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特許7343782サポートロールの異常検出方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】サポートロールの異常検出方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B21B 41/00 20060101AFI20230906BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20230906BHJP
   B21B 38/00 20060101ALI20230906BHJP
   B21C 49/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B21B41/00 A
B21C51/00 Q
B21B38/00 G
B21C49/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020010808
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021115601
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】川口 千尋
(72)【発明者】
【氏名】村越 勝俊
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-141639(JP,A)
【文献】特開平02-092416(JP,A)
【文献】特開平07-116725(JP,A)
【文献】特開平08-132125(JP,A)
【文献】特開2013-091098(JP,A)
【文献】実開平01-153803(JP,U)
【文献】特公昭49-031619(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 49/00
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を保持した状態で鋼板の長手方向に往復移動するループカーと、
前記ループカーの移動範囲内において前記長手方向に沿って配置される複数のサポートロールであって、鋼板を支持する第1の状態と前記ループカーが通過できるように退避した第2の状態とに切替可能に構成される複数のサポートロールと、
前記複数のサポートロールの状態を検出可能な複数のセンサと、
を備えるルーパー設備におけるサポートロールの異常検出方法であって、
a)前記複数のサポートロールのうちの特定のサポートロールの状態が前記第1の状態と前記第2の状態とのうちの一方の状態に切り替えられたことに応じて、前記特定のサポートロールが前記一方の状態である旨の検出結果を前記複数のセンサのうち前記特定のサポートロールの状態を検出可能なセンサから取得するステップと、
b)前記ステップa)から所定時間が経過した時点において、前記センサの検出結果を再び取得するステップと、
c)前記ステップb)での前記センサの検出結果に基づいて、前記特定のサポートロールの異常の有無を判定するステップと、
を含み、
前記特定のサポートロールは、前記複数のサポートロールのうち、前記ループカーの折り返し位置の直近のサポートロールであり、
前記ステップc)においては、前記ステップb)の時点では前記特定のサポートロールが前記一方の状態を維持しているべきであるにもかかわらず、前記特定のサポートロールが前記一方の状態とは異なる状態である旨の検出結果が前記ステップb)にて前記センサから取得された場合、前記特定のサポートロールが異常である旨が判定される
ことを特徴とする異常検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検出方法において、
d)前記ステップa)の時点における前記ループカーの位置と基準位置との距離である第1の距離を取得するステップと、
e)前記ステップb)の時点における前記ループカーの位置と前記基準位置との距離である第2の距離を取得するステップと、
をさらに含み、
前記ステップa)の時点で前記ループカーが前記ルーパー設備内の鋼板の貯留量を減らす向きに移動している場合、前記ステップc)は、前記第2の距離が前記第1の距離よりも小さいことを条件に実行され、
前記ステップa)の時点で前記ループカーが前記貯留量を増やす向きに移動している場合、前記ステップc)は、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きいことを条件に実行される
ことを特徴とする異常検出方法。
【請求項3】
鋼板を保持した状態で鋼板の長手方向に往復移動するループカーと、
前記ループカーの移動範囲内において前記長手方向に沿って配置される複数のサポートロールであって、鋼板を支持する第1の状態と前記ループカーが通過できるように退避した第2の状態とに切替可能に構成される複数のサポートロールと、
前記複数のサポートロールの状態を検出可能な複数のセンサと、
を備えるルーパー設備においてサポートロールの異常検出処理を実行するコンピュータに、
a)前記複数のサポートロールのうちの特定のサポートロールの状態が前記第1の状態と前記第2の状態とのうちの一方の状態に切り替えられたことに応じて、前記特定のサポートロールが前記一方の状態である旨の検出結果を前記複数のセンサのうち前記特定のサポートロールの状態を検出可能なセンサから取得するステップと、
b)前記ステップa)から所定時間が経過した時点において、前記センサの検出結果を再び取得するステップと、
c)前記ステップb)での前記センサの検出結果に基づいて、前記特定のサポートロールの異常の有無を判定するステップと、
を実行させるプログラムであって、
前記特定のサポートロールは、前記複数のサポートロールのうち、前記ループカーの折り返し位置の直近のサポートロールであり、
前記ステップc)においては、前記ステップb)の時点では前記特定のサポートロールが前記一方の状態を維持しているべきであるにもかかわらず、前記特定のサポートロールが前記一方の状態とは異なる状態である旨の検出結果が前記ステップb)にて前記センサから取得された場合、前記特定のサポートロールが異常である旨が判定される
ことを特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項3に記載のプログラムにおいて、
前記プログラムは、
d)前記ステップa)の時点における前記ループカーの位置と基準位置との距離である第1の距離を取得するステップと、
e)前記ステップb)の時点における前記ループカーの位置と前記基準位置との距離である第2の距離を取得するステップと、
を前記コンピュータにさらに実行させ、
前記ステップa)の時点で前記ループカーが前記ルーパー設備内の鋼板の貯留量を減らす向きに移動している場合、前記ステップc)は、前記第2の距離が前記第1の距離よりも小さいことを条件に実行され、
前記ステップa)の時点で前記ループカーが前記貯留量を増やす向きに移動している場合、前記ステップc)は、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きいことを条件に実行される
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーパー設備において搬送される鋼板を支持することが可能なサポートロールの異常検出方法、およびそれに関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば連続酸洗ラインなど、鋼板を処理する処理設備を有する連続処理ラインの入側および出側には、その内部において鋼板(鋼帯)を複数層のループ状にして貯留(ストック)することが可能なルーパー設備が設置されている。たとえば、入側のルーパー設備では、溶接部等にて鋼板の搬送が一旦停止されたときには、ループカーを鋼板の長手方向に移動させてルーパー設備内の鋼板を処理設備側へと送り出し、処理設備へと鋼板を連続して供給できるようにしている。
【0003】
このようなルーパー設備においては、複数層の鋼板同士が擦れ合って鋼板にすり疵が付くことを防止するため、鋼板を支持することが可能なサポートロールが当該鋼板の長手方向において一定間隔で配置されている(特許文献1等参照)。当該サポートロールは、鋼板を支持する閉状態とループカーが通過できるように退避した開状態とに切替可能に構成されている。なお、当該サポートロールは、スイングロールなどとも称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-141639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サポートロールの配置位置をループカーが通過しようとする際に当該サポートロールに異常が発生している場合、サポートロールの開閉動作の構造(仕組み)等によっては、サポートロールを軸支する支柱が転倒するなどの事故が発生してしまう虞がある。
【0006】
それ故、ルーパー設備においては、たとえば次述のように、センサを用いてサポートロールの異常の有無が判定されている。
【0007】
具体的には、鋼板の長手方向に沿って配置された複数のサポートロールのうちの或るサポートロールの配置位置をループカーが通過しようとする際に当該或るサポートロールが開状態から閉状態(あるいは、閉状態から開状態)に切り替えられると、当該或るサポートロールが閉状態(あるいは開状態)である旨がセンサによって検出される。そして、この際に、複数のサポートロールのうち、当該或るサポートロール以外のサポートロールの状態(たとえば、現時点で閉状態であるべきサポートロールが閉状態(正常状態)であるか否か等)を確認することで、サポートロールの異常の有無が判定される。このような異常検出処理が、各サポートロールの配置位置(またはその直前の位置)にループカーが到達して各サポートロールの状態が切り替えられる度に行われる。
【0008】
ただし、このようにしてサポートロールの異常の有無が判定される場合であっても、種々の原因(後述)により、サポートロールの異常の有無を正確に判定できないことがある。
【0009】
そこで、本発明は、サポートロールの異常の有無をより正確に判定することが可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)鋼板を保持した状態で鋼板の長手方向に往復移動するループカーと、前記ループカーの移動範囲内において前記長手方向に沿って配置される複数のサポートロールであって、鋼板を支持する第1の状態と前記ループカーが通過できるように退避した第2の状態とに切替可能に構成される複数のサポートロールと、前記複数のサポートロールの状態を検出可能な複数のセンサと、を備えるルーパー設備におけるサポートロールの異常検出方法であって、a)前記複数のサポートロールのうちの特定のサポートロールの状態が前記第1の状態と前記第2の状態とのうちの一方の状態に切り替えられたことに応じて、前記特定のサポートロールが前記一方の状態である旨の検出結果を前記複数のセンサのうち前記特定のサポートロールの状態を検出可能なセンサから取得するステップと、b)前記ステップa)から所定時間が経過した時点において、前記センサの検出結果を再び取得するステップと、c)前記ステップb)での前記センサの検出結果に基づいて、前記特定のサポートロールの異常の有無を判定するステップと、を含み、前記特定のサポートロールは、前記複数のサポートロールのうち、前記ループカーの折り返し位置の直近のサポートロールであり、前記ステップc)においては、前記ステップb)の時点では前記特定のサポートロールが前記一方の状態を維持しているべきであるにもかかわらず、前記特定のサポートロールが前記一方の状態とは異なる状態である旨の検出結果が前記ステップb)にて前記センサから取得された場合、前記特定のサポートロールが異常である旨が判定されることを特徴とする異常検出方法。
【0012】
)上記()において、d)前記ステップa)の時点における前記ループカーの位置と基準位置との距離である第1の距離を取得するステップと、e)前記ステップb)の時点における前記ループカーの位置と前記基準位置との距離である第2の距離を取得するステップと、をさらに含み、前記ステップa)の時点で前記ループカーが前記ルーパー設備内の鋼板の貯留量を減らす向きに移動している場合、前記ステップc)は、前記第2の距離が前記第1の距離よりも小さいことを条件に実行され、前記ステップa)の時点で前記ループカーが前記貯留量を増やす向きに移動している場合、前記ステップc)は、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きいことを条件に実行されることを特徴とする異常検出方法。
【0013】
)鋼板を保持した状態で鋼板の長手方向に往復移動するループカーと、前記ループカーの移動範囲内において前記長手方向に沿って配置される複数のサポートロールであって、鋼板を支持する第1の状態と前記ループカーが通過できるように退避した第2の状態とに切替可能に構成される複数のサポートロールと、前記複数のサポートロールの状態を検出可能な複数のセンサと、を備えるルーパー設備においてサポートロールの異常検出処理を実行するコンピュータに、a)前記複数のサポートロールのうちの特定のサポートロールの状態が前記第1の状態と前記第2の状態とのうちの一方の状態に切り替えられたことに応じて、前記特定のサポートロールが前記一方の状態である旨の検出結果を前記複数のセンサのうち前記特定のサポートロールの状態を検出可能なセンサから取得するステップと、b)前記ステップa)から所定時間が経過した時点において、前記センサの検出結果を再び取得するステップと、c)前記ステップb)での前記センサの検出結果に基づいて、前記特定のサポートロールの異常の有無を判定するステップと、を実行させるプログラムであって、前記特定のサポートロールは、前記複数のサポートロールのうち、前記ループカーの折り返し位置の直近のサポートロールであり、前記ステップc)においては、前記ステップb)の時点では前記特定のサポートロールが前記一方の状態を維持しているべきであるにもかかわらず、前記特定のサポートロールが前記一方の状態とは異なる状態である旨の検出結果が前記ステップb)にて前記センサから取得された場合、前記特定のサポートロールが異常である旨が判定されることを特徴とするプログラム。
【0015】
)上記()において、前記プログラムは、d)前記ステップa)の時点における前記ループカーの位置と基準位置との距離である第1の距離を取得するステップと、e)前記ステップb)の時点における前記ループカーの位置と前記基準位置との距離である第2の距離を取得するステップと、を前記コンピュータにさらに実行させ、前記ステップa)の時点で前記ループカーが前記ルーパー設備内の鋼板の貯留量を減らす向きに移動している場合、前記ステップc)は、前記第2の距離が前記第1の距離よりも小さいことを条件に実行され、前記ステップa)の時点で前記ループカーが前記貯留量を増やす向きに移動している場合、前記ステップc)は、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きいことを条件に実行されることを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、サポートロールの異常の有無をより正確に判定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】連続酸洗ラインの概略構成を示す図である。
図2】ルーパー設備の概略構成を示す平面図である。
図3】制御系の構成例を示すブロック図である。
図4】サポートロールの開閉動作を示す模式図である。
図5】サポートロールの開閉動作を示す模式図である。
図6】サポートロールの開閉動作を示す模式図である。
図7】ループカーの折り返し動作を示す模式図である。
図8】サポートロールの異常検出処理に関するフローチャートである。
図9】第2実施形態に係るループカーの折り返し動作を示す模式図である。
図10】第2実施形態に係るループカーの折り返し動作を示す模式図である。
図11】第2実施形態に係るループカーの折り返し動作を示す模式図である。
図12】第2実施形態に係るループカーの折り返し動作を示す模式図である。
図13】第2実施形態に係るサポートロールの異常検出処理に関するフローチャートである。
図14】第2実施形態に係るサポートロールの異常検出処理に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<1.第1実施形態>
<1-1.設備概要>
図1は、本発明の一実施例に係る連続酸洗ライン(連続酸洗設備)1の概略構成を示す図である。なお、ここでは、連続酸洗ライン1に本発明が適用される態様が例示されるが、これに限定されず、他の連続処理ライン(鋼板2を処理する処理設備を有する連続処理ライン)に本発明が適用されてもよい。
【0020】
連続酸洗ライン1では、まず、コイル状に巻かれた鋼板(鋼帯)2がペイオフリール11によって連続酸洗ライン1へと供給される。連続酸洗ライン1に供給された鋼板2は、レベラー12を経た後シャーによって切断され、ウェルダー13において、切断された鋼板2の先端と先行している鋼板2の尾端とが溶接される。そして、溶接後の鋼板2は、ルーパー設備20の入側に設けられたブライドルロール14とルーパー設備20の出側に設けられたブライドルロール15とによって張力をかけられながらルーパー設備20内へと搬送(通板)される。
【0021】
ルーパー設備20内に搬送された鋼板2は、ループカー21上のロール(ルーパーロールとも称する)26と固定ロール(その位置が固定されたロール)27とに巻き付けられて、ルーパーロール26と固定ロール27との間で複数層(ここでは4層)に亘って貯留される。
【0022】
そして、鋼板2は、スケールブレーカ16を通過した後、酸洗槽17へと送り込まれる。なお、図1では図示されていないが、酸洗槽17において酸洗いされた鋼板2は、水洗槽等を通過した後、出側ループカーを経てテンションリールに巻き取られる。
【0023】
<1-2.ルーパー設備について>
図1に示されるように、ルーパー設備においては、鋼板2が複数層のループ状に貯留(ストック)される。これにより、ルーパー設備は、その内部に鋼板2を貯留することが可能である。
【0024】
以下では、連続酸洗ライン1の入側に設けられたルーパー設備(入側ルーパー設備)20に本発明の思想が適用される態様を例示する。なお、これに限定されず、連続酸洗ライン1の出側に設けられたルーパー設備(不図示)に本発明の思想が適用されてもよい。
【0025】
ルーパー設備20では、鋼板2を保持した状態でループカー21が鋼板2の長手方向Yに往復移動することによって、ルーパー設備20内の鋼板2の貯留量(ループ量などとも称される)が調整される。
【0026】
たとえば、ルーパー設備20内における鋼板2の貯留量を減らす場合には、ループカー21を固定ロール27の配置位置へと近づけ(図1では右向きへ移動させ)、ルーパー設備20内における鋼板2の貯留量を増やす場合には、ループカー21を固定ロール27の配置位置から遠ざける(図1では左向きへ移動させる)ことが行われる。
【0027】
図2は、ルーパー設備20の概略構成を示す平面図である。
【0028】
ルーパー設備20は、鋼板2を保持した状態で鋼板2の長手方向(移動方向)Yに往復移動するループカー21と、ループカー21の移動範囲(移動可能範囲)内において当該長手方向Yに沿って配置される複数のサポートロール22(22A~22P)とを備える。また、このルーパー設備20においては、サポートロール22が開状態(開態様)である旨を検出可能なセンサ24と、サポートロール22が閉状態(閉態様)である旨を検出可能なセンサ25との2つのセンサが、複数のサポートロール22のそれぞれに設けられている。
【0029】
ループカー21の車輪は、ワイヤー28を介して駆動装置29と接続されており、ループカー21の往復移動は、当該駆動装置29によって実現される。
【0030】
また、ルーパー設備20においては、鋼板2(鋼板2の下面)を支持することが可能なサポートロール22が、ループカー21の移動範囲内において当該鋼板2の長手方向Yに或る所定の間隔で配置されている。このようなサポートロール22を設けることによれば、複数層の鋼板2が擦れ合って鋼板2にすり疵が付くことを防止することが可能である。
【0031】
図2に示されるように、ここでは、複数のサポートロール22(ここでは、16個のサポートロール22A~22P)が、鋼板2の短手方向Xにおける当該鋼板2の両側(ワークサイド側とドライブサイド側との両側)のそれぞれに配置されている。複数のサポートロール22は、それぞれ、ループ状に積層された鋼板2(複数層の鋼板2)を支持することが可能な位置(高さ)に複数段に亘って配置されている。
【0032】
なお、当該複数のサポートロール22A~22Pのうちサポートロール22Aは、最大ループ地点P100の直近の(地点P100から最も近い位置に配置された)サポートロール22であり、サポートロール22Pは、最小ループ地点P200の直近のサポートロール22である。当該最大ループ地点P100は、ループカー21の移動方向(Y方向)の一方側の地点であり、ルーパー設備20内の鋼板2の貯留量が最大量になる地点である。最小ループ地点P200は、ループカー21の移動方向の他方側の地点であり、当該貯留量が最小量となる地点である。
【0033】
サポートロール22は、鋼板2を支持する状態(支持状態)とループカー21が通過できるように退避した状態(退避状態)とに切替可能に構成されている。
【0034】
ここでは、支持状態は、サポートロール22が鋼板2の長手方向Yに対して垂直な方向(90度の方向)に伸延した状態であり、「閉状態」とも称される。また、退避状態は、サポートロール22が鋼板2の長手方向Yに対して平行な方向(0度の方向)に伸延した状態であり、「開状態」とも称される。なお、図2では、サポートロール22A,22Bが開状態(退避状態)であり、サポートロール22D,22Pが閉状態(支持状態)である状況が示されている。
【0035】
サポートロール22の状態は、当該サポートロール22の配置位置または当該配置位置直前の位置へのループカー21の到達に伴って当該サポートロール22が水平面内で旋回(回転)することによって切り替えられる。なお、水平面内で旋回するサポートロール22は、スイングロールなどとも称される。サポートロール22の開閉動作(状態切替動作)については、後述する。
【0036】
なお、ここでは、サポートロール22が水平面内で回転することによって支持状態(閉状態)と退避状態(開状態)とが切り替えられているが、これに限定されない。たとえば、鋼板2の短手方向Xに伸延したサポートロール22が当該短手方向Xに往復移動することによって、支持状態と退避状態とが切り替えられてもよい。
【0037】
また、上述したように、ルーパー設備20には、サポートロール22が開状態である旨を検出可能なセンサ24と、サポートロール22が閉状態である旨を検出可能なセンサ25との2つのセンサが、複数のサポートロール22のそれぞれに設けられている。これらのセンサ24,25としては、一定範囲内にまで物体が近接した旨を検出することが可能な近接センサが例示される。
【0038】
たとえば、サポートロール22が閉状態から開状態に切り替えられたことによって当該サポートロール22の一方端(回転軸側の一方端)が近接センサ24に近接すると、当該近接センサ24は、サポートロール22が開状態である旨を検出する。この際、近接センサ25では、サポートロール22が閉状態でない旨が検出される。逆に、サポートロール22が開状態から閉状態に切り替えられたことによって当該サポートロール22の一方端が近接センサ25に近接すると、当該近接センサ25は、サポートロール22が閉状態である旨を検出する。この際、近接センサ24では、サポートロール22が開状態でない旨が検出される。
【0039】
また、ルーパー設備20には、当該ルーパー設備20を管理するコンピュータ99が設けられている。コンピュータ99は、サポートロール22の異常検出処理等を実行する。
【0040】
図3は、制御系の構成例を示すブロック図である。
【0041】
コンピュータ99は、コントローラ(制御部)90を備えている。
【0042】
コントローラ90は、コンピュータ99に内蔵され、コンピュータ99を統括的に制御する制御装置である。コントローラ90は、CPUおよび各種の半導体メモリ(RAMおよびROM)等を備えるコンピュータシステムとして構成される。コントローラ90は、CPUにおいて、記憶部(半導体メモリ等)内に格納されている所定のプログラム(OSおよびアプリケーション等)を実行することによって、各種の処理部を実現する。
【0043】
図3に示されるように、コントローラ90は、当該プログラムの実行により、取得部91と判定部92と動作制御部93とを含む各種の処理部を実現する。
【0044】
取得部91は、各近接センサ24,25の検出結果を各近接センサ24,25から取得する処理部である。
【0045】
判定部92は、各種の判定動作を実行する処理部である。
【0046】
動作制御部93は、駆動装置29と連携してループカー21の動作(往復移動動作、停止動作等)を制御する処理部である。
【0047】
<1-3.サポートロールの開閉動作について>
図4図6は、サポートロール22の開閉動作(状態切替動作)を示す模式図である。図4図6を参照しつつ、サポートロール22の開閉動作について説明する。なお、図5および図6においては、図示の都合上、ルーパーロール26(および鋼板2)がループカー21上に配置されていないが、実際には、ルーパーロール26(および鋼板2)がループカー21上に配置されている。
【0048】
まず、ルーパー設備20内の鋼板2の貯留量を減らす向き(図1の右向き)にループカー21が移動する状況(サポートロール22の状態が閉状態から開状態に切り替えられる状況)について説明する。
【0049】
ルーパー設備20には、サポートロール22を軸支する支柱(鉛直方向に伸延する支柱)23が設けられており、サポートロール22は、当該支柱23を回転軸として水平面内で回転することが可能である。
【0050】
そして、次述するように、閉状態のサポートロール22の配置位置直前の位置にループカー21が到達すると、図4図5図6の順にサポートロール22の状態が閉状態から開状態に切り替えられる。
【0051】
詳細には、支柱23においては、リンク機構31を介してカム追従子32が設けられており、ループカー21の側面には、カム溝34が設けられている。そして、図4に示されるように、閉状態のサポートロール22(詳細には、サポートロール22を軸支する支柱23)の配置位置直前の位置にループカー21が到達すると、支柱23側のカム追従子32がループカー21側のカム溝34に嵌合する。
【0052】
その後、ループカー21が図4の位置から右側に移動すると、図5に示されるように、支柱23側のカム追従子32がループカー21側のカム溝34に沿って徐々に上昇し、リンク機構31の先端部が右側に移動する。支柱23には、リンク機構31の押し引きに応じて回転する回転機構33が設けられており、リンク機構31が回転機構33を右側に押し込む(移動する)ことによって、当該回転機構33が支柱23の回転軸を中心に回転する。これに応じて、支柱23が当該支柱23の回転軸を中心に徐々に回転するとともに、支柱23の回転に伴って、サポートロール22が当該回転軸を中心に徐々に回転する。
【0053】
そして、ループカー21が図5の位置からさらに右側へと移動すると、図6に示されるように、支柱23側のカム追従子32がループカー21側のカム溝34に沿ってさらに上昇し、支柱23の回転機構33がさらに右側へと押し込まれる。これに応じて、支柱23が当該支柱23の回転軸を中心にさらに回転するとともに、支柱23の回転に伴って、サポートロール22が支柱23の回転軸を中心にさらに回転する。
【0054】
このようにして、サポートロール22が閉状態(図4)から開状態(図6)へと切り替えられる。
【0055】
次に、ルーパー設備20内の鋼板2の貯留量を増やす向き(図1の左向き)にループカー21が移動する状況(サポートロール22の状態が開状態から閉状態に切り替えられる状況)について説明する。
【0056】
この場合は、上記動作とは逆の動作(図6図5図4の順の動作)が行われる。
【0057】
具体的には、開状態のサポートロール22の配置位置にループカー21が到達すると、支柱23側のカム追従子32がループカー21側のカム溝34に嵌合する(図6参照)。そして、ループカー21の移動(左向きへの移動)に伴って支柱23側のカム追従子32がループカー21側のカム溝34に沿って下降し(図5図4参照)、支柱23の回転機構33がリンク機構31によって左側に引き出される。これに応じて、支柱23とサポートロール22とが当該支柱23の回転軸を中心に回転する(図5図4参照)。
【0058】
このようにして、サポートロール22が開状態(図6)から閉状態(図4)へと切り替えられる。
【0059】
<1-4.サポートロールの異常判定処理について>
次に、サポートロール22の異常判定処理について説明する。
【0060】
ここにおいて、サポートロール22の異常の有無(水平面内においてサポートロール22が正常な角度であるか否か)を判定するにあたっては、次述する3種類の異常判定処理を用いることが考えられる。
【0061】
<第1の種類の異常判定処理>
第1の種類の異常判定処理では、複数のサポートロール22(22A~22P)のうちの或るサポートロール22の状態が切り替えられた際に、他のサポートロール22の異常の有無が判定される。
【0062】
ここでは、複数のサポートロール22A~22Pのうちのサポートロール22C(図2)の状態が閉状態から開状態に切り替えられる状況を例示する。
【0063】
閉状態のサポートロール22Cの配置位置直前の位置にループカー21が到達すると、上記の開閉動作が行われて、サポートロール22Cの状態が閉状態から開状態に切り替えられる。これに応じて、サポートロール22Cの状態が開状態である旨の検出結果がサポートロール22Cの近接センサ24から取得される。第1の種類の異常判定処理では、この際に、複数のサポートロール22A~22Pのうち、当該サポートロール22C(その状態が切り替えられたサポートロール22)以外のサポートロール22(すなわち、サポートロール22A,22B,22D~22P)の状態が確認(判定)される。
【0064】
詳細には、当該サポートロール22C以外のサポートロール22のそれぞれの近接センサ24,25から各サポートロール22の状態検出結果が取得される。そして、現時点で開状態であるべきサポートロール22(たとえば、図2ではサポートロール22A,22B)が開状態(正常状態)であるか否かが判定される。同様に、現時点で閉状態であるべきサポートロール22(たとえば、図2ではサポートロール22D~22P)が閉状態(正常状態)であるか否かが判定される。
【0065】
このような異常判定処理(第1の種類の異常判定処理)が、各サポートロール22の配置位置(または、その直前の位置)にループカー21が到達して各サポートロール22の状態が切り替えられる度に行われる。
【0066】
これによれば、たとえばサポートロール22Cの状態が閉状態から開状態に切り替えられた直後に当該サポートロール22Cに異常が発生した場合であっても、その後にサポートロール22Cの次のサポートロール22Dの配置位置直前の位置にループカー21が到達して当該次のサポートロール22Dの状態が切り替えられた際に、当該サポートロール22Cの状態が確認される。それ故、当該サポートロール22Cの異常(或るサポートロール22の状態が切り替えられた時点で他のサポートロール22に発生している異常)を検出することが可能である。
【0067】
<第2の種類の異常判定処理>
第2の種類の異常判定処理では、短手方向Xにおける鋼板2の両側(ワークサイド側とドライブサイド側との両側)のサポートロール22の状態が略同一のタイミングで切り替えられたか否かが判定される。
【0068】
詳細には、鋼板2の両側のサポートロール22の状態が略同一のタイミングで切り替えられた場合は、当該サポートロール22が正常である旨が判定される。一方で、鋼板2の両側のサポートロール22の状態が互いに異なるタイミングで切り替えられた場合は、当該サポートロール22が異常である旨が判定される。
【0069】
<第3の種類の異常判定処理>
第3の種類の異常判定処理では、サポートロール22が開状態である旨の検出結果(近接センサ24からの検出結果)とサポートロール22が閉状態である旨の検出結果(近接センサ25からの検出結果)とが同時に取得されたか否かが判定される。
【0070】
詳細には、サポートロール22が開状態である旨の検出結果とサポートロール22が閉状態である旨の検出結果とのいずれか一方のみが取得された場合は、当該サポートロール22が正常である旨が判定される。一方で、サポートロール22が開状態である旨の検出結果とサポートロール22が閉状態である旨の検出結果とが何らかの事情で同時に取得された場合は、当該サポートロール22が異常である旨が判定される。
【0071】
このような3種類の異常判定処理を用いてサポートロール22の異常の有無を判定することが考えられる。
【0072】
ただし、このような異常判定処理(特に、第1の種類の異常判定処理)だけでは、サポートロールの異常の有無を正確に判定できないことがある。この点に関して、図7を参照しつつ説明する。なお、図7では、ループカー21の折り返し位置P50が最大ループ地点P100である場合の折り返し動作が示されている。
【0073】
詳細には、図7(a)に示されるように、たとえば左側へと移動するループカー21がサポートロール22A(最大ループ地点P100の直近のサポートロール)の配置位置に到達すると、当該サポートロール22Aが水平面内で90度回転して開状態から閉状態に遷移する。そして、ループカー21は、サポートロール22Aの配置位置を通過して更に左側(最大ループ地点P100側)に移動する。
【0074】
この際に、サポートロール22Aが、何らかの事情で長手方向Yに対して90度の角度では留まらずに長手方向Yに対して90度以上回転してしまう(図7(b)参照)ことがある。
【0075】
この場合、上記第1の種類の異常判定処理では、当該サポートロール22Aの異常が検出されないままループカー21がサポートロール22Aの配置位置に戻ってきてしまう(図7(c)参照)。
【0076】
具体的には、第1の種類の異常判定処理では、ループカー21が或るサポートロール22の配置位置に到達して当該或るサポートロール22の状態が切り替えられた際に他のサポートロール22の異常確認が行われ、ループカー21が次のサポートロール22の配置位置に到達するまでは、当該或るサポートロール22の異常の有無が確認されない。それ故、ループカー21がサポートロール22Aの配置位置に到達して当該サポートロール22Aの状態が切り替えられた直後に当該サポートロール22Aに異常が発生した場合には、サポートロール22Aの異常が検出されないままループカー21がサポートロール22Aの配置位置に戻ってきてしまう。端的に言えば、サポートロール22Aの次のサポートロール22がサポートロール22A自身である場合は、当該サポートロール22Aに異常が発生したとしても、その異常が検出されないままループカー21が当該サポートロール22Aの配置位置に到達してしまう。
【0077】
その結果、次述するように、ループカー21がサポートロール22Aの支柱23に衝突して(図7(c)参照)支柱23が転倒するなどの事故が発生してしまう虞がある。
【0078】
具体的には、ループカー21が折り返し位置P50(ここでは最大ループ地点P100)を経て図7(c)の左側からサポートロール22Aの配置位置直前の位置に到達した際には、本来は、当該サポートロール22Aは閉状態である。これにより、上述したような仕組みで支柱23側のカム追従子32がループカー21側のカム溝34に嵌合して、サポートロール22Aが支柱23の回転軸を中心に回転する。
【0079】
しかしながら、本来閉状態であるべきサポートロール22Aが閉状態でない場合(図7(b)参照)は、支柱23側のカム追従子32の高さとループカー21側のカム溝34の高さとが合わず、カム追従子32がループカー21に衝突する。その結果、支柱23が転倒してしまう虞がある。
【0080】
このような事故が発生した場合、転倒した支柱23を元の状態に戻すために連続酸洗ライン1が一時的に停止し、生産効率が低下する虞がある。また、支柱23の転倒によって一部の設備が破損した場合には、連続酸洗ライン1が復旧するまで連続酸洗ライン1が停止するなど、生産効率が大きく低下してしまう虞もある。
【0081】
このような事故の発生を防止するため、このルーパー設備20では、上記3種類の異常判定処理(特に、第1の種類の異常判定処理)に加えて、次のような異常判定処理(第4の種類の異常判定処理)もが実行される。
【0082】
図8は、サポートロール22の異常判定処理(第4の種類の異常判定処理)に関するフローチャートである。図8の動作は、コンピュータ99によって実行される。
【0083】
ここでは、ループカー21の折り返し時の動作、特に、ループカー21の折り返し位置P50がサポートロール22Aの配置位置と最大ループ地点P100との間である場合の折り返し動作を例示する。
【0084】
この場合、図8の動作では、複数のサポートロール22A~22Pのうち、ループカー21の折り返し位置P50(ここでは最大ループ地点P100)の直近のサポートロール22A(ループカー21が折り返し位置P50に到達する前に最後に通過したサポートロール22)に関して異常の有無が判定される。
【0085】
具体的には、ループカー21がサポートロール22Aの配置位置に到達すると、当該サポートロール22Aが開状態から閉状態に切り替えられる(図7(a)参照)。これに応じて、サポートロール22Aが閉状態である旨の検出結果が当該サポートロール22Aの近接センサ25から取得され、サポートロール22Aの状態が切り替えられた旨が検出される(ステップS11)。そして、処理は図8のステップS11からステップS12へと進む。
【0086】
ステップS12において、コンピュータ99は、タイマーの計時を開始するとともに、所定時間T1(たとえば1秒)の経過を待機する。なお、当該所定時間T1は、設定変更可能であり、連続酸洗ライン1の管理者等によって予め設定される。
【0087】
そして、サポートロール22Aが閉状態である旨の検出結果がステップS11にて取得されてから所定時間T1が経過すると、処理はステップS12からステップS13へと進む。
【0088】
ステップS13において、コンピュータ99は、近接センサ25の検出結果を再び取得する。
【0089】
そして、ステップS14において、コンピュータ99は、サポートロール22AがステップS11の時点での状態(ここでは閉状態(図7(a)参照))を維持しているか否かを判定する。なお、ここでは、サポートロール22Aの配置位置と最大ループ地点P100(折り返し位置P50)との距離は一定程度よりも長く、ループカー21がサポートロール22Aの配置位置を通過してから所定時間T1(1秒)が経過した時点では、当該ループカー21は、サポートロール22Aの配置位置に未だ戻ってきていないものとする。
【0090】
たとえば、サポートロール22Aが閉状態である旨の検出結果がステップS13にて近接センサ25から再取得された場合は、閉状態であるべきサポートロール22Aが閉状態(正常状態)を維持している旨がステップS14にて判定される。そして、処理はステップS14からステップS16へと進み、サポートロール22Aが正常である旨が判定される。
【0091】
一方で、ステップS11からステップS13までの間にサポートロール22Aが閉状態とは異なる状態(図7(b)参照)に遷移した場合は、サポートロール22Aが閉状態でない旨の検出結果がステップS13にて近接センサ25から取得される。
【0092】
ステップS13の時点ではサポートロール22Aが閉状態を維持しているべきであるにもかかわらず、サポートロール22Aが閉状態でない旨の検出結果がステップS13にて取得された場合、サポートロール22Aが閉状態を維持していない旨がステップS14にて判定され、処理はステップS14からステップS15へと進む。
【0093】
そして、ステップS15において、サポートロール22Aが異常である旨が判定される。サポートロール22(ここでは22A)が異常である旨が判定されると、コンピュータ99からループカー21の駆動装置29(図2)へと移動停止指令が送信され、ループカー21の移動動作が停止する。
【0094】
以上のような動作によれば、たとえばサポートロール22Aが閉状態に切り替えられた直後に当該サポートロール22Aが閉状態とは異なる状態(異常状態)に遷移してしまった場合(図7(b)参照)であっても、当該サポートロール22Aが異常である旨を判定(検出)することができる。したがって、サポートロール22の異常の有無をより正確に判定することが可能である。
【0095】
<2.第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0096】
この第2実施形態では、第1実施形態の動作に加えて、ループカー21の位置を考慮してサポートロール22の異常判定処理の実行是非が決定される。
【0097】
図9は、ループカー21の折り返し動作を示す模式図である。
【0098】
ここにおいて、ループカー21の折り返し位置P50は、連続酸洗ライン1の状況等に応じて変更される。それ故、ループカー21の折り返し位置P50によっては、図9に示されるように、最大ループ地点P100側のサポートロール22Aの配置位置にループカー21が到達してから所定時間T1(たとえば1秒)が経過するまでの間に当該ループカー21が当該サポートロール22Aの配置位置に既に戻っていることもある。
【0099】
たとえば、ループカー21がサポートロール22Aの配置位置を通過した後、サポートロール22Aの支柱23側のカム追従子32がループカー21側のカム溝34から外れる前に(カム溝34に未だ嵌合した状態で)、ループカー21が折り返すことがある。この場合、サポートロール22Aの状態が閉状態に切り替えられて(図9(a))から所定時間T1が経過する前に、当該サポートロール22Aの状態が正常な動作として開状態に切り替えられる(図9(b))。
【0100】
このような場合に、所定時間T1の経過時点でサポートロール22Aが閉状態に維持されているか否かが判定される(図8のステップS14)と、サポートロール22Aが正常であるにもかかわらず、サポートロール22Aが異常である旨が判定(すなわち誤判定)されてしまう。その結果、ループカー21の無用な停止が発生し、連続酸洗ライン1の生産効率が低下する虞がある。
【0101】
最小ループ地点P200側のサポートロール22Pについても、同様である。詳細には、サポートロール22Pの状態が開状態に切り替えられてから閉状態に再び切り替えられるまでの時間が所定時間T1以下である場合に、所定時間T1の経過時点でサポートロール22Pが開状態に維持されているか否かが判定されると、サポートロール22Pが正常であるにもかかわらず、サポートロール22Pが異常である旨が判定(誤判定)されてしまう。
【0102】
このような誤判定を防止するために、この第2実施形態では、ループカー21の折り返し位置P50の直近のサポートロール22の状態が切り替えられた時点でのループカー21の位置P1と、その後所定時間T1が経過した時点でのループカー21の位置P2とを比較することによって、当該サポートロール22の異常判定処理の実行是非が決定される。
【0103】
図13および図14は、第2実施形態に係る異常判定処理(第4の種類の異常判定処理)に関するフローチャートである。
【0104】
図13の動作は、ルーパー設備20内の鋼板2の貯留量を増やす向き(図1の左向き)にループカー21が移動する際に実行され、図14の動作は、ルーパー設備20内の鋼板2の貯留量を減らす向き(図1の右向き)にループカー21が移動する際に実行される。
【0105】
図13および図14に示されるように、この第2実施形態では、図8の動作(ステップS11~S16)に加えて、ステップS21~S23の処理が実行される。以下では、当該ステップS21~S23の処理について主に説明する。
【0106】
まず、ループカー21がルーパー設備20内の鋼板2の貯留量を増やす向きに移動する際の動作について、図9図10および図13を参照しつつ説明する。ここでは、ループカー21の折り返し位置P50が、サポートロール22Aの配置位置と最大ループ地点P100との間であることを想定する。なお、これに限定されず、ループカー21の折り返し位置P50は2つのサポートロール22の相互間であってもよい。
【0107】
図9(a)および図10(a)に示されるように、左向きに移動するループカー21がサポートロール22A(折り返し位置P50の直近のサポートロール)の配置位置に到達すると、当該サポートロール22が開状態から閉状態に切り替えられる。これに応じて、サポートロール22Aが閉状態である旨の検出結果が近接センサ25から取得される(ステップS11)。そして、処理はステップS11からステップS21へと進む。
【0108】
ステップS21においては、ステップS11の時点(サポートロール22Aが閉状態である旨の検出結果が取得された時点)でのループカー21の位置P1と基準位置P0との距離(第1の距離)L1が取得される。当該基準位置P0としては、たとえば、最小ループ地点P200が用いられる。
【0109】
その後、所定時間T1が経過する(ステップS12)と、近接センサ25の検出結果が再び取得される(ステップS13)とともに、ステップS13の時点(近接センサ25の検出結果が再取得された時点)でのループカー21の位置P2と基準位置P0との距離(第2の距離)L2が取得される(ステップS22)。
【0110】
そして、処理はステップS22からステップS23A(S23)へと進み、距離L2が距離L1よりも大きいか否かが判定される。換言すれば、ステップS13の時点での貯留量がステップS11の時点での貯留量よりも大きいか否かが判定される。
【0111】
たとえば、サポートロール22Aの配置位置をループカー21が通過してから所定時間T1が経過した時点では、ループカー21がサポートロール22Aの配置位置に未だ戻ってきていない場合(図10(b)参照)、ステップS13の時点でのループカー21の位置P2は、ステップS11の時点でのループカー21の位置P1(図10(a))よりも左側(最大ループ地点P100側)である。この場合、距離L2が距離L1よりも大きい旨がステップS23Aにて判定され、処理はステップS23AからステップS14以降へと進む。そして、上記第1実施形態と同様にして、サポートロール22Aの異常判定処理(サポートロール22AがステップS11での状態を維持しているか否かを判定する処理)が実行される。
【0112】
一方で、サポートロール22Aの配置位置をループカー21が通過してから所定時間T1が経過した時点で、ループカー21がサポートロール22Aの配置位置に戻ってきている場合(図9(b)参照)、ステップS13の時点でのループカー21の位置P2は、ステップS11の時点でのループカー21の位置P1(図9(a))と同じ位置である。この場合、距離L2が距離L1以下である旨がステップS23にて判定され、ステップS14~S16の処理を経ることなく(サポートロール22の異常判定処理が実行されることなく)、図13の動作は終了する。
【0113】
このように、ステップS11の時点でループカー21がルーパー設備20内の鋼板2の貯留量を増やす向きに移動している場合、第2の距離L2が第1の距離L1よりも大きいことを条件に、サポートロール22の異常判定処理(ステップS14~S16)が実行される。
【0114】
つぎに、ループカー21がルーパー設備20内の鋼板2の貯留量を減らす向きに移動する際の動作について、図11図12および図14を参照しつつ説明する。
【0115】
なお、図13図14とでは、ステップS23の処理内容が異なり、ステップS23以外の処理内容は同様である。以下では、図14のステップS23B(S23)の処理内容について主に説明する。
【0116】
ループカー21がルーパー設備20内の鋼板2の貯留量を減らす向きに移動する場合、ステップS23B(S23)では、第2の距離L2が第1の距離L1よりも小さいか否かが判定される。換言すれば、ステップS13の時点での貯留量がステップS11の時点での貯留量よりも小さいか否かが判定される。
【0117】
たとえば、サポートロール22Pの配置位置をループカー21が通過してから所定時間T1が経過した時点では、ループカー21がサポートロール22Pの配置位置に未だ戻ってきていない場合(図12(b)参照)、ステップS13の時点でのループカー21の位置P2は、ステップS11の時点でのループカー21の位置P1(図12(a))よりも右側(基準位置P0側)である。この場合、距離L2が距離L1よりも小さい旨がステップS23Bにて判定され、処理はステップS23BからステップS14以降へと進む。そして、サポートロール22Pの異常判定処理が実行される。
【0118】
一方で、サポートロール22Pの配置位置をループカー21が通過してから所定時間T1が経過した時点で、ループカー21がサポートロール22Pの配置位置に戻ってきている場合(図11(b)参照)、ステップS13の時点でのループカー21の位置P2は、ステップS11の時点でのループカー21の位置P1(図11(a))と同じ位置である。この場合、距離L2が距離L1以上である旨がステップS23Bにて判定され、ステップS14~S16の処理を経ることなく(サポートロール22の異常判定処理が実行されることなく)、図14の動作は終了する。
【0119】
このように、ステップS11の時点でループカー21がルーパー設備20内の鋼板2の貯留量を減らす向き(図1の右向き)に移動している場合、第2の距離L2が第1の距離L1よりも小さいことを条件に、サポートロール22の異常判定処理(ステップS14~S16)が実行される。
【0120】
以上のような動作によれば、ループカー21の折り返し位置P50の直近のサポートロール22の状態が切り替えられてから所定時間T1が経過するまでの間に当該ループカー21が当該サポートロール22の配置位置に戻ってきて当該サポートロール22の状態が(正規の動作として)再び切り替えられている場合には、当該サポートロール22の異常判定処理が実行されない。したがって、ループカー21の折り返し位置P50の直近のサポートロール22が正常であるにもかかわらず異常であると誤判定されてしまうことを防止することが可能である。ひいては、連続酸洗ライン1の生産効率の低下を防止することが可能である。
【0121】
以上説明した実施形態によれば、以下のような発明を提供することができる。
【0122】
先ず、サポートロールの第1の異常検出方法は、
鋼板を保持した状態で鋼板の長手方向に往復移動するループカー(例えば、ループカー21)と、
前記ループカーの移動範囲内において前記長手方向に沿って配置される複数のサポートロールであって、鋼板を支持する第1の状態と前記ループカーが通過できるように退避した第2の状態とに切替可能に構成される複数のサポートロール(例えば、複数のサポートロール22)と、
前記複数のサポートロールの状態を検出可能な複数のセンサ(例えば、複数の近接センサ25)と、
を備えるルーパー設備におけるサポートロールの第1の異常検出方法であって、
a)前記複数のサポートロールのうちの特定のサポートロールの状態が前記第1の状態(例えば、開状態)と前記第2の状態(例えば、閉状態)とのうちの一方の状態に切り替えられたことに応じて、前記特定のサポートロールが前記一方の状態である旨の検出結果を前記複数のセンサのうち前記特定のサポートロールの状態を検出可能なセンサから取得するステップ(例えば、ステップS11)と、
b)前記ステップa)から所定時間が経過した時点において、前記センサの検出結果を再び取得するステップ(例えば、ステップS13)と、
c)前記ステップb)での前記センサの検出結果に基づいて、前記特定のサポートロールの異常の有無を判定するステップ(例えば、ステップS14~S16)と、
を含み、
前記ステップc)においては、前記ステップb)の時点では前記特定のサポートロールが前記一方の状態を維持しているべきであるにもかかわらず、前記特定のサポートロールが前記一方の状態とは異なる状態である旨の検出結果が前記ステップb)にて前記センサから取得された場合、前記特定のサポートロールが異常である旨が判定される
ことを特徴とするものである。
【0123】
上記の第1の異常検出方法によれば、特定のサポートロールが第1の状態と第2の状態とのうちの一方の状態に切り替えられた直後に当該特定のサポートロールが当該一方の状態とは異なる状態に遷移してしまった場合であっても、当該特定のサポートロールが異常である旨を判定することができるので、サポートロールの異常の有無をより正確に判定することができる。
【0124】
第2の異常検出方法は、第1の異常検出方法において、
前記特定のサポートロールは、前記複数のサポートロールのうち、前記ループカーの折り返し位置の直近のサポートロール(例えば、サポートロール22A)である
ことを特徴とするものである。
【0125】
第3の異常検出方法は、第2の異常検出方法において、
d)前記ステップa)の時点における前記ループカーの位置と基準位置との距離である第1の距離(例えば、距離L1)を取得するステップ(例えば、ステップS21)と、
e)前記ステップb)の時点における前記ループカーの位置と前記基準位置との距離である第2の距離(例えば、距離L2)を取得するステップ(例えば、ステップS22)と、
をさらに含み、
前記ステップa)の時点で前記ループカーが前記ルーパー設備内の鋼板の貯留量を減らす向きに移動している場合、前記ステップc)は、前記第2の距離が前記第1の距離よりも小さいことを条件に実行され、
前記ステップa)の時点で前記ループカーが前記貯留量を増やす向きに移動している場合、前記ステップc)は、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きいことを条件に実行される
ことを特徴とするものである。
【0126】
上記第3の異常検出方法によれば、ループカーの折り返し位置の直近のサポートロールの状態が切り替えられてから所定時間が経過するまでの間に当該ループカーが当該サポートロールの配置位置に戻ってきて当該サポートロールの状態が正規の動作として再び切り替えられている場合、当該サポートロールの異常判定処理が実行されない。したがって、ループカーの折り返し位置の直近のサポートロールが正常であるにもかかわらず異常であると誤判定されてしまうことを防止することができる。
【0127】
なお、本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 連続酸洗ライン
2 鋼板
20 ルーパー設備
21 ループカー
22 サポートロール
23 支柱
24,25 近接センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14