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  • 特許-鉄道車両用ディスクブレーキ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】鉄道車両用ディスクブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20230906BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
F16D65/12 T
F16D65/12 R
F16D65/12 B
F16D65/12 P
B61H5/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019210589
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021081036
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 由衣子
(72)【発明者】
【氏名】野上 裕
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/194203(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/099074(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
B61H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用のディスクブレーキ装置であって、
前記鉄道車両の車軸に取り付けられる回転部材と、
前記回転部材に対向する裏面を有する環状のディスク本体と、前記裏面上に放射状に配置される複数のフィンと、を含むブレーキディスクと、
前記複数のフィンのうち前記ブレーキディスクの周方向において隣り合うフィンの間の通気量を制御する制御部材であって、前記回転部材と前記フィンとの間に挟まれるベースプレートと、前記ベースプレートから前記ディスク本体に向かって突出して前記隣り合うフィンの間に位置付けられ、前記ブレーキディスクの径方向において外側に向かうにつれて前記ディスク本体に近づく表面を有する突出部と、前記径方向において外側から前記突出部を支持するように前記ベースプレート上に設けられる支持部と、を含む前記制御部材と、
を備え、
前記周方向における前記支持部の幅は、前記周方向における前記突出部の幅よりも小さい、ディスクブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用のディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の制動装置として、ディスクブレーキ装置が広く使用されている。ディスクブレーキ装置は、環状のブレーキディスクと、ブレーキライニングと、を備える。ブレーキディスクは、例えば、車輪に締結され、車輪とともに回転する。ブレーキディスクには、ブレーキライニングが押し付けられる。ブレーキライニングとブレーキディスクとの摩擦により、ブレーキディスク及び車輪が制動される。
【0003】
鉄道車両に用いられるディスクブレーキ装置のブレーキディスクには、その耐久性を確保する観点から、十分な冷却性能が要求される。制動時における冷却性能を確保するため、一般に、ブレーキディスクの裏面には、複数のフィンが放射状に形成されている。各フィンは、車輪に接触し、ブレーキディスクの裏面と車輪との間に通気路を形成する。当該通気路は、ブレーキディスクが車輪とともに回転するとき、ブレーキディスクの内周側から外周側に向かって空気を通過させる。通気路内を流れる空気により、ブレーキディスクが冷却される。
【0004】
しかしながら、鉄道車両の走行中、ブレーキディスクと車輪との間の通気路内を空気が流れることにより、空力音が発生する。特に、鉄道車両が高速で走行する場合、通気路内の通気量が増加して大きな空力音が発生する。
【0005】
これに対して、特許文献1には、周方向に隣り合うフィン同士を連結部で連結したディスクブレーキ装置が開示されている。このディスクブレーキ装置では、連結部により、フィン間の通気路各々において断面積が最小となる部分が形成される。特許文献1によれば、通気路の最小断面積の総和を18000mmとすることで、高速走行時における空力音を低減することができる。
【0006】
特許文献1において、空力音を低減するための連結部は、ブレーキディスクのディスク本体及びフィンと一体的に形成されている。そのため、ブレーキディスクのうち、連結部の近傍部分の剛性が他の部分の剛性と比較して大きくなっている。よって、制動時においてブレーキライニングがブレーキディスクに対して摺動し、摩擦熱が発生したとき、連結部の近傍部分が他の部分よりも熱変形しにくく、ブレーキディスクに反りが発生する。その結果、ブレーキディスクを車輪に締結するボルトへの負荷が増大する。
【0007】
そこで、特許文献2では、ブレーキディスクとは別体の空力音低減部材(制御部材)をディスクブレーキ装置に設ける技術が提案されている。特許文献2によれば、制御部材に設けられた突出部によって通気路の一部を塞ぐことで、通気路内の空気の流れを抑制し、鉄道車両の走行中に発生する空力音を低減することができる。また、ブレーキディスクと制御部材とが別個の部品であるため、制御部材の突出部がブレーキディスクの剛性に影響しない。よって、突出部に起因してブレーキディスクに反りが発生するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-205428号公報
【文献】国際公開第2019/194203号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2のディスクブレーキ装置において、例えば、制御部材の突出部が薄肉材で形成された単なるプレートである場合、ブレーキディスクの回転時の気流又は遠心力で突出部がたわみ、突出部自身が振動して騒音を発生させる可能性がある。また、ブレーキディスクとの熱交換によって高温となった空気が突出部の周囲に停滞することにより、制御部材の熱負荷が増大する可能性も考えられる。そのため、制御部材には、振動及び熱負荷等に対する強度確保の点でさらに工夫する余地があるといえる。
【0010】
本開示は、通気路内の通気量を制御するための制御部材が設けられた鉄道車両用ディスクブレーキ装置において、制御部材の強度を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係るディスクブレーキ装置は、鉄道車両用のディスクブレーキ装置である。ディスクブレーキ装置は、回転部材と、ブレーキディスクと、制御部材と、を備える。回転部材は、鉄道車両の車軸に取り付けられる。ブレーキディスクは、環状のディスク本体と、複数のフィンと、を含む。ディスク本体は、回転部材に対向する裏面を有する。フィンは、ディスク本体の裏面上に放射状に配置される。制御部材は、複数のフィンのうちブレーキディスクの周方向において隣り合うフィンの間の通気量を制御する。制御部材は、ベースプレートと、突出部と、支持部と、を含む。ベースプレートは、回転部材とフィンとの間に挟まれる。突出部は、ベースプレートからディスク本体に向かって突出して隣り合うフィンの間に位置付けられる。突出部は、ブレーキディスクの径方向において外側に向かうにつれてディスク本体に近づく表面を有する。支持部は、径方向において外側から突出部を支持するようにベースプレート上に設けられる。ブレーキディスクの周方向における支持部の幅は、周方向における突出部の幅よりも小さい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、通気路内の通気量を制御するための制御部材が設けられた鉄道車両用ディスクブレーキ装置において、制御部材の強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る鉄道車両用ディスクブレーキ装置の概略構成を示す縦断面図である。
図2図2は、図1に示すディスクブレーキ装置に含まれるブレーキディスク及び制御部材の裏面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、図1に示すディスクブレーキ装置に含まれる制御部材の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態に係るディスクブレーキ装置は、鉄道車両用のディスクブレーキ装置である。ディスクブレーキ装置は、回転部材と、ブレーキディスクと、制御部材と、を備える。回転部材は、鉄道車両の車軸に取り付けられる。ブレーキディスクは、環状のディスク本体と、複数のフィンと、を含む。ディスク本体は、回転部材に対向する裏面を有する。フィンは、ディスク本体の裏面上に放射状に配置される。制御部材は、複数のフィンのうちブレーキディスクの周方向において隣り合うフィンの間の通気量を制御する。制御部材は、ベースプレートと、突出部と、支持部と、を含む。ベースプレートは、回転部材とフィンとの間に挟まれる。突出部は、ベースプレートからディスク本体に向かって突出して隣り合うフィンの間に位置付けられる。突出部は、ブレーキディスクの径方向において外側に向かうにつれてディスク本体に近づく表面を有する。支持部は、径方向において外側から突出部を支持するようにベースプレート上に設けられる。ブレーキディスクの周方向における支持部の幅は、周方向における突出部の幅よりも小さい。
【0015】
実施形態に係るディスクブレーキ装置によれば、制御部材により、ブレーキディスクのディスク本体の裏面上で周方向に隣り合うフィンの間の通気量を制御することができる。すなわち、上記ディスクブレーキ装置では、隣り合うフィンの間に制御部材の突出部が位置付けられているため、これらのフィンがディスク本体及び回転部材とともに形成する通気路の開口面積が部分的に小さくなる。これにより、通気路内の通気量を制限することができ、鉄道車両の走行時に発生する空力音を低減することができる。しかも、制御部材の突出部は、ブレーキディスクの径方向において外側に向かうにつれてディスク本体に近づく表面を有する。そのため、通気路内を流れる空気をブレーキディスクの外周側へ円滑に案内することができる。よって、鉄道車両の走行時に発生する空力音を低減しつつ、ブレーキディスクを効率よく冷却することができる。
【0016】
実施形態に係るディスクブレーキ装置において、空力音を低減するための突出部は、支持部によって支持されている。そのため、ブレーキディスクの回転時の気流又は遠心力によって突出部がたわみ、振動するのを抑制することができる。すなわち、振動に対する制御部材の強度を確保することができる。
【0017】
例えば、ブレーキディスクの周方向における支持部の幅が突出部の幅以上であり、支持部がフィンに近接している場合、支持部により、ブレーキディスクの外周側に向かう空気の流れが阻害される。よって、ブレーキディスクとの熱交換によって高温となった空気が突出部及び支持部の周囲に停滞しやすくなり、制御部材の熱負荷が増大する可能性がある。これに対して、実施形態に係るディスクブレーキ装置では、ブレーキディスクの周方向において突出部の幅よりも支持部の幅が小さくなるように、制御部材が構成されている。そのため、通気量を制限して空力音を低減する突出部の下流側で、支持部とフィンとの間に比較的大きな隙間が形成される。よって、支持部とフィンとの間の領域を空気が流れやすくなり、当該領域及びその近傍における高温の空気の停滞を抑制することができる。これにより、突出部及び支持部の高温化を抑制することができ、熱負荷に対する制御部材の強度を確保することができる。
【0018】
実施形態に係るディスクブレーキ装置では、フィン間の通気量を制御する制御部材において、周方向における突出部の幅よりも支持部の幅を小さくしたことにより、支持部とフィンとの間の領域を空気が流れやすくなっている。そのため、支持部とフィンとの間の領域及びその近傍にゴミや泥等の異物が詰まりにくい。よって、異物の除去作業の負担を軽減することができ、ディスクブレーキ装置のメンテナンス性を向上させることができる。
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0020】
[ディスクブレーキ装置の構成]
図1は、本実施形態に係る鉄道車両用ディスクブレーキ装置100の概略構成を示す縦断面図である。縦断面とは、中心軸Xを含む平面でディスクブレーキ装置100を切断した断面をいう。中心軸Xは、鉄道車両の車軸200の軸心である。以下、中心軸Xが延びる方向を軸方向という。
【0021】
図1に示すように、ディスクブレーキ装置100は、回転部材10と、ブレーキディスク20と、制御部材30と、を備える。
【0022】
回転部材10は、車軸200に取り付けられ、車軸200と一体で中心軸X周りに回転する。本実施形態の例では、回転部材10は、鉄道車両の車輪であり、板部11を有する。ただし、回転部材10は、車輪以外のディスク体であってもよい。
【0023】
ブレーキディスク20は、ディスク状の回転部材10の両面に設けられている。これらのブレーキディスク20は、例えば、ボルト及びナットで構成される締結部材40により、回転部材10の板部11に締結される。軸方向において各ブレーキディスク20の外側には、ブレーキライニング50が設けられる。制御部材30は、回転部材10と各ブレーキディスク20との間に配置されている。
【0024】
図2は、回転部材10の両面上に配置されたブレーキディスク20及び制御部材30のうち、一方のブレーキディスク20及び制御部材30を回転部材10側から見た図(裏面図)である。図2では、ブレーキディスク20及び制御部材30の1/4周部分を示す。以下、ブレーキディスク20の周方向及び径方向を単に周方向及び径方向という。
【0025】
図2を参照して、ブレーキディスク20は、ディスク本体21と、複数のフィン22と、を含む。
【0026】
ディスク本体21は、環状をなす。ディスク本体21は、実質的に、中心軸Xを軸心とする円環板状を有する。ディスク本体21は、摺動面211及び裏面212を有する。摺動面211は、ディスク本体21において軸方向の一方側に設けられた面である。摺動面211には、制動力を発生させるためにブレーキライニング50(図1)が押し付けられる。裏面212は、ディスク本体21において軸方向の他方側に設けられた面であり、回転部材10(図1)に対向する。
【0027】
複数のフィン22は、ディスク本体21の裏面212上に放射状に配置されている。これらのフィン22は、ディスク本体21の内周側から外周側に延びている。各フィン22は、裏面212から回転部材10(図1)側に突出する。これにより、回転部材10と、周方向において隣り合うフィン22と、ディスク本体21との間に空間が形成される。これらの空間は、ブレーキディスク20が回転部材10とともに回転する際に空気が通過する通気路となる。
【0028】
本実施形態において、一部のフィン22には、当該フィン22及びディスク本体21を貫通する締結孔24が形成されている。その他のフィン22の頂面221には、凹状のキー溝25が形成されている。各締結孔24には、締結部材40(図1)が挿入される。キー溝25には、ブレーキディスク20と回転部材10(図1)との相対回転を規制するためのキー(図示略)が嵌め込まれる。フィン22の数、締結孔24の数、及びキー溝25の数は、適宜設定することができる。本実施形態の例では、全てのフィン22に締結孔24又はキー溝25が形成されているが、締結孔24及びキー溝25が形成されていないフィン22が存在してもよい。
【0029】
制御部材30は、ブレーキディスク20とは別の部材である。制御部材30は、周方向に隣り合うフィン22の間の通気量を制御する。制御部材30は、ベースプレート31と、複数の突出部32と、複数の支持部33と、を含む。
【0030】
ベースプレート31は、概略円環板状をなし、ディスク本体21と実質的に同軸に配置されている。ベースプレート31は、回転部材10(図1)と複数のフィン22との間に挟まれる。すなわち、ベースプレート31の一方面に回転部材10が接触し、ベースプレート31の他方面にフィン22の頂面221が接触する。
【0031】
本実施形態の例では、径方向におけるベースプレート31の長さは、径方向におけるフィン22の頂面221の長さと概ね等しい。ただし、径方向におけるベースプレート31の長さは、フィン22の頂面221の長さよりも長くてもよいし、フィン22の頂面221の長さよりも短くてもよい。ベースプレート31の長さがフィン22の頂面221の長さよりも短い場合、フィン22の頂面221には、ベースプレート31を収容するための凹部が形成されていてもよい。
【0032】
ベースプレート31には、締結部材40(図1)を挿通させるため、ブレーキディスク20の締結孔24に対応して複数の開口311が形成されている。また、ベースプレート31には、上述したキー(図示略)を挿通させるため、ブレーキディスク20のキー溝25に対応して複数の開口312が形成されている。
【0033】
ベースプレート31の両面のうち、ブレーキディスク20側の面には、複数の突出部32と、複数の突出部32に対応する複数の支持部33とが形成されている。突出部32及び支持部33は、周方向に間隔を空けて設けられている。
【0034】
突出部32の各々は、ベースプレート31からディスク本体21に向かって突出して、周方向に隣り合うフィン22の間に位置付けられる。すなわち、周方向において隣り合うフィン22の間に、突出部32が1つずつ配置されている。支持部33の各々は、対応する突出部32を径方向において外側から支持するように、ベースプレート31上に設けられている。
【0035】
[制御部材]
以下、図3及び図4を参照して、制御部材30についてより詳細に説明する。図3は、図2に示すブレーキディスク20及び制御部材30のIII-III断面図である。すなわち、図3は、ブレーキディスク20及び制御部材30を径方向に沿って切断した断面図である。図3では、ブレーキディスク20及び制御部材30とともに、回転部材10も示す。図4は、制御部材30の一部を示す平面図である。図4では、説明の便宜上、フィン22を破線で示す。
【0036】
図3に示すように、制御部材30において、突出部32の各々は、ベースプレート31からディスク本体21の裏面212に向かって突出している。突出部32の先端は、ディスク本体21の裏面212には接触しない。また、突出部32の両側縁は、フィン22の側面222に接触しない。そのため、各突出部32とブレーキディスク20との間には、径方向視で概略U字状の隙間が形成されている。
【0037】
突出部32は、表面321を有する。表面321は、突出部32においてブレーキディスク20の内周側を向いた表面であり、径方向で外側に向かうにつれてディスク本体21に近づく。表面321のベースプレート31側の端部321aは、ベースプレート31の表面313と滑らかに連続するように凹曲面となっている。一方、表面321のディスク本体21側の端部321bは、凸曲面となっている。表面321のうち、端部321aと端部321bとの間の部分は、端部321aと端部321bとを滑らかに接続する曲面であってもよいし、平坦な傾斜面であってもよい。また、表面321のうち、端部321aと端部321bとの間の部分は、曲面と傾斜面とを組み合わせて構成されていてもよい。
【0038】
突出部32の各々は、対応する支持部33によって支持されている。支持部33は、ベースプレート31からディスク本体21側に延び、突出部32に接続される。突出部32と、突出部32に接続された支持部33とによって、概略三角形状の縦断面(径方向に沿った断面)を有する空間Sが形成される。支持部33は、軸方向と概ね平行に延びていてもよいし、軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0039】
制御部材30は、1.0mm~3.0mmの板厚を有する金属の薄肉材で構成することができる。制御部材30は、例えば、この薄肉材をプレス加工することによって成形される。この場合、ベースプレート31、複数の突出部32、及び複数の支持部33は、図3に示すように一体的に形成される。ただし、ベースプレート31と、突出部32及び支持部33とを別体で形成した後、突出部32及び支持部33をベースプレート31に対して溶接等で固定することもできる。この場合、図3に示す例とは異なり、突出部32と支持部33とで形成される空間Sがベースプレート31によって封鎖される。
【0040】
図4を参照して、突出部32は、周方向において幅W32を有する。本実施形態の例において、突出部32の周方向の長さは、ベースプレート31側で大きく、支持部33側で小さい。ただし、突出部32の周方向の長さは、突出部32がフィン22と干渉しないよう調整されている。本実施形態のように突出部32の周方向の長さが一定でない場合は、突出部32の周方向の最大長さを突出部32の幅W32とする。突出部32の幅W32は、実質上、周方向における表面321の幅である。
【0041】
支持部33は、周方向において幅W33を有する。本実施形態の例では、支持部33の周方向の長さは、全体にわたって一定である。ただし、支持部33の周方向の長さが一定でない場合は、支持部33の周方向の最大長さを支持部33の幅W33とする。支持部33の幅W33は、突出部32の幅W32よりも小さい。そのため、支持部33とフィン22との間に形成される隙間G33は、突出部32とフィン22との間に形成される隙間G32よりも大きくなっている。突出部32とフィン22との隙間G32の大きさ(周方向の長さ)は、例えば、1.0mm~3.0mmの範囲に設定することができる。支持部33とフィン22との隙間G33の大きさ(周方向の長さ)は、例えば、1.0mm~3.0mmの範囲に設定することができる。ただし、G32<G33である。
【0042】
突出部32の幅W32に対する支持部33の幅W33の比率(W33/W32)は、適宜決定することができる。ブレーキディスク20の回転時の気流及び遠心力に対する強度を確保する観点から、W33/W32は0.5以上であることが好ましい。突出部32及び支持部33とフィン22との隙間G32,G33における異物の滞留を防止する観点から、W33/W32は、例えば0.8以下とすることができる。
【0043】
[効果]
本実施形態に係るディスクブレーキ装置100では、周方向において隣り合う各フィン22の間に、制御部材30の突出部32が配置されている。これにより、回転部材10と、フィン22と、ディスク本体21とで画定される通気路の断面積が部分的に小さくなる。よって、通気路内の通気量を制限することができ、鉄道車両の走行時に発生する空力音を低減することができる。しかも、制御部材30の突出部32は、ブレーキディスク20の径方向で外側に向かうにつれてディスク本体21に近づく表面321を有する。そのため、通気路内を流れる空気をブレーキディスク20の外周側に円滑に案内することができる。よって、鉄道車両の走行時に発生する空力音を低減しつつ、ブレーキディスク20を効率よく冷却することができる。
【0044】
本実施形態に係るディスクブレーキ装置100において、空力音を低減するための突出部32の各々は、対応する支持部33により、径方向の外側から支持されている。支持部33は、回転部材10とフィン22との間に挟まれたベースプレート31上に設けられている。この支持部33により、ブレーキディスク20の回転時の気流又は遠心力によって突出部32がたわみ、振動するのを抑制することができる。よって、振動に対する制御部材30の強度を確保することができる。
【0045】
本実施形態に係るディスクブレーキ装置100において、制御部材30は、突出部32の幅W32よりも支持部33の幅W33が小さくなるように構成されている。そのため、支持部33とフィン22との間に形成される隙間G33が、突出部32とフィン22との間に形成される隙間G32よりも大きくなる。これにより、支持部33とフィン22との間の領域を空気が通りやすくなるため、ブレーキディスク20との熱交換によって高温化した空気が当該領域及びその近傍に停滞するのを抑制することができる。よって、突出部32及び支持部33の高温化を抑制することができ、熱負荷に対する制御部材30の強度を確保することができる。
【0046】
本実施形態に係るディスクブレーキ装置100では、支持部33とフィン22との間に比較的大きな隙間G33が形成されていることにより、支持部33とフィン22との間の領域を空気が通りやすくなっている。そのため、支持部33とフィン22との間の領域及びその近傍にゴミや泥等の異物が詰まりにくい。これにより、異物の除去作業の負担を軽減することができ、ディスクブレーキ装置100のメンテナンス性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態に係るディスクブレーキ装置100では、支持部33とフィン22との間に比較的大きな隙間G33が形成されていることにより、支持部33とフィン22との間の領域及びその近傍に異物が滞留しにくくなっている。そのため、通気路内の空気の流れが異物によって阻害されるという事態が生じにくい。よって、通気路内において空気を継続して円滑に流通させることができる。その結果、ブレーキディスク20の冷却性能を確保することができる。
【0048】
本実施形態において、制御部材30は、好ましくは、板厚1.0mm~3.0mmの金属の薄肉材によって成形される。このような薄肉材を用いることにより、制御部材30を容易に成形することができ、且つ制御部材30の重量の増加を抑制することができる。
【0049】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、ディスク本体21の径方向において中央付近に制御部材30の突出部32及び支持部33が配置されているが、突出部32及び支持部33の位置はこれに限定されるものではない。突出部32及び支持部33は、ディスク本体21の外周側に配置されていてもよいし、ディスク本体21の内周側に配置されていてもよい。
【0051】
上記実施形態において、制御部材30のベースプレート31は、実質的に円環板状をなす。しかしながら、ベースプレート31は、周方向において複数に分割されていてもよい。すなわち、複数の円弧状部品によってベースプレート31が構成されていてもよい。これらの円弧状部品は、回転部材10とブレーキディスク20との間において、互いに接触して又は間隔を空けて周方向に配列される。円弧状部品は、それぞれ、複数の突出部32及び支持部33を有することが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
100:ディスクブレーキ装置
10:回転部材
20:ブレーキディスク
21:ディスク本体
22:フィン
30:制御部材
31:ベースプレート
32:突出部
321:表面
33:支持部
図1
図2
図3
図4