(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】制御装置、コンピュータプログラム、および、印刷装置を制御する方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230906BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20230906BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/21
B41J2/01 107
B41J2/01 451
B41J2/525
(21)【出願番号】P 2019139742
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰太
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039206(JP,A)
【文献】特開2015-128844(JP,A)
【文献】特開2019-042938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷装置の制御装置であって、
端末装置と接続される第1インタフェースと、
リムーバブルメモリと接続される第2インタフェースと、
を備え、
印刷画像に対応する対象画像データを取得する画像取得処理と、
前記対象画像データを用いて、前記印刷画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記主走査方向に沿う第1方向で印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であるか否かを判断する判断処理と、
前記複数個の部分画像のそれぞれの印刷方向を、前記判断処理の判断に基づき前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する決定処理と、
決定された前記印刷方向の前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドの前記第1種のノズルおよび前記第2種のノズルの少なくとも一方から前記第1色のインクと前記第2色のインクの少なくとも一方を吐出することによって前記部分画像を印刷する部分印刷と、前記副走査と、を、前記対象画像データを用いて前記印刷ヘッド、前記主走査部および前記副走査部に複数回実行させる印刷処理と、
を実行し、
前記判断処理において、
前記対象画像データが
前記第1インタフェースを介して前記端末装置から送信される画像データである場合には、
前記色差が第1基準以上であることを示す第1条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断し、
前記対象画像データが
前記第2インタフェースを介して前記リムーバブルメモリから読み出される画像データである場合には、前記
色差が前記第1基準よりも低い第2基準以上であることを示す第2条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断する、制御装置。
【請求項2】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷装置の制御装置であって、
端末装置と接続されるインタフェースを備え、
印刷画像に対応する対象画像データを取得する画像取得処理と、
前記対象画像データを用いて、前記印刷画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記主走査方向に沿う第1方向で印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であるか否かを判断する判断処理と、
前記複数個の部分画像のそれぞれの印刷方向を、前記判断処理の判断に基づき前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する決定処理と、
決定された前記印刷方向の前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドの前記第1種のノズルおよび前記第2種のノズルの少なくとも一方から前記第1色のインクと前記第2色のインクの少なくとも一方を吐出することによって前記部分画像を印刷する部分印刷と、前記副走査と、を、前記対象画像データを用いて前記印刷ヘッド、前記主走査部および前記副走査部に複数回実行させる印刷処理と、
を実行し、
前記判断処理において、
前記対象画像データが
前記インタフェースを介して送信され、送信元の前記端末装置が第1のアプリケーションプログラムを実行することによって生成される画像データである場合には、
前記色差が第3基準以上であることを示す第1条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断し、
前記対象画像データが
前記インタフェースを介して送信され、送信元の前記端末装置が前記第1のアプリケーションプログラムとは異なる第2のアプリケーションプログラムを実行することによって生成される画像データである場合には、前記
色差が前記第3基準よりも低い第4基準以上であることを示す第2条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断する、制御装置。
【請求項3】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷装置の制御装置であって、
印刷画像に対応する対象画像データを取得する画像取得処理と、
前記対象画像データを用いて、前記印刷画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記主走査方向に沿う第1方向で印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であるか否かを判断する判断処理と、
前記複数個の部分画像のそれぞれの印刷方向を、前記判断処理の判断に基づき前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する決定処理と、
決定された前記印刷方向の前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドの前記第1種のノズルおよび前記第2種のノズルの少なくとも一方から前記第1色のインクと前記第2色のインクの少なくとも一方を吐出することによって前記部分画像を印刷する部分印刷と、前記副走査と、を、前記対象画像データを用いて前記印刷ヘッド、前記主走査部および前記副走査部に複数回実行させる印刷処理と、
を実行し、
前記判断処理において、
前記対象画像データが
第1のデータ形式を有する画像データである場合には、
前記色差が第5基準以上であることを示す第1条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断し、
前記対象画像データが
前記第1のデータ形式とは異なる第2のデータ形式を有する画像データである場合には、前記
色差が前記第5基準よりも低い第6基準以上であることを示す第2条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断
し、
前記印刷装置は、前記第1色のインクと前記第2色のインクとを含む複数色のインクを用いて印刷を実行し、
前記第1のデータ形式を有する前記画像データは、前記複数色のインクに対応する複数個の成分値を含む第1の表色系の色値を画素ごとに含む画像データであり、
前記第2のデータ形式を有する前記画像データは、前記第1の表色系とは異なる第2の表色系の色値を画素ごとに含む画像データである、制御装置。
【請求項4】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷装置の制御装置であって、
印刷画像に対応する対象画像データを取得する画像取得処理と、
前記対象画像データを用いて、前記印刷画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記主走査方向に沿う第1方向で印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であるか否かを判断する判断処理と、
前記複数個の部分画像のそれぞれの印刷方向を、前記判断処理の判断に基づき前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する決定処理と、
決定された前記印刷方向の前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドの前記第1種のノズルおよび前記第2種のノズルの少なくとも一方から前記第1色のインクと前記第2色のインクの少なくとも一方を吐出することによって前記部分画像を印刷する部分印刷と、前記副走査と、を、前記対象画像データを用いて前記印刷ヘッド、前記主走査部および前記副走査部に複数回実行させる印刷処理と、
を実行し、
前記判断処理において、
前記対象画像データが
イメージセンサを用いて原稿を読み取ることによって生成されるスキャンデータを用いることなく、特定のアプリケーションプログラムによって生成される画像データである場合には、
前記色差が第7基準以上であることを示す第1条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断し、
前記対象画像データが前記
スキャンデータである場合には、前記
色差が前記第7基準よりも低い第8基準以上であることを示す第2条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断する、制御装置。
【請求項5】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷装置の制御装置であって、
電話回線と接続される電話回線インタフェースを備え、
印刷画像に対応する対象画像データを取得する画像取得処理と、
前記対象画像データを用いて、前記印刷画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記主走査方向に沿う第1方向で印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であるか否かを判断する判断処理と、
前記複数個の部分画像のそれぞれの印刷方向を、前記判断処理の判断に基づき前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する決定処理と、
決定された前記印刷方向の前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドの前記第1種のノズルおよび前記第2種のノズルの少なくとも一方から前記第1色のインクと前記第2色のインクの少なくとも一方を吐出することによって前記部分画像を印刷する部分印刷と、前記副走査と、を、前記対象画像データを用いて前記印刷ヘッド、前記主走査部および前記副走査部に複数回実行させる印刷処理と、
を実行し、
前記判断処理において、
前記対象画像データが
前記電話回線インタフェースを介さずに取得される画像データである場合には、
前記色差が第9基準以上であることを示す第1条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断し、
前記対象画像データが
前記電話回線インタフェースを介して受信されるファクシミリデータである場合には、前記
色差が前記第9基準よりも低い第10基準以上であることを示す第2条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断する、制御装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の制御装置であって、
前記判断処理において、
前記対象画像データと、複数個の色値のそれぞれについて規定される前記色差の程度に関する情報を含む評価情報と、を用いて、前記部分画像の前記色差の程度に関する評価値を算出し、
前記評価値と閾値との比較に基づいて、前記色差が基準以上であるか否かを判断し、
前記第1条件は、前記閾値として第1の閾値を用いて判断される条件であり、
前記第2条件は、前記閾値として第1の閾値とは異なる第2の閾値を用いて判断される条件である、制御装置。
【請求項7】
第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷装置の制御装置であって、
印刷画像に対応する対象画像データを取得する画像取得処理と、
前記対象画像データを用いて、前記印刷画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記主走査方向に沿う第1方向で印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であるか否かを判断する判断処理と、
前記複数個の部分画像のそれぞれの印刷方向を、前記判断処理の判断に基づき前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する決定処理と、
決定された前記印刷方向の前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドの前記第1種のノズルおよび前記第2種のノズルの少なくとも一方から前記第1色のインクと前記第2色のインクの少なくとも一方を吐出することによって前記部分画像を印刷する部分印刷と、前記副走査と、を、前記対象画像データを用いて前記印刷ヘッド、前記主走査部および前記副走査部に複数回実行させる印刷処理と、
を実行し、
前記判断処理において、
前記対象画像データが第1種の画像データである場合には、第1条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断し、
前記対象画像データが第2種の画像データである場合には、前記第1条件とは異なる第2条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断
し、
前記判断処理において、
前記対象画像データと、複数個の色値のそれぞれについて規定される前記色差の程度に関する情報を含む評価情報と、を用いて、前記部分画像の前記色差の程度に関する評価値を算出し、
前記評価値と閾値との比較に基づいて、前記色差が基準以上であるか否かを判断し、
前記第1条件は、前記評価情報として第1の評価情報を用いて算出される第1の評価値と、前記閾値と、に基づいて判断される条件であり、
前記第2条件は、前記評価情報として第2の評価情報値を用いて算出される第2の評価値と、前記閾値と、に基づいて判断される条件である、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、主走査を行いつつドットを形成する部分印刷と副走査とを複数回実行することで印刷を行う印刷装置の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主走査方向の順方向または逆方向に印刷ヘッドを移動させつつ、印刷ヘッドからインクを吐出してバンド画像を印刷するプリンタが開示されている。このプリンタでは、バンド画像ごとに、順方向で印刷される画像の色と逆方向で印刷される画像の色との相違に関する評価値を算出する。プリンタは、該評価値が色の相違が大きいことを示す所定条件を満たす場合に、該バンド画像を順方向で印刷し、該評価値が所定条件を満たさない場合に、該バンド画像を直前のバンド画像の印刷方向とは反対方向で印刷する。これによって、順方向で印刷される画像の色と逆方向で印刷される画像の色との相違が目立つことを抑制できるとともに、印刷速度を向上できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、印刷に用いられる画像データによって、求められる品質や印刷速度などが異なるために適切な印刷方向が異なる場合がある。上記技術では、印刷に用いられる画像データの種類については何ら考慮されていない。このために、印刷に用いられる画像データによっては、適切な印刷方向で印刷が実行されない可能性があった。
【0005】
本明細書は、双方向印刷が可能な印刷装置において、印刷に用いられる画像データに応じた適切な印刷方向で印刷を実行できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]第1色のインクを吐出する第1種のノズルと、第2色のインクを吐出し前記第1種のノズルとは主走査方向の位置が異なる第2種のノズルと、を有する印刷ヘッドと、印刷媒体に対して前記主走査方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、前記印刷ヘッドに対して前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記印刷媒体を相対移動させる副走査を実行する副走査部と、を備える印刷装置の制御装置であって、印刷画像に対応する対象画像データを取得する画像取得処理と、前記対象画像データを用いて、前記印刷画像に含まれる複数個の部分画像のそれぞれについて、前記主走査方向に沿う第1方向で印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であるか否かを判断する判断処理と、前記複数個の部分画像のそれぞれの印刷方向を、前記判断処理の判断に基づき前記第1方向と前記第2方向とのいずれかに決定する決定処理と、決定された前記印刷方向の前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドの前記第1種のノズルおよび前記第2種のノズルの少なくとも一方から前記第1色のインクと前記第2色のインクの少なくとも一方を吐出することによって前記部分画像を印刷する部分印刷と、前記副走査と、を、前記対象画像データを用いて前記印刷ヘッド、前記主走査部および前記副走査部に複数回実行させる印刷処理と、を実行し、前記判断処理において、前記対象画像データが第1種の画像データである場合には、第1条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断し、前記対象画像データが第2種の画像データである場合には、前記第1条件とは異なる第2条件が満たされる場合に前記色差が基準以上であると判断する、制御装置。
【0008】
第1方向と第2方向との双方向で印刷が行われると、印刷速度は速くなるが、第1方向で印刷される画像と第2方向で印刷される画像との間の色差に起因する画質の低下が発生しやすい。第1方向と第2方向とのうちの片方向で印刷が行われると、上記色差に起因する画質の低下を抑制できるが、印刷速度が低下する。上記構成によれば、第1方向で印刷される画像と前記第1方向とは反対の第2方向で印刷される画像との間の色差が基準以上であるか否かの判断処理が実行され、該判断に基づき、印刷方向が第1方向と第2方向とのいずれかに決定される。そして、判断処理において、対象画像データが第1種の画像データである場合には、第1条件が満たされる場合に色差が基準以上であると判断され、対象画像データが第2種の画像データである場合には、第1条件とは異なる第2条件が満たされる場合に色差が基準以上であると判断される。この結果、第1方向と第2方向との部分印刷を用いた印刷(双方向印刷)が可能な印刷装置において、印刷に用いられる画像データに応じた適切な印刷方向で印刷を実行できる。例えば、画像データに応じて適切な画質と印刷速度が実現されるように適切な印刷方向で印刷を実行できる。
[適用例2]
適用例1に記載の制御装置であって、さらに、
端末装置と接続される第1インタフェースと、
リムーバブルメモリと接続される第2インタフェースと、
を備え、
前記第1種の画像データは、前記第1インタフェースを介して前記端末装置から送信される画像データであり、
前記第2種の画像データは、前記第2インタフェースを介して前記リムーバブルメモリから読み出される画像データであり、
前記第1条件は、前記色差が第1基準以上であることを示す条件であり、
前記第2条件は、前記色差が前記第1基準よりも低い第2基準以上であることを示す条件である、制御装置。
[適用例3]
適用例1に記載の制御装置であって、さらに、
端末装置と接続されるインタフェースを備え、
前記第1種の画像データは、前記インタフェースを介して送信され、送信元の前記端末装置が第1のアプリケーションプログラムを実行することによって生成される画像データであり、
前記第2種の画像データは、前記インタフェースを介して送信され、送信元の前記端末装置が前記第1のアプリケーションプログラムとは異なる第2のアプリケーションプログラムを実行することによって生成される画像データであり、
前記第1条件は、前記色差が第3基準以上であることを示す条件であり、
前記第2条件は、前記色差が前記第3基準よりも低い第4基準以上であることを示す条件である、制御装置。
[適用例4]
適用例1に記載の制御装置であって、
前記第1種の画像データは、第1のデータ形式を有する画像データであり、
前記第2種の画像データは、前記第1のデータ形式とは異なる第2のデータ形式を有する画像データである、制御装置。
[適用例5]
適用例4に記載の制御装置であって、
前記印刷装置は、前記第1色のインクと前記第2色のインクとを含む複数色のインクを用いて印刷を実行し、
前記第1のデータ形式を有する前記第1種の画像データは、前記複数色のインクに対応する複数個の成分値を含む第1の表色系の色値を画素ごとに含む画像データであり、
前記第2のデータ形式を有する前記第2種の画像データは、前記第1の表色系とは異なる第2の表色系の色値を画素ごとに含む画像データであり、
前記第1条件は、前記色差が第5基準以上であることを示す条件であり、
前記第2条件は、前記色差が前記第5基準よりも低い第6基準以上であることを示す条件である、制御装置。
[適用例6]
適用例1に記載の制御装置であって、
前記第2種の画像データは、イメージセンサを用いて原稿を読み取ることによって生成されるスキャンデータであり、
前記第1種の画像データは、特定のアプリケーションプログラムによって、前記スキャンデータを用いることなく生成される画像データであり、
前記第1条件は、前記色差が第7基準以上であることを示す条件であり、
前記第2条件は、前記色差が前記第7基準よりも低い第8基準以上であることを示す条件である、制御装置。
[適用例7]
適用例1に記載の制御装置であって、さらに、
電話回線と接続される電話回線インタフェースを備え、
前記第1種の画像データは、前記電話回線インタフェースを介さずに取得される画像データであり、
前記第2種の画像データは、前記電話回線インタフェースを介して受信されるファクシミリデータであり、
前記第1条件は、前記色差が第9基準以上であることを示す条件であり、
前記第2条件は、前記色差が前記第9基準よりも低い第10基準以上であることを示す条件である、制御装置。
[適用例8]
適用例1~7のいずれかに記載の制御装置であって、
前記判断処理において、
前記対象画像データと、複数個の色値のそれぞれについて規定される前記色差の程度に関する情報を含む評価情報と、を用いて、前記部分画像の前記色差の程度に関する評価値を算出し、
前記評価値と閾値との比較に基づいて、前記色差が基準以上であるか否かを判断し、
前記第1条件は、前記閾値として第1の閾値を用いて判断される条件であり、
前記第2条件は、前記閾値として第1の閾値とは異なる第2の閾値を用いて判断される条件である、制御装置。
[適用例9]
適用例1~7のいずれかに記載の制御装置であって、
前記判断処理において、
前記対象画像データと、複数個の色値のそれぞれについて規定される前記色差の程度に関する情報を含む評価情報と、を用いて、前記部分画像の前記色差の程度に関する評価値を算出し、
前記評価値と閾値との比較に基づいて、前記色差が基準以上であるか否かを判断し、
前記第1条件は、前記評価情報として第1の評価情報を用いて算出される第1の評価値と、前記閾値と、に基づいて判断される条件であり、
前記第2条件は、前記評価情報として第2の評価情報値を用いて算出される第2の評価値と、前記閾値と、に基づいて判断される条件である、制御装置。
【0009】
なお、本明細書に開示された技術は、種々の形態で実現可能であり、例えば、印刷装置を制御する方法、これらの装置および方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施例の複合機10の構成を示すブロック図である。
【
図8】部分画像と複数のブロックとの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施例
A-1.複合機の構成
次に、実施の形態を実施例に基づき説明する。
図1は、第1実施例の複合機10の構成を示すブロック図である。
【0012】
複合機10は、制御装置100と、印刷装置200と、読取装置300と、を備えている。制御装置100と印刷装置200と読取装置300とは、互いにバスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0013】
制御装置100は、印刷装置200および読取装置300を制御する。制御装置100は、CPU110と、ハードディスクドライブやフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置120と、RAMなどの揮発性記憶装置130と、タッチパネルやボタンなどの操作部140と、タッチパネルと重畳された液晶ディスプレイなどの表示部150と、有線ネットワークインタフェース(IF)160と、無線ネットワークインタフェース(IF)170と、USBインタフェース(IF)180と、電話回線インタフェース(IF)190と、を備えている。
【0014】
有線ネットワークIF160は、例えば、イーサネット(登録商標)規格に準拠した有線インタフェースである。無線ネットワークIF170は、例えば、Wi-fi規格に準拠した無線インタフェースである。制御装置100は、これらのネットワークIF160、170を介して、端末装置と通信可能に接続される。端末装置は、例えば、複合機10のユーザが利用するパーソナルコンピュータ(PC)30やスマートフォン40である。
【0015】
USBIF180は、シリアルバス規格の一つであるUSB(Universal Serial Bus)規格に従ったデータ通信を行うためのインタフェースである。制御装置100は、例えば、USBIF180を介して、リムーバブルメモリとしてのUSBメモリ50と接続される。
【0016】
電話回線IF190は、例えば、2線式や4線式のアナログ電話回線のインタフェースであり、アナログ電話回線のネットワーク60、すなわち、PSTN(Public Switched Telephone Network)に接続するために用いられる。
【0017】
揮発性記憶装置130は、CPU310が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域131を提供する。不揮発性記憶装置120には、コンピュータプログラムPGと、色変換プロファイルPF1、PF2と、色評価テーブルCP1、CP2と、が格納されている。コンピュータプログラムPGと色変換プロファイルPF1、PF2と色評価テーブルCP1、CP2とは、例えば、サーバからダウンロードされる形態、あるいは、DVD-ROMなどに格納される形態で、複合機10の製造者によって提供される。CPU110は、コンピュータプログラムPGを実行することによって、複合機10を制御する。例えば、CPU110は、読取装置300を制御して、読取装置300にスキャンデータを生成させる。また、CPU110は、後述する印刷制御処理を実行して、印刷装置200に画像を印刷させる。なお、色評価テーブルCP1、CP2については後述する。
【0018】
色変換プロファイルPF1、PF2は、それぞれ、RGB値とMYK値との対応関係を規定するプロファイルである。色変換プロファイルPF1、PF2は、後述する印刷制御処理において、RGB値をCMYK値に変換する色変換処理のために用いられる。RGB値は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3個の成分値を含む。CMYK値は、印刷に用いられる複数種のインクに対応する複数個の成分値、本実施例では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、黒(K)の成分値を含む。RGB値およびCMYK値は、例えば、256階調の値である。色変換プロファイルPF1、PF2は、例えば、ルックアップテーブルである。
【0019】
第1色変換プロファイルPF1は、コピー以外の印刷が行われる場合に、印刷制御処理において実行される色変換処理のために用いられる。第2色変換プロファイルPF2は、コピーのための印刷が行われる場合に、印刷制御処理において実行される色変換処理のために用いられる。
【0020】
コピー以外の印刷とコピーのための印刷とでは、印刷画像に求められる画質が異なる。このために、本実施例では、互いに異なる2種類の色変換プロファイルPF1、PF2が用意されている。例えば、第1色変換プロファイルPF1は、印刷画像において、色変換処理前の画像データによって示される画像の色を忠実に表現するよりも記憶色に近づくように調整されている。記憶色は、人間の脳に記憶されたオブジェクトの色(例えば、空の青)である。第2色変換プロファイルPF2は、印刷画像において、原稿の色を再現できるように調整されている。これは、コピーによって印刷された印刷画像を再度コピーすることが繰り返された場合に、元の原稿の色とは大きく異なる色を有する画像が印刷される不都合を抑制するためである。
【0021】
印刷装置200は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)のそれぞれのインク(液滴)を用いてドットを用紙M上に形成可能であり、これによってカラー印刷を行う。印刷装置200は、印刷ヘッド210とヘッド駆動部220と主走査部230と搬送部240とインク供給部250とを備えている。
【0022】
図2は、印刷装置200の概略構成を示す図である。
図2(A)に示すように、主走査部230は、キャリッジ233と、摺動軸234と、ベルト235と、複数個のプーリ236、237と、を備えている。キャリッジ233は、印刷ヘッド210を搭載する。摺動軸234は、キャリッジ233を主走査方向(
図2(A)のX軸方向)に沿って往復動可能に保持する。ベルト235は、プーリ236、237に巻き掛けられ、一部がキャリッジ233に固定されている。プーリ236は、図示しない主走査モータの動力によって回転する。主走査モータがプーリ236を回転させると、キャリッジ233が摺動軸234に沿って移動する。これによって、用紙Mに対して主走査方向に沿って印刷ヘッド210を往復動させる主走査が実現される。
【0023】
搬送部240は、用紙Mを保持しつつ、搬送方向(
図2(A)の-Y方向)に用紙Mを搬送する。以下では、搬送方向の上流側(+Y側)を、単に、上流側とも呼び、搬送方向の下流側(-Y側)を単に下流側とも呼ぶ。詳細な図示を省略するが、搬送部240は、印刷ヘッド210よりも上流側で用紙Mを保持する上流ローラ対と、印刷ヘッド210よりも下流側で用紙Mを保持する下流ローラ対と、モータと、を備える。搬送部240は、モータの動力で、これらのローラを駆動することによって用紙Mを搬送する。
【0024】
インク供給部250は、印刷ヘッド210にインクを供給する。インク供給部250は、カートリッジ装着部251と、チューブ252と、を備えている。カートリッジ装着部251には、内部にインクが収容された容器である複数個のインクカートリッジMC、CC、YC、KCが着脱可能に装着され、これらのインクカートリッジからインクが供給される。各インクカートリッジ内のインクは、カートリッジ装着部251とチューブ252とを介して、印刷ヘッド210に供給される。
【0025】
図2(B)は、-Z側から見た印刷ヘッド210の構成を示す図である。
図2(B)に示すように、印刷ヘッド210のノズル形成面111は、搬送部240によって搬送される用紙Mと対向する面である。ノズル形成面111には、複数のノズルNZからなる複数のノズル列、すなわち、上述したC、M、Y、Kの各インクを吐出するノズル列NK、NY、NC、NMが形成されている。各ノズル列は、複数個のノズルNZを含んでいる。複数個のノズルNZは、搬送方向(-Y方向)の位置が互いに異なり、搬送方向に沿って所定のノズル間隔NTで並ぶ。ノズル間隔NTは、複数のノズルNZの中で搬送方向に隣り合う2個のノズルNZ間の搬送方向の長さである。これらのノズル列を構成するノズルのうち、最も上流側(+Y側)に位置するノズルNZを、最上流ノズルNZuとも呼ぶ。また、これらのノズルのうち、最も下流側(-Y側)に位置するノズルNZを、最下流ノズルNZdと呼ぶ。最上流ノズルNZuから最下流ノズルNZdまでの搬送方向の長さに、さらに、ノズル間隔NTを加えた長さを、ノズル長Dとも呼ぶ。
【0026】
ノズル列NK、NY、NC、NMの主走査方向の位置(X方向の位置)は、互いに異なり、副走査方向の位置は、互いに重複している。例えば、
図2(B)の例では、X方向の上流側から下流側に向かって、ノズル列NK、NY、NC、NMの順で配置されている。
【0027】
各ノズルNZは、印刷ヘッド210の内部に形成されたインク流路(図示省略)に接続されている。印刷ヘッド210の内部の各インク流路に沿ってインクを吐出させるためのアクチュエータ(図示省略、本実施例では、圧電素子)が設けられている。
【0028】
ヘッド駆動部220(
図1)は、主走査部230による主走査中に制御装置100から供給される印刷データに従って印刷ヘッド210内の各アクチュエータを駆動する。これによって、搬送部240によって搬送される用紙M上に印刷ヘッド210のノズルNZからインクが吐出されて、ドットが形成される。ヘッド駆動部220は、アクチュエータに供給する駆動電圧を変更することで、複数種類のサイズのドットを用紙M上に形成できる。
【0029】
読取装置300は、イメージセンサを用いて、原稿を光学的に読み取ることによって、該原稿を含むスキャン画像を示すスキャンデータを生成する。イメージセンサは、例えば、CCDやCMOSなどの複数個の光電変換素子が一列に並んで配置された構造を備える一次元イメージセンサである。スキャンデータは、例えば、RGB値で画素ごとの色を表すRGB画像データである。RGB値は、例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)との3個の成分値を含む色値である。
【0030】
A-2.印刷の概要
印刷装置200は、制御装置100の制御に従って、部分印刷と、副走査と、を交互に複数回実行することで用紙Mに印刷画像OIを印刷する。部分印刷は、主走査部230による主走査を行いつつ印刷ヘッド210の複数個のノズルNZの少なくとも一部からインクを吐出することによって行われる。部分印刷によって、用紙Mにドットが形成され、印刷画像OIの部分画像(後述)が用紙Mに印刷される。
【0031】
図3は、印刷装置200の動作の説明図である。
図3(A)~(C)には、用紙Mに印刷される印刷画像OIが図示されている。印刷画像OIは、複数個の部分画像を含んでいる。
図3の例では、印刷画像OIは、部分画像PI1~PI5を含んでいる。各部分画像は、1回の部分印刷によって印刷される画像である。部分印刷の印刷方向は、往路方向と復路方向とのいずれかである。すなわち、部分印刷は、往路方向(
図3の-X方向)の主走査を行いつつドットを形成する往路印刷と、復路方向(
図3の+X方向)の主走査を行いつつドットを形成する復路印刷と、のいずれかである。
図3にて部分画像内には、+X方向または-X方向の実線の矢印が付されている。-X方向の実線の矢印が付された部分画像(例えば、
図3(A)のPI1、PI3、PI5)は、往路印刷によって印刷される往路部分画像である。+X方向の実線の矢印が付された部分画像(例えば、
図3(A)のPI2、PI4)は、復路印刷によって印刷される復路部分画像である。
【0032】
図3において、1個の部分画像(例えば、部分画像PI1)から、+Y方向に隣接する他の部分画像(例えば、部分画像PI2)に向かう+Y方向の矢印は、用紙Mの搬送(副走査)に対応している。すなわち、
図3において+Y方向の矢印は、用紙Mが搬送されることによって、
図3に図示される用紙Mに対して印刷ヘッド210が+Y方向に移動することを示す。
図3に示すように、本実施例の印刷は、いわゆる1パス印刷であり、各部分画像の搬送方向の長さ、および、1回の用紙Mの搬送量は、ノズル長Dである。
【0033】
印刷画像OIは、双方向印刷と片方向印刷とのいずれかを用いて印刷される。双方向印刷は、往路印刷と復路印刷とを組み合わせて実行される印刷である。双方向印刷には、
図3(A)の完全双方向印刷と、
図3(B)の部分双方向印刷と、の2種類がある。完全双方向印刷は、往路印刷と復路印刷とが交互に実行される印刷であり、往路印刷が連続で実行されることや復路印刷が連続で実行されることがない印刷である。部分双方向印刷は、往路印刷と復路印刷との両方が実行されるが、往路印刷が連続で実行されることがある印刷である。例えば、
図3(B)の例では、部分画像PI3、PI4は、2回の連続する往路印刷で印刷される。片方向印刷は、往路印刷のみで実行される印刷である。これに代えて、片方向印刷は、復路印刷のみで実行される印刷であっても良い。
【0034】
なお、本明細書の各実施例では、双方向印刷の印刷解像度およびパス数と、片方向印刷の印刷解像度およびパス数と、は等しい。パス数は、印刷画像OIの各領域を印刷する際に行われる部分印刷の回数である。本実施例では、双方向印刷も片方向印刷も、1個の部分画像を1回の部分印刷のみで印刷する1パス印刷である(パス数=1)。また、双方向印刷のX方向およびY方向の印刷解像度は、片方向印刷のX方向およびY方向の印刷解像度と等しい。
【0035】
連続して同じ印刷方向の部分印刷が行われる場合には、連続する2回の部分印刷の間に、ドットを形成することなく主走査が行われる。このように、ドットを形成することなく(すなわち、部分画像を印刷することなく)行われる主走査を、無印刷主走査とも呼ぶ。
図3(B)、
図3(C)の破線の矢印は、無印刷主走査を示す。例えば、
図3(B)では、部分画像PI3を印刷する往路印刷と部分画像PI4を印刷する往路印刷との間に、無印刷主走査が行われる。
図3(C)の片方向印刷では、往路印刷が行われる度に、無印刷主走査が行われる。無印刷主走査が行われることで、無印刷主走査が行われない場合と比較して、印刷に要する印刷時間が長くなるため、印刷速度は、完全双方向印刷、部分双方向印刷、片方向印刷の順に速い。
【0036】
ここで、
図2(B)に示すように、印刷ヘッド210に示すように、CMYKのノズル列NC、NM、NY、NKは、主走査方向の位置が互いに異なっている。このために、用紙M上の同じ位置にCMYKの各ドットを形成する場合に、往路印刷と復路印刷との間で、ドットの形成順序が異なる。例えば、
図2(B)の例では、往路印刷では、K、Y、C、Mの順番でドットが形成され、復路印刷では、逆に、M、C、Y、Kの順番でドットが形成される。この結果、複数色のドットが重なり合う領域では、往路部分画像と復路部分画像との間でドットが重なる順序が異なる。このために、往路部分画像と復路部分画像との間では、互いに同じドットデータを用いて印刷したとしても、印刷される色味が互いに異なる場合がある。このような往路部分画像と復路部分画像との間で印刷される色味が異なる現象を、以下では、往復間色差と呼ぶ。
【0037】
色評価テーブルCP1、CP2は、往復間色差の程度に関する情報が記録されたテーブルである。具体的には、色評価テーブルCP1、CP2は、RGB値のそれぞれについて、往復間色差の程度を示す重みを規定したルックアップテーブルである。色評価テーブルCP1、CP2は、後述する印刷制御処理にて用いられる。第1色評価テーブルCP1は、コピー以外の印刷が行われる場合に用いられ、第2色評価テーブルCP2は、コピーのための印刷が行われる場合に用いられる。
【0038】
図4は、第1色評価テーブルCP1の説明図である。
図4(A)には、RGB表色系の色空間であるRGB色空間CCが示されている。RGB色空間CCの8つの頂点のそれぞれに、色を示す符号(具体的には、黒頂点Vk(0,0,0)、赤頂点Vr(255,0,0)、緑頂点Vg(0,255,0)、青頂点Vb(0,0,255)、シアン頂点Vc(0,255,255)、マゼンタ頂点Vm(255,0,255)、イエロ頂点Vy(255,255,0)、白頂点Vw(255,255,255))が付されている。括弧内の数字は、(R、G、B)の各色成分の値を示している。各グリッドGDのRの値は、Rの範囲(ここでは、ゼロから255)をQ等分して得られるQ+1個の値のうちのいずれかである。各グリッドGDの緑Gと青Bとのそれぞれの値も同様である。本実施例では、Q=9であるので、RGB色空間CC内には、9の3乗個(729個)のグリッドGDが設定される。
【0039】
図4(B)には、第1色評価テーブルCP1の一例が示されている。第1色評価テーブルCP1では、729個のグリッドGDに対応するRGB値のそれぞれに、重みWtが対応付けられている。例えば、評価者は、特定のグリッドGDのRGB値を、第1色変換プロファイルPF1を用いて変換して得られるCMYK値に基づいて印刷されるカラーパッチと、該グリッドGDのRGB値を、第1色変換プロファイルPF1を用いて変換して得られるCMYK値に基づいて印刷されるカラーパッチと、を印刷する。評価者は、2個のカラーパッチを測色して、測色値を取得する。測色値は、例えば、印刷装置200などのデバイスに依存しない色空間の色値、本実施例では、CIELAB色空間の色値(以下、Lab値とも呼ぶ)である。評価者は、取得される2個の測色値の色差を、特定のグリッドGDに対応する往復間色差として算出する。評価者は、往復間色差が大きいほど大きな重みWtを、特定のグリッドGDに対応づける重みWtとして決定する。このようにして、729個のグリッドGDに対応付ける重みWtが決定されて、第1色評価テーブルCP1が作成される。
【0040】
上述したように、往復間色差は、往路部分画像と復路部分画像との間でドットが重なる順序が異なることに起因する。このために、印刷に用いられるC、M、Y、Kのインクのうち、2種類のインクを用いて表現される特定色(色差発生色とも呼ぶ)にて、往復間色差が大きくなる。色差発生色は、例えば、CインクとYインクとの両方を用いて表現される緑、特に、比較的多量のCインクとYインクとの両方を用いて表現される濃い緑を含む。また、色差発生色は、MインクとYインクとの両方を用いて表現される赤、CインクとMインクとの両方を用いて表現される青、C、M、Yインクを用いて表現されるグレーを含み得る。第1色評価テーブルCP1において、これらの色差発生色に対応するグリッドGDには、他の色に対応するグリッドGDよりも大きな重みWtが対応付けられる。また、C、M、Y、Kのインクのうち、1種類のインクのみを用いて表現される一次色は、用紙上で複数種類のインクが重なり合うことなく表現される。このために、一次色については、往復間色差は生じない。したがって、一次色に対応するグリッドGDには、重みWtとして「0」が対応付けられている。
【0041】
第2色評価テーブルCP2は、第1色評価テーブルCP1と同様に、729個のグリッドGDに対応するRGB値のそれぞれに、重みWtが対応付けられている。第2色評価テーブルCP2は、第1色評価テーブルCP1と同様の方法で作成されている。ただし、第2色評価テーブルCP2の作成時に、カラーパッチを印刷する際には、第1色変換プロファイルPF1に代えて、第2色変換プロファイルPF2が用いられる。このために、第1色評価テーブルCP1と第2色評価テーブルCP2とでは、各グリッドGDに対応する重みWtが異なっている。
【0042】
A-3.印刷システム1000の動作
A-3-1.印刷制御処理
制御装置100のCPU110(
図1)は、印刷制御処理を実行することによって、印刷画像OIに対応する対象画像データを用いて、印刷装置200に印刷画像OIを印刷させる。
図5は、印刷制御処理のフローチャートである。
【0043】
S5では、CPU310は、対象画像データを取得する。本実施例では、対象画像データは、以下の5つのパターンで取得される。なお、取得される対象画像データは、例えば、ドットデータもしくはRGB画像データである。対象画像データがドットデータでもRGB画像データでもない場合(例えば、所定のページ記述言語で記述されたデータである場合)には、ラスタライズ処理が実行されてRGB画像データに変換される。
【0044】
(1)第1パターンでは、対象画像データはパーソナルコンピュータ30から取得される。パーソナルコンピュータ30には、アプリケーションプログラムとしてドライバプログラムDP(
図1)がインストールされている。ドライバプログラムDPは、例えば、複合機10の製造者によって提供される。パーソナルコンピュータ30のCPU(図示省略)は、ドライバプログラムDPを実行することによってプリンタドライバとして機能する。プリンタドライバは、例えば、ユーザによって指定された画像データを用いてドットデータを生成する。具体的には、プリンタドライバは、画像データをラスタライズしてRGB画像データを生成する。プリンタドライバは、RGB画像データに対して色変換処理を実行して、CMYK画像データを生成する。CMYK画像データは、上述したCMYK値によって画素ごとの色を表す画像データである。ドライバプログラムDPには、上述した第1色変換プロファイルPF1が組み込まれており、プリンタドライバは、第1色変換プロファイルPF1を用いて色変換処理を実行する。プリンタドライバは、CMYK画像データに対してハーフトーン処理を実行して、ドットデータを生成する。ハーフトーン処理は、公知の方法、例えば、誤差収集法を用いて実行される。生成されるドットデータは、色成分ごと(本実施例ではCMYKの成分ごと)、かつ、画素ごとに、ドットの形成状態を示すデータである。ドットの形成状態は、例えば、「ドット有り」と「ドット無し」とのうちのいずれかである。これに代えて、ドットの形成状態は、「大ドット」、「中ドット」、「小ドット」、「ドット無し」のいずれかであってもよい。CMYK画像データとドットデータの各画素の値は、印刷に用いられるCMYKのインクに対応する成分値を含む。従って、CMYK画像データとドットデータは、CMYK表色系の色値を画素ごとに含む画像データである、と言うことができる。このように、第1パターンでは、対象画像データは、パーソナルコンピュータ30(プリンタドライバ)から送信されるドットデータである。例えば、制御装置100のCPU110は、該ドットデータを、有線ネットワークIF160を介して取得する。
【0045】
(2)第2パターンでは、対象画像データは、スマートフォン40から取得される。スマートフォン40には、アプリケーションプログラムとして携帯端末用のプリントアプリケーションプログラムAPがインストールされている。スマートフォン40のCPU(図示省略)は、プリントアプリケーションプログラムAPを実行することによってプリントアプリとして機能する。プリントアプリケーションプログラムAPは、複合機10の製造者とは異なる事業者、例えば、スマートフォン40の製造者やスマートフォン40のOS(Operating System)の提供者によって提供される。プリントアプリは、例えば、ユーザによって指定された画像データを、所定のデータ形式に変換し、所定の圧縮形式で圧縮して複合機10に送信する。このように、第2パターンでは、対象画像データは、スマートフォン40(プリントアプリ)から送信される画像データである。例えば、制御装置100のCPU110は、該画像データを、無線ネットワークIF170を介して取得する。
【0046】
(3)第3パターンでは、対象画像データは、リムーバブルメモリとしてのUSBメモリ50に格納された画像データである。第3パターンでは、制御装置100のCPU110は、USBIF180を介して、USBIF180に接続されたUSBメモリ50から対象画像データを読み出すことによって、対象画像データを取得する。なお、図示は省略するが、USBメモリ50に限らず、SDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの他のリムーバブルメモリから読み出すことによって取得される対象画像データも第3パターンに該当する。
【0047】
(4)第4パターンでは、対象画像データは、ファクシミリデータである。ファクシミリデータは、例えば、FAXG3などの規格に従って圧縮された画像データである。第4パターンでは、制御装置100のCPU110は、電話回線IF190を介して、アナログ電話回線のネットワーク60に接続されたデバイス(図示省略)からファクシミリデータを受信することによって、対象画像データとしてのファクシミリデータを取得する。ファクシミリデータは、一般的には、1個の成分値のみを画素ごとに含む単色のドットデータである。
【0048】
(5)第5パターンでは、対象画像データは、読取装置300によって生成されるスキャンデータである。第5パターンでは、制御装置100のCPU110は、ユーザの指示に基づいて読取装置300を制御して、読取装置300に原稿を読み取らせてスキャンデータを生成させることによって、対象画像データとしてのスキャンデータを取得する。
【0049】
第5パターンは、上述したコピーのための印刷が行われるパターンであり、第1~第4パターンは、コピーとは異なる印刷が行われるパターンである。
【0050】
S10では、CPU110は、評価条件決定処理を実行する。評価条件決定処理は、後述する印刷方向決定処理(S25、
図7)にて、注目部分画像の往復間色差の程度を評価する際に用いられる評価条件を決定する。評価条件決定処理については後述する。
【0051】
S15では、CPU110は、搬送部240を制御して、給紙を行う。給紙は、図示しない用紙トレイから1枚の用紙Mを所定の初期位置まで搬送させる制御である。
【0052】
S20では、CPU110は、対象画像データのうち、1回の部分印刷分の部分画像データを、注目部分画像データとして選択する。なお、注目部分画像データに対応する部分画像を、注目部分画像とも呼ぶ。また、注目部分画像を印刷する部分印刷を注目部分印刷とも呼ぶ。
【0053】
S25では、CPU110は、注目部分印刷の印刷方向(注目印刷方向とも呼ぶ)を決定する印刷方向決定処理を実行する。印刷方向決定処理は、注目印刷方向を往路方向と復路方向とのいずれかに決定する処理である。印刷方向決定処理については、後述する。
【0054】
S30では、CPU110は、注目部分画像データがドットデータであるか否かを判断する。S5にて取得された対象画像データが、上述した第1パターンで取得されるCMYKのドットデータである場合、または、第4パターンで取得されるファクシミリデータ(単色のドットデータ)である場合には、注目部分画像データはドットデータであると判断される。S5にて取得された対象画像データが、上述した第1パターンで取得されるCMYKのドットデータである場合、または、第4パターンで取得されるファクシミリデータ(単色のドットデータ)である場合には、注目部分画像データはドットパターンとは異なる画像データであると判断される。
【0055】
注目部分画像データがドットデータとは異なる画像データである場合には(S30:NO)、すなわち、注目部分画像データがRGB画像データである場合には、S40にて、CPU110は、注目部分画像データ(RGB画像データ)に対して色変換処理を実行して、注目部分画像データをCMYK画像データに変換する。色変換処理は、S5にて取得された対象画像データが上述した第5パターンにて取得されたスキャンデータである場合には、コピー用の第2色変換プロファイルPF2を用いて実行される。色変換処理は、S5にて取得された対象画像データが上述した第2、第3パターンにて取得された画像データである場合には、第1色変換プロファイルPF1を用いて実行される。
【0056】
S45では、CPU110は、色変換済みの注目部分画像データ(CMYK画像データ)に対してハーフトーン処理を実行して、注目部分印刷のための部分印刷データを生成する。ハーフトーン処理は、公知の方法、例えば、誤差収集法を用いて実行される。部分印刷データは、上述したように、色成分ごと、かつ、画素ごとに、ドットの形成状態を示すドットデータである。
【0057】
注目部分画像データがドットデータである場合には(S30:YES)、CPU110は、S40、S45をスキップして、S50に処理を進める。この場合には、注目部分画像データがドットデータであるために、注目部分画像データが、注目部分印刷のための部分印刷データとしてそのまま用いられる。
【0058】
S50では、CPU110は、注目部分印刷のための部分印刷データと、印刷方向決定処理にて決定済みの注目印刷方向を示す方向情報と、を用いて、印刷装置200の主走査部230とヘッド駆動部220とを制御して、部分印刷を実行させる。例えば、印刷装置200は、方向情報が往路方向を示す場合には、往路印刷を実行して、注目部分画像を印刷し、方向情報が復路方向を示す場合には、復路印刷を実行して、注目部分画像を印刷する。
【0059】
S55では、CPU110は、印刷装置200の搬送部240を制御して、用紙Mを搬送する。例えば、ノズル長Dだけ用紙Mの搬送が行われる。
【0060】
S60では、CPU110は、対象画像データに含まれる全ての部分画像データを処理したか否かを判断する。未処理の部分画像データがある場合には(S60:NO)、CPU110は、S20に処理を戻す。全ての部分画像データが処理された場合には(S60:YES)、S65にて、CPU110は、印刷装置200の搬送部240を制御して、用紙Mを排紙トレイ(図示省略)まで排紙する。排紙が行われると印刷制御処理は終了される。
【0061】
A-3-2.評価条件決定処理
図5のS10の評価条件決定処理について説明する。評価条件決定処理は、上述したように、印刷方向決定処理(S25、
図7)にて注目部分画像の往復間色差の程度を評価する際に用いられる評価条件を決定する処理である。決定される評価条件は、評価値EV(後述)を算出する際に用いるべき色評価テーブル(使用テーブルとも呼ぶ)と、評価値EVとの比較に用いるべき閾値(使用閾値とも呼ぶ)と、の2種類である。
【0062】
図6は、評価条件決定処理のフローチャートである。S100では、CPU110は、
図5のS5にて取得された対象画像データが、上述した第5パターンにて取得されるスキャンデータであるか否かを判断する。換言すれば、本ステップでは、対象画像データに基づく印刷が、コピーのための印刷であるか否かが判断される。
【0063】
対象画像データがスキャンデータである場合には(S100:YES)、S105にて、CPU110は、コピー用の第2色評価テーブルCP2を、使用テーブルとして決定する。S110では、CPU110は、コピー用の閾値THsを、使用閾値として決定する。
【0064】
対象画像データがスキャンデータとは異なるデータである場合には(S100:NO)、S115にて、CPU110は、第1色評価テーブルCP1を、使用テーブルとして決定する。
【0065】
S120では、CPU110は、
図5のS5にて取得された対象画像データが、上述した第4パターンにて取得されるファクシミリデータであるか否かを判断する。換言すれば、本ステップでは、対象画像データに基づく印刷が、ファクシミリデータが受信されたことに基づく印刷であるか否かが判断される。
【0066】
対象画像データがファクシミリデータである場合には(S120:YES)、S125にて、CPU110は、ファックス用の閾値THfを、使用閾値として決定する。
【0067】
対象画像データがファクシミリデータとは異なるデータである場合には(S120:NO)、S130にて、CPU110は、該対象画像データが、上述した第3パターンのUSBメモリ50から取得された画像データであるか否かを判断する。換言すれば、本ステップでは、対象画像データに基づく印刷が、USBメモリ50などのリムーバブルメモリ(リムーバブルメディアとも呼ぶ)から直接取得された画像データに基づく印刷(メディア印刷とも呼ぶ)であるか否かが判断される。
【0068】
対象画像データがUSBメモリから取得された画像データである場合には(S130:YES)、S135にて、CPU110は、メディア印刷用の閾値THmを、使用閾値として決定する。
【0069】
対象画像データがUSBメモリから取得された画像データとは異なるデータである場合には(S130:NO)、S140にて、CPU110は、該対象画像データが、上述した第1パターンにて取得されるCMYKの成分値を含むドットデータであるか否かを判断する。換言すれば、本ステップでは、対象画像データに基づく印刷が、プリンタドライバとして機能する端末装置(例えば、パーソナルコンピュータ30)から送信されるドットデータに基づく印刷(ドライバ印刷とも呼ぶ)であるか否かが判断される。
【0070】
対象画像データがCMYKの成分値を含むドットデータである場合には(S140:YES)、S145にて、CPU110は、ドライバ印刷用の閾値THdを、使用閾値として決定する。
【0071】
対象画像データがCMYKの成分値を含むドットデータとは異なるデータである場合には(S140:NO)、本実施例では、対象画像データは、第2パターンにて取得される画像データである。第2パターンにて取得される画像データに基づく印刷は、上述したように、プリントアプリとして機能する端末装置(例えば、スマートフォン40)から送信される画像データに基づく印刷(アプリ印刷とも呼ぶ)である。このために、この場合には、S150にて、CPU110は、アプリ印刷用の閾値THaを、使用閾値として決定する。
【0072】
使用テーブルと使用閾値とが決定されると、評価条件決定処理は終了される。ドライバ印刷用の閾値THdと、コピー用の閾値THsと、アプリ印刷用の閾値THaと、メディア印刷用の閾値THmと、ファックス用の閾値THfと、は、THd>THs>THa>THm>THfの関係を満たす。この理由については後述する。
【0073】
A-3-3.印刷方向決定処理
図5のS25の印刷方向決定処理について説明する。評価条件決定処理は、上述したように、注目印刷方向を往路方向と復路方向とのいずれかに決定する処理である。
図7は、印刷方向決定処理のフローチャートである。
【0074】
S210では、CPU110は、注目部分画像を、複数のブロックBLに分割する。
図8は、部分画像と複数のブロックとの説明図である。
図8の例では、部分画像PI2が、注目部分画像として、複数のブロックBLに分割されている。ブロックBLの形状は、矩形状である。複数のブロックBLは、主走査方向(
図8のX方向)と搬送方向(
図8のY方向)とに沿って格子状に隙間無く配置されている。ブロックBLの搬送方向の高さBHと主走査方向の幅BWとは、予め決められている。
【0075】
S215では、CPU110は、注目部分画像の複数のブロックBLのうち未処理の1つのブロックBLを注目ブロックとして選択する。
【0076】
S220では、CPU110は、色評価テーブルCP1、CP2のうち、評価条件決定処理にて使用テーブルとして決定されたテーブルを用いて、注目ブロックの評価値EVを算出する。評価値EVは、注目部分印刷が往路方向で行われる場合に印刷される画像と復路方向で行われる場合に印刷される画像との間の色の相違(上述の往復間色差)の程度を示す値である。具体的には、注目部分画像データがRGB画像データである場合には、CPU110は、注目ブロックに含まれる複数の画素のそれぞれの画素の値(RGB値)と使用テーブルとを用いて、複数の画素のそれぞれの重みWtを特定する。注目部分画像データがCMYK画像データである場合には、CPU110は、注目ブロックに含まれる複数の画素のそれぞれの画素の値(CMYK値)を、第1色変換プロファイルPF1を用いてRGB値に変換し、該RGB値と使用テーブルとを用いて、複数の画素のそれぞれの重みWtを特定する。例えば、使用テーブルの複数のグリッドGD(
図4(A))のうち、特定の画素の値(RGB値)に最も近いグリッドGDが特定され、使用テーブルにて該グリッドGDに対応付けられた重みWtが、該特定の画素の重みWtとされる。そして、CPU110は、複数の画素の重みWtの平均値を、注目ブロックの評価値EVとして算出する。注目部分画像データがドットデータである場合(上述した第1パターンの場合)には、CPU110は、ドットデータに対応するRGB画像データをパーソナルコンピュータ30から取得し、該RGB画像データを用いて、評価値EVを算出する。
【0077】
S225ではCPU110は、評価値EVが、上述した閾値THa、THs、THm、THf、THdのうち、評価条件決定処理にて使用閾値として決定された閾値より大きいか否かを判断する。評価値EVが使用閾値より大きい場合には(S225:YES)、S240で、CPU110は、注目印刷方向を予め定められた方向(本実施例では、往路方向)に決定する。注目印刷方向が決定されると、印刷方向決定処理は終了される。
【0078】
評価値EVが使用閾値以下である場合には(S225:NO)、S230にて、CPU110は、注目部分画像の全てのブロックの処理が終了したか否かを判断する。未処理のブロックが残っている場合には(S230:NO)、CPU110は、S215に戻って、未処理のブロックの処理を実行する。全てのブロックの処理が終了した場合には(S230:YES)、S235にて、CPU110は、注目印刷方向を、直前の部分印刷の印刷方向(直前印刷方向)とは反対方向に決定する。すなわち、直前印刷方向が往路方向である場合には、注目印刷方向は復路方向に決定され、直前印刷方向が復路方向である場合には、注目印刷方向は往路方向に決定される。注目印刷方向が決定されると、印刷方向決定処理は終了される。
【0079】
以上の説明から解るように印刷方向決定処理では、注目部分印刷の少なくとも1つのブロックBLについて評価値EVが使用閾値より大きい場合には(S225にてYES)、換言すれば、仮に注目部分印刷を復路方向で印刷すると往路印刷で印刷される他の部分画像との間の往復間色差が目立つと推定される場合には、注目印刷方向は、往路方向に決定される(S240)。これによって、往復間色差に起因する色ムラが印刷画像OIに発生することを抑制することができ、往復間色差に起因する画質の低下を抑制できる。さらに、注目部分印刷の全てのブロックBLについて評価値EVが使用閾値以下である場合には(S230にてNO)、換言すれば、注目部分印刷を復路方向で印刷しても往路印刷で印刷される他の部分画像との間の往復間色差が目立たないと推定される場合には、注目印刷方向は、直前印刷方向が往路方向であることを条件に復路方向に決定される(S240)。これによって、印刷速度の低下を抑制することができる。すなわち、本実施例の印刷方向決定処理によれば、往復間色差に起因する画質の低下を抑制しつつ、印刷速度の低下を抑制することができる。以上の説明から解るように、本実施例において、全てのブロックBLについて評価値EVが使用閾値以下であることは、注目部分画像について往復間色差が基準以上であることを示す評価条件である、と言うことができる。そして、
図7のS220~S230の処理は、該評価条件を用いて、注目部分画像について往復間色差が基準以上であるか否かを判断する処理である、と言うことができる。
【0080】
以上説明した第1実施例によれば、制御装置100は、印刷画像OIに対応する対象画像データを取得する画像取得処理(
図5のS5)と、対象画像データを用いて、印刷画像OIに含まれる複数個の部分画像PI1~PI5(
図3)のそれぞれについて、往復間色差が基準以上であるか否かを判断する判断処理(
図7のS220~S230)と、複数個の部分画像PI~PI5のそれぞれの印刷方向を、判断処理の判断に基づき往路方向と復路方向とのいずれかに決定する決定処理(
図7のS235、S240)と、部分印刷と副走査とを、対象画像データを用いて印刷ヘッド210、主走査部230および搬送部240に複数回実行させる印刷処理(
図5のS30~S55)と、を実行する。
【0081】
そして、上記の判断処理(
図7のS220~S230)において用いられる評価条件は、評価条件決定処理において対象画像データの種類に応じて互いに異なる条件に決定される(
図6)。すなわち、制御装置100は、対象画像データが第1種の画像データである場合には、第1条件が満たされる場合に往復間色差が基準以上であると判断し、対象画像データが第2種の画像データである場合には、第1条件とは異なる第2条件が満たされる場合に往復間色差が基準以上であると判断する。この結果、往路方向と復路方向との部分印刷を用いた印刷(双方向印刷)が可能な印刷装置200において、印刷に用いられる対象画像データに応じた適切な印刷方向で印刷を実行できる。
【0082】
上記の説明からも解るように、往路方向と復路方向との双方向で印刷が行われると、印刷速度は速くなるが、往復間色差に起因する画質の低下が発生しやすい。往路方向と復路方向とのうちの片方向で印刷が行われると、往復間色差に起因する画質の低下を抑制できるが、印刷速度が低下する。本実施例によれば、上述のように印刷に用いられる対象画像データに応じた適切な印刷方向で印刷を実行できる。したがって、例えば、対象画像データに応じて適切な画質と印刷速度が実現されるように適切な印刷方向で印刷を実行できる。以下では、より具体的に説明する。
【0083】
例えば、上述した第3パターンにてUSBメモリ50やSDカードなどのリムーバブルメモリから読み出される画像データに基づく印刷では、第1パターンや第2パターンにて端末装置(パーソナルコンピュータ30やスマートフォン40)から送信される画像データに基づく印刷よりも画質に対する要求が高いと考えられる。これは、リムーバブルメモリから読み出される画像データは、デジタルカメラなどのデバイスを用いて生成される画像データや、他人から受け取った画像データや、比較的サイズの大きな画像データ(例えば、RAWデータ)である確率が、端末装置から送信される画像データよりも高いと考えられるためである。このために、リムーバブルメモリから読み出される画像データに基づく印刷では、各部分画像の印刷方向が特定方向(本実施例では往路方向)に決定される確率を、端末装置から送信される画像データに基づく印刷よりも高くすることが好ましいと考えられる。本実施例では、対象画像データがリムーバブルメモリから読み出される画像データである場合に用いられる閾値THmは、対象画像データが端末装置から読み出される画像データである場合に用いられる閾値THa、THdよりも小さい。換言すれば、対象画像データが端末装置から送信される画像データである場合に用いられる評価条件は、往復間色差が第1基準(例えば、閾値THa、THd相当の基準)以上であることを示す条件であり、対象画像データがリムーバブルメモリから読み出される画像データである場合に用いられる評価条件は、往復間色差が第1基準よりも低い第2基準(例えば、閾値THm)以上であることを示す条件である。この結果、リムーバブルメモリから読み出される画像データが用いられる場合には、端末装置から送信される画像データが用いられる場合と比較して画質を優先した印刷を実行することができる。また、端末装置から送信される画像データが用いられる場合には、リムーバブルメモリから読み出される画像データが用いられる場合と比較して印刷速度を優先した印刷を実行することができる。
【0084】
さらに、対象画像データを生成するアプリケーションプログラムによって、画質や印刷速度に対する要求が異なる場合がある。具体的には、第1パターンにて取得される画像データに基づく印刷では、双方向印刷を行った場合に印刷画像OIに予測できない画質の低下が発生する可能性が、第2パターンにて取得される画像データに基づく印刷よりも低い。この理由を説明する。第1パターンで取得される画像データは、ドライバプログラムDPによって生成される。ドライバプログラムDPは、複合機10の製造者によって提供される。このために、第1パターンで取得される画像データの画質は、予め想定される画質となる。これに対して、第2パターンにて取得される画像データは、プリントアプリケーションプログラムAPによって生成される。プリントアプリケーションプログラムAPは、複合機10の製造者とは異なる事業者によって提供される。このために、第2パターンで取得される画像データの画質は、予測が困難である。例えば、プリントアプリケーションプログラムAPによって実行される色変換処理や圧縮処理によっては、第2パターンで取得される画像データによって示される画像は、想定外の色やノイズを含む場合がある。このような場合には、評価値EVによって往復間色差を適切に評価できず、往復間色差に起因する画質の低下が想定より大きくなり、過度に印刷画像OIの画質が低下する可能性がある。また、想定外のノイズなどの画質低下要因を含む画像に、さらに、往復間色差に起因する画質低下が加わると、過度に印刷画像OIの画質が低下する可能性がある。
【0085】
以上のことから、第2パターンにて取得される画像データに基づく印刷では、第1パターンにて取得される画像データに基づく印刷よりも往復間色差に起因する画質の低下を抑制することで、過度に印刷画像OIの画質が低下することを抑制すること好ましいと考えられる。本実施例では、対象画像データが第2パターンにて取得される画像データである場合に用いられる閾値THaは、対象画像データが第1パターンにて取得される画像データである場合に用いられる閾値THdよりも小さい。換言すれば、対象画像データがドライバプログラムDPを実行することによって生成される画像データである場合に用いられる評価条件は、往復間色差が第3基準(例えば、閾値THd相当の基準)以上であることを示す条件であり、対象画像データがプリントアプリケーションプログラムAPによって生成される画像データである場合に用いられる評価条件は、往復間色差が第3基準よりも低い第4基準(例えば、閾値THa相当の基準)以上であることを示す条件である。この結果、プリントアプリケーションプログラムAPによって生成される画像データが用いられる場合には、ドライバプログラムDPによって生成される画像データが用いられる場合と比較して画質を優先した印刷を実行することができる。また、ドライバプログラムDPによって生成される画像データが用いられる場合には、プリントアプリケーションプログラムAPによって生成される画像データが用いられる場合と比較して印刷速度を優先した印刷を実行することができる。
【0086】
さらに、スキャンデータによって示される画像(スキャン画像とも呼ぶ)は、イメージセンサから出力される信号のバラツキに起因するノイズやムラを含む。このために、スキャンデータを用いて印刷される印刷画像OIに、さらに、往復間色差される画像との間の色差に起因する画質低下が加わると、過度に印刷画像OIの画質が低下する可能性がある。このために、上記第5パターンのコピーのための印刷のようにスキャンデータが用いられる場合には、第1パターンのようにドライバプログラムDPによってスキャンデータを用いることなく生成される画像データが用いられる場合よりも往復間色差に起因する画質の低下を抑制することで、過度に印刷画像OIの画質が低下することを抑制すること好ましいと考えられる。本実施例では、対象画像データが第5パターンにて取得されるスキャンデータである場合に用いられる閾値THsは、対象画像データが第1パターンにて取得される画像データである場合に用いられる閾値THdよりも小さい。換言すれば、対象画像データがドライバプログラムDPによって生成される画像データである場合に用いられる評価条件は、往復間色差が第7基準(例えば、閾値THd相当の基準)以上であることを示す条件であり、対象画像データがスキャンデータである場合に用いられる評価条件は、往復間色差が第7基準よりも低い第8基準(例えば、閾値THs相当の基準)以上であることを示す条件である。この結果、スキャンデータが用いられる場合には、ドライバプログラムDPによって生成される画像データが用いられる場合と比較して画質を優先した印刷を実行することができる。また、ドライバプログラムDPによって生成される画像データが用いられる場合には、スキャンデータが用いられる場合と比較して印刷速度を優先した印刷を実行することができる。
【0087】
さらに、ファクシミリデータに基づく印刷は、再度の印刷を行うことが困難である。ファクシミリデータが印刷後に制御装置100から消去されると、再度の印刷を行うためには、送信元からファクシミリデータを再送してもらう必要があるためである。他のパターンでは、画像データが印刷後に制御装置100から消去されても、ユーザの端末装置やUSBメモリ50に存在する画像データやユーザの手元にある原稿を用いて、容易に再度の印刷が可能である。このために、ファクシミリデータに基づく印刷は、高画質であることが好ましい。したがって、ファクシミリデータが用いられる場合には、電話回線IF190を介さずに取得される画像データが用いられる場合と比較して、画質を優先した印刷が行われることが好ましい。本実施例では、対象画像データがファクシミリデータである場合に用いられる閾値THfは、対象画像データが他の画像データである場合に用いられる閾値THd、THa、THs、THmよりも小さい。換言すれば、対象画像データが電話回線IF190を介さずに取得される画像データである場合に用いられる評価条件は、往復間色差が第9基準(例えば、閾値THd、THa、THs、THm相当の基準)以上であることを示す条件であり、対象画像データがファクシミリデータである場合に用いられる評価条件は、往復間色差が第9基準よりも低い第10基準(例えば、閾値THf相当の基準)以上であることを示す条件である。この結果、ファクシミリデータが用いられる場合には、電話回線IF190を介さずに取得される画像データが用いられる場合と比較して画質を優先した印刷を実行することができる。また、電話回線IF190を介さずに取得される画像データが用いられる場合には、ファクシミリデータが用いられる場合と比較して印刷速度を優先した印刷を実行することができる。
【0088】
また、本実施例において取得される画像データの違いは、用いられるデータ形式の違いであると捉えることもできる。例えば、第1パターンにて取得される画像データは、CMYKの各成分値を含むドットデータである。また、第5パターンにて取得される画像データ(スキャンデータ)は、RGB画像データである。また、第5パターンにて取得される画像データ(ファクシミリデータ)は、FAXG3などの規格に従って圧縮された画像データである。したがって、本実施例では、取得される画像データの画像形式に応じて、評価条件を変更しているとも言うことができる。一般的に言えば、制御装置100は、対象画像データが第1のデータ形式を有する画像データである場合には、第1条件が満たされる場合に往復間色差が基準以上であると判断し、対象画像データが第1のデータ形式とは異なる第2のデータ形式を有する画像データである場合には、第1条件とは異なる第2条件が満たされる場合に往復間色差が基準以上であると判断している。この結果、印刷に用いられる画像データのデータ形式に応じた適切な印刷方向で印刷を実行できる。なお、本実施例におけるデータ形式は、表色系に基づく形式と、圧縮形式と、を含む。例えば、RGB画像データとCMYKのドットデータとは、互いに異なるデータ形式を有する画像データである。また、FAXG3規格に従う圧縮データと、非圧縮のデータとは、互いに異なるデータ形式を有する画像データである。
【0089】
より具体的には、第1パターンにて取得される画像データは、複数色のインクに対応する複数個の成分値を含む色値、すなわち、CMYK表色系の色値を画素ごとに含むドットデータである。第2~第5パターンにて取得される画像データは、CMYK表色系とは異なる表色系(例えば、RGB表色系や単色の表色系)の色値を画素ごとに含む画像データである。制御装置100は、対象画像データがCMYKのドットデータである場合に用いられる評価条件は、往復間色差が第5基準(例えば、閾値THd相当の基準)以上であることを示す条件であり、対象画像データがCMYKのドットデータとは異なる表色系の画像データである場合に用いられる評価条件は、往復間色差が第5基準よりも低い第6基準(例えば、閾値THs、THa、THm、THf相当の基準)以上であることを示す条件である。この結果、CMYKのドットデータが用いられる場合には、他の表色系の画像データが用いられる場合と比較して印刷速度を優先した印刷を実行することができる。また、他の表色系の画像データが用いられる場合には、CMYKのドットデータが用いられる場合と比較して、画質を優先した印刷を実行することができる。
【0090】
さらに、上記実施例によれば、制御装置100は、評価値EVと使用閾値との比較に基づいて、往復間色差が基準以上であるか否かを判断する(
図7のS220、S225)。そして、対象画像データの種類に応じて異なる閾値が用いられる。例えば、対象画像データがスキャンデータである場合には、使用閾値として閾値THsが用いられ、対象画像データがファクシミリデータである場合には、使用閾値として閾値THfが用いられる(
図6)。この結果、対象画像データに応じて、往復間色差が基準以上であるか否かを適切に判断することができる。
【0091】
さらに、上記実施例によれば、制御装置100は、使用テーブルを用いて、評価値EVを算出する(
図7のS220)。そして、対象画像データの種類に応じて異なる使用テーブルが用いられる。例えば、対象画像データがスキャンデータである場合には、使用テーブルとして第2色評価テーブルCP2が用いられ、対象画像データがスキャンデータとは異なるデータである場合には、使用閾値として閾値THfが用いられる(
図6)。例えば、本実施例のように、スキャンデータとスキャンデータとは異なるデータとで色変換処理に用いられる色変換プロファイルが異なる場合には、1つの色評価テーブルでは、各部分画像の評価値EVを適切に算出できない可能性がある。本実施例によれば、2つの色評価テーブルCP1、CP2を対象画像データに応じて使い分けることで、対象画像データに応じて適切な評価値EVを算出できる。したがって、対象画像データに応じて、往復間色差が基準以上であるか否かを適切に判断することができる。
【0092】
以上の説明から解るように、本実施例における有線ネットワークIF160および無線ネットワークIF170は、第1インタフェースの例であり、USBIF180は、第2インタフェースの例である。また、第1色評価テーブルCP1は、第1の評価情報の例であり、第2色評価テーブルCP2は、第2の評価情報の例である。また、CMYK表色系は、第1の表色系の例であり、RGB表色系は、第2の表色系の例である。また、搬送部240は、副走査部の一例である。
【0093】
B.変型例
(1)上記実施例では、第1~第5パターンにて取得される画像データに応じて、それぞれ、互いに異なる5種類の評価条件が用いられている。これに限らず、2種類以上の任意の個数の評価条件が用いられ得る。例えば、端末装置から送信される画像データが用いられる第1パターンと第2パターンとは、同一の評価条件が用いられても良い。
【0094】
また、上記実施例では、対象画像データがRGB画像データであるかCMYKのドットデータであるかによって、評価条件を変更している。これに代えて、対象画像データの圧縮の有無、圧縮形式などに応じて、複数種類の評価条件が使い分けられても良い。また、対象画像データの圧縮の解像度、色数などの対象画像データに関する様々な特性に応じて、複数種類の評価条件が使い分けられても良い。
【0095】
また、上記実施例では、対象画像データを生成するアプリケーションプログラムがパーソナルコンピュータ30用のドライバプログラムDPであるかスマートフォン40用のプリントアプリケーションプログラムAPであるかによって、評価条件を変更している。これに代えて、対象画像データを生成するアプリケーションプログラムのバージョン(更新時期)、提供事業者によって、評価条件を変更しても良い。
【0096】
(2)上記各実施例の具体的な評価条件は、一例であり、これに限られない。例えば、上記実施例では、基本的に、画像データの種類に応じて、使用閾値を変更することによって、片方向だけが印刷方向として決定されやすいか双方向が印刷方向として決定されやすいかを制御している。これに代えて、例えば、画像データの種類に拘わらずに一定の閾値を用いても良い。この場合には、例えば、画像データの種類に応じて、複数種類、例えば、5種類の色評価テーブルが用意される。そして、複数種類の色評価テーブルでは、それぞれ、記録される重みWtの大きさを異ならせる。例えば、特定の色評価テーブルに記録される重みWtを、全体的に、他の色評価テーブルと比較して大きな値とすれば、特定の色評価テーブルを用いて算出される評価値EVは、他の色評価テーブルを用いて算出される評価値EVよりも相対的に大きくなる。この結果、特定の色評価テーブルを用いる場合には、他の色評価テーブルを用いる場合よりも片方向だけが印刷方向として決定されやすくなる。
【0097】
(3)
図7の印刷方向決定処理のS240では、注目印刷方向は常に往路方向に決定されるが、常に復路方向に決定されてもよい。
【0098】
また、
図7の印刷方向決定処理のS240では、直前印刷方向が往路方向であっても復路方向であっても、注目印刷方向は往路方向に決定される。これに代えて、注目印刷方向は、直前印刷方向と同じ方向に決定されてもよい。
【0099】
(4)上記各実施例では、印刷媒体として、用紙Mが用いられている。これに代えて、他の印刷媒体、例えば、OHP用のフィルム、CD-ROM、DVD-ROMが採用されても良い。
【0100】
(5)印刷ヘッド210の各ノズル列の配置位置は、
図2(B)のX方向の上流側から、ノズル列NY、NM、NC、NKの順番でなくてもよく、他の任意の順番が採用されても良い。印刷方向が異なることによる色差が発生する場合であれば、印刷方向に対し対称となるようにノズル列が配列されても良い。
【0101】
(6)
図1、
図2の印刷装置200では、搬送部240が用紙Mを搬送することによって、印刷ヘッド210に対して用紙Mを搬送方向に相対的に移動させている。これに代えて、固定された用紙Mに対して、印刷ヘッド210を搬送方向と反対方向に移動させることによって、印刷ヘッド210に対して用紙Mを搬送方向に相対的に移動させても良い。
【0102】
(7)上記各実施例では、制御装置100と印刷装置200と読取装置300とが1個の筐体内に配置された複合機10が採用されている。これに代えて、制御装置100と印刷装置200と読取装置300とのうちの全部または一部は、それぞれ、別の筐体で構成され、ネットワークや専用ケーブルを介して互いに接続されていても良い。例えば、制御装置100は、公知のパーソナルコンピュータであり、印刷装置200と読取装置300とは、それぞれ、単体のプリンタやスキャナであっても良い。
【0103】
(8)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、
図5の印刷制御処理のうち、色変換処理やハーフトーン処理は、例えば、CPU110の指示に従って動作する専用のハードウェア回路(例えば、ASIC)によって実現されてもよい。
【0104】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0105】
10…複合機、30…パーソナルコンピュータ、40…スマートフォン、60…アナログ電話回線のネットワーク、100…制御装置、110…CPU、111…ノズル形成面、120…不揮発性記憶装置、130…揮発性記憶装置、131…バッファ領域、140…操作部、150…表示部、200…印刷装置、210…印刷ヘッド、220…ヘッド駆動部、230…主走査部、233…キャリッジ、234…摺動軸、235…ベルト、236…プーリ、240…搬送部、250…インク供給部、251…カートリッジ装着部、252…チューブ、300…読取装置、310…CPU、160…有線ネットワークIF、170…無線ネットワークIF、180…USBIF、190…電話回線IF、MC、CC、YC、KC…インクカートリッジ、NM、NC、NY、NK…ノズル列、PF1、PF2…色変換プロファイル、PG…コンピュータプログラム、DP…ドライバプログラム、AP…プリントアプリケーションプログラム、CP1、CP2…色評価テーブル