(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】癌の予防及び/又は治療薬、癌マーカー、癌診断キット、又は生体試料の測定方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7105 20060101AFI20230906BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230906BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230906BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20230906BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20230906BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230906BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230906BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20230906BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20230906BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20230906BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230906BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230906BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20230906BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230906BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230906BHJP
【FI】
A61K31/7105 ZNA
A61K31/713
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/02
A61K38/12
A61P35/00
A61P35/04
G01N33/574 A
C12Q1/6886 Z
C12Q1/68
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
A61K45/00
C12N15/12
C12N15/113 110Z
(21)【出願番号】P 2019050723
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(73)【特許権者】
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(74)【代理人】
【識別番号】100113044
【氏名又は名称】吉田 智子
(72)【発明者】
【氏名】東山 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】城 卓志
(72)【発明者】
【氏名】久保田 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】西江 裕忠
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519340(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0105184(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0010946(KR,A)
【文献】Hum. Genomics (2013) vol.7, Articlenumber: 13, p.1-7
【文献】Cancer Res. (2017) vol.77, issue 13, suppl., Abstract 2439, <https://aacrjournals.org/cancerres/article/77/13_Supplement/2439/617906/Abstract-2439-Establishment-of-six-human>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 35/04
G01N 33/574
C12Q 1/6886
C12Q 1/68
C12N 15/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(X)
の遺伝子に結合するsiRNA遺伝子、shRNA遺伝子、miRNA遺伝子、アンチセンスRNA、核酸アプタマー、リボザイム、(X)の蛋白質に結合する抗体、ペプチドアプタマー、又はサイクリックマクロペプチドからなる群から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、下記(Y)の癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【請求項2】
下記(X)
の遺伝子に結合するsiRNA遺伝子、shRNA遺伝子、miRNA遺伝子、アンチセンスRNA、核酸アプタマー、リボザイム、(X)の蛋白質に結合する抗体、ペプチドアプタマー、又はサイクリックマクロペプチドからなる群から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【請求項3】
下記(X)の蛋白質に結合する抗体、ペプチドアプタマー、サイクリックマクロペプチド、(X)の遺伝子を増幅可能なプライマーセット、又は(X)の遺伝子に特異的にハイブリダイズするプローブからなる群から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、下記(Y)の診断キット。
(X)KLHL5蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【請求項4】
下記(1)及び(2)の工程を含むことを特徴とする、生体試料の測定方法。
(1)生体試料中の、下記(X)蛋白質の存在量又は下記(X)遺伝子の発現量を測定する工程
(2)(1)で測定された(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量が、当該生体試料と同種の正常組織由来の対照試料中の(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量と比較して多い場合に、前記生体試料が下記(Y)の癌患者由来のものであると判定する工程
(X)KLHL5蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【請求項5】
下記(A)及び/又は(B)の工程を指標とする、大腸癌の進行度合い又は他の臓器や組織への転移又は浸潤の可能性の判定方法。
(A)生体試料中の、下記(X)蛋白質の存在量又は下記(X)遺伝子の発現量を測定する工程
(B)(X)蛋白質の存在位置又は(X)遺伝子の発現位置を測定する工程
(X)KLHL5蛋白質又はその遺伝子
【請求項6】
下記(X)の蛋白質又はその遺伝子を含むことを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【請求項7】
請求項6記載のスクリーニング用キットを用いることを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法。
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【請求項8】
下記(X)の蛋白質に結合する抗体、ペプチドアプタマー、サイクリックマクロペプチド、又は(X)の遺伝子に特異的にハイブリダイズする核酸分子からなる群から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、下記(Y)を識別するのに用いられる試薬。
(X)KLHL5蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【請求項9】
生体由来試料及び請求項8記載の試薬を含むことを特徴とする、大腸癌の進行度、転移度、浸潤度、又は転移可能性を判定するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に大腸癌の予防及び/又は治療薬、大腸癌マーカー、大腸癌診断キット、又は生体試料の測定方法に関する物である。
【背景技術】
【0002】
食習慣等の生活習慣の変化に伴い、従来胃癌等が多かった日本においても、大腸癌罹患率が上昇してきており、その予防又は治療薬が望まれている。
大腸癌も他の癌と同様に、外科的手術のほか、化学療法が多く用いられており、5フルオロウラシル(5-FU:ファイブ・エフ・ユー)、ロイコボリン、イリノテカン(CPT-11:シー・ピー・ティー・イレブン)、オキサリプラチン等の低分子薬のほか、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、セツキシマブ(アービタックス(登録商標))等に代表されるような、各種の分子標的製剤等、これまで多数のものが開発されてきているが、必ずしも満足のいくものでは無かった。
【0003】
一方、大腸癌は、早期発見すれば完治し易いと言われている反面、大腸癌と診断された患者のうち、7~8割程度が、進行癌と診断され、治療がより困難になっているという現実がある。
例えば癌が出来た箇所が肛門から遠いほど自覚症状が出にくい等の原因で発見が遅れ、血液やリンパの流れに乗る等して、他の臓器等へ転移してしまっているケースが多いからである。
従って、大腸癌に関しても、他の癌同様に早期発見が重要である。
【0004】
他方、大腸癌には、転移し易いものと転移し難いものがあることが分かってきており、癌マーカーとしては、単に大腸癌であること,あるいはその進行段階を識別するだけではなく、将来の転移の可能性の高い大腸癌であるか否かを識別しうるものが望まれている。
【0005】
これまで、種々の大腸癌マーカーが発見されており、例えばCEA、CA19-9、p53抗体等が実用化されているが(特許文献1)、それらは、単に大腸癌であることを識別するに留まり、転移し易さの指標として用いうるものではなかった。
【0006】
一方、KLHL5という蛋白質のmRNAが、癌マーカーとして使用されている例があるが(特許文献2)、これは、前立腺癌マーカーとして使用されるものであり、大腸癌や、大腸癌由来の転移癌又は浸潤癌(肝臓癌、肺癌、骨腫瘍、又は脳腫瘍等)を識別するものでは無かった。
【0007】
更に、「KLHL5ほか16種類の蛋白質の遺伝子を含む遺伝子群から選択される複数の遺伝子の発現量に基づいて、大腸癌の再発リスクを判定する、大腸癌の再発リスクの診断方法(特許文献3)」等も提案されているが、16種類の発現量の内訳に関するデータは一切示されておらず、KLHL5単独でマーカーとして使用できることを示すものでは無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-323499号公報
【文献】特表2014-519340号公報
【文献】特開2016-185142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は、大腸癌細胞において、KLHL5を初めとする各種のKLHL蛋白質グループの発現量が多く、それらの阻害剤が大腸癌の増殖を抑制し得ること、更にはそれらの中でもKLHL5の発現量と、大腸癌の進行度・転移度又は浸潤度に相関性があることを見いだし、本発明に到達したものであって、その目的とするところは、大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌の予防及び/又は治療薬、或いは大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌を識別するための癌マーカー、更にはこれらの癌の診断キット、又は生体試料の測定方法等を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的は、下記第一の発明から第十二の発明によって、達成される。
【0011】
<第一の発明>
下記(X)を阻害する物質を含むことを特徴とする、下記(Y)の癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0012】
<第二の発明>
下記(X)を阻害する物質を含むことを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0013】
<第三の発明>
(X)を阻害する物質が、投与対象における、当該蛋白質又はその遺伝子の、量又は機能を抑制又は阻害する物質であることを特徴とする、第二の発明に記載の予防及び/又は治療薬。
【0014】
<第四の発明>
(X)を阻害する物質が、下記のi)乃至iii)のいずれかから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、第三の発明に記載の予防及び/又は治療薬。
i)(X)の発現量を、抑制する物質
ii)(X)を分解する物質
iii)(X)の機能を阻害する物質
【0015】
<第五の発明>
(X)を阻害する物質が、(X)の遺伝子に対するsiRNA遺伝子、shRNA遺伝子、miRNA遺伝子、アンチセンスRNA、核酸アプタマー、又はリボザイム、或いは(X)の蛋白質に対する抗体、ペプチドアプタマー、サイクリックマクロペプチド、又はプロテアーゼから選択された少なくとも1種以上のものであることを特徴とする、第三の発明に記載の予防及び/又は治療薬。
【0016】
<第六の発明>
下記(X)を含むことを特徴とする、下記(Y)を識別するための癌マーカー。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0017】
<第七の発明>
下記(X)を検出可能な物質を含むことを特徴とする、下記(Y)の診断キット。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0018】
<第八の発明>
(X)を検出可能な物質が、(X)の蛋白質に対して特異的に結合する物質、(X)の遺伝子を増幅可能なプライマーセット、又は(X)の遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、第七の発明に記載の診断キット。
【0019】
<第九の発明>
下記(1)及び(2)の工程を含むことを特徴とする、生体試料の測定方法。
(1)生体試料中の、下記(X)蛋白質の存在量又は下記(X)遺伝子の発現量を測定する工程
(2)(1)で測定された(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量が、当該生体試料と同種の正常組織由来の対照試料中の(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量と比較して多い場合に、前記生体試料が下記(Y)の癌患者由来のものであると判定する工程
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0020】
<第十の発明>
下記(A)及び/又は(B)の工程を指標とする、大腸癌の進行度合い又は他の臓器や組織への転移又は浸潤の可能性の判定方法。
(A)生体試料中の、下記(X)蛋白質の存在量又は下記(X)遺伝子の発現量を測定する工程
(B)(X)蛋白質の存在位置又は(X)遺伝子の発現位置を測定する工程
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
【0021】
<第十一の発明>
下記(X)の蛋白質又はその遺伝子を含むことを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0022】
<第十二の発明>
第十一の発明に記載のスクリーニング用キットを用いることを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法。
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【発明の効果】
【0023】
本発明のマーカーを利用して、癌の発生、進行状況、転移状況等を早期に発見することで、癌、特に大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌の、より有効な予防又は治療が可能となる。また本発明の予防/又は治療薬によって、大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌の予防/又は治療を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】主要なKLHLファミリーメンバーについてのsiRNA処理による、大腸癌細胞株HCT116細胞への効果を示す図である。KLHL5、26、27、36に対するsiRNA処理によって、癌細胞の増殖抑制効果が認められた。
【
図2】KLHL5に対するsiRNA処理によって、HCT116細胞の遊走(癌細胞の移動運動)が抑制されたことを示す図である。
【
図3】HCT116細胞の増殖抑制をMTTアッセイ法で定量した結果を示す図である。その結果、KLHL5、26、27に対するsiRNA処理によって、有意に抑制が確認できることが分かった。
【
図4】細胞接着阻止材poly HEMA(Poly (2-hydroxyethyl methacrykate))処理培養ディッシュでの細胞増殖アッセイの結果を示す図である。KLHL5又はKLHL27に対するsiRNA処理によって、HCT116細胞の増殖が抑制され、癌細胞の特性を失っていた。
【
図5】軟寒天培地での細胞増殖アッセイの結果を示す図である。KLHL5又はKLHL27に対するsiRNA処理によって、HCT116細胞の増殖が抑制され、癌細胞の特性を失っていた。
【
図6】複数種類のsiKLHL5処理によるKLHL5ノックダウン効果を、mRNA定量により検証した結果を示す図である。
【
図7】KLHL5に対するsiRNA処理の、KLHL5ノックダウン特異性を、タンパク質検出により検証した結果を示す図である。
【
図8】「大腸癌」及び「ヒト大腸腺腫」におけるKLHL5 mRNAの発現を、real-time PCRで確認した結果を示す図である。
【
図9】「ヒト大腸癌組織」におけるKLHL5蛋白質の発現を免疫染色で確認した結果を示す図である。
【
図10】KLHL5抗体のKLHL5蛋白質への特異性示す図である。
【
図11】「ヒト大腸腺腫」、「早期大腸癌(粘膜内癌; m癌)」におけるKLHL5蛋白質の発現を免疫染色で確認した結果を示す図である。
【
図12】「ヒト大腸癌組織」におけるKLHL5蛋白質の発現を免疫染色で確認した結果を示す図である。
【
図13】「ヒト大腸癌転移組織(肺転移及び肝臓転移)」におけるKLHL5蛋白質の発現を免疫染色で確認した結果を示す図である。
【
図14】「ヒト大腸癌組織」におけるKLHL5蛋白質の発現を、深度別に免疫染色で確認した結果を示す図である。
【
図15】
図20-2で示した定義に従いKLHL5の発現を数値化し、「大腸腺腫」及び「早期大腸癌(m癌、sm癌)」、「進行大腸癌」、「大腸癌転移巣」におけるKLHL5の発現を統計学的に解析した図である。
【
図16】
図20-2で示した定義に従いKLHL5の発現を数値化し、進行大腸癌の「上層」、「中層」、「下層」におけるKLHL5の発現を統計学的に解析した図である。
【
図17】公開データベース(Oncomine, https://www.oncomine.org/)の情報を用いた「大腸癌組織」及び「大腸腺腫組織」におけるKLHL5 mRNA発現の解析図である。
【
図18】公開データベース(Oncomine, https://www.oncomine.org/)の情報を用いた「大腸癌組織」及び「正常の大腸組織」におけるKLHL5 mRNA発現の解析図である。
【
図19】公開データベース(Prognoscan, https://www.prognoscan.org/)の情報を用い、「大腸癌組織」におけるKLHL5 mRNA発現と無病生存率の相関をKaplan-Meier法を用い解析した図である。
【
図20-1】ヒト進行大腸癌組織の上層、中層、下層の分類法について示した図である。
【
図20-2】KLHL5蛋白質強度の数値化の定義について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
[本発明の癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤]
本発明の「(Y)の癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤」は、(X)を阻害する物質を含むことを特徴とするものである。
【0027】
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0028】
「(X)を阻害する物質」とは、具体的には、「投与対象(生体や細胞や実験試料等)における、(X)の蛋白質又はその遺伝子の、量又は機能を抑制又は阻害する物質」である。
【0029】
「(X)の蛋白質又はその遺伝子の、量又は機能を抑制又は阻害する物質」としては、
「(X)の蛋白質又はその遺伝子の発現量を、抑制する物質」
「(X)の蛋白質又はその遺伝子を分解する物質」
「(X)の蛋白質又はその遺伝子の機能を阻害する物質」
等が挙げられる。
【0030】
具体的には、下記のようなものが挙げられるが、必ずしもこれらに限られるものでは無い。
【0031】
(i)(X)の遺伝子に対するsiRNA遺伝子、shRNA遺伝子、miRNA遺伝子、アンチセンスRNA、核酸アプタマー、又はリボザイム等を含む、遺伝子発現制御等に用いられる各種の核酸物質、各種の核酸分解酵素、及び各種の低分子性化合物等。
(ii)(X)の蛋白質に対する抗体、ペプチドアプタマー、サイクリックマクロペプチド、又は各種のプロテアーゼ等を含む、蛋白質を制御するのに用いられる各種のペプチド或いは蛋白質類、及び各種の低分子性化合物等。
【0032】
(i)の(X)の遺伝子に対するsiRNA遺伝子、shRNA遺伝子、miRNA遺伝子、アンチセンスRNA、核酸アプタマー、リボザイム等は、公知の知見に基づいて適宜設計することが可能であるが、siRNA遺伝子としては、例えば後述する表1に記載したようなものを購入することができるほか、Sigma社等に設計依頼することも可能である。
尚、核酸アプタマーは、ランダム配列からなる公知の巨大ライブラリー等からのスクリーニングによって得ることが一般的である。
【0033】
(ii)の(X)の蛋白質に対する抗体は、公知の方法に従い、KLHL蛋白質を抗原として、適当な宿主に免疫することや、常法に従った人工的な合成等によって作製することができるが、公知の抗体として表2記載のようなものを購入することもできる。
【0034】
本発明において抗体とは、モノクローナル抗体(mAb)、ポリクローナル抗体(pAb)、もしくはキメラ抗体やヒト化抗体のいずれであっても良く、ファージ抗体であっても良い。
【0035】
本発明において、抗体を「抑制剤」や後述する「予防又は治療剤」に用いる場合には、抑制ターゲットが明確なため、モノクローナル抗体が好ましい。
但し、後述する「本発明の診断キット」の「(X)の蛋白質に対して特異的に結合する物質」として使用する際には、ポリクローナル抗体でも良い。
【0036】
尚、ペプチドアプタマーも、上述の核酸アプタマー同様、公知の巨大ライブラリー等からのスクリーニングによって得ることが一般的である。
【0037】
(Y)の「大腸癌」とは、直腸癌、盲腸癌、結腸癌、肛門管癌等の、大腸組織に発生した悪性腫瘍を意味する。また、(Y)の「大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌」とは、大腸癌を原発とし、リンパ行性転移、血行性転移、又は腹膜播種等によって他の臓器又は組織に転移又は浸潤した癌を言い、具体的には例えば肝臓癌、肺癌、骨腫瘍、又は脳腫瘍等が挙げられる。
【0038】
本発明の「癌細胞の増殖又は転移抑制剤」は、後述する本発明の「癌の予防又は治療薬」の有効成分として用いられるほか、実験室内における実験・研究試薬として、例えば癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング実験等に用いる試薬の一部としても、非常に利用価値の高いものである。
【0039】
尚、実験・研究試薬としては、上記の成分の他、一般に実験・研究試薬に用いられている溶媒その他の各種添加剤等を含有させることができる。
【0040】
[本発明の癌の予防及び/又は治療薬]
本発明の「下記(Y)の癌の予防及び/又は治療薬」は、「下記(X)を阻害する物質」を含むことを特徴とするものである。
【0041】
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0042】
「下記(X)を阻害する物質」としては、上述の「本発明の癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤」の説明で記載したようなものが挙げられる。
【0043】
[本発明の癌マーカー]
本発明の「癌マーカー」は、(Y)を識別するための癌マーカーであって、(X)を含むことを特徴とするものである。
【0044】
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0045】
≪マーカーの構成(1)≫
本発明のマーカーに用いられる、KLHL蛋白質は、kelch-like ,又はkelch like family memberなどと呼ばれるKLHL蛋白質ファミリーのうち、KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36である。
【0046】
これらは、各々約755個,約615個,約584個,又は約616個のアミノ酸からなる公知の蛋白質であり、その詳細は、各々下記にも示されている。
但し、KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36は、いずれもそれぞれにバリアントが複数あり、上記のアミノ酸数は、あくまでも各々の代表例である。
【0047】
また、本発明のマーカーに用いられるKLHL蛋白質は、上記蛋白質の単量体のほか、多量体、又は当該蛋白質の一部のポリペプチドであっても良く、また、本発明のマーカーに用いられる遺伝子は、その配列の全部又は一部であっても良い。
【0048】
KLHL5:https://www.uniprot.org/uniprot/Q96PQ7
【0049】
KLHL26:https://www.uniprot.org/uniprot/Q53HC5
【0050】
KLHL27:https://www.uniprot.org/uniprot/Q9Y573
【0051】
KLHL36:https://www.uniprot.org/uniprot/Q8N4N3
【0052】
≪マーカーの構成(2)≫
本発明のマーカーに用いられる、KLHL蛋白質遺伝子とは、上述した公知KLHL蛋白質の遺伝子であり、その詳細は、下記にも示されるものである。
【0053】
KLHL5:https://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=KLHL5&keywords=KLHL5
【0054】
KLHL26:https://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=KLHL26&keywords=KLHL26
【0055】
KLHL27: https://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=IPP&keywords=KLHL27
【0056】
KLHL36:https://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=KLHL36&keywords=KLHL36
【0057】
≪マーカーの由来≫
本発明のマーカーを構成するKLHL蛋白質は、ヒト又はその他生物の生体に由来するものであるが、具体的には生体由来の試料(以下「生体試料」と記載する。)」中に存在するものを検出することにより、マーカーとしての役割を発揮するものである。
【0058】
上記の「生体試料」としては、癌の疑いのある、或いは癌と診断された生物個体由来の試料が主に用いられるが、健常と思われる生物個体由来の試料であっても良く、それらの個体の、臓器又は組織等に由来する試料等が用いられる。
【0059】
≪生体試料≫
具体的な生体試料としては、生体から偶然あるいは人為的に抽出された臓器又は組織の一部、生体由来細胞、又はその培養細胞、又は体液等が挙げられるが、細胞としては、培養細胞よりも採取直後の細胞の方が、より正確な情報が得られるため好ましい。
【0060】
但し、直接免疫不全マウスに移植するPDX (Patients-derived xenografts)や、3次元オルガノイド培養システム等を用いて、採取したがん細胞の形質や発現している遺伝子を保持したまま培養する方法を用いれば、培養細胞であっても、本発明における生体試料として用いることは、十分に可能である。
【0061】
尚、体液としては、例えば下記のようなものが挙げられる。
末梢血、血清、又は血漿を含む血液、リンパ液、組織液(組織間液、細胞間液、間質液)、体腔液、漿膜腔液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液(髄液)、関節液(滑液)、眼房水(房水)等のいわゆる狭義の体液のほか、消化液、唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液、汗、涙、鼻水、尿、精液、膣液、羊水又は母乳等の広義の体液。
【0062】
≪マーカー利用よる効果≫
本発明のマーカーは、これを指標とした診断を行うことで、大腸癌や大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌について、その発生、進行状況、転移状況等を早期に発見することできるため、これらの癌についての、より有効な予防又は治療が可能となる。
【0063】
具体的には、試料中の検出量が多い程、その組織又は臓器等における癌の進行度(ステージ)が高く、また他の臓器や組織への転移や浸潤等の可能性が高いと判断できる。
【0064】
≪マーカーの用途≫
本発明のマーカーは、後述する本発明の「診断キット」等を用いた癌診断の、診断指標となり得るほか、本発明の「癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット」を用いた本発明の「癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法」に用いることができる。
【0065】
今回、本発明者等によって、上記(X)で挙げたKLHL蛋白質、中でも特にKLHL5が、大腸癌において、進行度の高い病態、更には大腸癌に由来すると考えられる肝臓癌や肺癌において、健常な生体よりも過剰に発現していることを見出した。そのため、(X)のKLHL蛋白質、中でも特にKLHL5が、大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌の診断マーカーとして、非常に有用である。
【0066】
[本発明の癌診断キット]
本発明の(Y)の診断キットは、(X)を検出可能な物質を含むことを特徴とするものである。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0067】
「(X)を検出可能な物質」としては、以下のようなものが挙げられる。
【0068】
1)(X)の各蛋白質に対して特異的に結合する物質
2)(X)の各遺伝子を増幅可能なプライマーセット
3)(X)の各遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ
【0069】
1)の「(X)の各蛋白質に対して特異的に結合する物質」としては、(X)の各蛋白質に対する抗体のほか、ペプチドアプタマー、サイクリックマクロペプチド等が挙げられる。
【0070】
抗体としては、上述の本発明の「本発明の癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤」や「本発明の癌の予防及び/又は治療薬」で記載したようなものが挙げられるが、「癌診断キット」に用いる場合には、ポリクローナル抗体も、好ましい抗体として使用できる。
【0071】
2)のプライマーセットや、3)のプローブは、(X)の各遺伝子の配列を元に、PCRの技術分野において通常用いられている技術を用いることによって、作成することが可能である。
【0072】
本発明の診断キットには、上記の他、通常診断キットに用いられているような他の成分を包含させることができる。
【0073】
尚、本発明の(X)で言う「蛋白質」には、一般的なKLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36の他、多量体、又は当該蛋白質の一部のみが切り離されたポリペプチド等も含まれる。
【0074】
また、これら蛋白質の配列には、個体差があるため、一概に規定できるものではない。
そのため、上述した「(X)を検出可能な物質」にも、一般的なKLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36蛋白質の配列の個体差に応じた、各種のバリエーションがあり得る。
【0075】
また、本発明の(X)で言う「遺伝子」とは、アデニン(A)、グアニン(G)等のプリン塩基や、チミン(T)、ウラシル(U)、シトシン(C)等のピリミジン塩基やそれらの修飾塩基を構成要素として含むポリヌクレオチドであり、生体内に存在している、KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36の、一本鎖又は二本鎖のDNA、一本鎖又は二本鎖のRNA等が含まれる。
【0076】
尚、本発明の(X)で言う「遺伝子」には、各遺伝子の一部の断片等も含まれる。各遺伝子に特徴的な配列部分であれば、一部の遺伝子断片であっても、診断に用いることが可能だからである。
【0077】
また、KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36遺伝子の配列にも、一塩基多型その他の個体差があるため、一概に規定できるものではない。
そのため、上述した「(X)を検出可能な物質」にも、一般的なKLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36遺伝子の配列の個体差に応じた、各種のバリエーションがあり得る。
【0078】
[本発明の生体試料の測定方法]
本発明の「生体試料の測定方法」は、下記(1)及び(2)の工程を含むことを特徴とするものである。
【0079】
(1)生体試料中の、(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量を測定する工程
(2)(1)で測定された(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量が、当該生体試料と同種の正常組織由来の対照試料中の(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量と比較して多い場合に、前記生体試料が(Y)の癌患者由来のものであると判定する工程
【0080】
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
尚、本発明の測定対象である(X)蛋白質の存在量は、上記(X)蛋白質の単量体のほか、多量体、又は当該蛋白質の一部のポリペプチド等の量から推定される量であっても良く、また、本発明の測定対象である(X)遺伝子の発現量も、その配列の一部からなる断片の量等から推定される量であっても良い。
【0081】
「生体試料」とは、上述した「本発明の癌マーカー」の説明において記載した「生体試料」を言う。
【0082】
[本発明の大腸癌の進行度合い又は他の臓器や組織への転移又は浸潤の可能性を判定する方法]
本発明の「大腸癌の進行度合い又は他の臓器や組織への転移又は浸潤の可能性を判定する方法」は、下記(A)及び/又は(B)の工程を含むことを特徴とするものである。
【0083】
(A)生体試料中の、(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量を測定する工程
(B)(X)蛋白質の存在位置又は(X)遺伝子の発現位置を測定する工程
【0084】
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
また、(A)の(X)蛋白質の存在量は、上記(X)蛋白質の単量体のほか、多量体、又は当該蛋白質の一部のポリペプチド等の量から推測される量であっても良く、また(X)遺伝子の発現量も、その配列の一部からなる断片の量等から推測される量であっても良い。
【0085】
「存在位置」又は「発現位置」とは、(X)蛋白質又は遺伝子が存在又は発現している、生体中の位置(臓器その他の組織及び/又は当該組織中の位置)を意味する。
【0086】
例えば大腸は、その断面において内側より、粘膜(m:粘膜上皮、粘膜固有層、陰窩(腸腺)、粘膜筋板)、粘膜下層(sm)、筋層(mp:輪筋層、筋層間神経叢、縦筋層)、漿膜(se)等に分類されるが、これらの「どこに」、「どの程度」、KLHL蛋白質が発現しているかによって、大腸癌の進行度や転移可能性が判断できる。
大腸癌は、大腸の最も内側の粘膜表面(粘膜上皮細胞)より発生し、大腸の壁に深く侵入(浸潤)するにつれて進行し、リンパ管や血管への癌細胞の侵入、あるいは癌細胞が大腸の壁を突き破って腹腔内に拡がる腹膜播種等によって、他の組織に転移すること等を通じて、全身に広がっていくことが知られているからである。
【0087】
KLHL蛋白質の発現が、粘膜や粘膜下層中に留まっている場合には、早期癌(粘膜内癌(m癌)、粘膜下層癌(sm癌)等)と診断でき、筋層や漿膜等にまで発現が見られる場合には、進行癌(mp癌、se癌)と診断でき、既に転移している或いは将来転移する可能性が高くなる。
また、上記分類中、同じ層中であっても、大腸の内側から外側(下層)に向かって大腸壁の深い位置での発現である程、進行度や転移可能性が高くなると判断される。
【0088】
今回、本発明者等によって、上記(X)で挙げたKLHL蛋白質、中でも特にKLHL5が、大腸癌において、進行度の高い病態、更には大腸癌に由来すると考えられる肝臓癌や肺癌において、健常な生体よりも過剰に発現していることが見出された。そのため、(X)のKLHL蛋白質、中でもKLHL5が、大腸癌の進行度合い又は他臓器への転移の可能性を判定するために、特に有用であることも同時に明らかとなった。
【0089】
[本発明の癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット]
本発明の「(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット」は、(X)蛋白質又はその遺伝子を含むことを特徴とするものである。
【0090】
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0091】
本発明の「スクリーニング用キット」は、後述する本発明の「大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法」に用いることができる。
【0092】
≪構成成分≫
【0093】
(X)に挙げたKLHL蛋白質は、例えばセルフリーサイエンス社(http://www.cfsciences.com)受託で合成をオーダーし、購入することが可能である。
【0094】
(X)に挙げたKLHL蛋白質遺伝子は、例えば下記に示したように(公財)かずさDNA研究所等を通じて、市場から入手可能である。
【0095】
http://www.biosupport.kazusa.or.jp/sub_center1/clone.html#human_clone
【0096】
尚、本発明に用いられるKLHL蛋白質は、上記蛋白質の単量体のほか、多量体、又は当該蛋白質の一部のポリペプチドであっても良く、また、本発明に用いられる遺伝子は、その配列の全部又は一部であっても良い。
また本発明で言う、KLHL遺伝子には、これまで報告されているような一塩基多型その他の変異体等も含まれる。
【0097】
[本発明のスクリーニング方法]
本発明の「(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法」は、上記本発明の「(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット」を用いることを特徴とするものである。
【0098】
具体的には、投与対象(生体や細胞や実験試料等)に、被験物質を投与した前後での、「(X)の蛋白質又は遺伝子」の量や機能を測定し、(X)の発現量の増加が抑制又は発現量が減少している場合、或いは(X)の機能が低下している場合に、(Y)の癌の予防及び/又は治療薬の候補物質として選択することによって、実施することができる。
【実施例】
【0099】
[実施例1~10,比較例1~11:大腸癌細胞の増殖抑制剤]
各種KLHL蛋白質(KLHL2、3、4、5、6、9、12、19、26、27、36、37、39)遺伝子に対する「siRNA」、又は「抗KLHL5抗体」からなる、大腸癌細胞の増殖抑制剤を製造した。
各siRNA配列は、後述する表1及び配列表に、抗体の詳細については表2に示した通りである。
【0100】
尚、KLHL蛋白質(KLHL5、26、27、又は36)の遺伝子に対する「siRNA」を[実施例1~9](表1)
「抗KLHL5抗体」(product number ; HPA013958, SIGMA社)を、[実施例10](表2)
KLHL蛋白質(KLHL2、3、4、6、9、12、19、37、又は39)の遺伝子に対する「siRNA」を[比較例1~9](表1)
とした。
また、CUL3蛋白質の遺伝子に対する「siRNA」を[比較例10](表1)とした。
【0101】
また、表1に記載の、siControlをSigma社より購入し、対照例1とした。
【0102】
[試験例]
以下の試験例によって、本発明の各種の抑制剤等の効果を確認した。
尚、各試験例において用いたsiRNA、蛋白質の分離・検出方法、検出用抗体等は下記の通りである。
【0103】
≪材料及び方法:Material and method≫
(siRNA試薬)
各試験例で使用したsiRNA試薬の配列は、表1及び配列表に示した通りである。
【0104】
(KLHL蛋白質抗体)
各試験例で使用したKLHL蛋白質抗体は、表2に示したものを使用した。
【0105】
[試験例1:大腸癌細胞の増殖抑制試験]
下記のプロトコルに従って、実施例1、6、7、8、比較例1~10及び対照例1の「細胞増殖抑制剤」を用いて、大腸癌細胞HCT116の増殖抑制試験を実施した。
【0106】
(プロトコル)
上記した実施例、比較例、対照例の各増殖抑制剤(siRNA)を用い、大腸癌細胞株HCT116(ヒト結腸腺癌)のノックダウンを行った。siRNAの導入に際し、ThermoFisher scientific社製のリポフェクション試薬を使用した。
siRNA処理した細胞を培養皿(96well)に播種し(1.0x104/well/100μL)、72時間培養した。
尚、培地としては、[McCoy’s 5A培地+FBS10%]を用いた。
ナカライテスク株式会社製の、試験例3で詳述するMTTアッセイ試薬を添加し、30分後にマルチプレートリーダーを用い吸光度(450nm)を測定し、各増殖抑制剤(siRNA)による細胞増殖抑制効果を評価した。
【0107】
(結果)
図1に示すように、対照例や比較例1~10の「細胞増殖抑制剤」(siRNA)には、大腸癌細胞株HCT116細胞の増殖抑制効果は、殆ど無かったのに対し、下記の(X)のKLHL蛋白質遺伝子を阻害する実施例1(siKLHL5#1)、6(siKLH26)、7(siKLHL27)、8(siKLHL36)の各種「細胞増殖抑制剤」(siRNA)(枠で囲った写真のもの)は、大腸癌細胞株HCT116細胞の増殖を、いずれも顕著に抑制した。
【0108】
(考察)
従って、siKLHL5、siKLHL26、siKLHL27、又はsiKLHL36を主成分とする大腸癌細胞の「細胞増殖抑制剤」が、大腸癌を初めとする、下記(Y)の各種癌の、予防及び/又は治療薬としても使用可能であることは明らかである。
【0109】
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
【0110】
[試験例2:大腸癌細胞の遊走抑制試験]
下記のプロトコルに従って、実施例1及び対照例1の「細胞増殖抑制剤」を用いて、大腸癌細胞HCT116の遊走抑制試験を実施した。
【0111】
(プロトコル)
試験例1と同様の手法で、siRNAを用い、大腸癌細胞株HCT116中のKLHL5のノックダウンを行った。
ノックダウン処理したHCT116用いトランスウェル(Transwell(登録商標)システムにより、遊走能に与える影響を評価した。
トランスウェルシステムとは、培養皿が2重になったもので、受け皿となるマルチプレートと細胞が通過できる小孔(8 μm pore size)を持つトランウェルインサートからなる、コーニングインターナショナル社のシステムである。トランスウェルシステムのより詳細なプロトコルは、例えば下記のURL等に掲載されている。
https://www.corning.com/jp/jp/products/life-sciences/products/permeable-supports/transwell-guidelines.html
受け皿となるマルチプレート(24 well)の各wellに、細胞遊走活性化作用を有するFBSを下記の通常培地(10%)より高濃度(20%)に調整した培地[McCoy’s 5A培地+FBS20%]を加え、次にトランウェルインサートを、マルチプレートの各wellに、トランウェルインサートの各コンパートメントが対応するように嵌め込んだ。
各々のコンパートメント内に、上述のノックダウン処理したHCT116を通常培地[McCoy’s 5A培地+FBS10%]とともに加えた(3.5x105/well/mL)。
48時間培養後、トランウェルインサートの上層側の細胞を綿棒で拭き取った後に、トランウェルインサートの下層側に付着している細胞を100%のメタノール用いて固定した。さらに2%のクリスタルバイオレットで染色を行い、トランウェルインサートを通過した細胞数を計測した。
【0112】
(結果)
図2に示すように、対照例と比較して、実施例1の「細胞増殖抑制剤」(siKLHL5#1)によって、大腸癌細胞株HCT116細胞の遊走を、顕著に抑制していることが分かった。
【0113】
(考察)
上述の結果から、KLHL5の遺伝子を阻害する物質は、大腸癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤,あるいは大腸癌の予防及び/又は治療薬となり得ることが分かった。
【0114】
[試験例3:大腸癌細胞の増殖抑制試験(MTTアッセイ法による定量)]
下記のプロトコルに従って、実施例1、6、7比較例10及び対照例1の「細胞増殖抑制剤」を用いて、大腸癌細胞HCT116の増殖抑制試験を実施した。
【0115】
(プロトコル)
試験例1と同様の方法で、実施例、比較例、対照例の各「細胞増殖抑制剤」(siRNA)をHCT116細胞に導入後、下記のMTTアッセイ法による癌細胞の生細胞数測定を行い、各siRNAの癌細胞増殖抑制効果を確認した。
【0116】
(MTTアッセイ法)
3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド (MTTアッセイ試薬)が、生細胞のミトコンドリアで開裂し、暗青色のホルマザンを生成することを利用し、生細胞を測定した。
【0117】
具体的には、該当する細胞を96well培養皿に播種し(1.0x104/well/100μL)、72時間培養後に培養液を吸引した。100μLのPBSを各wellに添加し、さらにナカライテスク株式会社製のMTTアッセイ試薬を10μL添加した。30分後にマルチプレートリーダーを用いて吸光度(450nm)を測定し、生細胞数を反映する細胞活性を測定した。
尚、培地としては、[McCoy’s 5A培地+FBS10%]を用いた。
また、KLHL蛋白質発現と大腸癌との因果関係調査の一環として、KLHL5蛋白質の、ユビキチンリガーゼ(E3)アダプターとしての可能性を探るため、E3のプラットフォームであるCUL3蛋白質についても、比較例10のsiCUL3を用いて、発現抑制試験を行った。
【0118】
(結果)
図3に示すように、比較例や対照例と比較して、実施例1(siKLHL5#1)、実施例6(siKLHL26)、実施例7(siKLHL27)の「細胞増殖抑制剤」によって、大腸癌細胞株HCT116細胞の生細胞数が、顕著に減少していることが分かった。
【0119】
(考察)
上述の結果から、KLHL5、26、27の遺伝子を阻害する物質は、大腸癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤,あるいは大腸癌の予防及び/又は治療薬となり得ることが分かった。
【0120】
尚、比較例10のsiCUL3によって、むしろ大腸癌細胞の生細胞が増加しているのは、CUL3は、ユビキチンリガーゼ(E3)のプラットフォームとして、183種の「基質受容体」と相互作用し、またそれぞれの基質受容体が複数の「基質」をユビキチン化の標的とすることから、CUL3ノックダウンの効果が極めて多岐に及び、かつ大きいためと考えられる。
【0121】
[試験例4:癌細胞の特性(足場非依存性)の残存確認試験(1)]
下記のプロトコルに従って、実施例1、7及び対照例1の「細胞増殖抑制剤」を用いて、細胞接着阻止剤(poly HEMA:ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラレート))を使用した培養皿での培養における、大腸癌細胞HCT116の特性(足場非依存性)の残存確認試験を実施した。
【0122】
(プロトコル)
試験例1と同様の手法で、siRNA処理により、大腸癌細胞株、HCT116のKLHL5 ノックダウンを行った。
細胞接着阻止剤(poly HEMA)の塗布された培養皿(24well)にKLHL5 ノックダウン HCT116を播種(5x104/well/mL)した。
尚、培地としては、[McCoy’s 5A培地+FBS10%]を用いた。
48時間培養後に細胞を培養皿から回収し、遠心分離(2,000rpm,3分)後、上澄を除去した。
遠心チューブ内にトリプシン100μLを添加して、チューブ内に付着した細胞を剥離し、細胞懸濁液を調整した。
細胞懸濁液10μLに対しトリパンブルー10μLを加え、細胞の染色を行った。生存している細胞数を計測し、KLHL5の足場非依存性への影響を評価した。
【0123】
(結果)
通常のがん細胞は足場非依存性増殖を示すためpoly HEMA処理培養ディッシュ上でも増殖するが、
図4に示すように、実施例1(siKLHL5#1)、7(siKLHL27)の「細胞増殖抑制剤」の添加によって、HCT116細胞の増殖が抑制されていることが分かった。
これは、KLHL5又はKLHL27に対するsiRNA処理によって、大腸癌細胞HCT116が、その特性である足場非依存性増殖能を失っていた(細胞-マトリクス間の接着喪失により誘導されるアポトーシス(細胞自死)つまりアノイキス(anoikis)を起こした)ことを意味している。
【0124】
(考察)
上述の結果から、KLHL5又はKLHL27の遺伝子を阻害する物質は、大腸癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤,あるいは大腸癌の予防及び/又は治療薬となり得ることが分かった。
【0125】
[試験例5:癌細胞の特性(足場非依存性)の残存確認試験(2)]
下記のプロトコルに従って、実施例1、7及び対照例1の「細胞増殖抑制剤」を用いて、軟寒天培地での培養における大腸癌細胞HCT116の特性(足場非依存性)の残存確認試験を実施した。
【0126】
(プロトコル)
試験例1と同様の手法で、siRNAを用い大腸癌細胞株、HCT116のKLHL5のノックダウンを行った。軟寒天培地(6well)にKLHL5 ノックダウン HCT116を播種し(1.0x104/well)、4週間培養した。100μm以上の大きさのコロニー数を測定し、KLHL5の足場非依存性増殖能への影響を評価した。
【0127】
(結果)
野生型HCT116細胞は足場非依存性増殖を示すため軟寒天培地でも増殖するが、
図5に示すように、実施例1又は7の「細胞増殖抑制剤」(KLHL5又はKLHL27に対するsiRNA処理)の使用によって、HCT116細胞の増殖が抑制されており、癌細胞の特性である足場非依存性増殖能を失ったと言える。
【0128】
(考察)
上述の結果から、KLHL5又はKLHL27の遺伝子を阻害する物質は、大腸癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤,あるいは大腸癌の予防及び/又は治療薬となり得ることが分かった。
【0129】
[試験例6:各種siKLHL5による大腸癌細胞のKLHL5の発現量確認試験]
実施例1~5の、複数種類の「細胞増殖抑制剤」(siKLHL5)を用いて、大腸癌細胞HCT116中における、KLHL5の発現量の抑制効果を比較した。コントロールとして、対照例1のsiControlを用いた。
【0130】
図6から分かる通り、実施例1~5の各「細胞増殖抑制剤」(siKLHL5)には、いずれも非常に高いKLHL5の発現抑制効果が見られた。
尚、図には示していないが、Silencer Select社製のsiKLHL5(#4427037 Silencer(R) Select Pre-designed siRNA, inventoried, std purity,1 nmol siRNA ID: s27397)によっても、実施例1~5程では無いものの、明確なKLHL5の発現抑制効果が見られた。
【0131】
(考察)
このことは、実施例1~5のsiKLHL5が、大腸癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤,あるいは大腸癌の予防及び/又は治療薬として有用であることを示している。
【0132】
[試験例7:siKLHL5によるKLHL5ノックダウン特異性の確認試験]
下記のプロトコルに従って、本発明の「細胞増殖抑制剤」(siRNA)により、大腸癌細胞HCT116において、KLHL5蛋白質の発現が特異的に抑制されていることを確認した。
【0133】
(プロトコル)
(i)融合遺伝子の作成
野生型のKLHL5遺伝子(WT)、及び実施例1又は2各々のsiKLHL5に対して抵抗性を持つようにsiRNA標的領域に変異を導入したKLHL5遺伝子(Mut1,Mut2)の、合計3種のKLHL5遺伝子を、それぞれFLAG遺伝子に結合し、3種類のFLAG標識KLHL5融合遺伝子(FLAG-KLHL5遺伝子)を作成した。
【0134】
(ii)遺伝子導入
(ii-1)HCT116細胞に対照例1,実施例1,又は実施例2のsiRNA(siKLHL5 #1,#2)を、各々リポフェクション試薬「Lipofectamine RNAi max」(Invitrogen社製)を用いてトランスフェクションし、24時間培養した。
(ii-2)(ii-1)の3種のHCT116細胞各々に、(i)で作成した3種類のFLAG-KLHL5融合遺伝子を、リポフェクション試薬「GeneJuice」(Millipore社製)を用いてトランスフェクションし、通常の培養条件(McCoy’s 5A培地+FBS(10%) 、5%CO2)下で48時間、細胞培養することによって、それぞれのFLAG-KLHL5蛋白質を強制発現させた。
【0135】
(iii)KLHL5蛋白質の検出
(ii)でKLHL5を過剰発現させた後、KLHL5蛋白質を、表2記載の抗FLAG抗体で検出することによって検証した。
尚、内因性コントロールとして、β-アクチンを使用した。
【0136】
(結果)
図7から分かる通り、野生型のKLHL5を導入した細胞では、実施例1及び実施例2のいずれのsiRNA(siKLHL5 #1,#2)によっても、KLHL5の発現を抑制できた。
【0137】
一方、siRNA標的領域に変異を導入したKLHL5遺伝子(Mut1,Mut2)を導入した細胞では、導入した変異を含む部位を標的とする方のsiRNA(Mut1に対するsiKLHL5 #1,Mut2に対するsiKLHL5 #2)では、KLHL5の発現抑制効果が失われており、実施例1及び実施例2よるKLHL5の発現抑制が、siRNAによる特異的なものであることが判明した。
【0138】
(考察)
上記の結果は、実施例1,2に代表されるsiKLHL5試薬が、大腸癌細胞の増殖抑制剤となり得ることに加えて、そのKLHL5の発現抑制作用が非常に特異的ものであることから、より副作用の少ない、大腸癌の予防及び/又は治療剤となり得ることを示している。
【0139】
[試験例8:KLHL5遺伝子(mRNA)の大腸癌マーカーとしての利用可能性]
「大腸癌」及び「ヒト大腸腺腫」におけるKLHL5 mRNAの発現を、real-time PCRで確認した。
【0140】
(プロトコル)
パラフィン包埋された臨床検体(「進行大腸癌」18サンプル、「低異形度腺腫」9サンプル)より、Maxwell 16 LEV RNA FFPE kit (Promega社)を使用してmRNAを抽出した。
比較対象とするコントロールとしては、同一臨床検体の非腫瘍部位より採取し、同様に抽出したmRNAを用いた。
抽出したmRNAを、「KLHL5特異的プライマー」及び「PrimeScript 1strand cDNA synthesis kit(製品コードTKR 6110)、タカラバイオ社システム」を用いてcDNAに変換し、TaqMan Gene Expression Assay(applied biosystems社)を使用し、ABI 7500fastによりreal-time PCRを用いて増幅した。
real-time PCRの結果を示す「増幅曲線」の、ミッドポイント(S字曲線の変曲点)の値を、KLHL5 mRNAの発現量を反映したデータとして、本試験例の比較・検証に用いた。
内因性コントロールはGAPDHを使用し、結果は対コントロール比で比較検討した。
【0141】
(結果)
図8から分かる通り、「進行大腸癌(
図8のadenocarcinoma:腺癌)」では、「大腸腺腫(
図8のadenoma:低異形度腺腫(良性腫瘍))」に比べて有意にKLHL5 mRNAが高発現していることが判明した。
【0142】
(考察)
上述の結果から、「KLHL5遺伝子(mRNA)」が、「大腸癌のマーカー」として特に有用であることが裏付けられた。
【0143】
[試験例9:KLHL5蛋白質の大腸癌マーカーとしての利用可能性]
「ヒト大腸癌組織」におけるKLHL5蛋白質の発現を免疫染色で確認した結果を示す図である。
【0144】
(プロトコル)
パラフィン包埋された「ヒト大腸癌」切除標本を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色により、KLHL5の発現を検証した。
発現の程度は視認による相対的評価で行った。「正常組織(Normal tissue)」としては、同一個体の肉眼的非癌部を使用した。
Negative controlは一次抗体を使用せず免疫染色を実施。免疫染色は下記プロトコルを使用した。
【0145】
≪免疫染色プロトコル≫
(1) 脱パラフィン
(2) 前処理。加熱しておいた10mMクエン酸に入れ、10分加熱。その後、冷却。
(3) 3%H2O2で内因性ペルキシダーゼの阻害
(4) PBSで洗浄。5分x3回。
(5) 正常血清でブロッキング
(6) 一次抗体添加。常温で1時間以上、更に4℃で一晩放置。
(7) PBSで洗浄。5分x3回
(8) 2次抗体添加。10分
(9) PBSで洗浄。5分x3回
(10) 酵素試薬。5分
(11) PBSで洗浄。5分x3回
(12) DAB溶液を作成し、4分標本に浸透。
(13) 流水水洗5分~10分
(14) ヘマトキシリン液添加 1分静置
(15) 流水水洗 5分
(16) 脱水、エタノール3相
(17) 透徹、キシレン4相
(18) 封入
【0146】
(結果)
図9に示す組織標本には正常組織及び癌組織が混在しているが、KLHL5は癌組織のみに特異的に発現していることが判明した。
尚、免疫染色の2次抗体による非特異的な染色の可能性を排除するため、組織標本の連続切片を用い2次抗体のみで免疫染色を行ったところ、染色は認めなかった。
【0147】
(考察)
上述の結果から、「KLHL5蛋白質」も、「大腸癌のマーカー」として利用可能であることが裏付けられた。
また、2次抗体による非特異的な染色は見られなかったことから、「抗KLHL5抗体」が、本発明の[癌診断キット]の構成成分として有用であることも、確認できた。
【0148】
[試験例10:抗KLHL5抗体のKLHL5蛋白質に対する特異性の確認試験]
予めKLHL5抗原で処理した表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いて、「大腸癌組織」の免疫染色を行うことによって、「抗KLHL5抗体」のKLHL5蛋白質への特異性を検証した。
【0149】
(プロトコル)
表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」のPBS希釈液に、抗体:抗原が1:20(mol)となるように下記抗原希釈液を加え、4℃で一晩転倒混和した。
この混合液を一次抗体として免疫染色を行い、上述の試験例9と同様のプロトコルに従い、「大腸癌組織」の免疫染色を行った。
【0150】
(使用抗原)PrEST Antigen KLHL5(SIGMA社)
【0151】
(結果)
図10から分かる通り、予めKLHL5抗原で処理した「抗KLHL5抗体」では、大腸癌組織は染色されなかった。
【0152】
(考察)
これは、「抗KLHL5抗体」が、予め行った「KLHL5抗原処理」によって、もはや「大腸癌組織」に発現したKLHL5には、結合しなくなったことを意味している。
【0153】
このことは、「抗KLHL5抗体」のKLHL5蛋白質に対する特異性を証明するものであり、試験例9の結果と共に、「抗KLHL5抗体」が、本発明の[癌診断キット]の構成成分として利用可能であることを示すものである。
また、抗体は生体内において抗原蛋白質の機能を阻害し得るものであることから、上記結果は、「抗KLHL5抗体」が、本発明の[癌細胞の増殖又は転移抑制剤]又は本発明の[癌の予防又は治療薬]に使用し得ることも示している。
【0154】
[試験例11:KLHL5蛋白質の早期大腸癌マーカーとしての利用可能性]
「ヒト大腸腺腫(
図11のadenoma)」、「早期大腸癌(
図11のadenocarcinoma(粘膜内癌; m癌))」におけるKLHL5蛋白質の発現を、免疫染色で確認した。
【0155】
(プロトコル)
パラフィン包埋された「ヒト大腸腺腫(高度異型腺腫2検体)」、及び「早期大腸癌(粘膜癌(m癌)2検体))の、各切除標本を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色により、KLHL5の発現を検証した。
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は、免疫染色結果を視認することによって相対的に評価した。
図11上段は弱拡大、下段は強拡大を示す。
【0156】
(結果)
図11から分かる通り、「大腸腺腫」ではKLHL5蛋白質は検出されなかったが、「早期大腸癌(粘膜内癌; m癌)」では、わずかにKLHL5蛋白質の発現を認めた。
【0157】
(考察)
上述の結果から、「KLHL5蛋白質」は単なる大腸癌マーカーとしてのみならず、早期大腸癌を発見し得る、優れた「大腸癌マーカー」であることが裏付けられた。
【0158】
[試験例12:KLHL5蛋白質の高度大腸癌マーカーとしての利用可能性(1)]
ヒト大腸癌組織におけるKLHL5蛋白質の発現を免疫染色で確認した。
【0159】
(プロトコル)
パラフィン包埋された下記1)、2)の2グループのヒト大腸癌切除標本を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色によりKLHL5の発現を検証した。
1)早期大腸癌(粘膜下層浸潤癌;Adenocarcinoma(sm))2検体
2)進行大腸癌(筋層以深浸潤癌:Adenocarcinoma(advanced);2検体
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は、免疫染色結果を視認することによって相対的に評価した。
「早期大腸癌(sm)」、「進行大腸癌(advanced)」は標本サイズが大きくなるため、癌を含む大腸組織を上下で「上層」・「下層」(「upper layer」・「lower layer」)と任意部位で2分した。1)、2)の各2検体は、同グループの検体はそれぞれ同様の結果を示したため、1)、2)の各グループ中の、1検体の結果について、
図12に示した。
尚、図上段は弱拡大、下段は強拡大を示す。
【0160】
(結果)
図12から分かる通り、「早期大腸癌(sm)」ではKLHL5蛋白質の発現は弱く、「進行大腸癌(advanced)」ではKLHL5は腫瘍の上層では発現が認められず、下層で発現が認められた。
【0161】
(考察)
上述の結果から、KLHL5蛋白質は、単なる大腸癌マーカーとしてのみならず、大腸癌の進行度合いをも検出可能な、優れた高度大腸癌マーカーであることが裏付けられた。
【0162】
[試験例13:KLHL5蛋白質の転移性腫瘍マーカーとしての利用可能性]
「ヒト大腸癌転移組織(肺転移及び肝臓転移)」におけるKLHL5蛋白質の発現を、免疫染色で確認した。
【0163】
(プロトコル)
パラフィン包埋された「ヒト大腸癌転移巣」切除標本(肺転移1検体、肝転移1検体)を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色によりKLHL5の発現を検証した。
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は、免疫染色結果を視認することによって相対的に評価した。
サンプル転移巣組織を上下で上層・下層(「upper layer」・「lower layer」)と任意部位で2分した。図上段は弱拡大、下段は強拡大を示す。
【0164】
(結果)
図13から分かる通り、大腸癌肺転移、大腸癌肝転移ともに、わずかにKLHL5蛋白質の発現が認められた。
【0165】
(考察)
上述の結果から、「KLHL5蛋白質」は、単なる「大腸癌マーカー」としてのみならず、肺癌、肝臓癌等の、大腸癌由来の転移癌又は浸潤癌をも検出可能な、優れた「転移性腫瘍マーカー」として利用可能であることが裏付けられた。
更には、本発明の[予防又は治療剤]が、大腸癌のみならず、肺癌、肝臓癌等の、大腸癌由来の転移癌又は浸潤癌に対する予防又は治療薬となり得ることも判明した。
【0166】
[試験例14:KLHL5蛋白質の高度大腸癌マーカーとしての利用可能性(2)]
ステージ4と診断されたヒト大腸癌組織におけるKLHL5蛋白質の発現を、深度別に免疫染色で確認した。
【0167】
(プロトコル)
パラフィン包埋されたヒト進行大腸癌切除標本を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色により、KLHL5の発現を検証した。
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は、免疫染色結果を視認することによって相対的に評価した。
対象標本は大腸の内腔(lumen)に近い「粘膜側」から「漿膜(serosa)側」までを連続観察し、ほぼ3等分となるように、任意の点で「上層」・「中層」・「下層」(「upper layer」・「middle layer」・「lower layer」)に3分した。図左側は弱拡大、右側は強拡大を示す。
【0168】
(結果)
図14から分かる通り、本試験例で用いた大腸癌組織(ステージ4)においては、KLHL5蛋白質の発現量が、大腸癌組織の「上層」では弱く、「中層」から「下層」にかけて増強していることが判明した。
【0169】
(考察)
上記の結果、及び試験例13の結果から、「KLHL5蛋白質」が、単なる「大腸癌マーカー」としてのみならず、大腸癌のステージの判定基準の1つとしても使用可能な、優れたマーカーとして使用可能であることが裏付けられた。
【0170】
[試験例15:KLHL5蛋白質の進行性・転移性大腸癌マーカーとしての利用可能性の統計学的確認(1)]
後述する[ヒト進行大腸癌組織の上層、中層、下層の分類法及びKLHL5蛋白質発現強度の数値化の定義]に従い、KLHL5の発現を数値化し、「大腸腺腫(adenoma)」、「大腸癌(adenocarcinoma)」、「大腸癌転移巣(metastatic lesion)」におけるKLHL5の発現を統計学的に解析した。
尚、「大腸癌」については、深達度に応じ、下記3つのカテゴリーに階層化した。
「早期大腸癌」(「粘膜内癌;m癌」、「粘膜下層癌;sm癌」)
「進行癌:advanced」
【0171】
(プロトコル)
パラフィン包埋されたヒト大腸病変切除標本(腺腫4例、m癌5例、sm癌2例、進行癌33例、転移巣9例)を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色によりKLHL5の発現を検証した。
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は、後述する[ヒト進行大腸癌組織の上層、中層、下層の分類法及びKLHL5蛋白質発現強度の数値化の定義]に従い、KLHL5蛋白質の発現を数値化し、大腸腺腫、早期大腸癌(m癌、sm癌)、進行大腸癌、大腸癌転移巣におけるKLHL5蛋白質の発現量(各症例数における平均値+標準誤差)を、統計学的に解析した。
【0172】
(結果)
図15から分かる通り、「進行癌」では、「早期癌(m癌、sm癌)」と比較して有意にKLHL5蛋白質の発現が増強していた。また「進行癌」では「大腸腺腫」はもちろんのこと、「大腸癌転移巣」と比較しても有意にKLHL5蛋白質の発現が増強していた。
【0173】
(考察)
上記の結果から、KLHL5蛋白質が、単なる大腸癌マーカーとしてのみならず、大腸癌のステージの判定にも使用可能であることや、肺癌、肝臓癌等の、大腸癌由来の転移癌又は浸潤癌をも検出可能な、優れたマーカーとしても使用可能であることが、数値的に裏付けられた。
尚、「大腸癌転移巣」におけるKLHL5蛋白質発現量が、「進行癌」と比較して、優位に少なかったのは、転移巣に癌が転移して間もないためと考えられる。
【0174】
[試験例16:KLHL5蛋白質の進行性・転移性大腸癌マーカーとしての利用可能性の統計学的確認(2)]
進行大腸癌の「上層」、「中層」、「下層」におけるKLHL5蛋白質の発現を、統計学的に解析した。
【0175】
(プロトコル)
パラフィン包埋されたヒト進行大腸癌33検体を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色によりKLHL5の発現を検証した。
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は後述する[ヒト進行大腸癌組織の「上層」、「中層」、「下層」の分類法及びKLHL5蛋白質発現強度の数値化の定義]に従い、KLHL5蛋白質の発現量(各部位における33検体の平均値+標準誤差)を数値化し、進行大腸癌の「上層」、「中層」、「下層」におけるKLHL5蛋白質の発現を、統計学的に解析した。
【0176】
(結果)
図16から分かる通り、進行大腸癌では、「上層」、「中層」と比較して「下層」で有意にKLHL5の発現が高いことが示された。
【0177】
(考察)
上記の結果から、KLHL5蛋白質が、単なる進行大腸癌マーカーとしてのみならず、転移・浸潤可能性の判定等にも使用可能であることが、数値的に裏付けられた。
【0178】
[試験例17:KLHL5遺伝子(mRNA)の大腸癌マーカーとしての利用可能性の統計学的確認(1)]
公開データベース(Oncomine, https://www.oncomine.org/)の情報を用いて、「大腸癌組織」及び「大腸腺腫組織」におけるKLHL5 mRNA発現量を解析した。
【0179】
(プロトコル)
既知の解析方法である公開データベース(Oncomine, https://www.oncomine.org/)の情報を用いて、「大腸癌組織」及び「大腸腺腫組織」におけるKLHL5 mRNA発現量を解析し、記載数値及びP-valueを評価した。
公開データベースは、Skrzypczak(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE20916)らのデータを利用し、Oncomine 3.0 softwearを用いて統計学的な解析を行った。
【0180】
(結果)
図17から分かる通り、既知の遺伝子情報からも、「大腸癌組織」では、「大腸腺腫組織」と比較して、有意にKLHL5 mRNAの発現が高いことが、本試験例によって確認できた。
【0181】
(考察)
上記の結果からも、KLHL5遺伝子が、大腸癌マーカーとして有用であることが裏付けられた。
【0182】
[試験例18:KLHL5遺伝子(mRNA)の大腸癌マーカーとしての利用可能性の統計学的確認(2)]
公開データベース(Oncomine, https://www.oncomine.org/)の情報を用いて、「大腸癌組織」及び「正常の大腸組織」におけるKLHL5 mRNA発現量を解析した。
【0183】
(プロトコル)
試験例17と同様の方法で、「大腸癌組織」及び「正常大腸組織」におけるKLHL5 mRNA発現量を解析し、記載数値及びP-valueを評価した。
【0184】
(結果)
図18から分かる通り、既知の遺伝子情報からも、「大腸癌組織」では「正常大腸組織」と比較して、有意にKLHL5 mRNAの発現が高いことが示された。
【0185】
(考察)
上記の結果からも、KLHL5遺伝子が、大腸癌マーカーとして有用であることが裏付けられた。
【0186】
[試験例19:KLHL5遺伝子(mRNA)の大腸癌マーカーとしての利用可能性の統計学的確認(3)]
公開データベース(Prognoscan, https://www.prognoscan.org/)の情報を利用し、大腸癌組織におけるKLHL5 mRNA発現と無病生存率の相関をKaplan-Meier法を用い解析した。
【0187】
(プロトコル)
既知の解析方法である公開データベース(Prognoscan, https://www.prognoscan.org/)の情報を用い、大腸癌組織における「KLHL5 mRNA発現量」と「無病生存率」の相関をKaplan-Meier法を用い解析した。
公開データベースは、Jorissen RNら(Clin Cancer Res. 2009 Dec 15;15(24):7642-7651.)及び、Smith JJら(Gastroenterology. 2010 Mar;138(3):958-68. doi: 10.1053/j.gastro.2009.11.005. Epub 2009 Nov 13. , Gastroenterology. 2012 Mar;142(3):562-571.e2. doi: 10.1053/j.gastro.2011.11.026. Epub 2011 Nov 22.)の報告に記載のものを使用した。
【0188】
(結果)
図19から分かる通り、KLHL5 mRNA高発現群(図中の下のライン)では、KLHL5 mRNA低発現群(図中の上のライン)と比較して統計学的に有意に「無病生存率」が低下していた。
【0189】
(考察)
上記の結果からも、KLHL5遺伝子が、大腸癌マーカーとして有用であることが裏付けられた。
【0190】
[ヒト進行大腸癌組織の上層、中層、下層の分類法及びKLHL5蛋白質発現強度の数値化の定義]
図20-1は、ヒト進行大腸癌組織の上層、中層、下層の分類法、
図20-2はKLHL5蛋白質強度の数値化の定義について示した図である。
【0191】
図に示すように大腸癌組織の表層から最深部までの距離を計測し、3分割し、上層、中層、下層に分類した。
KLHL5蛋白の発現強度については、免疫染色を行った大腸癌組織を用い、KLHL5蛋白陽性細胞数の計測及び染色濃度の評価により数値化した。
【0192】
【0193】
(上記配列中、小文字はRNA、大文字はDNAを表す。)
【0194】
【産業上の利用可能性】
【0195】
上記実施例の結果等から分かる通り、本発明は、癌の予防又は治療あるいは早期発見等に、非常に有用なものである。
【配列表】