(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】伝導冷却型超伝導コイル
(51)【国際特許分類】
H01F 6/04 20060101AFI20230906BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
H01F6/04
H01F6/06 110
(21)【出願番号】P 2019168013
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 洋之
(72)【発明者】
【氏名】岩城 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 良寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】和久田 毅
(72)【発明者】
【氏名】山本 明
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-116725(JP,A)
【文献】特開平11-135318(JP,A)
【文献】特開2017-046987(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018144(WO,A1)
【文献】特開平06-139839(JP,A)
【文献】特開2002-324707(JP,A)
【文献】国際公開第2014/049842(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/04
H01F 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導物質を有しコイル状に構成される超伝導線と、
前記超伝導線が卷回されるボビンと、
前記ボビンに卷回され
てコイル状の軸方向および径方向に層状に配置された前記超伝導線の
コイル状の径方向に積層された各層を挟むように配置される複数の第1冷却板と、
前記超伝導線の
コイル状の径方向に積層された各層で前記超伝導線が複数本として配列された端の少なくとも一方において、
前記超伝導線よりも軸方向における外側に、前記第1冷却板
同士の間に
挟まれるように配置される複数の第2冷却板と、
を備え、
前記第1冷却板の前記超伝導線のコイル状の軸方向における長さの寸法は、層状に配置された前記超伝導線と複数の前記第1冷却板とで積層された超伝導線冷却板積層部のコイル状の軸方向の長さの寸法と、前記第2冷却板のコイル状の軸方向の長さの寸法との合計以上の寸法で形成され
て、
前記第1冷却板は、複数の前記超伝導線と複数の前記第2冷却板とを覆っており、
前記第2冷却板は、前記超伝導線のコイル状の径方向における1層の厚さの寸法が、前記超伝導線の1層の径方向の長さの寸法と
等しい寸法であり、
前記第2冷却板の前記超伝導線のコイル状の軸方向における長さの寸法が、複数の前記第1冷却板と複数の前記第2冷却板が積層された冷却板積層部の厚さの寸法と
等しい寸法であり、
前記超伝導線と複数の前記第1冷却板と複数の第2冷却板とは、樹脂により一体化されている、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項2】
請求項1において、
前記超伝導線冷却板積層部の厚さの寸法は、前記冷却板積層部の厚さの寸法と
等しい寸法である、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項3】
請求項1において、
前記冷却板積層部は、前記超伝導線冷却板積層部の
前記超伝導線のコイル状の軸方向における両端に備えられている、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項4】
請求項3において、
前記超伝導線冷却板積層部の両端に備えられる二つの前記冷却板積層部のコイル状の軸方向における長さの寸法が互いに等しい、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項5】
請求項1において、
複数の前記第1冷却板と複数の前記第2冷却板が積層された第2の冷却板積層部を備え、
当該第2の冷却板積層部のコイル状の軸方向における長さの寸法は、前記冷却板積層部のコイル状の軸方向における長さの寸法よりも短い、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項6】
請求項1において、
各層の前記超伝導線は、複数の前記第1冷却板に交互に挟まれて配置されている、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項7】
請求項1において、
前記超伝導線は、前記超伝導線が二層に積層される毎に、複数の前記第1冷却板に交互に挟まれて配置されている、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項8】
請求項1において、
前記第1冷却板および前記第2冷却板は、それぞれ前記超伝導線のコイル状の周方向に分断箇所を有し、周方向に循環電流が流れない構造となっている、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項9】
請求項1において、
前記冷却板積層部における前記第1冷却板と前記第2冷却板とがボルトで固定される、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項10】
請求項1において、
前記超伝導線は、高温超伝導線である、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項11】
請求項1において、
前記超伝導線は、二ホウ化マグネシウムを有する、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項12】
請求項1において、
前記超伝導線は、超伝導フィラメント、安定化材、シース材を備えて構成される、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項13】
請求項1において、
前記超伝導線に、ガラスクロスまたはエナメル絶縁が施されている、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【請求項14】
請求項1において、
前記超伝導線と前記第1冷却板との間に、ガラスクロスまたはガラス繊維強化プラスチックを備える、
ことを特徴とする伝導冷却型超伝導コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導冷却型超伝導コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低温超伝導体を使用した超伝導磁石において、導体を冷媒に浸漬し難い構造の磁石では伝導冷却方式が採用されている。この技術に関する文献としては、例えば非特許文献1-4がある。
非特許文献1においては、超伝導導体の外側にアルミニウム合金、及び純アルミニウムを配置してコイル巻線部を冷却している。
非特許文献2においては、コイル巻線の層間に純アルミニウム板を設置してコイル巻線部を冷却している。
非特許文献3や非特許文献4においては、コイル巻線の層間、および内外周にアルミニウム板を設置してコイル巻線部を冷却している。
【0003】
前記の構造に関連する特許文献としては、例えば特許文献1-4がある。
特許文献1では、コイル導体を支持する電磁力支持シリンダーの外側または内側に冷却用熱伝導体を配置する構造が開示されている。
特許文献2では、超伝導コイル巻線の層間に導体に沿うような凹部を設けた冷却用金属板を設置する構造が開示されている。
特許文献3では、超伝導コイル巻線の層間に冷却板を設置した構造が開示されている。
特許文献4では、超伝導コイル巻線の層間に良熱伝導性樹脂または良熱伝導性樹脂と冷却板の両方を設置した構造が開示されている。
また、特許文献3と特許文献4では、定常的な冷却のみならず交流通電時の発熱を除去する目的も含めた冷却構造が開示されている。さらに特許文献4では、低温超伝導のみならず酸化物高温超伝導体も視野に入れた冷却構造が開示されている。
【0004】
一方、高温超伝導体(相転移温度Tcが約25K以上)においては、クエンチ伝播速度が遅く、クエンチした場合の温度上昇が低温超伝導体よりも大きくなる傾向にある。したがって、高温超伝導体を使用したコイルにおいては、その電流密度によってはクエンチ時の局所的発熱過大により焼損する可能性があり、その対策として過去種々の検討が実施されてきた。例えば、非特許文献5や非特許文献6がある。
非特許文献5や非特許文献6ではMgB2(二ホウ化マグネシウム)導体を平板状にして、やはり平板状の銅板を半田付けすることにより、クエンチ時の熱を拡散させ、導体温度上昇を抑制している。
この平板状の銅板は、先に述べたコイル巻線層間の冷却板と同様の役目を果たすこととなり、コイルの伝導冷却の促進にも寄与する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-293901号公報
【文献】国際公開第2014/049842号
【文献】特開平10-116725号公報
【文献】特開平11-135318号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】A. Yamamoto, 他9名, "Conceptual Design of a Thin Superconducting Solenoid for Particle Astrophysics" IEEE Transactions on Magnetics, Vol.24, No.2, March 1988
【文献】Y. Makida, 他8名, "Development of an Astromag Test Coil with Aluminum Stabilized Superconductor" IEEE Transactions on Magnetics, Vol.27, No.2, March 1991
【文献】A. Yamamoto, 他11名, "A Thin Superconducting Solenoid Magnet for Particle Astrophysics" IEEE Transactions on Superconductivity, Vol.12, No.1, March 2002
【文献】Y. Makida, 他6名, "Performance of an Ultra-Thin Superconducting Solenoid for Particle Astrophysics" IEEE Transactions on Applied Superconductivity, Vol.15, No.2, June 2005
【文献】S. Mine, 他7名,"Development of a 3T-250mm Bore MgB2 Magnet System" IEEE Transactions on Applied Superconductivity, Vol.25, No.3, June 2015
【文献】M. Wozniak, 他1名,"Long-Length Critical Current Measurement of MgB2 Wire in a Coil" IEEE Transactions on Applied Superconductivity, Vol.26, No.3, April 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上、背景技術で述べたように、従来の高温超伝導体を利用した超伝導コイルでは、クエンチ時に局所的に発熱して高温になり、絶縁損傷を発生させたり、あるいは導体自体が焼損したりする可能性がある。そのため、導体に銅板のような冷却板を半田付けして一体化するような手法が必要であった。また、この銅板が定常時におけるコイル冷却促進の役割も担うことになっている。
しかしながら、この方法は、導体全長にわたって銅板を半田付けする処理が必要となり、コイル製作のコストが比較的上昇することとなる。
また、超伝導導体を冷却するのにコイル巻線層間に冷却板を設置する場合、冷却銅板のコイル軸方向端部における冷却構造が冷却構造上の熱的隘路とならない構造とする必要がある。しかし、その点に関する合理的な構造の提案は、特許文献1-4、非特許文献1-6を含めて、現状ではない。
【0008】
本発明は、クエンチしてもコイル損傷が発生しにくく、急速な冷却が可能な伝導冷却型超伝導コイルを提供することを課題(目的)とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明を以下のように構成した。
すなわち、本発明の伝導冷却型超伝導コイルは、超伝導物質を有しコイル状に構成される超伝導線と、前記超伝導線が卷回されるボビンと、前記ボビンに卷回されてコイル状の軸方向および径方向に層状に配置された前記超伝導線の各層を挟むように配置される複数の第1冷却板と、前記超伝導線のコイル状の径方向に積層された各層で前記超伝導線が複数本として配列された端の少なくとも一方において、前記超伝導線よりも軸方向における外側に、前記第1冷却板同士の間に挟まれるように配置される複数の第2冷却板と、を備え、前記第1冷却板の前記超伝導線のコイル状の軸方向における長さの寸法は、層状に配置された前記超伝導線と複数の前記第1冷却板とで積層された超伝導線冷却板積層部のコイル状の軸方向の長さの寸法と、前記第2冷却板のコイル状の軸方向の長さの寸法との合計以上の寸法で形成されて、前記第1冷却板は、複数の前記超伝導線と複数の前記第2冷却板とを覆っており、前記第2冷却板は、前記超伝導線のコイル状の径方向における1層の厚さの寸法が、前記超伝導線の1層の径方向の長さの寸法と等しい寸法であり、前記第2冷却板の前記超伝導線のコイル状の軸方向における長さの寸法が、複数の前記第1冷却板と複数の前記第2冷却板が積層された冷却板積層部の厚さの寸法と等しい寸法であり、前記超伝導線と複数の前記第1冷却板と複数の第2冷却板とは、樹脂により一体化されていることを特徴とする。
【0010】
また、その他の手段は、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クエンチしてもコイル損傷が発生しにくく、また急速な冷却が可能な伝導冷却型超伝導コイルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル超伝導コイルの中心軸を含む切断面における断面構造の一例を示す図である。
【
図2A】本発明の第1実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイルの中心軸方向に垂直な切断面における断面構造の一例を示す図である。
【
図2B】本発明の第1実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイルの中心軸Z方向に垂直な
図2Aとは別の切断面における断面構造の一例を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイルにおける超伝導線の断面構造の一例を示す図である。
【
図4A】本発明の第2実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイルの中心軸を含む切断面における断面構造の一例を示す図である。
【
図4B】本発明の第2実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイルの超伝導線冷却板積層部における超伝導線、および、その近傍の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイルの中心軸を含む切断面における断面構造の一例を示す図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイルの中心軸方向に垂直な切断面における断面構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下においては「実施形態」と表記する)を、適宜、図面を参照して説明する。なお、各図面において、共通する構成要素には同一の符号を付し、重複した説明を、適宜、省略する。
【0014】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイルについて、
図1~
図3を参照して説明する。なお、伝導冷却型超伝導コイルの「超伝導」は「超電導」と同義語として、本発明の実施形態の説明では、「超伝導」と表記する。
【0015】
《伝導冷却型超伝導コイルの構造》
図1は、本発明の第1実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1の中心軸Zを含む切断面における断面構造の一例を示す図である。
また、
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1の中心軸Z方向に垂直な切断面における断面構造の一例を示す図である。また、
図2Aにおいて、二つのI-I軸の交点に
図1の中心軸Zが位置している。なお、
図2B、
図3については、後記する。
【0016】
図1および
図2Aにおいて、伝導冷却型超伝導コイル1は、ボビン11、超伝導線12、複数の第1冷却板13、複数の第2冷却板14を備えて構成される。
超伝導線12は、1本の超伝導線が筒状(円筒状)のボビン11を中心として、多層のコイル状に形成されている。そのため、
図1および
図2において、超伝導線12は、複数本が配列、もしくは多層に積層したように表記されている。また、超伝導線12は1本で構成されているが、図面の説明上、「複数(複数本)の超伝導線12」とも、適宜、表記する。
図1においては、超伝導線12の断面は、断面構造が円形の場合を例として表記している。また、
図2Aに示すように、超伝導線12は、コイルの周方向に長い線状で構成されている。
また、
図1および
図2Aに示すように、複数の配列として表記したそれぞれの超伝導線12は、それぞれ二つの第1冷却板13に挟まれて構成されている。なお、複数の層の超伝導線12と複数の第1冷却板13が積層されている部分を、超伝導線冷却板積層部31(
図1)と表記する。
【0017】
また、
図1に示すように、コイル軸方向(中心軸方向)の超伝導線12の端部において、第2冷却板14が備えられている。第2冷却板14の厚さ(コイル径方向の長さ)は、超伝導線12の円形断面の直径と、ほぼ同じ長さ(厚さ)である。
複数のそれぞれの第2冷却板14は、複数(複数本)の超伝導線12と共に、それぞれ二つの第1冷却板13に挟まれて構成されている。
なお、複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14が交互に積層されている部分を、冷却板積層部32と表記する。
【0018】
前記したように、複数の層の超伝導線12と複数の第1冷却板13が積層されている部分が超伝導線冷却板積層部31であるので、超伝導線冷却板積層部31の図面視で左端と右端の両側の端部に、それぞれ冷却板積層部32が配置されている。なお、左端と右端における冷却板積層部32のコイル軸方向の長さが異なる場合には、左端を冷却板積層部32B、右端を冷却板積層部32Aと表記する。
以下においては、両端の冷却板積層部32は、同一の構造であるとして説明をする。また、前記したように左端が冷却板積層部32Bで右端が冷却板積層部32Aである場合については、後記する第5実施形態で説明する。
また、
図1および
図2Aに示すように、第1冷却板13と第2冷却板14は、超伝導線12とともに、筒状のボビン11を中心として、周方向に形成されている。
【0019】
図1において、複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14とが積層された厚さ(冷却板積層部32の厚さ)を寸法aと表記する。
また、
図1および
図2Aにおいて、複数の第1冷却板13と複数の超伝導線12とが積層された厚さ(超伝導線冷却板積層部31の厚さ)を寸法bと表記する。
また、
図1において、複数の超伝導線12が、コイルとしての軸方向に配列された長さ(超伝導線冷却板積層部31の軸方向の長さ)を寸法cとする。
また、第1冷却板13のコイル軸方向の長さを寸法dとする。
また、第2冷却板14のコイル軸方向の長さ(冷却板積層部32のコイル軸方向の長さ)を寸法eとする。なお、両端の冷却板積層部32のコイル軸方向の長さが異なる場合には、冷却板積層部32Aにおける第2冷却板14のコイル軸方向の長さを寸法e1とし、冷却板積層部32Bにおける第2冷却板14のコイル軸方向の長さを寸法e2とする。この寸法e1と寸法e2が異なる場合については、後記する第5実施形態で説明する。
また、一つの第2冷却板14の厚さを寸法fとする。
また、1本の超伝導線12の厚さ(超伝導線の断面が円形状の場合は直径)を寸法gとする。
【0020】
図1および
図2Aにおいて、2枚の第1冷却板13は、複数に配列された超伝導線12と、1枚の第2冷却板14を同じように挟んで構成される。そのため、一つの第2冷却板14の厚さの寸法fは、1本の超伝導線12の厚さ(超伝導線の断面が円形状の場合は直径)の寸法gに概ね等しくなるように設定する。
そして、複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14とが積層された厚さ(冷却板積層部32の厚さ)の寸法aは、複数の超伝導線12と複数の第1冷却板13とが積層された厚さ(超伝導線冷却板積層部31の厚さ)の寸法bに概ね等しくなるように設定する。
【0021】
また、複数(複数本)の超伝導線12の冷却は、まず、
図1における一番上の第1冷却板13を、図示していない冷凍機器を介して冷却することから行われる。
そして、一番上の第1冷却板13から、複数の第2冷却板14や、中段や下段に配置された複数の第1冷却板13へ伝導冷却が行われる。この伝導冷却の際に、熱は、
図1の伝導冷却型超伝導コイル1の端部における複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14が交互に積層された部分(冷却板積層部32)を介して行われる。
この伝導冷却が速やかに、効率的に行われるために、第2冷却板14のコイル軸方向の長さの寸法eを、複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14とが積層された厚さの寸法aと概ね等しく設定する。すなわち、冷却板積層部32のコイル軸方向の長さの寸法eを冷却板積層部32の厚さの寸法aと概ね等しく設定する。また、この関係は、冷却板積層部32のコイル軸方向の長さの寸法eを超伝導線冷却板積層部31の厚さの寸法bと概ね等しく設定するに対応する(a≒b)。
【0022】
前記したように、
図1におけるコイル端の第1冷却板13と第2冷却板14が積層された部分(冷却板積層部32)は、冷凍機からの冷却板等で冷却されることになるが、この積層部分の外周側に冷凍機に連結された伝熱板を設置して冷却することを考えると、熱の速やかな流動のために、冷却板積層部分(冷却板積層部32)のコイル軸方向の長さの寸法eが、熱伝導上、コイルの全厚さに概ね対応する超伝導線冷却板積層部31の厚さの寸法b、あるいは冷却板積層部32の厚さの寸法aとほぼ同等であることが合理的である。
【0023】
また、第1冷却板13のコイル軸方向の長さの寸法dは、複数の超伝導線12がコイルとしての軸方向に配列された長さの寸法cと第2冷却板14のコイル軸方向の長さの寸法eの合計値よりも長い。すなわち、第1冷却板13は、複数の超伝導線12と第2冷却板14とを覆う。
図1においては、複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14とが積層された箇所が複数の超伝導線12と複数の第1冷却板13とが積層された箇所の両側にあるので、概ね、d=c+2eの関係がある。
また、複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14とが積層された箇所(冷却板積層部32)が複数の超伝導線12と複数の第1冷却板13とが積層された箇所(超伝導線冷却板積層部31)の片側の場合には、概ねd=c+eの関係がある。
両側あるいは片側のいずれの場合でも、d≧c+eの関係がある。
前記したように、概ねe=aの関係があるとしたので、d≧c+aの関係がある。
すなわち、第1冷却板13のコイル軸方向の長さの寸法dは、複数の超伝導線12がコイルとしての軸方向に配列された長さの寸法cに比較して、少なくとも片側においては、コイルの全厚さに概ね対応する超伝導線冷却板積層部31の厚さの寸法bと同程度の寸法、あるいはそれ以上の寸法に設定している。
【0024】
また、
図2Bは、本発明の第1実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1の中心軸Z方向に垂直な
図2Aとは別の切断面における断面構造の一例を模式的に示す図である。
図1および
図2Aにおいて、伝導冷却型超伝導コイル1が、超伝導線12、複数の第1冷却板13、複数の第2冷却板14で構成されていることを説明した。ただし、1本の超伝導線12をコイル状に巻回している。このコイル状に巻回された1本の超伝導線12と、複数の第1冷却板13、複数の第2冷却板14との関係が
図1および
図2Aでは必ずしも明確とは言えないので
図2Bを用いて補足説明をする。
【0025】
図2Bは、前記したように
図2Aとは別の断面の構造を模式的に示している。
図2Bが
図2Aと異なるのは、領域200における構造である。領域200において、1本の超伝導線12が如何にコイル状に形成されるかを模式的に示している。
図2Bの領域200においては、超伝導線12が、内側(内層)から外側(外層)、あるいは下層から上層へ移行する様子を示している。なお、この超伝導線12が巻かれて、内側から外側、あるいは下層から上層へ移行する箇所においては、所定の第1冷却板13に孔部が、適宜、設けられる。
【0026】
図1、
図2A、
図2Bにおいて示した超伝導線12は、例えば高温超伝導体であるMgB
2(二ホウ化マグネシウム)が用いられている。また、高温超伝導体を用いた超伝導線を高温超伝導線と呼称するものとする。
なお、高温超伝導体の定義は、日本工業規格JIS H7005で定めた約25K(ケルビン)以上の相転移温度Tcを持つ超伝導体とする。
また、約25K(ケルビン)未満の相転移温度Tcを持つ超伝導体を低温超伝導体とする。
図1、
図2A、
図2Bにおいて示した超伝導線12は、低温超伝導体も用いることができる。
また、第1冷却板13と第2冷却板14は、例えば銅で形成(構成)されている。
【0027】
また、複数の超伝導線12と複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14とを備えた伝導冷却型超伝導コイル1は、図示していない樹脂によって一体化されている。この一体化する際には、液状の樹脂を超伝導線12と第1冷却板13と第2冷却板14との間に浸透させていく。なお、樹脂の絶縁性や熱伝導率は格別な特性は要求されない。例えば、樹脂の絶縁性は、超伝導線12が超伝導体として使用される場合には、電流は超伝導体の状態にある超伝導線12を流れるので樹脂の絶縁性は、格別、問題とならない。
また、樹脂の熱伝導率が高くなくとも時間をかけて超伝導線12を冷却すれば、いずれ超伝導線12は超伝導体の状態となる。そのため、樹脂の熱伝導率は、格別、問題とならない。
超伝導線12と第1冷却板13と第2冷却板14との間に樹脂を含侵させることは、真空状態にしておくよりも、固定性、耐久性、冷却効率などの観点で望ましくなる。
【0028】
以上の構成において、複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14とを介して、複数の超伝導線12は、超伝導状態になるように冷却される。
【0029】
《超伝導線の断面構造》
図3は、本発明の第1実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1における超伝導線12の断面構造の一例を示す図である。
図3において、超伝導線12は、超伝導フィラメント17、第1シース18、第2シース19、安定化材(安定化銅)20を備えて構成される。
超伝導線12の中心部に、例えば安定化銅で構成される安定化材20がある。この安定化材20の外周側に複数の超伝導フィラメント17が配置される。超伝導フィラメント17は、例えばMgB
2(二ホウ化マグネシウム)を含む超伝導体で構成される。
複数の超伝導フィラメント17は、被覆材である第2シース19で覆われている。
また、被覆材である第1シース18は、超伝導線12の最外殻を覆って、第2シース19とともに、超伝導フィラメント17を保護している。
【0030】
伝導冷却型超伝導コイル1の超伝導線12における超伝導体が超伝導状態から逸脱するのがクエンチ(超伝導状態から常伝導状態への相転移)である。
導体(超伝導フィラメント17、もしくは超伝導線12)がクエンチした場合には、超伝導フィラメント17が、超伝導状態ではなくなり、高抵抗を示す状態となる。
そのため、超伝導フィラメント17に流れていた電流が、所定の抵抗を有する安定化材(安定化銅)20に流れ込むことになり、発熱(抵抗発熱、ジュール熱)が始まる。
ある部分で生じたクエンチによる超伝導線12の発熱は、超伝導線12を挟む2枚の第1冷却板13(
図1)、および両隣の超伝導線12(
図1)に伝わる。
【0031】
第1冷却板13によって、導体(超伝導線12)の温度上昇が抑制されるが、一方では、第1冷却板13の広い範囲で温度が上昇し、隣接する層の導体(超伝導線12)を加温することになる。
このようにして、隣の層の複数の導体(超伝導フィラメント17、もしくは超伝導線12)が超伝導の臨界温度を越えると、一斉にクエンチを起こすことになる。つまり、超伝導線12の一部のクエンチによって、超伝導線12の一部が異常な高温になるのではなく、クエンチが起きた比較的に低温の状態でクエンチが広範囲に広がる。クエンチが広範囲に広がることにより、多くの導体の安定化材(安定化銅)20に電流が流れるようになって、コイルの抵抗が高くなる。
【0032】
超伝導を適用する通常の装置、機器においては、コイル保護のためにクエンチ時、コイルの始点と終点に対応するコイル口出し間電圧を検出して、電源をオフする構成となっている。コイル口出し間の電圧が、電圧の立ち上がりが早くかつ大きいほど、保護が早くなって、コイル温度上昇が抑えられ、コイル損傷の可能性が小さくなる。
すなわち、第1冷却板13の存在、および第2冷却板14の存在によりクエンチした導体の温度上昇が抑制される。それとともに、クエンチによる温度上昇が速く広範囲に広がって、コイルの抵抗が高くなり、コイル口出し間電圧が高くなる。そのためクエンチ検出による電源オフも早くなり、コイル損傷の可能性を小さくすることができる。
【0033】
<第1実施形態の総括>
本(第1)実施形態の伝導冷却型超伝導コイル1は、
図1、
図2A、
図2Bに示したように、コイル状に配列された複数の超伝導線12の両端に複数の第2冷却板14を配置し、複数の第1冷却板13によって前記の複数の超伝導線12と複数の第2冷却板14を挟む構成をとっている。
この構成のように、複数の第1冷却板13が超伝導線12の各層間に存在することによって、超伝導線12を速やかに冷却が可能となる。また、一部の超伝導線12がクエンチを引き起こしても、第1冷却板13と第2冷却板14の冷却作用と高い熱伝導性によって、クエンチ時の局所的な温度上昇を緩和して、伝導冷却型超伝導コイル1のコイル損傷が発生しにくい構造となっている。
【0034】
また、前記したように、超伝導線12と第2冷却板14を第1冷却板13で挟む構成であるので、従来例のような銅板を導体(超伝導体)に半田付けをするような工程もなく、低コストで製作できる。
また、本(第1)実施形態の伝導冷却型超伝導コイル1における超伝導線12は、
図3に示したように、超伝導フィラメント17、第1シース18、第2シース19、安定化材(安定化銅)20を備えて構成されているので、クエンチを引き起こした際にも、伝導冷却型超伝導コイル1のコイル損傷が発生しにくい構造となっている。
【0035】
<第1実施形態の効果>
本発明の第1実施形態によれば、クエンチしてもコイル損傷が発生しにくく、また冷却の速い伝導冷却型超伝導コイルを提供できる。また、低コストで製作できる。
【0036】
≪第2実施形態≫
本発明の第2実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1Bについて、
図4Aと
図4Bを参照して説明する。
図4Aは、本発明の第2実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1Bの中心軸Zを含む切断面における断面構造の一例を示す図である。
図4Aにおいて、伝導冷却型超伝導コイル1Bは、ボビン11、複数の超伝導線12B、複数の第1冷却板13、複数の第2冷却板14を備えて構成される。
図4Aにおける伝導冷却型超伝導コイル1Bが
図1における伝導冷却型超伝導コイル1と異なるのは、超伝導線冷却板積層部31Bにおける超伝導線12Bおよびその近傍(領域300)の構成である。この超伝導線12Bおよびその近傍である領域300の構成を次に
図4Bを参照して説明する。
なお、ボビン11、複数の第1冷却板13、複数の第2冷却板14については、
図1で示した第1実施形態の構成と同様であるので、事実上、重複する説明は省略する。
【0037】
図4Bは、本発明の第2実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1Bの超伝導線冷却板積層部31Bにおける超伝導線12B、および、その近傍(領域300:
図4A)の構成例を示す図である。
図4Bにおいて、超伝導線12Bは、第1ガラスクロス(またはエナメル絶縁)15に覆われて構成されている。
また、第1ガラスクロス(またはエナメル絶縁)15に覆われた超伝導線12Bは、二つの第2ガラスクロス(またはGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic :ガラス繊維強化プラスチック))16を介して、二つの第1冷却板13に挟まれて構成される。
【0038】
このように、超伝導線12Bが、第1ガラスクロス(またはエナメル絶縁)15で覆われることによって、複数の超伝導線12B間の絶縁性が向上する。
また、第1ガラスクロス(またはエナメル絶縁)15に覆われた超伝導線12Bが、二つの第2ガラスクロス(またはGFPR)16を介して、二つの第1冷却板13に挟まれて構成されることによって、複数の超伝導線12Bと第1冷却板13との間の絶縁性や耐久性が向上する。
【0039】
<第2実施形態の効果>
第1実施形態の効果に加え、さらに、第1ガラスクロス(またはエナメル絶縁)15や第2ガラスクロス(またはGFPR)16を備えることによって、さらに超伝導線12Bの絶縁性や耐久性が向上する。
【0040】
≪第3実施形態≫
本発明の第3実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1Cについて、
図5を参照して説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1Cの中心軸Zを含む切断面における断面構造の一例を示す図である。
図5において、伝導冷却型超伝導コイル1Cは、ボビン11、複数の超伝導線12、複数の第1冷却板13、複数の第2冷却板14を備えて構成される。
図5の構成において、
図1の構成と異なるのは、超伝導線12と第2冷却板14とに対する第1冷却板13の配置の構成である。
【0041】
すなわち、超伝導線冷却板積層部31Cにおける超伝導線12の積層を二段構成、および第2冷却板14の積層を二段構成とし、これらの構成に対して、二つの第1冷却板13で挟む構成としている。つまり、積層された超伝導線12の間に、第1冷却板13が存在しない層がある。
同様に冷却板積層部32Cにおいて、積層された第2冷却板14の間に、第1冷却板13が存在しない層がある。
図5においては、上段から2層は、前記した積層された超伝導線12の間、および積層された第2冷却板14の間に第1冷却板13が存在しない層となっている。
ただし、ボビン11に最も近い層は、
図1と同じように、超伝導線12の一段構成、および第2冷却板14の一段構成に対して、二つの第1冷却板13で挟む構成としている。
【0042】
伝導冷却型超伝導コイル(1C)の通電電流、超伝導線12の性能、およびコイル形状により、伝導冷却型超伝導コイル(1C)のクエンチのしやすさや温度上昇程度が変わってくる。そのため、伝導冷却型超伝導コイル(1C)によっては、必ずしも各層に冷却板(第1冷却板13)を設置する必要はない。
また、コイル(超伝導コイル)内部においても、コイルの内周側と外周側とでは、発生する磁場(経験磁場)の強度が異なっていることや、冷却構造上の制約から温度分布が異なってくる場合がある。その相違によって第1冷却板13の必要性も影響を受け、配置箇所を低減できる場合がある。
【0043】
<第3実施形態の効果>
冷却板(第1冷却板13)の構成を最適化することによって、伝導冷却型超伝導コイル(1C)の形状の最適化(小型化)やコストを低減できる効果がある。
【0044】
≪第4実施形態≫
本発明の第4実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1Dについて、
図6を参照して説明する。
図6は、本発明の第4実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイル1Dの中心軸Z方向に垂直な切断面における断面構造の一例を示す図である。
図6において、伝導冷却型超伝導コイル1Dは、ボビン11、複数の第1冷却板13、複数の第2冷却板14、複数の超伝導線12を備えて構成される。また、第1冷却板13および第2冷却板14は、それぞれ分断される箇所があり、その分断箇所がギャップ21として示されている。
図6の断面図は、
図2の断面図と、ギャップ21を除いて似た構成であるが、断面の切断位置が異なる。そのため、
図6においては、複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14が主として示されており、第1冷却板13および第2冷却板14のそれぞれの隙間であるギャップ21において、複数の超伝導線12が覗いて見えている。
【0045】
図6においては、複数の第1冷却板13、および複数の第2冷却板14が、2箇所のギャップ21(分断箇所)によって、周方向に2分割されて、伝導冷却型超伝導コイル1Dが構成されている。
図6に示すように、複数の第1冷却板13、複数の第2冷却板14を分割することによって、コイル製作を容易にすることができる。
また、複数の第1冷却板13、複数の第2冷却板14を分割することによって、伝導冷却型超伝導コイル1Dの励磁時に誘起される循環電流が冷却板に流れることを防止できる。つまり、循環電流が冷却板に流れることを防止することによって、伝導冷却型超伝導コイル1Dの定格電流の通電時において、磁場の静定に支障が出ることを避けることが可能となる。
なお、ギャップ21の分割数、およびギャップ幅は、製作性や伝導冷却型超伝導コイルの各種の特性などから決定される。
【0046】
<第4実施形態の効果>
冷却板を分割することによって、伝導冷却型超伝導コイル1Dの製作が容易になる効果がある。
また、循環電流が冷却板に流れることを防止できるので、伝導冷却型超伝導コイル1Dの安定動作に効果がある。
【0047】
≪第5実施形態≫
本発明の第5実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイルについて、
図1を兼用して説明する。
第5実施形態の伝導冷却型超伝導コイル(1)は、
図1における冷却板積層部32Aのコイル軸方向の長さの寸法e1と冷却板積層部32Bのコイル軸方向の長さの寸法e2とが異なる場合である。具体的には、冷却板積層部32B(第2の冷却板積層部)のコイル軸方向の長さの寸法e2を、冷却板積層部32Aのコイル軸方向の長さの寸法e1よりも短くする。
ただし、冷却板積層部32Aのコイル軸方向の長さの寸法e1は、冷却板積層部32Aの厚さの寸法aと概ね等しく設定する。なお、前記したように、冷却板積層部32Aの厚さの寸法aは、超伝導線冷却板積層部31の厚さの寸法bと等しくしておく。
【0048】
すなわち、本(第5)実施形態の伝導冷却型超伝導コイルにおいては、冷却板積層部32Bのコイル軸方向の長さの寸法e2を短くするものである。つまり、冷却板積層部32Bにおける第2冷却板14の長さを短くする。
本(第5)実施形態の伝導冷却型超伝導コイルにおいては、外部の冷凍機からの冷却板等による冷却を主として、冷却板積層部32Aを介して行う。そのため、冷却板積層部32Bのコイル軸方向の長さの寸法e2を、冷却板積層部32A側と同程度の長さに確保する必要がない。この冷却板積層部32Bのコイル軸方向の長さの寸法e2を短くする構成によって、第2冷却板14と第1冷却板13の量を減らして、製作コストを低減する。
【0049】
<第5実施形態の効果>
冷却板の量を減らして、製作コストが低減できる。
【0050】
≪第6実施形態≫
本発明の第6実施形態に係る伝導冷却型超伝導コイルについて、
図1を兼用して説明する。
第6実施形態の伝導冷却型超伝導コイルにおいては、第1冷却板13を第2冷却板14にボルト(不図示)で固定する。前記した樹脂含侵と併せて、冷却板をさらに強固に固定できる。
【0051】
<第6実施形態の効果>
冷却板を強固に固定できる。
【0052】
≪その他の実施形態≫
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を追加・削除・置換をすることも可能である。
以下に、その他の実施形態や変形例について、さらに説明する。
【0053】
《超伝導線》
図1において、超伝導線12の断面形状を円形の場合を示して説明した。しかし、超伝導線12の断面形状は、円形に限定されない。例えば、断面形状が、楕円形や四角形、それ以上の多角の形状であってもよい。
【0054】
《超伝導体》
第1実施形態においては、
図3に示した超伝導フィラメント17は、例えばMgB
2(二ホウ化マグネシウム)を含む超伝導体であると説明したが、超伝導体は、MgB
2に限定されない。
例えば、ニオブチタン(NbTi)、ニオブ酸スズ(Nb
3Sn)、ビスマス系超電導体(BSCCO)、イットリウム系超電導体(YBCO)などの超伝導体であっても、本(第1)実施形態の伝導冷却型超伝導コイルは、同じような効果が期待できることがある。
【0055】
《冷却板の段構成》
図5で示した第3実施形態においては、超伝導線12の二段構成、および第2冷却板14の二段構成に対して、二つの第1冷却板13で挟む構成の例を示したが、超伝導線12と第2冷却板14の段構成は、前記の二段構成には限定されない。三段構成でもよい。
また、
図1に示した一段構成と
図5で示した二段構成を混在させてもよい。
また、伝導冷却型超伝導コイル1Cの外周側か内周側かによって、超伝導線12の多段構成の段数が変化してもよい。
【0056】
《冷却板の分割数》
図6で示した第4実施形態においては、複数の第1冷却板13、および複数の第2冷却板14を周方向に2分割にする例を示した。しかし、2分割に限定されない。
例えば4分割でも6分割でもよい。一般に2分割以上で同様の効果が期待できる。
【0057】
《冷却板積層部》
図1で示した第1実施形態の伝導冷却型超伝導コイル1において、複数の第2冷却板14は、複数(複数本)の超伝導線12がコイル軸方向に配列された端の両側に設けられ、複数の第1冷却板13が複数(複数本)の超伝導線12と複数の第2冷却板14を挟むように構成している例を示した。しかし、複数の第2冷却板14が、複数(複数本)の超伝導線12がコイル軸方向に配列された両側に設けられることに限定されない。
複数の第2冷却板14(あるいは冷却板積層部32)が、複数(複数本)の超伝導線12がコイル軸方向に配列された端のどちらか一方の側であってもよい。
すなわち、超伝導線冷却板積層部31に対して、超伝導線冷却板積層部31のどちらか一方の端のみに、冷却板積層部32を備える構成であってもよい。
この構成によっても、複数の第1冷却板13と複数の第2冷却板14とによって、複数(複数本)の超伝導線12を冷却することが可能である。
【0058】
《第1冷却板、第2冷却板》
本発明の第1実施形態の伝導冷却型超伝導コイル1を示す
図1において、第1冷却板13と第2冷却板14は、銅で形成されていることを例示した。しかし、第1冷却板13および第2冷却板は、銅による構成に限定されない。熱伝導度が高い特性を有する材質(金属)であれば、銅以外の他の材質でもよい。例えば、アルミニウムや前記特性を有する合金でもよい。
【0059】
《安定化材》
本発明の第1実施形態を示す
図3において、安定化材20は、安定化銅で形成されていることを例示した。しかし、安定化材20は、銅による構成に限定されない。熱伝導率が高く、電気抵抗が低い材質(金属)であれば他の材質でもよい。例えば、アルミニウムや前記特性を有する合金でもよい。
【0060】
《第1ガラスクロス、第2ガラスクロス》
本発明の第2実施形態を示す
図4において、第1ガラスクロス15、第2ガラスクロス16を共に用いた構成で説明したが、第1ガラスクロス15のみ、あるいは第2ガラスクロス16のみの構成でも、第1実施形態よりは絶縁性が向上する効果がある。
また、第1ガラスクロス15の代わりにエナメル絶縁でもよく、第2ガラスクロス16の代わりにGFPRを用いてもよい。
また、エナメル絶縁とGFPRの組み合わせた構成でもよい。
なお、第1ガラスクロス15(またはエナメル絶縁)、第2ガラスクロス16(またはGFPR)の材質の特性は、絶縁性が高く、熱伝導率が大きいものが望ましい。
【0061】
《第2実施形態と第3実施形態の組み合わせ》
第3実施形態においては、第1実施形態で説明した超伝導線12を用いて、超伝導線12の二段構成に対して、二つの第1冷却板13で挟む構成を示した。
しかし、第3実施形態の超伝導線12の二段構成において、
図4A、
図4Bで示した第2実施形態の領域300の構成における超伝導線12Bの構成を用いてもよい。
すなわち、
図5で示す第3実施形態の超伝導線12を、
図4A、
図4Bに示す超伝導線12Bのように、超伝導線を第1ガラスクロス(またはエナメル絶縁)15で包んでもよい。また、二つの超伝導線の間に第2ガラスクロス(またはGFPR)16を設けてもよい。
【0062】
《ボビン》
第1実施形態において、
図1および
図2に示したボビン11を「筒状(円筒状)」として説明したが、ボビン11は、筒状に限定されない。例えば、中心部に空洞のない「棒状」の構成であってもよい。また、筒状の周辺部に対して、異なる材質の部材を中心部に備える構成であってもよい。
【0063】
《伝導冷却型超伝導コイルの応用》
本発明の第1実施形態~第4実施形態で説明した伝導冷却型超伝導コイルは、例えば、超伝導電磁石装置(超電導電磁石装置)や超伝導エネルギー貯蔵装置や磁気共鳴画像装置(MRI)などに適用、応用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1,1B,1C,1D 伝導冷却型超伝導コイル
11 ボビン
12,12B 超伝導線
13 冷却板、第1冷却板
14 冷却板、第2冷却板
15 ガラスクロス、第1ガラスクロス、エナメル絶縁
16 ガラスクロス、第2ガラスクロス、GFRP
17 超伝導フィラメント
18 シース(被覆材)、第1シース
19 シース(被覆材)、第2シース
20 安定化材、安定化銅
21 ギャップ(切断箇所)
31,31B,31C 超伝導線冷却板積層部
32,32A,32C 冷却板積層部
32B 冷却板積層部、第2の冷却板積層部