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特許7343830制御装置、および、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】制御装置、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20230906BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230906BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 107
B41J2/01 451
B41J2/175 119
B41J2/175 175
B41J2/175 301
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019115897
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021000772
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-159578(JP,A)
【文献】特開2004-230833(JP,A)
【文献】特開2006-110795(JP,A)
【文献】特開2004-050705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、
印刷画像に対応する画像データであって複数個の画素の値として複数個の第1種の色値を含む前記画像データを取得する画像取得部と、
前記第1色のインクの種類を判定する種類判定部であって、前記第1色のインクとして想定されている第1種のインクと前記第1種のインクとは異なる第2種のインクとのいずれであるかを判定する、前記種類判定部と、
前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、印刷データを用いて前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、
前記第1種の色値と、前記第1色と前記第2色とを含む複数色のインクに対応する複数個の成分値を含む第2種の色値と、の対応関係を規定する複数個のプロファイルを格納する格納部であって、前記複数個のプロファイルは、前記第1方向の前記部分印刷のための第1プロファイルと、前記第2方向の前記部分印刷のための第2プロファイルと、を含む、前記格納部と、
前記画像データに対して生成処理を実行して前記印刷データを生成する印刷データ生成部であって、前記印刷データは、前記印刷画像のうちの第1部分画像を示す第1部分印刷データと、前記印刷画像のうちの前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を示す第2部分印刷データとを含み、前記生成処理は、前記第1種の色値を前記第2種の色値に変換する変換処理を含む、前記印刷データ生成部と、
を備え、
前記印刷制御部は、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第1種のインクであると判定される場合には、前記第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第2部分画像を前記第2方向の前記部分印刷にて印刷させる第1印刷制御を実行し、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第2種のインクであると判定される場合には、前記第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第2部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させる第2印刷制御を実行し、
前記印刷データ生成部は、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第1種のインクであると判定される場合には、前記画像データのうち、前記第1部分画像に対応するデータに対して、前記第1プロファイルを用いる前記変換処理を実行し、前記第2部分画像に対応するデータに対して、前記第2プロファイルを用いる前記変換処理を実行し、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第2種のインクであると判定される場合には、前記第1部分画像に対応するデータと前記第2部分画像に対応するデータとに対して、前記第1プロファイルを用いる前記変換処理を実行する、制御装置。
【請求項2】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、
印刷画像に対応する画像データを取得する画像取得部と、
前記第1色のインクの種類を判定する種類判定部であって、前記第1色のインクとして想定されている第1種のインクと前記第1種のインクとは異なる第2種のインクとのいずれであるかを判定する、前記種類判定部と、
前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第1種のインクであると判定される場合に、前記画像データを用いて、前記印刷画像を印刷する複数回の前記部分印刷の前記印刷方向をそれぞれ決定する印刷方向決定部と、
を備え、
前記印刷制御部は、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第1種のインクであると判定される場合には、前記印刷画像のうち、第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を前記第2方向の前記部分印刷にて印刷させる第1印刷制御を実行し、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第2種のインクであると判定される場合には、前記印刷画像のうち、前記第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第2部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させる第2印刷制御を実行し、
前記印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記複数回の部分印刷に対応する複数個の部分画像のそれぞれについて、前記第1方向で印刷される画像と前記第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であることを示す特定条件が満たされるか否かを判断し、
前記複数回の部分印刷のうちの注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記特定条件を満たす場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向と同じ方向、または、予め定められた1つの方向に決定し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記特定条件を満たさない場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記第1印刷制御は、前記印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の前記部分印刷を実行させる制御である、制御装置。
【請求項3】
請求項に記載の制御装置であって、さらに、
前記第2印刷制御は、前記第1方向と前記第2方向のうち、予め定められた1つの方向を前記印刷方向として前記複数回の前記部分印刷を実行させる制御である、制御装置。
【請求項4】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、前記第1色のインクを収容するカートリッジであってメモリを備える前記カートリッジが装着可能な装着部と、を備え、前記装着部を介して前記カートリッジから供給される前記第1色のインクを用いて印刷を実行する印刷実行部の制御装置であって、
印刷画像に対応する画像データを取得する画像取得部と、
前記メモリに記録されている情報を用いて前記第1色のインクの種類を判定する種類判定部であって、前記第1色のインクとして想定されている第1種のインクと前記第1種のインクとは異なる第2種のインクとのいずれであるかを判定する、前記種類判定部と、
前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、
を備え、
前記印刷制御部は、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第1種のインクであると判定される場合には、前記印刷画像のうち、第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を前記第2方向の前記部分印刷にて印刷させる第1印刷制御を実行し、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第2種のインクであると判定される場合には、前記印刷画像のうち、前記第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第2部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させる第2印刷制御を実行し、
前記印刷実行部は、前記カートリッジに収容される前記第1色のインクの残量が基準未満になったと判定される場合に、前記メモリにインクの残量が基準未満になったことを示すエンプティ情報を記録する記録処理部を備え、
前記種類判定部は、前記メモリにインクの残量が基準未満になったことを示す前記エンプティ情報が記録されている場合に、前記第1色のインクの種類は前記第2種のインクである、と判定する、制御装置。
【請求項5】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、前記第1色のインクを収容するカートリッジであってメモリを備える前記カートリッジが装着可能な装着部と、を備え、前記装着部を介して前記カートリッジから供給される前記第1色のインクを用いて印刷を実行する印刷実行部の制御装置であって、
印刷画像に対応する画像データを取得する画像取得部と、
前記メモリに記録されている情報を用いて前記第1色のインクの種類を判定する種類判定部であって、前記第1色のインクとして想定されている第1種のインクと前記第1種のインクとは異なる第2種のインクとのいずれであるかを判定する、前記種類判定部と、
前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、
を備え、
前記印刷制御部は、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第1種のインクであると判定される場合には、前記印刷画像のうち、第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を前記第2方向の前記部分印刷にて印刷させる第1印刷制御を実行し、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第2種のインクであると判定される場合には、前記印刷画像のうち、前記第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第2部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させる第2印刷制御を実行し、
前記印刷実行部は、印刷に使用された前記第1色のインクの量であるインク使用量に関する情報を記録する記録処理部を備え、
前記種類判定部は、前記メモリに記録されている前記インク使用量に関する情報に基づいて前記インク使用量が基準量より多いと判断される場合に、前記第1色のインクの種類は前記第2種のインクである、と判定する、制御装置。
【請求項6】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、
印刷画像に対応する画像データを取得する画像取得部と、
前記第1色のインクの種類を判定する種類判定部であって、前記第1色のインクとして想定されている第1種のインクと前記第1種のインクとは異なる第2種のインクとのいずれであるかを判定する、前記種類判定部と、
前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、
を備え、
前記印刷制御部は、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第1種のインクであると判定される場合には、前記印刷画像のうち、第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を前記第2方向の前記部分印刷にて印刷させる第1印刷制御を実行し、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第2種のインクであると判定される場合には、前記印刷画像のうち、前記第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第2部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させる第2印刷制御を実行し、
前記印刷制御部は、
前記種類判定部による判定結果に基づいて、前記第1色のインクが前記第2種のインクから前記第1種のインクに変更されたか否かを判断し、
前記第1色のインクが前記第2種のインクから前記第1種のインクに変更されたと判断した場合に、前記第2印刷制御によって所定量の印刷を実行した後に、前記第1印刷制御によって印刷を実行する、制御装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の制御装置であって、
前記種類判定部は、前記第1色と前記第2色とを含む複数色のインクのそれぞれの種類を判定し、
前記印刷制御部は、
前記複数色のインクの全てが前記第1種のインクであると判定される場合には、前記第1印刷制御を実行し、
前記複数色のインクのうちの少なくとも1色のインクが前記第2種のインクであると判定される場合には、前記第2印刷制御を実行する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、主走査を行いつつドットを形成する部分印刷と副走査とを複数回実行することで印刷を行う印刷実行部の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数色のインクを用いて、往路方向の走査での記録と復路方向の走査での記録との両方でバンドの印刷を行うインクジェット記録装置が開示されている。このような記録装置では、往路方向の走査と復路方向の走査とでインクの着弾順序が異なることに起因して、印刷画像に色ムラが発生する場合がある。
【0003】
この記録装置は、PDL言語データから印刷用のドットデータをバンドごとに生成する。その際に、記録装置は、バンドを印刷するための走査方向が往路方向である場合には、往路用のプロファイルを用いて色変換処理を実行し、走査方向が復路方向である場合には、復路用のプロファイルを用いて色変換処理を実行する。この記録装置によれば、往路用のプロファイルと復路用のプロファイルとを用いるので、往路と復路でのインクの着弾順序の違いにより発生する色ムラを解消できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-110795号公報
【文献】特開2017-39205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記記録装置では、印刷に用いられるインクの種類については何ら考慮されていない。このために、印刷に用いられるインクの種類によっては、色ムラを解消できない可能性があった。
【0006】
本明細書は、双方向印刷が可能な印刷実行部において、インクの種類に応じた適切な印刷を実行できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、印刷画像に対応する画像データを取得する画像取得部と、前記第1色のインクの種類を判定する種類判定部と、前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、を備え、前記印刷制御部は、前記種類判定部によって前記第1色のインクが第1種のインクであると判定される場合には、前記印刷画像のうち、第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を前記第2方向の前記部分印刷にて印刷させる第1印刷制御を実行し、前記種類判定部によって前記第1色のインクが第2種のインクであると判定される場合には、前記印刷画像のうち、前記第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第2部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させる第2印刷制御を実行する、制御装置。
【0009】
上記構成によれば、インクが第1種のインクである場合には、第1部分画像は第1方向の部分印刷にて印刷され、第2部分画像は第2方向の部分印刷によって印刷される。この結果、インクが第1種のインクである場合には、印刷画像の印刷速度の低下を抑制することができる。また、インクが第2種のインクである場合には、第1部分画像は、第1方向の部分印刷にて印刷され、第2部分画像は第1方向の部分印刷にて印刷される。この結果、インクが第2種のインクである場合には、印刷画像を印刷する際に、第1部分画像と第2部分画像との間で色ムラが発生することを抑制することができる。したがって、第1方向と第2方向との部分印刷を用いた印刷(双方向印刷)が可能な印刷実行部において、インクの種類に応じた適切な印刷を実行できる。
[適用例2]
適用例1に記載の制御装置であって、
前記画像データは、複数個の画素の値として複数個の第1種の色値を含み、
前記制御装置は、さらに、
前記第1種の色値と、前記第1色と前記第2色とを含む複数色のインクに対応する複数個の成分値を含む第2種の色値と、の対応関係を規定する複数個のプロファイルを格納する格納部であって、前記複数個のプロファイルは、前記第1方向の前記部分印刷のための第1プロファイルと、前記第2方向の前記部分印刷のための第2プロファイルと、を含む、前記格納部と、
前記画像データに対して生成処理を実行して印刷データを生成する印刷データ生成部であって、前記印刷データは、前記第1部分画像を示す第1部分印刷データと前記第2部分画像を示す第2部分印刷データとを含み、前記生成処理は、前記第1種の色値を前記第2種の色値に変換する変換処理を含む、前記印刷データ生成部と、
を備え、
前記印刷制御部は、前記印刷データを用いて前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させ、
前記印刷データ生成部は、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第1種のインクであると判定される場合には、前記画像データのうち、前記第1部分画像に対応するデータに対して、前記第1プロファイルを用いる前記変換処理を実行し、前記第2部分画像に対応するデータに対して、前記第2プロファイルを用いる前記変換処理を実行し、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第2種のインクであると判定される場合には、前記第1部分画像に対応するデータと前記第2部分画像に対応するデータとに対して、前記第1プロファイルを用いる前記変換処理を実行する、制御装置。
[適用例3]
適用例1または2に記載の制御装置であって、さらに、
前記種類判定部によって前記第1色のインクが前記第1種のインクであると判定される場合に、前記画像データを用いて、前記印刷画像を印刷する複数回の前記部分印刷の前記印刷方向をそれぞれ決定する印刷方向決定部と、
を備え、
前記印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記複数回の部分印刷に対応する複数個の部分画像のそれぞれについて、前記第1方向で印刷される画像と前記第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であることを示す特定条件が満たされるか否かを判断し、
前記複数回の部分印刷のうちの注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記特定条件を満たす場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向と同じ方向、または、予め定められた1つの方向に決定し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記特定条件を満たさない場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記第1印刷制御は、前記印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の前記部分印刷を実行させる制御である、制御装置。
[適用例4]
適用例3に記載の制御装置であって、さらに、
前記第2印刷制御は、前記第1方向と前記第2方向のうち、予め定められた1つの方向を前記印刷方向として前記複数回の前記部分印刷を実行させる制御である、制御装置。
[適用例5]
適用例1~4のいずれかに記載の制御装置であって、
前記種類判定部は、前記第1色と前記第2色とを含む複数色のインクのそれぞれの種類を判定し、
前記印刷制御部は、
前記複数色のインクの全てが前記第1種のインクであると判定される場合には、前記第1印刷制御を実行し、
前記複数色のインクのうちの少なくとも1色のインクが前記第2種のインクであると判定される場合には、前記第2印刷制御を実行する、制御装置。
[適用例6]
適用例1~5のいずれかに記載の制御装置であって、
前記印刷実行部は、前記第1色のインクを収容するカートリッジが装着可能な装着部を備え、前記装着部を介して前記カートリッジから供給される前記第1色のインクを用いて印刷を実行し、
前記カートリッジは、メモリを備え、
前記種類判定部は、前記メモリに記録されている情報を用いて、前記第1色のインクの種類を判定する、制御装置。
[適用例7]
適用例6に記載の制御装置であって、
前記印刷実行部は、前記カートリッジに収容される前記第1色のインクの残量が基準未満になったと判定される場合に、前記メモリにインクの残量が基準未満になったことを示すエンプティ情報を記録する記録処理部を備え、
前記種類判定部は、前記メモリにインクの残量が基準未満になったことを示す前記エンプティ情報が記録されている場合に、前記第1色のインクの種類は前記第2種のインクである、と判定する、制御装置。
[適用例8]
適用例6に記載の制御装置であって、
前記印刷実行部は、印刷に使用された前記第1色のインクの量であるインク使用量に関する情報を記録する記録処理部を備え、
前記種類判定部は、前記メモリに記録されている前記インク使用量に関する情報に基づいて前記インク使用量が基準量より多いと判断される場合に、前記第1色のインクの種類は前記第2種のインクである、と判定する、制御装置。
[適用例9]
適用例1~8のいずれかに記載の制御装置であって、
前記印刷制御部は、
前記種類判定部による判定結果に基づいて、前記第1色のインクが前記第2種のインクから前記第1種のインクに変更されたか否かを判断し、
前記第1色のインクが前記第2種のインクから前記第1種のインクに変更されたと判断した場合に、前記第2印刷制御によって所定量の印刷を実行した後に、前記第1印刷制御によって印刷を実行する、制御装置。

【0010】
インク使用量が基準以上であると判断される場合には、カートリッジには色ムラが発生しやすい第2種のインクが収容されている可能性が高くなる。上記構成によれば、インク使用量に関する情報に基づいて、第1色のインクの種類を適切に特定することができる。
【0011】
なお、本明細書に開示された技術は、種々の形態で実現可能であり、例えば、印刷装置、印刷実行部の制御方法、印刷方法、これらの装置および方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例の印刷システム1000の構成を示すブロック図である。
図2】印刷機構100の概略構成を示す図である。
図3】印刷機構100の動作の説明図である。
図4】フラグ管理処理のフローチャートである。
図5】第1実施例の印刷制御処理のフローチャートである。
図6】片方向印刷処理のフローチャートである。
図7】完全双方向印刷処理のフローチャートである。
図8】色評価テーブルCPの説明図である。
図9】第2実施例の印刷制御処理のフローチャートである。
図10】部分双方向印刷処理のフローチャートである。
図11】印刷方向決定処理のフローチャートである。
図12】部分画像と複数のブロックとの説明図である。
図13】変型例のフラグ管理処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.第1実施例
A-1.印刷システム1000の構成
次に、実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、実施例の印刷システム1000の構成を示すブロック図である。
【0014】
印刷システム1000は、プリンタ200と、本実施例の制御装置としての端末装置300と、を含んでいる。プリンタ200と、端末装置300と、は、有線または無線のネットワークNWを介して、通信可能に接続されている。
【0015】
端末装置300は、プリンタ200のユーザが使用する計算機であり、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォンである。端末装置300は、端末装置300のコントローラとしてのCPU310と、ハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置320と、RAMなどの揮発性記憶装置330と、マウスやキーボードなどの操作部360と、液晶ディスプレイなどの表示部370と、通信部380と、を備えている。通信部380は、ネットワークNWに接続するための有線または無線のインタフェースを含む。
【0016】
揮発性記憶装置330は、CPU310が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域331を提供する。不揮発性記憶装置320には、コンピュータプログラムPG1と、往路プロファイルFPと、復路プロファイルRPと、が格納されている。コンピュータプログラムPG1とプロファイルFP、RPとは、例えば、サーバからダウンロードされる形態、あるいは、DVD-ROMなどに格納される形態で、プリンタ200の製造者によって提供される。CPU310は、コンピュータプログラムPG1を実行することによって、プリンタ200を制御するプリンタドライバとして機能する。プリンタドライバとしてのCPU310は、例えば、後述するフラグ管理処理や印刷制御処理を実行する。なお、図1に破線で示す色評価テーブルCPは、第2実施例にて用いられるので、第2実施例にて説明する。
【0017】
プロファイルFP、RPは、それぞれ、RGB表色系の色値(RGB値)と、CMYK表色系の色値(CMYK値)と、の対応関係を規定するプロファイルである。プロファイルFP、RPは、後述する印刷制御処理において、RGB値をCMYK値に変換する色変換処理のために用いられる。RGB値は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3個の成分値を含む色値である。CMYK値は、印刷に用いられる複数種のインクに対応する複数個の成分値、本実施例では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、黒(K)の成分値を含む色値である。RGB値およびCMYK値は、例えば、256階調の値である。プロファイルFP、RPは、例えば、ルックアップテーブルである。プロファイルFP、RPについては、さらに、後述する。
【0018】
プリンタ200は、例えば、印刷機構100と、プリンタ200のコントローラとしてのCPU210と、ハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置220と、RAMなどの揮発性記憶装置230と、ユーザによる操作を取得するためのボタンやタッチパネルなどの操作部260と、液晶ディスプレイなどの表示部270と、通信部280と、を備えている。通信部280は、ネットワークNWに接続するための有線または無線のインタフェースを含む。プリンタ200は、通信部280を介して、外部装置、例えば、端末装置300と通信可能に接続される。
【0019】
揮発性記憶装置230は、CPU210が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域231を提供する。不揮発性記憶装置220には、コンピュータプログラムPG2が格納されている。コンピュータプログラムPG2は、本実施例では、プリンタ200を制御するための制御プログラムである。コンピュータプログラムPG2は、プリンタ200の出荷時に不揮発性記憶装置220に格納されて提供される。これに代えて、コンピュータプログラムPG2は、サーバからダウンロードされる形態で提供されても良く、DVD-ROMなどに格納される形態で提供されてもよい。CPU210は、コンピュータプログラムPG2を実行することにより、例えば、印刷機構100を制御して印刷媒体(例えば、用紙)上に画像を印刷する。
【0020】
印刷機構100は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)のそれぞれのインク(液滴)を用いてドットを用紙M上に形成可能であり、これによってカラー印刷を行う。印刷機構100は、印刷ヘッド110とヘッド駆動部120と主走査部130と搬送部140とインク供給部150とを備えている。
【0021】
図2は、印刷機構100の概略構成を示す図である。図2(A)に示すように、主走査部130は、キャリッジ133と、摺動軸134と、ベルト135と、複数個のプーリ136、137と、を備えている。キャリッジ133は、印刷ヘッド110を搭載する。摺動軸134は、キャリッジ133を主走査方向(図2(A)のX軸方向)に沿って往復動可能に保持する。ベルト135は、プーリ136、137に巻き掛けられ、一部がキャリッジ133に固定されている。プーリ136は、図示しない主走査モータの動力によって回転する。主走査モータがプーリ136を回転させると、キャリッジ133が摺動軸134に沿って移動する。これによって、用紙Mに対して主走査方向に沿って印刷ヘッド110を往復動させる主走査が実現される。
【0022】
搬送部140は、用紙Mを保持しつつ、搬送方向(図2(A)の-Y方向)に用紙Mを搬送する。以下では、搬送方向の上流側(+Y側)を、単に、上流側とも呼び、搬送方向の下流側(-Y側)を単に下流側とも呼ぶ。詳細な図示を省略するが、搬送部140は、印刷ヘッド110よりも上流側で用紙Mを保持する上流ローラ対と、印刷ヘッド110よりも下流側で用紙Mを保持する下流ローラ対と、モータと、を備える。搬送部140は、モータの動力で、これらのローラを駆動することによって用紙Mを搬送する。
【0023】
インク供給部150は、印刷ヘッド110にインクを供給する。インク供給部150は、カートリッジ装着部151と、チューブ152と、を備えている。カートリッジ装着部151には、内部にインクが収容された容器である複数個のインクカートリッジMC、CC、YC、KCが着脱可能に装着され、これらのインクカートリッジからインクが供給される。各インクカートリッジ内のインクは、カートリッジ装着部151とチューブ152とを介して、印刷ヘッド110に供給される。
【0024】
インクカートリッジMC、CC、YC、KCのそれぞれの外面には、メモリチップMEが取り付けられている。メモリチップMEには、インクに関する情報(インク情報とも呼ぶ)が記録されている。具体的には、インク情報は、エンプティ情報と、使用量情報と、を含む。インク情報は、さらに、インクカートリッジを識別する識別情報(例えば、シリアルナンバー)や新品のインクカートリッジに収容されているインクの量(初期インク量とも呼ぶ)などの他の情報を含む(図示省略)。
【0025】
カートリッジ装着部151は、装着されるインクカートリッジのメモリチップMEの電極に接触する接点(図示省略)を有している。接点を介して、プリンタ200(CPU210)は、メモリチップMEに格納されるインク情報の読み出しや、メモリチップMEへのインク情報の書き込みを実行できる。
【0026】
使用量情報は、インクカートリッジから供給されて印刷に使用されたインク量の累積値(以下、単にインク使用量とも呼ぶ)を示す情報である。プリンタ200(CPU210)は、印刷を実行する度に、メモリチップMEに記録される使用量情報を更新する。例えば、プリンタ200は、印刷が実行される度に、各インクカートリンのインクについて今回の印刷分の使用量を計算する。プリンタ200は、印刷が実行される前の使用量情報によって示されるインク使用量に、今回の印刷分のインクの使用量を加算する。プリンタ200は、加算後のインク使用量を示す使用量情報を、各インクカートリッジのメモリチップMEに記録する。
【0027】
エンプティ情報は、インクカートリッジが空の状態になった回数(エンプティ回数とも呼ぶ)、すなわち、インクカートリッジに収容されるインクの残量が基準未満となった回数を示す情報である。エンプティ回数の初期値は、0である。プリンタ200は、印刷を実行する度に、メモリチップMEに記録される使用量情報によって示されるインク使用量が、所定の初期インク量IVの倍数(m×IV)を超えたか否かを判断する(mは1以上の整数)。プリンタ200は、インク使用量が初期インク量IVの倍数(m×IV)を超える度に、エンプティ回数に1を加算して、該エンプティ回数を示すエンプティ情報をメモリチップMEに記録する。例えば、インク使用量が初期インク量IVを超えた時点で、エンプティ回数は0から1に更新され、インク使用量が初期インク量IVの2倍を超えた時点で、エンプティ回数は1から2に更新される。エンプティ回数が1以上であるにも拘わらず、インクカートリッジにインクが残存しており、印刷が実行可能である場合には、該インクカートリッジには、インクの再充填が行われたと考えられる。
【0028】
図2(B)は、-Z側から見た印刷ヘッド110の構成を示す図である。図2(B)に示すように、印刷ヘッド110のノズル形成面111は、搬送部140によって搬送される用紙Mと対向する面である。ノズル形成面111には、複数のノズルNZからなる複数のノズル列、すなわち、上述したC、M、Y、Kの各インクを吐出するノズル列NK、NY、NC、NMが形成されている。各ノズル列は、複数個のノズルNZを含んでいる。複数個のノズルNZは、搬送方向(-Y方向)の位置が互いに異なり、搬送方向に沿って所定のノズル間隔NTで並ぶ。ノズル間隔NTは、複数のノズルNZの中で搬送方向に隣り合う2個のノズルNZ間の搬送方向の長さである。これらのノズル列を構成するノズルのうち、最も上流側(+Y側)に位置するノズルNZを、最上流ノズルNZuとも呼ぶ。また、これらのノズルのうち、最も下流側(-Y側)に位置するノズルNZを、最下流ノズルNZdと呼ぶ。最上流ノズルNZuから最下流ノズルNZdまでの搬送方向の長さに、さらに、ノズル間隔NTを加えた長さを、ノズル長Dとも呼ぶ。
【0029】
ノズル列NK、NY、NC、NMの主走査方向の位置(X方向の位置)は、互いに異なり、副走査方向の位置は、互いに重複している。例えば、図2(B)の例では、X方向の上流側から下流側に向かって、ノズル列NK、NY、NC、NMの順で配置されている。
【0030】
各ノズルNZは、印刷ヘッド110の内部に形成されたインク流路(図示省略)に接続されている。印刷ヘッド110の内部の各インク流路に沿ってインクを吐出させるためのアクチュエータ(図示省略、本実施例では、圧電素子)が設けられている。
【0031】
ヘッド駆動部120(図1)は、主走査部130による主走査中にCPU210から供給される印刷データに従って印刷ヘッド110内の各アクチュエータを駆動する。これによって、搬送部140によって搬送される用紙M上に印刷ヘッド110のノズルNZからインクが吐出されて、ドットが形成される。ヘッド駆動部120は、アクチュエータに供給する駆動電圧を変更することで、複数種類のサイズのドットを用紙M上に形成できる。
【0032】
A-2.印刷の概要
印刷機構100は、主走査部130による主走査を行いつつ印刷ヘッド110によって用紙Mにドットを形成する部分印刷と、搬送部140による副走査(用紙Mの搬送)と、を交互に複数回実行することで、用紙Mに印刷画像OIを印刷する。
【0033】
図3は、印刷機構100の動作の説明図である。図3(A)~(C)には、用紙Mに印刷される印刷画像OIが図示されている。印刷画像OIは、複数個の部分画像PIを含んでいる。図3の例では、印刷画像OIは、部分画像PI1~PI5を含んでいる。各部分画像PIは、1回の部分印刷によって印刷される画像である。部分印刷の印刷方向は、往路方向と復路方向とのいずれかである。すなわち、部分印刷は、往路方向(図3の-X方向)の主走査を行いつつドットを形成する往路印刷と、復路方向(図3の+X方向)の主走査を行いつつドットを形成する復路印刷と、のいずれかである。図3にて部分画像内には、+X方向または-X方向の実線の矢印が付されている。-X方向の実線の矢印が付された部分画像(例えば、図3(A)のPI1、PI3、PI5)は、往路印刷によって印刷される往路部分画像である。+X方向の実線の矢印が付された部分画像(例えば、図3(A)のPI2、PI4)は、復路印刷によって印刷される復路部分画像である。
【0034】
図3において、1個の部分画像PI(例えば、部分画像PI1)から、+Y方向に隣接する他の部分画像PI(例えば、部分画像PI2)に向かう+Y方向の矢印は、用紙Mの搬送(副走査)に対応している。すなわち、図3において+Y方向の矢印は、用紙Mが搬送されることによって、図3に図示される用紙Mに対して印刷ヘッド110が+Y方向に移動することを示す。図3に示すように、本実施例の印刷は、いわゆる1パス印刷であり、各部分画像の搬送方向の長さ、および、1回の用紙Mの搬送量は、ノズル長Dである。
【0035】
印刷画像OIは、双方向印刷と片方向印刷とのいずれかを用いて印刷される。双方向印刷は、往路印刷と復路印刷とを組み合わせて実行される印刷である。双方向印刷には、図3(A)の完全双方向印刷と、図3(B)の部分双方向印刷と、の2種類がある。完全双方向印刷は、往路印刷と復路印刷とが交互に実行される印刷であり、往路印刷が連続で実行されることや復路印刷が連続で実行されることがない印刷である。部分双方向印刷は、往路印刷と復路印刷との両方が実行されるが、往路印刷が連続で実行されることや復路印刷が連続で実行されることがある印刷である。例えば、図3(B)の例では、部分画像PI3、PI4は、2回の連続する往路印刷で印刷される。片方向印刷は、往路印刷のみで実行される印刷である。これに代えて、片方向印刷は、復路印刷のみで実行される印刷であっても良い。第1実施例では、片方向印刷と、完全双方向印刷と、が用いられる。第2実施例では、片方向印刷と、部分双方向印刷と、が用いられる。
【0036】
なお、本明細書の各実施例では、双方向印刷の印刷解像度およびパス数と、片方向印刷の印刷解像度およびパス数と、は等しい。パス数は、印刷画像OIの各領域を印刷する際に行われる部分印刷の回数である。本実施例では、双方向印刷も片方向印刷も、1個の部分画像PIを1回の部分印刷のみで印刷する1パス印刷である(パス数=1)。また、双方向印刷のX方向およびY方向の印刷解像度は、片方向印刷のX方向およびY方向の印刷解像度と等しい。
【0037】
連続して同じ印刷方向の部分印刷が行われる場合には、連続する2回の部分印刷の間に、ドットを形成することなく主走査が行われる。このように、ドットを形成することなく(すなわち、部分画像を印刷することなく)行われる主走査を、無印刷主走査とも呼ぶ。図3(B)、図3(C)の破線の矢印は、無印刷主走査を示す。例えば、図3(B)では、部分画像PI3を印刷する往路印刷と部分画像PI4を印刷する往路印刷との間に、無印刷主走査が行われる。図3(C)の片方向印刷では、往路印刷が行われる度に、無印刷主走査が行われる。無印刷主走査が行われることで、無印刷主走査が行われない場合と比較して、印刷に要する印刷時間が長くなるため、印刷速度は、完全双方向印刷、部分双方向印刷、片方向印刷の順に速い。
【0038】
ここで、図2(B)に示すように、印刷ヘッド110に示すように、CMYKのノズル列NC、NM、NY、NKは、主走査方向の位置が互いに異なっている。このために、用紙M上の同じ位置にCMYKの各ドットを形成する場合に、往路印刷と復路印刷との間で、ドットの形成順序が異なる。例えば、図2(B)の例では、往路印刷では、K、Y、C、Mの順番でドットが形成され、復路印刷では、逆に、M、C、Y、Kの順番でドットが形成される。この結果、複数色のドットが重なり合う領域では、往路部分画像と復路部分画像との間でドットが重なる順序が異なる。このために、往路部分画像と復路部分画像との間では、互いに同じドットデータを用いて印刷したとしても、印刷される色味が互いに異なる場合がある。このような往路部分画像と復路部分画像との間で印刷される色味が異なる現象を、以下では、往復間色差と呼ぶ。
【0039】
ここで、上述した往路プロファイルFPは、往路印刷用の部分印刷データ、すなわち、往路部分画像を示す1回の往路印刷分の印刷データを生成する際に、RGB値をCMYK値に変換するために用いられる。復路プロファイルRPは、復路印刷用の部分印刷データ、すなわち、復路部分画像を示す1回の復路印刷分の印刷データを生成する際に、RGB値をCMYK値に変換するために用いられる。往路プロファイルFPと復路プロファイルRPは、上述した往復間色差を抑制するように、互いに色合わせが行われている。具体的には、これらのプロファイルFP、RPは、RGB表色系の少なくとも一部の特定のRGB値について、該特定のRGB値を、往路プロファイルFPを用いて変換して得られるCMYK値に基づいて印刷される往路部分画像の色と、該特定のRGB値を、復路プロファイルRPを用いて変換して得られるCMYK値に基づいて印刷される復路部分画像の色と、が近づくように調整されている。
【0040】
A-3.印刷システム1000の動作
A-3-1.フラグ管理処理
端末装置300のCPU310は、後述する印刷制御処理とは独立して、フラグ管理処理を実行する。フラグ管理処理は、例えば、端末装置300の電源が投入されている間は、所定間隔で、定期的に実行される。フラグ管理処理は、片方向フラグを「ON」と「OFF」とのいずれかに設定する処理である。
【0041】
上述したように、エンプティ回数が1以上であるインクカートリッジのインクは、再充填されたインクである。本実施例では、プリンタ200用のインクカートリッジは、プリンタ200の製造者によって製造されている。該インクカートリッジの製造時にインクカートリッジに充填されるインクは、プリンタ200の製造者によって製造され、プリンタ200による印刷に適した特性(色、紙への吸収性、乾燥速度など)を有するインク(純正インクとも呼ぶ)である。これに対して、インクカートリッジに再充填されるインクは、製造時にインクカートリッジに充填されたインクとは異なる場合がある。特に、プリンタ200およびインクカートリッジの製造者が、再充填用のインクを販売していない場合には、インクカートリッジに再充填されるインクは、製造時にインクカートリッジに充填されるインクとは異なる種類のインクであると考えられる。再充填されるインクは、例えば、プリンタ200用のインクカートリッジの製造者とは異なる第三者によって製造されたインク(非純正インクとも呼ぶ)である。非純正インクの特性は、プリンタ200による印刷に適しているか否かは不明である。
【0042】
このために、本実施例のフラグ管理処理では、該インクカートリッジから供給される特定色(例えば、C)のインクから供給される特定色のインクの種類を判定するために、エンプティ回数を利用している。すなわち、特定色(例えば、C)のインクカートリッジのエンプティ回数が0であると判定することは、該インクカートリッジから供給される特定色のインクは、純正インクであると判定することに等しい。特定色のインクカートリッジのエンプティ回数が1以上であると判定することは、該インクカートリッジから供給される特定色のインクは、非純正インクであると判定することに等しい。
【0043】
図4は、フラグ管理処理のフローチャートである。S10では、CPU310は、プリンタ200のカートリッジ装着部151に装着された各インクカートリッジのエンプティ情報を取得する。具体的には、CPU310は、エンプティ情報の要求をプリンタ200に送信する。プリンタ200のCPU210は、該要求を受信すると、カートリッジ装着部151に装着されたインクカートリッジMC、CC、YC、KCのそれぞれのメモリチップMEからエンプティ情報を読み出す。CPU210は、読み出したエンプティ情報を端末装置300に送信する。
【0044】
S20では、CPU310は、取得されたエンプティ情報に基づいて、カートリッジ装着部151に装着されたインクカートリッジMC、CC、YC、KCのうち、少なくとも1つのインクカートリッジのエンプティ回数が1以上であるか否かを判断する。少なくとも1つのインクカートリッジのエンプティ回数が1以上である場合には(S20:YES)、印刷に用いられる少なくとも1色のインクは非純正インクであると考えられる。この場合には、S30にて、CPU310は、片方向フラグを「ON」に設定して、フラグ管理処理を終了する。
【0045】
カートリッジ装着部151に装着された全てのインクカートリッジのエンプティ回数が0である場合には(S20:NO)、S40にて、CPU310は、片方向フラグは「ON」であるか否かを判断する。片方向フラグが「OFF」である場合には(S40:NO)、前回のフラグ管理処理の時点から、印刷に用いられる全てのインクは純正インクのままであると考えられる。この場合には、CPU310は、フラグ管理処理を終了する。すなわち、この場合には、片方向フラグは「OFF」のままに維持される。
【0046】
片方向フラグが「ON」である場合には(S40:YES)、前回のフラグ管理処理の時点では、印刷に用いられる少なくとも1色のインクは非純正インクであったが、現在は、印刷に用いられる全てのインクが純正インクに変更されたと考えられる。この場合には、CPU310は、S50にて、CPU310は、プリンタ200による印刷量のカウントを開始する。したがって、この時点より後にプリンタ200にて印刷が実行されると、当該印刷の量がカウントされる。印刷の量は、形成されたドットの個数、ページ数、印刷で使用されたインクの量などを単位としてカウントされる。S60では、CPU310は、印刷量のカウント値が閾値TH以上であるか否かを判断する。閾値THは、インクカートリッジから印刷ヘッド110のノズルNZまでのインクの供給経路(例えば、チューブ152や印刷ヘッド110内のインクの流路)に保持されるインクの量を基準として決定されている。例えば、閾値THは、当該インクの供給経路に保持されるインクの量よりも僅かに大きな値である。
【0047】
印刷量のカウント値が閾値TH未満である場合には(S60:NO)、CPU310は、印刷量のカウント値が閾値TH以上になるまで待機する。印刷量のカウント値が閾値TH以上である場合には(S60:YES)、S70にて、CPU310は、印刷量のカウント値を終了する。S80では、CPU310は、片方向フラグを「OFF」に設定して、フラグ管理処理を終了する。すなわち、この場合には、片方向フラグは「ON」から「OFF」に切り替えられる。
【0048】
A-3-2.印刷制御処理
端末装置300のCPU310(図1)は、ユーザからの印刷指示に基づいて、印刷制御処理を実行する。印刷指示には、印刷に用いるべき対象画像データ、すなわち、印刷画像OIに対応する対象画像データの指定が含まれる。図5は、第1実施例の印刷制御処理のフローチャートである。
【0049】
S100では、CPU310は、対象画像データを取得する。対象画像データは、例えば、不揮発性記憶装置320に格納された複数個の画像データ(図示省略)の中から、ユーザの指定に基づいて選択される。本実施例で取得される対象画像データは、複数個の画素の値を含み、複数個の画素の値のそれぞれは、画素の色をRGB値で表す。すなわち、対象画像データは、RGB画像データである。なお、取得される対象画像データが、RGB画像データではない場合には、例えば、該対象画像データに対して、ラスタライズ処理などの変換処理が実行されて、RGB画像データに変換される。
【0050】
S105では、CPU310は、上述したフラグ管理処理において設定される片方向フラグは、「ON」であるか否かを判断する。片方向フラグが「ON」である場合には(S105:YES)、S110にて、CPU310は、片方向印刷処理を実行する。片方向印刷処理は、図3(C)の片方向印刷をプリンタ200に実行させる処理である。
【0051】
片方向フラグが「OFF」である場合には(S105:NO)、S120にて、CPU310は、完全双方向印刷処理を実行する。完全双方向印刷処理は、図3(A)の完全双方向印刷をプリンタ200に実行させる処理である。
【0052】
A-3-3.片方向印刷処理
図6は、片方向印刷処理のフローチャートである。S210では、CPU310は、対象画像データのうち、1回の部分印刷分の部分画像データを、注目部分画像データとして取得する。なお、注目部分画像データに対応する部分画像PIを、注目部分画像とも呼ぶ。また、注目部分画像を印刷する部分印刷を注目部分印刷とも呼ぶ。
【0053】
S220では、CPU310は、注目部分印刷の印刷方向(注目印刷方向とも呼ぶ)を往路方向と復路方向とのうちの予め定められた方向に決定する。本実施例では、予め定められた方向は、往路方向である。
【0054】
S230、S240では、CPU310は、S220にて決定された注目印刷方向に応じた部分印刷データを生成する。本実施例では、S220にて注目印刷方向は、往路方向に決定されるので、往路印刷用の部分印刷データを生成するための往路用生成処理が実行される。
【0055】
S230では、CPU310は、往路プロファイルFPを用いて、注目部分画像データに対して色変換処理を実行する。色変換処理は、変換対象の画像データに含まれるRGB値をCMYK値に変換する処理である。これによって、注目部分画像データは、RGB画像データからCMYK画像データに変換される。CMYK画像データは、上述したCMYK値によって画素ごとの色を表す画像データである。
【0056】
S240では、CPU310は、CPU310は、色変換済みの注目部分画像データに対してハーフトーン処理を実行して、注目部分印刷のための部分印刷データとして、往路印刷用の部分印刷データを生成する。ハーフトーン処理は、公知の方法、例えば、誤差収集法を用いて実行される。生成される部分印刷データは、色成分ごと、かつ、画素ごとに、ドットの形成状態を示すデータ(ドットデータとも呼ぶ)である。ドットの形成状態は、例えば、「ドット有り」と「ドット無し」とのうちのいずれかである。これに代えて、ドットの形成状態は、「大ドット」、「中ドット」、「小ドット」、「ドット無し」のいずれかであってもよい。
【0057】
S250では、CPU310は、生成された部分印刷データと、注目部分印刷の印刷方向を示す方向情報と、をプリンタ200に送信する。プリンタ200が該部分印刷データと方向情報とを受信すると、プリンタ200のCPU210は、該部分印刷データと方向情報とに従って、部分印刷を実行する。片方向印刷処理では、方向情報は、常に、往路方向を示す情報である。したがって、CPU210は、往路印刷を実行して、注目部分画像を印刷する。
【0058】
S260では、CPU310は、印刷画像OIの全ての部分画像データを処理したか否かを判断する。未処理の部分画像データがある場合には(S260:NO)、CPU310は、S210に処理を戻す。全ての部分画像データが処理された場合には(S260:YES)、CPU310は、片方印刷処理を終了する。
【0059】
A-3-4.完全双方向印刷処理
図5のS120の高速印刷処理について説明する。図7は、完全双方向印刷処理のフローチャートである。S305では、CPU310は、対象画像データのうち、1回の部分印刷分の部分画像データを、注目部分画像データとして取得する。
【0060】
S310では、CPU310は、注目部分画像が最初の部分印刷で印刷される部分画像であるか否かを判断する。例えば、図3(A)の部分画像PI1は、最初の部分印刷で印刷される部分画像である。注目部分画像が最初の部分印刷で印刷される部分画像PI1である場合には(S310:YES)、S330にて、CPU310は、注目印刷方向を往路方向に決定する。
【0061】
注目部分画像が最初の部分印刷で印刷される部分画像PI1でない場合には(S310:NO)、S320、S330、S345にて、CPU310は、注目印刷方向を、直前の部分印刷の印刷方向(直前印刷方向とも呼ぶ)とは反対方向に決定する。具体的には、S320にて、CPU310は、直前印刷方向が往路方向であるか否かを判断する。直前印刷方向が往路方向である場合には(S320:YES)、S345にて、CPU310は、注目印刷方向を復路方向に決定する。直前印刷方向が復路方向である場合には(S320:NO)、S330にて、CPU310は、注目印刷方向を往路方向に決定する。
【0062】
注目印刷方向が往路方向に決定されると、S335、S340にて、CPU310は、図6のS230、S240と同様の往路用生成処理を実行する。具体的には、S335にて、CPU310は、往路プロファイルFPを用いて、注目部分画像データに対して色変換処理を実行する。S340では、CPU310は、CPU310は、色変換済みの注目部分画像データに対してハーフトーン処理を実行して、注目部分印刷のための部分印刷データとして、往路印刷用の部分印刷データを生成する。
【0063】
注目印刷方向が復路方向に決定されると、S350、S355にて、CPU310は、復路印刷用の部分印刷データを生成するための復路用生成処理を実行する。具体的には、S350にて、CPU310は、複数個の復路プロファイルRPを用いて、注目部分画像データに対して色変換処理を実行する。S355では、CPU310は、色変換済みの注目部分画像データに対してハーフトーン処理を実行して、注目部分印刷のための部分印刷データとして、復路印刷用の部分印刷データを生成する。
【0064】
S360では、CPU310は、生成された部分印刷データと、注目部分印刷の印刷方向を示す方向情報と、をプリンタ200に送信する。プリンタ200が該部分印刷データと方向情報とを受信すると、プリンタ200のCPU210は、該部分印刷データと方向情報とに従って、部分印刷を実行する。例えば、CPU210は、方向情報が往路方向を示す場合には、往路印刷を実行して、注目部分画像を印刷し、方向情報が復路方向を示す場合には、復路印刷を実行して、注目部分画像を印刷する。
【0065】
S365では、CPU310は、印刷画像OIの全ての部分画像データを処理したか否かを判断する。未処理の部分画像データがある場合には(S365:NO)、CPU310は、S305に処理を戻す。全ての部分画像データが処理された場合には(S365:YES)、CPU310は、完全双方向印刷処理を終了する。
【0066】
以上説明した第1実施例では、図5のS100にて対象画像データを取得するCPU310は、画像取得部の例である。図4のS10、S20にて、エンプティ情報によって示されるエンプティ回数に基づいて、CMYKの各色のインクが純正インクであるか非純正インクであるかを判定するCPU310は、種類判定部の例である。
【0067】
図6のS250、図7のS360にて、部分印刷データと方向情報とをプリンタ200に送信することによって、印刷画像をプリンタ200に印刷させるCPU310は、印刷制御部の例である。
【0068】
例えば、シアン(C)のインクが純正インクであると判定される場合には、他のインクも純正インクであると判定されることを条件に、片方向フラグが「OFF」に設定される(図4のS20にてNO、S80)。このために、この場合には、完全双方向印刷処理が実行される(図5のS105にてNO、S120)。図3(A)、図7の完全双方向印刷処理では、印刷画像OIのうち、部分画像PI1は往路方向の部分印刷にて印刷され、部分画像PI1の次に印刷されるべき部分画像PI2は復路方向の部分印刷にて印刷される。
【0069】
例えば、シアン(C)のインクが非純正インクであると判定される場合には、片方向フラグが「ON」に設定される(図4のS20にてES、S30)。このために、この場合には、片方向印刷処理が実行される(図5のS105にてYES、S110)。図3(C)、図6の片方向印刷処理では、印刷画像OIのうち、部分画像PI1は往路方向の部分印刷にて印刷され、部分画像PI2も往路方向の部分印刷にて印刷される。
【0070】
このように、インク(例えば、シアンのインク)が純正インクである場合には、部分画像PI1は往路印刷にて印刷され、部分画像PI2は復路方向の部分印刷によって印刷される。この結果、インクが純正インクである場合には、印刷画像OIの印刷速度の低下を抑制することができる。また、インクが非純正インクである場合には、部分画像PI1は、往路方向の部分印刷にて印刷され、部分画像PI2は往路方向の部分印刷にて印刷される。この結果、インクが非純正インクである場合には、印刷画像OIを印刷する際に、部分画像PI1と部分画像PI2との間で色ムラが発生することを抑制することができる。したがって、双方向印刷が可能なプリンタ200において、インクの種類に応じた適切な印刷を実行できる。
【0071】
より詳しく説明する。インクの種類によって、色、紙への吸収性、乾燥速度などの特性が異なるため、上述した往復間色差の程度もインクの種類によって異なる。例えば、本実施例では、往路プロファイルFPと復路プロファイルRPとには、CMYKの各色のインクとして、純正インクが用いられることを想定して、往復間色差を抑制するための色合わせがなされている。このために、プリンタ200による印刷に純正インクが用いられる場合には、CPU310は、往路プロファイルFPと復路プロファイルRPとを用いることで、完全双方向印刷によって印刷される印刷画像OIに往復間色差が発生することを抑制できる。しかしながら、プリンタ200による印刷に非純正インクが用いられる場合には、往路プロファイルFPと復路プロファイルRPとを用いたとしても、完全双方向印刷によって印刷される印刷画像OIに往復間色差が発生することを抑制できない可能性がある。したがって、プリンタ200による印刷に非純正インクが用いられる場合には、完全双方向印刷と比較して印刷速度は遅いものの、往復間色差が発生しない片方向印刷を実行することが好ましいと考えられる。本実施例では、インクが純正インクである場合には、完全双方向印刷が実行され、インクが非純正インクである場合には、片方向印刷が実行されるので、インクの種類に応じた適切な印刷を実行することができる。
【0072】
さらに、本実施例では、プロファイルFP、RPを格納する不揮発性記憶装置320は、格納部の例である。図6のS230、S240、図7の335、S340、S350、S355にて、注目部分画像データに対して、所定の生成処理(往路用生成処理または復路用生成処理)を実行して、部分印刷データを生成するCPU310は、印刷データ生成部の例である。これらの生成処理は、RGB値をCMYK値に変換する色変換処理を含む(図6のS230、図7のS335、S350)。インクが純正インクであると判定される場合に実行される完全双方向印刷処理(図7)では、部分画像PI1(図3(A))に対応する部分画像データに対して、往路プロファイルFPを用いる色変換処理が実行され(図7のS335)、部分画像PI2(図3(A))に対応する部分画像データに対して、復路プロファイルRPを用いる色変換処理が実行される(図7のS350)。インクが非純正インクである場合に実行される片方向印刷処理(図6)では、部分画像PI1に対応する部分画像データと部分画像PI2に対応する部分画像データとに対して、往路プロファイルFPを用いる色変換処理が実行される(図6のS230)。すなわち、本実施例では、部分印刷データを生成する際に、部分印刷の印刷方向に応じたプロファイル(色合わせがなされたプロファイルFP、RP)が用いられるので、部分印刷の印刷方向に応じた適切な色変換処理を実行できる。したがって、印刷画像OIにおいて、往復間色差が目立つことをさらに抑制することができる。
【0073】
さらに、本実施例によれば、複数色のインク(本実施例ではCMYKのインク)のそれぞれについて、純正インクであるか非純正インクであるかが判定される(図4のS10、S20)。そして、複数色のインクの全てが純正インクであると判定される場合には、すなわち、全ての色のインクカートリッジのエンプティ回数が0である場合には(図4のS20にてNO)、片方向フラグが「OFF」に設定されて(図4のS80)、完全双方向印刷処理が実行される(図5のS120)。複数色のインクのうちの少なくとも1色のインクが非純正インクであると判定される場合には、すなわち、少なくとも1つの色のインクカートリッジのエンプティ回数が1以上である場合には(図4のS20にてYES)、片方向フラグが「ON」に設定されて(図4のS30)、片方向印刷処理が実行される(図5のS110)。この結果、部分画像PI1と部分画像PI2との間で往復間色差に起因する色ムラが発生することを、さらに効果的に抑制することができる。例えば、CMYKのインクのうちの1色のインクが非純正インクである場合には、他のインクが純正インクであったとしても、1色の非純正インクの特性に起因して、往復間色差が目立ち得る。本実施例によれば、このような往復間色差が目立つことを抑制することができる。
【0074】
さらに、本実施例によれば、インクカートリッジに備えられたメモリチップMEに記録されている情報を用いて、インクの種類が判定される。この結果、印刷に用いられるインクの種類を適切に判定することができる。
【0075】
より具体的には、プリンタ200は、インクカートリッジに収容されるインクの残量が基準未満になったと判定される場合に、メモリチップMEにその旨を示すエンプティ情報を記録する。具体的には、インクの残量が基準未満になったことを示すエンプティ情報は、インクカートリッジに収容されるインクの残量が基準未満になった回数(エンプティ回数)が1以上であることを示すエンプティ情報である。そして、CPU310は、メモリチップMEにインクの残量が基準未満になったことを示すエンプティ情報が記録されている場合に、対応するインクは非純正インクである、と判定する(図4のS10、S20)。上述したように、メモリチップMEにインクの残量が基準未満になったことを示すエンプティ情報が記録されている場合には、カートリッジには往復間色差が発生しやすい非純正インクが収容されている可能性が高くなる。このために、エンプティ情報に基づいて、インクの種類を適切に判定することができる。
【0076】
さらに、上記実施例のフラグ管理処理(図4)では、CPU310は、エンプティ情報を用いた判定結果に基づいて、カートリッジから供給されるインクが非純正インクから純正インクに変更されたか否かを判断する(図4のS20、S40)。CPU310は、インクが非純正インクから純正インクに変更されたと判断される場合に(図4のS40にてYES)、直ちに片方向フラグを「OFF」に設定するのではなく、プリンタ200によって所定量の印刷が実行された後に、片方向フラグを「OFF」に設定する(図4のS50~S80)。すなわち、インクが非純正インクから純正インクに変更されたと判断される場合には、片方向印刷処理によって所定量の印刷が実行された後に、完全双方向印刷処理によって印刷が実行される。カートリッジから供給されるインクが非純正インクから純正インクに変更されたと判断される場合であっても、印刷ヘッド110やカートリッジ装着部151やチューブ152に、非純正インクが残存している可能性がある。本実施例によれば、プリンタ200に非純正インクが残存している状態で、完全双方向印刷処理によって印刷が実行されることを抑制できる。この結果、印刷画像OIにおいて往復間色差が目立つことをより適切に抑制することができる。
【0077】
以上の説明から解るように、本実施例の純正インクは、第1種のインクの例であり、非純正インクは、第2種のインクの例である。本実施例の往路方向は、第1方向の例であり、復路方向は、第2方向の例である。本実施例の往路プロファイルFPは、第1プロファイルの例であり、復路プロファイルRPは、第2プロファイルの例である。本実施例の完全双方向印刷処理は、第1印刷制御の例であり、片方向印刷処理は、第2印刷制御の例である。
【0078】
B.第2実施例
B-1.色評価テーブル
第2実施例では、端末装置300の不揮発性記憶装置320には、コンピュータプログラムPG1およびプロファイルFP、RPに加えて、色評価テーブルCPが格納されている(図1)。色評価テーブルCPは、コンピュータプログラムPG1およびプロファイルFP、RPと同様に、例えば、プリンタ200の製造者によって提供される。第2実施例の印刷システム1000におけるその他の構成は、第1実施例と同一である。
【0079】
上述したように、往路プロファイルFPと復路プロファイルRPは、上述した往復間色差を抑制するように、互いに色合わせが行われている。しかしながら、特定の色については、往復間色差が大きいために、往路プロファイルFPと復路プロファイルRPとを用いても、往復間色差を十分に抑制できない場合がある。このために、本実施例では、色評価テーブルCPが用いられる。色評価テーブルCPは、RGB値のそれぞれについて、往復間色差の程度を示す重みを規定したルックアップテーブルである。
【0080】
図8は、色評価テーブルCPの説明図である。図8(A)には、RGB表色系の色空間であるRGB色空間CCが示されている。RGB色空間CCの8つの頂点のそれぞれに、色を示す符号(具体的には、黒頂点Vk(0,0,0)、赤頂点Vr(255,0,0)、緑頂点Vg(0,255,0)、青頂点Vb(0,0,255)、シアン頂点Vc(0,255,255)、マゼンタ頂点Vm(255,0,255)、イエロ頂点Vy(255,255,0)、白頂点Vw(255,255,255))が付されている。括弧内の数字は、(R、G、B)の各色成分の値を示している。各グリッドGDのRの値は、Rの範囲(ここでは、ゼロから255)をQ等分して得られるQ+1個の値のうちのいずれかである。各グリッドGDの緑Gと青Bとのそれぞれの値も同様である。本実施例では、Q=9であるので、RGB色空間CC内には、9の3乗個(729個)のグリッドGDが設定される。
【0081】
図8(B)には、色評価テーブルCPの一例が示されている。色評価テーブルCPには、729個のグリッドGDに対応するRGB値のそれぞれに、重みWtが対応付けられている。例えば、評価者は、特定のグリッドGDのRGB値を、往路プロファイルFPを用いて変換して得られるCMYK値に基づいて印刷されるカラーパッチと、該グリッドGDのRGB値を、復路プロファイルRPを用いて変換して得られるCMYK値に基づいて印刷されるカラーパッチと、を印刷する。評価者は、2個のカラーパッチを測色して、測色値を取得する。測色値は、例えば、印刷機構100などのデバイスに依存しない色空間の色値、本実施例では、CIELAB色空間の色値(以下、Lab値とも呼ぶ)である。評価者は、取得される2個の測色値の色差を、特定のグリッドGDに対応する往復間色差として算出する。評価者は、往復間色差が大きいほど大きな重みWtを、特定のグリッドGDに対応づける重みWtとして決定する。このようにして、729個のグリッドGDに対応付ける重みWtが決定されて、色評価テーブルCPが作成される。
【0082】
上述したように、往復間色差は、往路部分画像と復路部分画像との間でドットが重なる順序が異なることに起因する。このために、印刷に用いられるC、M、Y、Kのインクのうち、2種類のインクを用いて表現される特定色(色差発生色とも呼ぶ)にて、往復間色差が大きくなる。色差発生色は、例えば、CインクとYインクとの両方を用いて表現される緑、特に、比較的多量のCインクとYインクとの両方を用いて表現される濃い緑を含む。また、色差発生色は、MインクとYインクとの両方を用いて表現される赤、CインクとMインクとの両方を用いて表現される青、C、M、Yインクを用いて表現されるグレーを含み得る。色評価テーブルCPにおいて、これらの色差発生色に対応するグリッドGDには、他の色に対応するグリッドGDよりも大きな重みWtが対応付けられる。
【0083】
B-2.印刷制御処理
第2実施例の印刷システム1000では、端末装置300のCPU310は、図5の印刷制御処理に代えて、図9の印刷制御処理が実行される。第2実施例の印刷システム1000の他の動作は、第1実施例と同一である。
【0084】
図9は、第2実施例の印刷制御処理のフローチャートである。図9の印刷制御処理では、図5の印刷制御処理のS120に代えて、S120Bが実行される。図9の印刷制御処理の他の処理は、図5の印刷制御処理と同一である。S120Bでは、CPU310は、部分双方向印刷処理を実行する。部分双方向印刷処理は、図3(B)の部分双方向印刷をプリンタ200に実行させる処理である。
【0085】
B-3.部分双方向印刷処理
図10は、部分双方向印刷処理のフローチャートである。S410では、図7のS305と同様に、CPU310は、対象画像データのうち、1回の部分印刷分の部分画像データを、注目部分画像データとして取得する。
【0086】
S420では、CPU310は、印刷方向決定処理を実行する。印刷方向処理は、注目印刷方向を往路方向と復路方向とのいずれかに決定する処理である。印刷方向決定処理については、後述する。
【0087】
S430では、CPU310は、S420にて決定された注目印刷方向に対応する生成処理を実行して、注目印刷方向に応じた部分印刷データを生成する。すなわち、注目印刷方向が往路方向である場合には、図7のS335、S340に示す往路用生成処理が実行されて、往路印刷用の部分印刷データが生成される。注目印刷方向が復路方向である場合には、図7のS350、S355に示す復路用生成処理が実行されて、復路印刷用の部分印刷データが生成される。
【0088】
S450では、図7のS360と同様に、CPU310は、生成された部分印刷データと、注目部分印刷の印刷方向を示す方向情報と、をプリンタ200に送信する。プリンタ200が該部分印刷データと方向情報とを受信すると、プリンタ200のCPU210は、該部分印刷データと方向情報とに従って、部分印刷を実行する。
【0089】
S460では、図7のS365と同様に、CPU310は、印刷画像OIの全ての部分画像データを処理したか否かを判断する。未処理の部分画像データがある場合には(S460:NO)、CPU310は、S410に処理を戻す。全ての部分画像データが処理された場合には(S460:YES)、CPU310は、部分双方向印刷処理を終了する。
【0090】
B-4.印刷方向決定処理
図10のS420の印刷方向決定処理について説明する。図11は、印刷方向決定処理のフローチャートである。S510では、CPU310は、注目部分画像を、複数のブロックBLに分割する。図12は、部分画像と複数のブロックとの説明図である。図12の例では、部分画像PI2が、注目部分画像として、複数のブロックBLに分割されている。ブロックBLの形状は、矩形状である。複数のブロックBLは、主走査方向(図12のX方向)と搬送方向(図12のY方向)とに沿って格子状に隙間無く配置されている。ブロックBLの搬送方向の高さBHと主走査方向の幅BWとは、予め決められている。
【0091】
S515では、CPU310は、注目部分画像の複数のブロックBLのうち未処理の1つのブロックBLを注目ブロックとして選択する。
【0092】
S520では、CPU310は、色評価テーブルCPを用いて、注目ブロックの評価値EVを算出する。評価値EVは、注目部分印刷が往路方向で行われる場合に印刷される画像と復路方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違(上述の往復間色差)の程度を示す値である。具体的には、CPU310は、注目ブロックに含まれる複数の画素のそれぞれの画素の値(RGB値)と色評価テーブルCPとを用いて、複数の画素のそれぞれの重みWtを特定する。色評価テーブルCPの複数のグリッドGD(図8(A))のうち、特定の画素の値に最も近いグリッドGDが特定され、色評価テーブルCPにて該グリッドGDに対応付けられた重みWtが、該特定の画素の重みWtとされる。そして、CPU310は、複数の画素の重みWtの平均値を、注目ブロックの評価値EVとして算出する。
【0093】
S525ではCPU310は、評価値EVが、所定の閾値Thより大きいか否かを判断する。評価値EVが閾値Thより大きい場合には(S525:YES)、S540で、CPU310は、注目印刷方向を予め定められた方向(本実施例では、往路方向)に決定する。注目印刷方向が決定されると、印刷方向決定処理は終了される。
【0094】
評価値EVが閾値Th以下である場合には(S525:NO)、S530にて、CPU310は、注目部分画像の全てのブロックの処理が終了したか否かを判断する。未処理のブロックが残っている場合には(S530:NO)、CPU310は、S515に移行して、未処理のブロックの処理を実行する。全てのブロックの処理が終了した場合には(S530:YES)、S535にて、CPU310は、注目印刷方向を、直前の部分印刷の印刷方向(直前印刷方向)とは反対方向に決定する。すなわち、直前印刷方向が往路方向である場合には、注目印刷方向は復路方向に決定され、直前印刷方向が復路方向である場合には、注目印刷方向は往路方向に決定される。注目印刷方向が決定されると、印刷方向決定処理は終了される。
【0095】
以上の説明から解るように、部分双方向印刷処理では、上記印刷方向決定処理が行われるので、評価値EVが閾値Thより大きい部分画像、換言すれば、往復間色差が目立つと考えられる部分画像は、常に、往路方向で印刷される。例えば、図3(B)のハッチングされた部分画像PI4の評価値EVが閾値Thよりも大きいとする。この場合には、図3(B)に示すように、部分画像PI3を印刷する部分印刷の印刷方向が往路方向であるにも拘わらずに、部分画像PI4は、往路方向の部分印刷で印刷される。このために、部分双方向印刷(図3(B))では、完全双方向印刷(図3(A))よりも往復間色差が目立つことを抑制できる。また、部分双方向印刷処理では、評価値EVが閾値Th以下である部分画像、換言すれば、往復間色差が目立たないと考えられる部分画像は、直前印刷方向とは反対方向で印刷される。このために、部分双方向印刷(図3(B))では、片方向印刷(図3(C))よりも印刷速度を速くすることができる。
【0096】
以上説明した第2実施例によれば、インクが純正インクであると判定される場合に実行される部分双方向印刷処理(図10)では、例えば、図3(B)の印刷画像OIのうち、部分画像PI1は往路方向の部分印刷にて印刷され、部分画像PI1の次に印刷されるべき部分画像PI2は復路方向の部分印刷にて印刷される。また、インクが非純正インクであると判定される場合に実行される片方向印刷処理では、第1実施例でも説明したように、図3(C)の印刷画像OIのうち、部分画像PI1は往路方向の部分印刷にて印刷され、部分画像PI2も往路方向の部分印刷にて印刷される。したがって、第1実施例と同様に第2実施例においても、双方向印刷が可能なプリンタ200において、インクの種類に応じた適切な印刷を実行できる。
【0097】
さらに、本実施例によれば、インクが純正インクであると判定される場合に実行される部分双方向印刷処理(図10)では、対象画像データを用いて、印刷画像OIを印刷する複数回の部分印刷の印刷方向をそれぞれ決定する印刷方向決定処理が実行される。該印刷方向決定処理を実行するCPU310は、印刷方向決定部の例である。印刷方向決定処理では、対象画像データを用いて、複数回の部分印刷に対応する複数個の部分画像PI1~PI5のそれぞれについて、ブロックBLごとに評価値EVが算出され(図11のS520)、該評価値EVが閾値Thより大きいか否かが判定される(図11のS525)。本実施例において、少なくとも1個のブロックBLの評価値EVが閾値Thより大きいことは、往復間色差が基準以上であることを示す特定条件である、と言うことができる。そして、注目部分画像が該特定条件を満たす場合には(図11のS525にてYES)、注目印刷方向は、往路方向と復路方向のうち、予め定められた1つの方向である往路方向に決定される(図11のS540)。注目部分画像が特定条件を満たさない場合には(図11のS530にてYES)、注目印刷方向は、直前印刷方向とは反対方向に決定される(図11のS535)。部分双方向印刷処理では、印刷方向決定部によって決定される印刷方向にて複数回の部分印刷をプリンタ200に実行させる(図10のS450)。この結果、第2実施例では、インクが純正インクである場合に、第1実施例(完全双方向印刷処理)よりも印刷画像OIに往復間色差に起因する色ムラが発生することを抑制することができる。
【0098】
さらに、第2実施例では、第1実施例と同様に、インクが非純正インクである場合に実行される片方向印刷処理は、予め定められた1つの方向である往路方向で複数回の部分印刷を実行させる処理である。この結果、インク非純正インクである場合に、第1実施例と同様に、印刷画像OIに往復間色差に起因する色ムラが発生することを抑制することができる。
【0099】
C.変型例
(1)上記実施例では、インクの種類は、メモリチップMEに記録されたエンプティ情報に基づいて判定される。これに限らず、インクの種類は、他の方法で判定されても良い。
【0100】
一例として、メモリチップMEに記録された使用量情報を用いてインクの種類が判定される変型例について説明する。図13は、変型例のフラグ管理処理のフローチャートである。図13のフラグ管理処理では、図4のフラグ管理処理のS10、S20に代えて、S10C、S20Cが実行される。図13のフラグ管理処理の他の処理は、図4のフラグ管理処理と同一である。
【0101】
S10Cでは、CPU310は、プリンタ200のカートリッジ装着部151に装着された各インクカートリッジの使用量情報を取得する。具体的には、CPU310は、使用量情報の要求をプリンタ200に送信する。プリンタ200のCPU210は、該要求を受信すると、カートリッジ装着部151に装着されたインクカートリッジMC、CC、YC、KCのそれぞれのメモリチップMEから使用量情報を読み出す。CPU210は、読み出した使用量情報を端末装置300に送信する。
【0102】
S20Cでは、CPU310は、取得された使用量情報に基づいて、カートリッジ装着部151に装着されたインクカートリッジMC、CC、YC、KCのうち、少なくとも1つのインクカートリッジのインク使用量が基準量Vthより多いか否かを判断する。ここで基準量Vthは、インクカートリッジの初期インク量IVに設定される。したがって、インクカートリッジのインク使用量が基準量Vthより多いことは、その後に該インクカートリッジから供給されるインクは、再充填されたインク、すなわち、非純正インクであることを意味する。このために、少なくとも1つのインクカートリッジから供給されるインク使用量が基準量Vth以上である場合には(S30C:YES)、S30に処理が進められる。
【0103】
インクカートリッジのインク使用量が基準量Vth以下であることは、その後に該インクカートリッジから供給されるインクは、製造時に充填されたインク、すなわち、純正インクであることを意味する。このために、カートリッジ装着部151に装着された全てのインクカートリッジのインク使用量が基準量Vth以下である場合には(S30C:NO)、S40に処理が進められる。
【0104】
このように、本変形例では、特定色(例えば、C)のインクカートリッジのインク使用量が基準量Vth以下であると判定することは、該インクカートリッジから供給される特定色のインクは、純正インクであると判定することに等しい。特定色のインクカートリッジのインク使用量が基準量Vthより多いと判定することは、該インクカートリッジから供給される特定色のインクは、非純正インクであると判定することに等しい。
【0105】
本変型例によれば、使用量情報に基づいて、インクカートリッジから供給されるインクが純正インクであるか非純正インクであるかを適切に判定することができる。
【0106】
(2)インクの種類は、エンプティ情報や使用量情報などのメモリチップMEに記録された情報を用いることなく、判定されても良い。例えば、インクの種類は、所定のセンサを用いて、インクカートリッジ内のインクや、印刷ヘッド110内のインクの特性を物理的に測定することによって判定されても良い。例えば、純正インクと非純正インクとの間では、光の透過度や電気伝導度などの物理的な特性が異なる場合がある。この場合には、プリンタ200は、インクの光の透過度や電気伝導度をセンサを用いて測定して、端末装置300に送信する。端末装置300のCPU310は、該測定結果に基づいて、インクの種類を判定する。
【0107】
(3)図4のフラグ管理処理では、CPU310は、エンプティ情報に基づいて、インクが純正インクであるか非純正インクであるかを判定している(図4のS10、S20)。インクについての判定はこれに限られない。CPU310は、例えば、インクカートリッジの品番に基づいて、インクの種類を判定してもよい。また、判定するインクの種類は、純正インクであるか非純正インクであるかに限らない。例えば、往路プロファイルFPや復路プロファイルRPについて、顔料インクが用いられることを前提として色合わせがなされているとする。この場合に、CPU310は、例えば、インクカートリッジの品番に基づいて、インクが顔料インクであるか染料インクであるかを判定してもよい。そして、CPU310は、インクが顔料インクであると判定される場合に、片方向フラグを「OFF」に設定し、インクが染料インクであると判定される場合に、片方向フラグを「ON」に設定してもよい。また、インクは、製造日から過度に時間が経過すると(例えば、数年)、経時劣化により、色などの特性が変化する場合がある。この場合に、CPU310は、例えば、インクカートリッジの製造年月日に基づいて、インクが、製造日からの経過時間が基準未満である新しいインクであるか、製造日からの経過時間が基準以上である古いインクであるかを判定してもよい。そして、CPU310は、インクが新しいインクであると判定される場合に、片方向フラグを「OFF」に設定し、インクが古いインクであると判定される場合に、片方向フラグを「ON」に設定してもよい。
【0108】
(4)上記各実施例では、片方向フラグが「ON」である場合には、印刷画像OIの全体が片方向印刷によって印刷され、片方向フラグが「OFF」である場合には、印刷画像OIの全体が双方向印刷(完全双方向印刷または部分双方向印刷)によって印刷される。これに代えて、例えば、CPU310は、対象画像データに対して、公知のオブジェクト特定処理を実行して、印刷画像OIに含まれるオブジェクトおよびオブジェクトの種類(例えば、文字、写真、描画)を特定し、オブジェクトごとに異なる制御を実行してもよい。例えば、CPU310は、印刷画像OIのうち、文字のみを含む部分画像を、片方向フラグが「ON」であるか「OFF」であるかに関わらずに、双方向印刷によって印刷させ、写真や描画を含む部分画像は、片方向印刷によって印刷させてもよい。
【0109】
(5)上記各実施例の印刷制御処理における色変換処理では、往路印刷用の往路プロファイルFPと、復路印刷用の復路プロファイルRPと、が用いられている(例えば、図7のS335、S350)。これに代えて、印刷制御処理において、注目印刷方向が往路方向であっても復路方向であっても、同一のプロファイルを用いて色変換処理が実行されてもよい。
【0110】
(6)図5図9の印刷制御処理は、一例であり、適宜に変更が可能である。例えば、図6の片方向印刷処理では、S220にて注目印刷方向は常に往路方向に決定されるが、常に復路方向に決定されてもよい。
【0111】
また、図11の印刷方向決定処理では、注目部分画像が、往復間色差が基準以上であることを示す特定条件を満たす場合には(S525にてYES)、直前印刷方向が往路方向であっても復路方向であっても、S540にて注目印刷方向は往路方向に決定される。これに代えて、直前印刷方向が往路方向であっても復路方向であっても、S540では、注目印刷方向は復路方向に決定されてもよい。あるいは、S540では、注目印刷方向は、直前印刷方向と同じ方向に決定されてもよい。
【0112】
(7)図4のフラグ管理処理では、CPU310は、CMYKのインクカートリッジのうち、少なくとも一つのインクカートリッジが非純正インクであると判定される場合に、片方向フラグを「ON」に設定している(図4のS20にてYES、S30)。これに代えて、例えば、CMYKのインクカートリッジのうち、2つ以上、または、3つ以上のインクカートリッジが非純正インクであると判定される場合に、片方向フラグを「ON」に設定してもよい。また、CPU310は、CMYKのインクカートリッジのうち、特定色のインクカートリッジが非純正インクであると判定される場合に、片方向フラグを「ON」に設定してもよい。例えば、Kのインクカートリッジのみが非純正インクであると判定される場合は、片方向フラグは「ON」に設定されるが、Yのインクカートリッジのみが非純正インクであると判定される場合は、片方向フラグは「ON」に設定されなくてもよい。
【0113】
(8)図4のフラグ管理処理において、S40からS70は省略されてもよい。すなわち、CPU310は、CMYKの全てのインクカートリッジが純正インクであると判定される場合には(S20にてNO)、直ちに、片方向フラグを「OFF」に設定してもよい。また、片方向フラグが「OFF」である場合に、CPU310は、CMYKの少なくとも一つのインクカートリッジが非純正インクであると判定される場合に、印刷量のカウント値が閾値TH以上になってから、片方向フラグを「ON」に設定してもよい。
【0114】
(9)上記各実施例では、印刷媒体として、用紙Mが用いられている。これに代えて、他の印刷媒体、例えば、OHP用のフィルム、CD-ROM、DVD-ROMが採用されても良い。
【0115】
(10)印刷ヘッド110の各ノズル列の配置位置は、図2(B)のX方向の上流側から、ノズル列NY、NM、NC、NKの順番でなくてもよく、他の任意の順番が採用されても良い。印刷方向が異なることによる色差が発生する場合であれば、印刷方向に対し対称となるようにノズル列が配列されても良い。
【0116】
(11)図1の印刷機構100では、搬送部140が用紙Mを搬送することによって、印刷ヘッド110に対して用紙Mを搬送方向に相対的に移動させている。これに代えて、固定された用紙Mに対して、印刷ヘッド110を搬送方向と反対方向に移動させることによって、印刷ヘッド110に対して用紙Mを搬送方向に相対的に移動させても良い。
【0117】
(12)上記各実施例では、図5図9の印刷制御処理を実行する装置は端末装置300である。これに代えて、プリンタ200のCPU210が制御装置として、図5図9の印刷制御処理を実行しても良い。この場合には、CPU210は、図6のS250、図7のS360、図10のS450において、部分印刷データと方向情報とを、例えば、不揮発性記憶装置220や揮発性記憶装置230の所定のメモリ領域に出力する。プリンタ200の印刷機構100は、該メモリ領域に出力された部分印刷データと方向情報とに従って部分印刷を実行する。
【0118】
以上の説明から解るように、上記各実施例では、端末装置300が制御装置の例であり、プリンタ200が印刷実行部の例である。本変形例では、プリンタ200のCPU210が制御装置の例であり、プリンタ200の印刷機構100が印刷実行部の例である。
【0119】
また、図5図9の印刷制御処理を実行する装置は、例えば、プリンタや端末装置から画像データを取得して、該画像データを用いて印刷ジョブを生成するサーバであっても良い。この場合には、例えば、プリンタまたは端末装置が、エンプティ情報やインク使用量を、印刷画像に対応する画像データとともにサーバに送信する。このようなサーバは、ネットワークを介して互いに通信可能な複数個の計算機であっても良い。この場合には、ネットワークを介して互いに通信可能な複数個の計算機の全体が、制御装置の例である。
【0120】
(13)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図5図9の印刷制御処理がプリンタ200において実行される場合に、色変換処理やハーフトーン処理は、例えば、プリンタ200のCPU210の指示に従って動作する専用のハードウェア回路(例えば、ASIC)によって実現されてもよい。
【0121】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0122】
100…印刷機構、110…印刷ヘッド、111…ノズル形成面、120…ヘッド駆動部、130…主走査部、133…キャリッジ、134…摺動軸、135…ベルト、136…プーリ、140…搬送部、150…インク供給部、151…カートリッジ装着部、152…チューブ、200…プリンタ、210…CPU、220…不揮発性記憶装置、230…揮発性記憶装置、231…バッファ領域、260…操作部、270…表示部、280…通信部、300…端末装置、310…CPU、320…不揮発性記憶装置、330…揮発性記憶装置、331…バッファ領域、360…操作部、370…表示部、380…通信部、1000…印刷システム、M…用紙、D…ノズル長、CC、MC、YC、KC…インクカートリッジ、NC、NM、NY、NK…ノズル列、CC…RGB色空間、ME…メモリチップ、FP…往路プロファイル、RP…復路プロファイル、CP…色評価テーブル、NW…ネットワーク、NZ…ノズル、PG1、PG2…コンピュータプログラム
図1
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