(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】シートの配置方法及び配置装置
(51)【国際特許分類】
B26F 3/00 20060101AFI20230906BHJP
B26D 7/32 20060101ALI20230906BHJP
B26D 3/08 20060101ALI20230906BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20230906BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20230906BHJP
B65G 47/29 20060101ALI20230906BHJP
B65G 47/52 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B26F3/00
B26D7/32 Z
B26D3/08 Z
B26D7/18 A
B26D7/06 D
B65G47/29 D
B65G47/52 Z
(21)【出願番号】P 2020005104
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397068056
【氏名又は名称】古川機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】草間 博幸
(72)【発明者】
【氏名】小野 毅
(72)【発明者】
【氏名】大石 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】奈良 知幸
(72)【発明者】
【氏名】古川 高志
(72)【発明者】
【氏名】大熊 一生
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-222366(JP,A)
【文献】特開2006-321644(JP,A)
【文献】特開2018-203371(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190233(WO,A1)
【文献】特開2015-209343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0015228(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/01 - 7/32
B26D 3/08
B26F 3/00
B65G 47/29
B65G 47/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切込み部を有するシートを、切込み部で切断された状態で配置する方法であって、
前記切込み部を有する前記シートを形成するシート形成工程と、
第1ステージ上に載置された前記切込み部を有する前記シートと、前記第1ステージとの間に、移載ベルトが周設された移動板を送り出すことにより、前記移動板上に、前記移載ベルトを介して、前記切込み部を有する前記シートを掬い上げる掬上工程と、
前記移動板を送り戻すことにより、前記移動板上に掬い上げた、前記切込み部を有する前記シートを、第2ステージ上に切込みで切断された状態で配置する配置工程と、を有し、
前記掬上工程において、前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から移動板の主面側に繰り出しながら前記移動板の送り出しを行い、
前記配置工程において、前記移載ベルトを前記移動板の主面側から移動板の裏面側に繰り戻しながら前記移動板の送り戻しを行い、前記シートの前記切込み部が前記第2ステージ上に接触する前に送り戻しの速度を0.05~0.90倍に減速させることにより、前記切込み部で前記シートを切断しながら、前記第2ステージ上に前記切込み部で切断された状態で前記シートを配置する、
シートの配置方法。
【請求項2】
前記掬上工程において、前記移動板の先端辺と、前記シートの前記切込み部の切込み方向の少なくとも一部と、が略平行となるように、前記シートを掬い上げ、
前記配置工程において、前記移動板の先端辺と略平行となった前記シートの前記切込み部が前記移動板の先端辺上にきたときに、前記シートを切断しながら、前記第2ステージ上に前記切込み部で切断された状態で前記シートを配置する、
請求項1に記載のシートの配置方法。
【請求項3】
厚さ方向に0.1MPaの荷重をかけた場合の前記シートの圧縮率が、5~60%である、
請求項1又は2に記載のシートの配置方法。
【請求項4】
前記シートのアスカーC硬度が、50以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
【請求項5】
前記切込み部を有する前記シートは、前記切込みによって生じる面同士の少なくとも一部が接触したものである、
請求項1~4のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
【請求項6】
前記シート形成工程後、前記掬上工程前に、前記切込み部を有する前記シートを反らせる工程をさらに有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
【請求項7】
前記移載ベルトが、ポリエステルを含むフィルム又はポリエステル系繊維を含む織布である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
【請求項8】
前記移動板が、送り出される先端に、傾斜部を有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
【請求項9】
前記傾斜部が、前記移動板の主面に対して15~45°の角度で傾斜している、
請求項8に記載のシートの配置方法。
【請求項10】
前記移動板の厚みが、0.5~3.0mmである、
請求項1~9のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
【請求項11】
前記移動板の送り出される先端辺の先端の角Rが、0.25~2.0mmである、
請求項1~10のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
【請求項12】
切込み部を有するシートを載置する第1ステージと、
移動板と、
前記移動板をスライド移動するとともに該スライド移動の速度を調整する移動機構と、
前記移動板の移動方向に周設された移載ベルトと、
前記切込み部で切断された状態で前記シートを配置する第2ステージと、を備え、
前記移載ベルトは、前記移動機構が前記移動板を送り出した場合に、前記移動板の裏面側から移動板の主面側に繰り出され、前記移動機構が前記移動板を送り戻した場合に、前記移動板の主面側から移動板の裏面側に繰り戻されるように周設されたものであり、
前記移動機構は、前記シートの前記切込み部が前記第2ステージ上に接触する前に送り戻しの速度を0.05~0.90倍に減速させることにより、前記切込み部で前記シートを切断しながら、前記第2ステージ上に前記切込み部で切断された状態で前記シートを配置するものである、
シートの配置装置。
【請求項13】
厚さ方向に0.1MPaの荷重をかけた場合の前記シートの圧縮率が、5~60%である、
請求項12に記載のシートの配置装置。
【請求項14】
前記シートのアスカーC硬度が、50以下である、
請求項12又は13に記載のシートの配置装置。
【請求項15】
前記切込み部を有する前記シートは、前記切込みによって生じる面同士の少なくとも一部が接触したものである、
請求項12~14のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
【請求項16】
前記移載ベルトの張力を調整する張力調整機構をさらに備える、
請求項12~15のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
【請求項17】
前記移載ベルトが、ポリエステルを含むフィルム又はポリエステル系繊維を含む織布である、
請求項12~16のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
【請求項18】
前記移動板が、送り出される先端に、傾斜部を有する、
請求項12~17のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
【請求項19】
前記傾斜部が、前記移動板の主面に対して15~45°の角度で傾斜している、
請求項18に記載のシートの配置装置。
【請求項20】
前記移動板の厚みが、0.5~3.0mmである、
請求項12~19のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
【請求項21】
前記移動板の送り出される先端辺の先端の角Rが、0.25~2.0mmである、
請求項12~20のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの配置方法及び配置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、柔軟性や難掴持性を有する被移載物を移載するための方法として、移載ベルトを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の方法では、支持板材上に移載ベルトを設け、支持板材を進退移動させることで、移載ベルトと被移載物との間で摩擦を生じさせることなく、被移載物を移載ベルト上に掬い上げることができる。また、掬い上げた被移載物は、支持板材を進退移動させることで、任意の場所に配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法は、主に、ハンバーグ半製品、パン生地、果物などの食品をターゲットとするものである。このような被移載物は、一つ一つが独立したものであり、特許文献1に記載の方法では、被移載物をできるかぎりそのままの形状で、他の箇所に移載することを目的とするものである。
【0005】
一方で、より工業的な観点からは、掬い上げた状態ではひとつの塊となっている被移載物を、分離しながら任意の箇所に配置したいという要望がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、シート状の被移載物を任意の形状に分離しつつ任意の箇所に配置するシートの配置方法及び配置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、切込み部を有するシートの移載の際に、移動板の動作を調整することにより、上記課題を解決しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
切込み部を有するシートを、切込み部で切断された状態で配置する方法であって、
前記切込み部を有する前記シートを形成するシート形成工程と、
第1ステージ上に載置された前記切込み部を有する前記シートと、前記第1ステージとの間に、移載ベルトが周設された移動板を送り出すことにより、前記移動板上に、前記移載ベルトを介して、前記切込み部を有する前記シートを掬い上げる掬上工程と、
前記移動板を送り戻すことにより、前記移動板上に掬い上げた、前記切込み部を有する前記シートを、第2ステージ上に切込みで切断された状態で配置する配置工程と、を有し、
前記掬上工程において、前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から移動板の主面側に繰り出しながら前記移動板の送り出しを行い、
前記配置工程において、前記移載ベルトを前記移動板の主面側から移動板の裏面側に繰り戻しながら前記移動板の送り戻しを行い、前記シートの前記切込み部が前記第2ステージ上に接触する前に送り戻しの速度を0.05~0.90倍に減速させることにより、前記切込み部で前記シートを切断しながら、前記第2ステージ上に前記切込み部で切断された状態で前記シートを配置する、
シートの配置方法。
〔2〕
前記掬上工程において、前記移動板の先端辺と、前記シートの前記切込み部の切込み方向の少なくとも一部と、が略平行となるように、前記シートを掬い上げ、
前記配置工程において、前記移動板の先端辺と略平行となった前記シートの前記切込み部が前記移動板の先端辺上にきたときに、前記シートを切断しながら、前記第2ステージ上に前記切込み部で切断された状態で前記シートを配置する、
〔1〕に記載のシートの配置方法。
〔3〕
厚さ方向に0.1MPaの荷重をかけた場合の前記シートの圧縮率が、5~60%である、
〔1〕又は〔2〕に記載のシートの配置方法。
〔4〕
前記シートのアスカーC硬度が、50以下である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
〔5〕
前記切込み部を有する前記シートは、前記切込みによって生じる面同士の少なくとも一部が接触したものである、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
〔6〕
前記シート形成工程後、前記掬上工程前に、前記切込み部を有する前記シートを反らせる工程をさらに有する、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
〔7〕
前記移載ベルトが、ポリエステルを含むフィルム又はポリエステル系繊維を含む織布である、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
〔8〕
前記移動板が、送り出される先端に、傾斜部を有する、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
〔9〕
前記傾斜部が、前記移動板の主面に対して15~45°の角度で傾斜している、
〔8〕に記載のシートの配置方法。
〔10〕
前記移動板の厚みが、0.5~3.0mmである、
〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
〔11〕
前記移動板の送り出される先端辺の先端の角Rが、0.25~2.0mmである、
〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
〔12〕
切込み部を有するシートを載置する第1ステージと、
移動板と、
前記移動板をスライド移動するとともに該スライド移動の速度を調整する移動機構と、
前記移動板の移動方向に周設された移載ベルトと、
前記切込み部で切断された状態で前記シートを配置する第2ステージと、を備え、
前記移載ベルトは、前記移動機構が前記移動板を送り出した場合に、前記移動板の底面側から移動板の主面側に繰り出され、前記移動機構が前記移動板を送り戻した場合に、前記移動板の主面側から移動板の底面側に繰り戻されるように周設されたものであり、
前記移動機構は、前記シートの前記切込み部が前記第2ステージ上に接触する前に送り戻しの速度を0.05~0.90倍に減速させることにより、前記切込み部で前記シートを切断しながら、前記第2ステージ上に前記切込み部で切断された状態で前記シートを配置するものである、
シートの配置装置。
〔13〕
厚さ方向に0.1MPaの荷重をかけた場合の前記シートの圧縮率が、5~60%である、
〔12〕に記載のシートの配置装置。
〔14〕
前記シートのアスカーC硬度が、50以下である、
〔12〕又は〔13〕に記載のシートの配置装置。
〔15〕
前記切込み部を有する前記シートは、前記切込みによって生じる面同士の少なくとも一部が接触したものである、
〔12〕~〔14〕のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
〔16〕
前記移載ベルトの張力を調整する張力調整機構をさらに備える、
〔12〕~〔15〕のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
〔17〕
前記移載ベルトが、ポリエステルを含むフィルム又はポリエステル系繊維を含む織布である、
〔12〕~〔16〕のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
〔18〕
前記移動板が、送り出される先端に、傾斜部を有する、
〔12〕~〔17〕のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
〔19〕
前記傾斜部が、前記移動板の主面に対して15~45°の角度で傾斜している、
〔18〕に記載のシートの配置装置。
〔20〕
前記移動板の厚みが、0.5~3mmである、
〔12〕~〔19〕のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
〔21〕
前記移動板の送り出される先端辺の先端の角Rが、0.25~2mmである、
〔12〕~〔20〕のいずれか一項に記載のシートの配置装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シート状の被移載物を任意の形状に分離しつつ任意の箇所に配置するシートの配置方法及び配置装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】切込み部を有するシートの態様を示す概略斜視図である。
【
図5】掬上工程における移動板の先端辺の方向と切込み部の切込み方向の関係を示す概略斜視図である。
【
図6】複数の切込み方向を有するシートについて、掬上工程と配置工程を繰り返した場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0012】
〔シートの配置方法〕
本実施形態のシートの配置方法は、切込み部を有するシートを、切込み部で切断された状態で配置する方法であって、シートの切込み部が移載先の場所に接触する前に、移動板の送り戻しの速度を0.05~0.90倍に減速させて、切込み部で前記シートを切断しながら、移載先に切込み部で切断された状態でシートを配置する。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0013】
〔シート形成工程〕
まず、本実施形態のシートの配置方法では、切込み部を有するシートを形成するシート形成工程を行う。
図1に、シート形成工程の一態様を示す。初めに、原反シート10を用意し(
図1(a))、原反シート10を、打ち抜き機などで任意の形状のシート11に打ち抜き、この際にシート11が有する切込み部12も併せて形成する(
図1(b))。最後に、不要部分13を除去することで、切込み部12を有するシート11を作製することができる(
図1(c))。なお、上記に限られず、シート11の打ち抜きと、切込み部12の形成は、分けて行ってもよい。
【0014】
図1(c)においては、切込み部12を一方向に有するシート11を例示したが、シート11の切込み部12は、一方向F1に設けられていても(
図2(a))、複数の方向F1,F2に設けられていてもよい(
図2(b))。シート11は、後述する配置工程で、切込み部12で切断されて第2ステージ上に配置される。すなわち、切込み部12は、後述する配置工程で切断される部分である。
【0015】
図1(b)においては、シート11の間に不要部分13があるように打ち抜く態様を示したが、シート11の間に不要部分13を設ける必要はなく、シート11同士が接触した状態で、原反シート10を打ち抜いてもよい。このようにすることで、破棄する不要部分13の量を軽減することができる。
【0016】
(切込み部の態様)
切込み部12は、シート11の厚さ方向に貫通して設けられても(
図1(c)参照)、シート11の厚さ方向に貫通せずに設けられてもよい。このなかでも、切込み部12は、シート11の厚さ方向に貫通して設けられることが好ましい。柔軟性や粘性を有するシート11の場合は、厚さ方向に貫通した切込み部12を設けた場合であっても、その切込み部12によって生じる面12’同士は、打ち抜きにより完全に分離された状態とはならず、少なくとも一部が接触した状態となる。面12’同士が接触した状態であることにより、切込み部12で容易に分離されることなく、シート11を一体として掬い上げることができる。一方で、切込み部12がシート11の厚さ方向に貫通して設けられることにより、後述する配置工程において、切断不良が生じにくくなる傾向にある。また、配置工程においてシート11が切断し難いと、切断時にシート11が引っ張られて変形したり、切断後のシート11の寸法精度が悪化する可能性があるが、そのような切断時の変形や寸法精度の悪化を抑制することができる。なお、切断後のシート11の変形には、歪みや、めくれ、気泡、うねり、切れの悪い部分の発生などの外観不良が含まれる。
【0017】
なお、切込み部12がシート11の厚さ方向に貫通する態様の場合には、シート形成工程において打ち抜き機などの切断刃をシート11の厚さ方向に貫通させる。この際、シート11の下に基材がある場合には、その基材に切断刃の刃型がしっかりつく程度に切断刃を押し込むことが好ましい。切断刃の押し込みの程度は特に制限されるものではないが、基材に対する刃型の深さは、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは5μm以上であり、さらに好ましくは10μm~30μmである。柔軟性や粘性を有するシート11の場合は、切断刃を引き抜いた際の面12’同士が経時的に再接着し得る。しかし、このように、切断刃を押し込んで切込み部12を形成することにより、切断刃を引き抜いた際の面12’同士が経時的に再接着したとしても、その強度が高くならないように処置することが可能となる。そのため、後述する配置工程における切断不良を抑制することができ、また、切断時に生じる変形や寸法精度の悪化を抑制できる傾向にある。
【0018】
一方、切込み部12がシート11の厚さ方向に貫通しない態様の場合、その切込み深さは、シート11の厚さ100%に対して、好ましくは90%超過であり、より好ましくは92%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。また、この場合、切込み部12の切込み深さの上限は、特に制限されないが、貫通しない範囲で100%未満である。
【0019】
なお、シート11は、後述する配置工程で切断する切込み部12以外に、任意の切れ目(不図示)を有していてもよい。そのような切れ目の深さは、シート11の厚さ100%に対して、好ましくは2%~90%であり、より好ましくは30%~80%であり、さらに好ましくは40%~70%である。このような切れ目を有することにより、配置されたシートを厚み方向に圧縮したときに、圧縮方向の力をシートの水平方向に逃がすことができる。そのため、シート11を圧縮する際の荷重を低減することができ、また、圧縮の際に空気が入りにくい構造となる。なお、切れ目に関してはWO2018/190233を参照することができる。
【0020】
(シート組成)
本実施形態の配置方法に用いるシート11としては、特に制限されないが、例えば、樹脂と充填剤とを含む放熱シートが挙げられる。以下、放熱シートの組成について例示するが、本実施形態で用い得るシート11は、下記放熱シートに限られるものではない。
【0021】
放熱シートは、一例として、シリコーン樹脂及び無機充填剤を含み、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
【0022】
シリコーン樹脂を用いることにより、高柔軟性及び高熱伝導性の熱伝導性シートを得ることができる。シリコーン樹脂は、過酸化物架橋、縮合反応架橋、付加反応架橋、及び紫外線架橋等によって硬化反応を生じさせるものが好ましく、このなかでも付加反応架橋を生じさせるものがより好ましく、さらには、一液反応型又は二液付加反応型シリコーン樹脂が好ましい。
【0023】
二液付加反応型シリコーン樹脂の例としては、特に制限されないが、例えば、末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンを含む第1液と、末端又は側鎖に2個以上のH-Si基を有するオルガノポリシロキサンを含む第2液とを含むものが挙げられる。これら二液付加反応型シリコーン樹脂は、互いに反応し硬化することにより、シリコーンゴムを形成することができる。
【0024】
無機充填剤は、放熱フィラーとして使用することができる。このような無機充填剤としては、特に制限されないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、金属アルミニウム及び黒鉛等が挙げられる。これら無機充填剤は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
無機充填剤の含有量は、シート11の体積100体積%に対して、好ましくは35~85体積%であり、より好ましくは40~85体積%である。無機充填剤の含有量が多いほど熱伝導性がより向上する傾向にある。また、無機充填剤の含有量が少ないほどシート11が適度な流動性を有し、圧縮して用いる放熱シートに好適に用いることができる。
【0026】
(シート物性)
本実施形態の配置方法において好適に用いられるシート11は、柔軟性や粘性を有することが好ましい。このようなシート11は、柔らかく変形しやすいうえに、様々なものに対してくっつきやすく、特に移載が困難であるため、本発明が特に有用である。特に、本発明の配置方法を用いることにより、切断後のシート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる。
【0027】
このような観点から、厚さ方向に0.1MPaの荷重をかけた場合のシート11の圧縮率は、好ましくは5~60%であり、より好ましくは10~60%であり、さらに好ましくは15~60%であり、特に好ましくは25~60%である。圧縮率が上記範囲内であるシート11は、比較的に柔らかいものであるため、変形や寸法精度の悪化をさせずにある個所から他の場所へ移送させることが困難であり、本発明が特に有用である。なお、シート11の圧縮率は、上記切れ目や切込みがない部分で測定した値とする。
【0028】
また、上記同様の観点から、シート11のアスカーC硬度は、好ましくは50以下であり、より好ましくは45以下であり、さらに好ましくは40以下であり、特に好ましくは35以下である。また、アスカーC硬度の下限値は、シートを取り扱う際のハンドリング性を容易にする点から、5以上が好ましい。アスカーC硬度が50以下であるシート11は、比較的に柔らかいものであるため、変形や寸法精度の悪化をさせずにある個所から他の場所へ移送させることが困難であり、本発明が特に有用である。なお、シート11のアスカーC硬度は、上記切れ目や切込みがない部分で測定した値とする。
【0029】
〔反り工程〕
本実施形態のシート11の配置方法では、シート形成工程後、後述する掬上工程前に、切込み部12の面12’同士の接着力を低下させる工程をさらに行ってもよい。面12’同士の接着力を低下させる工程としては、具体的には、切込み部12を有するシート11を反らせる反り工程や、切込み部12を有するシート11を面方向で引っ張る工程が挙げられる。このなかでも、シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制する観点から反り工程が好ましい。
【0030】
図3に反り工程の一態様を示す。例えば、シート形成工程後のシート11がプラスチックシートなどの可撓性を有する基材14の上に形成される場合には(
図3(a))、反り工程では、その基材14を反らせることによりシート11を反らせることができる(
図3(b))。そして、反らせた基材14を元に戻すことで、シート11は元の形状に戻る(
図3(c))。シート形成工程における切込み部12の形成から掬上工程までの間で、経時的に切込み部12の面12’同士の接着が進むことがあるが、そのような場合であっても、このような反り工程を行うことで、切込み部12の面12’同士が開き、面12’同士の接着力を低下させることができる。これにより、掬上工程後の配置工程において、切込み部12におけるシートの切断をより容易に行うことができ、切断不良や切断不良によるシート11の変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。
【0031】
〔掬上工程〕
次に、本実施形態のシート11の配置方法では、第1ステージS1(移載元)上に載置された切込み部12を有するシート11を掬い上げる掬上工程を行う。掬上工程では、第1ステージS1と切込み部12を有するシート11との間に、移載ベルト21が周設された移動板22を送り出すことにより、移動板22上に、移載ベルト21を介して、切込み部12を有するシート11を掬い上げる。
【0032】
図4に、掬上工程及び配置工程で使用する配置装置20を示す。配置装置20は、移載ベルト21と、移載ベルト21が周設された移動板22と、移動板22をスライド移動するとともにそのスライド移動の速度を調整可能な移動機構23と、を備える。
【0033】
移載ベルト21は、移動板22の主面22a側から裏面22b側へ、移動板22を囲うように周設される。移載ベルト21は、例えば、一端又は両端が所定の固定具24に固定されている。この状態で、移動板22を固定具24に対して相対的に前方にスライドF3させると、移載ベルト21が移動板22の裏面22b側から移動板22の主面22a側に繰り出される(
図4(b)のF4)。また、これに伴い、移載ベルト21の後方側22bが移動板22の主面22a側から移動板22の裏面22b側に引き出される(
図4(b)のF5)。また、移動板22を固定具24に対して相対的に後方にスライドF7させると移載ベルト21が移動板22の主面22a側から移動板22の裏面22b側に引き戻される(
図9のF7参照)。
【0034】
掬上工程においては、移載ベルト21を移動板22の裏面22b側から移動板22の主面22a側に繰り出しながら移動板22の先端を第1ステージS1と切込み部12を有するシート11との間に徐々に進入させる。この進入によりシート11が
図4(b)のように移載ベルト21の先端で掬われて移載ベルト21上にのり上げる。移動板22をさらにスライドさせて、移載ベルト21を繰り出すことによりシート11が移載ベルト21上に完全に掬い上げられる。この掬い上げの際にシート11と移載ベルト21との間に、シート11を変形させるような摩擦が生じないため、シート11は、変形、型崩れすることなく第1ステージS1の上にあったままの形状が保持されて移載ベルト21上に掬い上げられる。
【0035】
なお、掬い上げ工程においては、移動機構23は、速度を変化させることなく、一定の速度で、移動板22をスライド移動させることが好ましい。これにより、掬い上げの際に生じ得るシート11の変形や寸法精度の悪化がより抑制される傾向にある。
【0036】
掬上工程では、移動板22の先端辺22eの方向F6と、シート11の切込み部12の切込み方向F1と、が略平行となるように、シート11を掬い上げることが好ましい(
図5)。これにより、後述する配置工程において、移動板22の先端辺22eと略平行であるシート11の切込み部12においてシート11を切断しながら、第2ステージS2上にシート11を配置することができる。
【0037】
また、
図5に示すように、シート11の切込み部12の切込み方向F1,F2が複数ある場合には、掬上工程と配置工程を繰り返すことで、シート11を切込み部で切断した状態で、第2ステージS2に配置することができる。
【0038】
図6に、複数の切込み方向F1,F2を有するシート11について、掬上工程と配置工程を繰り返した場合の概略図を示す。複数の切込み方向F1,F2を有するシート11を配置する場合には(
図6(a))、初めに、移動板22の先端辺22eと、シート11の切込み部の切込み方向F1,F2の少なくとも一部が略平行となるように、シート11を掬い上げる。次いで、配置工程において、移動板22の先端辺22eと略平行であるシート11の切込み部12(F1)において、シート11を切断しながら、移載先のステージ上にシート11を配置する(
図6(b))。これにより、F1方向の切込み部で切断されたシート11が第2ステージ上に配置される。そして、さらに、他の切込み方向F2の切込み部12を有するシート11に対し、方向F2と移動板22の先端辺22eとが略平行となるように、シート11を掬い上げて、シート11を方向F2の切込み部12で切断しながら、移載先ステージ上に方向F2の切込み部で切断された状態でシート11を配置する。なお、切込み部の切込み方向がこれよりも多い場合も同様にして、掬上工程と配置工程を繰り返すことができる。
【0039】
このように、複数の方向の切込み部を有するシートにおいて、掬上工程と配置工程を繰り返すことで、はじめは一方向の切込み部で切断しながらシートを配置し、次いで他方向の切込み部でシートを切断しながら配置しなおすことができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、掬い上げられるシート11が配されている移載元のステージを第1ステージ、シート11が切込み部で切断されながら配置される移載先のステージを第2ステージと呼称する。したがって、第1ステージと第2ステージは、本実施形態の配置方法において、シートの移載先か移載元かを区別するための呼称であり、実際には、同一のステージであっても異なるステージであってもよい。
【0041】
また、第1ステージと第2ステージはシートの移載先または移載元を区別するための呼称に過ぎず、実際に、第1ステージと第2ステージの表面に直接シート11が接する必要もない。例えば、ステージ(台)とシート11の間にフィルムなどの基材が配されており、掬い上げ工程において第1ステージ上の基材とシート11との間に移載ベルトと移動板を侵入させてもよいし、配置工程において、第2ステージ上の基材の上にシート11を配置してもよい。
【0042】
(移載ベルト)
移載ベルト21としては、特に制限されないが、例えば、繊維から構成される織布及び不織布や、膜状の成形体であるフィルムが挙げられる。また、織布、不織布、フィルムを構成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル;テフロン(登録商標)等のフッ素;ナイロン、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン・アラミドなどのポリアミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニリデン;ポリ塩化ビニル;ポリアクリロニトリル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン;ポリエーテルエステル;ポリウレタンが挙げられる。また、任意の織布、不織布、フィルムに対して、剥離性の良好な膜をコーティングしたものを用いることもできる。
【0043】
シート11の形状を損なわず掬上工程と配置工程を行う観点から、移載ベルト21は、柔軟性と粘性を有するシート11にくっつきにくい構成を有することが好ましい。このような観点から、移載ベルト21はポリエステルを含むフィルムや、ポリエステル系繊維を含む織布であることが好ましく、ポリエステルを含むフィルムがより好ましい。
【0044】
(移動板)
移動板22としては、特に制限されないが、例えば、ステンレス製、樹脂製の板が挙げられる。移動板22は、送り出される先端に、傾斜部22cを有するものが好ましい。より具体的には、移動板22は、第1ステージ又は第2ステージと略平行にして用いる平行板22dとその先端に位置する傾斜部22cを有することが好ましい(
図7(a))。後述する配置工程のように、本実施形態の配置方法では、移動板のスライド移動とともにシート11を切断しながら配置する。そのため、実際の使用においては、長尺なシート11を移動板のスライド方向F3に乗せる必要がある。傾斜部22cを有さない場合には、移動板22がステージにぶつかるため移動板22のスライド範囲には限界があるが(
図7(b))、傾斜部22cを有することにより、移動板22とステージS1、S2の衝突を回避することができ、移動板22のスライド長を長くすることができる。
【0045】
傾斜部22cの平行板22dに対する角度θは、好ましくは15~45°であり、より好ましくは20~40°である。傾斜部22cの角度が上記範囲内であることにより、掬上工程や配置工程におけるシート11の変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。
【0046】
移動板22の厚みは、好ましくは0.5~3.0mmであり、より好ましくは1.0~2.0mmである。移動板22の厚みが上記範囲内であることにより、シート11の下に入り込みやすくなり、掬上工程や配置工程におけるシート11の変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。
【0047】
移動板22の送り出される先端辺22eの先端の角Rは、好ましくは0.25~2.0mmであり、より好ましくは0.5~1.0mmである。先端辺22eの先端の角Rが上記範囲内であることにより、シート11の下に入り込みやすくなり、掬上工程や配置工程におけるシート11の変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。
【0048】
(固定具)
固定具24における移載ベルト21の両端部21a、21bの固定方法は、特に制限されない。
図8に、固定具24の一態様を示す概略断面図を示す。移載ベルト21の両端部21a、21bを固定する固定具24としては、特に制限されないが、例えば、移載ベルト21の両端部21a、21bを挟持する二本の棒状の治具24a,24bを用いることができる。この二本の棒状の治具24a,24bは、ボルト・ナットやビス等の連結具(付図示)で連結固定することができ、これにより両端部21a、21bを挟持することができる。また、治具24a,24bには、それぞれ、移載ベルト21を噛んで嵌合できる凹部と凸部が形成されていてもよい。これにより、移載ベルト21をより強固に固定することができる。
【0049】
さらに、固定具24には、移載ベルト21の張力を調整する張力調整部24cが設けられていてもよい。例えば、張力調整部24cとしては、治具24a,24bを任意の回転角で固定可能に保持できるもの、あるいは、一定加重で端部21a、21bを引っ張る弾性体が挙げられる。掬上工程や配置工程で移動板22のスライド移動を繰り返し行うことで、移載ベルト21は徐々に延性変形したわみが生じることがある。たわみが一定以上蓄積すると、掬上工程や配置工程においてシート11が変形や寸法精度の悪化を招来しやすくなるが、張力調整部24cを設けることにより、移載ベルトを張り替える等の調整をすることなく、掬上工程や配置工程を連続して行うことができる。
【0050】
〔配置工程〕
最後に、移動板22を送り戻すことにより、移動板22上に掬い上げた、切込み部12を有するシート11を、第2ステージS2上に切込み部12で切断された状態で配置する配置工程を行う。
【0051】
図9に、配置工程を表す概略図を示す。配置工程においては、移載ベルト21を移動板22の主面22a側から移動板22の裏面22b側に繰り戻しながら方向F7へ移動板22の送り戻しを行う。この送り戻しにより、シート11が移載ベルト21の先端から、第2ステージS2上へと送り出される。この場合、シート11と第2ステージS2との間に摩擦が生じないためシート11の変形や寸法精度の悪化を生じさせることなく第2ステージS2上に配置することができる。
【0052】
この際、移動板22の送り戻しの速度は一定とせず、0.05~0.90倍に減速させる。具体的には、送り戻し中において、シート11の切込み部12が第2ステージS2上に接触する前に、移動機構23により送り戻しの速度を変化させる。このように、送り戻し中において、シート11の切込み部12が移動板22の先端辺22e上にきたときに送り戻しの速度を変化させることで、切込み部12でシート11を切断しながら、第2ステージS2上に切断された状態でシート11を配置することができる。
【0053】
なお、送り戻し速度の変化は切込み部12でシート11を切断するために行うものであり、形状を崩すことなくシート11の切断が達成されるのであれば、送り戻し速度の変化のタイミングは制限されない。一例として、送り戻しの速度を変化させるタイミングとして、シート11の切込み部12が移動板22の先端辺22eの±5mmの領域にきたとき、シートの切込み部が移動板の先端辺22eの±3mmの領域にきたとき、シートの切込み部が移動板の先端辺22eの±1mmの領域にきたとき、を挙げることができる。
【0054】
シート11の切込み部12以外の部分が第2ステージS2上に接触しているときの送り戻し速度は、好ましくは1.0~7.5m/minであり、より好ましくは1.0~6.5m/minであり、さらに好ましくは1.0~6.0m/minである。シート11の切込み部12以外の部分が第2ステージS2上に接触しているときの送り戻し速度が上記範囲内であることにより、シート11の切込み部12以外の部分が第2ステージS2上に接触する際に生じる、シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる傾向にある。
【0055】
シート11の切込み部12が移動板22の先端辺22e上にきたときに減速させた際の送り戻し速度(以下、「引き離し速度」ともいう)は、好ましくは0.25~4.5m/minであり、より好ましくは0.35~2.5m/minであり、さらに好ましくは0.45~0.9m/minである。引き離し速度が上記範囲内であることにより、シート11の切断性が向上するとともに、切断時において過度な引張等に由来する変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。
【0056】
移動機構23による送り戻し速度の変化は、シート11の切込み部12が第2ステージS2上に接触する前に送り戻し速度を減速させる変化である。シート11の切込み部12以外の部分が第2ステージS2上に接触しているときの送り戻し速度に対する、引き離し速度の変化率は、0.05~0.90倍であり、好ましくは0.05~0.40倍であり、さらに好ましくは0.05~0.20倍である。引き離し速度の変化率が上記範囲内であることにより、シート11の変形や寸法精度の悪化を生じさせることなく、切断して第2ステージS2上に配置することができる。特に、変化率が0.05倍未満である場合、切込み部12にかかる切断の力が弱くなり、切込み部12で切断されずに切込み部12の周辺がゆっくりと延伸される傾向にあるため、シート11の変形や寸法精度の悪化を招く。また、変化率が0.90倍超過である場合、切込み部12における切断が完了する前に、移動版22が元の送り戻し速度に戻る(加速する)傾向にあるため、切込み部12の周辺が延伸されて、シート11の変形や寸法精度の悪化を招く。
【0057】
〔シートの配置装置〕
本実施形態のシートの配置装置20は、切込み部12を有するシート11を載置する第1ステージS1と、移動板22と、移動板22をスライド移動するとともに該スライド移動の速度を調整する移動機構23と、移動板22の移動方向に周設された移載ベルト21と、切込み部12で切断された状態でシート11を配置する第2ステージS2と、を備え、移載ベルト21は、移動機構23が移動板22を送り出した場合に、移動板22の裏面22b側から移動板22の主面22a側に繰り出され、移動機構23が移動板22を送り戻した場合に、移動板22の主面22a側から移動板22の裏面22b側に繰り戻されるように周設されたものであり、移動機構23は、シート11の切込み部12が第2ステージS2上に接触する前に送り戻しの速度を変化させることにより、切込み部12でシート11を切断しながら、第2ステージS2上に切込み部12で切断された状態でシート11を配置するものである。
【0058】
本実施形態のシートの配置装置20の詳細な構成については、上記配置方法において記載したものと同様とすることができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0060】
〔実施例1〕
(シート作製工程)
二液付加反応型シリコーン樹脂と無機フィラーと混合して組成物を得た。得られた組成物を、ドクターブレード法を用いてシート状に成型し、加熱硬化を行って、基材フィルム上に原反シートを得た。得られた原反シートを
図1(c)のように切り出し、切込み部を有するシートを得た。なお、シートは、100mm(短辺)×216mm(長辺)の長方形とし、短編と平行な方向に18mm間隔で切込み部を有するものとした。すなわち、配置工程後のシート形状が100mm×18mmの短冊12本分となるよう切込み部を形成した。また、得られたシートのアスカーC硬度は、8であり、圧縮率は30であった。なお、アスカーC硬度と圧縮率の測定方法は以下のとおりとした。
【0061】
(アスカーC硬度)
シートの硬さは、25℃のSRIS0101に準拠するアスカーCタイプのスプリング式硬度計で測定することができる。アスカーC硬度は、高分子計器株式会社製「アスカーゴム硬度計C型」で測定することができる。シリコーン樹脂の硬化後のタイプCアスカーC硬度は5~40未満であった。タイプC硬度が5以上のときシートを取り扱う際のハンドリングが容易である。
【0062】
(圧縮率)
シートの圧縮率は、スペーサーを10×10mmに打ち抜いた後、卓上試験機(島津製作所製EZ-LX)により、厚さ方向に0.1MPaの荷重をかけたときの圧縮変形量を計測し、下記式にて圧縮率を算出した。
圧縮率(%)={圧縮変形量(mm)×100}/元の厚さ(mm)
【0063】
(反り工程)
基材フィルムを反らせることで、得られたシートに対して反り工程を行った。
【0064】
(掬上げ工程)
移載ベルトとしてPETフィルムを用い、
図4に示すように掬上工程を行った。なお、移動板の厚さ、傾斜部の角度、掬上速度は表のとおりとした。
【0065】
(配置工程)
また、
図9に示すように配置工程を行い、シートを12本の短冊に切断して第2ステージ上に配置した。なお、引戻速度と、切断時の引離速度は表のとおりとした。
【0066】
(寸法評価1)
上記一連の工程により得られた12本の短冊の幅寸法を測定し、幅が最大となる値と最小となる値の差Rを算出した。そして、差Rに基づいて、第2ステージに切断して配置されたシートの寸法を下記基準で評価した。
A:値Rが0.30mm以下
B:値Rが0.30mm超過0.45mm以下
C:値Rが0.45mm超過0.55mm以下
D:値Rが0.55mm超過
【0067】
(寸法評価2)
上記一連の工程により得られた12本の短冊の幅寸法を測定し、その平均値Aveを算出した。そして、目的とする短冊寸法(長さ100mm×幅18mm)の幅(18mm)と平均値Aveとの差分に基づいて、第2ステージに切断して配置されたシートの寸法を下記基準で評価した。
A:目的幅(18mm)と平均値Aveの差が0.15mm以下
B:目的幅(18mm)と平均値Aveの差が0.15mm超過0.30mm以下
C:目的幅(18mm)と平均値Aveの差が0.30mm超過0.45mm以下
D:目的幅(18mm)と平均値Aveの差が0.45mm超過
【0068】
(外観評価)
上記一連の工程により得られた12本の短冊の外観を確認し、下記評価基準で評価した。
A:いずれの短冊にも、歪みや、めくれ、気泡、うねり、切れの悪い部分が生じなかった
D:少なくとも一つの短冊に、歪みや、めくれ、気泡、うねり、切れの悪い部分のいずれかが生じた
【0069】
【表1】
※ハーフカット:シート作製工程において切込み部を形成する際の、基材に対する切断刃の押し込み深さ
※掬い上げ速度:掬上工程時における移動版のスライド速度
※送り戻し速度:配置工程時における切込み部が移動板の先端辺上に来ていないときの移動版のスライド速度
※引き離し速度:配置工程時における切込み部が移動板の先端辺上に来ているときの移動版のスライド速度
※引き離し距離:配置工程時における短冊間の距離
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の配置方法及び当該配置方法を実施するための配置装置は、掬い上げた状態ではひとつの塊となっている柔らかい被移載物を、分離しながら任意の箇所に配置することが要求される生産プロセスに用い得る方法及び装置として、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0071】
10…原反シート、11…シート、12…切込み部、12’…面、13…不要部分、14…基材、20…配置装置、21…移載ベルト、21a、21b…端部、22…移動板、22a…主面、22b…裏面、22c…傾斜部、22d…平行板、22e…先端辺、23…移動機構、24…固定具、24a、24b…治具、24c…張力調整部