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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】縦型洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/40 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
D06F37/40 B
D06F37/40 A
D06F37/40 D
D06F37/40 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019099528
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020192089
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 保
(72)【発明者】
【氏名】吉田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】三觜 紳平
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-229195(JP,A)
【文献】特開2003-164692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/30
D06F 37/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生するモータと、
洗濯物の出入口が上端に形成されて底壁が下端に設けられて洗濯物を収容し、前記モータの駆動力を受けて回転する洗濯槽と、
前記洗濯槽内において前記底壁上に配置され、前記モータの駆動力を受けて回転する回転翼と、
前記洗濯槽の回転を停止させるブレーキと、
前記モータから前記洗濯槽への駆動力の伝達経路を遮断したり接続したりするクラッチと、
前記洗濯槽内に空気を送り込む送風部と、
前記モータ、前記ブレーキ、前記クラッチおよび前記送風部を制御して、前記洗濯槽内の洗濯物を乾燥させる乾燥運転を実行する制御手段とを含み、
前記乾燥運転において、前記制御手段は、前記モータを作動させて前記回転翼を回転させて、前記ブレーキを解除して前記クラッチによって前記伝達経路を遮断することにより前記洗濯槽をフリー状態し、
前記乾燥運転において、前記制御手段は、前記ブレーキを作動させて前記洗濯槽を静止させた状態から前記クラッチによって前記伝達経路を接続して前記洗濯槽を回転させる状態に切り替えた後に前記ブレーキを作動させて前記洗濯槽を静止させた状態に戻し、その後、前記洗濯槽を前記フリー状態にする、縦型洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記洗濯槽内の洗濯物の負荷量を検出する検出手段をさらに含み、
前記検出手段が検出する負荷量に応じて、前記制御手段は、前記洗濯槽を前記フリー状態にするタイミングを決定する、請求項に記載の縦型洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、縦型洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の縦型の電気洗濯機では、衣類投入口が形成された上カバーを有する外枠と、衣類投入口を開閉する外蓋と、外枠内に配置された外槽と、外槽内に配置されて洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽と、洗濯兼脱水槽内に配置された攪拌翼とを含む。外蓋には、吸気窓穴と、吸気窓穴を開閉する吸気窓蓋とが設けられる。電気洗濯機では、吸気窓蓋が開放された状態で、冷風乾燥コースが実行される。冷風乾燥コースでは、洗濯兼脱水槽および攪拌翼を一体的に高速回転させる通風運転と、洗濯兼脱水槽の回転を停止させた状態で攪拌翼を回転させる布入れ替え運転とが繰り返される。通風運転では、外の空気が吸気窓穴から洗濯兼脱水槽内に取り込まれるので、洗濯兼脱水槽内で洗濯兼脱水槽および攪拌翼とともに回転する洗濯物は、この空気に触れることによって乾燥する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-105232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電気洗濯機では、冷風乾燥コースの布入れ替え運転において、洗濯兼脱水槽内の洗濯物は、回転する攪拌翼によって攪拌されることで動こうとする。一方で、このときの洗濯兼脱水槽は、回転を停止した静止状態にある。そのため、洗濯物と洗濯兼脱水槽の内面との間に余計な摩擦が生じることによって、この摩耗による機械力によって洗濯物がねじれやすく、洗濯物には、ねじれによる皺が生じやすい。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、乾燥運転における洗濯物の皺の低減を図れる縦型洗濯乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、駆動力を発生するモータと、洗濯物の出入口が上端に形成されて底壁が下端に設けられて洗濯物を収容し、前記モータの駆動力を受けて回転する洗濯槽と、前記洗濯槽内において前記底壁上に配置され、前記モータの駆動力を受けて回転する回転翼と、前記洗濯槽の回転を停止させるブレーキと、前記モータから前記洗濯槽への駆動力の伝達経路を遮断したり接続したりするクラッチと、前記洗濯槽内に空気を送り込む送風部と、前記モータ、前記ブレーキ、前記クラッチおよび前記送風部を制御して、前記洗濯槽内の洗濯物を乾燥させる乾燥運転を実行する制御手段とを含み、前記乾燥運転において、前記制御手段が、前記モータを作動させて前記回転翼を回転させて、前記ブレーキを解除して前記クラッチによって前記伝達経路を遮断することにより前記洗濯槽をフリー状態にする、縦型洗濯乾燥機である。
【0007】
また、本発明は、前記乾燥運転において、前記制御手段が、第1期間中では前記ブレーキを作動させて前記洗濯槽を静止状態にし、前記第1期間の後の第2期間中では前記洗濯槽を前記フリー状態にすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記縦型洗濯乾燥機が、前記洗濯槽内の洗濯物の負荷量を検出する検出手段をさらに含み、前記検出手段が検出する負荷量に応じて、前記制御手段が、前記洗濯槽を前記フリー状態にするタイミングを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、縦型洗濯乾燥機の乾燥運転では、洗濯槽内の洗濯物は、回転する回転翼によって攪拌され、送風部によって送り込まれる空気が浴びせられることによって乾燥する。その際、洗濯槽はフリー状態にあるので、洗濯物が回転翼によって攪拌されることで動こうとしても、洗濯槽は、洗濯物の動きを邪魔しないように、洗濯物に追従しながら回転することができる。これにより、洗濯物と洗濯槽の内面との間に余計な摩擦が生じにくいので、洗濯物がねじれにくい。そのため、洗濯物には、ねじれによる皺が生じにくい。この結果、乾燥運転における洗濯物の皺の低減を図れる。また、洗濯物の布痛みも低減することができる。
【0010】
また、本発明によれば、乾燥運転において終盤よりも前の期間である第1期間中では、洗濯物が湿った状態にあるので、洗濯槽が静止状態にあって洗濯物と洗濯槽の内面との間に摩擦が生じても、洗濯物がねじれにくい。むしろ、第1期間中では、回転翼の回転中に洗濯槽が静止状態にあることにより、洗濯槽内の洗濯物の攪拌が促進されるので、重い洗濯物であっても効率的に乾燥する。そして、第1期間の経過に応じてある程度乾燥した洗濯物には皺ができやすくなるので、第1期間の後の終盤である第2期間中では、洗濯槽がフリー状態になることにより、洗濯槽内の洗濯物がねじれにくく、洗濯物には、ねじれによる皺が生じにくい。この結果、乾燥運転において、洗濯物の効率的な乾燥と、洗濯物の皺の低減とを図れる。
【0011】
また、本発明によれば、洗濯槽内の洗濯物の負荷量に応じて、洗濯槽をフリー状態にするタイミングが決定されるので、洗濯槽をフリー状態にするタイミングが最適化されることにより、洗濯物の一層効率的な乾燥と、洗濯物の皺の一層の低減とを図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る縦型洗濯乾燥機の模式的な縦断面右側面図である。
図2図2は、縦型洗濯乾燥機において一部を断面で示した要部の斜視図である。
図3図3は、縦型洗濯乾燥機の電気的構成を示すブロック図である。
図4図4は、縦型洗濯乾燥機において実行される洗濯乾燥運転を示すフローチャートである。
図5図5は、洗濯乾燥運転における乾燥工程における洗濯槽内の温度の計時変化を示すグラフである。
図6図6は、乾燥工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る縦型洗濯乾燥機1の模式的な縦断面右側面図である。図1における上下方向を縦型洗濯乾燥機1の上下方向Zといい、図1における左右方向を縦型洗濯乾燥機1の前後方向Yという。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。前後方向Yのうち、図1における左側を前側Y1といい、図1における右側を後側Y2という。
【0014】
縦型洗濯乾燥機1は、その外殻をなす筐体2と、筐体2内に収容された外槽3と、外槽3内に収容された洗濯槽4と、洗濯槽4内に収容された回転翼5とを含む。縦型洗濯乾燥機1は、外槽3に接続されたダクト6と、ダクト6から洗濯槽4内に空気を送り込む送風部7と、送風部7によって洗濯槽4内へ送り込まれる空気を加熱する加熱部8とを含む。縦型洗濯乾燥機1は、洗濯槽4および回転翼5を回転させる駆動力を発生するモータ9と、洗濯槽4の回転にブレーキをかけたりモータ9の駆動力を洗濯槽4に断続して伝えたりするブレーキクラッチ機構10とを含む。
【0015】
筐体2は、例えば金属製であり、ボックス状に形成される。筐体2の上面2Aは、例えば、後側Y2に向かうに従って上側Z1に延びるように傾斜して形成される。なお、上面2Aと筐体2の後面2Bの上端部とを構成する部分は、筐体2とは別部品の上面板として、筐体2に対して着脱可能にあってもよい。以下では、上面板において、上面2Aの後端部と後面2Bの上端部とに跨った部分をバックプレートということがある。上面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口部15が形成される。上面2Aには、開口部15を開閉する扉16が設けられる。上面2Aにおいて開口部15の周囲の領域には、液晶操作パネルなどで構成された操作部17が設けられる。縦型洗濯乾燥機1の使用者は、操作部17を操作することによって、縦型洗濯乾燥機1で実行される洗濯乾燥運転についての運転条件を自由に選択したり、縦型洗濯乾燥機1に対して洗濯乾燥運転の開始や停止などを指示したりすることができる。
【0016】
外槽3は、例えば樹脂製であり、有底円筒状に形成される。外槽3は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を下側Z2から塞ぐ底壁3Bと、円周壁3Aの上側Z1側の端縁を縁取りつつ円周壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Cとを有する。環状壁3Cの内側には、円周壁3Aの中空部分に上側Z1から連通する出入口18が形成される。出入口18は、筐体2の開口部15に対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。環状壁3Cには、出入口18を開閉する扉19が設けられる。底壁3Bは、略水平に延びる円板状に形成され、底壁3Bの円中心位置には、底壁3Bを貫通する貫通孔3Dが形成される。
【0017】
外槽3内には、水が溜められる。外槽3の環状壁3Cには、水道水の蛇口につながった給水路20が上側Z1から接続され、水道水が給水路20から外槽3内に供給される。給水路20の途中には、給水を開始したり停止したりするために開閉される給水弁21が設けられる。外槽3の底壁3Bには、排水路22が下側Z2から接続され、外槽3内の水は、排水路22から機外に排出される。排水路22の途中には、排水を開始したり停止したりするために開閉される排水弁23が設けられる。
【0018】
洗濯槽4は、例えば金属製であり、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物Qを収容することができる。洗濯槽4は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁4Aと、洗濯槽4の下端に設けられて円周壁4Aの中空部分を下側Z2から塞ぐ底壁4Bとを有する。
【0019】
円周壁4Aの内周面は、洗濯槽4の内周面である。円周壁4Aの内周面の上端部は、円周壁4Aの中空部分を上側Z1に露出させる出入口24である。出入口24は、洗濯槽4の上端に形成される。出入口24は、外槽3の出入口18に対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。使用者は、開放された開口部15、出入口18および24を介して、洗濯槽4に対して上側Z1から洗濯物Qを出し入れする。
【0020】
洗濯槽4は、外槽3内に同軸上で収容される。外槽3内に収容された状態の洗濯槽4は、その中心軸をなして上下方向Zに延びる軸線Jを中心として回転可能である。また、洗濯槽4の円周壁4Aおよび底壁4Bには、貫通孔4Cが複数形成され、外槽3内の水は、貫通孔4Cを介して、外槽3と洗濯槽4との間で行き来できる。そのため、外槽3内の水位と洗濯槽4内の水位とは、一致する。
【0021】
洗濯槽4の底壁4Bは、外槽3の底壁3Bに対して上側Z1に間隔を隔てて略平行に延びる円板状に形成され、底壁4Bにおいて軸線Jと一致する円中心位置には、底壁4Bを貫通する貫通孔4Dが形成される。底壁4Bには、貫通孔4Dを取り囲みつつ軸線Jに沿って下側Z2へ延び出た管状の支持軸25が設けられる。支持軸25は、外槽3の底壁3Bの貫通孔3Dに挿通されて、支持軸25の下端部は、底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0022】
回転翼5は、いわゆるパルセータであり、軸線Jを円中心とする円盤状に形成され、洗濯槽4と同心状になるように洗濯槽4内において底壁4B上に配置される。回転翼5において洗濯槽4の出入口24を臨む上面には、放射状に配置される複数の羽根5Aが設けられる。回転翼5には、その円中心から軸線Jに沿って下側Z2へ延びる回転軸26が設けられる。回転軸26は、支持軸25の中空部分に挿通されて、回転軸26の下端部は、外槽3の底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0023】
ダクト6は、筐体2内において外槽3の外、例えば外槽3の環状壁3Cよりも上側Z1に配置されて前後方向Yに延びる管状の流路である。ダクト6の前端部は、折り曲げられて環状壁3Cの上端部に上側Z1から接続され、ダクト6の後端部は、筐体2の後面2Bの上端部、具体的には、前述したバックプレートに位置する。ダクト6の前端部において環状壁3Cに接続された部分には、出口6Aが形成され、ダクト6の後端部においてバックプレートに位置する部分には、入口6Bが形成される。ダクト6の内部は、出口6Aを介して外槽3の内部に連通した状態にあり、入口6Bを介して縦型洗濯乾燥機1の外に連通した状態にある。
【0024】
送風部7は、いわゆるファンであり、ダクト6の内部に配置される回転羽根28と、回転羽根28を回転させるモータ(図示せず)とを含む。回転羽根28が回転すると、縦型洗濯乾燥機1の外の空気が、太い破線矢印で示すように、入口6Bを通ってダクト6内に吸い込まれた後に、ダクト6の出口6Aから洗濯槽4の貫通孔4Cや出入口24を介して洗濯槽4内に上側Z1から送り込まれた後に、流れる向きを変えて、上側Z1の出入口24および出入口18へ流れる。上側Z1へ流れる空気の先には、出入口18を閉じた状態にある扉19が存在する。扉19には、フィルタ29によって塞がれた開口部19Aが形成される。上側Z1へ流れる空気は、開口部19Aを通って外槽3の外に流出し、筐体2に設けられた隙間(図示せず)を通って縦型洗濯乾燥機1の外に排出される。この空気に含まれる埃などの異物はフィルタ29によって捕獲される。なお、本実施形態とは異なるが、入口6Bを外槽3に接続することにより、空気を、ダクト6と外槽3との間で循環させて洗濯槽4内に送り込んでもよい。いずれにせよ、ダクト6内から洗濯槽4内に空気を送り込むことを、以下では「送風」ということがある。
【0025】
加熱部8は、公知のヒータであり、ダクト6の内部に配置される。加熱部8は、ONされて通電されることによって発熱し、ダクト6から洗濯槽4内に送り込まれる空気を加熱する。一方、加熱部8は、OFFされて通電が遮断されることによって発熱しなくなるので、周囲の空気の加熱を停止する。
【0026】
モータ9は、インバータモータなどの電動モータである。モータ9は、筐体2内において、外槽3の下側Z2に配置される。モータ9は、軸線Jを中心として回転する出力軸30を有し、発生した駆動力を出力軸30から出力する。出力軸30は、ブレーキクラッチ機構10を介して、洗濯槽4の支持軸25の下端部に連結される。出力軸30は、減速機構31を介して回転軸26の下端部に連結される。
【0027】
図2は、洗濯槽4、回転翼5、ブレーキクラッチ機構10および減速機構31において一部を断面で示した要部の斜視図である。以下では、減速機構31およびブレーキクラッチ機構10について詳説する。
【0028】
減速機構31は、洗濯槽4における管状の支持軸25の内側に配置される。支持軸25において減速機構31を収容した部分は、その上下の部分よりも一段大径になった大径部25Aとして構成される。縦型洗濯乾燥機1は、支持軸25における少なくとも大径部25Aを収容する円筒状のケース32を含む。ケース32は、外槽3の底壁3Bに固定される。ケース32において上下方向Zの途中には、ケース32の径方向における外側へ張り出した環状のフランジ部32Aが設けられる。ケース32は、フランジ部32Aにおいて上下に分割可能であってもよい。フランジ部32Aには、フランジ部32Aから下側Z2へ延びる縦軸32Bが固定される。ケース32は、ケース32の径方向における外側へ突出して縦軸32Bの下端に連結されたステー32Cを含む。
【0029】
減速機構31の一例は、遊星歯車機構である。この場合の減速機構31は、モータ9の出力軸30の上端部に連結された太陽歯車33と、太陽歯車33の周囲に複数配置されて太陽歯車33と噛み合った遊星歯車34と、これらの遊星歯車34を取り囲んで各遊星歯車34と噛み合った外輪歯車35と、各遊星歯車34を自転可能に保持して回転翼5の回転軸26の下端部に連結されたキャリア36とを有する。モータ9が駆動力を発生して出力軸30が回転すると、太陽歯車33が出力軸30と一体回転する。すると、各遊星歯車34が、自転しながら太陽歯車33のまわりを公転し、これにより、キャリア36が回転軸26を伴って回転する。そのため、回転軸26に連結された回転翼5は、モータ9の駆動力が伝達されることにより、モータ9の出力軸30よりも低速で軸線Jまわりに回転する。なお、回転翼5とモータ9とは常につながった状態にあるので、回転翼5は、モータ9の作動に連動して回転する。
【0030】
ブレーキクラッチ機構10は、レバー39と、ブレーキ40と、クラッチ41と、アクチュエータ42とを含む。レバー39は、本体部39Aを有し、本体部39Aにおいてケース32の縦軸32Bに連結され、縦軸32Bまわりに回動可能である。レバー39は、本体部39Aの例えば上端部から横に突出した第1突出部39Bと、本体部39Aの例えば下端部から横に突出した第2突出部39Cとを有する。
【0031】
ブレーキ40は、例えばブレーキバンドであって、ケース32内で支持軸25の大径部25Aを取り囲む。ブレーキ40では、一端部がケース32に固定され、他端部がケース32の内部から引き出されてレバー39の本体部39Aに固定される。ブレーキ40は、レバー39の回動に応じて、大径部25Aの外周面に巻き付いたり、大径部25Aの外周面から離れたりする。
【0032】
レバー39が平面視で時計回りに回動すると、ブレーキ40は、大径部25Aの外周面に巻き付けられて圧接する。このときのブレーキ40は作動状態にあり、ブレーキ40と大径部25Aと間の摩擦力によって、支持軸25つまり洗濯槽4の回転が停止される。一方、レバー39が平面視で反時計回りに回動すると、ブレーキ40は、大径部25Aの外周面から離れる。このときのブレーキ40は解除状態にあり、ブレーキ40と大径部25Aと間の摩擦力が減少するので、洗濯槽4は回転できる。ケース32においてレバー39を支持する縦軸32Bには、コイルばねなどによって構成された付勢部材43が設けられ、ブレーキ40は、大径部25Aの外周面に巻き付くように、平面視で時計回りの方向へ付勢部材43によって常に付勢される。
【0033】
クラッチ41は、モータ9の出力軸30に固定された第1噛合部材44と、洗濯槽4の支持軸25の下端部に連結された第2噛合部材45と、第2噛合部材45を第1噛合部材44へ向けて付勢する付勢部材46と、レバー39の回動に連動して第2噛合部材45を動かすアーム47とを含む。
【0034】
第1噛合部材44は、出力軸30と同軸上に配置された環状体である。第1噛合部材44の上端部には、第1噛合部材44の周方向に沿って配置された凹凸状の歯44Aが設けられる。第2噛合部材45は、第1噛合部材44と同軸上かつ第1噛合部材44よりも上側Z1に配置された環状体である。第2噛合部材45の下端部には、第2噛合部材45の周方向に沿って配置された凹凸状の歯45Aが設けられる。第2噛合部材45の上端部には、第2噛合部材45の径方向における外側へ張り出した環状のフランジ部45Bが設けられる。
【0035】
第2噛合部材45は、洗濯槽4の支持軸25に対して一体回転可能かつ上下方向Zに相対移動可能である。付勢部材46は、支持軸25に巻き付けられたコイルばねなどによって構成され、第2噛合部材45のフランジ部45Bを上側Z1から押圧することによって、第2噛合部材45全体を下側Z2へ常に付勢する。
【0036】
アーム47は、レバー39の第2突出部39Cと第2噛合部材45のフランジ部45Bとをつなぐように配置される。アーム47の途中部には、ケース32によって支持された横軸48が連結されるので、アーム47は、横軸48まわりに揺動可能である。アーム47の一端部をなす上端部は、図2では、平面視において第2突出部39Cに対して時計回りの方向における下流側から対向した状態にある。アーム47の他端部をなす下端部は、第2噛合部材45のフランジ部45Bに下側Z2から対向した状態にある。
【0037】
図2に示すクラッチ41では、レバー39の第2突出部39Cがアーム47の一端部を押圧することによって、アーム47は、その他端部が付勢部材46の付勢力に抗して第2噛合部材45を持ち上げるように揺動した状態にある。このとき、第2噛合部材45の歯45Aが第1噛合部材44の歯44Aから離れた状態にあるので、モータ9の出力軸30と洗濯槽4の支持軸25とは、遮断された状態にある。つまり、図2に示すクラッチ41は、モータ9から洗濯槽4への駆動力の伝達経路を遮断した状態にある。
【0038】
図2の状態において、レバー39が平面視における反時計回りに回動することによって、レバー39の第2突出部39Cがアーム47の一端部を押圧しなくなると、アーム47は、その他端部が下降するように揺動する。これにより、第2噛合部材45が付勢部材46の付勢力によって第1噛合部材44側へ下降して、第1噛合部材44の歯44Aと第2噛合部材45の歯45Aとが噛み合う。そのため、モータ9の出力軸30から洗濯槽4の支持軸25へ駆動力の伝達が可能になる。つまり、クラッチ41は、モータ9から洗濯槽4への駆動力の伝達経路を接続する。そのため、洗濯槽4は、モータ9の駆動力を受けて回転することができる。
【0039】
アクチュエータ42は、例えばトルクモータによって構成される。ブレーキクラッチ機構10は、アクチュエータ42とレバー39の第1突出部39Bとをつなぐワイヤ49を含む。アクチュエータ42は、ONになってワイヤ49を一段ずつ引っ張ることによってレバー39を段階的に回動させることができる。図2におけるブレーキクラッチ機構10を第1状態というと、第1状態では、ブレーキ40が作動状態にあり、クラッチ41は、モータ9から洗濯槽4への駆動力の伝達経路を遮断した状態にある。このときの洗濯槽4は、回転が停止した静止状態にある。この実施形態では、通常のブレーキクラッチ機構10は、第1状態にある。
【0040】
アクチュエータ42が、ワイヤ49を一段引っ張ることによって、平面視における反時計回りにレバー39を所定量だけ回動させると、ブレーキクラッチ機構10は、第2状態(図示せず)になる。第2状態では、ブレーキ40が解除状態にあり、クラッチ41は、引き続き、モータ9から洗濯槽4への駆動力の伝達経路を遮断した状態にある。このときの洗濯槽4は、自由に回転できるフリー状態にある。
【0041】
アクチュエータ42が、ワイヤ49をさらに一段引っ張ることによって、平面視における反時計回りにレバー39をさらに回動させると、ブレーキクラッチ機構10は、第3状態(図示せず)になる。第3状態では、ブレーキ40が引き続き解除状態にあり、クラッチ41は、第1噛合部材44と第2噛合部材45とが噛み合うことによって、モータ9から洗濯槽4への駆動力の伝達経路を接続した状態にある。このときの洗濯槽4は、回転翼5と同様に、モータ9の駆動力を受けて回転できる状態にある。アクチュエータ42がOFFになると、前述した付勢部材43の付勢力などによってレバー39が逆向きに回動するので、ブレーキクラッチ機構10は、第3状態、第2状態および第1状態の順に切り替わる。ブレーキクラッチ機構10が第1状態になると、ワイヤ49は元の位置に戻る。
【0042】
図3は、縦型洗濯乾燥機1の電気的構成を示すブロック図である。縦型洗濯乾燥機1は、制御手段および検出手段の一例としての制御部60を含む。制御部60は、例えば、CPU61と、ROMやRAMなどのメモリ62と、タイマ63とを含むマイコンとして構成され、筐体2内に内蔵される(図1参照)。
【0043】
縦型洗濯乾燥機1は、検出手段の一例としての回転数読取装置64と、温度検出部65とをさらに含む。回転数読取装置64および温度検出部65、ならびに、前述したモータ9、ブレーキクラッチ機構10、給水弁21、排水弁23、送風部7、加熱部8および操作部17のそれぞれは、制御部60に対して電気的に接続される。
【0044】
回転数読取装置64は、モータ9の回転数、厳密には、モータ9における出力軸30の回転数を読み取る装置であり、例えば、ホールICで構成される。回転数読取装置64が読み取った回転数は、リアルタイムで制御部60に入力される。制御部60は、入力された回転数に基づいて、モータ9に印加する電圧のデューティ比を制御することによって、所望の回転数で回転するようにモータ9を制御する。なお、この実施形態では、洗濯槽4の回転数は、モータ9の回転数と同じであり、回転翼5の回転数は、減速機構31での減速比などの所定の定数をモータ9の回転数に乗じて得られる値である。いずれにせよ、回転数読取装置64は、モータ9の回転数を読み取ることによって、洗濯槽4および回転翼5のそれぞれの回転数も読み取る。温度検出部65として、サーミスタなどの公知の温度センサを使用できる。温度検出部65は、外槽3内の温度つまり洗濯槽4内の温度を検知する。
【0045】
制御部60は、ブレーキクラッチ機構10のアクチュエータ42のON・OFFなどを制御することによって、ブレーキクラッチ機構10を、前述した第1状態、第2状態および第3状態のいずれかに切り替える。つまり、制御部60は、ブレーキクラッチ機構10におけるブレーキ40およびクラッチ41のそれぞれの動作を制御する。制御部60は、給水弁21および排水弁23の開閉を制御する。制御部60は、送風部7および加熱部8のそれぞれの動作を制御する。使用者が操作部17を操作して運転条件などについて選択すると、制御部60は、その選択を受け付ける。
【0046】
制御部60は、モータ9、ブレーキクラッチ機構10、給水弁21、排水弁23、送風部7および加熱部8の動作を制御することによって、洗濯乾燥運転を実行する。図4のフローチャートを参照して、洗濯乾燥運転は、洗濯物Qを洗う洗い工程(ステップS1)と、洗い工程の後に洗濯物Qをすすぐすすぎ工程(ステップS2)と、すすぎ工程の後に洗濯槽4を回転させて洗濯物Qを脱水する脱水工程(ステップS3)と、脱水工程の後に洗濯物Qを乾燥させる乾燥工程(ステップS4)とを少なくとも有する。
【0047】
制御部60は、ステップS1の洗い工程では、給水弁21を所定時間だけ開いて外槽3および洗濯槽4に所定水位まで水を溜めた後に、回転翼5を回転させる。これにより、回転する回転翼5の羽根5Aによる機械力や、回転翼5の回転に伴って洗濯槽4内に発生した水流による機械力によって、洗濯槽4内の洗濯物Qが攪拌される。ここでの攪拌によって、洗濯物Qから汚れが除去される。なお、回転翼5とともに洗濯槽4も回転してもよい。また、洗濯槽4内に洗剤が投入されてもよく、この場合、洗濯槽4内の洗濯物Qは、洗剤によって汚れが分解される。所定の洗い時間が経過すると、制御部60は、排水弁23を開いて外槽3および洗濯槽4の排水を行い、洗い工程を終了する。
【0048】
制御部60は、ステップS2のすすぎ工程では、給水弁21を所定時間だけ開いて外槽3および洗濯槽4に所定水位まで水道水を溜めた後に、回転翼5を回転させる。これにより、洗濯槽4内の洗濯物Qがすすがれる。所定のすすぎ時間が経過すると、制御部60は、排水弁23を開いて外槽3および洗濯槽4の排水を行い、すすぎ工程を終了する。すすぎ工程は、複数回実施されてもよい。
【0049】
制御部60は、ステップS3の脱水工程では、排水弁23を開いた状態で、洗濯槽4を、例えば850rpmで高速回転させる。この高速回転により生じた遠心力によって、洗濯槽4内の洗濯物Qが脱水される。脱水により洗濯物Qから染み出た水は、排水路22から機外に排出される。なお、脱水工程は、中間脱水工程として、洗い工程およびすすぎ工程のそれぞれの後に実施されてもよい。この場合、ステップS3のようにすすぎ工程の後に最終的に実行される脱水工程を、中間脱水工程と区別して最終脱水工程という。最終脱水工程における洗濯槽4の最高回転数は、中間脱水工程における洗濯槽4の最高回転数よりも高くてもよい。
【0050】
制御部60は、洗濯乾燥運転における最後の工程として、ステップS4の乾燥工程を実行する。なお、乾燥工程は、洗濯乾燥運転の一工程として最終脱水工程に続いて実行されてもよいし、乾燥運転として独立して実行されてもよい。乾燥工程では、洗濯槽4内の洗濯物Qは、回転する回転翼5によって攪拌され、送風部7および加熱部8によって送り込まれる空気が浴びせられることによって乾燥する。
【0051】
図5は、乾燥工程における洗濯槽4内の温度の計時変化を示すグラフである。図5のグラフでは、横軸が経過時間(単位:分)を示し、縦軸が、温度検出部65によって検知される外槽3内の温度(単位:℃)を示す。外槽3内の温度は、洗濯槽4内における洗濯物Qの乾燥効率を示す指標である。一例として、乾燥効率は、乾燥工程が終了して完全に乾燥した洗濯物Qの質量を、洗濯乾燥工程開始直前の湿った洗濯物Qの質量で割って得られる値(単位:%)である。外槽3内の温度の推移と乾燥効率の推移とは完全には一致しないが、外槽3内の温度が高い場合には、乾燥効率も高く、洗濯物Qに含まれる水分は少ない。
【0052】
乾燥工程の期間は、第1期間と、第1期間の後の第2期間とに区分される。第1期間は、加熱乾燥期間と、加熱乾燥期間の後の恒率乾燥期間とに区別される。加熱乾燥期間は、乾燥工程の序盤であり、加熱乾燥期間中では、洗濯物Qから急激に水分が抜けていくことにより、外槽3内の温度が急激に上昇する。乾燥工程の中盤に相当する恒率乾燥期間では、外槽3内の温度がほぼ一定のまま、単位時間あたり一定量の水分が洗濯物Qから抜けていく。第2期間は、減率乾燥期間ともいい、洗濯物Qの表面がほとんど乾燥して乾燥効率が例えば90%以上になった終盤の期間である。第2期間では、時間の経過に応じて外槽3内の温度が上昇する。以下では、乾燥効率が90%になったときの外槽3内の温度を目標温度という。
【0053】
乾燥工程を示すフローチャートである図6を参照して、乾燥工程の開始に応じて、制御部60は、洗濯槽4内の洗濯物Qの量を負荷量として検出する(ステップS41)。一例として、制御部60は、洗濯物Qを載せた回転翼5を回転させたときのモータ9の回転数のばらつきを回転数読取装置64によって読み取って、このばらつきによって負荷量を検出する。
【0054】
制御部60は、検出した負荷量に応じて、乾燥工程全体が終了するまでの期間である乾燥時間や、第1期間が終了するまでの時間の目標値である目標時間などを決定する。なお、負荷量と乾燥時間との関係や、負荷量と目標時間との関係は、実験などによって予め求められてメモリ62に記憶される。また、負荷量が少ないほど洗濯物Qは早く乾燥するので、乾燥時間や目標時間は短く設定される。逆に、負荷量が多いほど洗濯物Qが乾燥するのに時間がかかるので、乾燥時間や目標時間は長く設定される。
【0055】
次に、制御部60は、タイマ63による計時を開始する(ステップS42)。そして、制御部60は、ブレーキクラッチ機構10を第1状態にして、送風部7および加熱部8を作動させて、モータ9も作動させる(ステップS43)。これにより、第1期間が始まり、第1期間中では、洗濯槽4が静止した状態で、加熱された空気つまり熱風がダクト6から洗濯槽4内の洗濯物Qに浴びせられ、洗濯物Qは、回転する回転翼5によって攪拌される。なお、第1期間中における任意のタイミングにおいて、制御部60は、ブレーキクラッチ機構10を第3状態に切り替えて、回転翼5だけでなく洗濯槽4も回転させてもよい。これにより、洗濯槽4内における洗濯物Qの位置が入れ替わるので、ダクト6からの熱風を全ての洗濯物Qに満遍なく浴びせて洗濯物Qを効果的に乾燥させることができる。
【0056】
そして、ステップS42での計時が開始してから第1期間の目標時間が経過すると(ステップS44でYES)、制御部60は、外槽3内の温度を確認する(ステップS45)。外槽3内の温度が、前述した目標温度に到達すると(ステップS45でYES)、制御部60は、ブレーキクラッチ機構10を第1状態から第2状態に切り替える(ステップS46)。なお、この際に、送風部7、加熱部8およびモータ9は、引き続き作動してもよいし、ブレーキクラッチ機構10の切り替え時に一旦停止してから、ブレーキクラッチ機構10の切り替え後に作動を再開してもよい。いずれにせよ、ブレーキクラッチ機構10の切り替えに応じて、第2期間が始まる。第2期間中では、洗濯槽4がフリー状態にあり、この状態で、熱風が洗濯槽4内の洗濯物Qに浴びせられ、洗濯物Qは、回転する回転翼5によって攪拌される。
【0057】
そして、制御部60は、乾燥工程を終了するための終了条件が満たされたか否かを確認する(ステップS47)。終了条件が満たされることの一例は、例えばステップS42での計時開始から前述した乾燥時間が経過することなどである。洗濯物Qが乾燥することによって終了条件が満たされると(ステップS47でYES)、制御部60は、送風部7、加熱部8およびモータ9を停止させて、ブレーキクラッチ機構10を第1状態に戻すことによって乾燥工程を終了する。
【0058】
以上のように、制御部60は、乾燥工程において、モータ9を作動させて回転翼5を回転させる。その際、制御部60は、乾燥工程における第1期間中では、ブレーキ40を作動させて洗濯槽4を静止状態にする(図5参照)。乾燥運転において終盤よりも前の期間である第1期間中では、洗濯物Qが湿った状態にあるので、洗濯槽4が静止状態にあって洗濯物Qと洗濯槽4の内面との間に摩擦が生じても、洗濯物Qがねじれにくい。むしろ、第1期間中では、回転翼5の回転中に洗濯槽4が静止状態にあることにより、洗濯槽4内の洗濯物Qの攪拌が促進されるので、重い洗濯物Qであっても効率的に乾燥する。
【0059】
第1期間の経過に応じてある程度乾燥した洗濯物Qには皺ができやすくなるので、乾燥工程において、第1期間の後の第2期間中では、制御部60は、洗濯槽4をフリー状態にする(図5参照)。洗濯槽4がフリー状態にある場合、洗濯物Qが回転翼5によって攪拌されることで動こうとしても、洗濯槽4は、洗濯物Qの動きを邪魔しないように、洗濯物Qに追従しながら回転することができる。これにより、洗濯物Qと洗濯槽4の内面との間に余計な摩擦が生じにくいので、洗濯物Qがねじれにくい。そのため、洗濯物Qには、ねじれによる皺が生じにくい。この結果、乾燥運転における洗濯物Qの皺の低減を図れる。また、洗濯物Qと洗濯槽4の内面との間の摩擦力を低減することができるので、洗濯物Qの布痛みを低減することができる。
【0060】
また、洗濯槽4がフリー状態にあると、ブレーキ40が洗濯槽4の支持軸25の大径部25Aに擦れることによって、ブレーキ40が摩耗するおそれがあるが、第2期間という肝心な期間だけ洗濯槽4をフリー状態にすることによって、ブレーキ40の摩耗を抑制することができる。
【0061】
また、制御部60は、前述したように、ステップS41で検出した負荷量に応じて第1期間の目標時間(ステップS44)を決定する。つまり、制御部60は、検出した負荷量に応じて、第2期間を開始して洗濯槽4をフリー状態にするタイミングを決定する。これにより、洗濯槽4をフリー状態にするタイミングが最適化されるので、洗濯物Qの一層効率的な乾燥と、洗濯物Qの皺の一層の低減とを図れる。
【0062】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、縦型洗濯乾燥機1は、洗濯槽4の軸線Jが上下方向Zに沿って垂直に延びるように配置された縦型の洗濯乾燥機であるが(図1参照)、縦型の洗濯乾燥機には、軸線Jが上下方向Zに対して若干傾斜して配置された構成も含まれる。
【0064】
ブレーキ40およびクラッチ41を作動させる構成として、前述したトルクモータによるアクチュエータ42以外の構成を採用してもよい。
【0065】
例えば熱風でなく冷風を用いて洗濯物Qを乾燥させてもよく、その場合には、加熱部8が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 縦型洗濯乾燥機
4 洗濯槽
4B 底壁
5 回転翼
7 送風部
9 モータ
24 出入口
40 ブレーキ
41 クラッチ
60 制御部
64 回転数読取装置
Q 洗濯物
図1
図2
図3
図4
図5
図6