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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】建物の制振装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20230906BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20230906BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20230906BHJP
   F16F 9/508 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
E04H9/02 311
F16F15/023 A
F16F9/34
F16F9/508
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019127929
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021011797
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】523049122
【氏名又は名称】C&eホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 満夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智幸
(72)【発明者】
【氏名】上野 浩志
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-221976(JP,A)
【文献】特開2014-025295(JP,A)
【文献】特開2007-138606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
F16F 15/00-15/36
F16F 9/00-9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎上に固定される土台と、梁と、前記土台と梁との間にて並行に配置された2本の柱とを有する構造体を含む建物に取り付けられる建物の制振装置において、
取付け装置と、
前記土台に前記取付け装置により取付けられ伝達架構と、
該伝達架構の上端部に一端を連結され、前記梁の移動により略水平方向に伸縮する油圧ダンパと、を備え、
前記取付け装置は、前記油圧ダンパからの力による引張り方向の力を前記基礎に固定されたアンカーボルトに担させるように構成され
前記取付け装置は、前記土台上に配置される取付け金具と、前記土台を貫通して配置される支持部材と、を有し、前記支持部材の上端が前記取付け金具の下面と接しかつ前記支持部材の下端が前記基礎の上面と接することで、前記油圧ダンパからの力により前記取付け装置に作用する圧縮方向の力を、前記支持部材を介して前記基礎担持させるように構成されている、
ことを特徴とする建物の制振装置。
【請求項2】
前記取付け金具は、前記伝達架構の下端部連結され、かつ前記アンカーボルトに前記引張り方向の力に対して一体に連結されるように構成されている、
請求項1記載の建物の制振装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記アンカーボルトを中に通されるスリーブ状の部材である
請求項1又は2記載の建物の制振装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記アンカーボルトを中に通されるスリーブ状の部材と、前記スリーブ状の部材の下端に配置され、かつ下面が前記基礎の上面と接するように配置されたプレート材と、を有する、
請求項1又は2記載の建物の制振装置。
【請求項5】
前記スリーブ状の部材は、円筒部材である、
請求項3又は4記載の建物の制振装置。
【請求項6】
前記伝達架構は、上端部が連結された2本のブレース材を有し、
前記取付け装置は、前記取付け金具が前記2本のブレース材の一方の下端部と連結され、かつ、前記下端部と前記取付け金具が連結される位置の下方に前記アンカーボルト及び前記支持部材が位置するように構成されている
請求項1ないしのいずれか1項記載の建物の制振装置。
【請求項7】
前記伝達架構は、前記構造体内の上端近傍に上端部を有し、
前記油圧ダンパは、前記伝達架構の上端部と前記梁との間に配置されるように構成されている
請求項1ないしのいずれか1項記載の建物の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物、特に木造建築に用いて好適であり、詳しくは油圧ダンパを用いた建物の制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、木造建物の制振装置にあって、油圧ダンパは、梁と一方の柱との間に頬杖上に斜めに取付けられる。この場合、地震に伴う梁の横変位Xに対する油圧ダンパの移動(変位)Yの比(Y/X)である作動効率eは、1より大幅に小さい値となる。油圧ダンパは、所定ストローク伸縮してエネルギーを吸収することができるのに拘らず、上記小さな作動効率eによる小ストロークで大きな荷重が作用する状態で用いられ、油圧ダンパの機能を十分に発揮できないと共に、油圧ダンパの効率が低くなる。
【0003】
従来、建物の2本の柱及び上梁、下梁(土台)からなる構造物に囲まれた空間内に、梁及び/又は土台に固定されて伝達架構を設け、該伝達架構の間又は該伝達架構と構造物との間に、油圧ダンパを水平方向に向けて配置した建物の制振装置が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
上記伝達架構(伝達部材)を用いて油圧ダンパを水平に配置する制振装置は、作動効率が1となり、比較的大きなストロークにより地震による揺れを吸収して、油圧ダンパを高い効率で用いることができ、これにより建物に対する油圧ダンパの設置数を低減して、コストダウン及び設計の自由度の向上を図ることができる。
【0005】
上記伝達架構は、板状の平板部材からなるもの(特許文献1の図1図2図3、特許文献2の上部伝達部材24、下部伝達部材22)と、鋼材を組立てたブレース材からなるリンク形状のもの(特許文献1の図4図5)があるが、平板部材からなるものは、重量があり、かつ構造物への固定が面倒であり、組付け性が悪い。ブレース材からなるものは、重量も軽く、かつ組付け性もよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-240321号公報
【文献】特開2002-70357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記伝達架構は、梁及び/又は土台に固定されている。上記伝達架構は、地震発生時には梁の横変位に伴う極めて大きなモーメントが作用し、該伝達架構の固定部分に引張り、圧縮の大きな力が作用する。
【0008】
木材1は、図9に示すように、繊維方向L、半径方向R、接線方向Tの互いに直交する3軸があり、これら各軸L,R,Tは、LR面(柾目面)、LT面(板目面)、RT面(木口面)を形成し、木材1の強度的性質は、これら軸方向によって大きく異なる。例えば、針葉樹林のヤング係数を比較すると、L軸方向のヤング率E(L)、R軸方向のヤング率E(R)、T軸方向のヤング率E(T)は、
E(L):E(R):E(T)=100:10:5
となる。
【0009】
特に、伝達架構の土台の固定部分は、地震の揺れで梁に水平方向の力が加わると、伝達架構の一方側に引張り、他方側に圧縮の大きな力が作用し、土台から浮上りと、土台自体への沈込み(めり込み)が生じてしまい、土台の木材は、LT面(板目面)又はLR面(柾目面)を上面にして配置されるので、特に沈込み(めり込み)が大きく、油圧ダンパのストロークに傾き(ニゲ)を生じ、所望の油圧ダンパの性能を実現できない場合がある。
【0010】
特許文献2のものは、伝達架構(伝達部材)が平板部材からなるため、重く施工が面倒であり、また撓みが生じ易いが、基礎からアンカーボルトが延びており、該アンカーボルトに下部伝達部材を締付け固定している。これにより、地震の揺れに伴う引張り方向の力(引き抜き力)に対しては、上記アンカーボルトにより耐えることが可能であっても、圧縮方向の力による土台への沈込み(めり込み)に対しては防ぐことはできず、油圧ダンパのストロークにニゲを生じる。
【0011】
そこで、本発明は、伝達架構を地震による力に対して、圧縮方向の力及び引張り方向の力に対してもニゲを生ずることなく固定して、上述した課題を解決した建物の制振装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、基礎(10)上に固定される土台(3)と、梁(5)と、前記土台と梁との間にて並行に配置された2本の柱(6,7)とを有する構造体(2)を含む建物に取り付けられる建物の制振装置(11)において、
取付け装置(21)と、
前記土台(3)に前記取付け装置(21)により取付けられ伝達架構(13)と、
該伝達架構の上端部に一端を連結され、前記梁の移動により略水平方向に伸縮する油圧ダンパ(12)と、を備え、
前記取付け装置(21)は、前記油圧ダンパ(12)からの力による引張り方向の力を前記基礎(10)に固定されたアンカーボルト(25)に担させるように構成され
前記取付け装置(21)は、前記土台(3)上に配置される取付け金具(22)と、前記土台(3)を貫通して配置される支持部材(23、23 )と、を有し、前記支持部材(23、23 )の上端が前記取付け金具(22)の下面と接しかつ前記支持部材(23、23 )の下端が前記基礎(10)の上面と接することで、前記油圧ダンパ(12)からの力により前記取付け装置(21)に作用する圧縮方向の力を、前記支持部材(23、23 )を介して前記基礎(10)担持させるように構成されている、
ことを特徴とする建物の制振装置にある。
【0013】
例えば図2図3を参照して、前記取付け装置(21)は、前記伝達架構(13)の下端部を連結し、かつ前記土台(3)上に配置されると共に前記アンカーボルト(25)に引張り方向の力に対して一体に連結される取付け金具(22)と、前記土台(3)を貫通して配置され、前記取付け金具(22)に作用する圧縮方向の力を前記基礎(10)に伝達する支持部材(23)と、を有してなる。
【0014】
例えば図2を参照して、前記支持部材は、上端を前記取付け金具(22)に接し、前記アンカーボルト(25)を中に通して、前記取付け金具に作用する圧縮方向の力を前記基礎(10)に伝達する円筒部材(23)を有する。
【0015】
例えば図4を参照して、前記支持部材(23)は、前記円筒部材(23a)の下端と前記基礎(10)の上面との間に介在するプレート材(23b)を有する。
【0016】
例えば図5を参照して、前記取付け装置(21)は、前記伝達架構(13)の下端部を連結し、前記土台(3)上に配置され、かつ前記アンカーボルト(25)に引張り方向及び圧縮方向の力に対して一体に連結される取付け金具(22)を有してなる。
【0017】
例えば図6,7を参照して、前記伝達架構は、上端部が連結された2本のブレース材(15,16)を有し、
前記取付け装置(21)は、前記ブレース材の下端を連結する位置(24)の下方に、引張り方向の力を前記基礎に伝達するアンカーボルト(25)と、前記圧縮方向の力を前記基礎に伝達する位置(23)とが配置されてなる。
【0018】
例えば図1図6を参照して、前記伝達架構(13)は、前記構造体(2)内の上端近傍に上端部を有し、
前記油圧ダンパ(12)は、前記伝達架構の上端部(19)と前記梁(5)との間に配置されてなる。
【0019】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0020】
発明の一態様によると、伝達架構を介して油圧ダンパを略水平方向に配置して、作動効率eを略1にして、高い効率で地震エネルギーを吸収できるものでありながら、伝達架構の取付け装置は、引張り方向及び圧縮方向の力を共に基礎にて担持することができ、該取付け装置が土台から浮上り又は沈込み(めり込み)を生じることを防止し、これにより油圧ダンパのストロークにニゲを生じることを防いで、油圧ダンパを地震の揺れに対応して適正にストロークして油圧ダンパの性能を確実かつ正確に実現することができる。
【0021】
また、本発明のある一つの態様によると、取付け装置は、取付け金具と、土台を貫通して配置された支持部材とからなり、比較的簡単な装置で容易に組付けることができる。
【0022】
また、本発明のある一つの態様によると、支持部材は、アンカーボルトを中に通した円筒部材からなるので、伝達架構に作用する引張り方向の力及び圧縮方向の力を同一の上下方向中心線で担持して、確実に取付け装置の動きを規制することができる。
【0023】
また、本発明のある一つの態様によると、支持部材は、円筒部材と基礎との間にプレート材を介在するので、円筒部材に作用する大きな圧縮力をプレート材の所定面積で基礎上面に担持することができる。
【0024】
また、本発明のある一つの態様によると、取付け装置は、アンカーボルトに引張り方向及び圧縮方向の力に対して一体に連結される取付け金具で足り、アンカーボルトが引張り方向及び圧縮方向の両力を伝達する部材からなり、構成の単純化を図ることができる。
【0025】
また、本発明のある一つの態様によると、伝達架構を構成するブレース材の連結位置の下方に、アンカーボルトと、圧縮方向の力を基礎に伝達する支持部材とを配置したので、ブレース材からの引張り方向及び圧縮方向の力が、取付け金具に曲げ応力を作用することなく直接的基礎に伝達され、取付け金具の変形を防いで制振装置の性能を長期に亘って確実に保持することができる。
【0026】
また、本発明のある一つの態様によると、伝達架構が下端を取付け装置にて固定され、かつその上端部と梁との間に油圧ダンパを配置したので、伝達架構は、構造が簡単となり、かつ取付け装置により引張り方向及び圧縮方向の力を基礎にて担持するので、油圧ダンパの性能を確実かつ正確に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態による建物の制振装置を示す全体正面図。
図2】そのブレース材の土台側取付け装置を示す概略断面図。
図3】ブレース材の土台側取付け装置を示す概略分解斜視図。
図4】取付け装置の一部変更した実施の形態を示す断面図。
図5】取付け装置の他の実施の形態を示す断面図。
図6】他の実施の形態による建物の制振装置を示す全体正面図。
図7】その取付け装置を示す正面断面図。
図8】建物の制振装置の他の実施の形態を示す全体正面図。
図9】木材の強度的性質を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。木造構造体2は、図1に示すように、建物を構成する骨組みであり、該木造構造体2が組合せられて木造建物となる。該木造構造体2は、水平方向に並行する2本の横架材である土台3及び梁5と、2本の横架材の間で連結する垂直方向に並行する2本の柱6,7とを有する。更に、2本の柱6,7の中央において、横架材3,5との間を連結する補助柱9が設けられている。上記土台3は、コンクリート製の基礎10上に固定され、上記木造構造体2からなる木造建物は、上記基礎10に建てられる。梁5、土台3及び柱6,7とは、柱の上端及び下端に形成されたほぞを、梁5及び土台3に形成されたほぞ穴に嵌込むことによって結合されている。該木造構造体2における結合は、静止状態にあっては固定(剛)結合であるが、地震により木造建物が揺れる場合、横架材及び柱は、平行四辺形を保って揺れるので、横架材に対して柱が回り対偶による接合構造として解析される。
【0029】
上記木造構造体2の内部に制振装置11が配置される。該制振装置11は、油圧ダンパ12と伝達架構13とを有する。伝達架構13は、鋼材からなる2本のブレース材15,16を有し、両ブレース材は、上端が梁5の近傍位置にてピン17により一体に結合されている。一方のブレース材15は、柱7に平行に延び、下端にて土台3に結合されている。他方のブレース材16は、所定傾斜角で下方に延び、下端にて土台3に結合されている。従って、これら2本のブレース材15,16は、下端を土台3に固定された3点リンク構造の固定部材からなる伝達架構13となる。ブレース材15,16の上端部分には取付けブラケット19が一体に固定されており、梁5の他方側の柱6近傍にも取付けブラケット20が梁5を貫通するボルト等により強固に固定されており、これら2個の取付けブラケット19,20の間に制振用の前記油圧ダンパ12が梁5の下面に沿って略水平に取付けられている。該油圧ダンパは、本出願人が開示した特許第5620596号公報又は特開2016-89912号公報記載の油圧ダンパが好ましい。
【0030】
上記2本のブレース材15,16下端は、図2及び図3に示すように、取付け装置21により土台3に固定される。取付け装置21は、取付け金具22と土台3の木材に貫通して配置されたスリーブ状の支持部材23と、基礎10から延びるアンカーボルト25と、を有する。取付け金具22は、鋼板からなる取付け板22aと、該取付け板22aの上面に溶接により固定されたロ字状の連結部材22bとを有する。該連結部材の両側面には孔22cが形成され、連結部材の空間部にブレース材15又は16の下端を差入れて、揃った各孔15a(16a),22c,22cにピンボルト24を差込んで締付け固定することによりブレース材15又は16が連結される。
【0031】
土台3に挿入、固定された支持部材23は、円筒部材からなり、その中にアンカーボルト25が差込まれた状態で、土台3は、基礎10上に固定される。上記取付け金具22の取付け板22aには連結部材22bを中央にして前後に孔22d,22dが形成されている。上記支持部材23は、土台の厚さと略々同じ長さからなり、上記取付け金具22を土台3上に置くと、支持部材23の上面が取付け板22aの下面に丁度当接し、支持部材23から所定量上方に突出した状態にある上記アンカーボルト25の上端ボルト部が上記孔22d,22dから突出する。そして、該突出したアンカーボルト25の上端ボルト部にナット26が締付けられることにより、取付け装置21が土台3上に固定される。
【0032】
地震により木造建物が揺れると、木造構造体2も揺れて、梁5が左右に移動する。伝達架構13は、下端が土台3に固定されており、油圧ダンパ12は、シリンダ側が伝達架構13に固定されてロッド側が梁5に伴って移動して、略水平状態で伸縮する。油圧ダンパ12が伸長した状態では一方のブレース材15に圧縮力が作用し、他方のブレース材16に引張り力が作用し、油圧ダンパ12が収縮した状態では一方のブレース材15に引張り力が作用し、他方のブレース材16に圧縮力が作用する。これら圧縮力及び引張り力は、取付け装置21に作用するが、該力は、油圧ダンパ12の力Fに比して、3,4倍(3~4F)に拡大して作用する。
【0033】
取付け装置21に作用する引張り力は、取付け金具22からナット26を介してアンカーボルト25に引張り力として作用し、取付け装置21に作用する圧縮力は、取付け金具22から支持部材23を介して基礎10の上面に圧縮力として作用する。即ち、上記伝達架構13を介して取付け装置21に作用する大きな力は、引張り方向の力も圧縮方向の力も共に基礎10に作用して、木材1の弱い面(LT面、LR面)からなる土台3に作用することはない。これにより、油圧ダンパ12は、土台3を沈込む(めり込む)ような変形によるストロークニゲを生ずることなく、正確かつ確実に作用して、油圧ダンパ12の所定の減衰特性で作用して、地震エネルギーを吸収する。
【0034】
図4は、一部変形した取付け装置を示し、該取付け装置21は、支持部材23が円筒部材23aと、該円筒部材の下端に配置されたプレート材23bとからなる。該プレート材23bは、アンカーボルト25用の孔を中心に有し、かつ所定面積で基礎10の上面に当接して、支持部材23に作用する圧縮力を比較的大きな面積で基礎10に作用する。これにより、伝達架構13から大きな力が取付け装置21に作用しても、支持部材23及び基礎10の上面を変形することなく、取付け装置21を正確な位置に保持する。
【0035】
図5は、更に変更した取付け装置を示し、該取付け装置21は、圧縮力をもアンカーボルト25に作用する。即ち、アンカーボルト25に、取付け金具22の取付け板22aの上面に接するようにナット26を螺合すると共に、取付け板22aの下面に接するようにナット27を螺合する。これにより、取付け装置21に作用する引張り方向の力は、先の実施の形態と同様に上側のナット26によりアンカーボルト25に引張り力として作用し、取付け装置21に作用する圧縮方向の力は、取付け板22aから下側のナット27を介してアンカーボルト25に圧縮力として作用する。
【0036】
これにより、伝達架構13から取付け装置21に作用する引張り方向の力及び圧縮方向の力もアンカーボルト25を介して基礎10で担持し、簡単な構成でもって取付け装置21を一定位置に保持し得る。
【0037】
ついで、図6及び図7に沿って、一部変更した取付け装置について説明する。本取付け装置21は、ブレース材15,16の連結部の下方にアンカーボルト25及び支持部材23が配置される。ブレース材に作用する引張り方向の力及び圧縮方向の力が、取付け金具22の取付け板22aに曲げ応力を略生じることなくアンカーボルト25及び支持部材23に直接作用する。取付け装置21は、取付け金具22と、支持部材23と、アンカーボルト25とを有し、取付け金具22は、取付け板22aと連結部材22bとを有する。取付け板22aには連結部材22bのロ字状の空間S内部分にアンカーボルト25用の孔22dを有し、連結部材22bは、先の実施の形態より高い構造からなり、ブレース材15,16を連結する孔が取付け板22aより離れた高い位置にある。即ち、ブレース材15,16の連結部24と取付け板22aとの間に、ナット26を螺合する空間を有する。取付け板22aは、2本のブレース材15,16の取付け装置21に共通した一枚の長い板材とするのが好ましい。
【0038】
本取付け装置21は、ブレース材15,16を連結しない状態、即ち連結部材22bのロ字状空間Sが空の状態で、該空間S内の孔22dから突出したアンカーボルト25の先端にT型ボックスレンチ等によりナット26を締付けて取付け装置21を土台3上に固定する。左右の取付け装置21が土台3上に固定された状態で、連結部材22bの孔及びブレース材15又は16の孔にピンボルト24を差込み、ブレース材15,16を連結する。この際、ピンボルト24とアンカーボルト25の上端との間には所定隙間があり、干渉することはない。
【0039】
本取付け装置21は、ブレース材15,16からの引張り方向の力及び圧縮方向の力は、取付け板22aに殆ど曲げ応力として作用することなく、直接アンカーボルト25又は支持部材23を介して基礎10に作用し、取付け装置21が所定位置に保持される。本実施の形態によると、比較的簡単な構成にて、伝達架構13を所定位置に保持して、油圧ダンパ12の作用を正確に作動し得る。なお、取付け装置21の構成は図2のものに限らず、図4図5のものでもよい。上述したブレース材15,16の連結部24の下方とは、連結部材22bで囲まれた取付け板22bの範囲内を意味する。望ましくは、連結部24の位置と、引張り方向の力を基礎に伝達するアンカーボルト25の位置と、圧縮方向の力を基礎に伝達する例えば支持部材23,23の位置とが、上下方向の同一中心線上に配置される。
【0040】
図8に沿って、他の実施の形態による制振装置11について説明する。本実施の形態は、伝達架構が梁5に固定された上伝達架構13と土台3に固定された下伝達架構13とからなる。上伝達架構13及び下伝達架構13は、それぞれ2本のブレース材15,16及び15,16からなり、それぞれ先端部をブラケット19,19を介して互に連結して3角形状からなる。上伝達架構13のブレース材15,16の上端は、取付けブラケット32,32を介して梁5に取付けられ、下伝達架構13のブレース材15,16の下端は、前述した取付け装置21,21により土台3及び基礎10に固定される。
【0041】
上伝達架構13の先(下)端部と下伝達架構13の先(上)端部との間に、ブラケット19,19を介して油圧ダンパ12が取付けられる。上記上下伝達架構13,13の先端位置は、木造構造体2の高さ方向1/2の位置にあり、上記油圧ダンパ12は、略水平方向に配置され、地震による木造構造体2の揺れに対して、土台3及び基礎10に固定されている下伝達架構13と梁5と一体に揺動する上伝達架構13との間で作動効率1により伸縮し、地震エネルギーが効率よく吸収される。この際、下伝達架構13の取付け装置21は、引張り方向の力に対してアンカーボルト25に介して、圧縮方向の力に対して支持部材23を介して基礎10に担持され、変位することなく下伝達架構13を支持する。
【0042】
なお、上述した実施の形態は、伝達架構をブレース材からなるリンク構造としたが、これに限らず、平板部材からなる壁構造のものでもよい。
【符号の説明】
【0043】
2 (木造)構造体
3 土台
5 梁
6,7 柱
10 基礎
11,11 制振装置
12 油圧ダンパ
13,13,13 伝達架構
15,16,15,16 ブレース材
21,21,21,21 取付け装置
22 取付け金具
23,23 支持部材
23a 円筒部材
23b プレート材
25 アンカーボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9