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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 28/10 20060101AFI20230906BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230906BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B60K28/10
G08G1/16 C
B60K35/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019182638
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021059134
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-10-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 希
(72)【発明者】
【氏名】諸冨 浩平
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第95/031349(WO,A1)
【文献】特開2018-203011(JP,A)
【文献】特開2012-207974(JP,A)
【文献】特開2015-000625(JP,A)
【文献】特開2016-013807(JP,A)
【文献】特開2009-057027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 25/00-28/10
G08G 1/16
B60K 35/00
B60W 50/00-50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライバーがブレーキペダルを踏む意図を有しながら誤ってアクセルペダルを踏み込んでしまう操作である誤踏み操作が発生したと推定される場合に成立する所定の誤踏み判定条件が成立するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記誤踏み判定条件が成立したと判定された場合、前記ドライバーに対して警告を行う警告手段と、
を備えた運転支援装置において、
前記警告手段は、
前記誤踏み判定条件が成立したと判定されたき、前記ドライバーに対して、前記アクセルペダルが踏まれている旨の第1の音声メッセージを発生し、前記第1の音声メッセージを発生した後に現時点において踏み込んでいるペダルを戻すことを直接的に指示する第2の音声メッセージを発生する、ことを前記警告として行うように構成された、
運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記警告手段は、
前記誤踏み判定条件が成立したと判定されたとき前記ドライバーに対して現時点において踏み込んでいるペダルを戻すことを直接的に指示する表示を前記警告として発生するように構成された、
運転支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運転支援装置において、
前記警告手段は、
足とペダルとが接触している状態であって足でペダルを踏んでいる状態、を車両の横方向から見た図柄に、足をペダルから離す向きの矢印を追加した図柄、である注意喚起用図柄を前記ドライバーが視認可能な表示器に表示させることにより前記ドライバーに対して現時点において踏み込んでいるペダルを戻すことを直接的に指示する前記表示を発生する ように構成された、
運転支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記警告手段は、
前記警告を発生した後に初めて前記アクセルペダルの操作量がゼロになった場合、ブレーキ操作を行うことを指示する表示及び音声の少なくとも一方を発生するように構成された、
運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバーが誤ってアクセルペダルを踏み込んでしまう操作である誤踏み操作が発生したと推定される場合に、ドライバーに対して警告を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドライバーがブレーキペダルを踏む意図を有しながら誤ってアクセルペダルを踏み込んでしまう操作である誤踏み操作によって、車両が急発進してしまうことを防止する技術が知られている。例えば、特許文献1に提案されている車両用運転制御装置は、ドライバーの誤踏み操作を検出して車両の駆動力を制限する。これにより、車両の急発進が抑制される。
【0003】
この車両用運転制御装置は、ドライバーの誤踏み操作を検出したときに、車両の駆動力の制限を開始するとともに、警告ブザーを作動させてドライバーに対して注意喚起する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-254111号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、警告ブザーによる注意喚起では、ドライバーに対して適切なペダル操作を誘導することができないおそれがある。例えば、誤踏み操作によって車両が急発進した場合、ドライバーがアクセルペダルを踏み続けてしまうことがある。
【0006】
例えば、誤踏み操作が検出された場合に、図9に示すように、ディスプレイに、ブレーキペダルを踏むように指示する表示を行う装置も知られている。この装置では、ブレーキペダルを踏むように指示する図柄iの表示とあわせて「アクセルが踏まれています。ブレーキを踏んでください。」という文字によるメッセージmが表示される。
【0007】
誤踏み操作が行われた場合、ドライバーは、ブレーキペダルを踏んでいるつもりでいる。一方、上記の図柄iは、ブレーキペダルを踏むことを指示するものである。また、図柄iは、ブレーキペダルに足を載せている状況を表している。このため、上記の図柄iが表示されても、ドライバーが今の状況を理解していないため、ドライバーに対して、自分が誤ってアクセルペダルを踏んでいるということを伝えにくい。また、図柄iと合わせてメッセージmも表示されるが、ドライバーがメッセージmの文字文章を読み且つ自身が誤踏み操作を行っていることを理解するまでには相当の時間を要する。
【0008】
誤踏み操作が行われた場合、重要なことは、ドライバーに対して、早期に、アクセルペダルから足を離させて車両を減速させることである。これに対して、上記の表示は、ドライバーに対して、ブレーキペダルを踏むことを指示しているため、ドライバーは、自分が誤ってアクセルペダルを踏んでいるという現状を認識しにくい。この結果、誤踏み操作が行われた場合に、早期に車両を減速させることができないおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、誤踏み操作が行われた場合に、車両を減速させる操作をドライバーが早期に行えるように誘導することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の運転支援装置の特徴は、
車両のドライバーがブレーキペダルを踏む意図を有しながら誤ってアクセルペダルを踏み込んでしまう操作である誤踏み操作が発生したと推定される場合に成立する所定の誤踏み判定条件が成立するか否かを判定する判定手段(S11)と、
前記判定手段によって前記誤踏み判定条件が成立したと判定された場合、前記ドライバーに対して警告を行う警告手段(S12)と、
を備えた運転支援装置において、
前記警告手段は、
前記ドライバーに対して現時点において踏み込んでいるペダルを戻すことを直接的に指示する表示及び音声の少なくとも一方を前記警告として発生するように構成されたことにある。
【0011】
本発明の運転支援装置は、判定手段と警告手段とを備えている。判定手段は、車両のドライバーがブレーキペダルを踏む意図を有しながら誤ってアクセルペダルを踏み込んでしまう操作である誤踏み操作が発生したと推定される場合に成立する所定の誤踏み判定条件が成立するか否かを判定する。
【0012】
警告手段は、判定手段によって誤踏み判定条件が成立したと判定された場合、ドライバーに対して警告(注意喚起)を行う。
【0013】
誤踏み操作が行われた場合には、できるだけ速やかに、誤踏み操作を解除させる必要がある。そこで、本発明における警告手段は、ドライバーに対して現時点において踏み込んでいるペダルを戻すことを直接的に指示する表示及び音声の少なくとも一方を警告として発生する。
【0014】
ドライバーは、警告手段により、現時点において踏み込んでいるペダルを戻すように直接的に指示される。この「直接的」とは、例えば、ブレーキペダルを踏むことを指示する態様のように、間接的にアクセルペダルの戻し操作が誘導されるものを含まないことを意味する。従って、ドライバーは、自身が踏んでいるペダルを素早く戻すことができる。この時点で、車両の急加速が抑制される。また、この指示によって、ドライバーは、自身が誤ってアクセルペダルを踏んでいたという現状を早期に認識しやすい。これにより、ドライバーは、早期に、アクセルペダルからブレーキペダルに踏み変えることができる。
【0015】
この結果、本発明によれば、誤踏み操作が行われた場合に、車両を減速させる操作をドライバーが早期に行えるように誘導することができる。
【0016】
本発明の一側面の特徴は、
前記警告手段は、
足でペダルを踏んでいる状態を車両の横方向から見た図柄に足をペダルから離す向きの矢印を追加した図柄である注意喚起用図柄(A)を前記ドライバーが視認可能な表示器(51)に表示させることにより前記警告を行なうように構成されたことにある。
【0017】
警告(注意喚起)の態様として、一目で内容がわかる図柄(イラスト)を用いることによって、ドライバーに対して、とるべき行動を素早く認識させることができる。そこで、本発明の一側面においては、警告手段は、足でペダルを踏んでいる状態を車両の横方向から見た図柄に足をペダルから離す向きの矢印を追加した図柄である注意喚起用図柄をドライバーが視認可能な表示器に表示させる。
【0018】
注意喚起用図柄に追加された矢印は、ドライバーに対して、足を動かす方向を直感的に認識させることができる。従って、この注意喚起用図柄は、ドライバーに対して、「踏んでいるペダルを戻せ」という指示を直接的に表している。これにより、ドライバーは、この注意喚起用図柄に誘導されて、素早くアクセルペダルを戻すことができる。また、ドライバーは、こうした図柄による指示から、自身が誤ってアクセルペダルを踏んでいたことを認識しやすい。これにより、ドライバーは、早期に現状を認識することができ、適正なペダル操作を行うことができる。
【0019】
本発明の一側面の特徴は、
前記警告手段は、
現時点において踏込み操作しているペダルを戻すことを指示する文言を含む音声メッセージをスピーカから発生させることにより前記警告を行なうように構成された(10,26)ことにある。
【0020】
本発明の一側面によれば、ドライバーは、スピーカから発せられた音声メッセージによって、現時点において踏込み操作しているペダルを戻すことを指示される。例えば、ドライバーは、「ペダルを戻してください」等の音声メッセージによって警告される。例えば、ブレーキペダルを踏むように指示する音声メッセージをスピーカから発生させると、ドライバーはブレーキペダルを踏んでいるつもりでいるため、現状を認識しにくい。そこで、警告手段は、現時点において踏込み操作しているペダルを戻すことを指示する音声メッセージをスピーカから発生させる。これにより、ドライバーは、この音声メッセージに誘導されて、素早くアクセルペダルを戻すことができる。また、ドライバーは、こうした音声メッセージによる指示から、自身が誤ってアクセルペダルを踏んでいたことを認識しやすい。これにより、ドライバーは、早期に現状を認識することができ、適正なペダル操作を行うことができる。
【0021】
本発明の一側面の特徴は、
前記警告手段は、
足でペダルを踏んでいる状態を車両の横方向から見た図柄に足をペダルから離す向きの矢印を追加した図柄である注意喚起用図柄を前記ドライバーが視認可能な表示器に表示させるとともに、
現時点において踏込み操作しているペダルを戻すことを指示する文言を含む音声メッセージをスピーカから発生させることにより前記警告を行なうように構成されたことにある。
【0022】
本発明の一側面によれば、ペダルの戻し操作を直感的に認識させる注意喚起用図柄の表示と、ペダルを戻すことを指示する音声メッセージのアナウンスとの両方が実施される。これにより、ドライバーに対して、一層良好に、適正なペダル操作(アクセルペダルからブレーキペダルに踏み変える操作)を行うように誘導することができる。
【0023】
本発明の一側面の特徴は、
前記警告手段は、
現時点において踏込み操作しているペダルを戻すことを指示する音声メッセージを発生させる前に、アクセルペダルが踏まれている旨の音声メッセージを前記スピーカから発生させるように構成されたことにある。
【0024】
本発明の一側面によれば、注意喚起用図柄の表示によって、ドライバーは、自身が踏んでいるペダルを素早く戻す。このとき、アクセルペダルが踏まれている旨の音声メッセージがアナウンスされるため、ドライバーは、この音声メッセージと注意喚起用図柄の表示との両方により、自身が誤ってアクセルペダルを踏んでいたという現状を一層良好に認識することができる。また、音声メッセージは、アクセルペダルが踏まれている旨のメッセージから、現時点において踏み込み操作しているペダルを戻すことを指示するメッセージに移行する。従って、ドライバーに対して、一層良好に、適正なペダル操作(アクセルペダルからブレーキペダルに踏み変える操作)を行うように誘導することができる。
【0025】
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る運転支援装置の概略構成図である。
図2】目標制限加速度マップを表すグラフである。
図3】表示器に表示される注意喚起用図柄の正面図である。
図4】誤踏み急発進抑制支援制御ルーチンを表すフローチャートである。
図5】誤踏み操作が行われた後の車速の推移を表すグラフである。
図6】ドライバーが誤踏み操作を行ってから適正なペダル操作に戻すまでの過程を表す説明図である。
図7】変形例1に係る表示器に表示される注意喚起用図柄の正面図である。
図8】変形例2に係る誤踏み急発進抑制支援制御ルーチンを表すフローチャートである。
図9】従来の注意喚起用図柄の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る運転支援装置について図面を参照しながら説明する。
【0028】
本発明の実施形態に係る運転支援装置は、車両(以下において、他の車両と区別するために、「自車両」と呼ぶこともある。)に適用され、図1に示すように、運転支援ECU10、駆動力ECU30、ブレーキECU40、および、表示ECU50を備えている。
【0029】
これらのECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電気制御装置(Electronic Control Unit)であり、図示しないCAN(Controller Area Network)を介して相互に情報を送信可能および受信可能に接続されている。本明細書において、マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリおよびインターフェースI/F等を含む。CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。これらのECUは、幾つか又は全部が一つのECUに統合されてもよい。
【0030】
運転支援ECU10は、ドライバーの運転支援を行う中枢となる制御装置であって、後述する誤踏み急発進抑制支援を実施する。この誤踏み急発進抑制支援が実施されると、ドライバーのペダル操作が監視され、誤踏み操作が行われたと判定された場合に、ドライバーに対して注意喚起が行われる(警告が発せられる)。注意喚起と同時に、自車両の駆動力が制限されて自車両の急加速が抑制される。「誤踏み操作」とは、ドライバーがブレーキペダルを踏む意図を有しながら誤ってアクセルペダルを踏み込んでしまう操作である。
【0031】
運転支援ECU10には、支援選択スイッチ21、アクセルポジションセンサ22、ブレーキポジションセンサ23、シフトポジションセンサ24、車速センサ25、スピーカ26、および、ブザー27が接続されている。尚、各センサは、運転支援ECU10以外のECUに接続されていてもよい。その場合、運転支援ECU10は、センサが接続されたECUからCANを介してそのセンサの検出信号を受信する。
【0032】
支援選択スイッチ21は、誤踏み急発進抑制支援の実施を許可するか許可しないかをドライバーが選択するスイッチである。支援選択スイッチ21のオン操作によって「誤踏み急発進抑制支援の実施を許可」するモードが選択され、支援選択スイッチ21のオフ操作によって「誤踏み急発進抑制支援の実施を禁止」するモードが選択される。運転支援ECU10は、支援選択スイッチ21によってモードの選択操作が行われる都度、そのモードを記憶更新し、記憶更新した最新のモードに従って、誤踏み急発進抑制支援の実施許可あるいは実施禁止を決定する。
【0033】
アクセルポジションセンサ22は、車両のアクセルペダル22aの操作量(踏み込み量)を検出し、アクセルペダル操作量を表す信号を出力する。以下、アクセルポジションセンサ22により検出されるアクセルペダル操作量を「アクセル操作量」と呼び、アクセルペダル22aを踏み込む操作を「アクセル操作」と呼ぶ。アクセル操作量は、運転者がアクセル操作を行っていないとき(即ち、運転者がアクセルペダル22aから足を離しているとき)に「0」になり、アクセルペダル22aの踏み込み量が大きいほど大きくなる。
【0034】
ブレーキポジションセンサ23は、車両のブレーキペダル23aの操作量(踏み込み量)を検出し、ブレーキペダル操作量を表す信号を出力する。以下、ブレーキペダル操作量を「ブレーキ操作量」と呼び、ブレーキペダル23aを踏み込む操作は、「ブレーキ操作」と呼ぶ。ブレーキ操作量は、運転者がブレーキ操作(制動操作)を行っていないとき(即ち、運転者がブレーキペダル23aから足を離しているとき)に「0」になり、ブレーキペダル23aの踏み込み量が大きいほど大きくなる。尚、本実施形態においては、ブレーキポジションセンサ23は、ブレーキ操作の有無を判定するために用いられる。従って、ブレーキポジションセンサ23に代えて、ブレーキペダル操作の有無に応じてオンオフ信号を出力するブレーキスイッチを用いることもできる。
【0035】
シフトポジションセンサ24は、運転者によって操作されるシフトレバー(図示略)の位置(以下、「シフトポジション」と呼ぶ)を検出し、検出したシフトポジションを表す信号を出力する。シフトポジションは、駐車レンジ「P」のポジション、前進レンジ「D」のポジション、後退レンジ「R」のポジション(リバースポジションR)及びニュートラルレンジ「N」のポジション等を含む。
【0036】
車速センサ25は、車両の走行速度である車速を検出し、車速を表す信号を出力する。尚、車速センサ25に代えて、運転支援ECU10が、4輪の車輪速センサ(図示略)の出力する信号を入力し、車輪速センサによって検出された4輪の車輪速に基づいて車速を演算する構成であってもよい。
【0037】
スピーカ26は、運転支援ECU10から送信された音声信号を受信した場合に、その音声信号に従って音声メッセージを発生する。
【0038】
ブザー27は、運転支援ECU10から送信された警報音出力指令を受信した場合に、その警報音出力指令を受信しているあいだ警報音を発生する。
【0039】
尚、音声メッセージと警報音との両方をスピーカ26から発生させるように構成しても良く、その場合には、ブザー27を省略することができる。
【0040】
駆動力ECU30は、スロットルモータ31に接続されている。スロットルモータ31は、駆動力ECU30からのバルブ調整信号を受信し、受信したバルブ調整信号に基づいて駆動装置32(内燃機関)に設けられたスロットルバルブ(図示略)の開度を調整する。駆動力ECU30は、アクセルポジションセンサ22によって検知されたアクセル操作量に基づいて、ドライバー要求駆動力を設定し、車両の駆動力がドライバー要求駆動力に近づくようにスロットルモータ31の作動を制御する。
【0041】
また、駆動力ECU30は、運転支援ECU10から送信された駆動力制限指令を受信した場合には、その駆動力制限指令を受信しているあいだ駆動装置32の発生する駆動力を制限するようにスロットルモータ31の作動を制御する。
【0042】
尚、車両が電気自動車の場合、駆動装置32は走行用モータであり、駆動力ECU30は、走行用モータの作動を制御する。また、車両がハイブリッド車両である場合、駆動装置32はエンジンおよび走行用モータであり、駆動力ECU30は、スロットルモータ31および走行用モータの作動を制御する。
【0043】
ブレーキECU40は、ブレーキアクチュエータ41に接続されている。ブレーキアクチュエータ41は、前後左右輪に設けられた油圧式の摩擦ブレーキ機構42の油圧を調整して、その油圧に応じた摩擦制動力を発生させる。ブレーキECU40は、ブレーキポジションセンサ23によって検知されたブレーキ操作量に基づいてドライバー要求減速度を設定し、自車両がドライバー要求減速度で減速するようにブレーキアクチュエータ41の作動を制御する。また、ブレーキECU40は、運転支援ECU10から送信されたブレーキ指令を受信した場合には、ブレーキ指令に含まれる情報である要求減速度で自車両が減速するようにブレーキアクチュエータ41の作動を制御する。
【0044】
表示ECU50は、表示器51に接続されている。この表示器51は、ドライバーの運転を支援する各種の情報を車両のフロントガラスの一部の領域(表示領域)に表示するヘッドアップディスプレイである。表示ECU50は、表示器51の表示を制御する表示ドライバーである。表示ECU50は、運転支援ECU10から送信された誤踏み注意喚起表示指令を受信した場合には、その誤踏み注意喚起表示指令を受信しているあいだ表示器51に注意喚起表示を表示させる。この注意喚起表示については後述する。
【0045】
<誤踏み急発進抑制支援>
次に、誤踏み急発進抑制支援について、その概要から説明する。
【0046】
誤踏み操作が行われると、ドライバーの意図とは異なる車両挙動(例えば、車両の急加速)が生じる。そこで、運転支援ECU10は、誤踏み操作が発生したか否かについて判定する。運転支援ECU10は、予め設定された誤踏み操作判定条件を記憶しており、誤踏み操作判定条件が成立したときに、誤踏み操作が発生したと判定する。
【0047】
運転支援ECU10は、誤踏み操作が検出された場合(正確には、誤踏み操作が発生したと判定された場合)、駆動装置32で発生する車両の駆動力を、通常時(誤踏み操作が検出されていない場合)に比べて小さくする。これにより、ドライバーの意図とは異なる車両挙動を抑えることができる。
【0048】
同時に、運転支援ECU10は、ドライバーに対して注意喚起(警告)を行う。この注意喚起は、ドライバーに対して、現在踏んでいるペダルを戻すように指示する態様で行われる。注意喚起は、表示器51による注意喚起表示、ブザー27による警報音の鳴動、および、スピーカ26による注意喚起用の音声メッセージの発音を含んでいる。この注意喚起によって、ドライバーは、自身が誤ってアクセルペダル22aを踏んでいたことを認識し、アクセルペダル22aからブレーキペダル23aに踏み変える。これにより、車両を減速させることができる。
【0049】
<誤踏み操作の判定>
ここで、誤踏み操作が発生したか否かについて判定(推定)する手法について説明する。
【0050】
ドライバーは、駐車中の車両を前方に発進させようする場合、ブレーキペダル23aを踏みながらシフトレバーポジションを、駐車レンジ「P」のポジションから前進レンジ「D」のポジションへと変更する。その後、ドライバーは、アクセルペダル22aを比較的大きく且つ速く踏み込む。
【0051】
一方、駐車中の車両を後方に発進させようする場合、ドライバーは、ブレーキペダル23aを踏みながらシフトレバーポジションを、駐車レンジ「P」のポジション」から後退レンジ「R」のポジションへと変更する。この場合、通常、ドライバーは、ブレーキペダル23aの操作により車両を徐々に後進させる(クリープ走行)か、又は、ブレーキペダル23aの踏み込を解除した後にアクセルペダル22aを僅かに踏みこむ。換言すると、ドライバーが車両を後退させようとする場合、アクセルペダル22aを比較的大きく且つ速く踏み込むことはない。逆に言えば、アクセルペダル22aが比較的大きく且つ速く踏み込まれた場合、そのアクセルペダル22aに対する操作は誤操作である可能性が高い。
【0052】
そこで、運転支援ECU10は、以下の3つの条件1~3が全て成立した場合に誤踏み操作が発生したと判定する。
1.シフトレバーポジションが後退レンジ「R」である。
2.アクセル操作量が誤踏み判定操作量以上である。
3.アクセル操作速度が誤踏み判定操作速度以上である。
上記の条件1~3が、本実施形態における誤踏み判定条件である。
誤踏み判定操作量は、予め設定された誤踏み判定用のアクセル操作量の閾値である。誤踏み判定操作速度は、予め設定された誤踏み判定用のアクセル操作速度の閾値である。アクセル操作速度は、アクセル操作量の単位時間当たりの変化量を表す。
【0053】
<駆動力の抑制>
誤踏み操作が検出された場合、車両の駆動力が通常時に比べて弱められる。駆動力ECU30は、通常時においては、ドライバー要求駆動力マップに基づいて、アクセル操作量に対応したドライバー要求駆動力(目標駆動力)を設定し、駆動装置32で発生する車両の駆動力(実駆動力)がドライバー要求駆動力に近づくようにスロットルモータ31の作動を制御する。ドライバー要求駆動力マップは、アクセル操作量が大きいほど、ドライバー要求駆動力が大きくなるように、アクセル操作量とドライバー要求駆動力とを対応付けたデータである。
【0054】
一方、誤踏み操作が検出された場合、運転支援ECU10は、駆動力ECU30に対して、駆動力制限指令を送信する。この場合、駆動力ECU30は、以下のように目標駆動力を設定する。駆動力ECU30は、図2に示す目標制限加速度マップMを記憶している。目標制限加速度マップMは、車速センサ25によって検出されている現時点の車速Vと目標制限加速度Gtargetとを関係付けたデータである。目標制限加速度マップMは、車速Vがゼロから第1車速V1までの範囲では、目標制限加速度Gtargetを一定の値G1に設定し、車速Vが第1車速V1より高く第2車速V2以下となる低速範囲では、車速Vの増加に伴って目標制限加速度Gtargetを値G1からゼロにまでリニアに低下させる特性を有している。
【0055】
駆動力ECU30は、駆動力制限制御開始指令を受信すると、この目標制限加速度マップMを使用して、以下のように目標駆動力を設定する。
【0056】
駆動力ECU30は、目標制限加速度マップMで設定される現時点の車速Vに対応した目標制限加速度Gtargetと、加速度センサ(図示略)によって検出されている現時点の車両の加速度G(実加速度Gと呼ぶ)との偏差(Gtarget-G)に応じた目標制限駆動力を演算する。この目標制限駆動力は、偏差(Gtarget-G)をゼロに収束させるフィードバック制御(例えば、P制御、PI制御、PID制御など)によって演算される。目標制限加速度マップMは、車両が急加速しないような目標制限加速度Gtargetが設定されている。従って、ドライバーがアクセルペダル22aの深い踏み込み操作を行っても、目標制限駆動力は大きな値にはならない。
【0057】
駆動力ECU30は、ドライバー要求駆動力マップに基づいて設定されるドライバー要求駆動力と、上記の目標制限駆動力とを比較して、小さい方の駆動力を選択して、その駆動力の値を最終的な目標駆動力の値に設定する。従って、目標駆動力は、ドライバー要求駆動力に対して、目標制限駆動力を上限値として制限された値に設定される。駆動力ECU30は、駆動装置32で発生する車両の駆動力(実駆動力)が、上記のように制限された目標駆動力に近づくようにスロットルモータ31の作動を制御する。
【0058】
従って、誤踏み操作が検出された場合には、この目標駆動力の上限値制限によって、駆動装置32で発生させる車両の駆動力が通常時に比べて弱められる。これにより、車両の非所望な挙動(例えば、後方への急加速)が抑えられる。上限値制限は、通常時においても実施される場合があるが、誤踏み操作が検出されている状況においては、その上限値が通常時の上限値よりも小さく設定される。このように、目標駆動力(駆動装置32で発生させる車両の駆動力)を通常時に比べて制限する制御を駆動力制限制御と呼ぶ。
【0059】
<注意喚起>
運転支援ECU10は、誤踏み操作が検出された場合、表示ECU50に誤踏み注意喚起表示指令を送信し、スピーカ26に誤踏み注意喚起用の音声信号を送信し、ブザー27に警報音出力指令を送信する。
【0060】
表示ECU50は、誤踏み注意喚起表示指令を受信すると、表示器51(ヘッドアップディスプレイ)の表示画面(フロントウインドー)に、図3に示す注意喚起用図柄Aを表示する。注意喚起用図柄Aは、足aでペダルbを踏んでいる状態を車両の横方向から見て表した図柄に、矢印cを付与したものである。この矢印cは、足aをペダルbから離す方向に向いた矢印であって、その基端部c1が足aの先端側の位置となるように配置される。
【0061】
足aとペダルbと矢印cとは、互いに異なった色にて表示されることが好ましいが、必ずしも、そのようにする必要は無く、配色は任意に設定することができる。
【0062】
また、注意喚起用図柄Aは、点灯表示(連続表示)でもよいし、点滅表示(間欠表示)でもよい。
【0063】
スピーカ26は、誤踏み注意喚起用の音声信号を受信すると、「アクセルを踏んでいます。ペダルを戻してください。」という音声メッセージを発生する。本実施形態においては、上記の音声メッセージは、繰り返し発音されるが、必ずしも繰り繰り返される必要は無く、1回であってもよい。
【0064】
ブザー27は、警報音出力指令を受信した場合に、警報音(例えば、ピピピという音)を発生する。
【0065】
<誤踏み急発進抑制支援制御ルーチン>
次に、誤踏み急発進抑制支援の具体的な処理について説明する。図4は、運転支援ECU10の実施する誤踏み急発進抑制支援制御ルーチンを表す。運転支援ECU10は、支援選択スイッチ21のオン操作によって「誤踏み急発進抑制支援の実施を許可」するモードが選択されている場合に誤踏み急発進抑制支援制御ルーチンを繰り返し実施する。
【0066】
誤踏み急発進抑制支援制御ルーチンが開始されると、運転支援ECU10は、ステップS11において、誤踏み判定条件が成立したか否かについて判定する。このステップS11においては、上述した条件1~3が全て成立したか否かについて判定される。
【0067】
運転支援ECU10は、ステップS11の判定処理を繰り返し実施し、誤踏み判定条件が成立したと判定したタイミング(S11:Yes)で、その処理をステップS12に進める。運転支援ECU10は、ステップS12において、注意喚起を開始する。この場合、運転支援ECU10は、表示ECU50に誤踏み注意喚起表示指令を送信し、スピーカ26に誤踏み注意喚起用の音声信号を送信し、ブザー27に警報音出力指令を送信する。
【0068】
これにより、表示器51に注意喚起用図柄Aが表示され、スピーカ26から上述した音声メッセージが発せられ、ブザー27から警報音が発せられる。
【0069】
続いて、運転支援ECU10は、ステップS13において、駆動力制限指令を駆動力ECU30に送信して、駆動力制限制御を開始させる。この場合、駆動力ECU30は、上述したように目標制限駆動力を演算するとともに、ドライバー要求駆動力と目標制限駆動力とを比較して、小さい方の駆動力を最終的な目標駆動力の値に設定する。駆動力ECU30は、駆動装置32で発生する車両の駆動力(実駆動力)が目標駆動力に近づくようにスロットルモータ31の作動を制御する。
【0070】
尚、ステップS12の処理とステップS13の処理とは、実質的に同時に行われる。従って、ステップS12の処理とステップS13の処理との順番を入れ替えてもよい。
【0071】
続いて、運転支援ECU10は、ステップS14において、支援終了条件が成立したか否かについて判定する。この支援終了条件は、注意喚起と駆動力制限制御とを終了させる条件であり、例えば、ブレーキペダル23aが踏まれたこと、つまり、ブレーキ操作量がゼロより大きな値になったことが検出された場合に成立する。あるいは、支援終了条件は、ドライバーがアクセルペダル22aを戻して(アクセルペダル22aから足を離して)、アクセル操作量がゼロになったことが検出された場合に成立するようにしてもよい。
【0072】
運転支援ECU10は、ステップS14の判定処理を繰り返し実施し、支援終了条件が成立したと判定したタイミング(S14:Yes)で、その処理をステップS15に進める。運転支援ECU10は、ステップS15において、注意喚起を終了する。この場合、運転支援ECU10は、表示ECU50への誤踏み注意喚起表示指令の送信を停止し、スピーカ26への誤踏み注意喚起用の音声信号の送信を停止し、ブザー27への警報音出力指令の送信を停止する。これにより、フロントウインドーに表示されていた注意喚起用図柄Aが消去され、誤踏み注意喚起用の音声メッセージのアナウンス、および、警報音が停止される。
【0073】
続いて、運転支援ECU10は、ステップS16において、駆動力ECU30への駆動力制限指令の送信を停止して、駆動力制限制御を終了させる。
【0074】
尚、ステップS15の処理とステップS16の処理とは、実質的に同時に行われる。従って、ステップS15の処理とステップS16の処理との順番を入れ替えてもよい。
【0075】
運転支援ECU10は、駆動力制限制御を終了させると、誤踏み急発進抑制支援制御ルーチンを一旦終了し、所定の短いインターバルをあけて誤踏み急発進抑制支援制御ルーチンを再開する。
【0076】
図5は、誤踏み操作が行われた後の車速Vの推移を表す。例えば、シフトレバーポジションが後退レンジ「R」にセットされた状態で、ドライバーがブレーキペダル23aを踏むつもりで誤ってアクセルペダル22aを深く踏み込んだケースを考える。地点P0でドライバーがアクセルペダル22aを深く踏み込むと、車速V(絶対値)が増加する。自車両が地点P1まで後退した時点で、誤踏み判定条件が成立して注意喚起、および、駆動力制限制御が開始される。自車両が加速しながら地点P2まで後退した時点で、目標制限駆動力がドライバー要求駆動力よりも小さくなり、駆動力が制限される。この時点から、車速Vの増加が抑えられる。
【0077】
ドライバーは、注意喚起によってペダルの踏み間違いを認識して、アクセルペダル22aから足を離し、ブレーキペダル23aを踏み込む(地点P3)。これにより、自車両は、減速を開始して停止する(地点P4)。この例では、地点P5に障害物Oが存在している。従って、障害物よりも距離Dだけ手前で自車両を停止させることができる。
【0078】
自車両が障害物に衝突しないようにするためには、ドライバーが誤踏み操作を行ってから、ペダルを踏み変えるまでに要する時間をできるだけ短くする必要がある。そこで、本実施形態においては、上述したように、誤踏み注意喚起用の表示として注意喚起用図柄A(図3参照)をフロントウインドー(ドライバーの視線とフロントウインドーが交差する位置付近が好ましい)に表示する。また、「アクセルを踏んでいます。ペダルを戻してください。」という音声メッセージをスピーカ26から発生させる。
【0079】
ここで、ドライバーが誤踏み操作を行ってから適正なペダル操作に戻すまでの過程について、図6を用いて説明する。
【0080】
ドライバーが適正なペダル操作に戻すためには、まず、今の状況を理解する必要がある。つまり、自分がアクセルペダル22aを踏んでいるという現状を認識する必要がある。この現状を理解する過程を「認識過程」と呼ぶ。
【0081】
この認識過程を経て、ドライバーは、自分が誤ってアクセルペダル22aを踏んでいると判断することができる。現状を認識して、この判断が行われるまでの過程を「判断過程」と呼ぶ。
【0082】
ドライバーは、認識過程、および、判断過程を経たのち、アクセルペダル22aから足を離し、ブレーキペダル23aを踏み込む。このペダルの踏み変えを行う過程を「操作過程」と呼ぶ。
【0083】
ドライバーが誤踏み操作を行ってから、アクセルペダル22aからブレーキペダル23aに踏み変えるまでに要する時間を短くするためには、認識過程と判断過程とからなる操作前過程を短縮する必要がある。
【0084】
そこで、本実施形態においては、注意喚起用図柄Aを表示することによって、ドライバーに対して、踏んでいるペダルを戻すように指示する。これにより、ドライバーは、自身が踏んでいるペダルを戻す。この場合、ドライバーは、直前まで、ブレーキペダル23aを踏んでいるつもりでいても、この注意喚起用図柄Aの表示によって、自身が誤ってアクセルペダル22aを踏み込んでいたという現状を早期に認識しやすい。また、ドライバーは、現状を認識できていない状況でペダルの戻し操作を開始することもあるが、その場合でも、ペダルの戻し操作途中で現状を認識しやすい。これにより、ドライバーは、早期に、アクセルペダル22aからブレーキペダル23aに踏み変えることができる。
【0085】
注意喚起用図柄Aだけでも、車両を減速させる操作をドライバーが早期に行えるように誘導することができるが、本実施形態においては、注意喚起用図柄Aの表示に加えて、音声メッセージをスピーカ26から発生させる。音声メッセージは、最初に、「アクセルを踏んでいます」と発せられる。これにより、ドライバーは、自身がアクセルペダル22aを踏み込んでいるという現状を一層良好に認識することができる(認識過程)。従って、ドライバーは、注意喚起用図柄Aだけでなく、この音声メッセージによっても、自身のペダル操作が誤っていると判断することができる(判断過程)。
【0086】
更に、音声メッセージは、「アクセルを踏んでいます」に続いて「ペダルを戻してください」と発せられる。これにより、ドライバーは、注意喚起用図柄Aだけでなく音声メッセージによっても、自身が踏んでいるペダルを戻すように効果的に誘導される。従って、ドライバーは、早期に、アクセルペダル22aからブレーキペダル23aに踏み変えることができる。
【0087】
このように、本実施形態によれば、誤踏み操作が行われた場合に、車両を減速させる操作をドライバーが早期に行えるように誘導することができる。これにより、誤踏み操作によって、自車両が障害物と衝突する可能性を低減することができる。
【0088】
また、注意喚起用図柄Aは、足aでペダルbを踏んでいる状態を車両の横方向から見て表した図柄に、足aをペダルbから離す方向に向いた矢印cを付与したものであるため、ドライバーに対して、自身の足を動かす方向を直感的に認識させることができる。これにより、ドライバーは、この注意喚起用図柄Aに誘導されて、素早くアクセルペダル22aを戻すことができる。また、ドライバーは、こうした注意喚起用図柄Aによる指示から、自身が誤ってアクセルペダル22aを踏んでいたことを認識しやすい。これにより、ドライバーは、早期に状況を認識することができ、適正なペダル操作を行うことができる。
【0089】
<変形例1>
例えば、注意喚起用図柄Aは、複数の図柄を使って切替表示されるようにしてもよい。例えば、表示ECU50は、図7に示すような、第1図柄A1、第2図柄A2、第3図柄A3を記憶しており、誤踏み判定条件が成立してからの時間経過に合わせて第1図柄A1→第2図柄A2→第3図柄A3の順番で表示を切り替える。
【0090】
第1図柄A1は、実施形態における注意喚起用図柄A(図3)と同一である。第2図柄A2は、第1図柄A2に比べて足aが戻されてペダルbから離れているようにレイアウトされている。第3図柄A3は、第2図柄A2に比べて更に足aが戻されて、足aとペダルbとの離隔が大きくなるようにレイアウトされている。従って、第1図柄A1→第2図柄A2→第3図柄A3の順番で表示を切り替えることによって、あたかも、足aがペダルbから離れていくように表示される。
【0091】
<変形例2>
例えば、注意喚起の開始後、アクセルペダル22aが解放された(アクセル操作量=0)ことが検出された時点から、ブレーキ操作を行うように指示する態様で注意喚起を行ってもよい。例えば、運転支援ECU10は、図8に示す誤踏み急発進抑制支援制御ルーチンを実施する。この変形例2に係る誤踏み急発進抑制支援制御ルーチンは、実施形態に係る誤踏み急発進抑制支援制御ルーチン(図4)のステップS13とステップS14との間に、ステップS21、ステップS22の処理を追加したもので、他の処理については、実施形態に係る誤踏み急発進抑制支援制御ルーチンと同じである。
【0092】
運転支援ECU10は、ステップS21において、アクセルポジションセンサ22の出力するアクセル操作量を読み込み、アクセル操作量が0になったか否かについて判定する。運転支援ECU10は、アクセル操作量が0になるまで、この判定処理を繰り返す。運転支援ECU10は、アクセル操作量が0になったことを検出すると、その処理をステップS22に進める。
【0093】
運転支援ECU10は、ステップS22において、注意喚起の態様を変更する。例えば、それまで行われていた態様(踏んでいるペダルを戻すように直接的に指示する態様)から、ブレーキ操作を行うように指示する態様に変更する。この場合、運転支援ECU10は、表示ECU50に、それまで送信していた誤踏み注意喚起表示指令に代えてブレーキ表示指令を送信し、スピーカ26に、それまで送信していた誤踏み注意喚起用の音声信号に代えてブレーキ指示用の音声信号を送信する。運転支援ECU10は、ブザー27に対しては、引き続き、警報音出力指令を送信する。
【0094】
表示ECU50は、ブレーキ表示指令を受信すると、注意喚起用図柄Aに代えて、例えば、「ブレーキ!!」という文字を表示器51に表示する。また、スピーカ26は、ブレーキ指示用の音声信号を受信すると、例えば、「ブレーキを踏んでください」という音声メッセージを発生する。
【0095】
続いて、運転支援ECU10は、ステップS14において、支援終了条件が成立したか否かについて判定する。この場合、運転支援ECU10は、ブレーキペダル23aが踏まれたこと、つまり、ブレーキ操作量がゼロより大きな値になったことが検出された場合に、支援終了条件が成立したと判定する。
【0096】
この変形例2によれば、実施形態と同様にドライバーに対してアクセルペダル22aを早期に戻すように誘導できるとともに、ドライバーがアクセルペダル22aを戻した後においては、ブレーキ操作を直接的に指示するため、一層効果的に、ドライバーに対してブレーキ操作を誘導することができる。
【0097】
以上、本実施形態および変形例に係る運転支援装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0098】
例えば、本実施形態においては、注意喚起用図柄Aの表示と音声メッセージとの両方を使って、ドライバーに対して踏んでいるペダルを戻すように指示するが、必ずしも、そのようにする必要は無い。例えば、注意喚起用図柄Aの表示と音声メッセージとの何れか一方のみで、ドライバーに対して踏んでいるペダルを戻すように指示してもよい。
【0099】
また、本実施形態における音声メッセージは、アクセルペダルが踏まれている旨のメッセージと、踏んでいるペダルを戻すように指示するメッセージとから構成されているが、例えば、踏んでいるペダルを戻すように指示するメッセージだけであってもよい。
【0100】
また、本実施形態における表示器51は、ヘッドアップディスプレイであるが、例えば、インストルメントパネルに設けられたメータディスプレイであってもよい。
【0101】
また、誤踏み操作の判定方法については、従来からいろいろな手法が知られているため、それらの任意の手法を採用することができる。
【符号の説明】
【0102】
10…運転支援ECU、22…アクセルポジションセンサ、22a…アクセルペダル、23…ブレーキポジションセンサ、23a…ブレーキペダル、25…車速センサ、26…スピーカ、27…ブザー、30…駆動力ECU、32…駆動装置、40…ブレーキECU、50…表示ECU、51…表示器、A,A1,A2,A3…注意喚起用図柄、a…足、b…ペダル、c…矢印、c1…基端部、D…距離、Gtarget…目標制限加速度、M…目標制限加速度マップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9