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特許7343831制御装置、および、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】制御装置、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20230906BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 107
B41J2/01 451
B41J2/01 201
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019121168
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006397
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-046077(JP,A)
【文献】特開2004-249469(JP,A)
【文献】特開2006-110795(JP,A)
【文献】特開2011-088413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、
印刷画像に対応する画像データを取得する画像取得部と、
前記印刷実行部の内部の温度を示す温度情報を取得する温度取得部と、
前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、
前記温度情報によって示される温度が特定範囲外である場合に、前記画像データを用いて、前記印刷画像を印刷する前記複数回の部分印刷の前記印刷方向を決定する第1の印刷方向決定部と、
を備え、
前記第1の印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記複数回の部分印刷に対応する複数個の部分画像のそれぞれに含まれる色を特定し、
前記複数回の部分印刷のうちの注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第1色と前記第2色とを含む場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向と同じ方向、または、予め定められた1つの方向に決定し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第1色と前記第2色の一方を含み他方を含まない場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記印刷制御部は、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲内である場合には、前記印刷画像のうち、第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を前記第2方向の前記部分印刷にて印刷させる第1印刷制御を実行し、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合には、前記第1の印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の部分印刷を実行させる第2印刷制御を実行する、制御装置。
【請求項2】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、
印刷画像に対応する画像データを取得する画像取得部と、
前記印刷実行部の内部の温度を示す温度情報を取得する温度取得部と、
前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、
前記温度情報によって示される温度が特定範囲外である場合に、前記画像データを用いて、前記印刷画像を印刷する前記複数回の部分印刷の前記印刷方向を決定する第1の印刷方向決定部と、
を備え、
前記第1の印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記印刷画像に含まれる色を特定し、
前記印刷画像が前記第1色と前記第2色とを含む場合には、前記複数回の部分印刷の前記印刷方向のそれぞれを、前記第1方向と前記第2方向のうち、予め定められた1つの方向に決定し、
前記印刷画像が前記第1色と前記第2色の一方を含み他方を含まない場合には、前記複数回の部分印刷の前記印刷方向のそれぞれを、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記印刷制御部は、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲内である場合には、前記印刷画像のうち、第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を前記第2方向の前記部分印刷にて印刷させる第1印刷制御を実行し、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合には、前記第1の印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の部分印刷を実行させる第2印刷制御を実行する、制御装置。
【請求項3】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、
印刷画像に対応する画像データを取得する画像取得部と、
前記印刷実行部の内部の温度を示す温度情報を取得する温度取得部と、
前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、
前記温度情報によって示される温度が特定範囲内である場合に、前記画像データを用いて、前記印刷画像を印刷する前記複数回の部分印刷の前記印刷方向を決定する第2の印刷方向決定部と、
を備え、
前記第2の印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記複数回の部分印刷に対応する複数個の部分画像のそれぞれについて、前記第1方向で印刷される画像と前記第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であることを示す特定条件が満たされるか否かを判断し、
前記複数回の部分印刷のうちの注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記特定条件を満たす場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向と同じ方向、または、予め定められた1つの方向に決定し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記特定条件を満たさない場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記印刷制御部は、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲内である場合には、前記第2の印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の部分印刷を実行させる第1印刷制御を実行し、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合には、前記印刷画像のうち、第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させる第2印刷制御を実行する、制御装置。
【請求項4】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、
印刷画像に対応する画像データを取得する画像取得部と、
前記印刷実行部の内部の温度を示す温度情報を取得する温度取得部と、
前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、
前記温度情報によって示される温度が特定範囲内である場合に、前記画像データを用いて、前記印刷画像を印刷する前記複数回の部分印刷の前記印刷方向を決定する第3の印刷方向決定部と、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合に、前記画像データを用いて、前記複数回の部分印刷の前記印刷方向を決定する第4の印刷方向決定部と、
を備え、
前記第3の印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記複数回の部分印刷に対応する複数個の部分画像のそれぞれについて、前記第1方向で印刷される画像と前記第2方向で印刷される画像との間の色差が第1基準以上であることを示す第1条件が満たされるか否かを判断し、
前記複数回の部分印刷のうちの注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第1条件を満たす場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向と同じ方向、または、予め定められた1つの方向に決定し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第1条件を満たさない場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記第4の印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記複数個の部分画像のそれぞれについて、前記色差が前記第1基準よりも低い第2基準以上であることを示す第2条件が満たされるか否かを判断し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第2条件を満たす場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向と同じ方向、または、予め定められた1つの方向に決定し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第2条件を満たさない場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記印刷制御部は、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲内である場合には、前記第3の印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の部分印刷を実行させる第1印刷制御を実行し、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合には、前記第4の印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の部分印刷を実行させる第2印刷制御を実行する、制御装置。
【請求項5】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、
第1種の色値と、前記第1色と前記第2色とを含む複数色のインクに対応する複数個の成分値を含む第2種の色値と、の対応関係を規定する複数個のプロファイルを格納する格納部であって、前記複数個のプロファイルは、前記主走査方向に沿う第1方向の部分印刷のための第1プロファイルと、前記第1方向とは反対の第2方向の前記部分印刷のための第2プロファイルと、を含む、前記格納部と、
印刷画像に対応する画像データであって複数個の画素の値として複数個の前記第1種の色値を含む前記画像データを取得する画像取得部と、
前記画像データに対して生成処理を実行して印刷データを生成する印刷データ生成部であって、前記印刷データは、前記印刷画像のうち、第1部分画像を示す第1部分印刷データと、前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を示す第2部分印刷データと、を含み、前記生成処理は、前記第1種の色値を前記第2種の色値に変換する変換処理を含む、前記印刷データ生成部と、
前記印刷実行部の内部の温度を示す温度情報を取得する温度取得部と、
前記印刷データを用いて、記第1方向と、前記第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する前記部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、
を備え、
前記印刷制御部は、
前記温度情報によって示される温度が特定範囲内である場合には、前記第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第2部分画像を前記第2方向の前記部分印刷にて印刷させる第1印刷制御を実行し、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合には、前記第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第2部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させる第2印刷制御を実行し、
前記印刷データ生成部は、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲内である場合には、前記画像データのうち、前記第1部分画像に対応するデータに対して、前記第1プロファイルを用いる前記変換処理を実行し、前記第2部分画像に対応するデータに対して、前記第2プロファイルを用いる前記変換処理を実行し、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合には、前記第1部分画像に対応するデータと前記第2部分画像に対応するデータとに対して、前記第1プロファイルを用いる前記変換処理を含む処理を実行する、制御装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の制御装置であって、
前記印刷実行部は、前記印刷ヘッドの近傍に配置される温度センサを備え、
前記温度情報は、前記温度センサを用いて生成される情報である、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、主走査を行いつつドットを形成する部分印刷と副走査とを複数回実行することで印刷を行う印刷実行部の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主走査方向の順方向または逆方向に印刷ヘッドを移動させつつ、印刷ヘッドからインクを吐出してバンド画像を印刷するプリンタが開示されている。このプリンタでは、バンド画像ごとに、順方向で印刷される画像の色と逆方向で印刷される画像の色との相違に関する評価値を算出する。プリンタは、該評価値が色の相違が大きいことを示す所定条件を満たす場合に、該バンド画像を順方向で印刷し、該評価値が所定条件を満たさない場合に、該バンド画像を直前のバンド画像の印刷方向とは反対方向で印刷する。これによって、順方向で印刷される画像の色と逆方向で印刷される画像の色との相違が目立つことを抑制できるとともに、印刷速度を向上できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-39205号公報
【文献】特開2016-179596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インクの粘度などの印刷に関連する特性は、温度によって変動するが、上記技術では、温度については何ら考慮されていない。このために、印刷時の温度によっては、色ムラを解消できない可能性があった。
【0005】
本明細書は、双方向印刷が可能な印刷実行部において、温度に応じた適切な印刷を実行できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、印刷画像に対応する画像データを取得する画像取得部と、前記印刷実行部の内部の温度を示す温度情報を取得する温度取得部と、前記主走査方向に沿う第1方向と、前記第1方向とは反対の第2方向と、のいずれかである印刷方向に前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドによってドットを形成する部分印刷と、前記副走査と、を前記印刷実行部に複数回実行させることによって、前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させる印刷制御部と、を備え、前記印刷制御部は、前記温度情報によって示される温度が特定範囲内である場合には、前記印刷画像のうち、第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第1部分画像の次に印刷すべき第2部分画像を前記第2方向の前記部分印刷にて印刷させる第1印刷制御を実行し、前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合には、前記第1部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させ、前記第2部分画像を前記第1方向の前記部分印刷にて印刷させる第2印刷制御を実行する、制御装置。
【0008】
上記構成によれば、印刷実行部の内部の温度が特定範囲内である場合には、第1部分画像は第1方向の部分印刷にて印刷され、第2部分画像は第2方向の部分印刷によって印刷される。この結果、印刷実行部の内部の温度が特定範囲内である場合には、印刷画像の印刷速度の低下を抑制することができる。また、印刷実行部の内部の温度が特定範囲外である場合には、第1部分画像は第1方向の部分印刷にて印刷され、第2部分画像は第1方向の部分印刷にて印刷される。この結果、印刷実行部の内部の温度が特定範囲外である場合には、印刷画像を印刷する際に、第1部分画像と第2部分画像との間で色ムラが発生することを抑制することができる。したがって、第1方向と第2方向との部分印刷を用いた印刷(双方向印刷)が可能な印刷実行部において、温度に応じた適切な印刷を実行できる。
[適用例2]
適用例1に記載の制御装置であって、さらに、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合に、前記画像データを用いて、前記印刷画像を印刷する前記複数回の部分印刷の前記印刷方向を決定する第1の印刷方向決定部を備え、
前記第1の印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記複数回の部分印刷に対応する複数個の部分画像のそれぞれに含まれる色を特定し、
前記複数回の部分印刷のうちの注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第1色と前記第2色とを含む場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向と同じ方向、または、予め定められた1つの方向に決定し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第1色と前記第2色の一方を含み他方を含まない場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記第2印刷制御は、前記第1の印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の部分印刷を実行させる制御である、制御装置。
[適用例3]
適用例1に記載の制御装置であって、さらに、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合に、前記画像データを用いて、前記印刷画像を印刷する前記複数回の部分印刷の前記印刷方向を決定する第1の印刷方向決定部を備え、
前記第1の印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記印刷画像に含まれる色を特定し、
前記印刷画像が前記第1色と前記第2色とを含む場合には、前記複数回の部分印刷の前記印刷方向のそれぞれを、前記第1方向と前記第2方向のうち、予め定められた1つの方向に決定し、
前記印刷画像が前記第1色と前記第2色の一方を含み他方を含まない場合には、前記複数回の部分印刷の前記印刷方向のそれぞれを、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記第2印刷制御は、前記第1の印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の部分印刷を実行させる制御である、制御装置。
[適用例4]
適用例1~3のいずれかに記載の制御装置であって、さらに、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲内である場合に、前記画像データを用いて、前記印刷画像を印刷する前記複数回の部分印刷の前記印刷方向を決定する第2の印刷方向決定部を備え、
前記第2の印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記複数回の部分印刷に対応する複数個の部分画像のそれぞれについて、前記第1方向で印刷される画像と前記第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であることを示す特定条件が満たされるか否かを判断し、
前記複数回の部分印刷のうちの注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記特定条件を満たす場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向と同じ方向、または、予め定められた1つの方向に決定し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記特定条件を満たさない場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記第1印刷制御は、前記第2の印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の部分印刷を実行させる制御である、制御装置。
[適用例5]
適用例1に記載の制御装置であって、さらに、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲内である場合に、前記画像データを用いて、前記印刷画像を印刷する前記複数回の部分印刷の前記印刷方向を決定する第3の印刷方向決定部と、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合に、前記画像データを用いて、前記複数回の部分印刷の前記印刷方向を決定する第4の印刷方向決定部と、
を備え、
前記第3の印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記複数回の部分印刷に対応する複数個の部分画像のそれぞれについて、前記第1方向で印刷される画像と前記第2方向で印刷される画像との間の色差が第1基準以上であることを示す第1条件が満たされるか否かを判断し、
前記複数回の部分印刷のうちの注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第1条件を満たす場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向と同じ方向、または、予め定められた1つの方向に決定し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第1条件を満たさない場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記第4の印刷方向決定部は、
前記画像データを用いて、前記複数個の部分画像のそれぞれについて、前記色差が前記第1基準よりも低い第2基準以上であることを示す第2条件が満たされるか否かを判断し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第2条件を満たす場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向と同じ方向、または、予め定められた1つの方向に決定し、
前記注目部分印刷に対応する前記部分画像が前記第2条件を満たさない場合には、前記注目部分印刷の前記印刷方向を、前記第1方向と前記第2方向のうち、直前の前記部分印刷の前記印刷方向とは反対方向に決定し、
前記第1印刷制御は、前記第3の印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の部分印刷を実行させる制御であり、
前記第2印刷制御は、前記第4の印刷方向決定部によって決定される前記印刷方向にて前記複数回の部分印刷を実行させる制御である、制御装置。
[適用例6]
適用例1~5のいずれかに記載の制御装置であって、
前記特定範囲は、基準温度以下の温度を含まない範囲である、制御装置。
[適用例7]
適用例1~6のいずれかに記載の制御装置であって、
前記印刷実行部は、前記印刷ヘッドの近傍に配置される温度センサを備え、
前記温度情報は、前記温度センサを用いて生成される情報である、制御装置。
[適用例8]
適用例1~7のいずれかに記載の制御装置であって、さらに、
第1種の色値と、前記第1色と前記第2色とを含む複数色のインクに対応する複数個の成分値を含む第2種の色値と、の対応関係を規定する複数個のプロファイルを格納する格納部であって、前記複数個のプロファイルは、前記第1方向の前記部分印刷のための第1プロファイルと、前記第2方向の前記部分印刷のための第2プロファイルと、を含む、前記格納部と、
前記画像取得部は、前記複数個の画素の値として複数個の前記第1種の色値を含む前記画像データを取得し、
前記画像データに対して生成処理を実行して印刷データを生成する印刷データ生成部であって、前記印刷データは、前記第1部分画像を示す第1部分印刷データと前記第2部分画像を示す第2部分印刷データとを含み、前記生成処理は、前記第1種の色値を前記第2種の色値に変換する変換処理を含む、前記印刷データ生成部と、
を備え、
前記印刷制御部は、前記印刷データを用いて前記印刷画像を前記印刷実行部に印刷させ、
前記印刷データ生成部は、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲内である場合には、前記画像データのうち、前記第1部分画像に対応するデータに対して、前記第1プロファイルを用いる前記変換処理を実行し、前記第2部分画像に対応するデータに対して、前記第2プロファイルを用いる前記変換処理を実行し、
前記温度情報によって示される温度が前記特定範囲外である場合には、前記第1部分画像に対応するデータと前記第2部分画像に対応するデータとに対して、前記第1プロファイルを用いる前記変換処理を含む処理を実行する、制御装置。
【0009】
なお、本明細書に開示された技術は、種々の形態で実現可能であり、例えば、印刷装置、印刷実行部の制御方法、印刷方法、これらの装置および方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施例の印刷システム1000の構成を示すブロック図である。
図2】印刷機構100の概略構成を示す図である。
図3】印刷機構100の動作の説明図である。
図4】色評価テーブルCPの説明図である。
図5】第1実施例の印刷制御処理のフローチャートである。
図6】印刷方向決定処理のフローチャートである。
図7】部分画像と複数のブロックとの説明図である。
図8】第2実施例の印刷システム1000Bの構成を示すブロック図である。
図9】第2実施例の印刷方向決定処理のフローチャートである。
図10】変形例の印刷方向決定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施例
A-1.印刷システム1000の構成
次に、実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、第1実施例の印刷システム1000の構成を示すブロック図である。
【0012】
印刷システム1000は、プリンタ200と、本実施例の制御装置としての端末装置300と、を含んでいる。プリンタ200と、端末装置300と、は、有線または無線のネットワークNWを介して、通信可能に接続されている。
【0013】
端末装置300は、プリンタ200のユーザが使用する計算機であり、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォンである。端末装置300は、端末装置300のコントローラとしてのCPU310と、ハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置320と、RAMなどの揮発性記憶装置330と、マウスやキーボードなどの操作部360と、液晶ディスプレイなどの表示部370と、通信部380と、を備えている。通信部380は、ネットワークNWに接続するための有線または無線のインタフェースを含む。
【0014】
揮発性記憶装置330は、CPU310が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域331を提供する。不揮発性記憶装置320には、コンピュータプログラムPG1と、色変換プロファイルPFと、色評価テーブルCPと、が格納されている。コンピュータプログラムPG1と色変換プロファイルPFと色評価テーブルCPとは、例えば、サーバからダウンロードされる形態、あるいは、DVD-ROMなどに格納される形態で、プリンタ200の製造者によって提供される。CPU310は、コンピュータプログラムPG1を実行することによって、プリンタ200を制御するプリンタドライバとして機能する。プリンタドライバとしてのCPU310は、例えば、後述する印刷制御処理を実行する。
【0015】
色変換プロファイルPFは、RGB表色系の色値(RGB値)と、CMYK表色系の色値(CMYK値)と、の対応関係を規定するプロファイルである。色変換プロファイルPFは、後述する印刷制御処理において、RGB値をCMYK値に変換する色変換処理のために用いられる。RGB値は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3個の成分値を含む色値である。CMYK値は、印刷に用いられる複数種のインクに対応する複数個の成分値、本実施例では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、黒(K)の成分値を含む色値である。RGB値およびCMYK値は、例えば、256階調の値である。色変換プロファイルPFは、例えば、ルックアップテーブルである。色評価テーブルCPについては後述する。
【0016】
プリンタ200は、例えば、印刷機構100と、プリンタ200のコントローラとしてのCPU210と、ハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置220と、RAMなどの揮発性記憶装置230と、ユーザによる操作を取得するためのボタンやタッチパネルなどの操作部260と、液晶ディスプレイなどの表示部270と、通信部280と、を備えている。通信部280は、ネットワークNWに接続するための有線または無線のインタフェースを含む。プリンタ200は、通信部280を介して、外部装置、例えば、端末装置300と通信可能に接続される。
【0017】
揮発性記憶装置230は、CPU210が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域231を提供する。不揮発性記憶装置220には、コンピュータプログラムPG2が格納されている。コンピュータプログラムPG2は、本実施例では、プリンタ200を制御するための制御プログラムである。コンピュータプログラムPG2は、プリンタ200の出荷時に不揮発性記憶装置220に格納されて提供される。これに代えて、コンピュータプログラムPG2は、サーバからダウンロードされる形態で提供されても良く、DVD-ROMなどに格納される形態で提供されてもよい。CPU210は、コンピュータプログラムPG2を実行することにより、例えば、印刷機構100を制御して印刷媒体(例えば、用紙)上に画像を印刷する。
【0018】
印刷機構100は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)のそれぞれのインク(液滴)を用いてドットを用紙M上に形成可能であり、これによってカラー印刷を行う。印刷機構100は、印刷ヘッド110とヘッド駆動部120と主走査部130と搬送部140とインク供給部150と温度センサ170とを備えている。
【0019】
図2は、印刷機構100の概略構成を示す図である。図2(A)に示すように、主走査部130は、キャリッジ133と、摺動軸134と、ベルト135と、複数個のプーリ136、137と、を備えている。キャリッジ133は、印刷ヘッド110を搭載する。摺動軸134は、キャリッジ133を主走査方向(図2(A)のX軸方向)に沿って往復動可能に保持する。ベルト135は、プーリ136、137に巻き掛けられ、一部がキャリッジ133に固定されている。プーリ136は、図示しない主走査モータの動力によって回転する。主走査モータがプーリ136を回転させると、キャリッジ133が摺動軸134に沿って移動する。これによって、用紙Mに対して主走査方向に沿って印刷ヘッド110を往復動させる主走査が実現される。
【0020】
搬送部140は、用紙Mを保持しつつ、搬送方向(図2(A)の-Y方向)に用紙Mを搬送する。以下では、搬送方向の上流側(+Y側)を、単に、上流側とも呼び、搬送方向の下流側(-Y側)を単に下流側とも呼ぶ。詳細な図示を省略するが、搬送部140は、印刷ヘッド110よりも上流側で用紙Mを保持する上流ローラ対と、印刷ヘッド110よりも下流側で用紙Mを保持する下流ローラ対と、モータと、を備える。搬送部140は、モータの動力で、これらのローラを駆動することによって用紙Mを搬送する。
【0021】
インク供給部150は、印刷ヘッド110にインクを供給する。インク供給部150は、カートリッジ装着部151と、チューブ152と、を備えている。カートリッジ装着部151には、内部にインクが収容された容器である複数個のインクカートリッジMC、CC、YC、KCが着脱可能に装着され、これらのインクカートリッジからインクが供給される。各インクカートリッジ内のインクは、カートリッジ装着部151とチューブ152とを介して、印刷ヘッド110に供給される。
【0022】
温度センサ170は、測温抵抗体などを含む公知の温度センサであり、プリンタ200のキャリッジ133の印刷ヘッド110の近傍に設置される。温度センサ170は、プリンタ200の印刷ヘッド110の温度を示す信号を出力する。
【0023】
図2(B)は、-Z側から見た印刷ヘッド110の構成を示す図である。図2(B)に示すように、印刷ヘッド110のノズル形成面111は、搬送部140によって搬送される用紙Mと対向する面である。ノズル形成面111には、複数のノズルNZからなる複数のノズル列、すなわち、上述したC、M、Y、Kの各インクを吐出するノズル列NK、NY、NC、NMが形成されている。各ノズル列は、複数個のノズルNZを含んでいる。複数個のノズルNZは、搬送方向(-Y方向)の位置が互いに異なり、搬送方向に沿って所定のノズル間隔NTで並ぶ。ノズル間隔NTは、複数のノズルNZの中で搬送方向に隣り合う2個のノズルNZ間の搬送方向の長さである。これらのノズル列を構成するノズルのうち、最も上流側(+Y側)に位置するノズルNZを、最上流ノズルNZuとも呼ぶ。また、これらのノズルのうち、最も下流側(-Y側)に位置するノズルNZを、最下流ノズルNZdと呼ぶ。最上流ノズルNZuから最下流ノズルNZdまでの搬送方向の長さに、さらに、ノズル間隔NTを加えた長さを、ノズル長Dとも呼ぶ。
【0024】
ノズル列NK、NY、NC、NMの主走査方向の位置(X方向の位置)は、互いに異なり、副走査方向の位置は、互いに重複している。例えば、図2(B)の例では、X方向の上流側から下流側に向かって、ノズル列NK、NY、NC、NMの順で配置されている。
【0025】
各ノズルNZは、印刷ヘッド110の内部に形成されたインク流路(図示省略)に接続されている。印刷ヘッド110の内部の各インク流路に沿ってインクを吐出させるためのアクチュエータ(図示省略、本実施例では、圧電素子)が設けられている。
【0026】
ヘッド駆動部120(図1)は、主走査部130による主走査中にCPU210から供給される印刷データに従って印刷ヘッド110内の各アクチュエータを駆動する。これによって、搬送部140によって搬送される用紙M上に印刷ヘッド110のノズルNZからインクが吐出されて、ドットが形成される。ヘッド駆動部120は、アクチュエータに供給する駆動電圧を変更することで、複数種類のサイズのドットを用紙M上に形成できる。
【0027】
A-2.印刷の概要
印刷機構100は、主走査部130による主走査を行いつつ印刷ヘッド110によって用紙Mにドットを形成する部分印刷と、搬送部140による副走査(用紙Mの搬送)と、を交互に複数回実行することで、用紙Mに印刷画像OIを印刷する。
【0028】
図3は、印刷機構100の動作の説明図である。図3(A)~(C)には、用紙Mに印刷される印刷画像OIが図示されている。印刷画像OIは、複数個の部分画像PIを含んでいる。図3の例では、印刷画像OIは、部分画像PI1~PI5を含んでいる。各部分画像PIは、1回の部分印刷によって印刷される画像である。部分印刷の印刷方向は、往路方向と復路方向とのいずれかである。すなわち、部分印刷は、往路方向(図3の-X方向)の主走査を行いつつドットを形成する往路印刷と、復路方向(図3の+X方向)の主走査を行いつつドットを形成する復路印刷と、のいずれかである。図3にて部分画像内には、+X方向または-X方向の実線の矢印が付されている。-X方向の実線の矢印が付された部分画像(例えば、図3(A)のPI1、PI3、PI5)は、往路印刷によって印刷される往路部分画像である。+X方向の実線の矢印が付された部分画像(例えば、図3(A)のPI2、PI4)は、復路印刷によって印刷される復路部分画像である。
【0029】
図3において、1個の部分画像PI(例えば、部分画像PI1)から、+Y方向に隣接する他の部分画像PI(例えば、部分画像PI2)に向かう+Y方向の矢印は、用紙Mの搬送(副走査)に対応している。すなわち、図3において+Y方向の矢印は、用紙Mが搬送されることによって、図3に図示される用紙Mに対して印刷ヘッド110が+Y方向に移動することを示す。図3に示すように、本実施例の印刷は、いわゆる1パス印刷であり、各部分画像の搬送方向の長さ、および、1回の用紙Mの搬送量は、ノズル長Dである。
【0030】
印刷画像OIは、双方向印刷と片方向印刷とのいずれかを用いて印刷される。双方向印刷は、往路印刷と復路印刷とを組み合わせて実行される印刷である。双方向印刷には、図3(A)の完全双方向印刷と、図3(B)の部分双方向印刷と、の2種類がある。完全双方向印刷は、往路印刷と復路印刷とが交互に実行される印刷であり、往路印刷が連続で実行されることや復路印刷が連続で実行されることがない印刷である。部分双方向印刷は、往路印刷と復路印刷との両方が実行されるが、往路印刷が連続で実行されることや復路印刷が連続で実行されることがある印刷である。例えば、図3(B)の例では、部分画像PI3、PI4は、2回の連続する往路印刷で印刷される。片方向印刷は、往路印刷のみで実行される印刷である。これに代えて、片方向印刷は、復路印刷のみで実行される印刷であっても良い。
【0031】
なお、本明細書の各実施例では、双方向印刷の印刷解像度およびパス数と、片方向印刷の印刷解像度およびパス数と、は等しい。パス数は、印刷画像OIの各領域を印刷する際に行われる部分印刷の回数である。本実施例では、双方向印刷も片方向印刷も、1個の部分画像PIを1回の部分印刷のみで印刷する1パス印刷である(パス数=1)。また、双方向印刷のX方向およびY方向の印刷解像度は、片方向印刷のX方向およびY方向の印刷解像度と等しい。
【0032】
連続して同じ印刷方向の部分印刷が行われる場合には、連続する2回の部分印刷の間に、ドットを形成することなく主走査が行われる。このように、ドットを形成することなく(すなわち、部分画像を印刷することなく)行われる主走査を、無印刷主走査とも呼ぶ。図3(B)、図3(C)の破線の矢印は、無印刷主走査を示す。例えば、図3(B)では、部分画像PI3を印刷する往路印刷と部分画像PI4を印刷する往路印刷との間に、無印刷主走査が行われる。図3(C)の片方向印刷では、往路印刷が行われる度に、無印刷主走査が行われる。無印刷主走査が行われることで、無印刷主走査が行われない場合と比較して、印刷に要する印刷時間が長くなるため、印刷速度は、完全双方向印刷、部分双方向印刷、片方向印刷の順に速い。
【0033】
ここで、図2(B)に示すように、印刷ヘッド110に示すように、CMYKのノズル列NC、NM、NY、NKは、主走査方向の位置が互いに異なっている。このために、用紙M上の同じ位置にCMYKの各ドットを形成する場合に、往路印刷と復路印刷との間で、ドットの形成順序が異なる。例えば、図2(B)の例では、往路印刷では、K、Y、C、Mの順番でドットが形成され、復路印刷では、逆に、M、C、Y、Kの順番でドットが形成される。この結果、複数色のドットが重なり合う領域では、往路部分画像と復路部分画像との間でドットが重なる順序が異なる。このために、往路部分画像と復路部分画像との間では、互いに同じドットデータを用いて印刷したとしても、印刷される色味が互いに異なる場合がある。このような往路部分画像と復路部分画像との間で印刷される色味が異なる現象を、以下では、往復間色差と呼ぶ。
【0034】
色評価テーブルCPは、RGB値のそれぞれについて、往復間色差の程度を示す重みを規定したルックアップテーブルである。色評価テーブルCPは、後述する印刷制御処理にて用いられる。
【0035】
図4は、色評価テーブルCPの説明図である。図4(A)には、RGB表色系の色空間であるRGB色空間CCが示されている。RGB色空間CCの8つの頂点のそれぞれに、色を示す符号(具体的には、黒頂点Vk(0,0,0)、赤頂点Vr(255,0,0)、緑頂点Vg(0,255,0)、青頂点Vb(0,0,255)、シアン頂点Vc(0,255,255)、マゼンタ頂点Vm(255,0,255)、イエロ頂点Vy(255,255,0)、白頂点Vw(255,255,255))が付されている。括弧内の数字は、(R、G、B)の各色成分の値を示している。各グリッドGDのRの値は、Rの範囲(ここでは、ゼロから255)をQ等分して得られるQ+1個の値のうちのいずれかである。各グリッドGDの緑Gと青Bとのそれぞれの値も同様である。本実施例では、Q=9であるので、RGB色空間CC内には、9の3乗個(729個)のグリッドGDが設定される。
【0036】
図4(B)には、色評価テーブルCPの一例が示されている。色評価テーブルCPでは、729個のグリッドGDに対応するRGB値のそれぞれに、重みWtが対応付けられている。例えば、評価者は、特定のグリッドGDのRGB値を、往路プロファイルFPを用いて変換して得られるCMYK値に基づいて印刷されるカラーパッチと、該グリッドGDのRGB値を、復路プロファイルRPを用いて変換して得られるCMYK値に基づいて印刷されるカラーパッチと、を印刷する。評価者は、2個のカラーパッチを測色して、測色値を取得する。測色値は、例えば、印刷機構100などのデバイスに依存しない色空間の色値、本実施例では、CIELAB色空間の色値(以下、Lab値とも呼ぶ)である。評価者は、取得される2個の測色値の色差を、特定のグリッドGDに対応する往復間色差として算出する。評価者は、往復間色差が大きいほど大きな重みWtを、特定のグリッドGDに対応づける重みWtとして決定する。このようにして、729個のグリッドGDに対応付ける重みWtが決定されて、色評価テーブルCPが作成される。
【0037】
上述したように、往復間色差は、往路部分画像と復路部分画像との間でドットが重なる順序が異なることに起因する。このために、印刷に用いられるC、M、Y、Kのインクのうち、2種類のインクを用いて表現される特定色(色差発生色とも呼ぶ)にて、往復間色差が大きくなる。色差発生色は、例えば、CインクとYインクとの両方を用いて表現される緑、特に、比較的多量のCインクとYインクとの両方を用いて表現される濃い緑を含む。また、色差発生色は、MインクとYインクとの両方を用いて表現される赤、CインクとMインクとの両方を用いて表現される青、C、M、Yインクを用いて表現されるグレーを含み得る。色評価テーブルCPにおいて、これらの色差発生色に対応するグリッドGDには、他の色に対応するグリッドGDよりも大きな重みWtが対応付けられる。また、C、M、Y、Kのインクのうち、1種類のインクのみを用いて表現される一次色は、用紙上で複数種類のインクが重なり合うことなく表現される。このために、一次色については、往復間色差は生じない。したがって、一次色に対応するグリッドGDには、重みWtとして「0」が対応付けられている。
【0038】
A-3.印刷システム1000の動作
A-3-1.印刷制御処理
端末装置300のCPU310(図1)は、ユーザからの印刷指示に基づいて、印刷制御処理を実行する。印刷指示には、印刷に用いるべき対象画像データ、すなわち、印刷画像OIに対応する対象画像データの指定が含まれる。図5は、第1実施例の印刷制御処理のフローチャートである。
【0039】
S5では、CPU310は、対象画像データを取得する。対象画像データは、例えば、不揮発性記憶装置320に格納された複数個の画像データ(図示省略)の中から、ユーザの指定に基づいて選択される。本実施例で取得される対象画像データは、複数個の画素の値を含み、複数個の画素の値のそれぞれは、画素の色をRGB値で表す。すなわち、対象画像データは、RGB画像データである。なお、取得される対象画像データが、RGB画像データではない場合には、例えば、該対象画像データに対して、ラスタライズ処理などの変換処理が実行されて、RGB画像データに変換される。
【0040】
S10では、CPU310は、対象画像データのうち、1回の部分印刷分の部分画像データを、注目部分画像データとして選択する。なお、注目部分画像データに対応する部分画像PIを、注目部分画像とも呼ぶ。また、注目部分画像を印刷する部分印刷を注目部分印刷とも呼ぶ。
【0041】
S20では、CPU310は、注目部分印刷の印刷方向(注目印刷方向とも呼ぶ)を決定する印刷方向決定処理を実行する。印刷方向決定処理は、注目印刷方向を往路方向と復路方向とのいずれかに決定する処理である。印刷方向決定処理については、後述する。
【0042】
S30では、CPU310は、色変換プロファイルPFを用いて、注目部分画像データに対して色変換処理を実行する。色変換処理は、変換対象の画像データに含まれるRGB値をCMYK値に変換する処理である。これによって、注目部分画像データは、RGB画像データからCMYK画像データに変換される。CMYK画像データは、上述したCMYK値によって画素ごとの色を表す画像データである。
【0043】
S40では、CPU310は、CPU310は、色変換済みの注目部分画像データに対してハーフトーン処理を実行して、注目部分印刷のための部分印刷データを生成する。ハーフトーン処理は、公知の方法、例えば、誤差収集法を用いて実行される。生成される部分印刷データは、色成分ごと、かつ、画素ごとに、ドットの形成状態を示すデータ(ドットデータとも呼ぶ)である。ドットの形成状態は、例えば、「ドット有り」と「ドット無し」とのうちのいずれかである。これに代えて、ドットの形成状態は、「大ドット」、「中ドット」、「小ドット」、「ドット無し」のいずれかであってもよい。
【0044】
S50では、CPU310は、生成された部分印刷データと、注目部分印刷の印刷方向を示す方向情報と、をプリンタ200に送信する。プリンタ200が該部分印刷データと方向情報とを受信すると、プリンタ200のCPU210は、該部分印刷データと方向情報とに従って、部分印刷を実行する。例えば、CPU210は、方向情報が往路方向を示す場合には、往路印刷を実行して、注目部分画像を印刷し、方向情報が復路方向を示す場合には、復路印刷を実行して、注目部分画像を印刷する。
【0045】
S60では、CPU310は、印刷画像OIの全ての部分画像データを処理したか否かを判断する。未処理の部分画像データがある場合には(S60:NO)、CPU310は、S10に処理を戻す。全ての部分画像データが処理された場合には(S60:YES)、CPU310は、印刷制御処理を終了する。
【0046】
A-3-2.印刷方向決定処理
図5のS20の印刷方向決定処理について説明する。図6は、印刷方向決定処理のフローチャートである。S100では、CPU310は、プリンタ200から内部の温度、具体的には、印刷ヘッド110の温度(ヘッド温度Thとも呼ぶ)を示す温度情報を取得する。具体的には、CPU310は、プリンタ200に、温度情報の要求を送信する。プリンタ200のCPU210は、該要求を受信すると、温度センサ170からの信号に基づいて印刷ヘッド110のヘッド温度Thを示す温度情報を生成する。CPU210は、該温度情報を端末装置300に送信する。
【0047】
S105では、CPU310は、温度情報によって示されるヘッド温度Thは、常温範囲内であるか否かを発明する。常温範囲は、基準温度T1(例えば、摂氏5度)以上であり、かつ、基準温度T2(例えば、摂氏35度)以下の範囲である。
【0048】
ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には(S105:YES)、S110にて、CPU310は、注目部分画像を、複数のブロックBLに分割する。図7は、部分画像と複数のブロックとの説明図である。図7の例では、部分画像PI2が、注目部分画像として、複数のブロックBLに分割されている。ブロックBLの形状は、矩形状である。複数のブロックBLは、主走査方向(図7のX方向)と搬送方向(図7のY方向)とに沿って格子状に隙間無く配置されている。ブロックBLの搬送方向の高さBHと主走査方向の幅BWとは、予め決められている。
【0049】
S115では、CPU310は、注目部分画像の複数のブロックBLのうち未処理の1つのブロックBLを注目ブロックとして選択する。
【0050】
S120では、CPU310は、色評価テーブルCPを用いて、注目ブロックの評価値EVを算出する。評価値EVは、注目部分印刷が往路方向で行われる場合に印刷される画像と復路方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違(上述の往復間色差)の程度を示す値である。具体的には、CPU310は、注目ブロックに含まれる複数の画素のそれぞれの画素の値(RGB値)と色評価テーブルCPとを用いて、複数の画素のそれぞれの重みWtを特定する。色評価テーブルCPの複数のグリッドGD(図4(A))のうち、特定の画素の値に最も近いグリッドGDが特定され、色評価テーブルCPにて該グリッドGDに対応付けられた重みWtが、該特定の画素の重みWtとされる。そして、CPU310は、複数の画素の重みWtの平均値を、注目ブロックの評価値EVとして算出する。
【0051】
S125ではCPU310は、評価値EVが、所定の閾値Vthより大きいか否かを判断する。評価値EVが閾値Vthより大きい場合には(S125:YES)、S140で、CPU310は、注目印刷方向を予め定められた方向(本実施例では、往路方向)に決定する。注目印刷方向が決定されると、印刷方向決定処理は終了される。
【0052】
評価値EVが閾値Vth以下である場合には(S125:NO)、S130にて、CPU310は、注目部分画像の全てのブロックの処理が終了したか否かを判断する。未処理のブロックが残っている場合には(S130:NO)、CPU310は、S115に移行して、未処理のブロックの処理を実行する。全てのブロックの処理が終了した場合には(S130:YES)、S135にて、CPU310は、注目印刷方向を、直前の部分印刷の印刷方向(直前印刷方向)とは反対方向に決定する。すなわち、直前印刷方向が往路方向である場合には、注目印刷方向は復路方向に決定され、直前印刷方向が復路方向である場合には、注目印刷方向は往路方向に決定される。注目印刷方向が決定されると、印刷方向決定処理は終了される。
【0053】
ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には(S105:NO)、S145にて、CPU310は、注目部分画像が一次色のみを含むか否かを判断する。一次色は、上述したように、C、M、Y、Kのインクのうち、1種類のインクのみを用いて表現される色のみを含むか否かを判断する。例えば、CPU310は、注目部分画像データ(RGB画像データ)に対して色変換処理を実行して、CMYK画像データを生成する。CPU310は、CMYK画像データに含まれる全ての画素の値が、一次色または白を示すCMYK値である場合に、注目部分画像は一次色のみを含むと判断する。一次色を示すCMYK値は、例えば、(C、M、Y、K)=(A、0、0、0)、(0、A、0、0)、(0、0、A、0)、(0、0、0、A)のいずれかである(Aは、1~255の任意の整数)。白を示すCMYK値は、例えば、(C、M、Y、K)=(0、0、0、0)である。これに代えて、不揮発性記憶装置320に、一次色を示すRGB値のリストが記憶されており、CPU310は、注目部分画像データ(RGB画像データ)に踏まれる全ての画素の値が該リストに含まれるRGB値である場合に、注目部分画像は一次色のみを含むと判断しても良い。
【0054】
注目部分画像が一次色のみを含む場合には(S145:YES)、S150にて、CPU310は、注目印刷方向を直前印刷方向とは反対方向に決定する。注目部分画像が一次色とは異なる色を含む場合には(S145:NO)、S155にて、CPU310は、注目印刷方向を往路方向に決定する。注目印刷方向が決定されると、印刷方向決定処理は終了される。
【0055】
以上説明した第1実施例では、図5のS5にて対象画像データを取得するCPU310は、画像取得部の例である。図6のS100にて、ヘッド温度Thを示す温度情報を取得するCPU310は、温度取得部の例である。図5のS50にて、部分印刷データと方向情報とをプリンタ200に送信することによって、印刷画像をプリンタ200に印刷させるCPU310は、印刷制御部の例である。
【0056】
ここで、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には(S105:YES)、S115~S140の処理が実行される。S115~S140の処理では、各部分画像は、少なくとも1つのブロックBLの評価値EVが閾値Vthより大きい部分画像を除いて、直前印刷方向とは反対方向で印刷される。
【0057】
ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には(S105:NO)、注目部分画像が一次色のみを含むという限られた場合を除いて、注目印刷方向は、往路方向に決定される(S155)。
【0058】
したがって、本実施例では、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合よりも双方向印刷で印刷が行われる可能性が高くなる。例えば、図3の印刷画像OIの部分画像PI1~PI5は、それぞれ、一次色とは異なる色をそれぞれ含むが、評価値EVが閾値Vthより大きなブロックBLは含まないとする。この場合には、印刷画像OIは、ヘッド温度Thが常温範囲内であれば、図3(A)の完全双方向印刷にて印刷される。そして、印刷画像OIは、ヘッド温度Thが常温範囲外であれば、図3(C)の片方向印刷にて印刷される。
【0059】
すなわち、この例では、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、印刷画像OIの部分画像PI1は往路印刷にて印刷され、部分画像PI2は復路印刷によって印刷される(例えば、図3(A))。この結果、ヘッド温度Thが常温範囲である場合には、印刷画像OIの印刷速度の低下を抑制することができる。また、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、部分画像PI1は往路印刷によって印刷され、部分画像PI2も往路印刷によって印刷される。この結果、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、印刷画像OIを印刷する際に、部分画像PI1と部分画像PI2との間で色ムラが発生することを抑制することができる。したがって、双方向印刷が可能なプリンタ200において、ヘッド温度Thに応じた適切な印刷を実行できる。
【0060】
より詳しく説明する。ヘッド温度Thが常温範囲内である場合と常温範囲外である場合とでは、ヘッド温度Thに対応してインクの温度も異なるため、インクの粘度や水分量などの特性が異なる。このために、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合と常温範囲外である場合とでは、インクの吐出の安定性、色、紙への吸収性、乾燥速度などの特性が異なる。このために、上述した往復間色差の程度もヘッド温度Thが常温範囲内であるか否かによって異なる。したがって、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合と比較して、往復間色差に起因して予期しない色ムラが発生しやすい。
【0061】
例えば、本実施例では、色評価テーブルCPには、ヘッド温度Thが常温範囲内であることを想定して、往復間色差の程度を示す重みWtが記録されている。このために、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には(図6のS105にてYES)、色評価テーブルCPを参照して適切な評価値EVを算出できるために、図6のS110~S140の処理によって、注目印刷方向を適切に決定できる。すなわち、往復間色差が目立つと考えられる注目部分画像の印刷方向は、往路方向に適切に決定され、往復間色差が目立たないと考えられる注目部分画像の印刷方向は、直前印刷方向の反対方向に適切に決定される。この結果、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、色評価テーブルCPを参照して、双方向印刷(図3(A)、(B))が行われる。この結果、往復間色差に起因する色ムラを抑制しつつ、印刷速度が過度に低下することを抑制できる。
【0062】
これに対して、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には(図6のS105にてNO)、ヘッド温度Thが常温範囲内であることを想定して作成された色評価テーブルCPを参照しても適切な評価値EVを算出できない可能性がある。このために、本実施例では、部分画像が一次色のみを含むために往復間色差が目立たないことが明らかな場合を除いて、往路方向のみの片方向印刷(図3(C))が行われる(図6のS155)。したがって、双方向印刷が可能なプリンタ200において、ヘッド温度Thに応じた適切な印刷を実行できる。
【0063】
さらに、本実施例では、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合に(図6のS105にてNO)、S145~S155にて、対象画像データを用いて、印刷画像OIを印刷する複数回の部分印刷の印刷方向を決定するCPU310は、第1の印刷方向決定部の例である。この場合には、注目部分画像が一次色とは異なる色を含む場合、すなわち、CMYKのうちの2色(例えば、CとM)を含む場合には(図6のS145にてNO)、注目印刷方向は、往路方向と復路方向のうち、予め定められた1つの方向である往路方向に決定される(図6のS155)。注目部分画像が一次色のみを含む場合、すなわち、CMYKのうちの1色(例えば、C)を含み、他の色(例えば、M、Y、K)を含まない場合には(図6のS145にてYES)、注目印刷方向は、往路方向と復路方向のうち、直前印刷方向とは反対方向に決定される(図6のS150)。上述したように、往復間色差は、複数色のインクが重なり合う場合に発生するため、一次色のみを含む画像、すなわち、1色のインクで印刷される画像では、往復間色差は発生しない。本実施例では、一次色のみを含み、往復間色差が発生しない部分画像については、双方向印刷で印刷されるので、ヘッド温度Thが特定範囲外であっても、印刷画像OIに往復間色差に起因する色ムラが発生し難い場合には印刷速度を向上できる。
【0064】
さらに、本実施例では、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合に(図6のS105にてYES)、S110~S140にて、対象画像データを用いて、印刷画像OIを印刷する複数回の部分印刷の印刷方向を決定するCPU310は、第2の印刷方向決定部の例である。この場合には、対象画像データを用いて、複数回の部分印刷に対応する複数個の部分画像PI1~PI5のそれぞれについて、ブロックBLごとに評価値EVが算出され(図6のS120)、該評価値EVが閾値Vthより大きいか否かが判定される(図6のS125)。本実施例において、少なくとも1個のブロックBLの評価値EVが閾値Vthより大きいことは、往復間色差が基準以上であることを示す特定条件である、と言うことができる。そして、注目部分画像が該特定条件を満たす場合には(図6のS125にてYES)、注目印刷方向は、往路方向と復路方向のうち、予め定められた1つの方向である往路方向に決定される(図6のS140)。注目部分画像が特定条件を満たさない場合には(図6のS130にてYES)、注目印刷方向は、直前印刷方向とは反対方向に決定される(図6のS135)。換言すれば、往復間色差が目立つと考えられる部分画像は、常に、往路方向で印刷される。例えば、図3(B)のハッチングされた部分画像PI4の評価値EVが閾値Vthよりも大きいとする。この場合には、図3(B)に示すように、部分画像PI3を印刷する部分印刷の印刷方向が往路方向であるにも拘わらずに、部分画像PI4は、往路方向の部分印刷で印刷される。また、往復間色差が目立たないと考えられる部分画像、すなわち、全てのブロックBLの評価値EVが閾値Vth以下である部分画像は、直前印刷方向とは反対方向で印刷される。この結果、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、往復間色差の程度に応じた適切な印刷方向を決定できるので、印刷画像において、往復間色差に起因する色ムラを抑制しつつ、印刷速度の低下を抑制することができる。
【0065】
ここで、ヘッド温度Thが過度に低い場合には、インクの粘度が高くなるためにインクの吐出量が安定せず、意図通りの色が表現できない可能性がある。このような場合には、色評価テーブルCPを用いた評価値EVが閾値Vth以下であっても往復間色差が目立つ可能性があるので、印刷画像において往復間色差に起因する色ムラが目立ちやすい。本実施例では、常温範囲は、基準温度T1(例えば、摂氏5度)以下の温度を含まない範囲である。この結果、ヘッド温度Thが過度に低い場合に、印刷画像OIにおいて、往復間色差に起因する色ムラが発生することを抑制することができる。
【0066】
さらに、本実施例では、プリンタ200は、印刷ヘッド110の近傍に配置される温度センサ170を備えており、図6のS110にて取得される温度情報は、温度センサ170を用いて生成される情報である。印刷に影響するインクの温度は、印刷ヘッド110の温度との相関が高いので、印刷ヘッド110の近傍に温度センサ170を配置することで、適切な温度情報を取得することができる。
【0067】
以上の説明から解るように、本実施例の往路方向は、第1方向の例であり、復路方向は、第2方向の例である。本実施例の図6のS110~S140、図5のS30~S50の処理は、第1印刷制御の例であり、図6のS145~S155、図5のS30~S50の処理は、第2印刷制御の例である。
【0068】
B.第2実施例
B-1.システムの構成
図8は、第2実施例の印刷システム1000Bの構成を示すブロック図である。第2実施例の端末装置300Bの不揮発性記憶装置320Bには、色変換プロファイルPFに代えて、往路プロファイルFPと、復路プロファイルRPと、が格納されている。不揮発性記憶装置320Bには、さらに、色評価テーブルCPに代えて、第1色評価テーブルCP1と、第2色評価テーブルCP2と、が格納されている。プロファイルFP、RP、色評価テーブルCP1、CP2は、コンピュータプログラムPG1と同様に、例えば、プリンタ200の製造者によって提供される。第2実施例の印刷システム1000Bにおけるその他の構成は、第1実施例の印刷システム1000と同一である。
【0069】
プロファイルFP、RPは、それぞれ、色変換プロファイルPFと同様に、RGB値とCMYK値との対応関係を規定するプロファイルである。プロファイルFP、RPは、後述する印刷制御処理において、RGB値をCMYK値に変換する色変換処理のために用いられる。例えば、往路プロファイルFPは、往路印刷用の部分印刷データを生成する際に、RGB値をCMYK値に変換するために用いられる。復路プロファイルRPは、復路印刷用の部分印刷データを生成する際に、RGB値をCMYK値に変換するために用いられる。往路プロファイルFPと復路プロファイルRPは、上述した往復間色差を抑制するように、互いに色合わせが行われている。具体的には、これらのプロファイルFP、RPは、RGB表色系の少なくとも一部の特定のRGB値について、該特定のRGB値を、往路プロファイルFPを用いて変換して得られるCMYK値に基づいて印刷される往路部分画像の色と、該特定のRGB値を、復路プロファイルRPを用いて変換して得られるCMYK値に基づいて印刷される復路部分画像の色と、が近づくように調整されている。
【0070】
色評価テーブルCP1、CP2では、それぞれ、色評価テーブルCP(図4(B))と同様に、729個のグリッドGDに対応するRGB値のそれぞれに、重みWtが対応付けられている。第1色評価テーブルCP1は、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合に用いられるテーブルであり、例えば、第1実施例の色評価テーブルCPと同一である。第2色評価テーブルCP2は、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合に用いられるテーブルであるが、RGB値のそれぞれに対応付けられている重みWtが、色評価テーブルCP1とは異なる。具体的には、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には意図しない往復間色差が発生しやすいことを考慮して、第2色評価テーブルCP2には、全体的に、色評価テーブルCP1よりも大きな重みWtが記録されている。例えば、特定のRGB値について、第2色評価テーブルCP2において対応付けられている重みは、色評価テーブルCP1において対応付けられている重みよりも大きい。
【0071】
B-2.印刷方向決定処理
図9は、第2実施例の印刷方向決定処理のフローチャートである。第2実施例では、図6の印刷方向決定処理に代えて、図9の印刷方向決定処理が実行される。
【0072】
図9において、図6と同一の処理については、図9と同一の符号が付され、図6と異なる処理については、符号の末尾に「B」が付されている。図9の印刷方向決定処理では、図6の印刷方向決定処理のS145、S150、S155は、実行されない。図9の印刷方向決定処理では、S105の後に、S106BまたはS107Bのいずれかが実行される。
【0073】
図9の印刷方向決定処理では、図6の印刷方向決定処理と同様に、CPU310は、S100にて温度情報を取得し、S105にてヘッド温度Thが常温範囲内であるか否かを判断する。
【0074】
ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には(S105:YES)、S106Bにて、CPU310は、第1色評価テーブルCP1を、使用テーブルとして選択する。ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には(S105:NO)、S107Bにて、CPU310は、第2色評価テーブルCP2を、使用テーブルとして選択する。
【0075】
使用テーブルが選択されると、CPU310は、図9のS110~S140の処理を実行して、注目印刷方向を決定する。図9のS110~S140の処理は、図6のS110~S140と同一であるので、説明を省略する。ただし、図9のS120にて、注目ブロックの評価値EVを算出する際には、第1色評価テーブルCP1と第2色評価テーブルCP2とのうち、S106BまたはS107Bにて使用テーブルとして決定されたテーブルが用いられる。
【0076】
第2実施例の印刷システム1000Bの他の動作は、第1実施例と同一である。ただし、図5のS30の色変換処理では、往路プロファイルFPと復路プロファイルRPとのうち、S20の印刷方向決定処理にて決定された印刷方向に対応するプロファイルが用いられる。
【0077】
以上説明した第2実施例では、図9の印刷方向決定処理にて、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合に、第1色評価テーブルCP1を用いて複数回の部分印刷の印刷方向を決定するCPU310は、第3の印刷方向決定部の例である(図9のS105にてYES、S106B、S110~S140)。ヘッド温度Thが常温範囲外である場合に、第2色評価テーブルCP2を用いて複数回の部分印刷の印刷方向を決定するCPU310は、第4の印刷方向決定部の例である(図9のS105にてNO、S107B、S110~S140)。
【0078】
ここで、上述したように、第2色評価テーブルCP2には、全体的に、第1色評価テーブルCP1よりも大きな重みWtが記録されている。このために、第2色評価テーブルCP2を用いて算出される各ブロックBLの評価値EVは、第1色評価テーブルCP1を用いて算出される各ブロックBLの評価値EVよりも大きくなる。このために、第2色評価テーブルCP2を用いる場合には、第1色評価テーブルCP1を用いる場合と比較して、S125にて評価値が閾値Vthより大きいと判断されやすくなり、ひいては、S140にて、印刷方向が往路方向に決定される可能性が高くなる。換言すれば、第1色評価テーブルCP1を用いて算出される評価値EVが閾値Vthより大きいことは、往復間色差が第1基準以上であることを示す第1条件である、と言うことができる。そして、第2色評価テーブルCP2を用いて算出される評価値EVが閾値Vthより大きいことは、より低い基準で満たされる第2条件、すなわち、往復間色差が第1基準より低い第2基準以上であることを示す第2条件である、と言うことができる。このように、第2実施例では、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合と、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合と、で互いに異なる条件が用いられる。
【0079】
したがって、第2実施例では、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、注目部分画像が第1条件を満たす場合に注目印刷方向は予め定められた1つの方向である往路方向に決定され、注目部分画像が第1条件を満たさない場合に注目印刷方向は直前印刷方向とは反対方向に決定される。ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、注目部分画像が第2条件を満たす場合に注目印刷方向は予め定められた1つの方向である往路方向に決定され、注目部分画像が第2条件を満たさない場合に注目印刷方向は直前印刷方向とは反対方向に決定される。この結果、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合よりも、双方向印刷が行われ難くなるので色ムラを抑制できる。また、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、双方向印刷が行われやすくなるので印刷速度を向上できる。
【0080】
例えば、印刷画像OIの部分画像PI1~PI5のそれぞれは、第2条件を満たすが、第1条件を満たさない画像であるとする。この場合には、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、印刷画像OIは図3(A)の完全双方向印刷で印刷され、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、印刷画像OIは図3(C)の片方向印刷で印刷される。すなわち、この場合には、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、印刷画像OIの部分画像PI1は往路印刷によって印刷され、部分画像PI2は復路印刷によって印刷される(例えば、図3(A))。また、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、部分画像PI1は往路印刷によって印刷され、部分画像PI2も往路印刷によって印刷される。したがって、第1実施例と同様に、双方向印刷が可能なプリンタ200において、ヘッド温度Thに応じた適切な印刷を実行できる。
【0081】
さらに、第2実施例では、往路印刷のための往路プロファイルFPと、復路印刷のための復路プロファイルRPを格納する不揮発性記憶装置320Bは、格納部の例である。また、対象画像データに対して色変換処理(図5のS30)とハーフトーン処理(図5のS40)とを含む生成処理を実行して部分印刷データを生成するCPU310は、印刷データ生成部の例である。第2実施例では、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、図5のS30にて、往路方向で印刷される部分画像PI1(図3(A))に対応するデータに対して、往路プロファイルFPを用いる色変換処理が実行され、復路方向で印刷される部分画像PI2(図3(A))に対応するデータに対して、復路プロファイルRPを用いる色変換処理が実行される。そして、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、図5のS30にて、往路方向で印刷される部分画像PI1(図3(C))に対応するデータと部分画像PI2(図3(C))に対応するデータとの両方に対して、往路プロファイルFPを用いる色変換処理が実行される。この結果、CPU310は、部分印刷データを生成する際に、部分印刷の印刷方向に応じた適切な色変換処理を実行できる。
【0082】
C.変型例
(1)上記実施例の印刷方向決定処理(図6図9)は一例であり、これに限られない。図10は、変形例の印刷方向決定処理のフローチャートである。図10の印刷方向決定処理では、図6の印刷方向決定処理のS145に代えて、S145Cが実行される。S145Cでは、CPU310は、印刷画像が一次色のみを含むか否かを判断する。すなわち、図6の印刷方向決定処理では、部分画像ごとに一次色のみを含むか否かが判断される(図6のS145)が、本変形例では、印刷画像ごとに一次色のみを含むか否かが判断される。
【0083】
印刷画像が一次色のみを含む場合には(S145C:YES)、S150にて、CPU310は、注目印刷方向を直前印刷方向とは反対方向に決定する。印刷画像が一次色とは異なる色を含む場合には(S145C:NO)、S155にて、CPU310は、注目印刷方向を往路方向に決定する。注目印刷方向が決定されると、印刷方向決定処理は終了される。
【0084】
以上説明した変形例によれば、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合において、印刷画像が一次色とは異なる色を含む場合、すなわち、CMYKのうちの2色(例えば、CとM)を含む場合には(図10のS145CにてNO)、印刷画像に含まれる各部分画像の印刷方向は、往路方向と復路方向のうち、予め定められた1つの方向である往路方向に決定される(図10のS155)。したがって、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合において、印刷画像が一次色とは異なる色を含む場合には、印刷画像は、図3(C)の片方向印刷で印刷される。したがって、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合において、印刷画像が一次色とは異なる色を含む場合には、印刷速度は低下するものの、往復間色差に起因する色ムラを確実に抑制することができる。
【0085】
そして、印刷画像が一次色のみを含む場合、すなわち、CMYKのうちの1色(例えば、C)を含み、他の色(例えば、M、Y、K)を含まない場合には(図10のS145CにてYES)、印刷画像に含まれる各部分画像の印刷方向は、往路方向と復路方向のうち、直前印刷方向とは反対方向に決定される(図10のS150)。この結果、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、一次色のみを含む印刷画像、すなわち、往復間色差が発生しないことが確実な印刷画像に限って、図3(A)の完全双方向印刷で印刷される。この結果、ヘッド温度Thが特定範囲外であっても、印刷画像OIに往復間色差に起因する色ムラが発生しない場合には印刷速度を向上できる。
【0086】
なお、上記変形例では、図5のS5の後に、S145Cの処理を実行させてもよい。そして、S145Cの判断結果がYESの場合は、ヘッド温度Thに関わらず完全双方向を行うよう印刷方向を決定してもよい。そして、S145Cの判断結果がNOの場合は、ヘッド温度Thが常温範囲内かを判断し、常温範囲外である場合に、完全片方向を行うよう印刷方向を決定してもよい。すなわち、S145Cの判断は、注目部分画像データが選択されるたびに行われるのではなく、対象印刷データについて1回の判断であってもよい。
【0087】
(2)上記第2実施例では、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、第1色評価テーブルCP1を用いて評価値EVを算出し、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、第2色評価テーブルCP2を用いて評価値EVを算出している(図9のS105、S106B、S107Bなど)。これによって、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合と、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合と、の間で、往復間色差が基準以上であるか否かを判断する際に用いられる条件を変えている。これに代えて、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合と、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合と、の間で、色評価テーブルCPを変えることなく、図9のS125にて用いられる閾値Vthを変えても良い。例えば、CPU310は、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、図9のS125にて、評価値EVが第1閾値Vth1より大きいか否かを判断し、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、図9のS125にて、評価値EVが第2閾値Vth2より大きいか否かを判断しても良い。第2閾値Vth2には、第1閾値Vth1よりも小さな値が用いられる。
【0088】
(3)上記各実施例の印刷方向決定処理に代えて、CPU310は、ヘッド温度Thが常温範囲内である場合には、常に、完全双方向印刷を行うように、注目印刷方向を決定しても良い。CPU310は、ヘッド温度Thが常温範囲外である場合には、常に、片方向印刷を行うように、注目印刷方向を決定しても良い。
【0089】
(4)上記各実施例では、図6図9図10のS105にて、ヘッド温度Thが常温範囲内であるか否かが判断されている。これに代えて、他の温度範囲内であるか否かが判断されても良い。例えば、他の温度範囲は、基準温度T1以上の温度範囲(T1≦Th)であっても良い。あるいは、他の温度範囲は、基準温度T2以下の温度範囲(Th≦T2)であっても良い。
【0090】
(5)上記各実施例では、印刷ヘッド110の近傍に配置された温度センサ170を用いて、ヘッド温度Thを示す温度情報が生成される。これに代えて、例えば、各インクカートリッジ、あるいは、カートリッジ装着部151に配置された温度センサを用いて、インクの温度を示す温度情報が生成されても良い。
【0091】
(6)図6図9図10の印刷方向決定処理のS140、S155にて、注目印刷方向は常に往路方向に決定されるが、常に復路方向に決定されてもよい。
【0092】
また、図6図9図10の印刷方向決定処理のS140、S155では、直前印刷方向が往路方向であっても復路方向であっても、注目印刷方向は往路方向に決定される。これに代えて、注目印刷方向は、直前印刷方向と同じ方向に決定されてもよい。
【0093】
(7)上記各実施例では、印刷媒体として、用紙Mが用いられている。これに代えて、他の印刷媒体、例えば、OHP用のフィルム、CD-ROM、DVD-ROMが採用されても良い。
【0094】
(8)印刷ヘッド110の各ノズル列の配置位置は、図2(B)のX方向の上流側から、ノズル列NY、NM、NC、NKの順番でなくてもよく、他の任意の順番が採用されても良い。印刷方向が異なることによる色差が発生する場合であれば、印刷方向に対し対称となるようにノズル列が配列されても良い。
【0095】
(9)図1図2の印刷機構100では、搬送部140が用紙Mを搬送することによって、印刷ヘッド110に対して用紙Mを搬送方向に相対的に移動させている。これに代えて、固定された用紙Mに対して、印刷ヘッド110を搬送方向と反対方向に移動させることによって、印刷ヘッド110に対して用紙Mを搬送方向に相対的に移動させても良い。
【0096】
(10)上記各実施例では、図5の印刷制御処理を実行する装置は端末装置300である。これに代えて、プリンタ200のCPU210が制御装置として、図5の印刷制御処理を実行しても良い。この場合には、CPU210は、図5のS50において、部分印刷データと方向情報とを、例えば、不揮発性記憶装置220や揮発性記憶装置230の所定のメモリ領域に出力する。プリンタ200の印刷機構100は、該メモリ領域に出力された部分印刷データと方向情報とに従って部分印刷を実行する。
【0097】
以上の説明から解るように、上記各実施例では、端末装置300が制御装置の例であり、プリンタ200が印刷実行部の例である。本変形例では、プリンタ200のCPU210が制御装置の例であり、プリンタ200の印刷機構100が印刷実行部の例である。
【0098】
また、図5の印刷制御処理を実行する装置は、例えば、プリンタや端末装置から画像データを取得して、該画像データを用いて印刷ジョブを生成するサーバであっても良い。この場合には、例えば、プリンタまたは端末装置が、エンプティ情報やインク使用量を、印刷画像に対応する画像データとともにサーバに送信する。このようなサーバは、ネットワークを介して互いに通信可能な複数個の計算機であっても良い。この場合には、ネットワークを介して互いに通信可能な複数個の計算機の全体が、制御装置の例である。
【0099】
(11)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図5図9の印刷制御処理がプリンタ200において実行される場合に、色変換処理やハーフトーン処理は、例えば、プリンタ200のCPU210の指示に従って動作する専用のハードウェア回路(例えば、ASIC)によって実現されてもよい。
【0100】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0101】
100…印刷機構、110…印刷ヘッド、111…ノズル形成面、120…ヘッド駆動部、130…主走査部、133…キャリッジ、134…摺動軸、135…ベルト、136…プーリ、140…搬送部、150…インク供給部、151…カートリッジ装着部、152…チューブ、170…温度センサ、200…プリンタ、210…CPU、220…不揮発性記憶装置、230…揮発性記憶装置、231…バッファ領域、260…操作部、270…表示部、280…通信部、300、300B…端末装置、310…CPU、320、320B…不揮発性記憶装置、331…バッファ領域、360…操作部、370…表示部、380…通信部、1000、1000B…印刷システム、M…用紙、D…ノズル長、MC、MM、MY、MK…インクカートリッジ、NC、NM、NY、NK…ノズル列、PF…色変換プロファイル、FP…往路プロファイル、RP…復路プロファイル、CP、CP1、CP2…色評価テーブル、NW…ネットワーク、NZ…ノズル、PG1、PG2…コンピュータプログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10