(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】車載センサ洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B60S 1/62 20060101AFI20230906BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B60S1/62 110A
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2020009716
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 遼
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172085(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172306(WO,A1)
【文献】特開2010-102522(JP,A)
【文献】特開2011-170555(JP,A)
【文献】特開2005-128829(JP,A)
【文献】特開2019-182328(JP,A)
【文献】特開平09-142262(JP,A)
【文献】特開2014-027539(JP,A)
【文献】特開2018-131084(JP,A)
【文献】特開2016-166767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/60
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動洗浄条件が成立した場合、車両に搭載された車載センサの検知部を洗浄液によって洗浄する自動洗浄処理を実行する車載センサ洗浄装置
であって、
前記車両の現在位置に関する情報を車両情報として取得し、
前記車両情報に応じて前記自動洗浄条件を変更する、
ように構成された車載センサ洗浄装置
において、
前記車載センサの検知精度を表す精度指標値が所定判定閾値以下となったときに前記自動洗浄条件が成立したと判定し、
前記車両の走行を規制する信号機と前記車両との間の距離である信号機距離に関する情報を前記車両情報として取得し、
前記信号機距離に応じて前記所定判定閾値を変更することにより前記車両情報に応じた前記自動洗浄条件の変更を行い、
前記信号機距離が第1距離以上である場合、前記所定判定閾値を第1閾値に設定し、
前記信号機距離が前記第1距離未満であって第2距離以上である場合、前記所定判定閾値を前記第1閾値よりも大きい第2閾値に設定し、
前記信号機距離が前記第2距離未満である場合、前記所定判定閾値を前記第1閾値よりも小さい第3閾値に設定する、
ように構成された車載センサ洗浄装置。
【請求項2】
自動洗浄条件が成立した場合、車両に搭載された車載センサの検知部を洗浄液によって洗浄する自動洗浄処理を実行する車載センサ洗浄装置であって、
前記車両の現在位置に関する情報を車両情報として取得し、
前記車両情報に応じて前記自動洗浄条件を変更する、
ように構成された車載センサ洗浄装置において、
前記車載センサの検知精度を表す精度指標値が所定判定閾値以下となったときに前記自動洗浄条件が成立したと判定し、
前記車載センサの検知精度として所定精度以上の精度が要求されるエリアと前記車両との間の距離であるエリア距離に関する情報を前記車両情報として取得し、
前記エリア距離に応じて前記所定判定閾値を変更することにより前記車両情報に応じた前記自動洗浄条件の変更を行い、
前記エリア距離が第1距離以上である場合、前記所定判定閾値を第1閾値に設定し、
前記エリア距離が前記第1距離未満であって第2距離以上である場合、前記所定判定閾値を前記第1閾値よりも大きい第2閾値に設定し、
前記エリア距離が前記第2距離未満である場合、前記所定判定閾値を前記第1閾値よりも小さい第3閾値に設定する、
ように構成された車載センサ洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車載センサ洗浄装置において、
前記車両の走行を規制する信号機と前記車両との間の距離である信号機距離に関する情報を前記車両情報として取得する、
ように構成された車載センサ洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車載センサ洗浄装置において、
前記信号機が設置されていることを表す信号機設置信号を発信する送信機が発信する前記信号機設置信号に基づいて前記信号機距離を取得する、
ように構成された車載センサ洗浄装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の車載センサ洗浄装置において、
前記
車両の走行を規制する信号機が設置されていることを表す信号機設置信号を発信する送信機が発信する前記信号機設置信号を受信していない場合、前記信号機距離が前記第1距離以上であると判定する、
ように構成された車載センサ洗浄装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車載センサ洗浄装置において、
前記信号機が設置されていることを表す信号機設置信号を発信する送信機が発信する前記信号機設置信号を受信していない場合、前記信号機距離が前記第1距離以上であると判定し、
前記信号機設置信号を受信しており且つ前記信号機設置信号を受信し始めた時点から前記車両が走行した距離が所定距離以下である場合、前記信号機距離が前記第1距離未満であって前記第2距離以上であると判定し、
前記信号機設置信号を受信しており且つ前記信号機設置信号を受信し始めた時点から前記車両が走行した距離が前記所定距離よりも長い場合、前記信号機距離が前記第2距離未満であると判定する、
ように構成された車載センサ洗浄装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項6に記載の車載センサ洗浄装置において、
手動洗浄条件が成立した場合、前記検知部を洗浄液によって洗浄する手動洗浄処理を実行し、
前記信号機距離が前記第2距離以上であるときに前記検知部の洗浄を要求するスイッチが操作された場合、前記手動洗浄条件が成立したと判定し、
前記信号機距離が前記第2距離未満である場合、前記スイッチが操作されても、前記手動洗浄条件が成立していないと判定する、
ように構成された車載センサ洗浄装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の車載センサ洗浄装置において、
前記車両が走行している場合、前記自動洗浄条件が成立しているか否かを判定し、
前記車両が停止している場合、前記自動洗浄条件が成立しているか否かを判定しない、
ように構成された車載センサ洗浄装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の車載センサ洗浄装置において、
前記車載センサが前記車両の後方の状況を検知するセンサであり且つ所定走行速度以上の走行速度で前記車両の後方から前記車両に接近する後続車が存在するとの後続車条件が成立した場合、前記自動洗浄条件が成立しやすくなるように前記自動洗浄条件を変更する、
ように構成された車載センサ洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載センサ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者による車両の運転を支援するための情報(以下「運転支援情報」)を取得するセンサ(以下「車載センサ」)を備えた車両が知られている。こうした車両として、例えば、車両外部の画像を撮像するカメラを含み、そのカメラによって撮像した画像のデータを運転支援情報として取得するカメラセンサを備えた車両が知られている。
【0003】
カメラセンサのカメラのレンズは、運転支援情報を検知するための検知部として機能する。この検知部として機能するレンズに水滴等が付着すると、カメラによって撮像した画像が不鮮明となり、その結果、その画像から得られるデータの精度が運転支援情報として不適切なものとなる可能性がある。このことは、一般に、車載センサの検知部に汚れが生じた場合にも当てはまる。
【0004】
そこで、車載センサの検知部に汚れが生じた場合、車載センサの検知部を洗浄液によって自動的に洗浄する車載センサ洗浄装置を備えた車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
洗浄液によって車載センサの検知部が洗浄されている間、車載センサは、精度の高い運転支援情報を取得することができない。従って、車両の走行状況が精度の高い運転支援情報を要求する状況にあるときに車載センサ洗浄装置が洗浄液による車載センサの検知部の洗浄を行ってしまうと、車載センサが精度の高い運転支援情報を取得することができず、その結果、運転者に対して有効な運転支援を提供することができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、上述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の1つは、車載センサに要求される検知精度が高いときに車載センサの高い検知精度が確保されるように車載センサの検知部を洗浄する車載センサ洗浄装置を提供することにある。
【0008】
本発明に係る車載センサ洗浄装置は、自動洗浄条件が成立した場合、車両に搭載された車載センサの検知部を洗浄液によって洗浄する自動洗浄処理を実行する。本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記車両の現在位置に関する情報を車両情報として取得し、前記車両情報に応じて前記自動洗浄条件を変更するように構成されている。
【0009】
車載センサに要求される検知精度は、車両の現在位置(即ち、車両が現在走行している場所)に応じて異なる。本発明によれば、車両の現在位置を表す情報を車両情報として取得し、その車両情報に応じて自動洗浄条件を変更するように構成されている。このため、車載センサに要求される検知精度が低いうちに自動洗浄処理が行われやすくなるように自動洗浄条件を変更することができる。これにより、車載センサに要求される検知精度が高いときに車載センサの高い検知精度を達成することができる。
【0010】
更に、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記車載センサの検知精度を表す精度指標値が所定判定閾値以下となったときに前記自動洗浄条件が成立したと判定し、前記車両の走行を規制する信号機と前記車両との間の距離である信号機距離に関する情報を前記車両情報として取得し、前記信号機距離に応じて前記所定判定閾値を変更することにより前記車両情報に応じた前記自動洗浄条件の変更を行うように構成されてもよい。この場合において、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記信号機距離が第1距離以上である場合、前記所定判定閾値を第1閾値に設定し、前記信号機距離が前記第1距離未満であって第2距離以上である場合、前記所定判定閾値を前記第1閾値よりも大きい第2閾値に設定し、前記信号機距離が前記第2距離未満である場合、前記所定判定閾値を前記第1閾値よりも小さい第3閾値に設定するように構成されている。
これによれば、信号機距離が第1距離未満であって第2距離以上である場合、自動洗浄条件が成立しやくなり、その結果、自動洗浄処理が実行されやすくなる。従って、信号機距離が第2距離未満になった時点で車載センサの高い検知精度を確保することができる。
或いは、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記車載センサの検知精度を表す精度指標値が所定判定閾値以下となったときに前記自動洗浄条件が成立したと判定し、前記車載センサの検知精度として所定精度以上の精度が要求されるエリアと前記車両との間の距離であるエリア距離に関する情報を前記車両情報として取得し、前記エリア距離に応じて前記所定判定閾値を変更することにより前記車両情報に応じた前記自動洗浄条件の変更を行うように構成されてもよい。この場合において、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記エリア距離が第1距離以上である場合、前記所定判定閾値を第1閾値に設定し、前記エリア距離が前記第1距離未満であって第2距離以上である場合、前記所定判定閾値を前記第1閾値よりも大きい第2閾値に設定し、前記エリア距離が前記第2距離未満である場合、前記所定判定閾値を前記第1閾値よりも小さい第3閾値に設定するように構成されている。
これによれば、エリア距離が第1距離未満であって第2距離以上である場合、自動洗浄条件が成立しやすくなり、その結果、自動洗浄処理が実行されやすくなる。従って、エリア距離が第2距離未満になった時点で車載センサの高い検知精度を確保することができる。
【0011】
又、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記車両の走行を規制する信号機と前記車両との間の距離である信号機距離に関する情報を前記車両情報として取得するように構成されてもよい。これによれば、信号機までの距離に応じて自動洗浄条件を変更することができる。
【0016】
又、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記信号機が設置されていることを表す信号機設置信号を発信する送信機が発信する前記信号機設置信号に基づいて前記信号機距離を取得するように構成されてもよい。これによれば、信号機設置信号を発信する送信機が発信する信号機設置信号を利用して信号機距離を取得することができる。
【0017】
又、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記車両の走行を規制する信号機が設置されていることを表す信号機設置信号を発信する送信機が発信する前記信号機設置信号を受信していない場合、前記信号機距離が前記第1距離以上であると判定するように構成されてもよい。これによれば、信号機設置信号を発信する送信機が発信する信号機設置信号を利用して信号機距離が第1距離以上であるか否かを判定することができる。
【0018】
又、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記信号機が設置されていることを表す信号機設置信号を発信する送信機が発信する前記信号機設置信号を受信していない場合、前記信号機距離が前記第1距離以上であると判定し、前記信号機設置信号を受信しており且つ前記信号機設置信号を受信し始めた時点から前記車両が走行した距離が所定距離以下である場合、前記信号機距離が前記第1距離未満であって前記第2距離以上であると判定し、前記信号機設置信号を受信しており且つ前記信号機設置信号を受信し始めた時点から前記車両が走行した距離が前記所定距離よりも長い場合、前記信号機距離が前記第2距離未満であると判定するように構成されてもよい。
【0019】
これによれば、信号機設置信号を発信する送信機が発信する信号機設置信号を利用して信号機距離が第1距離以上であるか否か並びに第2距離以上であるか否かを判定することができる。
【0020】
又、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、手動洗浄条件が成立した場合、前記検知部を洗浄液によって洗浄する手動洗浄処理を実行するように構成されてもよい。この場合において、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記信号機距離が前記第2距離以上であるときに前記検知部の洗浄を要求するスイッチが操作された場合、前記手動洗浄条件が成立したと判定し、前記信号機距離が前記第2距離未満である場合、前記スイッチが操作されても、前記手動洗浄条件が成立していないと判定するように構成されてもよい。
【0021】
これによれば、信号機距離が第2距離未満である場合、手動洗浄処理が実行されない。このため、信号機距離が第2距離未満であるときに洗浄液が検知部に付着していることに起因する車載センサの検知精度の低下を防止することができる。
【0030】
又、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記車両が走行している場合、前記自動洗浄条件が成立しているか否かを判定し、前記車両が停止している場合、前記自動洗浄条件が成立しているか否かを判定しないように構成されてもよい。
【0031】
車両が停止している場合、車両周辺に歩行者等が存在する可能性がある。このときに自動洗浄処理が実行されると、洗浄液が歩行者等に飛散する可能性がある。本発明によれば、車両が停止している場合、自動洗浄条件が成立しているか否かを判定しないため、自動洗浄処理は実行されない。このため、洗浄液が歩行者等に飛散することを防止することができる。
【0032】
又、本発明に係る車載センサ洗浄装置は、前記車載センサが前記車両の後方の状況を検知するセンサであり且つ所定走行速度以上の走行速度で前記車両の後方から前記車両に接近する後続車が存在するとの後続車条件が成立した場合、前記自動洗浄条件が成立しやすくなるように前記自動洗浄条件を変更するように構成されてもよい。
【0033】
車両の後方から当該車両に急接近する後続車が存在する場合、車両の後方の状況に関する情報を利用する可能性が高い。本発明によれば、車載センサが車両の後方の状況を検知するセンサであり且つ所定走行速度以上の走行速度で車両の後方から当該車両に接近する後続車が存在するとの後続車条件が成立した場合、自動洗浄条件が成立しやすくなる。このため、車両の後方の状況に関する情報を利用する可能性が高いときに、車両の後方の状況を検知する車載センサの高い検知精度を確保することができる。
【0034】
本発明の構成要素は、以下の図面を参照して説明する実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、後述する実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車載センサ洗浄装置及びその車載カメラ洗浄装置が適用される車両を示した図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る車載センサ洗浄装置の作動を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るECUのCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るECUのCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るECUのCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車載センサ洗浄装置について説明する。
図1に示したように、本発明の実施形態に係る車載センサ洗浄装置10は、車両100に搭載される。車両100には、駆動トルク発生装置20及びブレーキ装置30も搭載されている。
【0037】
駆動トルク発生装置20は、車両100を走行させるために車両100の駆動輪に加えられるトルク(以下「車両駆動トルク」)を発生する。本例においては、駆動トルク発生装置20は、内燃機関であるが、モータであってもよいし、内燃機関及びモータであってもよい。ブレーキ装置30は、車両100を制動するために車両100の車輪に加える制動力を発生する。
【0038】
更に、車両100には、駆動トルク発生装置20及びブレーキ装置30等の作動状態を制御する制御装置も搭載されている。制御装置は、ECU90を備える。ECU90は、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを備える。車載センサ洗浄装置10は、その構成要素としてECU90を備える。
【0039】
図1に示したように、駆動トルク発生装置20及びブレーキ装置30は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、駆動トルク発生装置20の作動状態を制御することにより、駆動トルク発生装置20の発生する車両駆動トルクを制御することができる。又、ECU90は、ブレーキ装置30の作動状態を制御することにより、ブレーキ装置30の発生する制動力を制御することができる。
【0040】
更に、車両100には、アクセルペダル操作量センサ51及びブレーキペダル操作量センサ52が搭載されている。これらアクセルペダル操作量センサ51及びブレーキペダル操作量センサ52は、ECU90に電気的に接続されている。
【0041】
アクセルペダル操作量センサ51は、車両100のアクセルペダル21の操作量を検出し、検出した操作量を表す信号をECU90に送信する。ECU90は、その信号に基づいてアクセルペダル21の操作量をアクセルペダル操作量APとして取得し、取得したアクセルペダル操作量APに基づいて駆動トルク発生装置20の作動状態を制御する。
【0042】
ブレーキペダル操作量センサ52は、車両100のブレーキペダル31の操作量を検出し、検出した操作量を表す信号をECU90に送信する。ECU90は、その信号に基づいてブレーキペダル31の操作量をブレーキペダル操作量BPとして取得し、取得したブレーキペダル操作量BPに基づいてブレーキ装置30の作動状態を制御する。
【0043】
更に、車両100には、車載センサ53、インナーミラー61、受信機62、手動洗浄スイッチ63、ポンプ71、洗浄液噴射装置72及び洗浄液容器73も搭載されている。車載センサ53、インナーミラー61、受信機62、手動洗浄スイッチ63、ポンプ71及び洗浄液噴射装置72は、ECU90に電気的に接続されている。洗浄液容器73は、車載センサ53を洗浄するための洗浄液を保存するための容器である。洗浄液容器73は、洗浄液管74を介してポンプ71に連結されており、ポンプ71は、洗浄液管75を介して洗浄液噴射装置72に連結されている。
【0044】
車載センサ洗浄装置10は、その構成要素として手動洗浄スイッチ63、ポンプ71、洗浄液噴射装置72及び洗浄液容器73を備える。
【0045】
車載センサ53は、車両100の周囲の状況を検知するセンサである。車載センサ53によって検知された状況に関する情報は、運転者による車両100の運転を支援するための情報(以下「運転支援情報」)として利用される。車載センサ53は、車両100の周囲の状況を検知するための検知部531を備える。本例において、車載センサ53は、CCDカメラを含むカメラセンサである。従って、本例において、検知部531は、CCDカメラのレンズである。
【0046】
車載センサ53は、車両100の後方をCCDカメラによって撮像できるように車両100に取り付けられている。車載センサ53は、CCDカメラによって撮像した画像のデータをECU90に提供する。ECU90は、そのデータに基づいて車両100の後方の画像をインナーミラー61のディスプレイ611に運転支援情報として表示する。
【0047】
インナーミラー61は、車両100の運転席前方の位置であって運転席に着座している運転者により視認可能な位置において車両100に取り付けられている。運転者は、車両100の運転中、インナーミラー61のディスプレイ611に表示された画像により車両100の後方の状況を把握することができる。
【0048】
車載センサ53は、CCDカメラを含むカメラセンサであって、車両100の前方をCCDカメラによって撮像できるように車両100に取り付けられたカメラセンサであってもよい。
【0049】
例えば、車載センサ53が車両100の前方をCCDカメラによって撮像するカメラセンサである場合、ECU90は、CCDカメラによって撮像された画像のデータを、例えば、いわゆるドライブレコーダーに記憶する。或いは、ECU90は、CCDカメラによって撮像された画像のデータに基づいて車両100の前方に立体物が存在するか否かを判定し、車両100の前方に立体物が存在すると判定した場合、車両100がその立体物に接触することを防止する制御を実行する。
【0050】
又、車載センサ53は、車両100周辺に立体物が存在する場合、その立体物を検知できるように車両100に取り付けられたレーダセンサ又はクリアランスソナー又はLiDARであってもよい。例えば、ECU90は、レーダセンサ又はクリアランスソナー又はLiDARによって車両100周辺に立体物が存在することを把握した場合、車両100がその立体物に接触することを防止する制御を実行する。
【0051】
受信機62は、車両100の外部に設置されている送信機200(いわゆる路側機)から発信される信号を受信する。送信機200は、例えば、
図2に示したように、信号機202が設置されている交差点201周辺に設置されている。この場合、送信機200は、信号機202の点灯状態を表す信号を発信している。受信機62は、その信号を受信することができる。受信機62は、送信機200の発信した信号を受信した場合、その受信した信号をECU90に送信する。
【0052】
ECU90は、その信号に基づいて車両100の進行方向前方にその車両100の走行を規制する信号機202(以下「対象信号機202tgt」)が設置されているか否かを把握することができる。従って、送信機200が発信する信号は、対象信号機202tgtが設置されていることを表す信号機設置信号に相当する。更に、ECU90は、対象信号機202tgtが赤信号を点灯しているのか青信号を点灯しているのかを把握することができる。
【0053】
受信機62は、送信機200までの距離が一定距離Dsig以下である場合、送信機200の発信した信号を受信することができる。従って、受信機62が送信機200の発信した信号を受信し始めた時点での受信機62と送信機200との距離は、上記一定距離Dsigである。即ち、ECU90は、この一定距離Dsigに基づいて車両100と信号機202との間の距離を推定することができる。
【0054】
送信機200は、一時停止線が道路に設けられていることを表す信号を発信するものであってもよい。この場合、受信機62は、送信機200の発信した信号を受信した場合、その受信した信号をECU90に送信する。ECU90は、その信号に基づいて車両100の進行方向前方にその車両100の走行を規制する一時停止線が存在することを把握することができる。
【0055】
手動洗浄スイッチ63は、運転者により操作されるスイッチである。手動洗浄スイッチ63は、運転者により操作されると、手動洗浄スイッチ63が操作されたことを表す信号をECU90に送信する。ECU90は、その信号を受信した場合、手動洗浄スイッチ63が操作されたと判定する。
【0056】
ECU90は、ポンプ71の作動状態及び洗浄液噴射装置72の作動状態を制御することができる。ポンプ71は、ECU90により作動されると、洗浄液管74を介して洗浄液容器73から洗浄液を取り込み、その洗浄液を洗浄液管75を介して洗浄液噴射装置72に供給する。洗浄液噴射装置72は、ポンプ71により洗浄液が供給されているときに作動されると、洗浄液を噴射する。洗浄液噴射装置72は、噴射した洗浄液を車載センサ53の検知部531に付着させることができる位置に配設されている。本例において、車載センサ53は、カメラセンサであるので、洗浄液噴射装置72は、噴射した洗浄液をカメラセンサのカメラのレンズに付着させることができる位置に配設されている。洗浄液が車載センサ53の検知部531に付着すると、その洗浄液によって車載センサ53の検知部531が洗浄される。
【0057】
<車載センサ洗浄装置の作動の概要>
次に、車載センサ洗浄装置10の作動の概要について説明する。車載センサ53の検知部531に水滴等が付着して汚れが生じると、車載センサ53の検知精度が低くなる。例えば、車載センサ53がカメラセンサである場合において検知部531であるCCDカメラのレンズに汚れが生じると、CCDカメラの検知精度が低くなり、その結果、CCDカメラによって撮像した画像が不鮮明となる。この場合、インナーミラー61のディスプレイ611に表示される車両100の後方の画像が不鮮明となり、運転者がインナーミラー61によって車両100の後方の状況を確認しようとしたときに運転者が車両100の後方の状況を適切に確認することができない可能性がある。
【0058】
そこで、車載センサ洗浄装置10は、自動洗浄条件が成立した場合、自動洗浄処理を実行することにより車載センサ53の検知部531を洗浄液によって洗浄する。自動洗浄処理は、ポンプ71及び洗浄液噴射装置72を作動させて洗浄液噴射装置72から車載センサ53の検知部531に洗浄液を噴射させる処理である。
【0059】
車載センサ洗浄装置10は、以下のようにして、車載センサ53の検知精度を表す値を精度指標値Pとして取得するようになっている。
【0060】
車載センサ53から提供される画像には、数字や文字等の画像が含まれている。車載センサ洗浄装置10は、明確に認識できる数字又は文字が画像中に存在するか否かを判断する。車載センサ洗浄装置10は、明確に認識できる数字又は文字が画像中に存在すると判断した場合、その明確に認識できる数字又は文字の大きさを取得する。車載センサ洗浄装置10は、「明確に認識できる数字又は文字の大きさ」と「精度指標値P」との関係を予め記憶している。車載センサ洗浄装置10は、「明確に認識できる数字又は文字のうち最も小さい数字又は文字」と「上記予め記憶している関係」とに基づいて精度指標値Pを取得する。ここで取得される精度指標値Pは、明確に認識できる最も小さい数字又は文字が小さいほど大きい値である。
【0061】
車載センサ洗浄装置10は、精度指標値Pが所定判定閾値Pth以下であるとき或いは所定判定閾値Pth以下となったときに自動洗浄条件が成立したと判断する。車載センサ洗浄装置10は、自動洗浄条件が成立したと判断した場合、自動洗浄処理を実行する。
【0062】
ところで、対象信号機202tgtが存在する場合、その対象信号機202tgtに車両100が接近したとき、運転者がブレーキペダル31を操作して車両100を減速させる可能性がある。このように運転者がブレーキペダル31を操作する場合、運転者がインナーミラー61によって車両100の後方の状況を確認する可能性がある。従って、対象信号機202tgtが存在するときに車載センサ53の検知部531を洗浄液によって洗浄すべき場合、運転者がブレーキペダル31の操作を開始する前(即ち、運転者がインナーミラー61を見る前)に洗浄液による検知部531の洗浄を完了させておくことが望まれる。
【0063】
そこで、車載センサ洗浄装置10は、
図2に示したように、車両100が走行するエリアとして、制動エリアAbrk、第1エリアA1、第2エリアA2及び第3エリアA3を設定している。
【0064】
制動エリアAbrkは、対象信号機202tgtから手前に所定距離Dbrkの地点から対象信号機202tgtまでのエリアである。別の言い方をすると、制動エリアAbrkは、対象信号機202tgtまでの距離Dtgtが所定距離Dbrk未満であるエリアである。
【0065】
制動エリアAbrkは、対象信号機202tgtの点灯状態に起因して運転者がブレーキペダル31を操作して車両100を制動する可能性のあるエリアである。別の言い方をすると、制動エリアAbrkは、運転者がインナーミラー61のディスプレイ611に表示される画像を見る可能性があるエリアである。更に別の言い方をすると、制動エリアAbrkは、車載センサ53の検知精度として所定精度以上の精度が要求されるエリアである。更に別の言い方をすると、車載センサ53によって検知される車両100の周囲の状況に関する情報が利用される可能性が高いエリアである。
【0066】
尚、制動エリアAbrkは、「対象信号機202tgtから手前に所定距離Dbrkの地点」から「対象信号機202tgtを越えて所定距離D10(以下「所定信号機距離D10」)だけ先の地点」までのエリアに設定されてもよい。所定信号機距離D10は、車両100が対象信号機202tgtを越えた後、運転者がブレーキペダル31を操作して車両100を制動する可能性のある地点までの距離である。
【0067】
第1エリアA1は、対象信号機202tgtから手前に所定距離D11(以下「第1信号機距離D11」)の地点よりも更に手前のエリアである。別の言い方をすると、第1エリアA1は、対象信号機202tgtまでの距離Dtgtが第1信号機距離D11以上であるエリアである。第1信号機距離D11は、所定距離Dbrkよりも長い。
【0068】
第2エリアA2は、「対象信号機202tgtから手前に第1信号機距離D11の地点」から「対象信号機202tgtから手前に所定距離D12(以下「第2信号機距離D12」)の地点までのエリアである。別の言い方をすると、第2エリアA2は、対象信号機202tgtまでの距離Dtgtが第1信号機距離D11未満であって第2信号機距離D12以上であるエリアである。尚、第2信号機距離D12は、第1信号機距離D11よりも短い。又、第2信号機距離D12は、所定距離Dbrkよりも距離dDだけ長い。距離dDは、検知部531に洗浄液が噴射されてからその洗浄液が検知部531から除去されるまでに車両100が走行すると予測される距離である。別の言い方をすると、距離dDは、洗浄液による検知部531の洗浄が完了するまでに車両100が走行すると予測される距離である。距離dDは、車両100の走行速度とは無関係に一定の距離であってもよいし、車両100の走行速度が速いほど長くなる距離であってもよい。
【0069】
第3エリアA3は、対象信号機202tgtから手前に第2信号機距離D12の地点から対象信号機202tgtまでのエリアである。別の言い方をすると、第3エリアA3は、対象信号機202tgtまでの距離Dtgtが第2信号機距離D12未満であるエリアである。
【0070】
尚、第3エリアA3は、「対象信号機202tgtから手前に第2信号機距離D12の地点」から「対象信号機202tgtを越えて所定信号機距離D10だけ先の地点」までのエリアに設定されてもよい。
【0071】
車載センサ洗浄装置10は、以下のようにして、車両100と対象信号機202tgtとの間の距離Ds(以下「信号機距離Ds」)に基づいて車両100が第1エリアA1、第2エリアA2及び第3エリアA3の何れのエリアを走行しているかを判断する。
【0072】
即ち、車載センサ洗浄装置10は、送信機200の発信信号を受信していない場合、信号機距離Dsが第1信号機距離D11以上であると判断する。このとき、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第1エリアA1を走行していると判断する。
【0073】
又、車載センサ洗浄装置10は、送信機200の発信信号を受信し始めた時点で信号機距離Dsが第1信号機距離D11に等しくなったと判断する。このとき、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第2エリアA2に進入したと判断する。
【0074】
そして、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第2エリアA2に進入したと判断した後、車両100が所定距離D21(以下「第1走行距離D21」)だけ走行するまでの間、信号機距離Dsが第1信号機距離D11未満であり且つ第2信号機距離D12以上であると判断する。このとき、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第2エリアA2を走行していると判断する。尚、車載センサ洗浄装置10は、車両100の走行速度及び経過時間等に基づいて車両100が走行した距離を取得する。
【0075】
車載センサ洗浄装置10は、車両100が第2エリアA2に進入してから第1走行距離D21だけ走行した時点で信号機距離Dsが第2信号機距離D12に等しくなったと判断する。このとき、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第3エリアA3に進入したと判断する。
【0076】
そして、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第3エリアA3に進入したと判断した後、車両100が所定距離D22(以下「第2走行距離D22」)だけ走行するまでの間、信号機距離Dsが第2信号機距離D12未満であると判断する。このとき、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第3エリアA3を走行していると判断する。
【0077】
車載センサ洗浄装置10は、車両100が第3エリアA3に進入してから第2走行距離D22だけ走行した時点で信号機距離Dsがゼロになったと判断する。即ち、車載センサ洗浄装置10は、車両100が対象信号機202tgtに到達したと判断する。このとき、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第3エリアA3の外に出たと判断する。
【0078】
尚、車載センサ洗浄装置10は、車両100の走行を規制する一時停止線(以下「対象一時停止線」)を基準として第1エリアA1、第2エリアA2及び第3エリアA3を設定するように構成されてもよい。
【0079】
又、車載センサ洗浄装置10は、GPS信号を利用して車両100の現在位置を取得し、取得した車両100の現在位置と地図情報とを利用して信号機距離Dsを取得するように構成されてもよい。
【0080】
車載センサ洗浄装置10は、車両100が第1エリアA1を走行しているときには、所定判定閾値Pthを所定値(以下「第1閾値P1」)に設定する。言い方を変えれば、車載センサ洗浄装置10は、信号機距離Dsが第1信号機距離D11以上である場合、所定判定閾値Pthを第1閾値P1に設定する。更に言い方を変えれば、車載センサ洗浄装置10は、車両100と制動エリアAbrkとの間の距離Da(以下「エリア距離Da」)が第1エリア距離D31(
図2参照)以上である場合、所定判定閾値Pthを第1閾値P1に設定する。
【0081】
本例において、第1閾値P1は、例えば、インナーミラー61に表示されている後続車のナンバープレートの最も大きい数字又は文字が運転者が認識可能であるときの精度指標値Pの最大値である。
【0082】
車両100が第1エリアA1を走行している間に精度指標値Pが第1閾値P1以下となった場合、車載センサ洗浄装置10は、自動洗浄条件が成立したと判断する。別の言い方をすると、車載センサ洗浄装置10は、車載センサ53の検知部531を洗浄する必要があると判断する。この場合、車載センサ洗浄装置10は、自動洗浄処理を実行する。これにより、検知部531が洗浄され、その結果、車載センサ53の検知精度が上昇する。
【0083】
自動洗浄処理の実行により洗浄液噴射装置72から噴射される洗浄液の量は、適宜設定されればよく、自動洗浄処理の実行時点の精度指標値Pにかかわらず、一定の量であってもよいし、自動洗浄処理の実行時点の精度指標値Pに応じた量であってもよい。自動洗浄処理の実行により洗浄液噴射装置72から噴射される洗浄液の量を、自動洗浄処理の実行時点の精度指標値Pに応じた量とする場合、洗浄液噴射装置72から噴射される洗浄液の量は、例えば、自動洗浄処理の実行時点の精度指標値Pが小さいほど多い量に設定される。
【0084】
又、自動洗浄処理の実行により洗浄液噴射装置72から洗浄液を噴射する回数も、適宜設定されればよく、自動洗浄処理により洗浄液噴射装置72から噴射される洗浄液の総量にかかわらず、一定の量の回数であってもよいし、自動洗浄処理により洗浄液噴射装置72から噴射される洗浄液の総量に応じた回数であってもよい。自動洗浄処理の実行により洗浄液噴射装置72から洗浄液を噴射する回数を、洗浄液噴射装置72から噴射される洗浄液の総量に応じた回数とする場合、洗浄液噴射装置72から洗浄液を噴射する回数は、例えば、洗浄液噴射装置72から噴射される洗浄液の総量が多いほど多い回数に設定される。
【0085】
車載センサ洗浄装置10は、車両100が第1エリアA1から第2エリアA2に進入すると、所定判定閾値Pthを第1閾値P1よりも大きい値(以下「第2閾値P2」)に設定する。言い方を変えれば、車載センサ洗浄装置10は、信号機距離Dsが第1信号機距離D11未満であって第2信号機距離D12以上である場合、所定判定閾値Pthを第2閾値P2に設定する。更に言い方を変えれば、車載センサ洗浄装置10は、エリア距離Daが第1エリア距離D31未満であって第2エリア距離D32(
図2参照)以上である場合、所定判定閾値Pthを第2閾値P2に設定する。これによれば、所定判定閾値Pthが大きくされるので、自動洗浄条件が成立しやすくなり、その結果、自動洗浄処理が実行されやすくなる。
【0086】
本例において、第2閾値P2は、例えば、インナーミラー61に表示されている後続車のナンバープレートの最も小さい数字又は文字が運転者が認識可能であるときの精度指標値Pの最大値である。
【0087】
車載センサ洗浄装置10は、車両100が第1エリアA1から第2エリアA2に進入した時点で精度指標値Pが第2閾値P2以下である場合、自動洗浄条件が成立したと判断する。この場合、車載センサ洗浄装置10は、自動洗浄処理を実行する。これにより、検知部531が洗浄され、その結果、車載センサ53の検知精度が上昇する。
【0088】
又、車両100が第1エリアA1から第2エリアA2に進入した時点で精度指標値Pが第2閾値P2以下でなくても、車両100が第2エリアA2を走行している間に精度指標値Pが第2閾値P2以下となった場合も、車載センサ洗浄装置10は、自動洗浄条件が成立したと判断する。この場合も、車載センサ洗浄装置10は、自動洗浄処理を実行する。これにより、検知部531が洗浄され、その結果、車載センサ53の検知精度が上昇する。
【0089】
車載センサ洗浄装置10は、車両100が第2エリアA2から第3エリアA3に進入すると、所定判定閾値Pthを第1閾値P1よりも小さい値(以下「第3閾値P3」)に設定する。言い方を変えれば、車載センサ洗浄装置10は、信号機距離Dsが第2信号機距離D12未満である場合、所定判定閾値Pthを第3閾値P3に設定する。更に言い方を変えれば、車載センサ洗浄装置10は、エリア距離Daが第2エリア距離D32未満である場合、所定判定閾値Pthを第3閾値P3に設定する。これによれば、所定判定閾値Pthが小さくされるので、自動洗浄条件が成立しづらくなり、その結果、自動洗浄処理が実行されづらくなる。
【0090】
本例において、第3閾値P3は、例えば、インナーミラー61に表示されている後続車を運転者が認識可能であるときの精度指標値Pの最大値である。
【0091】
車載センサ洗浄装置10は、車両100が第3エリアA3を走行している間に精度指標値Pが第3閾値P3以下となった場合、自動洗浄条件が成立したと判断する。この場合、車載センサ洗浄装置10は、自動洗浄処理を実行する。これにより、検知部531が洗浄され、その結果、車載センサ53の検知精度が上昇する。
【0092】
これによれば、車両100が第2エリアA2を走行しているとき、検知部531の洗浄が行われやすくなる。従って、車両100が制動エリアAbrkを走行している間、車載センサ53の高い検知精度を確保することができる。従って、運転者は、車両100が制動エリアAbrkを走行している間、インナーミラー61によって車両100の後方の状況をより良く確認することができる。
【0093】
<手動洗浄>
更に、車載センサ洗浄装置10は、手動洗浄スイッチ63が操作されたときに車両100が第3エリアA3を走行している場合、手動洗浄条件が成立していないと判断する。車載センサ洗浄装置10は、手動洗浄条件が成立していないと判断した場合、洗浄液噴射装置72から車載センサ53の検知部531への洗浄液を噴射する手動洗浄処理を実行しない。このように、車載センサ洗浄装置10は、手動洗浄スイッチ63が操作されたときに車両100が第3エリアA3を走行している場合、手動洗浄処理の実行を禁止する。
【0094】
一方、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第1エリアA1又は第2エリアA2を走行しているときに手動洗浄スイッチ63が操作された場合、手動洗浄条件が成立したと判断する。車載センサ洗浄装置10は、手動洗浄条件が成立したと判断した場合、手動洗浄処理を実行する。このように、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第1エリアA1又は第2エリアA2を走行しているときに手動洗浄スイッチ63が操作された場合、手動洗浄処理の実行を許可する。
【0095】
これによれば、車両100が第2エリアA2を走行しているとき、自動洗浄処理が実行されやすく、その結果、車両100が制動エリアAbrkを走行している間、車載センサ53の高い検知精度を確保することができる。
【0096】
車載センサ洗浄装置10は、車両100が第1エリアA1を走行している場合、精度指標値Pにかかわらず、自動洗浄条件が成立していないと判断するように構成されてもよい。これによれば、洗浄液の使用量を更に減らすことができる。
【0097】
又、車両100が停止している場合、車両100周辺に歩行者等が存在する可能性がある。このときに自動洗浄処理が行われると、洗浄液が歩行者等に飛散する可能性がある。そこで、車載センサ洗浄装置10は、車両100が停止している場合(即ち、車両100の走行速度がゼロである場合)、自動洗浄条件が成立しているか否かを判断しないように構成されてもよい。これによれば、車両100が停止している場合に自動洗浄処理が行われないので、洗浄液が歩行者等に飛散することを防止することができる。尚、この場合、車載センサ洗浄装置10は、車両100が走行している場合(即ち、車両100の走行速度がゼロよりも大きい場合、自動洗浄条件が成立しているか否かを判断するように構成される。
【0098】
又、車両100の後方から所定走行速度以上の速度で車両100の後方から車両100に接近する別の車両(以下「急接近後続車」)が存在する場合、運転者がインナーミラー61によって急接近後続車を視認しようとする可能性が高い。そこで、車載センサ洗浄装置10は、急接近後続車が存在するとの後続車条件が成立した場合、その時点で設定されている所定判定閾値Pthを大きくするように構成されてもよい。特に、車載センサ洗浄装置10は、車両100が第1エリアA1を走行しているときに後続車条件が成立した場合、第1閾値P1に設定されている所定判定閾値Pthを大きくするように構成されてもよい。即ち、車載センサ洗浄装置10は、後続車条件が成立した場合、自動洗浄条件が成立しやすくなるように自動洗浄条件を変更するように構成されてもよい。
【0099】
又、自動洗浄処理が行われると、一時的にインナーミラー61に表示される画像が不鮮明となり、その結果、検知部531の洗浄が完了するまでの間、インナーミラー61によって急接近後続車を運転者が視認しづらくなる。従って、急接近後続車と車両100との間の距離が短いときに自動洗浄処理が行われると、運転者がインナーミラー61によって急接近後続車を視認する必要性が高いにもかかわらず、運転者が急接近後続車を視認しづらくなってしまう。そこで、車載センサ洗浄装置10は、後続車条件が成立したときに急接近後続車と車両100との間の距離が所定距離以上である場合、その時点で設定されている所定判定閾値Pthを大きくするが、後続車条件が成立したときに急接近後続車と車両100との間の距離が所定距離よりも短い場合、その時点で設定されている所定判定閾値Pthを維持する或いは小さくするように構成されてもよい。
【0100】
<変形例>
次に、本発明の実施形態の変形例に係る車載センサ洗浄装置10の作動について説明する。変形例に係る車載センサ洗浄装置10は、車両100が第2エリアA2を走行しているときにも、所定判定閾値Pthを第1閾値P1に設定する。そして、変形例に係る車載センサ洗浄装置10は、車両100が第2エリアA2から第3エリアA3に進入した時点で所定判定閾値Pthを第2閾値P2に設定して精度指標値Pが第2閾値P2以下となっているか否かの判定を行った直後に所定判定閾値Pthを第3閾値P3に設定する。
【0101】
これによれば、車両100が第2エリアA2から第3エリアA3に進入した時点でのみ所定判定閾値Pthが大きくされ、その結果、自動洗浄条件が成立しやすくなる。このため、洗浄液の使用量を少なくすることができる。
【0102】
<車載センサ洗浄装置の具体的な作動>
次に、車載センサ洗浄装置10の具体的な作動について説明する。車載センサ洗浄装置10のECU90のCPUは、
図3に示したルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。
【0103】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図3のステップ300から処理を開始し、その処理をステップ310に進め、自動洗浄フラグXautoの値が「0」であるか否かを判定する。自動洗浄フラグXautoの値は、自動洗浄処理により洗浄液噴射装置72から洗浄液が噴射されたときに「1」に設定され、自動洗浄処理により洗浄液噴射装置72から洗浄液が噴射されてから所定時間Tthが経過したときに「0」に設定される。所定時間Tthは、検知部531の洗浄が完了するまでに要する時間に設定されており、実験等により取得され、予めECU90のROMに記憶されている。
【0104】
CPUは、ステップ310にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ320に進め、
図4に示したルーチンを実行する。従って、この場合、CPUは、
図4のステップ400から処理を開始し、その処理をステップ405に進め、第1走行条件が成立しているか否かを判定する。第1走行条件は、車両100が第1エリアA1を走行しているときに成立する。
【0105】
CPUは、ステップ405にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ410に進め、所定判定閾値Pthを第1閾値P1に設定する。次いで、CPUは、処理をステップ415に進め、精度指標値Pが第1閾値P1以下であるか否かを判定する。
【0106】
CPUは、ステップ415にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ420に進め、自動洗浄処理を行う。即ち、CPUは、ポンプ71を作動させると共に噴射指令信号Sinjを洗浄液噴射装置72に送信する。洗浄液噴射装置72は、噴射指令信号Sinjを受信すると作動する。これにより、洗浄液噴射装置72から車載センサ53の検知部531に洗浄液が噴射され、検知部531が洗浄される。
【0107】
次いで、CPUは、処理をステップ425に進め、自動洗浄フラグXautoの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ495を経由して処理を
図3のステップ395に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0108】
一方、CPUは、ステップ415にて「No」と判定した場合、ステップ495を経由して処理を
図3のステップ395に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0109】
CPUは、ステップ405にて「No」と判定した場合、処理をステップ430に進め、第2走行条件が成立しているか否かを判定する。第2走行条件は、車両100が第2エリアA2を走行しているときに成立する。
【0110】
CPUは、ステップ430にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ435に進め、所定判定閾値Pthを第2閾値P2に設定する。次いで、CPUは、処理をステップ440に進め、精度指標値Pが第2閾値P2以下であるか否かを判定する。
【0111】
CPUは、ステップ440にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ445に進め、自動洗浄処理を行う。即ち、CPUは、ポンプ71を作動させると共に噴射指令信号Sinjを洗浄液噴射装置72に送信する。洗浄液噴射装置72は、噴射指令信号Sinjを受信すると作動する。これにより、洗浄液噴射装置72から車載センサ53の検知部531に洗浄液が噴射され、検知部531が洗浄される。
【0112】
次いで、CPUは、処理をステップ450に進め、自動洗浄フラグXautoの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ495を経由して処理を
図3のステップ395に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0113】
一方、CPUは、ステップ440にて「No」と判定した場合、ステップ495を経由して処理を
図3のステップ395に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0114】
CPUは、ステップ430にて「No」と判定した場合、処理をステップ455に進め、所定判定閾値Pthを第3閾値P3に設定する。その後、CPUは、処理をステップ460に進め、精度指標値Pが第3閾値P3以下であるか否かを判定する。
【0115】
CPUは、ステップ460にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ465に進め、自動洗浄処理を行う。即ち、CPUは、ポンプ71を作動させると共に噴射指令信号Sinjを洗浄液噴射装置72に送信する。洗浄液噴射装置72は、噴射指令信号Sinjを受信すると作動する。これにより、洗浄液噴射装置72から車載センサ53の検知部531に洗浄液が噴射され、検知部531が洗浄される。
【0116】
次いで、CPUは、処理をステップ470に進め、自動洗浄フラグXautoの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ495を経由して処理を
図3のステップ395に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0117】
一方、CPUは、ステップ460にて「No」と判定した場合、ステップ495を経由して処理を
図3のステップ395に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0118】
更に、CPUは、
図5に示したルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図5のステップ500から処理を開始し、その処理をステップ510に進め、第3走行条件が成立しているか否かを判定する。第3走行条件は、車両100が第3エリアA3を走行しているときに成立する。
【0119】
CPUは、ステップ510にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ520に進め、手動許可フラグXmanuの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、処理をステップ540に進める。
【0120】
一方、CPUは、ステップ510にて「No」と判定した場合、処理をステップ530に進め、手動許可フラグXmanuの値を「1」に設定する。次いで、CPUは、処理をステップ540に進める。
【0121】
CPUは、ステップ540に進めると、運転者による手動洗浄スイッチ63の操作があったか否かを判定する。
【0122】
CPUは、ステップ540にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ550に進め、手動許可フラグXmanuの値が「1」であるか否かを判定する。
【0123】
CPUは、ステップ550にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ560に進め、手動洗浄処理を実行する。即ち、CPUは、ポンプ71を作動させると共に噴射指令信号Sinjを洗浄液噴射装置72に送信する。洗浄液噴射装置72は、噴射指令信号Sinjを受信すると作動する。これにより、洗浄液噴射装置72から車載センサ53の検知部531に洗浄液が噴射され、検知部531が洗浄される。
【0124】
その後、CPUは、処理をステップ595に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0125】
一方、CPUは、ステップ550にて「No」と判定した場合、処理をステップ595に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0126】
CPUは、ステップ540にて「No」と判定した場合も、処理をステップ595に直接進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0127】
車載センサ洗浄装置10が
図3及び
図4に示したルーチンを実行することにより、車両100が第2エリアA2を走行しているとき、自動洗浄条件が成立しやすくなる。従って、車両100が制動エリアAbrkを走行している間、車載センサ53の高い検知精度を確保することができる。
【0128】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0129】
10…車載センサ洗浄装置、53…車載センサ、531…検知部、71…ポンプ、72…洗浄液噴射装置、73…洗浄液容器、90…ECU、100…車両、