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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】研磨ヘッド及び研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20230906BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B24B37/30 D
H01L21/304 622H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019048534
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020110909
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2019003542
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】林 智雄
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-029618(JP,A)
【文献】特開平09-139366(JP,A)
【文献】特開2008-153434(JP,A)
【文献】特開平09-321002(JP,A)
【文献】特開2011-212822(JP,A)
【文献】特開2007-027166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/30
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハの裏面を保持しながら、定盤上に設けられた研磨パッドに前記ウェハの表面を押圧して前記ウェハを研磨する研磨ヘッドであって、
前記ウェハの裏面が当接する弾性変形が可能な略円板形状のバッキング材と、前記バッキング材の前記ウェハが当接する面に設けられた略円環形状のウェハ保持部と、を有するテンプレートと、
前記バッキング材の前記ウェハが当接しない面が当接するヘッド本体部と、
を備え、
前記バッキング材の前記ウェハが当接する面と前記ウェハ保持部の略円環形状の内側の中空部とにより形成された空間に前記ウェハが収容可能であり、
前記ウェハ保持部は、弾性変形しない材料で形成されており、厚さが前記ウェハの厚さより薄い略円環形状の枠部と、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材と、を有し、
前記クッション材は前記バッキング材に接着又は貼付されており、前記枠部は前記クッション材に接着又は貼付されており、
前記枠部の外表面のうちの前記バッキング材の前記ウェハが当接する面と平行な外表面である底面と、前記ウェハとが当接せず、
前記クッション材が弾性変形することで前記ウェハ保持部の厚さが前記ウェハの厚さと略一致する
ことを特徴とする研磨ヘッド。
【請求項2】
ウェハの裏面を保持しながら、定盤上に設けられた研磨パッドに前記ウェハの表面を押圧して前記ウェハを研磨する研磨ヘッドであって、
前記ウェハの裏面が当接する弾性変形が可能な略円板形状のバッキング材と、
略円環形状のウェハ保持部と、
前記バッキング材の前記ウェハが当接しない面及び前記ウェハ保持部が当接するヘッド本体部と、
を備え、
前記ヘッド本体部の前記ウェハ保持部が当接する面と前記ウェハ保持部の略円環形状の内側の中空部とにより形成された空間に前記バッキング材及び前記ウェハが収容可能であり、
前記ウェハ保持部は、弾性変形しない材料で形成されており、厚さが前記ウェハの厚さより薄い略円環形状の枠部と、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材と、を有し、
前記クッション材は前記ヘッド本体部に接着又は貼付されており、前記枠部は前記クッション材に接着又は貼付されており、
前記枠部の外表面のうちの前記バッキング材の前記ウェハが当接する面と平行な外表面である底面と、前記ウェハとが当接せず、
前記クッション材が弾性変形することで前記ウェハ保持部の厚さが前記ウェハの厚さと略一致する
ことを特徴とする研磨ヘッド。
【請求項3】
前記クッション材及び前記枠部は、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨ヘッド。
【請求項4】
前記ウェハ保持部の厚さは、径方向の位置によらず略一定であり、
前記クッション材及び前記枠部の厚さは、それぞれ内周側と外周側とで異なる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨ヘッド。
【請求項5】
前記クッション材は、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状であり、
前記枠部の上面には、前記クッション材が挿入される凹部が形成されており、
前記凹部の深さは、前記クッション材の厚さより薄い
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨ヘッド。
【請求項6】
前記枠部は、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状の第1枠部と、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略L字形状の第2枠部と、を有し、
前記第2枠部は、前記略L字形状の長辺が前記第1枠部の下側に位置し、前記略L字形状の短辺が前記第1枠部の外周側又は内周側に位置するように設けられ、
前記クッション材は、前記第1枠部と前記第2枠部との間に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨ヘッド。
【請求項7】
前記枠部は、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状の第1枠部と、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略L字形状の第2枠部と、を有し、
前記第2枠部は、前記略L字形状の長辺が前記第1枠部の下側に位置し、前記略L字形状の短辺が前記第1枠部の外周側又は内周側に位置するように設けられ、
前記第1枠部と前記第2枠部とは当接しておらず、
前記クッション材は、前記第2枠部の前記短辺の先端に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨ヘッド。
【請求項8】
前記底面には、前記枠部の外周面と内周面とを連結する第1溝部であって、スラリが流れる第1溝部が設けられている
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の研磨ヘッド。
【請求項9】
前記底面には、略円環形状の第2溝部であって、スラリが流れる第2溝部が設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の研磨ヘッド。
【請求項10】
前記底面は、内周面側が外周面側より下方に突出するような勾配を有する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の研磨ヘッド。
【請求項11】
前記クッション材は、内部に微小な空洞が多数存在するとともに、表面に気泡を含まない層が残っている発泡プラスチック製である
ことを特徴とする請求項2に記載の研磨ヘッド。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の研磨ヘッドと、
定盤に設けられた研磨パッドと、を備え、
前記ウェハを前記研磨パッドに押圧して前記ウェハを研磨することを特徴とする研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨ヘッド及び研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バックパッドの中央部の表側にバックパッドと同素材で略円形状の中央部分バックパッドを一体形成し、テンプレートの孔部内でバックパッドの中央部をその外周部より研磨布に向かって所定高さdだけ突出させ、この状態で半導体ウェハの研磨を行うワックスレスマウント式研磨装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-60598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図19は、特許文献1に記載の研磨装置100を模式的に示す図である。近年、研磨装置100のように、中空部にウェハWが設けられるテンプレート(リテーナリング)103とバッキング材102とを一体化した研磨ヘッド101が用いられている。このような一体型の研磨ヘッド101では、研磨ヘッド101に設けられたバッキング材102にウェハWの裏面が当接し、ウェハWとテンプレート103とを同時かつ同じ力で押圧する。
【0005】
しかしながら、図19に示すような一体型の研磨ヘッドでは、ウェハWよりもテンプレート103が薄く、ウェハWの表面がテンプレート103よりも研磨パッド104側に突出しているため、ウェハWの周縁部において研磨圧力が増加して、ウェハWの周縁部がウェハWの中央部分よりも過剰研磨されてしまうという問題がある(エッジロールオフ)。例えば、200mmのウェハを研磨する場合には、ウェハの最も外側の5mm~10mmの範囲でウェハが過剰に研磨されてしまう。その結果、ウェハの周縁部が他の部分より薄くなって平坦性が劣化し、ウェハの周縁部から集積回路を製造することができず、歩留まりが低下してしまう。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ウェハの周縁部が過剰に研磨されないようにする研磨ヘッド及び研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る研磨ヘッドは、例えば、ウェハの裏面を保持しながら、定盤上に設けられた研磨パッドに前記ウェハの表面を押圧して前記ウェハを研磨する研磨ヘッドであって、前記ウェハの裏面が当接する略円板形状のバッキング材と、前記バッキング材の前記ウェハが当接する面に設けられ、中空部に前記ウェハが収容可能な略円環形状のウェハ保持部と、を有するテンプレートと、前記バッキング材の前記ウェハが当接しない面が当接するヘッド本体部と、を備え、前記ウェハ保持部は、弾性変形しない材料で形成されており、厚さが前記ウェハの厚さ以下である略円環形状の枠部と、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材と、を有し、前記クッション材は前記バッキング材に接着又は貼付されており、前記枠部は前記クッション材に接着又は貼付されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る研磨ヘッドによれば、バッキング材の下方に、中空部にウェハが収容される略円環形状のウェハ保持部が設けられたテンプレートがヘッド本体部に設けられている。ウェハ保持部は、弾性変形しない材料で形成されており、厚さがウェハの厚さ以下である略円環形状の枠部と、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材と、を有し、クッション材はバッキング材に接着又は貼付されており、枠部はクッション材に接着又は貼付されている。このように、クッション材やバッキング材が弾性変形し、ウェハ保持部の厚さをウェハWの厚さと略一致させることで、ウェハの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る研磨ヘッドは、例えば、ウェハの裏面を保持しながら、定盤上に設けられた研磨パッドに前記ウェハの表面を押圧して前記ウェハを研磨する研磨ヘッドであって、前記ウェハの裏面が当接する略円板形状のバッキング材と、中空部に前記バッキング材及び前記ウェハが収容可能な略円環形状のウェハ保持部と、前記バッキング材の前記ウェハが当接しない面及び前記ウェハ保持部が当接するヘッド本体部と、を備え、前記ウェハ保持部は、弾性変形しない材料で形成されており、厚さが前記ウェハの厚さ以下である略円環形状の枠部と、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材と、を有し、前記クッション材は前記ヘッド本体部に接着又は貼付されており、前記枠部は前記クッション材に接着又は貼付されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る研磨ヘッドによれば、ヘッド本体部には、バッキング材と、中空部にバッキング材及びウェハが収容される略円環形状のウェハ保持部が設けられている。ウェハ保持部は、弾性変形しない材料で形成されており、厚さがウェハの厚さ以下である略円環形状の枠部と、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材と、を有し、クッション材はヘッド本体部に接着又は貼付されており、枠部は前記クッション材に接着又は貼付されている。このように、クッション材やバッキング材が弾性変形し、ウェハ保持部の厚さをウェハWの厚さと略一致させることで、ウェハの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。
【0011】
ここで、前記クッション材及び前記枠部は、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状であってもよい。また、前記ウェハ保持部の厚さは、径方向の位置によらず略一定であり、前記クッション材及び前記枠部の厚さは、それぞれ内周側と外周側とで異なってもよい。
【0012】
ここで、前記クッション材は、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状であり、前記枠部の上面には、前記クッション材が挿入される凹部が形成されており、前記凹部の深さは、前記クッション材の厚さより薄くてもよい。これにより、ウェハ保持部の内周面側に硬い枠部のみが配置される(クッション材は配置されない)ため、ウェハの保持強度を高くすることができる。
【0013】
ここで、前記枠部は、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状の第1枠部と、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略L字形状の第2枠部と、を有し、前記第2枠部は、前記略L字形状の長辺が前記第1枠部の下側に位置し、前記略L字形状の短辺が前記第1枠部の外周側又は内周側に位置するように設けられ、前記クッション材は、前記第1枠部と前記第2枠部との間に設けられていてもよい。
【0014】
ここで、前記枠部は、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状の第1枠部と、前記ウェハ保持部の中心線を含む面で切断したときの断面形状が略L字形状の第2枠部と、を有し、前記第2枠部は、前記略L字形状の長辺が前記第1枠部の下側に位置し、前記略L字形状の短辺が前記第1枠部の外周側又は内周側に位置するように設けられ、前記第1枠部と前記第2枠部とは当接しておらず、前記クッション材は、前記第2枠部の前記短辺の先端に設けられていてもよい。これにより、ウェハ保持部の内周面側に硬い枠部のみが配置されるため、ウェハの保持強度を高くすることができる。
【0015】
ここで、前記枠部の下面には、前記枠部の外周面と内周面とを連結する第1溝部が設けられていてもよい。これにより、スラリがウェハ保持部の外周面ではじかれず、ウェハ保持部の中空部に向けてスラリが流れる。その結果、スラリがウェハと研磨パッドとの間に入り込みやすくなり、スラリ不足による研磨の不具合が防止できる。
【0016】
ここで、前記枠部の下面には、略円環形状の第2溝部が設けられていてもよい。これにより、ウェハ保持部の中空部に向けてスラリがより流れやすくなる。
【0017】
ここで、前記枠部の下面は、内周面側が外周面側より下方に突出するような勾配を有してもよい。これにより、ウェハ保持部の中空部に向けてスラリが流れやすくなり、スラリ不足による研磨の不具合が防止できる。
【0018】
ここで、前記クッション材は、内部に微小な空洞が多数存在するとともに、表面に気泡を含まない層が残っている発泡プラスチック製であってもよい。これにより、クッション材を接着することによる問題が発生しない。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明に係る研磨装置は、例えば、研磨ヘッドと、定盤に設けられた研磨パッドと、を備え、前記ウェハを前記研磨パッドに押圧して前記ウェハを研磨することを特徴とする。これにより、ウェハの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ウェハの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の研磨ヘッド2および研磨ヘッド2を備える研磨装置1の概略を示す図である。
図2】研磨ヘッド2の概略を示す断面図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】枠部29の底面29c(図3参照)を模式的に示す図である。
図5】溝の変形例を示す模式図である。
図6】溝の変形例を示す模式図である。
図7】溝の変形例を示す模式図である。
図8】変形例にかかる枠部29’を有するウェハ保持部27’を模式的に示す図である。
図9】研磨ヘッド2Aのウェハ保持部27A近傍を拡大表示した図である。
図10】変形例に係るウェハ保持部27A’ 近傍を拡大表示した図である。
図11】研磨ヘッド2Bのウェハ保持部27B近傍を拡大表示した図である。
図12】研磨ヘッド2Cのウェハ保持部27C近傍を拡大表示した図である。
図13】研磨ヘッド2Dのウェハ保持部27D近傍を拡大表示した図である。
図14】研磨ヘッド2Eのウェハ保持部27E近傍を拡大表示した図である。
図15】研磨ヘッド2Fのウェハ保持部27F近傍を拡大表示した図である。
図16】バッキング材26Aとウェハ保持部27が別々にヘッド本体部21に設けられた研磨ヘッド2Gの概略を示す断面図である。
図17】バッキング材26Aとウェハ保持部27Gが別々にヘッド本体部21に設けられた研磨ヘッド2Hの概略を示す断面図である。
図18】ヘッド本体部21Aが弾性基材34を有し、テンプレート25が弾性基材34に設けられた研磨ヘッド2Iの概略を示す断面図である。
図19】従来の研磨装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、化学的機械的研磨、いわゆるCMP(Chemical Mecanical Polishing)技術により、ウェハ(基板)を研磨するものである。化学機械研磨においては、ウェハの表面を機械的に削ると同時に、研磨液がウェハの表面と化学反応して研磨を行う。また、本発明のウェハは、シリコンウェハ、GaN(窒化ガリウム)SiC(シリコンカーバイド)ウェハ、GaAs(ヒ化ガリウム)ウェハ、GaP(リン化ガリウム)ウェハ等様々な材料で形成されたウェハを含む。
【0023】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の研磨ヘッド2および研磨ヘッド2を備える研磨装置1の概略を示す図である。研磨装置1は、主として、ウェハWの裏面を保持する研磨ヘッド2と、ウェハWを研磨するための研磨パッド3を貼り付けた回転可能な定盤4と、研磨パッド3上にスラリ(研磨粒子を含んだ研磨液)を供給するためのスラリ供給部5と、を備える。
【0024】
研磨装置1においては、研磨パッド3を貼り付けた定盤4を回転させ、研磨パッド3上にスラリを供給しつつ、研磨ヘッド2に保持されたウェハWを回転させながらウェハWの表面を研磨パッド3に押圧して、ウェハWやウェハWの表面に形成された絶縁膜や金属膜の層を研磨する。
【0025】
研磨装置1の動作は、図示しない制御手段によって制御される。制御手段は、例えば、CPU、メモリ等により構成され、研磨装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御する。
【0026】
次に、研磨ヘッド2について説明する。図2は、研磨ヘッド2の概略を示す断面図である。研磨ヘッド2は、主として、ヘッド本体部21と、テンプレート25(バッキング材26及びウェハ保持部27)と、を有する。なお、図2では、中心線axを含む面で研磨ヘッド2を切断している。
【0027】
ヘッド本体部21は、主として、ドライブシャフト22と、ケース23と、チャックプレート24と、を有する。ケース23の内部には、エア室23aが設けられている。圧縮空気は、エア供給源からドライブシャフト22の空気流路22aを介してエア室23aに供給される。圧縮空気がエア室23aに滞留することで、圧縮空気がウェハWの全面を均一に押圧する。
【0028】
チャックプレート24は、金属(例えば、ステンレス)又はセラミックにより形成された略円板形状の板状部であり、バッキング材26のウェハWが当接しない面に当接する。チャックプレート24には、図示しない空気流路が形成され、空気流路は図示しない吸引部に接続されている。吸引部がウェハWを真空で吸引することで、ヘッド本体部21は、バッキング材26を介してウェハWを保持する。
【0029】
バッキング材26と、ウェハ保持部27とはテンプレート25を構成する。バッキング材26のウェハWが当接しない面がチャックプレート24に設けられることで、テンプレート25がヘッド本体部21に設けられる。
【0030】
バッキング材26は、ウェハWの裏面が当接する略円板形状の薄膜状(シート状)の部材である。バッキング材26には、例えば、スエードや、発泡ポリウレタン等の発泡プラスチック製のシートを用いることができる。バッキング材26は、加圧により厚さが微小に変化する。
【0031】
本実施の形態では、バッキング材26は、例えば発泡ポリウレタン製のシートを薄くスライスすることにより形成されており、表面に微小な空洞が多数存在する。バッキング材26の表面に水を塗布し、ウェハWをバッキング材26に押圧すると、空洞内の水が外部に排出されたときに生じる陰圧及び水の表面張力により、ウェハWがバッキング材26に固定される(水張り)。
【0032】
ウェハ保持部27は、バッキング材26の下方に設けられた略円環形状の部材である。ウェハ保持部27の中空部27aには、ウェハWが収容される。ここで、ウェハ保持部27について詳細に説明する。図3は、図2の部分拡大図である。ウェハ保持部27は、主として、弾性変形が可能な材料で形成されたクッション材28と、弾性変形しない材料で形成された枠部29と、を有する。
【0033】
クッション材28は、バッキング材26に接着又は貼付されており、枠部29はクッション材28に接着又は貼付されている。ここで、接着とは、接着剤、粘着材等を用いてバッキング材26とクッション材28を一体化することをいう。また、貼付とは、両面粘着テープ等のシート状の部材を用いてバッキング材26とクッション材28を一体化することをいう。
【0034】
クッション材28は、略円環形状であり、弾性部材、例えばゴムや高分子ゲルで形成されており、弾性変形が可能である。クッション材28は、枠部29とバッキング材26との間に設けられている。なお、中心線axは、ウェハ保持部27の中心線であり、バッキング材26の中心線であり、ヘッド本体部21の中心線であり、研磨ヘッド2の中心線である。
【0035】
枠部29は、略円環形状であり、弾性変形しない材料、例えば樹脂や金属で形成されている。例えば、枠部29の材料として、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含侵させて熱硬化処理をしたガラスエポキシを使用することができる。
【0036】
クッション材28及び枠部29は、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状である。言い換えれば、クッション材28及び枠部29の厚さは径方向の位置によらず略一定である。
【0037】
また、枠部29は、研磨パッド3と当接する面の外周縁(外周面29bと底面29cとが交差する縁)に微小な円弧形状(R形状)が形成されている。これにより、枠部29の外周縁から底面29cにスラリが流入しやすくなる。なお、枠部29には、研磨パッド3と当接する面の外周縁に面取り加工が施されていてもよい。
【0038】
クッション材28の内周面28a及び枠部29の内周面29aは直径が略同一であり、内周面28aと内周面29aとが中空部27aの外周面を構成する。また、クッション材28の外周面28b及び枠部29の外周面29bは直径が略同一である。
【0039】
クッション材28の厚さは、枠部29の厚さの略1/3であり、ウェハ保持部27の高さの略1/4である。これにより、ウェハ保持部27の強度を保ったまま、クッション材28の弾性変形によりウェハ保持部27の厚さを調整することができる。ただし、クッション材28の厚さは、ウェハ保持部27の高さの略1/4以上であればよい。ただし、枠部29の厚さは、ウェハWの厚さより薄い。また、クッション材28の弾性変形量がウェハ保持部27の高さの略1/16以上となるように、クッション材28の材料が選択される。これにより、ウェハWの厚さのばらつき分だけウェハ保持部27の厚さを調整することができる。本実施の形態では、ウェハWの厚さが775μm±10μmであり、クッション材28の厚さが200μm±10μmであり、枠部29の厚さが600μm±10μmであり、クッション材28の弾性変形量が略50μmである。
【0040】
図4は、枠部29の底面29c(図3参照)を模式的に示す図である。枠部29の底面29cには、枠部29の外周面29bと内周面29aとを連結する複数の溝29dが設けられている。溝29dは、枠部29の径方向に沿っている。なお、溝29dの太さ、数、配置等は図4に示す形態に限られない。
【0041】
次に、研磨ヘッド2および研磨ヘッド2を備える研磨装置1の動作及び機能について説明する。図2に示すように、バッキング材26にウェハWの裏面が吸着されることで、研磨ヘッド2がウェハWを保持する。そして、研磨ヘッド2を研磨パッド3に近づけてウェハWの表面と研磨パッド3とを当接させる。圧縮空気が供給源からエア室23aに供給されると、圧縮空気がウェハW及びウェハ保持部27を均一に押圧し、ウェハW全面が研磨パッド3に均一に押圧される。そして、研磨パッド3上にスラリを供給しつつ、定盤4と研磨ヘッド2とを回転させることにより、ウェハWを平坦に研磨する。
【0042】
枠部29とバッキング材26との間にクッション材28が設けられているため、圧縮空気がウェハ保持部27を押圧することで、クッション材28が弾性変形し、枠部29が上下方向(図2、3における上下方向)に移動する。枠部29の厚さがウェハWの厚さより薄く、クッション材28が弾性変形していない(無負荷状態)ときのウェハ保持部27の厚さがウェハWの厚さ以上であるため、主にクッション材28が弾性変形する(バッキング材26も弾性変形するが、クッション材28の弾性変形量の方が大きい)ことで、ウェハ保持部27の厚さがウェハWの厚さと略同一となる。これにより、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにし、研磨後のウェハWの表面を平坦にすることができる。
【0043】
また、枠部29の底面29cに溝29d(図4参照)を有するため、スラリは、ウェハ保持部27の外周面ではじかれず、溝29dを通って中空部27aに向けて流れる。その結果、スラリがウェハWと研磨パッド3との間に入り込み、スラリ不足による研磨の不具合(例えば、ウェハWの焼き付き、研磨不足、ウェハWの十分な平坦化を行うことができない)が防止される。
【0044】
本実施の形態によれば、ウェハ保持部27が弾性変形するクッション材28を含み、主にクッション材28が弾性変形することで、ウェハ保持部27の厚さをウェハWの厚さと略一致させて、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。例えば本実施の形態のように、ウェハ保持部27の厚さをウェハWの厚さと略一致させることで、ウェハWの面ダレを略1mm以下とすることができる。その結果、ウェハWの周縁部からも集積回路を製造することができ、歩留まりが向上する。また、クッション材28の内周面及び枠部29の内周面は直径が略同一であり、クッション材28の外周面及び枠部29の外周面は直径が略同一であるため、ウェハ保持部27の強度が高くなる。
【0045】
なお、本実施の形態では、枠部29の底面29cに、枠部29の径方向に沿った溝29dが形成されているが、溝は枠部29の外周面29bと内周面29aとを連結すればよく、溝の形態はこれに限られない。図5~7は、溝の変形例を示す模式図である。
【0046】
図5は、底面29cに溝29eが形成された変形例である。枠部29の径方向に対して、溝29eが傾いている。図6は、底面29cに溝29e、29fが形成された変形例である。枠部29の径方向に対して溝29e、29fが傾いており、溝29eと溝29fとが交差する。図7は、底面29cに溝29d、29gが形成された変形例である。溝29gは、略円環形状であり、溝29dを連結する。これにより、ウェハ保持部27の外側から内側に向けてスラリが移動しやすくなる。
【0047】
また、本実施の形態では、底面29cに溝29dを形成することで、スラリをウェハ保持部27の外側から内側に向けて流しているが、スラリをウェハ保持部27の外側から内側に向けて流す方法はこれに限られない。図8は、変形例にかかる枠部29’を有するウェハ保持部27’を模式的に示す図である。枠部29’の下面29hは、内周面側が外周面側より下方に(研磨パッド3に向けて)突出するような勾配を有する。そのため、スラリがウェハ保持部27’の外側から内側に向けて流れやすくなる。なお、下面29hに、溝29dや溝29eが形成されていてもよい。
【0048】
<第2の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態は、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状である略円環形状のクッション材28及び枠部29を有するウェハ保持部27を有したが、ウェハ保持部の形態はこれに限られない。
【0049】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対してクッション材及び枠部の形状が異なる形態である。第1の実施の形態と第2の実施の形態との差異はウェハ保持部のみであるため、以下第2の実施の形態にかかるウェハ保持部27Aを有する研磨ヘッド2Aについて説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0050】
図9は、研磨ヘッド2Aのウェハ保持部27A近傍を拡大表示した図である。なお、図9では、中心線axを含む面で研磨ヘッド2Aを切断している。
【0051】
ウェハ保持部27Aは、主として、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材28Aと、弾性変形しない材料で形成された略円環形状の枠部29Aと、を有する。クッション材28Aは、バッキング材26に接着又は貼付されており、枠部29Aはクッション材28Aに接着又は貼付されている。クッション材28Aは、枠部29Aとバッキング材26との間に設けられている。
【0052】
クッション材28Aは、弾性部材、例えばゴムや高分子ゲルで形成されており、弾性変形が可能である。クッション材28Aは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略三角形状である。枠部29Aは、弾性変形しない材料、例えば樹脂や金属で形成されている。枠部29Aは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略三角形状である。つまり、ウェハ保持部27Aの厚さは、径方向の位置によらず略一定であり、クッション材28A及び枠部29Aの厚さは、それぞれ、径位置に応じて変化し、内周側と外周側とで異なる。
【0053】
クッション材28Aの内周面及び枠部29Aは直径が略同一であり、クッション材28Aの外周面及び枠部29Aの外周面は直径が略同一である。クッション材28A及び枠部29Aは、研磨パッド3と当接する面の外周縁に微小な円弧形状(R形状)が形成されている。なお、R形状に変えて、クッション材28A及び枠部29Aの研磨パッド3と当接する面の外周縁に面取り加工が施されていてもよい。
【0054】
図9に示す断面視において、クッション材28Aの斜辺と枠部29Aの斜辺とが対向しており、ウェハ保持部27A全体としては、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状である。クッション材28Aの斜辺は内周面側を向いており、枠部29Aの斜辺は外周面側を向いている。
【0055】
本実施の形態によれば、ウェハ保持部27Aが弾性変形するクッション材28Aを含み、主にクッション材28Aが弾性変形することで、ウェハ保持部27Aの厚さをウェハWの厚さと略一致させて、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。また、ウェハ保持部27Aの内周面側に硬い枠部29Aのみが配置される(クッション材28Aは配置されない)ため、ウェハWの保持強度を高くすることができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、クッション材28Aの斜辺は内周面側を向いており、枠部29Aの斜辺は外周面側を向いているが、図10に示すウェハ保持部27A’のように、クッション材28A’の斜辺が外周面側を向いており、枠部29A’の斜辺が内周面側を向いていてもよい。
【0057】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態に対してクッション材及び枠部の形状が異なる形態である。第1の実施の形態と第3の実施の形態との差異はウェハ保持部のみであるため、以下第3の実施の形態にかかるウェハ保持部27Bを有する研磨ヘッド2Bについて説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0058】
図11は、研磨ヘッド2Bのウェハ保持部27B近傍を拡大表示した図である。なお、図11では、中心線axを含む面で研磨ヘッド2を切断している。
【0059】
ウェハ保持部27Bは、主として、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材28Bと、弾性変形しない材料で形成された略円環形状の枠部29Bと、を有する。クッション材28Bは、バッキング材26に接着又は貼付されており、枠部29Bはクッション材28Bに接着又は貼付されている。クッション材28Bは、枠部29Bとバッキング材26との間に設けられている。
【0060】
クッション材28Bは、弾性部材、例えばゴムや高分子ゲルで形成されており、弾性変形が可能である。クッション材28Bは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が、略三角形状の部分と、略三角形状の部分の外側に配置された長方形の部分と、を含む。枠部29Bは、弾性変形しない材料、例えば樹脂や金属で形成されている。枠部29Bは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が、略三角形状の部分と、クッション材28Bの下側の辺に沿った長方形の部分と、を含む。つまり、ウェハ保持部27Bの厚さは、径方向の位置によらず略一定であり、クッション材28B及び枠部29Bの厚さは、それぞれ内周側と外周側とで異なる。
【0061】
枠部29Bは、研磨パッド3と当接する面の外周縁に微小な円弧形状(R形状)が形成されている。なお、R形状に変えて、枠部29Bの研磨パッド3と当接する面の外周縁に面取り加工が施されていてもよい。
【0062】
図11に示す断面視において、クッション材28Bの斜辺と枠部29Aの斜辺とが対向しており、ウェハ保持部27B全体としては、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状である。
【0063】
本実施の形態によれば、ウェハ保持部27Bが弾性変形するクッション材28Bを含み、主にクッション材28Bが弾性変形することで、ウェハ保持部27Bの厚さをウェハWの厚さと略一致させて、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。また、ウェハ保持部27Bの内周面側に硬い枠部29Bのみが配置される(クッション材28Bは配置されない)ため、ウェハWの保持強度を高くすることができる。
【0064】
なお、中心線axを含む面で切断したときのクッション材28Bの断面形状はこれに限られない。中心線axを含む面で切断したときの断面において、クッション材28Bが略三角形状の部分を含んでいればよく、例えば、中心線axを含む面で切断したときのクッション材28Bの断面形状が略台形形状であってもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、クッション材28Bの斜辺は内周面側を向いており、枠部29Bの斜辺は外周面側を向いているが、クッション材28Bの斜辺が外周面側を向いており、枠部29Bの斜辺が内周面側を向いていてもよい。
【0066】
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態に対してクッション材及び枠部の形状が異なる形態である。第1の実施の形態と第4の実施の形態との差異はウェハ保持部のみであるため、以下第4の実施の形態にかかるウェハ保持部27Cを有する研磨ヘッド2Cについて説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0067】
図12は、研磨ヘッド2Cのウェハ保持部27C近傍を拡大表示した図である。なお、図12では、中心線axを含む面で研磨ヘッド2を切断している。
【0068】
ウェハ保持部27Cは、主として、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材28Cと、弾性変形しない材料で形成された略円環形状の枠部29Cと、を有する。クッション材28Cは、バッキング材26に接着又は貼付されており、枠部29Cはクッション材28Cに接着又は貼付されている。クッション材28Cは、枠部29Cとバッキング材26との間に設けられている。
【0069】
クッション材28Cは、弾性部材、例えばゴムや高分子ゲルで形成されており、弾性変形が可能である。クッション材28Cは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状である。枠部29Cは、弾性変形しない材料、例えば樹脂や金属で形成されている。枠部29Cは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略L字形状である。ウェハ保持部27C全体としては、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状である。枠部29Cは、研磨パッド3と当接する面の外周縁に微小な円弧形状(R形状)が形成されている。なお、R形状に変えて、枠部29Cの研磨パッド3と当接する面の外周縁に面取り加工が施されていてもよい。
【0070】
クッション材28Cの内周面28cと下面28dとは、枠部29Cと当接する。言い換えれば、ウェハ保持部27Cの内周面側には、クッション材28Cが配置されず、枠部29Cのみが配置される。
【0071】
本実施の形態によれば、ウェハ保持部27Cが弾性変形するクッション材28Cを含み、主にクッション材28Cが弾性変形することで、ウェハ保持部27Cの厚さをウェハWの厚さと略一致させて、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。また、ウェハ保持部27Cの内周面側に硬い枠部29Cのみが配置されるため、ウェハWの保持強度を高くすることができる。
【0072】
<第5の実施の形態>
本発明の第5の実施の形態は、第1の実施の形態に対してクッション材及び枠部の形状が異なる形態である。第1の実施の形態と第5の実施の形態との差異はウェハ保持部のみであるため、以下第5の実施の形態にかかるウェハ保持部27Dを有する研磨ヘッド2Dについて説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0073】
図13は、研磨ヘッド2Dのウェハ保持部27D近傍を拡大表示した図である。なお、図13では、中心線axを含む面で研磨ヘッド2を切断している。
【0074】
ウェハ保持部27Dは、主として、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材28Dと、弾性変形しない材料で形成された略円環形状の枠部29Dと、を有する。クッション材28Dは、バッキング材26に接着又は貼付されており、枠部29Dはクッション材28Dに接着又は貼付されている。クッション材28Dは、枠部29Dとバッキング材26との間に設けられている。
【0075】
クッション材28Dは、弾性部材、例えばゴムや高分子ゲルで形成されており、弾性変形が可能である。クッション材28Cは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状である。枠部29Dは、弾性変形しない材料、例えば樹脂や金属で形成されている。枠部29Dは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状である。また、枠部29Dの上面29iには略円環形状の凹部29jが設けられている。
【0076】
凹部29jは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状であり、内部にクッション材28Dが設けられている。凹部29jの深さはクッション材28Dの厚さより浅く、凹部29jの内部にクッション材28Dが設けられた状態において、上面29iからクッション材28Dが突出する。
【0077】
枠部29Dは、研磨パッド3と当接する面の外周縁に微小な円弧形状(R形状)が形成されている。なお、R形状に変えて、枠部29Dの研磨パッド3と当接する面の外周縁に面取り加工が施されていてもよい。
【0078】
ウェハ保持部27D全体としては、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状である。また、ウェハ保持部27Dの内周面側には、クッション材28Dが配置されず、枠部29Dのみが配置される。
【0079】
本実施の形態によれば、ウェハ保持部27Dが弾性変形するクッション材28Dを含み、主にクッション材28Dが弾性変形することで、ウェハ保持部27Dの厚さをウェハWの厚さと略一致させて、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。また、ウェハ保持部27Dの内周面側に硬い枠部29Dのみが配置されるため、ウェハWの保持強度を高くすることができる。
【0080】
<第6の実施の形態>
本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態に対してクッション材及び枠部の形状が異なる形態である。第1の実施の形態と第6の実施の形態との差異はウェハ保持部のみであるため、以下第6の実施の形態にかかるウェハ保持部27Eを有する研磨ヘッド2Eについて説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0081】
図14は、研磨ヘッド2Eのウェハ保持部27E近傍を拡大表示した図である。なお、図14では、中心線axを含む面で研磨ヘッド2Eを切断している。
【0082】
ウェハ保持部27Eは、主として、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材28Eと、弾性変形しない材料で形成された枠部29Eと、を有する。クッション材28Eの内周面及び枠部29Eの内周面は直径が略同一であり、クッション材28Eの外周面及び枠部29Eの外周面は直径が略同一である。
【0083】
枠部29Eは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状の第1枠部29kと、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略L字形状の第2枠部29lと、を有する。第1枠部29kは、バッキング材26に当接している。第2枠部29lは、略L字形状の長辺が第1枠部29kの下側に位置し、略L字形状の短辺が第1枠部29kの外周側に位置するように設けられる。第2枠部29lは、研磨パッド3と当接する面の外周縁に微小な円弧形状(R形状)が形成されている。なお、R形状に変えて、第2枠部29lの研磨パッド3と当接する面の外周縁に面取り加工が施されていてもよい。
【0084】
クッション材28Eは、弾性部材、例えばゴムや高分子ゲルで形成されており、弾性変形が可能である。クッション材28Eは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が2つのL字が組み合わされた形状であり、複数の屈曲部を有する。クッション材28Eは、第1枠部29kと第2枠部29lとの間に設けられている。
【0085】
本実施の形態によれば、ウェハ保持部27Eが弾性変形するクッション材28Eを含み、主にクッション材28Eが弾性変形することで、ウェハ保持部27Eの厚さをウェハWの厚さと略一致させて、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。また、第1枠部29kと第2枠部29lでクッション材28Eを挟み、ウェハ保持部27Eの内周面側に硬い枠部29Eが主に配置されることで、ウェハWの保持強度を高くすることができる。また、クッション材28Eと枠部29Eとの大きさを略同一とすることで、ウェハ保持部27Eの強度を高くすることができる。
【0086】
なお、中心線axを含む面で切断したときの第1枠部29k及び第2枠部29lの配置はこれに限られない。第2枠部29lは、略L字形状の長辺が第1枠部29kの下側に位置し、略L字形状の短辺が第1枠部29kの内周側に位置するように設けられていてもよい。また、クッション材28Eと枠部29Eとの大きさは略同一でなくてもよく、クッション材28Eの内周面が枠部29Eの内周面より大きく、クッション材28Eの外周面が枠部29Eの外周面より小さくてもよい。
【0087】
<第7の実施の形態>
本発明の第7の実施の形態は、第1の実施の形態に対してクッション材及び枠部の形状が異なる形態である。第1の実施の形態と第7の実施の形態との差異はウェハ保持部のみであるため、以下第7の実施の形態にかかるウェハ保持部27Fを有する研磨ヘッド2Fについて説明し、その他の部分については説明を省略する。
【0088】
図15は、研磨ヘッド2Fのウェハ保持部27F近傍を拡大表示した図である。なお、図15では、中心線axを含む面で研磨ヘッド2Fを切断している。
【0089】
ウェハ保持部27Fは、主として、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材28Fと、弾性変形しない材料で形成された枠部29Fと、を有する。
【0090】
枠部29Fは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状の第1枠部29mと、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略L字形状の第2枠部29nと、を有する。第1枠部29mと第2枠部29nとは当接していない。第2枠部29nは、略L字形状の長辺が第1枠部29mの下側に位置し、略L字形状の短辺が第1枠部29mの外周側に位置するように設けられている。第1枠部29mは、バッキング材26に当接している。第2枠部29nは、研磨パッド3と当接する面の外周縁に微小な円弧形状(R形状)が形成されている。なお、R形状に変えて、第2枠部29nの研磨パッド3と当接する面の外周縁に面取り加工が施されていてもよい。
【0091】
クッション材28Fは、弾性部材、例えばゴムや高分子ゲルで形成されており、弾性変形が可能である。クッション材28Fは、中心線axを含む面で切断したときの断面形状が略矩形形状であり、第2枠部29nの略L字形状の短辺の先端に設けられている。クッション材28Fは、バッキング材26に当接している。
【0092】
本実施の形態によれば、ウェハ保持部27Fが弾性変形するクッション材28Fを含み、主にクッション材28Fが弾性変形することで、ウェハ保持部27Fの厚さをウェハWの厚さと略一致させて、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。また、ウェハ保持部27Fの内周面側に硬い枠部29Fのみが配置されるため、ウェハWの保持強度を高くすることができる。
【0093】
なお、中心線axを含む面で切断したときの第1枠部29m及び第2枠部29nの配置はこれに限られない。第2枠部29nは、略L字形状の長辺が第1枠部29mの下側に位置し、略L字形状の短辺が第1枠部29mの内周側に位置するように設けられていてもよい。
【0094】
<第8の実施の形態>
上記第1~第7の実施の形態では、バッキング材とウェハ保持部とがテンプレートを構成し、テンプレートがヘッド本体部21に設けられたが、バッキング材及びウェハ保持部をヘッド本体部21に設ける形態はこれに限られない。
【0095】
図16は、バッキング材26Aとウェハ保持部27が別々にヘッド本体部21に設けられた研磨ヘッド2Gの概略を示す断面図である。バッキング材26Aとバッキング材26との差異は大きさのみである。略円環形状のウェハ保持部27の内部には、バッキング材26A及びウェハWが収容可能である。バッキング材26AのウェハWが当接しない面及びウェハ保持部27は、それぞれヘッド本体部21(ここでは、チャックプレート24)に設けられている。
【0096】
バッキング材26Aとウェハ保持部27が別々にヘッド本体部21に設けられた(バッキング材26A及びウェハ保持部27がテンプレートを構成しない)研磨ヘッド2Gであっても、研磨ヘッド2等と同様に、主にクッション材28が弾性変形することで、ウェハ保持部27の厚さをウェハWの厚さと略一致させて、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。
【0097】
<第9の実施の形態>
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態と同様、バッキング材とウェハ保持部とがテンプレートを構成せず、バッキング材とウェハ保持部が別々にヘッド本体部21に設けられた形態である。
【0098】
図17は、バッキング材26Aとウェハ保持部27Gが別々にヘッド本体部21に設けられた研磨ヘッド2Hの概略を示す断面図である。
【0099】
ウェハ保持部27Gは、主として、弾性変形が可能な材料で形成された略円環形状のクッション材32と、弾性変形しない材料で形成された枠部29と、を有する。クッション材32は、発泡ポリウレタン等の発泡プラスチック製の板状又はシート状の部材であり、内部に微小な空洞が多数存在するとともに、表面に気泡を含まない層(いわゆるスキン層)が残っている。クッション材32は、内部に存在する微小な空洞により、加圧により厚さが変化する。
【0100】
略円環形状のウェハ保持部27の内部には、バッキング材26A及びウェハWが収容可能である。バッキング材26AのウェハWが当接しない面及びウェハ保持部27G(ここでは、クッション材32)は、それぞれ基材33に設けられている。なお、バッキング材26A及びクッション材32は、基材33に接着されていてもよいし貼付されていてもよい。
【0101】
基材33は、布、紙、樹脂フィルム等であり、基材33には両面テープ31が貼付されている。基材33は、両面テープ31により、ヘッド本体部21(ここでは、チャックプレート24)に貼付されている。
【0102】
バッキング材26Aとウェハ保持部27Gが別々にヘッド本体部21に設けられた研磨ヘッド2Hであっても、研磨ヘッド2等と同様に、主にクッション材32が弾性変形することで、ウェハ保持部27Gの厚さをウェハWの厚さと略一致させて、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。
【0103】
また、本実施の形態では、クッション材32の表面に気泡を含まない層が残っているため、クッション材32を基材33に接着するときにクッション材32と基材33とを確実に接着することができる。例えば、発泡ポリウレタン製のシートを薄くスライスして発泡部を露出させたバッキング材26を使用し、ウェハ保持部27を接着してテンプレート25とする場合には、バッキング材26の表面に存在する微小な空洞に接着剤が含侵してバッキング材26の物性が変わったり、接着強度が低下したりする問題が発生し得る。それに対し、本実施の形態では、クッション材32の表面に気泡が存在しないため、接着に起因する問題が発生しない。また、クッション材32の表面に気泡が存在しないため、接着剤の選択肢が増すという利点がある。
【0104】
<第10の実施の形態>
また、上記第1~第7の実施の形態では、実施の形態では、テンプレートをチャックプレート24に設けることで、テンプレートをヘッド本体部21に設けたが、テンプレートをヘッド本体部に設ける形態はこれに限られない。
【0105】
図18は、ヘッド本体部21Aが弾性基材34を有し、テンプレート25が弾性基材34に設けられた研磨ヘッド2Iの概略を示す断面図である。
【0106】
弾性基材34は、ゴム等の弾性を有する材料で形成された略円板形状の部材である。弾性基材34は、シート状の材料の外周部分を折り曲げることで、周縁に空洞を形成している。弾性基材34は、ケース23Aの下端に形成された凹部に挿入されている。これにより、ケース23Aの内部にエア室23cが形成される。圧縮空気は、エア供給源から空気流路23bを介してエア室23cに供給される。
【0107】
バッキング材26のウェハが当接しない面が弾性基材34に設けられることで、テンプレートがヘッド本体部21Aに設けられる。圧縮空気がエア室23cに滞留することで、圧縮空気がウェハWの全面を均一に押圧する。
【0108】
テンプレートが弾性基材34に設けられた研磨ヘッド2Hであっても、研磨ヘッド2等と同様に、主にクッション材28が弾性変形することで、ウェハ保持部27の厚さをウェハWの厚さと略一致させて、ウェハWの周縁部が過剰に研磨されないようにすることができる。
【0109】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述した各実施形態や変形例として説明した構成を適宜組み合わせた構成を採用することが可能である。
【0110】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略平行とは、厳密に平行の場合には限られない。また、例えば、略矩形形状とは、厳密に矩形形状の場合には限られない。また、例えば、単に平行、直交、同一等と表現する場合において、厳密に平行、直交、同一等の場合のみでなく、略平行、略直交、略同一等の場合を含むものとする。
【符号の説明】
【0111】
1:研磨装置
2、2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、2H、2I:研磨ヘッド
3:研磨パッド
4:定盤
5:スラリ供給部
21、21A:ヘッド本体部
22:ドライブシャフト
22a:空気流路
23:ケース
23a、23c:エア室
23b:空気流路
24:チャックプレート
25:テンプレート
26:バッキング材
27、27’、27A、27A’、27B、27C、27D、27E、27F、27G:ウェハ保持部
27a:中空部
28、28A、28A’、28B、28C、28D、28E、28F、32:クッション材
28a:内周面
28b:外周面
28c:内周面
28d:下面
29、29’、29A、29A’、29B、29C、29D、29E、29F:枠部
29a:内周面
29b:外周面
29c:底面
29d、29e、29f、29g:溝
29h:下面
29i:上面
29j:凹部
29k、29m:第1枠部
29l、29n:第2枠部
31 :両面テープ
33 :基材
34 :弾性基材
100:研磨装置
101:研磨ヘッド
102:バッキング材
103:テンプレート
104:研磨パッド

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