(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】廃プラスチック成形物の製造方法、および廃プラスチック成形物の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/04 20190101AFI20230906BHJP
C08J 11/04 20060101ALI20230906BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20230906BHJP
B29C 48/345 20190101ALI20230906BHJP
B29C 48/40 20190101ALI20230906BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20230906BHJP
【FI】
B29C48/04
C08J11/04
B09B3/00
B29C48/345
B29C48/40
B29C48/88
(21)【出願番号】P 2019219750
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】末宗 義広
(72)【発明者】
【氏名】小水流 広行
(72)【発明者】
【氏名】関屋 政洋
(72)【発明者】
【氏名】田谷 貴男
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-230419(JP,A)
【文献】特開2002-060815(JP,A)
【文献】特開2008-068408(JP,A)
【文献】特表2012-515080(JP,A)
【文献】特開2007-015384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック原料を容器へ投入する原料投入工程と、
前記容器内で前記廃プラスチック原料を混練し、加熱する混練加熱工程と、
前記容器の端部に設けられて前記容器内と外部とを連通する連通部へ向かって、150℃以上に加熱された前記廃プラスチック原料を移送する移送工程と、
少なくとも前記廃プラスチック原料が前記連通部内を押し出される間、前記連通部を100℃以下に冷却する冷却工程と、
前記連通部において押し出し成形された前記廃プラスチック原料を所定の長さで切断する切断工程と、
を含み、
前記冷却工程における前記連通部の冷却は、前記連通部からの冷却水による抜熱によって行われる
廃プラスチック成形物の製造方法。
【請求項2】
前記容器の前記端部には面板が設けられ、
前記連通部は、前記面板の前記容器の外方側の端面から突出されたノズルを有し、
前記冷却工程における前記連通部の冷却は、前記ノズルの外周面への冷却水の散布により行われる、
請求項
1に記載の廃プラスチック成形物の製造方法。
【請求項3】
前記容器の前記端部には面板が設けられ、
前記連通部は、前記面板の前記容器の外方側の端面から突出されたノズルを有し、
前記移送工程において、前記廃プラスチック原料は、前記ノズルの内周面との摩擦により加熱される、
請求項
1又は2に記載の廃プラスチック成形物の製造方法。
【請求項4】
前記容器の前記端部には、加熱部が設けられ、
前記移送工程において、前記廃プラスチック原料は、前記加熱部により加熱される、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の廃プラスチック成形物の製造方法。
【請求項5】
内部に廃プラスチック原料を収容する容器と、
前記容器の前記内部において混練され、150℃以上に加熱された前記廃プラスチック原料を前記容器の端部へ向かって移送する移送部と、
前記容器の前記端部に設けられ、前記容器の前記内部と前記容器の外部とを連通する連通部と、
前記連通部を100℃以下に冷却する冷却部と、
前記連通部において押し出し成形された前記廃プラスチック原料を所定の長さで切断する切断部と、
を備え、
前記冷却部による冷却は、前記連通部からの冷却水による抜熱によって行われる、廃プラスチック成形物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック成形物の製造方法、および廃プラスチック成形物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭ごみ等に含まれる廃プラスチックをリサイクルするために、コークス炉を使用して廃プラスチックを化学原料化する技術がある。コークス炉内に廃プラスチックを投入するためには、当該廃プラスチックを所定形状の成形物に成形する必要がある。例えば、下記特許文献1には、プラスチック主体の廃棄物を押出し成形機に供給し、塊状の成形製品を製造する技術が記載されている。特に、下記特許文献1には、押出し成形機から押し出された成形物に水を噴出し、固化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、押出された後の成形物に向けて水を噴出しており、押出し中の成形物の冷却については考慮されていない。そのため、成形物の固化開始が遅れ、廃プラスチックが押し出された後、膨化し、密度が低下するといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、廃プラスチック成形物の高密度化が可能な新規かつ優れた廃プラスチック成形物の製造装置、および廃プラスチック成形物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、廃プラスチック原料を容器へ投入する原料投入工程と、上記容器内で上記廃プラスチック原料を混練し、加熱する混練加熱工程と、上記容器の端部に設けられて上記容器内と外部とを連通する連通部へ向かって、150℃以上に加熱された上記廃プラスチック原料を移送する移送工程と、少なくとも上記廃プラスチック原料が上記連通部内を押し出される間、上記連通部を100℃以下に冷却する冷却工程と、を含む、廃プラスチック成形物の製造方法が提供される。
【0007】
上記冷却工程における上記連通部の冷却は、上記連通部からの冷却水による抜熱によって行われてもよい。
【0008】
上記容器の上記端部には面板が設けられ、上記連通部は、上記面板の上記容器の外方側の端面から突出されたノズルを有し、上記冷却工程における上記連通部の冷却は、上記ノズルの外周面への冷却水の散布により行われてもよい。
【0009】
上記容器の上記端部には面板が設けられ、上記連通部は、上記面板の上記容器の外方側の端面から突出されたノズルを有し、上記移送工程において、上記廃プラスチック原料は、上記ノズルの内周面との摩擦により加熱されてもよい。
【0010】
上記容器の上記端部には、加熱部が設けられ、上記移送工程において、上記廃プラスチック原料は、上記加熱部により加熱されてもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、内部に廃プラスチック原料を収容する容器と、上記容器の上記内部において混練され、150℃以上に加熱された上記廃プラスチック原料を上記容器の端部へ向かって移送する移送部と、上記容器の上記端部に設けられ、上記容器の上記内部と上記容器の外部とを連通する連通部と、上記連通部を100℃以下に冷却する冷却部と、を備える、廃プラスチック成形物の製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように本発明によれば、廃プラスチックの高密度化が可能な新規かつ優れた廃プラスチック成形物の製造装置、および廃プラスチック成形物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る廃プラスチック成形物製造装置の構成例を示す正面図である。
【
図2】同実施形態に係る廃プラスチック成形物製造装置の構成例を示す平面図である。
【
図3】同実施形態に係る廃プラスチック成形物製造装置の構成例を示す側面図である。
【
図4A】同実施形態に係る冷却の様子を模式的に説明する部分断面図である。
【
図5A】同実施形態に係る廃プラスチック成形物を模式的に説明する外観図である。
【
図6】同実施形態に係る廃プラスチック成形物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】同実施形態の一の変形例に係る冷却の様子を模式的に説明する部分断面図である。
【
図8】同実施形態の他の変形例に係る冷却の様子を模式的に説明する部分断面図である。
【
図9】同実施形態のその他の変形例に係る廃プラスチック成形物の製造装置の側面図である。
【
図10】実施例として、廃プラスチック成形物の平均値径の測定結果を示すグラフである。
【
図11】実施例として、廃プラスチック成形物の見掛け密度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<1.廃プラスチック成形物の製造装置の構成>
図1~
図3を参照しながら、本発明の一の実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の構成例を示す正面図である。
図2は、同実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の構成例を示す平面図である。
図3は、同実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の構成例を示す側面図である。
【0016】
本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、廃プラスチック原料Mに対して、混練および加熱等の処理を行った後、押出成形することで、所定の形状を有する廃プラスチック成形物Pを成形するための装置である。廃プラスチック成形物Pは、例えば、石炭とともにコークス炉内へ挿入され、化学原料としてリサイクルされる。
【0017】
ここで、廃プラスチック原料Mには、使用済みプラスチック容器をはじめとするプラスチックごみが含まれる。具体的には、廃プラスチック原料Mには、ポリエチレン、ポリスチレン、またはポリプロピレン等の樹脂材料を主成分とするプラスチックごみが含まれる。
【0018】
廃プラスチック原料Mは、廃プラスチック成形物Pの製造装置100に投入される前の段階で、ある程度破砕された状態であってもよい。また、廃プラスチック原料Mは、廃プラスチック成形物Pの製造装置100に投入される前の段階で、ある程度、混練され、加熱された状態であってもよい。この場合、容器110内での廃プラスチック原料Mに対する混練、加熱を省略または簡易的に行うようにしてもよい。
【0019】
廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、
図1に示すように、容器110と、移送部120と、連通部130と、冷却部140とを有している。
【0020】
(容器)
容器110は、廃プラスチック原料Mを収容することが可能な筐体部分である。容器110は、
図1におけるY方向の一端部111側に、Z方向に向かって開口されたホッパ113を有する。かかるホッパ113を介して、容器110内に廃プラスチック原料Mが投入される。廃プラスチック原料Mは、容器110の内部において、混練されるとともに、150℃以上に加熱される。
【0021】
容器110内での加熱温度が、150℃未満であると、廃プラスチック原料Mの溶融が十分でなく、後述する廃プラスチック成形物Pの成形過程において、表面側の固化が十分に行われない。この結果、廃プラスチック成形物Pの高密度化が実現されない。また、容器110内において、廃プラスチック原料Mが150℃以上に加熱されるとは、容器110内の全ての領域において、150℃以上に加熱されていることを意味するものではなく、連通部130の近傍において押出し成形される状態となった廃プラスチック原料Mが、150℃以上に加熱されていれば足りる。具体的には、後述する面板117内に設けられた温度センサ170によって、容器110内の温度が測定される。さらに、温度センサ170は、面板117内に設けられたヒータ151の加熱温度を検出可能な範囲内に設けられる。
【0022】
さらに、容器110内には、移送部120の一部が設けられ、かかる移送部120によって、容器110のY方向の他端部115へ向かって廃プラスチック原料Mが移送される。容器110の他端部115には、面板117が設けられている。面板117は、容器110の他端部115に設けられた板状部材であり、面板117には、連通部130が設けられている。連通部130の詳細については、後述する。面板117の板厚、形状等は、押出し成形における押圧力等を考慮して、適宜設定され得る。
【0023】
(移送部)
移送部120は、容器110内の廃プラスチック原料Mを容器110の他端部115へ向かって移送する。具体的には、移送部120は、
図2に示すように、いわゆる2軸押出し機構を有している。
図1および
図2に示すように、移送部120は、一例として、容器110内において軸方向がY方向に沿って設けられた一対のシャフト121と、シャフト121の軸方向端部と連結された減速機構123と、減速機構123を介してシャフト121に回転力を付与する駆動源125とを有している。
【0024】
一対のシャフト121の外周面には、らせん状に設けられた刃状部分を有するスクリュー部127が設けられている。かかるスクリュー部127によって、シャフト121の回転に伴い、廃プラスチック原料Mが容器110の一端部111側から他端部115側へ移送される。また、一対のシャフト121に設けられたスクリュー部127同士の回転によって、廃プラスチック原料Mが混練されるとともに、摩擦によって加熱される。一対のシャフト121の回転方向は、同じ方向であってもよいし、逆方向であってもよく、容器110内の廃プラスチック原料Mの混練、加熱状態等に応じて適宜設定される。
【0025】
さらに、一対のシャフト121には、ニーディングディスク部129が設けられてもよい。ニーディングディスク部129は、
図2に示すように、シャフト121の軸方向中間に設けられている。一対のシャフト121に設けられたニーディングディスク部129同士の回転によって、廃プラスチック原料Mがより混練されるとともに、摩擦によって加熱される。
【0026】
(連通部)
図1に示すように、連通部130は、容器110の他端部に設けられた、横断面が円形の筒状部分であり、容器110内と外部とを連通している。廃プラスチック原料Mが、連通部130内を押し出されることにより、所定形状に成形され、廃プラスチック成形物Pとなる。
【0027】
図3に示すように、連通部130は、容器110の面板117に複数設けられる。特に、連通部130は、面板117におけるスクリュー部127の外周側に対応する位置に周状に設けられる。また、連通部130は、面板117の外方側の端面117Aから突出したノズル131を有している。ノズル131を有することにより、廃プラスチック原料Mが、連通部130の内周面131Aと接触する距離が長くなる。これにより、後述するように所定の温度以下とされた連通部130との接触に伴う放熱による冷却によって、廃プラスチック原料Mの溶融表面を固化することができる。
【0028】
また、廃プラスチック原料Mが、連通部130の内周面131Aと接触する距離が長くなることで、廃プラスチック成形物Pの成形性が向上する。すなわち、押し出し成形後、廃プラスチック成形物Pが所定の径を有する。例えば、ノズル131の距離Lは、20mm以上に設定される。
【0029】
(冷却部)
冷却部140は、連通部130を100℃以下に冷却する。冷却部140による冷却によっても連通部130の温度が100℃より高い温度であると、溶融した廃プラスチック原料Mの表面が、十分に固化されない。この結果、廃プラスチック成形物Pの高密度化が実現されない。また、連通部130が100℃以下に冷却されるとは、連通部130の全ての領域において、100℃以下に冷却されていることを意味するものではなく、廃プラスチック原料Mを固化するために必要な範囲の連通部130が、100℃以下に冷却されていれば足りる。具体的には、
図1に示すように、連通部130に設けられた温度センサ131Cによって、連通部130の温度が測定される。さらに、温度センサ131Cは、後述する水冷ノズル141の直下であって、連通部130の肉厚の径方向の中間部分の温度を測定可能な位置に設けられる(後述する
図4A参照)。温度センサ131Cの一例としては熱電対が挙げられる。
【0030】
また、連通部130の冷却される範囲として、例えば、連通部130の全体の長さの内、連通部130の先端側(容器110の外方側)の少なくとも半分が100℃以下に冷却されていれば足りる。この場合、温度センサ131Cは、連通部130の長手方向において連通部130の先端側に設けられる。
【0031】
また、好ましくは、冷却部140は、連通部130を70℃以下に冷却する。連通部130が70℃以下とされることにより、溶融した廃プラスチック原料Mの表面が、より十分に固化される。この結果、押し出し成形後の廃プラスチック原料Mの膨張がより抑制され、廃プラスチック成形物Pの高密度化が実現される。
【0032】
特に、連通部130は、冷却部140により供給された冷却水Wによる抜熱によって冷却される。冷却効率の比較的高い冷却水Wによる冷却を行うことで、廃プラスチック原料Mの溶融した表面の固化が効率的に実現される。
【0033】
図1に示すように、冷却部140は、水冷ノズル141と、水冷ノズル141へ冷却水Wを供給するポンプ143を有する。水冷ノズル141の先端部は、連通部130に対向する位置に設けられ、水冷ノズル141の先端部から、連通部130のノズル131の外周面131Bへ冷却水Wが散布される。
図3に示すように、冷却部140は、複数の水冷ノズル141を有し、各水冷ノズル141は、連通部130の各ノズル131に対して、1つ設けられる。なお、冷却水Wの散布には、冷却水Wの水流を連通部130へ向けて流出させる形態、またはミスト状の冷却水Wを連通部130へ噴射する形態が含まれる。
【0034】
連通部130のノズル131の外周面131Bへ冷却水Wが散布されることにより、冷却水Wと連通部130との接触面積が、ノズル131を有さない場合と比較して大きくなる。この結果、冷却部140による冷却の効率がより高くなる。また、ノズル131の外周面131Bへ冷却水Wが散布されることにより、冷却水Wが押出し成形中の廃プラスチック原料Mに直接かかることが抑制され、廃プラスチック成形物Pに含まれる余計な水分量が低減される。
【0035】
(加熱部)
廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、面板117周辺の温度を調節可能な加熱部150を有している。
図1に示すように、加熱部150は、一例として、面板117内に設けられた抵抗加熱式のヒータ151である。ヒータ151は、加熱用電源153と接続され、面板117内部での発熱によって、面板117および、その近傍を加熱する。容器110の他端部115の面板117に設けられた加熱部150による加熱によって、廃プラスチック原料Mの温度低下が抑制される。つまり、連通部130内における廃プラスチック原料Mの溶融状態が、冷却部140による冷却直前まで維持される。
【0036】
(切断部)
廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、切断部160を有している。
図1に示すように、切断部160は、一例として、回転刃161と、駆動源163と、切断部シャフト165と有する。回転刃161は、放射状に延びたアームの先端に刃がついた部位である。回転刃161のアームの放射方向の中心には、切断部シャフト165の一端が設けられる。切断部シャフト165の他端には、駆動源163が取り付けられる。駆動源163は、切断部シャフト165を介して、回転刃161に対して回転力を付与する。回転刃161の当接によって、連通部130から押し出された廃プラスチック原料Mが切断され、廃プラスチック成形物Pとされる。
【0037】
また、切断部160は、所定の温度以下とされた連通部130において押し出し成形された廃プラスチック原料Mを切断する。このため、廃プラスチック原料Mの外周面が固化し、廃プラスチック原料Mの外形が維持された状態となるので、切断が容易となる。さらに、廃プラスチック原料Mが自重で適当な長さで折れる場合、または外周面が固化されず押出し成形後に膨張した廃プラスチック原料Mを切断する場合と比較して、切断箇所がよく制御される。この結果、廃プラスチック成形物Pの形状、寸法が均一化し、廃プラスチック成形物Pの高密度化に加えて、かさ密度の向上が実現される。
【0038】
廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、
図1に示すように、面板117周辺の温度を検出可能な温度センサ170を有している。温度センサ170は、一例として、面板117内に挿入された状態で使用される熱電対である。
【0039】
また、廃プラスチック成形物Pの製造装置100は、
図1に示すように、制御部180を有している。制御部180は、廃プラスチック成形物Pの製造装置100における廃プラスチック成形物Pの成形工程を制御する。制御部180は、具体的には、冷却部140による冷却の際、温度センサ131Cからの出力に基づいて、散布される冷却水Wの水量、水圧を制御する。また、制御部180は、温度センサ170からの出力に基づいて、加熱部150による面板117周辺の加熱を制御する。さらに、制御部180は、切断部160の駆動源163、移送部120の駆動源125の回転数等を制御する。制御部180としての機能は、一例として、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の協働によって実現される。以上、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の概略構成について説明した。
【0040】
<2.廃プラスチック成形物の成形過程>
次に、
図4A、
図4B、
図5A、および
図5Bを参照しながら、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの成形過程について説明する。
図4Aは、本実施形態に係る冷却の様子を模式的に説明する部分断面図である。また、
図4Bは、
図4AにおけるA-A’端面図である。
図5Aは、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pを模式的に説明する外観図である。
図5Bは、
図5AにおけるB-B’端面図である。
【0041】
まず、容器110内で混練され、150℃以上に加熱された廃プラスチック原料Mは、面板117の設けられた他端部115へ向かって容器110内を移送される。このとき、150℃以上に加熱された廃プラスチック原料Mは、容器110内で少なくとも外表面が溶融状態である。その後、
図4Aに示すように、廃プラスチック原料Mは、押し出されながら連通部130内を通過する。このとき、廃プラスチック原料Mと連通部130の内周面131Aとの接触に伴う放熱によって、廃プラスチック原料Mの温度が低下する。特に、連通部130がノズル131を有する場合、摩擦の生じる距離が長くなることで、廃プラスチック原料Mの温度がより低下する。
【0042】
また、連通部130は、冷却部140によって少なくとも廃プラスチック原料Mが押し出される間、冷却されている。ここで、冷却部140は、溶融状態の廃プラスチック原料Mの固化が開始される温度である100℃以下に連通部130を冷却している。具体的には、冷却部140は、連通部130の外周面131Bに冷却水Wを散布する。このため、連通部130を通過している間に、溶融状態であった廃プラスチック原料Mは、連通部130と接触する外周側から固化していく。すなわち、
図4Bに示すように、廃プラスチック原料Mは、その外周側に固化した領域M1を形成しながら、連通部130内を押し出され、廃プラスチック成形物Pとして成形される。連通部130内を通過中に、廃プラスチック成形物Pの外周側に固化した領域P1が形成されることから、連通部130から押し出された後も、廃プラスチック成形物Pが、径方向外側に膨張することが抑制される。
【0043】
図5Aに示すように、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pは、硬質な外殻を有する短尺な略棒状の成形物である。また、
図5Bに示すように、廃プラスチック成形物Pには、廃プラスチック成形物Pの横断面視で外周面側に固化した領域P1が形成されている。
図5Bに破線で外形を示した冷却しない場合の廃プラスチック成形物Qと比較して、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pは、径方向の膨張が抑制されている。以上、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの成形過程について説明した。
【0044】
<3.廃プラスチック成形物の製造方法>
次に、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、まず、廃プラスチック原料Mが容器110へ投入される(S101)。続いて、容器110内で廃プラスチック原料Mが混練され、加熱される(S103)。このとき、容器110内の温度を調整するために、容器110内に水を散布してもよい。
【0045】
さらに、容器110の端部に設けられて容器110内と外部とを連通する連通部130へ向かって、150℃以上に加熱された廃プラスチック原料Mが移送される(S105)。ステップS105において、廃プラスチック原料Mが容器110の端部へ移送され、廃プラスチック原料Mは、連通部130内を押し出される。このとき、少なくとも廃プラスチック原料Mが連通部130内を押出される間、連通部130は100℃以下に冷却される(S107)。最終的に、廃プラスチック原料Mは連通部130から押出され、切断部160により切断されて、廃プラスチック成形物Pが成形される。
【0046】
なお、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法において、ステップS103とステップS105とは、別の工程として説明したが、これらの工程は同時に行われてもよい。つまり、容器110内で廃プラスチック原料Mが混練、加熱されながら、容器110の他端部115へ移送されてもよい。以上、本発明の一の実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法について説明した。
【0047】
(作用効果)
本実施形態によれば、所定温度以上に加熱された廃プラスチック原料Mに対して押出し成形を行い、廃プラスチック成形物Pを製造する際、押出成形中の連通部130を所定温度以下に冷却することにより、廃プラスチック原料Mの溶融した表面を固化することができる。この結果、押出し中または連通部130から押出された後の廃プラスチック成形物Pの膨張が抑制され、高密度化が実現される。さらに、廃プラスチック成形物Pの高密度化が実現されることで、廃プラスチック成形物Pの運搬効率が向上する等、後工程での取り扱いが容易になる。
【0048】
特に、廃プラスチック成形物Pがコークス炉での化学原料リサイクルに用いられる場合、コークス炉内への効率的な投入の観点から、廃プラスチック成形物Pの高密度化が要求されることがある。本実施形態によれば、廃プラスチック成形物Pを製造する際、押出し中の連通部130を所定温度以下に冷却することにより、廃プラスチック原料Mの溶融した表面を固化することで、廃プラスチック成形物Pの高密度化が実現される。
【0049】
また、本実施形態によれば、廃プラスチック成形物Pの成形において一般的な工程である廃プラスチック原料Mを成形し、切断した後に冷却する場合と比較して、押出し成形中に連通部130を介して廃プラスチック原料Mの外表面側を冷却するので、工程が簡略化される。さらに、連通部130を100℃以下とすることで、押出し成形中の温度を規定しない場合と比較して、連通部130から押し出され直後の廃プラスチック原料Mの膨張が効果的に抑制される。
【0050】
また、本実施形態によれば、押出成形中の連通部130が所定の温度以下とされることにより、冷却水Wが押出し成形中または成形後の廃プラスチック原料Mに直接散布される場合と比較し、冷却水が廃プラスチック原料Mに直接かかることが抑制され、廃プラスチック成形物Pに含まれる余計な水分量が低減される。
【0051】
<変形例1>
続いて、本発明の実施形態のいくつかの変形例について、
図7~9を参照しながら説明する。なお、以下で説明するいくつかの変形例において、上記実施形態と共通する構成については説明を省略する場合がある。
図7は、本発明の実施形態の一の変形例に係る冷却の様子を模式的に説明する部分断面図である。本変形例では、上記実施形態と比較して、冷却部140による冷却方法が相違する。
図7に示すように、本変形例では、冷却部140は、連通部130内に設けられた水冷機構である。
【0052】
具体的には、連通部130に長手方向(
図7におけるY方向)に沿って設けられた円筒形状の空間145内に、図示しないポンプおよび配管を介して、冷却水Wが供給される。かかる空間145は、連通部130を冷却可能であればよく、形状、配置などは特に限定されない。例えば、空間145は、連通部130の長手方向に中心軸が沿った、らせん状の配管でもよい。本変形例によれば、冷却水Wが廃プラスチック成形物Pに直接かかることが防止され、廃プラスチック成形物Pに含まれる余計な水分が低減される。また、冷却に用いられた後の冷却水Wの排水設備等を設ける必要がなくなる。
【0053】
<変形例2>
本発明の実施形態の他の変形例について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、本変形例に係る冷却の様子を模式的に説明する部分断面図である。本変形例では、上記実施形態と比較して、連通部130がノズル131を有さない点で相違する。
図8に示すように、連通部130は、ノズル131を有さず、容器110の面板117に設けられた貫通孔である。冷却部140は、面板117の外方側の端面117Aから冷却水Wを散布することで、連通部130を冷却する。本変形例によれば、面板117の端面117Aから突出したノズル131を有さないことで、ノズル131が切断部160等の他の部材と干渉することが抑制できる。
【0054】
<変形例3>
本発明の実施形態のその他の変形例について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、本変形例に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100の側面図である。本変形例では、上記実施形態と比較して、連通部130が複数列の円環状に設けられている点で相違する。
図8に示すように、連通部130は、8の字状に設けられるとともに、径方向に複数列設けられている。すなわち、3重の円環状に配置され、当該円環が2つ隣接するように配置されている。本変形例によれば、連通部130が、径方向に複数列設けられていることにより、廃プラスチック成形物Pの生産性が向上する。さらに、連通部130の数が増えることにより、廃プラスチック成形物Pの密度を、より広い範囲で調整することが可能となる。
【0055】
本変形例において、全ての連通部130が使用されなくてもよく、必要に応じて閉塞されて(
図9中の黒い丸参照)、使用されなくてもよい。さらに冷却部140は、1つの連通部130に対応して1つ設けられなくともよく、1つの冷却部140で複数の連通部130を冷却してもよい。この場合、冷却部140による冷却が、複数の連通部130に対して行われるので、冷却効率が向上する。以上、本発明の実施形態に係るいくつかの変形例について説明した。
【実施例】
【0056】
本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法および製造装置100の効果を確認するため、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100を用いて製造した廃プラスチック成形物Pの特性を評価した。
【0057】
具体的には、比較例1および比較例2として、本実施形態に係る廃プラスチック成形物の製造装置100において、冷却部140による連通部130の冷却を行なわずに、プラスチック成形物を製造した。また、比較例1は、成形時のヒータ温度を150℃程度とした。一方、比較例2では、250℃程度とした。
【0058】
実施例として、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100を用いて、冷却部140による連通部130の冷却を行いながら、廃プラスチック成形物Pを製造した。具体的には、連通部130に設けた温度センサ131Cで測定される温度が100℃以下(例えば、60~70℃)となるように冷却時の冷却水Wの流量を調節した。また、実施例では、成形時のヒータ温度を250℃程度とした。
【0059】
また、廃プラスチック成形物の特性を評価する項目として、廃プラスチック成形物の平均値径と見掛密度の測定を行った。以下に、
図10および
図11を参照しながら測定結果について説明する。
【0060】
図10は、廃プラスチック成形物の平均値径の測定結果を示すグラフである。
図10に示すように、比較例1および比較例2のいずれも、連通部130としてのノズル131の径と比較して、廃プラスチック成形物の平均値径が大きくなった。つまり、押し出された後、廃プラスチック成形物が径方向外側へ膨張した。また、比較例1および比較例2において、面板117に設けられた加熱部150であるヒータの温度を変化させたものの、平均値径には大きな変化は見られなかった。
【0061】
一方、
図10に示すように、実施例では、廃プラスチック成形物Pの平均値径は、連通部130としてのノズル131の径とほぼ同じとなった。すなわち、連通部130への冷却によって廃プラスチック成形物Pの外周面に固化された領域P1が形成されたことにより、廃プラスチック成形物Pにおける径方向外側への膨張が抑制されたことが示された。
【0062】
図11は、廃プラスチック成形物Pの見掛密度の測定結果を示すグラフである。
図11に示すように、比較例1および比較例2では、廃プラスチック成形物が膨張したために、見掛密度が小さくなった。一方、実施例では、連通部130への冷却によって廃プラスチック成形物Pの膨張が抑制された。この結果、廃プラスチック成形物Pの見掛密度が比較例1および比較例2に対して大きく上昇した。以上のように、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法および製造装置100によって、廃プラスチック成形物Pの高密度化が実現されることが示された。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
例えば、上記実施形態において、一対のシャフトを有する2軸押出し成形の例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、1本のシャフトによる1軸押出し成形でもよい。
【0065】
また、上記実施形態において、冷媒が水である例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、空気などを冷媒とする空冷によって冷却されてもよく、連通部130を冷却することが可能な液体を冷媒とした冷却(油冷、ポリマー水溶液による冷却等)が行われてもよい。
【符号の説明】
【0066】
100 廃プラスチック成形物の製造装置
110 容器
117 面板
117A 端面
120 移送部
130 連通部
131 ノズル
131A ノズル内周面
131B ノズル外周面
140 冷却部
150 加熱部
M 廃プラスチック原料
P 廃プラスチック成形物
W 冷却水