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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】着磁装置、及び寿命予測方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 13/00 20060101AFI20230906BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
H01F13/00 350
H01F41/00 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021208392
(22)【出願日】2021-12-22
(65)【公開番号】P2023093015
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591011775
【氏名又は名称】電子磁気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】岩田 成弘
(72)【発明者】
【氏名】野口 一彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 尚人
(72)【発明者】
【氏名】大久保 憲一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 満
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-88284(JP,A)
【文献】特開2020-113675(JP,A)
【文献】特開2019-4056(JP,A)
【文献】特開2017-135213(JP,A)
【文献】特開2005-117867(JP,A)
【文献】特開2001-145310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00-31/01
G01R 31/24-31/25
H01F 13/00
H01F 27/00-27/06
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
H02K 1/17
H02K 1/27- 1/2798
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心に着磁コイルが巻回されてなる着磁ヨークと、
前記鉄心に巻回されたサーチコイルと、
前記着磁コイルの通電時における前記サーチコイルの誘起電圧を測定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記誘起電圧の基準波形を設定し、着磁の実行毎に測定される前記誘起電圧の測定波形と前記基準波形との類似度に基づいて前記着磁ヨークの寿命を予測する、着磁装置。
【請求項2】
前記着磁ヨークは、複数の磁極を有し、前記磁極ごとに前記サーチコイルが巻回され、
前記制御部は、前記磁極ごとに前記類似度を算出する、請求項1に記載の着磁装置。
【請求項3】
前記制御部は、着磁の実行毎に測定される複数の前記磁極のそれぞれの前記誘起電圧のうち、一の前記誘起電圧を前記基準波形とし、他の前記誘起電圧を前記測定波形として前記類似度を算出する、請求項2に記載の着磁装置。
【請求項4】
前記制御部は、所定の着磁回数の前記測定波形を前記基準波形として設定し、前記基準波形を設定した後の着磁の実行毎に前記着磁ヨークの寿命を予測する、請求項1又は2に記載の着磁装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記類似度を相互相関関数により算出する、請求項1乃至4のいずれかに記載の着磁装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記測定波形のうち前記誘起電圧の大きさが最大となるタイミング以降の波形を予測に使用する、請求項1乃至5のいずれかに記載の着磁装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記類似度が所定の閾値を下回る歪み回数をカウントし、前記歪み回数が所定の閾値回数に達した場合に警告を発する、請求項1乃至6のいずれかに記載の着磁装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記類似度を周波数領域で算出する、請求項1乃至7のいずれかに記載の着磁装置。
【請求項9】
鉄心に巻回された着磁コイルに通電する着磁工程と、
前記鉄心に巻回されたサーチコイルの誘起電圧を測定する電圧測定工程と、
前記誘起電圧の基準波形を設定する基準設定工程と、
着磁の実行毎に測定される前記誘起電圧の測定波形と前記基準波形との類似度に基づいて着磁ヨークの寿命を予測する予測工程と、を含む、寿命予測方法。
【請求項10】
前記着磁ヨークが複数の磁極を有する場合に、前記磁極ごとに巻回された前記サーチコイルの前記誘起電圧で前記類似度を算出する、請求項9に記載の寿命予測方法。
【請求項11】
着磁の実行毎に測定される複数の前記磁極のそれぞれの前記誘起電圧のうち、一の前記誘起電圧を前記基準波形とし、他の前記誘起電圧を前記測定波形として前記類似度が算出される、請求項10に記載の寿命予測方法。
【請求項12】
前記基準設定工程においては、所定の着磁回数の前記測定波形を前記基準波形として設定し、
前記予測工程においては、前記基準波形を設定した後の着磁の実行毎に前記着磁ヨークの寿命を予測する、請求項9又は10に記載の寿命予測方法。
【請求項13】
前記類似度を相互相関関数により算出する、請求項9乃至12のいずれかに記載の寿命予測方法。
【請求項14】
前記予測工程においては、前記測定波形のうち前記誘起電圧の大きさが最大となるタイミング以降の波形を予測に使用する、請求項9乃至13のいずれかに記載の寿命予測方法。
【請求項15】
前記類似度が所定の閾値を下回る歪み回数をカウントし、前記歪み回数が所定の閾値回数に達した場合に警告を発する、請求項9乃至14のいずれかに記載の寿命予測方法。
【請求項16】
前記類似度を周波数領域で算出する、請求項10乃至15のいずれかに記載の寿命予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着磁装置、及び寿命予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄心に着磁コイルが巻回されてなる着磁ヨークを着磁対象物に近接配置し、当該着磁コイルにパルス電流を流すことにより着磁ヨークに強い磁場を発生させて、着磁対象物を磁化させる着磁装置が広く使用されている。このような着磁装置に用いられる着磁ヨークは、極めて大きなパルス電流が繰り返し着磁コイルに流れるため、着磁コイルの被覆に熱的劣化が生じやすい。さらに着磁コイルは、電流が流れるときに一方向の力が作用し、電流が遮断されると逆方向の力が作用するため、パルス電流を流す度に被覆の機械的劣化も生じる。そのため、着磁を繰り返すことによって着磁コイルの被覆が徐々に劣化し、最終的に着磁コイルの被覆が絶縁破壊して短絡故障するに至る場合が多い。
【0003】
上記のような着磁装置は、生産設備において予期せぬ製造ラインの停止を招くため、予備設備を用意しておく対応が図られる。しかし、着磁装置が突然故障した場合には設備交換の工程を組むことも困難となることから、着磁装置が未だ使用可能な状態であったとしても着磁が所定回数に達した時点で前もって交換を行わざるを得ないことになる。すなわち、着磁装置は、故障に備えて早めに設備交換を行うと未だ使用可能な状態で廃棄されるため無駄が生じる反面、交換時期が遅れると突然の故障により製造ラインの停止で混乱を招いてしまう。
【0004】
そこで、例えば特許文献1の従来技術では、着磁コイルに流れる着磁電流を測定し、電流波形の歪みから着磁ヨークの劣化を検査する方法が開示されている。すなわち当該従来技術は、着磁ヨークが破壊する直前の劣化を検知することで、着磁ヨークの破壊を未然に検知しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-106128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術では、着磁コイルが物理的な衝撃を受け、伸縮し、又は絶縁破壊を起こすことにより誘導負荷又は抵抗が変化する場合には、着磁電流が変化するため劣化を検出することが可能になる。しかしながら、当該従来技術では、着磁ヨークの振動により空乏が生じて着磁コイルがずれる場合や傾きが変化する場合など、着磁ヨークに劣化の兆候が生じる場合であっても着磁電流に変化が無い限り劣化を検出することができないため、劣化検出が遅れる場合や検出自体ができない場合が生じ得る。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、着磁ヨークに生じる劣化の兆候を早期に検出することができる着磁装置、及び寿命予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、鉄心に着磁コイルが巻回されてなる着磁ヨークと、前記鉄心に巻回されたサーチコイルと、前記着磁コイルの通電時における前記サーチコイルの誘起電圧を測定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記誘起電圧の基準波形を設定し、着磁の実行毎に測定される前記誘起電圧の測定波形と前記基準波形との類似度に基づいて前記着磁ヨークの寿命を予測する、着磁装置である。
【0009】
本発明の第1の態様に係る着磁装置は、着磁ヨークに生じる磁束に伴いサーチコイルに誘起される誘起電圧を指標として着磁ヨークの寿命を予測する。そのため、着磁装置は、着磁電流が変化する前の段階、又は着磁電流が変化しない場合であっても、着磁ヨークの振動により空乏が生じて着磁コイルがずれる場合や傾きが変化する場合など着磁ヨークに劣化の兆候が生じる段階で検出することができる。従って、第1の態様に係る着磁装置によれば、着磁ヨークに生じる劣化の兆候を早期に検出することができる。
【0010】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記着磁ヨークは、複数の磁極を有し、前記磁極ごとに前記サーチコイルが巻回され、前記制御部は、前記磁極ごとに前記類似度を算出する、着磁装置である。
【0011】
本発明の第2の態様に係る着磁装置によれば、着磁ヨークが複数の磁極を有する場合であっても、磁極ごとに設けられたサーチコイルの誘起電圧を個別に取得して劣化を検出するため、着磁ヨーク全体の劣化進行過程を捉えやすく、着磁ヨークが故障した場合の対処も容易になる。
【0012】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、上記した本発明の第2の態様において、前記制御部は、着磁の実行毎に測定される複数の前記磁極のそれぞれの前記誘起電圧のうち、一の前記誘起電圧を前記基準波形とし、他の前記誘起電圧を前記測定波形として前記類似度を算出する、着磁装置である。
【0013】
本発明の第3の態様に係る着磁装置によれば、一回の着磁で取得される複数の磁極の誘起電圧同士で類似度を算出することができるため、基準波形を記憶する必要がなく着磁毎に類似度の算出処理が完結するため、演算手順を簡略化することができる。
【0014】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第1又は2の態様において、前記制御部は、所定の着磁回数の前記測定波形を前記基準波形として設定し、前記基準波形を設定した後の着磁の実行毎に前記着磁ヨークの寿命を予測する、着磁装置である。
【0015】
本発明の第4の態様に係る着磁装置によれば、歪みの無い誘起電圧の基準波形の形状が未知であっても、所定の着磁回数を経て動作が安定した状態の測定波形を基準波形として設定することができる。
【0016】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、上記した本発明の第1乃至4のいずれかの態様において、前記制御部は、前記類似度を相互相関関数により算出する、着磁装置である。
【0017】
本発明の第5の態様に係る着磁装置によれば、測定波形と基準波形との比較を相互相関関数により行うことで、誘起電圧の取得データから測定波形を切り出すタイミングに誤差がある場合であっても、比較的正確に両者の類似度を算出することができる。
【0018】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、上記した本発明の第1乃至5のいずれかの態様において、前記制御部は、前記測定波形のうち前記誘起電圧の大きさが最大となるタイミング以降の波形を予測に使用する、着磁装置である。
【0019】
本発明の第6の態様に係る着磁装置によれば、誘起電圧の歪みが最大値から減衰していく過渡状態に現れることを利用して、この部分の波形を切り出して寿命予測に使用することで、類似度の算出精度を向上させることができる。
【0020】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、上記した本発明の第1乃至6のいずれかの態様において、前記制御部は、前記類似度が所定の閾値を下回る歪み回数をカウントし、前記歪み回数が所定の閾値回数に達した場合に警告を発する、着磁装置である。
【0021】
本発明の第7の態様に係る着磁装置によれば、誘起電圧が正常波形であるにも拘らずノイズ等の影響で類似度が極端に低下する場合があっても誤報の警告を抑制することができる。
【0022】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、上記した本発明の第1乃至7のいずれかの態様において、前記制御部は、前記類似度を周波数領域で算出する、着磁装置である。
【0023】
本発明の第8の態様に係る着磁装置によれば、誘起電圧の測定波形と基準波形とを周波数に変換して類似度を算出することにより、誘起電圧の歪みが類似度の大きな変化として反映されやすいため、着磁ヨークの劣化検出精度を高めることができる。
【0024】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様は、鉄心に巻回された着磁コイルに通電する着磁工程と、前記鉄心に巻回されたサーチコイルの誘起電圧を測定する電圧測定工程と、前記誘起電圧の基準波形を設定する基準設定工程と、着磁の実行毎に測定される前記誘起電圧の測定波形と前記基準波形との類似度に基づいて着磁ヨークの寿命を予測する予測工程と、を含む、寿命予測方法である。
【0025】
本発明の第9の態様に係る寿命予測方法は、着磁ヨークに生じる磁束に伴いサーチコイルに誘起される誘起電圧を指標として着磁ヨークの寿命を予測する。そのため、寿命予測方法は、着磁電流が変化する前の段階、又は着磁電流が変化しない場合であっても、着磁ヨークの振動により空乏が生じて着磁コイルがずれる場合や傾きが変化する場合など着磁ヨークに劣化の兆候が生じる段階で検出することができる。従って、第8の態様に係る寿命予測方法によれば、着磁ヨークに生じる劣化の兆候を早期に検出することができる。
【0026】
<本発明の第10の態様>
本発明の第10の態様は、上記した本発明の第9の態様において、前記着磁ヨークが複数の磁極を有する場合に、前記磁極ごとに巻回された前記サーチコイルの前記誘起電圧で前記類似度を算出する、寿命予測方法である。
【0027】
本発明の第10の態様に係る寿命予測方法によれば、着磁ヨークが複数の磁極を有する場合であっても、磁極ごとに設けられたサーチコイルの誘起電圧を個別に取得して劣化を検出するため、着磁ヨーク全体の劣化進行過程を捉えやすく、着磁ヨークが故障した場合の対処も容易になる。
【0028】
<本発明の第11の態様>
本発明の第11の態様は、上記した本発明の第10の態様において、着磁の実行毎に測定される複数の前記磁極のそれぞれの前記誘起電圧のうち、一の前記誘起電圧を前記基準波形とし、他の前記誘起電圧を前記測定波形として前記類似度が算出される、寿命予測方法である。
【0029】
本発明の第11の態様に係る寿命予測方法によれば、一回の着磁で取得される複数の磁極の誘起電圧同士で類似度を算出することができるため、基準波形を記憶する必要がなく着磁毎に類似度の算出処理が完結するため、演算手順を簡略化することができる。
【0030】
<本発明の第12の態様>
本発明の第12の態様は、上記した本発明の第9又は10の態様において、前記基準設定工程においては、所定の着磁回数の前記測定波形を前記基準波形として設定し、前記予測工程においては、前記基準波形を設定した後の着磁の実行毎に前記着磁ヨークの寿命を予測する、寿命予測方法である。
【0031】
本発明の第12の態様に係る寿命予測方法によれば、歪みの無い誘起電圧の基準波形の形状が未知であっても、所定の着磁回数を経て動作が安定した状態の測定波形を基準波形として設定することができる。
【0032】
<本発明の第13の態様>
本発明の第13の態様は、上記した本発明の第9乃至12のいずれかの態様において、前記類似度を相互相関関数により算出する、寿命予測方法である。
【0033】
本発明の第13の態様に係る寿命予測方法によれば、測定波形と基準波形との比較を相互相関関数により行うことで、誘起電圧の取得データから測定波形を切り出すタイミングに誤差がある場合であっても、比較的正確に両者の類似度を算出することができる。
【0034】
<本発明の第14の態様>
本発明の第14の態様は、上記した本発明の第9乃至13のいずれかの態様において、前記予測工程においては、前記測定波形のうち前記誘起電圧の大きさが最大となるタイミング以降の波形を予測に使用する、寿命予測方法である。
【0035】
本発明の第14の態様に係る寿命予測方法によれば、誘起電圧の歪みが最大値から減衰していく過渡状態に現れることを利用して、この部分の波形を切り出して寿命予測に使用することで、類似度の算出精度を向上させることができる。
【0036】
<本発明の第15の態様>
本発明の第15の態様は、上記した本発明の第9乃至14のいずれかの態様において、前記類似度が所定の閾値を下回る歪み回数をカウントし、前記歪み回数が所定の閾値回数に達した場合に警告を発する、寿命予測方法である。
【0037】
本発明の第15の態様に係る寿命予測方法によれば、誘起電圧が正常波形であるにも拘らずノイズ等の影響で類似度が極端に低下する場合があっても誤報の警告を抑制することができる。
【0038】
<本発明の第16の態様>
本発明の第16の態様は、上記した本発明の第10乃至15のいずれかの態様において、前記類似度を周波数領域で算出する、寿命予測方法である。
【0039】
本発明の第16の態様に係る寿命予測方法によれば、誘起電圧の測定波形と基準波形とを周波数に変換して類似度を算出することにより、誘起電圧の歪みが類似度の大きな変化として反映されやすいため、着磁ヨークの劣化検出精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、着磁ヨークに生じる劣化の兆候を早期に検出することができる着磁装置、及び寿命予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】着磁装置の構成を模式的に表す全体構成図である。
図2】着磁ヨークの水平断面図である。
図3】第1実施形態に係る寿命予測方法の手順を示すフローチャートである。
図4】測定波形の変化を示すグラフである。
図5】着磁コイルの印加電圧とサーチコイルの誘起電圧とを比較するグラフである。
図6】磁極CH1~CH3の測定スペクトルである。
図7】磁極CH4~CH6の測定スペクトルである。
図8】基準波形と測定波形との時間領域における類似度の変化を表すグラフである。
図9】基準スペクトルと測定スペクトルとの周波数領域における類似度の変化を表すグラフである。
図10】第2実施形態に係る寿命予測方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略などを行なっており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0043】
<第1実施形態>
図1は、着磁装置1の構成を模式的に表す全体構成図である。着磁装置1は、着磁ヨーク2、電源部3、及び制御部4を備え、着磁ヨーク2に磁界を発生させることにより、着磁ヨーク2に収容されるワークWを着磁する。着磁ヨーク2の詳細構造については後述する。
【0044】
電源部3は、着磁ヨーク2にワークWが収容された状態で、着磁に必要なパルス電流を着磁ヨーク2に供給する。
【0045】
制御部4は、例えば着磁制御を行うアプリケーションが実行される汎用のPCであり、着磁の実行時に電源部3へ電力供給を指示し、着磁ヨーク2に発生する磁束を測定することで、着磁の良否を判定すると共に詳細を後述する寿命予測方法により着磁ヨーク2の寿命を予測する。尚、制御部4は、着磁制御を管理するための専用端末であってもよい。
【0046】
図2は、着磁ヨーク2の水平断面図である。着磁ヨーク2は、円柱状のワークWを収容可能な空洞が中央に形成され、円筒状の鉄心10の内壁面から中心に向かって延在するように6つのティースを有する。絶縁被覆された単一の着磁コイル11は、両端が電源部3に接続され、それぞれのティースに一筆書きの要領で巻回されることにより鉄心10と協働して磁極CH1~CH6を構成している。このとき、隣接するティース同士は、着磁コイル11の巻回方向が互いに逆向きになるよう設定されている。これにより、着磁ヨーク2は、電源部3から着磁コイル11へ着磁電流が供給されることでワークWに磁界を発生させ、ワークWの周方向にN極、S極、N極、S極・・・と交互になるように着磁することができる。
【0047】
また、着磁ヨーク2は、複数のサーチコイル12を備え、それぞれのサーチコイル12が磁極CH1~CH6のそれぞれに個別に巻回される。ここで、制御部4は、それぞれのサーチコイル12の両端が接続されていることにより、着磁コイル11の通電時にサーチコイル12に生じる誘起電圧を測定し、当該誘起電圧の積分値により磁極CH1~CH6に発生する磁束の大きさを算出することで着磁の良否を判定することができる。尚、着磁コイル11は超電導コイルであってもよく、鉄心10はガラス系材料で構成されるコアであってもよい。
【0048】
次に、着磁ヨーク2の故障の兆候を未然に検出し、故障前に着磁ヨーク2の設備交換を行うための寿命予測方法について説明する。図3は、第1実施形態に係る寿命予測方法の手順を示すフローチャートである。制御部4は、着磁装置1の稼働開始のタイミングで図3のフローチャートに示す制御を開始して着磁ヨーク2の寿命予測を行う。尚、本実施形態においては、着磁制御と寿命予測制御とを共に制御部4において行う形態を例示するが、両者を構成的にも機能的にも互いに独立させてもよい。
【0049】
ここで、寿命予測は、サーチコイル12に生じる誘起電圧Vの測定波形の変化に基づいて行われる。制御部4は、着磁ヨーク2が正常な状態である場合の誘起電圧Vの波形を基準波形として保持し、着磁の実行毎に測定される誘起電圧Vの測定波形と基準波形との類似度に基づいて着磁ヨーク2の寿命を予測する。基準波形は、着磁装置1の稼働前から既知であれば制御部4に記憶させておくことも可能であるが、本実施形態においては、所定の閾値回数Tthの着磁において測定された誘起電圧Vの測定波形を基準波形として設定し、基準波形を設定した後の着磁の実行毎に着磁ヨーク2の寿命を予測するものとして説明する。
【0050】
また、制御部4は、図3のフローチャートにおける一連の手順において使用するパラメータとして、着磁が実行される着磁回数T、及び測定波形に歪みが認められる歪み回数Eを用意し、着磁回数T=0、歪み回数E=0を初期値として寿命予測の手順を開始する。
【0051】
寿命予測方法の手順が開始されると、制御部4は、着磁が実行されたか否かを判定する(ステップS1)。より具体的には、制御部4は、上記したように電源部3を介して着磁ヨーク2における着磁コイル11に通電することでワークWを着磁する(着磁工程)。また、制御部4は、サーチコイル12に生じる誘起電圧Vを測定し(電圧測定工程)、その積分値を算出することにより着磁ヨーク2に発生した磁束を算出し、その最大値が十分大きいか否かで着磁の良否を判定する。一方、着磁が実行されていない期間では、制御部4は、着磁が実行されるまで待機する(ステップS1でNo)。
【0052】
ワークWの着磁が実行されると、制御部4は、着磁回数Tをカウントすることにより着磁回数Tを更新し(ステップS2)、着磁回数Tが所定の閾値回数Tth未満であるか否かを判定する(ステップS3)。ここで、閾値回数Tthとは、着磁の実行毎に測定される誘起電圧Vのうち、何回目の測定波形を基準波形として設定するかを規定する所定の数であり、例えば本実施形態においてはTth=7000と設定されている。
【0053】
着磁回数Tが所定の閾値回数Tth未満である間は、制御部4は、寿命予測に関する以降の制御を特に行わず、ステップS1に戻り着磁の実行を繰り返す(ステップS3でNo)。
【0054】
そして、制御部4は、着磁回数Tが所定の閾値回数Tthに達すると(ステップS3でYes)、着磁回数Tと閾値回数Tthとが一致する7000回目の着磁に限り(ステップS4でYes)、測定波形を基準波形として設定する(ステップS5、基準設定工程)。
【0055】
一方、閾値回数Tthを超える着磁においては(ステップS4でNo)、制御部4は、誘起電圧Vの測定波形と基準波形との類似度を算出する。より具体的には、制御部4は、基準波形をx(t)とし、測定波形をy(t)とした場合、次式で表される相互相関関数Rxy(τ)におけるτ=0の値Rxy(0)により両者の類似度を算出する(ステップS6)。
【数1】
尚、値Rxy(0)の値は、基準波形x(t)の自己相関関数Rxx(τ)のτ=0の値Rxx(0)の大きさで規格化される。
【0056】
また、制御部4は、測定波形と基準波形との類似度Rxy(0)が所定の閾値Rth以上であるか否かを判定する(ステップS7)。ここで、閾値Rthとは、測定波形に歪みが生じた場合に基準波形から乖離したことを判定するために事前に設定される閾値であり、本実施形態においてはRth=0.95と設定されているものとする。
【0057】
類似度Rxy(0)が閾値Rth以上である場合には(ステップS7でYes)、制御部4は、測定された誘起電圧Vに歪みがない正常波形であるものとして、ステップS1に戻り着磁を繰り返す。
【0058】
類似度Rxy(0)が閾値Rth未満である場合には(ステップS7でNo)、制御部4は、測定された誘起電圧Vに歪みが生じた異常波形であるものとして歪み回数Eをカウントする(ステップS8)。
【0059】
また、制御部4は、歪み回数Eが所定の閾値回数Eth以上であるか否かを判定する(ステップS9)。ここで、閾値回数Ethとは、誘起電圧Vが正常波形であるにも拘らずノイズ等の影響で類似度Rxy(0)が極端に低下した場合に直ちに寿命予測を行わないために設定される閾値であり、例えば本実施形態においてはEth=1000と設定されている。すなわち、制御部4は、歪み回数Eが1000回に達するまでは故障が迫っているものと判断せず、ステップS1に戻り着磁を繰り返す(ステップS9でNo)。
【0060】
そして、制御部4は、歪み回数Eが閾値回数Ethに達した時点で故障の兆候を検出したと判断し(ステップS9でYes)、着磁装置1のユーザに警告を発する(ステップS10)。これにより、着磁装置1のユーザは、着磁ヨーク2に生じる劣化の兆候を早期に検出することができ(予測工程)、設備交換の工程を組み始めることができる。
【0061】
尚、制御部4は、故障の兆候を検出した場合であっても着磁制御は継続可能であるため、ユーザが着磁装置1の運用を継続する間は警告を発した状態でステップS1に戻り着磁を繰り返す(ステップS11でNo)。そして、制御部4は、ユーザが着磁装置1の運用を停止した場合に寿命予測方法の手順を終了する(ステップS11でYes)。
【0062】
次に、誘起電圧Vの測定波形に歪みが生じる変化について説明する。図4は、測定波形の変化を示すグラフである。より具体的には、図4は、着磁ヨーク2の磁極CH1~CH6のそれぞれで測定された誘起電圧Vの波形であり、上図が着磁回数T=16040回目、中図が着磁回数T=63761回目、下図が着磁回数T=63763回目で取得されたデータを示している。
【0063】
誘起電圧Vは、図4上図に見られるように正常波形である場合には、着磁開始後に最大振幅をとり、0Vを跨ぐように減衰しつつ極性が反転し、最終的には再び0Vに戻り安定する軌道を描く。尚、着磁コイル11の巻回方向が磁極CH1~CH6により反対であるため、磁極CH1~CH6のうち偶数番目と奇数番目とでは誘起電圧Vの符号が反転している。
【0064】
また、誘起電圧Vは、図4中図に見られるように故障の兆候が出始めると着磁コイル11ごとに測定波形に歪みが生じ、図4下図に見られるように劣化が進行すると測定波形の基準波形に対する変化量が大きくなる。すなわち、着磁装置1は、誘起電圧Vの測定波形を指標として寿命を予測することにより、着磁ヨーク2に生じる劣化の兆候を早期に検出することができる。尚、測定波形の歪みは、誘起電圧Vの大きさが最大となるタイミング以降の過渡状態において現れるため、この部分の波形を切り出して寿命予測に使用することもできる。
【0065】
続いて、故障の兆候が見られる場合の着磁コイル11に印加される着磁電流と誘起電圧Vとについて説明する。ここで、印加電圧Vは着磁コイル11に印加される着磁電流の電圧換算値であるため、着磁電流に歪みが生じる場合にはこれに連動して印加電圧Vにも歪みが生じることになる。
【0066】
図5は、着磁コイル11の印加電圧Vとサーチコイル12の誘起電圧Vとを比較するグラフである。より具体的には、図5上図は故障の兆候が見られない段階での印加電圧V及び誘起電圧Vを示し、図5下図は故障の兆候が見られた段階での印加電圧V及び誘起電圧Vを示している。尚、誘起電圧Vは、磁極CH1~CH6のうち1つを代表して表示している。
【0067】
図5に見られるように、故障の兆候が表れる前後で印加電圧Vの波形には変化が見られないのに対し、誘起電圧Vでは波形の歪みとして確認することができる。すなわち、着磁装置1は、着磁電流に変化が無い段階であっても、サーチコイル12の誘起電圧Vにより着磁ヨーク2に生じる劣化の兆候を早期に検出することができる。
【0068】
ところで、上記の寿命予測方法の手順は、誘起電圧Vの基準波形と測定波形との時間領域における類似度による算出を例示したが、同様の手順を周波数領域で行うことも可能である。より具体的には、制御部4は、上記した基準波形をx(t)と測定波形y(t)とを周波数変換することにより、それぞれ基準スペクトルx(ω)と測定スペクトルy(ω)とし、次式で表される周波数領域における相互相関関数、すなわちコヒーレンスCxy(τ)を算出し、τ=0の値Cxy(0)により両者の類似度を算出してもよい。
【数2】
【0069】
図6は、磁極CH1~CH3の測定スペクトルy(ω)である。また、図7は、磁極CH4~CH6の測定スペクトルy(ω)である。図6及び図7では、横軸を着磁回数Tとし、縦軸を周波数としたそれぞれのスペクトルの大きさをグレースケールの濃淡で示している。
【0070】
図6に見られるように、例えば磁極CH3の測定スペクトルy(ω)は、着磁回数Tが約56000回以降のデータにおいて、それまでとは異なる傾向を示しており、測定波形に歪みが生じたことが確認できる。同様に図7では、例えば磁極CH4の測定スペクトルy(ω)は、着磁回数Tが約51000回以降のデータにおいて、それまでとは異なる傾向を示しており、測定波形に歪みが生じたことが確認できる。尚、本データにおいては、着磁回数Tが約64000回の時点で着磁ヨーク2が完全に故障状態に至っている。
【0071】
次に、着磁ヨーク2が故障に至るまで着磁を繰り返した場合の測定波形と基準波形との類似度の変化について説明する。図8は、基準波形x(t)と測定波形y(t)との時間領域における類似度の変化を表すグラフである。より具体的には、図8は、上記した磁極CH4のデータについて、横軸を着磁回数Tとした場合のRxy(0)の値を示している。ここで、基準波形x(t)としては閾値回数Tthである7000回目の誘起電圧Vの波形を用いているが、それまでの着磁回数TのRxy(0)についても事後的に算出して記載している。
【0072】
図8に見られるように、測定波形y(t)に連続して歪みが生じる約51000回までの着磁については、Rxy(0)として算出される類似度が1付近であるのに対し、その後の類似度は、破線で示す所定の閾値Rth=0.95を下回ることが確認できる。そして、上記の寿命予測方法において、歪み回数Eが所定の閾値回数Eth=1000に達する時点、すなわち図中のPで示す着磁回数で警告が発せられ、残り1万回程度の着磁で着磁ヨーク2が故障に至ることを予測することができる。
【0073】
図9は、基準スペクトルx(ω)と測定スペクトルy(ω)との周波数領域における類似度の変化を表すグラフである。より具体的には、図9は、上記した磁極CH4のデータについて、横軸を着磁回数Tとした場合のCxy(0)の値を示している。ここで、基準スペクトルx(ω)としては閾値回数Tthである7000回目の誘起電圧Vのスペクトルを用いているが、それまでの着磁回数TのCxy(0)についても事後的に算出して記載している。
【0074】
図9に見られるように、測定スペクトルy(ω)に連続して歪みが生じる約51000回までの着磁については、Cxy(0)として算出される類似度が1付近であるのに対し、その後の類似度は、破線で示す所定の閾値Rth=0.95を下回ることが確認できる。そして、上記の寿命予測方法において、歪み回数Eが所定の閾値回数Eth=1000に達する時点、すなわち図中のQで示す着磁回数で警告が発せられ、残り1万回程度の着磁で着磁ヨーク2が故障に至ることを予測することができる。また、図8図9との比較から、時間領域よりも周波数領域で類似度を算出する方が、着磁ヨーク2の劣化に伴う類似度の変化が大きく歪みの発生を検出しやすいことが分かる。
【0075】
以上のように、本発明に係る着磁装置1は、着磁ヨーク2に生じる磁束に伴いサーチコイル12に誘起される誘起電圧Vを指標として着磁ヨーク2の寿命を予測する。そのため、着磁装置1は、着磁電流が変化する前の段階、又は着磁電流が変化しない場合であっても、着磁ヨーク2の振動により空乏が生じて着磁コイル11がずれる場合や傾きが変化する場合など着磁ヨーク2に劣化の兆候が生じる段階で検出することができる。従って、本発明に係る着磁装置1によれば、着磁ヨーク2に生じる劣化の兆候を早期に検出することができる。
【0076】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る着磁装置1は、上記した第1実施形態の着磁装置1と構成が共通し、制御部4が実行する寿命予測方法の手順が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0077】
図10は、第2実施形態に係る寿命予測方法の手順を示すフローチャートである。制御部4は、着磁装置1の稼働開始のタイミングで図10のフローチャートに示す制御を開始して着磁ヨーク2の寿命予測を行う。
【0078】
ここで、本実施形態における制御部4は、着磁の実行毎に測定される複数の磁極CH1~CH6のそれぞれの誘起電圧Vのうち、一の誘起電圧Vを基準波形とし、他の誘起電圧Vを測定波形として両者の類似度を算出し、着磁ヨーク2の寿命を予測する。また、制御部4は、図10のフローチャートにおける一連の手順において使用するパラメータとして、測定波形に歪みが認められる歪み回数Eを用意し、歪み回数E=0を初期値として寿命予測の手順を開始する。
【0079】
寿命予測方法の手順が開始されると、制御部4は、着磁が実行されたか否かを判定する(ステップS12)。より具体的には、制御部4は、上記したように電源部3を介して着磁ヨーク2における着磁コイル11に通電することでワークWを着磁する(着磁工程)。また、制御部4は、サーチコイル12に生じる誘起電圧Vを測定し(電圧測定工程)、その積分値を算出することにより着磁ヨーク2に発生した磁束を算出し、その最大値が十分大きいか否かで着磁の良否を判定する。一方、着磁が実行されていない期間では、制御部4は、着磁が実行されるまで待機する(ステップS12でNo)。
【0080】
そして、制御部4は、着磁が実行された場合に(ステップS12でYes)、例えば磁極CH1の誘起電圧Vを基準波形として設定する(ステップS13、基準設定工程)。ここで、基準波形として設定する磁極は、他の磁極CH2~CH6のいずれかであってもよく、又は複数の磁極であってもよい。
【0081】
次に、制御部4は、磁極CH1の基準波形x(t)と他の磁極CH2~CH6のそれぞれの測定波形y(t)とにより、上記した第1実施形態と同様に相互相関関数Rxy(τ)を算出し(ステップS14)、τ=0の値Rxy(0)が所定の閾値Rth以上であるか否かを判定することにより両者に変化が見られるか否かを判定する(ステップS15)。このとき、磁極CH2~CH6の全ての類似度が同時に閾値Rth未満となった場合には、磁極CH1の劣化の兆候として扱うことができる。
【0082】
尚、本実施形態におけるステップS15~ステップS19は、図3における第1実施形態のステップS7~ステップS11とそれぞれ同一であるため、ここではステップS15以降の詳細な説明は省略する。そして、制御部4は、歪み回数Eが閾値回数Ethに達した時点で故障の兆候を検出したと判断し(ステップS17でYes)、着磁装置1のユーザに警告を発する(ステップS18)。これにより、着磁装置1のユーザは、着磁ヨーク2に生じる劣化の兆候を早期に検出することができる(予測工程)。
【0083】
以上のように、本実施形態に係る着磁装置1は、着磁ヨーク2が複数の磁極を有する場合に、一回の着磁で取得される複数の磁極の誘起電圧同士で類似度を算出することにより、第1実施形態と同様に着磁ヨーク2に生じる劣化の兆候を早期に検出することができる。
【0084】
尚、本実施形態に係る寿命予測方法によれば、一回の着磁毎に類似度を算出することができるため、例えば着磁装置1と同様の構成を有する限り、稼働を既に開始した既存の着磁装置(着磁回数T≠0)に対しても、着磁毎に同様の手順を実行することにより後付け機能として寿命予測を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 着磁装置
2 着磁ヨーク
3 電源部
4 制御部
10 鉄心
11 着磁コイル
12 サーチコイル
W ワーク
CH1~CH6 磁極
印加電圧
誘起電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10