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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】食品洗浄システム
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/02 20060101AFI20230906BHJP
   E03C 1/18 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A23N12/02 Q
E03C1/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019163891
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021040509
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000132792
【氏名又は名称】株式会社タイガーカワシマ
(73)【特許権者】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 誠蔵
(72)【発明者】
【氏名】山森 章生
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 文伸
(72)【発明者】
【氏名】辻井 恵一
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0139701(US,A1)
【文献】特開2010-200658(JP,A)
【文献】特開2008-306969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/02
E03C 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を洗浄するための洗浄水を貯留可能な複数の洗浄槽と、前記洗浄水を圧送可能な給水ポンプと、を備え、前記食品を複数回にわたって洗浄する、食品洗浄システムであって、
前記複数の洗浄槽は、
前記食品を順次移して複数回洗浄するように隣接して配列され、
前記複数の洗浄槽のうちの前記食品の初回の洗浄を行うための初回洗浄槽は、
当該初回洗浄槽の内部に向けて前記給水ポンプから圧送される前記洗浄水と空気との混合流を噴射する一つの洗浄ノズルを、当該初回洗浄槽の槽壁のうちの当該食品洗浄システムで洗浄作業する作業者に最も近接する作業側槽壁に沿ってし、
前記洗浄ノズルは、
前記初回洗浄槽の深さ方向における当該洗浄ノズルの位置を変更可能に構成されるとともに、前記位置を変更することによって当該洗浄ノズルから噴射される前記混合流による前記洗浄水の対流向きを変更する、
食品洗浄システム。
【請求項2】
請求項1に記載の食品洗浄システムにおいて、
前記洗浄ノズルは、
前記深さ方向における上方の位置であって、当該洗浄ノズルから噴射された前記混合流が、前記洗浄槽に貯留された前記洗浄水の水面近くを経て水底に向かう対流向きに流れることになる、第1の位置と、
前記深さ方向における下方の位置あって、当該洗浄ノズルから噴射された前記混合流が、前記洗浄槽に貯留された前記洗浄水の水底近くを経て水面に向かう対流向きに流れることになる、第2の位置と、
を選択的に変更可能に構成される、
食品洗浄システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の食品洗浄システムにおいて、
前記複数の前記洗浄槽のうちの前記食品の最終回の洗浄を行うための最終洗浄槽は、
前記洗浄ノズルを有さず、当該最終洗浄槽に貯留された前記洗浄水で前記食品を洗浄する、
食品洗浄システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の食品洗浄システムにおいて、
前記洗浄ノズルは、
前記混合流を噴射する噴射口を有し、当該洗浄ノズルの前記位置を変更することによって前記初回洗浄槽の深さ方向における前記噴射口の位置を変更する
食品洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を洗浄可能な食品洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、学校給食の調理施設などにおいて、多量の野菜や果実などを洗浄するための食品洗浄システムが提案されている。この種の食品洗浄システムは、例えば、洗浄水を貯めた複数の洗浄槽を一列に並べるように配置し、食品(野菜など)を複数の洗浄槽を順次経由させながら、作業者の手作業で食品を複数回にわたって洗浄するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-057648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の食品洗浄システムは、例えば、食品を1槽目の洗浄槽内に入れ、洗浄槽内の食品を作業者が手作業で洗浄し、その後次の洗浄槽へ移して洗浄することで複数回洗浄するようになっている。しかし、特に、多量の食品を洗浄する場合や、食品に多量の汚れが付着している場合、適正な洗浄を行うことが難しく、汚れや異物が付着したまま次の洗浄槽へ移され、複数回の洗浄を経てもなお食品が適正に洗浄されない可能性がある。即ち、いわゆる洗い残しが生じる可能性がある。また、作業効率の維持や、長時間にわたって適正な洗浄を維持する観点などから、作業者による洗浄作業の負荷を出来る限り軽減することが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業者の洗浄負荷を軽減し、食品の適正な洗浄が可能な食品洗浄システム、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る食品洗浄システムは、下記[1]~[4]を特徴としている。
[1]
食品を洗浄するための洗浄水を貯留可能な複数の洗浄槽と、前記洗浄水を圧送可能な給水ポンプと、を備え、前記食品を複数回にわたって洗浄する、食品洗浄システムであって、
前記複数の洗浄槽は、
前記食品を順次移して複数回洗浄するように配列され、
前記複数の洗浄槽のうちの前記食品の初回の洗浄を行うための初回洗浄槽は、
当該初回洗浄槽の内部に向けて前記給水ポンプから圧送される前記洗浄水と空気との混合流を噴射する洗浄ノズルを有する、
食品洗浄システムであること。
[2]
上記[1]に記載の食品洗浄システムにおいて、
前記初回洗浄槽は、
前記洗浄ノズルから噴射される前記混合流による前記洗浄水の対流向きを変更可能に構成される、
食品洗浄システムであること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の食品洗浄システムにおいて、
前記複数の前記洗浄槽のうちの前記食品の最終回の洗浄を行うための最終洗浄槽は、
前記洗浄ノズルを有さず、当該最終洗浄槽に貯留された前記洗浄水で前記食品を洗浄する、
食品洗浄システムであること。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の食品洗浄システムにおいて、
前記洗浄ノズルは、
前記混合流を噴射する噴射口を有し、前記初回洗浄槽の深さ方向における前記噴射口の位置を変更可能に構成され、且つ、前記初回洗浄槽の槽壁のうちの当該食品洗浄システムを用いる作業者に最も近接する作業側槽壁に設けられる、
食品洗浄システムであること。
【0007】
上記[1]の構成の食品洗浄システムによれば、汚れや異物が多く付着した食品(例えば野菜など)が最初に投入される初回洗浄槽において、洗浄ノズルにより、洗浄槽内の食品に向けて洗浄水と空気との混合流(以下「気液混合噴流」という。)が噴射される。この気液混合噴流により、洗浄槽内において洗浄水を対流させるとともに、気液混合噴流そのものが複雑な乱流を形成することで、食品が洗浄槽内で撹拌されることによる洗浄作用が発生し、食品から汚れや異物がより効果的に分離される。換言すると、作業者による洗浄作業に加えて気液混合噴流の対流による洗浄効果が補助的に加わり(洗浄補助効果)、作業者の手作業による洗浄作業を行う洗浄槽であっても、より効果的に食品が洗浄された状態となる。このように大部分の汚れが除去される予備的な洗浄を初回洗浄槽で行うことで、初回洗浄槽での作業者の負荷を低減しながら、2回目以降の洗浄において洗い残しが生じる可能性を小さくすることができる。
【0008】
したがって、上記構成の食品洗浄システムは、食品に多量の汚れが付着している場合であっても、従来のシステムに比べ、作業者による洗浄作業の負荷を小さくしながら、食品を適正に洗浄できる。
【0009】
なお、洗浄ノズルを有する洗浄槽は初回洗浄槽に限られず、2回目以降の洗浄を行う洗浄槽にも同様に洗浄ノズルを設けてもよい。
【0010】
上記[2]の構成の食品洗浄システムによれば、例えば食品の比重などに応じて洗浄水の対流向きを変更する(例えば、比重が小さく洗浄水に浮く食品に対しては水面近くの洗浄水の流れを強くして水底に向け対流する向きとし、比重が大きく洗浄水に沈む食品に対しては水底近くの洗浄水の流れを強くして水面に向け対流する向きとする)ことで、食品の浮き沈みする種類によらず、いずれにおいても気液混合噴流による洗浄補助効果を適正に発揮できる。また、例えば、洗浄槽の水底から水面に向かうように洗浄水を対流させれば、比重が大きく洗浄水に沈む食品を洗浄する際、食品を水底から水面に向けて自然に移動させることができる。これにより、作業者が食品を水底から取り上げる作業が軽減され、洗浄作業の作業性が向上し、洗い残しを更に適正に抑制できる。
【0011】
上記[3]の構成の食品洗浄システムによれば、初回洗浄槽により予備的な洗浄が行われており、最終洗浄槽に食品が到達するまでに食品を十分に洗浄可能であるため、最終洗浄槽に洗浄ノズルを設けなくても、食品の適正な洗浄が可能である。これにより、最終洗浄槽では貯留された洗浄水で食品を洗浄することから、給水ポンプや接続される配管類も不要となるため、食品洗浄システムの製造コストを低減でき、食品洗浄システムを駆動させるための電力なども低減できる。
【0012】
上記[4]の構成の食品洗浄システムによれば、洗浄ノズルの噴射口の位置を深さ方向において変更可能にすることで、洗浄ノズルから噴射される混合流による洗浄水の対流向きを変更している。更に、作業者に近接する作業側槽壁に洗浄ノズルが設けられるため、噴射口の位置を変更する作業を、作業者の手元で容易に行うことが可能となる。よって、本構成の食品洗浄システムは、洗浄水の対流向きを容易に変更できるため、食品の浮き沈みする種類によらず、適切に食品を洗浄することができる。また、洗浄槽の深さ方向の異なる位置に多数の噴射口をあらかじめ配列する場合に比べ、装置の全体的な構造を単純化でき、製造コストやメンテナンス性を向上できる。
【0013】
さらに、作業側槽壁に洗浄ノズルが設けられているので、洗浄ノズルに接続される配管が作業者側(前側)に集約されるため、洗浄槽が左右方向に隣接して配列されても、作業者側から配管まで簡単にアクセスでき、メンテナンスを良好に行うことができる。
【0014】
なお、洗浄ノズルの噴射口の位置は、洗浄槽の深さ方向において多段階に変更可能であってもよいし、無段階に変更可能であってもよい。また、洗浄ノズル自身が深さ方向に移動することで噴射口の深さ方向における位置が変更されてもよいし、洗浄ノズルが所定の深さ位置に保持されたまま回転することで噴射口の位置が深さ方向に変更されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、作業者の洗浄負荷を軽減し、食品の適正な洗浄が可能な食品洗浄システムを提供できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る食品洗浄システムに含まれる食品洗浄装置の斜視図である。
図2図2(a)は、図1に示す食品洗浄装置の上面図であり、図2(b)は、図2(a)のA-A断面図であり、図2(c)は、図1に示す食品洗浄装置の正面図である。
図3図3(a)は、洗浄槽に設けられた洗浄ノズルを透視する図2(c)の部分拡大図であり、図3(b)は、図3(a)のB-B断面図である。
図4図4は、図1に示す食品洗浄装置に設けられた洗浄ノズルの斜視図である。
図5図5は、図4のC-C断面図である。
図6図6(a)は、洗浄ノズルが上段に位置する状態を説明するための斜視図であり、図6(b)は、上段に位置する洗浄ノズルから気液混合噴流が噴射される場合において洗浄槽内にて洗浄水が対流(循環)する様子を示す図3(b)に相当する断面図である。
図7図7(a)は、洗浄ノズルが下段に位置する状態を説明するための斜視図であり、図7(b)は、下段に位置する洗浄ノズルから気液混合噴流が噴射される場合において洗浄槽内にて洗浄水が対流(循環)する様子を示す図3(b)に相当する断面図である。
図8図8は、図1に示す食品洗浄装置の洗浄槽に整流板を装着した状態を示す斜視図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る食品洗浄システムの斜視図である。
図10図10は、図9に示す食品洗浄システムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る食品洗浄システム3(図9及び図10参照)、及び、食品洗浄システム3に含まれる食品洗浄装置1(図1参照)について説明する。食品洗浄装置1は、食品洗浄シンク2(図9及び図10参照)による作業者の手作業による洗浄作業の前に、食品(典型的には、野菜や果実)を予備的に洗浄するための装置である。食品洗浄システム3は、食品洗浄装置1及び食品洗浄シンク2を組み合わせることで構成される食品洗浄のための一連のシステムである。以下、まず、食品洗浄装置1について説明する。
【0019】
以下、説明の便宜上、図1に示すように、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。食品洗浄装置1を用いる作業者は、食品洗浄装置1の前側に立って作業を行う。
【0020】
<食品洗浄装置の構成>
図1に示すように、食品洗浄装置1は、略直方体状のシンク11を備える。シンク11は、例えば、ステンレスなどの金属で構成されている。シンク11は、複数の棒状部材を組み合わせて構成された架台12の上に載置されている。シンク11が架台12の上に載置されていることで、シンク11の高さが、作業者による作業に適した高さになるように調整されている。
【0021】
シンク11には、上方に開口し且つ略直方体状に下方に窪んだ洗浄槽13が形成されている。洗浄槽13は、食品を洗浄するための洗浄水を貯留する機能を果たす。洗浄槽13の左側には、隔壁14を隔てて洗浄槽13に隣接するように、上方に開口し且つ略直方体状に下方に窪んだサブタンク15(図2も参照)が形成されている。
【0022】
隔壁14の前後方向に延びる上端縁の前後方向中央部には、矩形状に下方に窪んだ連通口16が形成されている。連通口16には、多数の細孔が形成された矩形平板状のカバー17が嵌め込まれている。洗浄槽13内に貯留されている洗浄水の水面の高さが連通口16の下端縁の高さを上回ると、洗浄槽13内の洗浄水が、カバー17の多数の細孔を介してサブタンク15に流入するようになっている。なお、カバー17の細孔は、食品は通過しないが浮遊する食品の汚れや異物は通過する程度の大きさとなっている。
【0023】
シンク11における洗浄槽13の後側に位置する天板には、給水蛇口18及び給湯蛇口19が、所定間隔を開けて左右方向に並ぶように設けられている。給水蛇口18は、洗浄槽13に水道水(上水)を洗浄水として供給する機能を果たし、給湯蛇口19は、洗浄槽13に加熱された(水道水より温度が高い)洗浄水を供給する機能を果たす。
【0024】
給水蛇口18及び給湯蛇口19にはそれぞれ、給水配管21及び給湯配管22の一端が接続されている(図1及び図2参照)。給水配管21及び給湯配管22の各々は、金属製の配管であり、上記一端から、シンク11の背面近傍及び下面近傍を通過して、シンク11の前端面の下方位置(よって、作業者の足元近傍位置)まで延びている。給水配管21及び給湯配管22の他端はそれぞれ、給水源に繋がる配管(図示省略)及び給湯源に繋がる配管(図示省略)に接続されている。
【0025】
給水配管21及び給湯配管22の他端近傍にはそれぞれ、給水量調整用のフットペダル23及び給湯量調整用のフットペダル24が設けられている。作業者がフットペダル23及びフットペダル24を個別に操作することで、給水蛇口18から洗浄槽13への給水量及び給湯蛇口19から洗浄槽13への給湯量を個別に調整可能となっている。
【0026】
洗浄槽13の矩形状の底面には、図1及び図2(a)に示すように、多数の細孔が形成された矩形平板状の簀子(すのこ)25が載置されている。洗浄により沈殿する食品の汚れや異物が、簀子25の下方に沈降し、食品に再付着するのを防止するようになっている。洗浄槽13の底面の中央部には、図2(a)及び図2(c)に示すように、開閉機構付きの排出口26が設けられている。排出口26を開状態とすることで、洗浄槽13に貯留されている洗浄水を外部に排出可能となっている。
【0027】
サブタンク15の底面には、図2(b)に示すように、筒状の排出管27が上方に向けて立設されている。排出管27の上端開口の高さは、連通口16の下端縁の高さより低く、サブタンク15に貯留されている洗浄水の水面の高さが排出管27の上端開口の高さを上回ると、サブタンク15内の洗浄水が、排出管27を介して外部に排出可能となっている。つまり、サブタンク15の水面は、洗浄槽13の水面より低く設定されている。サブタンク15の上部開口は、図1及び図2(a)に示すように、多数の細孔が形成された着脱自在の矩形平板状のカバー28によって塞がれている。サブタンク15の底面における排出管27に隣接する位置には、ストレーナ31で覆われた吸水口29が設けられている。
【0028】
吸水口29の下方の架台12の左端部の所定箇所には、図2(b)に示すように、給水ポンプであるポンプ32が設けられている。ポンプ32は、洗浄水を吸入する吸水部33と、吸入した洗浄水を吐出する吐出部34とを備えている。図2(c)に示すように、吸水部33は、前側に向け開口し、金属製の吸水配管35によってサブタンク15の吸水口29と接続されている。よって、ポンプ32は、サブタンク15に貯留されている洗浄水を、吸水口29及び吸水配管35を介して吸入可能となっている。
【0029】
吐出部34には、金属製の吐出配管36の一端が接続され、吐出配管36の他端は、洗浄槽13の接続口37に接続されている。接続口37は、洗浄槽13の左側の内面を画成する前後方向に延びる槽壁の前端部の上側位置に設けられている。接続口37は、洗浄槽13に設けられた後述する洗浄ノズル39に接続されている。よって、ポンプ32は、サブタンク15から吸入した洗浄水を、吐出配管36及び接続口37を介して洗浄ノズル39に供給可能となっている。なお、ポンプ32が架台12の左端部の所定箇所に設けられ、吸水部33が前側に向け開口していることにより、ポンプ32のメンテナンス時、前側または左側からポンプ32のメンテナンス作業がし易くなっている。なお、接続口37がシンク11の前側に位置しており、ポンプ32の吸水部33、吐出部34も前側に位置しているため、吸水配管35や吐出配管36がシンク11の前側に集約され、食品洗浄装置1の前側からメンテナンス作業が行い易くなっている。
【0030】
洗浄ノズル39は、図3図6及び図7に示すように、洗浄槽13の前側を画成する左右方向に延びる作業側槽壁38の内面側に設けられる。洗浄ノズル39は、図4及び図5に示すように、左右方向に直線状に延びる矩形筒状のノズルヘッダ41を備える。ノズルヘッダ41の両端部にはそれぞれ、ノズルヘッダ41の端部開口を塞ぐようにキャップ42が着脱可能に設けられている。キャップ42を外すことで、ノズルヘッダ41の内部の清掃作業が可能となっている。
【0031】
ノズルヘッダ41の後壁41aには、ノズルヘッダ41の内外を連通する吐出小孔43(図5参照)が、ノズルヘッダ41の長手方向に沿って所定間隔を空けて一列に並ぶように複数(本例では、4つ)設けられている。複数の吐出小孔43は、ノズルヘッダ41の長手方向の中央位置に対して長手方向に対称となる位置に配置されている。ノズルヘッダ41の後壁41aにおける各吐出小孔43に対応する位置にはそれぞれ、筒状のノズルパイプ44が後方に突出するように設けられている。図5に示すように、各ノズルパイプ44は、対応する吐出小孔43を介してノズルヘッダ41の内部空間と連通している。
【0032】
ノズルパイプ44の先端開口は、ノズル噴射口45として機能する。各ノズルパイプ44の側壁の最上端部には、図5に示すように、ノズルパイプ44の内外を連通する空気導入口46が設けられている。各ノズルパイプ44の側壁における空気導入口46に対応する位置には、筒状の空気導入パイプ47が上方に突出するように設けられている。各空気導入パイプ47は、対応する空気導入口46を介して対応するノズルパイプ44の内部空間と連通している。
【0033】
ノズルヘッダ41の長手方向中央位置には、図4に示すように、ホース接続口48が設けられている。ホース接続口48は、図6及び図7に示すように、可撓性を有するホース49を介して接続口37と接続されている。よって、ホース49が柔軟に変形し得ることを利用して、洗浄ノズル39がホース49によってホース接続口48と接続された状態を維持しながら、洗浄ノズル39を移動可能となっている。なお、図3(a)及び図3(b)では、ホース49の図示が省略されている。
【0034】
以上の構成により、ポンプ32は、吐出配管36、接続口37、ホース49、ホース接続口48を介して、ノズルヘッダ41に洗浄水を供給する。ノズルヘッダ41に供給された洗浄水は、各吐出小孔43及びノズルパイプ44を介して、各ノズル噴射口45から水流51として後方へ吐出される(図5参照)。その際、ノズルパイプ44内の水流の発生に起因して、各空気導入パイプ47及び空気導入口46を経て、各ノズルパイプ44内に空気が吸引される。各ノズルパイプ44内に吸引された空気は、各ノズル噴射口45から気泡52(図5参照)として後方へ吐出される。この結果、各ノズル噴射口45から、洗浄水と空気との混合流(以下「気液混合噴流」という。)が後方へ噴射される。
【0035】
なお、ホース接続口48がノズルヘッダ41の長手方向中央位置に配置されていること、並びに、複数の吐出小孔43がノズルヘッダ41の長手方向の中央位置に対して長手方向に対称となる位置に配置されていること、に起因して、複数(4つ)の吐出小孔43に発生する吐出圧力は略均一となる。このため、複数(4つ)のノズル噴射口45から噴射される気液混合噴流の噴射圧も略均一となる。
【0036】
洗浄ノズル39は、本例では、図6(a)に示す上段と、図7(a)に示す下段と、の何れかの位置に選択的に固定されるようになっている。具体的には、洗浄槽13の左側の内面13a(図3(a)も参照)には、上段及び下段にそれぞれ対応する位置に、ノズルヘッダ41の左端部を装着する矩形状の箱状金具53A及び箱状金具53Bが固定されている。箱状金具53A,53Bは同形であり、後側に面する側面が内面13aから突出する高さを他の側面が内面13aから突出する高さよりもやや低くしてノズルヘッダ41の左端部を後側から差し込み易くしている。同様に、洗浄槽13の右側の内面13b(図3(a)を参照)には、上段及び下段にそれぞれ対応する位置に、ノズルヘッダ41の右端部を装着する矩形状の上向き金具54A及び上向き金具54Bが固定されている。上向き金具54A,54Bは同形であり、上側に面する側面を開放してノズルヘッダ41の右端部を上側から差し込むようにしている。
【0037】
洗浄ノズル39を上段の位置に固定するには、まず箱状金具53Aにノズルヘッダ41の左端部を差し込み装着し、その後に上向き金具54Aにノズルヘッダ41の右端部を差し込み装着することで、図6(a)に示すように、洗浄ノズル39が上段に位置するように洗浄槽13に固定される。また、洗浄ノズル39を下段の位置に固定するには、箱状金具53Bにノズルヘッダ41の左端部を差し込み装着し、その後に上向き金具54Bにノズルヘッダ41の右端部を差し込み装着することで、図7(a)に示すように、洗浄ノズル39が下段に位置するように洗浄槽13に固定される。洗浄ノズル39を取り外すときは、どちらも逆の手順により取り外すことができる。
【0038】
このように、洗浄ノズル39のノズルヘッダ41は洗浄槽13から簡単な操作で着脱できるため、上段位置と下段位置との変更を容易に素早く行うことができる。また、洗浄ノズル39の位置を上段及び下段の一方から他方へ変更するとき、複数のノズル噴射口45が設けられたノズルヘッダ41を上下に移動させるため、複数のノズル噴射口45の位置を一括して変更することができる。更に、可撓性のホース49が柔軟に変形し得るため、ノズルヘッダ41にホース49を連結した状態のままでノズルヘッダ41を移動させられる。更に、作業者に近接する作業側槽壁38の内面側に沿って洗浄ノズル39が設けられているため、作業者の近くで洗浄ノズル39を操作できることから、洗浄ノズル39(ノズル噴射口45)の位置を変更する作業を、容易に行うことが可能となる。
【0039】
洗浄槽13の作業側槽壁38の内面側には、図2(a)、図3(a)、図3(b)、図6(b)及び図7(b)に示すように、洗浄ノズル39が上段及び下段の何れに位置する場合においても、洗浄ノズル39を覆うノズルカバー55が設けられ、作業者が洗浄作業中に不意に触れたり、食品が衝突または絡み付くのを防止している。ノズルカバー55には、図3(a)及び図3(b)に示すように、上段に位置する洗浄ノズル39の4つのノズル噴射口45の位置、及び、下段に位置する洗浄ノズル39の4つのノズル噴射口45の位置、の双方と対向する位置に、合計8つの開口56が形成されている。よって、洗浄ノズル39が上段及び下段の何れに位置する場合においても、各ノズル噴射口45から後方に噴射された気液混合噴流は、ノズルカバー55の対応する開口56を介して洗浄槽13の内部に吐出される。この他に、上段側にのみ開口56を形成した上段用のノズルカバー(図示なし)、下段側にのみ開口56を形成した下段用のノズルカバー(図示なし)をそれぞれ用意して装着するようにしてもよい。
【0040】
図1及び図3(a)に示すように、シンク11における洗浄槽13及びサブタンク15の後側に位置する天板の後端部には、左右方向の全域に亘って上方に突出する平板状のバックガード57が設けられている。バックガード57の前面には、ポンプスイッチ58が設けられている。ポンプスイッチ58は、電線(図示省略)を介してポンプ32の制御部(図示省略)と電気的に接続されている。ポンプスイッチ58を操作することで、ポンプ32の作動・停止を選択できるようになっている。
【0041】
図1及び図3(a)に示すように、吐出配管36の所定位置には、噴射調整バルブ59が設けられている。噴射調整バルブ59を操作することで、吐出配管36を通過する洗浄水の流量(各ノズル噴射口45から噴射される水流51の流量)が調整され、気液混合噴流による洗浄の強さを調整することができる。以上、図1に示す食品洗浄装置1の構成について説明した。
【0042】
<食品洗浄装置の作動>
次いで、作業者の手作業による洗浄作業の際に、作業者が食品洗浄装置1を用いて野菜を洗浄する動作について簡単に説明する。
【0043】
作業者は、まず、フットペダル23及びフットペダル24を個別に操作することで、給水蛇口18から洗浄槽13への給水量及び給湯蛇口19から洗浄槽13への給湯量を個別に調整して洗浄槽13への注水を開始し、洗浄槽13及びサブタンク15内にそれぞれ、所望の温度且つ所望の量の洗浄水を貯留する。サブタンク15への注水は、洗浄槽13が満水となり、水面の高さが連通口16の下端縁の高さを上回った洗浄水が、カバー17の多数の細孔を介してサブタンク15に流入することで行われる。なお、洗浄槽13への注水はポンプ32の作動後も継続して注水するとよい。
【0044】
そして、洗浄槽13及びサブタンク15が満水になるのを確認したら、ポンプスイッチ58を操作してポンプ32を作動させる。洗浄ノズル39から洗浄槽13内に洗浄水が気液混合噴流として噴射され、洗浄可能な状態となる。そして、野菜を洗浄槽13に投入すると、気液混合噴流とともに洗浄槽13内で対流するようになる。
【0045】
投入された野菜は、作業者による洗浄作業に加え、対流による撹拌効果により汚れや異物が分離され洗浄される。洗浄槽13内の洗浄水は、野菜の汚れや異物と共に連通口16からサブタンク15へ流れ落ち、再びポンプ32に吸入される。このようにして、洗浄水は洗浄槽13とポンプ32との間で循環するようになっている。洗浄水がサブタンク15に流れ落ちる際、汚れや異物を受け取るストレーナを設けるとさらによい。
【0046】
まず、図6(a)に示すように、洗浄ノズル39が上段に位置する場合について説明する。ノズル噴射口45は、図6(b)に示すように、洗浄槽13内の洗浄水の水面近くに位置する。ポンプスイッチ58を操作してポンプ32を作動させると、サブタンク15に貯留されている洗浄水が、ポンプ32により吸入されて、図6(b)に示すように、洗浄ノズル39の複数(4つ)のノズル噴射口45から気液混合噴流となって後方に噴射される。ノズル噴射口45から後方に噴射された気液混合噴流は、ノズルカバー55の開口56を介して洗浄槽13内の洗浄水の水面近くを後方へ移動する。この結果、気液混合噴流により、洗浄槽13内において、図6(b)に示すように洗浄水に対流が発生するとともに、気液混合噴流そのものが複雑な乱流を形成する。なお、図6(b)に示すように、洗浄ノズル39が上段に位置する場合、洗浄ノズル39に設けられた空気導入パイプ47の上端開口の高さは、洗浄槽13内の洗浄水の水面より高く、ノズルパイプ44に空気を吸引することができるようになっている。
【0047】
比重が小さく洗浄水に浮く野菜(例えば、葉物野菜)を洗浄槽13内に投入し洗浄する場合、洗浄ノズル39が上段に位置することが好適である。これにより、野菜が浮いている水面近くの位置にノズル噴射口45が位置することになり、浮いている野菜に向け気液混合噴流を直接噴射するようになる。この結果、作業者による洗浄作業を行うとともに、気液混合噴流による洗浄補助効果により、野菜を撹拌しながら野菜の洗浄を効果的に行うことができる。
【0048】
次いで、図7(a)に示すように、洗浄ノズル39が下段に位置する場合について説明する。この場合、下段に位置している洗浄ノズル39に設けられた各空気導入パイプ47に、空気導入パイプ47より長い延長パイプ61が装着される。これにより、図7(b)に示すように、洗浄ノズル39が下段に位置する場合においても、延長パイプ61の上端開口の高さは、洗浄槽13内の洗浄水の水面より高く、ノズルパイプ44に空気を吸引できるようになっている。
【0049】
延長パイプ61は、その内径が空気導入パイプ47の外径よりやや大きくなっており、空気導入パイプ47の外面に延長パイプ61を差し込むことで簡単に装着できるようにしているが、その他の手段で装着させてもよい。そして、延長パイプ61は、洗浄ノズル39が下段に位置する場合にのみ装着するものであり、洗浄ノズル39が上段に位置するときは取り外す。取り外した延長パイプ61は、別途用意した収納部に収納してもよい。
【0050】
更に、図7(b)及び図8に示すように、整流板62を洗浄槽13の後側領域に着脱可能な状態で装着している。整流板62には、簀子(すのこ)25のような多数の細孔が設けられていない。整流板62には、洗浄槽13内の洗浄水の水底側から水面側に近付くほどノズル噴射口45から後方に離れるように上下方向に対して傾斜する案内面63(平面)を有している。整流板62は、洗浄ノズル39が下段に位置する場合にのみ装着するものであり、洗浄ノズル39が上段に位置するときは取り外している。
【0051】
洗浄ノズル39が下段に位置する場合、ノズル噴射口45は、図7(b)に示すように、洗浄槽13内の洗浄水の水底近くに位置する。このため、ポンプスイッチ58を操作してポンプ32を作動させると、ノズル噴射口45から後方に噴射された気液混合噴流は、ノズルカバー55の開口56を介して洗浄槽13内の洗浄水の水底近くを後方へ移動する。この結果、図7(b)に示すように、案内面63の水底側の端部から水面側の端部に向けて案内面63を登るように、洗浄水に対流が発生する。
【0052】
比重が大きく洗浄水に沈む野菜(例えば、根菜)を洗浄槽13内に投入し洗浄する場合、洗浄ノズル39が下段に位置することが好適である。これにより、野菜が沈んでいる水底近くの位置にノズル噴射口45が位置することになり、沈んでいる野菜に向け気液混合噴流を直接噴射するようになる。この結果、作業者による洗浄作業を行うとともに、気液混合噴流による洗浄補助効果により、野菜を撹拌しながら野菜の洗浄を効果的に行うことができる。加えて、案内面63を登る洗浄水の対流を利用して、野菜を水底から水面に向けて自然に移動させることができる。これにより、作業者が野菜を取り出す際、洗浄水に沈んでいる野菜を水底から取り上げる作業も軽減され得る。
【0053】
このように、比重が小さく洗浄水に浮く野菜(例えば、葉物野菜)を洗浄する場合には、洗浄ノズル39を上段に位置させ、比重が大きく洗浄水に沈む野菜(例えば、根菜)を洗浄する場合には、洗浄ノズル39を下段に位置させることで、洗浄する野菜の種類が変わっても、同じ洗浄ノズル39を利用して野菜の洗浄を効果的に行うことができる。以上、図1に示す食品洗浄装置1について説明した。
【0054】
<食品洗浄システム>
図1に示す食品洗浄装置1は、図9及び図10に示す本実施形態に係る食品洗浄システム3の一部として使用される。図9及び図10に示す食品洗浄システム3では、図1に示す食品洗浄装置1の右側に第1の食品洗浄シンク2が隣接配置され、第1の食品洗浄シンク2の右側に第2の食品洗浄シンク2が隣接配置されている。第1及び第2の食品洗浄シンク2は同じ装置である。
【0055】
食品洗浄シンク2は、食品洗浄装置1に対して、ポンプ32、洗浄ノズル39、並びに、ポンプ32及び洗浄ノズル39に関係する全ての部品を除いたものである。よって、第1及び第2の食品洗浄シンク2では、給水蛇口18及び/又は給湯蛇口19から注水を行いながら、洗浄槽13に貯留した洗浄水にて作業者の手作業による野菜の洗浄が行われることになる。なお、連通口16の下端縁を上回った洗浄水は汚れや異物とともにサブタンク15に流入し外部へ排出される。そして、上記食品洗浄シンク2は上記の通り野菜を手作業で洗浄できればよく、例えば従来から使用されている食品洗浄用シンクでもよい。
【0056】
食品洗浄システム3では、まず、初回の洗浄を行う第1段階として、ポンプ32及び洗浄ノズル39を有する食品洗浄装置1の洗浄槽13に給水蛇口18及び/または給湯蛇口19から注水された洗浄水に野菜が投入され、作業者による洗浄作業に加えて気液混合噴流による洗浄補助効果により、野菜の洗浄が効果的に行われる。このとき、上述したように、洗浄ノズル39の位置は、上段及び下段のうち、投入される野菜の比重に応じて適切な位置に固定される。よって、野菜の浮き沈みする種類によらず、いずれにおいても気液混合噴流による洗浄補助効果を適正に発揮できる。この第1段階にて、野菜の汚れの大部分が除去されるため、食品洗浄システム3の第2、第3段階で洗浄する前の予備的な洗浄として野菜が洗浄される。
【0057】
次いで、第2段階として、食品洗浄装置1により予備的な洗浄が行われた野菜が、第1の食品洗浄シンク2の洗浄槽13に移され、作業者の手作業により野菜の洗浄が行われる。次いで、最終回の洗浄を行う第3段階として、第1の食品洗浄シンク2により洗浄が行われた野菜が、第2の食品洗浄シンク2の洗浄槽13に移され、作業者の手作業により、最終的なすすぎ洗浄が行われる。作業者が洗浄した野菜を回収し次の洗浄槽に移すとき、ざるや網かごを用いた方が効率的に作業できる場合は、特にその使用に制限はない。
【0058】
ここで、上述したように、第1段階にて野菜の汚れの大部分が既に除去されているので、第2、第3段階では、ポンプ32及び洗浄ノズル39を利用した気液混合噴流による洗浄補助効果を利用しなくても、作業者の手作業による洗浄のみで野菜を適正に洗浄することができる。換言すれば、第1段階で予備的な洗浄を行うことで、第1段階での作業者による洗浄作業の負荷を低減しながら、第2、第3段階において洗い残しが生じる可能性を小さくすることができる。更に、第1及び第2の食品洗浄シンク2には、ポンプ32及び洗浄ノズル39が設けられていないので、食品洗浄システム3の製造コストを低減でき、食品洗浄システム3を駆動させるための電力なども低減できる。
【0059】
<作用効果のまとめ>
以上、本実施形態に係る食品洗浄システム3によれば、汚れや異物が多く付着した食品(例えば野菜など)が最初に投入される初回洗浄槽において、洗浄ノズル39により、洗浄槽13内に入れられた食品に向けて洗浄水と空気との混合流(以下「気液混合噴流」という。)が噴射される。この気液混合噴流により、洗浄槽13内において洗浄水を対流させるとともに、気液混合噴流そのものが複雑な乱流を形成することで、洗浄槽13内で食品が撹拌されることによる洗浄作用が発生し、食品から汚れや異物がより効果的に分離される。換言すると、作業者による洗浄作業に加えて気液混合噴流の対流による洗浄効果が補助的に加わり(洗浄補助効果)、作業者の手作業による洗浄作業を行う洗浄槽であっても、より効果的に食品が洗浄された状態となる。このように大部分の汚れが除去される予備的な洗浄を初回洗浄槽13で行うことで、初回洗浄槽13での作業者の負荷を低減しながら、2回目以降の洗浄において洗い残しが生じる可能性を小さくすることができる。
【0060】
したがって、本実施形態に係る食品洗浄システム3は、食品に多量の汚れが付着している場合であっても、従来のシステムに比べ、作業者による洗浄作業の負荷を小さくしながら、食品を適正に洗浄できる。
【0061】
更に、本実施形態に係る食品洗浄システム3によれば、例えば、食品の比重などに応じて洗浄水の対流向きを変更する(例えば、比重が小さく洗浄水に浮く食品に対しては水面近くの洗浄水の流れを強くして水底に向け対流する向きとし、比重が大きく洗浄水に沈む食品に対しては水底近くの洗浄水の流れを強くして水面に向け対流する向きとする)ことで、食品の浮き沈みする種類によらず、いずれにおいても気液混合噴流による洗浄補助効果を適正に発揮できる。また、例えば、洗浄槽13の水底から水面に向かうように洗浄水を対流させれば、比重が大きく洗浄水に沈む食品を洗浄する際、食品を水底から水面に向けて自然に移動させることができる。これにより、作業者が食品を水底から取り上げる作業が軽減され、洗浄作業の作業性が向上し、洗い残しを更に適正に抑制できる。
【0062】
更に、本実施形態に係る食品洗浄システム3によれば、初回洗浄槽により予備的な洗浄が行われており、最終洗浄槽13に食品が到達するまでに食品を十分に洗浄可能であるため、最終洗浄槽13に洗浄ノズルを設けなくても、食品の適正な洗浄が可能である。これにより、最終洗浄槽では貯留された洗浄水で食品を洗浄することから、給水ポンプや接続される配管類も不要となるため、食品洗浄システムの製造コストを低減でき、食品洗浄システム3を駆動させるための電力なども低減できる。
【0063】
更に、本実施形態に係る食品洗浄システム3によれば、洗浄ノズル39のノズル噴射口45の位置を深さ方向において変更可能にすることで、洗浄ノズル39から噴射される混合流による洗浄水の対流向きを変更している。更に、作業者に近接する作業側槽壁38に洗浄ノズル39が設けられるため、ノズル噴射口45の位置を変更する作業を、容易に行うことが可能となる。さらに洗浄ノズルに接続される配管が作業者側(手前側)に集約されるため、洗浄槽が左右方向に隣接して配列されていても、メンテナンスを良好に行うことができる。よって、本実施形態に係る食品洗浄システム3は、食品を洗浄する作業の作業性を向上できる。また、洗浄槽の深さ方向の異なる位置に多数のノズル噴射口をあらかじめ配列する場合に比べ、装置の全体的な構造を単純化でき、製造コストやメンテナンス性を向上できる。
【0064】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0065】
例えば、上記実施形態では、洗浄ノズル39のノズル噴射口45の位置が、図6(a)に示す上段と、図7(a)に示す下段と、の何れかに選択的に変更可能となっている。これに対し、洗浄ノズル39のノズル噴射口45の位置が、深さ方向において多段階(3段階以上の段階)に変更可能であってもよいし、無段階に変更可能であってもよい。また、上記実施形態では、洗浄ノズル39自身が深さ方向に移動することでノズル噴射口45の深さ方向における位置が変更されている。これに対し、洗浄ノズル39が所定位置のまま(例えば、洗浄ノズル39が回転することで)ノズル噴射口45の開口位置や開口向きが深さ方向に変更されてもよい。
【0066】
更に、上記実施形態では、食品洗浄装置1を含む食品洗浄システム3において、ポンプ32及び洗浄ノズル39を有する単一の食品洗浄装置1と、ポンプ32及び洗浄ノズル39を有さない2つの食品洗浄シンク2とが、左右方向の一側から他側に一列に並ぶように順に隣接して配置されている。これに対し、ポンプ32及び洗浄ノズル39を有する2つの食品洗浄装置1と、ポンプ32及び洗浄ノズル39を有さない1つの食品洗浄シンク2とが、左右方向の一側から他側に一列に並ぶように順に隣接して配置されていてもよい。更には、左右方向の一側端にポンプ32及び洗浄ノズル39を有する食品洗浄装置1が配置され、左右方向の他側端にポンプ32及び洗浄ノズル39を有さない食品洗浄シンク2が配置される限りにおいて、4つ以上の食品洗浄装置及び食品洗浄シンクが左右方向の一側から他側に一列に並ぶように順に隣接して配置されていてもよい。
【0067】
更に、上記実施形態では、初回の洗浄を行う食品洗浄装置1のポンプ32を作動させた状態で、食品洗浄装置1の洗浄槽13で野菜を洗浄するようになっている。しかし、食品洗浄装置1自体は、ポンプ32を作動させない状態で、洗浄槽13に注水のみを行いながら野菜を手作業で洗浄するように用いることも可能である。そこで、複数の食品洗浄装置1を用いて(即ち、複数の食品洗浄装置1のみを用いて、又は、複数の食品洗浄装置1と一又は複数の食品洗浄シンク2とを用いて)食品洗浄システム3を構成した場合、複数回気液混合噴流により野菜を洗浄する事になるが、2回目以降の洗浄を行う食品洗浄装置1では、例えば野菜の汚れが少ない場合、ポンプ32を作動させず、気液混合噴流により洗浄する回数を減らした状態で野菜を洗浄してもよい。このように、食品洗浄システム3は、食品洗浄システム3を構成する食品洗浄装置1のポンプ32を、例えば野菜の汚れ具合に合わせて選択的に作動させ、気液混合噴流により野菜を洗浄する回数を増減させてもよい。
【0068】
ここで、上述した本発明に係る食品洗浄システム3の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
食品を洗浄するための洗浄水を貯留可能な複数の洗浄槽(13)と、前記洗浄水を圧送可能な給水ポンプ(32)と、を備え、前記食品を複数回にわたって洗浄する、食品洗浄システム(3)であって、
前記複数の洗浄槽(13)は、
前記食品を順次移して複数回洗浄するように配列され、
前記複数の洗浄槽(13)のうちの前記食品の初回の洗浄を行うための初回洗浄槽(13)は、
当該初回洗浄槽(13)の内部に向けて前記給水ポンプ(32)から圧送される前記洗浄水と空気との混合流を噴射する洗浄ノズル(39)を有する、
食品洗浄システム(3)。
[2]
上記[1]に記載の食品洗浄システム(3)において、
前記初回洗浄槽(13)は、
前記洗浄ノズル(39)から噴射される前記混合流による前記洗浄水の対流向きを変更可能に構成される、
食品洗浄システム(3)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の食品洗浄システム(3)において、
前記複数の前記洗浄槽(13)のうちの前記食品の最終回の洗浄を行うための最終洗浄槽(13)は、
前記洗浄ノズル(39)を有さず、当該最終洗浄槽(13)に貯留された前記洗浄水で前記食品を洗浄する、
食品洗浄システム(3)。
[4]
上記[1]~上記[3]に記載の食品洗浄システム(3)において、
前記洗浄ノズル(39)は、
前記混合流を噴射する噴射口(45)を有し、前記初回洗浄槽(13)の深さ方向における前記噴射口(45)の位置を変更可能に構成され、且つ、前記初回洗浄槽(13)の槽壁のうちの当該食品洗浄システム(3)を用いる作業者に最も近接する作業側槽壁(38)に設けられる、
食品洗浄システム(3)。
【符号の説明】
【0069】
3 食品洗浄システム
13 洗浄槽、初回洗浄槽、最終洗浄槽
18 給水蛇口(注水口)
19 給湯蛇口(注水口)
32 ポンプ(給水ポンプ)
39 洗浄ノズル
45 ノズル噴射口(噴射口)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10