に係る処方データに基づく輸液ラベル及び注射箋(場合によっては欠品箋)を、払出対象となる搬送トレイ151aを誤認することなく、当該搬送トレイ151aに払出すことができる。
【0457】
なお、制御部1000は、払出完了情報として、払出しが完了した1患者への投与に係る処方データを、注射薬払出装置100から直接受信しても構わない。この場合、注射薬払出装置100は、払出完了情報を送信するときに、搬送トレイ151aをプリンタ装置13に搬送する。
【0458】
〔トレイ搬送機構〕
トレイ搬送機構900は、
図39に示すように、制御部1000の制御に基づき、注射薬払出装置100から第1位置P101まで搬送された搬送トレイ151aを、第2位置P102及び第3位置P103を介して、排出リフタ14へと搬送するものである。トレイ搬送機構900は、搬送トレイ151aを搬送するために、プリンタ装置13の底部に設けられている。本実施形態では、トレイ搬送機構900は、第1位置P101と第2位置P102との間で搬送トレイ151aを移動させる第1移動機構と、第1位置P101と第3位置P103との間で搬送トレイ151aを移動させる第2移動機構とを有する。
【0459】
制御部1000は、トレイ搬送機構900を制御することで、1患者への投与に係る処方データを受信したときに第1位置P101に搬送された搬送トレイ151aを、第1位置P101から第2位置P102へと移動させる。
【0460】
制御部1000は、輸液ラベル払出装置400により払出された輸液ラベルの、搬送トレイ151aへの搬送が完了したと判定した場合、トレイ搬送機構900を制御することで、搬送トレイ151aを第3位置P103まで搬送させる。制御部1000は、例えば、輸液ラベル搬送機構700が輸液ラベルを搬送トレイ151aへ載置した後、輸液ラベル把持部701を待機位置(後述)まで戻したときに、上記搬送が完了したと判定しても構わない。
【0461】
その後、制御部1000は、注射箋払出装置500により払出された注射箋の、搬送トレイ151aへの搬送が完了したと判定した場合、トレイ搬送機構900を制御することで、搬送トレイ151aを排出リフタ14へと搬送させる。制御部1000は、例えば、注射箋搬送機構800が注射箋を搬送トレイ151aへ載置した後、注射箋把持部801を待機位置(後述)まで戻したときに、上記搬送が完了したと判定しても構わない。
【0462】
なお、プリンタ装置13の前面から搬送トレイ151aを受取る上述した構成の場合、制御部1000は、第2位置P102で受取った搬送トレイ151aへの搬送先情報の印字、及び輸液ラベルの収容が完了した後、第1位置P101を経由して、第3位置P103へと搬送トレイ151aを移動させる。つまりこの場合、トレイ搬送機構900は、制御部1000の制御に基づき、注射薬払出装置100から第2位置P102まで搬送された搬送トレイ151aを、第1位置P101及び第3位置P103を介して、排出リフタ14へと搬送するものである。
【0463】
〔搬送トレイ印字装置〕
次に、搬送トレイ印字装置300について説明する。
図40は、搬送トレイ印字装置300の一例を示す正面図である。
【0464】
搬送トレイ印字装置300は、搬送トレイ151aの搬送先を示す搬送先情報(例:患者名及び病棟名)を、搬送トレイ151aの所定位置に印字する。制御部1000は、第2位置P102に搬送トレイ151aが載置されたことを認識すると、搬送トレイ印字装置300を制御することで、受信した1患者への投与に係る処方データに含まれる、又は処方データに紐付けられた搬送先情報を搬送トレイ151aに印字する。搬送トレイ印字装置300は、搬送トレイ印字装置300の前に搬送された搬送トレイ151aの1側面の略中央付近に、搬送先情報を印字する。
【0465】
なお、例えば、搬送トレイ151aの経路上に複数のセンサ(不図示)を設けておく。これにより、制御部1000は、各センサの出力に基づいて、第1位置P101、第2位置P102及び第3位置P103のいずれに搬送トレイ151aが配置されているかを認識しても構わない。
【0466】
搬送トレイ印字装置300は、搬送トレイ151aに非接触で搬送先情報を印字可能な装置である。本実施形態では、搬送トレイ印字装置300は、レーザLsを出射することで対象物に情報を印字するレーザーマーカーである。
【0467】
但し、搬送トレイ印字装置300は、レーザーマーカーに限らず、搬送トレイ151aに搬送先情報を書込可能な搬送トレイ書込装置であれば良い。例えば、搬送トレイ書込装置は、搬送先情報を送信する送信部を備えると共に、搬送トレイ151aには、電子カード(又は電子ペーパー)、及び搬送先情報を受信する受信部が設けられる。これにより、搬送トレイ書込装置が送信した搬送先情報を電子カードに表示できる。また、搬送トレイ151aに磁気カードを取外し可能に設け、搬送トレイ書込装置は、当該磁気カードに搬送先情報を書込可能な装置であっても構わない。さらに、搬送トレイ書込装置は、熱を用いて搬送先情報を搬送トレイ151aに書込んでも構わない。
【0468】
例えば磁気カードを用いた場合、取外した状態で磁気カードに搬送先情報を書込むことになる。この場合、磁気カードを搬送トレイ151aから取外すときに、磁気カードが搬送トレイ151aの一部に引っかかってしまう可能性がある。また、電子カードを用いた場合にはこのような問題は起こらないが、費用が比較的高くなってしまう。
【0469】
搬送トレイ印字装置300としてレーザーマーカーを用いることで、安価に、かつ磁気カードのような手間を発生させることなく、搬送トレイ151aに搬送先情報を印字できる。
【0470】
〔輸液ラベル払出装置及び輸液ラベル搬送機構〕
次に、輸液ラベル払出装置400、及び輸液ラベル搬送機構700について説明する。
図41の(a)は、輸液ラベル払出装置400、及び輸液ラベル搬送機構700の一例を示す斜視図であり、(b)及び(c)は、輸液ラベル払出装置400が備える輸液ラベル受取部403の一例を示す斜視図である。
図42は、輸液ラベル払出装置400の一例を示す平面図である。
【0471】
輸液ラベル払出装置400は、輸液容器に貼付けられる輸液ラベルを払出すものである。また、輸液ラベル搬送機構700は、輸液ラベル払出装置400が払出した輸液ラベルを把持して、搬送トレイ151aへと搬送するものである。輸液ラベル払出装置400及び輸液ラベル搬送機構700は、輸液ラベルを搬送トレイ151aに払出すラベル払出装置として機能する。
【0472】
<輸液ラベル払出装置の詳細>
図41の(a)及び
図42に示すように、本実施形態では、輸液ラベル払出装置400として2つの輸液ラベル払出装置400a及び400bを備える。
図42に示すように、2つの輸液ラベル払出装置400a及び400bは、第2位置P102の上方に設けられた台座450に配置されている。上述したように、台座450の、第2位置P102と対向する位置(第2位置P102に搬送された搬送トレイ151aと対向する位置)に、貫通孔400hが形成されている。
【0473】
輸液ラベル払出装置400は、
図41の(a)に示すように、印字シート保管部401、第1本体部402、輸液ラベル受取部403、及び受取部回動機構404を備える。印字シート保管部401は、内容物情報の印字対象となる印字シートを保管するものである。第1本体部402は、受信した1患者への投与に係る処方データに示される内容物情報を、印字シート保管部401に保管された印字シートに印字することで、輸液ラベルを発行するものである。
【0474】
輸液ラベル受取部403は、第1本体部402で発行された輸液ラベルを受取り、一時的に収容しておくものである。
図41の(b)に示すように、底部403bから立設した側壁403cによって、輸液ラベル受取部403に輸液ラベルを収容する空間が形成されている。また、側壁403cによって、第1本体部402から輸液ラベルを受取り、かつ、輸液ラベル搬送機構700の輸液ラベル把持部701が輸液ラベルを抜取るための開口部403aが形成されている。また、側壁403cによって、輸液ラベル把持部701が備える一対の爪部702の開閉動作を可能とするための間隙部403dが形成されている。
【0475】
一対の爪部702は、
図43の(b)に示すように、輸液ラベル受取部403に収容された輸液ラベルを把持するときに開く。本実施形態では、
図41の(b)に示すように、側壁403cは、その中央に間隙部403dを有する形状となっている。そのため、一対の爪部702は、輸液ラベルを把持するときに、側壁403cに衝突することなく、間隙部403dを介して開閉動作を行うことが可能となる。
【0476】
一方、間隙部403dが形成されていない場合、輸液ラベルを把持するときに、輸液ラベル受取部403の内部で一対の爪部702を開くことができる程度の空間を形成しておくことが必要となる。この場合、厚みW10を、当該空間を形成する程度の厚みとする必要がある。しかし、輸液ラベルは薄く、かつ、一度に収容される輸液ラベルの数は数枚程度(例:1~5枚程度)であるため、厚みW10をそれほど厚くする必要は無い。上記のように、側壁403cが間隙部403dを有することで、輸液ラベル受取部403を比較的小さくすることができる。この点を鑑みなければ、輸液ラベル受取部403は間隙部403dを有していなくも構わない。
【0477】
輸液ラベル受取部403は、開口部403aの向きが変更可能なように設けられている。具体的には、輸液ラベル受取部403は、ラベル受取位置(
図43の(a)の状態)では、開口部403aを第1本体部402側に向けた状態で固定される。ラベル受取位置は、輸液ラベル受取部403が第1本体部402から発行された輸液ラベルを受取るときの輸液ラベル受取部403の位置である。一方、輸液ラベル受取部403は、ラベル把持位置(
図43の(b)及び(c)の状態)では、開口部403aを輸液ラベル把持部701側(Z軸方向;上方向)に向けた状態で固定される。ラベル把持位置は、輸液ラベル把持部701が、輸液ラベル受取部403に収容された輸液ラベルを把持するときの輸液ラベル受取部403の位置である。
【0478】
なお、輸液ラベル受取部403には、
図41の(c)に示すように、アタッチメント403eが取付けられても構わない。アタッチメント403eは、輸液ラベル受取部403の底部の高さを調整するものであり、開口部403aから輸液ラベル受取部403の内部に嵌合される。アタッチメント403eが取付けられていない場合、比較的小さい輸液ラベルが輸液ラベル受取部403に収容されると、輸液ラベル把持部701が輸液ラベルを把持できない可能性がある。輸液ラベル受取部403にアタッチメント403eを取付けることで、輸液ラベル受取部403の底部を高くできる。そのため、上記輸液ラベルが払出された場合であっても、輸液ラベル把持部701による当該輸液ラベルの把持が可能となる。
【0479】
受取部回動機構404は、Y軸方向に延伸する軸部と、軸部を回動させる駆動機構とを備える。上記軸部に輸液ラベル受取部403(例:側壁403c)が取付けられている。受取部回動機構404は、駆動機構により軸部を回動させることで、輸液ラベル受取部403を当該軸部の周りに回動させる。これにより、輸液ラベル受取部403は、ラベル受取位置及びラベル把持位置のそれぞれにおいて開口部403aの向きが上述した向きとなるように、ラベル受取位置とラベル把持位置との間で移動できる。
【0480】
また、
図43の(a)に示すように、ラベル受取位置において、輸液ラベル受取部403の開口部403aと、第1本体部402の、輸液ラベルを払出すラベル払出口402a(又はその近傍)とが互いに対向する位置となっている。つまり、ラベル受取位置において、当該位置関係となるように、輸液ラベル受取部403及び受取部回動機構404が配置されている。換言すれば、輸液ラベル受取部403は、回動することで、ラベル払出口402a(またはその近傍)に対向する位置することが可能な部材である。
【0481】
また、輸液ラベル受取部403の近傍又は第1本体部402のラベル払出口402aには、輸液ラベル受取部403に収容される輸液ラベル(第1本体部402が払出した輸液ラベル)を計数するラベル計数部(不図示)が設けられていても構わない。ラベル計数部(例:センサ)からの通知により、制御部1000は、規定された枚数の輸液ラベルが払出されたか否かを判定できる。
【0482】
<輸液ラベル搬送機構の詳細>
次に、輸液ラベル搬送機構700について説明する。
図49の(a)及び(b)は、輸液ラベル把持部701の一例を示す斜視図である。
【0483】
図41の(a)に示すように、本実施形態では、輸液ラベル搬送機構700は、輸液ラベル把持部701a、701b(総称して輸液ラベル把持部701とも称する)、第1支持部711、第2支持部712、及び第3支持部713を備える。
【0484】
輸液ラベル把持部701は、輸液ラベル受取部403に払出された輸液ラベルを把持(挟持)するものである。また、輸液ラベル把持部701は、把持した輸液ラベルを搬送トレイ151aに載置するために、搬送トレイ151a上で輸液ラベルをリリースする。輸液ラベル把持部701a及び701bは、この把持及びリリース動作を実現するために、その先端部にそれぞれ、開閉動作を行うことが可能な一対の爪部702a及び702bを備える(
図49の(a)及び(b)も参照)。なお、一対の爪部702a及び702bは、総称して一対の爪部702とも称する。
【0485】
また、輸液ラベル把持部701は、
図49の(a)及び(b)に示すように、固定具703と、一対の爪部702を開閉させる把持部駆動機構704と、把持部駆動機構704に支持される共に、固定具703を支持する支柱705とを備える。
【0486】
固定具703は、支柱705を介して把持部駆動機構704と固定されているものである。固定具703は、一対の爪部702の一方(ここでは一方の爪部7021と称する)の、輸液ラベルを把持する側と反対側の表面に対向して設けられている。また、固定具703は、支柱705で支持されることで、把持部駆動機構704が一対の爪部702の開閉動作を実行しても、その開閉動作に伴い一対の爪部702と共に移動することが無い。
【0487】
固定具703には、一方の爪部7021に向けて延伸する棒状部材703aが設けられている。また、一方の爪部7021には、棒状部材703aが貫通することが可能な開口部7021aが設けられている。棒状部材703aは、一対の爪部702が閉じた状態においては、開口部7021aを貫通しない位置(棒状部材703aの全体が上記反対側の表面と対向する位置)に位置している。一方、棒状部材703aは、一対の爪部702が開いた状態においては、
図49の(a)及び(b)に示すように、その先端部が開口部7021aから一対の爪部702の内側へと突出した位置に位置する。
【0488】
これにより、一対の爪部702が開いたときに、把持していた輸液ラベルが、静電気等により一方の爪部7021に付着していたとしても、開口部7021aから突出した棒状部材703aにより、一方の爪部7021から輸液ラベルを物理的に剥離できる。そのため、固定具703を設けることで、一対の爪部702が開いたときに、把持していた輸液ラベルを確実にリリースできる。つまり、固定具703は、一対の爪部702に付着した輸液ラベルを剥離するラベル剥離部として機能するといえる。
【0489】
なお、他方の爪部7022に固定具703が設けられていても構わない。つまり、固定具703は、一方の爪部7021及び/又は他方の爪部7022に設けられていても構わない。
【0490】
輸液ラベル把持部701は、Z軸方向に移動可能なように、第3支持部713に取付けられている。つまり、第3支持部713は、輸液ラベル把持部701を支持し、かつ輸液ラベル把持部701をZ軸方向に移動させる移動機構である。
【0491】
第3支持部713は、待機位置と、ラベル把持位置の輸液ラベル受取部403との間において輸液ラベル把持部701を移動させる。また、第3支持部713は、搬送トレイ151aの上方の位置(待機位置と同等の高さの位置)と、搬送トレイ151aの近傍位置(ラベルリリース位置)との間において輸液ラベル把持部701を移動させる。なお、待機位置は、輸液ラベル受取部403の上方であって、輸液ラベル受取部403に収容された輸液ラベルの把持を待機する位置である。
【0492】
第1支持部711は、輸液ラベル把持部701を支持し、かつ輸液ラベル把持部701をY軸方向に移動させる移動機構である。具体的には、第1支持部711には、輸液ラベル把持部701が取付けられた第3支持部713が、Y軸方向に移動可能なように取付けられている。これにより、輸液ラベル把持部701は、待機位置と、第1支持部711の中央付近との間での移動が可能となる。
【0493】
第2支持部712は、輸液ラベル把持部701を支持し、かつ輸液ラベル把持部701をX軸方向に移動させる移動機構である。具体的には、第2支持部712には、第3支持部713が取付けられた第1支持部711が、X軸方向に移動可能なように取付けられている。これにより、輸液ラベル把持部701は、第1支持部711の中央付近と、搬送トレイ151aの上方の位置との間での移動が可能となる。
【0494】
<輸液ラベル払出装置及び輸液ラベル搬送機構の動作>
次に、輸液ラベル搬送機構700による輸液ラベルの把持動作及び搬送動作について説明する。
図43の(a)~(d)は、輸液ラベル搬送機構700による輸液ラベルLaの把持動作の一例について説明するための図である。
図44の(a)~(d)は、輸液ラベル搬送機構700による輸液ラベルLaの搬送動作の一例について説明するための図である。
【0495】
図43の(a)に示すように、輸液ラベル払出装置400では、制御部1000の制御に基づき第1本体部402が輸液ラベルLaを払出すと、輸液ラベルLaは輸液ラベル受取部403に収容される。制御部1000は、輸液ラベルLaが規定された枚数収容されたと判定すると、
図43の(b)に示すように、輸液ラベルLaが収容された輸液ラベル受取部403の開口部403aが輸液ラベル把持部701側を向くように、輸液ラベル受取部403を回動させる。この状態において、制御部1000は、輸液ラベル把持部701を、待機位置から輸液ラベル受取部403まで移動させる。
【0496】
図43の(b)に示すように、制御部1000は、ラベル把持位置において一対の爪部702を開いた後、
図43の(c)に示すように、一対の爪部702を閉じることで、輸液ラベル受取部403に収容された輸液ラベルLaを把持する。
図43の(d)に示すように、制御部1000は、輸液ラベルLaを把持した状態で、輸液ラベル把持部701を待機位置まで引き上げる。またこのとき、制御部1000は、輸液ラベルLaが抜取られた後、開口部403aが元の向き(第1本体部402側)を向くように、輸液ラベル受取部403を回動させる。
【0497】
なお、輸液ラベル受取部403の内部にセンサ(不図示)を設けておくことで、制御部1000は、その内部に輸液ラベルLaが存在するか否かを判定できる。また、例えば一対の爪部702(不図示)にセンサを設けておくことで、制御部1000は、一対の爪部702が輸液ラベルLaを把持した状態であるか否かを判定する。
【0498】
また、制御部1000は、輸液ラベル受取部403に設けられたセンサと、上述したラベル払出口402aに設けられたラベル計数部からの通知を受けたことをトリガとして、輸液ラベル把持部701による把持動作を開始させても構わない。具体的には、制御部1000は、第1本体部402から規定された枚数の輸液ラベルLaが払出され、かつ輸液ラベル受取部403に輸液ラベルLaが存在することを認識したことをトリガとして、上記把持動作を開始させても構わない。またこのとき、制御部1000は、開口部403aが輸液ラベル把持部701側を向くように輸液ラベル受取部403を回動させる。この構成の場合、輸液ラベル払出装置400から輸液ラベルLaの払出しが完了したことを示す通知を受けて上記把持動作を行う場合に比べ、当該把持動作の開始を早めることができる。
【0499】
図44の(a)は、待機位置で、輸液ラベル把持部701が輸液ラベルLaを把持している状態を示している。この状態から、
図44の(b)に示すように、制御部1000は、各待機位置まで移動した輸液ラベル把持部701を、第1支持部711の中央付近まで移動させる。制御部1000は、輸液ラベル把持部701を中央付近まで移動させた後、第1支持部711を貫通孔400hの上方(つまり、搬送トレイ151aが載置された第2位置P102)まで移動させる。具体的には、制御部1000は、輸液ラベル把持部701が把持した輸液ラベルLaを、当該輸液ラベルLaを配置すべき搬送トレイ151a内の位置(輸液ラベル載置領域)の上方まで移動させる。
【0500】
その後、
図44の(d)に示すように、制御部1000は、輸液ラベルLaを把持した輸液ラベル把持部701を降下させ、ラベルリリース位置で一対の爪部702を開くことで、輸液ラベルLaを搬送トレイ151aに載置する。
【0501】
次に、搬送トレイ151aにおける輸液ラベルLaの載置位置について説明する。
図45の(a)及び(b)は、搬送トレイ151aにおける輸液ラベルLaの載置位置について説明するための図である。上述のように、搬送トレイ151aの内部には小型トレイ151bが4つ収容されているものとする。また、各小型トレイ151bには、注射薬が払出されず、かつ輸液ラベルLaが払出される領域である輸液ラベル載置領域151rが設けられているものとする。また、受信した1患者への投与に係る処方データに示された内容物情報には、朝投与分、昼投与分、夕投与分、及び就寝前投与分の4つの情報が含まれているものとする。
【0502】
ここで、
図45では、説明の便宜上、4つの小型トレイ151bを、搬送トレイ151aの搬送方向から順に、小型トレイ151b1、151b2、151b3及び151b4と称する。また、小型トレイ151b1、151b2、151b3及び151b4には、それぞれ朝投与分、昼投与分、夕投与分、及び就寝前投与分の注射薬が払出されているものとする。なお、受信した1患者への投与に係る処方データには、搬送トレイ151aにおける注射薬の配置位置を示す情報が紐付けられている。そのため、制御部1000は、当該処方データを解析することで、小型トレイ151b1、151b2、151b3及び151b4への上記のような払出し(注射薬の所定位置への払出し)を実現できる。
【0503】
制御部1000は、受信した1患者への投与に係る処方データに示された内容物情報について、輸液ラベル払出装置400a及び400bのいずれで印字して輸液ラベルLaを払出すのかを特定する。例えば、制御部1000は、朝投与分及び夕投与分の輸液ラベルLaを輸液ラベル払出装置400aから払出させ、昼投与分及び就寝前投与分の輸液ラベルLaを輸液ラベル払出装置400bから払出させる。換言すれば、輸液ラベル払出装置400aから払出された輸液ラベルLaは、小型トレイ151b1(搬送トレイ151aの1番目の区画)、及び小型トレイ151b3(3番目の区画)に払出される。輸液ラベル払出装置400bから払出された輸液ラベルLaは、小型トレイ151b2(2番目の区画)、及び小型トレイ151b4(4番目の区画)に払出される。
【0504】
また、制御部1000は、1度目の払出し時に、輸液ラベル払出装置400aから朝投与分の輸液ラベルLaを小型トレイ151b1に払出させると共に、輸液ラベル払出装置400bから昼投与分の輸液ラベルLaを小型トレイ151b2に払出させる。
図45の(a)に示すように、1度目の払出し時に、輸液ラベル払出装置400aから払出された朝投与分の輸液ラベルLaは、輸液ラベル把持部701aにより小型トレイ151b1の輸液ラベル載置領域151rに払出される。また、輸液ラベル払出装置400bから払出された昼投与分の輸液ラベルLaは、輸液ラベル把持部701bにより小型トレイ151b2の輸液ラベル載置領域151rに払出される。
【0505】
また、制御部1000は、2度目の払出し時に、輸液ラベル払出装置400aから夕投与分の輸液ラベルLaを小型トレイ151b3に払出させる共に、輸液ラベル払出装置400bから就寝前投与分の輸液ラベルLaを小型トレイ151b4に払出させる。
図45の(b)に示すように、2度目の払出し時に、輸液ラベル払出装置400aから払出された夕投与分の輸液ラベルLaは、輸液ラベル把持部701bにより小型トレイ151b3の輸液ラベル載置領域151rに払出される。また、輸液ラベル払出装置400bから払出された就寝前投与分の輸液ラベルLaは、輸液ラベル把持部701bにより小型トレイ151b4の輸液ラベル載置領域151rに払出される。
【0506】
なお、上述した輸液ラベルLaの払出方法はあくまで一例であって、どのような順序で払出されても構わない。例えば、輸液ラベル払出装置400aから昼投与分及び就寝前投与分の輸液ラベルLaが払出され、輸液ラベル払出装置400bから朝投与分及び夕投与分の輸液ラベルLaが払出されても構わない。また、1度目の払出しと2度目の払出しが逆であっても構わない。
【0507】
このように、本実施形態では、複数の輸液ラベル払出装置400のそれぞれに対して、輸液ラベル把持部701と、輸液ラベル把持部701を搬送するための第1支持部711及び第3支持部713とを備えている。また、輸液ラベル把持部701を搬送するための第2支持部712を備えている。そのため、上述したように、一度の払出しにおいて、複数の輸液ラベル払出装置400を並行して動作させると共に、各輸液ラベル払出装置400から払出された輸液ラベルLaを、搬送トレイ151aの所定の位置(区画)に搬送できる。つまり、複数の輸液ラベルLaを効率良く払出すことができる。
【0508】
また、プリンタ装置13は、複数の輸液ラベル払出装置400を備えている。そのため、任意の輸液ラベル払出装置400が輸液ラベルLaを払出せなくなった(当該輸液ラベル払出装置400に障害が発生した)としても、残りの輸液ラベル払出装置400で、任意の輸液ラベル払出装置400の払出し分の輸液ラベルLaも払出すことができる。例えば輸液ラベル払出装置400aが故障したり、又は印字シートが無くなったりして輸液ラベルLaが払出せなくなった場合であっても、輸液ラベル払出装置400aの払出し分の輸液ラベルLaを輸液ラベル払出装置400bから払出すことができる。この場合、制御部1000は、受信した1患者への投与に係る処方データに示される内容物情報に含まれる各情報(例:上記4つの投与分)を印字シートに順に印字することで、各情報に係る輸液ラベルLaを、輸液ラベル払出装置400bから払出させる。
【0509】
なお、上述のような処理の効率化、又は障害発生時の代替処理について考慮しなければ、輸液ラベル払出装置400は1台であっても構わない。また、輸液ラベル払出装置400は3台以上であっても構わない。但しこの場合、個々の輸液ラベル払出装置400に対応して輸液ラベル把持部701等が設けられる。
【0510】
また、輸液ラベル搬送機構700では、輸液ラベル把持部701が輸液ラベルLaを把持すると共に、輸液ラベル把持部701を第1支持部711、第2支持部712及び第3支持部713に沿って移動させる。そのため、搬送トレイ151aの所定の位置(例:各小型トレイ151bの輸液ラベル載置領域151r)に精度良く載置できる。
【0511】
〔注射箋払出装置及び注射箋搬送機構〕
次に、注射箋払出装置500について説明する。
図46は、注射箋払出装置500の一例を示す図であり、(a)は、注射箋払出装置500の一例を示す正面図であり、(b)及び(c)は、注射箋受取部512の一例を示す斜視図である。
【0512】
<注射箋払出装置の詳細>
注射箋払出装置500は、搬送トレイ151aに収容された注射薬を示す収容物情報を印字した注射箋を払出すものである。
図46の(a)に示すように、注射箋払出装置500は、第2本体部511及び注射箋受取部512を備える。
【0513】
第2本体部511は、受信した1患者への投与に係る処方データに示される注射薬を示す収容物情報を、保管されている用紙に印字することで、注射箋を発行するものである。欠品情報を受信している場合には、欠品情報に示される注射薬については、注射薬払出装置100から搬送トレイ151aに払出されていない。そのため、第2本体部511は、上記処方データに示される注射薬のうち、欠品情報に示される注射薬を除いた注射薬に関する情報を、収容物情報として用紙に印字しても構わない。また、第2本体部511は、注射箋を注射箋受取部512へと払出す注射箋払出口511aを有する。
【0514】
注射箋受取部512は、第2本体部511で発行された注射箋を受取り、当該注射箋が一時的に載置される箇所である。
図46の(b)に示すように、注射箋受取部512は、隆起部512a及び切欠部512bを有する。
【0515】
隆起部512aは、第2本体部511で発行された注射箋を、注射箋受取部512の底部(受板)から持ち上げた状態で受取るためのものである。隆起部512aは、
図46の(b)に示すように、断面凸型の形状(湾曲形状)を有する複数の板状部材である。
【0516】
板状部材の、注射箋払出口511a側の高さは、注射箋払出口511aから払出された注射箋が板状部材に衝突しない程度に低くなっている。また、隆起部512aの中央付近よりも注射箋払出口511a側において、板状部材の高さが最大となっている。
【0517】
上記高さが最大となる位置は、注射箋搬送機構800の注射箋把持部801が切欠部512b側から注射箋を把持する位置(又はその近傍位置)である。そのため、上記のような形状の板状部材を隆起部512aとして設けることで、注射箋把持部801の把持が容易となる。なお、注射箋は、
図46の(c)に示すように隆起部512aに載置される。
【0518】
隆起部512aは、注射箋把持部801による注射箋の把持を容易にするように注射箋を持ち上げる形状であれば良い。例えば、隆起部512aは複数の板状部材で構成されるのではなく、板状部材と同様の断面形状を有する1つの部材であっても構わない。
【0519】
切欠部512bは、注射箋把持部801が近付く位置に設けられている。これにより、注射箋把持部801は、注射箋受取部512に近付いたときに、注射箋受取部512と接触(衝突)せずに注射箋を把持できる。
【0520】
また、本実施形態では、
図37に示すように、注射箋払出装置500は2台設けられている。制御部1000は、受信した1患者への投与に係る処方データの一部に示される注射薬(例:小型トレイ151b1及び151b2に払出された注射薬)を示す注射箋を、一方の注射箋払出装置500から払出させる。また、制御部1000は、上記処方データの残りに示される注射薬(例:小型トレイ151b3及び151b4に払出された注射薬)を示す注射箋を、他方の注射箋払出装置500から払出させる。なお、注射箋払出装置500は、2台に限られず、1台であっても構わないし、3台以上であっても構わない。
【0521】
<注射箋払出搬送機構の詳細>
次に、注射箋搬送機構800について説明する。
図47の(a)及び(b)は、注射箋搬送機構800の一例を示す斜視図である。
【0522】
注射箋搬送機構800は、
図47の(a)に示すように、注射箋把持部801、把持部回動機構803、第4支持部811及び第5支持部812を備える。
【0523】
注射箋把持部801は、注射箋受取部512に払出された注射箋を把持(挟持)するものである。また、注射箋把持部801は、把持した注射箋を搬送トレイ151aに載置するために、搬送トレイ151a上で注射箋をリリースする。注射箋把持部801は、この把持及びリリース動作を実現するために、開閉動作を行うことが可能な一対の爪部802を備える。
【0524】
注射箋把持部801は、一対の爪部802の向きが変更可能なように設けられている。そのため、注射箋把持部801は、把持部回動機構803に取付けられている。具体的には、把持部回動機構803は、X軸方向に延伸する軸部と、軸部を回動させる駆動機構とを備え、上記軸部に注射箋把持部801が取付けられている。これにより、把持部回動機構803は、駆動機構により軸部を回動させることで、一対の爪部802を当該軸部の周りに回動させる。
【0525】
注射箋把持部801は、例えば注射箋把持位置P201及び注射箋昇降位置P202では、
図47の(a)に示すように、一対の爪部802を注射箋払出装置500の注射箋受取部512に向けている(+Y軸方向に向けている)状態である。注射箋把持位置P201は、注射箋把持部801が注射箋受取部512に載置された注射箋を把持するときの注射箋把持部801の位置である。また、注射箋昇降位置P202は、第5支持部812が注射箋把持部801をZ軸方向に移動(昇降)させるときの注射箋把持部801の位置である。
【0526】
例えばこの状態から、一対の爪部802が斜め下方向を向くように、注射箋把持部801を回動させた状態が、
図47の(b)に示されている。この状態への注射箋把持部801の回動は、例えば注射箋昇降位置P202で行われる。また、注射箋把持部801は、注射箋払出位置では、
図48の(d)に示すように、一対の爪部802が、第3位置P103に載置された搬送トレイ151aに向くように(-Z軸方向を向くように)回動される。注射箋払出位置は、注射箋把持部801が把持している注射箋をリリースして搬送トレイ151aに載置するときの注射箋把持部801の位置である。
【0527】
このように、把持部回動機構803は、+Y軸方向と-Z軸方向との間で一対の爪部802の向きを変更するように、注射箋把持部801を回動させる。
【0528】
第4支持部811は、把持部回動機構803を介して注射箋把持部801を支持するものである。第4支持部811は、注射箋把持部801をY軸方向に移動させる移動機構である。第4支持部811は、注射箋受取部512に載置された注射箋を把持するときに、注射箋把持部801及び把持部回動機構803を注射箋把持位置P201まで移動させる。一方、第4支持部811は、注射箋を把持した注射箋把持部801を搬送トレイ151a近傍まで降下させるときに、注射箋把持部801及び把持部回動機構803を注射箋昇降位置P202まで移動させる。
【0529】
注射箋把持部801は、一対の爪部802の他、一対の爪部802の開閉動作を実行する開閉動作機構等を備える。また、把持部回動機構803は、注射箋把持部801を回動させる駆動機構等を備える。そのため、第4支持部811に取付けられる注射箋把持部801及び把持部回動機構803を含む部材は、ある程度の大きさを有する。従って、注射箋把持部801及び把持部回動機構803を注射箋把持位置P201からそのまま搬送トレイ151a側に降下させた場合、注射箋把持部801又は把持部回動機構803が注射箋受取部512と接触(衝突)してしまう可能性がある。
【0530】
注射箋把持部801及び把持部回動機構803の昇降時に、注射箋把持位置P201から注射箋昇降位置P202へと移動させることで、注射箋把持部801又は把持部回動機構803と注射箋受取部512との接触を回避できる。
【0531】
第5支持部812は、注射箋把持部801を支持する第4支持部811を支持するものである。第5支持部812は、第4支持部811(つまり注射箋把持部801)をZ軸方向に移動させる移動機構である。第5支持部812は、
図37に示すように、プリンタ装置13の第3位置P103の近傍から立設しており、第3位置P103の近傍と、輸液ラベル払出装置400の上方に設けられた2台の注射箋払出装置500との間での注射箋把持部801の移動を可能とする。つまり、
図37に示すように、2台の注射箋払出装置500は、第5支持部812に沿って、輸液ラベル払出装置400の上方に設けられている。
【0532】
<注射箋搬送機構の動作>
次に、注射箋搬送機構800による注射箋Prの搬送動作について説明する。
図48の(a)~(d)は、注射箋搬送機構800による注射箋Prの搬送動作の一例について説明するための図である。なお、注射箋把持部801は、注射箋Prの搬送動作を行わない場合、例えば
図48の(c)に示す位置(下段の注射箋払出装置500と第3位置P103との間の位置;待機位置)に待機している。
【0533】
第2位置P102にて、搬送トレイ151aに対する印字、及び輸液ラベルの載置が完了すると、制御部1000は、トレイ搬送機構900を制御することで、搬送トレイ151aを第3位置P103へと移動させる。その後、制御部1000は、注射箋払出装置500に収容物情報を印字した注射箋Prを払出させる。なお、制御部1000は、第3位置P103に搬送トレイ151aが搬送される前に(例えば搬送トレイ151aが第2位置P102に載置され、上記印字及び輸送ラベルの載置が行われている間に)、注射箋払出装置500に注射箋Prを払出させても構わない。
【0534】
注射箋払出装置500による注射箋Prの払出しが完了すると、制御部1000は、第5支持部812を制御することで、待機位置から注射箋Prを払出した注射箋払出装置500まで、注射箋把持部801を移動させる。
【0535】
なお、第2本体部511の注射箋払出口511aには、注射箋受取部512に払出される注射箋Prを計数する注射箋計数部(不図示)が設けられていても構わない。この場合、注射箋計数部(例:センサ)からの通知により、制御部1000は、規定された枚数の注射箋Prが払出されたか否かを判定できる。また、制御部1000は、この通知を受けたことをトリガとして、待機位置から注射箋Prを払出した注射箋払出装置500までの注射箋把持部801の移動(つまり注射箋把持部801による注射箋Prの把持動作)を開始させても構わない。この構成の場合、注射箋払出装置500から注射箋Prの払出しが完了したことを示す通知を受けて上記移動を行う場合に比べ、当該移動の開始を早めることができる。
【0536】
制御部1000は、注射箋Prを払出した注射箋払出装置500に注射箋把持部801を移動させた後、
図48の(a)に示すように、第4支持部811を制御することで、注射箋昇降位置P202から注射箋把持位置P201へと移動させる。制御部1000は、注射箋把持部801を制御することで、注射箋受取部512に載置されている注射箋Prを把持する。なお、制御部1000は、例えば一対の爪部802にセンサ(不図示)を設けておくことで、一対の爪部802が注射箋Prを把持した状態であるか否かを判定する。
【0537】
制御部1000は、注射箋Prを把持した注射箋把持部801を第3位置P103まで搬送するため、
図48の(b)に示すように、第4支持部811を制御することで、注射箋把持部801を注射箋把持位置P201から注射箋昇降位置P202へと移動させる。
【0538】
制御部1000は、注射箋Prを把持した注射箋把持部801を注射箋昇降位置P202に移動させた後、
図48の(c)に示すように、第5支持部812を制御することで、注射箋把持部801を待機位置まで移動させ、待機位置で一旦停止(減速)させる。この位置で一旦減速することで、注射箋把持部801が搬送トレイ151aに衝突することを回避できる。
【0539】
制御部1000は、
図48の(d)に示すように、第5支持部812を制御することで、注射箋把持部801を、待機位置から第3位置P103に載置された搬送トレイ151aの近傍まで移動させる。その後、制御部1000は、把持部回動機構803を制御することで、一対の爪部802が搬送トレイ151a側を向くように注射箋把持部801を回動させると共に、注射箋把持部801を制御することで、注射箋Prを把持している一対の爪部802を開く。これにより、搬送トレイ151aに注射箋Prを載置できる。また、一対の爪部802を回動させながら開くことで、搬送トレイ151aに注射箋Prを静かに(つまり確実に)載置できる。
【0540】
その後、制御部1000は、把持部回動機構803を制御することで、一対の爪部802をY軸方向に向けた後、第5支持部812を制御することで、注射箋把持部801を待機位置へと移動させる。注射箋払出装置500が注射箋Prを払出すまで待機状態となる。
【0541】
なお、本実施形態では、把持部回動機構803は、注射箋昇降位置P202において、一対の爪部802が斜め下方向を向くように注射箋把持部801を回動させる。その後、第5支持部812が、注射箋昇降位置P202から待機位置まで注射箋把持部801を降下させる。つまり、注射箋Prを斜め下向きにした状態で降下させる。
【0542】
注射箋Prは、一般に、A4サイズ程度の用紙である。注射箋Prを把持したときの状態で注射箋把持部801をそのまま降下させた場合、注射箋Prの表面全体で空気圧を受けることになる。そのため、受けた空気圧に起因して注射箋Prが折れ曲がる可能性がある。上記のように、注射箋Prを斜め下向きにした状態で降下させることで、降下時の空気圧により注射箋Prが折れ曲がることを防止できる。
【0543】
このように、プリンタ装置13は、注射箋搬送機構800を備えることで、注射箋払出装置500が払出した注射箋を、第3位置P103に載置された搬送トレイ151aに載置できる。特に、複数の注射箋払出装置500を備える場合であっても、複数の注射箋払出装置500が設けられたそれぞれの位置に搬送トレイ151aを移動させることなく、注射箋を払出すことができる。
【0544】
また、輸液ラベル払出装置400と同様、複数の注射箋払出装置500を備えることで、任意の注射箋払出装置500が注射箋を払出せなくなったとしても、残りの注射箋払出装置500で、任意の注射箋払出装置500の払出し分の注射箋も払出すことができる。
【0545】
また、注射箋搬送機構800では、注射箋把持部801が注射箋を把持すると共に、注射箋把持部801を第4支持部811及び第5支持部812に沿って移動させる。そのため、注射箋を搬送トレイ151aに確実に載置できる。
【0546】
〔欠品箋払出装置〕
欠品箋払出装置600は、制御部1000の制御に基づき、欠品箋を搬送トレイ151aに払出すものである。具体的には、欠品箋払出装置600は、搬送トレイ151aに収容されるべき注射薬が搬送トレイ151aに収容されていない場合に、当該注射薬が収容されていないことを示す非収容物情報を印字した欠品箋を、搬送トレイ151aに払出す。本実施形態では、欠品箋払出装置600はサーマルプリンタであるが、欠品箋を払出すことが可能であれば、どのようなプリンタであっても構わない。
【0547】
欠品箋払出装置600は、例えば受信した1患者への投与に係る処方データに欠品情報が紐付けられている場合に、非収容物情報として欠品情報を印字した欠品箋を落下させることで、第3位置P103に搬送された搬送トレイ151aに欠品箋を載置する。
【0548】
〔上記構成の別表現〕
上記構成について、以下のように表現できる。
【0549】
[A]本発明の一態様に係るラベル払出装置は、薬剤(注射薬)を搬送するトレイ(搬送トレイ151a、小型トレイ151b)にラベル(輸液ラベルLa)を払出すラベル払出装置であって、
前記ラベルを払出すラベル払出部(輸液ラベル払出装置400)と、
前記ラベル払出部が払出したラベルを把持して、前記トレイへと搬送するラベル搬送部(輸液ラベル搬送機構700)と、を備える。
【0550】
薬剤払出装置によってトレイに払出される薬剤が注射薬である場合、当該注射薬と共に輸液容器が用いられる。そのため、当該注射薬が払出されるトレイには、輸液容器の内容物を示す内容物情報を印字した輸液ラベルが払出される。このような輸液ラベルを払出すラベル払出装置を含むプリンタ装置の一例が、例えば、特許文献2~5に開示されている。
【0551】
特許文献2の技術では、第1プリンタは、印刷した貼付ラベルをトレイに落下投入可能な位置に配置されている。つまり、第1プリンタから払出された貼付ラベルは、トレイに直接収容される。また、特許文献3の技術では、トレイを保持するトレイ保持部とラベルに印字する印字部との間に分配部を備える。分配部は、複数のラベル収容部を備え、かつ所定方向に移動可能である。当該技術では、印字されたラベルをラベル収容部に供給する供給動作と、トレイ保持部に保持されたトレイ内の区画に落下させる払出動作を行う。これにより、複数の区画に仕切られたトレイに対して、高効率でラベルを払出すことが可能となる。
【0552】
なお、特許文献4には、薬剤情報印刷物を払出すプリンタ(注射箋払出装置に相当)の技術が開示されている。薬剤情報印刷物が排出される排出口の下に設けられ、薬剤情報印刷物を受取る受板の支持部を揺動可能とすることで、薬剤情報印刷物を掴持した掴持部材の昇降を滑らかに行うことが可能となる。また、特許文献5の技術では、薬品自動払出装置は、印刷物を印刷し、かつトレイに投入するプリンタユニットの下部に、トレイに設けられた電子カードに患者情報を書込む電子カード書込手段が設けられている。これにより、プリンタユニットが印刷物をトレイに投入する間に、患者情報を電子カードに書込むことが可能となる。
【0553】
しかしながら、特許文献2の技術では、貼付ラベルを落下投入するため、トレイの所定位置に貼付ラベルを載置することは困難である。また、特許文献3の技術では、複数の区画のそれぞれにラベルを払出すことは可能であるが、各区画の所定位置にラベルを載置しようとするものでは無い。特許文献4及び5には、ラベルの払出しに関する記載は無い。
【0554】
本発明の一態様に係るラベル払出装置は、ラベルの払出しを効率良く行うことを可能とすることを目的とする。
【0555】
具体的には、上記のように、ラベル払出装置は、ラベル払出部が払出したラベルを把持してトレイへと搬送するラベル搬送部を備える。ラベルを把持して搬送するため、トレイの所定位置(例:トレイにおいて規定されたラベル載置領域)へとラベルを載置できる。
【0556】
なお、ラベル搬送部を設けずに、ラベル払出部(ラベル印字部)に対してトレイを移動させることで、トレイの所定位置へラベルを払出す手法も考えられる。しかしながら、この手法の場合、トレイを移動させるため、トレイを移動させる機構は複雑な機構となる。そのため、当該機構の製造又はメンテナンスに手間を要する可能性がある。ラベル搬送部は、トレイと比較して小さくかつ軽いラベルをトレイまで搬送可能な構成であればよいため、トレイを移動させる機構よりも簡易な構造となる。そのため、トレイを移動させる場合よりも、簡易な構造でトレイの所定位置にラベルを載置できる。
【0557】
また、本実施形態に開示のように、ラベル払出装置と連動する薬剤払出装置では、薬剤移動部は、薬剤を吸着する吸着機構を有しており、吸着した薬剤を、トレイの所定位置へ精度良く載置することが可能である。そのため、トレイにラベル載置領域を設けることが可能となる。つまり、薬剤払出装置は、ラベル載置領域を設けることができるように、薬剤をトレイへ払出すことができる。
【0558】
また、本実施形態に開示のように、トレイは複数の区画(小型トレイ)に分割されており、当該区画内にラベル載置領域が設けられている。つまり、ラベル載置領域は、ラベルが外部に放出されない程度の比較的狭い領域である。そのため、ラベルを精度良くトレイに載置する必要がある。
【0559】
つまり、ラベル払出装置は、本実施形態の薬剤払出装置のように、トレイの所定位置に精度良く薬剤を払出す装置と連動する場合に、特に有効に機能する。
【0560】
[B]本発明の一態様に係る印字装置(プリンタ装置13)は、薬剤(注射薬)を搬送するトレイ(搬送トレイ151a、小型トレイ151b)に収容された薬剤に関する情報を印字する印字装置であって、
前記トレイの搬送先を示す搬送先情報を、前記トレイの所定位置に書込むトレイ書込部(搬送トレイ印字装置300)と、
輸液容器に貼付けられる輸液ラベルを前記トレイに払出す輸液ラベル払出部(輸液ラベル払出装置400)と、
前記トレイに収容された薬剤を示す収容物情報を印字した収容物印字シート(注射箋Pr)を払出す第1シート払出部(注射箋払出装置500)と、
前記トレイに収容されるべき薬剤が前記トレイに収容されていない場合に、当該薬剤が収容されていないことを示す非収容物情報(欠品情報)を印字した非収容物印字シート(欠品箋)を払出す第2シート払出部(欠品箋払出装置600)と、を備える。
【0561】
上記の構成によれば、トレイ書込部、輸液ラベル払出部、第1シート払出部及び第2シート払出部を1つの筐体内に設けているため、薬剤払出システムの省スペース化を図ることが可能となる。なお、上述した特許文献2~5の技術では、これらの4つの構成を1つの筐体に設けることについての開示は無い。
【0562】
また、トレイ書込部、輸液ラベル払出部及び第1シート払出部に加え、第2シート払出部を備える。これにより、前段に設けられた薬剤払出装置において払出対象となった薬剤が欠品であることを、トレイ内に収容された薬剤を鑑査するユーザに通知できる。
【0563】
≪その他の構成3≫
以下に、主として、注射薬払出装置100の更なる構成及び処理、並びに、注射薬払出装置100の周辺装置であるプリンタ装置13の更なる構成及び処理等について説明する。但し、以下に示す説明において、上述した内容と重複する部分、又は具体的に記載した部分もあることに留意されたい。
【0564】
〔注射薬払出装置の別例〕
<カセット保持部の別例>
まず、
図51及び
図52を用いて、カセット保持部135について説明する。
図51は、カセット保持部135を備えた注射薬払出装置100の一例を示す斜視図である。
図52は、カセット兼薬剤保持部136の一例を示す図である。
図52の(a)は、カセット兼薬剤保持部136の概略的な分解断面図であり、(b)は転がり防止シート136cの一例を示す斜視図であり、(c)は、光源136dが点灯した状態におけるカセット兼薬剤保持部136の一例を示す平面図である。
【0565】
本例の注射薬払出装置100では、
図51に示すように、カセット保持部130に代えて、カセット保持部135が設けられている。カセット保持部135は、カセット保持部130a~130c、及びカセット兼薬剤保持部136を備えている。つまり、カセット保持部135は、カセット保持部130d(
図6参照)をカセット兼薬剤保持部136に代えたものである。カセット保持部130a~130c、及びカセット兼薬剤保持部136は、カセット保持部130と同様、それぞれカセット受入位置131a~131dと処理位置132a~132dとの間を移動する。
【0566】
カセット兼薬剤保持部136は、カセットCaを保持すると共に、注射薬(返品薬)を保持するものである。具体的には、カセット兼薬剤保持部136は、注射薬の払出動作時に、払出対象の注射薬が収容されたカセットCaを保持する一方、注射薬の返品動作時に、返品薬受入カセット161(
図16参照)から取出された返品薬を保持する。つまり、注射薬の返品時の動作において、方向揃えカセット162を用いる代わりに、カセット兼薬剤保持部136が用いられる。
【0567】
カセット兼薬剤保持部136は、
図52の(a)に示すように、基板136a、偏光シート136b及び転がり防止シート136cが下から順に積層されることで構成されている。つまり、転がり防止シート136cの表面において、カセットCa又は返品薬が保持される。
【0568】
基板136aには、複数の光源136d(バックライト)が配置されている。基板136a及び光源136dは光出射層を形成している。本実施形態では、光源136dは、赤色光を出射する赤色光源である。また、光源136dは、例えばLED(Light Emitting Diode)で実現される。
【0569】
なお、光源136dからの光が転がり防止シート136cの表面全体から略均一に出射できるのであれば、光源136dの数は1個であってもよい。また、光出射層が、例えば、(1)複数の光源136dと、(2)複数の光源136dを側面に備え、光源136dから出射された光を上面に載置された偏光シート136bへと導く導光路と、を備えた構成であっても構わない。
【0570】
偏光シート136bは、光源136dから受光した光を所定方向(例:偏光シート136bの表面に略垂直な方向)に揃えて、転がり防止シート136c側へと出射するものである。
【0571】
転がり防止シート136cは、その表面に載置された返品薬が転がらないようにするためのシートである。具体的には、
図52の(a)及び(b)に示すように、転がり防止シート136cには、略半球状の複数の突起部136c1が所定間隔で設けられている。この突起部136c1により、載置された返品薬の転がりが防止される。複数の突起部136c1は、返品薬の転がりを防止できるのであれば、どのように配置されていても構わない。
【0572】
また、転がり防止シート136c及び突起部136c1は、偏光シート136bを透過した光源136dからの光を透過可能な材質(例:アクリル樹脂)で構成されている。
【0573】
光源136dは、返品薬が載置された状態で点灯する。この状態において、位置特定用カメラ122bはカセット兼薬剤保持部136を撮像する。その結果、
図52の(c)に示すように、返品薬MDの輪郭が鮮明な画像を取得できる。つまり、位置特定用カメラ122b及びカセット兼薬剤保持部136は、返品薬MDの輪郭を検出する輪郭検出部(エッジ検出部)として機能する。
【0574】
光源136dが赤色光源である場合、例えば白色光を出射する白色光源を用いた場合よりも、撮像した画像において、注射薬とその周囲とのコントラストを高めることができる。また、返品薬の下方から光を照射し、かつ、偏光シート136bでその光の進行方向を揃えて出射させることで、撮像した画像において、返品薬の輪郭をより明瞭に取得できる。また、突起部136c1が略半球状であり、かつ所定間隔で設けられていることにより、撮像した画像には、画像処理で消去できる程度の突起部136c1の影しか映り込まない。そのため、返品薬の輪郭が鮮明な画像を取得できる結果、返品薬の形状モデルを精度良く作成することが可能となる。
【0575】
つまり、カセット兼薬剤保持部136は、注射薬の払出動作時に、払出対象の注射薬を収容したカセットCaが載置される載置台であって、注射薬の返品動作時に、返品薬の形状等を取得するために返品薬が載置される載置台である。カセット兼薬剤保持部136は、この2つの機能を共有する部材である。
【0576】
なお、返品薬の輪郭が鮮明な画像を取得するためには、処理位置132において、カセット兼薬剤保持部136の下方から光が照射されればよい。そのため、光源136dが、カセット兼薬剤保持部136に設けられている必要は必ずしもなく、例えば、処理位置132dに設けられていても構わない。
【0577】
また、カセット兼薬剤保持部136はカセット保持部130dに代えて設けられているが、これに限らず、カセット保持部130a~130dの少なくともいずれかに代えて設けられても構わない。カセット兼薬剤保持部136が複数備えられている場合には、返品薬を各カセット兼薬剤保持部136に載置した状態で撮像し、返品薬の輪郭が最も鮮明に取得できた画像を形状モデル作成のための画像として採用しても構わない。また、各カセット兼薬剤保持部136において、光源136dの種類又は出力等を変更しても構わない。
【0578】
また、形状モデルを精度良く作成することを考慮しなれば、上記の条件を満たしている必要は必ずしもない。
【0579】
この場合、カセット兼薬剤保持部136に載置された返品薬の撮像時に、返品薬の位置が特定できる程度の照度を有する光が照射されればよい。そのため、光源136dは赤色光源ではなく、他の色の光を出射する光源(例:白色光源)であっても構わない。
【0580】
また、光源136dは、例えば、カセット兼薬剤保持部136の表面の端部に設けられても構わないし、カセット兼薬剤保持部136以外の箇所(例:処理位置132d及び位置変更部126の近傍)に設けられていても構わない。この場合、基板136a及び偏光シート136bは不要であり、転がり防止シート136cは光透過性を有している必要は無い。従ってこの場合、カセット保持部130dに突起部136c1を備えた構成であっても構わない。
【0581】
また、突起部136c1の形状は、略半球状でなくてもよく、例えば、カセット兼薬剤保持部136の表面の中央付近を囲うように配置された棒状であっても構わない。
【0582】
<照明部材>
次に、
図6及び
図53を用いて、処理位置132での撮像時に用いられる照明部材128及び129の配置例について説明する。
図53は、照明部材128及び129の概略的な配置例を示す図である。
【0583】
図6及び
図53に示すように、位置特定用カメラ122の近傍には、照明部材128及び129が設けられている。
【0584】
照明部材128は、注射薬の払出動作時に、処理位置132においてカセットCaを撮像するときに、カセットCaに光を照射するものである。また、照明部材128は、注射薬の返品動作時に、処理位置132において大型返品薬カセット163(
図12参照)又は中小型返品薬カセット164(
図13参照)を撮像するときに、これらのカセットに光を照射するものである。照明部材128は、
図6及び
図53に示すように、位置特定用カメラ122a及び122bの近傍に設けられている。
【0585】
照明部材129は、注射薬の返品動作時に、処理位置132において返品薬受入カセット161を撮像するときに、返品薬受入カセット161に光を照射するものである。本実施形態では、カセット保持部130cにより保持される。そのため、照明部材129は、位置特定用カメラ122bの近傍に設けられている。
【0586】
なお、照明部材128及び129の配置は、カセット保持部130を備える注射薬払出装置100においても、カセット保持部135を備える注射薬払出装置100においても同じであってよい。
【0587】
<カセット保管例>
次に、カセット棚110におけるカセット保管例について、
図5を用いて説明する。
図5には、カセット棚110に、カセットCa、返品薬受入カセット161、大型返品薬カセット163、中小型返品薬カセット164、及び非払出薬受入カセット165が保管されている例が示されている。これらのカセットがカセット棚110に保管されている場合(つまり、方向揃えカセット162が保管されていない場合)、注射薬払出装置100は、カセット保持部としてカセット保持部135を備えている。
【0588】
図5の例では、カセット棚110の最下段に、返品薬受入カセット161、中小型返品薬カセット164及び大型返品薬カセット163が保管されており、その一段上の最端部に、非払出薬受入カセット165が保管されている。そして、それ以外の箇所にカセットCaが保管されている。
図5では、各種カセットの個数及び配置の一例を示しているにすぎず、各種カセットの個数及び配置は、注射薬払出装置100が設置される病院の取り決め(運用)に従って、適宜設定されればよい。
【0589】
非払出薬受入カセット165は、返品薬受入カセット161に収容された注射薬のうち、払出不可(又は再利用不可)と判別された注射薬又は物品を受け入れる。非払出薬受入カセット165は、払出対象としてカセット棚110(庫内)に取り込まない注射薬又は物品を収容するカセットであるともいえる。
【0590】
具体的には、非払出薬受入カセット165は、返品薬として、払出対象とすることができない注射薬、又は注射薬の形状とは異なる形状を有する物品を受け入れる。払出対象とすることができない注射薬としては、例えば、冷所保存を必要とする注射薬(冷所保存要薬剤)、薬品マスタに登録されていない注射薬(例:新薬)、及び有効期限切れの注射薬が挙げられる。また、上記物品としては、例えば、注射薬が収容された箱(箱入り薬剤)、及び、非払出薬受入カセット165に格納不可能な大きさを有する注射薬又は物品が挙げられる。非払出薬受入カセット165は、返品薬受入カセット161と同様、種々の返品薬又は物品を受入可能なように、特段の仕切り等が無い構成となっている。
【0591】
このように、カセット棚110には、その用途に応じた複数種類のカセットが保管される。具体的には、カセット棚110には、少なくとも、同種の薬剤を収容する特定薬剤収容カセットと、2種類以上の薬剤を、その配置位置を特定した状態で収容する混合薬剤収容カセットと、が保管される。特定薬剤収容カセットは、払出対象となり得る注射薬が収容されるカセットCaである。混合薬剤収容カセットは、配置位置を特定し、かつ整列した状態で返品薬を収容する大型返品薬カセット163及び中小型返品薬カセット164である。
【0592】
上述のように、カセットCaのカセット固有情報と、カセットCaに収容された注射薬の種類を示す注射薬識別情報とは、紐付けられて記憶部180に記憶されている。そのため、注射薬払出装置100は、処方データに示される注射薬の種類に基づき、払出対象となる注射薬が収容されたカセットCaを特定すると共に、当該注射薬の形状マスタに基づき、カセットCaに収容された注射薬の吸着位置を特定する。
【0593】
一方、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に収容された返品薬については、その配置位置及び種類が紐付けられて記憶部180に記憶されている。そのため、注射薬払出装置100は、処方データに示される注射薬の種類に基づき、払出対象となる返品薬が収容されたカセット、及びその配置位置を特定し、当該配置位置に基づき吸着位置を特定する。
【0594】
そのため、注射薬払出装置100は、処方データに示される注射薬の種類に基づき、カセットCa、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に収容された注射薬(返品薬)を払出すことが可能となる。つまり、注射薬払出装置100は、注射薬の払出動作時には、カセットCa、大型返品薬カセット163及び中小型返品薬カセット164のうちの少なくともいずれかをカセット棚110から取り出し、カセット保持部135に一時的に保持する。その後、処理位置132及び位置変更部126において注射薬払出しのための処理を行う。
【0595】
なお、上述した特定処理は、カセットCa、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164をカセット棚110から取出し、注射薬(返品薬を含む)の種類及び有効期限を特定するまでの処理を少なくとも含むものであってもよい。また、特定処理は、返品薬受入カセット161、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164をカセット棚110から取出し、返品薬の形状を特定するまでの処理を少なくとも含むものであってもよい。
【0596】
また、カセット棚110の収容対象となるカセットとしては、方向揃えカセット162も挙げられる。この場合、カセット保持部としては、載置対象がカセットのみであるカセット保持部130が設けられていても、光源136dを備え、載置対象がカセット及び返品薬であるカセット兼薬剤保持部136を備えるカセット保持部135が設けられていても構わない。
【0597】
このように、カセット棚110に保管されるカセットとしては、カセットCa、返品薬受入カセット161、方向揃えカセット162、大型返品薬カセット163、中小型返品薬カセット164、及び非払出薬受入カセット165が挙げられる。つまり、カセット棚110に保管されるm個のカセットは、カセットCaのみに限らず、(1)カセットCaと、(2)返品薬受入カセット161、方向揃えカセット162、大型返品薬カセット163、中小型返品薬カセット164、及び/又は非払出薬受入カセット165とによって構成されても構わない。
【0598】
<注射薬返品時の動作の別例>
次に、注射薬返品時の動作の別例について説明する。
図54は、返品薬に対する注射薬払出装置100の動作の別例を示すフローチャートである。
【0599】
まず、移送制御部191は、カセット移送部140により、返品薬受入カセット161、大型返品薬カセット163、及び中小型返品薬カセット164を、カセット保持部130へ移送する(SG1)。本例では、返品薬受入カセット161、大型返品薬カセット163、及び中小型返品薬カセット164はそれぞれ、カセット受入位置131cに存在するカセット保持部130c、カセット受入位置131bに存在するカセット保持部130b、カセット受入位置131aに存在するカセット保持部130aに載置される。但し、この並び順に限定されない。
【0600】
次に、駆動制御部192は、返品薬受入カセット161、大型返品薬カセット163、中小型返品薬カセット164及びカセット兼薬剤保持部136を処理位置132へ移動させる(SG2)。その後、制御部190は、返品薬受入カセット161、大型返品薬カセット163、及び中小型返品薬カセット164を撮像するために、照明部材128を点灯させる。制御部190は、照明部材128を点灯させた状態でこれらのカセットを撮像した後、照明部材128を消灯する。
【0601】
ここで、カセット保持部130a~130cにおいて、カセットCa、返品薬受入カセット161、大型返品薬カセット163及び中小型返品薬カセット164の位置は、カセット保持部130a~130cに載置されるたびに多少ずれる。そのため、制御部190は、これらのカセットが載置されるたびに、処理位置132において当該カセットの画像を撮像し、各カセットの所定位置を基準として、画像座標系(画像座標系を変換した世界座標系)とロボット座標系との位置関係を規定する。これにより、各カセットの位置ずれを補償できるので、吸着位置決定部194は正確な吸着位置を特定できる。また、搬送制御部193は、大型返品薬カセット163及び中小型返品薬カセット164の所定位置に、注射薬を載置できる。
【0602】
なお、方向揃えカセット162が用いられる場合も上記と同様、上記位置関係を規定することで、カセット保持部130dに対する方向揃えカセット162の位置ずれを補償しても構わない。また、大型返品薬カセット163及び中小型返品薬カセット164から返品薬を払出すときも、上記と同様の処理が行われる。
【0603】
吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122bにより返品薬受入カセット161の内部を撮像し、当該内部を撮像した画像から返品薬の位置(及び向き)を解析して、薬剤搬送部121による吸着位置を決定する(SG3)。吸着位置決定部194は、当該画像の撮像のために照明部材129を点灯し、撮像完了後に消灯する。照明部材129から出射された光は返品薬にて反射する。そのため、撮像した画像における白色領域(光の反射が反映された領域)を返品薬と推定できる。吸着位置決定部194は、撮像した画像における白色領域の略中心を吸着位置として特定する。
【0604】
上述したように、カセットCaに収容された注射薬の吸着位置の決定においては、画像の補正処理が行われる。カセットCaの場合、収容されている注射薬の種類は予め決められているので、当該注射薬の注射薬幅情報を用いて吸着位置を算出できる。一方、返品薬受入カセット161には、複数種類の返品薬が混在した状態で収容されている。また、返品薬受入カセット161から返品薬を取出す時点においては、当該返品薬の種類は不明である。そのため、注射薬幅情報を用いて上述した位置ずれの補正を行った上での吸着位置を算出できないので、返品薬受入カセット161から返品薬を取出すときには、返品薬の種類に依らず所定の幅情報(例:幅20mm)を用いて吸着位置を算出しても構わない。
【0605】
なお、上記処理は、
図15のSB3及びSB5において同様に行われても構わない。
【0606】
搬送制御部193は、吸着位置決定部194が決定した吸着位置で、薬剤搬送部121により返品薬を吸着し、返品薬受入カセット161からカセット兼薬剤保持部136へ搬送する(SG4)。
【0607】
カセット兼薬剤保持部136に返品薬が搬送されると、制御部190は、光源136dを点灯させた後、位置特定用カメラ122bにより、カセット兼薬剤保持部136に載置された返品薬を撮像する。上述したように、光源136dを点灯させることにより、当該返品薬の輪郭が鮮明な画像を撮像できる。そのため、制御部190は、当該画像を解析することにより、薬品の向き(角度0°~360)、形状及び大きさを精度良く特定できる。従って、制御部190は、ステップSG3での撮像時よりも、吸着位置を正確に特定できる。
【0608】
このように、注射薬払出装置100では、位置特定用カメラ122bという1つのカメラで撮像された画像を解析することで、返品薬の取出し及び返品薬の形状特定が行われる。
【0609】
制御部190は、特定した返品薬の形状が、予め記憶部180に記憶された規定形状に準じた形状であるか否かを判定する(SG5)。規定形状とは、注射薬(例:アンプル、バイアル)として一般に想定される大凡の形状を指す。制御部190は、特定した返品薬の形状と規定形状とを照合し、その一致度が所定値以上であれば、当該返品薬の形状が規定形状に準じた形状であると判定する。ここでは、載置された返品薬が、明らかに注射薬とは異なる物品(例:注射薬が収容された箱)であるか否かが判定できればよく、上記所定値は、当該物品と注射薬とを区別できる程度に設定されていればよい。換言すれば、制御部190は、ステップSG5において、カセット兼薬剤保持部136に載置された返品薬が、注射薬そのものであるか、注射薬とは異なる物品であるか否かを判定する。
【0610】
制御部190が、特定した返品薬の形状が規定形状に準じた形状であると判定した場合(SG5でYES)、搬送制御部193は、制御部190(具体的には吸着位置決定部194)が特定した吸着位置で、薬剤搬送部121により返品薬を吸着する。そして、搬送制御部193は、カセット兼薬剤保持部136から第1搭載部126aへ搬送する(SG6)。
【0611】
搬送制御部193は、薬剤搬送部121を制御することで、返品薬の向きが所定方向(例:返品薬の頭部が注射薬払出装置100の手前側)となるように、第1搭載部126aに返品薬を載置する。搬送制御部193は、カセット兼薬剤保持部136に注射薬が載置されたときに特定された返品薬の向きに基づき、返品薬の搬送中に、返品薬の頭部が上記所定方向を向くように調整する。
【0612】
一方、制御部190が、特定した返品薬の形状が規定形状に準じた形状ではないと判定した場合(SG5でNO)、当該返品薬は注射薬とは異なる物品であるため、非払出薬受入カセット165へ収容される対象となる。当該返品薬は、第1搭載部126aに載置できないか、載置できたとしても、その種類及び有効期限を特定できないため、第1搭載部126aに搬送されることなく、非払出薬受入カセット165へ収容される。
【0613】
そのため、ステップSG5でNOの場合、駆動制御部192は、処理位置132に存在する大型返品薬カセット163を、カセット受入位置131へ移動させる。その後、移送制御部191は、カセット受入位置131に移動してきた大型返品薬カセット163をカセット棚110へと戻し、非払出薬受入カセット165をカセット棚110からカセット受入位置131(大型返品薬カセット163が載置されていたカセット受入位置131bに存在するカセット保持部130b)へと移送する。その後、駆動制御部192は、非払出薬受入カセット165を、カセット受入位置131から処理位置132へと移動させる(SG11)。
【0614】
非払出薬受入カセット165の処理位置132への移動が完了すると、搬送制御部193は、吸着位置決定部194が特定した吸着位置で、薬剤搬送部121により返品薬を吸着し、カセット兼薬剤保持部136から非払出薬受入カセット165へ搬送する(SG12)。搬送制御部193は、位置特定用カメラ122aによりカセット兼薬剤保持部136の内部を撮像し、撮像した画像を解析することで空き領域を特定する。搬送制御部193は、非払出薬受入カセット165において特定した空き領域に、返品薬を載置する。
【0615】
非払出薬受入カセット165への返品薬の搬送が完了すると、移送制御部191及び駆動制御部192により、非払出薬受入カセット165がカセット棚110に戻される。その後、大型返品薬カセット163がカセット保持部130へと移送され、処理位置132まで移動される(SG13)。つまり、ステップSG11の処理前の状態へと戻される。
【0616】
なお本例では、ステップSG11において、非払出薬受入カセット165は大型返品薬カセット163と交換されるが、これに限らず、中小型返品薬カセット164と交換されても構わない。
【0617】
ステップSG13の処理後、吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122bにより返品薬受入カセット161の内部を撮像し、撮像した画像を解析することで、返品薬受入カセット161の内部に返品薬が存在するか否かを判定する(SG10)。吸着位置決定部194が、返品薬受入カセット161の内部に返品薬が存在すると判定した場合(SG10でYES)、ステップSG3の処理に戻る。一方、返品薬受入カセット161の内部に返品薬が存在しないと判定した場合には(SG10でNO)、本処理が終了となる。
【0618】
また、ステップSG5でYESの場合、ステップSG6の処理後、第1判別処理部195及び第2判別処理部196は、返品薬を払出対象とすることができるか否かを判別する(SG7)。
【0619】
具体的には、第1判別処理部195は、第1搭載部126aへ搬送された返品薬の種類を判別する。第1判別処理部195は、バーコードリーダー123が読み取った返品薬(注射薬)の種類を示す情報を、薬品マスタの注射薬識別情報と照合する。第1判別処理部195は、当該種類を示す情報が薬品マスタの注射薬識別情報と一致した場合、返品薬の種類を当該注射薬識別情報が示す種類に特定する。
【0620】
次に、第1判別処理部195は、種類を特定した返品薬が、薬品マスタにおいて、払出対象とすることができない注射薬(例:冷所保存要薬剤)として指定されているか否かを判別する。第1判別処理部195は、薬品マスタにおいて、払出対象とすることができない注射薬に指定されていない場合、返品薬を払出対象とすることができる注射薬であると判別する。一方、第1判別処理部195は、薬品マスタにおいて、払出対象とすることができない注射薬に指定されている場合、返品薬を払出対象とすることができない注射薬であると判別する。
【0621】
また、第1判別処理部195は、上記の照合において、返品薬の種類を示す情報が薬品マスタの注射薬識別情報と一致しなかった場合(例えば返品薬が新薬である場合)についても、返品薬を払出対象とすることができない注射薬であると判別する。
【0622】
なお、払出対象とすることができない注射薬(例:冷所保存要薬剤)を、薬品マスタに登録しておかなくても構わない。この場合、第1判別処理部195は、返品薬が新薬である場合と同様、返品薬が薬品マスタに登録されていないため、返品薬を払出対象とすることができない注射薬であると判別する。
【0623】
また、ステップSG7において、第2判別処理部196は、期限読み取り用カメラ125によって撮像された返品薬の有効期限が適切であるか否かを判別する。第2判別処理部196は、返品薬の有効期限が適切である場合、返品薬を払出対象とすることができる注射薬であると判別する一方、返品薬の有効期限が適切でない場合、返品薬を払出対象とすることができない注射薬であると判別する。有効期限が適切であるか否かは、例えば当該有効期限とステップSG7を実行している日時とを照合した結果に基づいて判別される。
【0624】
第1判別処理部195及び第2判別処理部196は、
(1)返品薬が薬品マスタに登録されており、
(2)薬品マスタにおいて、払出対象とすることができない注射薬に指定されておらず、かつ、
(3)有効期限が適切である
と判別したした場合に、返品薬を払出対象とすることができると判別する。第1判別処理部195及び第2判別処理部196がこのように判別した場合(SG7でYES)、搬送制御部193は、薬剤搬送部121により、返品薬を大きさに基づいて大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164へ搬送する(SG8)。その後、第1判別処理部195が返品薬の種類を、搬送制御部193が返品薬の位置(配置位置)を、それぞれ記憶部180に記憶する(SG9)。その後、ステップSG10の処理に移行する。
【0625】
なお、ステップSG8において、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に返品薬を載置するときに、返品薬に付されたバーコードを上向きにしておく必要は無い。返品薬の払出動作時には、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164から返品薬を取出すときに返品薬の種類を確認せず、第1搭載部126aにおいてその確認が行われるためである。
【0626】
一方、第1判別処理部195及び第2判別処理部196は、
(1)返品薬が薬品マスタに登録されていないか、
(2)返品薬が薬品マスタに登録されていたとしても、薬品マスタにおいて、払出対象とすることができない注射薬に指定されているか、又は、
(3)有効期限が適切でない
と判別したした場合に、返品薬を払出対象とすることができないと判別する。第1判別処理部195及び第2判別処理部196がこのように判別した場合(SG7でNO)、ステップSG11の処理に移行する。
【0627】
このように、ステップSG7における判別処理により、返品薬が注射薬であったとしても、上記のような払出対象とすることができない返品薬を払出さないように、非払出薬受入カセット165に収容できる。つまり、注射薬払出装置100は、(1)返品薬が注射薬そのものでない場合にはカセット兼薬剤保持部136において、(2)返品薬が注射薬であっても、払出対象とすることができない場合には第1搭載部126aにおいて、当該返品薬を払出対象から除外するために、非払出薬受入カセット165に収容できる。
【0628】
なお、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164における返品薬の配置位置(載置位置)の特定は、公知の手法が用いられてよい。例えば、搬送制御部193は、これまでに配置した返品薬の配置位置、当該返品薬の大きさ及び形状を示す、各カセットにおける返品薬の格納情報と、今回配置対象とする返品薬の大きさ及び形状とに基づき、今回配置対象とする返品薬の配置位置を特定する。これまでに配置した返品薬の配置位置からできるだけ近い空き領域を、今回配置対象とする注射薬の配置位置として特定しても構わない。返品薬の大きさ及び形状としては、カセット兼薬剤保持部136に注射薬が載置されたときに特定された情報を用いればよい。なお、非払出薬受入カセット165における返品薬の配置位置の特定についても、同様の手法で行われても構わない。
【0629】
また、ステップSG2では、カセット保持部130a~130cに載置された全カセット、及びカセット兼薬剤保持部136を、カセット受入位置131から処理位置132へと移動させているが、これに限られない。
図15を用いて説明した処理と同様、ステップSG2においては、返品薬受入カセット161及びカセット兼薬剤保持部136のみを処理位置132へと移動させても構わない。この場合、ステップSG8において、返品薬の載置対象となる大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164を処理位置132へと移動させてもよい。
【0630】
<返品薬の払出動作>
また、
図15の説明において付言したように、処方データに、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に収容されている注射薬が含まれている場合、注射薬払出装置100は、返品薬を再利用することができる。
【0631】
上述したように、記憶部180には、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164と、当該大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に収容された返品薬との対応関係を示す対応関係データが記憶されている。具体的には、対応関係データは、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164と、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に収容された返品薬の種類(及びその配置位置)との対応関係を示すデータが含まれている。つまり、記憶部180には、1つの混合薬剤収容カセットに複数種類の返品薬が収容されている場合、当該混合薬剤収容カセットを示すカセット固有情報と、収容された複数種類の返品薬のそれぞれを示す注射薬識別情報とが対応付けて記憶されている。
【0632】
処方データに基づき返品薬を払出す場合、移送制御部191は、記憶部180に記憶されている対応関係データを参照することで、払出対象の返品薬を収容する大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164を一意に特定する。そのため、移送制御部191は、払出対象の返品薬を収容する大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164をカセット棚110から取出し、カセット保持部135(又はカセット保持部130)へと移送する。また、搬送制御部193は、例えば対応関係データを参照することで、払出対象の返品薬の、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164における配置位置を一意に特定し、当該返品薬を第1搭載部126aへ搬送する。その後、注射薬払出装置100は、上述したステップSA5以降の処理(
図14参照)を実行する。
【0633】
このように、注射薬払出装置100は、返品薬を払出す場合、払出対象となる返品薬の種類毎に、当該返品薬が収容された混合薬剤収容カセットを特定すると共に、特定した混合薬剤収容カセットにおける配置位置を特定する。つまり、記憶部180には、返品薬を払出すために、混合薬剤収容カセットに収容された返品薬の種類と配置位置とを情報として記憶しておく必要がある。
【0634】
一方、カセットCaには予め決められた種類の注射薬が収容されている。そのため、注射薬払出装置100は、注射薬を払出す場合、払出対象の注射薬が収容されたカセットCaを特定すれば、当該カセットCaに収容された複数の注射薬のうち、どの注射薬を取出しても構わない。つまり、記憶部180には、注射薬を払出すために、特定薬剤収容カセットに収容された注射薬の種類を情報として記憶しておけばよく、特定薬剤収容カセットにおける注射薬の配置位置を情報として記憶しておく必要はない。
【0635】
なお、カセットCaと、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164とに同種の注射薬が収容されている場合、カセットCaに収容された注射薬を払出すか、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に収容された注射薬(返品薬)を払出すかについては、任意に設定できる。制御部190は、例えばカセットCaが欠品であると判別した場合に、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に収容された返品薬を払出しても構わない。また、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に収容された返品薬が存在する場合には、当該返品薬を優先的に払出対象としても構わない。
【0636】
また、本明細書において、払出対象となる注射薬を収容可能なカセットCaに関する説明を、払出対象となる返品薬を収容可能な大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164に関する説明として適用することも可能である。例えば、本明細書において説明した、予め決められた注射薬が収容されたカセットCaから注射薬を払出す場合の処理は、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164から返品薬を払出す場合の処理にも適用可能である。例えば、上記〔注射薬の取出しに係る具体的処理〕において説明した、カセットCaからの注射薬の取出しに係る処理は、返品薬の払出時における、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164からの返品薬の取出しに係る処理にも適用可能である。
【0637】
<その他>
返品薬受入カセット161、大型返品薬カセット163、中小型返品薬カセット164及び非払出薬受入カセット165には、カセットCaと同様、これらのカセットを識別するためのカセット固有情報が付与されている。また、カセット固有情報と、これらのカセットがカセット棚110に保管される保管位置を示す保管位置情報とが紐付けられている。さらに、これらのカセットには、カセットCaと同様、カセット固有情報を示す第1バーコードBC1が付されている(
図26参照)。
【0638】
そのため、カセットの取出し時に、バーコードリーダー146(
図27参照)が、第1バーコードBC1が示すカセット固有情報を読み出すことで、移送制御部191は、上記カセットが適切な位置に保管されているか否かを判定できる。
【0639】
また、返品薬の返品動作又は払出動作の途中で、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164をユーザが抜いてしまった場合、当該カセットに対応付けて記憶された注射薬に関する情報(例:注射薬の種類、配置位置)の信頼度は低下する。そのため、制御部190は、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164が抜き出されたと判定した場合、当該カセットについての返品薬に関する情報をリセットする。また、制御部190は、当該カセットに収容されている注射薬を取出す旨の指示画像を、タッチパネル210(
図28参照)に表示する。なお、カセットの抜差しは、カセット移送部140に設けられたセンサ(不図示)により特定できる。
【0640】
ユーザは、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164から返品薬を取出し、カセット棚110に戻した後、使用可否判定を行うためのユーザ入力を行う。制御部190は、当該カセットをカセット棚110からカセット保持部130に移動させ、処理位置132において当該カセットを撮像する。当該カセットの内部に返品薬が載置されていないと判定できた場合、当該カセットが使用可能な状態であると判定する。
【0641】
なお、大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164から取出された返品薬は、返品薬受入カセット161に戻されることで、再度返品の対象となる。
【0642】
<方向揃えカセット162を用いた場合の注射薬返品時の動作の別例>
なお、上述してきた処理は、カセット兼薬剤保持部136に返品薬を直接載置する場合に限らず、方向揃えカセット162を用いた場合にも適用可能である。つまり、上記の処理は、
図15に示すフローチャートに示す処理の別例であるともいえる。
【0643】
<表示画像例>
次に、表示画像例について、
図55を用いて説明する。
図55は、タッチパネル210(
図28参照)に表示される画像の例を示す図である。タッチパネル210には、例えば、カセット棚110に保管されているカセットに関する情報を表示する画像Img1が表示される。
【0644】
画像Img1には、例えば、カセット棚110におけるカセットの収容状況を表示する収容状況表示領域Ar1が含まれる。
【0645】
収容状況表示領域Ar1は、カセット棚110に収容されているカセットのレイアウトを模式的に示しており、カセット棚110の各位置に、どの種類のカセットが割り付けられているかについて、視覚的な認識を可能としている。
【0646】
図55において、一部のカセットを示す画像には、「返」、「S」、「L」、および「NG」といったアイコンが付されている。「返」は、返品された注射薬を収容するカセット(返品薬受入カセット161)であることを示すアイコンである。「S」は、小型または中型の注射薬を収容するカセット(中小型返品薬カセット164)であることを示すアイコンである。「L」は、大型の注射薬を収容するカセット(大型返品薬カセット163)であることを示すアイコンである。「NG」は、払出不可と判別された注射薬又は物品を収容するカセット(非払出薬受入カセット165)であることを示すアイコンである。また、アイコンが付されていないカセットを示す画像は、予め決められた、払出対象となり得る注射薬が収容されるカセット(カセットCa)であることを示している。
【0647】
また、画像Img1には、例えば、各カセットに含まれる注射薬に関する情報を表示するカセット情報表示領域Ar2が含まれる。
【0648】
カセット情報表示領域Ar2は、カセットCaに収容されている単一の種類の注射薬の名称及び収容数(在庫数)等について、視覚的な認識を可能としている。また、カセット情報表示領域Ar2は、分割部材SPによりカセットCaが複数の分割領域に分割されている場合には(
図26及び
図50参照)、各分割領域に収容されている注射薬の名称及び収容数等について、視覚的な認識を可能としている。
図55においては、棚No.4及び5に保管されたカセットCaには2つの分割領域が存在しており、各分割領域について、収容されている注射薬に関する情報が表示されている。
【0649】
また、カセットに収容されている注射薬の数に応じて、収容状況表示領域Ar1に表示されたカセットの画像を色分けして示してもよい。この場合、ユーザは、各カセットに収容されている注射薬の数を視覚的に認識できる。
図55においては、色分けの例が、色分表示領域Ar3に示されている。
【0650】
〔輸液ラベル払出装置の別例〕
次に、輸液ラベル払出装置400の別例について、
図56及び
図57を用いて説明する。
図56は、輸液ラベル払出装置400が備える輸液ラベル受取部403の別例である輸液ラベル受取部413を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は正面図である。
図57の(a)~(d)は、輸液ラベルの搬送例について説明するための図である。
【0651】
図56の(a)および(b)に示すように、輸液ラベル受取部413は、底部413bから立設した側壁413cによって、輸液ラベル受取部413に輸液ラベルを収容する空間が形成されている。また、側壁413cによって、第1本体部402から輸液ラベルを受取り、かつ、輸液ラベル搬送機構700の輸液ラベル把持部701が輸液ラベルを抜取るための開口部413aが形成されている。また、側壁413cによって、輸液ラベル把持部701が備える一対の爪部702の開閉動作を可能とするための間隙部413dが形成されている。なお、第1本体部402、輸液ラベル搬送機構700の輸液ラベル把持部701及び爪部702については、例えば
図41及び
図43を参照されたい。
【0652】
底部413bは、輸液ラベル払出装置400に取り付けられた状態において、輸液ラベル受取部413に収容される輸液ラベルの幅方向に沿って、水平面に対して傾斜している点で輸液ラベル受取部403の底部403bと相違する。なお、輸液ラベル受取部413は、傾斜のない底部の内側に、傾斜を持たせるためのアタッチメントが配された構成を有していても構わない。
【0653】
ここで本実施形態では、輸液ラベル払出装置400は、注射薬払出システム1で使用される輸液容器の大きさにあわせて、小型の輸液ラベルLS、及び大型の輸液ラベルLLの何れかを払出す。輸液ラベルLS及び輸液ラベルLLの、横方向(輸液ラベルを払出す方向と略垂直な方向;幅方向)の長さは同じであるが、縦方向(輸液ラベルを払出す方向)の長さは異なる。また、輸液ラベル把持部701が、搬送トレイ151aの上で輸液ラベルをリリースする位置(爪部702を開くことで、把持を解除する位置)は、輸液ラベルの大きさに依らず一定であるものとする。
【0654】
図57の(a)は、輸液ラベル受取部403に収容された輸液ラベルLSを輸液ラベル把持部701が抜取り、搬送トレイ151a内の小型トレイ151bに載置する工程を示す図である。輸液ラベル受取部403の底部403bは傾斜していないため、輸液ラベル把持部701は、輸液ラベルLSの下端が小型トレイ151bの底面に略平行な状態で、当該輸液ラベルLSを輸液ラベル受取部403から抜き取る。その後、輸液ラベル把持部701は、小型トレイ151bの上方へ移動し、その位置において輸液ラベルLSをリリースすることで、当該輸液ラベルLSを落下させ、小型トレイ151bに載置する。なお、輸液ラベルLLについても同様に小型トレイ151bに載置される。
【0655】
図57の(a)には、輸液ラベル把持部701により小型トレイ151bの上方で把持された状態の輸液ラベルLLが、破線で示されている。
図57の(a)に示すように、輸液ラベルLSを小型トレイ151bに載置する場合における、輸液ラベルLSの下端から小型トレイ151bの底面までの距離h1は、輸液ラベルLLを小型トレイ151bに載置する場合における、輸液ラベルLLの下端から小型トレイ151bの底面までの距離h2よりも長くなる。そのため、輸液ラベルLSを小型トレイ151bに載置する場合には、輸液ラベルLLを小型トレイ151bに載置する場合と比較して、輸液ラベルLSが落下する過程で載置位置にズレが生じる、又は裏返る虞が大きくなる。
【0656】
図57の(b)は、輸液ラベル受取部413に収容された輸液ラベルLSを輸液ラベル把持部701が抜取り、搬送トレイ151a内の小型トレイ151bに載置する工程を示す図である。輸液ラベル受取部413の底部413bは、水平面に対して角度α分傾斜している。そのため、輸液ラベル把持部701は、輸液ラベルLSの下端が小型トレイ151bの底面に対して角度α分傾斜した状態で、輸液ラベルLSを輸液ラベル受取部413から抜き取り、小型トレイ151bに載置する。
【0657】
角度αは、
図57の(b)に示すように、小型トレイ151bの上方において輸液ラベル把持部701に把持された状態の輸液ラベルLSの下端から小型トレイ151bの底面までの距離が、上述した距離h2に等しくなるように決定されている。そのため、輸液ラベルLSを小型トレイ151bに載置する場合に、輸液ラベル把持部701が輸液ラベルLSを輸液ラベル受取部403から抜き取る場合と比較して、落下の過程で載置位置にズレが生じる、又は裏返る虞が低減される。
【0658】
図57の(c)及び(d)は、角度αの決定方法について説明するための図である。
図57の(c)には、長辺が水平面に対して角度α分傾斜した状態の輸液ラベルLSが実線で示されている。また、長辺が水平面に対して傾斜していない状態の輸液ラベルLSが、破線で示されている。
【0659】
図57の(c)に示すように、輸液ラベルLSが輸液ラベル受取部413に収容されている場合、輸液ラベルLSの上端から下端までの鉛直方向における距離は、輸液ラベルLSが輸液ラベル受取部403に収容されている場合における当該距離と比較して、距離h3分長くなる。輸液ラベル把持部701に把持された状態の輸液ラベルLSの下端から小型トレイ151bの底面までの距離が、
図57の(a)における距離h2に等しくなるためには、距離h3が、距離h1とh2との差に等しくなるように、角度αを決定すればよい。
【0660】
図57の(d)には、長辺が水平面に対して傾斜していない状態の輸液ラベルLLと、長辺が水平面に対して角度α分傾斜した状態の輸液ラベルLSとが重畳して示されている。輸液ラベルLSの長辺および短辺の長さをそれぞれa及びbとした場合、鉛直方向における輸液ラベルLSの下端から上端までの距離cは、c=a×sinα+b×cosαで表される。距離h3が、距離h1とh2との差に等しくなるためには、
図57の(d)に示すように、鉛直方向における輸液ラベルLSの下端から上端までの距離が、輸液ラベルLLの短辺の長さに等しくなればよい。例えば輸液ラベルLSの大きさが54mm×81mm、輸液ラベルLLの長さが78mm×81mmである場合には、αを約20°とすればよい。
【0661】
なお、輸液ラベルLLについても、輸液ラベル払出装置400から払い出されると、輸液ラベル受取部413に収容され、水平面に対して角度α分傾斜した状態で、抜き取られた後、小型トレイ151bに載置される。そのため、輸液ラベルLLは、輸液ラベル受取部403を用いた場合よりも低い位置から落下するので、輸液ラベルLLについてもより確実に、小型トレイ151bの所定位置に載置できる。
【0662】
また本実施形態では、輸液ラベルLSのリリース位置が、輸液ラベル受取部403を用いた場合の輸液ラベルLLのリリース位置となるように、輸液ラベル受取部413の底部413bに傾斜が設けられている。これに限らず、輸液ラベル受取部403をそのまま用い、輸液ラベルLSのリリース位置が、輸液ラベル受取部403を用いた場合の輸液ラベルLLのリリース位置となるように、輸液ラベル把持部701の高さ方向の位置を調整しても構わない。つまり、輸液ラベルの大きさに応じて、輸液ラベル把持部701の高さ方向の位置が調整可能な構成であっても構わない。
【0663】
また、輸液ラベルLSのリリース位置は、輸液ラベル受取部403を用いた場合の輸液ラベルLLのリリース位置と同じである必要は必ずしも無い。つまり、鉛直方向における輸液ラベルLSの下端から上端までの距離が、輸液ラベルLLの短辺の長さに等しく設定される必要は必ずしも無い。
【0664】
輸液ラベルLSのリリース位置は、小型トレイ151b(又は搬送トレイ151a)の所定位置に輸液ラベルLSを確実に載置できるのであれば、上記輸液ラベルLLのリリース位置より上方であっても構わない。当然ながら、輸液ラベルLSのリリース位置は、上記輸液ラベルLLのリリース位置より下方であっても構わない。
【0665】
〔上記構成の別表現〕
上記構成について、以下のように表現できる。
【0666】
[A]本発明の一態様に係る薬剤カセット取扱装置(注射薬払出装置100)は、
薬剤を収容するm個のカセットを保管するカセット棚と、
上記カセットに収容された薬剤に対して特定処理を行うための特定処理部と、
上記カセットのうち、上記特定処理を受けるカセットをn個(m>n≧2)まで一時的に保持可能なカセット保持部と、
上記カセット保持部に保持される上記カセットを差し替えるために、上記カセット棚と上記カセット保持部との間で上記カセットを移送するカセット移送部と、
を備え、
上記カセット棚に保管されるm個のうちの一部のカセットは、同種の薬剤を収容する特定薬剤収容カセット(カセットCa)であり、その他のカセットは、2種類以上の薬剤を、その配置位置を特定した状態で収容する混合薬剤収容カセット(大型返品薬カセット163又は中小型返品薬カセット164)である。
【0667】
一般に、注射薬(例:アンプル又はバイアル)を収容するカセットから注射薬を払出す注射薬払出装置においては、払出対象となり得る同種の薬剤が収容されるカセットのみ(例えば、同種の薬剤が整列した状態で収容されるカセットのみ)がカセット棚に保管される。そのため、2種類以上の注射薬を1つのカセットから払出すことについては想定されていない。
【0668】
上記の構成によれば、特定薬剤収容カセットに収容された薬剤、及び、混合薬剤収容カセットに収容された薬剤のいずれに対しても特定処理(例:払出処理)を行うことが可能となる。混合薬剤収容カセットにおいては、収容される薬剤の配置位置が特定されているため、薬剤カセット取扱装置は、特定処理の対象とする薬剤に対して選択的に特定処理を行うことができる。
【0669】
なお、上記薬剤カセット取扱装置は、上記の各部を備え、上記カセット棚に収容されるm個のカセットは、同種の薬剤のみを収容することを規定したカセット(特定薬剤収容カセット)と、多種の薬剤を混合しつつ個別にアクセス可能なように収容したカセット(混合薬剤収容カセット)と、を含むとも規定できる。
【0670】
なお、混合薬剤収容カセットは、注射薬の大きさ及び形状に応じた注射薬の収容箇所が複数設けられたカセットである。換言すれば、混合薬剤収容カセットは、当該収容箇所を規定する部分(例:凸部)を有する底面を備えている。一方、特定薬剤収容カセットは、同種の薬剤が収容可能であればどのような形状であっても構わない。換言すれば、特定薬剤収容カセットは、当該収容箇所を規定する部分を有していない底面を備えているカセットであっても構わないし、当該部分を有する底面を備えているカセットであっても構わない。前者のカセットとしては、同種の薬剤を非整列状態で収容するカセット(例:カセットCa)が挙げられ、後者のカセットとしては、同種の薬剤を整列状態で収容するカセットが挙げられる。
【0671】
≪補足≫
本明細書において、輸液ラベル搬送機構700が備える輸液ラベル把持部701の一対の爪部702(
図49参照)は、一度に全開状態となっても構わないし、全開状態となるまで段階的に開いていく構成であっても構わない。
【0672】
また、本明細書において、1種の注射薬につき、1つの形状モデルが準備されていても、複数の形状モデルが準備されていても構わない。
【0673】
一般的なバイアル又はアンプルの場合、断面形状が円形であるため、形状モデル取得時にバイアル又はアンプルがどのような状態で載置されたとしても、撮像した画像においてはその形状は同じである。従って、載置された注射薬を上方から見たときに、どのような載置状態であっても一意に形状を特定できる注射薬については、1種の注射薬につき、1つの形状モデルが準備されていればよい。
【0674】
一方、断面形状が円形でない注射薬の場合(例:断面形状が楕円形であるプラスチックアンプルの場合)、載置の仕方によって、撮像した画像においてその形状が異なってくる。従って、載置された注射薬を上方から見たときに、載置状態によって一意に形状を特定できない注射薬については、1種の注射薬につき、複数の形状モデルが準備される。例えば、載置状態を変更する毎に取得される複数の形状モデルが準備される。
【0675】
≪その他の構成4≫
以下に、大型返品薬カセット163の別例について説明する。
図58は、大型返品薬カセット163Aの一例を示す斜視図である。
図59の(a)は大型返品薬カセット163Aの平面図、(b)はその側面図、(c)はその正面図である。
図60は、凹部163Aaの傾斜の一例を示す断面図(
図59のA-A断面図)である。なお、
図60は、後述の波形状の底板の部分のみを示す図である。
【0676】
図58及び
図59に示すように、大型返品薬カセット163Aの底部163A1には、複数の凹部163Aaと複数の凸部163Abとが設けられた波形状の底板(返品薬収容部)が配されている。複数の凸部163Abにより、大型の返品薬を載置可能な複数の凹部163Aaが形成されている。返品薬は、その長手方向が各凹部163Aa及び各凸部163Abの延伸方向と一致するように、各凹部163Aaに載置される。なお、上記波形状の底板は、大型返品薬カセット163Aの揺れに伴う返品薬の移動を抑制する材質(例:シリコンゴム)で構成されている。
【0677】
各凹部163Aaは、
図60にも示すように、その中央の高さが、その両端の高さよりも高い形状を有している。つまり、各凹部163Aaの、薬剤が載置される載置面は、側壁163A2から離隔するに従って、高さ方向に底部163A1から離隔するような傾斜を有している。なお、底部163A1と凹部163Aaの載置面との傾斜角をθLと表す。また、側壁163A2は、各凹部163Aa及び各凸部163Abの端部が接続された、大型返品薬カセット163Aの側壁である。
【0678】
返品薬は、側壁163A2から比較的近い位置に載置される。そのため、各凹部163Aaが上記のように傾斜を有していることにより、各凹部163Aaに載置された返品薬が、大型返品薬カセット163Aの揺れにより動いたとしても、当該返品薬を、その載置位置に近い側壁163A2の方へと移動させることができる。従って、1つの凹部163Aaに載置された2つの返品薬同士が衝突することにより、これらの返品薬が破損してしまうことを防止できる。また、1つの凹部163Aaに1つの返品薬が載置されている場合に、当該返品薬が、載置位置に近い側壁163A2とは反対側に位置する側壁163A2と衝突することにより破損してしまうことを防止できる。
【0679】
また、各凸部163Abは、各凹部163Aaと同様に、その中央の高さが、その両端の高さよりも高い形状を有している。これにより、各凸部163Abの高さが一定である場合に比べ、凹部163Aaに載置された返品薬の、他の凹部163Aaへの移動、又は大型返品薬カセット163Aからの飛び出しを抑制できる。
【0680】
また、各凸部163Abの側面(返品薬と接触する表面)には、各凸部163Abの延伸方向に沿って、返品薬の滑り止めとして機能する複数の突起部163Acが設けられている。本実施形態では、突起部163Acの形状は線状であり、突起部163Acは、凹部163Aaから上方向に向かうに従って、凸部163Abの中央から側壁163A2に向かうように設けられている。これにより、返品薬を、載置位置に近い側壁163A2の方向に移動させやすくすることができる。
【0681】
なお、突起部163Acの形状は線状に限らず、例えば半球形状であっても構わない。但し、返品薬を、載置位置に近い側壁163A2の方向に移動させやすくすることを考慮すれば、突起部163Acの形状を線状し、かつ、突起部163Acを上述のような向きとなるように凸部163Abの側面に設けた方がよい。
【0682】
次に、中小型返品薬カセット164の別例について説明する。
図61は、中小型返品薬カセット164の一例を示す斜視図である。
図62の(a)は中小型返品薬カセット164Aの平面図、(b)はその側面図、(c)はその正面図である。
図63は、凹部164AMaの傾斜の一例を示す断面図(
図62のB-B断面図)である。
図64は、凹部164ASaの傾斜の一例を示す断面図(
図62のC-C断面図)である。なお、
図63及び
図64は、後述の波形状の底板の部分のみを示す図である。
【0683】
図61及び
図62に示すように、中小型返品薬カセット164Aは、中型の返品薬を載置する中型薬載置領域MArと、小型の返品薬を載置する小型薬載置領域SArとを備える。中小型返品薬カセット164Aの、中型薬載置領域MAr側の底部164A1には、複数の凹部164AMaと複数の凸部164AMbとが設けられ、かつ、小型薬載置領域SAr側の底部164A1には、複数の凹部164ASaと複数の凸部164ASbとが設けられた波形状の底板(返品薬収容部)が配されている。この波形状の底板は、中小型返品薬カセット164Aの揺れに伴う返品薬の移動を抑制する材質(例:シリコンゴム)で構成されている。
【0684】
中型薬載置領域MArの複数の凹部164AMa及び複数の凸部164AMbは、大型返品薬カセット163Aの複数の凹部163Aa及び複数の凸部163Abと同様の形状を有している。つまり、
図63にも示すように、各凹部164AMaの、薬剤が載置される載置面は、側壁164A2から離隔するに従って、高さ方向に底部164A1から離隔するような傾斜を有している。なお、底部164A1と凹部164AMaの載置面との傾斜角をθMと表す。また、各凸部164AMbの側面(返品薬と接触する表面)には、凸部163Abと同様、各凸部164AMbの延伸方向に沿って、返品薬の滑り止めとして機能する複数の突起部164AMcが設けられている。突起部164AMcは、突起部163Acと同様の形状を有していればよい。
【0685】
一方、小型薬載置領域SArでは、
図64にも示すように、各凹部164ASaの、薬剤が載置される載置面は、側壁164A2から離隔するに従って、高さ方向に底部164A1から離隔するような傾斜を有している。但し、底部164A1と凹部164ASaの載置面との傾斜角をθSと表したとき、傾斜角θSは、傾斜角θLおよびθMよりも大きくなるように設定されている。なお、傾斜角θLおよびθMは同一の大きさであっても構わない。例えば、傾斜角θSは約10°に設定され、傾斜角θLおよびθMは約1.5°に設定されている。
【0686】
大型返品薬カセット163A、及び中型薬載置領域MArにおいては、比較的大きい返品薬(例:バイアル)が載置されるため、傾斜角θLおよびθMを大きくしすぎると、返品薬が大型返品薬カセット163A又は中小型返品薬カセット164Aから飛び出しやすくなってしまう。そのため、傾斜角θLおよびθMを少なくとも傾斜角θSより小さくすることで上記の飛び出しを抑制している。一方で、突起部163Ac及び突起部164AMcを設けることにより、返品薬を、載置位置に近い側壁163A2及び164A2へと移動させやすくしている。
【0687】
一方、小型薬載置領域SArにおいては、比較的小さい返品薬(例:アンプル)が載置されるため、傾斜角θSを大きくしても、大型又は中型の返品薬のように、返品薬が中小型返品薬カセット164Aから飛び出すことは無い。そのため、返品薬が中小型返品薬カセット164Aから飛び出さない程度に傾斜角θSを大きくすることで、返品薬を、載置位置に近い側壁163A2及び164A2へと移動させやすくすることができる。また、このように傾斜角θSを大きくできるので、小型薬載置領域SArにおいては、突起部163Ac及び突起部164AMcを設ける必要が無い。
【0688】
≪その他の構成5≫
以下に、注射薬払出装置100における簡易な形状モデルの登録処理について説明する。また、注射薬払出装置100における注射薬の向きの特定処理について説明する。但し、以下に示す説明において、上述した内容と重複する部分、又は具体的に記載した部分もあることに留意されたい。また、注射薬払出装置100の基本構成については、例えば
図1又は
図28を参照されたい。
【0689】
<形状モデル作成に係る課題>
上述の通り、吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122が撮影した画像と、記憶部180に予め登録された形状モデルとに基づいて、吸着対象の注射薬(吸着位置)を特定する。これにより、薬剤搬送部121は、カセット保持部130に載置されたカセットCaから注射薬を取出すことができる。
【0690】
形状モデルは、注射薬が載置されるカセットCaの画像から、カセットCaに載置され、かつカセットCaから取出す対象とする注射薬の像を特定するために用いられる、注射薬を平面視したときの形状を示すものである。具体的には、形状モデルは、上述の通り、注射薬の形状情報に対して複数の条件を適用することにより算出された複数の形状パターンを示すデータである。形状情報は、例えば、注射薬を撮影した画像を解析することによって取得される。複数の条件としては、例えば、下記の(1)~(5)が挙げられる。
(1)形状情報が示す注射薬を回転させる範囲(例:0°以上360°未満)。
(2)当該注射薬を回転させるピッチ。
(3)当該注射薬をX軸方向へ伸縮させるための倍率の範囲。
(4)当該注射薬をY軸方向へ伸縮させるための倍率の範囲。
(5)当該注射薬のコントラスト(注射薬における前景及び後景の輝度差)。
【0691】
但し、形状モデルは、1種の注射薬に対して特定された1つの形状パターンであっても構わない。
【0692】
例えば注射薬払出装置100が病院等に導入されるときに、当該病院等において注射薬払出装置100からの払出しが要求され得る注射薬の全ての形状モデルが、薬品マスタ(又は形状マスタ)に薬種毎に登録される。しかし、例えば下記の場合、払出対象の注射薬の形状に対応する形状モデルが薬品マスタに登録されていないため、注射薬払出装置100は当該注射薬を払出すことができない可能性がある。
・注射薬払出装置100が管理する注射薬(例:流通している注射薬)の容器形状に変更が生じた場合、又は、
・導入時に注射薬払出装置100において管理していない注射薬(例:新薬)を、新たに注射薬払出装置100の払出対象の注射薬とする場合。
【0693】
ここで一般に、形状モデルは、病院等への注射薬払出装置100の導入時に、形状モデルの管理者(例:注射薬払出装置100の製造元)によって注射薬払出装置100に登録される。そのため、注射薬払出装置100において形状モデルが管理されていないことにより注射薬の払出しができない場合、当該注射薬の形状モデルは、例えば、薬剤師等が管理者に依頼することにより作成される。この場合、管理者が、作成した形状モデルを、注射薬払出装置100に配信することにより、注射薬払出装置100に新規の形状モデルが登録される。
【0694】
但しこの場合、注射薬払出装置100に新規の形状モデル(正式な形状モデル)が登録されるまでの間、容器形状に変更が生じた注射薬、又は注射薬払出装置100において管理されていない注射薬を払出すことができない可能性がある。
【0695】
本実施形態の注射薬払出装置100は、上記の可能性を低減することが可能な、形状モデルを登録するモデル登録装置として機能する。
【0696】
<注射薬を搬送トレイ又はカセットに載置する場合の課題>
上述のように、注射薬払出装置100では、種類が識別された注射薬については、例えば患者毎に搬送トレイ151a(
図7参照)へと搬送される。また上述のように、注射薬払出装置100は、注射薬の向き(例:頭部の向き)が所定方向を向くように搬送トレイ151aに載置する。この載置は、注射薬払出装置100が、位置変更部126における注射薬の向きを特定していることにより実現される。
【0697】
注射薬払出装置100は、位置変更部126における注射薬の向きを、注射薬に付されたバーコードを読取ることで特定できるバーコードの向きにより特定する。そのため、注射薬払出装置100では、規定された注射薬の向きと、バーコードの向きとが、薬剤の種類毎に予め記憶部180に記憶されている。なお、規定された注射薬の向きは、例えば、注射薬の頭部が期限読み取り用カメラ125(
図8参照)側となり、かつ注射薬の底部がバーコードリーダー124(
図8参照)側となるように、第1搭載部126aに注射薬が載置されたときの注射薬の向きである。このときの第1搭載部126aの位置は、処理位置132(
図6参照)側の薬剤受入位置であってよい。第2搭載部126bに注射薬が載置された場合も同じである。
【0698】
例えば、新薬の払出を行いたい場合等、薬剤師等が形状モデルの作成を要する場合には、注射薬の種類と、規定された注射薬の向きと、バーコードの向きとの対応関係が不明であるため、その対応関係を記憶部180に記憶させることを要する。その対応関係が記憶されていない場合、注射薬払出装置100は、バーコードの向きから注射薬の向きを一意に特定することができない。
【0699】
また、上述のように、注射薬払出装置100は、返品薬受入カセット161(
図16参照)から、大型返品薬カセット163(
図12参照)又は中小型返品薬カセット164(
図13参照)へと返品薬を搬送する。返品薬は、大型返品薬カセット163に代えて大型返品薬カセット163A(
図58参照)、又は、中小型返品薬カセット164に代えて中小型返品薬カセット164A(
図61参照)へ搬送されても構わない。本実施形態では、大型返品薬カセット163、大型返品薬カセット163A、中小型返品薬カセット164、及び中小型返品薬カセット164Aを総称して、返品薬カセットと称する場合もある。
【0700】
上述のように、注射薬払出装置100は、返品薬が所定方向を向くように、返品薬を返品薬カセットに載置する。注射薬と同様、注射薬払出装置100では、規定された返品薬の向きと、バーコードの向きとが、返品薬の種類毎に記憶部180に記憶される。そのため、注射薬払出装置100は、位置変更部126における返品薬の向きを、返品薬に付されたバーコードの情報を読取ることで特定できるバーコードの向きにより特定できる。その結果、注射薬払出装置100は、返品薬カセットにおいて所定方向を向くように、返品薬を載置できる。一方、注射薬払出装置100は、規定された返品薬の向きとバーコードの向きとの対応関係が記憶されていない場合、注射薬と同様、返品薬の向きを一意に特定することはできない。
【0701】
本実施形態の注射薬払出装置100は、位置変更部126に載置された薬剤(例:注射薬又は返品薬)の向きを特定するための情報を登録する薬剤向き登録装置として機能する。また、本実施形態の注射薬払出装置100は、薬剤を載置するカセットCaから取出され、かつ種類が識別された薬剤を、搬送先(例:搬送トレイ151a又は返品薬カセット)において所定方向に沿って載置する薬剤搬送装置として機能する。上述の通り、注射薬払出装置100は、規定された薬剤の向きに対応する薬剤に付されたバーコードの向きに基づき、搬送先において薬剤を載置する。
【0702】
なお、上述の薬剤搬送装置は、注射薬及び返品薬を搬送対象とする。また、上述の薬剤向き登録装置は、位置変更部126に載置された注射薬又は返品薬の向きを特定するための情報を登録する。しかし以降では、薬剤搬送装置及び薬剤向き登録装置について説明する場合についても、注射薬を例に挙げて説明する。従って、薬剤搬送装置の搬送先も搬送トレイ151aとなることに留意されたい。
【0703】
<注射薬払出装置100の構成例>
図65は、注射薬払出装置100の構成の一例を示すブロック図である。注射薬払出装置100の制御部190は、上述した符号191~197の機能に加え、例えば、情報取得部211、モデル作成部212、吸着可否判定部213、及びモデル登録部214を備える。また、注射薬払出装置100は、例えば、図形向き特定部215、薬剤向き設定部216、情報登録部217、及び重量算出部218を備える。なお、制御部190は、注射薬払出装置100と通信可能に接続される外部装置として実現されても構わない。記憶部180についても同様である。
【0704】
本例では、注射薬払出装置100は、上述のモデル登録装置、薬剤向き登録装置及び薬剤搬送装置の機能を有するものとして説明するが、モデル登録装置、薬剤向き登録装置及び薬剤搬送装置の少なくとも何れかの機能を有していればよい。
【0705】
上述したモデル登録装置として機能する場合、注射薬払出装置100は、少なくとも、情報取得部211、モデル作成部212、及びモデル登録部214を備えていればよく、吸着可否判定部213を備えていても構わない。情報取得部211は、後述の種類情報及びサイズ情報を取得できればよい。またこの場合、注射薬払出装置100は、図形向き特定部215、薬剤向き設定部216、情報登録部217、及び重量算出部218を備えている必要は必ずしもない。
【0706】
上述した薬剤向き登録装置として機能する場合、注射薬払出装置100は、少なくとも、図形向き特定部215、薬剤向き設定部216、及び情報登録部217を備えていればよく、情報取得部211を備えていても構わない。情報取得部211は、後述の薬剤向き情報及びサイズ情報を取得できればよい。またこの場合、注射薬払出装置100が、モデル作成部212、吸着可否判定部213、モデル登録部214、及び重量算出部218を備えている必要は必ずしもない。
【0707】
上述した薬剤搬送装置として機能する場合、注射薬払出装置100は、少なくとも、図形向き特定部215、及び吸着位置決定部194を備えていればよく、情報取得部211を備えていても構わない。情報取得部211は、後述のサイズ情報を取得できればよい。またこの場合、注射薬払出装置100が、モデル作成部212、吸着可否判定部213、モデル登録部214、薬剤向き設定部216、情報登録部217、及び重量算出部218を備えている必要は必ずしもない。
【0708】
また本例では、薬剤を載置する載置部としてカセットCaを例に挙げて説明するが、これに限らず、載置部としては、薬剤を載置可能な種々の部材を用いることができる。つまり、注射薬払出装置100は、カセット棚110に保管されたカセットCa以外の載置部の画像を撮像し、当該画像から、当該載置部から取出す対象とする薬剤の像を特定しても構わない。また、注射薬払出装置100は、上記載置部から取出された薬剤を搬送先へと搬送しても構わない。
【0709】
情報取得部211は、形状モデルを作成するために、注射薬を収容する容器の種類情報、及び容器のサイズ情報を取得する。
【0710】
サイズ情報としては、例えば、容器の幅、全長、胴体部分の長さ、及び高さの情報が挙げられる。胴体部分は、主として注射薬が収容される空間である。本例では、サイズ情報は、タッチパネル210を介して、薬剤師等(ユーザ)により入力される。タッチパネル210は、上述したように、薬剤師等による各種ユーザ入力を受付ける操作部と、各種情報を表示する表示部とを備える。サイズ情報は、ノギス等の測定器具を用いて実際に測定された容器の実寸(例:容器の幅、全長、及び胴体部分の長さを示す測定情報)である。
【0711】
容器の種類としては、例えばバイアル、アンプル、プラスチックアンプル、及びスティックアンプルが挙げられる。プラスチックアンプルは、プラスチック製のアンプルである。スティックアンプルは、スティック形状のアンプルである。スティックアンプルは、遮光性を有するスティック形状の収容部と、収容部に収容されたアンプル又はプラスチックアンプルと、を含む。収容部に収容されるアンプル又はプラスチックアンプルとしては、完全な遮光を要求されるものが挙げられる。また容器の種類は、例えばアンプルであっても、大きさ又は形状の異なるアンプルが互いに異なる種類のアンプルであるものとして設定されてよい。
【0712】
また、情報取得部211は、後述の向き情報を記憶部180に記憶(登録)するために、位置変更部126に載置された注射薬の向きを示す薬剤向き情報を取得する。取得する注射薬の向きは、例えば、薬剤受入位置に存在するときの第1搭載部126a又は第2搭載部126bに載置されたときの注射薬の向きである。取得する注射薬の向きは、上述の規定された注射薬の向きが規定された位置と同一の位置での注射薬の向きであればよい。薬剤向き情報は、タッチパネル210を介して、薬剤師等(ユーザ)により入力される。
【0713】
モデル作成部212は、種類情報が示す種類に対応する形状テンプレートを特定し、サイズ情報に基づき、特定した形状テンプレートを拡大又は縮小することにより、当該容器(注射薬)の形状モデルを作成する。以降、この形状モデルを簡易形状モデルと称する。
【0714】
図66は、バイアルの一例と、バイアルの形状テンプレート及び簡易形状モデルの一例と、を示す図である。
図67は、アンプルの一例と、アンプルの形状テンプレート及び簡易形状モデルの一例と、を示す図である。
図68は、プラスチックアンプルの一例と、プラスチックアンプルの形状テンプレート及び簡易形状モデルの一例と、を示す図である。
図69は、スティックアンプルの一例と、スティックアンプルの形状テンプレート及び簡易形状モデルの一例と、を示す図である。
【0715】
図66の符号66001はバイアルの一例、
図67の符号67001はアンプルの一例、
図68の符号68001はプラスチックアンプルの一例、
図69の符号69001はスティックアンプルの一例、をそれぞれ示す。各図に示すように、符号Wd100、Ht100、Ht200及びHt300が、それぞれ容器の幅、全長、胴体部分の長さ、及び高さを示す。高さは、容器を横に倒して載置したとき(全長が載置面に対して略平行であるとき)の載置面からの高さであり、幅方向に垂直な方向の長さである。
図69の符号69001に示すように、スティックアンプルにおいては、その全体がほぼ胴体部分となるため、胴体部分の長さ(Ht200)は規定されない。
【0716】
アンプル及びバイアルの場合、一般に胴体部分が円柱形状であるため、容器の幅と高さとは略同一の長さである。プラスチックアンプルの胴体部分は楕円柱形状であり、スティックアンプルの全長方向に垂直な断面は円形状又は楕円形状であり、全長方向に沿って変化する。そのため、プラスチックアンプル及びスティックアンプルの場合、容器の幅と高さとは一致しない。
【0717】
形状テンプレートは、簡易形状モデルを作成するための元となる容器の概略形状を示すものであり、容器の種類毎に予め準備され、記憶部180に記憶されている。本例では、バイアル(
図66の符号66002参照)、アンプル(
図67の符号67002参照)、プラスチックアンプル(
図68の符号68002参照)、及びスティックアンプル(
図69の符号66002参照)の形状テンプレートが準備されている。各図に示すように、符号Wd10、Ht10、及びHt20は、それぞれ形状テンプレートの幅、全長、及び胴体部分の長さを示す。
【0718】
一般に、
図68の符号68001に示すように、プラスチックアンプルの、胴体部分に接続される先端部分Edは、平坦形状である。そのため、プラスチックアンプルを横に倒して載置するとき、胴体部分のどの箇所を載置面に接触させて載置するかによって、平面視したときのプラスチックアンプルの形状は異なってくる。本例では、
図68に示すように、プラスチックアンプルについては、第1方向VD1から見たときの形状テンプレート(図中の「水平」参照)と、第2方向VD2から見たときの形状テンプレート(図中の「垂直」参照)と、を予め準備している。第2方向VD2は第1方向VD1と略垂直な方向である。本例では、形状テンプレートの形状が大きく異なる上記2つの形状テンプレートを準備している。
図68の符号68002に示すように、符号Ht30は、形状テンプレートの高さを示す。
【0719】
モデル作成部212は、タッチパネル210を介して特定された容器の種類に対応する形状テンプレートを記憶部180から読出す。モデル作成部212は、タッチパネル210を介して入力された容器のサイズ情報に基づき、読出した形状テンプレートを拡大又は縮小する。その結果、モデル作成部212は、簡易形状モデルを作成する。
【0720】
例えば、バイアルの場合、
図66に示すように、符号66002に示す形状テンプレートから、符号66003に示す簡易形状モデルが作成される。アンプルの場合、
図67に示すように、符号67002に示す形状テンプレートから、符号67003に示す簡易形状モデルが作成される。プラスチックアンプルの場合、
図68に示すように、符号68002に示す形状テンプレートから、符号68003に示す簡易形状モデルが作成される。プラスチックアンプルの場合、上記2つの形状テンプレートが準備されているため、それぞれの形状テンプレートに基づく簡易形状モデルが作成される。スティックアンプルの場合、
図69に示すように、符号69002に示す形状テンプレートから、符号69003に示す簡易形状モデルが作成される。各図に示すように、符号Wd1、Ht1、Ht2、及びHt3は、それぞれサイズ情報及び形状テンプレートを元に作成した簡易形状モデルの幅、全長、胴体部分の長さ、及び高さであって、入力されたサイズ情報が示す値(容器の実寸)を示す。
【0721】
モデル作成部212は、例えば、以下のように簡易形状モデルを作成する。ここでは、バイアルを例に挙げて説明する。
【0722】
図66の符号66002に示すように、形状テンプレートにおいて仮想的なX1Y1座標系を設定する。
【0723】
モデル作成部212は、形状テンプレートの全長Ht10が、サイズ情報が示す全長Ht1となるように、直線X12上の各点のX1座標(つまり座標X12)に、倍率Ht1/Ht10を乗算する。モデル作成部212は、形状テンプレートの胴体部分の長さHt20が、サイズ情報が示す胴体部分の長さHt2となるように、直線X11上の各点のX1座標(つまり座標X11)に、倍率Ht2/Ht20を乗算する。但し、モデル作成部212は、直線X12上の各点のX1座標(つまり座標X12)に、単にHt1の値を代入しても構わない。同様に、モデル作成部212は、直線X11上の各点のX1座標(つまり座標X11)に、単にHt2の値を代入しても構わない。
【0724】
また、モデル作成部212は、直線X11と直線X12との間の点のうち直線X11寄りの点については、X1座標に、{Ht2+(Ht1-Ht2)/K1}により求められる値を代入する。直線X12寄りの点については、X1座標に、{Ht2+(Ht1-Ht2)/K2}から求められる値を代入する。K1及びK2は、実験結果を踏まえ、任意の値を設定すればよい。また、モデル作成部212は、直線X11と直線X12との間の各点について、X1座標に、倍率(S1-T1)/(1-T1)を乗算して求めても構わない。なお、S1=Ht2/Ht20、T1=(Ht1-Ht2)/(Ht10-Ht20)である。
【0725】
モデル作成部212は、形状テンプレートの幅Wd10が、サイズ情報が示す幅Wd1となるように、少なくともX1軸上に存在しない形状テンプレートの各点のY1座標に、倍率Wd1/Wd10を乗算する。なお、モデル作成部212は、X1軸上から最も離隔した点のY1座標(直線Y12上の点の座標)に、単にWd1の値を代入しても構わない。
【0726】
また、モデル作成部212は、直線Y11(X1軸上の直線)と直線Y12との間の点のうち直線Y11寄りの点については、Y1座標に、例えば{(Wd1-Wd1×K3)/2}により求められる値を代入する。直線Y12寄りの点については、Y1座標に、例えば{Wd1-(Wd1-Wd1×K3)/2}から求められる値を代入する。K3は、実験結果を踏まえ、任意の値を設定すればよい。
【0727】
また、モデル作成部212は、上述の通り、直線Y11上の各点のY1座標は変更せず、直線Y12上の各点の座標はWd1の値に変更する。しかしこれに限らず、モデル作成部212は、例えば、直線X12上の各点、及びX1軸方向において当該各点に隣接する各点については、所定の計算式を用いてその値を変更しても構わない。
【0728】
アンプルの簡易形状モデル、及び、プラスチックアンプルの第1方向VD1から見たときの簡易形状モデルについても、バイアルと同様の手法により作成される。但し、アンプルの場合、Y1軸から最も離隔した点(直線X12上の点)は、X1座標に、例えばWd1/2により求められる値が代入されてよい。また、プラスチックアンプルの第2方向VD2から見たときの簡易形状モデルについても、幅Wd10及び幅Wd1の代わりに高さHt30及びHt3を用いることにより、バイアルと同様の手法により作成される。スティックアンプルについては、上述した{Ht2+(Ht1-Ht2)/Kn(n=1、2)}を用いない点以外、バイアルと同様の手法により作成される。{Ht2+(Ht1-Ht2)/Kn(n=1、2)}の代わりに、例えば{Ht1×所定倍率(0より大きく1未満、実験結果を踏まえ設定)}が用いられても構わない。
【0729】
このようにして、モデル作成部212は、形状テンプレートを、実際に測定された値にあわせて拡大又は縮小する。本例では、少なくとも容器の幅、全長、及び胴体部分の長さが実際に測定された値となるように、形状テンプレートを拡大又は縮小することにより、簡易形状モデルを作成する。
【0730】
なお、作成された簡易形状モデルを規定する値(例:簡易形状モデルの各点の座標)がそのまま記憶部180に記憶されてもよいし、例えば、当該簡易形状モデルの相似形状を規定する値が記憶部180に記憶されてもよい。つまり、作成された簡易形状モデルの大きさ及び形状を維持した状態で、簡易形状モデルを記憶部180に記憶する必要は必ずしもない。
【0731】
また、ここで言う、形状テンプレートを拡大又は縮小することにより簡易形状モデルを作成するとは、形状テンプレートを定数倍して、形状テンプレートと相似形状の簡易形状モデルを作成することを含む。つまり、予め設定された形状テンプレートを構成する各要素(形状テンプレートの各点(
図66~
図69に示す黒点))の座標を定数倍して、形状テンプレートと相似形状の簡易形状モデルを作成することを含む。但し、簡易形状モデルが形状テンプレートの相似形状として作成される必要は必ずしもない。つまり、簡易形状モデルが形状テンプレートの相似形状として作成されるように、形状テンプレートの各要素の座標が算出される必要は必ずしもない。また、上述した簡易モデルの作成手法はあくまで一例であって、上述した計算方法以外の方法により、形状テンプレートから簡易モデルが作成されても構わない。
【0732】
また、
図66~
図69では、形状テンプレートが、各要素(各点)と、各要素を結ぶ直線とにより規定されているが、これに限らず、形状テンプレートが、各要素により規定されていても構わない。
【0733】
吸着可否判定部213は、モデル作成部212が作成した簡易形状モデルを用いて特定した吸着対象の注射薬を、薬剤搬送部121が吸着できるか否かを判定する。
【0734】
吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122が撮影したカセットCaの画像と、モデル作成部212が作成した簡易形状モデルとに基づき、薬剤搬送部121がカセットCaから取出す注射薬における吸着位置を決定する。
【0735】
吸着位置決定部194は、例えば、上述の「(吸着位置の決定処理)」及び「(吸着位置決定に係る補正処理)」に示すように、吸着する注射薬を特定すると共に、当該注射薬における吸着位置を決定する。このとき、吸着対象とする注射薬の形状の特定は、位置特定用カメラ122が撮影した画像から検出された注射薬領域を、簡易形状モデルと照合することにより行われればよい。また、吸着位置の算出は、注射薬幅情報の代わりに、入力されたサイズ情報に含まれる幅情報を用いて行わればよい。また、サイズ情報の一部として注射薬の重心位置を取得、又はサイズ情報から当該重心位置を算出できる場合には、上述の「<吸着位置の決定例>」に示すように、撮影された画像及び重心位置を用いて、吸着位置が算出されても構わない。
【0736】
吸着可否判定部213は、決定した吸着位置において、薬剤搬送部121が注射薬を吸着できたか否かを判定する。吸着可否判定部213は、例えば上述の空気管内の負荷(例:空気管内の圧力、又は空気管を流れる空気量)が、所定値以下となった場合に、注射薬を吸着できたと判定する。この場合、搬送制御部193は、薬剤搬送部121により吸着された注射薬を、カセット保持部130に載置されたカセットCaから取出し、位置変更部126へと搬送する。
【0737】
モデル登録部214は、モデル作成部212が作成した形状モデルを登録する。本例では、モデル登録部214は、吸着可否判定部213により注射薬を吸着できたと判定された場合に、モデル作成部212が作成した簡易形状モデルを、記憶部180に記憶する。モデル登録部214は、位置変更部126に搬送された注射薬に付されたバーコードを、バーコードリーダー123に読取らせる。上述したように、注射薬の種類を示す情報(注射薬識別情報)は、バーコードの形式にて注射薬に付されている。モデル登録部214は、モデル作成部212が作成した簡易形状モデルを、読取った注射薬識別情報に紐付けて、記憶部180に記憶する。
【0738】
このように、モデル作成部212は、上述したような形状情報及び所定条件に基づき作成される手法とは異なり、薬剤師等の入力に基づき簡易形状モデルを作成し、モデル登録部214は、簡易形状モデルを記憶部180に記憶する。そのため、本例の注射薬払出装置100(モデル登録装置)では、注射薬払出装置100に新規の形状モデルが登録されるまでの間であっても、簡易な形状モデルを用いた一時的な注射薬の払出しが可能となる。
【0739】
図形向き特定部215は、位置変更部126に載置された注射薬から、当該注射薬に付されたバーコードを読取ることにより、注射薬におけるバーコードの向きを特定する。バーコードリーダー123は、バーコードを読取ることにより、注射薬におけるバーコードの向きを特定できる。バーコードの向きは、例えばバーコードに付された英数字の並び順を指す。
【0740】
図形向き特定部215は、バーコードリーダー123が特定したバーコードの向きを示す向き特定情報を取得することにより、当該向きを特定する。また、制御部190は、バーコードリーダー123が注射薬からバーコードを読取ることにより、当該注射薬識別情報を取得できる。そのため、制御部190は、バーコードの読取りにより注射薬の種類を特定する。
【0741】
なお、位置変更部126は、バーコードリーダー123がバーコードを読取り可能な読取位置である。本例では、読取位置は、位置変更部126の薬剤受入位置であるが、搬送トレイ151aへの搬送前に注射薬が載置される位置変更部126の薬剤受渡位置であっても構わない。
【0742】
また、注射薬払出装置100では、注射薬に付されたバーコードの向きにより、位置変更部126に載置された注射薬の向きを特定するが、注射薬に付されたその他の図形の向きに基づき当該注射薬の向きを特定しても構わない。つまり、注射薬に付されたバーコードは、その向きに基づき注射薬の向きを特定可能な、注射薬に付された図形の一例である。図形としては、向きを有する形状であれば、1次元バーコード、2次元バーコード(例:QRコード(登録商標))、及び3次元形状(例:凹凸形状)等であって構わない。また、文字(数字を含む)、記号、及び/符号等を並べた列の形状であっても構わない。
【0743】
薬剤向き設定部216は、位置変更部126に載置された注射薬の向きを設定する。本例では、薬剤向き設定部216は、薬剤師等によりタッチパネル210に入力された注射薬の向きを、位置変更部126に載置された注射薬の向きとして設定する。
【0744】
制御部190は、期限読み取り用カメラ125が撮像した、位置変更部126(薬剤受入位置)における注射薬の画像を、タッチパネル210に表示する。薬剤師等は、タッチパネル210に表示された画像を視認することにより、位置変更部126における注射薬の向きを特定し、その向きをタッチパネル210に入力する。情報取得部211は、薬剤師等により特定された当該向きを示す薬剤向き情報を、タッチパネル210から取得する。薬剤向き設定部216は、情報取得部211が取得した薬剤方向情報が示す注射薬の向きを、位置変更部126に載置された注射薬の向きとして設定する。薬剤向き設定部216は、設定した注射薬の向きを、図形向き特定部215が特定した注射薬識別情報の向きと紐付ける。
【0745】
なお、制御部190は、注射薬の画像を表示させる必要は必ずしもない。例えば、薬剤師等が、位置変更部126に載置された注射薬の向きを、位置変更部126を直接視認することにより特定し、薬剤の向きをタッチパネル210に入力しても構わない。
【0746】
情報登録部217は、図形向き特定部215により特定されたバーコードの向きと、薬剤向き設定部216により設定された注射薬の向きとに基づき、図形の向き及び薬剤の向きの関係を示す向き情報を、注射薬の種類に紐付けて登録する。
【0747】
本例では、情報登録部217は、薬剤向き設定部216が設定した注射薬の向きを、規定された注射薬の向きに一致させたときの、当該注射薬の向きに対応するバーコードの向きを、上記向き情報として、注射薬の種類に紐付けて登録する。
【0748】
薬剤向き設定部216が設定した注射薬の向きと、規定された注射薬の向きとが一致している場合、情報登録部217は、図形向き特定部215が特定したバーコードの向きを、上記向き情報として、バーコードを読取った注射薬の種類と紐付ける。
【0749】
薬剤向き設定部216が設定した注射薬の向き(特定向き)と、規定された注射薬の向き(規定向き)とが一致していない場合、情報登録部217は、例えば、特定向きと規定向きとの角度を算出する。情報登録部217は、図形向き特定部215が特定したバーコードの向きを当該角度の分変更したバーコードの向きを、上記向き情報として、バーコードを読取った注射薬の種類と紐付ける。
【0750】
図70は、位置変更部126における注射薬の向き(載置方向)と、注射薬に付されたバーコードの向きとの対応関係の一例を示す図である。符号70001及び符号70003は、位置変更部126に注射薬が正しく載置された場合を示し、符号70002及び符号70004は、位置変更部126に注射薬が誤って載置された場合を示す。
【0751】
注射薬が正しく載置された場合とは、
・注射薬の底部MDbが、第1搭載部126a(又は第2搭載部126b)の底壁126wb側(例:底部MDbが底壁126wbに当接した状態)となり、かつ、
・注射薬の頭部MDhが、第1搭載部126a(又は第2搭載部126b)の上壁126wt側となるように、
注射薬が載置された場合を指す。また、このときの注射薬の向きが、規定された注射薬の向きとなる。
図70では、左向きが、注射薬が正しく載置された状態となる。
【0752】
処理位置132に載置されたカセットCaから位置変更部126へ注射薬を搬送する場合、注射薬が必ずしも正しく載置されるとは限らない。カセットCaから注射薬を取出すときの吸着位置は、画像に含まれる注射薬領域と形状モデル(簡易形状モデル)との照合に基づき決定される。そのため、照合の結果、例えば注射薬の頭部及び底部が逆向きに認識されてしまった場合、注射薬は、位置変更部126において逆向きに載置されてしまう可能性がある。また、注射薬に付されたバーコードの向きは、注射薬毎(例:注射薬の種類毎)に異なる。
【0753】
注射薬払出装置100において管理されていない注射薬(例:簡易形状モデルの作成を要する新薬)については、注射薬の向きとバーコードの向きとが紐付けられていない。そのため、バーコードの向きを特定しただけでは、位置変更部126において注射薬の正しい向きを一意に特定することはできない。従って、当該注射薬については、バーコードの向きと、位置変更部126における注射薬の向き(規定された注射薬の向き)との対応関係を特定しておく必要がある。
【0754】
図70の符号70001及び符号70003の例では、注射薬の向きDmdは、規定された注射薬の向き(左向き)と一致する。そのため、情報登録部217は、注射薬識別情報の向きDbrを、規定された注射薬の向きと対応する向き(上記向き情報)として登録する。符号70001では、上記向き情報として左向きが登録され、符号70003では、上記向き情報として右向きが登録される。
【0755】
図70の符号70002及び符号70004に示すように、注射薬の向きDmdが、規定された注射薬の向き(左向き)と一致しておらず、この2つの向きがなす角度は180°である。そのため、情報登録部217は、注射薬の向きDmdを規定された注射薬の向きに一致させるべく180°回転させたときのバーコードの向きを、規定された注射薬の向きと対応する向き(上記向き情報)として登録する。
【0756】
符号70002では、上記向き情報として、実際に読取られたバーコードの向き(右向き)と逆向きの左向きが登録され、符号70003では、上記向き情報として、実際に読取られたバーコードの向き(左向き)と逆向きの右向きが登録される。
【0757】
このようにバーコードの向きを登録しておくことで、注射薬払出装置100は、実際に注射薬を払出すときの位置変更部126での注射薬の向きを、登録されたバーコードの向きに基づき、精度良く特定できる。そのため、制御部190は、登録されたバーコードの向きに基づき、搬送トレイ151aにおける注射薬の向きを、実際に載置させたい所定方向と一致するように算出できる。従って、制御部190は、搬送トレイ151aにおいて所定方向を向くように、複数の注射薬を整列して載置できる。
【0758】
なお、情報登録部217は、特定されたバーコードの向きと設定された注射薬の向きとに基づく向き情報を、注射薬の種類と紐付けて登録すればよい。つまり、情報登録部217は、注射薬の向きを、規定された注射薬の向きに一致させたときの、当該注射薬の向きに対応するバーコードの向きを、上記向き情報として登録する必要は必ずしもない。
【0759】
例えば、規定された注射薬の向きを示す情報が記憶部180に記憶されている場合、情報登録部217は、特定されたバーコードの向きと設定された注射薬の向きとを対応付けた向き情報を、注射薬の種類に紐付けて登録しても構わない。
【0760】
この場合例えば、制御部190は、注射薬を搬送トレイ151aに搬送するときに読取ったバーコードの向きと、当該注射薬の種類に紐付けられた向き情報が示すバーコードの向きとを照合する。制御部190は、これら2つのバーコードの向きが一致する場合、向き情報が示す注射薬の向きと規定された注射薬の向きとが一致するか否かを判定することにより、実際の注射薬の向きを特定する。制御部190は、上記2つのバーコードの向きが一致しない場合、向き情報が示すバーコードの向きを読取ったバーコードの向きに一致させたときの、向き情報が示す注射薬の向きが、規定された注射薬の向きと一致するか否かを判定する。例えば、上記2つのバーコードの向きが逆向きである場合、制御部190は、向き情報が示す注射薬の向きを逆向きにして、規定された注射薬の向きと一致するか否かを判定する。
【0761】
また、制御部190は、例えば上述した第2距離情報を取得できる場合、注射薬ラベルが上向きとなるように、搬送トレイ151aに注射薬を載置できる。第2距離情報は、上述したように、注射薬に付されたバーコードの位置から、注射薬名(薬剤名)等が記載された注射薬ラベルの略中心位置までの、注射薬の周方向上の第2距離を示す情報である。この場合、搬送トレイ151aにおいて、所定方向を向くように注射薬を載置できるだけでなく、注射薬ラベルを上向きにして載置できる。そのため、搬送トレイ151aに載置された注射薬の目視鑑査を行い易くできる。特に、搬送トレイ151aに複数の注射薬が載置される場合に、注射薬の向き及び注射ラベルの向きが揃っていない場合、薬剤師等の目視鑑査の手間が一層増える。注射薬払出装置100は、複数の注射薬を、所定方向を向くように整列して、かつ注射ラベルが上向きとなるように載置できるので、このような手間を省くことができ、目視鑑査にかかる薬剤師等の負担を大きく軽減できる。
【0762】
また本例では、吸着位置決定部194は、入力された注射薬のサイズ情報、図形向き特定部215が特定したバーコードの向き、及び登録された向き情報に基づき、位置変更部126に載置された注射薬の吸着位置を決定する。
【0763】
具体的には、吸着位置決定部194は、バイアル、アンプル、及びプラスチックアンプルについては、容器の底部から、測定された胴体部分の長さの半分(Ht2/2)の距離を、オフセット距離Htofとして算出する。このオフセット距離は、
図66の符号66003、
図67の符号67003、及び
図68の符号68003に示されている。また、吸着位置決定部194は、スティックアンプルについては、容器の底部から、測定された全長の長さの半分(Ht1/2)を、オフセット距離Htofとして算出する。このオフセット距離は、
図69の符号69003に示されている。
【0764】
吸着位置決定部194は、位置変更部126から搬送トレイ151aに搬送するときに、図形向き特定部215が特定したバーコードの向きと、登録された向き情報が示すバーコードの向きとを比較する。図形向き特定部215が特定したバーコードの向きは、例えば搬送トレイ151aへ注射薬が払出される前に、位置変更部126に載置された状態で読取ったバーコードの向きである。
【0765】
上記2つのバーコードの向きが一致した場合、吸着位置決定部194は、次のように吸着位置を特定する。吸着位置決定部194は、第1搭載部126a(又は第2搭載部126b)の底壁126wbから、上記オフセット距離Htof離れた位置であって、かつ、注射薬の頭部MDhから底部MDbへと延伸する注射薬における中心線上の位置を、吸着位置として特定する。
【0766】
なお、第1搭載部126a(又は第2搭載部126b)における注射薬が載置される位置は、予め決められている。そのため、吸着位置決定部194は、位置変更部126に載置された注射薬の向きを特定すれば、位置変更部126における容器の胴体部分及び頭部の位置を特定できる。また、吸着位置決定部194は、入力された容器の幅Wd1に基づいて、位置変更部126に載置された注射薬における中心線の位置を特定できる。
【0767】
図形向き特定部215が特定したバーコードの向きと、登録された向き情報が示すバーコードの向きとが一致しない場合について考える。本例では、
図70の符号70002及び70004に示すように、注射薬の頭部MDhが底壁126wb側となり、かつ注射薬の底部MDbが上壁126wt側となるように、注射薬が第1搭載部126a(又は第2搭載部126b)に載置されていることとなる。そのため、吸着位置決定部194は、第1搭載部126a(又は第2搭載部126b)の底壁126wbから、{(注射薬の全長)-(上記オフセット距離Htof)}離れた位置であって、かつ、注射薬における中心線上の位置を、吸着位置として特定する。
【0768】
このように吸着位置を特定することにより、吸着位置決定部194は、位置変更部126における注射薬の載置状態に応じて、胴体部分の中央付近(重心位置、又はその近傍と推定される位置)を吸着位置として特定できる。位置変更部126では、吸着位置は、撮影された注射薬の画像及び簡易形状モデルを用いることなく、精度良く吸着位置を決定できる。
【0769】
重量算出部218は、カセットCaの重量を測定することにより、注射薬1本あたりの重量を算出する。
図6に示すように、カセット保持部130aにはロードセル134が設けられている。重量算出部218は、カセット保持部130aにカセットCaが載置されているときに、ロードセル134を制御することにより、カセットCaの重量を測定する。カセットCaの重量測定のため、カセット移送部140は、カセットCaをカセット棚110からカセット保持部130aに移送する。
【0770】
重量算出部218は、カセットCaに1本の注射薬が載置されている場合のカセットCaの重量と、空のカセットCaの重量とを測定し、その差分を算出することにより、注射薬1本あたりの重量を算出する。これにより、注射薬払出装置100は、注射薬1本あたりの重量に基づき、注射薬払出装置100により管理されていなかった注射薬の在庫状況を管理することが可能となる。
【0771】
また本例では、搬送制御部193は、図形向き特定部215が特定したバーコードの向き、及び登録された向き情報に基づき、位置変更部126に載置された注射薬の向きを、予め設定された搬送トレイ151aにおける注射薬の向きとなるように調整する。つまり、搬送制御部193は、注射薬の向きが搬送トレイ151aにおいて所定方向を向くように、注射薬の向きを調整する。搬送制御部193は、吸着機構153a(
図9参照)を軸方向に回転させることにより、注射薬の向きを調整する。搬送制御部193は、薬剤移動部153(
図9参照)を制御することにより、注射薬の向きが調整された注射薬を、搬送トレイ151aへと搬送する。なお、搬送制御部193は、搬送トレイ151aへ注射薬を搬送し、搬送トレイ151aに注射薬を載置する前に、注射薬の向きを調整しても構わない。
【0772】
<簡易な形状モデルの登録処理/バーコードの向きの登録処理>
図71は、簡易形状モデルの登録処理、及びバーコードの向きの登録処理の一例を示すフローチャートである。
【0773】
制御部190は、簡易形状モデルを作成及び登録するためのユーザ入力を受付可能なモデル登録画像Img2(
図72参照)を、タッチパネル210に表示させる(SH1)。モデル登録画像Img2は、規定された注射薬の向きに対応するバーコードの向きを登録するためのユーザ入力を受付可能な向き登録画像としても機能する。
【0774】
薬剤師等は、モデル登録画像Img2において、簡易形状モデルの作成対象であり、かつバーコードの向きの登録対象である注射薬の各種情報を入力する。各種情報としては、例えば、当該注射薬を収容する容器の種類情報、容器のサイズ情報(測定情報)、注射薬の有効期限を特定するための情報、及びカセットCaに関する情報が入力される。カセットCaに関する情報としては、例えば、上記注射薬を載置したカセットCaの、カセット棚110における格納位置を示す情報が挙げられる。
【0775】
制御部190は、各種情報の入力完了のユーザ入力を受付けると、上記注射薬を1本、カセットCaに載置するよう薬剤師等に促すための画像を、タッチパネル210に表示する。薬剤師等は、上記注射薬を1本、カセットCaに載置し、当該カセットCaをカセット棚110に格納した後、簡易形状モデルの登録処理を注射薬払出装置100に実行させる登録開始指示を、タッチパネル210に入力する。本例では、登録開始指示は、バーコードの向きの登録処理を注射薬払出装置100に実行させる登録開始指示でもある。情報取得部211は、登録開始指示を受付けると、入力された各種情報(入力情報)を取得する(SH2)。
【0776】
なお、上記カセットCaは、簡易形状モデル作成専用のカセットであっても、注射薬が割付けられたカセットCa(使用中のカセットCa)であっても構わない。使用中のカセットCaである場合、薬剤師等は、カセットCaに載置された注射薬を全て取出した後、簡易形状モデルの作成対象となる注射薬を当該カセットCaに載置する。簡易形状モデル作成専用のカセットを用いる場合、薬剤師等は当該カセットに注射薬を載置するだけでよい。
【0777】
移送制御部191は、入力情報に基づき、上記カセットCaの格納位置を特定し、カセット移送部140を制御することにより、当該カセットCaをカセット棚110からカセット保持部130(本例ではカセット保持部130a)へ移送する(SH3)。
【0778】
SH3の処理と並行して、モデル作成部212は、入力情報に基づき、簡易形状モデルを作成する(SH4)。モデル作成部212は、入力情報に含まれる種類情報から、上記注射薬の容器の種類を特定し、当該種類に対応する形状テンプレートを記憶部180から読出す。モデル作成部212は、入力情報に含まれるサイズ情報に基づき、読出した形状テンプレートを拡大又は縮小することにより、形状モデルを作成する。
【0779】
SH3の処理により、カセット保持部130aにカセットCaが載置されると、重量算出部218は、ロードセル134を制御することにより、当該カセットCaの重量を測定する。このとき測定されるカセットCaの重量は、1本の注射薬が載置されたカセットCaの重量である。また、カセット保持部130aにカセットCaが載置されると、駆動制御部192は、駆動機構133aを制御することにより、カセット受入位置131a(
図6参照)から処理位置132aへとカセットCaを移動させる。
【0780】
吸着位置決定部194は、位置特定用カメラ122に、処理位置132aに載置されたカセットCa、及び当該カセットCaに載置された注射薬を撮影させる。吸着位置決定部194は、簡易形状モデル、注射薬の画像、及びサイズ情報(容器の幅情報)を用いて、処理位置132aに載置されたカセットCaにおいて、吸着対象の注射薬と、当該注射薬における吸着位置とを決定する(SH5)。搬送制御部193は、薬剤搬送部121を制御することにより、吸着位置決定部194が決定した吸着位置において、吸着対象の注射薬を吸着する。
【0781】
吸着可否判定部213は、吸着対象の注射薬を薬剤搬送部121が吸着できたか否かを判定することにより、簡易形状モデルの作成に成功したか否かを判定する(SH6)。薬剤搬送部121が注射薬を吸着し、簡易形状モデルの作成に成功したと判定された場合(SH6でYES)、搬送制御部193は、薬剤搬送部121を制御することにより、吸着した注射薬を、処理位置132aから位置変更部126へと搬送する(SH7)。
【0782】
このとき、重量算出部218は、注射薬1本あたりの重量を算出する(SH8)。重量算出部218は、SH7において注射薬を処理位置132aから位置変更部126へと搬送するときに、空となったカセットCaの重量を測定する。重量算出部218は、この測定結果と、SH3の処理によりカセット保持部130aにカセットCaが載置されたときの測定結果とに基づき、注射薬1本あたりの重量を算出する。
【0783】
重量算出部218は、注射薬1本あたりの重量を算出できたか否かを判定する(SH9)。カセットCaの重量を算出できたと判定された場合(重量の算出に成功した場合)(SH9でYES)、モデル登録部214は、位置変更部126に載置された注射薬に付されたバーコードを、バーコードリーダー123に読取らせる(SH10)。これにより、制御部190は、当該注射薬の種類を特定する。また、モデル登録部214は、期限読み取り用カメラ125を制御することにより、位置変更部126に載置された注射薬に付された有効期限を撮影することにより、当該有効期限を示す情報を取得する(SH10)。
【0784】
バーコードリーダー123は、注射薬識別情報を読取ることにより、注射薬におけるバーコードの向きを特定する。図形向き特定部215は、バーコードリーダー123から当該向きを示す向き特定情報を取得することにより、当該向きを特定する(SH11)。
【0785】
SH10において、制御部190は、期限読み取り用カメラ125が撮影した画像をタッチパネル210に表示する。薬剤師等は、当該画像を視認することにより、位置変更部126における注射薬の向きを特定し、その向きをタッチパネル210に入力する。薬剤向き設定部216は、タッチパネル210に入力された注射薬の向きを、位置変更部126における注射薬の向きとして設定する(SH12)。
【0786】
情報登録部217は、記憶部180に記憶するバーコードの向きを特定する(SH13)。情報登録部217は、例えば、薬剤向き設定部216が設定した注射薬の向きと、規定された注射薬の向きとが一致しているか否かを判定する。
【0787】
薬剤向き設定部216が設定した注射薬の向きと、規定された注射薬の向きとが一致している場合、情報登録部217は、図形向き特定部215が特定したバーコードの向きを、記憶部180に記憶する向き情報として特定する。
【0788】
薬剤向き設定部216が特定した注射薬の向きと、規定された注射薬の向きとが一致していない場合、情報登録部217は、図形向き特定部215が特定したバーコードの向きを、上記2つの向きを一致させたときの向きに変更する。情報登録部217は、変更後のバーコードの向きを、記憶部180に記憶する向き情報として特定する。
【0789】
最後に、モデル登録部214は、SH4においてモデル作成部212が作成した簡易形状モデルを、読取ったバーコードが示す注射薬識別情報に紐付けて記憶部180に記憶する(SH14)。また、情報登録部217は、S13において特定した向き情報を、当該注射薬識別情報に紐付けて記憶部180に記憶する(SH14)。
【0790】
また、制御部190は、上記有効期限を特定するための情報に基づき、有効期限の表示形態及び向きを特定できる。そのため、制御部190は、撮影した画像から、有効期限を精度良く読取ることができる。制御部190は、SH10において読取った有効期限を示す情報を、上記注射薬識別情報に紐付けて記憶部180に記憶する。
【0791】
なお、SH6でNO(簡易形状モデルの作成失敗)、SH9でNO(注射薬1本あたりの重量算出失敗)の場合、制御部190は本処理を終了する。SH6でNOの場合、制御部190は、タッチパネル210を介して、簡易形状モデルの作成に失敗した旨のエラー通知を行っても構わない。SH9でNOの場合、制御部190は、タッチパネル210を介して、上記重量算出に失敗した旨のエラー通知を行っても構わない。
【0792】
また、上記モデル登録装置としては、注射薬払出装置100は、少なくとも、SH1~SH6の処理、及び、SH6でYESの場合にSH10において注射薬識別情報を読取り後、SH14において簡易形状モデルを登録する処理を行えばよい。上記薬剤向き登録装置としては、注射薬払出装置100は、SH10においてバーコードを読取り後、SH11~SH13の処理を経て、SH14において上記向き情報を登録する処理を行えばよい。
【0793】
<表示画像例>
次に、
図72~
図76に基づき、タッチパネル210に表示されるモデル登録画像Img2の一例について説明する。
図72~
図76は、モデル登録画像Img2の一例を示す図である。
【0794】
モデル登録画像Img2(
図72の「注射薬払出管理 薬品簡易登録」画像)は、例えば次のように表示される。例えば、制御部190は、タッチパネル210に表示された初期画像(ホーム画面)において「メンテナンス」ボタンが選択されると、ユーザ認証画像(ユーザID及びパスワード入力受付画像)をタッチパネル210に表示する。制御部190は、ユーザ認証に成功した場合、モデル登録画像Img2をタッチパネル210に表示する。
【0795】
モデル登録画像Img2は、
図72に示すように、登録された注射薬に関する情報を表示する登録一覧表示領域A21と、各種情報のユーザ入力を受付ける入力受付領域A22と、を含む。制御部190は、「入力」タブへのユーザ入力を受付けた場合、入力受付領域A22を表示する。制御部190は、「結果」タブへのユーザ入力を受付けた場合、登録一覧表示領域A21と、各種処理の結果を示す結果表示領域A24(
図76参照)と、を含むモデル登録画像Img2を表示する。
【0796】
図72~
図75は、入力受付領域A22を順にスクロール表示したときの一例を示す図である。
図76は、登録一覧表示領域A21と共に表示される結果表示領域A24の一例を示す図である。モデル登録画像Img2は、登録一覧表示領域A21と、入力受付領域A22又は結果表示領域A24とを含むが、
図73~
図76では、登録一覧表示領域A21を割愛している。
【0797】
図72に示すように、登録一覧表示領域A21には、導入時に登録された注射薬に関する情報と、新規に登録された(簡易形状モデルが登録された)注射薬に関する情報と、を表示可能な領域である。制御部190は、これらの2種類の情報を識別可能に表示しても構わない。例えば、制御部190は、新規に登録された注射薬に関する情報の識別番号の先頭に「9」を付して、導入時に登録された注射薬に関する情報と区別するようにしても構わない。
【0798】
名称入力領域A221は、登録する注射薬名の入力を受付けるための領域である。名称入力領域A221へのユーザ入力を受付けると、制御部190は、例えばQWERTYキーを表示する。制御部190は、QWERTYキーへの入力内容を名称入力領域A221に反映する。
【0799】
容器種類選択領域A222は、容器の種類を選択するためのユーザ入力(容器の種類情報)を受付ける。本例では、アンプル、バイアル、プラスチックアンプル(プラバラ)、及びスティックアンプル(スティック)の何れかが選択可能となっている。容器種類選択領域A222に対するユーザ入力を受けて、モデル作成部212は、形状テンプレートを特定する。
【0800】
容器色選択領域A223は、容器(瓶)の色を選択するためのユーザ入力を受付ける。本例では、透明であるか否かが選択可能となっている。容器の色を選択させることにより、制御部190は、例えば、カセットCaにおいて注射薬を吸着するときの画像処理、及び有効期限を読取るときの画像処理において、容器の色を考慮した画像処理を実行できる。
【0801】
バーコード種類選択領域A224は、注射薬識別情報を示すバーコードの形式を選択するためのユーザ入力を受付ける。本例では、バーコード種類選択領域A224は、バーコードの有無を選択するためのユーザ入力を受付ける。具体的には、注射薬に付されたバーコードが一次元バーコードであるか、注射薬にバーコードを付されていない(バーコード無し)かが選択可能となっている。バーコード無しが選択された場合、簡易形状モデル、及び注射薬1本あたりの重量は、注射薬識別情報に代えて、入力された注射薬名に紐付けて登録される。またこの場合、制御部190は、バーコードの向きの登録処理を行わない。
【0802】
図72~
図74に示すように、期限特定入力領域A225は、有効期限を特定するための情報のユーザ入力を受付ける。本例では、期限特定入力領域A225には、「使用期限読取有無」、「パターン」、「色」、「方向」及び「順方向」の各項目が含まれている。
【0803】
「使用期限読取有無」項目は、有効期限の読取りを制御部190に実行させるか否かをユーザに選択させる項目である。「有」が選択された場合、制御部190は有効期限を読取り、「無」が選択された場合、制御部190は有効期限の読取りを実行しない。この場合、「無」が選択された注射薬については、有効期限の登録が行われず、また、注射薬を払出すときに有効期限の適否は判断されない。
【0804】
「パターン」項目は、有効期限(年月)の表示形式をユーザに選択させる項目である。例えば「yyyy.mm」は、年が4桁、月が2桁の表示形式を示す。本例では、3つの表示形式が選択可能となっている。
【0805】
「色」項目は、有効期限の表示色をユーザに選択させる項目である。本例では、表示色が白である(白文字)か、白以外の表示色である(白文字以外)かが選択可能となっている。
【0806】
「方向」項目は、有効期限の印字方向をユーザに選択させる項目である。本例では、印字方向が注射薬の全長向きであるか、注射薬の周方向(胴径向き)であるかが選択可能となっている。
【0807】
「順方向」項目は、有効期限の印字方向が全長向きである場合に、有効期限(年月)が注射薬の底部から頭部に向けて(順方向に)印字されているのか、その逆に印字されているのかを、ユーザに選択させる項目である。「一般」ボタンは印字方向が順方向である場合の選択ボタンであり、「逆」は印字方向がその逆向きである場合の選択ボタンである。
【0808】
「パターン」、「色」、「方向」、及び「順方向」の各項目において選択された情報により、制御部190は、有効期限の表示形態を認識できる。そのため、制御部190は、有効期限を精度良く読取ることが可能となる。
【0809】
図73に示すように、「色」項目をユーザに選択させる場合、制御部190は、ユーザの選択を支援するための選択支援画像を表示しても構わない。制御部190は、その他の項目をユーザに選択させる場合に、その項目の選択に適した選択支援画像を表示しても構わない。
【0810】
図74に示すように、測定情報入力領域A226は、容器のサイズ情報(測定情報)のユーザ入力を受付ける。本例では、容器のサイズ情報として、ユーザが測定した容器(注射薬)の幅(Wd1)、全長(Ht1)、胴体部分の長さ(Ht2)、及び高さの各数値の入力を受付ける。各長さの入力領域へのユーザ入力を受付けると、制御部190は、例えばテンキーを表示する。制御部190は、テンキーへの入力内容を、各入力領域に反映する。
【0811】
制御部190は、容器の高さについては、入力された容器の幅に基づく値を自動入力しても構わない。この場合、制御部190は、ユーザの入力支援を行うことができる。
【0812】
上述したように、容器の種類がバイアル及びアンプルの場合、容器の幅及び高さは略同一である。そのため、制御部190は、容器の幅として入力された数値を、容器の高さの入力値として反映させる。また、制御部190は、プラスチックアンプル及びスティックアンプルについては、実験結果を踏まえ、容器の幅よりも所定量小さくした値を、容器の高さの入力値として反映させても構わない。制御部190は、プラスチックアンプルについては、例えば容器の幅から所定値(例:20mm)を減算した値を、容器の高さの入力値として反映させても構わない。制御部190は、スティックアンプルについては、例えば容器の幅に所定値(例:2/3)を乗算した値を、容器の高さの入力値として反映させてよい。
【0813】
図74に示すように、容器のサイズ情報をユーザに入力させる場合、制御部190は、ユーザ入力を支援するための入力支援画像を表示しても構わない。例えば、容器の幅(Wd1)の入力領域に対するユーザ入力を受付けた場合、制御部190は、
図74に示すように、選択された容器の概略形状に容器の幅の位置を示した入力支援画像を表示する。その他の長さ(例:容器の全長、胴体部分の長さ)の入力においても、同様の入力支援画像が表示されてよい。
【0814】
図75に示すように、カセットCaに関する情報を取得するための領域として、入力受付領域A22は、種別選択領域A227、保管位置表示領域A228、及びカセット一覧表示領域A229を含む。
【0815】
種別選択領域A227は、簡易形状モデルの作成対象である注射薬を載置するカセットCaとして、簡易形状モデル作成専用のカセット(専用カセット)を用いるか、使用中のカセットCaを用いるか、をユーザに選択させる領域である。保管位置表示領域A228は、上記注射薬を載置するカセットCaのカセット保管位置(例:当該位置を示す番号、読取棚No)を表示する。カセット一覧表示領域A229は、カセットCaの保管位置及び種類等を表示する。
【0816】
上述の通り、注射薬払出装置100は、各カセットCaのカセット固有情報と、カセット保管位置を示す保管位置情報とを紐付けて管理している。注射薬払出装置100は、専用カセットのカセット固有情報についても、その保管位置情報と紐付けて管理している。そのため、制御部190は、使用するカセットCaが選択されると、当該カセットCaの保管位置を特定できる。その結果、制御部190は、選択されたカセットCaの保管位置を表示したり、当該カセットCaをカセット棚110から取出したりできる。
【0817】
「専用トレイ」ボタンが選択された場合、制御部190は、上記注射薬を載置するカセットが専用カセットであると特定する。この場合、制御部190は、専用カセットのカセット保管位置を、保管位置表示領域A228に表示する。
【0818】
「通常トレイ」ボタンが選択された場合、制御部190は、カセット一覧表示領域A229の中から選択されたカセットCaを、上記注射薬を載置するカセットCaとして特定し、当該カセットCaのカセット保管位置を、保管位置表示領域A228に表示する。
【0819】
薬品情報読取ボタンA230は、入力受付領域A22に入力された入力情報の取得を情報取得部211に開始させるためのユーザ入力を受付ける。薬品情報読取ボタンA230に対するユーザ入力を受付けると、制御部190は、保管位置表示領域A228に表示されたカセットCaに、上記注射薬を1本載置するように促すための通知を、タッチパネル210に表示させる。その後、簡易形状モデルの作成及び登録処理を開始するためのユーザ入力(登録開始指示)を受付けると、制御部190は、入力情報を取得すると共に、簡易形状モデルの作成及び登録処理を実行する。
【0820】
図76に示すように、制御部190は、各種処理結果を結果表示領域A24に表示する。制御部190は、読取ったバーコードが示す情報を、識別情報表示領域A241に表示する。本例では、読取ったバーコードの文字列が表示される。制御部190は、バーコードを読取ることにより特定したバーコードの向き(バーコード方向)を、向き表示領域A242に表示する。つまり、向き表示領域A242には、図形向き特定部215が特定したバーコードの向きが表示される。
【0821】
また、制御部190は、位置変更部126において撮影した上記注射薬の画像を、画像表示領域A243に表示する。制御部190は、作成した簡易形状モデルのイメージ画像を、モデル表示領域A245に表示する。制御部190は、算出した注射薬1本あたりの重量を、重量表示領域A246に表示する。
【0822】
向き選択領域A244は、位置変更部126に載置された注射薬の向きを示す薬剤向き情報のユーザ入力を受付ける。薬剤師等は、画像表示領域A243に表示された画像を視認することにより、位置変更部126における注射薬の向きを特定し、当該向きを向き選択領域A244に入力する。
【0823】
図76では、注射薬の向きが左向き(注射薬の頭部が左側)であるため、薬剤師等は、向き選択領域A244において「左」ボタンを選択する。薬剤向き設定部216は、この選択された向きを、注射薬の向きとして設定する。情報登録部217は、注射薬の向きが規定された注射薬の向き(本例では左向き)であると特定する。そのため、情報登録部217は、図形向き特定部215が特定したバーコードの向き(向き表示領域A242に表示されている向き)を、向き情報として、読取ったバーコードが示す注射薬識別情報に紐付けて登録する。
【0824】
一方、画像表示領域A243に表示された画像において、右向きの注射薬の像が表示された場合、薬剤師等は、向き選択領域A244において「右」ボタンを選択する。薬剤向き設定部216は、この選択された向きを、注射薬の向きとして設定する。情報登録部217は、注射薬の向きが規定された注射薬の向き(本例では左向き)とは逆向きであると特定する。そのため、情報登録部217は、図形向き特定部215が特定したバーコードの向き(向き表示領域A242に表示されている向き)とは逆向きを、向き情報として、上記注射薬識別情報に紐付けて登録する。
【0825】
なお、薬剤師等が位置変更部126を直接視認することにより、位置変更部126に載置された注射薬の向きを特定する場合には、結果表示領域A24に画像表示領域A243が表示されなくても構わない。
【0826】
<補足>
(1)ユーザ入力等により、注射薬識別情報とバーコードの向きとを紐付けて、予め記憶部180に記憶しておいても構わない。この場合、制御部190は、注射薬に付されたバーコードを読取ることにより、当該注射薬の注射薬識別情報を特定し、記憶部180を参照することにより、バーコードの向きを特定する。
(2)バーコードを読取る場合、バーコードリーダー123がバーコード全体を読取ることができるように、薬剤回転部127(
図8参照)を回転させる。バーコードの大きさに依らず回転速度が一定の場合、注射薬に占めるバーコードの大きさが大きくなるほど、バーコードを精度良く読取ることができなくなる可能性がある。
【0827】
そこで、注射薬識別情報と薬剤回転部127の回転速度とを紐付けて記憶部180に記憶しておいても構わない。例えば、注射薬に占めるバーコードの大きさ(占有角度)が大きい程、回転速度が小さくなるように、注射薬識別情報と回転速度とを紐付けて記憶しておく。制御部190は、注射薬に付されたバーコードを読取ることにより、当該注射薬の注射薬識別情報を特定し、注射薬識別情報に紐付けられた回転速度で薬剤回転部127を回転させる。これにより、バーコードの大きさに依らず、バーコードを精度良く読取ることができる。
【0828】
また、注射薬識別情報とバーコードの大きさとを紐付けておくと共に、回転速度を小さくするための基準値を設けておいても構わない。この場合、制御部190は、注射薬に付されたバーコードを読取ることにより、当該注射薬の注射薬識別情報に紐付けられたバーコードの大きさを特定する。制御部190は、特定したバーコードの大きさを基準値と比較し、当該大きさが基準値未満であれば、所定速度(例:初期設定の速度)で薬剤回転部127を回転させる。制御部190は、特定したバーコードの大きさが基準値以上であれば、所定速度よりも遅い速度で薬剤回転部127を回転させる。この場合も、バーコードの大きさに依らず、バーコードを精度良く読取ることができる。なお、基準値は複数設定されていても構わない。
【0829】
〔上記構成の別表現〕
上記構成について、以下のように表現できる。
【0830】
[A]<モデル登録装置>
本発明の一態様に係るモデル登録装置は、
薬剤が載置された載置部の画像から、前記載置部に載置され、かつ前記載置部から取出す対象とする薬剤の像を特定するために用いられる、薬剤を平面視したときの形状を示す形状モデルを登録するモデル登録装置であって、
薬剤を収容する容器の種類毎に、前記容器の概略形状を表す形状テンプレートが予め準備されており、
入力された前記容器の種類情報、及び前記容器のサイズ情報を取得する情報取得部と、
前記種類情報が示す種類に対応する形状テンプレートを特定し、前記サイズ情報に基づき、特定した形状テンプレートを拡大又は縮小することにより、前記形状モデルを作成するモデル作成部と、
前記モデル作成部が作成した形状モデルを登録するモデル登録部と、を備える。
【0831】
前記構成によれば、薬剤師等が容器の種類情報及びサイズ情報を入力するだけで、簡易に形状モデルを作成し、薬剤を払出す薬剤払出装置、又は薬剤払出装置と通信可能に接続できる記憶装置に登録できる。そのため、薬剤払出装置は、登録された形状モデルを用いて、載置部の画像において、載置部から取出し対象とする薬剤の像を特定できる。つまり、形状モデルが登録されていない薬剤(例:新薬)であって、かつ、形状モデルの管理者により当該薬剤の形状モデルが正式に登録されるまでの間であっても、薬剤払出装置は、登録された形状モデルを用いて、取出し対象とする薬剤を特定できる。
【0832】
従って、形状モデルが登録されていない薬剤についても、薬剤払出装置は、簡易な形状モデルを用いた薬剤の払出しを行うことが可能となる。
【0833】
なお、薬剤払出装置が、載置された注射薬にバックライトを照射して当該注射薬を撮像する場合(例:カセット兼薬剤保持部136(
図51及び
図52参照)を用いて、注射薬を撮像する場合)を考える。この場合、撮像画像において、注射薬の形状を鮮明に特定できる。そのため、容器の種類情報及びサイズ情報を取得することなく、また、形状テンプレートを用いることなく、形状モデルを作成できる。しかし、バックライトを設けた構成の場合、注射薬払出装置100は、その分高価なものとなる。
【0834】
上記のモデル登録装置によれば、薬剤師等が容器の種類情報及びサイズ情報を入力するだけで、新薬等の形状モデルを作成し登録できる。そのため、バックライトを備えていない安価な注射薬払出装置100においても、新薬等の形状モデルを登録できる。
【0835】
本発明の一態様に係る薬剤向き登録装置は、
読取位置に載置された薬剤から、前記薬剤に付された図形を読取ることにより、前記図形の向きを特定する図形向き特定部と、
前記読取位置に載置された薬剤の向きを設定する薬剤向き設定部と、
前記図形向き特定部により特定された前記図形の向きと、前記薬剤向き設定部により設定された前記薬剤の向きとに基づき、前記図形の向き及び前記薬剤の向きの関係を示す向き情報を、前記薬剤の種類に紐付けて登録する情報登録部と、を備える。
【0836】
前記構成によれば、薬剤搬送装置は、特定された図形の向きと設定された薬剤の向きとに基づき登録された上記向き情報を用いることにより、読取位置において図形の向きを読取った薬剤について、実際の薬剤の向きを特定できる。そのため、薬剤搬送装置は、読取位置からの薬剤の取出し、及び搬送先での薬剤の載置を精度良く行うことができる。
【0837】
なお、上記薬剤搬送装置は、薬剤を載置する載置部から取出され、かつ種類が識別された薬剤を、薬剤に付された図形の向きに基づき、搬送先において所定方向に沿って載置するものである。
【0838】
さらに、本発明の一態様に係る薬剤向き登録装置では、前記薬剤の向きは、ユーザ入力により設定されても構わない。前記構成によれば、簡易な手法により薬剤の向きを特定できる。
【0839】
さらに、本発明の一態様に係る薬剤搬送装置は、
薬剤を載置する載置部から取出され、かつ種類が識別された薬剤を、薬剤に付された図形の向きに基づき、搬送先において所定方向に沿って載置する薬剤搬送装置であって、
読取位置に設置された薬剤から、当該薬剤に付された図形を読取ることにより、前記図形の向きを特定する図形向き特定部と、
入力された薬剤のサイズ情報、前記図形向き特定部が特定した前記図形の向き、及び前記薬剤向き登録装置により登録された前記向き情報に基づき、前記読取位置に載置された薬剤の吸着位置を決定する吸着位置決定部と、を備えても構わない。
【0840】
前記構成によれば、読取位置に載置された薬剤の吸着位置を精度良く算出できる。そのため、読取位置において薬剤を精度良く吸着できる。
【0841】
さらに、本発明の一態様に係る薬剤搬送装置は、
薬剤を載置する載置部から取出され、かつ種類が識別された薬剤を、薬剤に付された図形の向きに基づき、搬送先において所定方向に沿って載置する薬剤搬送装置であって、
読取位置に設置された薬剤から、当該薬剤に付された図形を読取ることにより、前記図形の向きを特定する図形向き特定部と、
前記図形向き特定部が特定した前記図形の向き、及び、前記薬剤向き登録装置により登録された前記向き情報に基づき、前記読取位置に載置された薬剤の向きを調整すると共に、前記薬剤を前記搬送先へと搬送する搬送制御部と、を備えても構わない。
【0842】
前記構成によれば、搬送先において所定方向に沿って複数の薬剤を載置できる。
【0843】
≪ソフトウェアによる実現例≫
注射薬払出装置100の制御ブロック(特に移送制御部191、駆動制御部192、搬送制御部193、吸着位置決定部194、第1判別処理部195、第2判別処理部196、薬剤位置制御部197、保管位置判定部198、報知制御部199、情報取得部211、モデル作成部212、吸着可否判定部213、モデル登録部214、図形向き特定部215、薬剤向き設定部216、情報登録部217、及び重量算出部218)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。また、プリンタ装置13の制御ブロック(特に制御部1000)についても同様に、論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0844】
後者の場合、注射薬払出装置100及びプリンタ装置13は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0845】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0846】
100 注射薬払出装置(モデル登録装置、薬剤向き登録装置、薬剤搬送装置)
126 位置変更部(読取位置)
190 制御部(モデル登録装置、薬剤向き登録装置)
193 搬送制御部
194 吸着位置決定部
211 情報取得部
212 モデル作成部
214 モデル登録部
215 図形向き特定部
216 薬剤向き設定部
217 情報登録部
Ca カセット(載置部)