(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】渦電流式減速装置
(51)【国際特許分類】
H02K 49/10 20060101AFI20230906BHJP
H02K 49/02 20060101ALI20230906BHJP
F16D 63/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
H02K49/10 B
H02K49/02 B
F16D63/00 Z
(21)【出願番号】P 2022505078
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021004878
(87)【国際公開番号】W WO2021176977
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2020038331
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野口 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】野上 裕
(72)【発明者】
【氏名】今西 憲治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】奥田 洋三
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521749(JP,A)
【文献】特開2005-102490(JP,A)
【文献】特開2017-13099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0034430(US,A1)
【文献】特開2005-329943(JP,A)
【文献】特開2001-78425(JP,A)
【文献】特開2001-314073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 49/10
H02K 49/02
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦電流式減速装置であって、
回転軸に取り付けられるハブと、円筒状のロータ本体と、前記ハブから前記ロータ本体に向かって延び、前記ロータ本体の軸方向の一端部に固定されるスポークと、を含み、前記回転軸とともに回転するロータと、
前記ロータ本体の内側又は外側に配置されるステータと、
を備え、
前記スポークは、
前記スポークを前記ロータ本体の周方向に曲げたときの中立軸であって、前記周方向における前記スポークの中心線よりも前記ロータの回転方向で前方に位置する第1中立軸と、
前記スポークを前記軸方向に曲げたときの中立軸であって、前記軸方向における前記スポークの中心線よりも前記ロータ本体側に位置する第2中立軸と、
を有する、減速装置。
【請求項2】
請求項1に記載の減速装置であって、
前記スポークのうち前記ロータ本体側の表面は、前記軸方向に対して垂直な平面である、減速装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の減速装置であって、
前記スポークは、前記回転方向の後方に向かうにつれて前記軸方向の長さが減少する横断面を有する、減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、渦電流式減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバス等といった大型車両の補助ブレーキとして、従来、渦電流式減速装置が使用されている。例えば特許文献1に開示されているように、渦電流式減速装置は、車両の回転軸に固定されるロータと、車両の非回転部に固定されるステータとを備える。ロータは、回転軸に取り付けられたハブと、円筒状の導電体であるロータ本体とを含む。ロータ本体の軸方向の一端部は、複数のスポークを介し、ハブに接続されている。ステータは、ロータ本体の内側においてロータ本体の周方向に配列された複数の磁石を保持している。
【0003】
渦電流式減速装置のロータは、車両の回転軸とともに回転し、空気抵抗を受ける。特許文献2では、この空気抵抗を低減するため、ロータ本体をハブに接続するスポークの横断面形状に工夫が施されている。より詳細には、特許文献2において、スポークの横断面は、ロータ本体の軸方向における長さがロータ本体の周方向における長さよりも相当に小さい形状を有する。特許文献2によれば、このような横断面形状をスポークが有することでスポークの少なくとも一部が平坦化されるため、ロータの回転時における空気抵抗を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-78425号公報
【文献】特表2013-521749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
渦電流式減速装置がオンの状態(制動状態)では、磁石列によって生成された磁界内を導電体であるロータ本体が回転することにより、ロータ本体に渦電流が発生する。この渦電流と磁界との相互作用により、ロータ本体において回転方向と逆向きの制動力が発生する。このとき、ロータ本体に固定された各スポークには、ロータ本体の周方向の曲げ荷重が負荷される。すなわち、回転方向と逆向きの制動力がロータ本体に作用することにより、各スポークに対して回転方向と逆向きの曲げ荷重が負荷される。これにより、各スポークでは、回転方向において前側の部分が伸び、回転方向において後ろ側の部分が縮む曲げが発生する。
【0006】
一方、渦電流式減速装置がオフの状態(非制動状態)では、ロータ本体に磁界が作用せず、制動力は発生しない。そのため、各スポークには、ロータ本体の周方向の曲げ荷重は負荷されない。制動状態と非制動状態との切り替えが繰り返されることにより、各スポークには、周方向の曲げ荷重が繰り返し負荷されることになる。
【0007】
また、渦電流式減速装置が制動状態にある場合、渦電流が流れるロータ本体にジュール熱が発生し、ロータ本体の温度が上昇する。これにより、ロータ本体が熱膨張して拡径する。このとき、ロータ本体の軸方向の一端部では、スポークが固定されていることにより、その変形が制限される。一方、ロータ本体の軸方向の他端部は、スポークが固定されていないため、自由に変形することができる。よって、ロータ本体では、スポーク側の端部の径よりも、これと反対側の端部の径の方が大きくなる。その結果、各スポークには、ロータ本体の軸方向の曲げ荷重が負荷される。各スポークでは、ロータ本体側の部分が伸び、ロータ本体と反対側の部分が縮む曲げが発生する。
【0008】
渦電流式減速装置が制動状態から非制動状態に切り替えられると、ロータ本体の温度が低下し、ロータ本体が収縮して元の形状に復帰する。そのため、各スポークには、ロータ本体の軸方向の曲げ荷重は負荷されない。制動状態と非制動状態との切り替えが繰り返されることにより、各スポークには、軸方向の曲げ荷重が繰り返し負荷されることになる。
【0009】
このように、スポークには、ロータ本体の周方向及び軸方向の曲げ荷重が繰り返し負荷される。しかしながら、特許文献1及び2に例示されるような従来の渦電流式減速装置では、スポークに負荷される周方向及び軸方向の曲げ荷重について特に考慮されていない。渦電流式減速装置の耐久性の観点から、スポークに負荷される周方向及び軸方向の双方の曲げ荷重を考慮することにより、スポークの疲労損傷を抑制することが好ましい。
【0010】
本開示は、スポークの疲労損傷を抑制することにより、渦電流式減速装置の耐久性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る渦電流式減速装置は、ロータと、ステータと、を備える。ロータは、ハブと、ロータ本体と、スポークと、を含む。ハブは、回転軸に取り付けられる。ロータ本体は、円筒状を有する。スポークは、ハブからロータ本体に向かって延び、ロータ本体の軸方向の一端部に固定される。ロータは、回転軸とともに回転する。ステータは、ロータ本体の内側又は外側に配置される。スポークは、第1中立軸と、第2中立軸と、を有する。第1中立軸は、スポークをロータ本体の周方向に曲げたときの中立軸である。第1中立軸は、周方向におけるスポークの中心線よりもロータの回転方向で前方に位置する。第2中立軸は、スポークをロータ本体の軸方向に曲げたときの中立軸である。第2中立軸は、軸方向におけるスポークの中心線よりもロータ本体側に位置する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、スポークの疲労損傷を抑制することができ、それにより渦電流式減速装置の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る渦電流式減速装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る渦電流式減速装置の概略構成を示す別の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2に示す渦電流式減速装置に含まれるロータをスポーク側から見た図である。
【
図4A】
図4Aは、
図3に示すロータに使用されるスポークの横断面形状として採用され得る形状を例示する図である。
【
図4B】
図4Bは、
図3に示すロータに使用されるスポークの横断面形状として採用され得る形状を例示する図である。
【
図4C】
図4Cは、
図3に示すロータに使用されるスポークの横断面形状として採用され得る形状を例示する図である。
【
図4D】
図4Dは、
図3に示すロータに使用されるスポークの横断面形状として採用され得る形状を例示する図である。
【
図4E】
図4Eは、
図3に示すロータに使用されるスポークの横断面形状として採用され得る形状を例示する図である。
【
図4F】
図4Fは、
図3に示すロータに使用されるスポークの横断面形状として採用され得る形状を例示する図である。
【
図5】
図5は、
図1及び
図2に示す渦電流式減速装置の制動状態を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、
図1及び
図2に示す渦電流式減速装置の非制動状態を説明するための模式図である。
【
図7A】
図7Aは、従来のスポークの横断面形状を例示する図である。
【
図7B】
図7Bは、従来のスポークの横断面形状を例示する図である。
【
図7C】
図7Cは、従来のスポークの横断面形状を例示する図である。
【
図8】
図8は、渦電流式減速装置のロータにおいて、スポークに負荷される周方向の曲げ荷重を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、渦電流式減速装置のロータにおいて、スポークに負荷される軸方向の曲げ荷重を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述した通り、渦電流式減速装置が制動状態にある場合、ロータ本体とハブとを接続するスポークには、ロータ本体の周方向及び軸方向の曲げ荷重が負荷される。
図8及び
図9は、渦電流式減速装置のロータにおいて、スポークに負荷される曲げ荷重を説明するための模式図である。
【0015】
図8に示すように、渦電流式減速装置のロータ90において、ロータ本体91に回転方向Rと逆向きの制動力Fが発生すると、ロータ本体91をハブ92に接続するスポーク93には、ロータ本体91の周方向の曲げ荷重P1が負荷される。曲げ荷重P1により、スポーク93は、回転方向Rと逆向きに曲げられる。そのため、スポーク93では、ロータ本体91の回転方向Rにおいて前側の部分に引張応力σ
t1が発生し、後ろ側の部分に圧縮応力σ
c1が発生する。
【0016】
一方、
図9において二点鎖線で示すように、ロータ本体91が熱膨張し、ロータ本体91のうちスポーク93と反対側の端部が相対的に大きく拡径した場合、スポーク93には、ロータ本体91の軸方向の曲げ荷重P2が負荷される。曲げ荷重P2により、スポーク93は、軸方向においてロータ本体91と反対側に曲げられる。そのため、スポーク93では、ロータ本体91側の部分に引張応力σ
t2が発生し、ロータ本体91と反対側の部分に圧縮応力σ
c2が発生する。渦電流式減速装置が制動状態から非制動状態に切り替えられると、曲げ荷重P1,P2及び応力σ
t1,σ
t2,σ
c1,σ
c2が除去される。
【0017】
このように、スポークでは、ある部分において引張応力のみが繰り返し発生し、他の部分において圧縮応力のみが繰り返し発生する。すなわち、スポークには、いわゆる片振り条件の疲労負荷が与えられる。
【0018】
材料に片振り条件の疲労負荷が与えられる場合、疲労負荷が引張応力であるときの方が、応力の絶対値が同じであっても、疲労負荷が圧縮応力であるときと比較して材料の疲労寿命が短くなる。例えば、材料のうち引張応力のみが繰り返し発生する部分では、き裂が発生しやすく、発生したき裂が成長しやすい。これに対して、材料のうち圧縮応力のみが繰り返し発生する部分では、き裂が発生しにくく、その成長も生じにくい。そこで、本発明者等は、引張応力に注目し、圧縮応力が大きくなったとしても引張応力を低減することができるスポークの形状を検討した。
【0019】
スポークのような棒状の部材が曲げられたとき、部材内では、曲げによって伸ばされる領域に引張応力、曲げによって縮められる領域に圧縮応力が発生する。これらの領域の中間には、伸縮しない中立面が存在する。この中立面と、当該中立面に垂直な部材の断面との交線を中立軸という。部材が曲げられたときに発生する応力は、中立軸からの距離が大きいほど高くなる。したがって、ロータ本体に発生した制動力により、スポークがロータ本体の周方向に曲げられる場合、スポークでは、周方向の曲げの中立軸からロータの回転方向において前方に離れるほど引張応力が高くなり、後方に離れるほど圧縮応力が高くなる。引張応力の最大値を低減するためには、スポークにおいて、周方向の曲げの中立軸から回転方向で前側の表面までの距離を短縮すればよい。
【0020】
ロータ本体の熱膨張により、スポークがロータ本体の軸方向に曲げられる場合、スポークでは、軸方向の曲げの中立軸からロータ本体側に向かうほど引張応力が高くなり、ロータ本体と反対側に向かうほど圧縮応力が高くなる。引張応力の最大値を低減するためには、スポークにおいて、軸方向の曲げの中立軸からロータ本体側の表面までの距離を短縮すればよい。
【0021】
本発明者等は、以上の知見に基づき、実施形態に係る渦電流式減速装置を完成させた。
【0022】
実施形態に係る渦電流式減速装置は、ロータと、ステータと、を備える。ロータは、ハブと、ロータ本体と、スポークと、を含む。ハブは、回転軸に取り付けられる。ロータ本体は、円筒状を有する。スポークは、ハブからロータ本体に向かって延び、ロータ本体の軸方向の一端部に固定される。ロータは、回転軸とともに回転する。ステータは、ロータ本体の内側又は外側に配置される。スポークは、第1中立軸と、第2中立軸と、を有する。第1中立軸は、スポークをロータ本体の周方向に曲げたときの中立軸である。第1中立軸は、周方向におけるスポークの中心線よりもロータの回転方向で前方に位置する。第2中立軸は、スポークをロータ本体の軸方向に曲げたときの中立軸である。第2中立軸は、軸方向におけるスポークの中心線よりもロータ本体側に位置する(第1の構成)。
【0023】
第1の構成に係る渦電流式減速装置のロータにおいて、スポークは、ロータ本体の周方向に曲げられたときの中立軸である第1中立軸を有する。この第1中立軸は、ロータ本体の周方向におけるスポークの中心線よりも、ロータの回転方向で前方に配置されている。そのため、スポークにおいて、第1中立軸から回転方向で前側の表面までの距離は、第1中立軸と周方向の中心線とが一致している場合と比較して小さくなる。よって、ロータ本体に発生した制動力により、周方向の曲げ荷重がスポークに負荷されたとき、スポークに発生する引張応力の最大値を低減することができる。
【0024】
また、スポークは、ロータ本体の軸方向に曲げられたときの中立軸である第2中立軸を有する。この第2中立軸は、ロータ本体の軸方向におけるスポークの中心線よりも、ロータ本体側に配置されている。そのため、スポークにおいて、第2中立軸からロータ本体側の表面までの軸方向の距離は、第2中立軸と軸方向の中心線とが一致している場合と比較して小さくなる。よって、ロータ本体の熱膨張により、軸方向の曲げ荷重がスポークに負荷されたとき、スポークに発生する引張応力の最大値を低減することができる。
【0025】
このように、第1の構成によれば、渦電流式減速装置の使用時において、スポークがロータ本体の周方向に曲げられたときにスポークに発生する引張応力と、スポークがロータ本体の軸方向に曲げられたときにスポークに発生する引張応力との双方を同時に低減することができる。そのため、スポークの疲労損傷を抑制することができ、スポークの疲労寿命を延長することができる。その結果、渦電流式減速装置の耐久性を向上させることができる。
【0026】
渦電流式減速装置には、車両への搭載性の向上や車両の燃費の向上等の観点から、小型軽量化が求められる。渦電流式減速装置を小型軽量化するためには、スポークも小型化する必要がある。第1の構成によれば、スポークが疲労損傷しにくくなるため、スポークを小型化することが可能となる。よって、渦電流式減速装置を小型軽量化することができる。
【0027】
渦電流式減速装置には、例えば積載量が大きい車両の制動性能不足を解消するため、高制動力化が求められる。高制動力化された渦電流式減速装置では、その高い制動力、及びこれに伴う大きな発熱量により、スポークに負荷される曲げ荷重が増大し、スポークが疲労損傷しやすくなる。しかしながら、第1の構成によれば、ロータ本体の周方向及び軸方向の曲げ荷重が負荷されたときにスポークに発生する引張応力が低減されるため、スポークの疲労損傷を抑制することができる。そのため、第1の構成に係る渦電流式減速装置は、高制動力化に対応することができる。
【0028】
実施形態に係る渦電流式減速装置において、スポークのうちロータ本体側の表面は、ロータ本体の軸方向に対して垂直な平面であることが好ましい(第2の構成)。
【0029】
第2の構成によれば、スポークのロータ本体側の表面は、ロータ本体の軸方向に対して実質的に垂直な平面である。すなわち、スポークのロータ本体側の表面は、実質上、突出又は隆起する部分が存在しない平らな面で構成されている。そのため、ロータ本体の内側又は外側に配置されたステータに、スポークを近接させることができる。その結果、軸方向における渦電流式減速装置の寸法を小さくすることができる。
【0030】
スポークは、ロータの回転方向の後方に向かうにつれてロータ本体の軸方向の長さが減少する横断面を有することが好ましい(第3の構成)。
【0031】
第3の構成によれば、スポークの横断面は、ロータの回転方向の後方に向かうにつれて軸方向の長さが減少するように形成されている。これにより、ロータの回転時、スポークの表面に沿って回転方向の後方に流れる気流が剥離しにくくなるため、スポークが受ける空気抵抗を低減することができる。
【0032】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0033】
[渦電流式減速装置の構成]
図1は、本実施形態に係る渦電流式減速装置100の概略構成を示す縦断面図である。減速装置100は、例えば、トラックやバス等といった車両の補助ブレーキとして使用される。縦断面とは、減速装置100が用いられる車両の回転軸200の軸心Xを含む平面で切断したときの断面をいう。回転軸200は、例えば、プロペラシャフトや、ドライブシャフトである。以下、軸心Xが延びる方向を軸方向といい、軸心Xを中心とする円環又は円筒の周方向及び径方向を単に周方向及び径方向という。
【0034】
図1を参照して、減速装置100は、ロータ10と、ステータ20とを備える。ロータ10は、車両の回転軸200とともに軸心X周りに回転する。ステータ20は、回転軸200とともに回転しないよう、例えばトランスミッションカバー等といった車両の非回転部に固定されている。
【0035】
ロータ10は、ロータ本体11と、ハブ12と、複数のスポーク13とを含む。ロータ本体11は、実質的に、回転軸200の軸心Xを中心とする円筒状をなす。ロータ本体11は、例えば、炭素鋼、低合金鋼、又は鋳鋼等の強磁性材料で構成されている。より具体的には、ロータ本体11は、例えば、クロムモリブデン鋼、又は低合金鋼鋳鋼等で構成される。また、例えば、重量割合で、C:0.05~0.15%、Si:0.10~0.40%、Mn:0.5~1.0%、P:0.05%以下、Ni:0.50%以下、Mo:0.2~1.0%、Nb:0.01~0.03%、V:0.03~0.07%、B:0.0005~0.003%、Sol.Al:0.02~0.09%、N:0.01%以下を含有し、残部は実質的にFeからなる鋼により、ロータ本体11が構成されていてもよい。ロータ本体11を構成する材料は、高い耐熱性を有するものであることが好ましい。ロータ本体11の内周面は、導電率が高い銅めっき層で被覆されてもよい。ロータ本体11の外周面には、複数の放熱フィン14が設けられている。
【0036】
ハブ12は、径方向においてロータ本体11よりも内側に配置されている。ハブ12は、ロータ本体11から軸方向の一方側に位置をずらして配置されている。ハブ12は、回転軸200の軸心Xを中心とする概略円環板状をなす。ハブ12は、支持部材30を介し、回転軸200に取り付けられる。ハブ12は、例えば鋼製であり、典型的には鋳鉄で構成されている。
【0037】
複数のスポーク13は、ハブ12の周りにおいて放射状に配置されている。各スポーク13は、ハブ12からロータ本体11に向かって径方向に延びている。各スポーク13は、回転軸200に取り付けられたハブ12に対し、ロータ本体11を接続する。そのため、ロータ本体11は、回転軸200、ハブ12、及びスポーク13とともに軸心X周りに回転する。特に限定されるものではないが、ロータ本体11とハブ12との間には、例えば8~10本程度のスポーク13が設けられる。
【0038】
各スポーク13の径方向外側の端部131は、ロータ本体11の軸方向の一端部に固定されている。各スポーク13の径方向内側の端部132は、ハブ12の外周面に設けられた凹部121に挿入されている。端部132は、ハブ12に固定されていない。
図1に示す例において、スポーク13のロータ本体11側の表面133は、軸方向に対して実質的に垂直な平面となっている。
【0039】
スポーク13は、例えば、炭素鋼や鋳鋼等の強磁性材料で構成されている。より具体的には、スポーク13は、例えば、クロムモリブデン鋼、又は低合金鋼鋳鋼等で構成される。スポーク13を構成する材料は、高い強度を有するものであることが好ましい。スポーク13の材料は、ロータ本体11の材料と異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0040】
ステータ20は、径方向においてロータ本体11の内側に配置されている。ステータ20は、ステータケース21と、磁石保持部材22と、複数の永久磁石23と、複数のポールピース24とを含んでいる。
【0041】
ステータケース21は、ケース本体211と、本体保持部材212とを含む。ケース本体211は、軸心Xを中心とする概略円環板状に形成されている。ケース本体211は、スポーク13の表面133と対向する。ケース本体211のスポーク13側の表面は、スポーク13の表面133と実質的に平行な平面であることが好ましい。ケース本体211は、本体保持部材212に固定されている。
【0042】
本体保持部材212は、ケース本体211に対向する側部212aと、側部212aからケース本体211に向かって突出する底部212bとを含む。底部212bは、支持部212cを介し、車両の非回転部に取り付けられる。ケース本体211と、本体保持部材212の側部212a及び底部212bとにより、ステータ20の内部に収容空間が形成される。この収容空間内に、磁石保持部材22、複数の永久磁石23、及び複数のポールピース24が配置されている。
【0043】
磁石保持部材22は、軸心Xを中心とする円筒状をなす。磁石保持部材22は、実質的にロータ本体11と同軸に配置されている。磁石保持部材22は、例えば、炭素鋼や鋳鋼等の強磁性材料で構成されている。
【0044】
磁石保持部材22は、例えばリング状のスライドプレート(図示略)を介し、ステータケース21に対して周方向に摺動可能に取り付けられる。磁石保持部材22は、リンク機構(図示略)により、エアシリンダや電動アクチュエータ等の駆動装置(図示略)に接続されている。この駆動装置が作動することにより、磁石保持部材22が回転軸200周りに回転し、ステータケース21に対して周方向に移動する。磁石保持部材22を回転軸200周りに回転させることにより、減速装置100において制動状態と非制動状態とが切り替えられる。
【0045】
図2は、減速装置100を回転軸200の軸心Xに垂直な平面で切断したときの部分断面図である。
図2では、ステータケース21が省略されている。
【0046】
図2に示すように、磁石保持部材22は、その外周面上に複数の永久磁石23を保持している。これらの永久磁石23は、所定の間隔を空けて周方向に配列されている。永久磁石23の各々は、例えば接着剤により、磁石保持部材22の外周面に固定されている。永久磁石23は、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石、又はサマリウムコバルト磁石等である。
【0047】
永久磁石23の各々は、一対の磁極(N極,S極)を有する。各永久磁石23の磁極の向きは、径方向に沿うとともに、両隣の永久磁石23の磁極の向きと反転している。すなわち、各永久磁石23は、径方向の内側にN極又はS極を有し、径方向の外側にこれと反対のS極又はN極を有する。
【0048】
ポールピース24は、例えば、炭素鋼や鋳鋼等の強磁性材料で構成されている。ポールピース24は、ロータ本体11と永久磁石23との間において、所定の間隔を空けて周方向に配列されている。本実施形態の例において、ポールピース24の数は、永久磁石23の数と等しい。
【0049】
[ロータの詳細構成]
以下、
図3及び
図4A~
図4Fを参照し、ロータ10の構成をより詳細に説明する。
【0050】
図3は、スポーク13側から見たロータ10の一部を示す図である。
図3を参照して、スポーク13は、ロータ本体11とハブ12との間で径方向に延びている。スポーク13の径方向の両端部131,132のうち、外側の端部131は、例えば溶接により、円筒状のロータ本体11の端面に固定されている。内側の端部132は、スポーク13がハブ12に対して径方向に移動可能なよう、ハブ12の凹部121内に差し込まれている。
【0051】
スポーク13は、径方向の全長又はほぼ全長にわたり、均一な形状の横断面を有する。スポーク13のうち、少なくとも、ハブ12から露出し且つロータ本体11に固定されていない部分134では、横断面形状が一律である。スポーク13の横断面とは、径方向に延びるスポーク13を、当該径方向と直交する平面で切断したときの断面をいう。すなわち、
図3におけるIV-IV断面がスポーク13の横断面である。
【0052】
図4A~
図4Fは、ロータ10に使用されるスポーク13の横断面形状として採用され得る形状を例示する図である。
図4A~
図4Fにそれぞれ示すスポーク13A~13Fは、互いに異なる横断面形状を有する。スポーク13には、例えば、スポーク13A~13Fのいずれかが適用される。
【0053】
図4A~
図4Fを参照して、符号C1が付された一点鎖線は、周方向におけるスポーク13A~13Fの各中心線(周方向幅の中央)であり、符号C2が付された一点鎖線は、軸方向におけるスポーク13A~13Fの各中心線(軸方向幅の中央)である。符号N1が付された二点鎖線は、スポーク13A~13Fをそれぞれ周方向に曲げたときの中立軸である。スポーク13A~13Fの各々において、周方向の曲げを受けたときに引張応力及び圧縮応力のいずれも生じない中立面と、横断面との交線が中立軸N1となる。符号N2が付された二点鎖線は、スポーク13A~13Fをそれぞれ軸方向に曲げたときの中立軸である。スポーク13A~13Fの各々において、軸方向の曲げを受けたときに引張応力及び圧縮応力のいずれも生じない中立面と、横断面との交線が中立軸N2となる。
【0054】
スポーク13A~13Fの全てにおいて、周方向に曲げられたときの中立軸N1は、周方向の中心線C1よりも回転方向Rで前方に位置する。すなわち、スポーク13A~13Fの各々において、中立軸N1から回転方向Rの前端までの距離Dfは、中立軸N1から回転方向Rの後端までの距離Drよりも小さい。スポーク13A~13Fの重心は、回転方向Rにおいて中心線C1よりも前方に位置している。スポーク13A~13Fの各横断面は、中心線C1に対して非対称の形状となっている。
【0055】
また、スポーク13A~13Fの全てにおいて、軸方向に曲げられたときの中立軸N2は、軸方向の中心線C2よりもロータ本体11側に位置する。すなわち、スポーク13A~13Fの各々において、中立軸N2からロータ本体11側の端までの距離Dpは、中立軸N2からロータ本体11と反対側の端までの距離Ddよりも小さい。スポーク13A~13Fの重心は、軸方向において中心線C2よりもロータ本体11に近い位置に配置されている。スポーク13A~13Fの各横断面は、中心線C2に対して非対称の形状となっている。スポーク13A~13Fの各横断面形状は、いかなる直線を軸にとっても非対称である。
【0056】
スポーク13A,13B,13D~13Fは、それぞれ、回転方向Rの後方に向かうにつれて軸方向の長さが実質的に減少する横断面を有している。また、スポーク13A,13B,13D~13Fの各横断面では、ロータ本体11から軸方向に遠ざかるにつれて周方向の長さが実質的に減少している。すなわち、スポーク13A,13B,13D~13Fは、全体又は略全体として、回転方向Rにおいて後方に向かうほど先細りとなるとともに、軸方向においてロータ本体11の逆側に向かうほど先細りとなる形状を有している。
【0057】
スポーク13A~13Cの横断面は、複数の直線によって画定されており、直線同士の間に角を有する。一方、スポーク13D,13Eの横断面では、直線同士が曲線によって接続されている。スポーク13Fでは、横断面の輪郭が曲線のみで構成されている。すなわち、スポーク13D~13Fは、角がない横断面形状を有している。
【0058】
スポーク13A~13Eでは、横断面視で、ロータ本体11側の表面133が全体的に直線状となっている。すなわち、スポーク13A~13Eのロータ本体11側の表面133は、軸方向に対して実質垂直な平面である。これに対して、スポーク13Fのロータ本体11側の表面133は、横断面視で曲線状となっている。
【0059】
[渦電流式減速装置の動作]
以下、主に
図5及び
図6を参照して、減速装置100の動作について説明する。
図5及び
図6は、それぞれ、減速装置100の制動状態及び非制動状態を説明するための模式図である。
【0060】
(制動状態)
まず、
図5を参照して、減速装置100が制動状態にある場合、各永久磁石23は、ポールピース24の直下に配置される。そのため、各永久磁石23からの磁束は、ポールピース24を通過し、回転軸200とともに回転するロータ本体11に到達する。これにより、ロータ本体11の内周面に渦電流が発生する。この渦電流と永久磁石23が生成する磁界との相互作用により、ロータ本体11には、回転方向Rと逆向きの制動力が発生する。また、渦電流の発生に伴い、ロータ本体11でジュール熱が発生し、ロータ本体11の温度が上昇する。これにより、ロータ本体11の熱膨張が生じる。
【0061】
ロータ本体11に回転方向Rと逆向きの制動力が発生すると、ロータ本体11に固定されたスポーク13では、径方向外側の端部131に対し、回転方向Rと逆向きの曲げ荷重(周方向の曲げ荷重)が負荷される。
【0062】
ロータ本体11が熱膨張するときには、ロータ本体11の軸方向の両端部のうち、スポーク13側の端部と比較して、スポーク13によって拘束されていない側の端部が径方向外側に大きく変形する。すなわち、ロータ本体11では、スポーク13と反対側(
図5において紙面奥側)の端部が径方向外側に反る変形が発生する。これにより、スポーク13には、径方向外側の端部131に対し、ロータ本体11と反対側に押す曲げ荷重(軸方向の曲げ荷重)が負荷される。
【0063】
スポーク13では、周方向の曲げ荷重が負荷されることにより、回転方向Rにおいて前側に凸となる曲げ変形が発生する。これにより、スポーク13では、中立軸N1(
図4A~
図4F)を境界として、回転方向Rにおいて前側の部分に引張応力が発生し、後ろ側の部分に圧縮応力が発生する。また、スポーク13では、軸方向の曲げが負荷されることにより、軸方向においてロータ本体11側に凸となる曲げ変形が発生する。これにより、スポーク13では、中立軸N2(
図4A~
図4F)を境界として、ロータ本体11側の部分に引張応力が発生し、ロータ本体11と反対側の部分に圧縮応力が発生する。
【0064】
(非制動状態)
図6を参照して、減速装置100が制動状態から非制動状態へと切り替わる際には、磁石保持部材22が回転し、各永久磁石23が隣り合うポールピース24を跨ぐように配置される。非制動状態では、磁石保持部材22、永久磁石23、及びポールピース24の間で磁気回路が形成され、永久磁石23からの磁束がロータ本体11に到達しない。そのため、ロータ本体11に対する制動力は解除される。また、熱膨張していたロータ本体11は、次第に冷却され、元の円筒状に回復する。したがって、スポーク13に対する周方向及び軸方向の曲げ荷重、並びにスポーク13における引張応力及び圧縮応力が除去される。
【0065】
[効果]
本実施形態に係る渦電流式減速装置100において、ロータ本体11をハブ12に接続する各スポーク13は、周方向に曲げられたときの中立軸N1を有する。ロータ本体11に制動力が発生し、周方向の曲げ荷重がスポーク13に負荷されたときには、中立軸N1を境界として、回転方向Rにおいて前側の部分に引張応力が生じ、後ろ側の部分に圧縮応力が生じる。これらの応力の絶対値は、中立軸N1からの距離が大きくなるほど高くなる。
【0066】
本実施形態では、スポーク13の周方向の中心線C1よりも回転方向Rで前方に、中立軸N1が配置されている。そのため、スポーク13において、中立軸N1から回転方向Rの前端までの距離Dfは、中立軸N1から回転方向Rの後端までの距離Drよりも小さくなっている。これにより、スポーク13が周方向の曲げ荷重を受ける際、引張応力の最大値を低減することができる。
【0067】
本実施形態において、各スポーク13は、さらに、軸方向に曲げられたときの中立軸N2を有する。ロータ本体11の熱膨張に起因して軸方向の曲げ荷重がスポーク13に負荷されたときには、中立軸N2を境界として、ロータ本体11側の部分に引張応力が生じ、ロータ本体11と反対側の部分に圧縮応力が生じる。これらの応力の絶対値は、中立軸N2からの距離が大きくなるほど高くなる。
【0068】
本実施形態では、スポーク13の中心線C2よりもロータ本体11側に、中立軸N2が配置されている。そのため、軸方向において、中立軸N2からロータ本体11側の端までの距離Dpは、中立軸N2からロータ本体11と反対側の端までの距離Ddよりも小さくなっている。これにより、スポーク13が軸方向の曲げ荷重を受ける際、引張応力の最大値を低減することができる。
【0069】
本実施形態では、スポーク13が周方向及び軸方向の曲げ荷重を受けた際、スポーク13において発生する引張応力の最大値が小さくなる一方、圧縮応力の最大値は大きくなる。しかしながら、繰り返しの圧縮応力は、繰り返しの引張応力と比較して、スポーク13の疲労損傷を生じさせにくい。そのため、スポーク13において発生する引張応力の最大値を小さくすれば、それと引き替えに圧縮応力の最大値が大きくなったとしても、スポーク13の疲労損傷を抑制することが可能となる。
【0070】
参考のため、
図7A~
図7Cにおいて、従来のスポークの横断面形状を例示する。
図7A及び
図7Bにそれぞれ示すスポーク93A,93Bでは、周方向における曲げの中立軸N1が中心線C1と一致している。そのため、スポーク93A,93Bにおいて、中立軸N1から回転方向Rの前端までの距離Dfは、中立軸N1から回転方向Rの後端までの距離Drと等しい。この場合、スポーク93A,93Bが周方向に曲げられたときに発生する引張応力の最大値は、圧縮応力の最大値と等しくなる。すなわち、スポーク93A,93Bの横断面形状は、周方向の曲げ荷重によって発生する引張応力を低減するものではない。
【0071】
図7Cに示すスポーク93Cでは、軸方向における曲げの中立軸N2が中心線C2と一致している。そのため、スポーク93Cにおいて、中立軸N2からロータ本体側の端までの軸方向の距離Dpは、中立軸N2からロータ本体と反対側の端までの軸方向の距離Ddと等しい。この場合、スポーク93Cが軸方向に曲げられたときに発生する引張応力の最大値は、圧縮応力の最大値と等しくなる。すなわち、スポーク93Cの横断面形状は、軸方向の曲げ荷重によって発生する引張応力を低減するものではない。
【0072】
このような従来のスポークに対して、本実施形態におけるスポーク13は、周方向の曲げ荷重及び軸方向の曲げ荷重の双方を考慮し、周方向の曲げによる引張応力及び軸方向の曲げによる引張応力を同時に低減することができる横断面形状を採っている。そのため、スポーク13の疲労損傷を効果的に抑制することができ、スポーク13の疲労寿命を延長することができる。その結果、スポーク13を含む渦電流式減速装置100の耐久性を向上させることができる。
【0073】
本実施形態によれば、スポーク13の横断面の面積及びスポーク13の重量を増加させることなく、スポーク13の横断面形状を工夫するだけで、スポーク13の疲労損傷を抑制することができる。スポーク13が疲労損傷し難くなることにより、各スポーク13を小型化し、あるいは、渦電流式減速装置100に設けられるスポーク13の数を減少させることが可能となる。これにより、渦電流式減速装置100を小型軽量化することができ、渦電流式減速装置100の車両への搭載性を向上させることができる。また、渦電流式減速装置100が搭載される車両の燃費を向上させることができる。
【0074】
本実施形態において、スポーク13は、ロータ本体11に発生する制動力及びロータ本体11の熱膨張に起因して周方向及び軸方向の曲げ荷重が繰り返し負荷されても、疲労損傷しにくい横断面形状を有している。よって、このスポーク13を用いた渦電流式減速装置100を高制動力化することができる。
【0075】
本実施形態において、
図4A~
図4Eに例示されるスポーク13A~13Eのロータ本体11側の表面133は、軸方向に対して実質的に垂直な平面となっている。これにより、ロータ本体11の内側に配置されたステータ20にスポーク13を近接させることができ、渦電流式減速装置100の軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0076】
本実施形態において、
図4A、
図4B、及び
図4D~
図4Fに例示されるスポーク13A,13B,13D~13Fは、それぞれ、回転方向Rの後方に向かうにつれて軸方向の長さが減少する横断面を有している。この場合、ロータ10の回転中、スポーク13A,13B,13D~13Fの表面を回転方向Rの後方に流れる気流が当該表面から剥離しにくくなる。そのため、ロータ10の空気抵抗を低減することができる。
【0077】
特に、スポーク13D~13Fは、角がない横断面形状を有している。これにより、ロータ10の空気抵抗をより低減することができる。
【0078】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0079】
上記実施形態において、スポーク13A~13Eのロータ本体11側の表面133は、実質的に平らな面である。しかしながら、スポーク13の表面133の形状は、これに限定されるものではない。スポーク13の表面133は、例えば、ロータ本体11側に凸の曲面であってもよいし、これと逆向きの凹曲面であってもよい。
【0080】
上記実施形態では、ステータ20は、径方向においてロータ本体11の内側に配置されている。しかしながら、ステータ20は、径方向においてロータ本体11の外側に配置されていてもよい。
【0081】
上記実施形態では、永久磁石式の渦電流式減速装置100に、スポーク13を含むロータ10が使用されている。しかしながら、電磁石式の渦電流式減速装置にロータ10を使用することもできる。すなわち、減速装置100において、磁石保持部材22、永久磁石23、及びポールピース24等に代えて電磁石を設けることもできる。上記実施形態におけるスポーク13の横断面形状を採用するに際し、ステータ20の構造は、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
100:渦電流式減速装置
10:ロータ
11:ロータ本体
12:ハブ
13,13A~13F:スポーク
20:ステータ
200:回転軸
N1,N2:中立軸
C1,C2:中心線