(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】分流装置
(51)【国際特許分類】
F25C 5/20 20180101AFI20230906BHJP
B05B 7/28 20060101ALI20230906BHJP
G01M 17/007 20060101ALN20230906BHJP
【FI】
F25C5/20 Z
B05B7/28
G01M17/007 P
(21)【出願番号】P 2022040554
(22)【出願日】2022-03-15
(62)【分割の表示】P 2020008307の分割
【原出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 仁志
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩司
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-215004(JP,A)
【文献】特開平03-079974(JP,A)
【文献】特開2008-304100(JP,A)
【文献】特開平08-061809(JP,A)
【文献】特開平09-280512(JP,A)
【文献】特開平08-312917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 5/20
B05B 7/28
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送気流により雪粒を搬送する管路と、
該管路の内部の所定位置に、流路面積を狭めるように設けられ、搬送下流側に向かって縮径する縮径部と、搬送下流側に向かって拡径する拡径部とを有する絞り部と、
該管路の流出口を複数の領域に区分する仕切りと、
該絞り部の搬送方向上流側に、設けられた曲管部と、を有し、
該仕切りは、前記流出口の中心部から周縁に向かって放射状に延び、
前記曲管部の搬送方向上流側流入口と前記絞り部の最小流路断面との間の管路長さは、前記曲管部の曲がり外側部で管内に沿って流れる偏流の安定性の観点から設定され、前記絞り部の最小流路断面と前記流出口との間の管路長さは、
雪粒の拡散領域が前記流出口全体に及ぶように設定され、前記縮径部の絞り角度は、前記絞り部への着雪を抑制する観点から、設定される、ことを特徴とする分流装置。
【請求項2】
前記絞り部は、搬送下流側に向かって縮径する縮径部と、搬送下流側に向かって拡径する拡径部とを有し、該縮径部と該拡径部との境界部が、最小流路断面を構成する、請求項1に記載の分流装置。
【請求項3】
前記縮径部および前記拡径部いずれも、前記管路の中心軸線に関して回転対称の環状をなす、請求項2に記載の分流装置。
【請求項4】
前記最小流路断面の面積は、搬送気流の速度および流路圧損に応じて、設定される、請求項2または請求項3に記載の分流装置。
【請求項5】
前記縮径部の絞り部角度は、搬送気流の速度、絞り部頂点と管路中心との距離および拡散距離に応じて、設定される、請求項2または請求項3に記載の分流装置。
【請求項6】
前記曲管部から前記絞り部までの前記管路の長さは、搬送気流の速度に応じて、設定される、請求項4または請求項5に記載の分流装置。
【請求項7】
雪粒は、氷粒による人工雪である、請求項1に記載の分流装置。
【請求項8】
同じ形状または/および異なる形状の前記絞り部を前記管路の延び方向に沿って、直列に複数設ける、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の分流装置。
【請求項9】
前記管路の流出口において、区分された各領域は、分流管に連通接続される、請求項1に記載の分流装置。
【請求項10】
前記縮径部は、前記管路の断面において、前記曲管部の曲がり外側に相当する周方向部分にのみ設けられる、請求項1に記載の分流装置。
【請求項11】
前記境界部における接線が、搬送気流の方向に沿うように設けられる、請求項2に記載の分流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分流装置に関し、より詳細には、管路内で搬送気流により雪粒を搬送して、管路の出口側を複数の分流管に連通することにより分流する際、簡単な構造により、分流ごとの雪粒の濃度のバラツキを抑制することが可能な分流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、気流輸送される粉粒体を分流する粉体分流器が用いられている。
特許文献1は、その一例を開示する。
この粉体分流器は、粉体を連行した気体を導入する導入口に絞り部を設け、この絞り部の下流側に切頭円錐形の混合室を設け、この混合室の内部には周面に複数個の開口を有する筒を内挿し、混合室の底板に複数個の分流管を連通して設けて構成している。
このような構成によれば、曲管を経て混合室に粉体が導入される際、粉体は曲管の曲がりの外側方向に高い密度に濃縮するように偏析しやすいが、絞り部でいったん絞られた後、混合室内に入るので粉体の混合が促進され、絞り部から混合室へ入る際にさらに混合が生じ、混合室内では大部分の粉体が筒内に入り、複数個の開口を経て噴出した粉体は混合室内において十分に混合された状態となり、分流器に導入される際に管の断面方向で粉体の濃度に偏析がある場合にも均一な濃度で分流ができるという効果が奏される。
【0003】
しかしながら、このような粉体分流器は、混合室内に別途筒を設けていることに起因して、以下のような技術的問題点を有する。
すなわち、混合室内において、粉体の付着により、場合により管の詰まりが生じることがある。
より詳細には、粉体が絞り部から混合室内に流入する際、粉体の流速は低下することから、粉体が筒または混合室の内周面、あるいは分流管に接続する開口を有する底板に付着することがある。これは、特に、粉体が水分を含んだ雪粒の場合に顕著であり、搬送空気の速度が低速の場合、底板に付着した雪粒が山状となって、場合により筒の開口を閉塞する事態も生じ得る。
【0004】
また、特許文献2は、別の粉粒体の分流装置を開示する。
この粉粒体の分流装置は、
管内で気流により粉粒体を圧送する本管と、それぞれの上流側端面が、該本管の下流側端面と平行に配置される複数の分岐管との間に配置される粉粒体の分流装置であって、
前記粉粒体の分流装置は、上流側端面および下流側端面それぞれが前記本管の下流側端面および該複数の分岐管それぞれの上流側端面と平行に配置された回転体と、該回転体をその軸線方向を中心に所定回転速度で回転させる回転駆動部とを有し、
該回転体はその内部に、該回転体を軸線方向に貫通する圧送流路を有し、
該圧送流路は、前記上流側端面に、前記本管の下流側端面に設けられる流出開口に近接対向して非接触式に配置される取り入れ口を備え、前記下流側端面に、前記複数の分岐管それぞれの上流側端面に設けられる流入開口に近接対向して非接触式に配置される排出口とを備え、
前記排出口は、前記回転体の回転による前記排出口の通過軌跡上に前記複数の分岐管それぞれの流入開口が位置するように設けられる、構成としている。
【0005】
このような粉粒体の分流装置によれば、気流により粉粒体を圧送する本管から、回転する回転体の圧送流路を介して、粉粒体を複数の分岐管それぞれに分流することが可能である。
より具体的には、圧送される粉粒体は気流とともに本管の流出開口から流出し、回転駆動部により回転体の軸線方向を中心に所定回転速度で回転する回転体の内部の圧送流路に取り入れ口から流入し、排出口から流出して、排出口と近接対向して配置される複数の分岐管それぞれの流入開口から複数の分岐管それぞれに分流される。
この場合、排出口は、回転体の回転による排出口の通過軌跡上に複数の分岐管それぞれの流入開口が位置するように設けられることから、回転中の回転体の圧送流路の排出口と位置合わせされる複数の分岐管それぞれの流入開口が順次切り替えられることにより、気流により圧送される粉粒体を本管から複数の分岐管に分流する際、分岐管ごとの粉粒体の分流量の偏りを低減することが可能である。
【0006】
しかしながら、このような粉粒体の分流装置は、特許文献1に記載された粉体分流器に比べ、分岐管ごとの粉粒体の分流量の偏りを低減することが可能である反面、本管と分岐管との間に、動力源を用いる回転体を設けるとともに、非回転体である本管および分岐管それぞれと回転体との間を非接触式に密閉接続する必要があり、装置が複雑で大掛かりであるとともに高価となる。
【文献】実開昭63―17129号
【文献】特開2014-215004号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、管路内で搬送気流により雪粒を搬送して、管路の出口側を複数の分流管に連通することにより分流する際、簡単な構造により、分流ごとの雪粒の濃度のバラツキを抑制することが可能な分流装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、分流対象が雪粒であり、雪粒の管路内を搬送させる際の特質に着目することにより、今回の発明に至った。
上記課題を達成するために、本発明の分流装置は、
搬送気流により雪粒を搬送する管路と、
該管路の内部の所定位置に、流路面積を狭めるように設けられ、搬送下流側に向かって縮径する縮径部と、搬送下流側に向かって拡径する拡径部とを有する絞り部と、
該管路の流出口を複数の領域に区分する仕切りと、
該絞り部の搬送方向上流側に、設けられた曲管部と、を有し、
該仕切りは、前記流出口の中心部から周縁に向かって放射状に延び、
前記曲管部の搬送方向上流側流入口と前記絞り部の最小流路断面との間の管路長さは、前記曲管部の曲がり外側部で管内に沿って流れる偏流の安定性の観点から設定され、前記絞り部の最小流路断面と前記流出口との間の管路長さは、前記流出口までの雪粒の所望拡散領域の観点から設定され、前記縮径部の絞り角度は、前記絞り部への着雪を抑制する観点から、設定される、ことを特徴とする分流装置、構成としている。
【0009】
また、絞り部は、搬送下流側に向かって縮径する縮径部と、搬送下流側に向かって拡径する拡径部とを有し、縮径部と拡径部との境界部が、最小流路断面を構成するのがよい。
さらに、前記縮径部および前記拡径部いずれも、前記管路の中心軸線に関して回転対称の環状をなすのがよい。
さらに、最小流路断面の面積は、搬送気流の速度および流路圧損に応じて、設定されるのがよい。
【0010】
さらにまた、前記縮径部の絞り部角度は、搬送気流の速度、絞り部頂点と管路中心との距離および拡散距離に応じて、設定されるのがよい。
加えて、前記曲管部から前記絞り部までの前記管路の長さは、搬送気流の速度に応じて、設定されるのがよい。
【0011】
また、雪粒は、氷粒による人工雪であるのがよい。
さらに、同じ形状または/および異なる形状の前記絞り部を前記管路の延び方向に沿って、直列に複数設けるのでもよい。
さらにまた、前記管路の流出口において、区分された各領域は、分流管に連通接続されるのがよい。
加えて、前記縮径部は、前記管路の断面において、前記曲管部の曲がり外側に相当する周方向部分にのみ設けられるのがよい。
さらに、前記境界部における接線が、搬送気流の方向に沿うように設けられるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の粉粒体の分流装置により人工雪を分流して雪環境試験に利用する場合を例として、本発明の粉粒体の分流装置を以下に詳細に説明する。
まず、雪環境試験システムについて説明すれば、
図1に示すように、雪環境試験システム10は、氷粒からなる人工雪を利用し、人工雪をその背後からの気流に乗せて吹雪を模擬して、試験供試体である車両Vに向かって吹き付けるように構成され、そのために、吹雪供給システム12と、気流供給システム14とを有する。
特に、氷粒の粒径および水分含有率が主な影響因子である所定の雪質を具備する吹雪を必要量用いて、車両Vに向かって連続的に吹き付ける際、車両Vの高さ全体および幅方向全体に拡散し、場合により車両Vの高さ方向に所望の吹雪濃度分布を実現できるようにするために、所定の温度および湿度管理のもとで、人工雪として利用する氷粒群を試験直前に製造して迅速に供給することが要求される。
【0013】
より具体的には、雪環境試験システム10は、試験対象である車両Vを配置する風洞16と、風洞16の上部に配置された低温室18、および低温室18の上部に配置された製氷室(図示せず)とを有し、製氷室内には、製氷機22が配置され、低温室18内には、氷温安定化コンベア24、砕氷機26、ブロアー28、冷却器30、および湿雪装置34が配置され、風洞16内には、人工雪の分流装置100、人工雪の吹き出しノズル36、および吹雪捕集装置38が配置され、概略的には、製氷室20で製氷された氷片を低温室18で砕氷して、氷粒化することにより人工雪を製造し、人工雪を風洞16に向けて圧送して、風洞16内において、湿雪化した人工雪を分流して、低温気流に乗せて吹雪化して、車両Vに向けて吹き付けるように構成している。
【0014】
吹雪供給システム12は、3系統設けられ、各系統において、砕氷機26と吹き出しノズル36とを接続する雪供給管40(より正確には、雪供給管40に対して分流装置100を介して接続される複数の分流管210各々が吹き出しノズル36に接続)、および風洞16内の吸引口42と砕氷機26とを接続する空気ダクト44が設けられ、雪供給管40においては、砕氷機26と吹き出しノズル36との間に、湿雪装置34および人工雪の分流装置100が接続され、一方空気ダクト44においては、風洞16内の吸引口42と砕氷機26との間に、ブロアー28、冷却器30が接続される。
【0015】
製氷機22は、クラック状の氷片を製造するいわゆるリーマ式の製氷機22であり、雪環境試験に用いる人工雪の全体必要量に応じて、クラック状氷片を製造する複数の製氷機22のうちから任意台数を選択して、環境試験に用いる人工雪の必要量の変化に応じて、選択した製氷機22により製氷することにより、製氷量を粗調整するとともに、環境試験に用いる人工雪の必要量の変化に対して、人工雪の必要量と粗調整された製氷量との差分に応じて、選択した製氷機22それぞれにおいて、蒸発温度および/または水温および/またはリーマの回転数を調整することにより、製氷量を微調整する制御装置とを有する。
【0016】
砕氷機26は、主に、上部に配置されたロータリーフィーダー(図示せず)と、下部に配置された一対の破砕ドラム(図示せず)とからなり、氷温安定化コンベア24により供給された氷片をロータリーフィーダーにより分量化して一対の破砕ドラムに供給し、一対の破砕ドラムにより破砕して、所定粒径の氷粒として雪供給管40に供給するようにしている。氷温安定化コンベア24は、コンベア上で搬送する氷粒に対して気流を強制通風して、氷粒と空気との熱交換量を増大させることにより、氷粒の温度を強制通風の周囲空気温度に近くに維持するようにしている。
【0017】
湿雪装置34は、雪供給管40に連通するホットエア供給管を有し、ホットエア供給管は、その下流側端部に、雪供給管40の延び方向の所定長さに亘って雪供給管40の外周面全体を覆う環状スペースを形成するホットエア流入部を有し、環状スペースに覆われる雪供給管40の外周面には、ホットエアの流入開口が均等に複数設けられ、それにより、雪供給管40のホットエア流入部が付設される部位の下流側において、雪供給管40内にエージングスペース、すなわち管内の均一な雰囲気温度のもとでホットエアと気流および気流により圧送される氷粒との熱交換を徐々に進行させる領域が形成されるようにしている。
ホットエアの温度および/または流量、および搬送気流の温度および/または流量を調整することにより、雪供給管40内の雰囲気温度の調整を通じて湿雪の水分含有率を調整する。湿雪の水分含有率は、たとえば、車両を供試体とする雪環境試験の場合、1%ないし30%である。
この場合、雪供給管40内を湿雪化された氷粒Pが気流により圧送される間に、雪供給管40の内表面に付着して、圧送される氷粒Pの流量の経時変動を引き起こしたり、あるいは場合により雪供給管40の閉塞による氷粒Pの圧送不能を確実に防止するために、搬送気流の所定速度は、毎秒3メートル以上であるのが好ましい。湿雪の水分含有率が高いほど、雪供給管40の内表面への付着性が高まる傾向にあるので、その分搬送気流の速度を上げる必要がある。後に説明するように、雪供給管40に対して、分流装置100を介して接続される複数の分流管210各々は、雪供給管40の内径より小さい内径を有することから、この点が、より当てはまる。
【0018】
気流供給システム14について、風洞16は、循環スペースの一部に形成され、車両Vの前方から後方に向かって一方向に車両Vの車高に亘って吹雪を吹き付けるように構成される。具体的には、循環スペース内に設置された送風機25により車両Vの前方から後方に向かって一方向に所定風速の気流を発生し、車両Vを通過して気流は冷却器27により所定温度に冷却されて、送風機25に戻され、再度気流を発生し、これを繰り返すようにしている。
吹き出しノズル36について、各系統ごとに、車両Vの前方所定距離の位置に、複数機で組をなす吹雪の吹き出しノズル36が車両Vの幅方向に亘って幅方向に所定間隔を隔てて配置される。各系統の組の吹き出しノズル36は、車両Vの車高に亘って高さ方向に所定間隔を隔てて配置され、各系統の組の吹き出しノズル36ごとに、供給する吹雪の濃度を調整可能にしている。車両Vの後方所定距離の位置には、雪捕集装置38が配置され、雪捕集装置38を通過した吹雪は、風洞16内の吸引口42を介して低温室18内に配置されたブロアー28により引かれ、冷却器30により冷却され、砕氷機26に戻され、製氷機22により製氷され氷温安定化コンベア24により砕氷機26に供給され砕氷される氷粒と混合され、再び雪供給管40および分流管210を介して吹き出しノズル36から吹雪を吹き出すのに利用されるようにしている。
【0019】
各吹き出しノズル36の前方には、拡散プレート74が設けられ、吹き出しノズル36から送風機25からの低温気流に乗って車両Vに向かって吹き出される吹雪は、拡散プレート74に当って四方外方に拡散し、3系統の吹雪の吹き出しノズル36が互いに協働して、車両Vの前部において、車両Vの高さ方向に亘って、吹雪が分布するようにしている。
この点で、風洞16は、いわゆる空力風洞16でなく、簡易的な風洞16とすることから、吹き出しノズル36と車両Vの前部との距離は、約1メートルないし3メートルであるところ、この短い距離の間で、吹き出しノズル36より吹き出す吹雪が、車両Vの前部において高さ全体に亘って拡散するようにしている。
【0020】
次に、分流装置100について説明すれば、
図2に示すように、分流装置100は、搬送気流Fにより雪粒Sを搬送する管路110と、管路110の内部の所定位置に設けられた絞り部120と、管路110の流出口130を複数の領域140に区分する仕切り150と、管路110に設けられた曲管部160と、により概略構成されている。
【0021】
管路110は、流入口105が雪供給管40と連通接続される一方、流出口130が複数の分流管210に接続されており、雪供給管40と別の材質であってもよい。
曲管部160は、後に説明する絞り部120の搬送方向上流側に設けられ、その曲率は、
図2に示すように、管路110の延び方向が90°変わるように設定されている。
曲率は、曲管部160の曲がり外側部230で管内に沿って流れることにより、偏流が一定に保持された状態で絞り部120に至るようにする観点から、気流の搬送速度に応じて、設定すればよく、搬送速度が大きいほど、緩やかに曲がるのでもよい。
なお、曲管部160は、管路110の直管部と別体として設けられてよいし、管路110が一体で曲管部が形成されていてもよい。
【0022】
絞り部120は、搬送下流側に向かって縮径する縮径部180と、搬送下流側に向かって拡径する拡径部190とを有し、縮径部180と拡径部190との境界部200が、最小流路断面Aを構成する。
縮径部180および拡径部190いずれも、管路110の中心軸線に関して回転対称の環状をなし、これにより、絞り部120を通過した雪粒Sが管路110の内周面220に向かって拡散する際、断面が管路110の流路断面と同心状の拡散領域を形成することにより、管路110の流出口130において、均等に分流されるようにしている。
この点、拡散しきれない雪粒を管路110内中央へ誘導する観点から、絞り部120の管路110の気流搬送方向における位置を調整するのがよい。
縮径部180および拡径部190の上面はそれぞれ、平面状をなし、縮径部180は、管路110の内周面220から徐々に境界部200に向かって上方に傾斜角度Θで傾斜し、それにより、管路110に対して直交する流路断面が徐々に狭まり、一方、拡径部190は、境界部200から徐々に管路110の内面に向かって下方に傾斜し、それにより、管路110に対して直交する流路断面が徐々に拡がり、管路110の流路断面に一致する。
【0023】
絞り部120は、管路110と別個の材質、たとえば、管路110が金属製である場合、たとえば、樹脂製であってもよい。
また、縮径部180および拡径部190の上面がそれぞれ、曲面状をなし、管路110の気流搬送方向に沿う山形断面について、境界部200における接線が、搬送気流の方向に沿うように設けられるのでもよい。
【0024】
最小流路断面Aの面積は、搬送気流Fの速度および流路圧損に応じて、設定される。流路圧損は、たとえば、絞り部120から流出口130までの管路長さL1により変動する。
または、縮径部180の絞り部角度Θは、搬送気流Fの速度、絞り部120頂点と管路中心との距離および拡散距離に応じて、設定される。
この点について、絞り部角度Θが大きいほど、管路長さL1は短くて良い傾向にある一方、絞り部角度Θが小さいほど、管路長さL1を長くする必要がある傾向にある。
この場合において、雪粒Sの搬送速度、すなわち、搬送気流Fの速度は、環境試験での時間当たりの人工雪要求量および/または雪粒Sの種類により決定されるところ、気流の搬送速度によって、絞り部角度Θまたは管路長さL1は影響を受ける。
より詳細には、たとえば、雪粒Sが水分含有率が30%に近い高い含有率の場合、管路110の内周面220への付着を防止する観点から、搬送気流Fの速度は高いのが好ましいところ、それにより、絞り部120下流側の管路110を通過する時間、つまり、雪粒Sが拡散する時間が短くなることから、流出開口130に至るまでの雪粒Sの拡散領域を確保する観点から、絞り部角度Θを大きくするか、管路長さL1を長くするのがよい。
この場合、絞り部角度Θを大きくし過ぎると、雪粒Sの搬送速度ベクトルが急激に変化し、それにより、雪粒Sの絞り部120への着雪の可能性が大となることから、絞り部角度Θを大きくせずに、管路長さL1を確保するのがよい。
一方、曲管部160から絞り部120までの管路長さL2は、曲管部160の曲がり外側部で管内に沿って流れることにより、偏流が一定に保持された状態で絞り部120に至る観点から、搬送気流Fの速度に応じて、設定される。
【0025】
変形例として、絞り部120を管路110に対して着脱自在としておき、雪粒Sの種類、搬送速度等に応じて、絞り部120の管路110上の位置を調整可能としてもよい。
その場合、絞り部角度Θ、最小流路面積の異なる絞り部120を複数設けて置き、雪粒Sの種類、搬送速度等に応じて、複数の絞り部120から適当な絞り部120を選択するのでもよく、その場合、絞り部120の管路110上の位置を変動してもよい。さらに、同じ形状および/または異なる形状の絞り部120を管路110の延び方向に沿って、直列に複数設けるのでもよい。異なる形状の絞り部120としては、たとえば、絞り部角度Θおよび/または最小流路面積が異なるが含まれ、管路110の延び方向に沿って、適宜、間隔を隔てて設けるのがよい。
【0026】
仕切り150は、流出口130の中心部Cから周縁170に向かって放射状に延びる一体構造であり、放射状に延びるそれぞれの先端が管路110の内周面220に固定されている。
より詳細には、仕切り150は、流出開口130の周方向に等角度間隔(120°)を隔てて、3コ配置され、各々は、面の向きが気流搬送方向に沿うように設けられた薄板状をなし、可能な範囲で、流出開口130における流路面積を阻害することがないような厚みに設定される。これにより、搬送気流により搬送される雪粒が、仕切り150に衝突することにより、雪粒自体がこわされたり、搬送方向が偏向されることがないようにしている。
このような仕切り150により、分流管210ごとの雪粒Sの濃度のバラツキを抑制することが可能である。
仕切り150の数は、雪粒Sをどれだけ分流するかに応じて、適宜定めればよい。
【0027】
なお、管路110の流出口130において、区分された各領域140は、分流管210に連通接続され、これにより、各分流管210において、濃度のばらつきを低減した状態で、雪粒Sが分流されるようにしている。たとえば、分流管210を柔軟な材質として、扇形状の各領域140に対して、対応する分流管210の先端を挿入することにより、管路110に対して連通接続するのでもよい。
たとえば、各系統において、雪供給管40に連通接続される管路110の流出開口130から車両の幅方向に所定間隔を隔てて、全体で車両の幅全体をカバーするように配置された複数の分流管210それぞれに分流されるのでもよい。
変形例として、曲管部160の曲がり外側230で管内に沿って流れることにより、偏流が一定に保持された状態で絞り部120に至ることから、縮径部180は、管路110の断面において、曲管部160の曲がり外側に相当する周方向部分にのみ設けられるのでもよく、たとえば、管路110の曲がり外側に中心角度180°に亘って設けるのでもよい。
【0028】
本発明の分流装置100によれば、気流により人工雪を圧送する雪供給管40から、分流装置100を介して、人工雪を複数の分流管210それぞれに分流することが可能である。
より具体的には、まず、製氷機122によって製氷された氷片が砕氷機26によって砕氷され、所定粒径の氷粒となり、雪供給管40により気流により圧送され、湿雪装置34によって所定の水分含有率を有する湿雪とされ、さらに雪供給管40および分流管210により、試験体である車両Vに向けて気流により圧送される。
【0029】
圧送される湿雪は気流とともに雪供給管40の流出開口から流出し、流入口105から管路110内に流入し、絞り部120の搬送方向上流側に曲管部160が設けられることから、雪粒Sは旋回流でなく、曲管部160の曲がり外側部で管内に沿って流れることにより、偏流が一定に保持された状態で絞り部120に至り(
図2中G)、雪粒流れは、絞り部120通過後、絞り膨張により管の内周面に向かって拡散するとともに、絞り部120を管路110の内部の所定位置に設けることにより、拡散しきれない雪粒Sを管内中央へ誘導することが可能であり、管路110の流出口130での雪粒流れの偏流を解消した状態で、流入開口130から複数の分流管210それぞれに分流される。
より具体的には、3系統それぞれにおいて、雪供給管40から車両の幅方向に所定間隔を隔てて、全体で車両の幅全体をカバーするように配置された複数の分流管210それぞれに分流される。
【0030】
次いで、各系統において、それぞれの分流管210の先端の吹き出しノズル36から分配された湿雪が吹き出され、吹き出しノズル36の背後からの送風に乗せて車両に向かって吹雪として吹き付けられる。
この場合、各吹き出しノズル36から吹き出される吹雪の量にばらつきが少なく、また各吹き出しノズル36からの吹き出しが間欠的でなく、試験実施に支障のない範囲で連続的にすることが可能であることから、自然の吹雪の再現に近づけた適正な雪環境試験を実施することが可能である。
【0031】
以上の構成を有する分流装置100によれば、搬送気流Fにより雪粒Sを搬送する管路110には、絞り部120の搬送方向上流側に曲管部160が設けられることから、雪粒Sは旋回流でなく、曲管部160の曲がり外側部で管内に沿って流れることにより、偏流が一定に保持された状態で絞り部120に至り、雪粒流れは、絞り部120通過後、絞り膨張により管の内周面に向かって拡散するとともに、絞り部120を管路110の内部の所定位置に設けることにより、拡散しきれない雪粒Sを管内中央へ誘導することが可能であり、管路110の流出口130での雪粒流れの偏流を解消することにより、管路110の出口側を複数の分流管210に連通することにより分流する際、簡単な構造により、分流ごとの雪粒Sの濃度のバラツキを抑制することが可能である。
【0032】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、絞り部120下流側の管路長さL1と、絞り部120の縮径部180の傾斜角度Θとの関係について、分流管それぞれに分流される雪粒の状況に応じて、設定する場合を説明したが、それに限定されることなく、たとえば、設置スペースの制約により、管路長さL1を短くする代わりに、傾斜角度Θを大きくしたり、または、絞り部120の設置をより曲管部160側(上流側)にするのでもよい。
【0033】
たとえば、本実施形態において、分流対象である粉粒体として人工雪の場合として、人工雪を雪供給管40から複数の分流管210に圧送形式で分流して、複数の分流管210それぞれの先端に設けられた吹き出しノズル36から吹雪を模擬する場合を説明したが、それに限定されることなく、圧送形式の粉粒体を一様に分流する必要性がある限り、どのような粉体あるいは粒体にも有効である。
たとえば、本実施形態において、分流すべき粉粒体として、氷片を破砕することにより形成される人工湿雪であるものとして説明したが、それに限定されることなく、自然雪であったり、あるいは所定湿度および所定温度の冷風を利用して生成される人工結晶雪であってもよく、これらは湿雪でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態に係る雪粒の分流装置を配設する環境試験システムの全体概要図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る雪粒の分流装置の部分斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
A 最小流路断面積
L 管路長
Θ 絞り部角度
F 搬送気流
S 雪粒
V 車両
X 回転軸線
C 中心部
10 雪環境試験システム
12 吹雪供給システム
14 気流供給システム
16 風洞
18 低温室
20 製氷室
22 製氷機
24 氷温安定化コンベア
26 砕氷機
28 ブロアー
30 冷却器
32 湿雪装置
36 吹き出しノズル
38 吹雪捕集装置
40 雪供給管
42 吸引口
44 空気ダクト
46 ロータリーフィーダー
48 破砕ドラム
100 分流装置
105 流入口
110 管路
120 絞り部
130 流出口
140 複数の領域
150 仕切り
160 曲管部
170 周縁
180 縮径部
190 拡径部
200 境界部
210 分流管
220 内周面
230 曲がり外側