(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20230906BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20230906BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230906BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230906BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20230906BHJP
C08C 19/25 20060101ALI20230906BHJP
C08F 36/06 20060101ALI20230906BHJP
C08F 36/08 20060101ALI20230906BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L15/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K5/54
C08C19/25
C08F36/06
C08F36/08
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2019219570
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】上西 和也
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 香織
(72)【発明者】
【氏名】新家 雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑樹
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060810(JP,A)
【文献】特開2018-188598(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072650(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043699(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/172185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08C,C08F,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が150,000以上のゴム成分と、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含む補強用充填剤と、変性イソプレンポリマーと、変性ブタジエンポリマーとを含有するゴム組成物。
【請求項2】
前記変性イソプレンポリマーが、末端又は側鎖に、アルコキシシリル基、又は、窒素原子及びアルコキシシリル基を含む官能基、を有し、重量平均分子量が1,000以上1500,000未満である変性イソプレンポリマーであり、
前記変性ブタジエンポリマーが、末端又は側鎖に、アルコキシシリル基、又は、窒素原子及びアルコキシシリル基を含む官能基、を有し、重量平均分子量が1,000以上1500,000未満である、変性ブタジエンポリマーである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記変性イソプレンポリマーの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1~50質量部であり、
前記変性ブタジエンポリマーの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1~50質量部である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記補強用充填剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、5~150質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記補強用充填剤が、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
さらに、シランカップリング剤を含有し、
前記補強用充填剤が少なくともシリカを含み、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記シリカの含有量に対して、1~20質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて製造されたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤ等に使用されるゴム組成物にはカーボンブラックやシリカ等の補強用充填剤が配合される。一方で、補強用充填剤同士の相互作用により、ゴム組成物中で補強用充填剤が凝集して十分な特性が得られない場合がある。
【0003】
このようななか、例えば、特許文献1には、補強用充填剤を含有するゴム組成物への配合剤として、変性ブタジエンポリマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、ゴム材料に対する要求性能が高まるなか、補強用充填剤を含有するゴム組成物に対しては、加硫後の補強用充填剤の分散性(以下、「加硫後の補強用充填剤の分散性」を単に「補強用充填剤の分散性」又は「分散性」とも言う)のさらなる向上が求められている。
本発明者らが特許文献1に記載のゴム組成物の分散性について検討したところ、今後さらに高まるであろう要求性能を考慮すると、さらなる改善が望ましいことが明らかになった。
【0006】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、補強用充填剤の分散性に優れるゴム組成物、及び、上記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、変性イソプレンポリマーと変性ブタジエンポリマーを併用することで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
(1) 重量平均分子量が150,000以上のゴム成分と、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含む補強用充填剤と、変性イソプレンポリマーと、変性ブタジエンポリマーとを含有するゴム組成物。
(2) 上記変性イソプレンポリマーが、末端又は側鎖に、アルコキシシリル基、又は、窒素原子及びアルコキシシリル基を含む官能基、を有し、重量平均分子量が1,000以上1500,000未満である変性イソプレンポリマーであり、
上記変性ブタジエンポリマーが、末端又は側鎖に、アルコキシシリル基、又は、窒素原子及びアルコキシシリル基を含む官能基、を有し、重量平均分子量が1,000以上1500,000未満である、変性ブタジエンポリマーである、上記(1)に記載のゴム組成物。
(3) 上記変性イソプレンポリマーの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、1~50質量部であり、
上記変性ブタジエンポリマーの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、1~50質量部である、上記(1)又は(2)に記載のゴム組成物。
(4) 上記補強用充填剤の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、5~150質量部である、上記(1)~(3)のいずれかに記載のゴム組成物。
(5) 上記補強用充填剤が、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のゴム組成物。
(6) さらに、シランカップリング剤を含有し、
上記補強用充填剤が少なくともシリカを含み、
上記シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して、1~20質量%である、上記(1)~(5)のいずれかに記載のゴム組成物。
(7) 上記(1)~(6)のいずれかに記載のゴム組成物を用いて製造されたタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
以下に示すように、本発明によれば、補強用充填剤の分散性に優れるゴム組成物、及び、上記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のゴム組成物及び本発明のタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明のゴム組成物が含有する各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
【0012】
[1]ゴム組成物
本発明のゴム組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも言う)は、重量平均分子量が150,000以上のゴム成分と、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含む補強用充填剤と、変性イソプレンポリマーと、変性ブタジエンポリマーとを含有するゴム組成物である。
【0013】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について説明する。
【0014】
[ゴム成分]
上述のとおり、本発明の組成物はゴム成分を含有する。
上記ゴム成分は重量平均分子量(Mw)が150,000以上のゴム成分であれば特に制限されない。ただし、上記ゴム成分には後述する変性イソプレンポリマー及び後述する変性ブタジエンポリマーは含まれない。
【0015】
上記ゴム成分は、加工性及び分散性により優れ、また、加硫後の、低発熱性、破断伸び、破断強度及び耐摩耗性により優れる理由から、ジエン系ゴムであることが好ましい。
以下、「加工性及び分散性により優れ、また、加硫後の、低発熱性、破断伸び、破断強度及び耐摩耗性により優れる」ことを「本発明の効果等がより優れる」とも言う。
上記ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、天然ゴムが好ましい。
上記ゴム成分が天然ゴムを含む場合、上記ゴム成分中の天然ゴムの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。上記ゴム成分中の天然ゴムの含有量の上限は特に制限されず、100質量%である。
【0016】
〔分子量〕
【0017】
<重量平均分子量>
上述のとおり、上記ゴム成分の重量平均分子量(Mw)は150,000以上である。ゴム成分のMwは、本発明の効果等がより優れる理由から、200,000~10,000,000であることが好ましく、250,000~2,000,000であることがより好ましい。
【0018】
<数平均分子量>
上記ゴム成分の重量平均分子量(Mn)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100,000~5,000,000であることが好ましく、120,000~1,000,000であることがより好ましい。
【0019】
<測定方法>
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0020】
[補強用充填剤]
上述のとおり、本発明の組成物は、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含む補強用充填剤を含有する。
上記補強用充填剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、カーボンブラック及びシリカの両方を含むのが好ましい。
【0021】
〔カーボンブラック〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、補強用充填剤としてカーボンブラックを含有するのが好ましい。上記カーボンブラックは、1種のカーボンブラックを単独で用いても、2種以上のカーボンブラックを併用してもよい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0022】
本発明の組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
【0023】
〔シリカ〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、補強用充填剤としてシリカを含有するのが好ましい。
上記シリカは特に制限されず、従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0024】
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積(以下、「CTAB吸着比表面積」を単に「CTAB」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100~300m2/gであることが好ましく、185m2/g以上であることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0025】
上記シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100~300m2/gであることが好ましく、194m2/g以上であることがより好ましい。
ここで、N2SAは、シリカがゴム分子との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、シリカ表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0026】
シリカのCTAB吸着比表面積に対するシリカ窒素吸着比表面積の比(N2SA/CTAB)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.9~1.4であることが好ましい。
【0027】
本発明の組成物において、シリカの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、10~150質量部であることが好ましく、30~100質量部であることがより好ましい。
【0028】
<含有量>
本発明の組成物において、補強用充填剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、5~150質量部であることが好ましく、30~100質量部であることがより好ましい。
なお、本発明の組成物が2種以上の補強用充填剤を含有する場合、補強用充填剤の含有量は合計の含有量を意味する。
【0029】
[変性イソプレンポリマー]
上述のとおり、本発明の組成物は変性イソプレンポリマー(以下、「変性IR」とも言う)を含有する。
上記変性IRは、官能基を有するイソプレンポリマーである。
【0030】
〔官能基〕
上記変性IRが有する官能基は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、カルボキシル基及び後述する特定官能基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましく、アルコキシシリル基(特にトリエトキシシリル基)及び後述する特定官能基がより好ましく、後述する特定官能基がさらに好ましい。
上記変性IRは、上記官能基を末端に有するのでも側鎖に有するのでも構わないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上記官能基を末端に有するのが好ましい。
【0031】
〔分子量〕
【0032】
<重量平均分子量>
変性IRの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1,000~10,000,000であることが好ましく、20,000以上150,000未満であることがより好ましく、70,000以上150,000未満であることがさらに好ましい。
【0033】
<数平均分子量>
変性IRの数平均分子量(Mn)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1,000~5,000,000であることが好ましく、10,000以上150,000未満であることがより好ましく、70,000以上150,000未満であることがさらに好ましい。
【0034】
<分子量分布>
変性IRの分子量分布(Mw/Mn)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、2.0以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。
下限は特に制限されないが、通常、1.0以上である。
【0035】
〔ミクロ構造〕
<1,2-構造および3,4-構造>
変性IRにおいて、1,2-構造および3,4-構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0~10モル%であることが好ましく、0~5モル%であることがより好ましい。
ここで、1,2-構造の割合とは、イソプレンに由来する繰り返し単位のうち、1,2-構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。また、3,4-構造の割合とは、イソプレンに由来する繰り返し単位のうち、3,4-構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0036】
<1,4-トランス構造>
変性IRにおいて、1,4-トランス構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、2~90モル%であることが好ましく、5~70モル%であることがより好ましい。
ここで、1,4-トランス構造の割合とは、イソプレンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4-トランス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0037】
<1,4-シス構造>
変性IRにおいて、1,4-シス構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10~98モル%であることが好ましく、30~98モル%であることがより好ましい。
ここで、1,4-シス構造の割合とは、イソプレンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4-シス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0038】
なお、以下、「1,2-構造および3,4-構造の割合の合計(モル%)、1,4-トランス構造の割合(モル%)、1,4-シス構造の割合(モル%)」を「1,2-および3,4-/トランス/シス」とも表す。
【0039】
〔ガラス転移温度〕
変性IRのガラス転移温度(Tg)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、-100~-40℃であることが好ましく、-90~-50℃であることがより好ましく、-85~-60℃であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものとする。
【0040】
〔粘度〕
変性IRの粘度は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、2,000Pa・sを超えることが好ましく、3,000~100,000Pa・sであることがより好ましい。
また、変性IRを変性する前のイソプレンポリマーの粘度は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、800Pa・sを超えることが好ましく、1,200~8,000Pa・sであることがより好ましい。
また、変性IRの粘度は、本発明の効果等がより優れる理由から、変性前のイソプレンポリマーの粘度に対して、150~240%であることが好ましい。以下、変性前の粘度に対する変性後の粘度を「粘度(変性後/変性前)」とも言う。
なお、本明細書において、粘度は、JIS K5600-2-3に準じて、コーンプレート型粘度計を用いて測定したものとする。また、上記粘度は40℃の条件下で測定されたものとする。
【0041】
〔特定変性イソプレンポリマー〕
上記変性IRは、本発明の効果等がより優れる理由から、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基(以下、「特定官能基」とも言う)を末端に有するイソプレンポリマー(以下、「特定変性イソプレンポリマー」又は「特定変性IR」とも言う)であることが好ましい。
【0042】
<特定官能基>
上述のとおり、特定変性IRは、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基(特定官能基)を末端に有する。なお、特定変性IRは特定官能基を特定変性IRの少なくとも1つの末端に有すればよい。
【0043】
(好適な態様)
特定官能基は窒素原子及びケイ素原子を含む官能基であれば特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、窒素原子をアミノ基(-NR2:Rは水素原子又は炭化水素基)として含むのが好ましく、ケイ素原子をヒドロカルビルオキシシリル基(≡SiOR:Rは炭化水素基)として含むのが好ましい。
【0044】
特定官能基は、本発明の効果等がより優れる理由から、下記式(M)で表される基であることが好ましい。
【0045】
【0046】
上記式(M)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
上記式(M)中、Lは、単結合又は2価の有機基を表す。
【0047】
上記置換基は1価の置換基であれば特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1~30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2~30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2~30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6~18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0048】
上記式(M)中、R1は、本発明の効果等がより優れる理由から、水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1~10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1~10)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6~18)であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
複数あるR1は同一であっても異なっていてもよい。
複数あるR1が異なる場合、複数あるR1の組合せは、本発明の効果等がより優れる理由から、水素原子と、アルキル基(好ましくは、炭素数1~10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1~10)又は芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6~18)との組合せが好ましく、水素原子とアルキルシリル基(好ましくは、炭素数1~10)との組合せがより好ましく、水素原子とトリアルキルシリル基(好ましくは、炭素数1~10)との組合せが更に好ましい。
【0049】
R2は、本発明の効果等がより優れる理由から、ヒドロカルビルオキシ基(-OR基:Rは炭化水素基)であることが好ましく、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1~10)であることがより好ましい。
【0050】
上述のとおり、上記式(M)中、Lは、単結合又は2価の有機基を表す。
2価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基。好ましくは炭素数1~10)、芳香族炭化水素基(例えば、アリーレン基。好ましくは炭素数6~18)、-O-、-S-、-SO2-、-N(R)-(R:アルキル基)、-CO-、-NH-、-COO-、-CONH-、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基(-CmH2mO-:mは正の整数)、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
Lは、本発明の効果等がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは、炭素数1~10)であることが好ましい。
【0051】
上記式(M)中、nは、0~2の整数を表す。
nは、本発明の効果等がより優れる理由から、2であることが好ましい。
【0052】
上記式(M)中、mは、1~3の整数を表す。
mは、本発明の効果等がより優れる理由から、1であることが好ましい。
【0053】
上記式(M)中、n及びmは、n+m=3の関係式を満たす。
【0054】
上記式(M)中、*は、結合位置を表す。
【0055】
<製造方法>
特定変性IRを製造する方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。分子量及び分子量分布を特定の範囲する方法は特に制限されないが、開始剤とモノマーと停止剤との量比、反応温度、及び、開始剤を添加する速度などを調整する方法などが挙げられる。
【0056】
特定変性IRを製造する方法は、得られる組成物について本発明の効果等がより優れる理由から、有機リチウム化合物を用いてイソプレンを重合し、その後、窒素原子及びケイ素原子を含む求電子剤を用いて重合を停止する方法(以下、「本発明の方法1」とも言う)であることが好ましい。以下、「得られる組成物について本発明の効果等がより優れる」ことを単に「本発明の効果等がより優れる」とも言う。
【0057】
(有機リチウム化合物)
上記有機リチウム化合物は特に制限されないが、その具体例としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4-ジリチオブタン、1,5-ジリチオペンタン、1,6-ジリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
【0058】
有機リチウム化合物の使用量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、イソプレンに対して、0.001~10モル%であることが好ましい。
【0059】
(イソプレンの重合)
有機リチウム化合物を用いてイソプレンを重合する方法は特定に制限されないが、イソプレンを含有する有機溶媒溶液に上述した有機リチウム化合物を加え、0~120℃(好ましくは30~100℃)の温度範囲で撹拌する方法などが挙げられる。
【0060】
(特定求電子剤)
本発明の方法1では、窒素原子及びケイ素原子を含む求電子剤(以下、「特定求電子剤」とも言う)を用いてイソプレンの重合を停止する。特定求電子剤を用いて重合を停止することで、上述した特定官能基を末端に有するイソプレンポリマー(特定変性IR)が得られる。
特定求電子剤は窒素原子及びケイ素原子を含む化合物であれば特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、窒素原子をアミノ基(-NR2:Rは水素原子又は炭化水素基)として含むのが好ましく、ケイ素原子をヒドロカルビルオキシシリル基(≡SiOR:Rは炭化水素基)として含むのが好ましい。
【0061】
特定求電子剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、シラザンであることが好ましく、環状シラザンであることがより好ましい。ここで、シラザンとは、ケイ素原子と窒素原子とが直接結合した構造を有する化合物(Si-N結合を有する化合物)を意図する。
【0062】
上記環状シラザンは、本発明の効果等がより優れる理由から、下記式(S)で表される化合物であることが好ましい。
【0063】
【0064】
上記式(S)中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基の具体例及び好適な態様は上述した式(M)中のR1及びR2と同じである。
上記式(S)中、Lは、2価の有機基を表す。2価の有機基の具体例及び好適な態様は、上述した式(M)中のLと同じである。
【0065】
上記式(S)中、R1は、本発明の効果等がより優れる理由から、アルキル基(好ましくは、炭素数1~10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1~10)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6~18)であることが好ましく、アルキルシリル基であることがより好ましい。
【0066】
上記式(S)中、R2及びR3は、本発明の効果等がより優れる理由から、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシ基(-OR基:Rは炭化水素基)であることが好ましく、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1~10)であることがより好ましい。
【0067】
上記式(S)中、Lは、本発明の効果等がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは2~8、さらに好ましくは3~5)であることが好ましい。
【0068】
上記式(S)で表される化合物としては、例えば、N-n-ブチル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン、N-フェニル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン、N-トリメチルシリル-1,1-ジエトキシ-2-アザシラシクロペンタンなどが挙げられる。
なお、環状シラザンのケイ素原子は求電子性を示すと考えられる。
【0069】
有機リチウム化合物に対する特定求電子剤の量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、モル比で、0.1~10であることが好ましく、1~7であることがより好ましい。
【0070】
〔含有量〕
本発明の組成物において、変性IRの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、ゴム成分100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0071】
[変性ブタジエンポリマー]
上述のとおり、本発明の組成物は変性ブタジエンポリマー(以下、「変性BR」とも言う)を含有する。
上記変性BRは、官能基を有するブタジエンポリマーである。
【0072】
〔官能基〕
上記変性BRが有する官能基の具体例及び好適な態様は上述した変性IRと同じである。
上記変性BRは、上記官能基を末端に有するのでも側鎖に有するのでも構わないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上記官能基を末端に有するのが好ましい。
【0073】
〔分子量〕
【0074】
<重量平均分子量>
変性BRの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1,000~10,000,000であることが好ましく、2,000以上150,000未満であることがより好ましく、5,000~100,000であることがさらに好ましく、5,000~20,000であることが特に好ましい。
【0075】
<数平均分子量>
変性BRの数平均分子量(Mn)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1,000~5,000,000であることが好ましく、2,000以上150,000未満であることがより好ましく、5,000~100,000であることがさらに好ましく、5,000~20,000であることが特に好ましい。
【0076】
<分子量分布>
変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、2.0以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。
下限は特に制限されないが、通常、1.0以上である。
【0077】
〔ミクロ構造〕
<ビニル構造>
変性BRにおいて、ビニル構造の割合(ビニル単位含有量)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10~50モル%であることが好ましく、20~40モル%であることがより好ましい。
ここで、ビニル構造の割合とは、ブタジエンに由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0078】
<1,4-トランス構造>
変性BRにおいて、1,4-トランス構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10~70モル%であることが好ましく、30~50モル%であることがより好ましい。
ここで、1,4-トランス構造の割合とは、ブタジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4-トランス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0079】
<1,4-シス構造>
変性BRにおいて、1,4-シス構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10~50モル%であることが好ましく、20~40モル%であることがより好ましい。
ここで、1,4-シス構造の割合とは、ブタジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4-シス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0080】
〔ガラス転移温度〕
変性BRのガラス転移温度(Tg)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、-100~-60℃であることが好ましく、-90~-70℃であることがより好ましく、-85~-75℃であることがさらに好ましい。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものとする。
【0081】
〔粘度〕
変性BRの粘度は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1,000~10,000mPa・sであることが好ましく、3,000~6,000mPa・sであることがより好ましい。
また、変性BRを変性する前のブタジエンポリマーの粘度は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、500~5,000mPa・sであることが好ましく、1,500~3,000mPa・sであることがより好ましい。
また、変性BRの粘度は、本発明の効果等がより優れる理由から、変性前のブタジエンポリマーの粘度に対して、150~240%であることが好ましい。
なお、粘度は、JIS K5600-2-3に準じて、コーンプレート型粘度計を用いて測定したものとする。
【0082】
〔特定変性ブタジエンポリマー〕
上記変性BRは、本発明の効果等がより優れる理由から、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基(以下、「特定官能基」とも言う)を末端に有するブタジエンポリマー(以下、「特定変性ブタジエンポリマー」又は「特定変性BR」とも言う)であることが好ましい。
【0083】
<特定官能基>
特定官能基の具体例及び好適な態様は上述した特定変性IRと同じである。
【0084】
<製造方法>
特定変性BRを製造する方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。分子量及び分子量分布を特定の範囲する方法は特に制限されないが、開始剤とモノマーと停止剤との量比、反応温度、及び、開始剤を添加する速度などを調整する方法などが挙げられる。
【0085】
特定変性BRを製造する方法は、得られる組成物について本発明の効果等がより優れる理由から、有機リチウム化合物を用いてブタジエンを重合し、その後、窒素原子及びケイ素原子を含む求電子剤を用いて重合を停止する方法(以下、「本発明の方法2」とも言う)であることが好ましい。以下、「得られる組成物について本発明の効果等がより優れる」ことを単に「本発明の効果等がより優れる」とも言う。
【0086】
(有機リチウム化合物)
上記有機リチウム化合物の具体例及び好適な態様は上述した特定変性IRと同じである。
【0087】
(ブタジエンの重合)
有機リチウム化合物を用いてブタジエンを重合する方法は特定に制限されないが、ブタジエンを含有する有機溶媒溶液に上述した有機リチウム化合物を加え、0~120℃(好ましくは30~100℃)の温度範囲で撹拌する方法などが挙げられる。
【0088】
(特定求電子剤)
特定求電子剤の具体例及び好適な態様は上述した特定変性IRと同じである。
【0089】
有機リチウム化合物に対する特定求電子剤の量の好適な態様は上述した特定変性IRと同じである。
【0090】
〔含有量〕
本発明の組成物において、変性BRの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、ゴム成分100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0091】
[変性IRと変性BRの合計の含有量]
本発明の組成物において、上述した変性IRと上述した変性BRの合計の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましく、4~10質量部であることがさらに好ましい。
【0092】
本発明の組成物において、上述した変性IRと上述した変性BRの合計の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した補強用充填剤(特にシリカ)の含有量に対して、1~50質量%であることが好ましく、3~40質量%であることがより好ましく、5~35質量%であることがさらに好ましく、7~30質量%であることが特に好ましく、10~25質量%であることが特に好ましく、15~20質量%であることが最も好ましい。
【0093】
[変性IRと変性BRの量比]
本発明の組成物において、上述した変性IRの含有量に対する上述した変性BRの含有量の割合(変性IR/変性BR)は、本発明の効果等がより優れる理由から、10~500質量%であることが好ましく、20~400質量%であることがより好ましく、50~200質量%であることがさらに好ましく、80~120質量%であることが特に好ましい。
【0094】
[任意成分]
本発明の組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、シランカップリング剤、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、プロセスオイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤、加硫活性剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0095】
〔シランカップリング剤〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。特に、上述した補強用充填剤が少なくともシリカを含む場合、本発明の効果等がより優れる理由から、本発明の組成物はシランカップリング剤を含有するのが好ましい。
【0096】
シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0097】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0099】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
<含有量>
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
【0101】
また、本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0102】
[2]タイヤ
本発明のタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造されたタイヤである。本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。また、本発明のタイヤは、本発明の組成物を用いて製造されたタイヤトレッド部を備えるタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明のタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0103】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5及びビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
【0104】
本発明のタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
〔合成例〕
以下のとおり、特定変性IR1~2及び特定変性BR1~2を合成した。
特定変性IR1~2は、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有するイソプレンポリマーであるため、上述した特定変性IRに該当する。また、特定変性BR1~2は、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有するブタジエンポリマーであるため、上述した特定変性BRに該当する。
【0107】
<特定変性IR1(50k)>
n-BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),40.0mL,64mmol)を、イソプレン(681g,10.0mol)のシクロヘキサン(4.0kg)混合溶液に加えて、50℃で6時間攪拌した。反応後、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン(以下構造)(80mL、328mmol)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。
【0108】
【0109】
その結果、下記式(m1)で表される官能基を末端に有するイソプレンポリマー(特定変性IR1)(Mn=44,000,Mw=54,200,Mw/Mn=1.2)を95%の収率で得た。なお、IR分析によって、1,2-および3,4-/トランス/シス=7/0/93と見積もられた。また、Tgは-61℃であった。
【0110】
【0111】
<特定変性IR2(100k)>
n-BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),20.0mL,32mmol)を、イソプレン(681g,10.0mol)のシクロヘキサン(4.0kg)混合溶液に加えて、50℃で6時間攪拌した。反応後、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン(40mL、164mmol)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、上記式(m1)で表される官能基を末端に有するイソプレンポリマー(特定変性IR2)(Mn=84,500,Mw=105,000,Mw/Mn=1.2)を97%の収率で得た。なお、IR分析によって、1,2-および3,4-/トランス/シス=6/0/94と見積もられた。また、Tgは-62℃であった。
【0112】
<特定変性BR1(50k)>
n-BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),30mL,48mmol)を、1,3-ブタジエン(832g,15.4mol)及び2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL)のシクロヘキサン(4.2kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン(60mL、246mmol)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、上記式(m1)で表される官能基を末端に有するブタジエンポリマー(特定変性BR1)(Mn=46,200,Mw=52,100,Mw/Mn=1.1)を94%の収率で得た。なお、IR分析によって、ビニル/トランス/シス=24/40/36と見積もられた。また、Tgは-84℃であった。
【0113】
<特定変性BR2(10k)>
n-BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),120mL,192mmol)を、1,3-ブタジエン(832g,15.4mol)及び2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL)のシクロヘキサン(4.0kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、N-トリメチルシリル-1,1-ジメトキシ-2-アザシラシクロペンタン(240mL、984mmol)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、上記式(m1)で表される官能基を末端に有するブタジエンポリマー(特定変性BR1)(Mn=9,680,Mw=9,970,Mw/Mn=1.0)を91%の収率で得た。なお、IR分析によって、ビニル/トランス/シス=28/41/31と見積もられた。また、Tgは-83℃であった。
【0114】
〔ゴム組成物の調製〕
下記表1~6に示される成分を同表に示される割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記表1~6に示される成分のうち硫黄、加硫活性剤及び加硫促進剤を除く成分を、80℃のバンバリーミキサーで5分間混合した。次に、ロールを用いて、硫黄、加硫活性剤及び加硫促進剤を混合し、ゴム組成物を得た。
【0115】
〔ペイン効果(加硫後)〕
得られた各ゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で15分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
そして、作製した加硫ゴムシートについて、歪せん断応力測定機(RPA2000、α-テクノロジー社製)により、歪0.28%の歪せん断弾性率G′と歪30.0%の歪せん断弾性率G′とを測定し、その差G′0.28(MPa)-G′30.0(MPa)をペイン効果として算出した。
結果を表1~6に示す。結果は標準例を100とする指数で表した。指数が小さいほど補強用充填剤の分散性に優れることを意味する。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
上記表1~6に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
・天然ゴム:VON BUNDIT社製TSR20(重量平均分子量:1,890,000)
・カーボンブラック:東海カーボン社製シーストKH
・シリカ:Zeosil Premium 200MP(シリカ、N2SA=200m2/g、CTAB=200m2/g、N2SA/CTAB=1.0、ローディア社製)
・特定変性IR1:上述のとおり合成した特定変性IR1
・特定変性IR2:上述のとおり合成した特定変性IR2
・特定変性BR1:上述のとおり合成した特定変性BR1
・特定変性BR2:上述のとおり合成した特定変性BR2
・老化防止剤1:SANTOFLEX 6PPD(Soltia Europe社製)
・老化防止剤2:VULKANOX HS/LG(LANXESS社製)
・ワックス:パラフィンワックス(大内新興化学社製)
・加硫活性剤1:ステアリン酸YR(BF Goodrich社製)
・加硫活性剤2:亜鉛華3号(正同化学社製)
・シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製Si69
・加硫促進剤1:ノクセラー CZ-G(大内振興化学工業社製)
・加硫促進剤2:ソクシノール D-G:(住友化学社製)
・硫黄:油処理硫黄(軽井沢精錬所社製)
【0123】
表1~6から分かるように、いずれの表(変性IRと変性BRの合計の含有量が同じ態様同士の対比)においても、変性IR又は変性BRのどちらか一方のみを使用した比較例と比較して、変性IRと変性BRを併用した実施例は、優れた分散性を示した。
実施例B2~B4の対比、及び、実施例B5~B7の対比から、変性IR/変性BRが200質量%以下である、実施例B3~B4、及び、実施例B6~B7は、より優れた分散性を示した。
実施例B1と実施例B3と実施例B6との対比(変性IR/変性BRが100質量%の態様同士の対比)から、変性IRと変性BRの合計の含有量がゴム成分100質量部に対して4質量部以上である実施例B3及びB6は、より優れた分散性を示した。なかでも、変性IRと変性BRの合計の含有量がゴム成分100質量部に対して7質量部以上である実施例B6は、さらに優れた分散性を示した。
【符号の説明】
【0124】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション