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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】金属管の内面樹脂塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 9/00 20060101AFI20230906BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B21C9/00 K
B21C9/00 M
B21C51/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020004520
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021109222
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 秋仁
(72)【発明者】
【氏名】小西 佑一
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-082920(JP,A)
【文献】特開2012-124380(JP,A)
【文献】特開2014-161982(JP,A)
【文献】特開平07-032030(JP,A)
【文献】特開平03-229663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 1/00 - 19/00
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷間抽伸加工を施す前の金属管の内面に潤滑用の樹脂を塗布する内面樹脂塗布装置であって、
前記金属管は、一方の管端側から順に、口絞り部と、前記口絞り部に繋がり前記管端側に向けてテーパ状に縮径されたテーパ部と、前記テーパ部に繋がり一定の径を有するストレート部と、を有し、
前記内面樹脂塗布装置は、
前記金属管の他方の管端側から前記金属管の内部に挿入され、前記金属管の長手方向に進退動する棹部と、
前記棹部の先端部に取り付けられ、前記金属管の内面に樹脂を吐出する樹脂吐出ノズルと、
前記樹脂吐出ノズルの先端側に取り付けられ、又は、前記樹脂吐出ノズルの後端側において前記棹部に取り付けられ、前記口絞り部の内径よりも大きく、前記ストレート部の内径よりも小さい寸法を有して、前記テーパ部に接触可能な接触部と、
前記接触部が前記テーパ部に接触したことを検知する接触検知部と、
前記金属管の長手方向に進退動する走行台車と、
前記走行台車に取り付けられて前記走行台車と一体的に進退動すると共に、前記棹部の後端部に接続されて前記金属管の長手方向に伸縮するシリンダ装置と、を備え、
前記接触検知部は、
前記走行台車に取り付けられて前記走行台車と一体的に進退動する近接センサと、
前記棹部の後端部に取り付けられて前記近接センサによって前記近接センサに近接しているか否かが検出される治具と、を具備する、
金属管の内面樹脂塗布装置。
【請求項2】
前記樹脂吐出ノズルは、前記棹部の中心軸周りに回転するベルカップノズルであり、
前記接触部は、前記樹脂吐出ノズルの先端側に、ベアリングを介して取り付けられている、
請求項に記載の金属管の内面樹脂塗布装置。
【請求項3】
前記接触検知部によって前記接触部が前記テーパ部に接触したことが検知されるまで前記棹部が前記一方の管端側に向けて進動した後、前記棹部が前記他方の管端側に向けて退動しながら前記樹脂吐出ノズルから樹脂を吐出することで、前記金属管の内面に樹脂を塗布するように構成されている、
請求項1又は2に記載の金属管の内面樹脂塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間抽伸加工を施す前の金属管の内面に潤滑用の樹脂を適切に塗布することが可能な金属管の内面樹脂塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管等の金属管を縮径加工する方法として、金属管内にプラグやマンドレルを挿入し、ダイスに通して金属管を抽伸する冷間抽伸加工(冷間引抜き加工)が知られている。
この冷間抽伸加工においては、被加工材である金属管と、工具(プラグ、マンドレル、ダイス)との間の焼き付きを防止するため、冷間抽伸加工を施す前に、金属管の表面(外面及び内面)に潤滑用の被膜を形成するのが一般的である。
【0003】
潤滑用の被膜として種々のものが知られているが、そのうち、高合金鋼やNi基合金等の難加工材質の金属管の冷間抽伸加工を容易にする被膜として、潤滑性に優れた樹脂被膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、冷間抽伸加工を施す前の金属管の一方の管端側(ダイスに先に挿入する管端側)には、管端から順に、冷間抽伸加工で用いるダイスの内径よりも小さな外径を有する口絞り部と、口絞り部に繋がり前記一方の管端側に向けてテーパ状に縮径されたテーパ部と、テーパ部に繋がり一定の径を有するストレート部と、が設けられている。ストレート部は、金属管の他方の管端まで延びている。
この金属管の口絞り部を先にダイスに通して金属管に冷間抽伸加工を施すことにより、金属管の内面については、テーパ部の一部(テーパ部のうちストレート部に近い側の一部)とストレート部とがプラグに接触して、縮径加工されることになる。
したがい、焼き付きを効果的に防止すると共に、無駄な樹脂の使用を防止するには、金属管の口絞り部を除く、テーパ部の一部及びストレート部に樹脂被膜を形成することが望まれている。
【0005】
特許文献1には、樹脂を入れたタンクに金属管を浸漬することや、金属管の内面にノズルを挿入して樹脂をスプレー塗布することが記載されている(例えば、特許文献1の段落0069)。
しかしながら、タンクに浸漬する方法では、樹脂を無駄に使用する上に、樹脂被膜の形成に時間を要したり、装置が大型化するという問題がある。
また、スプレー塗布する方法について、特許文献1には、具体的な内容は記載されておらず、テーパ部の一部及びストレート部に樹脂を適切に塗布することについて開示も示唆も無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-268580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、冷間抽伸加工を施す前の金属管の内面に潤滑用の樹脂を適切に塗布することが可能な金属管の内面樹脂塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、冷間抽伸加工を施す前の金属管の内面に潤滑用の樹脂を塗布する内面樹脂塗布装置であって、前記金属管は、一方の管端側から順に、口絞り部と、前記口絞り部に繋がり前記管端側に向けてテーパ状に縮径されたテーパ部と、前記テーパ部に繋がり一定の径を有するストレート部と、を有し、前記内面樹脂塗布装置は、前記金属管の他方の管端側から前記金属管の内部に挿入され、前記金属管の長手方向に進退動する棹部と、前記棹部の先端部に取り付けられ、前記金属管の内面に樹脂を吐出する樹脂吐出ノズルと、前記樹脂吐出ノズルの先端側に取り付けられ、又は、前記樹脂吐出ノズルの後端側において前記棹部に取り付けられ、前記口絞り部の内径よりも大きく、前記ストレート部の内径よりも小さい寸法を有して、前記テーパ部に接触可能な接触部と、前記接触部が前記テーパ部に接触したことを検知する接触検知部と、前記金属管の長手方向に進退動する走行台車と、前記走行台車に取り付けられて前記走行台車と一体的に進退動すると共に、前記棹部の後端部に接続されて前記金属管の長手方向に伸縮するシリンダ装置と、を備え、前記接触検知部は、前記走行台車に取り付けられて前記走行台車と一体的に進退動する近接センサと、前記棹部の後端部に取り付けられて前記近接センサによって前記近接センサに近接しているか否かが検出される治具と、を具備する、金属管の内面樹脂塗布装置を提供する。
【0009】
本発明に係る内面樹脂塗布装置によれば、金属管の内部に挿入される棹部の先端部に取り付けられた樹脂吐出ノズルから樹脂を吐出することで、金属管の内面に樹脂が塗布される。
そして、本発明に係る内面樹脂塗布装置は、金属管が一方の管端側に有する口絞り部の内径よりも大きく、ストレート部の内径よりも小さい寸法を有して、テーパ部に接触可能な接触部と、接触部がテーパ部に接触したことを検知する接触検知部と、を備えるため、金属管の他方の管端側から棹部が挿入されて、接触部がテーパ部に接触したことを検知可能である。したがい、接触部がテーパ部に接触した後に樹脂吐出ノズルから樹脂を吐出する、又は、棹部の挿入直後から樹脂吐出ノズルから樹脂を吐出し、接触部がテーパ部に接触した時点で樹脂の吐出を停止することで、テーパ部の一部及びストレート部に樹脂を適切に塗布することが可能である。
【0011】
また、本発明において、治具は、例えば、初期状態(棹部が金属管の内部に挿入される前の状態)において、近接センサの位置(金属管の長手方向についての位置)に対向する(金属管の長手方向に直交する方向に対向する)位置(すなわち、金属管の長手方向について近接センサと同等の位置)に設けられる。この初期状態では、近接センサによって、治具が近接センサに近接していると検出されることになる。
そして、走行台車が進動(金属管の一方の管端側に移動)することで接触部が最初に金属管のテーパ部に接触した時点でも、近接センサによって、治具が近接センサに近接していると検出される。
次に、接触部が最初にテーパ部に接触した時点から走行台車が更に進動しようとしても、接触部がテーパ部に接触しているため、接触部、樹脂吐出ノズル、棹部及び治具の位置は変化しない。一方、走行台車が更に進動しようとすると、シリンダ装置が縮むことで、走行台車及び近接センサが進動する。治具の位置が変化せず、近接センサが進動するため、治具が近接センサに対向する位置から外れた状態になると、近接センサによって、治具が近接センサに近接していないと検出されることになる。
したがい、本発明によれば、治具が近接センサに近接していないと検出された時点を、接触部がテーパ部に接触した時点として扱うことで、接触部がテーパ部に接触したことを確実に検知することができる。
【0012】
好ましくは、前記樹脂吐出ノズルは、前記棹部の中心軸周りに回転するベルカップノズルであり、前記接触部は、前記樹脂吐出ノズルの先端側に、ベアリングを介して取り付けられる。
【0013】
上記の好ましい構成によれば、樹脂吐出ノズルがベルカップノズルであるため、棹部の中心軸周りにエアモータで高速回転可能に棹部に取り付けられ、高速回転しながら樹脂吐出ノズル(ベルカップノズル)に設けられた多数の小さな吐出口から樹脂を吐出することで、金属管の内面に対して周方向に均一に樹脂を塗布することが可能である。
そして、上記の好ましい構成によれば、接触部が樹脂吐出ノズルの先端側に、ベアリングを介して取り付けられているため、樹脂吐出ノズルが回転しても、接触部は回転せずに静止した状態となる。このため、接触部と金属管のテーパ部とが接触部の回転によって擦れることがなく、接触部が破損し難い。
【0014】
好ましくは、前記接触検知部によって前記接触部が前記テーパ部に接触したことが検知されるまで前記棹部が前記一方の管端側に向けて進動した後、前記棹部が前記他方の管端側に向けて退動しながら前記樹脂吐出ノズルから樹脂を吐出することで、前記金属管の内面に樹脂を塗布するように構成される。
【0015】
上記の好ましい構成によれば、金属管の内面に樹脂が塗布される際、樹脂吐出ノズル及び棹部は、一方の管端側から他方の管端側に向けて退動する。換言すれば、金属管の内面に樹脂が塗布される際、樹脂吐出ノズルよりも棹部の方が移動方向下流側に位置する。このため、樹脂吐出ノズルによって樹脂が塗布された後の金属管の内面の部位に棹部が接触するおそれがなく、内面に塗布された樹脂が棹部との接触によって剥がれるおそれもない。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る金属管の内面樹脂塗布装置によれば、冷間抽伸加工を施す前の金属管の内面に潤滑用の樹脂を適切に塗布することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る内面樹脂塗布装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
図2図1に示す棹部が金属管の内部に挿入され、図1に示す接触部が金属管のテーパ部に接触した状態における内面樹脂塗布装置の先端部の概略構成を模式的に示す側面視断面図である。
図3図1に示す内面樹脂塗布装置で金属管の内面に樹脂を塗布する動作の概要を模式的に説明する側面図である。
図4図1に示す接触部の変形例の概略構成を模式的に示す側面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る金属管の内面樹脂塗布装置(以下、適宜、単に「内面樹脂塗布装置」という)について説明する。
図1は、本実施形態に係る内面樹脂塗布装置の概略構成を模式的に示す側面図(金属管の長手方向に直交する水平方向から見た図)である。図1(a)は、内面樹脂塗布装置が備える棹部を金属管の内部に挿入する前の状態を示す図であり、図1(b)は、図1(a)に示す内面樹脂塗布装置の拡大図である。なお、図1(a)では、配管の図示を省略している。図2は、本実施形態に係る内面樹脂塗布装置が備える棹部が金属管の内部に挿入され、本実施形態に係る内面樹脂塗布装置が備える接触部が金属管のテーパ部に接触した状態における内面樹脂塗布装置の先端部の概略構成を模式的に示す側面視断面図(金属管の長手方向に直交する水平方向から見た断面図)である。図2に示す破線矢符は、樹脂の吐出方向を意味する。
図1に示すように、本実施形態に係る内面樹脂塗布装置100は、冷間抽伸加工を施す前の金属管Pの内面に潤滑用の樹脂を塗布する装置であって、棹部1と、樹脂吐出ノズル2と、接触部3と、接触検知部4と、を備えている。また、内面樹脂塗布装置100は、
走行台車5と、シリンダ装置6と、を備えている。さらに、内面樹脂塗布装置100は、配管7、8を備えている。
【0019】
図1(a)及び図2に示すように、本実施形態に係る内面樹脂塗布装置100によって内面に樹脂が塗布される金属管Pは、一方の管端P1側から順に、冷間抽伸加工で用いるダイス(図示せず)の内径よりも小さな外径を有する口絞り部P11と、口絞り部P11に繋がり管端側P1に向けてテーパ状に縮径されたテーパ部P12と、テーパ部P12に繋がり一定の径を有するストレート部P13と、を有する。ストレート部P13は、金属管の他方の管端P2まで延びている。
【0020】
棹部1は、金属管Pの他方の管端P2側から金属管Pの内部に挿入され、金属管Pの長手方向(図1(a)に示す矢符Xの方向)に進退動する。具体的には、棹部1の後端部(金属管Pの内部に挿入され始める側の端部と反対側の端部。図1の右側の端部)は、金属管Pの長手方向に進退動する走行台車5に連結されており、走行台車5が金属管Pの長手方向に進退動することで、棹部1も金属管Pの長手方向に進退動することになる。
本実施形態の棹部1は、中空部1aと、中実部1bと、を具備し、中空部1a及び中実部1bは、フランジ1cによって連結されている。中空部1a内には、配管7、8が挿入されている。棹部1は、例えば、炭素鋼等の金属材料から形成される。
【0021】
本実施形態の棹部1には、その長手方向の適宜の箇所に、案内部9が取り付けられている。案内部9は、金属管Pの長手方向から見た場合に円形状の外形を有する。案内部9の直径(最大直径)は、接触部3の直径D1や樹脂吐出ノズル2の直径(最大直径)よりも大きく、且つ、金属管Pのストレート部P13の内径よりも小さくなっている。これにより、金属管Pのストレート部P13の内面に接触するのは案内部9のみとなり、棹部1が金属管Pのストレート部P13の内面に接触することなくスムーズに進退動可能であると共に、樹脂吐出ノズル2が金属管Pのストレート部P13の内面に接触して破損するおそれを回避可能である。案内部9は、例えば、MCナイロン(登録商標)から形成される。
【0022】
樹脂吐出ノズル2は、棹部1の先端部(金属管Pの内部に挿入され始める側の端部。図1の左側の端部)に取り付けられ、棹部1が進動(金属管Pの一方の管端P1側に移動)することで、金属管Pの内部に挿入される。樹脂吐出ノズル2は、配管7を介して樹脂供給源(図示せず)に接続されている。樹脂供給源から供給された樹脂(例えば、アクリル系樹脂)は、配管7を通って樹脂吐出ノズル2に供給され、樹脂吐出ノズル2は、供給された樹脂を金属管Pの内面に吐出する。
本実施形態では、樹脂吐出ノズル2として、ベルカップノズルが用いられている。樹脂吐出ノズル(ベルカップノズル)2は、エアモータ(図示せず)を具備し、配管8を介して圧縮空気源(図示せず)に接続されている。圧縮空気源から供給された圧縮空気は、配管8を通って樹脂吐出ノズル2のエアモータに供給され、樹脂吐出ノズル2は、エアモータにより棹部1の中心軸周りに高速回転する。高速回転しながら樹脂吐出ノズル2に設けられた多数の小さな吐出口から樹脂を吐出することで、金属管Pの内面に対して周方向に均一に樹脂を塗布することが可能である。樹脂吐出ノズル2として用いるベルカップノズルの具体的な構成については、公知のベルカップノズルを種々適用可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0023】
本実施形態の接触部3は、樹脂吐出ノズル2の先端側(金属管Pの一方の端部P1側)に取り付けられている。具体的には、本実施形態の接触部3は、樹脂吐出ノズル2の先端側に、ベアリング(図示せず)を介して取り付けられている。接触部3は、金属管Pの長手方向から見た場合に円形状の外形を有する。図2に示すように、接触部3の直径(最大直径)D1は、口絞り部P11の内径D2よりも大きく、ストレート部P13の内径D3よりも小さい。これにより、接触部3は、テーパ部P12に接触可能である。また、接触部3の直径D1は、樹脂吐出ノズル2の直径(最大直径)よりも大きいことが好ましい。これにより、接触部3がテーパ部P12に接触するより前に、樹脂吐出ノズル2がテーパ部P12に接触してしまうことを防げるし、棹部1全体がその重量の影響で多少撓んでも、樹脂吐出ノズル2がストレート部P13の内面に接触することを防げる。接触部3は、例えば、MCナイロン(登録商標)から形成される。なお、接触部3の直径D1は、焼き付きを防止するために樹脂被膜を形成することが必要になる部分、具体的には、金属管Pに冷間抽伸加工を施す際に、テーパ部P12のうちプラグ(図示せず)に接触して加工されることになる部分の最小直径(プラグの最大直径に相当)に応じて決定すればよい。
【0024】
接触検知部4は、接触部3がテーパ部P12に接触したことを検知する。本実施形態の接触検知部4は、走行台車5に取り付けられて走行台車5と一体的に進退動する近接センサ41と、棹部1の後端部に取り付けられて近接センサ41によって近接センサ41に近接しているか否かが検出される治具(ドグとも称される)42と、を具備する。
近接センサ41としては、例えば、電磁誘導型の近接センサや、静電容量型の近接センサを用いることができる。
治具42としては、例えば、炭素鋼等の金属材料から形成された環状の部材を用いることができる。本実施形態の治具42は、図1に示す初期状態(棹部1が金属管Pの内部に挿入される前の状態)において、近接センサ41の位置(金属管Pの長手方向についての位置)に対向する(金属管Pの長手方向に直交する方向(図1に示す例では上下方向)に対向する)位置(すなわち、金属管Pの長手方向について近接センサ41と同等の位置)に設けられている。この初期状態では、近接センサ41によって、治具42が近接センサ41に近接していると検出されることになる。
【0025】
シリンダ装置6は、走行台車5に取り付けられて走行台車5と一体的に進退動すると共に、棹部1の後端部に接続されて金属管Pの長手方向に伸縮する。具体的には、本実施形態のシリンダ装置6は、シリンダ61と、シリンダ61に対して相対移動するピストンロッド62と、を具備するエアシリンダ装置であり、シリンダ61が走行台車に取り付けられ、ピストンロッド62が棹部1の後端部に接続されている。
【0026】
以下、上記の構成を有する内面樹脂塗布装置100で金属管Pの内面に樹脂を塗布する動作について説明する。
図3は、内面樹脂塗布装置100で金属管Pの内面に樹脂を塗布する動作の概要を模式的に説明する側面図(金属管の長手方向に直交する水平方向から見た図)である。図3(a)は、走行台車5が進動することで接触部3が最初に金属管Pのテーパ部P12に接触した時点の状態を示す図であり、図3(b)は、図3(a)に示す状態から走行台車5が更に進動し、接触検知部4によって接触部3がテーパ部P12に接触したことが検知された状態を示す図である。
内面樹脂塗布装置100で金属管Pの内面に樹脂を塗布する際には、初期状態(棹部1が金属管Pの内部に挿入される前の状態)から走行台車5を進動させることで、図3(a)に示すように、接触部3が金属管Pの一方の管端P1側のテーパ部P12に接触するまで、棹部1が一方の管端P1側に向けて進動する。図3(a)に示す状態では、治具42が近接センサ41に対向する位置にあるため、初期状態と同様に、近接センサ41によって治具42が近接センサ41に近接していると検出されたままである。
【0027】
次に、図3(a)に示す状態から走行台車5が更に進動しようとしても、接触部3がテーパ部P12に接触しているため、接触部3、樹脂吐出ノズル2、棹部1及び治具42の位置は変化しない。一方、走行台車5が更に進動しようとすると、シリンダ装置6が縮む(シリンダ61がピストンロッド62に向けて移動する)ことで、走行台車5及び近接センサ41が進動する。治具42の位置が変化せず、近接センサ41が進動するため、図3(b)に示すように、治具42が近接センサ41に対向する位置から外れた状態になると、近接センサ41によって、治具42が近接センサ41に近接していないと検出されることになる。
したがい、治具42が近接センサ41に近接していないと検出された時点(図3(b)に示す状態)を、接触部3がテーパ部P12に接触した時点として扱うことで、接触部3がテーパ部P12に接触したことを確実に検知することができる。
【0028】
なお、上記の例では、初期状態において、近接センサ41と治具42とが対向する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、初期状態において、治具42が近接センサ41に対向する位置から一方の管端P1側に外れた状態となるように治具42を設け、接触部3がテーパ部P12に最初に接触してから、走行台車5が更に進動することで、治具42が近接センサ41に対向する位置となるようにする態様を採用することも可能である。この場合には、治具42が近接センサ41に近接していると検出された時点を、接触部3がテーパ部P12に接触した時点として扱うことで、接触部3がテーパ部P12に接触したことを確実に検知することができる。
【0029】
次に、図3(b)に示す状態から、樹脂吐出ノズル2から樹脂を吐出しながら、走行台車5を退動させる(図3の右側に移動させる)ことで、棹部1が他方の管端P2(図1参照)側に向けて退動する。樹脂吐出ノズル2が樹脂を吐出しながら管端P2に到達することで、金属管Pの内面全体(ただし、口絞り部P11及びテーパ部P12の一部を除く)に樹脂を塗布することが可能である。
なお、金属管Pの内面に所望する膜厚の樹脂被膜を均等に形成可能なように、樹脂吐出ノズル2の移動速度及び樹脂吐出ノズル2の樹脂吐出量を設定すればよい。樹脂吐出ノズル2の移動速度は、例えば、走行台車5として走行速度可変型のものを用い、この走行台車5の走行速度を調整することで変更可能である。樹脂吐出ノズル2の樹脂吐出量は、例えば、樹脂供給源からの供給量を調整することで変更可能である。
【0030】
以上に説明した本実施形態に係る内面樹脂塗布装置100によれば、接触部3がテーパ部P12に接触したことを確実に検知可能である。したがい、接触部3がテーパ部P12に接触した後に樹脂吐出ノズル2から樹脂を吐出することで、テーパ部P12の一部及びストレート部P13(図2に示す接触部3の接触点31から他方の端部P2側に位置する金属管Pの内面)に樹脂を適切に塗布することが可能である。
【0031】
また、本実施形態に係る内面樹脂塗布装置100によれば、接触部3が樹脂吐出ノズル2の先端側に、ベアリングを介して取り付けられているため、樹脂吐出ノズル2が回転しても、接触部3は回転せずに静止した状態となる。このため、接触部3と金属管Pのテーパ部P12とが接触部3の回転によって擦れることがなく、接触部3が破損し難い。
【0032】
また、本実施形態に係る内面樹脂塗布装置100によれば、接触検知部4によって接触部3がテーパ部P12に接触したことが検知されるまで棹部1が一方の管端P1側に向けて進動した後、棹部1が他方の管端P2側に向けて退動しながら樹脂吐出ノズル2から樹脂を吐出することで、金属管Pの内面に樹脂を塗布する。すなわち、金属管Pの内面に樹脂が塗布される際、樹脂吐出ノズル2及び棹部1は、一方の管端P1側から他方の管端P2側に向けて退動する。換言すれば、金属管Pの内面に樹脂が塗布される際、樹脂吐出ノズル2よりも棹部1の方が移動方向下流側に位置する。このため、樹脂吐出ノズル2によって樹脂が塗布された後の金属管Pの内面の部位に案内部9や棹部1が接触するおそれがなく、内面に塗布された樹脂が案内部9や棹部1との接触によって剥がれるおそれもない。
ただし、本発明はこれに限るものではなく、棹部1の挿入直後から樹脂吐出ノズル2から樹脂を吐出し、接触部3がテーパ部P12に接触した時点で樹脂の吐出を停止する態様を採用することも可能である。
【0033】
なお、本実施形態では、接触部3が樹脂吐出ノズル2の先端側に取り付けられている場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。
図4は、接触部の変形例の概略構成を模式的に示す側面視断面図(金属管Pの長手方向に直交する水平方向から見た断面図)である。図4(a)は、接触部が金属管Pのテーパ部P12に接触している状態を示す図であり、図4(b)は、樹脂吐出ノズル2から樹脂を吐出し始めた状態を示す図である。図4(b)に示す破線矢符は、樹脂の吐出方向を意味する。
図4に示すように、変形例に係る接触部3Aは、樹脂吐出ノズル2の後端側(金属管Pの他方の端部P2側)において棹部1に取り付けられている。具体的には、図4に示す例では、複数の案内部9のうち、最も先端側に位置する案内部9が接触部3Aとしての機能を奏する。前述のように、案内部9の直径(最大直径)は、樹脂吐出ノズル2の直径(最大直径)よりも大きく、且つ、金属管Pのストレート部P13の内径D3(図2参照)よりも小さくなっている。これに加えて、少なくとも最も先端側の案内部9の直径を口絞り部P11の内径D2(図2参照)よりも大きくし、樹脂吐出ノズル2の直径(最大直径)を口絞り部P11の内径D2よりも小さくすることで、最も先端側の案内部9を接触部3Aとして機能させることが可能である。変形例に係る接触部3Aは、口絞り部P11の内径D2とストレート部の内径D3との差が小さい場合に特に有効である。前述のように、樹脂吐出ノズル2の先端に取り付けられる接触部3の直径は、口絞り部P11の内径D2よりも大きく、案内部9の直径よりも小さい。しかし、口絞り部P11の内径D2とストレート部の内径D3との差が小さい場合、口絞り部P11の内径D2と案内部9の直径との差はさらに小さくなるため、接触部3の直径の選定可能範囲がかなり小さくなってしまうからである。
【0034】
図4(a)に示すように、走行台車5(図1参照)を進動させる(図4の左側に移動させる)ことで、接触部3Aが金属管Pのテーパ部P12に接触点31Aで接触した状態になったことは、前述の接触部3の場合と同様に、接触検知部4によって検知可能である。
そして、図4(a)に示す状態から、走行台車5(図1参照)を退動させる(図4の右側に移動させる)ことで、棹部1が他方の管端P2(図1参照)側に向けて退動し、樹脂吐出ノズル2から吐出される樹脂が金属管Pのテーパ部P12の接触点31Aに対応する位置に塗布されるようになるタイミングで、図4(b)に示すように、樹脂吐出ノズル2からの樹脂の吐出を開始すればよい。樹脂を吐出しながら樹脂吐出ノズル2が管端P2に到達することで、金属管Pの内面全体(ただし、口絞り部P11及びテーパ部P12の一部を除く)に樹脂を塗布することが可能である。なお、樹脂吐出ノズル2から樹脂の吐出を開始するタイミング(吐出される樹脂が金属管Pのテーパ部P12の接触点31Aに対応する位置に塗布されるようになるタイミング)は、樹脂吐出ノズル2と接触部3Aとの離間距離や樹脂の吐出方向等に応じて予め決めることが可能である。
【0035】
また、本実施形態では、接触検知部4が、近接センサ41と、治具42と、を具備する構成について説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、接触部3の先端側に取り付けた圧力センサを接触検知部として用いることも可能である。この場合、圧力センサで検出した圧力が予め定めたしきい値以上になった場合に、接触部3がテーパ部P12に接触したと検知することが可能である。
【0036】
なお、詳細な記載は省略するが、例えば、冷間抽伸加工を施す前の金属管Pは、その長手方向や長手方向に直交する水平方向に順次搬送されながら、加温装置(図示せず)によって加温され、外面樹脂塗布装置(図示せず)によって外面に樹脂が塗布され、内面樹脂塗布装置100によって内面に樹脂が塗布され、送風装置(図示せず)によって内面に送風されることが好ましい。そして、金属管Pの外面及び内面に塗布された樹脂が乾燥することで金属管Pの外面及び内面に樹脂被膜が形成された後に、金属管Pに冷間抽伸加工を施す抽伸機に搬送すれば、冷間抽伸加工における焼き付きを効率的に防止可能である。
【符号の説明】
【0037】
1・・・棹部
2・・・樹脂吐出ノズル
3・・・接触部
4・・・接触検知部
5・・・走行台車
6・・・シリンダ装置
100・・・内面樹脂塗布装置
P・・・金属管
P1・・・一方の管端
P2・・・他方の管端
P11・・・口絞り部
P12・・・テーパ部
P13・・・ストレート部
図1
図2
図3
図4